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特表2022-506474音響反射型の横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】音響反射型の横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20220107BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20220107BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20220107BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/25 Z
H03H9/25 C
H03H3/08
H03H9/64 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523869
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019058632
(87)【国際公開番号】W WO2020092414
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/753,809
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/230,443
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/818,564
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/438,141
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326649
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】プレスキ ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ヤンドラパッリ ソウミャ
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブライアント
(72)【発明者】
【氏名】ターナー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェッソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチェフ ヴェントシスラフ
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA19
5J097BB15
5J097BB17
5J097DD07
5J097EE09
5J097GG03
5J097GG04
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】
共振子デバイス、フィルタデバイス、及びそれらの製造方法が開示される。共振子デバイスは、基板と、平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板とを含む。基板の外面と単結晶圧電板の裏面との間には、音響ブラッグ反射器が挟まれている。表面には櫛型電極(IDT)が形成されている。このIDTは、IDTに印加された高周波信号に応じて、圧電板にせん断弾性波を励起するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響共振子デバイスであって、
外面を有する基板と、
平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板と、
前記基板の前記外面と前記単結晶圧電板の前記裏面との間に挟まれている音響ブラッグ反射器と、
前記単結晶圧電板の前記表面に形成されている櫛型電極(IDT)であって、前記IDTに印加された高周波信号に応答して前記単結晶圧電板に一次音響モードを励起するように構成されている櫛型電極(IDT)と
を含み、
前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記表面及び裏面に実質的に直交している音響共振子デバイス。
【請求項2】
前記単結晶圧電板のz軸が前記表面及び裏面の法線方向である請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記IDTが、前記IDTのフィンガーが前記単結晶圧電板のx軸に平行であるように配向される請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記単結晶圧電板がニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうちの1つである請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記音響ブラッグ反射器が、前記音響共振子デバイスの共振周波数においてせん断弾性波を反射するように構成されている請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記音響ブラッグ反射器が、
高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層とを交互に繰り返す複数の層
を含み、
前記複数の層のすべてが誘電体材料である請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記高音響インピーダンス層が窒化ケイ素及び窒化アルミニウムのうちの1つであり、
前記低音響インピーダンス層がオキシ炭化ケイ素である請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記複数の層が少なくとも4層かつ7層以下を含む請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記圧電板の前記表面及び裏面の間の厚さが200nm以上1000nm以下である請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記IDTのフィンガーのピッチが、前記圧電板の厚さの2倍以上かつ前記圧電板の厚さの25倍以下である請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記IDTのフィンガーが幅を有し、
前記ピッチが前記幅の2倍以上かつ前記幅の25倍以下である請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
フィルタデバイスであって、
外面を有する基板と、
平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板と、
前記基板の前記外面と前記単結晶圧電板の前記裏面との間に挟まれている音響ブラッグ反射器と、
前記単結晶圧電板の前記表面に形成されている導体パターンであって、シャント共振子及び直列共振子を含むそれぞれの複数の共振子の複数の櫛型電極(IDT)を含む導体パターンと、
前記シャント共振子の前記IDTの上に堆積された第1の厚さを有する第1の誘電体層と、
前記直列共振子の前記IDTの上に堆積された第2の厚さを有する第2の誘電体層と
を含み、
前記複数のIDTのすべてが、前記IDTに印加されたそれぞれの高周波信号に応答して前記単結晶圧電板にそれぞれの一次音響モードを励起するように構成されており、
すべての前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記表面及び裏面に実質的に直交しており、
前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きいフィルタデバイス。
【請求項13】
前記単結晶圧電板のz軸が前記表面及び裏面の法線方向である請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項14】
前記複数のIDTのすべてが、各IDTのフィンガーが前記単結晶圧電板のx軸に平行であるように配向される請求項13に記載のフィルタデバイス。
【請求項15】
前記圧電板がニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうちの1つである請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項16】
前記音響ブラッグ反射器が、すべての前記複数の共振子の共振周波数及び反共振周波数を含む周波数範囲にわたってせん断弾性波を反射するように構成されている請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項17】
前記音響ブラッグ反射器が、
高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層とを交互に繰り返す複数の誘電体層
を含み、
前記高音響インピーダンス層が窒化ケイ素及び窒化アルミニウムのうちの1つであり、
前記低音響インピーダンス層がオキシ炭化ケイ素である請求項16に記載のフィルタデバイス。
【請求項18】
前記複数の層が少なくとも4層かつ7層以下を含む請求項17に記載のフィルタデバイス。
【請求項19】
前記圧電板の前記表面及び裏面の間の厚さが200nm以上1000nm以下である請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項20】
前記複数のIDTのすべてが、前記圧電板の厚さの2倍以上かつ前記圧電板の厚さの25倍以下であるそれぞれのピッチを有する請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項21】
前記第2の厚さが0以上であり、
前記第1の厚さが300nm以下である請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項22】
前記複数の共振子が2以上のシャント共振子を含み、
前記第1の誘電体層が、前記2以上のシャント共振子の上に堆積されている請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項23】
前記複数の共振子が2以上の直列共振子を含み、
前記第2の誘電体層が、前記2以上の直列共振子の上に堆積されている請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項24】
前記シャント共振子の共振周波数が、少なくとも部分的に、前記第1の厚さによって設定され、
前記直列共振子の共振周波数が、少なくとも部分的に、前記第2の厚さによって設定される請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項25】
前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差が、前記直列共振子の共振周波数よりも少なくとも100MHz低い前記シャント共振子の共振周波数を設定するのに十分である請求項24に記載のフィルタデバイス。
【請求項26】
前記第1及び第2の誘電体層がSiO2であり、
前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差が25nm以上である請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項27】
音響共振子デバイスの製造方法であって、
デバイス基板の一方又は両方の外面及び犠牲基板に取り付けられた第2面を有する単結晶圧電板の第1面に複数の材料層を堆積することにより、音響ブラッグ反射器を形成する工程と、
前記音響ブラッグ反射器の前記複数の層が前記単結晶圧電板の前記第1面と前記デバイス基板との間に挟まれるように、前記犠牲基板に取り付けられた前記単結晶圧電板を前記デバイス基板に接合する工程と、
前記犠牲基板を除去して、前記単結晶圧電板の前記第2面を露出させる工程と、
前記単結晶圧電板の前記第2面に櫛型電極(IDT)を形成する工程と
を含み、
前記IDTが、前記IDTに印加された高周波信号に応答して前記単結晶圧電板に一次音響モードを励起するように構成されており、前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記表面及び裏面に実質的に直交している方法。
【請求項28】
フィルタデバイスの製造方法であって、
デバイス基板の一方又は両方の外面及び犠牲基板に取り付けられた第2面を有する単結晶圧電板の第1面に複数の材料層を堆積することにより、音響ブラッグ反射器を形成する工程と、
前記音響ブラッグ反射器の前記複数の層が前記単結晶圧電板の前記第1面と前記デバイス基板との間に挟まれるように、前記犠牲基板に取り付けられた前記単結晶圧電板を前記デバイス基板に接合する工程と、
前記犠牲基板を除去して、前記単結晶圧電板の前記第2面を露出させる工程と、
前記単結晶圧電板の前記第2面に導体パターンを形成する工程であって、前記導体パターンは、シャント共振子及び直列共振子を含むそれぞれの複数の共振子の複数の櫛型電極(IDT)を含む工程と、
第1の厚さを有する第1の誘電体層を前記シャント共振子の前記IDTの上に堆積する工程と、
第2の厚さを有する第2の誘電体層を前記直列共振子の前記IDTの上に堆積する工程と
を含み、
前記複数のIDTのすべてが、前記IDTに印加されたそれぞれの高周波信号に応答して前記単結晶圧電板にそれぞれの一次音響モードを励起するように構成されており、
すべての前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記表面及び裏面に実質的に直交しており、
前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波共振子を用いた高周波フィルタに関し、特に通信機器において使用するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を阻止させるように構成された2ポートのデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で伝送することを意味し、「阻止」は遮断又は実質的に減衰させることを意味する。フィルタが通過させる周波数の範囲は、そのフィルタの「通過帯域(パスバンド)」と呼ばれる。そのようなフィルタによって阻止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域(ストップバンド)」と呼ばれる。典型的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域及び少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域や阻止帯域に関する具体的な必要条件は、具体的な用途に依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、3dB等の規定の値よりも良好な周波数範囲として定義されてもよい。「阻止帯域」は、フィルタの挿入損失が用途に応じて20dB、30dB、40dB、又はそれ以上のような規定の値よりも大きい周波数範囲として定義されてもよい。
【0003】
RFフィルタは、無線リンクで情報を伝送する通信システムで使用される。例えば、RFフィルタは、セルラー基地局、携帯電話及び計算装置、衛星トランシーバー及び地上局、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)デバイス、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定点無線リンク、並びにその他の通信システムのRFフロントエンドに見られる可能性がある。RFフィルタは、レーダー及び電子戦・情報戦システムでも使用されている。
【0004】
RFフィルタは通常、特定の用途ごとに、挿入損失、拒絶、アイソレーション(分離)、電力操作、リニアリティ(線形性)、サイズ、コスト等の性能パラメータ間の最適な妥協点を実現するために、多くの設計トレードオフを必要とする。特定の設計及び製造の方法と向上とは、これらの要件の1つ又はいくつかにとって同時に有利になる可能性がある。
【0005】
無線システムにおけるRFフィルタの性能向上は、システム性能に幅広い影響を与えることができる。RFフィルタの改良は、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、低コスト化、セキュリティの強化、信頼性の向上等のシステム性能の向上を実現するために活用することができる。これらの改良は、RFモジュール、RFトランシーバー、モバイル若しくは固定のサブシステム、又はネットワークのレベル等、無線システムの多くのレベルで、個別に又は組み合わせて実現することができる。
【0006】
通信チャネルの帯域幅を広くしたいという要望は、必然的に、より高い周波数の通信帯域の使用につながる。現在のLTE(商標)(Long Term Evolution、ロング・ターム・エボリューション)仕様では、3.3GHzから5.9GHzの周波数帯が定義されている。これらの帯域の中には、現在使用されていないものもある。将来の無線通信の提案には、28GHzまでの周波数のミリ波通信帯域が含まれている。
【0007】
現在の通信システムの高性能RFフィルタは、一般的に、表面弾性波(surface acoustic wave、SAW)共振子、バルク弾性波(bulk acoustic wave、BAW)共振子、薄膜バルク弾性波共振子(film bulk acoustic wave resonator、FBAR)等の弾性波共振子を内蔵する。しかしながら、これらの既存技術は、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数での使用には適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
共振子デバイス、フィルタデバイス、及びそれらの製造方法が開示される。共振子デバイスは、基板と、平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板とを含む。基板の外面と単結晶圧電板の裏面との間には、音響ブラッグ反射器が挟まれている。表面には櫛型電極(IDT)が形成されている。このIDTは、IDTに印加された高周波信号に応じて、圧電板にせん断弾性波を励起するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子(film bulk acoustic resonator、XBAR)の模式的平面図及び模式的断面図を含む。
図2図2は、音響反射型の横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子(SM XBAR)の模式的平面図及び模式的断面図を含む。
図3図3は、図2のSM XBARの一部の拡大模式的断面図である。
図4図4は、SM XBARにおけるせん断水平音響モードを示すグラフである。
図5A図5Aは、第1の例示的なSM XBARの一部の拡大模式的断面図である。
図5B図5Bは、第1の例示的なSM XBARのアドミッタンスのチャートである。
図6A図6Aは、第2の例示的なSM XBARの一部の拡大模式的断面図である。
図6B図6Bは、第2の例示的なSM XBARのアドミッタンスのチャートである。
図7A図7Aは、第3の例示的なSM XBARの一部の拡大模式的断面図である。
図7B図7Bは、第3の例示的なSM XBARのアドミッタンスのチャートである。
図8A図8Aは、第4の例示的なSM XBARの一部の拡大模式的断面図である。
図8B図8Bは、第4の例示的なSM XBARのアドミッタンスのチャートである。
図9図9は、SM XBARのQファクタの、音響ブラッグ反射器の層数への依存性を示すチャートである。
図10図10は、異なる誘電体層の厚さを有する2つのシミュレーションされたSM XBARのアドミッタンスを比較するチャートである。
図11図11は、表側の誘電体層の厚さの関数として、シミュレーションされたSM XBARS及びXBARSのアドミッタンスを比較するチャートである。
図12図12は、5つのSM XBARを含むフィルタのブロック図である。
図13図13は、SM XBARを製造するためのプロセスのフロー図である。
【0010】
本明細書を通じて、図に現れる要素には、3桁又は4桁の参照識別子が割り当てられており、それらの参照識別子において、下2桁はその要素に固有のものであり、最上位の1桁又は2桁は、その要素が最初に紹介されている図の番号である。図と一緒に説明されていない要素は、同じ参照識別子を持つ前に説明された要素と同じ特性及び機能を持っていると推定されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
装置の説明
図1は、出願第16/230,443号、「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」に記載されているような横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子(薄膜バルク音響共振子、XBAR)100の簡略化された模式的上面図及び直交する断面図を示す。共振子100等のXBAR共振子は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタに使用されてもよい。XBARは、特に3GHzを超える周波数を持つ通信帯域用のフィルタにおいて使用するのに適している。
【0012】
XBAR100は、平行な表面(前面)及び裏面、それぞれ112、114、を有する圧電板110の外面に形成された薄膜導体パターンから構成される。この圧電板は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウム等の圧電材料の薄い単結晶層である。この圧電板は、表面及び裏面に対するX、Y、Zの結晶軸の向きが既知であり、かつ一致するように切断される。この特許の例では、圧電板はZ切断されている、つまり、Z軸が外面の法線方向である。しかしながら、XBARは、他の結晶方位を有する圧電板上に作製されてもよい。
【0013】
圧電板110の裏面114は、圧電板110に機械的な支持を与える基板120に取り付けられている。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、又は何らかの他の材料であってもよい。圧電板110は、ウェハ接合プロセスを用いて基板120に接合されてもよいし、基板120上で成長させてもよいし、何らかの他の方法で基板に取り付けられてもよい。この圧電板は、基板に直接取り付けられてもよいし、1つ以上の中間材料層を介して基板に取り付けられてもよい。
【0014】
XBAR100の導体パターンは、櫛型電極(櫛型変換器、インターデジタル変換器、interdigital transducer、IDT)130を含む。IDT130は、第1のバスバー132から延びる、フィンガー136等の第1の複数の平行なフィンガーと、第2のバスバー134から延びる第2の複数のフィンガーとを含む。第1及び第2の複数の平行なフィンガーは、インターリーブされている。インターリーブされたフィンガーは、一般にIDTの「開口」と呼ばれる距離APだけオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガーの間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0015】
第1及び第2のバスバー132、134は、XBAR100の端子として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に印加された高周波又はマイクロ波信号は、圧電板110内に弾性波(音響波)を励起する。さらに詳しく説明するように、励起された弾性波は、圧電板110の外面の法線方向に伝搬するバルクせん断波であり、このバルクせん断波は、IDTフィンガーによって作られる電界の方向に対しても法線方向、すなわち横方向である。従って、このXBARは、横方向に励振される薄膜バルク波共振子と考えられる。
【0016】
IDT130を含む圧電板110の部分が、基板120に接触することなく、空洞125上に懸架されるように、基板120に空洞125が形成されている。「空洞」は、「中実体内の空の空間」という従来の意味を有する。空洞125は、基板120を完全に貫通する孔(A-A線断面図及びB-B線断面図に示すように)であってもよいし、基板120の凹部であってもよい。空洞125は、例えば、圧電板110及び基板120が取り付けられる前又は後に、基板120を選択的にエッチングすることにより形成されてもよい。図1に示すように、空洞125は、IDT130の開口AP及び長さLよりも大きい範囲を有する長方形の形状を有する。XBARの空洞は、正多角形や不規則な多角形等、異なる形状を有していてもよい。XBARの空洞は、4つの辺よりも多くても少なくてもよく、これらの辺は直線でも曲線でもよい。
【0017】
図1での表現を容易にするために、IDTフィンガーの幾何学的なピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及び開口(寸法AP)に対して大幅に誇張されている。典型的なXBARは、IDT110に10本を超える平行なフィンガーを有する。XBARは、IDT110内に数百、場合によっては数千の平行なフィンガーを有していてもよい。同様に、断面図におけるフィンガーの厚さは大幅に誇張されている。
【0018】
図2は、音響反射型の(空洞なしに中実実装された、solidly-mounted)横方向に励振される薄膜バルク弾性波共振子(SM XBAR)200の簡略化された模式的上面図及び直交断面図を示す。共振子200のようなSM XBAR共振子は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタに使用されてもよい。SM XBARは、特に、3GHzを超える周波数を持つ通信帯域用のフィルタにおいて使用するのに適している。
【0019】
SM XBAR200は、平行な表面及び裏面、それぞれ212、214、を有する圧電板210の表面212に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電板は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウム等の圧電材料の薄い単結晶層である。圧電板は、表面及び裏面に対するX、Y、Zの結晶軸の向きが既知であり、かつ一致するように切断される。この特許に提示される例では、圧電板はZ切断されている、つまり、Z軸が板の外面の法線方向である。しかしながら、SM XBARは、他の結晶方位を有する圧電板上に作製されてもよい。
【0020】
圧電板210の裏面214は、基板220に取り付けられ、機械的に支持されている。基板220は、例えば、シリコン、サファイア、石英、又は何らかの他の材料であってもよい。後で説明するように、圧電板210は、複数の中間材料層を介して基板220に取り付けられていてもよい。
【0021】
SM XBAR200の導体パターンは、櫛型電極(IDT)230を含む。IDT230は、第1のバスバー232から延びる、フィンガー236等の第1の複数の平行なフィンガーと、第2のバスバー234から延びる第2の複数のフィンガーとを含む。第1及び第2の複数の平行なフィンガーは、インターリーブされている。インターリーブされたフィンガーは、一般にIDTの「開口」と呼ばれる距離APだけオーバーラップする。IDT230の最も外側のフィンガーの間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。第1及び第2の複数のフィンガーの各フィンガーは、圧電板210のX軸に平行であってもよい。
【0022】
第1及び第2のバスバー232、234は、SM XBAR200の端子として機能する。IDT230の2つのバスバー232、234の間に印加された高周波又はマイクロ波信号は、圧電板210内に弾性波を励起する。さらに詳しく説明するように、励起された弾性波は、圧電板210の外面の法線方向に伝搬するバルクせん断波であり、このバルクせん断波は、IDTフィンガーによって作られる電界の方向に対しても法線方向、すなわち横方向である。従って、このSM XBARは、横方向に励振される薄膜バルク波共振子と考えられる。
【0023】
図2での表現を容易にするために、IDTフィンガーの幾何学的なピッチ及び幅は、SM XBARの長さ(寸法L)及び開口(寸法AP)に対して大幅に誇張されている。典型的なSM XBARは、IDT210に10本を超える平行なフィンガーを有する。SM XBARは、IDT210内に数百、場合によっては数千の平行なフィンガーを有していてもよい。同様に、断面図におけるフィンガーの厚さは大幅に誇張されている。
【0024】
図3は、SM XBAR200の詳細な模式的断面図を示す。圧電板210は、厚さtsを有する圧電材料の単結晶層である。tsは、例えば、100nm~1500nmであってもよい。出願番号第16/230,443号、「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」は、200nm~1000nmの厚さを有する圧電板に対するXBARのシミュレーションデータを含む。3.4GHz~6GHzのLTE(商標)帯域(例えば帯域42、43、46)に対するフィルタに使用される場合、厚さtsは、例えば200nm~500nmであってもよい。
【0025】
表面側誘電体層314が、圧電板210の表面212に任意に形成されてもよい。表面側誘電体層314は、厚さtfdを有する。表面側誘電体層314は、IDTフィンガー236の間に形成されてもよい。図2には示されていないが、表面側誘電体層314は、IDTフィンガー236の上に堆積されてもよい。表面側誘電体層314は、二酸化ケイ素や窒化ケイ素等の非圧電性誘電体材料であってもよい。tfdは、例えば、0~500nmであってもよい。
【0026】
IDTフィンガー238は、アルミニウム又は実質的にアルミニウム合金、銅又は実質的に銅合金、ベリリウム、金、又は他の導電性材料であってもよい。フィンガーと圧電板210との間の接着性を向上させるために、及び/又はフィンガーを不動態化若しくは封止するために、クロム又はチタン等の他の金属の(導体の総厚さに対して)薄い層が、フィンガーの下及び/又は上に形成されてもよい。IDTのバスバー(図2の232、234)は、フィンガーと同じ材料又は異なる材料から作製されてもよい。
【0027】
寸法pは、IDTのフィンガーの中心間の間隔又は「ピッチ」であり、これはIDTのピッチ及び/又はSM XBARのピッチと呼ばれることがある。寸法wは、IDTフィンガーの幅又は「マーク」である。SM XBARのIDTは、表面弾性波(SAW)共振子に用いられるIDTとは実質的に異なる。SAW共振子では、IDTのピッチは、共振周波数における弾性波長の1/2である。加えて、SAW共振子のIDTのマークとピッチの比は、通常0.5に近い(すなわち、マーク又はフィンガーの幅wは、共振時の弾性波長の約1/4である)。SM XBARでは、IDTのピッチpは、通常、フィンガーの幅wの2~20倍である。加えて、IDTのピッチpは、通常、圧電スラブ212の厚さtsの2~20倍である。SM XBARのIDTのフィンガーの幅は、共振時の弾性波長の1/4に制約されない。例えば、SM XBARのIDTフィンガーの幅は、光リソグラフィを用いてIDTを作製できるように、500nm以上であってもよい。IDTフィンガーの厚さtmは、100nmから幅wにほぼ等しくてもよい。IDTのバスバー(図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガーの厚さtmと同じか、それよりも大きくてもよい。
【0028】
音響ブラッグ反射器340は、基板220の外面222と圧電板110の裏面214との間に挟まれている。「挟まれている」という用語は、音響ブラッグ反射器340が、基板220の外面222と圧電板210の裏面214との間に配置されていると同時に、それらに物理的に接続されていることを意味する。状況によっては、追加材料の薄い層が、音響ブラッグ反射器340と基板220の外面222との間、及び/又は、ブラッグ反射器340と圧電板210の裏面214との間に配置されてもよい。このような追加材料の層は、例えば、圧電板210、音響ブラッグ反射器340、及び基板220の接合を容易にするために存在してもよい。
【0029】
音響ブラッグ反射器340は、高い音響インピーダンスを有する材料と低い音響インピーダンスを有する材料とを交互に繰り返す複数の層を含む。「高い」及び「低い」は、相対的な用語である。各層について、比較の基準は、隣接する層である。各「高」音響インピーダンス層は、隣接する「低」音響インピーダンス層の両方の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する。各「低」音響インピーダンス層は、隣接する高音響インピーダンス層の両方の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有する。各層は、SM XBAR200の共振周波数又はその近傍における弾性波長の1/4に等しいか、又は約1/4の厚さを有する。比較的低い音響インピーダンスを有する材料としては、二酸化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、アルミニウム、及び架橋ポリフェニレンポリマー等の特定のプラスチック類が挙げられる。比較的高い音響インピーダンスを有する材料としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、並びにモリブデン、タングステン、金及び白金等の金属が挙げられる。音響ブラッグ反射器340の高音響インピーダンス層の全てが同じ材料である必要はなく、低音響インピーダンス層の全てが同じ材料である必要はない。図2の例では、音響ブラッグ反射器340は、合計6つの層を有する。音響ブラッグ反射器は、7つ以上の層を有していてもよいし、5つ以下の層を有していてもよい。
【0030】
図4は、SM XBAR400における一次音響モードの図解による表示である。図4は、圧電板410及び3つのインターリーブされたIDTフィンガー430を含むSM XBAR400の小部分を示す。圧電板410は、z軸が板の外面の法線方向になるように切断された単結晶ニオブ酸リチウムであってもよい。IDTフィンガーは、y軸がフィンガーの法線方向になるように、板のx軸に平行に配向されてもよい。
【0031】
インターリーブされたフィンガー430に印加されたRF電圧は、フィンガーの間に時間的に変化する電界を形成する。電界の方向は、「電界」とラベル付けされた破線の矢印で示されるように、横方向、すなわち圧電板410の外面に平行であり、IDTフィンガーの長さに直交する。圧電板の高い誘電率のため、電界は空気に対して板内に高濃度に集中する。横方向の電界は、圧電板410にせん断変形を導入し、その結果、せん断モードの弾性波を強く励起する。これに関して、「せん断変形」は、材料中の平行な面が平行なままで、相対的に並進しながら一定の距離を保つような変形と定義される。「せん断弾性波」は、媒体のせん断変形をもたらす媒体中の弾性波(音響波)と定義される。圧電板410におけるせん断変形は、曲線460によって表され、隣接する小さな矢印は、原子の動きの方向及び大きさを模式的に示している。原子の動きの程度、及び圧電板410の厚さは、視覚化を容易にするために大幅に誇張されている。原子の動きは主に横方向(すなわち、図4に示すように水平方向)であるが、一次せん断音響モードの音響エネルギーの流れの方向は、矢印465によって示されるように、圧電板の外面に対して実質的に直交している。
【0032】
音響ブラッグ反射器440は、圧電板410と基板420との間に挟まれている。音響ブラッグ反射器440は、音響エネルギー(矢印465)を優勢に圧電板410に閉じ込めるために、せん断弾性波を反射する。前述したように、音響ブラッグ反射器440は、比較的高い音響インピーダンスを有する材料と比較的低い音響インピーダンスを有する材料の交互の層で構成され、各層は、XBAR400の共振周波数におけるせん断弾性波(矢印465)の波長の約1/4の厚さを有する。図4の例では、音響ブラッグ反射器440は、合計6つの層を有する。音響ブラッグ反射器は、7つ以上の層を有していてもよいし、5つ以下の層を有していてもよい。
【実施例
【0033】
例1
図5Aは、SiO2層及びSi3N4層を交互に含む音響ブラッグ反射器510を有するSM XBAR500の模式的断面図である。圧電板は、Z切断(すなわち、Z軸が板の外面の法線方向である)されたニオブ酸リチウム(LN)であり、その厚さは400nmである。IDTフィンガーはアルミニウムであり、その厚さは100nmである。IDTフィンガーのピッチ及び幅はそれぞれ5μm及び500nmである。IDTは、IDTフィンガーが圧電板のX軸と平行になるように配向されている。音響ブラッグ反射器510は、厚さ210nmのSiO2層と厚さ320nmのSi3N4層とが交互に配置された合計20層を有する。音響ブラッグ反射器510のこの多数の層は、SiO2層及びSiN3層の音響インピーダンスの差が比較的小さいことから必要とされる。音響ブラッグ反射器510及び圧電板を支持する基板はシリコンである。
【0034】
図5Bは、図5AのSM XBAR500のアドミッタンスの正規化された大きさ(対数スケール)を周波数の関数としてプロット560したチャート550である。チャート550とそれに続くチャート650、750、850のデータは、有限要素法(FEM)技術を用いたSM XBARデバイスのシミュレーションによって作成した。圧電板、音響ブラッグ反射器、及びIDTフィンガーにおける損失は、標準的な材料パラメータを使用してシミュレーションした。
【0035】
シミュレーションしたXBAR500についてのアドミッタンスプロット560は、4166MHzの周波数FRで共振を示し、4375MHzの周波数FARで反共振を示す。共振時のQと反共振時のQは、どちらも低すぎて、高周波フィルタとしては有用ではない。SM XBAR500の低い性能は、主に基板への音響エネルギーの損失によるものである。SiO2層とSi3N4層の間の音響インピーダンスの不整合(ミスマッチ)は比較的小さく、層のペアごとに低い反射係数を決定する。このことは、比較的多数のペアがあっても、結果的に、ブラッグミラーを介した大きな伝送損失をもたらす。
【0036】
例2
図6Aは、SiO2層及びタングステン(W)層を交互に含む音響ブラッグ反射器610を有するSM XBAR600の模式的断面図である。圧電板は、Z切断された(すなわち、Z軸が板の法線方向である)ニオブ酸リチウム(LN)であり、その厚さは400nmである。IDTフィンガーはアルミニウムであり、その厚さは100nmである。IDTフィンガーのピッチ及び幅はそれぞれ6μm及び1.8μmである。IDTは、IDTフィンガーが圧電板のX軸と平行になるように配向されている。音響ブラッグ反射器610は、厚さ210nm又は270nmのSiO2層と、厚さ160nm又は170nmのW層とが交互に配置された合計7層を有する。音響ブラッグ反射器610の(音響ブラッグ反射器510と比較した)少ない層数は、SiO2層とW層の音響インピーダンスの差が比較的大きいことによって許容される。基板はシリコンである。
【0037】
図6Bは、図6AのSM XBAR600のアドミッタンスの正規化された大きさ(対数スケール)を周波数の関数としてプロット660したチャート650である。シミュレーションしたXBAR600についてのアドミッタンスプロット660は、4225MHzの周波数FRで高Qの共振を示し、4375MHzの周波数FARで高Qの反共振を示す。共振周波数と反共振周波数の差は150MHz、すなわち共振周波数の約3.5%である。
【0038】
共振周波数と反共振周波数の間の比較的小さな差は、音響反射型のXBAR600における電気機械的結合が低いことを示す。低い電気機械的結合は、少なくとも部分的には、導電性W層の存在によって引き起こされ、この導電性W層はIDT電極によって生成された電界が圧電板を貫通するのを防止する。
【0039】
例3
図7Aは、低音響インピーダンス層と高音響インピーダンス層を交互に含む音響ブラッグ反射器710を有するSM XBAR700の模式的断面図である。圧電板は、Z切断された(すなわち、Z軸が板の法線方向である)ニオブ酸リチウム(LN)であり、その厚さは400nmである。IDTフィンガーはアルミニウムであり、その厚さは100nmである。IDTフィンガーのピッチ及び幅はそれぞれ6μm及び1.8μmである。IDTは、IDTフィンガーが圧電板のX軸と平行になるように配向されている。音響ブラッグ反射器710は、合計7層を有する。低音響インピーダンス層は、厚さが210nm、270nm、又は285nmのSiO2である。圧電板に最も近い高音響インピーダンス層は、厚さ360nmのSi3N4である。他の2つの高音響インピーダンス層は、厚さ170nmのWである。誘電体のSi3N4高インピーダンス層を組み込むことで、図5AのSM XBAR500と比較して、導電性のW層がIDT電極から570nm離れている。基板はシリコンである。
【0040】
図7Bは、図7AのSM XBAR700のアドミッタンスの正規化された大きさ(対数スケール)を周波数の関数としてプロット760したチャート750である。シミュレーションしたXBAR700についてのアドミッタンスプロット760は、4200MHzの周波数FRで高Qの共振を示し、4416MHzの周波数FARで高Qの反共振を示す。共振周波数と反共振周波数の差は216MHz、つまり共振周波数の約5.1%である。
【0041】
共振周波数と反共振周波数の差が150MHzから216MHzに(SM XBAR600と比較して)増加していることは、図7のSM XBAR700が図6のSM XBAR600よりも高い電気機械的結合を有していることを示しており、おそらくは導電性W層を圧電板から遠くへ移動させたことが原因であると考えられる。圧電板と音響ブラッグ反射器の最も近い金属層との間の距離は、SM XBARの電気機械的結合係数を(段階的に)調整するために使用されてもよい。
【0042】
例4
図8Aは、低音響インピーダンス及び高音響インピーダンスの誘電体層を交互に含む音響ブラッグ反射器810を有するSM XBAR800の模式的断面図である。圧電板は、Z切断された(すなわち、Z軸が板の法線方向である)ニオブ酸リチウム(LN)であり、その厚さは400nmである。IDTフィンガーはアルミニウムであり、その厚さは100nmである。IDTのフィンガーのピッチ及び幅はそれぞれ5μm及び1μmである。IDTは、圧電板のy軸がIDTフィンガーの法線方向であるように配向されている。音響ブラッグ反射器810は、合計7層を有する。低音響インピーダンス層は、厚さ75nmのSiOCである。高音響インピーダンス層は、厚さ300nmのSi3N4である。基板はシリコンである。圧電板と隣接するSiOC層との間に接着性を持たせるために、10nmのSiO2層を用いてもよい。
【0043】
図8Bは、図8AのSM XBAR800のアドミッタンスの正規化された大きさ(対数スケール)を周波数の関数としてプロット860したチャート850である。シミュレーションしたSM XBAR800のアドミッタンスプロット860は、4539MHzの周波数FRで高Qの共振を示し、4965MHzの周波数FARで高Qの反共振を示す。共振周波数と反共振周波数の差は424MHz、つまり共振周波数の約9.3%である。
【0044】
SM XBAR800の共振周波数と反共振周波数の間の(これまでの例と比較して)大きな差は、全誘電体ブラッグ反射器の使用、及びSi3N4とSiOCの間の音響インピーダンスの大きな差によるものである。同様の結果は、音響ブラッグ反射器810の高インピーダンス層に窒化アルミニウムを用いても得られる可能性がある。
【0045】
図9は、SM XBARのQファクタ(Q値、Q係数)と、音響ブラッグ反射器の層数との関係を示すチャートである。SM XBARは、上記段落0044で説明したSM XBARと同様のものである。実線910は、ブラッグ反射器内の総層数が3、4、5、及び7であるSi3N4/SiOC音響ブラッグ反射器を有するSM XBARについての共振周波数におけるQファクタのプロットである。破線920は、ブラッグ反射器内の総層数が3、4、5、及び7であるSi3N4/SiOC音響ブラッグ反射器を有するSM XBARについての反共振周波数におけるQファクタのプロットである。一対の線930は、ブラッグ反射器内の総層数が3、4、5、及び7であるSiO2/W音響ブラッグ反射器を有するSM XBARについての共振周波数(実線)及び反共振周波数(破線)におけるQファクタをプロットしている。図9に示したデータはすべて、有限要素法を用いたシミュレーションによるものである。いずれのタイプの音響ブラッグ反射器でも、共振周波数と反共振周波数の両方でQ>1000を実現するためには、少なくとも合計4層が必要である。さらに、音響ブラッグ反射器の層数を8以上に増やすことで、Qファクタのさらなる向上が得られる可能性が高い。
【0046】
図10は、表面側誘電体層がある場合とない場合のSM XBARのアドミッタンスを、周波数の関数として比較したグラフ1000である。アドミッタンスデータは、有限要素法(FEM)技術を用いたSM XBARデバイスのシミュレーションから得られたものである。圧電板は、厚さ400nmのZ切断したニオブ酸リチウムである。IDTのピッチは3.9μmであり、IDTの導体は厚さ100nmのアルミニウムである。
【0047】
実線1010は、tfd=0(すなわち、誘電体層のないSM XBAR)及びIDT導体幅1.1μmのSM XBARのアドミッタンスのプロットである。破線1020は、厚さ100nmのSiO2層及びIDT導体幅1.0μmのSM XBARのアドミッタンスのプロットである。100nmのSiO2層の追加により、誘電体層のないSM XBARと比較して、共振周波数が約460MHz低下している。二次的な共振の周波数及び大きさは、一次的なせん断モードの共振とは異なる影響を受けている。
【0048】
重要なのは、誘電体層を持つ共振子と誘電体層を持たない共振子とに、同じブラッグ反射器構造(図8Aに示す)を使用したことである。
【0049】
図11は、XBAR(音響反射型ではない)共振子及びSM XBAR共振子の共振周波数を、表面側の誘電体厚さの関数として比較したグラフ1100である。2つの黒丸は、図10でアドミッタンス特性を示したSM XBARを表している。4つの白丸は、出願第16/230、443号の図7にアドミッタンス特性が示されている4つのXBARデバイスを表している。この4つのXBARは、以下のパラメータを有する:ts=400nm、tfd=0、30、60、90nm、tm=100nm、p=4.2μm、w=500nm、AP=20μm、及びN(IDTフィンガーの総数)=51。圧電板はZ切断したニオブ酸リチウムであり、IDT導体はアルミニウムであり、IDTは基板の空洞に懸架された圧電板の一部に形成し、誘電体層はSiO2である。
【0050】
上記4つのXBAR共振子についての表面側の誘電体厚さと共振周波数との関係は、一点鎖線1120で示されるように、ほぼ線形である。図11には2つのSM XBAR共振子についてのデータしかないが、破線1110で示されるように、SM XBAR共振子についても表面側の誘電体厚さと共振周波数との関係はほぼ線形であることが予想される。
【0051】
図12は、SM XBARを用いた高周波バンドパスフィルタ1200の模式的回路図である。フィルタ1200は、3つの直列共振子1210A、1210B、1210C、及び2つのシャント共振子1220A、1220Bを含む従来のラダーフィルタアーキテクチャを有する。3つの直列共振子1210A、1210B、及び1210Cは、第1のポートと第2のポートとの間に直列に接続されている。図12では、第1ポート及び第2ポートをそれぞれ「In」及び「Out」と表記している。しかしながら、フィルタ1200は対称的であり、どちらのポートもフィルタの入力又は出力として機能する。2つのシャント共振子1220A、1220Bは、直列共振子間のノードからグランド(Gnd)に接続されている。すべてのシャント共振子及び直列共振子は、SM XBARである。
【0052】
フィルタ1200は、外面を有する基板と、平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板と、基板の外面と単結晶圧電板の裏面との間に挟まれた音響ブラッグ反射器とを含んでいてもよい。基板、音響ブラッグ反射器、及び単結晶板は、図12では、矩形1210で表されている。単結晶圧電板の表面に形成された導体パターンは、3つの直列共振子1210A、1210B、1210C及び2つのシャント共振子1220A、1220Bのそれぞれに対応する櫛型電極(IDT)を含む。全てのIDTは、各IDTに印加されたそれぞれの高周波信号に応答して、単結晶圧電板にせん断弾性波を励起するように構成されている。
【0053】
フィルタ1200のようなラダーフィルタでは、シャント共振子の共振周波数は、典型的には直列共振子の共振周波数よりも低い。SM XBAR共振子の共振周波数は、IDTピッチによって部分的には決定される。IDTピッチは、インピーダンスや電力操作性能等、他のフィルタパラメータにも影響を与える。広帯域のフィルタ用途では、IDTピッチの違いを用いるだけで、シャント共振子の共振周波数と直列共振子の共振周波数との間に必要な差を持たせるのは実用的ではない可能性がある。
【0054】
直列共振子に対してシャント共振子の一部又はすべての共振周波数を低下させるために、第1の厚さt1を有する第1の誘電体層(破線の長方形1225によって表される)が、シャント共振子1220A、1220Bの一方又は両方のIDTの上に堆積されてもよい。t1よりも小さい第2の厚さt2を有する第2の誘電体層(破線の長方形1215によって表される)が、直列共振子1210A、1210B、1210CのIDTの上に堆積されてもよい。第1及び第2の誘電体層のそれぞれの厚さは、0≦t2<t1≦300nmとなるように、0~300nmであってもよい。2つの異なる誘電体層の厚さを使用することは、直列共振子の共振周波数とシャント共振子の共振周波数との間に少なくとも100MHzのシフトが必要とされる状況において適切である可能性がある。誘電体層が二酸化ケイ素である場合、t1-t2≧25nmは、直列共振子の共振周波数とシャント共振子の共振周波数との間に少なくとも100MHzのシフトを引き起こすのに十分である。
【0055】
方法の説明
図13は、SM XBAR又はSM XBARを組み込んだフィルタの製造方法1300の簡略化されたフロー図である。方法1300は、犠牲基板1302上に配置された圧電膜及びデバイス基板1304を用いて1310で開始する。方法1310は、完成したSM XBAR又はフィルタを得て1395で終了する。図13のフロー図は、主要なプロセス工程のみを含む。様々な従来のプロセス工程(例えば、外面準備、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験等)は、図13に示す工程の前に、工程の間に、工程の後に、及び工程の中で実行されてもよい。
【0056】
非圧電基板に接合された単結晶圧電材料の薄い板が市販されている。本出願の時点では、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムの両方の板が、シリコン、石英、溶融シリカを含む様々な基板に接合されて入手可能である。他の圧電材料の薄板は、現在又は将来入手できる可能性がある。圧電板の厚さは、300nm~1000nmの間であってもよい。基板がシリコンの場合、圧電板と基板との間にSiO2の層が配置されていてもよい。圧電板1302は、例えば、SiO2層を介在させてシリコンウェハに接合された厚さ400nmのZ切断したニオブ酸リチウム(これまでのすべての例で用いられている)であってもよい。デバイス基板1304は、シリコン(これまでの例で使用されている)、溶融シリカ、石英、又は何らかの他の材料であってもよい。
【0057】
1320では、高音響インピーダンス材料及び低音響インピーダンス材料の交互の層を堆積させることによって、音響ブラッグ反射器を形成する。各層は、弾性波長の1/4に等しいか又は約1/4の厚さを有する。比較的低い音響インピーダンスを有する材料としては、二酸化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、アルミニウム、及び架橋ポリフェニレンポリマー等の特定のプラスチック類が挙げられる。比較的高い音響インピーダンスを有する材料としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、並びにモリブデン、タングステン、金及び白金等の金属が挙げられる。高音響インピーダンスの層はすべて同じ材料である必要はなく、低音響インピーダンスの層はすべて同じ材料である必要はない。音響ブラッグ反射器の層の総数は、約5から20超であってもよい。
【0058】
1320では、音響ブラッグ反射器のすべての層を、犠牲基板1302上の圧電板の外面又はデバイス基板1304の外面のいずれかに堆積してもよい。あるいは、音響ブラッグ反射器の層の一部を犠牲基板1302上の圧電板の外面に堆積し、音響ブラッグ反射器の残りの層をデバイス基板1304の外面に堆積してもよい。
【0059】
1330において、犠牲基板1302上の圧電板及びデバイス基板1304を、音響ブラッグ反射器の層が圧電板とデバイス基板との間に挟まれるように接合してもよい。犠牲基板1302上の圧電板及びデバイス基板1304は、直接接合、表面活性化又はプラズマ活性化接合、静電接合、又は他の接合技術等のウェハ接合プロセスを用いて接合されてもよい。なお、音響ブラッグ反射体の1つ以上の層が圧電板及びデバイス基板の両方に堆積されている場合には、接合は、音響ブラッグ反射体の層間又は層内で行われることになる。
【0060】
犠牲基板1302上の圧電板及びデバイス基板1304が接合されてもよい後、犠牲基板、及び介在する任意の層が1340で除去され、圧電板の外面(それまで犠牲基板に面していた外面)が露出される。犠牲基板は、例えば、材料に応じて湿式若しくは乾式のエッチング、又は何らかの他のプロセスによって除去されてもよい。
【0061】
1350で、1340で犠牲基板を除去したときに露出した圧電板の外面上に、1つ以上の導体層を堆積してパターニングすることにより、各SM XBARのIDTを含む導体パターンを形成する。この導体パターンは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、又は何らかの他の導電性金属であってもよい。任意に、他の材料の1つ以上の層が、導体層の下(すなわち、導体層と圧電板との間)及び/又は上に配置されてもよい。例えば、導体層と圧電板との間の接着性を向上させるために、チタン、クロム又は他の金属の薄膜を用いてもよい。導体パターンの一部(例えば、IDTのバスバー及びIDT間の相互接続部)の上に、金、アルミニウム、銅又は他の高導電性金属の導電性向上層を形成してもよい。
【0062】
導体パターンは、1350において、圧電板の外面上に導体層及び任意に1つ以上の他の金属層を順に堆積させることによって形成されてもよい。その後、パターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより、過剰な金属を除去してもよい。導体層は、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、湿式化学エッチング、及び他のエッチング技術によってエッチングすることができる。
【0063】
あるいは、導体パターンは、リフトオフプロセスを使用して1350で形成されてもよい。フォトレジストを圧電板の上に堆積させ、導体パターンを画定するようにパターニングしてもよい。導体層と、任意に1つ以上の他の層とを、圧電板の外面上に順に堆積してもよい。その後、フォトレジストを除去して、余分な材料を除去し、導体パターンを残してもよい。
【0064】
1360では、圧電板の表面側に1つ以上の誘電体材料の層を堆積させることによって、1つ以上の任意の表面側誘電体層を形成してもよい。この1つ以上の誘電体層は、スパッタリング、蒸発、又は化学気相成長等の従来の堆積技術を使用して堆積されてもよい。この1つ以上の誘電体層は、導体パターンの上を含む、圧電板の外面全体に堆積されてもよい。あるいは、1回以上の(フォトマスクを用いた)リソグラフィプロセスを用いて、誘電体層の堆積を、IDTのインターリーブされたフィンガーの間のみ等、圧電板の選択された領域に限定してもよい。また、マスクを使用して、圧電板の異なる部分に異なる厚さの誘電体材料を堆積することを可能にしてもよい。例えば、第1の厚さt1を有する第1の誘電体層を1つ以上のシャント共振子のIDT上に堆積させてもよい。第2の厚さt2を有する第2の誘電体層(t2はゼロ以上でt1よりも小さい)が、直列共振子のIDT上に堆積されてもよい。
【0065】
導体パターン及び任意の表面側誘電体層が1350及び1360で形成された後、フィルタデバイスは1370で完成してもよい。1370で発生する可能性のあるアクションとしては、IDT導体パターン以外の導体を形成するために追加の金属層を堆積及びパターニングすること、デバイスの全部又は一部を覆うSiO又はSi等の封止/パッシベーション層を堆積すること、デバイスと外部回路との間の接続を行うためのボンディングパッド又ははんだバンプ又は他の手段を形成すること、複数のデバイスを含むウェハから個々のデバイスを切り出すこと、他のパッケージング工程、及び試験が挙げられる。1370で発生する可能性のある別のアクションは、金属又は誘電体材料をデバイスの表面側に追加又はデバイスの表面側から除去することによって、デバイス内の共振子の共振周波数を調整することである。フィルタ装置が完成した後、プロセスは1395で終了する。
【0066】
プロセス1300の変形例は、1302において、異なる材料の犠牲基板上の薄い圧電板の代わりに、単結晶圧電ウェハを用いて開始する。イオンが、圧電ウェハの外面から内部の制御された深さに注入される(図13には示されていない)。ウェハの外面からイオン注入の深さまでの部分が薄い圧電板であり(又はそうなり)、ウェハの残りの部分が犠牲基板である。前述したように1320で音響ブラッグ反射器を形成し、1330で、音響ブラッグ反射器が圧電ウェハ1302のイオン注入した外面とデバイス基板1304の間に配置されるように圧電ウェハとデバイス基板を接合する。1340で、圧電ウェハは、イオンが注入された面で(例えば、熱衝撃を用いて)分割され、圧電材料の薄板が露出して音響ブラッグ反射器に接合された状態になってもよい。薄い板状の圧電材料の厚さは、注入されたイオンのエネルギー(従って、深さ)によって決まる。イオン注入とそれに続く薄板の分離のプロセスは、一般に「イオンスライシング」と呼ばれる。
【0067】
締めくくりのコメント
本明細書全体を通して、示された実施形態及び例は、開示又は請求された装置及び手順に対する制限ではなく、例示とみなされるべきである。本明細書に提示された例の多くは、方法行為又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせてもよいということを理解すべきである。フロー図に関しては、追加の工程や少ない工程を行ってもよく、また、示された工程を組み合わせたり、さらに改良したりして、本明細書に記載された方法を実現してもよい。1つの実施形態に関連してのみ論じられた行為、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から排除されることを意図していない。
【0068】
本明細書で使用する場合、「複数」は2つ以上を意味する。本明細書で使用する場合、項目の「セット」は、そのような項目のうちの1つ以上を含むことができる。本明細書で使用する場合、書面による説明又は特許請求の範囲のいずれにおいても、「comprising(…を含む)」、「including(…を含む、備える)」、「carrying(…を保有する)」、「having(…を有する)」、「containing(…を含有する)」、「involving(…を含む、伴う)」等の用語は、オープンエンド型式であると理解されるべきであり、すなわち、「…を含むがこれらに限定されないこと」を意味する。請求項に関しては、「consisting of(…からなる)」及び「consisting essentially of(…から実質的になる)」という移行句のみが、それぞれ、閉じた移行句又はほぼ閉じた移行句である。請求項の中で、請求項要素を修飾するために「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞を使用することは、それ自体、ある請求項要素の別の請求項要素に対する優先性、先行性、若しくは順位、又は方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではなく、ある名称を有するある1つの請求項要素を、(序数詞の使用を除いて)同じ名称を有する別の請求項要素と区別して、それらの請求項要素を区別するためのラベルとして使用されるに過ぎない。本明細書で使用される「及び/又は」は、列挙された項目が選択肢であることを意味するが、選択肢には列挙された項目の任意の組み合わせも含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタデバイスであって、
外面を有する基板と、
平行な表面及び裏面を有する単結晶圧電板と、
前記基板の前記外面と前記単結晶圧電板の前記裏面との間に挟まれている音響ブラッグ反射器と、
前記単結晶圧電板の前記表面に形成されている導体パターンであって、シャント共振子及び直列共振子を含むそれぞれの複数の共振子の複数の櫛型電極(IDT)を含む導体パターンと、
前記シャント共振子の前記IDTの上に堆積された第1の厚さを有する第1の誘電体層と、
前記直列共振子の前記IDTの上に堆積された第2の厚さを有する第2の誘電体層と
を含み、
前記複数のIDTのすべてが、前記IDTに印加されたそれぞれの高周波信号に応答して前記単結晶圧電板にそれぞれの一次音響モードを励起するように構成されており、
すべての前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記表面及び裏面に実質的に直交しており、
前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きいフィルタデバイス。
【請求項2】
前記単結晶圧電板のz軸が前記表面及び裏面の法線方向である請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項3】
前記複数のIDTのすべてが、各IDTのフィンガーが前記単結晶圧電板のx軸に平行であるように配向される請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項4】
前記圧電板がニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうちの1つである請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項5】
前記音響ブラッグ反射器が、すべての前記複数の共振子の共振周波数及び反共振周波数を含む周波数範囲にわたってせん断弾性波を反射するように構成されている請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項6】
前記音響ブラッグ反射器が、
高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層とを交互に繰り返す複数の誘電体層
を含み、
前記高音響インピーダンス層が窒化ケイ素及び窒化アルミニウムのうちの1つであり、
前記低音響インピーダンス層がオキシ炭化ケイ素である請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項7】
前記複数の層が少なくとも4層かつ7層以下を含む請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項8】
前記圧電板の前記表面及び裏面の間の厚さが200nm以上1000nm以下である請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項9】
前記複数のIDTのすべてが、前記圧電板の厚さの2倍以上かつ前記圧電板の厚さの25倍以下であるそれぞれのピッチを有する請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項10】
前記第2の厚さが0以上であり、
前記第1の厚さが300nm以下である請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項11】
前記複数の共振子が2以上のシャント共振子を含み、
前記第1の誘電体層が、前記2以上のシャント共振子の上に堆積されている請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項12】
前記複数の共振子が2以上の直列共振子を含み、
前記第2の誘電体層が、前記2以上の直列共振子の上に堆積されている請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項13】
前記シャント共振子の共振周波数が、少なくとも部分的に、前記第1の厚さによって設定され、
前記直列共振子の共振周波数が、少なくとも部分的に、前記第2の厚さによって設定される請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項14】
前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差が、前記直列共振子の共振周波数よりも少なくとも100MHz低い前記シャント共振子の共振周波数を設定するのに十分である請求項13に記載のフィルタデバイス。
【請求項15】
前記第1及び第2の誘電体層がSiO2であり、
前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差が25nm以上である請求項に記載のフィルタデバイス。
【請求項16】
フィルタデバイスの製造方法であって、
デバイス基板の一方又は両方の外面及び犠牲基板に取り付けられた第2面を有する単結晶圧電板の第1面に複数の材料層を堆積することにより、音響ブラッグ反射器を形成する工程と、
前記音響ブラッグ反射器の前記複数の層が前記単結晶圧電板の前記第1面と前記デバイス基板との間に挟まれるように、前記犠牲基板に取り付けられた前記単結晶圧電板を前記デバイス基板に接合する工程と、
前記犠牲基板を除去して、前記単結晶圧電板の前記第2面を露出させる工程と、
前記単結晶圧電板の前記第2面に導体パターンを形成する工程であって、前記導体パターンは、シャント共振子及び直列共振子を含むそれぞれの複数の共振子の複数の櫛型電極(IDT)を含む工程と、
第1の厚さを有する第1の誘電体層を前記シャント共振子の前記IDTの上に堆積する工程と、
第2の厚さを有する第2の誘電体層を前記直列共振子の前記IDTの上に堆積する工程と
を含み、
前記複数のIDTのすべてが、前記IDTに印加されたそれぞれの高周波信号に応答して前記単結晶圧電板にそれぞれの一次音響モードを励起するように構成されており、
すべての前記一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、前記単結晶圧電板の前記第1面及び第2面に実質的に直交しており、
前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい方法。
【国際調査報告】