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特表2022-506519ファイバベースのスーパーコンティニウム光源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ファイバベースのスーパーコンティニウム光源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/365 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G02F1/365
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523921
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019059072
(87)【国際公開番号】W WO2020092712
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/754,095
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ヴェスタゴー,フィリップ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,ジェフリー,ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA10
2K102AA15
2K102BA20
2K102BB02
2K102BC02
2K102CA24
2K102DA06
2K102DC07
2K102DD07
2K102EB20
(57)【要約】
全ファイバスーパーコンティニウム(SC)光源は、分散値と長さが異なる2つ以上の高非線形光ファイバ(HNLF)の連結された部分の形の高非線形光媒体と短時間光パルスのシードパルス供給の組合せを利用する。HNLFの2以上のセクションは、正の分散値を示す少なくとも1つのセクションと、負の分散値を示す1つのセクションとを含むように構成される。自己位相変調(SPM)、相互位相変調(XPM)、ラマン増幅などの非線形効果は、シードパルスがHNLFの各セクションを伝搬するにつれて、シードパルスを広くする。ここで、分散値間の差及び各ファイバセクションの長さは、安定した強度及び高いコヒーレンスレベルを示す、広くて滑らかなSC出力を生成するように特に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短時間の入力シードパルス光源と、
前記入力シードパルスを受け、高強度圧縮出力シードパルスを供給するように配置された単一モードファイバのセクションと、
前記高強度圧縮出力シードパルスを受けるために単一モードファイバの前記セクションに結合された高非線形光学媒体であって、前記非線形光学媒体は少なくとも正分散高非線形光学ファイバ(P-HNLF)の第1セクションと負分散高非線形光学ファイバ(N-HNLF)の第2セクションとを含む高非線形光学ファイバの複数の連結セクションを含み、前記高非線形光学ファイバの前記複数の連結セクションの分散値及び長さが、伝搬する高強度圧縮出力シードパルスを、定義されたスペクトル帯域幅の光スーパーコンティニウム出力に変換するように選択される、高非線形光学媒体と、
を備える全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項2】
短持続時間のパワー制限された前記入力シードパルス光源が、1ps未満のパルス持続時間を有するシードパルスを生成する、請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項3】
前記光スーパーコンティニウム出力が、少なくとも300nmのスペクトルを示し、前記帯域幅にわたって20dB以下のパワー変動を有する、請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項4】
短持続時間のパワー制限された前記入力シードパルス光源が、前記光スーパーコンティニウム出力のスペクトル帯域幅を最適化するために使用される調整可能なパワーレベルを提供する、請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項5】
短持続時間のパワー制限された前記入力シードパルス光源が、
サブピコ秒シードパルスを発生するためのモード同期ファイバレーザと、
前記モード同期ファイバレーザの出力に結合され、サブピコ秒シードパルスのための最適で制限された出力を提供するドープファイバ光増幅器と、
を含む請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項6】
前記ドープファイバ光増幅器が、
長さLの希土類ドープ利得ファイバのセクションと、
選択された波長でポンプビームを提供し、定義されたパワーレベルを示す光源と、
前記希土類ドープ光ファイバのセクションの入力に配置され、サブピコ秒シードパルス及びポンプビームが波長分割マルチプレクサへの入力として印加され、希土類ドープ利得ファイバのセクションへの入力として一緒に組み合わされて印加される波長分割マルチプレクサと、
を含む請求項5に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項7】
前記利得ファイバがエルビウムでドープされ、ポンプビームが約980nmの波長で動作する、請求項6に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項8】
前記ポンプビームのパワーが、約150mW~約300mWの範囲にわたって調整可能である、請求項7に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項9】
前記高非線形光学媒体が、
約+6ps/nm-kmの分散及び10cm以下の長さを有し、
P-HNLFの第1のセクションへの入力として提供される制御電力サブピコ秒シードパルスである、P-HNLFの少なくとも1つのセクションと、
P-HNLFの最初のセクションの出力に結合され、約-7ps/nm-kmの分散及び20cm以上の長さを有する、N-HNLFの少なくとも1つのセクションと、
を有する、請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項10】
前記P-HNLFの少なくとも1つのセクションがP-HNLFの単一のセクションを含み、
前記N-HNLFの少なくとも1つのセクションがN-HNLFの単一のセクションを含む、請求項9に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項11】
前記光源がさらに、
前記高非線形光学媒体の出力に結合された高分散ファイバ素子であって、通過する各超連続光源パルスの時間伸縮を与えるのに十分な分散と長さを有する高分散ファイバ素子を有する、請求項1に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【請求項12】
前記高分散ファイバ素子が、高性能指数(FOM)光ファイバのセクションを含む、請求項11に記載の全ファイバスーパーコンティニウム光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、本出願は、2018年11月1日に出願された米国仮出願第62/754,095号の利益を主張する。この米国仮特許出願は、引用することによってその全内容が本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、安定でコヒーレントであり、かつ生成されたコンティニウム全体にわたってパワースペクトル密度が最小の変動を示す出力コンティニウムを提供するために、シードパルス光源を高非線形ファイバ(HNLF:highly-nonlinear fiber)の複数のセクションと組み合わせた、全ファイバ配置に基づくスーパーコンティニウム光源に関する。
【背景技術】
【0003】
スーパーコンティニウム光源は、典型的には、十分な強度のパルスシードレーザ光源を利用し、この光源からの出力パルスは、高非線形光学媒体(通常は高非線形光ファイバHNLF)を通過する。今日のHNLFの多くは、比較的強い非線形効果を示すことが知られている微細構造光ファイバの形態をとる。しかし、これらの特殊なファイバは複雑で比較的高価であり、その結果、標準的な製造工程(例えば、これらの微細構造ファイバを標準的な単一モードまたは多モード光ファイバに融合する単純な必要性を含む)に適していない。
【0004】
現在のスーパーコンティニウム開発の目標の多くは、コンティニウムの生成スペクトル帯域幅を拡張する試みを続ける一方で、生成出力パワーを増加させる側面を強調している。しかし、パワー増強の非線形効果は、生成されたスーパーコンティニウムが構造レベルの増加の結果として出力パワーの変動を示す原因となる。また、出力は、時間的に不安定、すなわち、時間の経過に伴う所定の波長に対するパワーの変動になる。加えて、パワー増幅されたスーパーコンティニュウムのコヒーレンスは、パワーが高すぎ、または強度が不安定な入力を使用したときに劣化し始める可能性がある。
【0005】
自由空間システムは、比較的小さな光閉じ込め領域(ファイバベースのシステムなど)を有する光学システムに比べて、強度ベースの変動に対する感度が低いことが知られているが、それらは、比較的大きなサイズであり、時間のかかる設置及び位置合わせの問題を有し、自由空間システムはほとんどの用途に対して実用的ではない。
【0006】
比較的滑らかで安定したスーパーコンティニウム出力の生成を保証する能力がなければ、より広い帯域幅および/またはより高い出力電力を提供する能力は、所与のアプリケーションの要件を満たさない可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
従来技術に残っている必要性は、本発明によって解決される。本発明は、安定したコヒーレントな出力連続体を提供するための、ファイバベースのシードパルス光源と、それに続く高非線形ファイバ(HNLF)の複数のセクションとの全ファイバ配置に基づくスーパーコンティニウム光源であって、生成されたコンティニウム全体で最小の変動を示すものに関する。
【0008】
本発明の原理によれば、例示的な全ファイバスーパーコンティニウム(SC)光源は、分散値及び長さの異なる高非線形光ファイバ(HNLF)の2つ以上の連結されたセクションの形態の高非線形光学媒体と、高度の位相安定性を示す短時間(例えば1psより小さい)パルスのシードパルス供給器の組み合わせを含む。HNLFの2以上のセクションは、正の分散値を示す少なくとも1つのセクションと、負の分散値を示す1つのセクションとを含むように構成される。自己位相変調(SPM)、相互位相変調(XPM)、ラマン増幅などの非線形効果は、シードパルスがHNLFの各セクションを伝搬するにつれて、シードパルスを広くする。ここで、分散値間の差及び各ファイバセクションの長さは、安定した強度及び高いコヒーレンスレベルを示す、広くて滑らかなSC出力を生成するように特に構成される。
【0009】
多くの従来技術の構成とは対照的に、シードパルスの平均出力パワーは、比較的低いレベル(例えば、約20~40mW)に維持され、例えば、1~2nJのエネルギーを有するシードパルスを4.7MHzの繰り返し率で提供し、そのスペクトル範囲に構造及びノイズを導入することなくスーパーコンティニウムの生成を可能にするのに十分である。
【0010】
選択されたシードパルス光源が、連続体生成に必要な方法でHNLFファイバセクション内で相互作用するのに十分なエネルギーを有する出力パルスを提供することができない場合、本発明のSC光源は、高非線形光学媒体への入力に配置され、生成されたシードパルスのパワーレベルがHNLFファイバセクション内の非線形性に応答するのに十分であり、十分なスペクトル幅ΔνのSC出力を生成するのに利用されるファイバベースの光増幅器を含むように形成され得る。エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)は、例えば、シードパルス供給器の出力と高非線形光学媒体への入力との間に配置され、関連するポンプ源の利得ファイバおよびパワーのパラメータを用いて、HNLFファイバセクションへの入力として印加されるシードパルスが最適電力レベルにあることを確実にすることができる。
【0011】
本発明の1つの例示的な構成は、シードパルス電力のチューニングを利用して、SC光出力の特性を最適化する。すなわち、許容可能なレベルのノイズを維持しながら、十分に広いスペクトルを生成することに関連する最適なパルスパワーを決定する。ドープされたファイバ増幅器を含む構成において有用な調整方法は、スペクトルに追加のノイズを導入することなく、出力スペクトルが可能な限り広くなるまでポンプパワーを調整することである。
【0012】
本発明の様々な実施形態において、正分散HNLFのセクションは、負分散HNLFのセクションよりも短い(2桁ほど異なり得る)。さらに、パルスが最初に正の分散HNLFのセクションを通過し、次に負の分散HNLFのセクションを通過するとき、最適なスペクトル完全性(安定性、一貫性、統一に関して)が得られることが分かった。その他の実施形態は、正分散HNLF(以下P-HNLFという)の2つ以上のセクションおよび負分散HNLF(N-HNLF)の2つ以上のセクションを使用してもよい。複数のセクションを使用する1つの構成は、生成されたスーパーコンティニウムの全体的な形状を最適に制御するために、セクションを(P-、N-)分散(適切な長さの)の対に配置することができる。
【0013】
本発明の原理の他の態様は、高非線形光学媒体からの出力で「時間伸縮」を行い、ソース出力として各「連続パルス」内に時間分離波長成分を生成する能力を組み込む。既知の分散フーリエ変換技術は、本発明の原理に従って連続体を時間伸縮する能力が、使用され得るより多くの別個の波長成分を提供するものとして企図される、種々の光学的感知用途において時間伸縮パルスを利用する。
【0014】
本発明の1つの例示的な実施形態は、持続時間が短く、電力制限された入力シードパルスのソースと、入力シードパルスを受信し、出力高強度、圧縮出力シードパルスを提供するように配置された単一モードファイバのセクションと、高強度、圧縮出力シードパルスを受信するために単一モードファイバのセクションに結合された高非線形光学媒体とを含む全ファイバ光スーパーコンティニウム光源の形態をとる。高非線形光学媒体それ自体は、少なくとも正分散高非線形光ファイバ(P-HNLF)の第1のセクションと、負分散高非線形光学ファイバ(N-HNLF)の第2のセクションとを含む、高非線形光学ファイバの複数の連接部分を含み、高非線形光ファイバの複数の連接部分の分散値及び長さは、伝搬する高強度の圧縮された出力シードパルスを、規定されたスペクトル帯域幅の光学的スーパーコンティニウム出力に変換するように選択される。
【0015】
本発明の別の実施形態は、特殊な高分散性要素を高非線形光学媒体の出力に加えることによって、生成されたスーパーコンティニウムの時間伸縮をさらに提供する。
【0016】
その他及び本発明のさらなる実施形態及び態様は、以下の説明において、添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の原理に従って形成されたスーパーコンティニウム(SC)光源のハイレベルブロック図である。
図2】高非線形光ファイバ(HNLF)のセクションを通過する前に、制御された量の利得を光パルスに提供するドープされたファイバ増幅器を含む本発明の例示的な実施形態を示す。
図3】本発明の原理に従って、図2に示される実施形態に基づいて形成される例示的なSC光スペクトルを示す。
図4】光パルスパワーが最適化されたSC出力を提供するように調整可能な本発明の他の実施形態を示す。
図5】正分散HNLFと負分散HNLFの両方の複数のセクションを用いた本発明の他の実施形態を示す。
図6】HNLFのセクションによって形成されるSC出力の「時間伸縮」をさらに提供する本発明の例示的な実施形態を示す。
図7図6の構成から出力されるパワースペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の原理に従って形成された典型的なスーパーコンティニウム(SC)光源10のハイレベルブロック図を含む。SC光源10は、光シードパルス供給器12を備えるものとして示されており、これは、持続時間が比較的短く(すなわち、パルス持続時間<1ps)、後述するように制御された制限パワーレベルを示す光パルスを提供する。例示的な実施形態では、供給器12は、約4.7MHzのパルス繰返し率を有するパルス列出力を提供する。供給器12からのパルス列出力Pは、少なくとも正(異常)分散高非線形ファイバ(P-HNLF)16のセクションと負(正常)分散HNLF(N-HNLF)18のセクションとを含む高非線形光学媒体14への入力として提供される。単一モード光ファイバ20の一部は、SC光源10に含まれ、供給器12の出力と高非線形光学媒体14への入力との間に配置される。光ファイバ20は、媒体14を通過する前に個々のシードパルスを圧縮するために利用され、媒体14に入るときに各パルスに存在する強度を増加させる。従って、高非線形光学媒体14からの出力は、光源10のSC光出力と定義される。
【0019】
生成されたSC光出力の安定性は、入力シードパルスの安定性に影響されるので、本発明の供給器12は、高いコヒーレンス及び高いレベルの位相安定性(不要なノイズを導入しないように比較的「低い」(すなわち、限定的な)パルスエネルギーを維持する)を示すように選択される。米国特許出願第16/200,810号に記載され、この出願の譲受人に譲渡されたようなモードロックされた8字型のレーザは、高いレベルの位相安定性(すなわち、低レベルのパルス間タイミングジッタ)を有するパルスを提供するのに適した低雑音コヒーレントレーザ源の一例であると考えられる。このモードロックされた8字型のレーザは、1つの例示的な好適な構成であるが、他の光源(その他のファイバ光源を含む)は、必要なレベルのコヒーレンスおよび安定性を提供するように構成されてもよい。
【0020】
本発明の原理によれば、好ましい実施形態は、負分散HNLFの部分よりも有意に短い正分散HNLFの部分を利用する。図1に示される構成は、N-HNLF16の比較的長い部分と組み合わされたP-HNLF18の比較的短い部分を含む高非線形光学媒体14を利用する。HNLFの部分に起因する分散値は、伝播するシードパルス(例えば、1550nmは、これらのシステムで使用される一般的な波長である)の波長に関連する分散であることが理解されるべきである。
【0021】
以下に説明するように、シードパルス内に存在するエネルギー量を制限することによって、先行技術の「高出力」スーパーコンティニウム光源に関連したノイズ及び不安定性のレベルが低減されることが分かっている。上述したように、シードパルスは、HNLFファイバセクションの非線形特性の影響を受けるのに十分なエネルギーを示す必要があるので、本発明の教示によれば、従来技術の高出力源に関連するノイズ及び構造の問題を示すことなく、十分なスペクトル幅のSC出力を生成することができる「最適な」シードパルスのエネルギーレベルを見出す必要がある。
【0022】
ほとんどのシードパルスレーザ光源(前述のモードロックされた8の字型のファイバレーザなど)は、繰り返し率4.7MHzで約60pJのパルスエネルギーに対応する数百μWのオーダーの平均出力パワーを示すと考えられる。しかしながら、十分に広いSC出力を生成することに関連する「最適な」シードパルスは、典型的には、約102nJのオーダーのエネルギーを必要とする。したがって、本発明の全ファイバSC光源の好ましい実施形態は、高非線形光学媒体14に導入されるシードパルスのための所望のエネルギーレベルを得るために、シードパルスレーザ源と共に光増幅器の使用を必要とすることがある。図2は、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)30を安定なレーザパルス供給器40と組み合わせて利用して、本発明の目的に適した最適な制限されたパワーレベルを示すシードパルスを生成するSC光源10Aの例示的な実施形態を示す。
【0023】
安定なレーザパルス供給器40は、1ps(例えば、約270フェムト秒程度のパルス持続時間)未満のパルス持続時間を有する「シード」パルスを提供するために、モードロックされたファイバレーザ(例えば8の字型のファイバレーザ)を含むことができる。パルスは、4.7MHz(約60pJの光パルスエネルギー)の繰り返し率で300μWの平均パワーを示し得る。例示的な実施形態では、これは、270フェムト秒のパルス持続時間に対して約230Wのピークパルス電力を提供する。
【0024】
EDFA30は、選択された長さLErのエルビウムドープファイバ32(以下「利得ファイバ」という)のセクションを含むものとして図2に示される。ポンプ源34は、EDFA30の構成要素として含まれ、適切な波長(典型的には約980nm)及びパワーレベル(例えば、約150~300mWの範囲)でポンプビームを提供する。ポンプビームとシードパルス列Pは、波長分割マルチプレクサ36内で結合され、利得ファイバ32内に結合される。したがって、EDFA30からの出力は、幾分高いエネルギーレベルのシードパルス、すなわち、スペクトルに過度に高いレベルの背景ノイズを導入することなく、適切なスペクトル幅のSCスペクトルに広がるのに十分なエネルギーを有するパルスの形をとる。この「幾分高いエネルギーレベル」は、高出力シードパルスを利用する従来技術の傾向と区別するために、本明細書では「最適」とも称される。本発明の例示的な実施形態では、利得ファイバ32は、約27dB/mのポンプビーム吸収を示すことができ、この典型的な吸収に対して、約1.5mの長さLErは、1~2nJ(これは、150fsのパルス持続時間に対して7から14kWの範囲のピークパルス電力に関連している)の範囲のパルスエネルギーを有するシードパルスを生成することが分かっている。
【0025】
EDFA30からのこれらの最適シードパルスは、単一モードファイバ20に結合されて図2に示されており、この特定の実施形態では、約0.3mの長さを有するものとして示されている。上述したように、ファイバ20は、シードパルス(これは、EDFA30を含む実施形態においてより必要であり得る)を圧縮し、従って、高非線形光学媒体14に入る前に各パルスの強度を増加させるために利用される。
【0026】
好適に広く滑らかなSC出力スペクトルを提供するために、高非線形素子14の正分散HNLF成分は、負分散HNLF成分の長さに対して比較的短い長さを有するように構成されていることに留意されたい。図2に示す特定の実施形態では、高非線形素子14は、所定の分散値(シードパルス波長で測定される)を有し、分散と長さの組み合わせが所望のSC出力スペクトルを生成するように特定の長さを有するように選択される単一のP-HNLFセクション160及び単一のN-HNLFセクション180を含む。例えば、P-HNLFセクション160は、1550nmの波長において約+6ps/(nm~km)のオーダーの分散+Dを示し得る。この分散の値に対して、P-HNLFセクション160は、約20mmの長さLPHNLFを有するように形成される。N-HNLFセクション180は、約-7ps/(nm~km)@1550nmのオーダーの分散-Dを示すことができ、この場合、約1mのオーダーの長さLNHNLFを有するように形成される。より一般的な意味では、約0.1m未満の長さを有するP-HNLFのセクション及び約0.2mより大きい長さを有するN-HNLFのセクションを使用することにより、上述したように、約1~2nJの範囲の制御されたパルスエネルギーを有する短い持続時間のシードパルスの十分なスペクトル広がりを提供することができることが分かった。
【0027】
図3は、本質的に図2に示すように構成された本発明のSC光源10Aによって生成される例示的なSC光スペクトルを示す。EDFA30およびパルス源40の特定の値は、十分に広くて滑らかな出力を提供するのに適しているが、シードパルスエネルギーレベル、EDFA利得(追加の電力を供給する必要があるかどうかにかかわらず)、及びHNLFの各セクションの分散/長さパラメータの他の組み合わせは、特定用途向けの方法で調整することができることを理解されたい。加えて、偏光モード分散(PMD)及び周囲温度の変化のような効果は、非偏光維持ファイバ(非PMファイバ)内の光の偏光状態を変化させ、SC光源10からの出力スペクトルに影響を与える。したがって、これらの要因が懸念される状況では、偏光維持ファイバから形成される構成は、第1の例でSC出力を生成するために使用される特定の(色)分散に影響を与えない一方で、偏光に基づくスペクトル変化を著しく低減する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、HNLFの部分に導入されるシードパルスの入力パワーを調整することによって、生成されたSCスペクトル(すなわち、スペクトル幅(△ν)及びパワースペクトル密度(PSD)における変動)の特性を微調整する能力に関する。正及び負の分散HNLF(及び関連するファイバー断面長)の特定の組み合わせについては、スペクトル応答の平坦性に影響を与える構造および/またはノイズを導入することなく、十分なスペクトル帯域幅を有するスーパーコンティニウムを生成する、1つ以上の最適化されたシードパルスパワーが存在する。
【0029】
要素の初期組立時に、シードパルス入力のパワーレベルを比較的低いレベルに設定し、次いで、そのパワーを増加させて、生成されたSC出力スペクトルに許容できないレベルのノイズ/構造が現れ始めるまで、生成されたSC出力のスペクトル範囲を可能な限り拡大することができる。すなわち、本発明の原理によれば、シードパルス電力を調整して、過度のノイズレベルなしに十分に広い出力の「スイートスポット」を見つけることができる。達成された場合、このパワーレベルは、特定のアセンブリに対する「最適な」シードパルスパワーとして定義され得る。
【0030】
図4は、シードパルス電力レベルを調整する能力を提供する例示的なSC光源10Bを示す。図示のように、SC光源10Bは、レーザパルス源40からの出力パワーを補うために光増幅器コンポーネント(EDFA30A)を含む。したがって、この実施形態によれば、EDFA30Aは、「調整可能な」光増幅器として形成され、ポンプ源34Aの入力電力は、最適なシードパルスパワーレベルを見つけるように調整される。特に、ポンプ源34Aは、レーザダイオード33と、レーザダイオード33に通電するための入力として使用される駆動電流源35とを含むものとして示されている。図4に示す特定の実施形態では、駆動電流源35は調整可能であり、入力電流を増加させることができ、ポンプ源34Aを出るポンプビームのパワーレベルを増加させ、その後、EDFA30Aの利得ファイバ32への入力として適用される(WDM36を経由)。例示的な実施形態では、150~300mWの範囲にわたってポンプパワーを調整するように駆動電流を調節することができる。図2に示す値を有する特定の構成において、200mWの最適なポンプパワー(Popt)は、約7~14kW(約150フェムト秒のパルス持続時間の間)の範囲のピークパルスパワーを示す1~2nJのオーダーのエネルギーをシードパルスに提供することが分かった。
【0031】
図5は、本発明の別の実施形態を示しており、この場合、図示されたSC光源10Cは、高非線形光学媒体14Cを含み、HNLFの4つのセクションのセットを含む。図5に示される特定の実施形態では、媒体14Cは、第1のP-HNLFセクション16C1(第1の定義されたD+分散値を有し、第1の(比較的短い)長さLC1から形成される)と、第2のP-HNLFセクション16C2(第2の定義されたD+分散値を有し、第2の(短い)長さLC2を有するように形成される)とからなる。P-HNLFセクション16C1、16C2の分散値及び長さ値は、同様であってもよい。図示のように、媒体14は、さらに、一対のN-HNLFセクション18C1及び18C2を備え、セクション18C1は、P-HNLFセクション16C1及び16C2の間に配置され、セクション18C2は、P-HNLF16C2を超えて配置され、これにより、SC光源10Cからの出力を提供する。ここでも、セクション18C1、18C2の比分散D値及び長さ値は、十分に広くかつ滑らかなプロファイルを示すSC出力スペクトルを生成するように調整される。
【0032】
本発明の別の実施形態は、光コヒーレンストモグラフィーなどの用途での使用に十分に適した出力を生成するために、光源10(上記の様々な実施形態のいずれか、又は場合によっては他の特定の構成)によって提供される広くて滑らかなSCスペクトルを利用する。具体的には、生成されたスーパーコンティニウムは、高度に分散した媒体を通過して、「時間伸縮」された出力を生成する。すなわち、個々の波長成分が間隔を置いてソースから出て、関連する光検出器が個々の波長成分のパワーレベルを測定できるようにする出力である。
【0033】
図6は、本発明の原理に従って形成され、光源10によって生成される所与のSC出力内の別々の波長成分の時間伸長された出力を提供する、例示的な全ファイバ時間伸長SCソース70を示す。図示のように、高非線形光学媒体14からのSC光出力は、特殊分散素子72への入力として使用される。上述のようにSC出力スペクトル内の安定性及び最小の強度変動を維持しながら、個々の波長成分間の十分な分離を有する時間伸長された出力を生成するために、特殊分散素子72は、関連するスペクトル帯域幅にわたって高い性能指数(FOM)を示すように形成される。本発明の目的のために、「高いFOM」は、分散対損失の大きな比として定義される。
【0034】
この目的に適した典型的なタイプの特殊分散素子は、米国特許出願15/970,900に記載されているような高FOMファイバ(75ps/(nm~km)以上の分散を有する)であり、この出願の譲受人に譲渡され、ここに参照により組み込まれる。この特別な分散ファイバは、波長1450nmを中心とする400nmの広いスペクトル範囲に対して75~275ps/nm/dBの範囲のFoMを有する。
【0035】
本発明のこの実施形態の原理によれば、高非線形光学媒体14への入力におけるパルス強度が、特殊分散素子72における非線形効果によって安定性に著しい変化が生じるレベル(例えば、強度変動が大きくなりすぎる)より下に維持される限り、入力超連続線源ノイズ/安定性レベルは、伸張された出力のノイズ安定性を決定する。ほとんどの用途では、特殊分散素子(ファイバのセクションの場合、これらのパラメータは平均分散Dと長さLDFだ)のパラメータは、1に近い「デューティサイクル」を提供するように最適化されるべきである。本発明の教示に従って使用されるように、用語「デューティサイクル」は、第1の波長成分から最後までの時間伸長された出力パルスにわたって「掃引」するのに必要な時間間隔と、隣接する時間伸長されたパルスの立ち上がりエッジ間の時間間隔との比(「サイクルタイム」と呼ばれる)を意味する。本件の完全な議論は、本出願の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の出願第[ウェスターガード3]号に見出される。
【0036】
図2に関連して上述した光源10についての同じ動作パラメータを維持するために、約1.7kmの長さ及び75~275ps/(nm~km)の範囲の正の分散を有する特殊素子72を含むことを用いて、図7に示す時間伸長出力を生成した。特に、図7は、波長(下軸に沿って示される波長値)の関数としてのパワースペクトル(dBm/nm)のグラフである。このプロットの「時間伸縮」面は、時間軸に沿って上軸に沿って表示される。特に、時間軸は右から左に読み取られ、関連する光検出器における個々の波長成分の「到着時間」を規定する。
【0037】
本発明は、現在の好ましい実施形態に基づいて説明されてきたが、そのような開示は、これらの特定の構成に限定されると解釈されないことを理解されたい。実際、上記開示を読んだ後に、様々な代替物及び修正が当業者に明らかになることは疑いない。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神及び範囲内にあるすべての選択肢及び変更をカバーするものとして解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】