(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】テトラヒドロピラン(THP)-置換二環式-ピリミジンジオン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220107BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220107BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220107BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220107BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20220107BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20220107BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C07D471/04 118Z
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P9/00
A61P9/04
A61K45/00
A61K31/216
A61K31/41
A61K31/351
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523927
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019058297
(87)【国際公開番号】W WO2020092208
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515352869
【氏名又は名称】マイオカーディア,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】グリッロ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ケイン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】オスロブ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ファビアンヌ
【テーマコード(参考)】
4C065
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB11
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH02
4C065HH03
4C065HH04
4C065JJ02
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP07
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA381
4C084ZA382
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA07
4C086BC62
4C086CB09
4C086GA02
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA38
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA13
4C206GA36
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA36
4C206ZA38
4C206ZA42
(57)【要約】
本明細書は、肥大型心筋症(HCM)、左心室肥大化と関連がある症状、拡張期機能不全と関連がある症状および/またはその関連疾患の治療に有用な新規テトラヒドロピラン(THP)-置換二環式ピリミジンジオン化合物を提供する。化合物の合成および特徴分析、ならびにHCMおよびその他の心疾患形態を治療するための方法が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項2】
式:
【化2】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項3】
R
2aがフルオロであり、R
2bがHであるか、またはR
2aがHであり、R
2bがフルオロである、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項4】
R
2aがフルオロであり、nが1である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項5】
R
2aがフルオロであり、nが2である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項6】
R
2bがフルオロであり、nが1である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項7】
R
2bがフルオロであり、nが2である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項8】
nが1である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項9】
式:
【化3】
[式中、
下付き文字nは、1であり;
R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項10】
nが1であって、式:
【化4】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項11】
nが2であり、1つのR
1がフルオロであり、もう一方のR
1は、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-
4アルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から選択され得る、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項12】
nが2であり、式:
【化5】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項13】
式:
【化6】
(式中、R
1が、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から選択され得る)
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項14】
R
1が、ヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシメチル)である、請求項1~13いずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
化合物が、
【化7】
からなる群から選択される、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項16】
式:
【化8】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項17】
式:
【化9】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項18】
式:
【化10】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項19】
式:
【化11】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項20】
式:
【化12】
である、請求項1または2記載の化合物あるいはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩、および所望により医薬的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項22】
化合物が、式Ia:
【化13】
である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
化合物が、式Ib:
【化14】
である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項24】
化合物が、式Ic:
【化15】
である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項25】
化合物が、式Id:
【化16】
である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項26】
化合物が、
【化17】
からなる群から選択される、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項27】
有効量の請求項1~20いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)またはHCMの病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法。
【請求項28】
有効量の請求項1~20いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、駆出率が保持された心不全、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療方法。
【請求項29】
有効量の請求項1~20いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を、治療を必要とする対象に、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療方法(例えば、弁の修復/置換、効果的な降圧療法)と組み合わせて投与することを特徴とする、容積または圧力過負荷による左心室肥大を特徴とする疾患または障害の治療方法であって、該疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される、治療方法。
【請求項30】
肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて、有効量の請求項1~20いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を投与することを特徴とする、治療方法。
【請求項31】
少なくとも1つの下記:
a.角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される2以上のピークを有する粉末X線回折パターン;
b.約226.05℃、約302.47℃および約310.13℃での吸熱を示すDSCサーモグラム;または
c.
図4と実質的に同じX線結晶構造、
を特徴とする、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体。
【請求項32】
角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される3つ以上のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項31記載の多形体。
【請求項33】
角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される4つ以上のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項31記載の多形体。
【請求項34】
角度2θ±0.2°で表される11.3、12.4および13.3°の各ピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項31記載の多形体。
【請求項35】
角度2θ±0.2°で表される11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4および29.5°の各ピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項43の多形体。
【請求項36】
約221.51℃、約299.53℃および約308.81℃での溶解開始を特徴とする、請求項31記載の多形体。
【請求項37】
多形体が、
図1Aと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有する、請求項31記載の多形体。
【請求項38】
形態1の多形体が、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの別の形態を実質的に含まない、請求項31~37いずれか一項記載の多形体。
【請求項39】
請求項31~38いずれか一項記載の多形体および医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項40】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、80:20に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比がが、90:10に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項42】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、95:5に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項43】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、97:3に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項44】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、98:2に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項45】
形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、99:1に等しいか、またはそれ以上である、請求項39記載の組成物。
【請求項46】
有効量の請求項31~38いずれか一項記載の多形体または請求項39~45いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)またはHCMの病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法。
【請求項47】
有効量の請求項31~38いずれか一項記載の多形体または請求項39~45いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療方法(例えば、弁の修復/置換、効果的な降圧療法)と組み合わせて、容積または圧力過負荷による左心室肥大を特徴とする疾患または障害を治療するための方法であって、該疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される、治療方法。
【請求項48】
有効量の請求項31~38いずれか一項記載の多形体または請求項39~45いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法。
【請求項49】
有効量の請求項1~20いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩、請求項21~26いずれか一項記載の医薬組成物、請求項31~38いずれか一項記載の多形体あるいは請求項39~45いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、心疾患または障害の治療方法であって、該心疾患または障害が、拡張期機能不全、肥大型心筋症、nHCM、oHCM、心不全、HFpEF、HFmREF、弁膜症、大動脈狭窄症、左心室肥大化、拘束型心筋症、炎症性心筋症、ロフラー心内膜炎、心内膜線維症、浸潤性心筋症、ヘモクロマトーシス、ファブリー病、グリコーゲン貯蔵病、先天性心疾患、ファロー四徴症、左心室肥大、狭心症、難治性狭心症およびシャーガス病からなる群から選択される、治療方法。
【請求項50】
心疾患または障害が、nHCM、oHCM、HFpEF、HFmREF、大動脈狭窄症、ロフラー心内膜炎、心内膜線維症、浸潤性心筋症、ヘモクロマトーシス、ファブリー病、グリコーゲン貯蔵病、ファロー四徴症、狭心症、難治性狭心症およびシャーガス病からなる群から選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
化合物またはその医薬的に許容し得る塩、多形体あるいは医薬組成物が、単剤治療として投与される、請求項49~50いずれか一項記載の方法。
【請求項52】
化合物またはその医薬的に許容し得る塩、多形体あるいは医薬組成物が、併用治療として投与され、ここで追加の治療薬が投与される、請求項49~50いずれか一項記載の方法。
【請求項53】
追加の治療薬が、βアドレナリン遮断薬(β遮断薬)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などのアンジオテンシン受容体拮抗薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)(例えば、アルドステロン阻害薬;例えば、エプレレノン、スピロノラクトンまたはカンレノンなどのカリウム排除利尿薬)、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、正向性強心薬(例えば、ジゴキシン、ピモベンダン、βアドレナリン受容体アゴニスト;例えば、ドブタミン、ミルリノンなどのホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤またはレボシメンダンなどのカルシウム増感剤)、カリウム、マグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張薬(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓剤、抗血小板剤、ナトリウム-グルコースコトランスポーター2阻害剤(SGLT2)(例えば、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、ソタグリフロジン)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が、A-81988、A-81282、BIBR-363、BIBS39、BIBS-222、BMS-180560、BMS-184698、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、CGP-38560A、CGP-48369、CGP-49870、CGP-63170、CI-996、CV-11194、DA-2079、DE-3489、DMP-811、DuP-167、DuP-532、E-4177、エリサルタン、EMD-66397、EMD-73495、エプロサルタン、EXP-063、EXP-929、EXP-3174、EXP-6155、EXP-6803、EXP-7711、EXP-9270、FK-739、GA-0056、HN-65021、HR-720、ICI-D6888、ICI-D7155、ICI-D8731、イルベサルタン、イソテオリン、KRI-1177、KT3-671、KW-3433、ロサルタン、LR-B/057、L-158809、L-158978、L-159282、L-159874、L-161177、L-162154、L-163017、L-159689、L-162234、L-162441、L-163007、LR-B/081、LR B087、LY-285434、LY-302289、LY-315995、LY-235656、LY-301875、ME-3221、オルメサルタン、PD-150304、PD-123177、PD-123319、RG-13647、RWJ-38970、RWJ-46458、酢酸サララシン、S-8307、S-8308、SC-52458、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、SL-91.0102、タソサルタン、テルミサルタン、UP-269-6、U-96849、U-97018、UP-275-22、WAY-126227、WK-1492.2K、YM-31472、WK-1360、X-6803、バルサルタン、XH-148、XR-510、YM-358、ZD-6888、ZD-7155、ZD-8731およびゾラサルタンからなる群から選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
ARNIが、サクビトリル、バルサルタンまたはサクビトリルおよびバルサルタン(サクビトリル/バルサルタン)の組み合わせからなる群から選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
SGLT2が、エンパグリフロジン、ダパグリフロジンおよびソタグリフロジンからなる群から選択される、請求項53記載の方法。
【請求項57】
追加の治療薬が、対象における心血管症状を改善する、請求項52記載の方法。
【請求項58】
追加の治療薬が、β遮断薬、利尿剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、ARNI、RAAS阻害剤、不整脈治療薬およびSGLT2阻害剤からなる群から選択される、請求項52、53および57いずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「テトラヒドロピラン(THP)-置換二環式-ピリミジンジオン化合物」の名称で2018年10月29日に出願した米国仮特許出願第62/752,278号についての優先権の利益を主張するものであり、その全体の内容が参照によって本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
遺伝的(遺伝性の)肥大型心筋症(HCM)は、高浸透度の一遺伝子性常染色体優性の心筋症の一群を含む。HCMは、心筋の機能単位であるサルコメアを構成する構造タンパク質遺伝子の内のいずれか1つにおける1,000以上の既知の点突然変異の1つまたはそれ以上によって発症する。一般人口の約500人に1人の割合で、既知の別の病因(例えば、高血圧症または弁膜症)では説明できない左室肥大が認められ、これらの多くは、他の遺伝的原因(例えば、リソソーム蓄積症)および代謝性または浸潤性の原因が除外されると、HCMであることが示される。
【0003】
HCMを引き起こすサルコメア遺伝子の突然変異は、浸透度は高いが、臨床的重症度や臨床経過には大きなばらつきがある。いくつかの遺伝子型は、増悪性の経過と関連するが、同じ突然変異を持つ家族間および家族内でさえも、かなり変動する。性差も指摘されており、一般に、男性患者は女性患者よりも、深刻な影響を受ける。多くのHCM罹患患者は、長期間にわたって症状を訴える者はごく稀かであるか、または存在しないが、HCMは、病状に関する著しい累積的苦痛を伴う進行性疾患である。労作不耐性の症状が主であり、心拍数を上昇させるおよび/または前負荷(preload)を低下させる運動やその他の動作により悪化することがある。多くの他の障害と同様に、症状は年齢と共に悪化する傾向がある。HCM罹患患者にとって、最も一般的な臨床的負荷は、労作性呼吸困難であり、これにより日常生活の活動が制限され、衰弱する可能性がある。
【0004】
HCMを有する患者は、多くの場合、左心室流出路の閉塞(僧帽弁逆流の存在または非存在で)のような確認される血行力学異常が無い状態で症状を示す。患者の労作性呼吸困難の症状は、心房細動、脳卒中を含む全身性動脈血栓塞栓性疾患のリスクが増大する急性肺水腫を誘発することがあるHCMのよく見られる合併症の出現に伴い、急速に悪化しうる。HCMと関連性がある他の有害事象としては、血液量減少症または血液量増加症の不耐性および失神が挙げられる。随伴性の冠動脈疾患は、HCMではない患者よりも、急性冠症候群のより高いリスクを与える。HCMを有する患者における心突然死(SCD)は、稀であり予測することは困難であるが、若年成人における非外傷性死亡の主な原因である。SCDの生存者に対して、ICD置換は標準的技法であり、他のHCM患者におけるリスクプロファイリングははっきりしないが、一次予防のためのICD置換を慎重に扱うべき者を同定するために使用される。
【0005】
HCMに対する医学療法は、症状の治療に限定され、疾患の基本的な根本原因-正常なサルコメア機能の崩壊を解決するものではない。今日利用できる治療は、症状を軽減する際の効力は常に一定ではなく、通常、罹患期間が長くなるにつれて効果の低下が示される。患者は、それ故に、β遮断薬、非ジヒドロピリジンカルシウムチャンネル遮断薬および/またはジソピラミドを用いて経験的に対処される。これらの薬剤は、いずれもHCMを治療するために表示される適応を持っておらず、それらの使用を導入するために利用できる本質的に厳格な臨床的治験の証拠がない。この残念な状況を作っているのは、HCMに対する新たな医学療法が長年にわたって同定されていないという事実による。血行力学的に重大な流出路閉塞(安静時の勾配>30mmHg)を示す患者について、適切に選択された患者の外科的心筋切除術またはアルコール中隔切除は、通常、血行力学閉塞を緩和するために必要となる。本願が提供するものは、HCMおよび関連する心障害の改良された治療に対する長年にわたる切実な必要性を軽減する新たな治療薬および方法である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の要旨)
一態様において、式(I):
【化1】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩が提供される。
【0007】
一態様において、式(I):
【化2】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されていてもよいC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されていてもよいC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されていてもよいC
1-C
4ハロアルコキシ、所望により置換されていてもよいC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩が提供される。
【0008】
別の態様において、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体が提供される(「形態1の多形体」)。別の態様において、形態1の多形体は、以下の少なくとも1つを特徴とする:
a.角度2θ±0.2°で表され、11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される2以上のピークを有する粉末X線回折パターン;
b.約226.05℃、約302.47℃および約310.13℃で吸熱を示すDSCサーモグラム;または
c.
図4と実質的に同じX線結晶構造。
【0009】
別の態様において、本明細書は、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩、および所望により医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
ある態様において、本明細書は、治療を必要とする対象における心疾患または障害を治療する方法であって、本明細書に記載の化合物の有効量を対象に投与することを特徴とする方法を提供する。特定の態様においては、拡張機能不全は、心疾患または障害の特徴であり、および/または心疾患または障害に関連がある。例えば、心疾患または障害は、心筋症(例えば、肥大型心筋症)、心不全(例えば、駆出率が保持された心不全、駆出率が中程度の心不全)、弁膜症(例えば、弁膜性大動脈弁狭窄症)、先天性心疾患(例えば、ファロー四徴症)、左心室肥大、狭心症(例えば、難治性狭心症)またはシャーガス病であり得る。
【0011】
ある態様において、本明細書は、心疾患または障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、本明細書に記載の医薬組成物あるいは本明細書に記載の多形体を投与することを特徴とし、該心疾患または該障害が、拡張機能不全、肥大型心筋症、nHCM、oHCM、心不全、HFpEF、HFmREF、弁膜症、大動脈狭窄症、左心室肥大症、拘束型心筋症、炎症性心筋症、ロフラー心内膜炎、心内膜線維症、浸潤性心筋症、ヘモクロマトーシス、ファブリー病、グリコーゲン貯蔵病、先天性心疾患、ファロー四徴症、左心室肥大、狭心症、難治性狭心症およびシャーガス病からなる群から選択される方法を提供する。特定の態様においては、該心疾患または障害は、nHCM、oHCM、HFpEF、HFmREF、大動脈狭窄症、ロフラー心内膜炎、心内膜線維症、浸潤性心筋症、ヘモクロマトーシス、ファブリー病、グリコーゲン貯蔵病、ファロー四徴症、狭心症、難治性狭心症およびシャーガス病からなる群から選択される。
【0012】
ある態様において、本明細書は、心疾患または障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、本明細書に記載の医薬組成物あるいは本明細書に記載の多形体を投与することを特徴とし、該化合物またはその医薬的に許容される塩、多形体または医薬組成物が、単剤療法として投与される方法を提供する。
【0013】
ある態様において、本明細書は、心疾患または障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、本明細書に記載の医薬組成物または本明細書に記載の多形体を投与することを特徴とし、前記化合物またはその医薬的に許容される塩、多形体または医薬組成物が、併用療法として投与され、併用療法において追加の治療薬が投与される方法を提供する。特定の態様において、追加の治療薬は、βアドレナリン遮断薬(β遮断薬)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などのアンジオテンシン受容体拮抗薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)(例えば、アルドステロン阻害薬;例えば、エプレレノン、スピロノラクトンまたはカンレノンなどのカリウム排除利尿薬など)、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、正向性強心薬(例えば、ジゴキシン、ピモベンダン、βアドレナリン受容体アゴニスト;例えば、ドブタミン、ミルリノンなどのホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤またはレボシメンダンなどのカルシウム増感剤)、カリウム、マグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張薬(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓剤、抗血小板剤、ナトリウム-グルコースコトランスポーター2阻害剤(SGLT2)(例えば、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、ソタグリフロジン)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、追加の治療薬は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であり、これは、A-81988、A-81282、BIBR-363、BIBS39、BIBS-222、BMS-180560、BMS-184698、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、CGP-38560A、CGP-48369、CGP-49870、CGP-63170、CI-996、CV-11194、DA-2079、DE-3489、DMP-811、DuP-167、DuP-532、E-4177、エリサルタン EMD-66397、EMD-73495、エプロサルタン、EXP-063、EXP-929、EXP-3174、EXP-6155、EXP-6803、EXP-7711、EXP-9270、FK-739、GA-0056、HN-65021、HR-720、ICI-D6888、ICI-D7155、ICI-D8731、イルベサルタン、イソテオリン、KRI-1177、KT3-671、KW-3433、ロサルタン、LR-B/057、L-158809、L-158978、L-159282、L-159874、L-161177、L-162154、L-163017、L-159689、L-162234、L-162441、L-163007、LR-B/081、LR B087、LY-285434、LY-302289、LY-315995、LY-235656、LY-301875、ME-3221、オルメサルタン、PD-150304、PD-123177、PD-123319、RG-13647、RWJ-38970、RWJ-46458、酢酸サララシン、S-8307、S-8308、SC-52458、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、SL-91.0102、タソサルタン、テルミサルタン、UP-269-6、U-96849、U-97018、UP-275-22、WAY-126227、WK-1492.2K、YM-31472、WK-1360、X-6803、バルサルタン、XH-148、XR-510、YM-358、ZD-6888、ZD-7155、ZD-8731およびゾラサルタンからなる群から選択される。いくつかの態様において、追加の治療薬は、サキュビトリル、バルサルタンまたはサキュビトリルとバルサルタンの組み合わせ(サクビトリル/バルサルタン)からなる群から選択されるARNIである。いくつかの態様において、追加の治療薬は、エンパグリフロジン、ダパグリフロジンおよびソタグリフロジンからなる群から選択されるSGLT2である。いくつかの態様において、追加の治療薬は、対象の心血管状態を改善する。特定の態様において、追加の治療薬は、β遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ARNI、RAAS阻害薬、不整脈治療薬およびSGLT2阻害薬からなる群から選択される。
【0014】
別の態様において、本明細書は、拡張機能不全が存在するか、または重要な特徴である疾患または障害(例えば、これに限定するものではないが、肥大型心筋症(HCM)またはHCMの病態生理学的特徴もしくはその症状を有する心疾患)を、防止または治療する方法を提供する。本方法は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。さらに別の態様において、疾患は、閉塞性HCM、非閉塞性HCM、駆出率が保持された心不全(HFpEF)(例えば、糖尿病性HFpEFを含むが、これに限定されない)および高血圧からなる群から選択される。疾患は、急性、慢性および/または安定性であってもよい。さらに別の態様において、疾患は、クラスIHCM、クラスIInHCM、クラスIIInHCM、クラスIIoHCMおよびクラスIIIoHCMからなる群から選択される。
【0015】
別の態様において、本明細書は、駆出率が保持された心不全、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害を防止または治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本明細書は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法、例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法と組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とする、容積または圧力過負荷による左心室肥大が疾患の特徴である疾患または障害を防止または治療する方法であって、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本明細書は、肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する病態生理学的特徴もしくはその症状を有する心疾患を防止または治療する方法であって、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿薬)または後負荷を軽減する治療薬(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬などのあらゆる分類の血管拡張薬)と組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とする方法を提供する。HCMは、閉塞性HCM(oHCM)または非閉塞性HCM(nHCM)であってもよい。
【0018】
別の態様において、形態1の多形体および医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0019】
別の態様において、肥大型心筋症(HCM)またはHCMの病態生理学的特徴を有する心疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の形態1の多形体または形態1の多形体を含む医薬組成物を投与することを特徴とする方法が提供される。
【0020】
別の態様において、容積または圧力過負荷による左心室肥大を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択され、容積または圧力過剰の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療、例えば弁の修復/置換または有効な降圧療法と組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の形態1の多形体または形態1の多形体を含む医薬組成物を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0021】
別の態様において、肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患を治療する方法であって、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害剤);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、β-アドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心剤);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿薬)または後負荷を軽減する治療薬(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬などのあらゆる分類の血管拡張薬)を組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の形態1の多形体または形態1の多形体を含む医薬組成物を投与することを特徴とする方法を提供する。本発明は、式(I)の化合物の同位体で全て標識されたアナログを含むことを意図している。同位体とは、同じ原子番号を有するが、異なる質量を有する原子を含む。例えば、水素の同位体には2H(D)および3H(T)が含まれ、炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれる。同位体で標識された式(I)の化合物は、当技術分野で一般的に知られている方法に従って調製することができる。このような化合物は、生物学的/薬理学的活性を決定する際の標準物質または試薬として様々な用途があるが、これらに限定するものではない。式(I)の安定した同位体標識化合物については、生物学的、薬理学的または薬物動態学的特性を好適に調節することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1A~1Cは、実施例1~3の化合物(化合物3としても示される)の形態1の多形体についてのX線粉末回折(XRPD)データを示す。
【
図2】
図2は、実施例1~3の化合物(化合物3としても示される)の形態1の多形体についての示差走査熱量測定(DSC)プロットを示す。
【
図3】
図3は、実施例1~3の化合物(化合物3としても示される)の形態1の多形体についての熱重量分析(TGA)を示す。
【
図4】
図4は、単結晶X線回折により得られた実施例1~3の化合物(化合物3としても示される)の形態1の多形体の結晶構造を示す。
【発明の詳細な説明】
【0023】
一連のテトラヒドロピラン(THP)置換二環式ピリミジンジオン化合物は、拡張機能不全の心臓において、過収縮状態にある過剰な収縮力を抑制すること、および/または心臓の弛緩を促進することが判っている。理論にとらわれることなく、これらの化合物は、ATP加水分解後、アクチンフィラメントと強く結合してリン酸を放出する前に、β心筋ミオシンのコンフォメーションを安定化させて、その結果、筋収縮サイクルの「パワーストローク」部分に関与し得るミオシン分子の割合を低下させると考えられている。このように、本化合物は、HCM患者において、心臓の弾性を改善し、動的および/または静的な左心室流出路閉塞を軽減し、拡張期左心室弛緩を改善し、左心室拡張期(充填)圧を軽減し、機能的僧帽弁逆流を軽減し、および/または左心房および肺毛細血管楔入圧を軽減することができ、これらの疾患に随伴することが多い衰弱性の労作持呼吸困難および/または左心室流出障害に関連する症状(失神前意識障害めまいまたは失神)の解消に役立つ。本願に関する好ましい化合物は、ヒトにおいて比較的短い半減期を有するように最適に設計されている。例えば、本発明の特定の化合物は、ヒトにおいて7日未満(例えば、5日未満、4日未満)の半減期を有することが計画される。本明細書に記載されている化合物は、試験時に反応性代謝物の生成が少なく、多形性CYP酵素(例えば、CYP 2C19)への依存性が少なく、および/またはCYP誘導(例えば、CYP3A4誘導)のリスクがないかまたは少なくなるように設計されている。本願化合物の他のいくつかの利点は、骨格ミオシンに比して心筋ミオシンの阻害選択性および/または薬剤用量の投与に応じた効力の望ましい時間経過に関する点である。さらに、本願化合物は、有益な溶解性を有しており、例えば、pH7.4でのマイクロモル溶解度は、50以上、例えば70以上である。いくつかのケースでは、本願化合物は、80以上、例えば90以上のマイクロモル溶解度を有する。本願化合物は、他の心疾患の治療にも使用することができる。
【0024】
本明細書で使用されている「約」という用語は、範囲(例えば、温度、質量、重量)を説明するために使用されており、当該技術分野における通常の意味を示し、通常、測定値または読み取り値を収集するための機器に関連する誤差を指す。一般的に、温度に言及する際の「約」という用語は、±0~2℃の誤差を示す。
【0025】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和脂肪族基を意味する。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C2-3、C2-4およびC3-4などの任意の数の炭素を含むことができる。例えば、C1-4アルキルには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルが含まれるが、これらに限定するものではない。いくつかの例では、アルキル基は、所望により置換されていてもよい。いくつかの態様において、アルキル基は非置換である。いくつかの態様において、アルキル基は置換されている。アルキル基の置換基には、安定な基を形成させる本明細書に記載された置換基のいずれかが含まれるが、これらに限定するものではない。特定の態様において、置換基は、1つ以上のヒドロキシ基であってもよい。そのような場合には、アルキル基は、ヒドロキシアルキル基と呼ばれることもある。本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアルキル」は、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基(-OH)で置換されている、上記に示されるようなアルキル基を指す。従って、「ヒドロキシアルキル」は、例えば、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチルおよび2-ヒドロキシプロピルを指す。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「アルキニル」は、直鎖または分枝の脂肪族基中に1以上の三重結合を含むアルキル基を指す。1以上の炭素-炭素三重結合は、内部(例えば、2-ブチニル)または末端(例えば、1-ブチニル)であってもよい。アルキニル基の例としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。アルキニル基は、置換されていても、無置換であってもよい。
【0027】
本明細書では、「シクロアルキル」という用語は、3個~4個の環原子または所定数の原子を含む、飽和または部分不飽和の単環式の環を意味する。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピルまたはシクロブチルが挙げられる。シクロアルキル基は、環内に1つ以上の二重結合を有する部分的な不飽和であってもよい。部分的な不飽和である代表的なシクロアルキル基としては、シクロブテンが挙げられる。別段の記載が無い限り、シクロアルキル基は非置換である。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「アルコキシ」は、アルキル基を結合点と連結する酸素原子を有するアルキル基を意味する:すなわち、アルキル-O-である。アルキル部分については、アルコキシ基は、C1-2またはC1-4などの任意の適切な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。アルコキシ基は、任意に置換されていてもよい(無置換または置換)。
【0029】
本明細書で使用する場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置き換えられている、上記に示されるようなアルキル基およびアルコキシ基を指す。さらに、この用語は、アルキルおよびアルコキシの過ハロゲン化形態を指すことも可能である。したがって、「ハロアルキル」は、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチルおよびクロロメチルを指す。同様に、「ハロアルコキシ」とは、例えば、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシおよびクロロメトキシを指す。
【0031】
数値の範囲が記載されている場合、その範囲内の各値および下位範囲を包含することが意図される。例えば、「C1-6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5およびC5-6アルキルを包含することが意図される。
【0032】
本明細書に記載されている上記の基および/または化合物は、任意の数の置換基または官能基で任意に置換されていてもよいことが理解されよう。すなわち、上記の基のいずれかが所望により置換されていてもよい。本明細書で使用される「所望により置換される」という用語は、非置換の変種および/または置換の変種を含むことが意図されている(すなわち、「所望により置換された」は、「置換または非置換」と互換的に使用されてもよい)。本明細書において使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが意図されており、「許容される」とは、当業者には既知の原子価の化学的規則の範囲内という意味である。一般に、「置換された」という用語は、「所望により」という用語が先行しているか否かにかかわらず、また本明細書の式に含まれる置換基は、所定の構造における水素基を特定の置換基の基で置換することを意味する。任意の所定構造の1以上の位置が、特定の基から選択された1以上の置換基で置換されていてもよい場合、その置換基は、すべての位置で同じであっても異なっていてもよい。また、「置換された」とは、その置換により、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などの変換を自発的に受けない化合物となることも含むと理解される。場合によっては、「置換された」とは、一般的に、本明細書に記載されている置換基で水素を置き換えることを示すことがある。しかし、本明細書で使用される「置換された」とは、例えば、「置換された」官能基が、置換によって異なる官能基となるような、分子を識別するための重要な官能基の置換および/または変更を包含するものではない。例えば、「置換されたフェニル基」は、依然としてフェニル部分から構成されていなければならず、この定義では、置換によって、例えばピリジン環になるように変更することはできない。広い態様において、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。置換基の例としては、例えば、本明細書に記載されているものが挙げられる。許容される置換基は、1つまたは複数であり、適切な有機化合物に対して同じまたは異なるものであり得る。本明細書の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の価数を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有してもよい。さらに、本明細書は、有機化合物の許容される置換基により、いかなる方法によっても制限されることを意図するものではない。本明細書で使用される「安定」という用語は、好ましくは、製造を可能にするのに十分な安定性を有し、検出されるのに十分な期間、好ましくは本明細書において詳述される目的にとって有用な十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0033】
置換基の例としては、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族基、-CF3、-CN、アリール、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハライド、アルキルチオ、ニトリド、アシルアルキル、カルボキシエステル、-カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、-カルボキサミドアルキルアリール、-カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ-、アミノカルボキサミドアルキル-、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される「医薬的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合って、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適している化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。医薬的に許容される物質は、式(I)の化合物のみならず、その化合物が製剤化される他の成分とも適合し得る。
【0035】
本明細書で使用されるように、「塩」という用語は、式(I)の化合物の酸塩または塩基性塩を指す。医薬的に許容される塩は、例えば、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸など)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)および第四級アンモニウムイオンから得られ得る。医薬的に許容される塩は、非毒性であると理解される。
【0036】
本発明の化合物のある態様は、1以上の塩基性官能基を含んでいてもよく、そのため医薬的に許容される酸と医薬的に許容される塩を形成することができる。このような場合、医薬的に許容される塩は、本願化合物の比較的非毒性の、無機および有機の酸付加塩であってもよい。これらの塩は、投与ビヒクルまたは製剤プロセスにおいてその場で製造することができ、あるいは、本発明の精製された化合物をその遊離塩基形態で適切な有機酸または無機酸と別々に反応させた後、精製中にこのようにして形成された塩を単離することによって製造することができる。塩の非限定的な例としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば,Berge et al.,"Pharmaceutical Salts",J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19を参照されたい)。
【0037】
本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される塩としては、例えば、非毒性の有機酸または無機酸から得られる化合物の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような無毒の塩としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などから得られる塩;および有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などから得られる塩が挙げられる。
【0038】
いくつかの場合では、本願の化合物は、1以上の酸性官能基を含んでいてもよく、そのため医薬的に許容される塩基と共に医薬的に許容される塩を形成することができる。このような場合、医薬的に許容される塩は、本願化合物の比較的非毒性の無機および有機性塩基付加塩であってもよい。これらの塩は、同様に、投与用ビークルまたは製剤プロセスにおいて、その場で製造することができるか、あるいは遊離酸形態の精製化合物を、適切な塩基(例えば、医薬的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩)、アンモニアまたは医薬的に許容される有機第一級、第二級もしくは第三級アミンと別々に反応させることによって製造することができる。アルカリ塩またはアルカリ土類塩の非限定的な例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な有機アミンの非限定的な例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0039】
適切な医薬的に許容される塩に関する追加情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985およびBerge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
化合物の中性形態は、塩を塩基または酸と接触させて、従来の方法で親化合物を単離することによって再生され得る。親化合物の形態は、特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中の溶解度)において、様々な塩形態とは異なり得る。
【0041】
本願の特定の化合物は、非対称炭素原子(キラル中心)または二重結合を有しており、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体および個々の異性体(例えば、別々のエナンチオマー)は、すべて本明細書の範囲に包含されることが意図されている。立体化学的描写が示される場合、それは、異性体の1つが存在し、他の異性体が実質的に存在しない化合物を指すことを意味する。他の異性体を「実質的に含まない」とは、存在する本願異性体の全ての異性体のモル量に基づいて、少なくとも約80%の異性体が存在すべきであることを表し、より好ましくは少なくとも約90%、例えば約95%以上である。描画された異性体は、少なくとも約99%の量で存在してもよい。例えば、本明細書に開示された異性体が医薬組成物中で提供される場合、その組成物は、医薬組成物中に存在する開示された化合物の全ての異性体の総モル量(例えば、開示された異性体および他の全ての異性体)に基づいて、医薬組成物中に少なくとも約99%の該開示された異性体を含んでいてもよい。
【0042】
本明細書で使用されるように、「医薬組成物」という用語は、式(I)の化合物と、1以上の他の化学成分との混合物を含む生成物をいう。医薬組成物は、本明細書において規定されている賦形剤および/または所定量の他の任意成分ならびに所定量の指定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じるあらゆる生成物を含み得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、「賦形剤」という用語は、対象への有効な薬剤の投与を補助する物質をいう。本明細書における有用な医薬品賦形剤には、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香料および着色料が含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、その他の賦形剤が本発明において有用であり得ることは理解されるであろう。
【0044】
本明細書で使用されるように、「治療する」、「治療すること」および「治療」という用語は、疾患または障害(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)に関連する病理、損傷、症状または兆候の治療または緩和における成功に関するあらゆる指標を指し、これには、例えば、症状の軽減、寛解、低下;患者がより耐え易いような病理、損傷、症状または兆候にすること;または、病理、損傷、症状または兆候の頻度または期間を低減させることなどのあらゆる客観的または主観的パラメーターが含まれる。治療または緩和とは、例えば、身体検査の結果を含めたあらゆる客観的または主観的なパラメーターを基準とし得る。
【0045】
本明細書で使用されるように、「防止する」、「防止すること」または「防止」という用語は、疾患または障害(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)に関連する病理、損傷、症状または兆候を有しておらず、また有していなかったが、その病理、該損傷、該症状または該兆候を発症するリスクがある対象、あるいは、病態、損傷、症状または兆候を呈していた、または病態、損傷、症状または兆候を呈していないが、その病態、損傷、症状または兆候を再発するリスクがある対象の予防的治療を指す。ある態様において、対象は、集団の平均的健康なメンバーと比較して、病態、損傷、症状または兆候を発症するリスクが高いか、または病態、損傷、症状または兆候の再発するリスクが高い。ある態様において、防止とは、病態、損傷、症状または兆候の発症を防止することを指す。
【0046】
「有効量」または「医薬的に有効な量」とは、記載された目的を達成する(例えば、投与される効果を達成する、疾患を治療する、酵素活性を低下させる、疾患または症状の1または複数の兆候を低下させる、細胞内のウイルス複製を低下させるなど)のに十分な量である。「有効量」の例としては、病気の治療や兆候の軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療上有効な量」ともいう。症候の「軽減」とは、症候の重症度または頻度が低下することまたは症状がなくなることを意味する。
【0047】
投与が意図される「対象」とは、ヒト(すなわち、あらゆる年齢層の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児または青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人または高齢成人)または非ヒト動物をいう。「患者」とは、疾患の治療を必要としているヒト対象を指す。
【0048】
肥大型心筋症(HCM)は、臨床的には、圧力過負荷、全身性疾患または浸潤過程などの既知の原因がない場合の原因不明の左心室(LV)肥大として同定される。HCMの表現型の1つは、LVコンプライアンスの低下に随伴する心筋の収縮性亢進であり、臨床的には心室容積の減少、駆出率超過の頻出、壁厚の増加および拡張機能障害としてあらわれる。HCM患者の症状または兆候には、息切れ(特に、運動中)、胸痛(特に、運動中)、失神(特に運動中または運動直後)、急速な心拍、粗動またはドキドキする心拍の感覚および心雑音が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
閉塞性HCM(oHCM)とは、肥大型閉塞性心筋症(HOCM)としても知られており、左心室流出路閉塞(LVOT)が存在するHCMを指す。
【0050】
非閉塞性HCM(nHCM)とは、安静時または誘発時に流出路閉塞を伴わないHCMを指す。
【0051】
心不全とは、患者の心臓が身体に十分な血液を供給できなくなる臨床症候群のことである。心不全の人の中には、心臓が体内の他の臓器を維持するのに十分な血液を送り出すのが困難な人もいる。また、心筋自体が硬化して硬くなり、心臓への血流が遮断されたり低下したりする人もいる。心不全は、心臓の右側または左側あるいは両方が同時に発症し得る。心不全は、急性(短期間)または慢性(継続的)のいずれかであり得る。心不全の症状には、過度の疲労感、急激な体重増加、食欲不振、持続的な咳、不整脈、動悸、腹部の腫れ、息切れ、脚や足首の腫れ、首の静脈の突出、浮腫などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
駆出率が保持された心不全(HFpEF)とは、拡張期心不全または拡張不全とも呼ばれ、心臓の駆出率が正常(例えば、50%以上)な場合の心不全を指す。多くの場合、心筋は、正常に収縮するが、心室充満時に心室が本来のように弛緩せず、1回拍出量が減少する。
【0053】
安定した拡張期心不全とは、急性の症状悪化を随伴しない拡張期心不全患者をいう。これらの患者は、拡張機能が低下しており、利用可能な治療法を用いて症状を制御または安定化させることができる。
【0054】
拡張機能不全とは、拡張機能の異常をいう。拡張機能の異常には、左室弛緩障害、充満、拡張期の膨張性または硬直の障害が挙げられる。これらの特性は、心エコーを用いて測定できる。心エコー図を用いて拡張機能障害を診断するためのさらなる決定要因は、J Am Soc EchocardIogr. 29(4):277-314 (2016)に記載されており、その内容は参照により組み込まれる。左心室の硬直は、心臓の核磁気共鳴によって測定することができる。心臓の核磁気共鳴は、ピーク充填速度、ピーク充填までの時間およびピーク拡張期ひずみ速度(peak diastolic strain rate)を測定するために使用される。拡張機能不全の対象は、血中のバイオマーカーのレベルが上昇することもある。例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)または脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-pro BNP)は、拡張機能不全を有する個人の血中において高いレベルにて存在する。
【0055】
拡張機能不全は、一連の疾患、例えば、肥大型心筋症(HCM)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)-能動的弛緩に関する障害および心室硬化に関する障害の両方を含む(例えば、糖尿病性HFpEF);虚血性心筋症、心臓移植同種移植片血管症、拘束型心筋症(例えば、1つ以上のサルコメアタンパク質の遺伝子突然変異)、炎症性心筋症(例えば、レフラー症候群およびEMF)、浸潤性心筋症(例えば、アミロイド、サルコイドおよびXRT)、貯蔵疾患(例えば、ヘモクロマトーシス、ファブリーおよびグリコーゲン貯蔵病など)、先天性心疾患(例えば、圧力過負荷RV、ファロー四徴症(例えば、術前および術後早期の拡張機能障害)、心臓弁膜症(例えば、大動脈狭窄症)などを含むが、これらに限定するものではない。
【0056】
クラスIHCMとは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)によるとクラスIであるHCMを指す。
【0057】
クラスII-III nHCMとは、NYHAによるとクラスIIまたはクラスIIIであるnHCMを指す。
【0058】
クラスII-III oHCMとは、NYHAによるクラスIIまたはクラスIIIのoHCMを指す。
【0059】
NYHAクラスIとは、患者または対象が身体活動の制限を受けず、日常の身体活動で過度の疲労、動悸、呼吸困難(息切れ)を起こさない分類を指す。
【0060】
NYHAクラスIIとは、患者または対象が身体活動においてわずかな制限があるが、安静時には苦痛はなく、日常の身体活動において疲労、動悸、呼吸困難(息切れ)をきたす分類を指す。
【0061】
NYHAクラスIIIとは、患者または対象が身体活動において著しい制限があるが、安静時には苦痛はなく、日常の身体活動に満たない活動で、疲労、動悸または呼吸困難が生じる分類を指す。
【0062】
NYHAクラスIVとは、患者または対象が、安静時に心不全の症状を随伴する苦痛無くしていかなる身体活動も行うことができず、いかなる身体活動を行っても苦痛が増大する分類を指す。
【0063】
本明細書で使用される「バルサルバ勾配」とは、個人がバルサルバ手技を行っているときのLVOT全体の圧力勾配を指す。
【0064】
III.化合物
一態様において、本明細書において、式(I):
【化3】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供する。
R
2aは、フルオロであってもよい。R
2bは、フルオロであってもよい。R
2aは、nが1である場合、フルオロであってもよい。R
2aは、nが2である場合、フルオロであってもよい。R
2bは、nが1である場合、フルオロであってもよい。R
2bは、nが2である場合、フルオロであってもよい。
【0065】
一態様において、本明細書において、式(I):
【化4】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2b内のもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供する。
R
2aは、フルオロであってもよい。R
2bは、フルオロであってもよい。R
2aは、nが1である場合、フルオロであってもよい。R
2aは、nが2である場合、フルオロであってもよい。R
2bは、nが1である場合、フルオロであってもよい。R
2bは、nが2である場合、フルオロであってもよい。
【0066】
式(I)の前記化合物の医薬的に許容し得る塩も提供される。
【0067】
ある態様において、式(I)の化合物は、式:
【化5】
[式中、下付き文字nは、1であり;および
R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供し得る。
【0068】
ある態様において、式(I)の化合物は、式:
【化6】
[式中、下付き文字nは、1であり;および
R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩であり得る。
【0069】
いくつかの例において、式(I)の化合物におけるnは1である。式(I)の化合物は、式:
【化7】
(式中、R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである)を有し得る。
【0070】
式(Ib)の前記化合物の医薬的に許容し得る塩もまた提供される。
【0071】
いくつかの例において、式(I)の化合物におけるnは2である。いくつかの例において、nが2であり、1つのR1がフルオロであり、もう一方は、フルオロ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC2-C4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されてもよい。
【0072】
いくつかの例において、式(I)の化合物におけるnは2である。いくつかの例において、nが2であり、1つのR1がフルオロであり、もう一方は、フルオロ、所望により置換されたC1-C4アルキル、所望により置換されたC1-C4アルコキシおよび所望により置換されたC2-C4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されてもよい。
【0073】
式(I)の化合物は、式:
【化8】
(式中、R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHであり;および
各R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーである)
を有し得る。
【0074】
式(I)の化合物は、式:
【化9】
[式中、R
aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHであり;および
各R
1は、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーである]
を有し得る。
【0075】
いくつかの例において、式(I)について、1つのR1はフルオロであり、もう一方は、フルオロ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC2-C4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH);所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されてもよい。
【0076】
いくつかの例において、式(I)について、1つのR1はフルオロであり、もう一方は、フルオロ、所望により置換されたC1-C4アルキル、所望により置換されたC1-C4アルコキシおよび所望により置換されたC2-C4アルキニルからなる群から選択されてもよい。いくつかの例において、式(I)について、1つのR1はフルオロであり、もう一方は所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されてもよい。いくつかの例において、式(I)について、1つのR1はフルオロであり、もう一方はヒドロキシ置換されたアルキルである。いくつかの例において、式(I)について、1つのR1は、フルオロであり、もう一方はヒドロキシメチルである。
【0077】
式(Ic)の前記化合物の医薬的に許容し得る塩もまた提供される。
【0078】
式(I)の化合物は、式:
【化10】
[式中、R
1は、フルオロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシおよびC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択され得る;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
を有し得る。
【0079】
式(I)の化合物は、式:
【化11】
[式中、R
1は、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択され得る;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである]
を有し得る。ある態様において、R
1は、ヒドロキシメチルである。
【0080】
式(Id)の前記化合物の医薬的に許容し得る塩もまた提供される。
【0081】
式(I)の化合物は、式:
【化12】
であり得る。ある態様において、R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである。
【0082】
式(Ie)の前記化合物の医薬的に許容し得る塩もまた提供される。
【0083】
式(I)の化合物は、式:
【化13】
を有し得る。ある態様において、R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHである。前記化合物の医薬的に許容し得る塩もまた提供される。
【0084】
式(I)の化合物は、式:
【化14】
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩であり得る。
【0085】
化合物は、
【化15】
またはその医薬的に許容し得る塩であり得る。
【0086】
化合物は、
【化16】
またはその医薬的に許容し得る塩であり得る。
【0087】
上記化合物またはその医薬的に許容される塩は、フェニル環を持つ炭素原子で別の異性体を実質的に含まない(すなわち、本明細書に開示および描写されているものとは異なる絶対配置を有する)状態で提供され得る(例えば、医薬組成物中)。本化合物またはその医薬的に許容される塩は、代替的または追加的に、フェニル環を担持する炭素原子に隣接するフッ素を有する炭素原子において別の異性体を実質的に含まないように提供されてもよい。例えば、医薬組成物として提供される場合、その組成物は、フェニル環を持つ炭素原子にて別の異性体を実質的に含まないものであってもよい。同様に、この組成物は、代替的または追加的に、フェニル環を持つ炭素原子に隣接するフルオロを持つ炭素原子にて別の異性体を実質的に含まなくてもよい。いくつかの態様において、実質的に含まないとは、フェニル環を持つ炭素原子におけるエナンチオマー過剰(ee)が95%以上、98%以上、99%以上または100%であることを指す。いくつかの態様において、実質的に含まないとは、フェニル環を持つ炭素原子に隣接するフルオロを持つ炭素原子において、95%以上、98%以上、99%以上または100%のeeを意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは、95%以上、98%以上、99%以上または100%のジアステレオマー過剰(de)を指す。
【0088】
別の態様において、本明細書において、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体が提供される。形態1の多形体は、少なくとも1つの:
a.角度2θ±0.2°で表され、11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される2以上のピークを有する粉末X線回折パターン;
b.約226.05℃、約302.47℃および約310.13℃で吸熱を示すDSCサーモグラム;または
c.
図4と実質的に同じX線結晶構造
により特徴づけられる。別の態様において、形態1の多形体は、2θ±0.2°で表され、11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される3またはそれ以上のピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる。ある態様において、形態1の多形体は、2θ±0.2°で表され、11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される4またはそれ以上のピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる。ある態様において、形態1の多形体は、各々11.3、12.4および13.3°の角度2θ±0.2°で表される粉末X線回折パターンにより特徴付けられる。別の態様において、形態1の多形体は、各々11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4および29.5°の角度2θ±0.2°で表されるピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる。別の態様において、形態1の多形体は、約221.51℃、約299.53℃および約308.81℃での溶解開始温度により特徴付けられる。ある態様において、形態1の多形体は、
図1Aと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有する。ある態様において、形態1の多形体は、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの別の形態を実質的に含まない。
【0089】
式(I)の化合物は、任意の適切な方法で製造され得る。化合物は、例えば、以下の実施例で概説されている反応経路により製造することができる。当業者であれば、式(I)の化合物を、例えば、Larock, Comprehensive Organic Transformations, A Guide to Functional Group Preparations, Wiley, 1999に記載されているような変換を含む他の合成方法を用いて製造することができることは理解されよう。
【0090】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物である。医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。本組成物は、ヒトおよび他の対象における肥大型心筋症などの症状を治療するのに有用である。ある態様において、医薬組成物は、追加の治療薬をさらに含む。非限定的な追加の治療薬の例には、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする薬剤(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗剤または神経エンドペプチダーゼ阻害剤);心臓の収縮性を刺激することによって心機能を改善する薬剤(例えば、β-アドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷(フロセミドなどの利尿剤)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張剤、例えばカルシウムチャネル遮断剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗剤、レニン阻害剤または平滑筋ミオシン調節剤など)を低下させる薬剤が含まれる。特定の態様において、医薬組成物中の追加の治療薬は、心血管治療薬である。さらなる態様において、追加の治療薬の例示としては、βアドレナリン遮断薬(β遮断薬)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などのアンジオテンシン受容体拮抗薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)[例えば、カリウム排除利尿薬(例えば、エプレレノン、スピロノラクトンまたはカンレノン)などのアルドステロン阻害薬]、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、正向性強心薬[例えば、ジゴキシン、ピモベンゼン、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト(例えば、ドブタミン)、ホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤(例えば、ミルリノン)またはカルシウム増感剤(例えば、レボシメンダン)]、カリウムまたはマグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張剤(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓薬、抗血小板薬またはこれらの組み合わせである。適切なアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には、例えば、A-81988、A-81282、BIBR-363、BIBS39、BIBS-222、BMS-180560、BMS-184698、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、CGP-38560A、CGP-48369、CGP-49870、CGP-63170、CI-996、CV-11194、DA-2079、DE-3489、DMP-811、DuP-167、E-4177、エリサルタン、EMD-66397、EMD-73495、エプロサルタン、EXP-063、EXP-929、EXP-3174、EXP-6155、EXP-6803、EXP-7711、EXP-9270、FK-739、GA-0056、HN-65021、HR-720、ICI-D6888、ICI-D7155、ICI-D8731、イルベサルタン、イソテオリン、KRI-1177、KT3-671、KW-3433、ロサルタン、LR-B/057、L-158809、L-158978、L-159282、L-159874、L-161177、L-162154、L-163017、L-159689、L-162234、L-162441、L-163007、LR-B/081、LR B087、LY-285434、LY-302289、LY-315995、LY-235656、LY-301875、ME-3221、オルメサルタン、PD-150304、PD-123177、PD-123319、RG-13647、RWJ-38970、RWJ-46458、サララシンアセテート、S-8307、S-8308、SC-52458、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、SL-91.0102、タソサルタン、テルミサルタン、UP-269-6、U-96849、U-97018、UP-275-22、WAY-126227、WK-1492.2K、YM-31472、WK-1360、X-6803、バルサルタン、XH-148、XR-510、YM-358、ZD-6888、ZD-7155、ZD-8731およびゾラサルタンが挙げられる。特定の態様において、追加の治療薬は、ARNI、例えばサクビトリル/バルサルタン(Entresto(登録商標))またはナトリウム-グルコース共輸送体(トランスポーター)2阻害剤(SGLT2)、例えば、エンパグリフロジン(Jardiance(登録商標)など)、ダパグリフロジン(Farxiga(登録商標)など)、ソタグリフロジンであってもよい。ある態様において、対象は、対象の心血管状態を改善するための追加の治療薬を投与される。追加の治療薬は、例えば、β遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ARNI、RAAS阻害薬または不整脈治療薬であってもよい。特定の態様において、追加の治療薬は、ANRI、例えば、サクビトリル/バルサルタンまたはSGLT2阻害剤である。
【0091】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、形態1の多形体を含む医薬組成物である。いくつかの態様において、医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤を含む。ある態様において、本明細書で提供されるのは医薬組成物であり、形態1の多形体の量と他の形態の合計量の比は、80:20に等しいか、またはそれ以上である。別の態様において、形態1の多形体の量と他の形態の合計量との比は、90:10に等しいか、またはそれ以上である。ある態様において、形態1の多形体の量と他の形態の合計量との比は、95:5に等しいか、またはそれ以上である。ある態様において、形態1の多形体の量と他の形態の合計量との比は、97:3に等しいか、またはそれ以上である。特定の場合には、形態1の多形体の量と他の形態の合計量との比は、98:2に等しいか、またはそれ以上である。特定の場合には、形態1の多形体の量と他の形態の合計量との比は、99:1に等しいか、またはそれ以上である。
【0092】
ある態様において、形態1の多形体を含む医薬組成物は、追加の治療薬をさらに含む。非限定的な追加の治療薬の例としては、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする薬剤(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗剤または神経エンドペプチダーゼ阻害剤);心臓の収縮性を刺激することによって心機能を改善する薬剤(例えば、β-アドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷(フロセミドなどの利尿剤)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張剤、例えばカルシウムチャネル遮断剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗剤、レニン阻害剤または平滑筋ミオシン調節剤など)を軽減する薬剤が挙げられる。ある態様において、医薬組成物における追加の治療薬は、心血管治療薬である。さらなる態様において、追加の治療薬の例としては、βアドレナリン遮断薬(β遮断薬)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などのアンジオテンシン受容体拮抗薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)(例えば、エプレレノン、スピロノラクトンまたはカンレノンなどのカリウム排除利尿薬などのアルドステロン阻害薬)、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、正向性強心薬[例えば、ジゴキシン、ピモベンダン、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト(例えば、ドブタミン)、ホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤(例えば、ミルリノン)またはカルシウム増感剤(例えば、レボシメンダン)]、カリウムまたはマグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張剤(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬など)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓薬、抗血小板薬またはこれらの組み合わせが挙げられる。適切なアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には、例えば、以下のもの:A-81988、A-81282、BIBR-363、BIBS39、BIBS-222、BMS-180560、BMS-184698、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、CGP-38560A、CGP-48369、CGP-49870、CGP-63170、CI-996、CV-11194、DA-2079、DE-3489、DMP-811、DuP-167、DuP-532、E-4177、エリサルタン、EMD-66397、EMD-73495、エプロサルタン、EXP-063、EXP-929、EXP-3174、EXP-6155、EXP-6803、EXP-7711、EXP-9270、FK-739、GA-0056、HN-65021、HR-720、ICI-D6888、ICI-D7155、ICI-D8731、イルベサルタン、イソテオリン、KRI-1177、KT3-671、KW-3433、ロサルタン、LR-B/057、L-158809、L-158978、L-159282、L-159874、L-161177、L-162154、L-163017、L-159689、L-162234、L-162441、L-163007、LR-B/081、LR B087、LY-285434、LY-302289、LY-315995、LY-235656、LY-301875、ME-3221、オルメサルタン、PD-150304、PD-123177、PD-123319、RG-13647、RWJ-38970、RWJ-46458、サララシンアセテート、S-8307、S-8308、SC-52458、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、SL-91.0102、タソサルタン、テルミサルタン、UP-269-6、U-96849、U-97018、UP-275-22、WAY-126227、WK-1492.2K、YM-31472、WK-1360、X-6803、バルサルタン、XH-148、XR-510、YM-358、ZD-6888、ZD-7155、ZD-8731およびゾラサルタンが挙げられ得る。特定の態様において、追加の治療薬は、ARNI、例えば、サクビトリル/バルサルタン(Entresto(登録商標))またはナトリウム-グルコース共輸送体(トランスポーター)2阻害剤(SGLT2)、例えば、エンパグリフロジン(Jardiance(登録商標)など)、ダパグリフロジン(Farxiga(登録商標)など)またはソタグリフロジンであってもよい。ある態様において、対象は、対象の心血管状態を改善するために追加の治療薬を投与される。追加の治療薬は、例えば、β遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ARNI、RAAS阻害薬または不整脈治療薬であってもよい。特定の態様において、追加の治療薬は、サクビトリル/バルサルタンまたはSGLT2阻害剤などのANRIである。
【0093】
本明細書に示される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を投与するための医薬組成物は、好適には単位投与形態で存在しており、薬学分野および薬物送達の技術分野において既知の方法のいずれかによって製造され得る。すべての方法は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、1または複数の付加成分を含む担体と合わせるステップを含む。一般に、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、液体担体または細分割された固体担体またはその両方と共に均一かつ緊密に混和し、必要に応じて所望の製剤に成形することによって製造される。本発明の医薬組成物において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、一般に、心筋収縮力に対する所望の効果(例えば、HCMにおいては超正常の収縮力を減少させることが多い)および/または拡張期における左心室弛緩を改善するのに十分な量で含まれる。このような弛緩改善により、肥大型心筋症および/または拡張機能障害の他の病因における症状が緩和され得る。本発明の医薬組成物は、代替的または追加的に、冠状動脈血流の障害を引き起こす拡張機能不全の影響を緩和し、それによって狭心症および/または虚血性心疾患の補助薬として後者を改善することができる。本発明の医薬組成物は、代替的または追加的に、HCMおよび/または、例えば心臓弁膜症および/または全身性高血圧による慢性的な容積または圧力過負荷に起因する左心室肥大の別の病因における有益な左心室リモデリングに利益を提供することができる。
【0094】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を含む医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性の懸濁液、分散可能な粉末または顆粒、エマルジョン、ハードカプセルまたはソフトカプセル、シロップ、エリキシル剤、溶液、頬側パッチ、口腔用ゲル、チューインガム、チュアブル錠、発泡性粉末および発泡性錠剤など、経口使用に適する形態であってもよい。口腔内での使用を目的とした組成物は、当分野において既知のあらゆる医薬組成物の製造方法に従って製造することができ、そのような組成物は、医薬的に上品で口当たりの良い製剤を提供するために、甘味料、香味料、着色料、酸化防止剤および保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混和して含む。これらの賦形剤としては、例えば、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムなどの不活性な希釈剤;トウモロコシデンプン、アルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;PVP、セルロース、PEG、デンプン、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤、ならびにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクなどの潤滑剤が挙げられる。錠剤は、コーティングされていなくてもよいが、消化管における崩壊や吸収を遅らせて、それにより更に長い期間にわたり持続的な作用を与えるために、公知技術によって腸溶性コーティングまたは別法でコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような徐放性物質を用いてもよい。また、放出を制御するための浸透圧治療用の錠剤にコーティングすることもできる。
【0095】
経口用の医薬組成物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を、ゼラチンカプセルとして、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合したハードゼラチンカプセルとして、あるいは式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、水もしくは例えばピーナッツオイル、流動パラフィンもしくはオリーブオイルなどの油媒体と混合したソフトゼラチンカプセルとして提供することもできる。さらに、エマルジョンは、油などの非水混和性成分を用いて製造し、モノジグリセリド、PEGエステルなどの界面活性剤を用いて安定化させることができる。
【0096】
水性懸濁液は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混和して含む。このような賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムなどの懸濁剤が挙げられ;分散剤または湿潤剤は、天然のリン酸塩(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレートなど)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなど)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなど)またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)である。
また、水性懸濁液は、1以上の防腐剤、例えば、エチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート、1以上の着色剤、1以上の香料および1つ以上の甘味料、例えばスクロースまたはサッカリンを含んでいてもよい。
【0097】
油性懸濁液は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を、植物油、例えばピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油または流動パラフィンなどの鉱油に懸濁させることによって製剤化することができる。油性懸濁液は、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含んでいてもよい。上述のような甘味料および香味料を添加して、口当たりの良い経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような酸化防止剤を加えることによって保存できる。
【0098】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末および顆粒は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体を、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1以上の保存剤と混和して提供される。適切な分散剤、湿潤剤、懸濁剤は、上述したものにより例示される。追加の賦形剤、例えば甘味料、香味料、着色料なども存在してもよい。
【0099】
本明細書で提供される医薬組成物はまた、水中油型エマルションの形態であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油またはピーナッツ油または鉱油、例えば流動パラフィンまたはこれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、天然のガム、例えばアカシアガムまたはトラガカントガム、天然のホスファチド、例えば大豆、レシチンおよび脂肪酸とヘキシトール無水物から得られるエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。また、エマルジョンは、甘味および香料を含んでいてもよい。
【0100】
シロップおよびエリキシルは、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースなどの甘味料と共に製剤化されてもよい。このような製剤は、消泡剤、防腐剤、香料および着色剤を含んでもよい。経口溶液は、例えばシクロデキストリン、PEG、界面活性剤などを組み合わせて製造することができる。
【0101】
医薬組成物は、無菌注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述した適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知技術に従って製剤化できる。また、無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中(例えば、1,3-ブタンジオール溶液など)での無菌注射剤溶液または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒を使用することが可能であり、それには水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液などがあります。さらに、溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が従来から使用されている。この目的のためには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含むあらゆるブランドの固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の製造に使用される。
【0102】
本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体は、薬剤の直腸投与のために坐薬の形態で投与することも可能である。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内では溶融して薬剤を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬剤とを混合することによって製造することができる。このような材料としては、ココアバターまたはポリエチレングリコールなどが挙げられる。さらに、化合物は、溶液または軟膏により経眼投与することができる。さらに、対象となる化合物の経皮的な送達は、イオントフォレーシスなどの手段によって達成することができる。局所的な使用には、本明細書で提供される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などを用い得る。本明細書で使用される場合、局所的な適用は、洗口剤およびうがい薬の使用を含むことも意味する。
【0103】
本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは多形体は、標的化可能な薬剤担体として適切なポリマーである担体に結合することもできる。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジンを挙げることができる。さらに、本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーなどの薬物の徐放性の放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーである担体に結合されてもよい。ポリマーおよび半透膜ポリマーマトリックスは、バルブ、ステント、チューブ、プロテーゼなどの成形品へと成形してもよい。
【0104】
HCMの原因となる突然変異は、ミオシンの構造に有意な変化をもたらす。これらの突然変異は、ミオシン遺伝子内のそれらの位置に応じて異なるメカニズムを介して作用する。研究が十分為されているHCMの突然変異であるR403QおよびR453Cは、モータードメインの異なる部分に位置しており、力の発生を増加させるという共通する結果をもたらす様々なメカニズムの混乱を引き起こす。特定の理論に制限されることを望むものではないが、本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、変異したサルコメアタンパク質に直接結合して、シス(同じ特定機能に影響を与えること)またはトランス(相補的機能を変化させること)のいずれかで、その機能異常を修正することができると考えられる。従って、それらは、この疾患に関連する収縮性亢進および/または弛緩障害を解消することにより、HCM患者に治療上の利益をもたらすことができる。
【0105】
従って、本明細書は、肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する1以上の病態生理学的特徴を有する心疾患を治療する方法を提供する。本願方法は、本明細書で提供される有効量の化合物、または式(I)の化合物もしくはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを包含する。本願方法は、本明細書で提供される有効量の化合物または(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを包含する。
【0106】
本明細書は、肥大型心筋症(HCM)または心疾患を治療する方法も提供する。有効量の本明細書で提供される化合物または式(I)の化合物もしくはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを包含する。本願方法は、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体または(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を、治療を必要性とする対象に投与することを包含する。
【0107】
拡張期機能不全とは、肥大型心筋症(HCM)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)-例えば、能動的弛緩の障害および心室の硬化の障害の両方(例えば、糖尿病性HFpEF)、虚血性心筋症、心臓移植同種移植血管症、拘束型心筋症(例えば、1以上のサルコメアタンパク質の遺伝子突然変異)、炎症性心筋症(例えば、レフラー症候群、EMF)、浸潤性心筋症(例えば、アミロイド、サルコイドおよびXRT)、貯蔵疾患(例えば、ヘモクロマトーシス、ファブリー病およびグリコーゲン貯蔵病)、先天性心疾患(例えば、圧力過負荷RV、ファロー四徴症(例えば、術前および術後早期の拡張機能障害)および心臓弁膜症(例えば、大動脈狭窄症)を含むが、これらに限定されない一連の疾患が存在するか、または重要な特徴である。
【0108】
本明細書は、治療を必要とする対象における心疾患または障害を治療する方法であって、本明細書に記載の有効量の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を対象に投与することを特徴とする方法を提供する。いくつかの態様において、拡張期機能不全は、心疾患または障害の特徴であり、および/または心疾患または障害に随伴する。例えば、心疾患または障害は、心筋症(例えば、肥大型心筋症)、心不全(例えば、駆出率が保持された心不全、駆出率が中程度の心不全)、弁膜症(例えば、弁膜性大動脈弁狭窄症)、先天性心疾患(例えば、ファロー四徴症)、左心室肥大、狭心症(例えば、難治性狭心症)またはシャーガス病などであり得る。ある態様において、正常または保存された駆出率(例えば、約50%以上の駆出率)は、心疾患または障害の特徴である。いくつかのそのような場合において、心疾患または障害の特徴には、正常な駆出率または保存された駆出率および拡張機能不全が挙げられる。例えば、心疾患または障害(例えば、HCM、HFpEF、弁膜性大動脈弁狭窄症)の治療を必要とする対象は、拡張機能障害および約50%以上の駆出率を有することがある。ある態様においては、中程度の駆出率(例えば、約40%~約50%の駆出率)が、心疾患または障害の特徴である。いくつかのかかる場合において、心疾患または障害の治療を必要とする対象は、中程度の駆出率および拡張機能障害を有することがある。例えば、心疾患または障害の治療を必要とする対象(例えば、中程度の駆出率を有する心不全)は、拡張機能障害および約40%~約50%の駆出率を有していてもよい。
【0109】
ある態様において、治療を必要とする対象における拡張機能不全を治療するための方法が提供される。ある態様において、本方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を対象に投与することを特徴とする。いくつかの例においては、拡張機能不全は、左心室拡張機能不全、右心室拡張機能不全またはその両方である。拡張期機能不全は、慢性、安定性または急性であり得る。いくつかの態様において、拡張機能不全の治療を必要とする対象は、肥大型心筋症(例えば、oHCM、nHCM)、拘束型心筋症、心不全(例えば、HFpEF、糖尿病性HFpEF、HFmrEF)、浸潤性心筋症(例えば、アミロイドーシス、サルコイドーシスおよび/またはX線治療による)、炎症性心筋症(例えば、ロフラー心内膜炎、心内膜心筋線維症)、ヘモクロマトーシス、ファブリー病、グリコーゲン貯蔵病、先天性心疾患(例えば、ファロー四徴症)、心臓弁膜症(例えば、大動脈弁狭窄症)、左心室肥大(例えば、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈狭窄症、大動脈閉鎖不全症および/または慢性全身性高血圧症による)、高血圧症(例えば、慢性、全身性)、シャーガス病および狭心症(例えば、難治性狭心症)からなる群から選択される1以上の疾患または障害に罹患していてもよい。ある態様においては、拡張機能不全の治療を必要とする対象は、肥大型心筋症(例えば、oHCM、nHCM)、心不全(例えば、HFpEF、糖尿病性HFpEF、HFmrEF)、心臓弁膜症(例えば、大動脈狭窄症)、先天性心疾患(例えば、ファロー四徴症)および左心室肥大(例えば、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈狭窄症、大動脈閉鎖不全症および/または慢性全身性高血圧症による)からなる群から選択される1以上の疾患または障害に罹患していてもよい。ある態様において、拡張機能不全の治療を必要とする対象は、1以上の外科的処置を受けていてもよい。例えば、対象は、弁置換手術(例えば、外科的大動脈弁置換術、経カテーテル大動脈弁置換術)および/またはファロー四徴症などの先天性心疾患の矯正手術を受けていてもよい。いくつかの態様において、拡張期機能不全の治療を必要とする対象は、人工心臓弁(例えば、人工大動脈弁)を用いてもよい。いくつかの態様において、拡張機能不全の治療を必要とする対象は、術後拡張機能不全を有する。例えば、対象は、先天性障害(例えば、ファロー四徴症)の矯正手術後に術後拡張機能障害(例えば、右心室拡張機能障害)を有していてもよい。いくつかの例においては、拡張機能不全の治療を必要とする対象は、正常な駆出率または保存された駆出率を有する。別の例においては、拡張機能障害の治療を必要とする対象は、中程度の駆出率を有する。
【0110】
ある態様において、治療を必要とする対象における心筋症(例えば、肥大型)を治療するための方法が提供される。ある態様において、本方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を対象に投与することを包含する。本明細書に記載の化合物を用いて治療することができる心筋症の非限定的な例としては、肥大型心筋症(例えば、閉塞性心筋症、非閉塞性心筋症)、拘束型心筋症、浸潤性心筋症(例えば、拡張機能障害を随伴する)および炎症性心筋症(例えば、拡張機能障害を随伴する)が挙げられる。ある態様において、心筋症は肥大型心筋症である。ある態様において、肥大型心筋症はnHCMである。本方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体をnHCMの治療を必要とする対象に投与することを含んでもよい。nHCMの治療を必要とする対象は、NYHAクラスII、IIIまたはIVの心不全を有してもよい。他の例では、肥大型心筋症はoHCMである。この方法は、式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の有効量を、oHCMの治療を必要とする対象に投与することを包含し得る。oHCMの治療を必要とする対象は、NYHAクラスII、IIIまたはIVの心不全を有していてもよい。
【0111】
ある態様において、心筋症は、拘束型心筋症である。本方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、拘束型心筋症の治療を必要とする対象に投与することを包含し得る。ある態様において、拘束型心筋症は、例えば、サルコメアタンパク質における1以上の突然変異(例えば、遺伝子変異)に起因し得る。ある態様においては、心筋症は浸潤性心筋症である。浸潤性心筋症は、アミロイドーシス、サルコイドーシスおよび/またはX線治療に起因し得る。いくつかの例においては、浸潤性心筋症の特徴は、拡張機能不全であってもよい。浸潤性心筋症を治療する方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、治療を必要とする対象に投与することを包含し得る。ある態様においては、心筋症は、炎症性心筋症である。炎症性心筋症の非限定的な例には、ロフラー心内膜炎および心内膜線維症が含まれる。いくつかの例では、炎症性心筋症の特徴は、拡張期機能不全であってもよい。炎症性心筋症を治療する方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、治療を必要とする対象に投与することを包含し得る。
【0112】
ある態様において、治療を必要とする対象における心不全(例えば、HFpEF、HFmrEF)を治療する方法が提供される。この方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を投与することを包含し得る。心不全は、左心不全、右心不全またはその両方である。心不全は、慢性、安定性または急性のいずれかであり得る。心不全の治療を必要とする対象は、NYHAクラスII、IIIまたはIVの心不全を有していてもよい。本明細書に記載の化合物を用いて治療することができる心不全の非限定的な例には、HFpEF、糖尿病性HFpEFおよびHFmrEFが挙げられる。ある態様において、心不全はHFpEFである。ある態様において、HFpEFの治療を必要とする対象は、正常な収縮力または高い収縮力(例えば、心エコー図によって測定される)を有していてもよい。いくつかの場合において、HFpEFの治療を必要とする対象は、異常な長軸方向グローバルストレイン(例えば、-15%未満)を有していてもよい。ある態様において、HFpEFの治療を必要とする対象は、糖尿病(I型、II型)および/または弁膜症(例えば、大動脈狭窄症)に罹患していてもよい。いくつかの例では、HFpEFの治療を必要とする対象は、弁膜症(例えば、大動脈弁狭窄症)により人工弁(例えば、大動脈弁)を有していてもよい。治療を必要とする対象におけるHFpEF(例えば、糖尿病性HFpEF)を治療する方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、対象に投与することを包含し得る。ある態様において、心不全はHFmrEFである。この方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、HFmrEFの治療が必要な対象に投与することを包含し得る。HFmrEFの治療が必要な対象は、NYHAクラスII、IIIまたはIV心不全を有し得る。
【0113】
ある態様において、治療を必要とする対象における左心室肥大を治療する方法が提供される。この方法は、有効量の式(I)の化合物またはその塩、あるいは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を対象に投与することを包含する。いくつかの態様において、左心室肥大の治療を必要とする対象は、異常な左心室壁厚を有する。対象の左心室壁厚は、正常よりも厚いが、肥大型心筋症の診断基準以下であってもよい。例えば、左心室肥大の治療を必要とする対象は、約10mmより大きく(例えば、約11mmより大きく)、約15mmより小さい(例えば、約14mm以下、約13mm以下)の左心室壁厚を有してもよい。ある態様において、左心室肥大の治療を必要とする対象は、肥大型心筋症のない状態で左心室肥大を有する。ある態様において、左心室肥大の治療を必要とする対象は、高血圧(例えば、慢性および/または全身性)に罹患していてもよい。ある態様において、左心室肥大は、例えば、慢性僧帽弁逆流、慢性大動脈逆流、慢性大動脈狭窄および/または慢性全身性高血圧に起因し得る。
【0114】
心エコー図を用いて拡張期機能不全を診断するためのさらなる決定因子は、J Am Soc Echocardiogr. 29(4):277-314 (2016)に記載されており、その内容はすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0115】
拡張機能障害の治療を必要とする対象には、非閉塞性肥大型心筋症(nHCM)を有する患者集団の対象または駆出率が保持された心不全(HFpEF)を有する対象が含まれる。拡張機能障害の治療を必要とする対象には、心エコー図で測定された左心室の硬さまたは心臓磁気共鳴で測定された左心室の硬さが示された対象が含まれる。
【0116】
ある態様において、治療を必要とする対象は、HFpEFを有する患者集団から選ばれる。
【0117】
また本明細書は、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0118】
式(I)の化合物は、単剤療法または併用療法として投与することができる。併用療法では、式(I)の化合物は、別の治療レジメン、例えば、対象の心臓の症状に対する標準療法(SOC)または関連疾患もしくは障害の治療に有用な別の療法と組み合わせて使用される。追加の治療薬は、前記薬剤に対して一般的に使用される経路および量、または減量した量で投与されてもよく、また式(I)の化合物と同時に、順次または同時に投与されてもよい。
【0119】
ある態様において、式(I)の化合物は、拡張期心不全などの拡張期機能不全の症状のためのSOCに加えて投与される。さらなる態様において、対象に、式(I)の化合物に加えて、追加の治療薬、例えば、β遮断薬、RAAS阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬などのアンジオテンシン受容体拮抗薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(例えば、アルドステロン阻害薬;例えば、エプレレノン、スピロノラクトンまたはカンレノンなどのカリウム排除利尿薬)、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、強心剤(例えば、ジゴキシン、ピモベンダン、ドブタミンなどのβアドレナリン受容体アゴニスト、ミルリノンなどのホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤またはレボシメンダンなどのカルシウム増感剤)、カリウムまたはマグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張剤(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬など)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓薬、抗血小板薬またはそれらの組み合わせが投与される。
【0120】
適切なARBには、例えば、以下のもの:A-81988、A-81282、BIBR-363、BIBS39、BIBS-222、BMS-180560、BMS-184698、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、CGP-38560A、CGP-48369、CGP-49870、CGP-63170、CI-996、CV-11194、DA-2079、DE-3489、DMP-811、DuP-167、DuP-532、E-4177、エリサルタン、EMD-66397、EMD-73495、エプロサルタン、EXP-063、EXP-929、EXP-3174、EXP-6155、EXP-6803、EXP-7711、EXP-9270、FK-739、GA-0056、HN-65021、HR-720、ICI-D6888、ICI-D7155、ICI-D8731、イルベサルタン、イソテオリン、KRI-1177、KT3-671、KW-3433、ロサルタン、LR-B/057、L-158809、L-158978、L-159282、L-159874、L-161177、L-162154、L-163017、L-159689、L-162234、L-162441、L-163007、LR-B/081、LR B087、LY-285434、LY-302289、LY-315995、LY-235656、LY-301875、ME-3221、オルメサルタン、PD-150304、PD-123177、PD-123319、RG-13647、RWJ-38970、RWJ-46458、サララシンアセテート、S-8307、S-8308、SC-52458、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、SL-91.0102、タソサルタン、テルミサルタン、UP-269-6、U-96849、U-97018、UP-275-22、WAY-126227、WK-1492.2K、YM-31472、WK-1360、X-6803、バルサルタン、XH-148、XR-510、YM-358、ZD-6888、ZD-7155、ZD-8731およびゾラサルタンが含まれる。特定の態様において、追加の治療薬は、ARNI、例えば、サクビトリル/バルサルタン(Entresto(登録商標))またはナトリウム-グルコースコトランスポーター2阻害剤(SGLT2)、例えばエンパグリフロジン(例えば、Jardiance(登録商標)など)、ダパグリフロジン(例えば、Farxiga(登録商標)など)またはソタグリフロジンであってもよい。いくつかの態様において、対象は、対象の心血管状態を改善するための追加の治療薬が投与される。追加の治療薬は、例えば、β遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ARNI、RAAS阻害薬または不整脈治療薬であってもよい。特定の態様において、追加の治療薬は、サクビトリル/バルサルタンまたはSGLT2阻害剤などのANRIである。さらに別の態様において、式(I)の化合物により心不全の治療を受けている対象もまた、ARNI、β遮断薬およびMRAにより治療される。
【0121】
本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害を治療する方法を提供するものであって、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法も提供する。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害を治療する方法を提供するものであって、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0122】
(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、単剤療法または併用療法として投与され得る。併用療法では、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、別の治療レジメン、例えば、対象の心疾患に対する標準療法(SOC)または関連疾患および障害の治療に有用な別の治療法と組み合わせて使用される。追加の治療薬は、前記薬剤に一般的に使用される経路および量または低減した量で投与されてもよく、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体と同時に、順次または並行に投与されてもよい。ある態様において、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体が、拡張期心不全などの拡張期機能不全の症状のためのSOCに加えて投与される。さらなる態様において、対象は、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体に加えて、別の治療薬、例えば、β遮断薬、RAAS阻害剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などのアンジオテンシン受容体アゴニスト)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)(例えば、サクビトリル/バルサルタン)、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(例えば、アルドステロン阻害剤;例えば、エプレレノン、スピロノラクトン、カンレノンなどのカリウム排除利尿薬)、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(NEPi)、正向性強心薬(例えば、ジゴキシン、ピモベンゼン、ドブタミンなどのβアドレナリン受容体アゴニスト、ミルリノンなどのホスホジエステラーゼ(PDE)-3阻害剤またはレボシメンダンなどのカルシウム増感剤)、カリウムまたはマグネシウム、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、血管拡張剤(例えば、カルシウムチャネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬)、利尿薬(例えば、フロセミド)、不整脈治療薬、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)、抗血栓薬、抗血小板薬またはこれらの組み合わせを投与される。適切なARBは、本明細書で提供されている(前掲)。特定の態様において、追加の治療薬は、サクビトリル/バルサルタン(Entresto(登録商標))などのARNIまたはエンパグリフロジン(Jardiance(登録商標))、ダパグリフロジン(Farxiga(登録商標))などのナトリウム-グルコースコトランスポーター2阻害剤(SGLT2)であってもよい。ある態様において、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を投与するとともに、対象に心血管状態を改善するための追加の治療薬を投与する。追加の治療薬は、例えば、β遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬、ARNI、RAAS阻害薬または不整脈治療薬であってもよい。特定の態様において、追加の治療薬は、サクビトリル/バルサルタンまたはSGLT2阻害剤などのANRIである。さらに別の態様において、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体により心不全の治療を受けている対象はまた、ARNI、β遮断薬およびMRAでも治療されている。
【0123】
本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される前記疾患または障害を、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とする方法を提供する。本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される前記疾患または障害を、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む有効量の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0124】
本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される前記疾患または障害を、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される前記疾患または障害を、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0125】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療する方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせて、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷前負荷(例えば、フロセタミンなどの利尿薬)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬など)を軽減する治療法と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0126】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療する方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を含む医薬組成物を、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせて、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷(例えば、フロセタミンなどの利尿薬)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬、平滑筋ミオシン調節薬などが挙げられるが、これに限定するものではない)を軽減する治療法と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0127】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療する方法であって、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせて、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷(例えば、フロセタミンなどの利尿薬)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬などが挙げられるが、これに限定するものではない)と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0128】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療する方法であって、有効量の(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせて、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷(例えば、フロセタミンなどの利尿薬)または後負荷(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬などが挙げられるが、これに限定するものではない)と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0129】
本明細書はまた、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を医薬として使用するために提供する。本明細書はまた、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を含む医薬組成物を医薬として使用するために提供する。本明細書はまた、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を医薬として使用するために提供する。本明細書はまた、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を医薬として使用するために提供する。
【0130】
本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供する。本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供する。本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を提供する。本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を提供する。
【0131】
本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を提供するものである。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を提供する。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を提供する。
【0132】
本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害の治療に使用するための式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供するものであり、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧からなる群から選択される;ここで本願化合物は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて使用される。本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を提供するものであり、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される;ここで本願化合物は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて使用されるものである。本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を提供するものであり、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される;ここで前記化合物は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて使用される。本明細書はまた、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による)を特徴とする疾患または障害の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を提供するものであり、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される;ここで前記化合物は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または有効な降圧療法を含む)と組み合わせて使用されるものである。
【0133】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を提供するものであって、前記化合物は、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用するためのものである。本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を含む医薬組成物を提供するものであって、前記化合物は、(1)心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);(2)心筋収縮を刺激することにより心機能を改善する治療法(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または(3)心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用するためのものである。
【0134】
本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を提供するものであって、前記化合物は、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用するためのものである。本明細書はまた、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物を提供するものであって、前記化合物は、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用するためのものである。
【0135】
本明細書はまた、医薬品の製造のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用も提供する。本明細書はまた、医薬品の製造のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用を提供する。本明細書はまた、医薬品の製造のための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の使用を提供する。本明細書はまた、医薬品の製造のための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0136】
本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療用医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療用医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用を提供するものである。本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療用医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の使用を提供するものである。本明細書はまた、肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療用医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物の使用も提供する。
【0137】
本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療用医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供するものである。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療用医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用を提供する。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療用医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の使用を提供する。本明細書はまた、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療用医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物の使用も提供する。
【0138】
本明細書はまた、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて、左心室肥大症(例えば、容積または圧力過負荷による)、前記疾患または障害(慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供するものである。本明細書はまた、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて、左心室肥大症(例えば、容積または圧力過負荷による)、前記疾患または障害(慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供するものである。本明細書はまた、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて、左心室肥大症(例えば、容積または圧力過負荷による)、前記疾患または障害(慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)を治療するための医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の使用を提供するものである。本明細書はまた、左心室肥大症(例えば、容積または圧力過負荷による)、前記疾患または障害(慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)の治療用医薬品を製造するために、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物の使用を、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて提供するものである。
【0139】
本明細書はまた、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連した病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩の使用を提供するものである。本明細書はまた、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連した病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容し得る塩を含む医薬組成物の使用を提供するものである。
【0140】
本明細書はまた、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連した病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療するための医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体の使用を提供するものである。本明細書はまた、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連した病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療するための医薬品を製造するための、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物の使用を提供するものである。
【0141】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、単に症状を緩和するだけでなく、HCMなどの疾患の自然経過を変えることができる。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、単に症状を緩和するだけでなく、HCMおよびその他の疾患の自然経過を変えることができる。HCM患者に臨床的利益をもたらすメカニズムは、遺伝的な影響が存在するかどうかに拘わらず、類似した病態生理を持つその他の形態の心疾患の患者にも及ぶ可能性がある。例えば、拡張期における心室の弛緩を改善することによるHCMに対する有効な治療法は、拡張期機能不全を特徴とするより広範な集団においても有効であると考えられる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、症状の根本原因を特異的に標的とするか、または別の下流経路に作用することができる。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、症状の根本原因を特異的に標的とするか、または別の下流経路に作用するために使用することができる。したがって、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、駆出率が保持された心不全、虚血性心疾患、狭心症または拘束型心筋症に罹患している患者にも恩恵を与えることができる。従って、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体もまた、駆出率が保持された心不全、虚血性心疾患、狭心症または拘束型心筋症に罹患している患者に恩恵を与えることができる。また、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療(弁の修復/置換、有効な降圧療法)と組み合わせることで、容積または圧力過負荷による左心室肥大;例えば、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症または慢性全身性高血圧症の心室リモデリングを健全に促進することができる。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体もまた、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療(弁の修復/置換、有効な降圧療法)と組み合わせることで、容積または圧力過負荷による左心室肥大;例えば、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症または慢性全身性高血圧症の心室リモデリングを健全に促進することができる。左心室充満圧を低下させることにより、肺水腫および呼吸不全のリスクを軽減することができる。機能的な僧帽弁閉鎖不全症を軽減または解消し、左心房圧を低下させることにより、発作的または永続的な心房細動のリスクを軽減し、それに伴い、動脈血栓塞栓症(これらに限定しないが脳動脈塞栓症を含む)の合併症リスクを低下することができる。動的および/または静的な左心室流出路障害を軽減または解消することにより、短期および長期の合併症のリスクを伴う外科的または経皮的な中隔縮小治療を必要とする可能性を低下することができる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、HCMに関連する慢性的な虚血状態の重症度を軽減し、それにより、植込み型除細動器を装着した患者における心臓突然死(SCD)またはそれに相当するリスク(頻繁なおよび/または反復性のICD放電)および/または潜在的に毒性のある抗不整脈薬の必要性を低下することができる。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、HCMに関連する慢性的な虚血状態の重症度を軽減し、それにより、植込み型除細動器を装着した患者における心臓突然死(SCD)またはそれに相当するリスク(頻繁なおよび/または反復性のICD放電)および/または潜在的に毒性のある抗不整脈薬の必要性を低下することができる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、潜在的な毒性、薬物-薬物相互作用および/または副作用を伴う併用薬の必要性を軽減または排除する上で、価値があると考えられる。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、潜在的な毒性、薬物-薬物相互作用および/または副作用を伴う併用薬の必要性を軽減または排除する上で、価値があると考えられる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、間質性心筋線維症の低下および/またはその進行の遅滞、左心室肥大化の抑制または回復をもたらし得る。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、間質性心筋線維症の低下および/またはその進行の遅滞、左心室肥大化の抑制または回復をもたらし得る。
【0142】
治療対象となる疾患および対象の症状に応じて、本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、胸腔内注射または点滴、皮下注射または移植)により、インプラント(例えば、化合物をステントデバイスに結合させる場合など)により、吸入スプレー、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または局所的な投与経路により投与されてもよく、各投与経路に適した従来の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含む適切な投与単位の製剤に、単独で、または一緒に製剤化することができる。
【0143】
治療対象となる疾患および対象の症状に応じて、本明細書で提供される(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、胸腔内注射または点滴、皮下注射または移植)により、インプラント(例えば、化合物をステントデバイスに結合させる場合など)により、吸入スプレー、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または局所的な投与経路により投与されてもよく、各投与経路に適した従来の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含む適切な投与単位の製剤に、単独で、または一緒に製剤化することができる。
【0144】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩または式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物は、1日に1~4回、好ましくは1日に1または2回のレジメンで投与されてもよい。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンまたは(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体を含む医薬組成物は、1日に1~4回、好ましくは1日に1または2回のレジメンで投与されてもよい。
【0145】
しかし、特定の患者に対する具体的な投与量の範囲および投与頻度は様々であり、用いた特定の化合物または医薬的に許容される塩の活性、その化合物または医薬的に許容される塩の代謝安定性および作用期間、対象の年齢、体重、遺伝的特徴、一般的な健康状態、性別および食事、さらには投与様式および時間、排出率、薬物の組み合わせ、治療を受ける対象の特定の症状の重症度など、様々な要因に依存することが理解されるであろう。
【0146】
本明細書で提供される式(I)の化合物、式(I)の化合物の医薬的に許容される塩および/または医薬組成物は、本明細書で提供される化合物および組成物が有効である疾患または症状の治療、防止、抑制または緩和において使用される追加の治療薬と組み合わせて使用され得る。(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体および/または本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で提供される化合物および組成物が有用である疾患または症状の治療、防止、抑制または緩和に使用される別の薬物と組み合わせて使用され得る。そのような追加の治療薬は、本明細書で提供される化合物または組成物と同時または順に、その目的で一般的に使用される経路および量で投与されてもよい。本明細書で提供される化合物または組成物が、1以上の別の薬物と同時に使用される場合、本明細書で提供される化合物または組成物のみならず、そのような別の薬物を含む医薬組成物が好ましい。したがって、本明細書で提供される医薬組成物には、本明細書で提供される化合物または組成物に加えて、1以上の別の活性成分または治療剤を含むものも挙げられる。適切な追加の有効な薬剤としては、例えば、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止する治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗剤または神経エンドペプチダーゼ阻害剤);心筋収縮を刺激することによって心機能を改善する治療薬(例えば、β-アドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);ならびに心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬など)が挙げられる。本明細書で提供される式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩と、第2の有効成分との重量比は、変更されてもよく、各成分の有効量に依存する。一般的には、それぞれの有効量が使用される。
【0147】
本明細書の化合物が別の治療薬と組み合わせて投与される場合、別の治療薬は、式(I)の化合物と同時に、別々に、または連続して投与することができる。厳密な投薬レジメンは、治療剤の特性に適合するものである。本明細書の化合物が、別の治療薬と組み合わせて投与される場合、別の治療薬は、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体と同時に、別々に、または順に投与することができる。厳密な投薬レジメンは、治療薬の特性に適合する量である。
【実施例】
【0148】
略語:ACN:アセトニトリル;aq:水溶液;Ar:アルゴン;CH2Cl2:ジクロロメタン;CH3CN:アセトニトリル;CH3OH:メタノール;Cs2CO3:炭酸セシウム;DCM:ジクロロメタン;DIEA:ジイソプロピルエチルアミン;DMF:ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;equiv.:当量;Et2O:ジエチルエーテル;EtOAc:酢酸エチル;EtOH:エタノール;hまたはhr:時間;HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロホスフェート、N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド;HCl:塩化水素;H2O:水;IPA:イソプロピルアルコール;iPr2O:ジイソプロピルエーテル;K2CO3:炭酸カリウム;LiHMDS:リチウムヘキサメチルジシラザン;MeOH:メタノール;MgSO4:硫酸マグネシウム;min:分;mL:ミリリットル;MWまたはμW:マイクロウェーブ(マイクロウェーブ反応器内で為される反応);NaBH4:水素化ホウ素ナトリウム;NaBH3CN:水素化シアノホウ素ナトリウム;NaCl:塩化ナトリウム;NaBH3CN:水素化シアノホウ素ナトリウム;NaH:水素化ナトリウム;NaHCO3:炭酸水素ナトリウム;NaOH:水酸化ナトリウム;NaOMe:ナトリウムメトキシド;Na2SO4:硫酸ナトリウム;n-BuOH:n-ブタノール;NH4Cl:塩化アンモニウム;pH:-log[H+];RT:室温;SOCl2:塩化チオニル;TFA:トリフルオロ酢酸;THF:テトラヒドロフラン;THP:テトラヒドロピランまたはテトラヒドロピラニル;およびZn:亜鉛粉末。全ての実験は、特定の安全注意事項および必要な個人用保護器具を備えたドラフトチャンバー内で行われた。
【0149】
実施例1:合成
中間実施例1:(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(1-4)の製造
スキームI-1
【化17】
【0150】
工程1.(S,E)-N-(3-フルオロベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(1-2)の合成
1000mL丸底フラスコに、Ar雰囲気下において、3-フルオロベンズアルデヒド(50g,0.40mol)、(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(50g,0.41mol)、Cs2CO3(157g,0.48mol)およびジクロロメタン(500mL)を加えた。室温で4時間攪拌した後に、反応混合物を、メチル tert-ブチルエーテル(MTBE)(1000mL)で希釈した。次に、混合物を濾過して、濾液を濃縮して、粗生成物1-2(87g,95%)をオフホワイト固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):228[M+H]+;1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.55 (d, 1H),7.63 - 7.48 (m, 2H), 7.41 - 7.48 (td, J = 8.0, 5.5 Hz, 1H), 7.17 - 7.7.26 (m, 1H), 1.26 (d, J = 2.6 Hz, 9H).
【0151】
工程2.エチル(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパノエート(1-3)の合成
Zn(38g,0.58mmol)/テトラヒドロフラン(600mL)の懸濁液に、テトラヒドロフラン(250mL)中の1-2(53.5g,0.24mol)およびエチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテート(120g,0.59mol)の溶液を、70℃で40分間、Ar雰囲気下において攪拌しながら添加した。70℃で更に30分間攪拌した後に、反応混合物を濾過して、濾液を濃縮した。残留物を、EtOAc(1000mL)で希釈した。次いで、得られる混合物を、飽和クエン酸水溶液(500mL)で洗い、無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、1-3(50g,60%)を黄色油状物として得た。LC-MS(ES,m/z):352[M+H]+.
【0152】
工程3.(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(1-4)
1-3(80g,0.23mol)/テトラヒドロフラン(1000mL)の溶液を、1N NaOH水溶液(350mL)に、室温でAr雰囲気下において加えた。室温で30分間攪拌した後に、反応混合物のpH値を、1N クエン酸水溶液を用いて5に調整した。得られる混合物を、酢酸エチルで抽出した(1000mLx3)。次いで、合わせた有機抽出物を、塩水(500mL)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を、Flash-Prep-HPLCにより精製して(カラム:C18 シリカゲル;移動相:60分かけてCH3CN/H2O=10/90(v/v)をCH3CN/H2O=95/5(v/v)へと増加させる;検出器:UV254nm)、1-4(30g,41%)を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):324[M+H]+;1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 14.97 (s, 1H), 7.48 - 7.36 (m, 2H), 7.32 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.23 - 7.13 (m, 1H), 6.56 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 4.98 (m, 1H), 1.01 (s, 9H).
【0153】
中間実施例2:1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピペリジン-2,4,6-トリオン(2-3)の製造
スキームI-2
【化18】
【0154】
工程A-1.1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ウレア(2-2)(方法A)の合成
2-1(24g,0.24mol)/DCM(3000mL)の溶液に、イソシアナトトリメチルシラン(30g,0.26mol)を、0℃でAr雰囲気下において加えた。室温で終夜攪拌した後に、反応を、MeOH(20mL)を加えてクエンチした。溶媒を除去して、残留物をエーテル(50mL)でトリチュレートした。次に、懸濁液を濾過して、固体をエーテル(500mLx3)で洗い、真空で乾燥させて、2-2(34g,68%)を白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 5.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.37 (s, 2H), 3.79 (m, 2H), 3.63 - 3.43 (m, 1H), 3.32 (m, 2H), 1.70 (m, 2H), 1.29 (m, 2H).
【0155】
工程2.1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピペリジン-2,4,6-トリオン(2-3)の合成
NaOMe(20g,0.38mol)/MeOH(3000mL)の溶液に、2-2(34g,0.24mol)を、Ar雰囲気下において室温で加えて、次いで1,3-ジメチルプロパンジオエート(470g,0.36mol)を加えた。80℃で終夜攪拌した後に、反応混合物を濃縮して、残留物を、水(50mL)で希釈した。次に、得られる混合物のpH値を、濃HCl水溶液を0℃で加えることにより2に調整した。懸濁液を濾過して、固体を水で洗い、45℃で24時間、真空で乾燥させて、2-3(30g,60%)を白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 11.25 (s, 1H), 4.69 (m, 1H), 3.91 (m, 2H), 3.60 (s, 2H), 3.33 (m,2H), 2.43 (m, 2H), 1.59 - 1.40 (m, 2H).
【0156】
工程B-1.フェニルカルバメート(2-5)の合成
飽和アンモニア水溶液(50mL)およびDCM(50mL)の混合溶液に、2-4(30g)/DCM(45mL)の溶液を0℃で加えた。0℃で4時間攪拌した後に、反応混合物を濾過して、固体を水で洗い、45℃の真空で12時間乾燥させて、2-5(18.3g,70%)を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):138[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 7.42 - 7.32 (m, 2H), 7.24 - 7.15 (m, 1H), 7.13 - 7.04 (m, 2H), 6.89 (br, 2H).
【0157】
工程B-2.1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ウレア(2-2)の合成(方法B)
THF(130mL)中の2-5(18.3g,0.13mol)、DIEA(17.3g,0.13mol)および2-1(13.5g,0.13mol)の混合物を、Ar雰囲気下において、70℃で3時間攪拌した。次いで、懸濁液を濾過して、固体をエーテル(100mL)で洗い、45℃で12時間、真空で乾燥させて、2-2(18.3g,95%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 5.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.37 (s, 2H), 3.78 (m, 2H), 3.51 (m, 1H), 3.32 (m, 2H), 1.69 (m, 2H), 1.28 (m, 2H).
【0158】
中間実施例3:(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(3-3)の製造
スキームI-3
【化19】
【0159】
工程1.(R,E)-N-(3-フルオロベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(4-1)の合成
DCM(60mL)中の1-1(5.0g,40.3mmol)、(R)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(5.1g,42.2mmol)およびCs2CO3(15.7g,48.25mol)の混合物を、室温で終夜、Ar雰囲気下において攪拌した。次に、反応混合物を、エーテル(200mL)で希釈して、次いで濾過した。濾液を濃縮して、残留物を真空乾燥させて、粗生成物3-1(10g)を白色固体として得て、これをさらなる精製をせずに次工程に用いた。LC-MS(ES,m/z):228[M+H]+;1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 8.58 (s, 1H), 7.88 - 7.73 (m, 2H), 7.60 (m, 1H), 7.45 (m, 1H), 1.19 (s, 9H).
【0160】
工程2.エチル(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパノエート(3-2)の合成
THF(30mL)中の粗生成物3-1(3.0g,13.2mmol)、TMEDA(3.6mL)およびエチル 2-フルオロアセテート(2.1g,19.8mol)の溶液に、LiHMDS(THF中で1M,19.8mL)を、-78℃で30分間かけてAr雰囲気下において滴加した。-78℃で1時間攪拌した後、反応を、2N HCl水溶液(45mL)を-78℃で加えてクエンチした。反応混合物を濃縮して、大部分のTHFを除いて、次いでEtOAc(100mLx3)で抽出した。次に、合わせた有機抽出物を、塩水で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗生成物3-2(4.6g)をオフホワイトの固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):334[M+H]+.
【0161】
工程3.(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(3-3)の合成
粗生成物3-2(6g,18mmol)/THF(60mL)の溶液に、1N NaOH水溶液(36mL,36mmol)を室温で加えた。室温で終夜攪拌した後に、反応混合物を、水(100mL)で希釈した。得られる混合物を、EtOAc(100mLx2)で抽出した。水層を、飽和水溶液クエン酸を用いてpH5に調整して、得られる混合物を、EtOAc(200mLx3)で抽出した。次いで、合わせた有機抽出物を、塩水(100mL)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を、分取HPLCにより精製して(カラム:XBrIdge Prep OBD C18 column, 19 x 250 mm, 5um;移動相:水(0.05%TFA(v/v))およびACN(8分間の間で3.0%(v/v)から17.0%(v/v)まで);検出器:UV220nm)、3-3(1.5g,27%)を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):306[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 12.83 (s, 1H),7.53 - 7.44 (m, 1H), 7.42 - 7.35 (m, 2H), 7.12 (m, 1H), 6.12 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 5.33 (m, 1H), 4.86 (m, 1H), 1.14 (s, 9H).
【0162】
比較実施例1:(S)-6,6-ジフルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(C-1)の製造
スキームC-1
【化20】
【0163】
工程1.(S)-N-((1S)-2,2-ジフルオロ-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキソ-3-(2,4,6-トリオキソ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ヘキサヒドロピリミジン-5-イル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(C-A)の合成
DMF(30mL)中の1-4(2.69g,8.32mmol)、HATU(4.75g,12.49mmol)および2-3(2.65g,12.49mmol)の溶液に、DIEA(2.15g,16.63mmol)を0℃で滴加した。室温で終夜攪拌した後に、終夜、反応混合物を、飽和水溶液NaHCO3(100mL)および氷水(100mL)で希釈した。混合物を、EtOAc(100mLx3)で抽出して、合わせた有機抽出物を、塩水で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗製C-A(1.23g,29%)を黄色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):518[M+H]+.
【0164】
工程2.(S)-N-((1S)-2,2-ジフルオロ-1-(3-フルオロフェニル)-3-(2,4,6-トリオキソ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ヘキサヒドロピリミジン-5-イル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(C-B)の合成
酢酸(15mL)中のC-A(1g,1.93mmol)およびシアノ水素化ホウ素ナトリウム(606.8mg,9.66mmol)の混合物を、室温で1時間攪拌した。次に、反応混合物を、氷水(50mL)で希釈して、EtOAc(50mLx3)で抽出した。合わせた有機抽出物を、塩水で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗製C-B(1.28g)を白色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES, m/z):504[M+H]+.
【0165】
工程3.5-((S)-3-アミノ-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロピル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(C-C)の合成
粗製C-B(1.28g)/エタノール(18mL)の溶液に、塩化チオニル(2.7mL)を0℃で3分かけて加えた。室温で1時間攪拌した後に、反応混合物を濃縮して、真空で乾燥させて、粗製C-C(800mg)を黄色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):400[M+H]+.
【0166】
工程4.(S)-6,6-ジフルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(C-1)の合成
密封バイアル内の粗製C-C(800mg)/CH3CN(10mL)の混合物を、マイクロウェーブ反応器内において120℃で20分間攪拌した。次に、混合物を、水(50mL)で希釈して、得られる混合物を、EtOAc(50mLx3)で抽出した。合わせた有機抽出物を、塩水で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を、分取HPLCにより精製して(カラム:XBrIdge C18 OBD Prep Column, 19 mm x 250 mm;移動相:8分以内で、水(0.05%(v/v)NH3・H2O)/CH3CN=11.0%(v/v)~30.0%(v/v);検出器:UV254nm)、C-1(197mg,27% C-Aからの3工程にて)を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):382[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 10.67 (s, 1H), 7.51-7.45 (m, 1H), 7.32 - 7.14 (m, 3H), 7.05 (s, 1H), 5.04 - 4.73 (m, 2H), 4.02 - 3.80 (m, 2H), 3.36-3.30 (m, 2H), 2.95 - 2.72 (m, 1H), 2.66 - 2.52 (m, 3H), 1.51 - 1.33 (m, 2H).
【0167】
実施例1-1:(6S,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(1)の製造
スキーム1
【化21】
【0168】
工程1~4.(6S,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(1)の合成
(S)-6,6-ジフルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(C-4)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(1-4)を、(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(3-3)で置き換えて、1を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):364[M+H]+;1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 10.18 (s, 1H), 7.61 - 7.37 (m, 1H), 7.31 - 7.11 (m, 3H), 6.52 (s, 1H), 5.08 (m, 1H), 4.88 (m, 1H), 4.72 (d, J = 26.8 Hz, 1H), 3.93 (m, 2H), 3.34 (m, 2H), 2.74 - 2.53 (m, 4H), 1.46 - 1.31 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -113.18, -192.36.
【0169】
実施例1-2:(6R,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2)の製造
スキーム2
【化22】
【0170】
工程1~2.(2S,3S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(2B)の合成
(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(1-4)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートをエチル 2-ブロモ-2-フルオロアセテートで置き換えて、2Bをオフホワイトの固体として得た。LC-MS(ES,m/z):306[M+H]+.
【0171】
工程3~6.(6R,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2)の合成
(S)-6,6-ジフルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(C-4)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、(S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2,2-ジフルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(1-4)を、(2S,3S)-3-(((S)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)プロパン酸(2B)で置換して、2を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):364[M+H]+; 1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 10.66 (s, 1H), 7.51 - 7.37 (m, 1H), 7.21 - 7.08 (m, 3H), 6.76 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 5.29 - 5.01 (m, 1H), 4.84 (d, J = 10.2 Hz, 2H), 3.97 - 3.86 (m, 2H), 3.30 (m, 2H), 2.58 (m, 3H), 2.12 - 1.88 (m, 1H), 1.46 - 1.34 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -112.59, -175.93.
【0172】
実施例1-3:(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(3)の製造
スキーム3
【化23】
工程1.(R,E)-N-(2-フルオロ-5-メチルベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(3B)の合成
DCM(100mL)中の2-フルオロ-5-メチルベンズアルデヒド(3A)(5g,36.2mmol)、Cs
2CO
3(17.6g,54.0mmol)および(R)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(4.6g,38.0mmol)混合物を、室温で終夜、Ar雰囲気下において攪拌した。反応混合物を濾過して、濾液をエーテル(150mL)で希釈した。次に、得られる懸濁液を濾過した。濾液を濃縮して、残留物を真空乾燥させて、3B(8.7g,97%)を黄色油状物として得た。LC-MS(ES,m/z):242[M+H]
+;
1H NMR (400 MHz, d
6-DMSO): δ 8.87 (s, 1H), 7.76 (m, 1H), 7.29 (m, 1H), 7.03 (m, 1H), 2.37 (d, J = 1.0 Hz, 3H), 1.27 (s, 9H).
【0173】
工程2.エチル(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)プロパノエート(3C)の合成
無水THF(40mL)中の3B(4g,16.6mmol)、エチル 2-フルオロアセテート(2.6g,24.6mmol)およびTMEDA(4.8mL)の溶液に、Ar雰囲気下において、-78℃で30分間かけて、LiHMDS(THF中で1M,24.6mL,24.6mmol)を滴加した。-78℃で1時間攪拌した後に、反応を、混合物の内部温度を<-20℃で維持しながら、1N HCl水溶液(50mL)を加えることによりクエンチした。次に、混合物を濃縮して、大部分の有機溶媒を除去して、次いでEtOAc(100mLx3)で抽出した。合わせた有機抽出物を、塩水(100mL)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗製3C(6.0g)を黄色油状物として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES, m/z):348[M+H]+.
【0174】
工程3.(2R,3S)-3-(((R)-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-2-フルオロ-3-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)プロパン酸(3D)の合成
3C(6.0g,17.3mmol)/THF(40mL)の溶液に、1N NaOH水溶液(34.6mL,34.6mmol)を室温で加えた。室温で1時間攪拌した後に、反応混合物に氷水(50mL)を加えた。得られる混合物を、EtOAc(100mLx2)で抽出した。水層を、飽和水溶液クエン酸を用いてpH5に調整して、次いでEtOAc(100mLx3)で抽出した。次に、合わせた有機抽出物を、塩水(100mL)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を、分取HPLCにより精製して(カラム:XBrIdge Prep OBD C18 Column, 19 x 250 mm, 5um;移動相:水(0.05%TFA)およびACN(10分間で28.0%ACNを36.0%まで);検出器:UV220nm)、3D(2g,36%)を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):320[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 13.57 (br, 1H), 7.55 (dd, J = 7.5, 2.2 Hz, 1H), 7.23 - 6.94 (m, 2H), 6.04 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.37 - 4.86 (m, 2H), 2.29 (s, 3H), 1.12 (s, 9H).
【0175】
工程4.(R)-N-((1S,2R)-2-フルオロ-1-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-オキソ-3-(2,4,6-トリオキソ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ヘキサヒドロピリミジン-5-イル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(3E)の合成
3D(700mg,2.19mmol)、2-2(698mg,3.29mmol)およびHATU(1.25g,3.29mmol)/DMF(10mL)の溶液に、Ar雰囲気下において、DIEA(849mg,6.57mmol)を0℃で加えた。室温で2時間攪拌した後に、反応を、飽和水溶液ナトリウム炭酸水素塩(30mL)を加えてクエンチして、得られる溶液を酢酸エチル(50mLx3)で抽出した。合わせた有機抽出物を、塩水(50mLx2)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗生成物3E(1.3g)を白色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):514[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 12.16 (br, 1H), 7.66 - 7.45 (m, 1H), 7.23 - 6.98 (m, 2H), 6.37 (m, 1H), 6.13 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 5.22 (m, 1H), 4.79 (m, 1H), 3.94 (m, 2H), 3.35 (t, J = 11.7 Hz, 2H), 2.52 - 2.39 (m, 2H), 2.29 (s, 3H), 1.49 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 1.04 (s, 9H).
【0176】
工程5.(R)-N-((1S,2S)-2-フルオロ-1-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(2,4,6-トリオキソ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ヘキサヒドロピリミジン-5-イル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(3F)の合成
粗生成物3E(1.3g,2.53mmol)/AcOH(10mL)の溶液を、0℃で、Ar雰囲気下において、NaBH3CN(398mg,6.33mmol)に加えた。室温で1時間攪拌した後に、反応混合物を、氷水(20mL)に添加して、得られる溶液をEtOAc(50mLx3)で抽出した。次いで、合わせた有機抽出物を、塩水(50mL)で洗い、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、残留物を真空乾燥させて、粗製3F(1.3g)を白色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES, m/z):500[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 11.31 (d, J = 28.1 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.27 - 6.84 (m, 2H), 6.11 - 5.78 (m, 2H), 5.08 - 4.43 (m, 3H), 3.87 (m, 3H), 2.29 (s, 6H), 1.99 (s, 1H), 1.53 - 1.28 (m, 2H), 1.10 (d, J = 2.1 Hz, 10H).
【0177】
工程6.5-((2S,3S)-3-アミノ-2-フルオロ-3-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)プロピル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(3G)の合成
粗製3F(1.3g,2.60mmol)/エタノール(10mL)の溶液を、塩化チオニル(334mg)に0℃で加えた。室温で1時間攪拌した後に、反応混合物を濃縮して、残留物を真空乾燥させて、粗製3G(1.0g)を白色固体として得て、これを更なる精製をせずに次工程に使用した。LC-MS(ES,m/z):396[M+H]+.
【0178】
工程7.(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(3)の合成
粗製3G(1.0g,2.53mmol)/CH3CN(15mL)の混合物を、120℃で30分間攪拌しながらマイクロウェーブ反応器に入れた。次に、混合物を濃縮して、残留物を、分取HPLCにより精製して(column:C18シリカゲル;移動相:40分以内でCH3CN:H2O=20:80(v/v)をCH3CN:H2O=80:20(v/v)へと増加させる;検出器:UV254nm)、化合物3(302mg,32%)を白色固体として得て、これを形態1の多形体として同定した(実施例2を参照)。LC-MS(ES,m/z):378[M+H]+;1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 10.20 (s, 1H), 7.38 - 7.05 (m, 3H), 6.45 (s,1H), 5.11 - 4.81 (m, 3H), 3.89 (dd, J = 10.8, 3.9 Hz, 2H), 3.34 - 3.27 (m, 3H), 2.76 - 2.48 (m, 4H), 2.28 (s, 3H), 1.39 - 1.36 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -123.51 (t, J = 86.5 Hz), -191.57 (d, J = 129.34 Hz).
【0179】
実施例1-4:(6R,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(4)の製造
スキーム4
【化24】
【0180】
工程1-7.(6R,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(4)の合成
(6R,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、3-フルオロベンズアルデヒド(1-1)を、2-フルオロ-5-メチルベンズアルデヒド(3A)で置き換えて、4を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):378[M+H]+;1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 10.69 (s, 1H), 7.19 - 7.09 (m, 2H), 6.98 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.62 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.08 - 4.84 (m, 3H), 3.91 (dd, J = 11.2, 3.6 Hz, 2H), 3.32 (m, 2H), 2.68 - 2.55 (m, 4H), 2.27 (s, 3H), 2.17 - 2.03 (m, 1H), 1.42 - 1.39 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -124.08, -175.61.
【0181】
実施例1-5:(6R,7R)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(5)の合成に関する製造
スキーム5
【化25】
【0182】
工程1~6.(6R,7R)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(5)の合成
(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(3)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、(R,E)-N-(2-フルオロ-5-メチルベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(3B)を(S,E)-N-(2-フルオロ-5-メチルベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(4B)で置き換えて、5を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):378[M+H]+;1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 10.72 (s, 1H), 7.85 - 7.11 (m, 3H), 6.45 (s,1H), 5.14 - 3.93 (m, 3H), 3.92 (dd, J = 10.4, 5.2 Hz, 2H), 3.52 - 3.29 (m, 3H), 2.82 - 2.66 (m, 4H), 2.31 (s, 3H), 1.39 - 1.36 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -123.49, -191.34.
【0183】
実施例1-6:(6S,7R)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(6)の製造
スキーム6
【化26】
【0184】
工程1~6.(6S,7R)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(6)
(6R,7S)-6-フルオロ-7-(3-フルオロフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2)を製造するために記述した方法と同じ方法に従って、(S,E)-N-(3-フルオロベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(1-2)を(R,E)-N-(2-フルオロ-5-メチルベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(3B)で置き換えて、6を白色固体として得た。LC-MS(ES,m/z):378[M+H]+;1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ 10.69 (s, 1H), 7.21 - 7.09 (m, 2H), 6.98 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.11 - 4.84 (m, 3H), 3.92 (dd, J = 11.1, 3.9 Hz, 2H), 3.35 - 3.29 (m, 2H), 2.69 - 2.52 (m, 4H), 2.27 (s, 3H), 2.14 - 2.00 (m, 1H), 1.43 - 1.39 (m, 2H);19F NMR (376 MHz, d6-DMSO): δ -124.36, -175.43.
【0185】
追加の化合物を、上記した方法と同様の方法を用いて製造した。
【表1】
【表2】
【0186】
実施例2
単結晶X線分析-形態1
SXRD分析は、密封管で生成される単色Cu Kα(λ1.54178Å)線を用いてAgilent Technologies(Dual Source)のSuperNova回折計にて行った。回折計には、120(1)Kでのデータ収集が可能なオックスフォード・クライオシステムズ社製の低温装置が取り付けられており、結晶はParatoneオイルで保護される。収集したデータを、CrysAlisProソフトウェアパッケージ(Agilent Technologies, 2014)の一部として実装された多面結晶モデルに対するガウス積分に基づいて吸収効果を補正した。
【0187】
構造は、直接法(SHELXS97)
1によって解析され、OLEX2ソフトウェアパッケージを介してインターフェイスされたF
2上の完全最小二乗法(SHELXL97)
1によって展開された(
図4参照)。得られた画像を、OLEX2
2に従って処理した。
データを、収集して、解析し、直方性空間群P2
12
12
1に精密化して、PLATON
4のADDSYMM
3ルーチンを用いて高次のメトリック対称性を探索したが、いずれの高次の対称性も明らかにできなかった。全ての非水素原子を、フーリエマップに置いて、その位置を精密化してから、全ての非水素原子の熱運動を異方的に記述した。この構造の内で、1つの完全な3(実施例3の化合物とも云う)の分子が非対称単位にのみ位置していた。得られた回折データが弱かったため、Flackパラメーターは-0.0657、esdは0.7497と算出された(1477個のBijovetペアから計算され、97.6%の完全性を示す)。TWINコマンドおよびBASFコマンドを用いて構造の改良を試みたが、これ以上の改善は見られなかった。全ての水素原子は、固定化Uisoを用いた騎乗モデル(riding model)により、全てのCH、CH
2、NH基では1.2倍、全てのCH
3基では1.5倍に固定した算出位に置いた。最も高い残留フーリエピークは、C(16)から1.34e.Å
-3約0.68Å、最も深いフーリエホールはO(2)から-0.89e.Å
-3約0.58Åであることが判った。
【0188】
結晶データ-形態1
C19H21F2N3O3(M=377.39g/mol):直方性空間群P212121(no.19)、a=28.153(2)Å、b=6.6890(3)Å、c=9.1390(6)Å、V=1721.04(19)Å3、Z=4、T=120(1)K、μ(CuKα)=0.964mm-1、Dcalc=1.456g/cm3、30202反射測定値(10.18°<2θ<153.36°)、3570ユニーク(Rint=0.1117,Rsigma=0.0636)(これらを全ての計算値に使用した)。最終のR1は、0.1591(>2Sigma(I))およびwR2は0.3889であった(全てのデータ)。
【0189】
実施例1~3の化合物の形態1についてのX線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)データは、
図1A-1C、2および3に各々示される。
【0190】
生物学的実施例
化合物は、物理化学的特性、生化学的活性、細胞内活性、選択性プロファイル、薬物動態(PK)プロファイル、薬力学(PD)プロファイル、およびインビトロおよびインビボの様々なアッセイにおける安全性プロファイル、例えば、これに限定しないがミオシンATPアーゼアッセイ(ウシ心筋筋原線維系(bcMF)血清あり/なし、ウサギ骨格筋原線維系(rbskMF)、心筋細胞の収縮性および反応代謝物の同定など)を評価することによってプロファイリングされた。
【0191】
半減期が短ければ曝露定常状態に至るまでの時間が早くなるため、半減期の短い化合物を、より迅速な用量調整ができるように選択した。また、薬物候補に関する代謝性クリアランスについて、CYP2C19などの多型チトクロームP450(CYP)酵素に対する依存性を排除または最小化することにより、薬物代謝が遅い対象と速い対象との間に生じ得るヒトのPK変動を低減できる可能性がある。新薬候補に関する強力なCYP酵素誘導特性を排除または最小化することにより、薬物間の相互の可能性を回避できるという利点がある。骨格ミオシンよりも心臓ミオシンへの選択性が高い薬物候補は、ミオシンモジュレーター候補薬の薬物分布に関連した目的とするヒト薬物動態に対する利点を示した。骨格筋ミオシンに対する効力が低いミオシンモジュレーター候補薬は、骨格筋ミオシンとの結合性が低下するために骨格筋組織への分布が低下し、ヒトにおける分布量が減少し、半減期が減少することが予測された。前臨床試験では、薬物誘導性の肝毒性のリスクを低減しながら経口投与を可能とし得る化合物を最適に選択するために、薬物動態/薬力学試験を実施した。Lammert et al.(2008) Relationship Between Daily Dose of Oral Medications and idiosyncratic Drug-induced Liver injury; Search for Signals. Hepatology, 47: 2003-2009。
【0192】
KS溶解度アッセイ
ネガティブコントロールとしてレセルピン(7.4℃のPBSに対する溶解度<15μM)およびポジティブコントロールとしてベラパミル(7.4℃のPBSに対する溶解度>200μM)を用いて、低分子薬剤のPBS(pH7.4)に対する室温での溶解度を評価した。96ウェルプレートの各ウェルに、化合物の20mM DMSOストック溶液を2μL加え、次いで198μLのPBSを室温で加えた。室温で1.5時間振とうした後、混合液を96ウェルフィルタープレートで真空ろ過し、1ウェルあたり100μLの70%エタノールで事前洗浄した。その後、濾液70μLを、予め1ウェルあたり70μLのDMSOを入れた96ウェルのリーディングプレートウェルに加えた。ウェル内のサンプルの濃度は、DMSO中で確立された各化合物の標準曲線と比較して、UV検出によるLCでのインテグレーションに基づいて決定した。
【0193】
ミオシン阻害アッセイ(bcMF pCa6 IC50(μM))
心筋ミオシンからのADP(アデノシン二リン酸)の放出を、ピルビン酸キナーゼと乳酸デヒドロゲナーゼ(PK/LDH)からなる酵素結合系に結合させ、NADHの吸光度低下(340nm)を時間関数としてモニタリングする生化学的アッセイを用いて、低分子薬剤のウシ心筋ミオシンの酵素活性を阻害する能力を評価した。PKは、PEP(ホスホエノールピルビン酸)をピルビン酸に変換することで、ADPをATP(アデノシン三リン酸)に変換する。ピルビン酸塩は、その時にLDHがNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)をNAD(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換することで、乳酸塩に変換される。心筋ミオシンは、除膜された筋原線維形態のウシ心臓から得る。低分子薬剤を試験する前に、ウシ筋原線維のカルシウム反応性を評価し、筋原線維系統の50%活性化を達成するカルシウム濃度を、低分子薬剤の阻害活性を評価するための最終条件として選択した。全ての酵素活性を、12mMのPIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、2mMの塩化マグネシウムを含むpH6.8の緩衝液(PM12緩衝液)で測定した。最終アッセイ条件は、ウシ心筋原線維1mg/mL、0.4mM PK/LDH、50uM ATP、0.1mg/mL BSA(ウシ血清アルブミン)、10ppm 消泡剤、2mM BME、0.5mM NADHおよび筋原線維の50%活性化に必要な所望の遊離カルシウム濃度である1.5mM PEPとした。
【0194】
DMSO濃度を3.3%(v/v)に固定した条件で、30μLの容量で最終的に所定濃度の化合物が得られるように、DMSO中での化合物の希釈系を調製した。通常、1μLの希釈系を384ウェルプレートに添加し、10ポイントの用量反応を得た。ウシ心筋原線維、PK/LDHおよびカルシウム溶液(50%活性化を達成する)を含む溶液(14μL)を添加した後、ATP、PEPおよびNADHを含む溶液(15μL)を添加して酵素反応を開始した。反応の進行を、PerkinElmer Envisionプレートリーダーにより透明底のプレートを用いて常温で追跡した。プレートリーダーは、反応速度モードで340nmの吸光度を15分間読み取るように設定した。データは、時間に対する吸光度の反応の傾きとして記録した。時間に対する吸光度応答の傾きを、DMSOを含むプレートの傾きで正規化した。次に、この正規化された速度を、低分子濃度の関数としてプロットし、EXCEL XLfitを用いてデータを、4パラメータフィッティングを行った。IC50は、全反応の50%が阻害される濃度である。試験した最高濃度で50%の阻害が得られなかった薬剤は、試験した最高濃度よりも高いIC50として報告した(即ち、IC50>50μM)。
【0195】
ミオシン阻害アッセイ(bcMF血清pCa 6 IC50(μM))
10%ヒト血清の存在下で、ウシ心筋原線維系の50%活性化を達成するカルシウム濃度でのADP(アデノシン二リン酸)放出に関連するウシ心筋ミオシンの酵素活性阻害を行った。この方法は、10%のヒト血清を加えたこと以外、ウシ心筋ミオシン阻害アッセイ(bcMF pCa 6 IC50(μM))と同じである。
【0196】
ミオシン阻害アッセイ(rbskMF pCa 6 IC50(μM))
ウサギ骨格の心筋原線維系の50%活性化を達成するカルシウム濃度でのADP(アデノシン二リン酸)放出に関連するウサギ骨格ミオシンの酵素活性阻害を行った。方法は、ウシ心筋原繊維をウサギ骨格心筋原繊維に置き換えて、ウシ心筋ミオシン阻害アッセイ(bcMF pCa 6 IC50(μM))と同じ方法を行った。
【0197】
薬物動態的/薬力学(PK/PD)の関係
低分子化合物が収縮期の心機能を用量依存的に調節する能力を、イソフルラン麻酔のSDラットの心エコーを用いて非侵襲的に評価した。最初に、2.0mg/kg/hrで30~60分間連続して静脈内投与する前とその間(~3分毎)に、心機能および心拍数を連続的に測定した。その後、意識があるラットに、ビヒクルコントロール(0mg/kg PO、n=3)または3つの用量レベルの化合物3を経口投与した:LOW(2mg/kg PO,n=4)、MID(5mg/kg PO,n=4)またはHIGH(10mg/kg PO,n=5)の3種類の用量を経口投与した。これらの動物では、イソフルラン麻酔下で2つの異なる時点/日での心機能/心臓形状を記録した:投与前に1回(すなわちベースライン,2日目)および投与2時間後(0日目)、即ち曝露により定常状態に近づくことが知られており、反応ピークが予想される時間。これらの実験において、高周波トランスデューサおよび傍胸骨長軸経胸壁像(Vevo2100, Visual Sonic Inc.)を用いて、収縮能の指標である左心室分画短縮(FS)およびLVのサイズ/体積と心拍数を測定した。FSは、収縮末期(LVESd)と拡張末期(LVEDd)との間の左心室内のサイズ/直径の変化を拡張末期に正規化したものとして定義した(即ち、FS=100x[LVEDd-LVESd]/LVEDd)。LVの体積は、Teichholzモデルを考慮して算出した(LVV=7x[2.4+LVid]-1xLVid3)。全ての場合において、薬物動態的/薬力学(PK/PD)の関係を確立するために、各心エコー検査の時点毎に血液サンプルを採血した(尾静脈マイクロサンプリングにより)。
【0198】
心筋細胞の収縮力アッセイ
成体ラット心室筋細胞の収縮性を、IonOptix収縮性システムを用いたエッジ検出によって決定した。Tyrode緩衝液(137mMのNaCl、3.7mMのKCl、0.5mMのMgCl2、1.5mMのCaCl2、4mMのHEPES、11mMのグルコース)中の筋細胞のアリコートを、灌流チャンバー(Series 20 RC-27NE; Warner instruments)に入れ、カバースリップに付着させた後、Tyrode緩衝液を用いて37℃で灌流した。筋細胞を、1Hzおよび10Vで刺激して記録した。120~180ミクロンの細胞長、細胞長の3~8%に相当する基底短縮率、および1秒当たり100ミクロンより大きい収縮速度を有するペーシング前の静止状態の明確な条線を有する筋細胞のみを収縮実験のために使用した。化合物(0.3μM濃度)に対する反応を測定するために、まず心筋細胞を60秒間Tyrode緩衝液により灌流し、次に化合物を5分間投与した後、Tyrode緩衝液で140秒間洗浄する。データは、IonOptixソフトウェアを用いて連続的に記録される。収縮力データはIonwizardソフトウェア(IonOptix)を用いて分析する。各細胞について、10~20の収縮力トランジェントを平均して、ベースライン(化合物なし)および化合物処理条件を比較した。化合物の活性は、短縮率(FS)に対する影響によって測定され、ここで短縮率とは,収縮時の細胞のピーク長を、未処理細胞を100%として正規化した基準の細胞長で割った比率である。阻害率の測定値は、100%からFSの値を引いて算出される。
【0199】
反応性代謝物の同定
NADPHおよびグルタチオンを用いて賦活化したヒト肝ミクロソームとのインキュベーション中に形成されたグルタチオン付加体を検出することにより、低分子反応代謝物の形成をインビトロで決定する。
【0200】
方法:グルタチオン付加体形成のための小分子(30μM)の代謝は、リン酸カリウム緩衝液(0.1M,pH7.4)中において、37℃で1時間、96ウェルプレート(ウェル容量2mL)を用いて、NADPHの非存在下(ネガティブコントロールとして使用)およびNADPH(1mM)およびグルタチオン(GSH,10mM)の存在下で行った、ヒト由来の肝ミクロソーム(1mg/mLタンパク質)とのインキュベーション(200μL容積、n=3インキュベーション/処置、60分間のインキュベーション時間)にて評価された。肝ミクロソームとのインキュベーションを、ゆっくりと水平に振とうされる(30rpm)振とう水浴インキュベーター内で行った。化合物のインキュベーション濃度を30μMにするために、DMSOに溶解した3mMの基質ストック溶液を使用した。最終的なインキュベーション混合液には、148μLのリン酸カリウム緩衝液、10μLの肝ミクロソーム溶液(20mgタンパク質/mL)、3mM 基質溶液(2μL)を含んでおり、40μLのNADPH溶液(5mMをリン酸カリウム緩衝液に溶解したもの)の添加によりインキュベーションを開始した。NADPHを含まないインキュベーションには、40μLのリン酸カリウム緩衝液を加えた。インキュベーション後、20nMのカルバマゼピン内部標準物質と3%のギ酸を含む同量のアセトニトリルを加えて反応を終了させた。反応が終了したサンプルを遠心分離(4,600rpm,4℃,10分)した後、上清を96ウェルのLC-MSサンプル分析プレートに移して、1容量当量のHPLCグレードの水で希釈して、次いで液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS/MS)で分析する前にアルミホイルで密封した。
【0201】
分析物の同定:試験化合物および潜在的なGSH-付加体のLC-MS/MS検出(280nmのインラインUV検出による)は、Xcaliburソフトウェア(バージョン2.1.0,Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を用いて、親のプロトン化分子イオンMH+のm/zを小数点以下4桁まで、および予測されるGSH-付加体代謝物の対応するプロトン化分子イオン(m/z MH+親+305.0681amu)を用いて選択されたイオンクロマトグラフィープロファイルを抽出することに重点を置いた。肝ミクロソーム抽出液中のインビトロでの相対的なGSH付加体の量は、Xcaliburソフトウェア(バージョン2.1.0)を用いて、NADPHおよびGSHを付加したインキュベーション抽出液から検出されたGSH付加体と、-NADPHを含むインキュベーション抽出液からの親化合物の対応するLC/UVピーク面積との間で得られた280nmのピーク面積におけるLC/UV吸光度の比を用いて評価した。GSH付加体形成の程度は、グルタチオン付加体のLC/UVピーク面積を、対照(-NAPDH、-GSH)インキュベーション抽出物の分析から決定された対応する親HCM-1NGアナログのLC/UVピーク面積で割ることにより、280nmでのインラインLC-UV検出を用いるLC-MS/MS分析により決定した。
【0202】
材料:収集されたヒト男性(HLM, 50人のドナー)の肝ミクロソームを、Bioreclamation IVT社(Baltimore, MD)から入手した。グルタチオン(GSH)およびNADPHは、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)から購入した。液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)に使用した溶媒は、全てクロマトグラフィーグレードのものを使用した。
【0203】
LC-MS条件:肝臓ミクロソームおよび肝細胞と共にインキュベートした抽出物を、インラインダイオードアレイ検出器およびOAS-3300TXRSオートサンプラー(40μL インジェクション容量)を含むDionex UltiMate 3000 UHPLCが一体となったThermo Electron LTQ Orbitrap XL質量分光計でLC-MSおよびLC-MS/MSにより特徴分析した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)を、5.01kV、シース液の流速35.02、aux流速9.99、電流2.6uA、毛細血管温度325℃および毛細血管電圧15.99で保持による、ポジティブイオンモードにて行った。真空条件を使用し、使用したイオンゲージ圧は2.33x10-5 Torrであり、還流ゲージ圧は0.90Torrであった。ポジティブイオンモードのフルスキャン(m/z100~m/z1000)のLC-MS分析は、0.73秒のスキャン時間および10Vのソース衝突エネルギーで行った。使用したタンデムMS/MS条件は、2mTorrヘリウム衝突ガスおよび35eVの衝突ポテンシャルであった。Xcalibur software(version 2.1.0, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用して、全てのデータを得た。
【0204】
【0205】
Orbitrap(15,000分解能)フルスキャンマススペクトル中の最大質量のMS/MSスペクトルを収集するデータ依存性スキャンを利用した。
【0206】
HPLCの条件:HCM-1NG化合物および対応するグルタチオン付加体のクロマトグラフィー分離のために、インキュベーション抽出物を、Phenomenex Kinetex(登録商標), 2.6μm, C18, 100Å, 100x2.1mm逆相カラムにより、カラムオーブン温度30℃でクロマトグラフィーを行った。クロマトグラフィーの分離は、ESI源に0.3 mL/分の流量で、30分間かけて逆相グラジエント溶出を行い、グラジエント水性移動相の溶媒Aは水(0.1%ギ酸(v/v)を含有)であり、有機移動相(溶媒B)はアセトニトリル(0.1%ギ酸(v/v)を含有)で構成される。溶出は、最初の水性溶媒A移動相を95%とし、20分かけて溶媒Aを50%まで直線的に減少させ、その後3.5分かけて溶媒Aを0%まで直線的に減少させ、1分間0%で一定に保った。最終的に、0.5分かけて95%溶媒Aへとグラジエントを直線的に増加させた後、次の分析の前に95%溶媒Aで5分間の平衡化を行った。
【表4】
【0207】
生物学的評価の表
【表5】
表1Bにおける「0.3μMでのFSの阻害率」の欄では、+は33%未満の左室内径短縮率の阻害、++は33%~66%までの左室内径短縮率の阻害、+++は66%以上の左室内径短縮率の阻害(すなわち、+++で最大の阻害)を表す。
【0208】
【0209】
上記に示した通り、これらの化合物は、反応代謝物が最小量であるか、または反応代謝物が発生しないことを示した。
【0210】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、PANalytical X'pert proを用いて、3~35°2θの範囲で試料を走査して行った。サンプルを、軽く粉砕して凝集物を取り除き、カプトンまたはマイラーポリマーフィルムでサンプルをサポートしてマルチウェルプレートに載せた。次に、このマルチウェルプレートを回折計にセットして、40kV/40mAのジェネレーター設定を用いてトランジションモード(ステップサイズ0.0130°2θ)で作動するCuκ線(α1λ=1.54060Å;α2=1.54443Å;β=1.39225Å;α1:α2比=0.5)を用いて分析した。
【0211】
熱重量分析(TGA)
約5mgの材料をアルミ製のオープンパンに秤量し、同時熱重量/示差熱分析装置(TG/DTA)に入れて、室温に保持した。その後、試料を10℃/分の速度で20℃~400℃まで加熱し、その間の試料重量の変化と示差熱現象(DTA)を記録した。パージ用ガスとして窒素を300cm3/分の流量で使用した。
【0212】
示差走査熱量測定(DSC)
約5mgの材料をアルミニウム製のDSCパンに秤量し、穴の開いたアルミニウム製のフタで非熱的に密閉した。その後、サンプルパンを20℃に冷却したセイコーDSC6200(冷却器付き)に入れて、保持した。安定したヒートフロー応答が得られた後、サンプルおよび参照物をスキャンレート10℃/分で最大330℃まで加熱し、得られたヒートフロー応答をモニターした。パージガスには窒素を50cm3/minの流量で使用した。変調型DSCを、振幅=0.32℃、周波数=0.017Hzにて行った。
【0213】
本明細書は、以下の項目もまた含む:
項目1.式:
【化27】
[式中、
下付き文字nは、1または2であり;
各R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1はフルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、もう一方のR
2aおよびR
2bはHであるか;または、所望により、
下付き文字nが、1または2であり;
各R
1が、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるメンバーであり;ここで、少なくとも1つのR
1が、フルオロであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つがフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方がHである]
の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目2.R
2aが、フルオロである、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目3.R
2bが、フルオロである、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目4.R
2aが、フルオロであり、nが1である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目5.R
2aが、フルオロであり、nが2である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目6.R
2bが、フルオロであり、nが1である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目7.R
2bが、フルオロであり、nが2である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目8.nが1である、項目1~3のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目9.式:
【化28】
[式中、
下付き文字nは、1であり;および
R
1は、フルオロ、クロロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ハロアルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つはフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方はHであるか;または、所望により、
nが1であり;
R
1が、フルオロ、クロロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
1-C
4ハロアルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;および
R
2aおよびR
2bの内の1つがフルオロであり、R
2aおよびR
2bのもう一方がHである]
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目10.式:
【化29】
である、項目8の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目11.nが2であり;所望により1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、C
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルコキシおよびC
2-C
4アルキニルからなる群から選択される群から選択されるか;所望により1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、メチル、メトキシおよびエチニルからなる群から選択されるか;または、所望により、nが2であり;所望により1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
2-C
4アルコキシおよび所望により置換されたC
2-C
4アルキニルからなる群から選択されるか;所望により1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、ヒドロキシメチル、メチル、メトキシおよびエチニルからなる群から選択される、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目12.nが2であり、所望により式:
【化30】
である、項目1~3のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目13.1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシおよびC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されるか;または、所望により、1つのR
1がフルオロであり、もう一方が、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、ヒドロキシメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択される、項目12の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目14.式:
【化31】
の項目1~3のいずれかに記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目15.R
1が、フルオロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシおよびC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択されるか;または、所望により、R
1が、フルオロ、所望により置換されたC
1-C
4アルキル、所望により置換されたC
1-C
4アルコキシ、所望により置換されたC
2-C
4アルキニル;所望によりフルオロ、メチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)、所望によりメチル、ヒドロキシメチル、メトキシおよびエチニル(-C≡CH)からなる群から選択される、項目14の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目16.式:
【化32】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目17.化合物が、
【化33】
である、項目1の化合物またはその前記いずれかの医薬的に許容し得る塩。
項目18.化合物が、
【化34】
である、項目1の化合物またはその前記いずれかの医薬的に許容し得る塩。
項目19.式:
【化35】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目20.式:
【化36】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目21.式:
【化37】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目22.式:
【化38】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目23.式:
【化39】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
項目24.式:
【化40】
である、項目1の化合物またはその医薬的に許容し得る塩。
【0214】
項目25.項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩、所望によりさらに医薬的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
項目26.組成物が、フェニル環にある炭素原子での別のアイソマーを実質的に含まない、項目25記載の医薬組成物。
項目27.組成物が、フェニル環にあるフッ素に隣接する炭素原子での別のアイソマーを実質的に含まない、項目25または26記載の医薬組成物。
項目28.有効量の項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩または項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、治療方法。
項目29.有効量の項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩または項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療方法。
項目30.有効量の項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容し得る塩または項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療方法。
項目31.左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による左心室肥大)を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、前記疾患または該障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択され;容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて、治療を必要とする対象に、有効量の項1~項24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、または項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、治療方法。
項目32.肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、または項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物を、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて投与することを特徴とする、治療方法。
項目33.医薬品として使用するための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物。
項目34.肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物。
項目35.拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物。
項目36.容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療法(例えば、弁の修復/置換または効果的な降圧療法)と組み合わせて、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による左心室肥大)を特徴とする疾患または障害の治療に使用するための(ここで前記疾患または障害は、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物。
項目37.肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療に使用するための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物であって、ここで該化合物は、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリン作動薬のドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用するためのものである。
項目38.医薬品製造のための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物。
項目39.肥大型心筋症または心疾患(例えば、HCMの病態生理学的特徴を有する心疾患)を治療用医薬品製造のための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物の使用。
項目40.拡張期心不全(例えば、駆出率が保持された心不全)、虚血性心疾患、狭心症および拘束型心筋症からなる群から選択される疾患または障害の治療用医薬品製造のための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物の使用。
項目41.容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療方法(例えば、弁の修復/置換、効果的な降圧療法)と組み合わせる、左心室肥大化(例えば、容積または圧力過負荷による左心室肥大)を特徴とする疾患または障害(ここで、前記疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される)の治療用医薬品製造のための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物の使用。
項目42.心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせる、肥大型心筋症(HCM)または心疾患(例えば、HCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患)の治療用医薬品製造のための、項目1~24いずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、あるいは項目25~27いずれか一項記載の医薬組成物の使用。
項目43.少なくとも1つの下記:
a.角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される2以上のピークを有する粉末X線回折パターン;
b.約226.05℃、約302.47℃および約310.13℃での吸熱を示すDSCサーモグラム;または
c.
図4と実質的に同じX線結晶構造、
を特徴とする、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの形態1の多形体。
項目44.角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される3つ以上のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目43の多形体。
項目45.角度2θ±0.2°で表され、かつ11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4、21.2、22.5、23.2、25.5、26.4、28.2、29.5、31.5、32.9、34.3、35.5および38.8°から選択される4つ以上のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目43の多形体。
項目46.2θ±0.2°で表される11.3、12.4および13.3°の各ピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目43の多形体。
項目47.2θ±0.2°で表される11.3、12.4、13.3、16.5、17.3、19.3、20.4および29.5°の各ピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目43の多形体。
項目48.約221.51℃、約299.53℃および約308.81℃での溶解開始を特徴とする、項目43の多形体。
項目49.多形体が、
図1Aと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有する、項目43の多形体。
項目50.形態1の多形体が、(6S,7S)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの別の形態を実質的に含まない、項目43~49いずれか一項記載の多形体。
項目51.項目43~50いずれか一項記載の多形体および医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
項目52.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、80:20に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目53.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、90:10に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目54.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、95:5に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目55.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、97:3に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目56.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、98:2に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目57.形態1の多形体の量と別の形体の合計量との比が、99:1に等しいか、またはそれ以上である、項目51の組成物。
項目58.治療を必要とする対象に、有効量の項目43~50いずれか一項記載の多形体または項目51~57いずれか一項記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)またはHCMの病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法。
項目59.治療を必要とする対象に、容積または圧力過負荷の主な原因を修正または緩和することを目的とした治療方法(例えば、弁の修復/置換、効果的な降圧療法)と組み合わせて、有効量の項目43~50いずれか一項記載の多形体または項目51~57いずれか一項記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、左心室肥大(例えば、容積または圧力過負荷による左心室肥大)を特徴とする疾患または障害の治療方法であって、該疾患または障害が、慢性僧帽弁閉鎖不全症、慢性大動脈弁狭窄症および慢性全身性高血圧症からなる群から選択される、治療方法。
項目60.治療を必要とする対象に、有効量の項目43~50いずれか一項記載の多形体または項目51~57いずれか一項記載の医薬組成物を、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることによって心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを防止しようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬または神経エンドペプチダーゼ阻害薬など);心筋収縮を刺激することで心機能を改善する治療薬(例えば、βアドレナリンアゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害剤のミルリノンなどの正向性強心薬);および/または心臓の前負荷を軽減する治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿剤)または心臓の後負荷を軽減する治療薬(あらゆる分類の血管拡張薬、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬、レニン阻害薬または平滑筋ミオシン調節薬を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて投与することを特徴とする、肥大型心筋症(HCM)またはHCMに関連する病態生理学的特徴を有する心疾患の治療方法。
【0215】
本明細書の可変基の定義において化学基の一覧の記載は、それらの変数の定義を任意の単一の基または列挙された基の組み合わせとして含む。
【0216】
上記開示内容は、明確な理解のために、説明および実施例により詳細に説明されているが、当業者であれば、いくらかの変化および修正が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは理解されよう。さらに、本明細書に提供されている各参考資料は、あたかも各参考資料が参照により個々に組み込まれているのと同程度に全体として参照により組み込まれる。本願発明および本明細書に提供されている参考文献との間に不一致が存在する場合は、本願発明の内容が優先される。
【国際調査報告】