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特表2022-506555トリス置換ビグアニド化合物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】トリス置換ビグアニド化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20220107BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K31/155
A61P31/04
A61P27/02
A61P1/02
A61K31/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523969
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 US2019060577
(87)【国際公開番号】W WO2020097536
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/766,879
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521182799
【氏名又は名称】ファン-シン チェン
【氏名又は名称原語表記】Hwang-Hsing Chen
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ファン-シン チェン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA67
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA77
4C206MA78
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZA67
4C206ZB35
(57)【要約】
新規のトリス置換ビグアニド化合物は、ナトリウムジシアナミドと三官能性第一級アミンの反応、およびそれに続くアニリンとの反応によって製造される。トリス置換ビグアニド化合物は強力な殺生物剤であり、消毒剤として有用である。新規化合物は、抗菌スペクトルの幅に関して、および即効性において、広く使用されているクロルヘキシジンに匹敵する殺生物活性を有する。新規のトリス置換ビグアニド化合物は、創傷の洗浄、歯垢の予防、口腔の酵母感染の処置、および尿道カテーテルの閉塞の防止にも使用できる。これらの新規化合物は、優れた水溶性およびバイオアベイラビリティを有し、特にアシネトバクター・バウマニ(A.baumanni)および肺炎桿菌(K.pneumonia)に対して強力な抗菌活性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の3つの置換ビグアニド基を有する化合物を含む殺生物剤溶液:
【化1】
[式中、
リンカーは、ビグアニド基のための3つ以上の接続点を有する連結基を表し;
R1、R2、R3は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、アリールまたはヘテロシクリル基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;
R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されており;
Clは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、またはグルコン酸塩を含む対イオンを表す]。
【請求項2】
下記式の3つの置換ビグアニド基を有する化合物を含む、請求項1に記載の殺生物剤溶液:
【化2】
[式中、
リンカーは、ビグアニド基のための3つ以上の接続点を有する連結基を表し:
X、Y、Zは、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、O-アルキル、アリールまたはO-アリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;
R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されており;
前記リンカーは、下記構造の連結基を表す:
【化3】
(Clは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、またはグルコン酸塩を含む対イオンを表す)]。
【請求項3】
前記化合物が、下記式の3つの置換ビグアニド基を有する、請求項2に記載の殺生物剤溶液:
【化4】
【化5】
[式中、
X、Y、Zは、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、O-アルキル、アリールまたはO-アリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;
R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されており;
Clは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、またはグルコン酸塩を含む対イオンを表す]。
【請求項4】
医薬組成物のための保存有効量の化合物を含む請求項1に記載の殺生物剤溶液。
【請求項5】
医薬組成物のための保存有効量の化合物を含む請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【請求項6】
レンズケア組成物のための殺菌有効量の化合物を含む請求項1に記載の殺生物剤溶液。
【請求項7】
レンズケア組成物のための消毒有効量の化合物を含む請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【請求項8】
組成物が、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニドポリマー(「PHMB」)、ポリクオタニウム-1、ミリスタミドプロピルジメチルアミン(アルドックス)、およびアミノビグアニドなどであるがそれらに限定されない1つまたは複数の追加の抗菌剤を含んでいてもよい、請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【請求項9】
眼科用液剤中の化合物の濃度が0.0001~5.0w/v%の範囲である、請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【請求項10】
洗口剤組成物のための保存有効量の化合物を含む請求項1に記載の殺生物剤溶液。
【請求項11】
洗口液組成物のための保存有効量の化合物を含む請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【請求項12】
請求項2に記載の化合物の調製方法であって、
a)ナトリウムジシアナミドと三官能性第一級アミンの縮合、
b)アニリン塩酸塩との反応
のプロセスによるものであり、前記三官能性第一級アミンは、プロパン-1,2,3-トリアミン、ペンタン-1,3,5-トリアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘキシル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノブチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘプチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノペンチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンからなる群より選択される、方法。
【請求項13】
請求項2に記載の化合物の調製方法であって、
a)ナトリウムジシアナミドとアニリン塩酸塩の縮合、
b)三官能性第一級アミンおよび酸との反応
のプロセスによるものであり、前記三官能性第一級アミンは、プロパン-1,2,3-トリアミン、ペンタン-1,3,5-トリアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘキシル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノブチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘプチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノペンチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンからなる群より選択される、方法。
【請求項14】
下記の化学物質のうちの少なくとも1つを含む化合物を含む請求項2に記載の殺生物剤溶液。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のトリス置換ビグアニド化合物に関する。トリス置換ビグアニドは、ナトリウムジシアナミドと三官能性第一級アミンを縮合させた後、置換アニリン塩酸塩と反応させることにより製造される。あるいは、トリス置換ビグアニドは、置換アニリン塩酸塩とナトリウムジシアナミドを縮合させた後、三官能性第一級アミンと反応させることによって製造することもできる。好ましい三官能性第一級アミンには、プロパン-1,2,3-トリアミン、ペンタン-1,3,5-トリアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-エタン-1,2-ジアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘキシル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノブチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノヘプチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N-トリス(6-アミノペンチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンが含まれる。
【0002】
トリス置換ビグアニド化合物は、おそらくより良好な微生物の表面被覆(surface coverage)により、特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して、広く使用されているクロルヘキシジンよりも高い殺生物効果を示す。トリス置換ビグアニド化合物は、既知のビスビグアニド化合物と比較してより高い分子量を示し、より高い殺生物効果を有する。トリス置換ビグアニド化合物は、広く使用されているクロルヘキシジンと比較して、追加の塩なしでその溶解性を高めることができるアミノ基を有する。より高いMWのトリス置換ビグアニド化合物は、目や皮膚に安全であり、コンタクトレンズへの吸着が少なく、眼科および化粧品用途に適している。
【背景技術】
【0003】
殺生物剤は化学物質であり、任意の有害な生物を抑止したり、無害にしたり、制御効果を発揮したりすることができる。殺生物剤は、医学、農業、林業、および工業で一般的に使用されている。
【0004】
新規で有用な殺生物剤の開発には、次のような多くの要素を考慮する必要がある:制御が望まれる生物のタイプ;殺生物剤が配置される方法;殺生物剤を調製および供給する費用;環境または廃棄の問題など。想定される潜在的な用途に応じて、主な検討事項には、標的となる生物に対するその効力と、例えばそれに接触する可能性のあるヒトまたは動物に対する毒性の欠如などの生体適合性の両方が含まれるであろう。殺生物剤は、広い活性スペクトルを有する場合や、狭い活性スペクトルを有する場合がある。
【0005】
現在の有機殺生物剤の多くは、親水性/極性部分と疎水性/油部分の2つの官能基成分を有する。広域スペクトルの殺生物剤は、生体膜に浸透してその完全な効力を達成するために、より高い疎水性要素を必要とし得る。殺生物剤の疎水性は、分子の構造に長鎖炭化水素またはアリール基を組み込むことで実現することができる。しかしながら、製薬分野で現在使用されている有機殺生物剤は、生体適合性を改善してヒト組織に対する毒性を低減することに焦点を合わせている。
【0006】
その使用分野において、親水性と疎水性の望ましいバランスを有する殺生物剤の発見は重要でかつ非常に困難である。
【0007】
本発明は、1954年に消毒剤として開発されたビスビグアニド化合物であるクロルヘキシジンに関連するがそれとは異なる。クロルヘキシジンは、広範囲の一般的な細菌に対して消毒または殺菌活性を示し、その即効性と低い毒性のために広く使用されている。特に、水への溶解度が高いグルコン酸塩として、病院での手指の消毒、手術される皮膚の消毒、および医療器具、特に手術器具の消毒に使用されている。
【0008】
しかしながら、クロルヘキシジンには、一部のグラム陰性菌、特にPyocyaneus bacillus(その典型が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))に対して効果が低いという欠点がある。さらに、最近、この消毒剤に耐性のあるPyocyaneus bacillus菌株およびシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)菌株が医療機関で問題となっていることが報告されている。クロルヘキシジンは、従来の濃度で粘膜に投与するとショック症状を引き起こすことがある。そのため、結膜以外の粘膜への投与は現在禁止されている。
【0009】
このような状況下で、クロルヘキシジンの幅広い抗菌スペクトルを保持し、かつクロルヘキシジンよりも優れた殺菌効果および医療適用性を有するクロルヘキシジンの代替物が求められている。したがって、粘膜に安全に適用できるほど十分に低い濃度で使用でき、特にクロルヘキシジンが有効ではないPyocyaneus bacillus菌株に対して改善された殺菌活性を有し、さらには外科手術のための局所消毒剤としての使用に適した、医療用の新規なクロルヘキシジンタイプの消毒剤が求められている。
【0010】
例えば、特許文献1は、特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する抗菌効力を増強するトリフルオロメトキシル基でクロロ基を置き換えることにより、フェニル基の異なる置換基を有する新規ビスビグアニド化合物を開示する。
【0011】
特許文献2は、ウイルス感染の処置または予防のためのポリビグアニドベースの化合物を開示する。ポリビグアニド化合物の多くのエンドキャップ修飾が開示されている。
【0012】
特許文献3は、ジアミン、トリアミン、またはポリアミンに由来する「非置換末端ビグアニド」を含む、細菌感染、HIV感染を予防、阻害するための組成物、方法を開示する。
【0013】
特許文献4は、抗ウイルスおよび抗菌活性を有するグアニジンおよびビグアニジン誘導体を開示する。誘導体は、抗菌剤、抗生物質、キノロン、またはアザキノロンからなる基と結合する末端グアニジンまたはビグアニジン基を有する線状または分岐状の骨格からなる。
【0014】
特許文献5は、ジ、トリス、またはポリ「非置換末端ビグアニド」を含む感光性写真材料を開示する。
【0015】
特許文献6~17は、抗菌、創傷被覆、洗浄およびデオドラント用途のためのポリヘキサメチレンビグアニドからなる組成物を開示する。
【0016】
しかしながら、ポリヘキサメチレンビグアニドは、眼組織を刺激することが知られている。従来技術はすべて、トリス非置換ビグアニド化合物およびビスビグアニドに関連するが、トリス置換ビグアニド化合物については全く開示されていない。有用な抗菌活性;非刺激性;低毒性;接触する材料および組織との適合性;を備えた殺生物剤の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,420,350号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0148530号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/047,630号
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0073631号明細書
【特許文献5】米国特許第2,368,647号明細書
【特許文献6】米国特許第8,440,212号明細書
【特許文献7】米国特許第7,951,387号明細書
【特許文献8】米国特許第6,503,952号明細書
【特許文献9】米国特許第6,303,557号明細書
【特許文献10】米国特許第6,010,687号明細書
【特許文献11】米国特許第5,922,693号明細書
【特許文献12】米国特許第5,885,562号明細書
【特許文献13】米国特許第5,668,084号明細書
【特許文献14】米国特許第5,529,713号明細書
【特許文献15】米国特許第5,470,875号明細書
【特許文献16】米国特許第5,356,555号明細書
【特許文献17】米国特許第5,141,803号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、トリス置換ビグアニド化合物に関する。特に、本発明は、3点リンカー(three-point linker)に接続した3つの置換ビグアニド基を有し、抗菌効果を高めるために最大の微生物表面被覆となるように2次元化合物を形成する、新規トリス置換ビグアニド化合物に関する。本発明はまた、産業、特に医薬品、化粧品およびレンズケア製品における、殺生物剤としてのこれらの化合物の使用に関する。特に、本発明は、眼科用組成物、耳用組成物、化粧品組成物または鼻用組成物の防腐剤として、およびコンタクトレンズケア製品の消毒剤としてのこれら新規化合物の使用に関する。
【0019】
本発明の化合物は、追加のビグアニド基の導入により、以前の化合物とは異なる。理論に拘束されることを望まないが、トリス置換ビグアニド基は、二次元コンフォメーションでの最大の表面被覆によって抗菌効果を高め、またコンタクトレンズでの最小の取り込みおよび放出によって眼の快適さを高めることができると考えられる。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の新規殺生物剤は、下記式の3つの置換ビグアニド基を有する化合物を含む:
【化1】
式中、リンカーは、ビグアニド基のための3つ以上の接続点(point of connection)を有する連結基(linkage group)を表し;R1、R2、R3は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、アリールまたはヘテロシクリル基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されている。
【0021】
本発明の好ましい殺生物剤は、下記式のトリス置換ビグアニド化合物を含む:
【化2】
式中、リンカーは、ビグアニド基のための3つ以上の接続点を有する連結基を表し:X、Y、Zは、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、O-アルキル、アリールまたはO-アリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されており;リンカーは下記構造の連結基を表す:
【化3】
【0022】
本発明の好ましい殺生物剤は、下記式のトリス置換ビグアニド化合物を含む:
【化4】
【化5】
式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキル、O-アルキル、アリールまたはO-アリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-R4、N-R5R6、R7で置換されており;R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、同じまたは異なるアルキルまたはアリール基を表し、それら基は任意選択でハロゲン、O-アルキルで置換されている。
【実施例
【0023】
本発明の好ましい分岐ユニットを以下の実施例に例示するが、これらに限定されない;
【化6】
【化7】
【化8】
【0024】
本発明の殺生物剤は、広域スペクトルの抗菌活性を有し、化粧品および眼科用液剤(または溶液)を含む多くの用途で使用することができる。本発明の眼科用液剤は、様々な組成物に処方することができ、特にコンタクトレンズケア製品の消毒剤として、および化粧品組成物、眼科用組成物、鼻用組成物または耳用組成物の防腐剤として処方することができ、人工涙液または局所眼科用医薬品などの眼科用組成物での使用に特に適している。式(I)の化合物によって保護され得る組成物のタイプには、次のものが含まれる:下記のような眼科用医薬組成物;耳の細菌感染症または炎症の処置に使用される局所組成物などの耳用の医薬組成物;抗炎症組成物、ならびにシャンプーおよび他の化粧品組成物などの皮膚外用組成物;および他の様々なタイプの医薬組成物。一般に、本発明のトリス置換ビグアニドは、約0.00001~1.0重量/体積%(w/v%)の間の濃度で組成物中に存在するであろう。消毒剤として使用される場合、トリス置換ビグアニドは、好ましくは、約0.0005~0.5w/v%の間の濃度で存在する;防腐剤として使用される場合、トリス置換ビグアニドは、約0.00005~0.05w/v%の間の濃度で存在する。トリス置換ビグアニドは、消毒剤として使用される場合は0.001~0.05w/v%の間、防腐剤として使用される場合は0.0001~0.01w/v%の間の濃度で存在することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、他の成分、例えば、緩衝液、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、可溶化剤、活性医薬品、防腐剤、pH調整剤および担体をさらに含み得る。
【0026】
例えば、コンタクトレンズ用液剤や眼科用液剤の場合、眼との適合性を高めるために様々な薬剤が添加される。痛みまたは刺激を回避するために、溶液が生理学的範囲内の張性およびpHを有することが重要であり、例えば、張性については200~350ミリオスモル(mOsmole)、pHについては6.5~8.5である。この目的のために、様々な緩衝剤および浸透圧剤がしばしば加えられる。塩化ナトリウムはヒトの涙の主要な溶質であるため、最も単純な浸透圧剤は塩化ナトリウムである。さらに、塩化ナトリウムの一部または全部を置き換えるために、プロピレングリコール、ラクツロース、ソルビトール、マンニトールまたは他の浸透圧剤を添加してもよい。また、クエン酸塩、リン酸塩(NaHPO、NaHPO、およびKHPOの適切な混合物)、ホウ酸塩(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムおよび混合物)、重炭酸塩、およびトロメタミン、ならびにその他の適切な窒素含有緩衝液(ACES、BES、BICINE、BIS-Tris、ビス-トリスプロパン(BIS-Tris propane)、HEPES、HEPPS、イミダゾール、MES、MOPS、PIPES、TAPS、TES、トリシン(Tricine))などのさまざまな緩衝系を使用して、約pH6.5~8.5の間の生理的pHを確保することができる。ホウ酸塩およびポリオール系はまた、緩衝を提供するため、抗菌活性を増強するため、または緩衝および抗菌活性の増強の両方を提供するため、あるいは他の有用な特性を本発明の組成物に提供するために使用され得る。使用され得るホウ酸塩およびポリオール系には、米国特許第6,849,253号;同第6,503,497号;同第6,365,636号;同第6,143,799号;同第5,811,466号;同第5,505,953号;および同第5,342,620号;に記載されているものが含まれ、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明の組成物に使用され得るホウ酸塩には、ホウ酸、ならびにホウ酸ナトリウム(ホウ砂)およびホウ酸カリウムなどの他の薬学的に許容される塩が含まれる。本明細書で使用される場合、「ホウ酸塩」という用語は、すべての薬学的に適切な形態のホウ酸塩、ならびにメタホウ酸塩を指す。ホウ酸塩は、生理的pHでの優れた緩衝能力と、よく知られている安全性および幅広い薬物および防腐剤との適合性により、眼科用製剤での一般的な賦形剤である。
【0028】
上記の式(1、2、3、および4)の化合物に加えて、本発明の組成物は、1つまたは複数の追加の抗菌剤を含み得る。本発明は、利用され得る追加の抗菌剤のタイプに関して限定されない。好ましい殺生物剤には次のものが含まれる:ポリヘキサメチレンビグアニド(「PHMB」)、ポリクアテルニウム-1、および米国特許第6,664,294号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているアミノビグアニド。
【0029】
アミドアミン、アミノアルコール、およびホウ酸塩/ポリオール複合体もまた、本明細書に記載の組成物の抗菌活性を増強するために利用され得る。好ましいアミドアミンは、ミリスタミドプロピルジメチルアミン(「MAPDA」)および米国特許第5,631,005号(Dassanayake,et al.)に記載されている関連化合物である。好ましいアミノアルコールは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(「AMP」)および米国特許第6,319,464号(Asgharian)に記載されている他のアミノアルコールである。‘005および‘464特許の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
下記のスキームは、本発明の特定の実施形態をさらに説明する。これらの例は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
式1、2、3、および4の化合物は、先行文献に開示された合成方法を使用して調製した。
【0034】
化合物1(USD-18)
アルコール中でのナトリウムジシアナミドとN,N-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(トリ(2-アミノエチル)アミン)および濃HClとの80~130℃で8~24時間の反応により、精製後に中間体のトリス((N-シアノ-N-グアニジノ)エチル)アミンを得た。LCMS 248(M+1)。アルコール中でのトリス((N-シアノ-N-グアニジノ)エチル)アミンと4-クロロアニリン塩酸塩の80~150℃で2~8時間の反応により、白色の沈殿物が得られ、これを精製して目的の化合物を白色固体として得た。NMR(CDOD/DO) 7.10(d,J=6Hz,6H)、7.01(d,J=6Hz,6H)、4.91(bs,3H)、2.73(bs,6H)、2.08(bs,6H)。
【0035】
化合物2(USD-19)
上記と同じ手順および4-トリフルオロメチルアニリン塩酸塩を使用して、所望の化合物2をオフホワイトの固体として調製した。NMR(DMSO/D2O)d7.41(bd,6H)、7.30(d,J=6Hz,6H)、3.25(bs,6H)、2.55(bs,6H)。
【0036】
化合物3(USD-39)
化合物1の調製と同じ手順およびN,N-ビス(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミンを使用して、所望の化合物3をオフホワイトの固体として調製した。
【0037】
化合物4(USD-40)
上記と同じ手順および4-トリフルオロメチルアニリン塩酸塩を使用して、所望の化合物4をオフホワイトの固体として調製した。
【0038】
化合物5(USD-42)
化合物1の調製と同じ手順およびN,N-ビス(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミンを使用して、所望の化合物5をオフホワイトの固体として調製した。
【0039】
化合物6(USD-45)
上記と同じ手順および4-トリフルオロメチルアニリン塩酸塩を使用して、所望の化合物6をオフホワイトの固体として調製した。
【0040】
【化11】
【0041】
化合物7(USD-20)
これは参照化合物(クロルヘキシジン二塩酸塩、CHX)であり、Sigma-Aldrichから入手した。
【化12】
【0042】
下記のプロトコルを使用して、7つの細菌株に対して抗菌効果試験を実施した。
プロトコル:96ウェルポリスチレンプレートにおいて、段階希釈法(0.19mg/mL~100mg/L)を使用して化合物(USD-18、19、39、40、42、45、および20)をブレインハートインフュージョン(BHI)ブイヨン培地(酢酸/BSAを含む、または酢酸/BSAを含まない)に添加する。細菌(大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)またはセラチア・マルセッセンス(S.marcenes)または肺炎桿菌(クレブシエラ・ニューモニエ、K.pneumonia)またはアシネトバクター・バウマニ(A.baumanni)またはカンジダ・アルビカンス(C.albicans))を、対照を除くすべてのウェルに添加し、37℃で24時間インキュベートする。600nmで吸光度を読み取った。
【0043】
約90%の成長阻害が認められる濃度としてMIC90を計算した。N=各化合物および細菌について4つの複製。
【表1】
【国際調査報告】