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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】自動核酸抽出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220107BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220107BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220107BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N1/28 J
G01N33/48 A
G01N33/50 P
C12M1/00 A
C12N15/10 100Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523988
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2019109890
(87)【国際公開番号】W WO2020093824
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】201811330464.3
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521186971
【氏名又は名称】開啓基因股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CATCHGENE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】李 徳政
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G045BA01
2G045BA13
2G045BB11
2G045DA12
2G045DA13
2G045DA14
2G045JA07
2G052AA29
2G052AA30
2G052AB20
2G052AD26
2G052CA03
2G052CA18
2G052CA28
2G052DA02
2G052EA03
2G052ED06
2G052ED07
2G052FC02
2G052FC05
2G052FC11
4B029AA09
4B029BB20
4B029HA06
4B029HA07
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】検体中から例えばcfDNA及びctDNAといった核酸を、より高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる自動核酸抽出装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は自動核酸抽出方法及び装置を提供する。前記自動核酸抽出裝置はベースと、カセットと、駆動手段と、移送フレームと、シリンジとを含む。ベースは試料収容部と、カラム収容部と、カセット収容部と、回収管とを有しており、それらは直線方向に配列されている。カセットは、カセット収容部に設けられており、二つの平行壁と少なくとも二つの垂直壁とを含み、平行壁と垂直壁とが共に溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルを形成しており、このうち溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルを形成する垂直壁上にはそれぞれ当接部が設けられており、且つ溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルは直線方向に配列されている。当接部は円弧状壁又は多辺形壁を有している。駆動手段及び移送フレームはベースに設けられている。シリンジは移送フレームに設けられ、且つ駆動手段により駆動されて移送フレームと共に直線方向に往復動する。本発明の自動核酸抽出装置では、検体中から核酸をより高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動核酸抽出装置であって、
試料収容部と、カラム収容部と、カセット収容部と、回収管とを有しており、しかも前記試料収容部、前記カラム収容部、前記カセット収容部及び前記回収管は直線方向に配列されているベースと、
前記カセット収容部に設けられており、二つの平行壁と少なくとも二つの垂直壁とを含み、前記複数の平行壁と前記複数の垂直壁とが共に溶解液ウェル、少なくとも一つの洗浄液ウェル及び溶離液ウェルを形成しており、このうち前記溶解液ウェル、前記洗浄液ウェル及び前記溶離液ウェルを形成する前記複数の垂直壁上にはそれぞれ当接部が設けられており、且つ前記溶解液ウェル、前記洗浄液ウェル及び前記溶離液ウェルもまた前記直線方向に配列されており、このうち前記当接部は円弧状壁又は多辺形壁を有している、カセットと、
前記ベースに設けられている駆動手段と、
前記ベースに垂直に設けられ、且つ前記駆動手段の駆動によって前記直線方向に往復動する移送フレームと、
前記移送フレームに設けられるとともに前記移送フレームと共に移動するシリンジと、
を含む、ことを特徴とする自動核酸抽出装置。
【請求項2】
前記試料収容部は試料収容空間と、結合バッファ液収容空間とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項3】
前記カラム収容部は更に、試料ピペット収容空間と、カラムピペット収容空間とを含み、そして前記自動核酸抽出装置は更に試料ピペットとカラムピペットとを含み、且つ前記試料ピペット及び前記カラムピペットは前記試料ピペット収容空間及び前記カラムピペット収容空間に移動するように設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項4】
前記シリンジは前記試料ピペット又は前記カラムピペットに着脱可能に結合されている、ことを特徴とする請求項3に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項5】
前記当接部が前記円弧状壁を有するとき、前記円弧状壁の弧角が90度以上(90度を含む)であり、前記当接部が前記多辺形壁を有するとき、前記多辺形壁は少なくとも二つの支持壁を有しており、前記複数の支持壁は互いに180度未満の角度をなしている、ことを特徴とする請求項1に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項6】
前記洗浄液ウェルと前記溶離液ウェルとの間の前記垂直壁は、フィルタ材収容空間を形成するように、完全な中空円筒構造を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項7】
前記溶離液ウェルの底部には凹部を形成しており、且つ前記カセットは更に弾性クランプを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の自動核酸抽出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の自動核酸抽出装置に応用される自動核酸抽出方法であって、
前記シリンジとカラムピペットとの組み合わせで結合バッファ液収容空間内で混合した後の反応物を吸引して、反応物中の核酸を前記カラムピペット内のメンブレンに結合させるとともに、反応残渣を前記カセットに排出して、反応残渣中の核酸を前記メンブレンに結合させる、ステップと、
前記シリンジと前記カラムピペットとの組み合わせで前記メンブレンを介して前記少なくとも一つの洗浄液ウェル内の洗浄バッファ液を吸引し、更に洗浄バッファ液を前記シリンジと前記カラムピペットとの組合せで前記メンブレンを介して排出するステップと、
前記シリンジと前記カラムピペットとの組合せで前記メンブレンを介して前記溶離液ウェル内の溶離バッファ液を吸引して、更に前記シリンジと前記カラムピペットとの組合せで前記メンブレンを介して、核酸を含む溶離バッファ液を前記回収管に排出するステップと、
を含む、ことを特徴とする自動核酸抽出方法。
【請求項9】
反応残渣を前記カセットに排出するステップ、及び洗浄バッファ液を前記シリンジと前記カラムピペットとの組合せで前記メンブレンを介して排出するステップにて、前記カラムピペットの前記当接部を前記カセットの前記当接部に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出する、ことを特徴とする請求項8に記載の自動核酸抽出方法。
【請求項10】
前記カラムピペットの前記当接部を前記カセットの前記当接部に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出するステップの後に、
前記カラムピペットの前記当接部を前記カセットの前記当接部に当接させるとともに、前記シリンジを前記直線方向と垂直となる方向に5mm以下(5mmを含む)で上下動させるステップを更に含む、ことを特徴とする請求項9に記載の自動核酸抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装置及び方法に関し、特に自動核酸抽出装置及び自動核酸抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト・ゲノムシーケンス技術の革新、バイオメディカル解析技術の進歩、及びビッグデータ解析ツールの登場に伴って、プレシジョンメディシン(Precision Medicine)の時代が訪れている。プレシジョンメディシンとは、ヒトゲノムの情報をもとに、プロテオーム、メタボロームなどの関連する体内環境情報を組み合わせて、患者に最適な治療計画を提案し、治療効果を最大化し、副作用を最小化するためのカスタマイズされた医療モデルのことである。
【0003】
血液は、体内の血管及び心臓を流れる赤く不透明な粘性のある液体であって、主な成分は血漿、血球、遺伝物質(染色体及び遺伝子)である。このうち、セルフリーDNA(cell free DNA、cfDNA)は、血漿中から発見される遊離DNA断片であり、そして循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA、ctDNA)断片は、cfDNA中にある腫瘍由来のDNA断片である。
【0004】
ほとんどの人の血液中には、遊離DNA断片(cfDNAとも呼ばれる)が含まれており、これらは、アポトーシス、ネクローシスに由来する場合もあれば、能動的な放出(激しい運動)によって血流に流入する場合もある。しかし、血液中のcfDNAの量は非常に少なく、血漿1mL中に約1ngから100ngのcfDNAが含まれ、ctDNAはさらに少なく、cfDNAのわずか0.1%から5%を占めるに過ぎない。
【0005】
研究によれば、腫瘍患者の末梢血中のcfDNAの総量は、健常者に比べて多いことが証明されていることから、cfDNAの含有量がもし多い場合には、腫瘍の一次スクリーニングツールとして良い指標となる。そのため、リキッドバイオプシー(Liquid Biopsy)中からごく少量のcfDNA(核酸の一種)を精製することは、プレシジョンメディシンの第一歩となる。
【0006】
現在、この分野の研究者は、例えばcfDNAやctDNAなどの核酸を抽出するための装置や方法の開発に取り組んでいる。例えば、特許文献1(中国特許101684463 A号公報)には、様々な微量の臨床サンプルから核酸を迅速に抽出する方法が開示されており、この方法は以下のステップを含む:(a)臨床サンプルを溶解液に加えて均一に混合する;(b)臨床サンプルを吸引してフィルタ膜に流すと、サンプル中の核酸成分はフィルタ膜の特異的な吸着によりフィルタ膜に吸着され、濾液は細胞の破片やタンパク質を含む廃液となる;(c)洗浄液を吸引してフィルタ膜に流し、膜に残留したタンパク質などの成分を洗浄し、濾液を廃棄する;(d)溶出液を吸引してフィルタ膜に流し、膜に吸着した核酸成分を溶出させると、他の不純物を含まない核酸増幅のための核酸水溶解液を得る。
【0007】
特許文献2(台湾実用新案M477925 U号公報)には、第1の上部と、該第1の上部の下方に接続され、且つ該第1の上部の内径よりも小さい内径を有する中間部と、該中間部の下方に接続され、且つ該中間部の内径よりも小さい内径を有する吸引部とを含む吸引部材を備え、該第1の上部又は該中間部が該カラム部材の外周に対して嵌合し当接し、且つ吸引部によって特定の液体が該カラム部材に吸引されるサンプル抽出装置を開示しており、該サンプル抽出装置は、カラム部材と、それによってサンプルから所望の物質が抽出される受取部材とをさらに備えている。
【0008】
特許文献3(台湾実用新案M536238 U号公報)は、核酸を自動抽出する機械プラットフォームを開示しており、水平軌道に沿って移動可能なトレイマウントを備えた機械ベースプレートと;機械ベースプレートの上方に垂直に配置され、且つ垂直軌道が設けられたブラケットと;基板の上方に基板軌道が設けられた基板と、該基板軌道に沿って配置された可動ブロックと、該可動ブロックの下方に位置し、該基板に固定されてシリンジをその上に架設させるシリンジマウントユニットとを含む垂直可動ユニットと;シリンジプッシャを架設させて、該可動ブロックを該基板起動に沿って上下動したときに該シリンジプッシャを連動して該シリンジに正圧又は負圧を発生させて、且つ該基板が該垂直軌道に沿って設けられ、該可動ブロック及びシリンジ固定ユニットを該ブラケットに対応して上下動させるように連動するシリンジ固定ユニットと、を含む。
【0009】
特許文献4(台湾特許201412981 A公報)は、精製管の上端を正又は負のガス圧を付与することができる装置に結合し、精製管の下端が検体、洗浄液、溶離液を吸収/排出することができる空気抽出法を用いて核酸を抽出する方法を開示しており、遠心分離器を必要とせずに核酸を容易に抽出できるという効果を得ることができる核酸を抽出する方法及び装置を開示している。
【0010】
上記従来技術が存在するものの、これら従来技術ではcfDNAやctDNAを大量に抽出することができないという欠点がある。よって、もしcfDNAやctDNAを大量に抽出して収量を増やすことができる自動核酸抽出装置を開発できるのであれば、プレシジョンメディシンにとって画期的なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許101684463 A号公報
【特許文献2】台湾実用新案M477925 U号公報
【特許文献3】台湾実用新案M536238 U号公報
【特許文献4】台湾特許201412981 A公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、自動核酸抽出装置及び自動核酸抽出方法を提供するものである。従来技術と比べて、本発明の自動核酸抽出装置及び方法では、検体中から例えばcfDNA及びctDNAといった核酸を、より高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、ベースと、カセットと、駆動手段と、移送フレームと、シリンジとを含む、ことを特徴とする自動核酸抽出装置を提供する。ベースは、試料収容部と、カラム収容部と、カセット収容部と、回収管とを有しており、しかも試料収容部、カラム収容部、カセット収容部及び回収管は直線方向に配列されている。カセットはカセット収容部に設けられており、カセットは二つの平行壁と少なくとも二つの垂直壁とを含み、平行壁と垂直壁とが共に溶解液ウェル、少なくとも一つの洗浄液ウェル及び溶離液ウェルを形成しており、このうち溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルを形成する垂直壁上にはそれぞれ当接部が設けられており、且つ溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルもまた直線方向に配列されており、このうち当接部は円弧状壁又は多辺形壁を有している。駆動手段はベースに設けられている。移送フレームはベースに垂直に設けられ、且つ駆動手段の駆動によって直線方向に往復動する。シリンジは移送フレームに設けられるとともに移送フレームと共に移動する。
【0014】
一つの実施例において、試料収容部は試料収容空間と、結合バッファ液収容空間とを有する。
【0015】
一つの実施例において、カラム収容部は更に、試料ピペット収容空間と、カラムピペット収容空間とを含む。
【0016】
一つの実施例において、自動核酸抽出装置は更に、移動するように試料ピペット収容空間に設けられている試料ピペットを含む。
【0017】
一つの実施例において、自動核酸抽出装置は更に、移動するようにカラムピペット収容空間に設けられているカラムピペットを含む。
【0018】
一つの実施例において、シリンジは試料ピペット又はカラムピペットに着脱可能に結合されている。
【0019】
一つの実施例において、試料収容空間は生体試料及び溶解バッファ液を収容して溶解反応を行うのに用いられ、結合バッファ液収容空間は結合バッファ液及び溶解産物を収容して結合反応を行うのに用いられ、溶解液ウェルは溶解バッファ液、消泡剤及び反応残渣を収容するのに用いられ、前記複数の洗浄液ウェルは洗浄バッファ液を収容するのに用いられ、前記複数の溶離液ウェルは溶離バッファ液を収容するのに用いられ、試料ピペット収容空間は試料ピペットを収容するのに用いられ、そしてカラムピペット収容空間はカラムピペットを収容するのに用いられる。
【0020】
一つの実施例において、円弧状壁の弧角は90度以上(90度を含む)である。
【0021】
一つの実施例において、洗浄液ウェルと溶離液ウェルとの間の垂直壁は、フィルタ材を収容するためのフィルタ材収容空間を形成するように、完全な中空円筒構造を有している。
【0022】
一つの実施例において、多辺形壁は、180度未満の角度をなす少なくとも二つの支持壁を含む。
【0023】
一つの実施例において、溶離液ウェルの底部には凹部を形成している。
【0024】
一つの実施例において、カセットは更に、カセットをカセット収容部に着脱可能に係合するための弾性クランプを含む。
【0025】
本発明は更に、上記した自動核酸抽出装置に応用されるものであり、シリンジとカラムピペットとの組合せで結合バッファ液収容空間内で混合した反応物を吸引して、反応物中の核酸をカラムピペット内のメンブレンに結合させるとともに、反応残渣をカセットに排出することで、反応残渣中の核酸をメンブレンに結合させるステップと;シリンジとカラムピペットとの組合せで、メンブレンを介して少なくとも一つの洗浄液ウェル内の洗浄バッファ液を吸引し、更に洗浄バッファ液をシリンジとカラムピペットとの組合せでメンブレンを介して排出するステップと;シリンジとカラムピペットとの組合せで、メンブレンを介して溶離液ウェル内の溶離バッファ液を吸引して、更にシリンジとカラムピペットとの組合せでメンブレンを介して、核酸を含む溶離バッファ液を回収管に排出するステップと、を含む、ことを特徴とする自動核酸抽出方法を提供する。
【0026】
一つの実施例において、自動核酸抽出方法は、反応残渣をカセットに排出するステップ、及び洗浄バッファ液をシリンジとカラムピペットとの組合せでメンブレンを介して排出するステップにて、カラムピペットの当接部をカセットの当接部に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出する、ことを特徴とする。
【0027】
一つの実施例において、自動核酸抽出方法は、カラムピペットの当接部をカセットの当接部に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出するステップの後に、カラムピペットの当接部をカセットの当接部に当接させるとともに、シリンジを直線方向と垂直となる方向に5mm以下(5mmを含む)で上下動させるステップを更に含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
上記をまとめるに、本発明の効果は以下の通りである:カセット平行壁及び垂直壁を設けることで、形成される溶解液ウェル、洗浄液ウェル及び溶離液ウェルは大量の溶解液を収容することができる。しかも洗浄液ウェル及び溶離液ウェルには当接部がそれぞれ設けられているという設計によって、シリンジが大量の溶解液を排出した後に、試料ピペット又はカラムピペットがシリンジから脱落してシリンジから分離されてしまうのを防止することができる。また、カセット及び収容空間が直線方向に配列されており、そして移動フレームとシリンジとが直線方向に往復動する設計により、直線方向での核酸抽出を自動で行うことができ、検体の汚染を防止し且つ抽出効率を向上させることができるため、本発明の自動核酸抽出装置は、検体中から例えばcfDNA及びctDNAといった核酸を、より高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる。更には、カセット及び収容空間により直線的に移動する(つまりテーブル面に対して、カセットは移動するもののシリンジは固定されている)従来技術に比べて、本発明では移送フレームによりシリンジと直線的に移動する(つまりテーブル面に対して、シリンジは移動するもののカセットは固定されている)ため、本発明の自動核酸抽出装置の動作空間は、概ねカセット及び収容空間の長さの倍ほど小さくなっているが、一方、従来技術でのカセット及び収容空間により直線的に移動する動作空間は概ねカセット及び収容空間の長さの2~3倍となっている。よって、本発明の自動核酸抽出装置は小型で、使用者の作業スペースを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の組み立て概略図である。
図2】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の側面図である。
図3A】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図3B】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図3C】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図4】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図5A】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図5B】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図5C】本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図である。
図6A】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの好ましい実施例の平面図である。
図6B】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの他の好ましい実施例の平面図である。
図6C】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの更に好ましい実施例の平面図である。
図6D】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施例の概略図である。
図6E】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施例の概略図である。
図6F】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施例の概略図である。
図6G】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施例の概略図である。
図6H】本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施例の概略図である。
図7A図1の自動核酸抽出装置の部分的な拡大図である。
図7B図7Aの自動核酸抽出装置の動作概略図である。
図7C図7Aの自動核酸抽出装置の他の概略図である。
図8A図1の自動核酸抽出装置の部分的な概略図である。
図8B図8Aの自動核酸抽出装置の分解概略図である。
図9】本発明の自動核酸抽出方法の好ましい実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下にて関連する図面を参照して、本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例を説明する。このうち同じ構成要素は同じ参考記号で説明する。
【0031】
本発明の自動核酸抽出装置では、検体中から例えばcfDNA及びctDNAといった核酸を、より高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる。特に、検体としては、血液、血漿、尿液、唾液、組織液及び組織が含まれるが、これに限定されない。以下、実施例により自動核酸抽出装置の構造及び特徴を説明する。
【0032】
図1及び図2を参照されたい。このうち図1は本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の組み立て概略図であり、そして図2は本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の側面図である。
【0033】
図1及び図2に示すように、自動核酸抽出装置は、ベースBと、カセット31と、駆動手段Mと、移送フレーム4と、シリンジ5とを含む。
【0034】
ベースBは試料収容部1と、カラム収容部2と、カセット収容部3とを有し、試料収容部1は試料収容空間11と、結合バッファ液収容空間12とを有し、且つ試料収容部1、カラム収容部2及びカセット収容部3は直線方向L1に配列されている。特に、試料収容部1、カラム収容部2及びカセット収容部3は直線方向L1(図面方向で右から左、以下同じ)に配列されている順序は、例えば試料収容部1→カラム収容部2→カセット収容部3としたり、又はカラム収容部2→カセット収容部3→試料収容部1としたり、又はカセット収容部3→試料収容部1→カラム収容部2としたり、又はカセット収容部3→カラム収容部2→試料収容部1とすることができるが、これに限定されない。
【0035】
図2図6Aを併せて参照されたい。カセット31はカセット収容部3に設けられており、カセット31は二つの平行壁31aと少なくとも二つの垂直壁31bとを含み、前記複数の平行壁31aと前記複数の垂直壁31bとが共に溶解液ウェル311、少なくとも一つの洗浄液ウェル312及び溶離液ウェル313を形成しており、このうち溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312及び溶離液ウェル313を形成する前記複数の垂直壁31bには当接部314がそれぞれ設けられており、且つ溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312及び溶離液ウェル313も直線方向L1に配列されている。本実施例において、垂直壁31bの数量は9個であり、しかも平行壁31aと共に2個の溶解液ウェル311、4個の洗浄液ウェル312及び2個の溶離液ウェル313を形成しているが、垂直壁31b、溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312及び溶離液ウェル313の数量は使用者の実際の必要性に応じて自ら調整することができ(例えば、もし試料が抽出が難しい組織であれば、溶解液ウェル311及び溶離液ウェル313は増設できる)、本発明では制限はない。また、カセット31の平行壁31a及び垂直壁31bを設けることで、これが形成する溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312及び溶離液ウェル313は大量の、例えば2mL以上、5mL以上、又は10mL以上であるがこれに制限されないバッファ液(溶解バッファ液、洗浄バッファ液及び/又は溶離バッファ液)を収容することができる。
【0036】
再び図1及び図2を参照されたい。本実施例において、駆動手段MはベースBに設けられ、移送フレーム4はベースBに垂直に設けられ、且つ駆動手段Mの駆動によって直線方向L1に往復動する。シリンジ5は移送フレーム4に設けられるとともに移送フレーム4と共に移動する。特に、図中では駆動手段Mはドライブベルトとして示されているが、しかしながら、駆動手段Mは、例えばリニアモジュール又はその他移送フレーム4の直線移動を駆動可能な装置であればその他の駆動装置としてもよく、本発明では制限はない。
【0037】
図1、2及び図4を参照されたい。本実施例において、カラム収容部2は更に、試料ピペット収容空間21と、カラムピペット収容空間22とを含む。
【0038】
図4を参照されたい。本実施例において、自動核酸抽出装置は更に、移動するように試料ピペット収容空間21に設けられている試料ピペット6を含む。本実施例において、自動核酸抽出装置は更に、移動するようにカラムピペット収容空間22に設けられているカラムピペット7を含む。特に、シリンジ5は試料ピペット6又はカラムピペット7に着脱可能に結合されている。
【0039】
図1から図3Aを参照されたい。自動核酸抽出装置は更に、カセット31及び前記複数の収容部とともに直線方向L1に配列されている回収管8を含む。好ましい状況にて、回収管8はカセット31に隣接して設けることができる(しかし本発明はこれに限定されない)。なぜならば、自動核酸抽出方法では直線方向L1に沿って抽出を行い、最終的なステップにて洗浄物を回収管8内に排出することで、回収管8はカセット31に隣接して設けるとともに直線方向L1に配列する設計にて、移送フレーム4が移動する方向と一致させることで、移送フレーム4が自動核酸抽出のプロセス中に回収管8の上方を往復通過することでクロスコンタミネーションの不具合が生じるのを防止することができるからである。
【0040】
本実施例において、試料収容空間11は溶解反応(lysis reaction)を行うため、生体試料(biological sample)及び溶解バッファ液(lysis buffer)を収容するのに用いられる。本実施例において、血液、血漿、尿液、唾液、組織液及び組織といった生体試料が含まれるが、これに限定されない。結合バッファ液収容空間12は溶解反応(lysis reaction)を行うため、結合バッファ液(binding buffer)及び溶解産物(lysate)を収容するのに用いられる。溶解液ウェル311は溶解バッファ液(lysis buffer)、消泡剤(defoaming agent)及び反応残渣を収容するのに用いられる。前記複数の洗浄液ウェル312は洗浄バッファ液(wash buffer)を収容するのに用いられる。前記複数の溶離液ウェル313は溶離バッファ液(elution buffer)を収容するのに用いられる。試料ピペット収容空間21は試料ピペット6を収容するのに用いられる。カラムピペット収容空間22はカラムピペット7を収容するのに用いられる。本実施例において、試料収容空間11、結合バッファ液収容空間12、溶解液ウェル311及び洗浄液ウェル312は30mLの検体又はバッファ液を収容可能であるが、これに限定されない。よって、従来技術(通常は2mL)に比べて高い検体容量を有しており、溶解バッファ液の体積の増加で試料の溶解反応を改善することで、核酸の濃度を向上させることができる。洗浄バッファ液の体積の増加でカラムピペット7に残留した溶解液を完全に洗浄することで、後続ステップで抽出する核酸の濃度及び純度を向上させることができる。本実施例において、溶解液ウェル、洗浄液ウェル、溶離液ウェルの数量は使用者の実際の必要性に応じて自ら調整することができるものであって、本発明では制限はない。
【0041】
図3Cを参照されたい。カラムピペット7の内部にはメンブレン74が設けられている。メンブレン74の材質は例えばシリカメンブレン(silica membrane)とするとともに、正電荷を帯電しているものとしているが、これに限定されない。そして検体に核酸抽出を行うプロセスにて、内包される核酸は負電荷を帯電していることから、正負電荷吸着の特性により核酸をメンブレン74上に吸着させて、更にメンブレン74上に吸着した核酸を後続の手順を通じて抽出する。
【0042】
本実施例において、ベースBは更に、試料収容空間11及び/又はカラムピペット収容空間22の下方に設けられている少なくとも一つのヒータHを含む。ここで、試料収容空間11の下方にヒータHが設けられている場合、生体試料と溶解バッファ液との溶解反応を促進して、生体試料の溶解能力をより完全として、ひいては後続手順にて抽出される核酸濃度を向上させることができる。カラムピペット収容空間22の下方にヒータHを設けた場合、カラムピペット7のメンブレン74上の残留溶剤の揮発を促進し、ひいては後続手順で抽出される核酸濃度及び純度を向上させることができる。特に、抽出したい核酸がリボ核酸(RNA)である場合、核酸が分解して抽出後の核酸濃度に影響するのを防止するために、試料収容空間11下方のヒータHはオフにしてもよい(つまり溶解反応時に加熱しない)。
【0043】
図3A及び図3Bを参照されたい。前記複数の溶離液ウェル313の底部には凹部fを形成している。この設計により、検体の溶離実行時には、使用する溶離バッファ液はより少量となり、ひいては核酸抽出の濃度を向上させることができる。特に、図中では回収管8に隣接する溶離液ウェル313のみが凹部fを有するものを示しているが、しかしながら、その他の溶離液ウェル313も凹部fを有してもよく、本発明では制限はない。また、溶離バッファ液の体積は例えば1mL、500μL、200μL、100μL、50μL、30μL等とすることができるが、これに限定されず、使用者の必要性に応じて調整することができるものであって、本発明では制限はない。
【0044】
図6Aから図6Cを参照されたい。カセット31は更に、カセット31をカセット収容部3に着脱可能に係合するための弾性クランプ316を含む。特に、図8A及び8Bを参照されたい。理解しやすくするために、図8Aには図1の自動核酸抽出装置における部分的な構造のみを示しており、図8B図8Aの分解図である。本実施例の自動核酸抽出装置は更に、ベースBに着脱可能に設けられている金属枠Iを含む。使用者が複数個のカセット31及び回収管8をセットしやすくするために、使用者はまず複数個のカセット31及び回収管8を金属枠I上にセットしてから、その後金属枠Iと共にベースB上にセットする。また、使用者はまず金属枠IをベースB上にセットしてから、その後カセット31及び回収管8をセットしてもよく、本発明では制限はない。更に、自動核酸抽出装置で核酸を抽出した後、使用者が複数個のカセット31及び回収管8を一回で取り外しやすくするために、金属枠IをベースB上から取り外すことができる。特に、使用者が金属枠IをベースB上から取り外すか、又は金属枠IをベースB内に入れやすくするために、金属枠Iは二つのハンドルI1を含んでもよい。
【0045】
図4を参照されたい。試料ピペット6は一組の組付け部61と、組付け部61に結合される先端部62とを含む。カラムピペット7は一組の組付け部71、当接部72と、当接部72に結合される先端部73とを含み、このうち先端部73の長さD2は回収管8の深さD1未満である(図3Cに示す)。この設計によって、核酸が装填されている先端部73が回収管8に進入したとき、核酸を有する検体が先端部73から排出された後に生じる力が大きすぎて検体が回収管8中から飛散するのを防止することで、核酸抽出の収率を向上させることができる。本好ましい実施例において、組付け部61及び先端部62は一体成型されている。組付け部71、当接部72及び先端部73は一体成型されている。また選択的に、組付け部61及び先端部62が互いに取外し可能であっても、又は組付け部71、当接部72及び先端部73が互いに取外し可能であってもよく、本発明では制限はない。特に、試料ピペット6はカラムピペット7と同じ構成を有してもよく、両者の相違点はわずかにカラムピペット7がメンブレン74を有する一方で、試料ピペット6はメンブレン74を有さないところである(つまり、試料ピペット6は組付け部、当接部及び先端部を有して、一種類の金型のみで試料ピペット6とカラムピペット7とを製造してもよく、メンブレン74を取り外す、又は入れることで、試料ピペット6及びカラムピペット7を各々製作してもよい)。
【0046】
図3Bから図5Bを参照されたい。シリンジ5の底部は更にコネクタ51を含み、このうちシリンジ5がコネクタ51により組付け部61、71に結合される。詳細に言えば、コネクタ51は、シリンジ5と組付け部61、71とを密着して結合するために、試料ピペット6の組付け部61又はカラムピペット7の組付け部71の構造に対応している。特に、シリンジ5はコネクタ51と一体成型することができる。
【0047】
図1及び図7Aから図7Bを参照されたい。図7A図1中におけるA部分の部分的な拡大図である。移送フレーム4はリリースプレート41を含み、且つ移送フレーム4の両側にはスプリング機構42がそれぞれ設けられており、スプリング機構42は、リリースプレート41の作動と連動することで組付け部61、71がシリンジ5の底部から取り外されるよう制御する。詳細には、図7Bに示すように、スプリング機構42はL3方向で移動し、リリースプレート41がL4方向に移動するように連動することで、試料ピペット6又はカラムピペット7をシリンジ5から分離する。
【0048】
図7Cに併せて図7Aを参照されたい。移送フレーム4は更に、シリンジ5を移送フレーム4上に固定するための少なくとも一つのシリンジ固定部材43を含む。シリンジ固定部材43は更に、シリンジ保持溝431と、少なくとも一つの窪み432とを含み、窪み432内には弾性部材Rを設けることができる。図7Aに示すように、シリンジ5は二個のシリンジ固定部材43のシリンジ保持溝431内に係止固定するとともに、窪み432内に設けられている弾性部材Rにより、シリンジ5を好適にシリンジ保持溝431に固定する。特に、シリンジ固定部材43、窪み432及び弾性部材Rの数量は使用者の必要性に応じて調整することができるものであって、シリンジ5をシリンジ保持溝431内にしっかりと固定できるのであれば、本発明では制限はない。
【0049】
図1図5A図5B及び図6Aを参照されたい。このうち図5A及び図5Bは本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図であり、図6Aは本発明の自動核酸抽出装置のカセットの好ましい実施例の平面図である。図5A図5B及び図6Aに示すように、当接部314は円弧状壁3141を有し且つ円弧状壁3141の弧角θは90度以上である。好ましくは、弧角θは90度とすることができ、そして好ましくは、弧角θは120度とすることができ、好ましくは、弧角θは180度とすることができ、好ましくは、弧角θは270度とすることができるものであって、カラムピペット7を当接できるのであればよい。特に、図6Aに示すように、垂直壁31bは円弧状壁3141を有しており、垂直壁31bによって平行壁31aに接しており、つまり、円弧状壁3141の両端は平行壁31aに直接接してはいない。
【0050】
図1図5C及び図6Cを参照されたい。このうち図5Cは本発明の自動核酸抽出装置の好ましい実施例の部分的な概略図であり、図6Cは本発明の自動核酸抽出装置のカセットの又一つの好ましい実施例の平面図である。図5C図6Cに示すように、当接部314は多辺形壁を有しており、多辺形壁は少なくとも二つの支持壁を含むことができるが、ここでまず一つの第1の支持壁3142及び一つの第2の支持壁3143を含む構造を説明に用いるものであって、第1の支持壁3142と第2の支持壁3143とで180度未満の夾角eをなしている。好ましくは、夾角eは150度とすることができ、好ましくは、夾角eは120度とすることができ、好ましくは、夾角eは90度とすることができ、好ましくは、夾角eは45度とすることができるものであって、カラムピペット7に当接して直立させることができるのであればよい。特に、本発明の自動核酸抽出装置のカセットの当接部の異なる実施形態を説明するための図6Dから図6Hを参照されたい。当接部314は例えば円弧状壁3141(図6Eに示す)又は多辺形壁(図6D図6Fから図6H)とすることができるが、これに限定されず、多辺形壁は例えば二つの支持壁、三つの支持壁、四つの支持壁、五つの支持壁、六つの支持壁又は六つ以上の支持壁を有する構造であって、これに限定されず、各々の支持壁の間には夾角を有しており、支持壁の数量及びそれらによる夾角の角度には限定はなく、カラムピペット7に当接して直立させることができるのであればよい。特に、図6Dに示すように、当接部314の多辺形壁の両端は平行壁31aに直接接することができるが、しかしながら、図6Fから6Hに示すように、垂直壁31bの当接部314の多辺形壁の両端は平行壁31aに直接接しておらず、垂直壁31bにより平行壁31aに接しているが、ここでは制限はない。
【0051】
上記した当接部314の設計によって、液体(例えば反応物、洗浄バッファ液等)を排出するプロセスにて、カラムピペット7の当接部72が当接部314の円弧状壁3141又は第1の支持壁3142と第2の支持壁3143との間に当接することで、シリンジ5が液体を排出するときに、カラムピペット7が、圧力が大きくなり過ぎてシリンジ5から脱落して分離するようなことはない。シリンジ5が液体を排出した後のシリンジ5の上昇時にカラムピペット7が緩んだとしても、当接部314の設計によって、カラムピペット7の当接部72を当接させるとともに当接部314上で直立して、シリンジ5から完全に分離することはなくなり、続いて後続にてシリンジ5が直線方向L1と垂直となる方向L2で上下動するステップによりシリンジ5とカラムピペット7とを再度密着係合して、抽出ステップを行いやすくなる。
【0052】
図1図6A及び図6Bを参照されたい。このうち、図6Bは本発明の自動核酸抽出装置のカセットの他の好ましい実施例の平面図である。図6Bのカセットにて、洗浄液ウェル312と溶離液ウェル313との間の垂直壁31bは、フィルタ材を収容するためのフィルタ材収容空間315を形成するように、完全な中空円筒構造を有している。詳細に言えば、生体試料が組織又は不純物を有するその他試料である場合、フィルタ材は溶解後の溶解産物をろ過することで、組織の破片又は不純物をフィルタ材外側にとどめさせるためのものであり、清澄(組織の破片又は不純物を含まない)溶解産物は試料ピペット6内に吸引されて、組織の破片又は不純物により試料ピペット6の先端部62が詰まるのを防止することができる。この設計により、組織試料は直接セッティングすることができることから、機器外でまず遠心分離機で遠心分離して、清澄溶解産物を得た後にセッティングする必要はなくなる。よって、組織試料溶解のステップは本発明の自動核酸抽出装置上で完了させることができ、組織試料を全自動で核酸純化するという効果も達成することができる。特に、検体中のリボ核酸(RNA)を抽出したいとき、フィルタ材収容空間315は更に抽出手順間で必要な酵素、例えばデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を収容して、抽出プロセス中に試料中のデオキシリボ核酸(DNA)を除去することができる。該デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)は後続のステップにより洗浄されるので、抽出完了後にデオキシリボ核酸(DNA)を含まないリボ核酸(RNA)が得られる。
【0053】
図1及び図2を参照されたい。本実験例では移送フレーム4とシリンジ5とにより直線方向L1への移動(つまりテーブル面に対して、シリンジは移動するもののカセットは固定されている)を行うので、機器の奥行きはベースBの長さD3に移送フレーム4の厚さD4に加えた分(D3+D4)に止まる。しかしながら、従来技術はベースBによって直線的移動を行うものであり、シリンジが各々の収容空間中の溶液を吸引できるようにするためには、機器の奥行きは必然的に少なくともベースBの長さD3の2倍に移送フレーム4の厚さD4を加えた分(D3×2+D4)となる。例えば、本実験例の自動核酸抽出装置のベースBの長さD3は例えば30cmであるが、これに限定されず、移送フレーム4の厚さD4は例えば20cmであるが、これに限定されず、機器の奥行きは例えば約50cmであるが、これに限定されないため、使用者の作業スペースを節約することができる。
【0054】
本発明の自動核酸抽出方法の好ましい実施例である図9図1から図3Cを併せて参照されたい。本発明の自動核酸抽出方法は上記した自動核酸抽出装置を応用して実行するものであり、自動核酸抽出装置の底部には、移送フレーム4の直線方向L1での移動を連動するドライブベルトが設けられている。本好ましい実施例において、自動核酸抽出方法は下記するステップを含む:ステップS05は、シリンジ5とカラムピペット7との組合せで結合バッファ液収容空間内で混合した後の反応物を吸引して、反応物中の核酸をカラムピペット7内のメンブレン74に結合させるとともに、反応残渣をカセット31に排出して、反応残渣中の核酸をメンブレン74に結合させる。引き続き、ステップS06を実行して、シリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して少なくとも一つの洗浄液ウェル内の洗浄バッファ液を吸引し、更に洗浄バッファ液をシリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して排出する。次に、ステップS08を実行して、シリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して溶離液ウェル内の溶離バッファ液を吸引して、更にシリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して、核酸を含む溶離バッファ液を回収管8に排出する。このうち、ステップS06とS08との間には、カラムピペット7をカラムピペット収容空間22に移動させて加熱することで、洗浄バッファ液のメンブレン74上での残留量を極力減らす、ステップS07を配することができる。上記ステップS05からステップS08は自動核酸抽出装置により実行されるものであり、図9中に示す破線部分(ステップS01からステップS04)は、使用者が自動核酸抽出装置外で手動で実行するか、又は全て自動核酸抽出装置で実行することができる。例えば、使用者は、まず試料を溶解遠心分離した後、上澄み液を結合バッファ液と混合した後、結合バッファ液収容空間に注入し、自動核酸抽出装置により後続のステップを実行することができる。又は、使用者は、まず試料を溶解遠心分離した後、上澄み液を結合バッファ液収容空間及び結合バッファ液に注入して混合して、自動核酸抽出装置により後続のステップを実行することができる。又は、使用者は、まず試料を溶解遠心分離した後、溶解産物を溶解液ウェル内に注入し、自動核酸抽出装置により後続のステップを実行することができるものであって、本発明では制限はない。
【0055】
本実施例は、ステップS01からステップS08はいずれも自動核酸抽出装置により実行されるということを説明するのに用いているが、ステップS01からステップS08において、自動核酸抽出装置及び移送フレーム4(シリンジ5を連動する)は直線方向L1に沿って特定位置にまで移動して前記ステップを実行するものであって、詳細は以下に記述する:ステップS01の前に、移送フレーム4に設けられているシリンジ5を直線方向L1に沿ってカラム収容部2の試料ピペット収容空間21にまで移動することで、シリンジ5を試料ピペット収容空間21中に収容されている試料ピペット6に接触させて、試料ピペット6を試料ピペット収容空間21から取り出す。続いて、シリンジ5に接している試料ピペット6は直線方向L1に沿ってカセット収容部3のカセット31にまで移動する。その後、ステップS01を実行して、カセット31の溶解液ウェル311内から溶解バッファ液を吸引して、続いて試料収容部1にまで移動する。次に、ステップS02を実行して、溶解バッファ液を試料収容部1の試料収容空間11に排出するとともに混合する。その後、ステップS03を実行して、試料収容空間11内で混合した後の溶解産物を吸引するとともに、試料収容部1の結合バッファ液収容空間12にまで移動する。その後、ステップS04を実行して、溶解産物を結合バッファ液収容空間12に排出するとともに結合バッファ液と混合することで結合反応を行う。続いて、ステップS05を実行する前に、シリンジ5及び試料ピペット6を試料ピペット収容空間21にまで移動させて、スプリング機構42によりリリースプレート41の作動を連動することで試料ピペット6をシリンジ5から試料ピペット収容空間21に取り外して、更にシリンジ5を直線方向L1に沿ってカラム収容部2のカラムピペット収容空間22にまで移動させて、シリンジ5をカラムピペット収容空間22に設けられているカラムピペット7に接触させて、メンブレン74が内部に設けられているカラムピペット7をカラム収容部2から取り出す。その後、シリンジ5に接しているカラムピペット7は直線方向L1に沿って結合バッファ液収容空間12にまで移動する。続いて、ステップS05を実行して、シリンジ5とカラムピペット7との組合せで吸引して、形成された反応物をメンブレン74を介して、反応物に含まれる核酸をメンブレン74に付着させる。続いて、シリンジ5は直線方向L1に沿ってカセット31にまで移動する。その後、反応物を重力方向で再度メンブレン74を介して、内包される核酸をメンブレン74に付着させるが、反応残渣については重力方向に沿ってカセット31に排出されて、反応残渣はメンブレンを二回通過させることで、反応物中の核酸をメンブレン74上に確実に付着させる。続いて、ステップS06を実行して、核酸を含むカラムピペット7がシリンジ5及び移送フレーム4と共に直線方向L1に沿って、洗浄バッファ液が収容されている洗浄液ウェル312にまで移動して、引き続き洗浄バッファ液を吸引及び排出することで洗浄を行って、洗浄バッファ液をメンブレン74を二回通過させることで、メンブレン74に残留している反応残渣を完全に洗浄する。洗浄した後、まず核酸を含むカラムピペット7をシリンジ5及び移送フレーム4と共に直線方向L1に沿ってカラムピペット収容空間22にまで移動させて、カラムピペット7をカラムピペット収容空間22内に停めて、ヒータHにより加熱することで、カラムピペット7のメンブレン74上に残留している液体(例えば洗浄バッファ液)を揮発させて、これを十分に乾燥させる(つまりステップS07)。最後に、核酸を含むカラムピペット7をシリンジ5及び移送フレーム4と共に直線方向L1に沿って、溶離バッファ液が収容されている溶離液ウェル313にまで移動させるとともにステップS08を実行して、溶離バッファ液を吸引及び排出することで溶離を行い、これにより溶出物(eluate,核酸を含む溶離バッファ液)を得る。その後、カラムピペット7が吸引して得られた溶出物を、続いて直線方向L1に沿って回収管8にまで移動した後、溶出物を回収管8に排出する。特に、ヒータHで加熱する時間は例えば30秒、1分間、3分間、5分間とすることができるが、これに限定されず、カラムピペット7のメンブレン74上に残留している液体が揮発して十分に乾燥できればよく、本発明では制限はない。
【0056】
本好ましい実施例において、反応残渣をカセット31に排出するステップ(ステップS05)、及び洗浄バッファ液をシリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して排出するステップ(ステップS06)にて、カラムピペット7の当接部72をカセット31の当接部314に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出する。当接部314の設計により、シリンジ5は液体を排出するときに、カラムピペット7は当接部314に当接することで、カラムピペット7が液体を排出するプロセス中にて圧力が大きくなり過ぎてシリンジ5から脱落して分離するようなことはない。カラムピペット7はシリンジ5が液体を排出した後の上昇時に緩んだとしても、当接部314の設計によって、カラムピペット7の当接部72を当接させるとともに当接部314上で直立して、シリンジ5から完全に分離することはなくなり、後続のステップによりシリンジ5をカラムピペット7に再度密着係合することができる。
【0057】
本好ましい実施例において、カラムピペット7の当接部72をカセット31の当接部314に当接させて、更に反応残渣、又は洗浄バッファ液を排出するステップ(S05、S06)の後に、更に下記するステップを含む:カラムピペット7の当接部72をカセット31の当接部314に当接させるとともに、シリンジ5を直線方向L1と垂直となる方向L2に5mm以下(5mmを含む)で上下動させる。このステップによって、カラムピペット7をシリンジ5に密着して結合して、カラムピペット7が緩んで落下するのを防止することができる。好ましくは、シリンジ5は方向L2に5mm上下動し、好ましくは、シリンジ5は方向L2に4.5mm上下動し、好ましくは、シリンジ5は方向L2に3mm上下動して、カラムピペット7をシリンジ5に再度密着して結合することができる。
【0058】
本好ましい実施例において、洗浄液ウェル312の数量は使用者の実際の必要性に応じて自ら調整することができるものであって、本発明では制限はない。詳細に言えば、もし洗浄液ウェル312の数量が一つ以上である場合、カラムピペット7をカラムピペット収容空間22にまで移動させて加熱する前に、シリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して少なくとも一つの洗浄液ウェル内の洗浄バッファ液を吸引し、更に洗浄バッファ液をシリンジ5とカラムピペット7との組合せでメンブレン74を介して排出させるステップを少なくとも一回繰り返すことができる。つまり、核酸を含むカラムピペット7がシリンジ5及び移送フレーム4と共に直線方向L1に沿って、洗浄バッファ液が収容されている洗浄液ウェル312にまで移動するとともに、洗浄バッファ液を繰り返し吸引及び排出することで、洗浄を行うステップは、異なる洗浄液ウェル312内で実行することができるということであり、洗浄ステップの回数は洗浄液ウェル312の数量に応じて決定される。
【0059】
本好ましい実施例において、溶解バッファ液を試料収容空間11に排出するとともに混合するステップ(ステップS02)と、試料収容空間11内で混合した後の溶解産物を吸引するステップ(ステップS03)との間には、フィルタ材収容空間315にまで移動して、シリンジ5と組み合わされた試料ピペット6をフィルタ材収容空間315内のフィルタ材に組み合わせるステップを更に含み、そして試料収容空間11内で混合した後の溶解産物を吸引するステップ(ステップS03)の後には、試料ピペット6及びフィルタ材を溶解液ウェル311にまで移動させるとともに溶解液ウェル311内にて直線方向に往復動させるステップを更に含む。詳細に言えば、生体試料が組織又は不純物を有するその他試料である場合、フィルタ材は溶解後の溶解産物をろ過することで、組織の破片又は不純物をフィルタ材外側にとどめさせるためのものであり、更にステップS03を実行して、清澄(組織の破片又は不純物を含まない)溶解産物をシリンジ5内に吸引する。続いて、試料ピペット6及びフィルタ材を溶解液ウェル311にまで移動させるとともに溶解液ウェル311内にて直線方向に往復動させることで、フィルタ材外側にとどめられている不純物を洗浄した後に、更にシリンジ5内の溶解産物を結合バッファ液収容空間12に排出することで結合反応を行い、組織の破片又は不純物が結合反応の效果に影響して、ひいては抽出効率に影響することを防止することができる。つまり、生体試料が組織又は不純物を有するその他試料である場合、前記ステップを追加することができる。
【0060】
本好ましい実施例において、試料収容空間11、結合バッファ液収容空間12、試料ピペット収容空間21、カラムピペット収容空間22、溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312、溶離液ウェル313、当接部314、シリンジ5、試料ピペット6、カラムピペット7、回収管8及びコネクタ51の数量は使用者の実際の必要性に応じて自ら調整することができるものであって、本発明では制限はない。特に、カセット31、試料収容空間11、結合バッファ液収容空間12、試料ピペット収容空間21、カラムピペット収容空間22、シリンジ5及び回収管8は直線方向L1に配列されており、配列の順序はここでは限定しない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記をまとめるに、本発明の自動核酸抽出装置は各々溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312及び隣接する溶離液ウェル313に当接部314がそれぞれ設けられているという設計によって、使用者が自動核酸抽出を行うときに、反応物が溶解液ウェル311、洗浄液ウェル312又は溶離液ウェル313から飛び散るのを防止し、またカラムピペット7が緩んで落下するのも防止することができる。また、カセット31及び収容空間が直線方向L1に配列されており、そして移動フレーム4とシリンジ5とが直線方向に往復動する設計により、直線方向L1での核酸抽出を自動で行うことができ、検体の汚染を防止し且つ抽出効率を向上させることができる。よって、本発明の自動核酸抽出装置では確実に、検体中から例えばcfDNA及びctDNAといった核酸を、より高い収率及び高い濃度で迅速にかつ容易に抽出することができる。
【0062】
上記は単に例示に過ぎず、限定するものではない。本発明の技術思想及び範囲を超えることなく、これに対して行う如何なる等価の修正又は変更のいずれも、別紙の特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 試料収容部
2 カラム収容部
3 カセット収容部
4 移送フレーム
5 シリンジ
6 試料ピペット
7 カラムピペット
8 回収管
11 試料収容空間
12 結合バッファ液収容空間
21 試料ピペット収容空間
22 カラムピペット収容空間
31 カセット
41 リリースプレート
42 スプリング機構
43 シリンジ固定部材
51 コネクタ
61、71 組付け部
62、73 先端部
72、314 当接部
74 メンブレン
311 溶解液ウェル
312 洗浄液ウェル
313 溶離液ウェル
315 フィルタ材収容空間
316 弾性クランプ
B ベース
M 駆動手段
I 金属枠
L1 直線方向
L2 垂直となる方向
S01~S08 ステップ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】