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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】フォトクロミック物品
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20220107BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20220107BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G02C7/10
C08G18/44
C08G18/08 038
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524057
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019080500
(87)【国際公開番号】W WO2020094772
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/757,454
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316008983
【氏名又は名称】トランジションズ オプティカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Transitions Optical Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トゥルペン, ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ゼジンカ, エリザベス エー.
(72)【発明者】
【氏名】アモンド, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】チョプラ, アヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイリー, マイケル フランク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ボン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】モンダル, スジット
(72)【発明者】
【氏名】パリーゼ, ニコラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ショーネシー, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ, ロバート ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】イェ, アン-フン
【テーマコード(参考)】
2H006
4J034
【Fターム(参考)】
2H006BE02
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF02
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC25
4J034HC26
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD04
4J034HD07
4J034HD12
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC23
4J034KD02
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4J034MA11
4J034MA12
4J034MA14
4J034QB19
4J034RA13
(57)【要約】
本発明は、基材と、硬化可能なフォトクロミック組成物から形成されたフォトクロミック層とを含む、フォトクロミック物品に関する。そのフォトクロミック組成物には、ポリカーボネートジオールを含むポリオール成分、ブロックされていない多官能イソシアネート及び/又はブロックされた多官能イソシアネートを含むイソシアネート成分、並びに少なくとも1種のフォトクロミック化合物が含まれる。そのイソシアネート成分のブロック/非ブロックのイソシアネートの当量の、ポリオール成分のヒドロキシルの当量に対する当量比は、少なくとも5:1である。そのフォトクロミック物品は、23℃で70秒以下のT1/2(褪色半減期)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック物品であって、
(A)基材;及び
(B)前記基材の少なくとも一部の上に存在するフォトクロミック層であって、以下;
(a)少なくとも1300のヒドロキシル当量を有するポリカーボネートジオールを含む、ポリオール成分;
(b)少なくとも2個のブロックされていないイソシアネート基を含むブロックされていない多官能イソシアネート、少なくとも2個のブロックされたイソシアネート基を含むブロックされた多官能イソシアネート、又は前記ブロックされていない多官能イソシアネートと前記ブロックされた多官能イソシアネートとの組合せ、の少なくとも1種を含むイソシアネート成分;並びに
(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物
を含む硬化可能なフォトクロミック組成物から形成される、フォトクロミック層
を含み、
ここで、前記硬化可能なフォトクロミック組成物が、少なくとも5:1の、(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比を有し、
前記フォトクロミック物品が、23℃で70秒以下のT1/2(褪色半減期)を示す、
フォトクロミック物品。
【請求項2】
前記フォトクロミック物品が、23℃で7分以下の70%透過率到達時間を示す、請求項1に記載のフォトクロミック物品。
【請求項3】
前記基材が、光学的基材である、請求項1又は2に記載のフォトクロミック物品。
【請求項4】
前記ポリカーボネートジオールが、少なくとも1400のヒドロキシル当量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項5】
前記ポリカーボネートジオールが、1800以下のヒドロキシル当量を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項6】
(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する前記当量比が、少なくとも6:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項7】
(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する前記当量比が、10:1以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項8】
前記ポリオール成分が、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリ(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項9】
前記ブロックされていない多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされていない多官能イソシアネートであり、前記ブロックされた多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされた多官能イソシアネートである、請求項1~8のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項10】
前記ブロックされていない多官能イソシアネートが、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合を含み;並びに
前記ブロックされた多官能イソシアネートが、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項11】
少なくとも1種のフォトクロミック化合物が、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノオキサジン、スピロ(インドリン)キノオキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項12】
少なくとも1種のフォトクロミック化合物が、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造を含むインデノ-縮合ナフトピランから選択され、
前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造が、以下:
3位に結合された、B及びB’(ここで、B及びB’は、それぞれ独立して、非置換のアリール又は置換されたアリールから選択され、ここで前記アリールの置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヘテロ脂環族基、ヘテロアリール基、又は脂肪族エーテル基から選択される)、
6位に結合された、水素、又は-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)、
7位に結合された、電子供与性の基、
11位に結合された、以下から選択される基:
(i)電子吸引性で非共役の基;又は
(ii)パイ共役拡張基(ここで、前記パイ共役拡張基が、前記インデノ-縮合ナフトピランのパイ共役系を拡張する);及び
13位に結合された、R及びR(ここで、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択されるか、又はRとRとが合体して、C~C12スピロ基を形成する)、
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項13】
B及びB’が、それぞれ独立して、非置換のフェニル又は置換されたフェニルから選択され、前記フェニル置換基が、それぞれ独立して、フルオロ、モルホリノ、ピリミジノ、ピペリジノ、-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択される)、並びにそれらの組合せからなる群から選択され、
前記電子供与性の基が、アルキル、アルコキシ、一級アミノ、二級アミノ、三級アミノ、又は脂肪族環状アミノから選択され、
前記電子吸引性で非共役の基が、ハロ基、α-ハロアルキル、α,α-ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C~C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、又は基-O-C(O)-R(ここで、Rは、C~C10アルキル、C~C10ハロアルキル、又はC~C10ペルハロアルキルから選択される直鎖状又は分岐状の基である)から選択され、且つ
前記パイ共役拡張基が、次の式(I)又は式(II)によって表される基であり、
-X=Y (I)
又は
-X’≡Y’ (II)
式(I)においては、Xは、-CR(ここで、Rは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択される)であり;且つYは、C(R又はOから選択され、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択され;
式(II)においては、X’は、-Cであり;且つY’は、CR又はNであるが、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択されるか、
又は
前記パイ-共役拡張基が、置換若しくは非置換のアリール;又は置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される、
請求項12に記載のフォトクロミック物品。
【請求項14】
前記硬化可能なフォトクロミック組成物が、カルボン酸のスズ(II)塩、スズ(IV)化合物、又はそれらの組合せから選択される有機スズ化合物を含む硬化触媒をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【請求項15】
前記有機スズ化合物が、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート、又はそれらの組合せから選択される、請求項14に記載のフォトクロミック物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許出願第62/757,454号(出願日、2018年11月8日)に対する優先権を有し、それを主張する(当該出願の開示を参照することにより、そのすべてを本明細書に取り入れたものとする)。
【0002】
本発明は、基材及び硬化可能なフォトクロミック組成物から形成されたフォトクロミック層を含むフォトクロミック物品に関し、それには、ポリカーボネートジオールを含むポリオール成分、イソシアネート成分、及び少なくとも1種のフォトクロミック化合物が含まれており、その中では、ブロック/非ブロックのイソシアネート対ヒドロキシルの当量比が、少なくとも5:1であり、そのフォトクロミック物品は、23℃で70秒以下のT1/2(褪色半減期(Fade Half Time))を示す。
【背景技術】
【0003】
電磁放射(electromagnetic radiation)(又は「化学放射(actinic radiation)」)の特定の波長に応答して、フォトクロミック化合物は、典型的には、一つの形態又は状態から、また別の形態へと転換するが、それぞれの形態は、それらに伴う、特徴的すなわち区別可能な吸収スペクトルを有している。典型的には、化学放射に暴露させると、多くのフォトクロミック化合物は、閉環形(closed-form)(これは、そのフォトクロミック化合物の、活性化されていない(すなわち、漂白された(bleached)/実質的に無色の)状態に相当する)から、開環形(open-form)(これは、そのフォトクロミック化合物の、活性化された(すなわち、着色した)状態に相当する)へと転換される。化学放射の暴露がないと、そのようなフォトクロミック化合物は、可逆的に転換されて、活性化された(すなわち、着色した)状態から、活性化されていない(すなわち、漂白された/無色の)状態へと戻る。フォトクロミック化合物を含む組成物、たとえば硬化可能な組成物は、典型的には、無色の(たとえばクリアな)状態と、着色した状態とを示すが、それは、その中に含まれているフォトクロミック化合物の、無色の状態及び着色した状態に対応している。
【0004】
フォトクロミック化合物を、硬化可能な組成物の中に使用して、フォトクロミックである、たとえば、硬化された層、たとえば硬化されたフィルム又はシートを形成させることができる。硬化されたフォトクロミック層、たとえば硬化されたフォトクロミックコーティングの場合、典型的には、それらが、硬度とフォトクロミック性能とを組み合わせて有しているのが望ましい。一般的には、(活性化されていない/無色の)閉環形と(活性化された/着色した)開環形との間でのフォトクロミック化合物の可逆的な転換をもたらす速度論は、(フォトクロミック化合物が含まれている硬化された層の)ソフトなマトリックスでは、より早いが、ハードなマトリックスでは、より遅い。ソフトなマトリックスを有する硬化されたフォトクロミック層は、典型的には、硬度が低く、それに対して、ハードなマトリックスを有するものは、典型的には、硬度が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトクロミック層の硬度を低下させることなく、改良されたフォトクロミック性能を併せ持つ硬化されたフォトクロミック層が提供される、硬化可能なフォトクロミック組成物から形成された、フォトクロミック層を含むフォトクロミック物品を開発するのが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、(A)基材;及び(B)その基材の少なくとも一部の上に存在するフォトクロミック層、を含むフォトクロミック物品が提供されるが、ここで、そのフォトクロミック層は、硬化可能なフォトクロミック組成物から形成されている。その硬化可能なフォトクロミック組成物には、(a)ポリオール成分が含まれるが、ポリオール成分には、少なくとも1300のヒドロキシル当量を有するポリカーボネートジオールが含まれている。その硬化可能なフォトクロミック組成物にはさらに、(b)少なくとも2個のブロックされていないイソシアネート基を含むブロックされていない多官能イソシアネート、少なくとも2個のブロックされたイソシアネート基を含むブロックされた多官能イソシアネート、又はそのブロックされていない多官能イソシアネートとブロックされた多官能イソシアネートとの組合せ、の少なくとも1種を含むイソシアネート成分が含まれている。その硬化可能なフォトクロミック組成物にはさらに、(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物も含まれる。そのフォトクロミック組成物は、(i)そのイソシアネート成分のブロックされていないイソシアネートの当量及びブロックされたイソシアネートの当量対(ii)そのポリオール成分のヒドロキシル当量が、少なくとも5:1の当量比を有している。そのフォトクロミック物品は、23℃で70秒以下のT1/2(褪色半減期)を示す。
【0007】
本発明を特徴づける特色は、本明細書の開示に添付され、その一部を形成している特許請求項において特異性を指摘されている。本発明のそれら及びその他の特色、その操作上の利点、及びそれを使用することにより得られる特定の目的物は、以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろうが、そこでは、本発明の非限定的な実施態様を示し、説明している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用するとき、冠詞の「a」、「an」及び「the」には、特に明記したり、はっきりと単一の指示物に限定したりしない限り、複数の指示物も含んでいる。
【0009】
特に明記しない限り、本明細書において開示された範囲及び比率はすべて、その中に組みこまれているありとあらゆるサブ範囲及びサブ比率が包含されているものと理解されたい。たとえば、記載された範囲又は比率の「1対10」には、最小値の1と最大値の10との(両端を含む)間の、ありとあらゆるサブ範囲が含まれていると考えるべきである;すなわち、最小値の1以上で始まり、最大値の10以下で終わるすべてのサブ範囲又はサブ比率、たとえば1から6.1まで、3.5から7.8まで、及び5.5から10までなど(これらに限定される訳ではない)。
【0010】
操作実施例は別とし、また特に断らない限り、本明細書及び特許請求項で使用される、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、いずれの場合においても、「約」という用語で修飾されていると理解されたい。
【0011】
本明細書で使用するとき、ポリマーの分子量の値、たとえば重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、適切な標準、たとえばポリスチレン標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求めている。
【0012】
本明細書で使用するとき、多分散性指数(PDI)の値は、そのポリマーの、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比率(すなわち、Mw/Mn)を表している。
【0013】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー(たとえば、単一のモノマー種から調製された)、コポリマー(たとえば、少なくとも2種のモノマー種から調製された)、及びグラフトポリマーを意味している。
【0014】
本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリレート」及びたとえば「(メタ)アクリル酸エステル」のような類似の用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味している。本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味している。
【0015】
本明細書で使用するとき、「フォトクロミック」及び類似の用語たとえば、「フォトクロミック化合物」という用語は、少なくとも可視放射で吸収スペクトルを有することを意味しており、それは、少なくとも化学放射の吸収に応答して変動する。さらに、本明細書で使用するとき、「フォトクロミック物質」という用語は、フォトクロミック性を示すのに適合した(たとえば、少なくとも化学放射の吸収に応答して変動する、少なくとも可視放射のための吸収スペクトルを有するのに適合した)各種の物質を意味していて、それには、少なくとも1種のフォトクロミック化合物が含まれている。
【0016】
本明細書で使用するとき、「化学放射(actinic radiation)」という用語は、物質に、たとえば、フォトクロミック物質を一つの形態又は状態から、他のものへと転換させる(これに限定される訳ではない)ような、応答を起こさせることが可能な電磁放射を意味しているが、これについては、本明細書でさらに詳しく説明するであろう。
【0017】
本明細書で使用するとき、「フォトクロミック物質」という用語には、熱的に可逆的なフォトクロミック物質及び化合物、並びに非熱的に可逆的なフォトクロミック物質及び化合物が含まれる。本明細書で使用するとき、「熱的に可逆的な(thermally reversible)フォトクロミック化合物/物質」という用語は、化学放射に応答して、第一の状態たとえば「クリアな状態」から、第二の状態たとえば「着色した状態」へと変換し、そして熱エネルギーに応答して、第一の状態へ戻ることが可能な、化合物/物質を意味している。本明細書で使用するとき、「非熱的に可逆的なフォトクロミック化合物/物質」という用語は、化学放射に応答して、第一の状態たとえば「クリアな状態」から第二の状態たとえば「着色した状態」へ変換することが可能であり、そして、着色した状態の吸収と実質的に同じ波長の化学放射(たとえば、そのような化学放射に非連続的に暴露した場合)に応答して第一の状態に戻るような化合物/物質を意味している。
【0018】
本明細書で使用するとき、「状態(state)」を修飾するための「第一」及び「第二」という用語は、なにか特別な順序や、起きた順を指しているのではなく、二つの異なった条件や性質を指している。非限定的に説明をすれば、フォトクロミック化合物の第一の状態と第二の状態とは、少なくとも1種の光学的な性質、たとえば(限定する訳ではないが)可視光線及び/又はUV光線の吸収の点で異なっている。したがって、本明細書において開示された各種の非限定的な実施態様においては、本発明のフォトクロミック物品のフォトクロミック層のフォトクロミック化合物は、第一の状態及び第二の状態のそれぞれで、異なった吸収スペクトルを有することができる。たとえば、本明細書において限定している訳ではないが、フォトクロミック化合物は、第一の状態ではクリアで、第二の状態では着色させることも可能である。別な方法として、本発明のフォトクロミック化合物を、第一の状態では第一の色とし、第二の状態では第二の色とすることもできる。
【0019】
本明細書で使用するとき、「光学的」という用語は、光及び/又は視覚に関連した意味合いを有している。たとえば、本明細書において開示された各種の非限定的な実施態様においては、その光学的な物品又は要素又はデバイスは、眼に関わる物品と要素とデバイス、ディスプレイの物品と要素とデバイス、窓、鏡、並びに能動的及び受動的液晶セルの物品と要素とデバイスから選択することができる。
【0020】
本明細書で使用するとき、「眼に関わる(ophthalmic)」という用語は、眼及び/又は視覚に関連した意味合いを有している。眼に関わる物品又は要素の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:矯正レンズ及び非矯正レンズ(単一視又は多重視レンズを含み、それは、セグメント化されるか又はセグメント化されていない多重視レンズ(たとえば、限定される訳ではないが、二焦点レンズ、三焦点レンズ、及び累進多焦点レンズ)のいずれであってもよい)、さらには視覚の矯正、保護、又は強化(美容的、その他)に使用されるその他の要素(コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、及び保護レンズ若しくはバイザーを含むが、これらに限定される訳ではない)。
【0021】
本明細書で使用するとき、「ディスプレイ」という用語は、言語、数字、記号、デザイン、又は図面で、情報を眼で見ることができるか、又は機械で読み取ることができる表現を意味している。ディスプレイ要素の非限定的な例としては、スクリーン、モニター、及びセキュリティ要素たとえば、セキュリティーマークが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用するとき、「窓」という用語は、それを通して、照射線を透過させることを可能とするために用いる開口部を意味している。窓の非限定的な例としては、自動車及び航空機の透明部(transparencies)、フロントガラス(windshields)、フィルター、シャッター、及び光スイッチが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用するとき、「鏡」という用語は、入射光の大部分を鏡のように反射する表面を意味している。
【0024】
本明細書で使用するとき、「液晶セル」という用語は、配列することが可能な液晶物質を含む構造物を指している。液晶セル要素の非限定的な例が、液晶ディスプレイである。
【0025】
本明細書で使用するとき、「の上に形成された(formed over)」、「の上に析出された(deposited over)」、「の上に備えられた(provied over)」、「の上に適用された(applied over)」、「の上に存在する(residing over)」、又は「の上に位置する(positioned over)」という用語は、下に存在する要素の上に(但し、直接接触して(つながって)いる必要はない)、又は下に存在する要素の表面に、形成され、析出され、備えられ、適用され、存在し、又は位置していることを意味している。たとえば、基材の上に位置する層は、その位置されるか又は形成された層と、基材との間に、同一又は異なった組成物の1層又は複数の他の層、コーティング、又はフィルムが存在していることを排除している訳ではない。
【0026】
本明細書で使用するとき、「ポリオール」という用語は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する物質を意味している。
【0027】
限定される訳ではないが、すべての文書、たとえば本明細書で引用された発行済みの特許及び特許出願は、特に断らない限り、それらのすべてを、「引用することにより本明細書に取り入れた」と考えるべきである。
【0028】
本明細書で使用するとき、「脂肪族」及びそれに関連する用語、たとえば「脂肪族基」という用語は、少なくとも1個の炭素原子、たとえば1~20個の炭素原子を含む非環状且つ非芳香族の炭化水素基、たとえばC~C20脂肪族基、又はC~C10脂肪族基、又はC~C脂肪族基を意味し;直鎖状又は分岐状であってよく;場合によっては、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルケン(又はアルケニル)基を含み;そして場合によっては、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルキン(又はアルキニル)基を含む。2個以上のアルケン基を含んでいる場合、脂肪族基のそれらのアルケン基は、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。2個以上のアルキン基を含んでいる場合、脂肪族基のそれらのアルキン基は、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。少なくとも1個のアルケン基と少なくとも1個のアルキン基とが含まれている場合には、その脂肪族基のアルケン基とアルキン基とが互いに、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。
【0029】
脂肪族基の例としては、アルキル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語及びそれに関連する用語たとえば「アルキル基」は、少なくとも1個の炭素原子、たとえば1~20個の炭素原子を含む基、たとえば、C~C20アルキル基、又はC~C10アルキル基、又はC~Cアルキル基を意味しており;直鎖状又は分岐状であり;且つ飽和である(したがって、アルケン基及びアルキン基をまったく含まない)。アルキル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、直鎖状又は分岐状のペンチル、直鎖状又は分岐状のヘキシル、直鎖状又は分岐状のヘプチル、直鎖状又は分岐状のオクチル、直鎖状又は分岐状のノニル、直鎖状又は分岐状のデシル、直鎖状又は分岐状のウンデシル、直鎖状又は分岐状のドデシル、直鎖状又は分岐状のトリデシル、直鎖状又は分岐状のテトラデシル、直鎖状又は分岐状のペンタデシル、直鎖状又は分岐状のヘキサデシル、直鎖状又は分岐状のヘプタデシル、直鎖状又は分岐状のオクタデシル、直鎖状又は分岐状のノナデシル、及び直鎖状又は分岐状のエイコサニル。
【0030】
本明細書で使用するとき、「直鎖状又は分岐状の」基、たとえば直鎖状又は分岐状のアルキル(これらに限定される訳ではない)との記述は、本明細書においては、非限定的な説明を目的としては、メチレン基又はメチル基;直鎖状である基、たとえば直鎖状のC~C20アルキル基;並びに適度に分岐した基、たとえば、限定される訳ではないが、分岐状のC~C20アルキル基を含んでいると理解されたい。
【0031】
脂肪族基の例としては、アルケニル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「アルケニル」という用語及びそれに関連するたとえば「アルケニル基」という用語は、少なくとも2個の炭素原子、たとえば2~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20アルケニル基、又はC~C10アルケニル基、又はC~Cアルケニル基を意味し;直鎖状又は分岐状であり;且つ1個又は複数の内部及び/又は末端のアルケン(又はアルケニル)基を含んでいる。アルケニル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:本明細書において先に列挙した直鎖状又は分岐状のアルキル基の例で、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個のアルケン(又はアルケニル)基を有するもの、たとえば、限定される訳ではないが、エテニル、直鎖状又は分岐状のプロペニル、直鎖状又は分岐状のブテニル、直鎖状又は分岐状のペンテニル、直鎖状又は分岐状のヘキセニルなど。
【0032】
脂肪族基の例としては、アルキニル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「アルキニル」という用語及びそれに関連するたとえば「アルキニル基」という用語は、少なくとも2個の炭素原子、たとえば2~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20アルキニル基、又はC~C10アルキニル基、又はC~Cアルキニル基を含む基を意味し;直鎖状又は分岐状であり;且つ、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルキン(又はアルキニル)基を含む。アルキニル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:本明細書において先に列挙した直鎖状又は分岐状のアルキル基の例で、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個のアルキン(又はアルキニル)基を有するもの、たとえば、限定される訳ではないが、エチニル、直鎖状又は分岐状のプロピニル、直鎖状又は分岐状のブチニル、直鎖状又は分岐状のペンチニル、直鎖状又は分岐状のヘキシニルなど。
【0033】
本明細書で使用するとき、「ハロ脂肪族」という用語、及びそれに関連する、たとえば「ハロ脂肪族基」という用語は、非環状且つ非芳香族の、少なくとも1個の炭素原子、たとえば1~20個の炭素原子を含む炭化水素基、たとえばC~C20ハロ脂肪族基、又はC~C10ハロ脂肪族基、又はC~Cハロ脂肪族基を意味し;フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択される少なくとも1個のハロ基を含み;直鎖状又は分岐状であり;場合によっては、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルケン基を含み;そして場合によっては、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルキン基を含む。2個以上のアルケン基を含んでいる場合、ハロ脂肪族基のそれらのアルケン基は、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。2個以上のアルキン基を含んでいる場合、ハロ脂肪族基のそれらのアルキン基は、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。少なくとも1個のアルケン基と少なくとも1個のアルキン基とが含まれている場合には、そのハロ脂肪族基のアルケン基とアルキン基とが互いに、共役であっても、及び/又は非共役であってもよい。ハロ脂肪族基の少なくとも1個の利用可能な水素、及び最高では全部の利用可能な水素を、たとえばフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択されるハロ基を用いて置換することができる。したがって、本明細書で使用するとき、「ハロ脂肪族」という用語には、「ペルハロ脂肪族」及びそれに関連する用語たとえば、「ペルハロ脂肪族基」も含まれるが、それらに限定される訳ではない。
【0034】
ハロ脂肪族基の例としては、ハロアルキル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「ハロアルキル」という用語及びそれに関連するたとえば「ハロアルキル基」という用語は、少なくとも1個の炭素原子、たとえば1~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20ハロアルキル、又はC~C10ハロアルキル、又はC~Cハロアルキルを意味し;直鎖状又は分岐状であり;たとえばフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択される少なくとも1個のハロ基を含み;且つ飽和である(したがって、アルケン基及びアルキン基をまったく含まない)。ハロアルキル基の少なくとも1個の利用可能な水素、及び最高では全部の利用可能な水素を、たとえばフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択されるハロ基を用いて置換することができる。したがって、本明細書で使用するとき、「ハロアルキル」という用語には、「ペルハロアルキル」及びそれに関連する用語たとえば、「ペルハロアルキル基」も含まれるが、それらに限定される訳ではない。ハロアルキル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:先に列挙した直鎖状又は分岐状のアルキル基の例で、少なくとも1種のハロ基、たとえば、限定される訳ではないが、ハロメチル、ハロエチル、直鎖状又は分岐状のハロプロピル、直鎖状又は分岐状のハロブチル、直鎖状又は分岐状のハロペンチル、直鎖状又は分岐状のハロヘキシルなどを含むもの(それぞれが独立して少なくとも1個のハロ基を含んでいる)。
【0035】
ハロ脂肪族基の例としては、ハロアルケニル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「ハロアルケニル」という用語及びそれに関連する「ハロアルケニル基」という用語は、少なくとも2個の炭素原子、たとえば2~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20ハロアルケニル、又はC~C10ハロアルケニル、又はC~Cハロアルケニルを意味し;直鎖状又は分岐状であり;たとえばフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択される少なくとも1個のハロ基を含み;且つ、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルケン(又はアルケニル)基を含む。ハロアルケニル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:先に列挙した直鎖状又は分岐状のアルキル基の例であって、それが、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも1個のアルケン(又はアルケニル)基、及び少なくとも1種のハロ基を有し、たとえば、限定される訳ではないが、ハロエテニル、直鎖状又は分岐状のハロプロペニル、直鎖状又は分岐状のハロブテニル、直鎖状又は分岐状のハロペンテニル、直鎖状又は分岐状のハロヘキセニルなどであり、それぞれが独立して、少なくとも1個のハロ基を含んでいる。
【0036】
ハロ脂肪族基の例としては、ハロアルキニル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「ハロアルキニル」という用語及びそれに関連する「ハロアルキニル基」という用語は、少なくとも2個の炭素原子、たとえば2~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20ハロアルキニル、又はC~C10ハロアルキニル、又はC~Cハロアルキニルを意味し;直鎖状又は分岐状であり;たとえばフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択される少なくとも1個のハロ基(又はハロゲン基)を含み;且つ、1個又は複数の内部及び/又は末端のアルキン(又はアルキニル)基を含む。ハロアルキニル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:先に列挙した直鎖状又は分岐状のアルキル基の例であって、それが、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも1個のアルケン(又はアルキニル)基、及び少なくとも1種のハロ基を有し、たとえば、限定される訳ではないが、ハロエチニル、直鎖状又は分岐状のハロプロピニル、直鎖状又は分岐状のハロブチニル、直鎖状又は分岐状のハロペンチニル、直鎖状又は分岐状のハロヘキシニルなどであり、それぞれが独立して、少なくとも1個のハロ基を含んでいる。
【0037】
本明細書で使用するとき、「脂環族」という用語及びそれに関連するたとえば「脂環族基」という用語は、少なくとも3個の炭素原子、たとえば3~20個の炭素原子を含む、環状且つ非芳香族の炭化水素基、たとえばC~C20脂環族基、又はC~C10脂環族基、又はC~C脂環族基を意味し;場合によっては、少なくとも1個の、アルケン及び/又はアルキンから選択される不飽和基を含み;そして場合によっては、2個以上の縮合した脂環族環を含む。
【0038】
脂環族基の例としては、シクロアルキル基が挙げられるが、それに限定される訳ではない。本明細書で使用するとき、「シクロアルキル」という用語、及びそれに関連するたとえば「シクロアルキル基」という用語は、少なくとも3個の炭素原子、たとえば3~20個の炭素原子を含む基、たとえばC~C20シクロアルキル基、又はC~C10シクロアルキル基、又はC~Cシクロアルキル基を意味し;場合によっては、少なくとも1個の、アルケン及び/又はアルキンから選択される不飽和基を含み;そして場合によっては、2個以上の縮合した脂環族環を含む。シクロアルキル基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;シクロノニル;シクロデシル;シクロウンデシル;シクロドデシル;ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル;デカヒドロナフタレニル;テトラデカヒドロアントラセニル;テトラデカヒドロフェナントレニル;及びドデカヒドロ-1H-フェナレニル。
【0039】
本明細書で使用するとき、「アリール」という用語及びそれに関連するたとえば「アリール基」という用語は、少なくとも5個の炭素原子を含む環状芳香族炭化水素基、たとえば、C~C20アリール基、又はC~C14アリール基を意味し;そして場合によっては、少なくとも2個の縮合芳香族環が含まれる。アリール基の例としては、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントレニル、及び3aH-フェナレニルが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0040】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアリール」という用語及びそれに関連するたとえば「ヘテロアリール基」という用語は、少なくとも3個の炭素原子を含む環状芳香族炭化水素基、たとえばC~C20ヘテロアリール基、又はC~C14ヘテロアリール基を意味し;芳香族環の中に、少なくとも1個のヘテロ原子、たとえば-O-、-N-、及び/又は-S-を含み;そして場合によっては、少なくとも2個の縮合芳香族環(その内の少なくとも1個は、縮合ヘテロアリール環である)を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、フラニル、チオフェニル、ピラニル、ピリジニル、イソキノリニル、及びピリミジニルが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0041】
本明細書で使用するとき、「アルコキシ」という用語及びそれに関連するたとえば「アルコキシ基」という用語は、少なくとも1個の炭素原子、たとえば1~20個の炭素原子を含むアルキル基、たとえばC~C20アルコキシ、又はC~C10アルコキシ、又はC~Cアルコキシを意味し;末端の二価の酸素結合又は基(又は末端のエーテル結合又は基)を含み;飽和である(したがって、アルケン基及びアルキン基をまったく含まない)。アルコキシ基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:末端の二価の酸素結合又は基(又は末端のエーテル結合又は基)含む、本明細書において先に記載したアルキル基の例、たとえば、限定される訳ではないが、メトキシ(CH-O-)、エトキシ(CHCH-O-)、n-プロポキシ(CHCHCH-O-)、イソ-プロポキシ、直鎖状又は分岐状のブトキシ、直鎖状又は分岐状のペントキシ、直鎖状又は分岐状のヘキソキシなど。
【0042】
本明細書で使用するとき、「ハロゲン」という用語及びそれに関連するたとえば「ハロゲン基」及び/又は「ハロ基」という用語は、単結合された、たとえば、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及び/又はヨード(I)から選択されるハロゲン原子を意味している。
【0043】
本明細書で使用し、明白にそうではないと述べた場合以外では、「水素」という用語及びそれに関連するたとえば「水素基」という用語は、単結合された水素(-H)を意味している。
【0044】
本発明のフォトクロミック物品には、基材の少なくとも一部の上に存在するフォトクロミック層が含まれ、その中で、フォトクロミック層は、硬化可能なフォトクロミック組成物から形成される。その硬化可能な組成物には、ポリオール成分が含まれるが、そのポリオール成分には、少なくとも1300のヒドロキシル当量を有するポリカーボネートジオールが含まれている。
【0045】
ポリカーボネートジオールのヒドロキシル当量は、業界公知の方法で求められるが、それに含まれているのは、典型的には、ポリカーボネートジオールをアセチル化させ、次いで、水酸化カリウムを用いて滴定し、そのようにして得られたヒドロキシル価を数学的に変換させてヒドロキシル当量とすることである。
【0046】
いくつかの実施態様においては、そのポリオール成分のポリカーボネートジオールが、少なくとも1400のヒドロキシル当量を有している。いくつかのさらなる実施態様においては、そのポリオール成分のポリカーボネートジオールが、1800以下のヒドロキシル当量を有している。ポリオール成分のポリカーボネートジオールは、いくつかの実施態様においては、1300~1800、又は1400~1800、又は1500~1800、又は1300~1700、又は1400~1700、又は1500~1700、のヒドロキシル当量を有している。
【0047】
そのポリカーボネートジオールは、いくつかの実施態様においては、3500~6000、又は4000~5500の数平均分子量(Mn)を有している。そのポリカーボネートジオールは、いくつかの実施態様においては、8000~11,000、又は9000~10,500の重量平均分子量(Mw)を有している。そのポリカーボネートジオールは、いくつかのさらなる実施態様においては、3.0未満、又は2.5未満、又は1.7~3.0、又は1.8~2.5、又は1.9~2.25の多分散性指数(PDI)を有している。
【0048】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物のポリオール成分のポリカーボネートジオールは、業界公知の方法に従って調製することができる。いくつかの実施態様においては、且つ非限定的に説明をすれば、ポリカーボネートジオールは、ジオールを、二ハロゲン化カルボニル、たとえば二塩化カルボニルと反応させ、それにより生成したハロゲン酸、たとえばHClを除去することによって調製することができる。さらなる、非限定的な説明としては、ポリカーボネートジオールは、ジオールとジヒドロカルビルカーボネート、たとえばジフェニルカーボネートとでエステル交換反応をさせ、それにより生成するヒドロキシル官能性ヒドロカルビル、たとえばフェノールを除去することにより、調製することができる。
【0049】
それからポリカーボネートジオールを調製することが可能な、ジオール(2個のヒドロキシル基を有する)の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:エタンジオール(たとえば、1,2-エタンジオール);プロパンジオール(たとえば、1,2-及び/又は1,3-プロパンジオール);ブタンジオール(たとえば、1,2-、1,3-及び/又は1,4-ブタンジオール);ペンタンジオール(たとえば、限定される訳ではないが、1,5-ペンタンジオール);ヘプタンジオール;ヘキサンジオール;オクタンジオール;4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジシクロヘキサノール;4,4’-メチレンジシクロヘキサノール;ネオペンチルグリコール;2,2,3-トリメチルペンタン-1,3-ジオール;2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール;1,4-ジメチロールシクロヘキサン;4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;4,4’-メチレンジフェノール;及びそのようなジオールの2種以上の組合せ。
【0050】
そのポリオール成分には、いくつかの実施態様においては、(ポリカーボネートジオールに加えて)、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートがさらに含まれる。ヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートは、いくつかの実施態様においては、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する、1種又は複数の(メタ)アクリレートモノマー、及び、場合によっては、1種又は複数の、活性水素基(たとえば、ヒドロキシル、チオール、一級アミン、及び二級アミン基)を含まない(メタ)アクリレートモノマーから調製される。ヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートは、いくつかの実施態様においては、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する、1種又は複数の(メタ)アクリレートモノマーと、場合によっては、1種又は複数の、活性水素基(たとえば、ヒドロキシル、チオール、一級アミン、及び二級アミン基)を含まない(メタ)アクリレートモノマーとの組合せから調製される。
【0051】
それからヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートが調製される、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーには、いくつかの実施態様においては、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するC~C20(メタ)アクリレートモノマーが含まれる。ヒドロキシル官能性の(メタ)アクリレートモノマーのC~C20基は、たとえば、以下のものから選択することができる:C~C20の直鎖状のアルキル、C~C20の分岐状のアルキル、C~C20シクロアルキル、C~C20縮合環ポリシクロアルキル、C~C20アリール、又はC10~C20縮合環アリール。
【0052】
それからヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートを調製することが可能な、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル;(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシへキシル;(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシドデシル;及びそれらの2種以上の組合せ。
【0053】
それからヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートが調製される、活性水素基を全く含まない(メタ)アクリレートモノマーとしては、いくつかの実施態様においては、活性水素基を全く含まないC~C20(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。活性水素基を全く含まない(メタ)アクリレートモノマーのC~C20基は、たとえば、以下のものから選択することができる:C~C20の直鎖状のアルキル、C~C20の分岐状のアルキル、C~C20シクロアルキル、C~C20縮合環ポリシクロアルキル、C~C20アリール、又はC10~C20縮合環アリール。
【0054】
それから、ヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートを調製することができる、活性水素官能基(たとえば、ヒドロキシル、チオール、一級アミン、及び二級アミン基)をまったく含まない(メタ)アクリレートモノマーの例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:(メタ)アクリル酸メチル;(メタ)アクリル酸エチル;(メタ)アクリル酸プロピル;(メタ)アクリル酸イソプロピル;(メタ)アクリル酸ブチル;(メタ)アクリル酸イソブチル;(メタ)アクリル酸tert-ブチル;(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル;(メタ)アクリル酸ラウリル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル;(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル;及びそれらの2種以上の組合せ。
【0055】
いくつかの実施態様においては、ヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートの中に、それが形成された後で、ヒドロキシル基が導入される。非限定的に説明をすれば、ヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートは、オキシラン官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマーから調製することができる。オキシラン官能性(メタ)アクリレートモノマー残基又は単位は、重合の後で加水分解されるか、又は単官能アルコールと反応して、ヒドロキシル官能性の(メタ)アクリレートモノマーの残基又は単位を形成する。それからヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートを調製することが可能な、オキシラン官能性(メタ)アクリレートの例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル;(メタ)アクリル酸2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル;及びそれらの2種以上の組合せ。
【0056】
少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートは、各種適切なヒドロキシル当量を有することができる。いくつかの実施態様においては、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートは、150~500、又は150~400、又は150~300のヒドロキシル当量を有している。
【0057】
少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートは、各種適切な分子量を有することができる。いくつかの実施態様においては、そのヒドロキシル官能性のポリ(メタ)アクリレートが、少なくとも2000のMn、たとえば、2000~15,000のMn;及び少なくとも2000のMw、たとえば、2000~30,000のMwを有している。
【0058】
硬化可能なフォトクロミック組成物のポリオール成分が、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートを含んでいる場合には、そのポリカーボネートジオールは、典型的には、少なくとも80重量パーセント、又は少なくとも85パーセント、又は少なくとも90重量パーセント、及び99.5重量パーセント以下の量で存在させるが、その重量パーセントは、それぞれの場合において、そのポリオール成分の全固形分重量を基準にしたものである。
【0059】
硬化可能なフォトクロミック組成物のポリオール成分が、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートを含んでいる場合には、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するそのポリ(メタ)アクリレートは、典型的には、20重量パーセント以下、又は15重量パーセント以下、又は10重量パーセント以下、及び0.5重量パーセント以上の量で存在させるが、その重量パーセントは、それぞれの場合において、そのポリオール成分の全固形分重量を基準にしたものである。
【0060】
そのポリオール成分は、いくつかの実施態様においては、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、20~49重量パーセント、又は25~40重量パーセントの量で存在させるが、その重量パーセントは、それぞれの場合において、その硬化可能なフォトクロミック組成物の全樹脂固形分重量を基準にしたものである。
【0061】
その硬化可能なフォトクロミック組成物には、イソシアネート成分をさらに含む。イソシアネート成分としては、以下のものが挙げられる:(i)少なくとも2個のブロックされていないイソシアネート基を有する、ブロックされていない多官能イソシアネート;(ii)少なくとも2個のブロックされたイソシアネート基を有する、ブロックされた多官能イソシアネート;又は、(i)ブロックされていない多官能イソシアネートと(ii)ブロックされた多官能イソシアネートとの組合せ。いくつかのさらなる実施態様においては、そのイソシアネート成分に、(ブロックされていない多官能イソシアネート及び/又はブロックされた多官能イソシアネートに加えるか、それらに代えて)、少なくとも1個のブロックされていないイソシアネート基と少なくとも1個のブロックされたイソシアネート基とを組み合わせて含む、多官能イソシアネートが含まれる。
【0062】
本明細書で使用するとき、「ブロックされていないイソシアネート基」という用語及びそれに関連する用語たとえば「キャップされていないイソシアネート基」は、ブロック基又はキャップ基を全く含まないイソシアネート基(-NCO)を意味しており、「遊離イソシアネート基」とも呼ばれている。
【0063】
本明細書で使用するとき、「ブロックされたイソシアネート基」という用語及びそれに関連する用語たとえば「キャップされたイソシアネート基」という用語は、ブロッキング剤又はキャッピング剤を用いてブロックされるか又はキャップされたイソシアネート基を意味している。高温に暴露させた後では、ブロックされた多官能イソシアネートからキャッピング/ブロッキング剤が分離(すなわち、デブロック又はデキャップ)して、それらの遊離/ブロックされていないイソシアネート基が、ポリオール成分のヒドロキシル基と反応し、共有結合を形成することが可能となり;且つ、他の遊離のイソシアネート基と共有結合を形成(たとえば、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、及び/又はアロファネート結合)することも可能となる。ブロックされた多官能イソシアネートからアンブロック又はデキャップされた後では、そのブロッキング/キャッピング剤は、(組成物がガラス化状態になる前に)組成物から蒸発して抜け出すか、及び/又は組成物の中に、たとえば可塑剤として留まることも可能である。いくつかの実施態様においては、デブロッキング/デキャッピングの後で、ブロッキング/キャッピング剤が組成物の中で気泡を生じたり、及び/又はその組成物を過度に可塑化したりしないのが望ましい。
【0064】
ブロックされる多官能イソシアネートのブロッキング/キャッピング基は、いくつかの実施態様においては、ヒドロキシ官能性化合物、1H-アゾール、ラクタム、ケトオキシム、及びそれらの混合物から選択することができる。ヒドロキシ官能性化合物のタイプとしては、脂肪族、脂環族、若しくは芳香族のアルキルモノアルコール、又はフェノール類化合物が挙げられるが、それらに限定される訳ではない。ブロッキング/キャッピング剤として有用なヒドロキシ官能性化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:低級脂肪族アルコールたとえば、メタノール、エタノール、及びn-ブタノール;脂環族アルコールたとえば、シクロヘキサノール及びテトラヒドロフラン;芳香族アルキルアルコールたとえば、フェニルカルビノール及びメチルフェニルカルビノール;並びに、グリコールエーテル、たとえば、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテル。いくつかの実施態様においては、そのヒドロキシ官能性ブロッキング/キャッピング基としては、フェノール類化合物が挙げられ、その例としては、フェノールそのもの、及び置換されたフェノール、たとえば、クレゾール、ニトロフェノール、及びp-ヒドロキシ安息香酸メチルが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0065】
ブロッキング/キャッピング基として有用な1H-アゾールとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:1H-イミダゾール、1H-ピラゾール、1H-ジアルキルピラゾール(たとえば、1H-3,5-ジメチルピラゾール及び1H-2,5-ジメチルピラゾール)、1H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、1H-5-メチル-1,2,4-トリアゾール、及び1H-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール。
【0066】
ブロッキング/キャッピング基として有用なケトオキシムとしては、脂肪族又は脂環族のケトンから調製したものが挙げられる。ケトオキシムキャッピング基の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:2-プロパノンオキシム(アセトンオキシム)、2-ブタノンオキシム(メチルエチルケトオキシムとも呼ばれる)、2-ペンタノンオキシム、3-ペンタノンオキシム、3-メチル-2-ブタノンオキシム、4-メチル-2-ペンタノンオキシム、3,3-ジメチル-2-ブタノンオキシム、2-ヘプタノンオキシム、3-ヘプタノンオキシム、4-ヘプタノンオキシム、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、3-メチルシクロヘキサノンオキシム、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンオキシム、及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-5-オンオキシム。
【0067】
ラクタムキャッピング基の例としては、カプロラクタム及び2-ピロリジノンが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。その他の好適なキャッピング基としては、モルホリン、3-アミノプロピルモルホリン、及びN-ヒドロキシナフタルイミドが挙げられる。
【0068】
本発明のいくつかの実施態様においては、そのブロックされた多官能イソシアネートのブロックされたイソシアネート基が、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択されるブロッキング/キャッピング剤を用いてブロックされている:メチルエチルケトオキシム、ピラゾール(より具体的には、1H-ピラゾール)、及びジアルキルピラゾール(より具体的には、1H-ジアルキルピラゾール)。
【0069】
いくつかのさらなる実施態様においては、そのブロックされていない多官能イソシアネートには、脂肪族のブロックされていないポリイソシアネート、脂環族のブロックされていないポリイソシアネート、芳香族のブロックされていないポリイソシアネート、それらのダイマー、それらのトリマー、又はそれらの組合せの少なくとも1種が含まれ;且つそのブロックされた多官能イソシアネートには、脂肪族のブロックされたポリイソシアネート、脂環族のブロックされたポリイソシアネート、芳香族のブロックされたポリイソシアネート、それらのダイマー、それらのトリマー、又はそれらの組合せの少なくとも1種が含まれる。
【0070】
それから、ブロックされていない多官能イソシアネート及びブロックされた多官能イソシアネートが、それぞれの場合において、独立して選択されることが可能である、ポリイソシアネートの例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:トルエン-2,4-ジイソシアネート;トルエン-2,6-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;パラ-フェニレンジイソシアネート;ビフェニルジイソシアネート;3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート;テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート;ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート;2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート;リシンメチルエステルジイソシアネート;ビス(イソシアナトエチル)フマレート;イソホロンジイソシアネート;エチレンジイソシアネート;ドデカン-1,12-ジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート;メチルシクロヘキシルジイソシアネート;ヘキサヒドロトルエン-2,4-ジイソシアネート;ヘキサヒドロトルエン-2,6-ジイソシアネート;ヘキサヒドロフェニレン-1,3-ジイソシアネート;ヘキサヒドロフェニレン-1,4-ジイソシアネート;ペルヒドロジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;ペルヒドロジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート;それらのダイマー;それらのトリマー;及びそれらの混合物。
【0071】
いくつかの実施態様においては、そのブロックされていない多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされていない多官能イソシアネート、且つそのブロックされた多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされた多官能イソシアネートである。
【0072】
さらなるいくつかの実施態様においては、そのブロックされていない多官能イソシアネートには、イソシアヌレート、及びウレトジオン、ビウレット、アロファネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合が含まれ;且つそのブロックされた多官能イソシアネートには、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合が含まれている。
【0073】
それぞれの場合において、それからブロックされていない多官能イソシアネート及びブロックされた多官能イソシアネートを独立して選択することが可能な、脂肪族ポリイソシアネートとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:エチレンジイソシアネート;テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート;ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート;2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート;ドデカン-1,12-ジイソシアネート;それらのダイマー;それらのトリマー;及びそれらの混合物。
【0074】
そのイソシアネート成分は、いくつかの実施態様においては、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、51~80重量パーセント、又は60~75重量パーセントの量で存在させるが、その重量パーセントは、それぞれの場合において、その硬化可能なフォトクロミック組成物の全樹脂固形分重量を基準にしたものである。
【0075】
そのフォトクロミック組成物は、(i)そのイソシアネート成分のブロックされていないイソシアネートの当量及びブロックされたイソシアネートの当量の、(ii)そのポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比が、少なくとも5:1である。
【0076】
いくつかのさらなる実施態様においては、そのフォトクロミック組成物で、(i)そのイソシアネート成分のブロックされていないイソシアネートの当量及びブロックされたイソシアネートの当量の、(ii)そのポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比が、少なくとも6:1である。
【0077】
いくつかの追加の実施態様においては、そのフォトクロミック組成物の、(i)イソシアネート成分のブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比が、10:1以下である。
【0078】
(i)イソシアネート成分のブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比は、いくつかの実施態様においては、5:1から10:1まで;又は6:1から10:1まで;又は6.5:1から9:1までの範囲とすることができる。
【0079】
それからフォトクロミック層が調製される、硬化可能なフォトクロミック組成物としてはさらに、少なくとも1種のフォトクロミック化合物が挙げられる。いくつかの実施態様においては、それぞれのフォトクロミック化合物が、以下のものから選択される:インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノオキサジン、スピロ(インドリン)キノオキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン、及び/又はそれらの組合せ。
【0080】
いくつかのさらなる実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物のそれぞれのフォトクロミック化合物が、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造を有するインデノ-縮合ナフトピランから選択される。本明細書で使用するとき、「インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造」という用語は、次式(III)によって表されるコア構造を意味している:
【化1】
【0081】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造に関連して、「環の位(Ring Position)」という用語は、本明細書で使用するとき、式(III)で示した環の位を意味し、指している。
【0082】
いくつかの実施態様においては、そのインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造には、3位に結合された、B、及びB’が含まれるが、ここでB及びB’は、それぞれ独立して、非置換のアリール又は置換されたアリールから選択されるが、そのアリール置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヘテロ脂環族基、ヘテロアリール基、又は脂肪族エーテル基から選択される。いくつかのさらなる実施態様においては、(インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の3位に結合される)B及びB’は、それぞれ独立して、非置換のフェニル又は置換されたフェニルから選択されるが、ここで、フェニルの置換基は、それぞれ独立して、フルオロ、モルホリノ、ピリミジノ、ピペリジノ、-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択される)、及びそれらの組合せから選択される。
【0083】
いくつかのさらなる実施態様においては、そのインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造には、6位に結合された、水素、又は-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)が含まれる。
【0084】
いくつかの実施態様においては、そのインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造にはさらに、7位に結合された、電子供与性の基が含まれる。その電子供与性の基は、いくつかの実施態様においては、ハメットのシグマ(σ)値に関連させて特徴づけることが可能であるが、それにより、電子供与性の基を、強い、中程度、弱いと分類することができる。7位に結合させることが可能な、強い電子供与性の基は、-0.5未満のハメットのシグマ値を有していて、その例としては、アミノ;モノアルキルアミノ;ジアルキルアミノ;モルホリノ;及びピペリジノが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。7位に結合させることが可能な、中程度の電子供与性の基は、-0.49~-0.20のハメットのシグマ値を有していて、その例としては、メトキシ;エトキシ;及びp-アミノフェニルが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。7位に結合させることが可能な、弱い電子供与性の基は、-0.01~-0.19のハメットのシグマ値を有していて、その例としては、メチル、エチル、フェニル、ナフチル、及びトリルが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0085】
いくつかの実施態様においては、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の7位に結合される電子供与性の基が、アルキル、アルコキシ、一級アミノ、二級アミノ、三級アミノ、又は脂肪族環状アミノから選択される。
【0086】
いくつかの実施態様においては、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造にはさらに、11位に結合された、(i)電子吸引性で非共役の基;又は(ii)パイ共役拡張基(ここで、そのパイ共役拡張基は、インデノ-縮合ナフトピランのパイ共役系を拡張する)から選択される基を含んでいる。
【0087】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の11位に結合された、電子吸引性で非共役の基は、いくつかの実施態様においては、以下のものから選択することができる:ハロ基(たとえば、F、Cl、Br、又はI)、α-ハロアルキル、α,α-ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C~C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、又は基-O-C(O)-R(ここで、Rは、C~C10アルキル、C~C10ハロアルキル、又はC~C10ペルハロアルキル(ここで、それぞれのハロ基は、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択される)から選択される直鎖状又は分岐状の基である)。いくつかの実施態様においては、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の11位に結合された電子吸引性で非共役の基のそれぞれのハロ基が、F(すなわちフルオロ)である。
【0088】
本明細書で使用するとき、「インデノ-縮合ナフトピランのパイ-共役系を拡張するパイ-共役拡張基」という用語又は文言は、インデノ-縮合ナフトピランのパイ-共役系と共役している、少なくとも1個のパイ-結合(π-結合)を有している基を意味している。当業者には認識されていることであろうが、そのような系においては、インデノ-縮合ナフトピランのパイ-共役系の中のパイ電子が、インデノ-縮合ナフトピランのパイ系及びインデノ-縮合ナフトピランのパイ-共役系と共役関係にある少なくとも1個のパイ結合を有する基の上で、非局在化することができる。共役結合系は、一つの単結合で分離された少なくとも2個の二重結合又は三重結合の配列によって表すことができるが、それは、二重(又は三重)結合と単結合を交互に含む系であって、その系には、少なくとも2個の二重(又は三重)結合が含まれる。本明細書において開示された各種の非限定的な実施態様における、インデノ-縮合ナフトピランのパイ-共役系を拡張することが可能な基の非限定的な例については、以下において詳しく説明する。
【0089】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の11位に結合されるパイ-共役拡張基は、いくつかの実施態様においては、次式(I)又は式(II)から選択することができる:
-X=Y (I)
又は
-X’≡Y’ (II)
【0090】
式(I)においては、Xは、-CR(ここで、Rは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、及びアルコキシから選択される)であり;且つYは、C(R及びOから選択されるが、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、及びアルコキシから選択される。
【0091】
式(II)においては、X’は、-Cであり;且つY’は、CR又はNであるが、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、及びアルコキシから選択される。
【0092】
いくつかの追加の実施態様においては、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の11位に結合されたパイ-共役拡張基が、置換若しくは非置換のアリール;又は置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される。いくつかの実施態様においては、それらのアリール及びヘテロアリール置換基は、それぞれ独立して、アルキル及びハロゲンから選択される。
【0093】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造の11位に結合されたパイ-共役拡張基は、いくつかの実施態様においては、シアノ(-CN)であるが、それは、上の式(II)において、X’が-Cであり、且つY’がNのものである。
【0094】
いくつかの実施態様においては、そのインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造にはさらに、13位に結合されたR及びRが含まれるが、そのR及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択されるか、又はRとRとが合体して、C~C12スピロ基を形成する。
【0095】
それから、硬化可能なフォトクロミック組成物のフォトクロミック化合物を選択することが可能な、フォトクロミック化合物、たとえば、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造を有するインデノ-縮合ナフトピランのタイプと例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:米国特許第8,388,872B2号明細書の第2列第30行から第18列第4行まで、及び第28列第41行から第31列第30行まで;並びに、米国特許第8,748,634B2号明細書の第2列第55行から第26列第63行まで、及び第36列第5行から第45列第20行までに開示されているもの(それらの特定の開示は、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0096】
いくつかの実施態様において、それから本発明のフォトクロミック物品のフォトクロミック層が形成される、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に含まれることができるフォトクロミック化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-11-(2,4-ジメトキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-イソプロポキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-(2-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-モルホリノ-11-モルホリノカルボニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-フェニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-ブトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-7-メトキシ-11-シアノ-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-メトキシカルボニル-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-7-メトキシ-11-フェニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-メトキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-(3,5-ジフルオロフェニル)-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-イソプロポキシフェニル)-13,13-ジ-n-ペンチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジ-n-ブチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3,3-ビス-(4-ブトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-モルホリノフェニル)-3-フェニル-7-メトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-メトキシ-11-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;及びそれらの2種以上の組合せ。
【0097】
フォトクロミック化合物は、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、少なくとも、所望のフォトクロミック性能を有するフォトクロミック層及びフォトクロミック物品を与えるに十分な量で存在させる。いくつかの実施態様においては、そのフォトクロミック化合物が、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、硬化可能なフォトクロミック組成物(フォトクロミック化合物を含む)の全固形分重量を基準にして0.001~10重量パーセント、又は0.01~5重量パーセント、又は0.1~2.5重量パーセントの量で存在している(列挙した数値の両端を含む)。
【0098】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物は、いくつかの実施態様においては、場合によっては、限定される訳ではないが、以下のような添加剤を含む:ワックス(流動及び濡れのため);流動調節剤、たとえば、ポリアクリル酸(2-エチルヘキシル);抗酸化剤;紫外線(UV)吸収剤;及びブルーライトブロッキング剤(すなわち、フィルター剤)。有用な抗酸化剤及びUV光吸収剤の例としては、BASFからIRGANOX及びTINUVINの商標で市販されているものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。それら任意成分の添加剤を使用する場合には、硬化可能なフォトクロミック組成物の全固形分重量(溶媒は除く)を基準にして、最大20重量パーセントの量で存在させることができる。本発明の各種の実施態様で使用することが可能な、ブルーライトブロッキング剤(すなわち、フィルター剤)のタイプ及び例としては、米国特許第9,683,102B2号明細書及び米国特許出願公開第2015/0234208A1号明細書に記載されているものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない(それらの関連する部分は、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0099】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物には、いくつかの実施態様においては、1種又は複数の固定色調(fixed-tint)染料をさらに含むことができる。本明細書で使用するとき、「固定色調染料」という用語、及びそれに関連する用語、たとえば、「固定(fixed)着色剤」、「静的(static)着色剤」、「固定染料」、及び「静的染料」といった用語は、光の影響を受けにくい物質であって、肉眼で観察される色に関しては、電磁放射に対しては物理的又は化学的に反応を示さない染料を意味している。本明細書で使用するとき、「固定色調染料」という用語及びそれに関連する用語には、フォトクロミック化合物は含まれず、それとは区別される。本明細書で使用するとき、「光の影響を受けにくい(non-photosensitive)物質」という用語は、肉眼で観察される色に関しては、電磁放射に対しては物理的又は化学的に反応を示さない物質を意味しており、固定色調染料も含まれる(これに限定される訳ではない)。
【0100】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、1種又は複数の固定色調染料を存在させて、限定される訳ではないが、フォトクロミック層及びフォトクロミック物品に、フォトクロミック化合物が活性化されていないときには、少なくともベースの(すなわち、第一の)固定色調染料の色特性を与え、そして場合によっては、たとえば化学放射に暴露されることにより活性化されたときには、固定色調染料とフォトクロミック化合物とを組み合わせた第二の色特性を与えるようにすることができる。
【0101】
いくつかの実施態様においては、硬化可能なフォトクロミック組成物の任意成分の固定色調染料としては、以下のものの少なくとも1種が挙げられる:アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジム染料、ヨウ素、ヨウ素塩、ポリアゾ染料、スチルベン染料、ピラゾロン染料、トリフェニルメタン染料、キノリン染料、オキサジン染料、チアジン染料、及びポリエン染料。
【0102】
固定色調染料は、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、それから調製された硬化された物品で所望の効果が得られるような、各種の量で存在させることができる。いくつかの実施態様においては、固定色調染料を、硬化可能なフォトクロミック組成物の中に、0.001~15重量パーセント、又は0.01~10重量パーセント、又は0.1~2.5重量パーセントの量で存在させるが、その重量パーセントは、それぞれの場合において、その硬化可能なフォトクロミック組成物の全固形分重量を基準にしたものである(固定色調染料を含み、且つ列挙した数値の両端を含む)。
【0103】
いくつかの実施態様においては、本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物には、水、有機溶媒、及びそれらの組合せから選択される溶媒を含んでいてもよい。
【0104】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物の中に存在させることが可能な有機溶媒のタイプとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:アルコール類、たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール;ケトン類及びケトアルコール類、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、及びジアセトンアルコール;エーテル類、たとえば、ジメチルエーテル、及びメチルエチルエーテル;環状エーテル類、たとえば、テトラヒドロフラン、及びジオキサン;エステル類、たとえば、酢酸エチル、酢酸2-ブトキシエチル、乳酸エチル、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート、特には、1,2-プロパンジオール環状カーボネート;アルキレングリコールのヒドロキシ官能性エーテル類、たとえば、ブチル2-ヒドロキシエチルエーテル、メチル2-ヒドロキシプロピルエーテル、及びフェニル2-ヒドロキシプロピルエーテル;窒素含有環状化合物類、たとえば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1-ブチルピロリジン-2-オン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;硫黄含有化合物類、たとえば、ジメチルスルホキシド、及びテトラメチレンスルホン;芳香族化合物類、たとえば、トルエン、キシレン、アニソール、及び安息香酸ブチル;並びに芳香族化合物類の混合物、限定される訳ではないが、たとえば、Aromatic 100 Fluid(これは、市販されている、C~C10ジアルキルベンゼンとトリアルキル-ベンゼンとの混合物である)、又はAromatic 150 Fluid(これは、市販されている、C~C11アルキルベンゼンの混合物である)。
【0105】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物の中には、溶媒を、それぞれの場合において、硬化可能なフォトクロミック組成物の全重量(溶媒の重量も含む)を基準にして、5~95重量パーセント、又は15~80重量パーセント、又は30~60重量パーセントの量で含むことができる。
【0106】
場合によっては、いくつかの実施態様においては、本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物には、イソシアネート成分のブロックされていない及び/又はブロックされたイソシアネート基とポリオール成分の活性水素基との間の反応;及びイソシアネート成分のブロックされていない及び/又はブロックされたイソシアネート基の間の反応に触媒作用を及ぼす、1種又は複数の硬化触媒が含まれる。有用な触媒のタイプとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:金属化合物、たとえば、限定される訳ではないが、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物、有機亜鉛化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ニッケル化合物、有機水銀化合物、及びアルカリ金属化合物;並びにアミン化合物、たとえば、三級アミン化合物、及び四級アンモニウム化合物。有機スズ化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:カルボン酸のスズ(II)塩、たとえば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、及びラウリン酸スズ(II);スズ(IV)化合物、たとえば、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、及びジオクチルスズジアセテート。好適な有機ビスマス化合物としては、ビスマスのカルボン酸塩が挙げられるが、それに限定される訳ではない。好適な三級アミン触媒の例としては、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネ-5-エンが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。アルカリ金属化合物の例としては、アルカリ金属のカルボン酸塩、たとえば、限定される訳ではないが、酢酸カリウム、及び2-エチルヘキサン酸カリウムが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。四級アンモニウム化合物の例としては、N-ヒドロキシアルキル四級アンモニウムカルボキシレートが挙げられるが、それに限定される訳ではない。いくつかの実施態様においては、その触媒が、オクタン酸スズ(II)、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、及び/又は2-エチルヘキサン酸ビスマスから選択される。
【0107】
本発明のいくつかの実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物には、カルボン酸のスズ(II)塩、スズ(IV)化合物、又はそれらの組合せから選択される有機スズ化合物を含む、硬化触媒が含まれる
【0108】
本発明のいくつかのさらなる実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物には、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート、又はそれらの組合せから選択される有機スズ化合物が含まれる。
【0109】
硬化触媒は、典型的には、硬化可能なフォトクロミック組成物の樹脂固形分の全重量を基準にして、約0.05~約5.0重量パーセント、又は約0.25~約2.0重量パーセントの量で存在させる。
【0110】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物は、各種適切な方法で硬化させることができる。いくつかの実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物を、周囲条件(又は周囲条件下)、たとえば約25℃の室温で硬化させる。いくつかのさらなる実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物を、(周囲の室温よりも高い)高い温度に暴露させることにより硬化させる。本明細書で使用するとき、「硬化された(cured)」という用語は、ポリオール成分のヒドロキシル基と、イソシアネート成分のブロックされていない/ブロックされたイソシアネート基との間で共有結合を形成させることにより、三次元的架橋ネットワークが形成されることを意味している。高温で硬化された場合、その硬化可能なフォトクロミック組成物は、本明細書においては、熱硬化性の硬化可能なフォトクロミック組成物と呼ぶことができる。本発明の熱硬化性硬化可能なフォトクロミック組成物が硬化される温度は、可変であって、部分的には、硬化が実施される時間の量にも依存する。いくつかの実施態様においては、その硬化可能なフォトクロミック組成物が、90℃~204℃、又は100℃~177℃、又は110℃~140℃の高温で、20~240分かけて硬化される。いくつかの実施態様においては、適用した硬化可能なフォトクロミック組成物を、少なくとも1段の昇温の中間での保持(すなわち、プラトウ)、及び/又は少なくとも1段の加熱速度の低下のような高温プロファイルにかけるが、このことによって、いくつかの実施態様においては、揮発性の物質たとえば、ブロックされた多官能イソシアネートの脱ブロックされたブロッキング基及び/又は溶媒を、フォトクロミック層が完全に硬化するより前に、そのフォトクロミック層から逃がすことが可能となる。
【0111】
フォトクロミック物品のフォトクロミック層は、フォトクロミックなフィルム又はフォトクロミックなシートであってよい。本明細書で使用するとき、「フィルム」という用語は、自立できない層を意味し、且つ「シート」という用語は、自立可能な層を意味している。
【0112】
硬化可能なフォトクロミックのコーティング組成物は、当業界で認知された方法によって、基材に適用(或いは、基材の上に形成)させることができるが、そのような方法としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:押出し成形法;スプレー塗布法;カーテンコーティング塗布法;ドローダウンブレード(又はバー)塗布法;ディップコーティング塗布法;スピンコーティング塗布法;ジェットプリント法(たとえば、インキジェットプリント法、この場合、その「インキ」は、本発明による硬化可能なフォトクロミック組成物に置き換えられている);インモールドコーティング又は塗布法;並びにそれらの組合せ。
【0113】
基材の少なくとも一つの表面の上に硬化可能なフォトクロミック組成物を塗布又は形成させた後で、その塗布した硬化可能なフォトクロミック組成物を、たとえば本明細書で先に述べたようにして、硬化させる。そのフォトクロミック層は、単一層の形態であっても、或いは多層の形態であってもよい。多層の形態の場合においては、そのフォトクロミック層のそれぞれの層を、同一又は異なった組成物、たとえば、同一又は異なったフォトクロミック化合物を有する、本発明による硬化可能なフォトクロミック組成物から調製することができる。そのフォトクロミック層は、各種適切な厚み、たとえば、10マイクロメートル~250マイクロメートル、又は15マイクロメートル~75マイクロメートルであってよい。
【0114】
そのフォトクロミック層に加えて、本発明のフォトクロミック物品には、場合によっては、以下に示す、1層又は複層のさらなる業界公知の層を含むが、それらに限定される訳ではない:プライマー層;接着剤層;保護層(たとえば、ハードコート層);偏光層;複屈折層;反射防止層;及び/又は本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物以外の組成物から調製されたその他のフォトクロミック層。基材と、本発明のフォトクロミック物品のそれぞれの層とは、いくつかの実施態様においては、場合によっては、そして独立して、一つの層又はその上に続く層を適用する前に、1種又は複数の表面処理にかけることも可能である。そのような表面処理の例としては、プラズマ処理、コロナ処理、及びそれらの組合せ、が挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0115】
いくつかの実施態様においては、1層又は複層のプライマー層を、基材の表面とフォトクロミック層との間に挟む。いくつかのさらなる実施態様においては、1層又は複層の接着剤層を、基材の表面とフォトクロミック層との間に挟み込む。いくつかの追加の実施態様においては、基材の表面の上にプライマー層を存在させ、そのプライマー層とフォトクロミック層との間に、接着剤層を挟み込む。
【0116】
本発明のフォトクロミック物品には、基材が含まれる。本発明のフォトクロミック物品は、いくつかの実施態様においては、光学的物品、眼に関わる物品、ディスプレイ物品、窓、及び鏡から選択することができる。したがって、そのフォトクロミック物品の基材は、光学的基材、眼に関わる基材、ディスプレイ、窓、及び鏡から選択することができる。その基材は、有機物質、たとえば有機ポリマー物質;ガラス、たとえばシリカベースのガラス;金属;セラミック材料;及びそれらの組合せを含む、1種又は複数の適切な物質からなっていてよいが、それらに限定される訳ではない。
【0117】
本発明のフォトクロミック物品の基材を形成するために使用することが可能な有機物質の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:ポリマー物質、たとえば、米国特許第5,962,617号明細書、及び米国特許第5,658,501号明細書の第15列第28行から第16列第17行までに開示されているモノマー及び複数のモノマーの混合物から調製されるホモポリマー及びコポリマー(それら米国特許の開示は、特に、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。たとえば、そのようなポリマー物質は、熱可塑性又は熱硬化性のポリマー物質であってよく、透明又は光学的にクリアであってよく、且つ、必要とされる各種の屈折率を有していてよい。そのように開示されたモノマー及びポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、たとえば、アリルジグリコールカーボネート、たとえば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(このモノマーは、PPG Industries,Inc.から、CR-39(登録商標)の商標で販売されている);ポリウレア-ポリウレタン(ポリウレア-ウレタン)ポリマー(このものは、たとえば、ポリウレタンプレポリマーとジアミン硬化剤とを反応させることによって調製され、そのようなポリマーのための組成物は、PPG Industries,Inc.からTRIVEX(登録商標)の商標で販売されている);ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシル化フェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ塩化ビニル;ポリ(塩化ビニリデン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネートたとえば、ビスフェノールAとホスゲンとから誘導された、カーボネート結合された樹脂(そのような物質は、LEXAN(登録商標)の商標で販売されている);ポリエステル、たとえば、MYLAR(登録商標)の商標で販売されている物質;ポリエチレンテレフタレート;ポリビニルブチラール;ポリ(メタクリル酸メチル)(たとえば、PLEXIGLAS(登録商標)の商標で販売されている物質)、並びに、多官能イソシアネートを、ポリチオール又はポリエピスルフィドモノマーと反応させることにより調製されるポリマー(ポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネート、及び場合によっては、エチレン性不飽和モノマー又はハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーを用いて、ホモ重合又は共重合及び/又は三元重合されている)。さらに考えられるのは、そのようなモノマーのコポリマー、及びたとえば、ブロックコポリマー又は、相互貫入ネットワーク反応生成物を形成させるための、記述されたポリマー及びコポリマーとその他のポリマーとのブレンド物である。
【0118】
本発明のフォトクロミック物品のフォトクロミック性能は、当業界で認知された装置を用い、業界公知の方法に従って測定することができるが、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。
【0119】
本明細書で使用するとき、飽和でのΔODは活性化の15分後であるが、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。褪色半減期(T1/2)の値は、フォトクロミック層の中のフォトクロミック物質の活性化された形のΔODについての、活性化光源を取り去った後で23℃で、1/2の15分ΔODに達する時間間隔(単位:秒)であり、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。
【0120】
活性化光源に暴露させるより前に、活性化されていない状態におけるパーセント透過率(%T)を記録するが、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。23℃での%Tは、15分間の6.7W/m及び50Kluxでの照射の後に達する定常状態レベルの透過率であるが、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。23℃での%透過率(%T@23℃)は、D65光源を使用し、10度オブザーバー(10゜obserber)でのCIE Y座標を基準にしてものである。次いで、活性化光源のシャッターを閉じ、サンプルを、温度と湿度をコントロールしたサンプルチャンバーの中で、%Tの通常の測定をして、70%Tに達するまで放置して、褪色させるが、それについては、本明細書の実施例のところでさらに詳しく説明する。典型的には、複数の試験片(たとえば3~5個の試験片)から得られた測定値を平均して、報告する。
【0121】
硬化されたフォトクロミック層を含む本発明のフォトクロミック物品の硬度は、当業界で認知された方法に従って求めることができる。いくつかの実施態様においては、硬化されたフォトクロミック層の硬度は、Fischerscope HCV、Model H100SMC装置(Fischer Technology,Inc.から入手可能)を使用し、加重100ニュートンを15秒かけた後で、侵入深さ2ミクロンのところで求めることができる(単位:N/mm)。
【0122】
本発明のフォトクロミック物品は、いくつかの実施態様においては、23℃で70秒以下、又は65秒以下、又は60秒以下のT1/2(褪色半減期)を示す。
【0123】
いくつかの実施態様においては、本発明のフォトクロミック物品は、23℃で、7分以下、又は6分以下、又は5分以下の、70%透過率到達時間(Time to 70% Transmission)を示す。
【0124】
本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物、いくつかの実施態様においては、0.6以上、又は0.7以上、又は0.8以上の23℃でのΔOD値(23℃での15分ΔOD値)を有する(又は示す)、フォトクロミック層(したがって、本発明におけるフォトクロミック物品)を与える。
【0125】
たとえば、褪色半減期(T1/2)値及び/又は70%透過率到達時間値に関連して測定して、早い褪色速度を有するフォトクロミック化合物は、典型的には、望ましくない(たとえば、完全活性化での%透過率のような)低いレベル又は量の暗黒度(darkness)も与える。本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物は、いくつかの実施態様においては、望ましいレベルの暗黒度たとえば、8%~22%、又は8%~18%、又は8%~15%、又は8%~14%、又は8%~10%(列挙した値の両端を含む)の完全活性化及び23℃での%透過率を有する(又は示す)フォトクロミック層(したがって、本発明におけるフォトクロミック物品)を与える。本発明の硬化可能なフォトクロミック組成物は、いくつかのさらなる実施態様においては、以下の望ましい性質を組み合わせて有する(又は示す)フォトクロミック層(したがって、本発明におけるフォトクロミック物品)を与える:(i)早い褪色速度、たとえば、23℃で70秒以下(又は65秒以下、又は60秒以下)の褪色半減期(T1/2)値、及び/又は23℃で、7分以下(又は6分以下、又は5分以下)の70%透過率到達時間値;並びに(ii)望ましいレベルの暗黒度、たとえば、8%~22%、又は8%~18%、又は8%~15%、又は8%~14%、又は8%~10%(列挙した値の両端を含む)の、完全活性化で、23℃での%透過率。
【0126】
本発明の完全硬化されたフォトクロミック物品の硬化されたフォトクロミック層は、いくつかの実施態様においては、少なくとも19N/mm、又は少なくとも22N/mm;及び60N/mm以下のフィシャーマイクロ硬度を有している。
【0127】
本発明は、以下の非限定的な条項の1項又は複数項によって、さらに特徴づけることが可能である。
【0128】
条項1:
フォトクロミック物品であって、
(A)基材;及び
(B)前記基材の少なくとも一部の上に存在するフォトクロミック層(前記フォトクロミック層は、以下のものを含む硬化可能なフォトクロミック組成物から形成される;
(a)ポリオール成分(ここで前記ポリオール成分には、少なくとも1300のヒドロキシル当量を有するポリカーボネートジオールが含まれる);
(b)少なくとも2個のブロックされていないイソシアネート基を含むブロックされていない多官能イソシアネート、少なくとも2個のブロックされたイソシアネート基を含むブロックされた多官能イソシアネート、又は前記ブロックされていない多官能イソシアネートと前記ブロックされた多官能イソシアネートとの組合せ、の少なくとも1種を含むイソシアネート成分;並びに
(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物)、
を含み、
ここで、前記硬化可能なフォトクロミック組成物が、少なくとも5:1の、(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比を有し、且つ
前記フォトクロミック物品が、23℃で70秒以下のT1/2(褪色半減期)を示す、フォトクロミック物品。
【0129】
条項2:
前記フォトクロミック物品が、23℃で7分以下の70%透過率到達時間を示す、条項1に記載のフォトクロミック物品。
【0130】
条項3:
前記基材が、光学的基材である、条項1又は2に記載のフォトクロミック物品。
【0131】
条項4:
前記ポリカーボネートジオールが、少なくとも1400のヒドロキシル当量を有する、条項1~3のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0132】
条項5:
前記ポリカーボネートジオールが、1800以下のヒドロキシル当量を有する、条項1~4のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0133】
条項6:
(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比が、少なくとも6:1である、条項1~5のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0134】
条項7:
(i)ブロックされていないイソシアネート当量及びブロックされたイソシアネート当量の、(ii)前記ポリオール成分のヒドロキシル当量に対する当量比が、10:1以下である、条項1~6のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0135】
条項8:
前記ポリオール成分が、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリ(メタ)アクリレートをさらに含む、条項1~7のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0136】
条項9:
前記ブロックされていない多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされていない多官能イソシアネートであり、且つ前記ブロックされた多官能イソシアネートが、脂肪族のブロックされた多官能イソシアネートである、条項1~8のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0137】
条項10:
前記ブロックされていない多官能イソシアネートが、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合を含み;且つ前記ブロックされた多官能イソシアネートが、イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の結合を含む、条項1~9のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0138】
条項11:
少なくとも1種のフォトクロミック化合物が、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノオキサジン、スピロ(インドリン)キノオキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、条項1~10のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0139】
条項12:
少なくとも1種のフォトクロミック化合物が、たとえば次式(III)によって表される、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造を含むインデノ-縮合ナフトピランから選択され、
【化2】

前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピランのコア構造が、以下のものを含み:
3位に結合された、B及びB’(ここで、B及びB’は、それぞれ独立して、非置換のアリール又は置換されたアリールから選択され、ここで前記アリールの置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヘテロ脂環族基、ヘテロアリール基、又は脂肪族エーテル基から選択される)、
6位に結合された、水素、又は-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)、
7位に結合された、電子供与性の基、
11位に結合された、以下のものから選択される基:
(i)電子吸引性で非共役の基;又は
(ii)パイ共役拡張基(ここで、前記パイ共役拡張基が、前記インデノ-縮合ナフトピランのパイ共役系を拡張する);及び
13位に結合された、R及びR(ここで、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択されるか、又はRとRとが合体して、C~C12スピロ基を形成する)、
条項1~11のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0140】
条項13:
3位に結合された、B及びB’が、それぞれ独立して、非置換のフェニル又は置換されたフェニルから選択され、前記フェニル置換基が、それぞれ独立して、フルオロ、モルホリノ、ピリミジノ、ピペリジノ、-OR(ここで、Rは、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルから選択される)、並びにそれらの組合せからなる群から選択され、
7位に結合された前記電子供与性の基が、アルキル、アルコキシ、一級アミノ、二級アミノ、三級アミノ、又は脂肪族環状アミノから選択され、
11位に結合されることが可能な前記電子吸引性で非共役の基が、ハロ基(たとえば、F、Cl、Br、又はI)、α-ハロアルキル、α,α-ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C~C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、又は、基-O-C(O)-R(ここで、Rは、C~C10アルキル、C~C10ハロアルキル、又はC~C10ペルハロアルキルから選択される直鎖状又は分岐状の基である)から選択されるが、ここでそれぞれのハロ基は、独立して、F、Cl、Br、及びIであり、且つ
11位に結合されることが可能な前記パイ共役拡張基が、次の式(I)又は式(II)で表される基であり、
-X=Y (I)
又は
-X’≡Y’ (II)
式(I)においては、Xは、-CR(ここで、Rは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択される)であり;且つYは、C(R又はOから選択されるが、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択され;
式(II)においては、X’は、-Cであり;且つY’は、CR又はNであるが、ここでRは、水素、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、又はアルコキシから選択されるか、
又は
11位に結合されることが可能な前記パイ-共役拡張基が、置換若しくは非置換のアリール;又は置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択されるが、ここで前記アリール置換基及びヘテロアリール置換基は、それぞれ独立して、アルキル又はハロゲンから選択される、
条項12に記載のフォトクロミック物品。
【0141】
条項14:
前記硬化可能なフォトクロミック組成物の前記フォトクロミック化合物が、
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-11-(2,4-ジメトキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-イソプロポキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-(2-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-モルホリノ-11-モルホリノカルボニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-フェニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-ブトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-7-メトキシ-11-シアノ-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-メトキシカルボニル-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-7-メトキシ-11-フェニル-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-メトキシフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-メトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-7-メトキシ-11-(3,5-ジフルオロフェニル)-13,13-ジエチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-イソプロポキシフェニル)-13,13-ジ-n-ペンチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-メトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-トリフルオロメチル-13,13-ジ-n-ブチル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3,3-ビス-(4-ブトキシフェニル)-6,7-ジメトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-モルホリノフェニル)-3-フェニル-7-メトキシ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-フルオロフェニル)-3-(4-モルホリノフェニル)-6,7-メトキシ-11-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
3-(4-ブトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-6-メトキシ-7-ピペリジノ-11-(4-トリフルオロメチルフェニル)-13,13-ジ-n-プロピル-3H,13H-インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;
又は、それらの2種以上の組合せ、
から選択される、条項1~13のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0142】
条項15:
前記硬化可能なフォトクロミック組成物が、カルボン酸のスズ(II)塩、スズ(IV)化合物、又はそれらの組合せから選択される有機スズ化合物を含む硬化触媒をさらに含む、条項1~14のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0143】
条項16:
前記有機スズ化合物が、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート、又はそれらの組合せから選択される、条項15に記載のフォトクロミック物品。
【0144】
条項17:
前記フォトクロミック物品が、8%~22%、又は8%~18%、又は8%~15%、又は8%~14%、又は8%~10%(列挙した値の両端を含む)の、完全活性化で23℃での%透過率値を示す、条項1~16のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0145】
条項18:
前記フォトクロミック物品が、(i)23℃で70秒以下(又は65秒以下、又は60秒以下)の褪色半減期(T1/2)値、及び/又は7分以下(又は6分以下、又は5分以下)の23℃での70%透過率到達時間値;並びに(ii)8%~22%、又は8%~18%、又は8%~15%、又は8%~14%、又は8%~10%(列挙した値の両端を含む)の、完全活性化で23℃での%透過率値を示す、条項1~17のいずれか1項に記載のフォトクロミック物品。
【0146】
以下の実施例において本発明をさらに具体的に記すが、それらは説明することのみを目的としたものであるが、その理由は、当業者には、その中での数多くの修正や変更が明らかであろうからである。特に断らない限り、すべての部及びすべてのパーセントは、重量基準である。
【実施例
【0147】
以下の実施例のパート1においては、硬化可能なフォトクロミック組成物の調製を記述する。パート2においては、試験片の作製を記述するが、それには、ポリカーボネート製のプラノレンズ基材の上に、硬化可能なフォトクロミック組成物を塗布し、硬化させることが含まれる。パート3においては、パート2の試験片のフォトクロミック性能を記述する。
【0148】
パート1
表1に列記した成分から、硬化可能なフォトクロミック組成物を調製した。すべての成分は、重量部で表され、且つ仕込み2における量は、固形成分のみで記されている。
【0149】
【表1】
【0150】
表1にまとめたそれぞれの硬化可能なフォトクロミック組成物について、仕込み1の成分を撹拌しながら適切な容器に加え、40~60℃に加熱して、固形物を溶解させた。仕込み1の溶液に仕込み2を添加し、最低でも30分間混合した。これに対して、仕込み3の成分を混合したものを添加した。そのようにして得られた混合物を、WHEATON(登録商標)348923-A Benchtop Roller(Wheaton Industries,Inc.から入手可能)の上に置き、最低でも6時間経過してから使用した。それぞれの例についての、センチ当量(cEq)、及び得られたNCO対活性水素の比率を、表2にまとめた。
【0151】
【表2】
【0152】
パート2
調製したそれぞれのサンプル(又は試験片)について、76ミリメートルの直径を有するPDQ(登録商標)コーティングしたGentex(登録商標)ポリカーボネート製プラノレンズを、100ミリリットル(mL)/分の酸素流量、出力100ワットで3分間かけて酸素プラズマを用いて処理してから、スピンコーティング法を使用して、比較例1及び実施例2の組成物をコーティングした。それぞれの組成物約1~2mLを基材の上に載せてから、レンズの上に0.25~0.37gの液相コーティング(wet coating)が被覆されるのに十分な回転速度で、8秒間回転させた。
【0153】
次いで、そのコーティングされた基材を40℃のオーブンの中に入れ、すべてを堆積させた。次いで、そのコーティングされた基材を、強制空気循環炉中125℃で1時間かけて硬化させ、次いで冷却して室温とした。その上に硬化されたフォトクロミック層を有するその基材をさらに、先に記したようにして酸素プラズマを用いて処理し、さらに、米国特許第7,410,691号明細書の実施例1の表1に記載された配合に従い、追加として0.5%のポリアクリル酸ブチルを使用して、(硬化されたフォトクロミック層の上に)保護コーティングを用いてコーティングした(その米国特許は、本明細書に組み入れたものとする)。その保護コーティングは、スピンコーティングによって塗布し、D型ランプを備えたEyeUVオーブン中でUV硬化させた。これに続けて、それぞれのコーティングした基材(保護コーティング層をさらに含む)を、105℃で3時間かけて、さらに硬化させた。次いで、それらのレンズ(試験片)について、フォトクロミック性能を評価した。
【0154】
パート3
上述の試験片それぞれのフォトクロミック性能を、以下のようにして試験した。上述のようにして調製した、コーティングされたレンズ(試験片)について、Advanced Bench for Measuring Photochoromics(「A-BMP」)光学ベンチ上で、フォトクロミック性能試験により試験した。試験の間、A-BMP光学ベンチは、73.4゜F(23℃)の一定温度に保った。A-BMP光学ベンチ上での試験に先立って、コーティングされたレンズのそれぞれを、365ナノメートルの紫外光線に10センチメートルの距離で5分間暴露させて、フォトクロミック物質を活性化させた。レンズに対するUVA(315~380nm)の照射度は、OL 86-Tコサインレセプターを備えたGoosch & Housego OL 756分光放射計を用いて測定したところ、1平方メートルあたり7.7ワットであることが判明した。次いで、それらのレンズを加熱して70℃とし、そこで、レンズをこの温度に保持し、F17T8の黄色蛍光に10センチメートルの距離で25分間暴露させて、フォトクロミック物質をさらに不活性化させた。OL 756用いてレンズの照射度を測定すると、9Kluxであることが判明した。次いでそれらのレンズを、室温(70~75゜F、すなわち21~24℃)で暗環境に少なくとも1時間保持しておいてから、A-BMP光学ベンチでの試験を行った。
【0155】
A-BMP光学ベンチには、2個の150ワットのNewport Model #66902 キセノンアークランプを互いに直角になるように、そしてそれらに付随のNewport 69907デジタル暴露調節計を取付けた。ランプ1からの光路は、3mmのSCHOTT KG-2帯域フィルター、及び必要とされるUV及び部分可視光の輻射レベルに寄与する適切なニュートラルデンシティフィルターを通過するように向けられた。ランプ2からの光路は、3mmのSCHOTT KG-2帯域フィルター、SCHOTT GG400ショートバンドカットオフフィルター、及び適切なニュートラルデンシティフィルターを通過するように向けられて、補助的な可視光の照度を与えた。それぞれのランプに対して45度の角度の、2インチ×2インチの、50%のポルカドット(polka dot)ビームスプリッターを使用して、二つの光線を混合した。ニュートラルデンシティフィルターと、キセノンアークランプの電圧制御とを組み合わせて使用することによって、輻射の強度を調節した。商標登録されている(proprietary)ソフトウェア、すなわち、PTSoft(ver.5.3)をA-BMPに使用して、タイミング、輻射、エアセル及びサンプルの温度、シャッター動作、フィルターの選択、及び応答の測定を調節した。応答及び色の測定のためには、レンズを通過する光を伝送するための光ファイバーケーブルを備えた、ZEISS(登録商標)Model MCS 601分光光度計を使用した。フォトピック(photopic)応答を、それぞれのレンズの上で収集した。
【0156】
光学ベンチの出力(すなわち、レンズが暴露される光の量)を調節して、315~380nmの範囲で積分して1平方メートルあたり6.7ワット(W/m)のUVA、及び380~780nmの範囲で積分して50Kluxの照度になるようにした。輻射プローブと、較正したZeissの分光光度計を使用して、この出力設定値の調節を行った。そのレンズサンプルのセルを、石英窓及び自動センタリング式のサンプル支持具に取り付けた。サンプルセル内の温度は、ソフトウェアを介して、23℃±0.1℃に保持した50%RHの空気を送るために、バブリング水浴に特別に接続させたAirJet XEを用いて調節した。サンプルの動的なフォトクロミック応答の測定及び色の測定は、タングステンハロゲンランプからサンプルを通して光伝送するための光ファイバーケーブルを備えた、同じZeissの分光光度計を使用して実施した。光ファイバーケーブルからのコリメートされたモニター光束を、試験サンプルに対して直角に維持し、その一方で、サンプルを通過させ、分光光度計に接続された受光用の光ファイバーケーブルアセンブリーへと向かわせた。サンプルセルの中のサンプルの配置の正確な位置は、活性化用のキセノンアークビームとモニター光束とが交差して、二つの光の同心円を形成するところとした。サンプルの配置点でのキセノンアークビームの入射角は、垂直から30度であった。
【0157】
活性化されていない、すなわち漂白された状態から、活性化された、すなわち着色した状態への、光学密度の変化(ΔOD、又はデルタOD、又はデルタ光学密度)に関する応答の測定は、初期の活性化されていない透過率を確立し、キセノンランプからのシャッターを開き、そして活性化中の選択された時間間隔での透過率を測定することによって求めた。光学密度における変化は、次式に従って求めた:
ΔOD=log10(%Tb/%Ta)
ここで、%Tbは、漂白された状態でのパーセント透過率であり、且つ%Taは、活性化された状態でのパーセント透過率である。デルタ光学密度の測定は、フォトピック光学密度をベースとしていた。
【0158】
それらの結果を、下の表3にまとめた。23℃での%Tは、先に説明したように、6.7W/m及び50Kluxの輻射に15分間暴露させた後に到達する透過率の定常状態レベルである。23℃での%透過率(%T@23℃)は、D65光源を使用し、10度オブザーバーでのCIE Y座標に基づくものである。次いで、活性化光源のシャッターを閉じ、サンプルを、温度と湿度をコントロールしたサンプルチャンバーの中で、%Tの通常の測定をして、70%Tに達するまで放置して、褪色させる。集積したデータポイントで正確な70%Tに達しなかった場合には、データを後加工することにより、最も近い測定とそれぞれの時間捕集間隔とのの間で線形補間することにより、この値を引き出す。
【0159】
【表3】
【0160】
本発明を、その具体的な実施態様の特定の詳細に関連して説明してきた。そのような詳細が、それらが添付の請求項に含まれている限り及びその程度までを除いて、本発明の範囲を限定するとみなされるようなことは意図されていない。
【国際調査報告】