(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】三次元製造のための交互の二重層輪郭削りおよびハッチング
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20220107BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220107BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220107BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220107BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220107BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220107BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20220107BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220107BHJP
B22F 10/366 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/268
B22F3/16
B22F10/28
B22F10/366
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524172
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019060402
(87)【国際公開番号】W WO2020097422
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520106345
【氏名又は名称】レイヤーワイズ エヌヴェ
【氏名又は名称原語表記】LayerWise NV
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ネランク,ブラム
(72)【発明者】
【氏名】ホルムストック,ニールス
(72)【発明者】
【氏名】リータール,カレル ジェフ
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL45
4F213WL80
4F213WL85
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
三次元物品を製造するためのシステムは、支持プレート、粉末ディスペンサ、溶融装置、およびコントローラを備える。コントローラは、システムの様々のプリンタ構成要素を作動して、以下を行うように構成される:(1)第1の粉末層を分配し、(2)少なくとも第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭を溶融し、(3)第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配し、(4)第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションを溶融し、(5)第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配し、(6)第2および第3の粉末層を介して溶融され第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭を溶融し、かつ(7)プリンタ構成要素を作動し続け、三次元物品の作製を完了する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物品を製造するためのシステムであって、
支持表面を有する支持プレート;
粉末ディスペンサ;
エネルギービームを形成および走査するよう構成される溶融装置;
プロセッサおよび非一時的な記憶装置を備えたコントローラ
を含み、
前記コントローラが、
前記粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して前記第1の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、少なくとも前記第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭を溶融し、
前記粉末ディスペンサを作動して前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して前記第2の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションを溶融し、
前記粉末ディスペンサを作動して前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して前記第3の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第2および第3の粉末層を介して溶融され前記第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭を溶融し、かつ、
前記粉末ディスペンサおよび前記溶融装置の作動を繰り返し、前記三次元物品の作製を完了する
よう構成される
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第1の粉末層が前記支持表面の上に分配されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の粉末層が、先に分配された粉末層の上に分配されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記先に分配された粉末層が、先に溶融された充填セクションの少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の粉末層が、前記粉末層の2つを介して溶融された少なくとも1つの先に溶融された充填セクションを含む複数の部分的に溶融された粉末層の上に分配され、前記第1の充填セクションが、前記先に溶融された充填セクションに融合されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1、第2および第3の粉末層が、個別に10~100マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1、第2および第3の粉末層が、個別に20~50マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エネルギービームが、レーザビームおよび電子ビームの1つまたは複数であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラがさらに、
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第3の粉末層の上に第4の粉末層を分配し、かつ
前記溶融装置を作動して、前記第4の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第3および第4の粉末層を介して溶融され前記第1の充填セクションに融合される第2の充填セクションを溶融する
よう構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
三次元物品を製造する方法であって、
第1の粉末層を分配する工程;
前記第1の粉末層上にエネルギービームを走査し、少なくとも前記第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭を溶融する工程;
前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;
前記第2の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションを溶融する工程;
前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;
前記第3の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第2および第3の粉末層を介して溶融され前記第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭を溶融する工程;および
前記分配する工程および走査する工程を繰り返して、前記三次元物品の作製を完了する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の粉末層が支持表面の上に分配されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の粉末層が、先に分配された粉末層の上に分配されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記先に分配された粉末層が、先に溶融された充填セクションの少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の粉末層が、前記粉末層の2つを介して溶融された少なくとも1つの先に溶融された充填セクションを含む複数の部分的に溶融された粉末層の上に分配され、前記第1の充填セクションが、前記先に溶融された充填セクションに融合されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1、第2および第3の粉末層が、個別に10~100マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1、第2および第3の粉末層が、個別に20~50マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記エネルギービームが、レーザビームおよび電子ビームの1つまたは複数であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の粉末層の上に第4の粉末層を分配する工程;
前記第4の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第3および第4の粉末層を介して溶融され前記第1の充填セクションに融合される第2の充填セクションを溶融する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
三次元物品を製造するためのコンピュータ可読記憶媒体であって、非一時的であり、内部に記憶されたコンピュータ可読プログラムコード部分を有し、該コンピュータ可読プログラムコード部分が、プロセッサによる実行に応じて三次元プリントシステムに以下を実行させる:
粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配し、
溶融装置を作動して前記第1の粉末層上にエネルギービームを走査し、少なくとも前記第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭を溶融し、
前記粉末ディスペンサを作動して前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して前記第2の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションを溶融し、
前記粉末ディスペンサを作動して前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して前記第3の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第2および第3の粉末層を介して溶融され前記第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭を溶融し、
前記粉末ディスペンサおよび前記溶融装置の作動を繰り返し、前記三次元物品の作製を完了する
ことを特徴とする、コンピュータ可動記憶媒体。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記三次元プリントシステムに以下を実行させる:
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第3の粉末層の上に第4の粉末層を分配し、
前記溶融装置を作動して、前記第4の粉末層上に前記エネルギービームを走査し、前記第3および第4の粉末層を介して溶融され前記第1の充填セクションに融合される第2の充填セクションを溶融する
ことを特徴とする、請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この非仮特許出願は、U.S.C.119(e)の下でここに参照することによって援用される、2018年11月9日出願のBram Neirinckらによる「Alternating Dual Layer Contouring and Hatching for Three-Dimensional Manufacturing」と題された米国仮特許出願第62/757,815号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、粉末材料を用いて三次元(3D)物品をデジタル製作するための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、物品の表面および表面下の品質および精度を改良する製造シーケンス(sequence)に関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(3D)プリントシステムは、試作および製造のような目的のために使用が急速に増加している。三次元プリンタの1つのタイプは、層ごとの(layer-by-layer)プロセスを用いて、粉末材料から製造対象の三次元物品を形成する。粉末材料の各層は、レーザ、電子、または粒子ビームのようなエネルギービームを用いて選択的に溶融される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このタイプの製作による1つの課題は、粉末が溶融される際に収縮する傾向である。可変収縮は、製作中の物品の表面の品質に影響を与えうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様において、三次元物品を製造するためのシステムは、支持プレート、粉末ディスペンサ、溶融装置、およびコントローラを備える。溶融装置は、エネルギービームを形成および走査するよう構成される。コントローラは、以下を行うように構成される:(1)粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配し、(2)溶融装置を作動して第1の粉末層上にエネルギービームを走査し、少なくとも第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭を溶融し、(3)粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配し、(4)溶融装置を作動して第2の粉末層上にエネルギービームを走査し、第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションを溶融し、(5)粉末ディスペンサを作動して第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配し、(6)溶融装置を作動して第3の粉末層上にエネルギービームを走査し、第2および第3の粉末層を介して溶融され第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭を溶融し、かつ、(7)粉末ディスペンサおよび溶融装置の作動を繰り返し、三次元物品の作製を完了する。工程(1)、(3)および(5)は、支持プレートを下降させて、分配され溶融された粉末の層を補填する工程を含んでもよい。
【0006】
境界輪郭は、三次元物品の境界を集合的に画定する。したがって、充填セクションはすべて境界輪郭内にある。充填セクションは、境界により囲まれる領域を広く充填するハッチパターンに亘ってレーザを走査することにより溶融される。
【0007】
1つの実装形態において、支持プレートは支持表面を含む。第1の粉末層は、支持表面上に分配される。
【0008】
別の実装形態において、第1の粉末層は、1つまたは複数の先に分配された粉末層の上に分配される。1つまたは複数の先に分配された粉末層は、先に溶融された充填セクションを含む。第1の充填セクションは、先に溶融された充填セクションに融合される。
【0009】
さらに別の実装形態において、第1の粉末層は、先に作製された支持構造の上に分配される。この実装形態の一部として、第1の粉末層は、側方分配領域に亘って先の粉末層および支持構造の上に分配されてもよい。
【0010】
さらなる実装形態において、第1、第2および第3の粉末層は、個別に、10~100マイクロメートルの範囲内、またはさらに100マイクロメートル超の厚さを有してもよい。より詳細には、第1、第2および第3の粉末層は、個別に、20~50マイクロメートルの範囲内の厚さを有する。さらに詳細には、第1、第2および第3の粉末層は、個別に、20~40マイクロメートルまたは40~50マイクロメートルの範囲内あるいは約30マイクロメートルまたは約45マイクロメートルの厚さを有する。
【0011】
別の実装形態において、分配される粉末は金属粉末である。溶融装置は、単一のエネルギービーム、または、互いに独立して走査できる複数のエネルギービームを生成および走査できる。エネルギービームは、レーザビーム、粒子ビーム、および電子のビームの1つまたは複数を含んでもよい。
【0012】
さらに別の実装形態において、溶融装置は、レーザおよび走査オプティクスを含む。レーザは、100ワット超、500ワット超、またはさらに1000ワット超の出力ビームパワーを生成できる。
【0013】
さらなる実装形態において、コントローラはさらに、粉末ディスペンサを作動して、第3の粉末層の上に第4の粉末層を分配し、溶融装置を作動して、第4の粉末層上にエネルギービームを走査し、第3および第4の粉末層を介して溶融され第1の充填セクションに融合される第2の充填セクションを溶融する。
【0014】
さらなる実装形態において、コントローラは、プロセッサおよび情報記憶装置を含む。情報記憶装置は、ソフトウェア命令を有する非一時的な記憶媒体を含んでいる。プロセッサがソフトウェア命令を実行する際に、上述の工程が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】三次元物品を作製する方法の実施形態を示すフローチャート
【
図3A】長円形の断面形状を有する三次元物品の水平断面を示す図であって、水平断面が境界輪郭24および充填セクション25を横切る図
【
図3B】三次元物品の一部の垂直断面を示す図であって、変動整数N-1、N、N+1等が分配された粉末の層に対応する図
【
図4B】少なくとも第1の粉末層を介して溶融される第1の境界輪郭の溶融を示す概略断面図
【
図4C】第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図4D】第1および第2の粉末層を介して溶融される第1の充填セクションの溶融を示す概略断面図であって、第1の充填セクションが第1の境界輪郭内にあることが示される図
【
図4E】第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図4F】第2および第3の粉末層を介して溶融されかつ第1の境界輪郭に融合される第2の境界輪郭の溶融を示す概略断面図であって、図示されないが、第2の境界輪郭は作製中の三次元物品の形状に依存して第1の境界輪郭に関して横方向にシフトされてもよい、図
【
図4G】第3の粉末層の上に第4の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図4H】第3および第4の粉末層を介して溶融されかつ第1の充填セクションに融合される第2の充填セクションの溶融を示す概略断面図
【
図5B】第1の境界輪郭および第1の充填セクションの溶融を示す概略断面図であって、第1の境界輪郭と第1の充填セクションとの間に第1の未溶融粉末の分離ゾーンがある図
【
図5C】第1の(部分的に溶融した)粉末層の上に第2の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図5D】第1および第2の粉末層を介して第1の接続ゾーンの溶融を示す概略断面図であって、第1の接続ゾーンはまた第1の境界輪郭および第1の充填セクションに融合される図
【
図5E】第2の(部分的に溶融した)粉末層の上に第3の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図5F】第2および第3の粉末層を介して第2の境界輪郭および第2の充填セクションの溶融を示す概略断面図であって、第2の境界輪郭はまた第1の境界輪郭および第1の接続ゾーンに融合され、第2の充填セクションはまた第1の充填セクションおよび第1の接続ゾーンに融合される図
【
図5G】第3の(部分的に溶融した)粉末層の上に第4の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図5H】第3および第4の粉末層を介して第2の接続ゾーンの溶融を介した第2の接続ゾーンの溶融を示す概略断面図であって、第2の接続ゾーンはまた第2の境界輪郭、第2の充填セクション、および第1の接続ゾーンに融合される図
【
図6A】N番目の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図6B】少なくともN番目の粉末層を介して充填セクションを溶融することを示す概略断面図
【
図6C】(N+1)番目の粉末層を分配することを示す概略断面図
【
図6D】NおよびN+1の粉末層を介して境界輪郭を溶融することを示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、三次元物品4を作製するための三次元プリントシステム2の概略ブロック図である。システム2は、電動プラットフォーム8を有する構築モジュール6を備える。電動プラットフォーム8は支持表面10を有し、その上に三次元物品4が形成される。電動プラットフォーム8は、最適な高さで上面12(物品4の上面または表面10のいずれか)を垂直方向に位置付けるように構成され、粉末ディスペンサ14が上面の上に粉末15の層を分配することを可能にする。例示的な実施形態において、電動プラットフォーム8は、粉末15の層が分配される前または後に下降される。
【0017】
例示的な実施形態において、ディスペンサ14は、電動プラットフォーム8の上に金属粉末の層を分配する。層は任意の実用的な厚さでもよいが、典型的な層厚は10~100マイクロメートルの範囲内でありうる。より詳細には、典型的な厚さは20~50マイクロメートルの範囲内でありうる。
【0018】
溶融装置16は、分配された粉末15の上面12に亘ってエネルギービーム18を形成および走査し、粉末15を選択的に溶融するよう構成される。エネルギービーム18は、高出力光ビーム、粒子ビーム、または電子ビームでありうる。金属粉末の溶融のために、100ワット超の出力レベルを有するビームを出力するレーザが典型的である。いくつかのレーザは、500ワット、1000ワット、または1キロワット超を出力しうる。溶融装置16は、表面12に亘ってレーザビーム18を形成および走査するためのレーザ形成オプティクスおよび走査オプティクスを含んでもよい。
【0019】
電動プラットフォーム8、粉末ディスペンサ14、および溶融装置16はすべて、コントローラ20の制御下である。コントローラ20は、情報記憶装置に連結されたプロセッサを含む。情報記憶装置は、ソフトウェア命令を記憶している非一時的なまたは不揮発性の記憶装置を含んでいる。プロセッサにより実行される際に、ソフトウェア命令は、電動プラットフォーム8、粉末ディスペンサ14、および溶融装置16を含むシステム2の様々の部分を制御する。
【0020】
図1の図示される実施形態は、再使用可能な電動プラットフォーム8上の粉末層の堆積および溶融を示す。他の実施形態において、粉末層は、物品4の最終製品になる基板またはワークピース上に分配および溶融されてもよい。本開示の方法は、これらの実施形態およびすべての関連するバリエーションのいずれかに当てはまる。
【0021】
コントローラ20は、プロセッサ(図示せず)および非一時的なまたは不揮発性の記憶装置(図示せず)を含む。記憶装置は、ソフトウェア命令を記憶する。プロセッサにより実行される際に、プロセッサは、
図2、3A-B、4A-H、5A-H、および6A-Dにより示される動作を含む以下または上記に説明されるような動作を行う。コントローラ20は、プロセッサにより実行中のソフトウェア命令に等しい動作を行うよう構成されると考えられる。したがって、プロセッサおよび記憶装置として、コントローラは、命令により実行される動作を行うと考えられる。
【0022】
図2は、三次元物品4を作製するための方法22の実施形態を示すフローチャートである。方法22は、コントローラ20によって行われる。方法22は、表面および表面下の欠陥を除去するために、輪郭の走査と充填パターンの走査との間で交互のシーケンスを伴う。
図2を論じる前に、いくつかの定義について
図3Aを参照する。
【0023】
図3Aは、長円形の断面形状を有する三次元物品の水平断面を示す図である。長円形は、粉末15の1つまたは複数の層から選択的に溶融されるものである。外側表面を画定および固化するために、境界輪郭24のシーケンスが溶融される。例示的な実施形態において、粉末15の上にエネルギービーム18を走査し示される方向に長円形の形状をトレースすることにより、境界輪郭24を形成できる。
【0024】
外側表面の内部の領域を固化するために、一連の充填セクションが溶融される。これは、粉末15の上面12の上のビーム18の動きを示す薄い矢印によって示される「ハッチパターン」26の上にエネルギービーム18を走査することによって行われる。より長い矢印は走査方向であり、より短い矢印は走査間の側方オフセット方向である。充填セクションの溶融のためのハッチパターンは著しく異なりうる。
【0025】
境界輪郭24は、充填セクション25と同じ粉末層を介して溶融されないことが理解されるべきである。例示的な実施形態によれば、境界輪郭24および充填セクション25は、同時に2つ以上の粉末層を介して個別に溶融される。
【0026】
図2を再び参照すると、図示される方法22は、すでに分配されて存在し上面12を画定する選択的に溶融された粉末の層から開始する。粉末15の層は、28に従って上面12の上に分配される。30に従って、エネルギービーム18が、分配された粉末15の層の上に走査され、粉末15の2つの層を介して境界輪郭24を溶融し、先に溶融された下の境界輪郭24と融合する。32に従って、粉末層が分配される。34に従って、エネルギービーム18が走査され、先の2つの粉末層を介して領域充填ハッチパターン26を画定し、先の2つの層の下にある溶融した材料と結合する。次いで、工程28~32のシーケンスが繰り返されて、物品4の残りが形成される。工程28および32の一部として、電動プラットフォーム8を、粉末15の層を分配する前または後のいずれかに下降させてもよい。
【0027】
方法22は、以下の点を組み合わせて独自のものである:(1)境界輪郭走査は2つの粉末層を同時に溶融する。(2)充填セクション走査は2つの粉末層を同時に溶融する。(3)境界輪郭走査および充填セクション走査は交互の粉末層に衝突する。(4)境界溶融および充填溶融の深さは、交互のシーケンスによって垂直方向にずれている。
【0028】
図3Bは、
図2の方法を用いて作製される三次元物品の一部の垂直断面図である。図中の点線は、堆積され溶融された厚さtの粉末層間の分離を示す。層は、堆積の順序で、層N-1から開始する。層Nは層N-1の上に堆積され、層N+1は層Nの上に堆積され、以下同様である。各図示される層は、溶融後に厚さtを有する。
【0029】
各境界輪郭24は、2つの粉末層を介して溶融される。したがって、各境界輪郭24は、tの2倍の厚さを有する。各充填セクション25は、2つの粉末層を介して溶融される。したがって、各充填セクション25は、厚さ2tのものである。
【0030】
境界輪郭24および充填セクション25は、垂直距離tだけ垂直方向にずれている。図示される最下充填セクション25は、層N-1およびNを介して溶融される。図示される最下境界輪郭24は、層NおよびN+1を介して溶融される。
【0031】
図4A~4Hは、方法22のものと類似する方法の順次工程を示す断面図である。
図4Aに従って、第1の粉末層35が表面36の上に分配される。表面36は、先に分配された粉末層、支持表面、または下加工された物品のような先に作製された物品によって画定され得る。
図4Bに従って、エネルギービーム18が第1の粉末層35の上に走査され、少なくとも粉末15の第1の層35を介して溶融される第1の境界輪郭38を選択的に溶融する。
【0032】
図4Cに従って、第2の粉末層40が第1の粉末層35の上に分配される。
図4Dに従って、エネルギービーム18が第2の粉末層40の上に走査され、第1の輪郭38の側方内側の第1の充填セクション42を溶融する。第1の充填セクション42は、第1の粉末層35および第2の粉末層40を介して溶融される。
【0033】
図4Eに従って、第3の粉末層44が第2の粉末層40の上に分配される。
図4Fに従って、エネルギービーム18が第3の粉末層44の上に走査され、第2の境界輪郭46を溶融する。第2の境界輪郭46は、第2の粉末層40および第3の粉末層44を介して溶融され、また第1の境界輪郭38に融合される。
【0034】
図4Gに従って、第4の粉末層48が第3の粉末層44の上に分配される。
図4Hに従って、エネルギービーム18が第4の粉末層48の上に走査され、第2の境界輪郭46の側方内側であり第3の粉末層44および第4の粉末層48を介して溶融される第2の充填セクション50を溶融する。第2の充填セクション50はまた、第1の充填セクション42に融合される。
【0035】
図4E~4Hの処理工程はその後、三次元物品4のほとんどまたはすべてが形成されるまで繰り返される。明らかなように、これによって、
図3Bに図示された溶融輪郭および溶融充填セクションの交互のシーケンスが生じる。
【0036】
図2および
図4A~Hの方法において、第1の輪郭層は、第1の充填領域の前に溶融されるものとして図示される。これは、説明の目的のためのみである。例えば、
図2において、方法22は、工程32から開始し、次いで、工程28に戻る前に工程34に進んでもよい。これは、
図6A~Dに関して以下にさらに説明される。
【0037】
図5A~5Hは、代替的な方法の順次工程を示す断面図である。
図5Aに従って、第1の粉末層52が表面54の上に分配される。表面54は、先に分配された粉末層、支持表面、または先に作製された物品により画定され得る。
図5Bに従って、エネルギービーム18が第1の粉末層52の上に走査され、第1の境界輪郭56および第1の充填セクション58を溶融する。第1の境界輪郭56と第1の充填セクション58との間には、未溶融の粉末の未溶融の第1の分離ゾーン60がある。第1の分離ゾーン60は、第1の境界輪郭56を第1の充填セクション58から分断する。
【0038】
図5Cに従って、第2の粉末層62が第1の粉末層52の上に分配される。
図5Dに従って、エネルギービーム18が第2の粉末層62の上に走査され、第1の粉末層52および第2の粉末層62を介して第1の接続ゾーン64を溶融する。第1の接続ゾーン64は、第1の境界輪郭56を第1の充填セクション58に横方向に結合する。
【0039】
図5Eに従って、第3の粉末層66が第2の粉末層62の上に分配される。
図5Fに従って、エネルギービーム18が第3の粉末層66の上に走査され、第2の境界輪郭68および第2の充填セクション70を溶融する。第2の境界輪郭68および第2の充填セクション70はいずれも、第2の粉末層62および第3の粉末層66を介して溶融される。第2の境界輪郭68は、第1の境界輪郭56上に溶融される。第2の充填セクション70は、第1の充填セクション58上に溶融される。
【0040】
図5Gに従って、第4の粉末層72が第3の粉末層66の上に分配される。
図5Hに従って、エネルギービーム18が第4の粉末層72の上を通過され、第3の粉末層66および第4の粉末層72を介して第2の接続ゾーン74を溶融し、第1の接続ゾーン64に融合する。第1の接続ゾーン64は、第1の境界輪郭56および第2の境界輪郭68に融合され、かつ、第1の充填セクション58および第2の充填セクション70に融合される。第2の接続ゾーン74は、第2の境界輪郭68および第2の充填セクション70に融合されるであろう。
図5E~5Hの工程は、三次元物品4の形成を完了するまで繰り返される。
【0041】
図6A~Dは、
図4A~Hと比較して代替的な例示的開始点を図示する断面図である。しかしながら、この図示は、以下に説明されるように必ずしも異なる方法または実施形態を示すものではない。
【0042】
図6Aに従って、N番目の粉末層80が分配される。N番目の粉末層は、表面の上に分配され、この表面は、構築平面、先に分配された粉末層、または先に作製された物品でもよい。
【0043】
例えば、N=2と仮定すると、
図6Aの工程は
図4Cのものと同等に扱われる。
図6Aには、この層の下に部分的に溶融した粉末層が存在することが示されていない。
【0044】
図6Bに従って、N番目の充填セクションが溶融される。N番目の充填セクションは、1つまたは2つの粉末層を通過しうる。
【0045】
例えば、
図6Bを
図4Dと同等のものであると仮定する。
図6Bには、充填セクションがそれを介して溶融される下にある粉末層が図示されない。したがって、
図6A~Dのシーケンスは、
図4C~Fのシーケンスと同等に扱われてもよい。
【0046】
図6Cに従って、粉末層N+1が分配される。
図6Dに従って、境界輪郭が粉末層NおよびN+1を介して溶融される。
【0047】
上述において、溶融装置16は、1つのエネルギービーム18を放出するものとして図示される。溶融装置16は、電子ビーム、粒子ビーム、および光子(レーザ)ビームの1つまたは複数を含みうる複数のエネルギービーム18を放出してもよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、1つのビーム18を用いて境界輪郭24を形成し、異なるビーム18を用いて充填セクション25を形成する。さらに他の実施形態は、充填セクション25を形成するために協調的に作動する複数のビーム18、および、境界輪郭24を形成するために1つまたは複数のビームを有してもよい。複数のビーム18を用いるさらなる実装形態において、いくつかの個々のビームは、輪郭25および充填セクション25の両方を形成してもよい。複数のビーム18の使用によって、粉末15の層を選択的に溶融する速度が著しく増加しうる。
【0048】
上記で説明した具体的な実施形態およびそのアプリケーションは、専ら説明目的のためのものであり、特許請求の範囲に包含される変更形態およびバリエーションを除外するものではない。
【符号の説明】
【0049】
2 三次元プリントシステム
4 三次元物品
6 構築モジュール
8 電動プラットフォーム
14 粉末ディスペンサ
15 粉末
16 溶融装置
18 エネルギービーム
20 コントローラ
24 境界輪郭
25 充填セクション
【国際調査報告】