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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】人工涙液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/22 20060101AFI20220107BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K31/22
A61P27/02
A61K31/56
A61P27/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524223
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2019059479
(87)【国際公開番号】W WO2020095192
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】1818043.0
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512091121
【氏名又は名称】ウォーターフォード・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】WATERFORD INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッツヘンリー、ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】クマリ、サンジータ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB07
4C206DB48
4C206MA02
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、(i)コレステロールを含む固体脂質を含有する固体外殻;および(ii)トリグリセリドを含む液体脂質を含有する液体コアを含むナノ構造脂質担体(NLC)粒子、ならびに関連する組成物、点眼ディスペンサ、使用および対象におけるドライアイ障害の治療または予防の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造脂質担体(NLC)粒子であって、
(i)コレステロールを含む固体脂質を含有する固体外殻;および
(ii)トリグリセリドを含む液体脂質を含有する液体コア
を含む、ナノ構造脂質担体(NLC)粒子。
【請求項2】
前記トリグリセリドが、大部分の脂肪酸成分としてリシノール酸を含む、請求項1に記載のNLC粒子。
【請求項3】
前記トリグリセリドが、少なくとも85%のリシノール酸を含む、請求項1または2に記載のNLC粒子。
【請求項4】
前記トリグリセリドが、リシノール酸、オレイン酸およびリノール酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項5】
前記トリグリセリドがヒマシ油トリグリセリドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項6】
ドライアイ障害の治療または予防に適している、請求項1に記載のNLC粒子。
【請求項7】
前記ドライアイ障害が、ドライアイ症候群(乾性角結膜炎);結膜炎;角膜炎;ブドウ膜炎;強膜炎;上強膜炎;眼瞼炎;マイボーム腺機能不全;および虹彩炎から選択される障害のいずれか1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項8】
治療薬を含まないか、または封入しない、請求項1~7のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項9】
ナノ粒子サイズである、請求項1~8のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項10】
液体コアに対して約1:1の固体外殻を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項11】
ヒマシ油に対して約1:1のコレステロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のNLC粒子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複数のNLC粒子を含む組成物。
【請求項13】
治療活性剤を含まない、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
眼科的に許容される組成物である、請求項12または13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
対象のドライアイ障害の治療または予防に使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のNLC粒子、または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
対象のドライアイ障害を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載のNLC粒子、または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
対象のドライアイ障害を治療または予防する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のNLC粒子、または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物を前記対象の眼に投与することを含む方法。
【請求項18】
前記投与が眼の表面または眼瞼に局所的である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載のNLC粒子、または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物を含む点眼ディスペンサまたは洗眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼送達用のナノ構造脂質担体(NLC)粒子、ならびに関連する組成物、使用および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ症候群(乾性角結膜炎)は一般的な愁訴であり、いくつかの潜在的な原因がある。これは、眼の表面の十分な潤滑と水分の慢性的な欠乏を特徴とし、涙液膜の破壊をもたらす。涙液膜には、眼の上または周囲に存在する異なる腺によってそれぞれ提供される油、水およびムチンの3つの主要な成分がある。例えば、腺の1つ以上の機能不全に起因するこれらの3つの成分間の不均衡は、涙液膜の不足およびドライアイの症状をもたらす。
【0003】
ドライアイ症候群の主な原因の1つは、マイボーム腺機能不全(MGD)である。マイボーム腺は、上眼瞼および下眼瞼に見られる小さな腺であり、眼の表面に油を分泌するように機能し、涙の蒸発速度を低下させる。マイボーム腺の機能不全は、閉塞または別の異常を介して、油分泌の減少およびその後の涙の蒸発速度の増加をもたらし、したがってドライアイ症候群をもたらす。
【0004】
薬理学者および製剤科学者にとっての主要な課題の1つは、眼送達である。眼は、独特の生理学と解剖学的構造を有する複雑なものであり、異物に対して非常に不浸透性である保護器官であると考えられる。眼は、点眼剤などの製剤のバイオアベイラビリティを妨げる涙液分泌機構を有する。眼の構造障壁は、典型的な製剤の5%未満しか眼に入ることを許容しない。したがって、この障害を克服できる点眼剤を開発することは製剤科学者にとって難しい課題である。
【0005】
いくつかの人工涙液ベースの点眼剤が市販されている。人工涙液はドライアイ症候群に緩和効果を提供する。これらは、乾性角結膜炎における不十分な涙液産生に関連する乾燥および刺激を処置するために使用される潤滑点眼剤である。非薬用エマルジョンベースの潤滑点眼剤の例の1つは、Refresh Endura(登録商標)である。上記で論じたように、点眼剤の大部分は、流涙のためにバイオアベイラビリティが低く、治療効果の低下を引き起こす。この問題を克服するために、治療濃度を達成するための頻繁な投与が必要とされる。
【0006】
市販のエマルジョンはまた、癒着、凝集およびクリーミングなどの不安定性にも直面する。この不安定性を防止するために、典型的には界面活性剤と共に製剤化され、その結果、エマルジョンの動力学的安定性が増加する。しかしながら、エマルジョンへの界面活性剤の添加は細胞毒性に関連する。特に、懸濁液ベースの製剤は、相加毒性および視朦などの難点を示すことが報告されている。これらの課題を克服するために、より安全でより有効な人工涙液組成物が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ナノ構造脂質担体(NLC)粒子であって、
(i)コレステロールを含む固体脂質を含有する固体外殻;および
(ii)トリグリセリドを含む液体脂質を含有する液体コア
を含むナノ構造脂質担体(NLC)粒子が提供される。
【0008】
本発明によるNLC粒子は、有利には非毒性、生体適合性であり、良好な粘膜付着を示し、角膜上でのNLC粒子の滞留時間の増加をもたらす。ヒマシ油または同様のトリグリセリド成分の油などのトリグリセリドは、有利に抗炎症特性を提供することができる。有利には、これは浸透促進剤として作用し、本発明によるNLC粒子の角膜への経細胞輸送を助けることができる。ヒマシ油または同様のトリグリセリド成分の油などのトリグリセリドはまた、眼からの涙液の蒸発を減少させることができ、それらの抗炎症作用のために、マイボーム腺機能不全などのドライアイ障害を治療するために使用され得る。細胞膜は脂質二重層からなるので、固体脂質成分としてコレステロールを使用すると、細胞膜を通るNLCのより良好な拡散が有利に提供される。
【0009】
一実施形態では、トリグリセリドはヒマシ油トリグリセリドを含む。特に、液体コアは、ヒマシ油を含み得るか、またはヒマシ油からなり得る。別の実施形態では、液体コアは、ヒマシ油トリグリセリド、またはヒマシ油トリグリセリドと実質的に同様の脂肪酸含有量を有する等価のトリグリセリドを含み得るか、またはそれからなり得る。
【0010】
一実施形態では、トリグリセリドはオメガ-3-脂肪酸を含む。特に、液体コアは、オメガ-3-脂肪酸を含み得るか、またはオメガ-3-脂肪酸からなり得る。別の実施形態では、液体コアは、オメガ-3-脂肪酸トリグリセリド、またはオメガ-3-脂肪酸トリグリセリドと実質的に同様の脂肪酸含有量を有する等価のトリグリセリドを含み得るか、またはそれからなり得る。
【0011】
一実施形態では、トリグリセリドは、大部分の脂肪酸成分としてリシノール酸を含む。一実施形態では、トリグリセリドは、少なくとも85%のリシノール酸を含む。トリグリセリドは、リシノール酸、オレイン酸およびリノール酸を含み得る。一実施形態では、トリグリセリドは、約85%~95%のリシノール酸、約2%~6%のオレイン酸および約1%~5%のリノール酸を含む。さらにまたは代替的に、トリグリセリドは、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびジヒドロキシステアリン酸を含み得る。
【0012】
一実施形態では、本発明によるNLC粒子は、ドライアイ障害の治療または予防に適している。ドライアイ障害は、ドライアイ症候群(乾性角結膜炎);結膜炎;角膜炎;ブドウ膜炎;強膜炎;上強膜炎;眼瞼炎および虹彩炎から選択される障害のいずれか1つ、またはそれらの組合せを含み得る。一実施形態では、治療薬は、ドライアイの治療または予防に適している。
【0013】
一実施形態では、NLC粒子は、治療薬を封入しないか、または含まない。一実施形態では、NLC粒子は、それ自体が抗炎症特性などの治療特性を有すると考えられ得る、トリグリセリドなどの液体脂質以外の治療薬を封入しないか、または含まない。別の実施形態では、NLC粒子は、治療有効量の治療薬を封入しないか、または含まない。別の実施形態では、NLC粒子は、デキサメタゾンなどのステロイドを封入しないか、または含まない。さらにまたは代替的に、NLC粒子は、ステロイドまたは抗生物質を封入しないか、または含まない。さらにまたは代替的に、NLC粒子は、抗癌薬(ドセタキセルまたはイリノテカンなど)、抗真菌薬(アムホテリシンBなど)、栄養補助薬/栄養補助剤(クルクミン、レスベラトロール、ホノキオール/マグノロール、またはケルセチンなど)から選択される薬物の1つ以上またはそのいずれも封入しないか、または含まない。さらにまたは代替的に、NLC粒子は、カルコン、または治療有効量のカルコンを封入しなくてもよく、または含まなくてもよい。一実施形態では、カルコンは、イソリキリチゲニン(ILTG)を含む。一実施形態では、NLC粒子は、抗癌薬を封入しないか、または含まない。
【0014】
一実施形態では、NLC粒子はリポソームではない。NLC粒子は、レシチンおよび/またはビタミンAを封入しなくてもよく、または含まなくてもよい。
【0015】
ナノ構造脂質担体粒子は、ナノ粒子サイズであり得る。一実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約1000nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約900nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約800nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約700nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約600nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約500nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約400nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約300nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約200nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約100nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約50nm未満である。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約1000nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約800nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約500nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約100nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約50nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約30nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約5nm~約21nmである。別の実施形態では、ナノ構造脂質担体粒子は、その最大直径が約304nmであり得る。ナノ構造脂質担体粒子は、形状が実質的に球形であり得る。
【0016】
一実施形態では、NLC粒子は、液体コアに対して約1:1の固体外殻を含む。NLC粒子の液体コアのパーセンテージv/wは、NLCの集団における平均であり得る。
【0017】
一実施形態では、NLC粒子は、ヒマシ油に対して約1:1のコレステロールを含む。あるいは、NLC粒子は、ヒマシ油に対して約1:0.5のコレステロールを含む。あるいは、NLC粒子は、ヒマシ油に対して約1:1.5のコレステロールを含む。別の実施形態では、NLC粒子は、ヒマシ油に対して約1:0.5~1.5のコレステロールを含む。別の実施形態では、NLC粒子は、ヒマシ油に対して約1:0.8~1.2のコレステロールを含む。NLC粒子の液体コアのパーセンテージv/wは、NLCの集団における平均であり得る。
【0018】
本発明の別の態様によれば、本明細書の本発明による複数のNLC粒子を含む組成物が提供される。
【0019】
組成物は、薬学的に許容される組成物であり得る。組成物は、眼科的に許容される組成物であり得る。例えば、NLC粒子は、薬学的に許容される担体中で提供され得る。薬学的に許容される担体は、眼科的に許容される担体であり得る。組成物は、眼への局所投与に適し得る。一実施形態では、組成物は眼科用組成物である。眼科用組成物は、眼または眼瞼への適用を意図した1つ以上の活性医薬成分(すなわち、本明細書に記載の抗炎症性ヒマシ油)を含んでも含まなくてもよい滅菌、液体、半固体、または固体製剤であると理解される。
【0020】
組成物は、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、または水溶液などの溶液に懸濁されたNLC粒子の形態であり得る。一実施形態では、組成物は点眼剤の形態である。
【0021】
組成物は、水;生理食塩水;塩;緩衝剤;粘滑剤;湿潤剤;増粘剤;等張化剤;セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはメチルセルロース;デキストラン70;ゼラチン;ポリオール;グリセリン;ポリエチレングリコール、例えばPEG300またはPEG400;ポリソルベート80;プロピレングリコール;ポリビニルアルコール;およびポビドン(ポリビニルピロリドン)からなる群より選択される1つ以上の眼科的に許容される成分;ならびにそれらの組合せを含み得る。
【0022】
粘滑剤は、セルロース誘導体、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、またはそれらの組合せを含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0023】
一実施形態では、組成物中のNLC粒子の担体は、ポリソルベート/Tween 80などの界面活性剤を実質的に含まない。一実施形態では、組成物中のNLC粒子の担体は、ポリソルベート/Tween 80などの生理的に関連する濃度の界面活性剤を含まない。一実施形態では、組成物中のNLC粒子の担体は、ポリソルベート/Tween 80などの0.05%以下または1%以下の界面活性剤を含む。一実施形態では、組成物中のNLC粒子の担体は、ポリソルベート/Tween 80などの1.5%以下の界面活性剤を含む。
【0024】
本発明の別の態様によれば、対象のドライアイ障害の治療または予防に使用するための本明細書の本発明による組成物が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、対象のドライアイ障害を治療または予防するための薬剤の製造における本明細書の本発明による組成物の使用が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本発明による組成物を対象の眼に投与することを含む、対象のドライアイ障害を治療または予防する方法が提供される。
【0027】
投与は、眼の表面または眼瞼に局所的であり得る。
【0028】
対象は哺乳動物であり得る。一実施形態では、対象はヒト対象である。対象は、ドライアイ障害の治療を必要とする可能性があるか、またはドライアイ障害を発症するリスクがある可能性がある。
【0029】
治療または予防は、単回投与または反復投与を含み得る。投与は、1日1回、または1日当たり少なくとも1回であり得る。投与は、2日に1回であり得る。投与は、1~7日に1回であり得る。投与は、1日2回であり得る。投与は、1日2回より多くてもよい。投与は、1日3回以上であってもよい。
【0030】
ドライアイ障害は、ドライアイ症候群(乾性角結膜炎)、結膜炎、角膜炎、ブドウ膜炎、強膜炎、上強膜炎、眼瞼炎、および虹彩炎、またはそれらの組合せから選択され得る。障害は、急性または慢性であり得る。
【0031】
本発明の別の態様では、本明細書の本発明による組成物を含む点眼ディスペンサまたは洗眼装置が提供される。
【0032】
点眼ディスペンサは、別名点眼器としても公知であり得る。典型的な点眼ディスペンサは、組成物用のリザーバおよび組成物用の出口を含む。出口は遠位端に向かって先細になっていてもよく、先端/遠位端に出口開口部を備える。ディスペンサは、例えばキャップで密封されるように構成され得る。あるいは、点眼ディスペンサは、シリンジ装置を備え得る。
【0033】
当業者は、コアマトリックスとして固体および液体脂質の両方から構成される人工涙液を意図する「ナノ構造脂質担体(NLC)」という用語に精通するであろう。
【0034】
固体外殻の文脈における「固体」という用語は、室温(すなわち約24℃)で固体を意味すると理解され、すなわち外殻は室温で固体である。液体コアの文脈における「液体」という用語は、室温(すなわち約24℃)で液体を意味すると理解され、すなわちコアは室温で液体である。一実施形態では、NLC粒子の固体外殻は、体温(例えば37℃)で固体である。
【0035】
固体脂質の文脈における「固体」という用語は、脂質の組成物が室温(すなわち約24℃)で固体である、すなわち脂質が室温で固体として存在することを意味すると理解される。一実施形態では、固体脂質は、体温(例えば37℃)で固体を形成する。液体脂質の文脈における「液体」という用語は、脂質の組成物が室温(すなわち約24℃)で液体である、すなわち脂質が室温で液体として存在することを意味すると理解される。
【0036】
「予防」という用語は、障害の回避または障害に対する保護的治療を意味する。予防には、障害のリスクの低下、感染、伝染および/もしくは進行のリスクの低下、または障害の重症度の低下が含まれ得る。
【0037】
「治療」という用語は、状態もしくは疾患の治癒、症状の緩和、または障害もしくは障害の症状の重症度の軽減を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「ドライアイ障害」という用語は、ドライアイに関連する典型的な症状、例えば、1日を通して悪化する乾燥感、ざらざら感またはひりひりするような痛み、場合によっては痛みおよび/または発赤を伴う、かゆみのある、チクチクする、刺すようなまたは疲れた目などを意味すると理解される。例えば、ドライアイ症候群(乾性角結膜炎)、マイボーム腺機能不全、またはコンタクトレンズもしくは特定の薬物の使用に関連するドライアイなどの状態。
【0039】
本明細書で使用される「治療薬」、「治療活性剤」、または「活性剤」という用語は、細胞、細胞成分、細胞膜、核酸、または酵素などのタンパク質に直接結合するように構成され、生物学的経路または他の細胞過程を活性化または阻害することを意図した任意の小分子または生物学的製剤を意味すると理解される。一実施形態では、固体脂質および/または液体脂質(例えば、それぞれコレステロールおよび/またはトリグリセリド)は、小分子または生物学的製剤/治療薬と見なされなくてもよい。別の実施形態では、固体脂質および/または液体脂質(例えば、それぞれコレステロールおよび/またはトリグリセリド)は治療効果を有すると見なされ得るが、NLCはさらなる薬物/治療薬を含まなくてもよい。
【0040】
当業者は、本発明の1つの実施形態または態様の任意の特徴が、適切な場合には、本発明の他の実施形態または態様に適用可能であり得ることを理解するであろう。
【0041】
発明の実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】MTTアッセイ(細胞代謝活性を評価するための比色アッセイ)を用いたコレステロール:ヒマシ油-NLC(CHCAO-NLC)の細胞毒性試験。
図2】蛍光顕微鏡法を用いたCHCAO-NLCの細胞取り込み試験。
図3】蛍光顕微鏡を用いたエクスビボ粘膜付着試験。ブタの眼の角膜をCHCAO-NLCと共に4時間インキュベートし、次いで10倍の倍率で検査した。(a)DICモードで制御;(b)FITCモードで制御;(c)DICモードで処理したCHCAO-NLC;および(d)FITCモードでのCHCAO-NLC。
図4】CHCAO-NLCのMMP-9マーカ試験。C-陰性対照;C+L-LPSと陽性対照;C+L+D 0.1または0.5-様々な濃度(μg/ml)のCHCAO-NLCを有する細胞。
【0043】
例1-サイズ測定およびゼータ電位測定:
粒径およびゼータ電位NLCは、DLSを特徴とする。特性評価は、コレステロール-ヒマシ油ナノ構造脂質担体(CHCACO-NLC)比1:1の試料が他の比と比較して最も安定であることを示した。CHCAO-NLCのサイズおよびゼータ電位を表1に示す。試料粒径(nm)ゼータ電位(mV)
【表1】
【0044】
例2-調製したCHCACO-NLCの細胞毒性評価:
CHCAO-NLCの細胞毒性評価を、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)に関して行った。細胞を10,000細胞/ウェルの初期密度で96ウェルプレートに播種し、次いで、10%FBSを含むDMEM培地中で24時間培養した。
【0045】
次いで、細胞を様々な濃度のCHCAO-NLCで処理し、CHCAO-NLC処理細胞を37℃、5%COの加湿環境で4時間インキュベートした。4時間後に培養培地を新鮮培地と交換し、細胞をさらに20時間維持した。指定された時間後、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)試薬を各ウェルに添加し、細胞をさらに4時間インキュベートした。各ウェルの培地をDMSO 200μLと交換してホルマザン結晶を溶解させた。吸光度(O.D.)をマイクロプレートリーダで記録した。細胞生存率を、以下の式:
細胞生存率(%)=[O.D.(試験)/O.D.(対照)]×100
を用いて計算した。
ここで、O.D.(試験)およびO.D.(対照)は、それぞれNLCありおよびなしで培養した細胞の吸光度値である。
【0046】
細胞毒性試験は、調製した1:1の比のCHCAO-NLCが所与の濃度まで非毒性であることを示した(図1)。
【0047】
例3-細胞取り込み試験
クマリン6標識CHCAO-NLCのインビトロ細胞取り込みを、蛍光顕微鏡法を使用してさらに調べた。細胞を、共焦点イメージングディッシュにディッシュ当たり5×10細胞の密度で播種した。クマリン6標識CHCAO-NLCを調製し、培地中のHCEC細胞に曝露した。37℃で4時間インキュベートした後、CHCAO-NLC処理培地を除去し、細胞を洗浄する。さらなる細胞取り込み試験を蛍光顕微鏡下で行う。データは、NLCが細胞内に内在化され、CHCAO-NLCに封入されたクマリン6がHCEC細胞の細胞質に成功裏に放出されることを示した。これはCHCAO-NLCに封入されたデキサメタゾンがHCEC細胞内に放出されることを示す(図2)。
【0048】
例4-粘膜付着試験
ブタ角膜を用いて粘膜付着試験をエクスビボで行った。ブタ角膜へのクマリン6標識CHCAO-NLCの粘膜付着試験を、蛍光顕微鏡法を使用してさらに調べた。ブタ角膜を切除し、培地を含む共焦点イメージングディッシュに入れる。クマリン6標識CHCAO-NLCを調製し、培地中の角膜に曝露した。37℃で4時間インキュベートした後、CHCAO-NLC処理培地を除去し、角膜を洗浄する。さらなる粘膜付着試験を蛍光顕微鏡下で行う。粘膜付着試験は、CHCAO-NLCが粘膜付着性であることを示した。CHCAO-NLC粒子は角膜に付着するので(図3)。
【0049】
例5-マーカ試験
マーカ試験をMMP-9タンパク質について行う。5×10個の細胞を、DMEM培地を含む6ウェルプレートに播種する。集密度が70%に達したら、細胞をリポ多糖でトランスフェクトし、37℃、5%COの加湿環境で24時間インキュベートする。24時間後、培地を新鮮培地と交換し、細胞を様々な濃度のCHCAO-NLCでトランスフェクトし、24時間インキュベートする。タンパク質を24時間後に細胞から抽出し、Elisaに使用する。Elisaを行ってMMP-9濃度を測定する。MMP-9マーカの濃度の低下が観察された(図4)。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
【国際調査報告】