(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】アルニコ系硬質磁性体粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/047 20060101AFI20220107BHJP
H01F 1/06 20060101ALI20220107BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220107BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20220107BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220107BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20220107BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01F1/047
H01F1/06
H01F41/02 G
B22F1/02 E
B22F1/00 W
B22F1/00 B
B22F9/08 M
B22F9/08 A
C22C38/00 303B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524265
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(85)【翻訳文提出日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2019009706
(87)【国際公開番号】W WO2021020634
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0091610
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514157489
【氏名又は名称】コリア ミンティング,セキュリティ プリンティング アンド アイディー カード オペレーティング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA MINTING,SECURITY PRINTING & ID CARD OPERATING CORP.
【住所又は居所原語表記】80-67,Gwahak-ro Yuseong-gu Daejeon Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソ トン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウォン キョン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホン キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ソ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
4K017CA07
4K017DA02
4K017DA07
4K017FA11
4K017FA17
4K018BA13
4K018BB04
4K018BC01
4K018BC22
4K018BC28
4K018BD01
4K018BD04
4K018KA45
5E040AA02
5E040BC01
5E040CA01
5E040NN01
5E062CC05
5E062CD04
5E062CG07
(57)【要約】
Al、Ni、Co、Cu、Ti、及び残部としてのFeを含むAlNiCo系硬質磁性体粒子であって、Coの含有量が10~17wt%であり、保磁力が250~450Oeの範囲であり、残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であることを特徴とする、AlNiCo系硬質磁性体粒子が開示される。本発明に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、低いCoの含有量によって、磁気抵抗装置による検出に適した磁性特性を確保することができるという効果がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Ni、Co、Cu、Ti、及び残部としてのFeを含むAlNiCo系硬質磁性体粒子であって、
Coの含有量が10~17wt%であり、保磁力が250~450Oeの範囲であり、残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であることを特徴とする、AlNiCo系硬質磁性体粒子。
【請求項2】
Niの含有量が18~25wt%であることを特徴とする、請求項1に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子。
【請求項3】
Alの含有量が4~9wt%であり、Cu含有量が1~4wt%であり、Tiの含有量が2~5.5wt%であることを特徴とする、請求項1に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子。
【請求項4】
Coの含有量とNi含有量との合計が32~40wt%であることを特徴とする、請求項1に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子。
【請求項5】
表面に、酸化ジルコニウム(ZrO
2)又は酸化チタン(TiO
2)からなる中間層及び銀(Ag)からなる金属コーティング層が順次形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子を含むセキュリティインク。
【請求項7】
Al、Ni、Co、Cu、Ti、及び残部としてのFeを含むAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法であって、
AlNiCo合金原料を溶融させて溶湯を製造するステップと、
前記溶湯から噴霧(Atomization)によって微粒子を製造するステップと、
気流分級を用いて製造された微粒子のうちの所定のサイズ以下の粒子を選別するステップと、
不活性ガス雰囲気中で熱処理するステップと、を含み、
前記AlNiCo合金原料は、4~9wt%のAl、18~25wt%のNi、10~17wt%のCo、1~4wt%のCu、2~5.5wt%のTi、及び残部としてのFeを含むことを特徴とする、AlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法。
【請求項8】
酸化ジルコニウム(ZrO
2)又は酸化チタン(TiO
2)からなる中間層を形成するステップと、
銀(Ag)からなる金属コーティング層を形成するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記金属コーティング層は、エチレンジアミンを錯化剤とする無電解メッキで形成されることを特徴とする、請求項8に記載のAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月29日付の韓国特許出願第2019-0091610号に基づく優先権の利益を主張し、その韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、AlNiCo系硬質磁性体粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
銀行券などのセキュリティ文書の偽造・変造防止及びライセンス認証のためのセキュリティ要素として磁性物質が使用される場合が増えている。磁性物質をインクに混合して製造したセキュリティインクでセキュリティ文書にパターンを印刷すると、磁性物質の検出が可能な検出装置を用いてセキュリティ文書の偽造・変造か否かを確認することができる。
【0004】
セキュリティインクに含まれている磁性物質を検出することができる検出装置としては、外部磁場によって電気抵抗が変わる特性を利用する磁気抵抗(Magnetoresistance)装置が多く普及している。磁気抵抗装置で磁性物質を検出するためには、磁性物質を磁化させるための永久磁石が必要であり、現在普及している磁気抵抗装置には、永久磁石を内蔵している形態と、永久磁石を内蔵していない形態が存在する。磁気抵抗装置に永久磁石が内蔵されていない場合には、別途の永久磁石が先ず磁性物質を磁化させた後、磁気抵抗装置が磁性物質による磁場を検出することができる。
【0005】
一方、セキュリティインクで印刷されたパターンを含むセキュリティ文書の真偽判別を磁気抵抗装置で行うためには、セキュリティインクに含まれる磁性物質の特性が注意深く調節されなければならない。例えば、磁性物質の保磁力は、所定の範囲内に調節されることが好ましい。保磁力が特定の値以上である場合、磁性物質を磁化させることが困難になることがある。これは、磁性物質を磁化させるための永久磁石の性能が向上しなければならないことを意味し、場合によっては、既に普及している磁気抵抗装置では、磁性物質を磁化させることが不可能であって、セキュリティ文書の真偽判別が困難になることがある。保磁力が過度に小さい場合には、検出可能なレベルの残留磁化を得ることが困難になることがある。しかも、保磁力が特定の値以下である磁性物質は、残留磁化がすぐ消える軟質磁性体の特性を持つため、永久磁石が一体に内蔵されている磁気抵抗装置でなければ検出が困難になることがある。
【0006】
保磁力が適切な範囲であっても残留磁化が小さければ、一般的な磁気抵抗装置では高感度で検出することができないという問題がある。残留磁化を高めるために保磁力を増加させることはできるが、これは、適正の保磁力の範囲から外れるおそれがある。よって、保磁力を適正の範囲に維持しながら残留磁化を高めなければならない。このことからみて、セキュリティインク用途の磁性粒子では、残留磁化/保磁力の割合が重要な数値になり得る。
【0007】
セキュリティインクに適用するための磁性物質として、AlNiCo系磁性物質が研究されている。韓国登録特許第1869484号には、AlNiCo系溶湯から真空噴霧方式で磁性粒子を製造した後、熱処理して硬質磁性体粉末を製造する技術が開示されている。一方、AlNiCo系磁性物質では、保磁力及び残留磁化の向上のためにCoの含有量を高めることが一般的であるが、Coは相対的に高価であるため、これは経済性の面で好ましくない。したがって、Coの含有量をなるべく抑えながら、セキュリティインクに適用できるほどの磁性特性を確保することができる新規な組成のAlNiCo系磁性物質の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、セキュリティインクに適用できるほどの磁性特性を有する、Coの含有量が低いAlNiCo系硬質磁性体粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
具体的には、250~450Oeの保磁力の範囲で残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であり且つCoの含有量が17wt%以下であるAlNiCo系硬質磁性体粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、前述した目的に限定されず、前述していない本発明の他の目的及び利点は、以降の説明によって理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の一実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、Al、Ni、Co、Cu、Ti、及び残部としてのFeを含む粒子であって、Coの含有量が10~17wt%であり、保磁力が250~450Oeの範囲であり、残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であることを特徴とする。
【0012】
この時、Niの含有量は18~25wt%であり、Alの含有量は4~9wt%、Cuの含有量は1~4wt%、Tiの含有量は2~5.5wt%であることができる。
【0013】
また、Coの含有量とNiの含有量との合計が32~40wt%であることができる。
【0014】
本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、表面に、酸化ジルコニウム(ZrO2)又は酸化チタン(TiO2)からなる中間層及び銀(Ag)からなる金属コーティング層が順次形成できる。
【0015】
本発明の実施例に係るセキュリティインクは、上述したいずれかのAlNiCo系硬質磁性体粒子を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法は、Al、Ni、Co、Cu、Ti、及び残部としてのFeを含むAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法であって、AlNiCo合金原料を溶融させて溶湯を製造するステップと、溶湯から噴霧(Atomization)によって微粒子を製造するステップと、気流分級を用いて製造された微粒子のうちの所定のサイズ以下の粒子を選別するステップと、不活性ガス雰囲気中で熱処理するステップと、を含み、このとき、AlNiCo合金原料は、4~9wt%のAl、18~25wt%のNi、10~17wt%のCo、1~4wt%のCu、2~5.5wt%のTi、及び残部としてのFeを含むことを特徴とする。
【0017】
また、酸化ジルコニウム(ZrO2)又は酸化チタン(TiO2)からなる中間層を形成するステップと、銀(Ag)からなる金属コーティング層を形成するステップとをさらに含むことができる。ここで、金属コーティング層は、エチレンジアミンを錯化剤とする無電解メッキで形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セキュリティインクに適用できるほどの磁性特性を有する、Coの含有量が低いAlNiCo系硬質磁性体粒子及びその製造方法を提供することができるという効果がある。
【0019】
具体的には、250~450Oeの保磁力の範囲で残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であり且つCoの含有量が17wt%以下であるAlNiCo系硬質磁性体粒子及びその製造方法を提供することができるという効果がある。
【0020】
但し、本発明の効果は、上述した効果に限定されず、上述していない別の効果は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る銀(Ag)コーティング層形成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定又は制限されるものではない。本発明を説明するにあたり、関連する公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明を省略する。また、本明細書で使用される用語は、別に定義しない場合、当該分野における通常の知識を有する者が一般に理解する内容と解釈されるべきである。
【0023】
本発明は、AlNiCo系硬質磁性体粒子を開示する。特にCoの含有量が低いながらも、磁気抵抗装置による検出に適した磁性特性を有するAlNiCo系硬質磁性体粒子を開示する。ここで、適した磁性特性は、適正の保磁力の範囲及び当該保磁力の範囲における残留磁化/保磁力の割合で定義できる。
【0024】
本発明の実施例において、適正の保磁力の範囲は250~450Oeであることができる。磁性粒子の保磁力が450Oeよりも大きければ、一般的な磁気抵抗装置に含まれている永久磁石では、セキュリティインクに含まれている磁性粒子を磁化させることが困難であることがある。これは、当該磁気抵抗装置で、セキュリティインクに含まれている磁性粒子を検出することができないことを意味することができる。また、保磁力が250Oeよりも小さい場合には、磁気抵抗装置に含まれている永久磁石で磁性粒子を磁化させることは問題がないが、磁性粒子の残留磁化があまり低いため、磁気抵抗装置の検出限界を脱することができる。つまり、残留磁化があまり低ければ、磁性粒子から発生する磁場の強さが小さいため、磁気抵抗装置で検出することが難しいおそれがある。特に、磁気抵抗装置の中には、永久磁石が内蔵されていない種類もあるが、この場合は、別途備えられた永久磁石が先ず磁性粒子を磁化させた後、磁気抵抗装置がセキュリティ文書をスキャンして磁性粒子からの磁場を検出しなければならない。ところが、保磁力が250Oe以下である場合、残留磁化がすぐ消える軟質磁性体の特性を持つため、磁気抵抗装置がスキャンする時点では、既に残留磁化が消滅した状態になることができる。
【0025】
本発明の実施例において、残留磁化/保磁力の割合は0.06以上であることができる。特に、このような残留磁化/保磁力の割合は、250~450Oeの保磁力の範囲で達成されるべきである。保磁力を大幅に増加させる方向に磁性粒子の組成を調節すると(例えば、Coの含有量を20%以上に増加)残留磁化も増加して、残留磁化/保磁力の割合を0.06以上にすることが比較的容易であるが、保磁力を250~450Oeの範囲に維持した状態で残留磁化/保磁力の割合が0.06以上となるようにするためには、新しい組成範囲及び製造工程が設計されるべきである。
【0026】
本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、Al、Ni、Coの他に、Cu、Ti、Fe及び不可避不純物を含むことができる。ここで、Coの含有量は10~17wt%であることを特徴とする。
【0027】
Coの含有量を17wt%以上にすると、所望の磁性特性を満たす組成の範囲を選択することが容易であるが、高価のCoの含有量が増えるので、経済的ではない。また、Coの含有量を10wt%未満にする場合には、残留磁化/保磁力の割合が0.06以上となる組成の範囲を見つけることは容易ではない。したがって、本発明の目的を達成するために、本発明の実施例では、Coの含有量が10~17wt%の範囲で調節される。
【0028】
本発明の実施例では、Coの含有量を17wt%以下にしながらも、他の成分の含有量を同時に調節することにより、本発明が目的とする磁性特性を得ることが可能である。特に、Niの含有量を18~25wt%の範囲に調節することにより、Coの含有量の減少による保磁力及び残留磁化数値の減少を補償することができる。Coの含有量とNiの含有量は一緒に考慮されるべきである。具体的には、Coの含有量とNiの含有量との合計は、28~42wt%の範囲、好ましくは32~40wt%の範囲であることができる。
【0029】
また、Alの含有量は、4~9wt%の範囲で調節できる。Alの含有量がこのような組成範囲を満足する場合には、磁性特性を制御するための後続の熱処理の際に焼結防止効果を得ることができる。これにより、噴霧法(atomization)による微粒子製造の際にセキュリティインクに適用できる大きさに微粒子形状を維持することができる。
【0030】
CuとTiは、AlNiCo合金に添加されることにより、保磁力を向上させ且つ残留磁化の減少を抑制することができる。但し、本発明が目的とする磁性特性の確保のために、Cuの含有量は1~4wt%、Tiの含有量は2~5.5wt%の範囲で調節できる。
【0031】
本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、上述したAl、Ni、Co、Cu、Tiの組成範囲を満足し、残部はFeと不可避不純物からなることができる。
【0032】
本発明の実施例に係るAlNiCo系硬質磁性体粒子は、セキュリティインクに含まれることができる。この時、セキュリティインクに様々な色を付与することができるように、AlNiCo系硬質磁性体粒子の表面に金属コーティング層を形成して淡色磁性粒子に製造することができる。金属コーティング層は、入射光を反射させてAlNiCo系硬質磁性体粒子が明るい色に見えるようにすることができる。金属コーティング層は、反射率に優れた銀(Ag)コーティング層であることができる。金属コーティング層は、約50~100nmの厚さに形成できる。金属コーティング層が銀(Ag)コーティング層である場合には、均一なコーティング層を形成するために、AlNiCo粒子の重量に対して10~20重量%の範囲となるように銀(Ag)の含有量を調節することができる。
【0033】
この時、金属コーティング層が均一に形成できるように、金属コーティング層の形成前に中間層を形成することができる。中間層は、TiO2又はZrO2などの金属酸化物で形成できる。中間層は、約5~15nmの厚さを有することができる。
【0034】
以下、
図1を参照して、AlNiCo系硬質磁性体粒子の製造方法を説明する。
【0035】
まず、上述した組成範囲のAlNiCo合金原料を不活性ガス雰囲気中で溶融させて溶湯を製造する(S11ステップ)。AlNiCo合金原料は、粉末の形で混合されて溶融でき、又はインゴットやスクラップの形で製造された後に溶融できる。溶融温度は約1600℃であることができる。
【0036】
次に、噴霧(Atomization)によって微粒子を製造する(S12ステップ)。具体的には、溶湯を真空噴霧コンファインメント(vacuum atomization confinement)に注入し、冷却媒体を噴射ノズルを介して所定の圧力で噴霧して微粒子を製造することができる。冷却媒体としては、急速な冷却によって、超微細粒子を優れた収率で製造することができる水を用いることができる。この時、水には、尿素などの酸化防止剤が含まれることができる。噴霧圧力は約600barであることができる。
【0037】
製造された微粒子は、分級過程を経て所定のサイズ以下の粒子を選別することができる(S13ステップ)。分級は気流式分級を採用することができる。分級過程を経て粒度(D90)15μm以下の粒子が得られることができる。ここで、D90は、粒径累積分布で90%に相当する粒子サイズを意味する。
【0038】
所定のサイズ以下に選別されたAlNiCo粒子は、不活性ガス雰囲気中で熱処理して磁性特性を調節することができる(S14ステップ)。熱処理によって硬質磁性体が作られることができる。この時、熱処理条件に応じてAlNiCo系硬質磁性体粒子の磁気特性が変わることができる。本発明では、アルゴンガス雰囲気中で750℃、1時間熱処理することができる。
【0039】
S13ステップとS14ステップの順序は変更できる。つまり、噴霧によって製造された微粒子をまず熱処理した後、分級工程を行うこともできる。
【0040】
このように製造されたAlNiCo系硬質磁性体粒子は、Coの含有量が17%以下であり、250~450Oeの保磁力の範囲で残留磁化/保磁力の割合が0.06以上となるようにすることができる。
【0041】
AlNiCo系硬質磁性体粒子に明るい色を付与して多様なデザインのセキュリティインクに適用することができるように、選択的にS15ステップとS16ステップを行うことができる。S15ステップは中間層形成ステップであって、中間層はTiO2又はZrO2などの金属酸化物で形成できる。中間層は約5~15nmの厚さを有することができる。中間層形成方法は、特に制限されるものではないが、ゾルゲルコーティング法で形成することができる。S16ステップは金属コーティング層形成ステップであって、金属コーティング層は反射率に優れた銀(Ag)コーティング層であることができる。金属コーティング層は約50~100nmの厚さに形成できる。
【0042】
S16ステップで、金属コーティング層は無電解メッキ法で形成することができる。例えば、銀(Ag)コーティング層は
図2のような順序で形成できる。
図2を参照すると、本発明の実施例に係る銀(Ag)コーティング層形成方法は、銀アミン錯体溶液を製造するステップ(S21)と、製造された銀アミン錯体溶液にAlNiCo系硬質磁性体粒子を投入するステップ(S22)と、還元剤溶液を投入するステップ(S23)と、洗浄及び乾燥ステップ(S24)とを含むことができる。
【0043】
まず、銀アミン錯体溶液を製造するステップ(S21)は、溶媒に銀前駆体、pH調整剤、及び錯化剤(Complexing agent)を投入した後、撹拌して銀アミン錯体溶液を製造するステップであり得る。ここで、溶媒は蒸留水であり、銀前駆体は硝酸銀(AgNO3)であることができ、錯化剤はアンモニア(NH3)又はエチレンジアミン(Ethylene diamine)であることができる。アンモニアは、アンモニア水(NH4OH)又はアンモニウム塩の形で投入できる。均一な銀コーティング層の形成のために錯化剤としてエチレンジアミンを使用することが好ましい。攪拌は、褐色沈殿が形成されるまで行うことができる。
【0044】
S22ステップは、製造された銀アミン錯体溶液にAlNiCo系硬質磁性体粒子を投入するステップである。AlNiCo系硬質磁性体粒子は、表面に中間層が形成された粒子であることができる。投入後は、硬質磁性体粒子と銀アミン錯体溶液とが十分に混合されるように十分に攪拌するステップを行うことができる。
【0045】
次に、還元剤溶液を投入する(S23)。還元剤としては、グルコース(glucose)、単糖類(fructose)、ガラクトース(galactose)、酒石酸カリウム(potassium tartrate)、酒石酸ナトリウムカリウム(potassium sodium tartrate)、酒石酸ナトリウム(sodium tartrate)、酒石酸ステアリル(stearyl tartrate)、ホルムアルデヒドなどを含むことができる。好ましくは、蒸留水にグルコースと酒石酸カリウムを溶解した溶液を使用することができる。
【0046】
最後に、銀コーティング層が形成されたAlNiCo系硬質磁性体粒子を分離した後、洗浄及び乾燥を行うことができる(S24)。AlNiCo系硬質磁性体粒子は磁石を用いて分離することができ、洗浄はエタノールを用いて数回繰り返し行うことができる。
【0047】
本発明は、AlNiCo系硬質磁性体粒子を含むセキュリティインクを実施例として開示する。本発明に係るセキュリティインクは、上述したAlNiCo系硬質磁性体粒子を5~15wt%含み、20~40wt%のワニス、30~50wt%の顔料、5~10wt%の界面活性剤、1~10wt%のワックス及び2~10wt%の溶剤を含むことができる。
【0048】
一例として、ワニスは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂であることができ、有機溶剤に溶解されるものであり得る。熱可塑性樹脂としては、石油樹脂、カゼイン、スェルラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、又はブチラール樹脂などがある。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、又は尿素樹脂などがある。光硬化性樹脂(感光性樹脂)としては、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基などの反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、又はエポキシ基などの反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物又は桂皮酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、又はスチリル基などの光架橋性基をその線状高分子に導入した樹脂を使用することができる。また、スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によってハーフエステル化したものを使用することも可能である。
【0049】
顔料は、特別に限定されず、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ハロゲン化フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアントラキノニル顔料、アントラピリミジン顔料、アンダントロン顔料、インダントロン顔料、フラバントロン顔料、ピラントロン顔料、又はジケトピロロピロール顔料などが使用可能である。
【0050】
界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、重合性フッ素化界面活性剤、シロキサン界面活性剤、重合性シロキサン界面活性剤、ポリオキシエチレン界面活性剤及びそれらの誘導体などよりなる群から選択される少なくとも1種であることができ、その種類は特に限定されない。
【0051】
ワックスは、樹脂のべとつき(tack)を減らす効果のある粉末タイプであることができ、一例として、ポリエチレンワックス、アミドワックス、エルカ酸アミド(erucamide)ワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、テフロン及びカルナウバー(carnauba)ワックスなどの中から選択される1種以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
溶剤は、一般的な有機溶媒であって、ワックス、顔料、ワニスなどの物質を均一に混合することができるものであれば特に限定しない。使用可能な溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどから選択されたいずれか1種又は2種以上であることができる。
【0053】
本発明の実施例に係るセキュリティインクは、12Pa・sec以下の粘度を有することができ、好ましくは、8~12Pa・secの範囲の粘度を有することができる。
【0054】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0055】
1.AlNiCo系硬質磁性体粒子の製造
設計組成によって原料粉末を坩堝に入れた後、1600℃に加熱してAlNiCo系溶湯を形成した。原料粉末は、純度99.9%以上の粉末を使用した。溶湯を真空噴霧コンファインメント(vacuumatomization confinement)に注入し、25%の尿素水溶液を冷却媒体として600barで噴霧して微粒子を形成した。
【0056】
製造された微粒子は、アルゴンガス雰囲気中で750℃、1時間熱処理した。熱処理の後、得られた粒子を7500rpmの回転速度及び2.8m3/分の空気注入量条件の下でサイクロン方式で気流分級した。気流分級を介してD9015μm以下の粒子を得た。得られた粒子は、エタノールで2回洗浄した後、60℃で乾燥した。
【0057】
得られた粒子の中心領域をEDS(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy、FEI company、Magellan 400)で元素分析(10kV、100sec)して、設計組成どおりに製造されたかを確認した。
【0058】
設計組成を変化させて多様な実施例及び比較例のサンプルを準備した。すべてのサンプルは、組成を除けば同様の方法で製造した。実施例と比較例によるAlNiCo系硬質磁性体粒子の組成を表1に示した。
【0059】
【0060】
2.磁性特性の測定
製造された磁性粒子の保磁力(Hc)と残留磁化(Mr)は、VSM(vibrating sample magnetometer、Lakeshore、7400series)を用いて測定した。測定結果を表2に示した。
【0061】
【0062】
表1及び表2の結果から、本発明の実施例1~4によるAlNiCo系硬質磁性体粒子は、保磁力がすべて250~450Oeの範囲に属し且つ残留磁化/保磁力の割合が0.06以上であることが分かる。特に、このような磁性特性が17wt%以下の低いCoの含有量で得られた。また、実施例のサンプルはいずれも、Niの含有量が18~25wt%の範囲に属し、Niの含有量とCoの含有量との合計は28~42wt%、より具体的には32~40wt%の範囲に属することを確認することができる。
【0063】
また、Alの含有量は4~9wt%、Cuの含有量は1~4wt%、Tiの含有量は2~5.5wt%の範囲である。
【0064】
一方、このような組成範囲から外れた比較例の場合は、所望の磁性特性が得られなかった。比較例1の場合は、保磁力の範囲は満足されるが、残留磁化が低いため、残留磁化/保磁力の割合が0.055であって0.06以下であり、比較例2の場合は、残留磁化は大きな値が得られたが、保磁力も大きく増加して残留磁化/保磁力の割合が0.058であって0.06以下であった。また、比較例3の場合は、残留磁化/保磁力の割合は0.08と大きな値が得られたが、磁気抵抗装置で検出することが困難になるほどに保磁力と残留磁化の絶対値が低かった。特に、比較例2と比較例3は、Coの含有量が24%と高いため、経済性の面でも好ましくない。
【0065】
以上、限られた実施例及び図面を参照して説明したが、これは例示的なものであり、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形実施が可能であるというのは、通常の技術者にとって自明であろう。また、各実施例で説明した技術思想は、それぞれ独立して実施できるのはもとより、互いに組み合わされて実施されてもよい。よって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の記載及びその均等範囲によって定められるべきである。
【国際調査報告】