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2022-506711段階的な/勾配的な細孔構造を有するカーボンナノフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】段階的な/勾配的な細孔構造を有するカーボンナノフォーム
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20220107BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220107BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220107BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220107BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220107BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220107BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B5/32
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/04 Z
B32B9/00 A
B32B27/00 B
H01G11/40
H01G11/30
H01G11/26
H01G11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524268
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 US2019060491
(87)【国際公開番号】W WO2020097474
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/757,969
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517305931
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】サシン、メーガン、ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ロング、ジェフリー、ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ロリソン、デブラ、アール.
【テーマコード(参考)】
4F100
5E078
5H018
5H050
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA37
4F100AA37A
4F100AA37B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK36
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4F100BA02
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG10
4F100DG10A
4F100DG10B
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4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ17B
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100GB48
4F100YY00A
4F100YY00B
5E078AA01
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5E078BA32
5H018AA10
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5H050AA08
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5H050GA03
5H050GA22
5H050HA06
5H050HA12
(57)【要約】

【解決手段】 第1の層と第2の層を有する積層造形物である。各層は、多孔質炭素構造と多孔質ポリマーを有する。前記2つの多孔質ポリマーの孔径は、1ナノメートル~10ミクロンであり、前記2つの多孔質ポリマーは、異なる細孔径分布を有する。2つ以上の層をホットプレスすることにより、積層造形物を製造する方法である。この造形物は、電気化学電池に使用されても良い。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形物であって、
第1の多孔質炭素構造と第1の多孔質ポリマーとを含む第1の層と、
第2の多孔質炭素構造と第2の多孔質ポリマーとを含む第2の層と、を有し、
第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーの細孔は、直径が1ナノメートル~10ミクロンであり、
第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーは、異なる細孔径分布を有する、積層造形物。
【請求項2】
請求項1記載の造形物であって、さらに、追加の多孔質炭素構造と追加の多孔質ポリマーとを含む1またはそれ以上の追加の層を有し、
前記追加の多孔質ポリマーは、互いに、および第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーとは異なる細孔径分布を有する、造形物。
【請求項3】
請求項2記載の造形物において、すべての前記多孔質ポリマーの前記細孔径分布が、前記造形物の一方の表面から他方の表面への細孔径の勾配を形成する、造形物。
【請求項4】
請求項1記載の造形物であって、さらに、第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーと同じ細孔径分布を有する追加の多孔質炭素構造および追加の多孔質ポリマーを含む1またはそれ以上の追加の層を有し、
前記細孔径分布が、前記造形物の一方の表面から他方の表面にかけて、第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーの間で互い違いする、造形物。
【請求項5】
請求項1に記載の造形物において、前記多孔質炭素構造が炭素繊維紙である、造形物。
【請求項6】
請求項1に記載の造形物において、前記多孔質ポリマーが、レゾルシノールとホルムアルデヒドのポリマーを含む、造形物。
【請求項7】
請求項1記載の造形物において、前記多孔質ポリマーの前記細孔が、前記造形物に浸透する細孔の連結されたネットワークの一部である、造形物。
【請求項8】
請求項1記載の造形物であって、さらに、前記多孔質ポリマーの少なくとも1つに付着された酸化マンガンを含む、造形物。
【請求項9】
請求項1記載の造形物において、前記造形物が前記層を一緒にホットプレスすることによって作製される、造形物。
【請求項10】
請求項1記載の造形物を含む電気化学電池。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、
第1の多孔質炭素構造と第1の多孔質ポリマーとを含む第1の層を提供する工程と、
第2の多孔質炭素構造と第2の多孔質ポリマーとを含む第2の層を提供する工程と、および
第1の層および第2の層を含む積層造形物を形成する工程と、を有し、
第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーの細孔は、直径が1ナノメートル~10ミクロンであり、および
第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーは、異なる細孔径分布を有する、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、さらに、
追加の多孔質炭素構造と追加の多孔質ポリマーとを含む1またはそれ以上の追加の層を提供する工程を含み、
前記追加の層が第1の層および第2の層と積層され、
前記追加の多孔質ポリマーは、互いに、および第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーとは異なる細孔径分布を有する、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、すべての前記多孔質ポリマーの前記細孔径分布が、前記造形物の一方の表面から他方の表面への細孔径の勾配を形成する、方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法であって、さらに、
第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーと同じ細孔径分布を有する追加の多孔質炭素構造と追加の多孔質ポリマーとを含む1またはそれ以上の追加の層を提供する工程を含み、
前記追加の層が第1の層および第2の層と積層され、および
前記細孔径分布が、前記造形物の一方の表面から他方の表面にかけて、第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーの間で互い違いする、方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、前記多孔質炭素構造が炭素繊維紙である、方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法において、前記多孔質ポリマーが、レゾルシノールとホルムアルデヒドのポリマーを含む、方法。
【請求項17】
請求項11記載の方法において、前記多孔質ポリマーの前記細孔が、前記造形物に浸透する細孔の連結されたネットワークの一部である、方法。
【請求項18】
請求項11記載の方法であって、さらに、前記多孔質ポリマーの少なくとも1つに酸化マンガンを付着させる工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項11記載の方法において、前記積層はホットプレスによって行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月9日に出願された米国仮出願第62/757,969号の利益を主張するものである。本仮出願および当該出願全体で言及される他のすべての刊行物および特許文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的にカーボンナノフォームに関するものである。
【背景技術】
【0003】
既存のエネルギー貯蔵・変換デバイス(バッテリー、スーパーキャパシタ、燃料電池など)の性能は、大容量を高速で供給することが求められる将来の技術の電力基準を満たすものではない。高エネルギーを必要とするアプリケーションでは、バッテリーが最適な解決法であるが、多くの場合、高割合でそのエネルギーを供給することはできない。逆に、高い割合が要求される場合には、スーパーキャパシタが選択される技術であるが、必要なエネルギー密度を供給できないことが多い。また、燃料電池はエネルギー密度が高いが出力に限界がある。いずれの場合も、エネルギーの供給や蓄積・変換の能力は、組み込まれた電極の構造に大きく依存する。従来の電極は、粉体と高分子バインダーの複合体として製造される。その結果、その場しのぎの多孔質固体構造では、電子、イオン、分子の最適な輸送経路が電極のマクロスケールボリューム内に提供されず、最終的に電力/エネルギー性能が制限される。
【0004】
これらの制限のいくつかは、デバイスに関連する寸法のバインダーレスで自立した電極で表現される、調整可能な細孔サイズの本質的に貫通した細孔構造と「配線された」電子経路を有する電極構造を設計することによって回避することができる(Rolison et al.、Multifunctional 3-D nanoarchitectures for Energy Storage and Conversion.Chem.Soc.Rev.,38,226(2009))を参照。繊維紙で支持されたカーボンナノフォームは、これらの厳しい基準を満たす(Lytle et al.,The right kind of interior for multifunctional electrode architectures: Carbon nanofoam papers with aperiodic submicrometer pore networks interconnected in 3D.Energy Environ.Sci.,4,1913(2011))を参照。このような電極構造は、スーパーキャパシタ、金属空気電池、リチウムイオン電池などの用途に有効であり、炭素繊維紙内のカーボンナノフォームの表面をナノスケールのコーティング(金属酸化物など)で修飾することで、所望の電荷貯蔵や触媒機能を実現できることが実証される。この第1世代のカーボンナノフォーム紙は、最終用途に応じて特定の細孔構造を示すように設計・製造される。すなわち、小さな細孔は高い表面積とそれに伴う高い容量をもたらし、適度な細孔サイズは速度と容量の両方をサポートし、大きな細孔は反応生成物の形成に対応する(Chervin et al:Correlation of por-solid architecture and electrochemical performance.J.Electrochem.Soc.,9,A1510(2013))を参照。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、第1の多孔質炭素構造および第1の多孔質ポリマーを含む第1の層と、第2の多孔質炭素構造および第2の多孔質ポリマーを含む第2の層とを含む造形物を開示する。第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーの細孔の直径は、1ナノメートル~10ミクロンである。第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーは、異なる細孔径分布を有する。
【0006】
また、本明細書では、第1の多孔質炭素構造および第1の多孔質ポリマーを含む第1の層を提供する工程と、第2の多孔質炭素構造および第2の多孔質ポリマーを含む第2の層を提供する工程と、第1の層および第2の層を含む積層造形物を形成する工程とを含む方法が開示する。第1の多孔質ポリマーおよび第2の多孔質ポリマーの細孔の直径は、1ナノメートル~10ミクロンである。第1の多孔質ポリマーと第2の多孔質ポリマーは、異なる細孔径分布を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
より完全な理解は、以下の実施例実施形態の記載と添付の図面を参照することで容易に得られるだろう。
【0008】
図1図1は、2層構造を模式的に示したものである。
図2図2は、勾配的な構造を模式的に示したものである。
図3図3は、交互に配置される構造を模式的に示したものである。
図4図4は、2つの積層造形物を組み込んだ電気化学電池を模式的に示したものである。
図5図5は、段階的な/勾配的なカーボンナノフォーム紙の製造工程を模式的に示したものである。
図6A図6Aおよび図6Bは、50/500|40/1500の段階的な細孔ポリマーナノフォーム紙をホットプレス後(図6A)、熱分解して段階的な細孔カーボンナノフォーム紙を形成した後(図6B)の両面の光学画像である。
図6B図6Aおよび図6Bは、50/500|40/1500の段階的な細孔ポリマーナノフォーム紙をホットプレス後(図6A)、熱分解して段階的な細孔カーボンナノフォーム紙を形成した後(図6B)の両面の光学画像である。
図7A図7A図7Bは、低倍率(図7A)と高倍率(図7B)の段階的な細孔カーボンナノフォームの断面の走査電子顕微鏡写真である。
図7B図7A図7Bは、低倍率(図7A)と高倍率(図7B)の段階的な細孔カーボンナノフォームの断面の走査電子顕微鏡写真である。
図8図8は、ホットプレスした50/500|50/500(破線)、ホットプレスした40/500|40/500(実線)、および段階的な50/500|40/500(一点鎖線)のN収着ポロシメトリーによる細孔容積の増加と細孔幅の変化を示す。
図9A図9A~Dは、異なるカーボンナノフォーム電極で構成されたMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの(図9A)5mV s-1および(図9B)25mV s-1での比誘電率対電圧を示す。(図9C)0.4VにおけるMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の実数成分対周波数のボード線図、および(図9D)MnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の虚数成分対周波数のボード線図を示す。
図9B図9A~Dは、異なるカーボンナノフォーム電極で構成されたMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの(図9A)5mV s-1および(図9B)25mV s-1での比誘電率対電圧を示す。(図9C)0.4VにおけるMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の実数成分対周波数のボード線図、および(図9D)MnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の虚数成分対周波数のボード線図を示す。
図9C図9A~Dは、異なるカーボンナノフォーム電極で構成されたMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの(図9A)5mV s-1および(図9B)25mV s-1での比誘電率対電圧を示す。(図9C)0.4VにおけるMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の実数成分対周波数のボード線図、および(図9D)MnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の虚数成分対周波数のボード線図を示す。
図9D図9A~Dは、異なるカーボンナノフォーム電極で構成されたMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの(図9A)5mV s-1および(図9B)25mV s-1での比誘電率対電圧を示す。(図9C)0.4VにおけるMnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の実数成分対周波数のボード線図、および(図9D)MnOx-カーボンナノフォーム||MnOx-カーボンナノフォーム電気化学キャパシタの比誘電率の虚数成分対周波数のボード線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、説明の目的であって限定ではなく、本開示の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が記載される。しかし、本主題は、これらの特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施することができることは、当業者には明らかだろう。他の例では、不必要な詳細で本開示を不明瞭にしないように、周知の方法および装置の詳細な説明は省略される。
【0010】
次世代の電気化学デバイスでは、高い表面積を持つ電極構造を採用することで、電荷貯蔵や触媒反応のための十分な場を提供し、その場には拡散が比較的妨げられない大きな孔が存在する。例えば、燃料電池の電極や金属空気電池の空気カソードは、酸化剤(または燃料)が電極体積内を容易に移動して、電極の電解質に面した側に集中する活性部位に到達するように、(電解質から離れた)外側の面に、より開放的な細孔構造を持つことが望ましい。
【0011】
これらの点を考慮し、段階的な/勾配的な-細孔電極構造を作製するための簡単な方法を開発した。ここでは、このような電極の製造方法、多層構造の特性評価、および単純な電気化学デバイスにおける性能の予備的なデモンストレーションについて説明する。
【0012】
本明細書では、物体のz方向に(例えば、紙状構造の厚さを介して)段階的な/勾配的な細孔構造を有する自立型の導電性3Dスキャフォールド(例えば、カーボンナノフォーム)の製造について説明する。この製造方法は、あらかじめ選択された細孔径分布を有するポリマーナノフォーム充填炭素繊維紙を複数層ホットプレスして多層構造を形成することに基づく。その後、前記多層ポリマーナノフォーム充填紙を熱分解すると、導電性カーボンナノフォーム紙が得られ、細孔構造の異なる個別の層が機械的に安定した積層体で接着される。
【0013】
開示された構造体は、例えばホットプレスによって一緒に積層される少なくとも2つの離散的な層を有する。2つ以上の層のそれぞれは、多孔質ポリマーによって浸潤されたスキャフォールドとしての多孔質炭素構造を含む。これらの層は、Sassin et al、Designing high-performance electrochemical energy-storage nanoarchitectures to balance rate and capacity.Nanoscale,5,1649(2013)およびLytle et al、The right kind of interior for multifunctional electrode architectures:carbon nanofoam papers with aperiodic submicrometre pore networks interconnected in 3D.Energy Environ.Sci.,4,1913(2011)に開示されているような方法で作られても良い。
【0014】
細孔があることで、構造体全体に反応物や生成物を運ぶことができる。これらの各層のポリマーは、直径が1ナノメートル~10ミクロンの細孔を含む。少なくとも一部、大部分、または少なくとも90%の細孔がこの範囲にある限り、この範囲外の他の細孔も存在しても良い。図1は、2層構造を模式的に示したものである。白い部分はポリマーの細孔を表す。
【0015】
少なくとも2つの層は、互いに異なる細孔径分布を有する。細孔径分布は、ポリマー中に存在する全ての細孔に基づいていても良いし、1nm~10μmの範囲の細孔だけに基づいていても良い。細孔径分布は、平均サイズ、細孔の大部分または90%が該当するサイズ範囲、または細孔サイズの完全なヒストグラムを含んでも良い。また、構造体は、異なる細孔径分布を有する複数の層から構成されていても良い。複数の層にまたがる分布は、構造体の一方の表面から反対側の表面に向かって勾配を形成しても良い。例えば、構造体の中で平均細孔径が大きくなったり小さくなったりすることがある。図2は、勾配的な構造を模式的に示したものである。
【0016】
少なくとも2つの層が異なっていれば、すべての層が異なる細孔径分布を持つことは必須ではない。さらなる層は、同じ分布を有していても、異なる分布を有していても良い。例えば、構造体は2種類の層を交互に配置しても良い。また、構造は、少なくとも2つのそのような層が存在する限り、多孔質炭素/多孔質ポリマーの形態ではない追加の層を有していても良い。図3は、交互に配置された構造を模式的に示す図である。
【0017】
好適な多孔質炭素構造体の1つは炭素繊維紙であるが、構造体に積層することができる当技術分野で知られる任意の多孔質炭素構造体を使用しても良い。2つ以上の層は、同じ種類の炭素構造を含んでいても、異なる種類の炭素構造を含んでいても良い。
【0018】
適当なポリマーとしては、レゾルシンとホルムアルデヒドのポリマーがあるが、炭素繊維紙の空隙に浸透し、かつそれ自体が多孔質であるようなポリマーであれば、どのようなものでも良い。また、2つ以上の層には、同じポリマーを使用しても良いし、異なるポリマーを使用しても良い。ポリマーは、後述するように、炭素にモノマーを浸透させ、続いて重合することによって形成されても良い。ポリマー層の細孔は、構造体に浸透する細孔の連結ネットワークを形成しても良い。
【0019】
ポリマーは、所望の電気化学的活性を有していても良い。また、ポリマーは、所望の電気化学的活性を有する材料で被覆されていても良い。そのような材料の例として、酸化マンガンがある。図4は、2つの積層品を組み込んだ電気化学電池を模式的に示したものである。
【0020】
以下の実施例は、特定のアプリケーションを説明するために与えられる。これらの具体例は、本願の開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0021】
多孔質ポリマーナノフォームの製造-ポリマーベースのナノフォームは、以前に報告されたプロトコルに従って調製した(Sassin et al.,Designing high-performance electrochemical energy-storage nanoarchitectures to balance rate and capacity.Nanoscale,5,1649(2013)))。簡潔に言うと、炭素繊維紙を、真空下でレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)ゾルに2分間浸した。RFを浸透させた炭素繊維紙をRFゾルから取り出し、2枚のスライドガラスで挟み、ミニバインダークリップで固定し、ガムテープで巻いて、Al箔ポーチの中に入れた。次に、このAlパウチを圧力鍋に入れ、「スチーム」設定で9.5時間、続いて「ウォーム」設定で12時間加熱した。その後、Alパウチを圧力鍋から取り出し、ポリマーフォームを浸透させた炭素繊維紙をガラススライドアセンブリから取り出し、18MΩcmの水に1時間、アセトンに1時間浸した後、実験室の環境下で乾燥させた。ポリマーナノフォームの異なる細孔径分布は、レゾルシノール-ホルムアルデヒドの重量パーセントと、レゾルシノールと触媒(NaCO)の比率R:Cの変化に起因しており、「RF重量パーセント/R:C比率」と表示される(表1)。
【表1】
【0022】
段階的な/勾配的な細孔カーボンナノフォームの製造-Alプラテン20の上に繊維強化テフロン(登録商標)(図5、25)を置いた。繊維強化テフロン(登録商標)シート25の上に、異なる孔径分布(例えば、50/500+40/1500)のポリマーナノフォーム充填炭素繊維紙30、35の2枚を重ねて置き、続いて第2の繊維強化テフロン(登録商標)シート25で覆い、続いて第2のAlプラテン20を置いた。このアセンブリ全体を、140℃に設定されたトッププレートおよびボトムプレートを備えた油圧プレスに挿入した。また、温度設定値は、例えば、80~140℃の範囲であっても良い。熱電対40は、あらかじめ開けておいた穴を通して底部のAlプラテンに挿入した。Alプラテンアセンブリの圧力を422psiに設定した。熱電対が140℃を測定したら(~5分)、アセンブリを422psiで10分間放置した。また、圧力は、例えば、100~1000psiの範囲で2~10分程度であっても良い。その後、圧力を解除し、Alプラテンアセンブリを取り出して、実験室の環境下で室温まで冷却させた。繊維強化テフロン(登録商標)シートから段階的な/勾配的なポリマーナノフォーム紙を取り出し、アルゴン雰囲気下で1000℃で2時間(1℃min-1のランプレート)熱分解し、段階的な/勾配的なカーボンナノフォーム紙を製造した。段階的な/勾配的なナノフォーム紙は、ナノフォーム#1|ナノフォーム#2(例えば、50/500|40/1500)と表記される。
【0023】
形態の特徴-ホットプレス後、多層紙内のポリマーナノフォームは互いによく接着した。ポリマーナノフォームを充填した紙を140℃および422psiでホットプレスした後、マクロスケールの形態にひび割れや変形は見られなかった(図6A、左)。また、アルゴン中で1000℃の熱分解を行っても、段階的なポリマーナノフォームの著しい収縮は検出されなかった(図6B)。これらの知見は、勾配的な/傾斜カーボンナノフォームの製造に使用したポリマーナノフォームのRFレシピの同一性にかかわらず、一貫した。
【0024】
グラデーションポアカーボンナノフォーム紙の断面を走査電子顕微鏡で観察すると、2つのカーボンナノフォームの間に明確な界面があることがわかる(図7A)。すべての顕微鏡写真で、50/500カーボンナノフォーム(細孔2~45nm)が左側に、より大きな細孔のナノフォームが右側にある(例:40/500:細孔2~70nm、40/1500:2~100nm、μm-40/1500:2~1000nm)。高倍率で詳細に観察すると、50/500ナノフォームの固体カーボンネットワークと、より大きな細孔のカーボンナノフォームの固体ネットワークとの間に密接な接触が形成されていることがわかる(図7B)。
【0025】
窒素吸着ポロシメトリーは、ホットプレスされた対称形(例えば、50/500|50/500および40/500|40/500)および段階的細孔(例えば、50/500|40/500)のカーボンナノフォームペーパーのBET表面積および細孔構造の定量的分析を提供する(図8)。ホットプレスされた対称的なカーボンナノフォーム紙は、2つの気孔構造の異なるナノフォーム紙を一緒にホットプレスして、カーボンナノフォームの一方の細孔構造が優先的に変化するかどうかの影響を調べるためのコントロールとして機能する。調査したすべてのサンプルの微細孔構造(0.5~2nm)の変化は、予想通り、統計的に有意ではなかった。対称型多層紙と段階的多層紙では、5nm以上の細孔について違いが生じる。ホットプレスされた対称形の50/500|50/500カーボンナノフォームは2~45nmの範囲の細孔を含んでおり、ホットプレスされた40/500|40/500カーボンナノフォームは2~70nmの範囲の細孔を含む。段階的な50/500|40/500カーボンナノフォームは、ホットプレスされた対称的な40/500|40/500カーボンナノフォームと同様の細孔サイズ分布を含み、2~70nmの範囲の細孔を有する。すべての細孔サイズにおける細孔ボリュームは、段階的な50/500|40/500カーボンナノフォームの方が大きい。BET法による表面積は、ホットプレスされた対称型の50/500|50/500と段階的な細孔の50/500|40/500カーボンナノフォームでは、それぞれ413と416m-1と同程度であるが、ホットプレスされた40/500|40/500カーボンナノフォームでは、より大きな孔が存在するため、346m-1と低くなることが予想される。
【0026】
電気化学的特性-電気化学的性能に及ぼす細孔構造の影響を、MnOx-カーボンナノフォーム紙(MnOx-CNFと呼ぶ)と、カーボンナノフォーム構造が段階的細孔カーボンナノフォーム(50/500|40/1500)またはホットプレス法による対称型カーボンナノフォームコントロール(すなわち、50/500|50/500または40/1500|40/1500)のいずれかであるMnOx-CNFを用いた対称型電気化学キャパシタ(EC)を作製し、試験することで評価した。50/500|50/500または40/1500|40/1500)。これまでに報告されている方法を用いて、二端子電池に組み立てる前に、MnOxを段階的な/勾配的な細孔のカーボンナノフォームに組み込んだ(Fischer et al.,Incorporation of homogeneous,nanoscale MnOwithin ultraporous carbon structures via self-limiting electrodeposition:Implications for electrochemical capacitors.Nano Lett.,7,281(2007)).すべてのECのサイクリックボルタモグラムは、5mV s-1で半直方体の形状を示した(図9A)。段階的な細孔を有する50/500|40/1500ECは、同程度のMnOx量(それぞれ58対56wt.%)にもかかわらず、50/500|50/500ECよりも高い比容量を持ち、それぞれ21対24Fg1であった。50/500/40/1500ECの静電容量が大きいのは、細孔容積が0.61cm-1対0.52cm-1と大きいためであり、これによりMnOxにイオンが十分に供給され、擬似容量的な蓄電反応の電子電荷のバランスが保たれていると考えられる(Sassin et al.Nanoscale,5,1649(2013)))。25mV s-1では、段階的な細孔構造の重要性がより明らかになった。段階的な細孔の50/500|40/1500ECでは18Fg-が得られたのに対し、ホットプレスの50/500|50/500では13Fg-1であった。これは、段階的な細孔の50/500|40/1500ECの40/1500の大きな細孔が、高速スキャンレートでの擬似静電容量のバランスをとるのに十分な電解質量(したがって、イオンのモル数)を提供することを示す。
【0027】
この電気化学キャパシタの周波数特性を、電気化学インピーダンス分光法を用いて調べた。比誘電率の実数成分を周波数に対してボード線図にしたところ、段階的な細孔の50/500|40/1500電極を用いて作製したECは、同程度のMnOx装填量にもかかわらず、すべての周波数においてホットプレスした対称型の50/500|50/500電極を用いて作製したECよりも高い静電容量を示した(図9C)。このことからも、段階的な細孔のフレームワークがMnOxドメインへのイオンアクセスを容易にすることがわかる。予想通り、段階的な細孔の50/500|40/1500電極を用いたECは、ホットプレスした対称型の40/1500|40/1500電極を用いて作製したECよりも、MnOxの負荷が高いために高いキャパシタンスを持ち、その追加のキャパシタンスは100mHzという高い周波数でアクセス可能である。
【0028】
電気化学キャパシタの時間応答は、キャパシタンスの虚数成分対周波数のボード線図から抽出される(図9D)。ホットプレスした対称形の40/1500、40/1500電極を用いて作製したECは、MnOxの担持量が少ないために最も低い静電容量5Fg-1を実現しているが、それでも十分な静電容量をわずか5秒で実現する。最も高い静電容量である9Fg-1は、段階的な細孔の50/500|40/1500電極を用いたECでは12.5秒、ホットプレスで対称性を持たせた50/500|50/500電極を用いたECでは20秒で7.5Fg-1を実現しているが、両電極のMnOx負荷は同程度である。段階的な細孔の細孔構造により、より高い静電容量をより早く実現できる。
【0029】
異なる細孔構造を持つ2つ以上の独立したポリマーナノフォーム充填紙をホットプレスすることで、最終的な物体の厚さ全体に渡って段階的/勾配的な細孔構造を有するカーボンナノフォームを製造するための、簡単でスケーラブルな製造方法を提供する。この方法の利点は、個々のポリマーナノフォームの細孔構造を事前に選択することができるため、結果として得られる段階的/勾配的な細孔構造が所望の性能特性(例えば、容量、速度)をもたらすことである。また、対象物の厚さ方向に交互に細孔構造を形成する構造体を製造することも可能である。自立したナノフォームを使用することで、最終的な物体に電子のための貫通した経路が配線され、最終的な物体には貫通した細孔構造も含まれるため、電気活性部位の組み込みや、電気活性部位へのイオン/分子の輸送が不可欠な電気化学デバイスでのその後の動作が容易になる。開示された物体の自立性と、段階的/勾配的なカーボンナノフォームの貫通した細孔構造とが相まって、既存の単純な合成プロトコルを使用して、電気化学的に活性な材料(例えば、金属酸化物、導電性ポリマー、金属、およびナノスケールの固体電解質)を適応せずに組み込むことができ、これらの段階的/勾配的なカーボンナノフォームを、スーパーキャパシタ、バッテリー、および燃料電池のためのデバイス対応のバインダー不含の電極に変えることができる。
【0030】
明らかに、上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。したがって、請求された主題は、具体的に説明されたものとは別の方法で実施することができることを理解されたい。単数形の請求項要素への言及、例えば冠詞「a」、「an」、「the」、または「前記(said)」の使用は、要素を単数形に限定するものとは解釈されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
【国際調査報告】