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特表2022-506756メタン富化ガス組成物の製造のためにCO2含有産業ガスを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】メタン富化ガス組成物の製造のためにCO2含有産業ガスを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/02 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
C12P5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021524336
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2019079433
(87)【国際公開番号】W WO2020089181
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】102018126953.6
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190406
【氏名又は名称】エレクトロハエア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドリネ・フォンテーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・ホエル
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・ペシック
(72)【発明者】
【氏名】ドリス・ハーフェンブレートル
(72)【発明者】
【氏名】カレン・タヴァレス・シルバ
(72)【発明者】
【氏名】テレサ・アーレンス
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AB03
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC07
4B064CC09
4B064CC24
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、CO含有排出物及び/または廃ガスを使用するメタン富化ガス組成物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.連続プロセスでメタン生成微生物を培養すること;
b.HS及び/またはOを含むCO含有ガスを準備すること;
c.所定の値になるようにpH値を連続的に制御し、任意選択的に調節すること;
d.任意選択的に、前記メタン生成微生物の培養物に、CO:Hが1:0.6~1:5である化学量論比で追加のHを供給すること;並びに
e.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクターにおけるCO含有ガスからのメタンの製造方法。
【請求項2】
前記メタン生成微生物を培養する前記工程が、
i.窒素源及び塩を供給する適切な液体培地の中に前記メタン生成微生物を保持すること;
ii.前記培養条件を嫌気性または通性嫌気性に保持すること;
iii.任意選択により場合によって、前記培養物を撹拌すること;
iv.前記培養物から連続的に代謝水を除去すること;及び
v.温度を大気圧で32℃~90℃または32℃~85℃の範囲に保つこと;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタン生成微生物が、好ましくはNaS及び/またはアンモニウムの形態で、好ましくはNHOHの形態で、追加的に添加された硫化物の存在下で培養されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メタン生成微生物が、少なくとも14かつ最大60のOD610として測定される、少なくとも2.5g/Lかつ最大20g/Lの前記培養物中の前記微生物の乾燥重量に相当する前記培養物中の微生物の密度まで培養されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量の適切な酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH10以下、もしくはpH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7の所定の値に維持されるように連続的に安定化及び/もしくは調節されること;並びに/または
前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量のNaOHもしくはNHOH及びHClもしくはHSOを前記培養物に添加することによって、前記所定のpH値を維持するように連続的に安定化及び/もしくは調節されること;
を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のメタン生成微生物が、Methanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、またはこれらの混合からなる古細菌またはarchaebacteriaの群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記メタン生成微生物が嫌気性及び/または酸素耐性であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程iの前記適切な液体培地が適度な塩分環境であり、塩化物アニオンの濃度が12mmol/L~300mmol/Lの範囲であること;及び/または
NaClの濃度が0.4g/L~12g/Lの範囲、好ましくは3g/L~6g/Lの範囲、より好ましくは約5.6g/Lの範囲であること;
を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記メタン生成微生物が、自然に選択されたまたは天然に適応した微生物、適応した好塩性微生物、及び遺伝子操作された微生物の群から選択され、これらは全て適度な塩分環境で生存及び繁殖することが可能であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記CO含有ガスが、前記メタン生成のための炭素源であり、COを多く含む排出物及び/または廃ガス排出物由来であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記CO含有ガスが少なくとも20%のCOを含む、及び/または前記CO含有ガスが最大5.000mg/LのHSを含む、及び/または前記CO含有ガスが5%以下のOを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記手順全体または少なくとも1つの工程が、大気圧条件下及び/または最大16barもしくは最大420barの加圧条件下で行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記回収されたメタンが、固体状汚染物質(例えば懸濁液中の泡、ほこりおよび汚れの粒子のような小さい固体粒子、グリースなど)、または気体状汚染物質(例えば水蒸気、硫化水素、シロキサン、アンモニア、及びハロゲン化合物(塩化物、フッ化物)など)、揮発性有機化合物(VOC)(例えばリモネンおよびその他のテルペンなど)、並びにその他の微量汚染物質を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
a.第1のpHで、CO及びHを用いて、メタン生成微生物を培養すること;続いて
b.第2のpHで前記微生物を連続培養すること;
c.所定の値になるように連続的に前記pH値を制御し、任意選択的に調節すること;
d.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクター内でのCOまたはCO含有ガスからのメタンの製造方法。
【請求項15】
前記第1のpH値が、前記メタン生成微生物の迅速な複製を誘導するためにpH5.5~7.0の範囲であり、前記第2のpH値が、工程aのメタン生成と比較して前記メタン生成を増加させるためにpH7.1~10の範囲である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有排出物及び/または廃ガスを使用して生物起源メタンを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境にとってより低いコストで効率的なエネルギーを供給する解決策を探求することは、欧州委員会、米国の企業集団、環境及び政府機関、福島の悲劇的な事件の余波を受けて電力供給のための原子力エネルギーを置き換えることを試みている日本から、7つの新興経済国まで、世界中で気候変動対策プログラムによって提示されている課題であり、そのため、気候変動に対抗し、最終的には地球の温度を安定させるために、加盟国によって世界的に行われている努力である。最終的な目標は、低炭素の現代経済への移行に向け、気候変動に対抗しながらも持続可能かつ再生可能なエネルギーに対する高まるニーズを満たすことである。
【0003】
化石燃料の需要を効果的に削減するための法的及び技術的手段を可能にする開発は、それぞれの枠組み及び政策の範囲内で、共同で合意した2020年、2030年、そして最終的には2050年のエネルギー及び気候の目標、並びにより広いEnergy Unionの目標を加盟国が遵守することに役立つことにもなる。したがって、エネルギー需要に効果的に対処するために、既存のエネルギー源の中から発見、設計、または選択されたエネルギー源が何であろうとも、そのエネルギー源が環境への影響を低減するための要件に完全に対処することも必要であることは明らかである。
【0004】
メタンは化石燃料の中で炭素原子あたりのエネルギー密度が最も大きく、そのエネルギー変換の潜在能力は、酸素の存在下での燃焼または燃料電池を使用した電気の生成によって直接得られる他の天然ガスよりもはるかに大きい。化石燃料としてのメタンは、深海または地殻の深部で二酸化炭素、とりわけガスや基質を変換するメタン生成微生物の代謝活動に由来する。地質学的浸透及び自然活動由来のこのタイプのメタンは、天然ガスの大部分を占めている。それにもかかわらず、世界的な化石燃料のメタン排出量の最近の上方修正によれば、大気中に存在するメタンの比較的大部分が人為起源であり、農業、畜産、埋め立て、及び廃棄物の分解の結果として、並びに石炭採鉱や石油掘削、及び化石燃料産業で行われている一般的な化石燃料の取り扱い、輸送、精製、燃焼の結果として大気中に放出されている。
【0005】
メタンは、20年の期間にわたって、モル濃度基準で二酸化炭素の38倍の熱の貯蔵/捕捉が可能である(McAnulty et al,2017)。
【0006】
その熱貯蔵能力のため、これは温室効果に大きく寄与する。燃料としてのメタンの使用は、エネルギー収量の点で非常に都合がよく、その燃焼は低いカーボンフットプリント(少ない量の主に再利用可能なCO)を生成し、そのため化石燃料の中で最もクリーンである。特に、バイオメタンの場合、燃焼によって生成する放出される二酸化炭素の量は、上述した代謝プロセスをほぼ自給自足のサイクルで繰り返して供給するのに十分である。しかしながら、バイオメタンは開発現場で生産することができるものの、燃料として都合よく使用できる天然ガス由来のメタンは、更に精製プロセスを受けてから、資源の膨大な消費を伴って輸送される必要がある。
【0007】
したがって、天然ガスとしてのメタンは、持続可能かつ再生可能なエネルギー源から構成されており、今日では既に次第に石炭やその他の化石燃料から置き換わってきている。しかしながら、環境への影響の大幅な削減、並びにその生産、貯蔵、及び輸送の実行可能性の二次的な探索はまだ完了していない。
【0008】
大規模なメタンの開発における主な技術的欠点の1つは、例えば、天然ガスのメタンには高レベルの汚染物質が残存しているため、コストのかかる精製処理が必要になることに関連する。更に、メタンの適切な貯蔵プラントの必要性、より優れた加圧格納システムについての関連する要求、大量のガスの蓄積による、主に天然ガス中の硫黄を多く含む汚染物質からの臭気、爆発の危険性、輸送及び保管中の漏出、並びに先行技術の生産のスケール拡張性に対する相対的な非効率性などの多くのまだ解決されていない問題は、全て現在メタンの開発を妨げ遅らせている。
【0009】
それにもかかわらず、エネルギー生成についてのメタンの可能性は、世界的な市場に関連してますます重要になってきている。
【0010】
そのため、最近の研究は、メタン生成菌、例えば二酸化炭素と水素とから非常に効率的にメタンを生成することができる古細菌を用いてメタンを生成する方法の開発と改良に焦点が当てられている。現在、先行技術では、メタン生成微生物を使用することによって生成したメタンを用いてガス組成物を富化するいくつかの試みが記述されている。
【0011】
このタイプのメタンの生成は、適切なリアクター/セルの中で行われ、いかなるインフラが脆弱な環境でも世界中で簡単に設けることができ、大気中に一般に存在する原材料を必要とする。最も重要なことには、これは、一般にメタンが豊富で汚染物質の量が少ないガス組成物を生成し、そのような組成物は、エネルギー供給システムに供給される準備が整うまでより少ない労力しか要さないと見込まれる。更に、二酸化炭素と水しか生成しないこのエネルギーへの変換は、化石燃料の中で最もクリーンである。
【0012】
例えばWO2014016815A2などいくつかの試みがこれまでに記述されており、この中では、水性増殖基質の中で準備され、高温で培養された嫌気性古細菌の培養によるメタンの生成によって、ガス組成物中に約20体積%のメタンが生成している。一部の高度に特殊化された嫌気性メタン生成菌は、最適化された高圧及び高温下では、そのようなガス組成物中に最大30体積%ものメタンを生み出す。このプロセスは、メタン生成菌用の加圧された水性増殖基質と、供給源としての二酸化炭素を含む高圧流体とを採用することを特徴とする。メタン生成率が比較的低いことに加えて、このプロセスは特殊なメタン生成古細菌の培養物を加熱及び/または加圧するために必要とされる高いエネルギー投入のため、コスト効率がよいとは言えない。加えて、加圧容器の利用は、方法のスケール拡張性及び広い普及に対する大きな障害となる。
【0013】
US2011/0165667A1には、メタン生成のための嫌気性古細菌種の1種以上、更には混合物を含む水性懸濁液の更なる使用が記載されている。注目すべきは、この明細書に記載のプロセスが、純粋なHガス源及び純粋なCOガス源の、メタン含有ガス組成物への変換によって特徴付けられることである。この開示によれば、化石燃料または他の再生可能エネルギー燃料プラントからの電力は、水素を生成するように変換され、これはその後、最適化された培養条件下でCOガスからメタンを生成するために、特殊なメタン生成古細菌の培養物に供給するために使用される。この開示には、更に、培養条件が変化し、空気または他のガス成分のいずれかが培養物に供給されると、もともと嫌気性である典型的なメタン生成古細菌が抑制され、メタンの生成が停止することが詳述されている。特に、酸素は水素の取り込みとメタン生成の両方に関与する阻害酵素として知られているため、正味の微生物のメタン生成量が減少し、その結果この技術の効率が低下し、高濃度の汚染物質によって活性が完全に阻害されない回復時間が必要になる。一酸化炭素の存在についても同様の効果が説明されている。その結果、酸素と一酸化炭素が選び出され、メタン生成を抑制する効果を例証及び説明するための実験構成が記載された。
【0014】
メタン生成古細菌はこれらのガス成分への曝露に耐え、最終的にメタン生成を回復することを示すことができたものの、これらの結果は、標準的なガス分配配管網に供給するための高水準のメタン生成を満たすために、HとCOのみを含む供給ガスの非常に純粋な供給源が必要であること、またはガス配管網事業者の国の及び/もしくは地域の要件に従う、例えばガス組成物中の96%の純粋なメタンの臨界値を超えたメタン含有量まで高めるために新しい工学的解決手段を見出すことが必要であることを示している。
【0015】
この点に関する更なる進展として、US2014/0377830A1には、厳密ではない無酸素環境における特殊なメタン生成古細菌に関する以前から公知のプロセスの開発、及びその結果として産業プロセスからのCO含有排出物などの供給ガスの代替の供給源として使用できるようにメタン生成プロセスを改良する試みについて記載されている。このために、菌株は例えば大気圧でメタンを効率的に生成するように改良され、更に様々な濃度の酸素、硫化水素、及び一酸化炭素などの汚染物質に耐えるように菌株をサポートするために製造プロセスが改良された。これらの適切な培養により、US2014/0377830では、メタン生成が回復可能であり、培養物への水素ガスの高い供給率に応じて更には持続または維持されることを実証することができた。この教示は実際にある程度のメタン生成を回復して維持することが可能であることを示したものの、残念ながらそれと同時に、提示された解決手段は次の段落で報告されるように更に多くの問題を引き起こす。
【0016】
ガス汚染物質(例えば高い割合の水素ガスの投入量を特徴とする)の存在下でメタン生成を維持または回復することを可能にする培養条件では、排出ガスがかなりの量の水素も含むことになることが以前から知られており、またUS2014/0377830にも記載されている。そのよう排出ガス混合物は、それらの酸素及び水素の含有量のため爆発性を有し得るのみならず、それらの純度不足のためガス分配配管網への供給にも不適切である。
【0017】
バイオメタンの生産を確立されたスケール拡張可能で信頼性の高い再生可能なエネルギー源に改良することは、特に連続的な供給プロセスの要件のため、依然として課題であることが明らかになっている。
【0018】
それにもかかわらず、その有望な可能性のため、バイオメタンの大規模な利用は、この技術を採算のとれるコスト効率のよいものにするために、注意深く政治的及び経済的に精査されており、メタンの利用は生化学工学の最も重要な短期目標として確認されている。そのため、上の欠点に対する有効な解決手段と、メタン生成古細菌によって行われる生産プロセスの改善が緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2014016815A2号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0165667A1明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0377830A1明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】McAnultyら,Nat.Comm.,Vol.8,art.15419(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、メタン富化ガス組成物のための、スケール拡張性及び信頼性を有する連続生産プロセスを提供することであり、これは、CO含有排出物及び廃ガスを主供給源として使用して行うことができる。
【0022】
以前の刊行物、特にUS2014/0377830には、メタン生成システムにおいて酸素または一酸化炭素で汚染されたCO含有ガスを使用する試みについて既に記載されている。この出願では、厳密に嫌気性のメタン生成古細菌に供給されるガス中に酸素または一酸化炭素が存在することによるメタン生成の中断の影響が詳しく説明されている。嫌気性メタン生成古細菌との関係において、酸素、及び存在する場合は一酸化炭素も、水素の取り込みに関与して通常メタン生成を妨げる酵素の阻害剤として広く知られている。上述した文献では、メタン生成培養物に通常の空気を供給すると、結果的にメタン生成の中断、COの置換/減少が生じ、そのためpH値が上昇することが判明した。これに関し、純粋な水素及び二酸化炭素がプロセス供給流として使用される場合、メタン生成プロセスは、通常pH7.5~pH8.5のpH値で運転される。このpH値の範囲は、具体的に設定または調節されていない。COガスを通常の空気に置き換え、その結果培地からのCOの置換/削減を行うと、メタン生成が中断される。また、純粋なCOガスが、空気ではなく低いパーセント割合でしか酸素を含まない産業廃ガスに置き換えられた状況でも、培養物中でのメタン生成が中断されるため、pH値への影響は同等である。
【0023】
更に、メタン生成古細菌の増殖と生存のためには典型的には塩基性の窒素源であるアンモニアの供給が必要であり、それに加えて硫化物が使用され、活性微生物の置換のためにメタン生成培養物を静止期に維持することが必要であると考えられることが以前に報告されている。しかしながら、これらの補給物の追加は新しい課題を引き起こす。例えば、アンモニアはメタン生成微生物の培養物の緩衝能力を増加させ、そのため代謝プロセスの安定性を増加させてメタンの放出を引き起こすことが見出されている。アンモニアに対する感受性は、メタン生成微生物の培養物の組成に依存することが見出されているため、大量のアンモニアはメタン生成活性を阻害する可能性がある一方で、少量のアンモニアは酢酸を利用するメタン生成活性、すなわち酢酸の変換によるメタンの生成を阻害する可能性がある(Prochazka et al.,2012)。
【0024】
人工的な培養条件下で、かつ本質的に純粋なHガス及びCOガスを用いた供給形式を利用した場合、メタン生成への有意な影響が観察されなかったことから、最大pH9.00までのpH値の上昇はほとんど問題がないようであった。しかしながら、本発明者らは、ガスの混合物を含むガスを供給する条件下で、それが廃棄排出物であっても地熱ガス組成物であっても、特に硫化水素の含有量及びそれに応じて、典型的なpH条件下での不溶性硫化物塩の制御不能な形成により最初にメタンの生産性が低下し、最終的にはメタン生成古細菌の培養物が回復不可能に急減することを見出した。それにもかかわらず、そのような条件下では、流出ガスは増加したHS量を示し、燃料としてのその後の利用には不適切である。
【0025】
現在の技術開発の更なる目的は、そのような産業廃ガスまたは地熱ガス組成物を使用するメタン生成プロセスを安定化及び改善しながらも、ガス分配配管網に供給するための厳しい要件を満たす流出メタンガスを依然として保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
技術的進歩のこの枠組みの中で、本発明は、CO含有廃ガスをメタンまたは高純度メタンを豊富に含むガス組成物へと変換するためのメタン生成プロセス、特に古細菌のメタン生成を改善する方法を教示する、特許請求の範囲に明示的に規定されている事項を提供する。
【0027】
本発明によれば、ガスは、例えばエタノール生産における微生物発酵、例えば石炭燃焼エネルギープラントにおける化石燃料の燃焼などの化石燃料産業もしくは農産業などの産業プロセスで行われる活動中の副生成物として、または例えば地熱発電所の副生成物として、または例えばガス組成物が放出されるかその他牛の飼育やその他の農業活動などの大気中に拡散されることになる人間の産業活動の結果として、見出されるかまたは生成するCOを多く含む排出物及び/または廃ガスとして理解されるべきである。明確にするために明記しておくと、本明細書で理解されるガス、廃ガス、または排出物という用語は、地熱発電所から排出されるかまたは地熱発電所で使用される、そのままの、または手が加えられた/処理された地熱ガスのいずれも指し、更に、例えばHS含有量が減らされている可能性があるそのままの及び/または処理された地熱ガスも含むものとして理解されるべきである。更に、本明細書で理解されるガス、廃ガス、または排出物という用語は、埋め立て地の排出物、石灰及びセメントプラントの排出物、鉄鋼製造及び処理発電所からの排出物、ごみまたは再生可能エネルギー燃焼プラントの排出物、並びに地熱発電所及びバイオガス発電所の排出物も指す。典型的には、そのような排出物は廃棄物とみなされ、大気中のCO汚染を更に回避するために不活化、リサイクル、または精製を行う必要がある。したがって、廃ガスも本出願の範囲でガスであるとみなされる。
【0028】
それらの供給源に応じて、そのようなガスは大きく異なるガス組成を含み得る。これらは主に、空気と比較してCOを比較的大量に含んでいるという共通点を有している。これらは、通常の(空気のような)部分的な量の酸素及び/または窒素を含む場合があるが、それらの起源によっては酸素を含まない場合もある。加えて、これらは、以下のうちの少なくとも1つ、特に一酸化炭素、水素及び硫化水素、その他の硫黄化合物(硫化物、二硫化物、チオール)、シロキサン(有機ケイ素化合物)、ハロゲン化合物、アンモニア、及び有機塩素(すなわち農薬及び塩素化芳香族分子を含むその他の合成有機化合物)をかなりの量を含む場合がある。
【0029】
酸素及び一酸化炭素の抑制効果はメタン生成プロセスに関して十分に説明されているものの、特に前記プロセスに対するHSの影響は、そのようなメタン生成プロセスの供給ガスとして廃ガスを利用することに対しては有害である。
【0030】
上で簡単に述べたように、溶解した硫化物は、古細菌の水素を原料とするメタン生成、すなわち還元剤として水素を使用する二酸化炭素の変換によるメタンの生成を阻害することが知られている。この形態のメタン生成は、酢酸を利用するメタン生成(上を参照)と比較して硫化物による阻害に強いとみられるものの、Maillacheruvu et al.,1996のデータは、水素を原料とするメタン生成が依然として硫化物毒性の影響を受けることを示している。
【0031】
更に、硫化水素をメタン生成微生物に添加すると、嫌気性スラッジまたは単一微生物のいずれかを利用するメタン生成の非競合的阻害が引き起こされる可能性があることが示された(Koster et al.,1986;O’Flaherty et al.,1998)。
【0032】
加えて、仮説に拘束されるものではないが、硫化水素の形態の硫化物は、HSが古細菌の細胞膜を通過できる唯一の形態であるという事実のため、解離した硫化物イオンよりも毒性が高いことが示された。これまでに、地熱ガス中の典型的な量の硫化物濃度、すなわち100~150mg/Lの範囲の量が、メタン生成の深刻な阻害を引き起こすことが示されている(Koster et al.,1986)。従来の下水処理プラント(Vila Leopoldina-SP-Brazil)からの嫌気性スラッジを用いて運転される嫌気性リアクターへの変化させて行った硫化物添加の体系的な分析を行うことで、Paula&Foresti(2009)は、具体的な基質利用率がわずか50mg/Lの総硫化物濃度まで増加することを示した。基質の利用率はしばらくこの水準のままであり、その後、硫化物の添加値が高くなるにつれて徐々に減少した。更に、高濃度の硫化物は、金属-硫化物錯体形成による金属の毒性の軽減に寄与することが知られている(Edgcomb et al.,2004)。
【0033】
上述した文献に記載されている先行技術の欠点を少なくとも部分的に克服するために、メタン生成プロセスは、特許請求の範囲に記載の方法に従って改善された。
【0034】
本発明によれば、バイオリアクター内でCO含有ガスからメタンを生成する方法は、連続プロセスでメタン生成微生物を培養する工程;追加的に例えばHS及び/またはOを含むCO含有ガスを準備する工程;所定の値になるようにpH値を連続的に制御し、任意選択的に調節する工程;メタン生成微生物の培養物に、CO:Hが1:0.6~1:5である化学量論比で追加のHを供給する任意選択的な工程;並びにメタンまたはメタン富化ガス組成物を回収する最終工程;を含む。
【0035】
本発明の理解において、バイオリアクターは、生物学的反応器を表し、当該技術分野においても意図されているような、例えばとりわけ温度及び/または圧力の変化に耐えることができる、及び/または例えば反応プロセスの前、後、または最中に与えられるか維持されなければならない温度及び/または圧力の付与された値が何であっても維持することができる、本発明の実施に関連する意図された反応が中で起こり得るバイオ反応容器、またはバイオ反応筺体、またはバイオ反応タンク、及び/または少なくとも1つのバイオ反応チャンバー、及び/またはセル、または組み合わせのいずれかである。そのような反応は、微生物が関与する反応の領域に関するものであることから、バイオ反応として理解され、本明細書では、例えば代謝発酵、または好気性もしくは嫌気性消化などのそれらの通常の生理機能を指し、そのため、生じさせるためには、適切な環境、微生物の適切な培養物、適切な培地、及び適切な反応物が必要とされる。本発明の意味におけるバイオリアクターは、開示されている方法を可能にするために各変数の許容値内で確実に機能し、列挙された工程を経時的に確実に実行可能にすることが期待される。
【0036】
メタン生成微生物を培養するための適切なリアクターは、例示にすぎないが、振とうタンク式バイオリアクター、連続撹拌槽型バイオリアクター、間欠撹拌槽型バイオリアクター、中空繊維膜バイオリアクター、気泡塔バイオリアクター、内部循環式エアーリフトリアクター、外部循環式エアーリフトリアクター、流動床型バイオリアクター、充填床型バイオリアクター、光バイオリアクター、トリクルベッドリアクター、微生物電解セル、及び/またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0037】
バイオリアクターの運転モードは、バッチプロセス、フェドバッチプロセス、及び連続プロセスに分類される。本明細書で提示される方法の様々な実施形態によれば、培養物の具体的な動力学またはメタンを抽出する便利さに最もよく対処されるリアクターを選択することができる。本発明の一実施形態では、本記載の方法を都合よく行うために、気泡塔リアクター、またはその変形形態、例えばエアーリフトバイオリアクター、もしくは連続撹拌槽型リアクター、及び/または上のいずれかを使用することができ、栄養、代謝産物、細胞数、及びバイオマスの変動がほとんど観察されないほぼバランスのとれた増殖が観察される連続培養が好ましい。
【0038】
本発明の意味において、そして既に上で説明したように、ガスには、産業及び/または地熱活動の生成物及び副生成物(例えば廃棄物)ガスが含まれ、前記活動は、個々のガスまたはガス混合物(例えば未処理の地熱ガスなどが含まれ、したがって、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、硫化水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、アセチレン、水素、及びその他のいくつかが産業プロセスに応じて様々な量で含まれる)を放出させる場合がある。
【0039】
低エネルギー密度のガスをメタンなどの高エネルギー密度のガスに変換するために利用可能なガスを使用すると、二重の利点が得られる:一方では、これは、大気中に放出されると温室効果に寄与する可能性のあるガスを、特にその後の使用のためのガスの生産を直接目的としていない産業活動からの副生成物として得られる排出ガスの場合に、再利用し;その一方で、これは高純度のエネルギー豊富なガスをもたらし、これは、他の長年行われてきたエネルギー供給方法よりも環境への影響が少ない形で、より多くのバイオメタンを生産するための培養供給物または栄養として更に再利用することができるほぼ同じ量の低エネルギー密度ガスを廃棄物として生成するその後の活動に電力を供給するために迅速に利用することができる。
【0040】
本発明によれば、メタン生成微生物は、バイオメタンを生成するためにバイオリアクター内で培養される。そのようなメタン生成微生物または独立栄養性メタン生成微生物は、純粋な菌株、または複数のすなわち2種以上の菌株との集団、またはメタン生成が異なる種間の共栄養交換によっても促進される可能性がある混合培養物のいずれかで、嫌気性古細菌であっても、更には最近分類された好気性古細菌であってもよい。
【0041】
メタン生成古細菌の活性は、通常は厳密には嫌気性であると考えられており、例えば酸素汚染が生じた場合、生産性が低下し(メタン収量の減少として表される)、最終的には培養物が死滅する。厳密な嫌気性条件での培養物の取り扱いは、必要とされる機器に関して厳しい制約が課される場合がある。それにもかかわらず、最近の知見では、酸素への曝露、または極端な条件でメタン生成を大幅に減少させる可能性のある他のガス汚染物質への曝露が注意深く制御され調節されている場合には、及び重要なパラメータを運転レベルに維持するための対策がとられている場合には、メタン収量、及びその結果培養物の活性レベルも維持できることが示されている。
【0042】
したがって、メタン生成微生物の開発の一般的な分野では、メタンの収量を低下させない培養物のガス汚染の可能性を含む方法を追求することは有意義である。pHが制御/調節された培養物における好気性の操作が前記培養物の生存率を抑制せず、そのためそのメタン収量も抑制されないという発明者らの確かな知見は、本発明の場合のようなガス汚染物質の存在下で様々なメタン生成菌を培養する可能性を高めた。
【0043】
独立栄養性のメタン生成微生物は、本明細書では、メタンの生合成を行うためにそれらの周囲環境との無機反応から、例えば二酸化炭素を還元することによって、栄養を得る微生物であることが意図されている。独立栄養微生物の例は、水素の利用により栄養を得る水素栄養微生物によって示され、特に、水素栄養性のメタン生成微生物は、代謝プロセスの一部として水素と二酸化炭素をメタンへと変換することができる。生態系におけるメタン生成微生物の役割は、有機物の腐敗の最終段階で過剰な二酸化炭素と発酵生成物を除去するのに役立つため他に類をみないものである。メタン生成がない場合には、腐敗した物質から、化合物に結合していた大量の炭素が嫌気性環境に蓄積する。
【0044】
Euryarchaeota界のメタン生成古細菌の綱(メタン生成菌及びその表現型が多様な近縁種を含む)は、水素及び二酸化炭素などの小さな基質の組から代謝活性によりメタンを生成することができる本質的に単細胞の微生物を含む。そのような活性は、主に水素及び/または他の水素化合物を用いて二酸化炭素をメタンに還元することからなる。
【0045】
本発明に記載の方法の実施に適したメタン生成古細菌の培養物は、微生物のパブリックコレクションで利用可能であり、及び/または先行技術で報告されているように、代わりに多くの環境源から単離することができる。メタン生成微生物の適切な環境源の例としては、嫌気性の土壌及び砂、湿原、湿地、沼地、河口、高密度の藻類マット、陸地と海の両方の泥及び堆積物、例えば干潟堆積物の表面下、深海及び深井戸の底、下水及び有機廃棄物の場所及び処理施設、並びに動物の腸管及び排泄物が挙げられる。
【0046】
本発明に記載の方法の実施に適したメタン生成古細菌は、以下で報告するように、5つの異なる綱(目)、すなわちMethanobacteria、Methanococci、Methanomicrobia、Methanonatronarchaeia、及びMethanopyriとして分類学的に説明され、これらの綱のそれぞれは多数の属を含み、各属は科に分けられ、各科は、分類されているという意味で既知の広く研究されている多数の種と、分類されていないという意味で未知の種とを含む。
【0047】
以下で、本発明に記載の方法の実施に特に適したメタン生成古細菌を、それらの綱に従って整理して列挙する。異なる科に属する種は、綱の名前の後に括弧で囲まれセミコロンで区切られており、それぞれの種はカンマで区切られている。
【0048】
本発明によれば、適切なメタン生成古細菌は、メタノバクテリウム綱(例えばMethanobacterium aarhusense、Methanobacterium aggregans、Methanobacterium alcaliphilum、Methanobacterium arcticum、Methanobacterium beijingense、Methanobacterium bryantii、Methanobacterium congolense、Methanobacterium curvum、Methanobacterium espanolae、Methanobacterium ferruginis、Methanobacterium flexile、Methanobacterium formicicum、Methanobacterium ivanovii、Methanobacterium kanagiense、Methanobacterium lacus、Methanobacterium movens、Methanobacterium movilense、Methanobacterium oryzae、Methanobacterium paludis、Methanobacterium palustre、Methanobacterium petrolearium、Methanobacterium subterroneum、Methanobacterium thermaggregans、Methanobacterium uliginosum、Methanobacterium veterum、Methanobacterium sp.;Methanobrevibacter acididurans、Methanobrevibacter arboriphilus、Methanobrevibacter boviskoreani、Methanobrevibacter curvatus、Methanobrevibacter cuticularis、Methanobrevibacter filiformis、Methanobrevibacter gottschalkii、Methanobrevibacter millerae、Methanobrevibacter olleyae、Methanobrevibacter oralis、Methanobrevibacter ruminantium、Methanobrevibacter smithii、Methanobrevibacter thaueri、Methanobrevibacter woesei、Methanobrevibacter wolinii、Methanobrevibacter sp.、Methanosphaera cuniculi、Methanosphaera stadtmanae、Methanothermobacter crinale、Methanothermobacter defluvii、Methanothermobacter marburgensis、Methanothermobacter marburgensis str.Marburg、Methanothermobacter tenebrarum、Methanothermobacter thermautotrophicus、Methanothermobacter thermautotrophicus str.Delta H、Methanothermobacter thermautotrophicus str.Winter、Methanothermobacter thermoflexus、Methanothermobacter thermophilus、Methanothermobacter wolfeii、Methanothermobacter sp.、Methanothermus fervidusなど)から;及び/またはメタノコックス綱(例えばMethanocaldococcus bathoardescens、Methanocaldococcus fervens、Methanocaldococcus indicus、Methanocaldococcus infernus、Methanocaldococcus jannaschii、Methanocaldococcus villosus、Methanocaldococcus vulcanius、Methanocaldococcus sp;Methanotorris formicicus、Methanotorris igneus、Methanotorris sp.;Methanococcus aeolicus、Methanococcus maripaludis、Methanococcus vannielii、Methanococcus voltae、Methanococcus sp.;Methanothermococcus okinawensis、Methanothermococcus thermolithotrophicus、Methanothermococcus sp.など)から;及び/またはメタノミクロビウム綱(例えばMethanocella arvoryzae、Methanocella conradii、Methanocella paludicola、Methanocella sp.;Methanocalculus alkaliphilus、Methanocalculus chunghsingensis、Methanocalculus halotolerans、Methanocalculus natronophilus、Methanocalculus pumilus、Methanocalculus taiwanensis、Methanocalculus sp.;Methanocorpusculum aggregans、Methanocorpusculum bavaricum、Methanocorpusculum bavaricum、Methanocorpusculum labreanum、Methanocorpusculum labreanum、Methanocorpusculum parvum、Methanocorpusculum sinense、Methanocorpusculum sp.;Candidatus Methanoculleus thermohydrogenotrophicum、Methanoculleus bourgensis、Methanoculleus chikugoensis、Methanoculleus chikugoensis、Methanoculleus horonobensis、Methanoculleus hydrogenitrophicus、Methanoculleus marisnigri、Methanoculleus palmolei、Methanoculleus receptaculi、Methanoculleus sediminis、Methanoculleus submarinus、Methanoculleus taiwanensis、Methanoculleus thermophilus、Methanoculleus sp.;Methanofollis aquaemaris、Methanofollis ethanolicus、Methanofollis formosanus、Methanofollis liminatans、Methanofollis liminatans、Methanofollis tationis、Methanofollis sp.;Methanogenium boonei、Methanogenium cariaci、Methanogenium frigidum、Methanogenium marinum、Methanogenium organophilum、Methanogenium sp.;Methanolacinia paynteri、Methanolacinia petrolearia;Methanoplanus endosymbiosus、Methanoplanus limicola、Methanoplanus sp.;Methanomicrobium antiquum、Methanomicrobium mobile;Methanolinea mesophila、Methanolinea tarda;Methanoregula boonei、Methanoregula formicica;Methanosphaerula palustris;Methanospirillum hungatei、Methanospirillum lacunae、Methanospirillum psychrodurum、Methanospirillum stamsii、Methanospirillum sp.;Candidatus Methanoperedens nitroreducens、Candidatus Methanoperedens sp.など;Methanosaeta harundinacea、Methanosaeta pelagica、Methanothrix soehngenii、Methanothrix thermoacetophila、Methanosaeta sp.;Methanimicrococcus blatticola、Methanimicrococcus sp.など)から;及び/またはMethanonatronarchaeia綱(例えばMethanonatronarchaeum、Methanonatronarchaeum thermophilum、Candidatus Methanohalarchaeum、Candidatus Methanohalarchaeum thermophilumなど)から;及び/またはMethanopyri綱(例えばMethanopyrus kandleri、Methanopyrus sp.など)からのメタン生成古細菌、またはこれらの組み合わせのリストから選択される。
【0049】
これらの異なる属、科、及び種のそれぞれには、更に多くの種を分離するための継続的なシーケンス活動による、多数の特定済の及び未分類の異なる微生物、または遺伝子組み換え株及び関連する環境種が含まれる。本発明の実施に適した言及した微生物に加えて、そのような分類の完全なリストは、National Center for Biotechnological Information(NCBI)のウェブサイトのTaxonomy Browserによって入手可能である。
【0050】
更に、多くの場合、単純な培養条件並びに自然淘汰及び適応の機構によって、上で列挙した任意の天然種を選択または改変することができる。特定の実施形態では、リアクターの培養物の最終組成は、休止状態であるか運転中/活動中であるかにかかわらず、特定の増殖期の微生物が、他の微生物に対してまたはリアクターの状態に従って支配的であるように改変されたものであってもよい。
【0051】
特定の条件に適応させるための特定の菌株の遺伝子操作に関するいくつかの研究が存在する。概して、本発明のアプローチは、むしろ天然に存在する微生物に依存する。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Methanothermobacter、更にはMethanothermobacter thermoautotrophicus、Methanothermobacter marburgensis及び/またはそれらの混合物、及び/またはそれらの誘導体が、以下の実施例1~7で記載及び実証されているように、本発明の方法の実施に特に適していることが明らかになった。
【0053】
更に本発明のいくつかの実施形態によれば、Methanothermus fervidus、Methanobrevibacter arboriphilicus、Methanococcus、及びMethanocaldococcus sp.、更にはMethanocaldococcus bathoardescens、Methanocaldococcus fervens、Methanocaldococcus indicus、Methanocaldococcus infernus、Methanocaldococcus jannaschii、Methanocaldococcus villosus、Methanocaldococcus vulcanius、及び/またはそれらの混合物、及び/またはそれらの誘導体が、以降の実施例に記載及び実証されているように、本発明の方法の実施に特に適していることが明らかになった。
【0054】
これに関し、最も興味深いことには、本発明の発明者らは、更にメタノバクテリウム綱、例えば実施例8で使用したMethanothermus fervidusが、それぞれ約7.0またはそれよりわずか上に調節されたpHで培養された場合に、安定且つ予想外の優れたメタン生成を実行できた(実施例8及び9を参照、pH7.2及び7.4が示されている)ことを発見したことに着目される。この知見は、Methanothermus fervidusが「わずかに酸性のpHかつ6.5に等しいpHを好む一方で、7.0を超えるpHでは増殖を観察できなかった」ことを教示した先行技術の知見とは全く反対である(Anderson et al.2010,p.316,右欄第4~6行目、及びStetter et al.,1981を参照のこと)。
【0055】
元の培養物は、培養が行われた具体的な条件に応じて自然に改変されたものであってもよい。培養条件は、温度、pH、圧力、細胞密度、体積、湿度、塩含有量、導電率、炭素含有量、窒素含有量、ビタミン含有量、アミノ酸含有量、ミネラル含有量、またはこれらの組み合わせなどの複数のパラメータの影響を受ける。これらの条件のそれぞれに従って、リアクター環境内の任意の数の種によって特定の適応プロセスが行われ得る。
【0056】
本発明によれば、本明細書に開示の方法は、連続プロセスにおけるメタン生成微生物の培養に関し、そのような連続性は、メタン生成における連続性及び培養における連続性として理解され、コロニーの活性な構成微生物から不活性な終末期のバイオマスを分離する工程は必要とされない。前記バイオマスまたはバイオ材料が活性培養物のための追加の基質を提供し、栄養の利用可能性を強化することが有利であることが見出されたことから、代わりに、死滅したバイオ材料は、増殖の複数の段階にわたって活性な構成微生物と一緒にリアクター内に保持されることが推奨される。このようなメタン生成と培養の継続性の理解においては、適切な反応物(例えば産業ガス、地熱ガス)が培養物に連続的に供給され、培養物全体及びリアクターの運転段階内のメタン生成活性の任意のサイクルから得られる生成したメタンの測定量(すなわちメタンの収量)の大幅な変化なしにメタン生成タスクを実行できるという理解も含まれる。
【0057】
連続的なメタン生成を確実にすることは、本発明の関連する特徴であり、記載されている方法の工程を実施することの有利な効果である。本発明によれば、メタンは、単一の菌株から、または混合培養物中でメタン生成古細菌によって生成され、混合培養物は、複数のすなわち2種以上の菌株も使用できる培養物、または複数の追加の種がメタン生成古細菌と相互作用する培養物、またはこれらの任意の組み合わせのいずれかである。
【0058】
本明細書に開示の方法によれば、培養物に供給されるガスはCOを含み、更に、例えばHS及び/またはCOを更に含むことによって特徴付けられる。
【0059】
上で定義したガスの中でも、二酸化炭素及び例えば硫化水素が豊富なもの、とりわけ適切な量の二酸化炭素と硫化水素とを含む未処理の地熱ガスも含まれ、微量成分または酸素の汚染物質も含むそのようなガス組成物は除外されない。
【0060】
更に、適切な量の二酸化炭素と低減された量の硫化水素とを含む処理された地熱ガス(微量成分または酸素の汚染物質も含むそのようなガス組成物は除外されない)が使用される特定の実施形態に関する実験が報告されている。
【0061】
したがって、本発明の範囲では、前記汚染物質が方法の効率に寄与することから、これには、メタン生成微生物の培養物に供給されるガス、特にはCOが、事前に精製する必要なしに少量の追加の汚染物質を含み得ることも含まれる。
【0062】
本発明の方法は、前述されており実施者に公知の古細菌に典型的な培養条件に基づくメタン生成古細菌を培養する工程を含む。そのような条件は、温度、圧力、体積、湿度、塩含有量、導電率、炭素含有量、窒素含有量、ビタミン含有量、アミノ酸含有量、ミネラル含有量、またはこれらの組み合わせなどの培養に影響を及ぼす一般的なパラメータによって、実施者のスキルに応じて影響を受け、調節される。
【0063】
本発明によれば、バイオリアクター内でCO含有ガスからメタンを生成する方法においてメタン生成微生物を培養する工程は、例えば窒素源及び塩などの適切な栄養を供給する適切な液体培地の中に前記メタン生成微生物を保持すること;培養条件を通性嫌気性及び/または嫌気性に保持すること;任意選択的に培養物を撹拌すること(培養物の撹拌は、定期的に、間隔を置いて、連続的に、または少なくとも特定のゆっくりとした一定の動きで可溶性培養物を維持して、行うことができる);培養物から連続的に代謝水を除去すること;並びに温度を32℃~90℃または32℃~80℃、好ましくは50~70℃、または約62℃の範囲に保つこと;を含む。
【0064】
更に、メタン生成微生物の培養のために準備される一般的な培養または増殖培地は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、ホウ素、アルミニウム、モリブデン、タングステン、セレン、塩素、硫黄源(例えば硫化水素または単体硫黄)、リン源(例えばリン酸塩)、窒素源(例えばアンモニウム、硝酸塩、または窒素ガス)の群から選択されるそれらの元素形態またはそれらの任意の適切な非毒性塩形態で、1つ以上の一般的な無機元素を含み得る。本発明に従ってメタン生成生物を培養するために利用される典型的な塩は、NaCl、NaHCO、NaHPO、NaHPO、HO、NaS、NHOH、N、及びNaO、HS、KCl、MgCl、MgSO、CaCl、及び硫酸第一鉄である。
【0065】
例えばpHなどの他のパラメータを調節することで、リアクターの活性サイクル全体にわたるメタン生成が可能になり、かつガス汚染物質の存在下でもメタンの連続的な生産が可能になることが本発明者らによって見出された。
【0066】
したがって、本発明は、pH値を連続的に制御する工程を特徴とする。これとの関係において、制御は、培養に関係するパラメータを一定の監視下に保ち、当該技術分野で公知の一般的な方法論及び測定機器を使用して、前記パラメータまたは状態の指標を本質的に測定するという一般的な普通の意味で理解され、一定の監視下に保ち、その結果培養物のpHを制御することのみでは不十分な可能性があることから、本発明の更なる実施形態は、特に、pH値を連続的に調節することを含む。本出願の理解において、調節は、そのための適切な手段を使用することによって例えば培養物のpHなどのパラメータについての所定の値を積極的に維持することであることが意図されている。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、メタン生成微生物の培養物は、適切な量の適切な酸または塩基を連続的に添加することによって、連続的に制御及び/または調節される、すなわち、pH10以下の所定の値の、あるいはpH9以下の所定の値の、あるいはpH8以下、あるいはpH7の所定の値のpH値に維持されるように安定化される。
【0068】
仮説に拘束されるものではないが、培養物のpHの調節は、請求項に記載の方法の効率を決定するメタン生成活性の継続性を維持するために特に重要であると考えられる。
【0069】
本発明の更なる実施形態によれば、メタン生成微生物培養物は、適切な量の例えばNaOH/HClまたはNHOH/HClを培養物に添加することによって、pH値を維持するように連続的に安定化及び/または調節される。
【0070】
本発明による「所定の値」は、所定の許容誤差、測定システム内の許容誤差、または培養物内のばらつきまたは培養物の多様性に起因する許容誤差を有する定義された値とすることができ、前記値は、メタン生成を可能にするために適したものである。あるいは、所定の値は、適切な値の範囲であってもよく、所定の値と同じメタン生成に対する効果が得られる。
【0071】
本出願との関係において、メタン生成、またはメタン産生、またはバイオメタン生成は、上述した本発明の実施に適したメタン生成微生物のリストに含まれるものなどのメタン生成微生物によって行われるメタンまたはメタン富化ガス組成物の生成として理解される。
【0072】
特に、メタン生成反応は、以前から知られており、かつ本発明に適しているように、4:1の化学量論比でH及びCOを消費する。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、地熱ガスに関し、培養のための栄養として供給されるガスまたは廃ガスは、4:1とは異なる割合でH及びCOを含んでいてもよい。この場合、過剰な基質がメタン生成によって完全には消費されない可能性があるものの、未処理または処理済みの地熱ガスを依然として使用することができる。プロセス流において4:1の最適なH:CO比を達成するために、(i)地熱ガスを、2つのうちのいずれが欠けているかに応じて、外的なH(電気分解など)及び/またはCO(CO含有ガス由来など)と混合することができる、または(ii)当該技術分野で周知の適切な分離技術によって過剰のHまたはCOを分離することにより、H:CO比を4:1に調節することができる。
【0074】
興味深いことに、本発明による方法は、0.6:1から最大5:1の比までのH:CO比、特に1:1、2:1、3:1、3.5:1、4.3:1の、全く別の驚くほど異なる化学量論比を有する供給ガス組成物が供給された連続プロセスで、メタン生成微生物培養物を使用して行われた場合、メタン生成活性の持続性に関して有効なままであることが明らかになった。
【0075】
更に、本発明者らは、そのような大きく異なる化学量論比H:COが0.6:1である実施形態においてでさえ、連続的なpHの制御及び調節を利用する場合には、本発明によるガス組成物中のメタンを濃縮するプロセスが依然として安定であり、継続することを実証することができた(実施例6との比較)。
【0076】
したがって、pH値の制御及び/または調節を含む、請求項に記載の方法の最適化の主な利点の1つは、供給ガスの不足または供給ガスの中断の場合であっても、メタン生成が減少する可能性があるが、それでも実行される、またはこれが更には一定のままであり、すぐに回復できるという事実である。
【0077】
本出願との関係において、本記載の方法を使用して生成されるメタン富化ガス組成物は、主にメタンによって構成されるガス組成物、及び/またはメタンが主成分であるガス組成物、及び/またはメタン含有量が90体積%以上もしくは最大96体積%であるガス組成物であることが意図されており、特に本記載の方法の生成物は、熱及び電力を生成するために配管系に直接供給することができるメタンを主に含むガス組成物である。したがって、本発明のメタン富化ガス組成物は、非常に少ない含有量の汚染物質を有しており、直接燃焼できない汚染物質から精製する必要がある天然ガスとは異なり、本開示の富化メタン組成物は、国のエネルギー配管網に直接供給するために、効率的な熱及び電力の生成のために酸素と直接相互作用することができる。
【0078】
本出願の意味において、本開示の方法によって生成したメタン富化ガス組成物は、バイオメタンの理解に対応する。
【0079】
一般的な知識とみなされているものの、微生物の培養におけるパラメータの値を制御及び/または調節するための適切な手段は、パラメータの性質に応じて異なることを再度述べておく必要がある。pH値の場合、調節及び/または安定化は、所定のpH値に到達するように較正された正確な量のアルカリ性溶液または酸性溶液を供給することによって行われる。適切な溶液の例としては、限定するものではないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、及び硫酸の溶液、及び/または生物学的プロセスで使用されているか生物学的プロセスと適合性があることが知られている任意のアルカリ性溶液または酸性溶液が挙げられる。
【0080】
したがって、本出願の意味において、並びに培養物全体で及び時間内に連続的なメタン生成活性を可能にし、安定化する目的で、調節は、連続してまたは連続的な形式で達成され、その結果、任意の所定の時間において、培養物のパラメータ、例えば培養物のpHは、測定すると所定の値と同じ値であることが分かる。
【0081】
更に、培地から過剰な水分及び/または過剰の代謝水またはいわゆる遊離水を一定間隔でまたは連続的に除去し、それによって確実に培地中の栄養の正確な希釈及び/または分散を行うことは、本発明による方法の有利な工程である。本発明による代謝水とは、代謝活性及びメタン生成のプロセスの間にメタン生成微生物によって生成される水またはHO分子を指す。
【0082】
温度は培養物内の選択された微生物種の存在に応じて変化する可能性があり、設定された温度範囲内でそれぞれがよりよく成長するが、ほとんどのメタン生成微生物にとって温度の上昇は有害ではなく、細胞代謝の最適化、ひいては代謝回転、更にはメタン生成を支援する場合さえある。工業的プロセスでは、温度はエネルギー規制によって制御しなければならない。これに関し、温度制御を可能にすることによってエネルギー消費を削減することは価値のある特徴であるとみなされるはずである。
【0083】
したがって、エネルギー入力のコストに対して、最適化された培養温度及びそれに対応する水素溶解度のバランスをとることが非常に重要である。興味深いことに、本発明の方法は、大気圧で32℃~90℃、または32℃~85℃、あるいは50~70℃、更には約62℃の温度範囲で最も効率的であることが見出された。
【0084】
他の温度または圧力範囲では、比較する特徴として水素の溶解度を使用することができる。したがって、本発明は、大気圧で32℃~90℃、または32℃~85℃、あるいは50~70℃、更には約62℃の温度範囲と同じ水素の溶解度を可能にする高圧、例えば16bar、20bar、35bar、40bar、または60bar、及びそれに対応した高温における培養プロセスにも関する。
【0085】
メタン生成微生物は、通常、複数のその他の温度、及び更には100℃まで、及びそれをはるかに上回る、例えば140℃の極端な温度範囲においても生存し、増殖することができる。したがって、上記の温度範囲は好ましい範囲を示すものの、本発明の範囲を限定するものとして理解すべきではない。
【0086】
本発明の更なる実施形態によれば、メタン生成微生物は、追加で添加された硫化物、好ましくはNaSの形態(ただしこれに限定されない)の添加、及び/または窒素源として追加で添加されたアンモニウム、好ましくはNHOHまたは塩化アンモニウムの形態(ただしこれに限定されない)のアンモニウムの存在下で培養される。
【0087】
水酸化アンモニウムはアンモニア水とも呼ばれ、無色の水溶液である。したがって、水酸化アンモニウムは、コロニーまたは培養物の複数の増殖段階で生存に適した窒素源を培地に供給することに寄与するように、単独で、または他の窒素化合物更にはガスと組み合わせて、使用することができる。
【0088】
通常、栄養、または特に水酸化アンモニウムなどの窒素源を培養物に添加する工程は、本発明を制限するものとして理解すべきではなく、実施者にとって有用であるとみなされるべきである。通常、メタン生成微生物は、複数の窒素源の存在下でも生存及び増殖することができる。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、メタン生成微生物は、OD610(610nmにおける光学密度)の培養物中の微生物の密度が少なくとも1かつ最大60まで培養され、そのような光学密度は、少なくとも0.25g/Lかつ最大20g/L、特には0.25~15g/L、3g/L~10g/L、4g/L~7g/L、3g/L~7g/L、または3g/L~15g/Lの範囲の培養物中の微生物の乾燥重量に関するものである。
【0090】
本発明の更なる実施形態によれば、メタン生成微生物は、OD610(610nmにおける光学密度)の培養物中の微生物の密度が少なくとも14かつ最大60まで培養され、そのような光学密度は、少なくとも2.5g/Lかつ最大20g/L、特には2.5~15g/L、3g/L~10g/L、4g/L~7g/L、3g/L~7g/L、または3g/L~15g/Lの範囲の培養物中の微生物の乾燥重量に関するものである。
【0091】
培養物中の微生物の光学密度は、各時点における細胞数または濃度を測定するための実行可能なパラメータである。所定の細胞数と培養物中の微生物の効率との間の直接的な関係は、普遍的には確立されていないようではあるものの、本発明による方法の結果の理解においては、高密度培養物は、メタンの生成と収量に関して有利な結果を生み出す。
【0092】
具体的には、本発明による培養物の光学密度(OD)は、当該技術分野で公知の一般的な方法及び基準を利用して測定される。光学密度、より正確には細胞計数の一形態としての濁度測定は、分光光度計を使用して行われ、典型的には約600nm付近で行われるものの、状況に応じて他の波長が適切な場合がある。
【0093】
光学密度は測定の構成によって異なる場合があるため、多くの場合、所定の時点または増殖段階で培養物中に存在する細胞の量の尺度として、培養物中の微生物の乾燥重量またはバイオマス密度を示すことが有用である。当該技術分野で知られている標準的な方法を使用して、異なる濃度で得られた培養物の複数の異なるOD値の曲線を作成し、それに応じた培養物の乾燥サンプルの乾燥重量を測定することによって、所定の増殖段階における所定の培養物のODの測定値と乾燥重量との相関関係を得ることができる。これにより、光学密度の関数としての乾燥重量のデータ点のセットが得られる。このようなデータセットの回帰直線の傾きは、通常、乾燥重量と光学密度の間との相関関係を規定する。本発明者らによれば、本出願では、OD610=4の値は、おおよそ1g/Lのバイオマス密度に変換される。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、高い光学密度を決定する培養物中の多数の微生物は、複数の増殖段階(活性な増殖段階、定常増殖段階、ほぼ定常増殖段階)からそれらの終末段階までの、それらの寿命の全ての段階にわたってリアクター内の培養物の構成微生物を維持することによって得られ、その結果、不活性な細胞体の残骸が培養物の活性な構成微生物に栄養を供給することができる。
【0095】
本発明によれば、メタン生成微生物の培養物を、少なくとも1のOD610を有する密度の培養物へと誘導または導くことができる。あるいは、メタン生成微生物の培養は、培養物に十分な栄養を添加し、それと同時に培養物から遊離水または代謝水を除去することによって、少なくとも14であるが好ましくは20超、更には30超、更には40超、更には60超のOD610を有する高密度の培養物へと誘導または導くことができる。したがって、本発明の方法は、様々な発達段階を通じて、測定可能な1~60のOD610;更には14~60のOD610;更には20~60のOD610;更には30~60のOD610;更には40~60のOD610;更には50~60のOD610;更には1~60のOD610;更には14~50のOD610;更には20~50のOD610;更には30~50のOD610;更には40~50のOD610;更には20~40のOD610;更には30~40のOD610;更には20~30のOD610;更には14~20のOD610;更には1~20のOD610を有するメタン生成微生物の1種以上の菌株の培養において適切に実施することができる。
【0096】
本出願に記載の方法の発明者らは、本発明の更なる実施形態によれば、本記載の方法が、古細菌またはarchaebacteriaの界から選択されるメタン生成微生物を使用すると特によく機能し、この群にはMethanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanothermus、またはこれらの混合が含まれることを示した。更に、本発明者らは、Methanothermobacter sp.、Methanothermus sp.、またはMethanobrevibacter sp.が非常に効果的であることが証明されたことを示した。
【0097】
本発明の更なる実施形態によれば、選択されたメタン生成微生物は嫌気性であるが、例えば適応により、酸素耐性である。
【0098】
上で説明したように、本発明で利用されるメタン生成古細菌は、好気性と厳密に嫌気性の両方の種を含むことができ、これらは汚染物質の存在下でメタン生成の能力を保持し、培養物のpHを制御及び調節する工程が行われる場合に、他の方法または培養物で見られるサイレンシング工程を回避し、メタン生成を期待されるレベルで維持する。本出願との関係において、並びに本分野との一般的な関係において、サイレンシングは、有害な環境への反応としてのメタン生成微生物によるメタン生成活性の中断であることが意図されている。
【0099】
本発明によれば、工程i.の適切な液体培地は、アニオン濃度、すなわちCl濃度が12mmol/L~300mmol/Lの範囲である適度な塩分環境である。あるいは、工程i.の適切な液体培地は、NaCl濃度が0.4g/L~12g/Lの範囲、好ましくは3g/L~6g/Lの範囲、より好ましくは約5.6g/Lである適度な塩分環境である。
【0100】
塩化物アニオンは、NaCl、MgCl、KCl、NHCl、または当業者に公知の他の適切な塩化物塩のアニオンとして塩溶液中に存在することができる。特に、本発明による適度な塩分環境における塩化物アニオン濃度は、0.05g/Lまたはそれ未満から7g/Lまでの範囲、好ましくは3g/L~6g/L、より好ましくは約5.6g/LのNaCl濃度によって得られるアニオン濃度に匹敵する。
【0101】
本出願の理解において、微生物の増殖及び活性のためのもう1つの因子は、バイオマスの増殖及び継続的な増加を可能し、連続的に行われる代謝活動を可能し、したがって二酸化炭素をメタンに還元する望ましい変換効率及び連続的な高いメタン生産量を伴う、液体培地に通常存在する塩の量である場合もある。
【0102】
特に、ほとんどのメタン生成微生物は、表面に生息する他の微生物にとっては非常に高い塩分濃度の海の深さで自然に見出されるが、驚くべきことに、適度な塩分環境において生存及び繁殖が可能な本発明によるメタン生成微生物が、請求項に記載の方法に特に適していることを本発明者らが見出した。
【0103】
適度な塩分環境において生存及び繁殖が可能な本発明によるメタン生成微生物のそのような使用は、最新のバイオリアクター技術の使用に特に有利であり;例えば適応していない好塩性のメタン生成種に必要であり、複雑なバイオリアクター設備に非常に有害であることが明らかになっている高塩分環境に関連する深刻な腐食、酸化、及び変色による損傷などの結末は回避される。
【0104】
本発明において、メタン生成微生物は、自然に選択されたまたは天然に適応した微生物、適応した好塩性微生物、遺伝子操作された微生物の群から選択され、これらは全て、そのような適度な塩分環境で生存及び繁殖することができ、その際そのNaCl濃度または塩分濃度は、海水中のNaCl濃度の約半分未満または約半分に匹敵し、典型的には約12~14g/Lになるように選択される。
【0105】
本発明の理解において、適応した微生物とは、その初期状態において、すなわち培養物に添加された際に、全て同じ属性及び/または能力、またはその任意の程度を有していなかったが培養物中での耐久期間の後に有するようになった微生物であることが意図されている。同じ理解において、そのような属性及び/または能力は、元の微生物の種に一般的に見られる特徴ではない可能性があり、それにもかかわらず、それらは培養における一定の期間または耐久性の後に獲得され、前記期間は、例えば微生物及び/または培養物に応じて可変であり、前記属性及び/または能力またはその任意の程度は、培養物中に存在する他の微生物の集団との相互作用に応じて、及び/または培養環境の他のパラメータ及び/または要素、例えば特定の栄養の濃度及び/または利用可能性に応じて、及び/または当業者に公知のものを含む任意の他の同様の代謝源もしくは元の微生物の任意の他の変化との相互作用に応じて、変化する。
【0106】
本発明の複数の実施形態によれば、CO含有ガス、好ましくはCO含有排出物は、メタン生成のための炭素源であり、好ましくは、限定するものではないが、天然地熱ガスまたは処理された地熱ガス、埋立地ガス、石炭または化石エネルギー燃焼プラントの排出物、石灰及びセメントプラントの排出物、鉄鋼製造及び処理発電所からの排出物、ごみまたは再生可能エネルギー燃焼プラントの排出物、並びに地熱発電所、バイオガスプラント、及び発酵施設(例えば醸造所、飲料生産者、及び加工業者)の排出物に由来する。
【0107】
典型的には、及び本発明の好ましい実施形態によれば、ガス中のCO含有量は、少なくとも20%のCOに含まれる。
【0108】
加えて、本発明の更なる実施形態によれば、CO含有ガスは、典型的には0~50,000ppmのHSを含んでいてもよく、更なる実施形態によれば、供給ガスとして使用されるガス中のHS含有量は、200ppm~2000ppm、あるいは200ppm~10000ppm;あるいは300ppm~30000ppm;あるいは400ppm~40000ppm;あるいは500ppm~5000ppm;あるいは200ppm~20000ppm;あるいは500ppm~20000ppm;あるいは500ppm~25000ppm;及び最大40,000ppmのHSであるべきである。
【0109】
加えて、本発明の更なる実施形態によれば、CO含有ガスは0~5000mg/LのHSを含んでいてもよく、更なる実施形態によれば、供給ガスとして使用されるガス中のHS含有量は、1~100mg/LのHS;あるいは10~250mg/LのHS;あるいは150~750mg/LのHS;あるいは100~1000mg/LのHS;あるいは125~850mg/LのHS;あるいは50~500mg/LのHS;あるいは125~500mg/LのHS;あるいは125~650mg/LのHS;あるいは100~2500mg/L;あるいは500~1500mg/L;あるいは250~3500mg/L;あるいは750~3500mg/L;あるいは500~4000mg/L;あるいは550~4500mg/L;あるいは1000~4500mg/L;及び最大5000mg/LのHSであるべきである。
【0110】
本発明のいくつかの更なる実施形態によれば、CO含有ガスは微量の酸素も含む。典型的には、及び本発明の更なる実施形態によれば、CO含有ガスは、1%、2%、3%、4%、更には5%の酸素を含んでいてもよいが、5%のOを超えない。
【0111】
特に、及び一実施形態によれば、本発明による処理された地熱ガスは、Hellisheidi地熱発電所で行われる未処理の地熱ガスのいわゆるSulfix処理プロセスに従って得られ、最大30000ppmの濃度のHSと、最大約1%~5%、あるいは2%~4%、あるいは1%~4%、あるいは2%~4%、あるいは2%~3%、またはあるいは1%~3%の濃度の酸素(O)とを含む。
【0112】
処理された地熱ガスの更に典型的な組成は、実施例6に含まれる表1に示されている。
【0113】
著しく高いレベルのHSは潜在的にメタン生成を深刻に阻害し得ることが知られているものの、そのような既に高い濃度では、所定の量の酸素の存在と一緒では、pH調節と組み合わせると、本発明に従って培養された古細菌からの連続的に生じるメタン生成活性を可能にするという点でむしろ驚くほど有利であることが証明された。
【0114】
本発明の更なる実施形態によれば、手順全体または少なくとも1つの工程のいずれかは、大気圧条件下及び/または加圧条件下で行うことができる。いくつかの実施形態によれば、本発明による方法の1つ以上の工程が加圧雰囲気中で行われる場合、圧力は、好ましくは最大16bar、あるいは最大20bar、あるいは最大50bar、あるいは最大68bar、あるいは最大110bar、更には最大420barに選択される。
【0115】
本発明によれば、回収されたメタンまたは生成したメタン富化ガス組成物は、固体状汚染物質(例えば懸濁液中の泡、ほこりおよび汚れの粒子のような小さい固体粒子、グリースなど)、または気体状汚染物質(例えば水蒸気、硫化水素、シロキサン、アンモニア、及びハロゲン化合物(塩化物、フッ化物)など)、揮発性有機化合物(VOC)(例えばリモネンおよびその他のテルペンなど)、並びにその他の微量汚染物質を本質的に含まない。そのような微量成分は、プラントや配管系に蓄積する可能性があり、腐食、堆積物、装置の損傷を引き起こす可能性があるため、排出ガスの回収時に除去すべきである。
【0116】
高純度のメタンの回収を実現するために、例えばろ過、深冷分離、除湿、生物学的酸化、化学的吸着、物理的吸着などの複数の方法が使用される。
【0117】
本発明によって生産されるバイオメタンの高い純度は、連続生産サイクルにおけるエネルギー源としてのその即時の利用可能性を決定付け、そのため本出願の請求項に記載の方法の優位性を実証する。
【0118】
高純度メタンの連続生産は、本明細書に記載の方法の結果であり、メタン生成古細菌の種または種の混合物の培養のために、任意選択的に酸素を更に含んでいてもよい硫化水素を多く含む基質が利用されることで、すぐにエネルギーサイクルに再び入る準備が整っている実質的に汚染物質を含まないメタンまたはメタン富化ガス組成物が得られ、エネルギー需要が高いプラントや施設にさえも炭素原子あたりのエネルギー収量が最も高いクリーンな燃料を提供する。他の供給源は、炭素原子あたりのエネルギー収量が低く環境への影響が大きいものであっても、十分ではなく、費用がかかり、実行不可能である。
【0119】
この方法は、メタンの燃焼生成物を更に再利用して、生物培養に追加の基質を供給し、その結果メタン生成サイクルを再開させる。
【0120】
上述した方法のこれらの有望な結果のため、本発明者らは、前記メタン生成微生物を異なるpH値で培養することのメタン生成に対する効果を更に調べ、本発明の別の態様を見出した。
【0121】
したがって、別の態様では、本発明は、
a.第1のpHで、CO及びHを用いて、メタン生成微生物のための第1の一連の培養条件下で培養すること;続いて
b.第2の一連の培養条件下で、すなわち第2のpHで前記微生物を連続培養すること;
c.所定の値になるようにpH値を制御し、任意選択的に調節すること;
d.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクター内でCOまたはCO含有ガスからメタンを生成する方法を提供する。
【0122】
本発明の別の態様による第1の実施形態では、第1のpH値は、メタン生成微生物の迅速な複製及び増殖を誘導するためにpH5.5~7.0の範囲であり、第2のpH値は、工程a、すなわちより低いpH範囲のメタン生成と比較してメタン生成を増加及び最適化させるためにpH7.1~10の範囲である。
【0123】
あるいは、第2のpH値は、pH4.5~6.5の範囲とすることができ、任意選択的には第1のpHよりも低くてもよい。
【0124】
本発明の発明者らは、それぞれ酸性から中性のpH範囲である最初の第1のpH範囲と、アルカリ性から中性のpH範囲である第2のpH範囲を変えることが、メタン代謝を活性化するために重要であり、その結果、培養中に使用された第1のpH範囲でみられたメタン生成と比較して、メタン生成の顕著な増加が引き起こされることを実証することができた。
【0125】
したがって、本発明による方法により、メタン生成を大幅に増加させることが可能であった。メタン生成微生物の培養段階中のpH値に関する変更は、メタン代謝をかなり誘導し、その結果、第1のpH範囲における率と比較して少なくとも15%から最大100%、または少なくとも30%から最大80%、または少なくとも50%から最大70%、第2のpH範囲で平均メタン生成率が増加するようであることが見出された。
【0126】
興味深いことには、更に、中性の第1のpH範囲から酸性の第2のpH範囲への変化であっても、メタン生成率のそのような同等な顕著な増加を開始できることが見出された。
【0127】
本発明の前記更なる実施形態によれば、それぞれ酸性から中性のpH範囲にある最初の第1のpH範囲から、アルカリ性から中性のpH範囲にある第2のpH範囲への前記変化を含むメタン生成方法は、実質的にメタン代謝の活性化のためであり、したがって、培養に使用される第1のpHでみられるメタン生成と比較して、メタン生成の顕著な増加が引き起こされた。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1】実施例1及び2による、HSの添加後の、Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物におけるpH調節後のメタン生成の回復。培養物の急減(400時間)は、単にHSの量を減少させるだけでは回避できなかったことが観察できる(300時間)。したがって、pH調節は、メタン生成の回復とバイオマス濃度の増加に関連する役割を果たす。
図2】Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用して最大24000mg/LのS2-を添加した後のメタン生成の結果。データは、pH調節の実施により、非常に大量の汚染物質(NaS)を添加した後の培養物の代謝活性に関して驚くべき性能を示している。
図3】CO変換率、並びにMethanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用したプロセス供給ガス中に存在する硫化水素含有量及び酸素含有量。
図4】供給ガスをCOから処理済みの地熱ガスであり酸素と硫化水素とを含有するSulfix IIに切り替えた際のメタン生成の安定性。Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用したメタン生成微生物の好気性の操作は、この方法の効率に寄与する。
図5】Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用した実施例5による、処理された地熱ガスのみを使用したメタン生成の持続性。データは、本発明の方法の実施形態に従って、COに対するHの非常に低い化学量論比が維持され、追加の汚染物質が培養物に添加された場合であっても、メタン生成の驚くべき持続性を示す。
図6】24mg/LのS2-(黒丸)、121mg/LのS2-(灰色の丸)、最大12,700mg/LのS2-(白丸)を添加した後の生体触媒としてのMethanobrevibacter arboriphilusを使用したメタン生成の結果。初期pH値が示されている。最初のメタン生成を100%に設定し、その後の値はこの値に正規化した。グラフの所定の時間における各測定ポイントは丸で示されており、1回の繰り返しの値または2回の独立した繰り返しの平均値を表す。データは、pH調節が実施された場合の汚染物質(NaS)の添加後の培養物の代謝活性に関する驚くべき性能と、pH調節が実施されていない場合の明らかな性能低下の両方を示している。
図7】24mg/LのS2-(黒丸)、121mg/LのS2-(灰色の丸)、最大12,700mg/LのS2-(白丸)を添加した後の生体触媒としてのMethanothermus fervidusを使用したメタン生成の結果。初期pH値が示されている。最初のメタン生成を100%に設定し、その後の値はこの値に正規化した。グラフの所定の時間における各測定ポイントは丸で示されており、1回の繰り返しの値または2回の独立した繰り返しの平均値を表す。データは、pH調節が実施された場合の汚染物質(NaS)の添加後の培養物の代謝活性に関する驚くべき性能と、pH調節が実施されていない場合の明らかな性能低下の両方を示している。
図8】第1のpH値(pH<7.2)における、及び第1のpH値よりも高いアルカリ性の第2のpH値(pH<7.45)にpHを変化させた後の、Methanobrevibacter arboriphilus培養物の平均CO2変換率。
【0129】
以下の実施例は、意図された通りに記載された方法を実行可能な方法を例示しており、本発明を前記実施例に限定することを意図するものではない。
【実施例
【0130】
実施例1:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用する標準的なメタン生成プロセスに対する硫化水素の影響のシミュレーション
実験の開始時、メタン生成古細菌(Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物)を使用したバイオメタン生成プロセスは、一定の性能条件であった(10~12g/Lの安定したバイオマス濃度及び約40LcH4/Lreactor/日の体積当たりのメタン生成量)。このような標準条件下では、供給ガスの投入量(H及びCO)、メタン生成古細菌(生体触媒)のバイオマス、及びpH値(pH8.0~8.5-溶解しているCOの量に依存)は安定であった。
【0131】
規定の時点で実験を開始するために(図1の189時間の実行時間を参照)、供給される水素ガスと二酸化炭素ガスの中に2000ppmのHSを連続的に添加した。最初は、メタンの変換率は60ppmのHSを添加したときに見込まれるレベルであったものの(約90%の変換率)、2000ppmのHSを添加してから192時間以内に検出限界未満の値まで低下した。また、培養物は、2000ppmのHSの添加後に黒色にもなった。これは、培地成分であるニッケル、鉄、及びコバルトについて知られている非溶解性の金属-硫化物錯体の形成を示唆している。
【0132】
したがって、2000ppmのHSを追加すると、バイオマス濃度とメタンの体積当たりの生成量の両方が、それぞれ約50%と100%、急激かつ着実に減少する。この「急減」は、プロセスで通常許容されることが知られている値であるわずか60ppmのHSまでHS濃度を下げることによっても回復できなかった(図1の実行時間311時間)。
【0133】
仮説に拘束されるものではないが、これらの比較的大量のHSの添加は、培地に存在する特定の金属との不溶性硫化物塩の形成をもたらすと推測された。この仮説は、HSを添加したときの生体触媒懸濁液の黒色の着色によって裏付けられた。例えば、鉄は硫化物と一緒に黒い不溶性の塩を形成することが知られている。これらの金属が溶解せずに析出した場合、それらは生体触媒に利用されず、この制限は、観察されるように、生体触媒バイオマス濃度の低下及びメタン生成の生産性の完全な喪失の影響を引き起こすことになる。
【0134】
実施例2:pH調節により、Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物の使用において最大24000mg/Lの高濃度の硫化物(S2-)が許容可能になる。
図2には、H還元(または変換)において測定された、本発明の方法によるMethanothermobacter termaotofripusの培養物のメタン生成活性を報告するグラフが示されている。5つの実験の結果がグラフで報告されており、これらは表の1~5に対応しており、いずれも右側に示されている凡例の記号によって識別される。
【0135】
最初の2つの実験では、本発明の方法に記載の枠内で、pH調節しながら、12000mg/Lの濃度の硫化物(S2-)がNaSの形態で培養物に投与される。グラフでは、前記12000mg/Lの濃度の硫化物の存在下でHの高い変換率が達成され、そのような結果が実験期間中に確実に維持されていることが分かる。
【0136】
実験3は、24000mg/Lの硫化物(S2-)をpH調節なしで培養物に投与した際のHの変換の結果を示している。培養物のpHは高アルカリ性側(>12)に移動し、変換率は劇的に低下し、その後、正常化に向けてゆっくりと上昇する。
【0137】
実験4及び5は、24000mg/Lの硫化物(S2-)をpH調節ありで培養物に投与した際のHの変換の結果を示している。培養物のpHは、本発明の方法で説明した枠内の値で活性に維持され、実験期間中、前記24000mg/Lの濃度の硫化物の存在下で、予想外かつ驚くほど高いH変換率及び培養物の安定した継続的な性能が得られる。
【0138】
実験3の結果と実験4及び5の結果との比較から、本発明の方法に従ってpH調節を受ける培養物は、メタン生成プロセスの性能または連続性を失うことなく高濃度の硫化物に耐えることができるだけではなく、それ自体の性能も改善できると推測することができる。
【0139】
実施例3:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物の使用においてpH値を調節することによるプロセスの改善
Sの添加後に試験設定でメタン生成プロセスの性能を維持するために、本発明者らは、pH値を効果的に制御する追加の処理工程を導入し、それによってプロセス全体で約7のpHを確実に得られるようにした。Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用するこれらのプロセス条件下では、HS及びS2-の形成ははるかに少ないことが判明し、不溶性塩の形成も減少したようであった。
【0140】
このために、プロセスの培養物(実施例1の実験設定の後)を新鮮な培地で1:2に希釈した(図1の実行時間381時間)。希釈法はプロセスを完全に再開せずに生体触媒懸濁液中の不要な成分(以前に析出した金属塩など)の濃度を下げる簡単な方法であることから、この実験では希釈法を使用した。更に、pH値は7(約±0.3)の範囲に設定した。この開始段階では、供給されたHSは60ppmのままであった。
【0141】
希釈されてpHが安定した培養条件下で、生体触媒培養物はメタン生産性とバイオマス生産の両方を再開した(図1;実行時間450時間)。
【0142】
実行時間501時間の時点で、HSの供給を再度2000ppmに設定した。新しいpH設定により、培養性能と増殖に対するHS添加の以前に観察された負の影響を解決することができた。
【0143】
約500時間から630時間の間のpH変動は、pH投与量を手動で調節する必要があり、pH7を維持するのに十分な新しい投与率を最初に決定する必要があったためである。pHを制御する塩基の供給が不十分であると、pH値が約pH6のpH値まで低下し、これもメタン生産性の喪失を示した。
【0144】
実施例4:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物の使用した最大16000ppmのHS濃度での硫化水素耐性
実施例3によるpH制御戦略を用いると、例えば最大16000ppmのはるかに高い濃度のHSも試験系に連続的に添加し、バイオメタン生成プロセスに供給される水素及び二酸化炭素ガスと一緒に供給することができた。
【0145】
このため、Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物における初期のメタン変換率は、60ppmのHSを添加したときに見込まれるレベルで安定であったものの(約90%の変換率)、2000ppmのHSを添加してから192時間以内に検出限界未満の値まで低下した。
【0146】
高レベルのHSの存在下でのメタン生成は、発明者らがプロセスを再開し、手動で培養物のpH値(通常は8~8.5)を少なくとも1のlog下げて約7のpH値にしたときにのみ安定化した。
【0147】
この変更により、驚くべきことに、メタンの生産性に関連する変化なしに、最大16000ppmのHSを添加してメタン生成プロセスを実行することができた。
【0148】
実施例5:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用した追加の酸素の影響下でのメタン生成プロセスの硫化水素耐性
実施例4による結果を、最大12000ppmのHSが添加されたMethanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用した実験設定で再現した。更に、この実験では、HSの添加に加えてOを、1000ppm/日の工程で、最終濃度の5000及び7000ppm/日まで添加した。
【0149】
SとOの同時添加は、変換効率に有意な影響を示さなかった(90%のまま)。この結果は基準であり、メタン生成プロセスにおいて「天然の」または少なくとも「処理された」地熱ガスを使用する場合であっても、本発明によるpH制御の予想外の利点をうまく証明している。
【0150】
実施例6:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用する、前処理された地熱ガスを用いたメタン生成プロセス
地熱ガスの未処理の非凝縮性フラクションには、典型的には公にされている30000ppmのHSの最大10倍の範囲で、非常に多量のHSが含まれている場合がある。一部の産業環境では、いわゆるSulfixプロセス(例えばアイスランドのHellisheidi地熱発電所)の未処理の地熱ガスを前処理することにより、これらの大量が30000ppmに減少するため、この実験設定では、前処理したガスをMethanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用する実験に使用した。このガスは「処理済み地熱ガス」と呼ばれる。
【0151】
なお、処理された地熱ガスは、典型的には最大約2%の濃度の酸素(O)を含むことに留意すべきである。これはコンプレッサーによって生じる状況であり、通常はメタン生成古細菌の自然環境の一部ではない。
【0152】
このような高いHSまたはOレベル、特に両方の組み合わせの長期的な影響は、これまで体系的に調査されたことはなかった。しかしながら、これらのパラメータに対する本発明によるメタン生成プロセスの許容度は、メタン生成のための処理された地熱ガスの非凝縮性フラクションに存在する水素(H)及び二酸化炭素(CO)の使用を可能にするための前提条件である。
【0153】
処理された地熱ガスの典型的な組成を表1に示す:
【表1】
【0154】
このプロセスを、培養を開始するために純粋なCOと電解Hとを使用して開始した後、地熱ガスに3日間切り替えた。続いて、「純粋な」COを処理済み地熱ガスからのCOに置き換え、それに応じて流量を調整し、その結果0.4L/分の総入口流量と4.3:1の化学量論比を維持した。その結果、処理済み地熱ガスの流量は約0.065L/分のCO流量に相当する0.125L/分であった(処理された地熱ガス中で53%のCO含有量)。追加の電解Hで希釈することにより、入口におけるHS、O、及びNなどの他のガスはそれぞれ0.6体積%、0.4体積%、及び2.4体積%であった(図4)。図4に示されているように、COから処理済み地熱ガスへの切り替えにより、COからCHへの変換率が98%から87%までわずかに低下した。これは数時間以内にすぐに回復し、再度95%を超える変換率になった。
【0155】
実施例7:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物のみを使用する、処理済み地熱ガスを用いたメタン生成プロセス
電解Hの添加を完全に止めた実験が特に成功したため、ここでは特に1つの試験について言及する必要がある。
【0156】
このために、処理された地熱ガスのみに基づいてMethanothermobacter thermoutotrophicusの培養物を使用して上述したプロセスを行った。これにより、(処理された)地熱ガスのみに基づいて、電解槽を設置せずにメタン生成プロセスを実行することができた。
【0157】
処理された地熱ガスは約0.67:1のH:CO比率を有していた。したがって多くの場合考えられている最適な比率である4:1をはるかに下回っていた。結果として不完全なCOの変換が予想された。しかしながら、pH制御をするように構成したプロセスは、前処理されたガスのみで非常にうまく実行できた。
【0158】
「総」CO変換率は約13.6%であった。これは、この化学量論を考慮すると、理論上の最大変換率(約16.2%)の約80%に相当する。この非常に驚くべき効果は、処理された地熱ガスのみがプロセス流として使用された場合であってもメタン生成プロセスがうまく機能することを実証した(図5)。
【0159】
実施例8:Methanobrevibacter arboriphilusの培養物を使用した、高濃度の硫化物でのメタン生成
図6に、H還元(または変換)で測定された、本発明のpH制御及び調節方法を適用する場合と適用しない場合のMethanobrevibacter arboriphilusの培養物のメタン生成活性を報告する3つのグラフが示されている。3つの異なる硫化物濃度を試験した。それぞれが単一のグラフを表している。培養物の平均光学密度(OD610)は3~5であった。
【0160】
1つ目の実験(黒丸)では、本発明の方法に記載の枠内で、24mg/Lの濃度の硫化物(S2-)を、NaSの形態でMethanobacteria種の培養物に投与した。図6の対応するグラフから、初期pH値7.2に調節された前記24mg/Lの硫化物濃度の存在下で高いメタン生成が実現し、そのような結果は実験期間にわたって確実に維持されることが分かる。
【0161】
5倍高い濃度の121mg/Lの硫化物を投与し、初期pH値を約7.2でpH調節した場合、2つ目の実験(灰色の丸)でMethanobrevibacter arboriphilusの培養物を使用して同様の結果が観察された。これらの条件では、予想外にかつ驚くほど高いメタン生成と、121mg/Lの硫化物の前記濃度の存在下での培養物の継続的な性能が得られた。
【0162】
3つ目の実験では、pHを調節を行わずにそれぞれ12,700mg/Lの硫化物を培養物に投与した場合のメタン生成を分析した。図6は、8.7の初期pH値、すなわちpH値9付近における結果を示している(白丸を参照)。pH調節なしのこの状況では、初期pHが9.0を超えるpH値まで増加し、その結果実験期間中にメタン生成が劇的に低下した。
【0163】
実施例9:Methanothermus fervidusの培養物を使用した、高濃度の硫化物でのメタン生成
図6と同様に、図7には、H還元(または変換)で測定された、本発明のpH制御及び調節方法を適用する場合と適用しない場合のMethanothermus fervidusの培養物のメタン生成活性を報告する3つのグラフが示されている。3つの異なる硫化物濃度を試験した。それぞれが単一のグラフを表している。培養物の平均光学密度(OD610)は1.5~2.5であった。
【0164】
24mg/Lの硫化物(S2-)の濃度を示す1つ目の実験(黒丸)と121mg/Lの硫化物(S2-)の濃度を示す2つ目の実験(灰色の丸)の結果は、図7から分かるように、Methanobrevibacter arboriphilusを使用した場合、同様な結果を示した。すなわち、これらの硫化物濃度により高いメタン生成が得られ、そのような結果は実験期間中に確実に維持される。
【0165】
12,700mg/Lの硫化物をpH調節なしで培養物にそれぞれ投与した場合のメタン生成を分析した3つ目の実験では、Methanobrevibacter arboriphilusの培養物を使用した3つ目の実験の場合と同様の結果が得られた。図7に結果が示されている(白丸を参照)。pH調節なしのこの状況では、8.7の初期pHが約9.0を超えるpH値まで増加し、その結果実験期間中にメタン生成が劇的に低下した。
【0166】
実験1及び2の結果と、Methanobrevibacter arborifiluls及びMethanothermus fervidusの実験3の結果との比較から、本発明の方法に従ってpH調節された2つの別の異なる微生物属の培養物は、メタン生成プロセスの性能または継続性を損なうことなしに、高濃度の硫化物に一貫して耐えることが可能であると推測できる。
【0167】
実施例10:改良された培養方法
メタン生成を更に改善する試みにおいて、本発明者らは、メタン生成微生物の培養技術も改良した。簡潔にいうと、Methanobrevibacter arboriphilusの培養物を、7.2以下のpH(平均7.1)でおおよそ400時間、安定した条件で培養した。これらの条件下で、23%の平均(CO)変換率が観察された。
【0168】
この最初の培養開始後、常に7.45を超えるようにpHを増加させた(平均7.6)。経時的なメタン生成に対する驚くべき効果が図8に示されている。このpHをpHを上げる方向へ変化させると、平均(CO)変換率が35%になり、その結果、予期しなかったことには、有利なことにそれぞれのより低いpH条件よりも約50%高く平均メタン生成率が改善された。
【0169】
Methanobrevibacter arboriphilus培養物を最初に6.5以下のpHの安定した条件で増殖させた同様の実験では、pHを常に7.45を超えるように変化させた後、同等の予期しなかった有益なメタン生成の増加が示された(データ記載なし)。
【0170】
これらの実験から、本発明の発明者らは、理論に拘束されるものではないが、従来技術の知識からの予想に反して、異なるMethanobacteria種について本発明の実施例で示されたように、増加したpH値への変化がメタン生成微生物の代謝及びメタン生成性能に有益な効果を有すると結論付けた。
【0171】
参考文献:
1) Maillacheruvu,K.Y.,Parkin,G.F.,Peng,C.Y.,Kuo,W.C.,Oonge,Z.I.,Lebduschka,V.,Sulfide toxicity in anaerobic systems fed sulfate and various organics,Water Environment Federation,Vol.65(2),pp.100-109(1993)
2) Koster,I.W.,Rinzema,A.,De Vegt,A.L.,Letinga,G.,Sulfite inhibition of the methanogenic activity of granular sludge at various pH-levels,Water Research,Vol.20(12),pp.1561-1567(1986)
3) O’Flaherty,V.,Mahony,T.,O’Kennedy,R.,Colleran,E.,Effect of pH on growth kinetics and sulphide toxicity thresholds of a range of methanogenic,syntrophic and sulphate-reducing bacteria,Process Biochemistry,Vol.33,Issue 5,pp.555-569(1998)
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5) Edgcomb,V.P.,Molyneaux,S.J.,Saito,M.A.,Lloyd,K.,Boer,S.,Wirsen,C.O.,Atkins,M.S.,Teske,A.,Sulfide Ameliorates Metal Toxicity for Deep-Sea Hydrothermal Vent Archaea,Appl.and Environmental Microbiol.,Vol.70,no.4,pp.2551-2555(2004)
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8) Anderson I,Djao OD,Misra M,Chertkov O,Nolan M,Lucas S,Lapidus A,Del Rio TG,Tice H,Cheng JF,Tapia R,Han C,Goodwin L,Pitluck S,Liolios K,Ivanova N,Mavromatis K,Mikhailova N,Pati A,Brambilla E,Chen A,Palaniappan K,Land M,Hauser L,Chang YJ,Jeffries CD,Sikorski J,Spring S,Rohde M,Eichinger K,Huber H,Wirth R,GokerM,Detter JC,Woyke T,Bristow J,Eisen JA,Markowitz V,Hugenholtz P,Klenk HP,Kyrpides NC.;Complete genome sequence of Methanothermus fervidus type strain(V24S);Stand Genomic Sci.2010 Nov 20;3(3):315-24
9) Stetter KO,Thomm M,Winter J,Wildgruber G,Huber H,Zillig W,Jane-Covic D,Konig H,Palm P,Wunderl S..Methanothermus fervidus,sp.nov.,a novel extremely thermophilic methanogen isolated from an icelandic hot spring.Zentralbl Bakteriol Parasitenkd Infektionskr Hyg Abt 1 Orig C2 1981;2:166-178
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2020-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.連続プロセスでメタン生成微生物を培養すること;
b.HS及び/またはOを含むCO含有ガスを準備すること
c.前記メタン生成微生物の培養物に、CO:Hが1:0.6~1:5である化学量論比で追加のHを供給すること;
d.適切な量の適切な酸及び/または塩基を添加することによって、pH10以下の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること;
e.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクターにおけるCO含有ガスからのメタンの製造方法。
【請求項2】
前記メタン生成微生物を培養する前記工程が、
i.窒素源及び塩を供給する適切な液体培地の中に前記メタン生成微生物を保持すること;
ii.前記培養条件を嫌気性または通性嫌気性に保持すること;
iii.任意選択により場合によって、前記培養物を撹拌すること;
iv.前記培養物から連続的に代謝水を除去すること;及び
v.温度を大気圧で32℃~90℃または32℃~85℃の範囲に保つこと;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタン生成微生物が、好ましくはNaS及び/またはアンモニウムの形態で、好ましくはNHOHの形態で、追加的に添加された硫化物の存在下で培養されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メタン生成微生物が、少なくとも14かつ最大60のOD610として測定される、少なくとも2.5g/Lかつ最大20g/Lの前記培養物中の前記微生物の乾燥重量に相当する前記培養物中の微生物の密度まで培養されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量の適切な酸及び/もしくは塩基を添加することによってpH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること;
たは前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量のNaOHもしくはNHOH及びHClもしくはHSOを前記培養物に添加することによって、前記所定のpH値を維持するように連続的に安定化もしくは調節されること;
を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のメタン生成微生物が、Methanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、またはこれらの混合からなる古細菌またはarchaebacteriaの群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記メタン生成微生物が嫌気性及び/または酸素耐性であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程iの前記適切な液体培地が適度な塩分環境であり、塩化物アニオンの濃度が12mmol/L~300mmol/Lの範囲であること;及び/または
NaClの濃度が0.4g/L~12g/Lの範囲、好ましくは3g/L~6g/Lの範囲、より好ましくは約5.6g/Lの範囲であること;
を特徴とする、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記メタン生成微生物が、自然に選択されたまたは天然に適応した微生物、適応した好塩性微生物、及び遺伝子操作された微生物の群から選択され、これらは全て適度な塩分環境で生存及び繁殖することが可能であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記CO含有ガスが、前記メタン生成のための炭素源であり、COを多く含む排出物及び/または廃ガス排出物由来であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記CO含有ガスが少なくとも20%のCOを含む、及び/または前記CO含有ガスが最大5.000mg/LのHSを含む、及び/または前記CO含有ガスが5%以下のOを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記手順全体または少なくとも1つの工程が、大気圧条件下または最大16barもしくは最大420barの加圧条件下で行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記回収されたメタンが、固体状汚染物質、固体粒子、懸濁液中の固体状汚染物質、グリース、または気体状汚染物質揮発性有機化合物(VOC)、及びその他の微量汚染物質を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
a.前記メタン生成微生物の迅速な複製を誘導するために、pH5.5~7.0の範囲の第1のpHで、CO及びHを用いて、メタン生成微生物を培養すること;続いて
b.工程aのメタン生成と比較してメタン生成を増加させるために、pH7.1~10の範囲の第2のpHで前記微生物を連続培養すること;
c.所定の値になるように連続的に前記pH値を制御及び調節すること;
d.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクター内でのCOまたはCO含有ガスからのメタンの製造方法。
【国際調査報告】