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特表2022-506773犠牲部材を使用して、オープンキャビティヒューズを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】犠牲部材を使用して、オープンキャビティヒューズを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 69/02 20060101AFI20220107BHJP
   H01H 85/08 20060101ALI20220107BHJP
   H01H 85/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01H69/02
H01H85/08
H01H85/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524363
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 US2019062477
(87)【国際公開番号】W WO2020106885
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】16/197,788
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エンリケス、 アルバート
(72)【発明者】
【氏名】タベル、ヴィクター オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ロシオス、リリー
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BB08
5G502BB09
5G502BB12
5G502BC04
5G502BC05
5G502BD10
5G502JJ01
(57)【要約】
【解決手段】効率的な製造収率およびヒューズ信頼性を提供する、オープンキャビティ、空気中ワイヤーヒューズ(wire-in-air fuse)を組み立てる方法であって、一般に製造中に発生する機械的破損およびネッキングのトラブルを防止するように、製造プロセス中に可溶エレメントを犠牲部材にコイル状に巻きつけるか、編み上げるか、または巻き付けて、可溶エレメントに支持を提供するステップを含む、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンキャビティヒューズを製造する方法であって、
前記オープンキャビティヒューズの第1ボディ部分を提供するステップと;
犠牲部材によって支持された可溶エレメントを提供するステップであって、前記可溶エレメントおよび犠牲部材は各々、その対向する両端で前記第1ボディ部分によって支持され、オープンキャビティを橋渡しする、ステップと;
前記犠牲部材を除去するステップと;
前記第1ボディ部分と一緒に結合される場合、前記オープンキャビティ内に前記可溶エレメントを封止する第2ボディ部分を提供するステップと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記可溶エレメントは、前記犠牲部材にコイル状に巻きつけられるか、編み上げられるか、または撚られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記犠牲部材は、溶解、エッチング、または融除によって除去される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記犠牲部材は、可溶性糸、プラスチック、ポリマー、または金属を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記オープンキャビティヒューズは、積層フューズであり、前記方法は、
中間下部層および中間上部層を提供するステップであって、前記中間下部層および中間上部層の各々には、その中央部分中に形成される貫通穴が提供される、ステップと;
前記可溶エレメントが前記中間下部層中に画定された前記貫通穴を横断するように、前記可溶エレメントおよび前記犠牲部材を前記中間下部層に横切って糸通しする、ステップと;
前記中間下部層および前記中間上部層を積層するステップと;
前記中間上部層に隣接して配置された上部層と、前記中間下部層に隣接して配置された下部層と、を提供するステップと;
前記上部層を前記中間上部層に、および前記下部層を前記中間下部層に、積層するステップと;
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記中間上部層中で前記中間下部層を積層するステップは、
前記中間下部層と前記中間上部層との間に1つ以上のエポキシ層を提供するステップと;
前記中間下部層および前記中間上部層を一緒に加圧し、その間の前記エポキシ層が重合するまで加熱するステップと;
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上部層を前記中間上部層に積層するステップは、その間にエポキシ層を提供し、前記上部層および前記中間上部層を一緒に加圧し、その間の前記エポキシ層が重合するまで加熱するステップを含み、
下部層を前記中間下部層に積層するステップは、その間にエポキシ層を提供し、前記下部層および前記中間下部層を一緒に加圧し、その間の前記エポキシ層が重合するまで加熱するステップを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記上部層を前記中間上部層に積層するステップ、および前記下部層を前記中間下部層に積層するステップは、一緒に発生する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記上部層、前記中間上部層、前記中間下部層、および前記下部層は、絶縁材料の実質的に長方形のブロックを含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記絶縁材料はFR-4である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記上部層、前記中間上部層、前記中間下部層、および前記下部層は各々、その対向する両端上に画定されるキャスタレーション(castellation)を備える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
絶縁層の間に配置された前記エポキシ層は、前記中間上部層および前記中間下部層の中央部分に形成された前記貫通穴と整列する、その中央部分に形成された貫通穴と、その対向する両端上に画定されたキャスタレーションと、を備えるシートの形状である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記中間上部層中、前記中間下部層中に画定された前記貫通穴は、前記可溶エレメントが貫通横断するエアーギャップを形成する、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記上部層および前記下部層は、前記エアーギャップに封止を提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記可溶エレメントは、前記中間下部層中の前記中間上部層のエッジから、各層の、および各層上に画定されたキャスタレーションの中に外側に延伸する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記可溶エレメントは、銀メッキの中に白金コアを有するウォラストンワイヤー(Wollaston wire)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記上部層が前記中間上部層に積層され、前記下部層が前記中間下部層に積層される前に、前記エアーギャップ内の前記可溶エレメントをエッチングして、前記銀メッキを除去し、前記犠牲部材を溶解するステップ
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記キャスタレーション内の前記可溶エレメントをエッチングして、前記銀メッキを除去し、前記犠牲部材を溶解するステップ
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記可溶エレメントは、硝酸を使用してエッチングされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
積層された前記絶縁層の対向する両端でキャスタレーション領域をメタライズして、前記可溶エレメントに電気的に接続される電気導電性端子を形成するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記キャスタレーションされたエリアは、積層された前記絶縁層のキャスタレーション領域に導電性材料をメッキするか、または印刷することでメタライズされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記導電性材料は、銅、スズ、およびニッケルを含むグループから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記オープンキャビティヒューズは、分割ボディ型ヒューズ(split-body fuse)であり、前記方法は、
ベースボディ部分の対向する両端に端子を取り付けるステップと;
前記可溶エレメントおよび犠牲部材の各端を端子に固定するステップと;
前記犠牲部材を除去するステップと;
キャップを前記ベースボディ部分に取り付けて、前記オープンキャビティをスチールするステップと;
をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
各端子は、圧着タイプ端子またははんだ付けタイプ端子を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して回路保護デバイスの分野に関し、より具体的には小型の積層フューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの回路保護適用業務において、「遮断容量(breaking capacity)」の高い小型ヒューズを採用することが望ましい。遮断容量(一般に「遮断容量(interrupting capacity)」とも呼ばれる)とは、破壊されたり、容認できないような持続時間の電気アークを発生させることなしにヒューズが遮断できる電流を示す。現在、高い遮断容量を示し、小型の適用業務に好適なヒューズも使用可能であるが、そのようなヒューズは比較的高価である。それゆえ、小型の回路保護の適用業務に好適な低価格で高遮断容量ヒューズを提供することが望ましい。
【0003】
たとえば積層フューズまたは分割ボディ型ヒューズ(split body fuse)などのオープンキャビティを備えるヒューズは、前の段落で記述された目的にとって有益であり、低価格で製造され得、小型の回路保護適用業務に好適である。しかし、製造プロセス中に糸通しプロセスで誘発される引張り応力、および可溶エレメントとして使用される細ワイヤーの弱さによって、可溶エレメントワイヤーの損傷が起こり得ることが観察されている。
【0004】
一例として、積層フューズを製造するときに、積層プロセス中に熱が加えられる場合、FR-4基板と可溶エレメントの白金コアとの熱膨張係数の差によって損傷が起こり得る。この損傷は、エレメントワイヤーが機械的に破断する結果になり得、その結果、出来形としてオープンヒューズになったり、またはヒューズのエレメントワイヤーが、中間部に極端なネッキングを見せることになり得、その結果、寿命の短いヒューズまたは低い遮断容量で遮断され得るヒューズになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、エレメントワイヤーの損傷を引き起こし得る問題を防止するオープンキャビティヒューズの製造プロセスを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要は、本発明に関連する概念を簡略化して紹介するためであり、その概念は、以下の詳細な説明でさらに記述される。この概要は、請求の主題について主要な特徴または本質的な特徴を特定しようと意図するものでもなく、請求の主題の範囲を決定する上での援助を意図するものでもない。
【0007】
小型の高遮断容量ヒューズの製造方法が、本開示に従って提供される。様々な実施形態において、ヒューズは、積層タイプまたは分割ボディタイプであり得、製造プロセス中にヒューズエレメントを支持するため犠牲部材を利用する。
【0008】
積層フューズの例示的実施形態は、上部絶縁層、2つ以上の中間絶縁層、および下部絶縁層(これらは、上下方向に積み重ねられかつ接合されるように配列され、その間には、エポキシ層を挟んでいる)を含み得る。少なくとも2つの中間層は、それを貫通して形成された穴を備え得、この穴は、ヒューズ内のエアーギャップを画定する。第1導電性端子は、ヒューズの第1端に形成され得、第2導電性端子は、ヒューズの第2端に形成され得る。少なくとも1つの可溶エレメントは、第1端子を第2端子に接続させ得、これによりその間に電気導電性の経路を設ける。少なくとも1つの可溶エレメントの一部は、少なくとも2つの中間絶縁層中に穴によって画定されたエアーギャップを通過し得る。
【0009】
ヒューズの製造中に、可溶エレメントは、犠牲部材にコイル状に巻きつけられるか、編み上げられるか、または撚られ得、この犠牲部材は、たとえば製造中に可溶エレメントに安定性と支持を与える可溶性糸、ある長さのプラスチック、ある長さのポリマー、またはある長さの犠牲ワイヤーであり得る。さらに、可溶エレメントのコイル巻きは、可溶エレメントの伸張および収縮を可能にし、積層プロセス中のエレメントの白金コアとFR-4基板との熱膨張係数の差による損傷を引き起こしにくくする。
【0010】
分割ボディ型ヒューズについて、ヒューズエレメントは、製造プロセス中に、前述のように犠牲部材によって支持され得る。非コイル状ヒューズエレメントを備える高容量ヒューズに特に適用可能である一実施形態において、ヒューズエレメントおよび犠牲部材は、圧着またははんだ付けによって両端で端子に固定される前に、互いに撚られ得る。コイル状ヒューズエレメントを備える低容量ヒューズに特に適用可能である別の実施形態において、ヒューズエレメントは、両端で端子に固定することに先立って、犠牲部材にコイル状に巻きつけられ得る。いずれかの実施形態において、犠牲部材は、分割ボディ型ヒューズにキャップを載せることに先立って、ヒューズエレメントを損傷することなく除去され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術の製造プロセスで製造された場合によく見られる「ネッキング」のトラブルがあるヒューズエレメントの図示である。
図2】本開示の例示的実施形態に従って製造された高遮断容量ヒューズを図示する分解図を示す。
図3図2の高遮断容量ヒューズを組み立てた形態で図示する斜視図である。
図4図2および図3に示された高遮断容量ヒューの製造で使用される製造プロセスのステップを示すフローチャートである。
図5】糸通しに先立って犠牲部材に、この場合は可溶性糸に巻回されたヒューズエレメントを示す。
図6】中間層の加圧後にエッチングされたキャスタレーション(castellation)内に露出したヒューズエレメントの銀ワイヤー外皮を示す画像である。
図7】ヒューズのメインキャビティにのみ選択的にエッチングされたヒューズエレメントの銀ワイヤー外皮を示す画像である。
図8】組み立て後のヒューズエレメントの所望の向きを示すヒューズの上面図の図である。
図9】分割ボディ型ヒューズの製造に関する製造ステップを示し、ここで犠牲部材は、組み立て中にヒューズエレメントを支持するため、それにコイル状に巻きつけられたヒューズエレメントを持つ。
図10】分割ボディ型ヒューズの製造を示す図であり、ここで犠牲部材およびヒューズエレメントは、互いに撚られ、圧着またははんだ付けにより端部端子に固定される。
図11】同図Aは、エッチングする前の圧着式端子、およびはんだ付けタイプ端子の両方を示し、端子によって両端に固定された犠牲部材およびヒューズエレメントの両方を示す。同図Bは、犠牲部材がエッチングされた後の残りのヒューズエレメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はここで、添付図面を参照してより詳細に記載され、その添付図面では本発明の好ましい実施形態が示される。しかし本発明は、多くの異なる形式において具体化され得、ここに記述された実施形態に限定されると解釈されてはならない。むしろこのような実施形態は、本開示が包括的かつ完全であるように用意されており、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために用意されている。図面において、全体を通して同じ番号は、同じエレメントを指す。
【0013】
本発明の様々な実施形態は概して、オープンキャビティヒューズの製造プロセス中に犠牲部材で可溶エレメントを支持して可溶エレメントへの損傷を防止することを含む。犠牲部材はたとえば、可溶性糸、プラスチック、ポリマー、または金属であり得る。可溶エレメントは、犠牲部材に撚られるか、編み上げられるか、またはコイル状に巻きつけられ得る。次に犠牲部材は、オープンキャビティを封止する前に犠牲部材を溶解するか、エッチングするか、または融除することで除去される。
【0014】
図2および図3を参照すると、本開示に従って製造された高遮断容量積層ヒューズ(ヒューズ10)の第1例示的実施形態が示される。ヒューズ10は、図2において分解されて示され、図3で組み立て終わった構成で示される。一実施形態において、ヒューズ10は、上下方向に積み重ねられた構成において一緒に積層された、上部絶縁層12、中間上部絶縁層16、中間下部絶縁層24、および下部絶縁層28を含み得る。一実施形態において、絶縁層12、16、24、および28は、実質的に長方形状であり、FR-4、ガラス、セラミック、プラスチックなどを含むがそれに限定されない任意の好適な電気絶縁材料から形成され得る。絶縁層12、16、24、および28は、積層の層の間にエポキシを使用して積層され得、エポキシは、エポキシシート14、18、22、および28の形状であることが好ましい。可溶エレメント20は、中間上部絶縁層16と中間下部絶縁層24との間に配置されることが好ましい。
【0015】
図3に示すように組み立てられた場合、層12、14、24、および28は、エポキシ、プリプレグを用いて、あるいは他の非導電性接着剤またはファスナーを用いて、相互に平らに接合され得る。概して、積層プロセスは、熱硬化性エポキシを間に挟んで1つの絶縁層を隣接する絶縁層に圧着するステップと、アセンブリを加熱してエポキシを重合させるステップと、を含む。ヒューズ10の絶縁層12、14、24、および28、ならびにエポキシ層14、18、22、および26は、図3に示すように端子30および32と組み立てたヒューズ10を提供するため、対向する長手方向の両端に穴あけなどによって形成され得るキャスタレーション44、46を備え得る。キャスタレーション領域44および46ならびに層の長手方向の両端は、組み立てたヒューズの端子30および32とその他回路エレメントとの間の電気的接続を円滑にするため、フォトリソグラフィプロセスまたは他のメッキ手段になどよって、銅または他の電気導電性材料でメッキされ得る。
【0016】
図2の分解図で示すように、中間上部絶縁層16および中間下部絶縁層24にはそれぞれ、その中央部分に形成された貫通穴35および38が設けられ得、この貫通穴は、組み立てヒューズ10においてオープンキャビティ40を画定し、そのオープンキャビティは、図2に示される分解図の各層、および図8に示される組み立てヒューズの上面図で示され得る。貫通穴34および36は、円形状を備えて示されるが、貫通穴35および38は、楕円、長方形、三角形、または不規則形状など、多様な他の形状を備えて形成され得ると考えられる。上部絶縁層12および下部絶縁層28は、該上部層12および該下部層28に貫通穴が設けられていないことを除いて、中間層16および24と同一であり、その結果、上部層12および下部層28は、組み立てヒューズ10中のオープンキャビティ40に封止を提供する。好ましい実施形態において、すべての絶縁層12、16、24、および28は、同じ厚さである。あるいは上部層12および下部層28は、同じ厚さであり得、他方中間層16および24は同じ厚さであり得、上部層12および下部層28の厚さとは異なり得るが、これは重要ではない。あるいは中間層16および24は、上部層12および下部層28より薄くまたは厚くあり得ることが考えられる。
【0017】
エポキシシート14、18、22、および26にも、それぞれ貫通穴34、36、37および39が設けられ得、この貫通穴は、それぞれ中間上部層16および中間下部層24に配置された貫通穴35および38と整列し、同じ形状である。また、エポキシシートには、絶縁層12、16、24、および28のキャスタレーション端と一致するキャスタレーション端が設けられ得る。
【0018】
ヒューズ10は、中間上部絶縁層16と中間下部絶縁層24との中間に配置された可溶エレメント20を含み得、この可溶エレメントは、可溶エレメント20の一部が様々な層中の貫通穴34~39によって形成されたオープンキャビティ40を貫通するように配列され得る。加えて可溶エレメント20の対向する両端は、各層の両端に形成されたキャスタレーション44、46の中に外側に延伸して、組み立てヒューズの端子30および32との電気的接続を円滑にし得る。それによって可溶エレメント20は、端子30および32間に電気導電性の経路を提供する。
【0019】
可溶エレメント20の中間部分41は「弱点部」であり、この弱点部は、ヒューズ10に過電流状態が発生した場合に予想通り分離する。中間部分41は、空気で完全に囲まれ、層12、16、24、および28を形成する絶縁材料に接触しないか、またはそれに近接していないため、過電流状態の際に中間部分40中に形成される電気アークは、燃料(つまり周囲の材料)を奪われるが、その燃料が奪われていなければアークを維持し得るのである。それによってアークの時間は減少し、その結果、これはヒューズ10の遮断容量を増加させる。
【0020】
可溶エレメント20は、ニッケルまたは白金など、任意の好適な電気導電性材料から形成され得、エレメントに緩みを設けて応力緩和を形成するため、編み上げワイヤー、リボン、らせん状に巻き取られたり、コイル状に巻きつけられているワイヤー、または他の任意の好適な構造または構成として形成され得る。当業者であれば認識するように、可溶エレメント20の特定のサイズ、構成、および導電性材料はすべて、ヒューズ10の定格に寄与し得る。本発明の好ましい実施形態において、可溶エレメント20は、ある長さのウォラストンワイヤー(Wollaston wire)を含み得る。
【0021】
端子30および32は、キャスタレーション上にメタライゼーションによって形成される。メタライゼーションは、キャスタレーション上に導電性材料(たとえば銅、スズ、ニッケルなど)をメッキする、印刷するなどによって作成され得る。さらに端子30および32は、導電性材料(たとえば銅、スズ、ニッケルなど)のメッキ、浸漬などによってキャスタレーションに部分的または十分に充填することで形成され得る。いくつかの例において、端子30および32は、シンギュレーション(singulation)プロセス中にヒューズエレメント20が損傷することを防止するため、シンギュレーションに先立って形成され得る。
【0022】
図4は、本発明の好ましい実施形態に従って積層フューズの製造に使用されるプロセス400のフローチャートである。402で、可溶エレメント20は、ある長さの犠牲部材21にコイル状に巻きつけられ、この犠牲部材はたとえば、図5に示すように可溶性糸、または図9に示すように犠牲ワイヤーであり得る。ステップ404で可溶エレメント20および犠牲部材21は、上にエポキシシート22が配置されている中間下部絶縁層24に横切って糸通しされる。好ましくは、可溶エレメント20および犠牲部材21は、エポキシシート18と22との中間に配置される。可溶エレメント20および犠牲部材21を中間下部絶縁層24に横切って糸通し終えたら、該可溶エレメントおよび該犠牲部材は、ステップ406を見越して所定の位置に保持される。ステップ406で、中間下部絶縁層24および中間上部絶縁層16は、その間のエポキシシートが重合するまでアセンブリを加圧し、加熱することで、一緒に積層される。それによってコイル状可溶エレメント20および犠牲部材21は、中間下部層24と中間上部層16との間に捕捉される。ステップ408で、可溶エレメント20は、エッチングされて犠牲部材21を除去する。加えてヒューズエレメント20がウォラストンワイヤーである事例では、ワイヤーの外側の銀コーティングは、また、エッチング液によって除去され得、それによって内側の白金ワイヤーを露出させながら、コイル状/緩んだ形状を保持する。好ましい実施形態において、エッチングは、オープンキャビティ40の内、および層のエッジに位置するキャスタレーション内の両方で発生する。この実施形態は、図6で示される。代替実施形態において、オープンキャビティ40内に位置する可溶エレメント20の部分のみエッチングされ;キャスタレーション中に位置する可溶エレメント20の部分は、エッチングされずに残る。この実施形態は、図7で示される。また、可溶エレメント20から銀コーティングをエッチングするプロセスは、結果として犠牲部材21が溶解され、その犠牲部材21にはステップ402でコイル状可溶エレメント20が巻き取られていた。犠牲部材が非導電性材料であるさらに別の実施形態において、コイル状可溶エレメント20は、完全にエッチングされずに残され得、この事例では、犠牲部材21は所定の位置に残る。好ましい実施形態において、エッチングは、硝酸を使用して達成されるが、可溶エレメント20および犠牲部材21を構成する材料によっては、他の化合物も使用され得る。ステップ410で、上部絶縁層12および下部絶縁層28はそれぞれ、アセンブリの上部および下部に加圧され、アセンブリは加熱され、それによってオープンキャビティ40を封止する。組み立てがステップ412で完了した後、端子30および32のメタライゼーションが発生する。
【0023】
可溶エレメント20を犠牲部材21にコイル状に巻きつけることは、2つの目的に役立つ。第1に図5に示すように犠牲部材21は、前述のようにステップ504の糸通しプロセス中に支持を提供して、糸通しプロセスによって可溶エレメント20に誘発された引張り応力を相殺する。絶縁層12、16、24、および28を構成するFR-4材料と、可溶エレメント20の白金コアと、の熱膨張係数に差があるため、引張り応力は、積層プロセス中に発生する加熱によって増幅される。第2に、可溶エレメント20のコイル状に巻きつけることは、組み立てプロセス中に可溶エレメント20の伸張および圧縮を可能にし、それによって、ヒューズエレメントが撚られるところにおいて、図1に示すように可溶エレメント20が機械的破断または「ネッキング」のトラブルを被る可能性を低下させる。
【0024】
図9には実施形態が示されており、そこにおいて犠牲部材21は、コイル状に巻きつけられた可溶エレメント20を備える金属ワイヤーである。犠牲部材21は、犠牲部材21の腐食剤(etching reagent)がヒューズエレメント20に影響を及ぼさない限り、任意の金属ワイヤーから構成され得る。いくつかの実施形態において、ヒューズエレメントは、ニッケルであり得る。いくつかの実施形態において、犠牲部材21はたとえば、銅亜鉛合金または銅錫合金(このような合金は、同じエッチング液を用いて溶解され得る)、銀(銀は、硝酸を用いてエッチングされ得る)、亜鉛(亜鉛は、水酸化ナトリウムを用いてエッチングされ得る)、またはアルミニウム(アルミニウムは、ケラーエッチング液(Keller's etchant)を用いてエッチングされ得る)であり得る。
【0025】
犠牲部材21の使用は、ヒューズエレメントを載せる中にヒューズエレメント20にかかる引張り応力を除去する。極細径(たとえば、30μm未満)のコイル状ヒューズエレメントは特に便利であり、細ワイヤーを困難なく加工して超低定格デバイスを製造する機会を提供する。
【0026】
図10は、分割ボディタイプのヒューズの製造プロセスを示す。分割ボディ型ヒューズのボディは、ベースボディ1002およびカバー1004で構成される。端子アセンブリ1010が示され、そこにおいてベースボディ1002は、それに取り付けられた端子またはクリップ1006を備える。1020で示すように、第1実施形態において、ヒューズエレメント20は、両端子1006間に固定された犠牲部材21にコイル状に巻きつけられて示される。1030において、犠牲部材21はエッチングされ、端子1006に固定されたヒューズエレメント20を残す。完成したヒューズ1040(カバー1004が取り付けられたベースボディ1002を有する)が示される。完成ヒューズの横断面図が1050で示される。
【0027】
図11は、本発明の第2実施形態を示し、そこにおいて犠牲部材21および20の上のヒューズは、互いに撚り合わされる。図11のAは、エッチングする前の圧着式端子、およびはんだ付けタイプ端子の両方を示し、端子によって両端に固定された犠牲部材21およびヒューズエレメント20の両方を示す。図11のBは、犠牲部材21がエッチングされた後の残りのヒューズエレメント20を示す。
【0028】
本開示において、単数であって、語「a」または「an」で始まって記載されたエレメントまたはステップは、そのような除外が明示的に記載されているのでない限り、複数のエレメントまたはステップを除外しないと理解すべきである。さらに、本発明の「一実施形態」の参照は、記載されている特徴も組み込んでいる追加実施形態の存在を除外していると解釈されることを意図するものではない。
【0029】
本発明は特定の実施形態を参照して開示されてきたが、併記された請求項に記載されているように本発明の領域および範囲から離れることなく、記載された実施形態の数多くの変更、改変、および修正が可能である。したがって、本発明は、記載された実施形態に制限されなく、以下の特許請求の言葉およびその等価物によって規定された全範囲を有することが意図されている。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】