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特表2022-506852階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法
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  • 特表-階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/08 20060101AFI20220107BHJP
   C01B 37/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C01B39/08
C01B37/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524464
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2018115720
(87)【国際公開番号】W WO2020097877
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ダンファ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジアチェン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ユンペン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA20
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA82
4G073BB05
4G073BB06
4G073BB25
4G073BB45
4G073BB48
4G073BB58
4G073BD06
4G073BD21
4G073CZ55
4G073FA15
4G073FB50
4G073FC18
4G073FC19
4G073FC25
4G073FC27
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA33
4G073GB02
4G073GB03
4G073UA02
(57)【要約】
本出願は、チタン酸系ポリエステルポリオールをチタン源とすることを特徴とする階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法を開示する。当該方法は、チタンをポリマーに結合されることによりチタンをより加水分解しにくくし、TiO2の沈殿を防止し、非骨格チタンの生成を減少させることができる。また、チタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン源として機能するとともに、合成過程でメソ孔テンプレート剤としても使用可能であるため、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、TS-1分子篩の触媒分野への応用の拡大ために重要な促進役割を果たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸系ポリエステルポリオールをチタン源として用いる、ことを特徴とする階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法。
【請求項2】
前記方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩を得る工程を含み、
前記結晶化が、水熱結晶化である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、式Iで表される化学式を有する化合物のう
ちの少なくとも1つから選ばれ、
式I
[Ti(ROx4/xn
式中、ROxは有機ポリオールR(OH)xがOH上のHを失って形成される基であり、Rは炭化水素化合物がx個の水素原子を失って形成される基のうちの1つから選ばれ、x≧2であり、
n=2~30である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式Iにおけるxが、2、3または4である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン酸エチレングリコールポリエステル、チタン酸ブタンジオールポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコールポリエステル、チタン酸グリセリンポリエステル、チタン酸1,4-ベンゼンジメタノールポリエステルのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.005~0.1、テンプレート剤:シリコン源=0.01~10、H2O:シリコン源=5~500を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.01~0.08、テンプレート剤:シリコン源=0.05~5、H2O:シリコン源=20~400を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン源は、シリカゾル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、ホワイトカーボンのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、
前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、
前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~190℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることである、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物は、エージングを経た後に結晶化し、
前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記TS-1分子篩の製造方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程a)と、
工程a)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩を得る工程b)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
22存在下での有機物の選択的酸化反応に使用される請求項1~18のいずれか一項に記載の方法により製造された階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、分子篩製造の分野に属し、階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TS-1分子篩とは、MFIトポロジーを有する微細孔質分子篩であり、その骨格構造には四面体のTi4+中心が存在するため、H22が参加する有機物の選択的酸化反応に対して良好な触媒作用があり、例えば、オレフィンのエポキシ化、フェノールのヒドロキシル化、ケトン類のアンモ酸化反応、アルカン酸化などの選択的酸化反応が挙げられる。TS-1分子篩により酸化を触媒する過程は汚染がなく、反応条件が温和であり、従来技術における汚染が重大で、反応過程が冗長であるという欠点を克服した。
【0003】
TS-1の活性と安定性に影響を与える主な要因は2つがある:1つは分子篩における骨格チタンと非骨格チタンの含有量であり、2つは分子篩の拡散性能である。前者について、チタン原子は半径が大きいため、MFI骨格に入りにくく、チタン源は加水分解し、重合して二酸化チタン沈殿を形成しやすいので、TS-1分子篩合成では六配位の非骨格チタンの生成を避けることは困難であり、非骨格チタン種の存在により、H22の効果的な分解ができず、TS-1が触媒する酸化反応に対して不利である。後者について、TS-1分子篩の微孔サイズが0.55nmしかなく、小さすぎるため、有機高分子の触媒中での輸送と拡散が大きく制限され、触媒の反応活性や使用寿命が抑制される。
【0004】
TS-1の合成はTaramassoら(US 4410501)によって最初に報告され、合成にはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をシリコン源とし、オルトチタン酸テトラエチル(TEOT)をチタン源とし、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)をテンプレート剤とし、オートクレーブの中で130~200℃で6~30日間水熱結晶化して得られた。しかし、この方法の操作は、繁雑で、条件を制御しにくく、実験再現性が悪く、また、シリコン源とチタン源の加水分解速度の差異により、大量の非骨格チタンの形成を引き起こすため、TS-1分子篩の触媒性能に影響を与えた。その後、Thangarajら(zeolite、12(1992)、943)は、オルトケイ酸テトラエチルをTPAOH水溶液中で予備加水分解し、さらに激しい撹拌下で、より加水分解速度の遅いオルトチタン酸テトラブチルのイソプロパノール溶液を徐々に添加することにより、非骨格チタンが比較的少ないTS-1分子篩を得た。これらの改良では、主にシリコン源およびチタン源の加水分解過程に対して制御を行い、シリコン源とチタン源の加水分解速度をより一致させ、非骨格チタンの形成を抑制し、TS-1分子篩における骨格チタンの含有量を高めることである。
【0005】
TS-1分子篩の拡散問題に対して、ゼオライト分子篩系にメソ孔を導入することにより、階層的細孔を有する分子篩を作製することは、よく使われる解決手段である。テンプレート剤を用いて分子篩材料の中でメソ孔或いはマクロ孔の構造を構築することは、現在の階層的細孔を有する分子篩を製造するための最も有効な方法であり、ソフトテンプレート法とハードテンプレート法が含まれる。その中、ソフトテンプレート法では、例えば、周興貴ら(CN103357432A)が、ポリエーテル型PluronicF127をメソ孔テンプレート剤として用い、乾燥ゲル法によりメソ孔ナノTS-1分子篩を合成した;張淑芬(CN102910643A)が、セチルトリメチルアンモニウムブロミドをメソ孔テンプレート剤としてチタンシリコン分子篩にメソ孔チャネルを導入した。その中、ハードテンプレート法では、例えば、陳麗華ら(CN104058423A)が、三次元秩序マクロ孔-メソ孔階層的細孔を有する炭素材料をハードテンプレートとし、ハードテンプレートの三次元秩序チャンネル内制限領域にTS-1ナノ結晶を成長させ、ハードテンプレートを除去した後に、階層的細孔を有するTS-1分子篩を製造した。李鋼ら(CN101962195A)が、多孔炭素材料の代わりに安価な糖をマクロ孔-メソ孔テンプレート剤とし、糖を含むTS-1分子篩をゾルに合成して乾燥ゲルを熱処理する過程で、糖は熱を受けて炭化脱水し、直接にハードテンプレートを形成し、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一態様によれば、TS-1分子篩の製造方法が提供され、当該方法におけるチタン酸系ポリエステルポリオールが、チタンをポリマーに結合されることによりチタンをより加水分解しにくくし、TiO2の沈殿を防止し、非骨格チタンの生成を減少させることができる。また、新規のチタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン源として機能するとともに、合成過程でメソ孔テンプレート剤としても使用可能であるため、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、TS-1分子篩の触媒分野への応用の拡大ために重要な促進役割を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法は、チタン酸系ポリエステルポリオールをチタン源として用いることを特徴とする。
【0008】
オプションとして、前記方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程を含む。
【0009】
オプションとして、前記結晶化が、水熱結晶化である。
【0010】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、式Iで表される化学式
を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
式I
[Ti(ROx4/xn
式中、ROxは有機ポリオールR(OH)xがOH上のHを失って形成される基であり、Rは炭化水素化合物がx個の水素原子を失って形成される基のうちの1つから選ばれ、x≧2である。
n=2~30である。
【0011】
オプションとして、式Iにおける前記xが、2、3または4である。
【0012】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、分子式[Ti(ROx4/xnを有する。
式中、ROxは有機ポリオールR(OH)xがOH上のHを失って形成される基であり、x≧2、好ましくは2、3、4である。
【0013】
オプションとして、式IにおけるRは炭化水素化合物がx個の水素原子を失って形成される基のうちの1つから選ばれる。
【0014】
オプションとして、式IにおけるRはC1~C8の炭化水素化合物がx個の水素原子を失って形成される基のうちの1つから選ばれる。
【0015】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン酸エチレングリコールポリエステル、チタン酸ブタンジオールポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコールポリエステル、チタン酸グリセリンポリエステル、チタン酸1,4-ベンゼンジメタノールポリエステルのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0016】
オプションとして、前記チタン酸ポリエチレングリコールポリエステルは、チタン酸ポリエチレングリコール200ポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコール400ポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコール600ポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコール800ポリエステルのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0017】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオールの製造方法は、チタン酸エステル、ポリオールを含む原料をエステル交換反応させて前記チタン酸系ポリエステルポリオールを得る工程を含む。
【0018】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
オプションとして、前記チタン酸エステルとポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ポリオール=(0.8~1.2)n3/xを満たし、
式中、xは1モル当たりの前記チタン酸エステルに含まれているアルコキシ基のモル数であり、
3は1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である。
【0020】
オプションとして、前記チタン酸エステルとポリオールのモル比の上限は、0.85n3/x、0.9n3/x、0.95n3/x、1n3/x、1.05n3/x、1.1n3/x、1.15n3/xまたは1.2n3/xから選ばれ、下限は、0.8n3/x、0.85n3/x、0.9n3/x、0.95n3/x、1n3/x、1.05n3/x、1.1n3/xまたは1.15n3/xから選ばれる。ここで、xは1モル当たりの前記チタン酸エステルに含まれているアルコキシ基のモル数であり、
3は1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である。
【0021】
オプションとして、前記ポリオールにおける水酸基の数が、2つ以上である。
【0022】
オプションとして、前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
オプションとして、前記ポリオールの一般式は、R2-(OH)xであり、式中、x≧2である。
【0024】
オプションとして、チタン酸エステルとポリオールは、以下のモル配合比を有する。
(0.8~1.2)n/x、
式中、xは1モル当たりの前記チタン酸エステルに含まれているアルコキシ基のモル数であり、nは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である。
【0025】
オプションとして、前記エステル交換は、エステル交換触媒の存在下で行われる。
【0026】
オプションとして、前記エステル交換触媒の添加量が、前記チタン酸エステルの0.1重量%~5重量%である。
【0027】
オプションとして、前記エステル交換触媒の添加量が、前記チタン酸エステルの質量百分含有量である上限は、0.2重量%、0.5重量%、0.8重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量または5.0重量%から選ばれ、下限は、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、0.8重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%から選ばれる。
【0028】
オプションとして、前記エステル交換触媒は、酸性触媒、塩基性触媒のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0029】
オプションとして、前記酸性触媒は、アルコールに溶ける酸、固体酸、アルコキシ基アルミニウム、フェノキシ基アルミニウム、テトラブチルスタンナン、アルコキシ基チタン、アルコキシ基ジルコニウム、亜アンチモン酸エチル、亜アンチモン酸ブチルのうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
前記塩基性触媒は、アルコールに溶ける塩基、固形塩基のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
オプションとして、前記アルコールに溶ける酸が、アルコールに溶けやすい酸である。
【0032】
オプションとして、前記アルコールに溶ける塩基が、アルコールに溶けやすい塩基である。
【0033】
オプションとして、前記アルコールに溶ける酸は、硫酸、スルホン酸などを含む。
【0034】
オプションとして、前記アルコールに溶ける塩基は、NaOH、KOH、NaOCH3、有機塩基などを含む。
【0035】
オプションとして、前記エステル交換反応触媒は、塩基性触媒と酸性触媒であり、ここで、塩基性触媒は、アルコールに溶けやすい塩基(例えば、NaOH、KOH、NaOCH3、有機塩基など)および各種固体塩基触媒を含み、酸性触媒は、アルコールに溶けやすい酸(例えば、硫酸、スルホン酸など)および各種固体酸触媒、アルコキシ基アルミニウム、フェノキシ基アルミニウム、テトラブチルスタンナン、アルコキシ基チタン、アルコキシ基ジルコニウム、亜アンチモン酸エチル、亜アンチモン酸ブチルなどを含む。触媒の使用量が、チタン酸エステルの0.1重量%~5重量%である。
【0036】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである。
【0037】
オプションとして、前記不活性雰囲気は、窒素、不活性ガスのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0038】
オプションとして、前記不活性雰囲気が、窒素である。
【0039】
オプションとして、前記エステル交換反応は、撹拌条件下で行われる。
【0040】
オプションとして、前記反応温度の上限は、85℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、175℃または180℃から選ばれ、下限は、80℃、85℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃または175℃から選ばれる。
【0041】
オプションとして、前記反応時間の上限は、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間または10時間から選ばれ、下限は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間または9時間から選ばれる。
【0042】
オプションとして、前記エステル交換の転化率は60%から80%までの範囲内である。
【0043】
オプションとして、前記エステル交換条件は、反応後、減圧蒸留を行うことをさらに含む。
【0044】
オプションとして、前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることである。
【0045】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、体系の真空度の上限は、0.02KPa、0.05KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、2KPa、3KPa、4KPa、4.5KPaまたは5KPaから選ばれ、下限は、0.01KPa、0.02KPa、0.05KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、2KPa、3KPa、4KPaまたは4.5KPaから選ばれる。
【0046】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、反応温度の上限は、175℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、225℃または230℃から選ばれ、下限は、170℃、175℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃または225℃から選ばれる。
【0047】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、反応時間の上限は、0.8時間、1時間、2時間、3時間、4時間、4.5時間または5時間から選ばれ、下限は、0.5時間、0.8時間、1時間、2時間、3時間、4時間または4.5時間から選ばれる。
【0048】
オプションとして、前記エステル交換の転化率は90%以上である。
【0049】
オプションとして、前記方法は、チタン酸エステル、ポリオールとエステル交換反応触媒とを混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程b)とを含む。
【0050】
具体的な実施形態として、前記方法は、チタン酸エステル、ポリオールとエステル交換反応触媒を三つ口フラスコ中で均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である工程1)と、工程1)反応後の装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上である工程2)とを含む。
【0051】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.005~0.1、テンプレート剤:シリコン源=0.01~10、H2O:シリコン源=5~500を満たす。
【0052】
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算される。
【0053】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiO2のモル数に基づいて計算される。
【0054】
前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算される。
【0055】
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0056】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオールとシリコン源とのモル比の上限は、0.008、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09または0.1から選ばれ、下限は、0.005、0.008、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08または0.09から選ばれる。
ここで、前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiO2のモル数に基づいて計算され、前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算される。
【0057】
オプションとして、前記テンプレート剤とシリコン源とのモル比の上限は、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、0.8、1、2、5、8または10から選ばれ、下限は、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、0.8、1、2、5または8から選ばれる。
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算される。
【0058】
オプションとして、前記水とシリコン源とのモル比の上限は、8、10、20、50、80、100、150、200、250、300、350、400、450または500から選ばれ、下限は、5、8、10、20、 50、80、100、150、200、250、300、350、400または450から選ばれる。
ここで、水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算され、前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算される。
【0059】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.01~0.8、テンプレート剤/シリコン源=0.05~5、H2O/シリコン源=20~400を満たす。
【0060】
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算される。
【0061】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiO2のモル数に基づいて計算される。
【0062】
前記シリコン源のモル数は、SiO2のモル数に基づいて計算される。
【0063】
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0064】
オプションとして、前記シリコン源は、シリカゾル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、ホワイトカーボンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0065】
具体的には、前記シリコン源は、シリカゾル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチルまたはホワイトカーボンのうちの1つまたは複数種類である。
【0066】
オプションとして、前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0067】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、有機塩基テンプレート剤と水は、以下のモル配合比を有する。
TiO2/SiO2=0.005~0.1、
有機塩基テンプレート剤/SiO2=0.01~10、
2O/SiO2=5~500。
【0068】
ここで、シリコン源におけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、チタン酸系ポリエステルポリオールにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、有機塩基テンプレート剤の含有量は、N原子のモル数に基づいて計算され、前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0069】
オプションとして、前記チタン酸系ポリエステルポリオール、有機塩基テンプレート剤、シリコン源と水は、以下のモル配合比を有する。
TiO2/SiO2=0.01~0.08、
有機塩基テンプレート剤/SiO2=0.05~5、
2O/SiO2=20~400。
【0070】
ここで、シリコン源におけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、チタン酸系ポリエステルポリオールにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、有機塩基テンプレート剤の含有量は、N原子のモル数に基づいて計算される。
【0071】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0072】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0073】
オプションとして、前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0074】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル基水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピル基アンモニウムなどの1つまたは複数種類であり、または、これらの第四級アンモニウム塩類または第四級アンモニウム塩基類と、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの脂肪族アミンまたはアルカノールアミン系化合物からなる混合物である。
【0075】
オプションとして、前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである。
【0076】
オプションとして、前記結晶化の条件は、密閉条件下で110~180℃まで昇温し、自生圧力下で1~28日間結晶化させることである。
【0077】
オプションとして、前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~190℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることである。
【0078】
オプションとして、前記結晶化の温度上限は、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃または200℃から選ばれ、下限は、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃または190℃から選ばれる。
【0079】
オプションとして、前記結晶化の時間上限は、1時間、5時間、10時間、15時間、20時間、1日、2日、5日、10日、12日、15日、20日、25日、28日または30日から選ばれ、下限は、0.5時間、1時間、5時間、10時間、15時間、20時間、1日、2日、5日、10日、12日、15日、20日、25日または28日から選ばれる。
【0080】
オプションとして、前記結晶化は、動的または静的で行われる。
【0081】
オプションとして、前記混合物は、エージングするか、またはエージングせずにゲル混合物を得る。
【0082】
オプションとして、前記混合物は、エージングを経た後に結晶化する。
【0083】
前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである。
【0084】
オプションとして、前記エージング条件は、0~120℃の温度で0~100時間エージングさせることである。
【0085】
オプションとして、前記エージング条件は、温度が、20~80℃とし、時間が、1~50時間である。
【0086】
オプションとして、前記エージングは、静的または動的で行われる。
【0087】
オプションとして、結晶化終了後、固体生成物を分離し、中性まで洗浄し、乾燥し、TS-1分子篩を得る。
【0088】
オプションとして、前記TS-1分子篩の製造方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程a)と、工程a)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記TS-1分子篩を得る工程b)とを含む。
【0089】
具体的な実施形態として、前記TS-1分子篩の製造方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、有機塩基テンプレート剤と水などを混合し、120℃以下の温度で0~100時間攪拌または静止エージングして、ゲル混合物を得る工程a’)と、工
程a’)得られたゲル混合物をオートクレーブに入れ、密閉し、100~200℃まで昇
温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化する工程b’)と、結晶化終了後、固体生成
物を分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、乾燥した後、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程e’)を含む。
【0090】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む。
【0091】
オプションとして、前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである。
【0092】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、孔径分布が比較的狭いメソ孔構造および比較的少ない非骨格チタンを有する。
【0093】
オプションとして、前記TS-1分子篩は、H22の存在下での有機物の選択的酸化反応のために使用される。
【0094】
本出願に記載の合成方法は、従来の合成方法に比べて、チタンをポリマーに結合されることにより、チタンをより加水分解しにくくし、TiO2の沈殿を防止することができ、チタンの分子篩骨格への進入に有利であり、また、新規のチタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン源として機能するとともに、合成過程においてメソ孔テンプレート剤として機能することもでき、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、且つ非骨格チタンをより少なく含む。
【0095】
本明細書では、「C1~C8」などとは、いずれも基に含まれている炭素原子の数を示す。
【発明の効果】
【0096】
本出願は、以下のような有益な効果を有する:
1)本出願は、チタン源としてチタン酸系ポリエステルポリオールを用いて、当該ポリマーでチタンをポリマーに結合されることにより、チタンをより加水分解しにくくし、TiO2の沈殿を防止し、非骨格チタンの生成を減少させることができる
【0097】
本出願の新規のチタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン源として機能するとともに、合成過程においてメソ孔テンプレート剤として機能することもでき、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、且つ非骨格チタンをより少なく含む。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明の実施例1に係る合成された生成物のXRD図である。
図2】本発明の実施例1に係る合成された生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図3】本発明の実施例1に係る合成された生成物の紫外・可視吸収スペクトル(UV-VIS)である。
図4】本発明の実施例1に係る合成された生成物の物理吸着および細孔の分布結果である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、本出願について、実施例を用いて詳述するが、本出願は、これらの実施例に限定されるものではない。
別途指摘されない限り、本出願の実施例における原料は、全部商業ルートによって購入される。
【0100】
本発明では、生成物の粉末X線回折分析(XRD)は、オランダPANalytical社のX’Pert PRO X線回折装置、Cuターゲット、Kα放射線源(λ=0.15418 nm)、電圧40 KV、電流40 mAを用いた。
【0101】
本発明では、生成物のSEM形態観察には、HitachiのTM3000走査電子顕微鏡を用いた。
【0102】
本発明では、生成物の紫外-可視拡散反射スペクトルは、積分球を搭載したVarian Cary 500 Scan型UV-Vis分光光度計上で測定した。
【0103】
本発明では、生成物の物理吸着、外比表面積および孔分布の分析には、マイク社のASAP 2020全自動物理計を用いた。
【0104】
本出願は、チタン酸系ポリエステルポリオールをチタン源とし、有機塩基テンプレート剤、シリコン源と脱イオン水を添加し、水熱条件下で階層的細孔を有するTS-1分子篩を合成する。
【0105】
本願の一実施形態によれば、階層的細孔を有するTS-1分子篩を製造するための方法は、以下のとおりである。
【0106】
工程a)、チタン酸系ポリエステルポリオール、有機塩基テンプレート剤、シリコン源と水などを一定の割合で混合してゲル混合物を得り、好ましくは、当該ゲル混合物が、以下のモル比を有する。
TiO2/SiO2=0.005~0.1、
有機塩基テンプレート剤/SiO2=0.01~10、
2O/SiO2=5~500。
【0107】
ここで、シリコン源におけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、チタン酸系ポリエステルポリオールにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、有機塩基テンプレート剤の含有量は、N原子のモル数に基づいて計算される。
【0108】
工程b)、工程a)で得られたゲル混合物をエージングし、ここで、このエージング過程を省略してもよいし、攪拌または静止条件下でエージングし、エージング温度を0~120℃とし、エージング時間を0~100時間とするエージングを実施してもよい。
【0109】
工程c)、工程b)で得られたゲル混合物をオートクレーブに入れ、密閉し、温度を100~200℃まで昇温し、結晶化時間を1~30日とする
【0110】
工程d)、結晶化終了後、固体生成物を分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、乾燥し、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る。
【0111】
好ましくは、前記工程a)で使用された有機塩基テンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル基水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピル基アンモニウムなどの1つまたは複数種類であり、または、これらの第四級アンモニウム塩類または第四級アンモニウム塩基類と、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの脂肪族アミンまたはアルカノールアミン系化合物からなる混合物である。
【0112】
好ましくは、前記工程a)でのゲル混合物におけるTiO2/SiO2=0.01~0.08である。
【0113】
好ましくは、前記工程a)でのゲル混合物における有機塩基テンプレート剤/SiO2=0.05~5である。
【0114】
好ましくは、前記工程a)でのゲル混合物におけるH2O/SiO2=20~400である。
【0115】
好ましくは、前記工程a)でのエージング過程を省略してもよいし、エージング温度を20~80℃とし、エージング時間を0~80時間とするエージングを実施してもよい。
【0116】
好ましくは、前記工程b)での結晶化温度は、120~190℃であり、結晶化時間は1~15日である。
【0117】
好ましくは、前記工程b)での結晶化過程は、静的または動的で行われる。
【0118】
好ましくは、前記工程c)で階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る。
【0119】
実施例1:
各原料の種類およびモル用量,結晶化温度と時間,XRD結晶型および外比表面積の結果は、表1に示すとおりである。
【0120】
実施例1では、具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
0.14gのチタン酸エチレングリコールポリエステルに水酸化テトラプロピルアンモニウム(25重量%)水溶液6.76g、ホワイトカーボン1g、水10gを加えて均一に混合し、室温で2時間撹拌し、ステンレス製高圧合成釜に移した。このとき、合成体系の各成分のモル配合比は0.05[Ti(OCH2CH2O)220:SiO2:0.5TPAOH:50H2Oであった。高圧合成釜を密閉して恒温170℃に昇温した後のオーブンに入れ、自生圧力下で2日間結晶化した。結晶化終了後、固体生成物を遠心分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、110℃空気中で乾燥した後、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。当該原粉のサンプルに対してXRD分析を行った結果は、図1に示すとおりであり、図から分かるように、サンプルが、TS-1分子篩であった。当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)図は、図2に示すとおりであり、図から分かるように、サンプルは、小結晶粒により堆積したものである。当該サンプルのUV-VIS拡散反射スペクトルは、図3に示すとおりであり、図から分かるように、サンプルの中に、非骨格チタンがほとんどなかった。当該サンプルの物理吸着スペクトルは、図4に示すとおりである。
【0121】
ここで、チタン酸エチレングリコールポリエステルの調製方法は、以下のとおりである。
エチレングリコール5g、オルトチタン酸テトラエチル9.2gを三つ口フラスコに加えて、蒸留装置に接続され、攪拌状態で0.12g(98重量%)H2SO4をエステル交換反応触媒として滴加し、窒素保護条件下で175℃まで昇温し、反応時間を5時間とし、この過程で大量のエタノールが蒸留され、エステル交換反応の転化率は89%であった。次に、真空引き装置に接続され、減圧蒸留条件下で反応を行い、体系の真空度を0.1KPaに制御して210℃まで昇温し、3時間反応後、反応を停止し、室温まで自然降温させた後、サンプルを取り出し、エステル交換反応の転化率は95%であった。
【0122】
本出願の実施例では、エステル交換反応の転化率は、以下の方法によって計算される。
反応過程で留出された副産物アルコール類のモル数nに基づいて、エステル交換反応に関与するものでの反応に関与する基数をnに決定し、反応原料におけるエステル類のモル数の総和をmに決定すると、エステル交換反応の転化率が、n/xmとする。ここで、xはエステル類における中心原子とつながるアルコキシ基の個数に依存する。
【0123】
調製したサンプルに対して熱重量テストを行い、TA Instruments社製、型番が、TA Q-600の熱重量分析計を用いて熱重量分析を行った。窒素流速を100ml/分とし、10℃/分の昇温速度で700℃まで昇温した。反応転化率xにより生成物の重合度n:n=1/(1-x)を決定することができる。得られたサンプルの化学式は[Ti(OCH2CH2O)220:であった。
【0124】
実施例2~13:
具体的な原料の種類、使用量および反応条件、分析結果は、表1に示すとおりである。合成過程は実施例1と同様であり、製品のその他の分析結果は、表1に示すとおりである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0125】
表1において、Rは炭化水素系化合物でx個の水素原子を失って形成されるエチル基、プロピル基、ブチル基、ポリオール基、テレフタルアルキル基などの基から選ばれ、xが、2~6の間である。
【0126】
実施例1~実施例13では、結晶化は静的結晶化であった。
【0127】
ここで、実施例2~実施例13におけるチタン酸系ポリエステルポリオールの製造方法が、実施例1におけるチタン酸エチレングリコールポリエステルの製造方法と異なる点は、5gのエチレングリコールをそれぞれ6.1gの1,3‐プロパンジオール、5gのグリセリン、7.2gの1,4‐ブタンジオール、9.5g1,6‐のヘキサンジオール、11.1gの1,4‐ベンゼンジメタノール、9.3gの1,4‐シクロヘキサンジオール、11.5gの1,4‐シクロヘキサンジメタノール、16.8gのポリエチレングリコール200、33.8gのポリエチレングリコール400、65.6gのポリエチレングリコール800、5.5gのペンタエリスリトールに置き換え、実施例2~実施例13に対応するチタン酸系ポリエステルポリオールをそれぞれ得る点である。
【0128】
実施例14:
結晶化の温度を100℃とし、結晶化の時間を30日とし、残りの条件が、実施例1と同様であった。
【0129】
前記結晶化は、動的結晶化であり、結晶化条件は、回転オーブンを用いて、結晶化温度と結晶化時間が、実施例1と同様であり、回転オーブンの回転速度を35rpmとした。
【0130】
実施例15:
結晶化の前に、エージング処理を行い、エージングの条件は、120℃で2時間静的エージングし、残りの条件が、実施例1と同様であった。
【0131】
実施例16:
結晶化の前に、エージング処理を行い、エージングの条件は、20℃で80時間攪拌エージングし、残りの条件が、実施例1と同様であった。
【0132】
実施例17:相構造分析
実施例1~実施例16におけるサンプルに対して、XRD物相構造分析を行った結果は、典型的に、図1に示すとおりである。図1は実施例1で調製したサンプルのXRDスペクトルであり、図から分かるように、実施例1におけるサンプルが、TS-1分子篩であった。
【0133】
実施例18:形態観察
実施例1~実施例16におけるサンプルに対して、SEM形態観察を行った結果は、典型的に、図2に示すとおりである。図2は実施例1で調製したサンプルのSEMスペクトルであり、図から分かるように、実施例1におけるサンプルは、小結晶粒により堆積したものであり、その粒径が、100nm前後であった。
【0134】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプルのテスト結果と同様であり、サンプルの粒径が、100から500nmまでの範囲内であった。
【0135】
実施例19:スペクトル分析
実施例1~実施例16のサンプルに対してUV-VIS拡散反射スペクトル分析を行った結果は、典型的に、図3に示すとおりである。図3は実施例1で調製したサンプルのUV-VIS拡散反射スペクトルであり、図から分かるように、実施例1におけるサンプルには非骨格チタンはほとんどなかった。
【0136】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプルのテスト結果と同様であり、サンプルには非骨格チタンはほとんどなかった。
【0137】
実施例20:物理吸着分析
実施例1~実施例16のサンプルに対して物理吸着および孔分布分析を行った結果は、典型的に、図4に示すとおりである。図4は実施例1で調製したサンプルの物理吸着結果であり、図から分かるように、サンプルは典型的な階層的細孔構造を有し、メソ細孔孔複合材料であった。
【0138】
孔分布分析結果により、実施例1~実施例16におけるサンプルのメソ孔の孔径が、2~10nmであることを示した。
【0139】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプル1のテスト結果と同様であり、サンプルは典型的な階層的細孔構造を有し、メソ細孔孔複合材料であった。
【0140】
上記の説明では本出願のいくつかの実施形態だけが示されているが、これらの実施形態は例示を目的とする非制限的なものであり、当業者であれば、本出願の原理と主旨から逸脱することなく、本出願の技術手段範囲内でこれらの実施例に対して若干の修正、改善を行うことができ、本出願の範囲は特許請求の範囲とその等価物により限定されることを理解できる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸系ポリエステルポリオールをチタン源として用いる、ことを特徴とする階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の製造方法。
【請求項2】
前記方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩を得る工程を含み、
前記結晶化が、水熱結晶化である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、式Iで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれ、
式I
[Ti(RO4/x
式中、ROは有機ポリオールR(OH)がOH上のHを失って形成される基であり、Rは炭化水素化合物がx個の水素原子を失って形成される基のうちの1つから選ばれ、x≧2、又はxが、2、3若しくは4であり、
n=2~30である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記チタン酸系ポリエステルポリオールは、チタン酸エチレングリコールポリエステル、チタン酸ブタンジオールポリエステル、チタン酸ポリエチレングリコールポリエステル、チタン酸グリセリンポリエステル、チタン酸1,4-ベンゼンジメタノールポリエステルのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.005~0.1、テンプレート剤:シリコン源=0.01~10、HO:シリコン源=5~500を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiOのモル数に基づいて計算され、
前記シリコン源のモル数は、SiOのモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、HO自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、テンプレート剤と水のモル比は、チタン酸系ポリエステルポリオール:シリコン源=0.01~0.08、テンプレート剤:シリコン源=0.05~5、HO:シリコン源=20~400を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記チタン酸系ポリエステルポリオールのモル数は、TiOのモル数に基づいて計算され、
前記シリコン源のモル数は、SiOのモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、HO自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコン源は、シリカゾル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、ホワイトカーボンのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれる、または
前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれ、前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、
前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、
前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる、または
前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~190℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物は、エージングを経た後に結晶化し、
前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記TS-1分子篩の製造方法は、チタン酸系ポリエステルポリオール、シリコン源、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程a)と、
工程a)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩を得る工程b)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む、または
前記階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
存在下での有機物の選択的酸化反応における、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法により製造された階層的細孔を有するチタン-シリコンTS-1分子篩の使用。
【国際調査報告】