IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国科学院大▲連▼化学物理研究所の特許一覧

特表2022-506869階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法
<>
  • 特表-階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法 図1
  • 特表-階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法 図2
  • 特表-階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法 図3
  • 特表-階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 37/00 20060101AFI20220107BHJP
   C01B 39/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C01B37/00
C01B39/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524969
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2018115719
(87)【国際公開番号】W WO2020097876
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ダンファ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジアチェン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ユンペン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA20
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB04
4G073BB05
4G073BB06
4G073BB07
4G073BB08
4G073BB12
4G073BB15
4G073BB23
4G073BB24
4G073BB25
4G073BB26
4G073BB36
4G073BB40
4G073BB42
4G073BB43
4G073BB48
4G073BB58
4G073BB66
4G073BB71
4G073CZ50
4G073CZ55
4G073FB01
4G073FB50
4G073FC04
4G073FC19
4G073FC25
4G073FC26
4G073FC27
4G073FC30
4G073FD06
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA13
4G073GA19
4G073GB02
4G073GB03
4G073UA03
(57)【要約】
本出願は、シリコン-チタンエステル系ポリマーをシリコン源およびチタン源とすることを特徴とする階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法を開示する。当該方法は、シリコンとチタンを同一のポリマーに均一に結合し、加水分解時の加水分解速度を同等にし、TiO2の沈殿を防止することができ、非骨格チタンの生成を減少させることができ、また新規のシリコン-チタンエステル系ポリマーは、シリコン源およびチタン源として機能するとともに、合成過程においてメソ孔テンプレート剤として機能することもでき、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、且つ孔径分布が狭くなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン-チタンエステル系ポリマーをシリコン源/チタン源として用いる、ことを特徴とする階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法。
【請求項2】
前記方法は、シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程を含み、
前記結晶化が、水熱結晶化である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーは、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを含む原料からエステル交換反応を行って得られる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.001~0.2、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.5~5)x:4を満たし、
ここで、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数であり、
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.005~0.1、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.8~1.2)x:4を満たし、
ここで、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数であり、
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、100~160℃で4~8時間反応させることである、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エステル交換は、減圧蒸留をさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記真空度が、0.05~3KPaとする、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ酸エステルは、式Iで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つ
から選ばれ、
式I:
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸メチル、ケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、ケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チタン酸エステルは、式IIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれ、
式II:
【化2】
式中、R5,6、R7、R8が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記チタン酸エステルは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを混合し、攪拌条件下でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.05~10、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=5~500を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.1~5、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=30~300を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~180℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることである、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物は、エージングを経た後に結晶化し、
前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記TS-1分子篩の製造方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを均一に混合し、攪拌状態下でエステル交換反応を行い、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、
工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程b)と、
工程b)で得られたシリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程c)と、
工程c)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記TS-1分子篩を得る工程d)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
22存在下での有機物の選択的酸化反応に使用される請求項1~29のいずれか一項に記載の方法により製造された階層的細孔を有するTS-1分子篩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、分子篩製造の分野に属し、階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TS-1分子篩とは、MFIトポロジーを有する微細孔質分子篩であり、その骨格構造には四面体のTi4+中心が存在するため、H22が参加する有機物の選択的酸化反応に対して良好な触媒作用があり、例えば、オレフィンのエポキシ化、フェノールのヒドロキシル化、ケトン類のアンモ酸化反応、アルカン酸化などの選択的酸化反応が挙げられる。TS-1分子篩により酸化を触媒する過程は汚染がなく、反応条件が温和であり、従来技術における汚染が重大で、反応過程が冗長であるという欠点を克服した。
【0003】
TS-1の活性と安定性に影響を与える主な要因は2つがある:1つは分子篩における骨格チタンと非骨格チタンの含有量であり、2つは分子篩の拡散性能である。前者について、チタン原子は半径が大きいため、MFI骨格に入りにくく、チタン源は加水分解し、水解重合して二酸化チタン沈殿を形成しやすいので、TS-1分子篩合成では六配位の非骨格チタンの生成を避けることは困難であり、非骨格チタン種の存在により、H22の効果的な分解ができず、TS-1が触媒する酸化反応に対して不利である。後者ついて、TS-1分子篩の微孔サイズが0.55nmしかなく、小さすぎるため、有機高分子の触媒中での輸送と拡散が大きく制限され、触媒の反応活性や使用寿命が抑制される。
【0004】
TS-1の合成はTaramassoら(US 4410501)によって最初に報告され、合成にはケイ酸テトラエチル(TEOS)をシリコン源とし、チタン酸テトラエチル(TEOT)をチタン源とし、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)をテンプレート剤とし、オートクレーブの中で130~200℃で6~30日間水熱結晶化して得られた。しかし、この方法の操作は、繁雑で、条件を制御しにくく、実験再現性が悪く、また、シリコン源とチタン源の加水分解速度の差異により、大量の非骨格チタンの形成を引き起こすため、TS-1分子篩の触媒性能に影響を与えた。その後、Thangarajら(zeolite、12(1992)、943)は、オルトケイ酸テトラエチルをTPAOH水溶液中で予備加水分解し、さらに激しい撹拌下でより加水分解速度の遅いチタン酸テトラブチルのイソプロパノール溶液を徐々に添加することにより、非骨格チタンが比較的少ないTS-1分子篩を得た。これらの改良では、主にシリコン源およびチタン源の加水分解過程に対して制御を行い、シリコン源とチタン源の加水分解速度をより一致させ、非骨格チタンの形成を抑制し、TS-1分子篩における骨格チタンの含有量を高めることである。
【0005】
TS-1分子篩の拡散問題に対して、ゼオライト分子篩系にメソ孔を導入することにより、階層的細孔を有する分子篩を作製することは、よく使われる解決手段である。テンプレート剤を用いて分子篩材料の中でメソ孔或いはマクロ孔の構造を構築することは、現在の階層的細孔を有する分子篩を製造するための最も有効な方法であり、ソフトテンプレート法とハードテンプレート法が含まれる。その中、ソフトテンプレート法では、例えば、周興貴ら(CN103357432A)が、ポリエーテル型PluronicF127をメソ孔テンプレート剤として用い、乾燥ゲル法によりメソ孔ナノTS-1分子篩を合成した;張淑芬(CN102910643A)が、セチルトリメチルアンモニウムブロミドをメソ孔テンプレート剤としてチタンシリコン分子篩にメソ孔チャネルを導入した。その中、ハードテンプレート法では、例えば、陳麗華ら(CN104058423A)が、三次元秩序マクロ孔-メソ孔階層的細孔を有する炭素材料をハードテンプレートとし、ハードテンプレートの三次元秩序チャンネル内制限領域にTS-1ナノ結晶を成長させ、ハードテンプレートを除去した後に、階層的細孔を有するTS-1分子篩を製造した。李鋼ら(CN101962195A)が、多孔炭素材料の代わりに安価な糖をマクロ孔-メソ孔テンプレート剤とし、糖を含むTS-1分子篩をゾルに合成して乾燥ゲル熱処理する過程で、糖は熱を受けて炭化脱水し、直接にハードテンプレートを形成し、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。しかし、TS-1分子篩の活性と安定性をさらに向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一態様によれば、シリコン源とチタン源とを同一のポリマーに結合してシリコン-チタンエステル系ポリマーを形成することで、シリコン源とチタン源の加水分解速度をより一致させ、TiO2の沈殿を防止し、チタンの分子篩骨格への進入を容易にすることができる階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法が提供される。また、シリコン-チタンエステル系ポリマーをシリコン源およびチタン源として用いるとともに、合成過程でメソ孔テンプレート剤としても使用可能であるため、この方法で得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、孔径分布が比較的狭く、且つより少ない非骨格チタンを含有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法は、シリコン-チタンエステル系ポリマーをチタン/シリコン源とすることを特徴とする。
【0008】
オプションとして、前記方法は、シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程を含む。
【0009】
オプションとして、前記結晶化が、水熱結晶化とする。
【0010】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーは、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを含む原料からエステル交換反応を行って得られる。
【0011】
オプションとして、前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.001~0.2、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.5~5)x:4を満たす。
【0012】
式中、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である。
【0013】
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される。
【0014】
オプションとして、前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.005~0.1、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.8~1.2)x:4を満たす。
【0015】
式中、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である。
【0016】
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される。
【0017】
オプションとして、前記チタン酸エステルとケイ酸エステルとのモル比の上限は、0.002、0.005、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.15、0.18または0.2から選ばれ、下限は、0.001、0.002、0.005、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.15または0.18から選ばれる。
【0018】
オプションとして、前記(チタン酸エステル+ケイ酸エステル)とポリオールとのモル比の上限は、0.85x:4、0.9x:4、0.95x:4、1.0x:4、1.15x:4または1.2x:4から選ばれ、下限は、0.8x:4、0.85x:4、0.9x:4、0.95x:4、1.0x:4または1.15x:4から選ばれる。ここで、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数である
【0019】
オプションとして、前記エステル交換は、攪拌条件下で行われる。
【0020】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである。
【0021】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とすることである。
【0022】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、100~160℃で2~10時間反応させることである。
【0023】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、100~160℃で4~8時間反応させることである。
【0024】
オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、窒素保護条件下で、反応温度を100℃から160℃までの範囲内とし、反応時間を4時間から8時間までの範囲内とすることである。
【0025】
オプションとして、前記エステル交換反応温度の上限は、85℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、175℃または180℃から選ばれ、下限は、80℃、85℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃または175℃から選ばれる。
【0026】
オプションとして、前記エステル交換反応時間の上限は、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、9.5時間または10時間から選ばれ、下限は、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間または9.5時間から選ばれる。
【0027】
オプションとして、前記不活性雰囲気は、窒素、不活性ガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
オプションとして、前記エステル交換の転化率は60%から80%までの範囲内である。
【0029】
オプションとして、前記エステル交換は、減圧蒸留をさらに含む。
【0030】
オプションとして、前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることである。
【0031】
オプションとして、前記真空度が、0.05~3KPaとする。
【0032】
オプションとして、前記エステル交換の転化率は90%以上である。
【0033】
オプションとして、前記減圧蒸留の温度の上限は、175℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、225℃または230℃から選ばれ、下限は、170℃、175℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃または225℃から選ばれる。
【0034】
オプションとして、前記減圧蒸留の時間の上限は、0.8時間、1時間、2時間、3時間、4時間、4.5時間または5時間から選ばれ、下限は、0.5時間、0.8時間、1時間、2時間、3時間、4時間または4.5時間から選ばれる。
【0035】
オプションとして、前記減圧蒸留の真空度の上限は、0.02KPa、0.03KPa、0.05KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、1.5KPa、2KPa、2.5KPa、3KPa、4KPa、4.5KPaまたは5KPaから選ばれ、下限は、0.01KPa、0.02KPa、0.03KPa、0.05KPa、0.08KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、1.5KPa、2KPa、2.5KPa、3KPa、3.5KPa、4KPaまたは4.5KPaから選ばれる。
【0036】
オプションとして、前記ケイ酸エステルは、式Iで表される化学式を有する化合物のう
ちの少なくとも1つから選ばれる。
式I:
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0037】
オプションとして、式Iにおける前記R1、R2、R3、R4・が独立して、C1
4のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0038】
オプションとして、前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸メチル、ケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、ケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
オプションとして、前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸メチル、ケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、ケイ酸テトライソブチルなどのうちの1つまたは複数種類である。
【0040】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、式IIで表される化学式を有する化合物の
うちの少なくとも1つから選ばれる。
式II:
【化2】
式中、R5,6、R7、R8が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0041】
オプションとして、式IIにおける前記R5、R6、R7、R8・が独立して、C1~C4
のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0042】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含む。
【0043】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドなどのうちの1つまたは複数種類である。
【0044】
オプションとして、前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールのうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
オプションとして、ポリオールに含まれている水酸基の数は、≧2であり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどのうちの1つまたは任意の複数種の混合物を含む。
【0046】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーは、シリコン-チタン酸ポリエチレングリコールエステルポリマー、シリコン-チタン酸エチレングリコールエステルポリマー、シリコン-チタン酸1,4-ベンゼンジメタノールエステルポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを混合し、攪拌条件下でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程を含む。
【0048】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程をさらに含む。
【0049】
具体的な実施形態として、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを三つ口フラスコに入れて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である工程1)と、工程1)反応後の装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上で、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程2)とを含む。
【0050】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.05~10、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=5~500を満たす。
【0051】
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算される。
【0052】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算される。
【0053】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0054】
オプションとして、前記テンプレート剤とシリコン-チタンエステル系ポリマーとのモル比の上限は、0.08、0.10、0.15、0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0または10から選ばれ、下限は、0.05、0.08、0.10、0.15、0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0または9.0から選ばれる。ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算される。
【0055】
オプションとして、前記水とシリコン-チタンエステル系ポリマーとのモル比の上限は、8、10、30、50、80、100、150、200、250、300、350、400、450、480または500から選ばれ、下限は、5、8、10、30、50、80、100、150、200、250、300、350、400、450または480から選ばれる。ここで、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0056】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.1~5、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=30~300を満たす。
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算される。
【0057】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算される。
【0058】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算される。
【0059】
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される。
【0060】
オプションとして、前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0061】
オプションとして、前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水は、以下のモル配合比を有する。
有機塩基テンプレート剤/(SiO2+TiO2)=0.05~10、H2O/(SiO2+TiO2)=5~500。
【0062】
ここで、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、有機塩基テンプレート剤は、N原子のモル数に基づいて計算される。
【0063】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル基水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピル基アンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0064】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0065】
オプションとして、前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0066】
オプションとして、前記有機塩基テンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル基水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピル基アンモニウムなどの1つまたは複数種類であり、または、これらの第四級アンモニウム塩類または第四級アンモニウム塩基類と、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、プトレッシン、ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの脂肪族アミンまたはアルカノールアミン系化合物からなる混合物である。
【0067】
オプションとして、前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである。
【0068】
オプションとして、前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~180℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることである。
【0069】
オプションとして、前記結晶化の温度上限は、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃または200℃から選ばれ、下限は、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃または190℃から選ばれる。
【0070】
オプションとして、前記結晶化の時間上限は、1時間、5時間、10時間、15時間、20時間、1日、2日、5日、10日、12日、15日、20日、25日、28日または30日から選ばれ、下限は、0.5時間、1時間、5時間、10時間、15時間、20時間、1日、2日、5日、10日、12日、15日、20日、25日または28日から選ばれる。
【0071】
オプションとして、前記結晶化は、動的または静的で行われる。
【0072】
オプションとして、前記混合物は、エージングするか、またはエージングせずにゲル混合物を得る。
【0073】
オプションとして、前記混合物は、エージングを経た後に結晶化する。
【0074】
前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである。
【0075】
オプションとして、エージング温度が、0~120℃とし、時間が、0~100時間とする。
【0076】
オプションとして、前記エージング条件は、温度が、20~100℃とし、時間が、1~50時間とする。
【0077】
オプションとして、前記エージングは、静的または動的で行われる。
【0078】
オプションとして、結晶化終了後、固体生成物を分離し、中性まで洗浄し、乾燥し、TS-1分子篩を得る。
【0079】
オプションとして、前記TS-1分子篩の製造方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを均一に混合し、攪拌状態下でエステル交換反応を行い、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程b)と、工程b)で得られたシリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程c)と、工程c)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記TS-1分子篩を得る工程d)とを含む。
【0080】
具体的な実施形態として、前記TS-1分子篩の製造方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを三つ口フラスコに入れて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である工程a’)と、工程a’)反応後の
装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上で、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程b’)と、工程b’)で得られたシリコン-チタンエステル系ポリマー、
有機塩基テンプレート剤と水などを混合し、120℃以下の温度で攪拌するか、0~100時間静止エージングして、ゲル混合物を得る工程c’)と、工程c’)で得られたゲル
混合物をオートクレーブに入れ、密閉し、100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間結晶化する工程d’)と、結晶化終了後、固体生成物を分離し、脱イオン水で
中性まで洗浄し、乾燥し、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程e’)とを
含む。
【0081】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む。
【0082】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~5nmの孔径を有するメソ孔を含む。
【0083】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~3nmの孔径を有するメソ孔を含む。
【0084】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである。
【0085】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の粒径は、100~300nmである。
【0086】
オプションとして、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、孔径分布が比較的狭いメソ孔構造および比較的少ない非骨格チタンを有する。
【0087】
オプションとして、上記のいずれか一項に記載の方法に従って調製された階層的細孔を有するTS-1分子篩は、H22存在下での有機物の選択的酸化反応に使用される。
【0088】
本発明に係る階層的細孔を有するTS-1分子篩の合成過程は、シリコンエステル、チタンエステルとポリオールを混合してエステル交換反応を行い、生成したアルコールを蒸してシリコン-チタンエステル系ポリマーを得る第1工程と、シリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水などを反応釜中で水熱結晶化し、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る第2工程とに分けられる。該合成方法は、従来の合成方法に比べて、シリコンとチタンを同一のポリマーに均一結合し、加水分解時の加水分解速度を同等にし、TiO2の沈殿を防止することができ、非骨格チタンの生成を減少させることができ、また、新規のシリコン-チタンエステル系ポリマーは、シリコン源およびチタン源として機能するとともに、合成過程においてメソ孔テンプレート剤として機能することもでき、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、且つ孔径分布が狭くなる。
【0089】
本明細書では、「C1~C10、C1~C4」などとは、いずれも基に含まれている炭素原子の数を示す。
【0090】
本明細書では、「アルキル基」とは、アルカン化合物分子の上で任意の水素原子を失って形成される基である。
【発明の効果】
【0091】
本出願は、以下のような有益な効果を有する:
1)本出願に記載の方法では、シリコンとチタンを同一のポリマーに均一結合し、加水分解時の加水分解速度を同等にし、TiO2の沈殿を防止することができ、非骨格チタンの生成を抑制することができる。
2)本出願に記載の方法では、シリコン-チタンエステル系ポリマーをシリコン源およびチタン源として機能するとともに、合成過程においてメソ孔テンプレート剤として機能することもでき、得られたTS-1分子篩はメソ孔構造を有し、且つ孔径分布が狭くなる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】本発明の実施例1に係る合成された生成物のXRD図である。
図2】本発明の実施例1に係る合成された生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図3】本発明の実施例1に係る合成された生成物の紫外・可視吸収スペクトル(UV-VIS)である。
図4】本発明の実施例1に係る合成された生成物の物理吸着および細孔の分布結果である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本出願について、実施例を用いて詳述するが、本出願は、これらの実施例に限定されるものではない。
別途指摘されない限り、本出願の実施例における原料は、全部商業ルートによって購入される。
【0094】
本出願の実施例では、生成物の粉末X線回折分析(XRD)は、オランダPANalytical社のX’Pert PRO X線回折装置、Cuターゲット、Kα放射線源(λ=0.15418 nm)、電圧40 KV、電流40 mAを用いた。
【0095】
本出願の実施例では、生成物のSEM形態観察には、HitachiのSU8020走査電子顕微鏡を用いた。
【0096】
本出願の実施例では、生成物の紫外-可視拡散反射スペクトルは、積分球を搭載したVarian Cary 500 Scan型UV-Vis分光光度計上で測定した。
【0097】
本出願の実施例では、生成物の物理吸着および孔分布の分析には、マイク社のASAP 2020全自動物理計を用いた。
【0098】
本出願の実施例では、エステル交換反応の転化率は、以下の方法によって計算される。
反応過程で留出された副産物アルコール類のモル数nに基づいて、エステル交換反応に関与するものでの反応に関与する基数をnに決定し、反応原料におけるチタン酸エステルとケイ酸エステルのモル数の総和をmに決定すると、エステル交換反応の転化率が、n/4mとする。
【0099】
本願の一実施形態によれば、階層的細孔を有するTS-1分子篩を製造するための方法は、以下のとおりである。
【0100】
工程a):ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを三つ口フラスコに入れて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である。
【0101】
工程b):工程a)反応後の装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上で、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る。
【0102】
工程c):工程b)で得られたシリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水などを混合し、120℃以下の温度で攪拌するか、0~100時間静止エージングして、ゲル混合物を得る。
【0103】
工程d):工程c)で得られたゲル混合物をオートクレーブに入れ、密閉し、100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間結晶化する。
【0104】
工程e):結晶化終了後、固体生成物を分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、乾燥し、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る。
【0105】
前記工程a)におけるケイ酸エステルは、オルトケイ酸メチル、ケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、ケイ酸テトライソブチルなどのうちの1つまたは複数種類である。
【0106】
前記工程a)におけるチタン酸エステルは、ルトチタン酸エチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドなどのうちの1つまたは複数種類である。
【0107】
前記工程a)におけるポリオールの一般式は、R-(OH)xであり、式中、x≧2。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどのうちの1つまたは任意の複数種の混合物を含む
【0108】
好ましくは、前記工程a)におけるケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールとが、以下のモル配合比を有する。
Ti(OR)4/Si(OR)4=0.005~0.1、
「Ti(OR)4+Si(OR)4」/R-(OH)x=(0.8~1.2)x/4。
【0109】
好ましくは、前記工程a)での反応は、窒素保護条件下で行われ、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする。
【0110】
好ましくは、前記工程a)でのエステル交換の転化率は65%から80%までの範囲内である
【0111】
好ましくは、前記工程b)は、体系の真空度を0.05~3KPaに制御し、減圧蒸留条件下で行われる。
【0112】
好ましくは、前記工程b)での反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする。
【0113】
好ましくは、前記工程b)でのエステル交換反応の転化率は90%以上である。
【0114】
好ましくは、前記工程c)におけるシリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水は、以下のモル配合比を有する。
有機塩基テンプレート剤/(SiO2+TiO2)=0.1~5、
2O/(SiO2+TiO2)=30~300。
【0115】
ここで、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、有機塩基テンプレート剤は、N原子のモル数に基づいて計算される。
【0116】
前記工程c)で使用された有機塩基テンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル基水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピル基アンモニウムなどの1つまたは複数種類であり、または、これらの第四級アンモニウム塩類または第四級アンモニウム塩基類と、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、プトレッシン、ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの脂肪族アミンまたはアルカノールアミン系化合物からなる混合物である。
【0117】
好ましくは、前記工程c)でのエージング過程を省略してもよいし、エージング温度を20~100℃とし、エージング時間を1~50時間とするエージングを実施してもよい。
【0118】
好ましくは、前記工程c)でのエージング過程は、静的または動的で行われる。
【0119】
好ましくは、前記工程d)での結晶化温度を120~180℃とし、結晶化時間を1~15日とする。
【0120】
好ましくは、前記工程d)での結晶化過程は、静的または動的で行われる。
【0121】
好ましくは、前記工程e)で得られた前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、孔径分布が比較的狭いメソ孔構造を有し、且つより少ない非骨格チタンを含有する
【0122】
実施例1:
具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
オルトケイ酸テトラエチル5g、オルトチタン酸テトラエチル0.29gと10gのポリエチレングリコール200を三つ口フラスコに加えて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、175℃まで昇温し、反応時間を5時間とし、エステル交換反応の転化率が、75%であった。ポンプに接続されて減圧蒸留を行ってエステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を3KPaに制御し、反応温度を200℃とし、反応時間を1時間とし、エステル交換反応の転化率が、92%で、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得た。得られたシリコン-チタンエステル系ポリマーを水酸化テトラプロピルアンモニウム8g(25重量%水溶液)と、水12gとを混合し、室温で2時間攪拌エージングさせ、ステンレス製高圧合成釜に移した。このとき、合成体系の各成分のモル配合比は、Ti0.05(PEG-200)2Si0.95:0.4TPAOH:40H2Oであった。高圧合成釜を密閉して恒温170℃に昇温した後のオーブンに入れ、自生圧力下で2日間結晶化した。結晶化終了後、固体生成物を遠心分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、110℃空気中で乾燥した後、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。C1と符号が付けられた。当該原粉のサンプル(C1)を取ってXRD分析を行い、分析結果は、図1に示すとおりであり、図から分かるように、サンプルはTS-1分子篩であった。当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)図は、図2に示すとおりであり、図から分かるように、サンプル粒径は200nm前後であった。当該サンプルのUV-VIS拡散反射スペクトルは、図3に示すとおりであり、図から分かるように、サンプル中には非骨格チタンはほとんどなかった。当該サンプルの物理吸着および孔分布曲線は、図4に示すとおりであり、図から分かるように、サンプルは2nm前後のメソ孔を有した。
【0123】
実施例2:
具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
オルトケイ酸テトラエチル5g、オルトチタン酸テトラエチル0.05gとエチレングリコール3.13gを三つ口フラスコに加えて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、100℃まで昇温し、反応時間を5時間とし、エステル交換反応の転化率が、70%であった。ポンプに接続されて減圧蒸留を行ってエステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を3KPaに制御し、反応温度を170℃とし、反応時間を1時間とし、エステル交換反応の転化率が、90%で、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得た。得られたシリコン-チタンエステル系ポリマーを水酸化テトラプロピルアンモニウム2g(25重量%水溶液)と、水3gとを混合し、室温で2時間攪拌エージングさせ、ステンレス製高圧合成釜に移した。このとき、合成体系の各成分のモル配合比は、Ti0.01(OCH2CH2O)2Si0.99:0.1TPAOH:10H2Oであった。高圧合成釜を密閉して恒温120℃に昇温した後のオーブンに入れ、自生圧力下で15日間結晶化した。結晶化終了後、固体生成物を遠心分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、110℃空気中で乾燥した後、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。C2と符号が付けられた。
【0124】
実施例3:
具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
オルトケイ酸テトラメチル5g、オルトチタン酸テトラブチル2.8gと1,4-ベンゼンジメタノール11.35gを三つ口フラスコに加えて均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、160℃まで昇温し、反応時間を5時間とし、エステル交換反応の転化率が、80%であった。ポンプに接続されて減圧蒸留を行ってエステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を3KPaに制御し、反応温度を230℃とし、反応時間を1時間とし、エステル交換反応の転化率が、95%で、シリコン-チタン1,4-ベンゼンジメタノール系ポリマーを得た。得られたシリコン-チタン1,4-ベンゼンジメタノール系ポリマーを水酸化テトラプロピルアンモニウム330g(25重量%水溶液)と、水120gとを混合し、室温で2時間攪拌エージングさせ、ステンレス製高圧合成釜に移した。このとき、合成体系の各成分のモル配合比は、Ti0.2(OC64O)2Si0.8:10TPAOH:500H2Oであった。高圧合成釜を密閉して恒温180℃に昇温した後のオーブンに入れ、自生圧力下で1日間結晶化した。結晶化終了後、固体生成物を遠心分離し、脱イオン水で中性まで洗浄し、110℃空気中で乾燥した後、階層的細孔を有するTS-1分子篩を得た。C3と符号が付けられた。
【0125】
実施例1~実施例3における前記結晶化が、静的結晶化とする。
【0126】
実施例4:
実施例1と同様の方法を用いて階層的細孔を有するTS-1分子篩を製造し、具体的な製造条件と実施例1との異なるところは、表1および表2に示すとおりである。
【表1】
【表2】
【0127】
実施例4に関わる結晶化は、動的結晶化であり、結晶化条件は、回転オーブンを用いて、結晶化温度と結晶化時間は、表2に示すとおりであり、回転オーブンの回転速度を35rpmとした。
【0128】
実施例5:相構造分析
実施例1~実施例4におけるサンプルC1~C7に対してXRD物相構造分析を行った結果は、典型的に、図1に示すとおりである。図1は実施例1で調製したサンプルC1のXRDスペクトルであり、図から分かるように、サンプルC1が、TS-1分子篩であった。
【0129】
他のサンプルの試験結果は、実施例1のサンプルC1のスペクトルで回折ピークの強度のみにやや差があり、いずれもTS-1分子篩であった。
【0130】
実施例6:形態観察
実施例1~実施例4におけるサンプルC1~C7に対してSEM形態観察を行った結果は、典型的に、図2に示すとおりである。図2は実施例1で調製したサンプルC1のSEMスペクトルであり、図から分かるように、サンプルの粒径が、200nm前後であった。
【0131】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプルC1のテスト結果と同様であり、サンプルの粒径が、100~500nm前後であった。
【0132】
実施例7:スペクトル分析
実施例1~実施例4のサンプルC1~C7に対してUV-VIS拡散反射スペクトル分析を行った結果は、典型的に、図3に示すとおりである。図3は実施例1で調製したサンプルC1のUV-VIS拡散反射スペクトルであり、図から分かるように、サンプルには非骨格チタンはほとんどなかった。
【0133】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプル1のテスト結果と同様であり、サンプルには非骨格チタンはほとんどなかった。
【0134】
実施例8:孔分布分析
実施例1~実施例4のサンプルC1~C7に対して物理吸着および孔分布分析を行った結果は、典型的に、図4に示すとおりである。図4は実施例1で調製したサンプルC1の物理吸着および孔分布結果であり、図から分かるように、サンプルは2nm前後のメソ孔を有した。
【0135】
他のサンプルのテスト結果は、実施例1におけるサンプル1のテスト結果と同様であり、すべてのサンプルには2~10nmのメソ孔を有した。
【0136】
上記の説明では本出願のいくつかの実施形態だけが示されているが、これらの実施形態は例示を目的とする非制限的なものであり、当業者であれば、本出願の原理と主旨から逸脱することなく、本出願の技術手段範囲内でこれらの実施例に対して若干の修正、改善を行うことができ、本出願の範囲は特許請求の範囲とその等価物により限定されることが理解できる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン-チタンエステル系ポリマーをシリコン源/チタン源として用いる、ことを特徴とする階層的細孔を有するTS-1分子篩の製造方法。
【請求項2】
前記方法は、シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤、水を含む混合物を結晶化して、前記階層的細孔を有するTS-1分子篩を得る工程を含み、
前記結晶化が、水熱結晶化である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーは、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを含む原料からエステル交換反応を行って得られ
前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.001~0.2、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.5~5)x:4を満たし、
ここで、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数であり、
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算され
好ましくは、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールのモル比は、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.005~0.1、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリオール=(0.8~1.2)x:4を満たし、
ここで、xは1モル当たりの前記ポリオールに含まれている水酸基のモル数であり、
前記各物質のモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、100~160℃で4~8時間反応させることであり、
好ましくは、前記エステル交換は、減圧蒸留をさらに含み、前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaまたは0.05~3KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ケイ酸エステルは、式Iで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つ
から選ばれ、
式I:
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる、
または
前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸メチル、ケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、ケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記チタン酸エステルは、式IIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれ、
式II:
【化2】
式中、R5,6、R7、R8が独立して、C1~C10のアルキル基のうちの1つから選ばれる、
または
前記チタン酸エステルは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステルとポリオールを混合し、攪拌条件下でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程を含み、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーの調製方法は、反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、前記シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.05~10、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=5~500を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコン-チタンエステル系ポリマー、テンプレート剤と水のモル比は、テンプレート剤:シリコン-チタンエステル系ポリマー=0.1~5、水:シリコン-チタンエステル系ポリマー=30~300を満たし、
ここで、前記テンプレート剤のモル数は、テンプレート剤におけるN原子のモル数に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーのモル数は、シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量とチタンの含有量の和に基づいて計算され、
前記シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるシリコンの含有量は、SiO2のモル数に基づいて計算され、
シリコン-チタンエステル系ポリマーにおけるチタンの含有量は、TiO2のモル数に基づいて計算され、
前記水のモル数は、H2O自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記テンプレート剤は、有機塩基テンプレート剤のうちの少なくとも1つから選ばれ
好ましくは、前記有機塩基テンプレート剤は、Aを含み、前記Aは、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルプロピル水酸化アンモニウム、ハロゲン化テトラプロピルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム、ハロゲン化トリエチルプロピルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選ばれ、
好ましくは、前記有機塩基テンプレート剤は、Bをさらに含み、
前記Bは、脂肪族アミン、アルカノールアミン系化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる、または
前記Bは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化の条件は、密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で30日以下結晶化させることである、または
前記結晶化の条件は、密閉条件下で120~180℃まで昇温し、自生圧力下で1~15日間結晶化させることであり、
好ましくは、前記混合物は、エージングを経た後に結晶化し、前記エージング条件は、120℃以下の温度で0~100時間エージングさせることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記TS-1分子篩の製造方法は、ケイ酸エステル、チタン酸エステル、およびポリオールを均一に混合し、攪拌状態下でエステル交換反応を行い、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、
工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、シリコン-チタンエステル系ポリマーを得る工程b)と、
工程b)で得られたシリコン-チタンエステル系ポリマー、有機塩基テンプレート剤と水を混合し、120℃以下の温度で0~100時間エージングし、ゲル混合物を得る工程c)と、
工程c)で得られたゲル混合物を密閉条件下で100~200℃まで昇温し、自生圧力下で0~30日間以下結晶化し、前記TS-1分子篩を得る工程d)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩は、2~10nmの孔径を有するメソ孔を含む、または
前記階層的細孔を有するTS-1分子篩の粒径は、100~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
22存在下での有機物の選択的酸化反応における、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により製造された階層的細孔を有するTS-1分子篩の使用

【国際調査報告】