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特表2022-506877金属層との接着力が向上したポリイミド複合フィルムおよびこれを製造する方法
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  • 特表-金属層との接着力が向上したポリイミド複合フィルムおよびこれを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】金属層との接着力が向上したポリイミド複合フィルムおよびこれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20220107BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220107BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220107BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20220107BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20220107BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220107BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220107BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/34
B32B7/022
B32B15/088
B32B15/20
C08G73/10
C08J5/18 CFG
H05K1/03 670A
H05K1/03 610N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524981
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 KR2019015158
(87)【国際公開番号】W WO2020096410
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0137415
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0141836
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ・ジョン ユル
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AB06
4F071AB07
4F071AB08
4F071AB09
4F071AC12
4F071AC16
4F071AC18
4F071AD02
4F071AE19
4F071AE20
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF58Y
4F071AF62
4F071AG01
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH13
4F071AH16
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4F071BB02
4F071BB06
4F071BC01
4F100AB02B
4F100AB10B
4F100AB12B
4F100AB13B
4F100AB14B
4F100AB15B
4F100AB16B
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB19B
4F100AB25B
4F100AB31B
4F100AH06B
4F100AH08B
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
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4F100GB43
4F100JK02B
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4J043TA71
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4J043UA132
4J043UB012
4J043UB121
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA051
4J043VA052
4J043XA04
4J043XA16
4J043YA13
4J043YA28
4J043YA29
4J043ZA05
4J043ZA31
4J043ZA32
4J043ZA34
4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、金属層との接着力に優れ、機械的物性が担保されるポリイミド複合フィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリアミド酸溶液に由来する第1ポリイミド層;
第2ポリアミド酸溶液に由来し、前記第1ポリイミド層の片面または両面に垂直方向に隣接して形成されている少なくとも一つの第2ポリイミド層;
無機系粉末;および
カップリング剤を含み、前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%が前記第2ポリイミド層に存在し、
常温で金属層との接着力が0.6kgf/mm2以上であり、引張強度が0.45GPa以上であり、モジュラスが6.0GPa以上である、ポリイミド複合フィルム。
【請求項2】
前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも99重量%が前記第2ポリイミド層に存在する、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項3】
前記無機系粉末は、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、銅、チタニウム、銀、金、コバルト、マンガンおよびジルコニウムからなる群から選択される1種以上を含む金属粉末、または、前記群から選択される2種以上の金属が合金された粉末を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項4】
前記無機系粉末は、平均粒径(D50)が0.1μmないし2μmである、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項5】
前記カップリング剤は、チタネート系カップリング剤、有機クロム錯剤系カップリング剤、シラン系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項6】
前記ポリイミド複合フィルムは、
前記第2ポリイミド層が、前記第1ポリイミド層の片面に形成された構造であり、
前記第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの総重量を基準として0.02重量%ないし2重量%の無機系粉末および第2ポリイミド層の総重量を基準として200ppmないし1000ppmのカップリング剤を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項7】
前記ポリイミド複合フィルムは、
前記第1ポリイミド層の両面に形成された一対の第2ポリイミド層を含み、
前記第2ポリイミド層のそれぞれは、それの総重量を基準として200ppmないし1000ppmのカップリング剤および前記ポリイミド複合フィルムの総重量に対して、0.02重量%ないし2重量%の無機系粉末を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項8】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液は、同一の単量体の組み合わせまたは異なる単量体の組み合わせから製造され、
前記単量体の組み合わせは、1種以上のジアンハイドライド単量体および1種以上のジアミン単量体を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項9】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液が同一の単量体の組み合わせから製造される場合に、前記ジアンハイドライド単量体は、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)を含み、
3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)または2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)をさらに含み、
前記ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン、PDA、PPD)および4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン、ODA)を含む、請求項8に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項10】
前記ポリイミド複合フィルムは、平均厚さが15ないし100μmである、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載のポリイミド複合フィルムを製造する方法であって、
第2ポリアミド酸溶液、無機系粉末およびカップリング剤を含む第2組成物と第1ポリアミド酸溶液を含む第1組成物をそれぞれ製造するステップ;
前記第1組成物と第2組成物とを多層共押出ダイに供給し、前記共押出ダイを用いて、第1組成物と第2組成物とが隣接して積層されるように共押出するステップ;および
共押出された前記第1組成物および第2組成物をイミド化するステップを含む、ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記共押出するステップは、第2組成物、第1組成物および第2組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリイミド複合フィルムは、第2組成物から由来した第2ポリイミド層が、第1組成物から由来した第1ポリイミド層の両面に形成された構造である、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記共押出するステップは、第2組成物および第1組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリミッド複合フィルムは、第2組成物から由来した第2ポリイミド層が、第1組成物から由来した第1ポリイミド層の片面に形成された構造である、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第2組成物に含まれる第2ポリアミド酸溶液が閉環および脱水反応でポリイミド樹脂に変換される過程で、前記無機系粉末およびカップリング剤が前記ポリイミド樹脂と相互作用して結着される、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリイミド複合フィルムを絶縁フィルムとして含む、電子部品。
【請求項16】
前記電子部品が半導体装置またはフレキシブル回路基板である、請求項15に記載の電子部品。
【請求項17】
前記軟性回路基板は、
ポリイミド複合フィルム;および
前記ポリイミド複合フィルムの第2ポリイミド層の表面に銅がスパッタリングによって蒸着された金属層を含む、請求項16に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層との接着力が向上したポリイミド複合フィルムおよびこれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、硬直な芳香族主鎖と共に化学的安定性が非常に優れたイミド環を基にして、有機材料の中でも最高水準の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐薬品性、耐候性を有する高分子材料である。したがって、ポリイミドは前述の特性が強く要求される微小電子部品の絶縁材料として脚光を浴びている。
微小電子部品の例としては、電子製品の軽量化と小型化に対応可能であるように、回路の集積度が高く、柔軟な薄型回路基板を挙げることができ、前記ポリイミドが薄型基板の絶縁膜として広く用いられている。
前記薄型回路基板は、絶縁フィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が一般的であり、このような薄型回路基板を、広い意味でフレキシブル金属箔積層板(Flexible Metal Foil Clad Laminate)と指称し、金属箔として薄い銅板を用いるときには、より狭い意味でフレキシブル銅箔積層板(Flexible Copper Clad Laminate;FCCL)と指称することもある。
このようなフレキシブル金属箔積層板の製造方法では、例えば、(i)金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延(casting)または塗布した後、イミド化するキャスティング法、(ii)スパッタリング(Sputtering)によってポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、および(iii)熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔を熱と圧力で接合させるラミネート法などを挙げることができる。二重メタライジング法は、例えば、20ないし50μmの厚さのポリイミドフィルム上に銅などの金属をスパッタリングしてタイ(Tie)層、シード(Seed)層を順次に蒸着することによって、フレキシブル金属箔積層板を生産する方法であり、回路パターンのピッチ(pitch)が35μm以下の超微細回路を形成させるのに有利であるので、COF(chip on film)用フレキシブル金属箔積層板を製造するのに広く使用されている。
最近では、微細回路間のピッチと、それぞれの線幅がさらに狭くなっており、これによって、ポリイミドフィルムと金属層との接着面積が減少する傾向であって、ポリイミドフィルムと金属層との間により強い接着力が求められている。
従来には、ポリイミドフィルムの表面と金属層の表面とを化学的および/または物理的に結着させることができるカップリング剤を使用することによって、ポリイミドフィルムと金属板との間の接着力の向上を図った。このとき、化学的結着とは、一般的にカップリング剤の一部分は、ポリイミドフィルムの高分子鎖中の一部と水素結合し、他の一部分が金属層の表面に存在する酸素などと水素結合する相互作用を意味することができる。
他方で、スパッタリングによって蒸着される金属層、例えば、銅との表面エネルギーを向上させるために金属粉末をポリイミドフィルム内に適用させることによって接着力の向上を誘導することもあった。
【0003】
一方、ポリイミドフィルムは、これの前駆体であるポリアミド酸溶液から製造できるが、具体的には、ポリアミド酸溶液を支持体上に薄い薄膜の形態に塗布した後、熱および/または化学的触媒による閉環および脱水反応を通じてポリアミド酸中のアミック酸基(amic acid group)をイミド基(imide group)に変換させる「イミド化」過程によってポリイミドフィルムを製造することができる。
ここで、カップリング剤と金属粉末とは、イミド化の過程中、ポリイミド高分子鎖の一部に物理的および/または化学的に結着することができる。このような理由により、カップリング剤と金属粉末は、液状としてポリアミド酸溶液に混合されて使用されている。
ただし、前記のようにポリアミド酸溶液に混合されたカップリング剤は、溶液全般に分散し、これによって、ポリアミド酸溶液のイミド化完了時点まで依然として分散した状態を維持することができる。したがって、製造が完了したポリイミドフィルムでカップリング剤のほとんどは、金属層と相互作用し難いフィルムの内側に存在するようになり、金属層と相互作用が可能なフィルムの表面や、これに隣接した部位には、相対的に少ない量で存在するか、場合によって、存在しないこともある。
また、ポリアミド酸溶液に混合された金属粉末は、それの高い比重によりポリアミド酸溶液内に沈降することができる。これは、前述の場合と同様に、製造が完了したポリイミドフィルムで金属粉末のほとんどがフィルムの金属層と相互作用し難い内側に存在するようになり、フィルムの表面や、これに隣接した部位には、相対的に少ない量で存在するか、場合によっては存在しなくなる主な原因である。
以上のような理由により、カップリング剤と金属粉末を含む従来のポリイミドフィルムの場合、金属層の表面と相互作用することができるカップリング剤および/または金属粉末の相当部分が欠乏することがあり、結果として金属層との接着力が所望の水準に発現し難い問題がある。
また、ポリイミドフィルムの内側に存在するカップリング剤と金属粉末は、ポリイミドフィルムの引張強度、モジュラスなどの機械的物性の低下を誘発することがある。
すなわち、従来のポリイミドフィルムは、カップリング剤と金属粉末の使用による微弱な接着力の向上に比べて、ポリイミドの固有の機械的物性がかなり犠牲になる二次的な問題を内在する。
したがって、前述の問題が解消された新規のポリイミドフィルムが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面によれば、本発明は、ポリイミドの優れた機械的物性を維持しつつ、金属層との接着力が向上されたポリイミド複合フィルムを提供することができる。
本発明のポリイミド複合フィルムは、複数のポリイミド層(polyimide layer)および金属層に対する密着性の向上に有利に作用する無機系粉末およびカップリング剤を含むことができる。
このようなポリイミド複合フィルムは、無機系粉末およびカップリング剤のほとんどが複合フィルムの外郭をなすポリイミド層に存在することを特徴として含むことができる。したがって、例えば、ポリイミド複合フィルムの外郭のポリイミド層上にスパッタリングで形成される金属層と外郭のポリイミド層に存在する無機系粉末およびカップリング剤のうちほとんどが相互作用することができ、このような作用によって、本発明のポリイミド複合フィルムは、常温で金属層に対する非常に優れた接着性を有することができる。
他の側面で、カップリング剤および無機系粉末は、金属層と相互作用することができる複合フィルムの外郭部位に集中されていることがあるので、これらを制限的な含量で使用しても、十分な接着力が発現できると共に、無機系粉末およびカップリング剤による機械的物性の低下は可能な限り抑制される有利な結果につながり得る。それだけでなく、カップリング剤と無機系粉末がポリイミド複合フィルムの内側に存在する場合、ポリイミドフィルムの機械的物性が大きく低下することがあるが、本発明のポリイミド複合フィルムは、前述の構造的な特徴に起因して、このような物性の低下が実質的に生じない。
本発明の他の側面で、本発明は、以上のような利点を有する新規のポリイミド複合フィルムの実現に適した製造方法を提供する。
このような側面によって前述の従来の問題を解決することができるはずであり、そこで、本発明は、これの具体的実施例を提供するのに実質的な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施態様において、本発明は、第1ポリアミド酸溶液に由来する第1ポリイミド層;
第2ポリアミド酸溶液に由来し、前記第1ポリイミド層の片面または両面に地面に対して垂直方向に隣接して形成されている少なくとも一つの第2ポリイミド層;
無機系粉末;および
カップリング剤を含むポリイミド複合フィルムであって、
前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%が第2ポリイミド層に存在し、
常温で金属層との接着力が0.6kgf/mm2以上であり、引張強度が0.45GPa以上であり、モジュラスが6GPa以上である、ポリイミド複合フィルムを提供する。
一つの実施態様において、本発明は、前記ポリイミド複合フィルムを製造する方法を提供する。
一つの実施態様において、本発明は、前記ポリイミド複合フィルムを絶縁フィルムとして含む、電子部品を提供する。前記電子部品は、半導体装置またはフレキシブル回路基板であることができ、詳細には、フレキシブル回路基板であることができる。
前記フレキシブル回路基板は、ポリイミド複合フィルムおよび前記ポリイミド複合フィルムの第2ポリイミド層の表面に銅がスパッタリングによって蒸着された金属層を含むことができる。
【0006】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語や単語は通常的または辞典的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は、その自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎないだけで、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに置き換えられる様々な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに別のことを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、または、これらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、または、これらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
本明細書において、「ジアンハイドライド(二無水物;dianhydride)」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアンハイドライドでなくてもよいが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミド酸を形成するものであり、このポリアミド酸は、再びポリイミドに変換することができる。
本明細書において、「ジアミン(diamine)」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアミンでなくてもよいが、それにもかかわらず、ジアンハイドライドと反応してポリアミド酸を形成するものであり、このポリアミド酸は、再びポリイミドに変換することができる。
本明細書において、量、濃度、または、他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または、好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別に開示されるかにかかわらず、任意の一対の任意の上範囲の限界値、または、好ましい値および任意の下範囲の限界値、または、好ましい値で形成され得るすべての範囲を具体的に開示するものと理解されなければならない。数値の範囲が本明細書で言及される場合、別に記述されなければ、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての整数と分数を含むものと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定の値に限定されないものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】共押出機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリイミド複合フィルム
本発明に係るポリイミド複合フィルムは、
第1ポリアミド酸溶液に由来する第1ポリイミド層;
第2ポリアミド酸溶液に由来し、前記第1ポリイミド層の片面または両面に垂直方向に隣接して形成されている少なくとも一つの第2ポリイミド層;
無機系粉末;および
カップリング剤を含むポリイミド複合フィルムであって、
前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%が第2ポリイミド層に存在することができる。
前記ポリイミド複合フィルムは、さらに、平均厚さが15ないし100μm、詳細には、20μmないし50μm、特に詳細には、25μmないし40μmであることができる。
前記第2ポリイミド層には、前記無機系粉末およびカップリング剤がそれぞれの総重量を基準として少なくとも99重量%が存在することができる。
すなわち、本発明において、第2ポリイミド層とは、第2ポリアミド酸溶液に由来し、かつ、前記無機系粉末およびカップリング剤がそれぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%以上、詳細には、99重量%以上存在しながら、ポリイミド複合フィルムの外側面をなす領域を意味することができる。
【0009】
前記第1ポリアミド酸溶液(または、第1組成物)と第2ポリアミド酸溶液(または、第2組成物)とを多層共押出ダイで共押出(co-extrusion)することによって、第1ポリイミド層の片面または両面に第2ポリイミド層が隣接して形成されたポリイミド複合フィルムを実現することができる。
このとき、第2ポリアミド酸溶液(または、第2組成物)は、無機系粉末およびカップリング剤を含有してもよいし、第1ポリアミド酸溶液(または、第1組成物)は、無機系粉末およびカップリング剤を含有しなくてもよい。
場合によっては、第1ポリアミド酸溶液と第2ポリアミド酸溶液とが層をなすように共押出された状態で、これらの溶液は、互いに接触した界面でごく一部が混合され得る。このように混合された一部は、後の熱処理の過程を通じて、第1ポリイミド層と第2ポリイミド層とが接合される界面部を形成することができる。このような界面部は、厚さの測定ができない程度の一部分であり得るので、独自の一つの層を形成するものとみることはできず、実質的にカップリング剤および無機系粉末を含まないか、または、ごく微量だけを含むことができる。
【0010】
ここで、第1ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの全体積に対して、60体積%ないし99体積%を占めることができ、第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの全体積に対して、1体積%ないし40体積%を占めることができる。
また、第1ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの平均厚さに対して、60%ないし99%の平均厚さを有することができ、第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの平均厚さに対して、1%ないし40%の平均厚さを有することができる。
前記体積および平均厚さの範囲に属する第1ポリイミド層および第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムが適正な水準の機械的物性を内在するのに特に好ましい範囲であり得る。特に、第1ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの機械的物性に最も大きく関与し得るので、前記範囲を下回ることは好ましくなく、前記範囲を上回ると、ポリイミド複合フィルムが後述する第2ポリイミド層、カップリング剤および無機系粉末による利点を有し難いため、好ましくない。
【0011】
以上のような構造を有するポリイミド複合フィルムは、例えば、ポリイミド複合フィルムに金属層がスパッタリングされるとき、複合フィルムの外郭層をなす第2ポリイミド層に多量存在する無機系粉末およびカップリング剤が前記金属層と相互作用して結着されるので有利である。
換言すると、本発明のポリイミド複合フィルムは、それに含有された無機系粉末およびカップリング剤のうちほとんどが、実質的に第2ポリイミド層に存在することができるので、第2ポリイミド層上にスパッタリングで形成される金属層、例えば、銅層が第2ポリイミド層に多量存在するカップリング剤および無機系粉末と相互作用して、互いを強く接着させることができる。
ここで、相互作用とは、広い意味では、カップリング剤および無機系粉末がポリイミド高分子鎖および金属層の両方に物理的および/または化学的に結着される過程、現象、形態などを意味することができ、より狭い意味で、
(i)カップリング剤の一部がポリイミドの高分子鎖の極性基のうちの少なくとも一部に水素結合によって結着し、カップリング剤の他の一部が金属層に存在する金属層の表面に存在する酸素などと水素結合によって結着すること;
(ii)カップリング剤の一部がポリイミドの高分子鎖に物理的に絡み合っており、カップリング剤の他の一部が金属層の金属粒子に単純接触していること;
(iii)カップリング剤の一部が無機系粉末およびポリイミド高分子鎖の両方に水素結合によって結着された状態で、無機系粉末上に金属層をなす金属が蒸着されて物理的および化学的に結着されていること;および/または
(iv)これらのすべてが組み合わされた過程、現象、形態などを意味することができる。
ただし、以上は、本発明の実施形態の理解を助けるための非制限的な例示に過ぎず、本発明のポリイミド複合フィルム、カップリング剤および無機系粉末が金属層に接着される形態が以上の例示で限定されるものではない。
【0012】
本発明のポリイミド複合フィルムのもう一つの利点は、金属層と相互作用しやすい第2ポリイミド層にカップリング剤および無機系粉末が集中して存在することができるので、ポリイミド複合フィルム全体を基準として、これらのカップリング剤と無機系粉末が多少限定的な含量で含有されても、金属層に対する所望の水準の接着力を発現することができる点である。
従来の通常のポリイミドフィルムは、金属層との密着性の向上を目的としてカップリング剤と無機系粉末を含有していたが、ポリイミドフィルムの内側、例えば、フィルムの中心部にほとんどのカップリング剤と無機系粉末が存在し、フィルムの中心部からフィルムの表面方向にカップリング剤と無機系粉末の濃度が減少する濃度勾配が生じ得る。このような理由により、前記通常のポリイミドフィルムは、フィルムの表面に隣接した部位にカップリング剤と無機系粉末が多数存在するようにするために、カップリング剤と無機系粉末を相対的に高含量で含有することが求められた。しかし、カップリング剤と無機系粉末などは、ポリイミドフィルムの機械的物性を低下させることができ、結果として、通常のポリイミドフィルムは、前記機械的物性を犠牲にして金属層との密着性の向上を期待するものであった。
一方、本発明の複合フィルムは、カップリング剤および無機系粉末がフィルムの限定的な部位、詳細には、複合フィルムの外郭をなす第2ポリイミド層にほとんどが存在することができ、含量も限定的であることができ、カップリング剤および無機系粉末がほとんど存在しない第1ポリイミド層によって複合フィルム全般の機械的強度が適正な水準に維持できるので、従来による通常のポリイミドフィルムと比較して、金属層に対する接着力および様々な機械的物性を適正な水準で両立することができる。
【0013】
これによって、本発明に係るポリイミド複合フィルムは、金属層との常温接着力が、0.6kgf/mm2以上、詳細には、0.7kgf/mm2ないし1.0kgf/mm2であることができ、引張強度が、0.45GPa以上、詳細には、0.48GPa以上、より詳細には、0.51GPa以上であることができ、モジュラスが、6GPa以上、詳細には、6.5GPa以上、より詳細には、7.0GPa以上であることができる。
【0014】
以上のように、接着力および引張強度、モジュラスなどの機械的物性が互いに適正な水準で両立することは、無機系粉末およびカップリング剤のそれぞれの含量が適正な水準であることが特に重要であり、そこで、本発明はこれらの好ましい含量を提供する。
これに対する一つの例において、前記ポリイミド複合フィルムは、
前記第2ポリイミド層が、前記第1ポリイミド層の片面に形成された構造であり、
前記第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの総重量を基準として、0.02重量%ないし2重量%、詳細には、0.02重量%ないし1.5重量%、さらに詳細には、0.05重量%ないし1.3重量%、特に詳細には、0.1重量%ないし1重量%の無機系粉末を含むことができ、第2ポリイミド層の総重量を基準として、200ppmないし1,000ppm、詳細には、400ppmないし800ppmのカップリング剤を含むことができる。
前記範囲を下回って無機系粉末が含有されると、金属層に対する接着力の向上に有利に作用することが難しく、前記範囲を上回って無機系粉末が含有されると、ポリイミド複合フィルムの機械的物性が低下することがある。
前記範囲を下回ってカップリング剤が含有されると、金属層に対する接着力の向上に有利に作用することが難しく、前記範囲を上回ってカップリング剤が含有されると、ポリイミド複合フィルムの機械的物性が低下することがある。
【0015】
前記ポリイミド複合フィルムは、また、前記第1ポリイミド層の両面に形成された一対の第2ポリイミド層を含み、
前記第2ポリイミド層のそれぞれは、それの総重量を基準として、200ppmないし1000ppmのカップリング剤および前記ポリイミド複合フィルムの総重量に対して、0.02重量%ないし2重量%の無機系粉末を含むことができる。
すなわち、前記第2ポリイミド層のうちいずれか一つは、ポリイミド複合フィルムの総重量を基準として、0.02重量%ないし2重量%、詳細には、0.02重量%ないし1.5重量%、さらに詳細には、0.05重量%ないし1.3重量%、特に詳細には、0.1重量%ないし1重量%の無機系粉末を含むことができ、前記第2ポリイミド層のうちいずれか一つの層の重量を基準として、200ppmないし1000ppm、詳細には、400ppmないし800ppmのカップリング剤を含むことができる。
前記ポリイミド層のうち、残りの一つも同様に、ポリイミド複合フィルムの総重量を基準として、0.02重量%ないし2重量%、詳細には、0.02重量%ないし1.5重量%、さらに詳細には、0.05重量%ないし1.3重量%、特に、詳細には、0.1重量%ないし1重量%の無機系粉末を含むことができ、前記第2ポリイミド層のうちいずれか一つの層の重量を基準として、200ppmないし1,000ppm、詳細には、400ppmないし800ppmのカップリング剤を含むことができる。
前記ポリイミド複合フィルムは、これを構成する2つの第2ポリイミド層の全重量を基準として、400ppmないし2,000ppm、詳細には、800ppmないし1,600ppmのカップリング剤を含むことができる。
前記範囲を下回って無機系粉末が含有されると、金属層に対する接着力の向上に有利に作用することが難しく、前記範囲を上回って無機系粉末が含有されると、ポリイミド複合フィルムの機械的物性が低下することがある。
前記範囲を下回ってカップリング剤が含有されると、金属層に対する接着力の向上に有利に作用することが難しく、前記範囲を上回ってカップリング剤が含有されると、ポリイミド複合フィルムの機械的物性が低下することがある。
【0016】
本発明において、前記無機系粉末は金属粉末であることができ、非制限的に、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、銅、チタニウム、銀、金、コバルト、マンガンおよびジルコニウムからなる群から選択される1種以上の金属粉末、または、前記群から選択される2種以上の金属が合金された粉末を含むことができる。
前記無機系粉末は、平均粒径(D50)が0.1μmないし2μmであることができる。
前記範囲を下回る微細な無機系粉末は、金属層に対する接着力の向上に有利に作用することが難しい。
前記範囲を上回る大きい無機系粉末は、第2ポリイミド層の表面で現われ、突出痕やピンホールなどの表面欠陥につながることがあり、他の側面で、相対的に大きい無機系粉末は、第2ポリイミド層の表面で凝集され、接着力を阻害する異物として作用することがあるので、好ましくない。
【0017】
前記カップリング剤は、チタネート系カップリング剤、有機クロム錯剤系カップリング剤、シラン系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤からなる群から選択される1種以上を含むことができ、詳細には、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリスイソプロポキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3,3-トリフルオロプロピル)シラン、ドデカフルオロヘプチルプロピルメチルジメトキシシラン、ドデカフルオロヘプチルプロピルトリメトキシシラン、トリメチル(トリフルオロメチル)シラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル-ジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランハイドロクロライド、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびトリアミノプロピル-トリメトキシシランからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0018】
一つの具体的な例において、前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液は、同一の単量体の組み合わせから製造することができ、前記単量体の組み合わせは、1種以上のジアンハイドライド単量体および1種以上のジアミン単量体を含むことができる。
前記前駆体組成物中の前記ポリアミド酸は、有機溶媒中で、1種以上のジアミン単量体と1種以上のジアンハイドライド単量体との重合反応で製造することができる。
前記ジアミン単量体は、芳香族ジアミンであって、以下のように分類して例を挙げることができる。
1)1,4-ジアミノベンゼン(または、パラフェニレンジアミン、PDA、PPD)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(または、DABA)などのように、構造上、1つのベンゼン環を有するジアミンであって、相対的に硬直な構造のジアミン;
2)4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(または、オキシジアニリン、ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(または、4,4’-メチレンジアミン、MDA)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’、5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメチルベンジジン(または、o-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(または、m-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2、2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上、2つのベンゼン環を有するジアミン;
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(または、TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(または、TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのように、構造上、3つのベンゼン環を有するジアミン;
4)3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上、4つのベンゼン環を有するジアミン。
これらは、所望により、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
前記ジアンハイドライド単量体は、芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドであることができる。
前記芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドは、ピロメリット酸ジアンハイドライド(または、PMDA)、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(または、s-BPDA)、2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(または、a-BPDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(または、ODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’、4’-テトラカルボン酸ジアンハイドライド(または、DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3’、4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(または、BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3’、4’-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3’、4’-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドなどを挙げることができる。これらは、所望により、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
一つの具体的な例において、前記ジアンハイドライド単量体は、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)を含み、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)または2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)をさらに含み、
前記ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン、PDA、PPD)および4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン、ODA)を含むことができる。
一つの具体的な例において、前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液は、異なる単量体の組み合わせから製造することができ、前記単量体の組み合わせは、1種以上のジアンハイドライド単量体および1種以上のジアミン単量体を含むことができる。
【0021】
前記前駆体組成物中の前記ポリアミド酸は、有機溶媒中で、1種以上のジアミン単量体と1種以上のジアンハイドライド単量体との重合反応で製造することができる。
一つの具体的な例において、前記第1ポリアミド酸溶液と第2ポリアミド酸溶液は、互いに異なる単量体の組み合わせから製造してもよいし、第2ポリアミド酸は、第1ジアンハイドライド、第2ジアンハイドライド、第1ジアミンおよび第2ジアミンの重合で製造されるものであってもよい。
このとき、前記第1ジアンハイドライドは、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)および2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)からなる群から選択される1種以上であり、
前記第1ジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)およびメタフェニレンジアミン(MPD)からなる群から選択される1種以上であり、
前記第2ジアンハイドライドは、前記第1ジアンハイドライドと異なる1種以上のジアンハイドライドを含み、
前記第2ジアミンは、前記第1ジアミンと異なる1種以上のジアミンを含むことができる。
前記第2ジアンハイドライドは、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(ODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’、4’-テトラカルボン酸ジアンハイドライド(DSDA)、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(または、BTDA)および2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンハイドライド(BPADA)からなる群から選択される1種以上を含むことができ、前記第2ジアミンは、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン、ODA)および3,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
一つの具体的な例において、前記第1ジアンハイドライド、第2ジアンハイドライド、第1ジアミンおよび第2ジアミンはそれぞれ、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド、ピロメリット酸ジアンハイドライド、パラフェニレンジアミンおよび4,4’-ジアミノジフェニルエーテルであることができる。
【0022】
前記第1ジアンハイドライドの含量は、前記第1ジアンハイドライドおよび第2ジアンハイドライドの全モル数を基準として、40ないし50モル%であり、前記第2ジアンハイドライドの含量は、50ないし60モル%であることができ、前記第1ジアミンの含量は、前記第1ジアミンおよび第2ジアミンの全モル数を基準として、80ないし92モル%であり、前記第2ジアミンの含量は、8ないし20モル%であることができる。
前記のように、第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液が異なる単量体の組み合わせから製造される場合に、これから製造されるポリイミド複合フィルムは、熱膨張係数が2ないし7μm/m*℃であり、ガラス転移温度が370℃以上であることができる。
【0023】
ポリイミド複合フィルムの製造方法
第2ポリアミド酸溶液、無機系粉末およびカップリング剤を含む第2組成物と第1ポリアミド酸溶液を含む第1組成物をそれぞれ製造するステップ;
前記第1組成物と第2組成物とを多層共押出ダイに供給し、前記共押出ダイを用いて、第1組成物と第2組成物とが隣接して積層されるように共押出するステップ;および
共押出された前記第1組成物および第2組成物をイミド化するステップを含むことができる。
【0024】
前記有機溶媒は、ポリアミド酸が溶解し得る溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であることができる。
前記非プロトン性極性溶媒の非制限的な例として、
N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)およびジグライム(Diglyme)などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を使用して、ポリアミド酸の溶解度を調節することもできる。
一つの例において、本発明の第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液の製造に特に好ましく使用することができる有機溶媒は、アミド系溶媒であるN,N’-ジメチルホルムアミドおよびN,N’-ジメチルアセトアミドであることができる。
【0025】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液を重合する方法は、以下のような方法を通じて各々製造することができる:
(1)ジアミン単量体の全量を有機溶媒中に入れ、その後、ジアンハイドライド単量体をジアミン単量体と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(2)ジアンハイドライド単量体の全量を有機溶媒中に入れ、その後、ジアミン単量体をジアンハイドライド単量体と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン単量体のうち一部の成分を有機溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアンハイドライド単量体のうち一部の成分を約95モル%ないし105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン単量体成分を添加し、これに続いて、残りのジアンハイドライド単量体成分を添加して、ジアミン単量体およびジアンハイドライド単量体が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(4)ジアンハイドライド単量体を有機溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物のうち一部の成分を95モル%ないし105モルの割合で混合した後、他のジアンハイドライド単量体成分を添加し、続いて、残りのジアミン単量体成分を添加して、ジアミン単量体およびジアンハイドライド単量体が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;および
(5)有機溶媒中で、一部のジアミン単量体成分と一部のジアンハイドライド単量体成分とのいずれか一つが過量になるように反応させて第1重合物を形成し、また、他の有機溶媒中で、一部のジアミン単量体成分と一部のジアンハイドライド単量体成分とのいずれか一つが過量になるように反応させて第2重合物を形成した後、第1、第2重合体を混合し、重合を完結する方法であって、このとき、第1重合物を形成するときに、ジアミン単量体成分が過剰である場合、第2重合体では、ジアンハイドライド単量体成分を過量にし、第1重合体でジアンハイドライド単量体成分が過剰である場合、第2重合体では、ジアミン単量体成分を過量にして、第1、第2重合体を混合し、これらの反応に使用される全体のジアミン単量体成分とジアンハイドライド単量体成分とが実質的に等モルとなるようにして重合する方法。
ただし、前記方法は、本発明の実施を助けるための例示であって、本発明の範疇がこれらに限定されるものではなく、公知の如何なる方法を使用し得ることは言うまでもない。
【0026】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液に含有されるポリアミド酸は、それぞれ重量平均分子量が、150,000g/mole以上ないし1,000,000g/mole以下であることができ、詳細には、260,000g/mole以上ないし700,000g/mole以下であることができ、さらに詳細には、280,000g/mole以上ないし500,000g/mole以下であることができる。
このような重量平均分子量を有するポリアミド酸は、より優れた耐熱性と機械的物性を有するポリイミド複合フィルムの製造に好ましい。
一般的に、ポリアミド酸の重量平均分子量は、ポリアミド酸と有機溶媒を含むポリアミド酸溶液の粘度に比例するため、前記粘度を調整してポリアミド酸の重量平均分子量を前記範囲に制御することができる。
これは、ポリアミド酸溶液の粘度がポリアミド酸固形分の含量、詳細には、重合反応に使用されたジアンハイドライド単量体とジアミン単量体との総量に比例するからである。ただし、重量平均分子量が粘度に対して一次元の線形的な比例関係を示すものではなく、対数関数の形態で比例する。
すなわち、より高い重量平均分子量のポリアミド酸を得るために粘度を増加させても、重量平均分子量が増加し得る範囲が制限的であるのに対し、粘度を過度に高くする場合、共押出のための製膜工程で多層ダイを通じたポリアミド酸溶液の吐出時に、ダイ内部の圧力上昇などによる工程性の問題を誘起することができる。
そこで、本発明の第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液のそれぞれは、15重量%ないし20重量%のポリアミド酸固形分および80重量%ないし85重量%の有機溶媒を含むことができ、この場合、粘度が90,000cP以上ないし150,000cP以下、詳細には、100,000cP以上ないし130,000cPであることができる。このような粘度範囲内で、ポリアミド酸の重量平均分子量が前記範囲に属することができ、ポリアミド酸溶液は、前述の製膜工程上の問題を誘発しないことができる。
【0027】
一方、ポリイミド複合フィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループ硬さなどのフィルムの様々な特性を改善する目的で、第1組成物および第2組成物の製造時に、充填材を添加することもできる。添加される充填材は、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などを挙げることができる。
充填材の平均粒径は、特に限定されるものではなく、改質しようとするポリイミド複合フィルムの特性と添加する充填材の種類によって決定することができる。一つの例において、前記充填材の平均粒径は、0.05μmないし2.5μm、詳細には、0.1μmないし2μm、さらに好ましくは0.1μmないし2μm、特に詳細には、0.1μmないし2μmであることができる。
平均粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が生じ難くなり、この範囲を上回ると、充填材がポリイミド複合フィルムの表面性が大きく損なわれたり、複合フィルムの機械的特性の低下を誘発することがある。
また、充填材の添加量についても特に限定されるものではなく、改質しようとするポリイミドフィルムの特性や充填材の粒径などによって決定することができる。
一つの例において、充填材の添加量は、ポリアミド酸溶液100重量部に対して、0.01重量部ないし100重量部、好ましくは0.01重量部ないし90重量部、さらに好ましくは0.02重量部ないし80重量部である。
充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が生じ難く、この範囲を上回ると、ポリイミドフィルムの機械的特性が大きく低下することがある。充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の如何なる方法を使用し得ることは言うまでもない。
【0028】
一つの具体的な例において、前記共押出するステップは、第2組成物、第1組成物および第2組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリイミド複合フィルムは、第2組成物に由来した第2ポリイミド層が、第1組成物に由来した第1ポリイミド層の両面に形成された構造であることができる。
すなわち、このように製造されたポリイミド複合フィルムは、第2ポリイミド層(A)、第1ポリイミド層(B)および第2ポリイミド層(A)が地面から上向きに順次に積層された構造を有し、ともに一体をなして接合されていてもよい。「ABA」と略称する前記複合フィルムの構造で、AとBとの間に第1ポリアミド酸溶液のごく一部と第2ポリアミド酸溶液のごく一部とが混合された混合溶液から由来する界面部が存在することができる。
他の具体的な例において、
前記共押出するステップは、第2組成物および第1組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリイミド複合フィルムは、第2組成物から由来した第2ポリイミド層が、第1組成物から由来した第1ポリイミド層の片面に形成された構造であることができる。
すなわち、このようなポリイミド複合フィルムは、第2ポリイミド層(A)および第1ポリイミド層(B)が地面から上向きに順次に積層された構造を有し、ともに一体をなして接合されていてもよい。
ただし、このような構造で、「A」層が下部、下段、下向き、下方に位置する空間的な意味で限定されるものではなく、上部、上段、上向き、上方に位置するものとして解釈されることもできる。「AB」と略称する前記複合フィルムの構造で、AとBとの間に第1ポリアミド酸溶液のごく一部と第2ポリアミド酸溶液のごく一部とが混合された混合溶液から由来する界面部が存在することができる。
一方、前記熱処理するステップで、前記第2組成物に含まれる第2ポリアミド酸溶液が閉環および脱水反応でポリイミド樹脂に変換される過程で、無機系粉末およびカップリング剤が前記ポリイミド樹脂と相互作用して結着することができる。
これに関連して、前記熱処理するステップの閉環および脱水反応とは、第1ポリアミド酸溶液と第2ポリアミド酸溶液がイミド化することを意味することができる。
ここで、イミド化とは、熱および/または触媒を媒介としてポリアミド酸をなすアミン酸基の閉環および脱水反応を誘導して、前記アミン酸基がイミド基に変換される現象、過程または方法を意味する。
前記イミド化の方法は、熱イミド化法、化学イミド化法、または、熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する複合イミド化法を用いて行うことができ、これについては、以下の非制限的な例を挙げ、より具体的に説明する。
【0029】
<熱イミド化法>
前記熱イミド化法は、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥機などの熱源でイミド化反応を誘導する方法であって、
前記第1組成物および第2組成物を相対的に低い温度で熱処理して第1組成物と第2組成物に由来した2つ以上の層を有するゲルフィルムを形成する過程;および
前記ゲルフィルムを相対的に高い温度で熱処理してポリイミド複合フィルムを得る過程を含むことができる。
ここで、ゲルフィルムとは、ポリアミド酸からポリイミドへの変換に対して、中間ステップで自己支持性を有するフィルムの中間体であると理解することができる。
前記ゲルフィルムを形成する過程は、第1組成物および1つ以上の第2組成物をガラス板、アルミニウム箔、エンドレス(endless)ステンレスベルト、または、ステンレスドラムなどの支持体上に共押出し、その後、押出されて支持体上にある第1組成物および1つ以上の第2組成物を50℃ないし200℃、詳細には、80℃ないし150℃の範囲の可変的な温度で共に乾燥することであってもよい。
これによって、第1組成物および1つ以上の第2組成物に部分的な硬化および/または乾燥が起こることによって第1組成物および1つ以上の第2組成物から由来する2つ以上の層を有するゲルフィルムを形成することができる。次いで、支持体から剥離してゲルフィルムを得ることができる。
場合によっては、後の熱処理の過程で得られるポリイミド複合フィルムの厚さおよび大きさを調整し、配向性を向上させるために、前記ゲルフィルムを延伸させる工程が行われてもよいし、延伸は、機械搬送方向(MD)および機械搬送方向に対する横方向(TD)のうちの少なくとも一つの方向に行われてもよい。
このように得られたゲルフィルムを、テンターに固定した後、50℃ないし750℃、詳細には、150℃ないし700℃の範囲の可変的な温度で熱処理してゲルフィルムに残存する水、残留溶媒などを除去し、残っているほぼすべてのアミン酸基をイミド化して、本発明のポリイミド複合フィルムを得ることができる。
場合によっては、前記のように得られたポリイミド複合フィルムを400℃から650℃の温度で5秒ないし400秒間加熱して仕上げ、ポリイミド複合フィルムをさらに硬化させることもでき、得られたポリイミド複合フィルムに残留し得る内部応力を緩和させるために、所定の張力の下でこれを行うこともできる。
【0030】
<化学イミド化法>
前記化学イミド化法は、第1組成物および第2組成物のそれぞれに脱水剤および/またはイミド化剤を添加してアミン酸基のイミド化を促進する方法である。
ここで、「脱水剤」とは、ポリアミド酸に対する脱水作用を通じて閉環反応を促進する物質を意味しており、これに対する非制限的な例として、脂肪族の酸アンハイドライド、芳香族の酸アンハイドライド、N,N’-ジアルキルカルボジイミド、ハロゲン化低級脂肪族、ハロゲン化低級脂肪酸アンハイドライド、アリールホスホン酸ジハライドおよびチオニルハライドなどを挙げることができる。この中でも、入手の容易性およびコストの観点から、脂肪族酸アンハイドライドが好ましく、これの非制限的な例として、酢酸アンハイドライド(AA)、プロピオン酸アンハイドライドおよび乳酸アンハイドライドなどを挙げることができ、これらを単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
また、「イミド化剤」とは、ポリアミド酸に対する閉環反応を促進する効果を有する物質を意味しており、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミンおよび複素環式3級アミンなどのイミン系成分であることができる。この中でも、触媒としての反応性の観点から、複素環式3級アミンが好ましい。複素環式3級アミンの非制限的な例として、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン(BP)、ピリジンなどを挙げることができ、これらを単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
第1組成物および第2組成物のそれぞれにおいて、脱水剤の添加量は、組成物に含有されたポリアミド酸のうちアミン酸基1モルに対して0.5ないし5モルの範囲内であることが好ましく、1.0モルないし4モルの範囲内であることが特に好ましい。また、第1組成物および第2組成物のそれぞれにおいて、イミド化剤の添加量は、組成物に含有されたポリアミド酸のうちアミン酸基1モルに対して0.05モルないし2モルの範囲内であることが好ましく、0.2モルないし1モルの範囲内であることが特に好ましい。
前記脱水剤およびイミド化剤が前記範囲を下回ると、化学的イミド化が不十分で、製造されるポリイミド複合フィルムにクラックが形成されることがあり、複合フィルムの機械的強度も低下することがある。また、これらの添加量が前記範囲を上回ると、イミド化が過度に急速に進行することがあり、この場合、多層フィルムの形態にキャスティングし難いか、製造されたポリイミド複合フィルムがブリトル(brittle)な 特性を奏することがあり、好ましくない。
【0031】
<複合イミド化法>
以上の化学イミド化法に連携して、熱イミド化法を追加で行う複合イミド化法をポリイミドフィルムの製造に用いることができる。
具体的に、複合イミド化法は、低温で第1組成物および第2組成物のそれぞれに脱水剤および/またはイミド化剤を添加する化学イミド化法の過程;および前記第1組成物と第2組成物を乾燥してゲルフィルムを形成し、前記ゲルフィルムを熱処理する熱イミド化法の過程を含むことができる。
前記化学イミド化法の過程を行うときに、脱水剤とイミド化剤の種類および添加量は、前述の化学イミド化法で説明したように、適切に選択することができる。
前記ゲルフィルムを形成する過程で、脱水剤および/またはイミド化剤を含有する第1組成物と第2組成物を、ガラス板、アルミニウム箔、エンドレス(endless)ステンレスベルト、または、ステンレスドラムなどの支持体上にフィルム状に共押出し、その後、共押出されて支持体上にある第1組成物と第2組成物を50℃ないし180℃、詳細には、80℃ないし180℃の範囲の可変的な温度で乾燥する。このような過程で、脱水剤および/またはイミド化剤が触媒として作用して、各組成物のアミン酸基がイミド基に素早く変換されることができる。
場合によっては、後の熱処理の過程で得られるポリイミド複合フィルムの厚さおよび大きさを調整し、配向性を向上させるために、前記ゲルフィルムを延伸させる工程が行われてもよいし、延伸は、機械搬送方向(MD)および機械搬送方向に対する横方向(TD)のうちの少なくとも一つの方向に行われてもよい。
このように得られたゲルフィルムを、テンターに固定した後、50℃ないし500℃、詳細には、150℃ないし300℃の範囲の可変的な温度で熱処理してゲルフィルムに残存する水、触媒、残留溶媒などを除去し、残っているほぼすべてのアミン酸基をイミド化して、本発明のポリイミド複合フィルムを得ることができる。このような熱処理過程でも脱水剤および/またはイミド化剤に触媒として作用して、アミン酸基がイミド基に素早く切り替えられ、高いイミド化率を実現することができる。
場合によっては、前記のように得られたポリイミド複合フィルムを400℃ないし700℃の温度で5秒ないし400秒間加熱して仕上げ、ポリイミドフィルムをさらに硬化させることもでき、得られたポリイミド複合フィルムに残留し得る内部応力を緩和させるために、所定の張力の下でこれを行うこともできる。
【0032】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これにより発明の権利範囲が決まるわけではない。
【0033】
製造例1-1:第1組成物の製造
25℃の温度および窒素雰囲気下の1L反応器に、溶媒として、DMF830gを入れ、PMDA41g、BPDA59g、PPD38gおよびODA10gを添加し重合し、第1ポリアミド酸溶液を含む第1組成物を製造した(第1ポリアミド酸固形分149g)。
【0034】
製造例1-2:第1組成物の製造
10℃の温度および窒素雰囲気下の1L反応器に、溶媒として、DMFを入れ、第1ジアンハイドライドとして、s-BPDA、第1ジアミンとして、PPDを添加して重合を施した。その後、第2ジアンハイドライドとして、第1PMDA、および第2ジアミンとして、ODAをさらに添加し、1時間攪拌を行い、重合を施した。続いて、第2ジアンハイドライドとして、第2PMDAを添加し、第1ジアンハイドライドと第2ジアンハイドライドおよび第1ジアミンと第2ジアミンの全モル数が実質的に等モルをなすようにし、1時間攪拌して最終のポリアミド酸溶液を含む第2組成物を製造した。投入されたジアンハイドライド単量体およびジアミン単量体のモル比を下記表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
製造例2:第2組成物の製造
25℃の温度および窒素雰囲気下の1L反応器に、溶媒として、DMF848gを入れ、PMDA45g、BPDA60g、PPD41gおよびODA6.5gを添加して重合し、第2ポリアミド酸溶液(第2ポリアミド酸固形分152g)を製造した。
ここに、DMF251g、イソキノリン103g、酢酸アンハイドライド245g、無機系粉末として、ニッケル200mgおよびカップリング剤200mg(200ppm)を混合した混合物を添加して混合し、第2組成物を製造した。
【0037】
<実施例1>
図1に示された構造の共押出ダイ(100)の第1貯蔵槽(101)に前記製造例1-1で製造した第1組成物を投入し、第2貯蔵槽(102)に前記製造例2で製造した第2組成物を投入した。
その後、第2組成物(厚さ2.5μm)、第1組成物(厚さ30μm)および第2組成物(厚さ2.5μm)の順に、第1組成物と第2組成物を無断ベルト(105)上に共押出する約35μmの厚さに製膜した。
このとき、第1貯蔵槽(101)から第1組成物が押出されるときに、触媒貯蔵槽(103)からイソキノリン、ジメチルホルムアミドおよび酢酸アンハイドライド混合物が混合されるようにした。
続いて、約150℃の温度で熱処理し、これを再び高温テンターで200℃から600℃まで加熱した後、25℃で冷却させて第2ポリイミド層/第1ポリイミド層/第2ポリイミド層の構造を有するポリイミド複合フィルムを得た。
第1ポリアミド酸および第2ポリアミド酸固形分の含量とカップリング剤と無機系粉末の含量とを下記表2に示した。
【0038】
<実施例2>
各第2ポリイミド層にカップリング剤が400ppm含まれるように投入量を変更して第2組成物を製造したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
<実施例3>
各第2ポリイミド層にカップリング剤が1000ppm含まれるように投入量を変更して第2組成物を製造したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
<実施例4>
第1貯蔵槽(101)に前記製造例1-2で製造した第1組成物を投入したことを除いては、実施例2と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
【0039】
<比較例1>
第2組成物へのカップリング剤の投入を省略したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
<比較例2>
各第2ポリイミド層にカップリング剤が100ppm含まれるように投入量を変更して第2組成物を製造したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
<比較例3>
製造例2でポリイミド複合フィルムの総重量を基準として0.01重量%含まれるように、ニッケルの投入量を変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
<比較例4>
製造例2でポリイミド複合フィルムの総重量を基準として6重量%含まれるように、ニッケルの投入量を変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミド複合フィルムを製造した。
実施例1ないし4および比較例1ないし4で投入されたカップリング剤の含量(各第2ポリイミド層の重量を基準)および無機系粉末(ポリイミド複合フィルムの総重量を基準)の含量を下記表2に示した。
【0040】
【表2】
*それぞれの第2ポリイミド層に含有されたカップリング剤の含量(ppm)
**ポリイミド複合フィルムに含有された無機系粉末の含量(重量%)
【0041】
<実験例:ポリイミド複合フィルムの物性評価>
実施例1ないし4および比較例1ないし4で製造されたポリイミド複合フィルムについて、金属に対する接着性、引張強度、モジュラスおよび熱膨張係数を測定し、その結果を下記表3に示した。
1)接着力実験
ポリイミド複合フィルムのうち、一つの第2ポリイミド層の表面上に銅をスパッタリングして銅層を形成した後に、フィルムの表面をクロスカッターガイド(Cross Cutter Guide)に沿ってカッティングして、格子パターンを形成した。
続いて、ブラシなどを使用して、フィルムの表面を擦った後に、格子パターンに3M社のCross Cutting用テープを貼り付け、引き剥がしながら90度剥離強度を常温で測定した。
2)モジュラス
Instron5564モデルを用いて、ASTMD882に提示され方法でモジュラスを測定した。
3)引張強度
ASTMD882に提示され方法で引張強度を測定した。
4)熱膨張係数
Thermomechanical Analyzer(TMA)を用いて熱膨張係数を測定した。
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、実施例1ないし4に係るポリイミド複合フィルムは、金属に対して優れた接着力を発揮しながらも、一定の水準以上のモジュラスおよび引張強度を示しており、無機系粉末およびカップリング剤による機械的物性の低下を抑制できることが分かる。また、実施例4の場合、熱膨張係数が2.2μm/m*℃の水準を示しており、フレキシブル回路基板の実現に特に好ましい利点を有することが分かる。
一方、比較例1ないし4に係るポリイミド複合フィルムは、金属に対する接着力が不良であるか、または引張強度やモジュラスが低すぎることが確認できる。特にカップリング剤を含まない比較例1のフィルムは、常温で非常に低い接着力を示しており、比較例2および3は、カップリング剤と無機系粉末の含量が本発明で限定した範囲から外れることによって、これらのフィルムでは、金属に対する常温接着力と機械的物性が好ましい水準で両立しないことが確認できる。一方、無機系粉末が過度に含まれた比較例4の場合には、12%以上のヘイズ(haze)を示しており、透明性の面でも好ましくないことが確認された。
このような結果から、カップリング剤と無機系粉末が、本発明に記載された適正な範囲内で選択されることが、所望のポリイミド複合フィルムの実現に主要なものとして作用することを認識することができる。
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリイミド複合フィルムは、無機系粉末およびカップリング剤の90重量%以上、詳細には、99重量%以上が複合フィルムの外郭をなす第2ポリイミド層に存在することを特徴として含むことができる。
したがって、例えば、ポリイミド複合フィルムの第2ポリイミド層上にスパッタリングで形成される金属層と第2ポリイミド層に存在する無機系粉末およびカップリング剤のうちほとんどが相互作用することができ、このような作用によって、本発明のポリイミド複合フィルムは、金属層に対する非常に優れた接着性を有することができる。
他の側面で、カップリング剤および無機系粉末は、金属層と相互作用することができる複合フィルムの外郭部位に集中されていることがあるので、これらを制限的な含量で使用しても、十分な接着力が発現できると共に、無機系粉末およびカップリング剤による機械的物性の低下は、可能な限り抑制される有利な結果につながり得る。
それだけでなく、カップリング剤と無機系粉末がポリイミド複合フィルムの内側に存在する場合、ポリイミドフィルムの機械的物性が大きく低下することがあるが、本発明のポリイミド複合フィルムは、前述の構造的な特徴と、第1ポリイミド層が機械的物性を維持して、カップリング剤と無機系粉末による機械的物性の低下を最小化することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリアミド酸溶液に由来する第1ポリイミド層;
第2ポリアミド酸溶液に由来し、前記第1ポリイミド層の片面または両面に隣接して形成されている少なくとも一つの第2ポリイミド層;
無機系粉末;および
カップリング剤を含み、前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%が前記第2ポリイミド層に存在し、
常温で金属層との接着力が0.6kgf/mm2以上であり、引張強度が0.45GPa以上であり、モジュラスが6.0GPa以上である、ポリイミド複合フィルム。
【請求項2】
前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも99重量%が前記第2ポリイミド層に存在する、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項3】
前記無機系粉末は、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、銅、チタニウム、銀、金、コバルト、マンガンおよびジルコニウムからなる群から選択される1種以上を含む金属粉末、または、前記群から選択される2種以上の金属が合金された粉末を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項4】
前記無機系粉末は、平均粒径(D50)が0.1μmないし2μmである、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項5】
前記カップリング剤は、チタネート系カップリング剤、有機クロム錯剤系カップリング剤、シラン系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項6】
前記ポリイミド複合フィルムは、
前記第2ポリイミド層が、前記第1ポリイミド層の片面に形成された構造であり、
前記第2ポリイミド層は、ポリイミド複合フィルムの総重量を基準として0.02重量%ないし2重量%の無機系粉末および第2ポリイミド層の総重量を基準として200ppmないし1000ppmのカップリング剤を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項7】
前記ポリイミド複合フィルムは、
前記第1ポリイミド層の両面に形成された一対の第2ポリイミド層を含み、
前記第2ポリイミド層のそれぞれは、それの総重量を基準として200ppmないし1000ppmのカップリング剤および前記ポリイミド複合フィルムの総重量に対して、0.02重量%ないし2重量%の無機系粉末を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項8】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液は、同一の単量体の組み合わせまたは異なる単量体の組み合わせから製造され、
前記単量体の組み合わせは、1種以上のジアンハイドライド単量体および1種以上のジアミン単量体を含む、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項9】
前記第1ポリアミド酸溶液および第2ポリアミド酸溶液が同一の単量体の組み合わせから製造される場合に、前記ジアンハイドライド単量体は、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)を含み、
3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)または2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)をさらに含み、
前記ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン、PDA、PPD)および4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン、ODA)を含む、請求項8に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項10】
前記ポリイミド複合フィルムは、平均厚さが15ないし100μmである、請求項1に記載のポリイミド複合フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載のポリイミド複合フィルムを製造する方法であって、
第2ポリアミド酸溶液、無機系粉末およびカップリング剤を含む第2組成物と第1ポリアミド酸溶液を含む第1組成物をそれぞれ製造するステップ;
前記第1組成物と第2組成物とを多層共押出ダイに供給し、前記共押出ダイを用いて、第1組成物と第2組成物とが隣接して積層されるように共押出するステップ;および
共押出された前記第1組成物および第2組成物をイミド化するステップを含む、ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記共押出するステップは、第2組成物、第1組成物および第2組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリイミド複合フィルムは、第2組成物から由来した第2ポリイミド層が、第1組成物から由来した第1ポリイミド層の両面に形成された構造である、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記共押出するステップは、第2組成物および第1組成物の順に積層されるように支持体上に共押出するステップ、並びに共押出された前記第1組成物および第2組成物を50℃ないし200℃の温度範囲で第1熱処理するステップを含み、
前記イミド化するステップは、第1熱処理された前記第1組成物および第2組成物を200℃ないし700℃の温度で第2熱処理するステップを含み、
前記ポリミッド複合フィルムは、第2組成物から由来した第2ポリイミド層が、第1組成物から由来した第1ポリイミド層の片面に形成された構造である、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第2組成物に含まれる第2ポリアミド酸溶液が閉環および脱水反応でポリイミド樹脂に変換される過程で、前記無機系粉末およびカップリング剤が前記ポリイミド樹脂と相互作用して結着される、請求項11に記載のポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリイミド複合フィルムを絶縁フィルムとして含む、電子部品。
【請求項16】
前記電子部品が半導体装置またはフレキシブル回路基板である、請求項15に記載の電子部品。
【請求項17】
前記軟性回路基板は、
ポリイミド複合フィルム;および
前記ポリイミド複合フィルムの第2ポリイミド層の表面に銅がスパッタリングによって蒸着された金属層を含む、請求項16に記載の電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
一つの実施態様において、本発明は、第1ポリアミド酸溶液に由来する第1ポリイミド層;
第2ポリアミド酸溶液に由来し、前記第1ポリイミド層の片面または両面に隣接して形成されている少なくとも一つの第2ポリイミド層;
無機系粉末;および
カップリング剤を含むポリイミド複合フィルムであって、
前記無機系粉末およびカップリング剤は、それぞれの総重量を基準として少なくとも90重量%が第2ポリイミド層に存在し、
常温で金属層との接着力が0.6kgf/mm2以上であり、引張強度が0.45GPa以上であり、モジュラスが6GPa以上である、ポリイミド複合フィルムを提供する。
一つの実施態様において、本発明は、前記ポリイミド複合フィルムを製造する方法を提供する。
一つの実施態様において、本発明は、前記ポリイミド複合フィルムを絶縁フィルムとして含む、電子部品を提供する。前記電子部品は、半導体装置またはフレキシブル回路基板であることができ、詳細には、フレキシブル回路基板であることができる。
前記フレキシブル回路基板は、ポリイミド複合フィルムおよび前記ポリイミド複合フィルムの第2ポリイミド層の表面に銅がスパッタリングによって蒸着された金属層を含むことができる。
【国際調査報告】