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特表2022-506885燃料電池用バイポーラプレートの製造方法
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  • 特表-燃料電池用バイポーラプレートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】燃料電池用バイポーラプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0206 20160101AFI20220107BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220107BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20220107BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20220107BHJP
   H01M 8/021 20160101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M8/0206
H01M8/10 101
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524991
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2019080211
(87)【国際公開番号】W WO2020094627
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】102018219056.9
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】516386144
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ テジャ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD05
5H126DD17
5H126EE42
5H126FF05
5H126GG02
5H126GG05
5H126HH01
5H126HH04
5H126HH10
5H126JJ08
(57)【要約】
燃料電池用フローフィールドプレート(flow field plate)の製造方法において、1つの金属ストリップ(1)又は2つの金属ストリップは、第2のデバイス(3)及び/又は第3のデバイス(4)を介してガイドされる。第2のデバイス(3)は金属ストリップの微細な洗浄及び/又は窒化を行うよう設計され、第3のデバイス(4)は接着性を向上させる金属層で表面の片側を表面コーティングするよう設計される。次にカーボン層は第4のデバイス(5)に適用される。次に金属ストリップ(1.1,1.2)は成形され、そのプロセス間にチャネルが形成される。成形金属ストリップ(1.1,1.2)は、一体型接合(integral joining)が行われる表面領域が互いに接触するよう移動及び配置される。接合は互いに近づくよう移動された成形金属ストリップ(1.1,1.2)間のギャップに向けられるレーザビーム(13)で実行される。成形及び接合等のデバイス(3,4,5)における個々のステップは連続したプロセスで行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用バイポーラプレートを製造する方法であって、
前記バイポーラプレートは、燃料電池の2つの電極のうちの少なくとも1つの少なくとも片側に配置され、膜-電極構造に導電的に(electrically conductively)接続可能であり、電解質を形成する前記膜は、高分子膜であり、
1つの金属ストリップ(1)または2つの金属ストリップは、第2のデバイス(3)および/または第3のデバイス(4)を介してガイドされ、
第2のデバイス(3)は、金属ストリップの微細な洗浄および/または窒化を行うように設計され、
第3のデバイス(4)は、接着性を向上させる金属層で表面の片側を表面コーティングするように設計され、
カーボン層は、このように第4のデバイス(5)において処理された表面に適用され、
続いて、金属ストリップ(1.1,1.2)の成形が行われ、そこでは、燃料および酸化剤の供給ならびに電気化学反応の反応生成物の除去のためのチャネルが形成され、
次に、成形された金属ストリップ(1.1,1.2)を互いに近づけて、材料連続性を有する接合が行われる表面領域が互いに直接接触するように配置し、接合部を、互いに近づくように移動された成形された金属ストリップ(1.1,1.2)の間のギャップに向けられる少なくとも1つのレーザビーム(13)で形成し、そこにのみ溶接接合部を形成し、
このプロセスの間、前記デバイス(3,4,5)の成形と接合の個々のステップは、連続したプロセスで順次行われる
ことを特徴とする燃料電池用バイポーラプレートの製造方法。
【請求項2】
前記第2のデバイス(3)、前記第3のデバイス(4)および前記第4のデバイス(5)が、上述した環境に対して減圧された内圧の下で作動され、前記環境からおよび/またはスルース(6)によって互いから分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの金属ストリップ(1)または2つの金属ストリップを、前記金属ストリップ(1)または2つの金属ストリップ(1.1,1.2)を予備洗浄するように設計された第1のデバイス(2)を介して、第2のデバイス(3)または第3のデバイス(4)の搬送方向上流側(conveying direction upstream)にガイドすることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボン層を形成した後、このように前処理された金属ストリップ(1)のうちの1つの供給移動中に、好ましくは供給軸方向における中央分割および分割された金属ストリップ(1.2)のうちの1つの180°回転、または
このように前処理された2つの金属ストリップ(1.1,1.2)のうちの1つの180°回転を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
sp2混成炭素で形成されるカーボン層を、前記第4のデバイス(5)によって、高イオンエネルギーでの非パルスイオン注入により、前記1つの金属ストリップ(1)または前記2つの金属ストリップの表面に形成し、ここで、100eVを超えるイオンエネルギーを維持することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
予備洗浄を湿式化学的に、または炭化水素化合物を酸化した後、酸化生成物を除去する熱処理によって行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記微細な洗浄および/または窒化が、プラズマを用いて行われ、前記金属ストリップは、320℃~450℃の範囲内の温度に加熱されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属イオン、特にクロムイオンを電気アークプロセスにより被覆表面上で加速して、接着層を形成することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前処理された金属ストリップ(1.1,1.2)を成形するために、前記前処理された金属ストリップが移動されかつ互いに対向するツール対の表面が形成される、少なくとも1つのツール対のうちの少なくとも2つの成形ツール(7.1,7.2)が、前記前処理された金属ストリップ(1.1,1.2)を成形するために使用されることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ストリップ(1.1,1.2)の成形は、レーザ照射との材料連続性で接合される金属ストリップ(1.1,1.2)の領域が、成形されないかまたはそのように成形されるように行われ、実行された成形に続いて、これらの表面領域が、前記接合中に互いに直接接触するように互いに対して配置され、前記接合前に、接合される成形された金属ストリップ(1.1,1.2)の間にギャップが形成され、前記ギャップ内に少なくとも1つのレーザビーム(13)が接合される表面領域上に導かれるようにすることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属ストリップ(1.1,1.2)が、2つの金属ストリップ(1.1,1.2)のうちの1つの方向からの少なくとも1つのレーザビームで、少なくとも媒体供給部および前記バイポーラプレートのエッジ領域において、円周方向に接合されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のデバイス(3)において、窒素雰囲気中、450℃未満の温度で最大5分間ニトロ化を行うことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
鋼またはチタンで構成された、1つの金属ストリップ(1)または2つの金属ストリップを用いることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記2つの金属ストリップ(1.1,1.2)が、デバイス(2,3,4,5)および金属ストリップを接合するための装置(12)を介して、互いに平行に整列して同じ速度で移動され、好ましくは成形中および必要に応じてストリップの方向変換(turn)または回転(rotation)中もこの速度を維持することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のデバイス(3)において、または、前記1つの金属ストリップまたは前記2つの金属ストリップ(1.1,1.2)の供給移動方向における前記第4のデバイス(5)の上流側に配置される他のデバイスにおいて、炭素を添加することによって、追加の浸炭を行うことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
異なる厚さの金属ストリップ(1.1,1.2)が使用されることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用バイポーラプレートの製造方法に関し、特に、バイポーラプレートが燃料電池の2つの電極のうちの少なくとも1つの片側(one side)に配置され、膜-電極構造に接続可能であり、電解質を形成する膜が高分子膜である燃料電池用バイポーラプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、例えば、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、モバイルアプリケーションで電気を発生させるために使用される。現在のところ、燃料電池の製造コストは依然として高いため、例えば自動車分野への適用は、まだ経済的に実施できない。バイポーラプレート(BIP)は、水素、酸素の供給、水、冷却水の排出、および放出された電子の供給と取り出し(tap)のために燃料電池に使用される。2つのバイポーラプレートの間にアノード(水素供給)とカソード(酸素供給および水除去)とを配置し、その間に、例えば、触媒として白金を含む触媒層または電極コーティングを有する高分子膜(高分子電解質膜-PEM)と、ガス拡散層とを配置する。それらはいわゆる膜電極接合体(MEA)を形成する。また、バイポーラプレートには適切なシールが適用される。これは通常、MEAがインストールされる前に行われる。PEMは電気絶縁性であるが、プロトン伝導性の高分子膜である。これにより、水素イオンが拡散し、負荷を介してカソードに電流を流すことができる。電極層は、通常、PEM上にホットプレスされる。バイポーラプレートと膜/電極との間には、例えば、炭素繊維で構成される織物(fabric)である、いわゆるガス拡散層(GDL)があり、BiPのチャネルから放出されるガスを膜の全面に均一に分配させ、水素によって放出された電子をそれぞれのバイポーラプレートを受け渡す(pass)か、またはそこから遠ざけることを目的としている。
【0003】
燃料電池は、通常、2つの電極間で、例えば、0.5V~1.23Vの電圧を達成する。しかし、損失のため、有用な電圧は通常低くなる。放出された電子は、水素側ではできるだけ効率よく吸収され、酸素側ではできるだけ効率よくプロセスに戻ることが重要である。接触または貫通(penetration)抵抗はできるだけ低くする必要がある。このときの電気抵抗は、BIPの効率に直接影響を与える。動作温度は、セルタイプに最適な範囲内、例えば100℃未満(<100℃)に維持される。必要な冷却は、バイポーラプレート内の冷却回路によって実現できる。
【0004】
現在まで、このような燃料電池の製造において、BIPハーフシェルは、圧延鋼またはチタンシート(厚さ0.05mm~0.2mm)から製造されている。この目的のために、例えば、板金は切り出され、単段または多段のエンボス加工プロセスによって形成される。次に、このハーフシェルは、第2のハーフシェルと接合(join)されてBIPを形成する。ハーフシェルは、カソード側とアノード側で異なる形状(geometry)を有することができる。BIPステンレス鋼の接合プロセスは、通常、レーザ溶接プロセスである。チタンの場合、接着接合法(adhesive joining process)も用いられる。パネルを接合した後、両面(both sides)に表面コーティングを施す。これは、例えば、カーボン層で終わる層システムであり得る。
【0005】
次いで、シールがBIPに適用され、これは、例えば、溶射法(spraying process)を用いて達成できる。その後、硬化(cure)する。あるいは、プレハブシール(prefabricated seal)を適用することもできる。これに続いて、MEAを適用する。このようなBIP+MEAを積層することにより、燃料電池または燃料電池スタックを形成する。場合によっては、説明された方法には、例えば品質保証のための中間ステップがまだ存在する。この試験には、個々の電池(cell)、または最終的には電池スタック全体の密着性(tightness)の試験も含まれる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、燃料電池用バイポーラプレートの製造における労働生産性を高める方法を提供することである。
【0007】
本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法により、この課題を解決することができる。本発明の有利な実施形態および改良は、従属請求項に記載された特徴を用いて実施することができる。
【0008】
改良点の1つは、燃料電池を製造するアプローチであり、このアプローチでは、製造プロセス全体を1つのプロセスチェーンまたは1つの製造ラインで行うことができる。この目的のために、可能な限り多くの製造ステップを連続プロセスで実施するべきであり、BIPまたはBIP+GDLまたはBIP+MEAにおけるストリップ(strip)の分離を、プロセスチェーンにおいて可能な限り遅く行うべきである。このシナリオは、ロール対プレートプロセスである。プロセスチェーンの最後に、多数のスタックされたBIP+MEAおよび対応するシール技術ならびに端部(end piece)で構成される燃料電池スタック全体を、このような個々のBIPから組み立てることができる。
【0009】
この方法では、予備洗浄(プレクリーニング、precleaning)が必要なときに、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップを予備洗浄するように構成された第1のデバイスに、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップを通過させることができる。
【0010】
予備洗浄後、必要に応じて、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップを第2のデバイスおよび/または第3のデバイスに通過させる。第2のデバイスは、金属ストリップの微細な(fine)洗浄および/または窒化を行うように構成され、第3のデバイスは、接着性を向上させる金属層で表面の片側に表面コーティングを行うように構成されている。
【0011】
カーボン層は、第4のデバイスにおいて、このように処理された表面に適用(apply)される。
【0012】
続いて、このようにして前処理(pre-treat)された金属ストリップの1つの供給移動(送り動作、feed movement)中に、好ましくは、供給軸方向の中央分離と、分離された金属ストリップの1つの180°回転とを行うことができる。
【0013】
2つの金属ストリップを使用して、このように前処理する場合、このようにして前処理された2つの金属ストリップのうちの1つを180°回転させることが必要になる場合がある。
【0014】
再び、必要に応じて分離および/または回転に続いて、またはカーボン層の形成に直接続いて、燃料および酸化剤の供給ならびに電気化学反応の反応生成物の除去のためのチャネルが形成される、金属ストリップ成形操作が実行される。したがって、これらの成形ストリップは、もはや平面ではなく、隆起(elevation)および/または窪み(depression)を有する三次元表面構造を有する。例えば、0.1mm~2mmの範囲内のチャネル幅および0.05~1.5mmのチャネル深さを達成することができる。このようにして形成されたストリップはまた、開口部を有することができ、したがって、例えば、チャネル構造の領域には、閉じた(close)表面を有さない。チャネル構造は、格子構造とすることもできる。
【0015】
成形された金属ストリップは、一体型結合(integral bond)が形成される表面領域が互いに直接接触し、互いに向かって移動された成形された金属ストリップ間のギャップに向けられた少なくとも1つのレーザビームで結合が形成され、そこにのみ溶接接合部(welded joint)が形成されるように、互いに向かって移動され、位置決め(position)される。この溶接方法は、金属ストリップの1つの方向から、このストリップと第2の金属ストリップとが溶接接合の形態で互いに接合される溶接方法と組み合わせることもできる。
【0016】
デバイスの前処理、必要に応じて分離および回転、ならびに成形および接合の個々のステップは、連続的な処理能力プロセス(throughput process)において次々に実行されるべきである。
【0017】
金属ストリップをコーティングする前に、圧延プロセスから金属ストリップ上に油残留物(oil residue)が残っている可能性があるため、金属ストリップを洗浄すべきである。洗浄は、通常、湿式化学プロセスを用いて行うことができる。
【0018】
表面に非常に薄い油膜しかない場合、洗浄は、残りの油を炭化させ、同時にストリップを予熱するという形をとることもできる。このための温度は、例えば、150℃程度である。例えば、炭化水素化合物は、熱処理中に酸化され、その後、酸化生成物が除去されることができる。
【0019】
金属ストリップがすでに洗浄されているか、またはオイルフリーである場合は、予備洗浄は不要な場合がある。
【0020】
1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップの予備洗浄および同時予備加熱後、窒化および/またはプラズマ微細洗浄を表面上で行う。この目的のために、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップを320℃~450℃の温度に加熱すべきである。プラズマ微細洗浄は、ニトロ化と組み合わせて有利に行うことができ、それによって、窒素をニトロ化のために添加する前に、最初にプラズマ微細洗浄を行うことができる。プラズマ微細洗浄をニトロ化と組み合わせて用いない場合は、時間あたりに(per time)達成できるニトロ化深さ(nitration depth)を低減することができる。
【0021】
プラズマ窒化は、特に、例えば窒素を用いた鋼表面の熱化学的処理であり、通常、耐摩耗性を改善するために使用される。しかし、低い窒化温度では、耐食性も改善できる。大きな窒化深さ(nitriding depth)を達成するためには、必要となる長い窒化時間が特に重要である。しかしながら、これらは本発明において必要ではない。
【0022】
ただし、例えば、数μmの窒化深さに対応して低減された短い窒化時間でも、その後のカーボンコーティングの接着性(adhesion)を純粋に改善し、エッジ近くに窒化領域を生成するのに十分である。あるいは、窒化を省略して、例えば、スパッタリングプロセスまたは他のコーティングプロセスに置き換えてもよい。このようなスパッタリングプロセスは、例えば、アークプロセスによりクロムイオンを発生させ、それらを被コーティング面上で加速させることにより、金属イオンスパッタリングとして実行することができる。このようにして、接着性および腐食保護を改善するクロム層を形成することができる。
【0023】
続いて、最後のコーティングプロセスとして、層厚が200nm未満(<200nm)であるが、好ましくは50nm未満(<50nm)であるカーボン層を、第4のデバイスにおける金属ストリップまたは2つの金属ストリップに適用する。ここで、金属ストリップまたは2つの金属ストリップは、300℃超の温度T(T>300℃)に保たれるべきであり、炭素イオンは、金属ストリップまたは2つの金属ストリップの表面内に注入されるべきである。
【0024】
コーティングプロセス後、1つの金属ストリップを少なくとも2つの金属ストリップに分離させ、そのうちの1つはBIPのアノード側になり、もう1つはそれぞれのBIPのカソード側になる。次に、分離によって得られた金属ストリップの1つを180°回転させる。あるいは、2つの金属ストリップをコーティング前に分割し、同じラインまたは2つの異なるラインでコーティングすることができる。この場合、テープは分離されない。2つの金属ストリップのコーティングは、通常、下から行われるので、BIPハーフシェルが形成されるこれらの2つの金属ストリップの1つは、成形プロセスの前に180°回転されるべきである。これはインラインで行うこともできる。好ましくは、2つの金属ストリップの前処理は、2つの金属ストリップが互いに平行に整列し、デバイスおよび2つの金属ストリップのうちの1つを回転させるためのデバイスを介して同じ速度で移動するように行われ、好ましくは、この速度はまた、成形およびその後に行われる接合の間も維持されるべきである。
【0025】
あるいは、ストリップを、コーティング中に垂直方向にガイドすることもできる。この場合、例えば、金属ストリップを両面(both sides)にコーティングするか、または、表面および裏面(front and back)上の金属ストリップの両側(two sides)を異なる領域においてコーティングすることができるので、成形または接合の前に金属ストリップを180°回転させる必要がない。
【0026】
金属ストリップの成形プロセスは、深絞り、ロールスタンピング、エンボス加工、パンチングまたは、例えば、ハイドロフォーミングとして実行される、活性媒体ベースの成形プロセスなどの様々な公知の方法によって実現することができる。この目的のために、少なくとも1つの成形ツールを、例えば、エンボスローラまたはエンボスダイの形態で設計することができる。圧延(rolling)または深絞りとは対照的に、ハイドロフォーミングは、カソード側およびアノード側に対して、ダイの形態でそれぞれ1つのスタンピングツールを必要とするだけである。
【0027】
ハイドロフォーミングでは、活性媒体がダイに面するシートの側面に供給され、ダイの輪郭に対して金属ストリップを押圧する;原則として、これはいくつかの段階で行うこともできる。
【0028】
ロールスタンピングには、一対のロールの少なくとも2つのロールが使用されるべきであり、1つのロールはカソード側用であり、1つのロールはアノード側用である。一対のローラは、ローラとしての雄型および雌型(male and female die)から構成することができ、それらの半径方向の外側表面は、それに応じて構造化されている。多段成形プロセスの場合、数対のロールを直列に配置することができる。アノード側とカソード側の成形プロセスは、1回のストリップランで同期して行うべきである。カソード側とアノード側のエンボス構造は、通常は異なる。
【0029】
非連続成形プロセスおよびその後の連続的な更なる加工の場合、例えば、レーザ溶接による場合には、例えば、成形の前後にループの形でストリップアキュムレータを提供することが可能であるべきであり、これは、コーティングまたはストリップの分離および成形、あるいは成形およびレーザ溶接の間で金属ストリップの経路を変えることができる。これは、レーザ溶接の分野(area)で記載された全ての成形プロセスに対して、成形された金属ストリップを正確にフィットさせて接合することができるという利点を提供する。この場合、正確にフィット(精密嵌合)(precise fit)とは、接合する金属ストリップの位置を合わせて、互いに直接接触するように位置決めすることを意味する。
【0030】
少なくとも1つのレーザビームを使用して、2つの金属ストリップのうちの1つの方向から、金属ストリップを、少なくとも媒体供給部(media supply)およびバイポーラプレートのエッジ領域において、それらの外縁で、金属ストリップを円周方向に接合(join)することができる。
【0031】
前処理された金属ストリップの成形は、有利には、成形を行った後、これらの表面領域は、それらが互いに直接接触しかつ接合前の角度で互いに向かって収束するように、接合中に互いに対して位置決めされるように、レーザ放射を用いた材料連続性を有する接合される金属ストリップの領域が形成されないか、または形成されるように行われるべきである。その結果、接合される成形金属ストリップ間にギャップが形成され、そこに少なくとも1つのレーザビームを接合される表面領域に向けることができる。少なくとも1つのレーザビームを使用して、これらの領域における溶接によって緊密な一体型結合を生成することができる。ここで、レーザビームによる入熱は、BIPの熱歪みを最小化するために最小限に抑えられるべきである。
【0032】
レーザ溶接プロセスでは、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップ上のコーティングに面する側の成形プロセスで使用されるので、デバイスロールまたは幾何学的構造を有する成形ロールをそれぞれのケースで使用することができる。多段エンボス加工プロセスでは、ローラは、成形に使用されるそれらの表面上で以前に使用されたエンボス加工ツールとは異なるように設計することもできる。デバイスロールはそれぞれ、溶接または溶接スポットが形成される位置に隆起(elevation)を有するべきである。
【0033】
2つのデバイスロールは、雄型および雌型として設計されていない場合がある。
【0034】
接合される前処理および成形された金属ストリップの溶接は、BIP上の機能的コーティングに損傷を与えないようにすべきである。この目的のために、溶接またはスポット溶接は、BIP内に配置されるべきである。これは、溶接部におけるコーティングの腐食低減効果を低下させない。
【0035】
必要に応じて、バイポーラプレートの追加の円周溶接、および材料供給部の位置での追加の円周溶接を、その後、重ね溶接として実施できる。コーティングはまた、このプロセスにおいて損傷する可能性がある。
【0036】
BIPハーフシェルを接合した後、好ましくは、完全な燃料電池を完成させるために、それらを分離するか、または連続プロセスでさらに処理することができる。
【0037】
次いで、半製品は、コーティングされ、成形され、一体的に結合された形態で直ちに分離され、その後、燃料電池に加工されることができる。
【0038】
レーザ切断プロセス等の分離プロセスを用いて行うことができる分離プロセスの前に、シール剤を適用(塗布)してもよく、必要に応じて、MEAの材料を個別に適用してもよく、あるいは、完全なMEAをBIPに適用してもよい。これらのプロセスステップを本発明に係る製造プロセスに含めることもできる。
【0039】
異なる厚さの金属ストリップを製造に使用することもできる。このようにして、強度および動作条件、特に燃料電池の局所的に変化する熱条件に影響を与えることが可能である。
【0040】
一例として、以下に説明する個々のプロセスを使用してBIPを製造することができる。
【0041】
前処理され成形された金属ストリップを接合するためのレーザ溶接は、例えば、IR(波長、例えば、1000nm~1100nm)シングルモードファイバレーザによって行うことができる。レーザ源と表面との間で、レーザビームは、ファイバを介して導かれ、ファイバの端部でコリメート(colimate)され、少なくとも1つの反射素子を有するスキャナを介して偏向される。スキャナは、例えば、2つの反射素子を有するガルボスキャナとして設計することができる。次いで、レーザビームは、fθ光学系を用いて焦点を合わせる(集束される)(focus)ことができる。焦点幅は、通常、10μm~200μmである。
【0042】
第2のデバイスにおける微細洗浄のための金属イオンスパッタリングにおいて、1つまたは複数の少なくとも予備洗浄された金属ストリップの表面は、十分なエネルギー(10eV~数10(several 103)eV)でイオンを衝撃することによって部分的にアブレーション(ablate)され得る。これは、表面に衝突するイオンそれぞれの運動量伝達に基づいている。弾性「コアインパクト」によって、衝撃(impulse)はそれぞれの金属ストリップの表面で材料に導入され、衝撃カスケードを開始する。これにより、表面原子は、外向きの運動量を受け取ることができる。入射イオンの運動エネルギーが各金属ストリップの材料原子の結合エネルギーより高い場合、それらは主に原子の形態で、なおまた、原子クラスタの形態で固体表面から原子化される。
【0043】
理想的には、10―3mbar~10mbarの圧力範囲の第2のデバイスの真空チャンバ内で、100V~1000Vの間の範囲の高電圧を各金属ストリップに印加することにより、希ガスの助けを借りて低圧プラズマを生成することができる。励起された金属イオンとガスイオンの混合により、高エネルギー粒子は印加した電流電位により基板に向かって加速され、表面をアブレーションする。これは、基板のプラズマ微細洗浄の実現を可能にし、金属ストリップ表面粗さを増加させる可能性がある。
【0044】
無電位微細洗浄の場合、金属イオンは、追加の電極を介して、それぞれの金属ストリップの表面上に加速される。あるいは、金属イオン源に電位を印加することもできる。
【0045】
パッシベーションのための金属表面のメタライゼーション(metallization)は、それ自体公知である。例えば、金属表面は、長期間の腐食からそれらを保護するために、亜鉛メッキ(galvanize)またはクロムメッキされる。燃料電池では、運転条件に依存して、高い酸化還元電位が部分的に発生し、非常に攻撃的な(aggressive)環境を作り出す。金属製BIPを使用すると、腐食する可能性がある。金属製BIPの目標は、耐食性を高め、良好な導電率(electrical conductivity)を達成することである。
【0046】
耐食性は、金属ストリップの腐食低減コーティングまたは窒化によって達成または改善することができる。
【0047】
プラズマ窒化は、約550℃未満(<550℃)の温度で、例えば窒素を用いた鋼表面の熱化学的処理である。通常、それは耐摩耗性を改善するために使用される。特にステンレス鋼では、クロムの不動態化効果はクロムの窒化クロム(CrN)への結合により失われる。これにより、耐食性が低下する。420℃未満(<420℃)の低温でプラズマ窒化することにより、CrNの形成を大幅に回避でき、耐食性も改善される可能性がある。金属ストリップの表面近傍領域への窒素原子の導入は、立方晶(cubic)オーステナイト原子構造の格子膨張をもたらす。この目的のために、窒素は、真空窒素雰囲気中で約0.1Paの圧力でイオン化され、金属ストリップに向かって加速される。
【0048】
導電率の改善は、カーボンベースのグラファイト様層システム(carbon-based graphite-like layer system)を第4のデバイスに堆積させることによって達成することができる。
【0049】
真空チャンバ内での炭素ターゲットのアーク蒸発等の非パルスまたはパルス炭素イオン源を用いて堆積することによって、導電性で耐食性のコーティングを堆積することができる。特に炭素堆積中の温度が同時に上昇すると、炭素の準安定なsp結合が減少し、より多くのsp結合が層中に形成される。生成された炭素イオンは、炭素イオンの注入を達成するために、100eVを超える、理想的には、約300eVの高い平均イオンエネルギーまで、金属ストリップと炭素蒸発器との間の電位差(>400V)を介して、または補助電極を介して、加速されるべきである。
【0050】
その後の炭素の導入による浸炭は、耐食性だけでなく導電率も高めることができる。したがって、BIPを作製するために使用される金属ストリップの材料は、より低い電気接触抵抗を有することができる。0.01Pa~10Paの範囲の圧力で、イオン化ガスまたはプラズマによって表面改質が達成される。プラズマ発生のために、各金属ストリップの供給方向に第4のデバイスの上流に配置された別のデバイス内、または、第2のデバイス内のカソードとアノードとの間の真空中において、数百ボルトの電圧を印加することができる。使用される少なくとも1つの炭素含有ガスの導電率に応じて、特定(certain)の電流密度が、電圧が印加されたときに生じる。補助陽極によって、アーク放電により電子源から放出された自由電子は、さらに加速され、プラズマの強化が達成できる。炭素含有ガスは、好ましくは、二酸化炭素、メタン、プロパン、または例えば水素、窒素および一酸化炭素の炭素含有ガス混合物であり得る。
【0051】
浸炭は、レーザ溶接の領域での腐食保護の低下を防ぐことができる。
【0052】
本発明による方法では、1つの金属ストリップまたは2つの金属ストリップの表面もまた浸炭窒化してもよい。
【0053】
ストリップの取り扱い(handling)は、ストリッププロセスとローラを使用して接合中に金属ストリップを所定の位置(in place)に保持することによって、簡素化することができる。
【0054】
一方でロールは熱を放散することができ、他方で溶接シームまたはスポットをより微細にすることができるので、接合による入熱、ひいてはBiPの熱歪みを最小にすることができる。
【0055】
上述した溶液を使用することにより、カーボンコーティングされた金属ストリップをコーティング後にコイル状にする必要がなくなり(ダメージの軽減)、汚染の可能性を防止することができる。1つの金属ストリップまたは両方の金属ストリップをローラから解き、必要に応じて偏向ローラ(deflection roller)上にガイドすることができる。供給移動(送り動作)は、少なくとも駆動ローラ対によってサポートすることができる。供給移動は、前述の成形のためにローラ対のみによって達成することもできる。
【0056】
必要な処理時間を最小限に抑えることができ、輸送による材料または構成部品(component)の汚染を回避することができる。
【0057】
本発明に従って製造されたBIPを備えた燃料電池は、自動車、航空機、輸送またはモバイルアプリケーションで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明は、例として、以下により詳細に説明することを意図している。
図面において:
図1図1は、本発明に係る方法の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、2つの前処理された金属ストリップを接合する1つの方法を示す図である。
【0059】
図1に示す例では、金属ストリップ1をローラ8から巻き出し、偏向ローラ9を介して第1のデバイス2に供給して予備洗浄を行う。
【0060】
そこから、金属ストリップ1をさらに第2のデバイス3に搬送し、そこでプラズマにより微細な洗浄および窒化を行う。次に、このように処理された金属ストリップ1を、さらに第3のデバイス4に搬送し、そこでクロム層を形成し、金属ストリップ1の表面における接着性を向上させ、腐食保護を提供する。
【0061】
次に、第4のデバイス5にカーボン層を形成する。
【0062】
少なくとも第2~第4のデバイス3~5は、周囲圧力よりも低く、各デバイスでの各処理を行うのに適した内圧を有するべきである。
【0063】
各デバイス2~5の間には、スルース(sluice)が設けられており、ここで、この例では、スルース6.2は、周囲圧力よりも低い内圧で、第1のデバイス2から第2のデバイス3への移行(transition)を提供し、スルース6.3は、内圧が低下した第3のデバイス4との間の移行を提供し、スルース6.4は、周囲雰囲気に対して低下した内圧を備えた第4のデバイス5からの移行を提供する。スルース6.1もまた、第1のデバイス2の前に設けられる。
【0064】
金属ストリップ1の供給移動方向において第4のデバイス5の下流側にデバイス10を配置し、金属ストリップ1の2つの前処理された金属ストリップ1.1および1.2への分離が達成される。この場合、金属ストリップ1は、好ましくは、金属ストリップ1の供給移動軸に対して平行に中心(centrally)で分離することができる。
【0065】
このようにして得られた2つの前処理された金属ストリップ1.2のうちの1つをデバイス11に供給し、180°回転させる。通常、金属ストリップの1つの面のみが前処理されるので、金属ストリップ1.1および1.2の前処理された表面が互いに向きあわないように回転を行う。
【0066】
この例では、金属ストリップ1.1および1.2の各々は、少なくとも1つの成形デバイス7に供給され、さらに搬送される。成形後、ストリップはもはや平面ではなく、波状の、通常は窪みまたは隆起を有する3次元の表面を有する。
【0067】
形成デバイス(forming device)は、例えば、作動材料および反応生成物の供給および除去、ならびに燃料電池内でのそれらの分配のために、チャネルまたはマウンドの形態で、窪みおよび、必要に応じて、隆起が形成され得るように、金属ストリップ1.1および1.2が変形されるように構成されたエンボスローラを含むことができる。この場合、ローラは対で構成され、一方は雌型を形成し、他方は雄型を形成する。
【0068】
このように成形された金属ストリップ1.1および1.2は、好ましくはレーザ放射を用いて行うことができる材料連続性を有する接合のためのデバイス12に供給される。
【0069】
その後、説明の一般的な部分で説明したように、燃料電池の分離および更なる製造を行うことができる。
【0070】
図2は、一方がアノード側チャネル構造を有し、他方がカソード側チャネル構造を有し、互いに適切な形状に成形されて回転した、2つの金属ストリップ1.1および1.2が、2つのローラ7.1および7.2の間のギャップ内に一緒に移動する方法を示している。ローラ7.1および7.2が回転すると、これらも移動し続ける。
【0071】
ローラ7.1および7.2によって、成形された金属ストリップ1.1および1.2の表面領域が互いに直接接触し、そこで一体的な結合が形成される場合、レーザビーム13がローラ7.1および7.2の間のギャップ内に向けられ、互いに対して向けられている、前処理および成形された金属ストリップ1.1および1.2の表面上に向けられ、その結果、これらの位置に一体型溶接接合部が形成される。これらの位置で、金属ストリップ1.1および1.2の表面領域が互いに接触する。金属ストリップ1.1と1.2との間に形成されたチャネル構造は、冷却チャネルを形成してもよい。
【0072】
レーザビーム13は、スキャナまたはガルボスキャナを形成する、2つの反射素子14.1および14.2によって、一体型接合部を形成するためのそれぞれの位置に向けることができ、それによって、材料連続性を有する一体型接合が行われるそれぞれの位置に偏向させることができる。fθ光学系15によって、レーザビーム13の焦点距離、したがって焦点面の位置は、規定された方法で影響を受けることができる。
図1
図2
【国際調査報告】