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特表2022-506896発泡体組成物、発泡体マトリックスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】発泡体組成物、発泡体マトリックスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/28 20060101AFI20220107BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20220107BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20220107BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61L15/28 100
A61L15/32 100
A61L15/32 300
A61L15/44 100
A61K45/00
A61L15/42 310
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525006
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 CA2019051553
(87)【国際公開番号】W WO2020087181
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/754,698
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521193256
【氏名又は名称】コバロン テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュドニク、ブヤチェスラブ
(72)【発明者】
【氏名】カノアトブ、ミルツォ
(72)【発明者】
【氏名】ディティツィオ、バレリオ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C081AA12
4C081AA14
4C081CA18
4C081CA24
4C081CD04
4C081CD07
4C081CD08
4C081CD09
4C081CD11
4C081CD12
4C081CD15
4C081CE02
4C084AA17
4C084MA63
4C084NA20
4C084ZA89
(57)【要約】
本明細書では、マトリックス、組成物、およびマトリックスの作製方法が開示される。マトリックスは生体分子を含み、マトリックスは乾燥した架橋発泡体である。マトリックスは凍結乾燥されていない。この方法は、組成物を発泡させるステップ、組成物を架橋するステップ、および組成物を乾燥させるステップを含む。本明細書に開示されるマトリックスは、創傷被覆材および創傷の治療として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を含むマトリックスであって、乾燥した架橋発泡体である、マトリックス。
【請求項2】
前記マトリックスは凍結乾燥されていない、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項3】
前記生体分子は、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載のマトリックス。
【請求項4】
前記生体分子は約40%~約80%(w/w)で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項5】
少なくとも2つの層をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項6】
前記少なくとも2つの層は、隣接する発泡体層に対する前記生体分子含有量および/または架橋量に関して実質的に同一である、請求項5に記載のマトリックス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの層は、隣接する発泡体層に対する前記生体分子含有量および/または架橋量に関して異なる、請求項5に記載のマトリックス。
【請求項8】
前記マトリックスは、前記マトリックスの表面上に硬化した「スキン」および/または圧縮された「スキン」を含まない、請求項1から7のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項9】
少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項10】
前記生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載のマトリックス。
【請求項11】
前記生体適合性ポリマーは、約0.4%~約25%(w/w)で存在する、請求項9または10に記載のマトリックス。
【請求項12】
約100μm~約750μmの範囲の孔径を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項13】
前記乾燥した架橋発泡体マトリックスの乾燥重量の約20倍~約50倍の吸収能力を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項14】
少なくとも1mmの厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項15】
活性剤をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項16】
前記活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のマトリックス。
【請求項17】
前記抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、活性塩素化合物、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項18】
前記抗微生物剤は銀イオンを含む、請求項16または17に記載のマトリックス。
【請求項19】
前記銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する、請求項18に記載のマトリックス。
【請求項20】
前記活性剤は約0.1%~30%(w/w)で存在する、請求項15から19のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項21】
前記活性剤は、前記少なくとも2つの層のうちの1つの中および/またはその上に存在する、請求項15から20のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項22】
前記活性剤は、前記少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に存在する、請求項15から20のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項23】
前記活性剤、前記生体分子および/または前記生体適合性ポリマーは、前記少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に均一に分布している、請求項15から22のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項24】
前記活性剤、前記生体分子および/または前記生体適合性ポリマーは、前記少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に不均一に分布している、請求項15から22のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項25】
前記マトリックスは、架橋剤を使用して架橋されている、請求項1から24のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項26】
前記架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項25に記載のマトリックス。
【請求項27】
前記架橋剤は、約0.5%~約5%(w/w)で存在する、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記マトリックスは被覆として製造される、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項29】
前記被覆は、創傷バリア、創傷被覆材、止血被覆材、血管ラップ、スポンジ、ガーゼ、包帯、フィルム、シート、チューブおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載のマトリックス。
【請求項30】
創傷バリア、創傷被覆材、止血被覆材、血管ラップ、スポンジ、ガーゼ、包帯、フィルム、シート、チューブおよびそれらの組み合わせとして使用するための、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項31】
表面への活性剤の送達に使用するための、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項32】
創傷の治療に使用するための、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項33】
発泡架橋非凍結乾燥マトリックスを形成するための組成物であって、前記組成物は生体分子を含み、前記組成物は発泡可能であり、前記生体分子は架橋可能である、組成物。
【請求項34】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤、医薬溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記生体分子が、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33から35のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項37】
前記生体分子は約40%~約80%(w/w)で存在する、請求項33から36のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項38】
活性剤をさらに含む、請求項33から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、活性塩素化合物、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記抗微生物剤は銀イオンを含む、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
前記銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記活性剤は約0.1%~30%(w/w)で存在する、請求項38から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
架橋剤をさらに含む、請求項33から43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記架橋剤は、約0.5%~約5%(w/w)で存在する、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む、請求項33から46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記生体適合性ポリマーは、約0.4%~約25%(w/w)で存在する、請求項47または48に記載の組成物。
【請求項50】
表面上の微生物増殖を減少させるための、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックスの使用。
【請求項51】
前記微生物は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、および抗生物質耐性腸球菌(antibiotic-resistant Enterococcus)からなる群から選択される、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記表面は皮膚または医療機器である、請求項50または51に記載の使用。
【請求項53】
創傷被覆材、包帯またはスポンジとしての、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックスの使用。
【請求項54】
表面上の微生物増殖を減少させるための発泡架橋非凍結乾燥マトリックスを形成するための、請求項33から49のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項55】
微生物は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、および抗生物質耐性腸球菌(antibiotic-resistant Enterococcus)からなる群から選択される、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
前記表面は皮膚または医療機器である、請求項54または55に記載の使用。
【請求項57】
請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックスを創傷に適用するステップを含む、創傷を治療する方法。
【請求項58】
創傷を治療するための、請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックスの使用。
【請求項59】
マトリックスを作製する方法であって、
生体分子を含む組成物を発泡させるステップ、
前記組成物を架橋するステップ、および
前記組成物を乾燥させるステップを含む、方法。
【請求項60】
前記組成物は薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤、医薬溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記生体分子は、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項59から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記架橋は発泡後に行われる、請求項59から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記架橋は発泡しながら行われる、請求項59から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記架橋は架橋剤を加えるステップを含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記添加は滴下方式で行われる、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記組成物は、少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む、請求項59から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1つの生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物は活性剤をさらに含む、請求項59から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記活性剤は前記発泡に実質的に影響を及ぼさない、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記マトリックス上に活性剤を積層するステップをさらに含む、請求項59から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記活性剤は粉末または濃縮液体形態である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、活性塩素化合物、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記抗微生物剤は銀イオンを含む、請求項74または75に記載のマトリックス。
【請求項77】
前記銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する、請求項76に記載のマトリックス。
【請求項78】
前記組成物を加熱するステップをさらに含む、請求項59から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記加熱は発泡の前に行われる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記加熱は約50℃で行われる、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記組成物を冷却するステップをさらに含む、請求項59から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記冷却は発泡の前に行われる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記冷却は約25℃~約28℃で行われる、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
前記冷却は約26℃で行われる、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記冷却は、前記組成物を連続的に撹拌しながら行われる、請求項82から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記マトリックスをトレイまたはモールドに移送するステップをさらに含む、請求項59から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記移送は乾燥前に行われる、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記トレイまたはモールドは、疎水性フィルムで裏打ちされる、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
前記移送ステップは、前記トレイまたはモールド内で前記マトリックスを広げるステップを含む、請求項86から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記乾燥ステップは風乾を含む、請求項59から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記風乾は周囲圧力および温度で行われる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記風乾は約40℃で行われる、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記乾燥は、前記マトリックスの周りの効率的な空気循環を確実にする、請求項90から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記乾燥は最長48時間である、請求項90から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記乾燥は凍結乾燥ではない、請求項59から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記マトリックスは、前記マトリックスの表面上に硬化したスキンおよび/または圧縮されたスキンを含まない、請求項59から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
請求項1から27のいずれか一項に記載のマトリックスを含む創傷被覆材。
【請求項98】
請求項59から97のいずれか一項に記載の方法によって作製されたマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスに関する。より具体的には、本発明は、態様において、発泡マトリックスおよび関連する組成物、その製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンおよびコラーゲン系材料は止血能力を有し、したがって、ゼラチンおよびコラーゲンスポンジは、創傷出血を制御するための有効なツールとして使用されてきた。典型的には、ゼラチン系材料は、ヒトの皮膚または組織に適用した場合に耐久性があるように何らかの方法で安定化される。ゼラチン系材料を安定化する方法には、化学処理、熱処理および架橋方法が含まれる。
【0003】
米国特許第2,465,357号明細書は、スポンジの一般的な物理的特性を有するが動物体によって吸収可能な液体透過性の水不溶性ゼラチンスポンジを記載している。
【0004】
米国特許第4,703,108号明細書は、スポンジまたはシート形態の生分解性コラーゲン系マトリックスを調製する方法を記載しており、ここでは、コラーゲン系材料を凍結乾燥してコラーゲン系スポンジを形成し、これを架橋剤と接触させて中間コラーゲン系マトリックスを形成し、これを続いて重度の脱水条件に供してスポンジまたはシート形態のコラーゲン系マトリックスを形成する。
【0005】
米国特許第8,361,501号明細書は、実質的に非接着性の弾性ゼラチンマトリックスを記載している。マトリックスは、創傷、組織および器官に対して非接着性であるとともに、柔軟であるように弾性でもある。マトリックスは、タンパク質、ポリマー、架橋剤および任意の可塑剤の凍結乾燥混合物である。非接着性弾性ゼラチンマトリックスを作製する方法も記載される。
【0006】
従来技術の欠点の少なくともいくつかを克服または軽減するため、または有用な代替物を提供するための代替マトリックスおよび組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一態様によれば、生体分子を含むマトリックスが提供され、マトリックスは乾燥した架橋発泡体である。
【0008】
態様では、マトリックスは凍結乾燥されていない。
【0009】
態様では、生体分子は、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
態様では、生体分子は、約40%~約80%(w/w)で存在する。
【0011】
態様では、本明細書に記載のマトリックスは、少なくとも2つの層をさらに含む。
【0012】
態様では、各層は独立して均質または非均質である。
【0013】
態様では、少なくとも2つの層は、隣接する発泡体層に対する生体分子含有量および/または架橋量に関して実質的に同一である。
【0014】
態様では、少なくとも2つの層は、隣接する発泡体層に対する生体分子含有量および/または架橋量に関して異なる。
【0015】
態様では、マトリックスは、マトリックスの表面上に硬化した「スキン」および/または圧縮された「スキン」を含まない。
【0016】
態様では、本明細書に記載のマトリックスは、少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む。
【0017】
態様では、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
態様では、生体適合性ポリマーは、約0.4%~約25%(w/w)で存在する。
【0019】
態様では、マトリックスは、約100μm~約750μmの範囲の孔径を有する。
【0020】
態様では、マトリックスは、乾燥した架橋発泡体マトリックスの乾燥重量の約20倍~約50倍の吸収能力を有する。
【0021】
態様では、マトリックスは少なくとも1mmの厚さを有する。
【0022】
態様では、マトリックスは活性剤をさらに含む。
【0023】
態様では、活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
態様では、抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、活性塩素化合物、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
態様では、抗微生物剤は銀イオンを含む。
【0026】
態様では、銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する。
【0027】
態様では、活性剤は、約0.1%~30%(w/w)で存在する。
【0028】
態様では、活性剤は、少なくとも2つの層のうちの1つの中および/またはその上に存在する。
【0029】
態様では、活性剤は、少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に存在する。
【0030】
態様では、活性剤、生体分子および/または生体適合性ポリマーは、少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に均一に分布している。
【0031】
態様では、活性剤、生体分子および/または生体適合性ポリマーは、少なくとも2つの層の両方の中および/またはその上に不均一に分布している。
【0032】
態様では、マトリックスは、架橋剤を使用して架橋される。
【0033】
態様では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
態様では、架橋剤は、約0.5%~約5%(w/w)で存在する。
【0035】
態様では、マトリックスは被覆として製造される。
【0036】
態様では、被覆は、創傷バリア、創傷被覆材、止血被覆材、血管ラップ、スポンジ、ガーゼ、包帯、フィルム、シート、チューブおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
態様では、マトリックスは、創傷バリア、創傷被覆材、止血被覆材、血管ラップ、スポンジ、ガーゼ、包帯、フィルム、シート、チューブおよびそれらの組み合わせとして使用するためのものである。
【0038】
態様では、マトリックスは、表面への活性剤の送達に使用するためのものである。
【0039】
態様では、マトリックスは、創傷の治療に使用するためのものである。
【0040】
別の態様によれば、発泡架橋非凍結乾燥マトリックスを形成するための組成物が提供され、組成物は生体分子を含み、組成物は発泡可能であり、生体分子は架橋可能である。
【0041】
態様では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0042】
態様では、薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤、医薬溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
態様では、生体分子は、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
態様では、生体分子は、約40%~約80%(w/w)で存在する。
【0045】
態様では、本明細書に記載の組成物は、活性剤をさらに含む。
【0046】
態様では、活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
態様では、抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、活性塩素化合物、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0048】
態様では、抗微生物剤は銀イオンを含む。
【0049】
態様では、銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する。
【0050】
態様では、活性剤は、約0.1%~30%(w/w)で存在する。
【0051】
態様では、組成物は架橋剤をさらに含む。
【0052】
態様では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
態様では、架橋剤は、約0.5%~約5%(w/w)で存在する。
【0054】
態様では、組成物は、少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む。
【0055】
態様では、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
態様では、生体適合性ポリマーは、約0.4%~約25%(w/w)で存在する。
【0057】
別の態様によれば、表面上の微生物増殖を減少させるための本明細書に記載のマトリックスの使用が提供される。
【0058】
態様では、微生物は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、および抗生物質耐性腸球菌(antibiotic-resistant Enterococcus)からなる群から選択される。
【0059】
態様では、表面は皮膚または医療機器である。
【0060】
別の態様によれば、創傷被覆材、包帯、またはスポンジとしての本明細書に記載のマトリックスの使用が提供される。
【0061】
さらに別の態様によれば、表面上の微生物増殖を減少させるための発泡架橋非凍結乾燥マトリックスを形成するための本明細書に記載の組成物の使用が提供される。
【0062】
態様では、微生物は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、および抗生物質耐性腸球菌(antibiotic-resistant Enterococcus)からなる群から選択される。
【0063】
態様では、表面は皮膚または医療機器である。
【0064】
さらに別の態様によれば、本明細書に記載のマトリックスを創傷に適用するステップを含む、創傷を治療する方法が提供される。
【0065】
さらなる態様によれば、創傷を治療するための本明細書に記載のマトリックスの使用が提供される。
【0066】
なおさらなる態様によれば、マトリックスを作製する方法が提供され、方法は、生体分子を含む組成物を発泡させるステップ、組成物を架橋するステップ、組成物を乾燥させるステップを含む。
【0067】
態様では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0068】
態様では、薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤、医薬溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
態様では、生体分子は、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
態様において、架橋は発泡後に行われる。
【0071】
態様において、架橋は発泡させながら行われる。
【0072】
態様では、架橋は、架橋剤を加えるステップを含む。
【0073】
態様では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
態様では、添加は滴下方式で行われる。
【0075】
態様では、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む。
【0076】
態様では、少なくとも1つの生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
態様では、本明細書に記載の組成物は、活性剤をさらに含む。
【0078】
態様では、活性剤は発泡に実質的に影響しない。
【0079】
態様では、本明細書に記載の方法は、マトリックス上に活性剤を積層するステップをさらに含む。
【0080】
態様では、活性剤は粉末または濃縮液体形態である。
【0081】
態様では、活性剤は、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
態様では、抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、活性塩素化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0083】
態様では、抗微生物剤は銀イオンを含む。
【0084】
態様では、銀イオンは、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物からなる群から選択される銀塩に由来する。
【0085】
態様では、本明細書に記載の方法は、組成物を加熱するステップをさらに含む。
【0086】
態様では、加熱は発泡の前に行われる。
【0087】
態様では、加熱は約50℃で行われる。
【0088】
態様では、本明細書に記載の方法は、組成物を冷却するステップをさらに含む。
【0089】
態様では、冷却は発泡の前に行われる。
【0090】
態様では、冷却は、約25℃~約28℃で行われる。
【0091】
態様では、冷却は約26℃で行われる。
【0092】
態様では、冷却は、組成物を連続的に撹拌しながら行われる。
【0093】
態様では、本明細書に記載の方法は、マトリックスをトレイまたはモールドに移すステップをさらに含む。
【0094】
態様では、移送は乾燥前に行われる。
【0095】
態様では、トレイまたはモールドは疎水性フィルムで裏打ちされる。
【0096】
態様では、移送ステップは、トレイまたはモールド内でマトリックスを広げるステップを含む。
【0097】
態様では、乾燥ステップは風乾を含む。
【0098】
態様では、風乾は周囲圧力および温度で行われる。
【0099】
態様では、風乾は、約40℃で行われる。
【0100】
態様では、乾燥は、マトリックスの周りの効率的な空気循環を確実にする。
【0101】
態様では、乾燥は最大48時間である。
【0102】
態様では、乾燥は凍結乾燥ではない。
【0103】
態様では、マトリックスは、マトリックスの表面上に硬化したスキンおよび/または圧縮されたスキンを含まない。
【0104】
さらに別の態様によれば、本明細書に記載のマトリックスを含む創傷被覆材が提供される。
【0105】
さらに別の態様によれば、本明細書に記載の方法によって作製されたマトリックスが提供される。
【0106】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正が前記詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の例は、本発明の実施形態を示すが、単なる例示として与えられることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本明細書では、態様において、マトリックス、マトリックスを形成するための組成物、および組成物からマトリックスを形成する方法が記載される。態様では、本明細書に記載の方法は、容易に使用可能であり、以下にさらに説明するようなさらなる処理技術で除去する必要がある望ましくない表面層なしに本明細書に記載のマトリックスを作製する発泡および風乾技術を利用する。
【0108】
定義
本明細書で使用される場合、「発泡マトリックス」または「発泡体」は、典型的には撹拌によって液体の上または中に形成された小さな気泡の塊から形成される。「発泡」のプロセスは、泡沫の形成と同様に、小さな気泡の塊を生成することを含む。例えば、発泡体は、クリームを泡立てるように本明細書に記載の組成物を泡立てることによって作製され得る。発泡体はまた、本明細書に記載の組成物に空気をバブリングすることによって作製され得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、「包帯」は、身体の罹患部分または損傷部分を結合または包むために使用される布または他の材料の片を意味する。包帯は、創傷に対して直接配置されるか、または創傷被覆材を創傷に結合するために使用される。
【0110】
本明細書で使用される場合、「創傷被覆材」、「止血被覆材」、「血管ラップ」、「スポンジ」または「ガーゼ」は、創傷に対して直接配置され、創傷の保護、出血の停止または低減、治癒の促進、および/または水分の提供、保持、または除去する目的に役立ち、任意選択的に包帯を使用して適所に保持される、布または材料の片を意味する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「活性塩素化合物」は、活性塩素(元素塩素と同様の酸化特性を有する塩素)を含有する化合物を指す。このような化合物は、通常、酸素原子または窒素原子に結合した塩素原子を含有する。この種の化合物は、工業用織物漂白において、殺菌剤として、漂白、消毒および洗剤組成物の成分として、および他の目的のために有用である。活性塩素化合物には、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムおよびカリウム、ジ-およびトリクロロシアヌル酸、トリクロロメラミン、クロラミンT(ナトリウムN-クロロ-p-トルエン-スルホンアミド)、ジクロロジメチルヒダントイン、ナトリウム、カルシウムおよび次亜塩素酸リチウムなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍薬」という用語は、腫瘍を部分的に、実質的に、または完全に排除する化学療法剤を指す。例示的な抗腫瘍薬には、窒素マスタード、ニトロミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、マンノムスチン、ドーパン、BCNU、トリエチレンメラミン、チオテパ、アゼテパ、スレニモン、インプロキュオン、ブスルファン、ジメチルミラン、ピポスルファン、エトグルシド、エポキシプロピジン、エポキシピペラジン、ヘキサメチルメラミン、ジブロモマンニトール、ピポブロマン、CCNU、メチル-CCNU、クロロゾトシン、GANU、MCNU、ACNU、TA-077およびフォサミドなどのアルキル化剤、葉酸、アミノプテリン、メトトレキサート、グアニン、8-アザグアニン、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、ウラシル、5-フルオロウラシル、シタラビン、アザセリン、ジアザマイシン、BHAC、SM108、シスプラチャム、シトシンアラビノシド、テガフル、HCFU、5’DFUR、TK-117およびシクロチジンなどの代謝拮抗剤、アクチノマイシンD、サイクロマイシン、マイトマイシンC、ダウノマイシン、ブレオマイシン、クロモマイシン、カルジノフィリン、マクロシノマイシン、ネオトラマイシン、タリソマイシン、スポラマイシン、サフラマイシン、アンサミトシン、DON、マクロモマイシン、ノガロマイシン、7-o-メチルノガロール-4’-エピアドリアマイシン、ストレプトゾトシン、4-デメトキシダウノルビシンおよびミトザントロンなどの抗生物質、5-HPやIQ-1などの合成剤、チオテパ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ネオカルジノステインなどの植物成分、およびHg-ヘマトポルフィリン、Co-プロトポルフィリン、スティルベストロール、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、メチルグリオキサルビス-グアニルヒドラゾン、L-アスパラギナーゼおよびTNFが含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
本明細書で使用される場合、「抗増殖薬」という用語は、重要な代謝過程を阻害することによって作用し、腫瘍などの異常な細胞増殖を伴う疾患の治療に一般的に使用される代謝拮抗薬を指す。上記の抗腫瘍薬は、場合によっては、抗増殖薬も考慮される。
【0114】
本明細書で使用される場合、「鎮痛剤」という用語は、疼痛緩和効果を有する物質を指す。鎮痛剤には、アセチルサリチル酸アセトアミノフェン、パラセタモール、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトコナゾール、インドメタシン、ジフルニゾール、ナプロキセン、ケトロラク、ジクロフェナク、トルメチン、スリンダク、フェナセチン、ピロキシカム、メファマン酸、デキストロメトルファンなどの非オピオイド鎮痛剤、サリチル酸塩、その薬学的に許容される塩およびそれらの混合物を含む他の非ステロイド性抗炎症薬、または、コデイン、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、レボファノール、メペリジン、メプタジノール、プロポキシフェン、プロピラム、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ブトルファノール、トラマドール、ヒドロコドン、オキシコドン、メタドン、それらの薬学的に許容され得る塩およびそれらの混合物などのオピオイド鎮痛剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような薬学的に許容される塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される場合、「抗接着化合物」という用語は、術後の接着(例えば、瘢痕)形成を防止するために使用することができる化合物(またはフィルムもしくは液体の形態のポリマー)を指す。例示的な抗接着化合物には、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールベルベリン液(PEG)、ヒアルロン酸ナトリウム、およびキトサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
本明細書で使用される場合、「キレート剤」という用語は、遊離イオンを捕捉もしくは除去することができる、または標的組織からのその除去を促進することができ、したがってその触媒活性を損ない、皮膚を保護する能力を有する物質を指す。例示的なキレート剤には、デスフェリオキサミン、ジエチレントリアミン五酢酸、N,N’-ビス(o-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、1,2-ジメチル-3-ヒドロキシピリジン-4-オンおよび1,2-ジメチル-3-ヒドロキシル-3-ヒドロキシピリジン-4-オンが含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書で使用される場合、「抗微生物剤」という用語は、微生物を部分的に、実質的にまたは完全に排除することができる任意の薬剤を指す。抗菌剤の例としては、本明細書に記載の抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および自然免疫ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物または化合物の組み合わせが医薬用途の製剤または組成物の残りの成分と適合性であり、米国食品医薬品局によって公表されたものを含む確立された政府基準に従ってヒトに投与するのに一般に安全であることを意味する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、本明細書に記載の組成物またはマトリックスに加えることができる非活性成分を意味する。賦形剤の例は当業者によって理解され、いくつかの例は以下の説明に提供される。
【0120】
本明細書で使用される場合、「風乾」という用語は、凍結温度を超えて実行される任意の乾燥方法を包含する。例えば、本明細書に記載のマトリックスは、湿った泡が作製された後、周囲温度および周囲圧力で乾燥される。この方法での乾燥は、微量溶媒を除去するために真空下で行うことができる、または行うことができない(例えば、マトリックスが室温で乾燥される場合、試料は真空デシケータ内で乾燥されてもよく、またはマトリックスが室温より上で乾燥される場合、マトリックスは真空乾燥オーブン内で乾燥されてもよい)。
【0121】
「凍結乾燥」という用語は、凍結され真空下に置かれた後にマトリックスから水滴を除去すること(マトリックスに穴を残すこと)を包含し、それによって氷が低温および低圧下で液相を通過することなく固体から蒸気に直接変化することを可能にする。このようにして、生成物(例えば、マトリックス)は、乾燥プロセス中に凍結を超える温度に決して曝されない。凍結乾燥(lyophilization)および凍結乾燥(freeze-drying)は、本明細書において互換的に使用される。
【0122】
これら2つの異なるプロセス(風乾および凍結乾燥)によって製造されたマトリックスは、異なる構造特性を有する傾向があるため、必ずしも同じ製品ではない。例えば、風乾した製品は、よりコンパクトで耐久性がある(例えば、崩壊に耐性がある)傾向があり、一方、凍結乾燥した製品は、よりコンパクトではなく、より壊れやすい(例えば、容易に潰れる)傾向がある。これにもかかわらず、本明細書に記載の風乾マトリックスは、本明細書に例示するように、凍結乾燥生成物と少なくとも同等に良好に機能する。したがって、本明細書に記載の方法は、コンパクトな創傷被覆材として適した耐久性のある発泡マトリックス(例えば、スポンジ)を作製することができる。
【0123】
本出願の範囲を理解する際に、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、1つまたは複数の要素があることを意味することを意図している。さらに、本明細書で使用される「含む」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、および/またはステップの存在を排除しないオープンエンドの用語であることを意図している。上記は、用語「含む」、「有する」およびそれらの派生語などの同様の意味を有する単語にも適用される。
【0124】
特定の構成要素を「含む(comprising)」と記載される任意の態様はまた、「からなる(consist of)」または「から本質的になる(consist essentially of)」こともでき(またはその逆)、「からなる(consisting of)」は、限定されたまたは制限的な意味を有し、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された構成要素を含むが、不純物として存在する材料、構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、および本明細書に記載される技術的効果を達成する以外の目的で追加される構成要素を除く他の構成要素を除外することを意味することが理解されよう。例えば、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句を使用して定義される組成物は、任意の既知の薬学的に許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。典型的には、一組の成分から本質的になる組成物は、5%重量未満、典型的には3%重量未満、より典型的には1%重量未満の特定されていない成分を含む。
【0125】
本明細書に含まれると定義される任意の構成要素は、本明細書で暗黙的または明示的に定義されているかどうかにかかわらず、任意の特定の化合物または方法ステップなどの条件または否定的な限定によって明示的に除外され得ることが理解されよう。例えば、態様では、凍結乾燥を伴う方法は、本明細書に記載の方法から明示的に除外される。同様に、態様では、本明細書に記載のマトリックスは凍結乾燥されない。
【0126】
さらに、本明細書で与えられるすべての範囲は、明示的に述べられているか否かにかかわらず、範囲の端部および任意の中間範囲点も含む。
【0127】
最後に、本明細書で使用される「実質的に」、「約」、および「およそ」などの程度の用語は、最終結果が有意に変化しないような修正された用語の妥当な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が修飾する単語の意味を否定しない場合、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0128】
マトリックス
生体分子を含むマトリックスが本明細書に記載され、マトリックスは乾燥した架橋発泡物である。有利には、本明細書に記載のマトリックスは凍結乾燥を必要としない。むしろ、例えば周囲条件下で単に風乾させることができる。
【0129】
生体分子は、生体適合性であり、架橋して三次元マトリックスを形成することができる乾燥成分であってもよい。生体分子は、典型的には生分解性であり、マトリックスに形成されると、流体を吸収することができる。態様では、流体の吸収は、本明細書に記載のマトリックスの重量の数倍に達する。典型的な態様では、生体分子は、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせから選択される。典型的には、生体分子はゼラチンである。
【0130】
本明細書に記載のマトリックスは、単一層または複数の層として形成されてもよい。マトリックスが複数の層を含む場合、層は一体複合材を形成するために互いに接合されてもよい。
【0131】
態様では、マトリックスは少なくとも2つの層を含む。態様では、少なくとも2つの層は、生体分子含有量および/または隣接する発泡体層に対する架橋量に関して実質的に同一であり得る。例えば、マトリックスが2つの層を有する場合、両方の層は同様の量(例えば、濃度)の生体分子を有するか、または両方の層は同様の程度の架橋を有する。
【0132】
態様では、隣接する発泡体層に対する生体分子含有量および/または架橋量は異なる。例えば、マトリックスが2つの層を有する場合、1つの層は、第2の層よりも高い割合(例えば、濃度)の生体分子を有し得る。同様に、一方の層は、他方の層と比較して架橋度が増加していてもよい。
【0133】
マトリックスの層の生体分子の量および/または架橋度は、例えば、マトリックスの層を形成するときに生体分子および/または架橋剤の量を増加させることによって変えることができることが理解されよう。このようにして、本明細書に記載のマトリックスの各層または単一の層は、異なる物理化学的特性を有し得る。例えば、マトリックスの層内の生体分子の架橋度または濃度の差は、本明細書に記載のマトリックスの吸収特性に影響を及ぼし得る。例えば、マトリックスの層、特に皮膚に最も近い層中の生体分子の量を増加させることによって、マトリックスの吸収能力(例えば、皮膚に適用されたときにマトリックスによって保持され得る流体の量)を増加させることができる。追加的または代替的に、本明細書に記載の生体分子の架橋度は、マトリックスの引張強度または伸び特性に影響を及ぼし、それによって創傷被覆材としてのその有効性に影響を及ぼし得る。したがって、本明細書に記載の方法によってマトリックスを製造する場合、これらの要因を考慮に入れることができる。
【0134】
従来の組成物を凍結乾燥してマトリックスを作製する場合、それは典型的には、モールドに注がれた液体組成物であり、次いで凍結乾燥される。この液体は、乾燥時に表面に硬化または圧縮されたスキンを形成する傾向を有することができる。本明細書に記載の組成物およびマトリックスは発泡しており、液体形態ではないため、乾燥するにつれて同様のスキンを形成する傾向はない。したがって、態様では、本明細書に記載のマトリックスは、マトリックスの表面上に硬化した「スキン」および/または圧縮された「スキン」を含まない。この「スキン」は、マトリックスの表面に形成することができるフィルムに類似している。典型的には、表面は、本明細書に記載の空気乾燥プロセス中に乾燥装置と接触する表面(すなわち、乾燥容器接触面)である。本明細書に記載の方法によって作製されたマトリックスはこの「スキン」を含まないため、本明細書に記載のマトリックスは、他のマトリックスで典型的である、「スキン」を除去するためのさらなる処理を必要としない。
【0135】
態様では、本明細書に記載のマトリックスは、少なくとも1つの生体適合性ポリマーをさらに含む。典型的には、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ-L-リジン、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物から選択されるが、これらに限定されない。典型的には、生体適合性ポリマーは、アルギン酸またはカルボキシメチルセルロースである。
【0136】
本明細書に記載のマトリックスは多孔質である。態様では、本明細書に記載のマトリックスは、約100μm~約750μmの範囲の孔径を有する。孔径は、90μm、95μm、100μm、110μm、150μm、175μm、200μm、250μm、300μm、400μm、450μm、500μm、600μm、650μm、700μm、750μmまたは800μm(またはそれらの間の任意の値)であり得る。
【0137】
典型的には、本明細書に記載のマトリックスは吸収性である。態様では、本明細書に記載のマトリックスは、本明細書に記載の方法によって形成されたマトリックスの乾燥重量の約20倍~約50倍の吸収能力を有する。例えば、吸収能力は、本明細書に記載の方法によって形成されたマトリックスの乾燥重量の15、20、25、30、35、40、45、50、または55倍であり得る。この吸収能力は、本明細書に記載のマトリックスが例えば創傷被覆材および/または止血被覆材として機能する能力に寄与する。
【0138】
典型的な態様では、本明細書に記載のマトリックスは、少なくとも1mmの厚さを有する。マトリックスの厚さは、例えば、モールドに注入される発泡体の量を調整することによって、または層の数を増やすことによって変えることができることが理解されよう。マトリックスの厚さを変更することは、例えば、流体(例えば、血液または創傷滲出液)で満たすかまたは流体がマトリックスによって吸収され得る程度までマトリックスの体積を増加させるのに適切であり得る。
【0139】
本明細書に記載のマトリックスは、任意の既知の方法によって乾燥される。典型的には、乾燥方法は凍結乾燥を除外する。典型的な態様では、マトリックスは、例えば周囲条件下で風乾される。例えば、マトリックスを室温および室圧で乾燥させることができる。これは、マトリックスを乾燥させるための簡単で安価な方法であり、特殊な装置は必要とされない。態様では、換気装置は、マトリックスの周りの効率的な空気循環を確実にするために使用される(例えば、マトリックスの周りを乾燥させると湿潤スポットは残らない)。このようにして、本明細書に記載の方法によって作製される発泡マトリックスは、もはや湿った発泡体ではなく、接触して配置されたときに流体を吸収することができる。上述のように、本明細書に記載のマトリックスを作製するために使用される空気乾燥技術は、マトリックスを作製するための本明細書に記載の方法を有利に単純化するが、マトリックスの表面上の硬化または圧縮されたスキンの作製の排除もする。
【0140】
態様では、本明細書に記載のマトリックスは、活性剤をさらに含む。活性剤には、抗微生物剤、鎮痛剤、抗接着化合物、抗腫瘍薬、抗増殖薬、キレート剤およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
活性剤は、態様では、1つ以上の抗微生物剤、および/または1つ以上の抗真菌剤、および/または1つ以上の抗ウイルス剤、および/または1つ以上の防腐剤、および/またはそれらの組み合わせを含む抗菌剤である。
【0142】
典型的な態様では、抗微生物剤は抗菌剤である。本明細書に記載の任意の抗菌剤を本明細書に記載の組成物に使用することができるが、いくつかの非限定的な例示的な抗菌剤には、アミノグリコシド、ベータラクタム、キノロンまたはフルオロキノロン、マクロライド、スルホンアミド、スルファメタキソゾール、テトラサイクリン、ストレプトグラミン、オキサゾリジノン(リネゾリドなど)、クリンダマイシン、リンコマイシン、リファマイシン、糖ペプチド、ポリマキシン、リポペプチド抗生物質、金属塩、ならびに薬理学的に許容されるナトリウム塩、薬理学的に許容されるカルシウム塩、薬理学的に許容されるカリウム塩、脂質製剤、上記の誘導体および/または類似体として分類されるものが含まれる。
【0143】
他の態様では、抗微生物剤は抗真菌剤を含む。抗真菌剤のいくつかの例示的なクラスには、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、テルコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール(UK109,496)、ポサコナゾール、ラブコナゾールまたはフルトリマゾールなどのイミダゾールまたはトリアゾール、アンホテリシンB、リポソームアンホテリシンB、ナタマイシン、ナイスタチンおよびナイスタチン脂質製剤などのポリエン抗真菌剤、カスポファンギン、ミカファンギン、アニドルフンギン、シロフンギンなどのエキノカンジンを含む細胞壁活性環状リポペプチド抗真菌剤、LY121019、LY303366、テルビナフィンなどの抗真菌剤のアリルアミングループが含まれる。抗真菌剤のさらに他の非限定的な例には、ナフチフィン、トルナフタート、メディオシジン、カンジシジン、トリコマイシン、ハマイシン、アウレフンギン、アスコシン、イファチン、アザコルチン、トリコマイシン、レボリン、ヘプタマイシン、カンジマイシン、グリセオフルビン、BF-796、MTCH24、BTG-137586、プラジマイシン(MNS18184)、ベナマイシン、アンビソーム、ニッカマイシンZ、フルシトシンまたはペリマイシンが含まれる。
【0144】
さらに他の態様では、抗微生物剤は抗ウイルス剤を含む。抗ウイルス剤の非限定的な例には、シドホビル、アマンタジン、リマンタジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、リバビリンまたはバルシクロビルが含まれる。
【0145】
いくつかの態様では、抗微生物剤は自然免疫ペプチドまたはタンパク質である。先天性ペプチドまたはタンパク質のいくつかの例示的なクラスは、トランスフェリン、ラクトフェリン、デフェンシン、ホスホリパーゼ、リゾチーム、カテリシジン、セルプロシジン、殺菌性透過性増加タンパク質、両親媒性アルファヘリックスペプチド、および他の合成抗微生物アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質である。
【0146】
活性剤が抗微生物剤である場合、抗微生物剤は、クロルヘキシジン、オクテニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、銅、亜鉛、銀、塩素、例えば限定されないが、次亜塩素酸ナトリウム、フルオロキノロン、b-ラクタム、マクロライド、アミノグリコシド、テトラサイクリンなどの活性塩素化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0147】
典型的な態様では、抗微生物剤は銀イオンを含む。態様では、銀イオンは、銀塩、例えば、リン酸銀、硫酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、炭酸銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、ラウリン酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、およびそれらの混合物に由来するが、これらに限定されない。
【0148】
本明細書に記載のマトリックスが2つ以上の層を含む場合、1つ以上の活性剤が、複数の層のいずれか1つ以上の中および/またはその上に存在し得る。同様の態様では、本明細書に記載のマトリックスが1つ以上の層を含む場合、1つ以上の活性剤がすべての層の中および/またはその上に存在し得る。
【0149】
さらなる態様では、本明細書に記載のマトリックスが2つ以上の層を含む場合、本明細書に記載の活性剤、本明細書に記載の生体分子および/または本明細書に記載の生体適合性ポリマーは、典型的には、いくつかまたはすべての層の中および/またはその上に均一に分布している。「均一な」分布とは、層が均一な組成を有することを意味する(すなわち、層のいかなる部分も、同じ層および/または隣接する層の別の部分よりも実質的に高い濃度または割合の生体分子、活性剤および/または生体適合性ポリマーを有さない)。例えば、マトリックスが2つの層を含む場合、生体分子の濃度は、単一の層の中に均一に分布していてもよく、または両方の層の中に均一に分布していてもよい。このようにして、空間の「ポケット」、または第1の層の別の部分と比較して、または例えば第2の層と比較して、生体分子の量が増加した(例えば、濃度)第1の層の部分は存在しない。
【0150】
さらなる態様では、本明細書に記載の生体分子および/または本明細書に記載の生体適合性ポリマーは、いくつかまたはすべての層の中および/またはその上に不均一に分布している。「不均一な」分布に関して、これは、1つ以上の層が、異なる層および/または同じ層の別の部分と比較して、本明細書に記載の生体分子、活性剤および/または生体適合性ポリマーの様々な(例えば、増加または減少した)濃度または割合を有する層の少なくとも一部を有することを意味する。例えば、マトリックスが2つの層を含む場合、生体適合性ポリマーは、第1の層の別の部分と比較して、または例えば、第2の層の一部もしくは全体と比較して、第1の層の一部において増加した割合(例えば、濃度)を有し得る。このようにして、第1の層の一部または第1の層の全体は、例えば、第2の層の一部または全体とは異なる生体分子濃度を有し得る。層内の生体分子の量を変えることは、例えば、創傷と接触させるために、吸収性が増加した高架橋マトリックス層を作製するのに有利であり得る。
【0151】
生体分子および/または生体適合性ポリマーの「均一な」または「不均一な」分布は、例えば、各層に同じ量の生体分子および/または生体適合性ポリマーを入れることによって、または例えば、ある層にある生体分子および/または生体適合性ポリマーの量を別の層と比較して増加または減少させることによって変えることができることが理解される。
【0152】
2つの層について説明したが、単層の発泡マトリックスまたは2つを超える層を有する発泡マトリックスは、本発明の範囲内であることが理解される。
【0153】
さらに、本明細書に記載のマトリックスが層状である場合、治療効果の時間的および/または空間的分離が達成され得る。例えば、マトリックスが2層の発泡体を有し、活性剤が皮膚から最も遠いマトリックスの層の中および/またはその上に配置される場合、活性剤は、活性剤と皮膚との間の接触時間を遅延させるように、皮膚から時間的および空間的に分離される。逆に、活性剤が皮膚接触発泡層に配置される場合、活性剤と皮膚との間の接触時間は減少する(特に、活性剤が層の表面に配置され、したがって皮膚と直接接触する場合)。本明細書に記載のマトリックスが層を含む場合、本明細書に記載のマトリックスに含まれ得る様々な治療薬を大幅に増加させることができることも企図される。例えば、異なる濃度を有する異なる活性剤を、異なる層の中および/またはその上に配置することができる。活性剤が本明細書に記載のマトリックスの発泡および/または安定性を妨げない限り、活性剤は本明細書に記載の本発明の範囲内であると考えられる。
【0154】
本明細書に記載のマトリックスは架橋されている。マトリックスは、架橋剤を使用して架橋される。典型的には、架橋剤は急速架橋剤である。
【0155】
典型的な態様では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびそれらの混合物から選択されるが、これらに限定されない。
【0156】
特定の態様では、本明細書に記載のマトリックスは、被覆として製造される。被覆は、創傷バリア、創傷被覆材、止血被覆材、血管ラップ、スポンジ、ガーゼ、包帯、フィルム、シート、チューブおよびそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0157】
本明細書に記載のマトリックスは、架橋された吸収性スポンジであり、本明細書に記載の方法によって作製されると、風乾されるゼラチンスポンジ材料に影響を及ぼすことが知られている望ましくない表面特性(例えば、前述の「スキン」)の存在を欠く。さらに、本明細書に記載のマトリックスの多孔質性は、本明細書に記載のマトリックスが流体中でそれらの重量の何倍も吸収するが、同時に生理学的条件下で安定なままであることを可能にする。
【0158】
組成物
上記のマトリックスは、本明細書に記載の組成物から形成され得る。組成物は、上述のように生体分子を含み、生体分子は架橋可能であり、組成物は本明細書で提供される説明に従って発泡可能である。
【0159】
組成物は、少なくとも1つの生分解性生体分子を含む。典型的な態様では、生体分子はゼラチンである。
【0160】
生体分子は、本明細書に記載のマトリックスおよび/または組成物中に任意の量、典型的には約40%~約80%(重量比)、例えば約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%から約45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%(重量比)で存在し得ることが理解されよう。
【0161】
態様では、組成物は、本明細書に記載の生体適合性ポリマーをさらに含む。典型的な態様では、生体適合性ポリマーは、アルギン酸またはカルボキシメチルセルロースである。
【0162】
生体適合性ポリマーは、本明細書に記載のマトリックスおよび/または組成物中に任意の量、典型的には約0.4%~約25%(重量比)、例えば約0.4%、1%、5%、10%、15%または20%から約1%、5%、10%、15%、20%または25%(重量比)で存在し得ることが理解されよう。
【0163】
特定の態様では、当業者に理解されるように、組成物は賦形剤を含み得る。このような賦形剤の非限定的な例には、希釈剤、崩壊剤、滑剤、結合材、潤滑剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤および香味剤、乳化剤および懸濁化剤、ならびに医薬溶媒が含まれる。賦形剤の使用は当業者によって理解され、そのような賦形剤の例示的なリストは、例えば、OsolらのRemington’s Pharmaceutical Sciences(第16版)、1980年、1225-1267および1367、ならびにLibermanらのPharmaceutical Dosage Forms:Tablets(第1巻)、1989年、ISBN:0-8247-8044-2に見出すことができ、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
賦形剤は、組成物中に任意の量、典型的には1%~50%(重量比)、例えば約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または45%から約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%(重量比)で存在し得ることが理解されよう。
【0165】
さらなる治療効果が望まれる場合、例えば、止血剤(例えば、創傷被覆材)として作用して創傷からの血流を停止、制限、遮断、防止または妨害するマトリックスを提供することに加えて、組成物は、例えば、血流の上記の制御に寄与する、または例えば創傷に関連する疼痛を和らげる鎮静を提供する活性剤をさらに含み得る。典型的な態様では、組成物が本明細書に記載の活性剤をさらに含む場合、活性剤は発泡マトリックスと一体(例えば、発泡体の層の中および/またはその上)である。活性剤が以下に記載される方法によって作製された発泡体の表面上にあることが望ましい場合、本明細書に記載される組成物を使用して発泡体が作製されると、活性剤の液体濃縮物を発泡体の表面上にブラッシングすることによって、または活性剤の粉末形態を発泡体の表面上に広げることによって、活性剤を乾燥した発泡体に適用することができることが理解されよう。代替的および/または追加的に、活性剤は、発泡体を乾燥させるために使用されるトレイまたはモールド上に広げることができ、発泡体がトレイまたはモールド上に広げられると、発泡体の表面が活性剤と接触する。したがって、マトリックスが創傷被覆材として創傷に適用されると、活性剤は、(例えば、止血機能を提供するマトリックスに加えて)さらなる治療効果を提供するために、皮膚表面または創傷と直接接触する。
【0166】
活性剤は、本明細書に記載のマトリックスおよび/または組成物中に任意の量、典型的には約0.1%~約30%(重量比)、例えば約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、または25%から約1%、5%、10%、15%、20%、25%、または30%(重量比)で存在し得ることが理解されよう。
【0167】
代替または追加の態様では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の架橋剤をさらに含む。本明細書に記載のマトリックスおよび/または組成物は、マトリックスおよび/または組成物のより低い毒性プロファイルに有利に寄与する架橋剤を実質的に含まない。
【0168】
架橋剤は、本明細書に記載のマトリックスおよび/または組成物中に任意の量、典型的には約0.5%~約5%(重量比)、例えば約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、または4.5%から約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、または4.5%、または5%(重量比)で存在し得ることが理解されよう。
【0169】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の乾燥架橋発泡マトリックスを作製するのに有用である。
【0170】
マトリックスの作製方法およびその使用
本明細書に記載のマトリックスを形成する方法が本明細書に記載される。この方法は、上記の生体分子を含む組成物を発泡させるステップ、上記の組成物を架橋するステップ、および上記の組成物を乾燥させるステップを含む。
【0171】
この方法は、発泡および架橋ステップを利用する。典型的には、架橋は発泡させながら行われる。態様において、架橋は発泡後に行われる。
【0172】
態様では、生体分子は、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの組み合わせから選択される。典型的には、生体分子はゼラチンである。生体分子の溶液を作製するために、態様では、水をかきまぜて、生体分子が加えられる小さな渦を作り出す。典型的には、生体分子は、水中に均一に分散することを可能にするためにゆっくりと加えられる。態様では、この溶液は、生体分子が完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら加熱される。態様では、加熱は約50℃の温度で行われる。すなわち、温度は45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃または55℃である。
【0173】
溶液は、生体分子と生体適合性ポリマーとの組み合わせであり得る。このようにして、態様では、組成物は、本明細書に記載の生体適合性ポリマーをさらに含む。典型的な態様では、生体適合性ポリマーは、アルギン酸またはカルボキシメチルセルロースである。組成物が生体分子と生体適合性ポリマーの両方を含む場合、生体適合性ポリマーの溶液(例えば、アルギン酸)は同様に、例えば、水をかきまぜて小さな渦を作り、生体適合性ポリマーまたはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)を水に加えることによって調製される。態様では、生体適合性ポリマーまたはその塩は、凝集を最小限に抑えるためにゆっくりと加えられる。
【0174】
典型的には、この溶液は、生体適合性ポリマーが完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら加熱される。態様では、加熱は約50℃の温度で行われる。すなわち、温度は45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃または55℃である。このようにして、生体分子の溶液または生体適合性溶液が作製される。
【0175】
抗微生物発泡体が所望される場合、態様では、銀(塩の形態で、例えば、乳酸銀)などの活性剤を水に加え、撹拌して、均質な混合物を形成する。次いで、乳酸銀溶液を生体分子溶液に加え、この溶液を連続的に撹拌しながら約60℃に加熱して、生体分子が確実に溶解し終わるようにする。この時点で、別の塩(塩化ナトリウムなど)を加えて、溶液中の塩化銀の形成を開始させる。
【0176】
本明細書に記載の溶液を加熱することにより、生体分子または生体適合性ポリマーの均質な溶液が確実に作製される。
【0177】
生体分子溶液と生体適合性ポリマー溶液との組み合わせが望まれる場合、各溶液を加熱した後、生体適合性ポリマー溶液(例えば、アルギン酸)を生体分子溶液(例えば、ゼラチン)に加える。典型的には、この添加は、完全な混合が確実に行われるようにゆっくりと行われる。例えば、生体分子と生体適合性ポリマーとの均質な混合物(溶液)が生成される。
【0178】
生体分子溶液のみが望ましい場合、加熱後、本明細書に記載の架橋剤を溶液に加える。典型的には、架橋剤は急速架橋剤である。典型的には、架橋剤はEDCおよび/またはNHSである。態様では、架橋剤の組み合わせを調製し、本明細書に記載の生体分子または生体分子-生体適合性ポリマー溶液に加えることができる。態様では、生体分子溶液中に架橋剤が完全に溶解するまで溶液を撹拌する。例えば、架橋剤と生体分子との均質な混合物が作製される。
【0179】
生体適合性ポリマー溶液を生体分子溶液に加えることによって生体分子および生体適合性ポリマー溶液(例えば、アルギン酸またはカルボキシメチルセルロース)を作製する場合、態様では、溶液の温度を約30℃~約40℃に調整する。
【0180】
態様では、これらに限定されないが、キレート剤(例えば、EDTA)または脂質(例えば、グリセロール)などの追加の薬剤を生体分子生体適合性ポリマー溶液に加える。当業者は、例えば、溶液の成分の溶解を補助するために、異なる追加の薬剤を溶液に加えてもよいことを理解するであろう。
【0181】
典型的な態様では、別の架橋剤(例えば、上記のように使用されなかったものに応じて、NHSまたはEDC)を、上記の溶液(例えば、ゼラチン溶液またはゼラチン-アルギン酸塩溶液)に加える前に調製する。
【0182】
典型的には、発泡プロセスを開始するために、生体分子生体適合性ポリマー溶液の温度を約25℃~約28℃に冷却する。態様では、溶液は、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃に冷却される。混合物の温度を低下させることは、架橋剤(例えば、EDCおよびNHS)の化学活性を確実にし、ならびに本明細書に記載の発泡に適切な粘度を提供するのに有利である。典型的には、冷却は、発泡溶液を生成するために連続的に撹拌しながら行われる。冷却後、発泡溶液は、発泡のためにスタンドミキサー内のボウルに移される。態様では、溶液は、最大速度で約4分間混合または発泡される。態様では、混合時間は3分、4分または5分である。典型的な態様では、混合速度は495RPMである。典型的には、混合が行われている間、他の架橋剤が発泡溶液に加えられる。例えば、架橋剤の添加は、発泡と組み合わせて行われる。態様では、架橋剤の添加は、一定期間内にゆっくりと行われる。態様では、期間は約30秒である。態様では、期間は、20秒、25秒、30秒、または35秒(またはそれらの間の任意の値)である。
【0183】
架橋剤の添加は、任意の方法で行うことができる。例えば、架橋剤は、別個の溶液として調製され、発泡プロセス中に完全に加えることができる。例えば、架橋剤は、別個の溶液として調製され、発泡プロセス後に生体分子および生体適合性ポリマーの上記の溶液に(完全に)加えることができる。典型的には、他の架橋剤の添加は、溶液のすべてが短期間内に分注されるように滴下方式(例えば、血清学的ピペットを使用することによって)で行われる。他の架橋剤の滴下添加により、発泡プロセス中に生体分子および生体適合性ポリマーの溶液内に他の架橋剤を均一に分布させることができる。例えば、加えられている溶液の全体積と混合する他の架橋剤の単位時間あたりの体積が少ないため、他の架橋剤の溶解時間はより速い。態様では、短い期間は約30秒である。態様では、期間は、20秒、25秒、30秒、または35秒(またはそれらの間の任意の値)である。
【0184】
典型的には、他の架橋剤(例えば、NHSまたはEDC)のすべてが発泡溶液に混合されると、発泡溶液は別の期間にわたって連続的に混合される。連続的な混合は、発泡プロセスを助け、後述するように発泡体の体積を増加(膨張)させる。典型的には、この期間は約10秒である。態様では、期間は、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、または12秒である。
【0185】
態様では、混合は、発泡体の体積が増加するまで継続される。換言すれば、混合は、発泡体が初期溶液体積の約3倍~約10倍の総体積膨張で形成されるまで継続される。態様では、体積の増加は約2Lである。態様では、体積の増加は、1L、1.5L、2Lまたは2.5L(またはそれらの間の任意の値)である。態様では、発泡体の体積の増加は、約5分で起こる。
【0186】
発泡体が作製された後、発泡体はボウルから取り出され、トレイまたはモールドに分配され広げられる。態様では、トレイまたはモールドは、本明細書に記載の活性剤の事前適用層を有する。例えば、本明細書に記載の活性剤は、発泡体がトレイまたはモールドの表面に配置され、したがって活性剤と接触しているときに、活性剤がトレイまたはモールドと接触するマトリックスの表面上に積層され得るように、トレイまたはモールドの表面上に広げられてもよい。この積層プロセスは、例えば、トレイまたはモールドの表面上の活性剤の広がり、活性剤と接触するマトリックスの表面の接着特性、および/またはマトリックスがトレイまたはモールドの表面と接触したままである時間の長さに応じて、均一または不均一であり得ると考えられる。
【0187】
態様では、トレイまたはモールドは、例えば、本明細書に記載の発泡体を適用するためにトレイまたはモールド上に非粘着表面を提供するように、疎水性フィルムで裏打ちされる。
【0188】
ボウルから発泡体を取り出し、トレイまたはモールド内で発泡体を広げる時間は変えることができ、例えば、発泡体の形成から10秒以内に発泡体を取り出して広げることができ、または発泡体の形成から60秒以内に発泡体を取り出して広げることができる。態様では、発泡体は、15秒未満でボウルから取り出される。態様では、発泡体は60秒以下で広げられる。発泡体がトレイまたはモールド上に広げられると、それは乾燥される。典型的な態様では、発泡体は、発泡体から水分が除去されるように風乾される。典型的には、次いで、発泡体を一定期間乾燥させる。態様では、期間は最大48時間である。態様では、期間は、1時間、3時間、5時間、8時間、12時間、16時間、20時間、30時間、40時間、または48時間(またはそれらの間の任意の期間)である。
【0189】
上記のように、本明細書に記載のマトリックスは凍結乾燥されず、代わりに風乾される。典型的には、風乾は周囲圧力および温度(例えば、25C(298.15K)および101.325kPaの圧力)で行われるが、以下に記載されるように、他の温度も本発明の範囲内であると考えられる。典型的な態様では、乾燥は、発泡体の周りの効率的な空気循環を確保するために、換気装置を使用して行われる。発泡体の周りに効率的な空気循環を提供することにより、乾燥プロセスは、発泡体上に「湿潤スポット」がないことを確実にすることができる。典型的には、本明細書に記載の乾燥方法によって作製される発泡体は、湿った発泡体ではない。態様では、発泡体は実質的に水分を有さず、その結果、発泡体は実質的に乾燥している(例えば、少なくとも約90%乾燥)。
【0190】
発泡体が乾燥したら、乾燥したスポンジ(例えば、ゼラチンスポンジまたはゼラチン-アルギン酸スポンジ)をトレイから取り出し、所望のサイズに切断する。スポンジのサイズは、ユーザのニーズに依存する。スポンジのサイズおよび/または形状は、例えば、スポンジをサイズまたは形状に切断することによって、トレイまたはモールドの形状またはサイズを変更することによって、またはトレイまたはモールドに適用する発泡体の量を変えることによって変えることができることが理解される。
【0191】
典型的な態様では、乾燥および切断は、約40℃以下の温度および約35%の相対湿度で行われる。態様では、温度は、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、または約40℃(またはそれらの間の任意の値)である。態様では、相対湿度は、約33%、約34%、約35%、約36%または約37%である。本明細書に記載の方法によって製造されたスポンジを切断する方法は、当業者には理解されよう。
【0192】
さらに、本明細書に記載の方法に従って本明細書に記載のマトリックスを作製するために使用される組成物はまた、本明細書に記載の活性剤を含み得る。典型的には、活性剤は、本明細書に記載の発泡に実質的に影響を及ぼさない。態様では、本明細書に記載の活性剤を含む組成物の代わりに、本明細書に記載の活性剤を、本明細書に記載の方法によって製造された発泡体上に積層してもよい(例えば、本明細書に記載の活性剤は、発泡体の最上層に積層される)。同様に本明細書に記載されるように、活性剤はトレイまたはモールドの表面に適用されてもよく、発泡体がトレイまたはモールド上に適用される(例えば、広げられる)と、活性剤は発泡体および/または細孔の表面に付着することができる。態様では、活性剤は粉末または濃縮液体形態である。例えば、粉末活性剤の事前適用層をトレイまたはモールドに適用することができ、それにより、発泡体とトレイまたはモールドとの間の接触が、発泡体の表面上に粉末活性剤をもたらす。あるいは、液体形態の活性剤を、トレイまたはモールドから乾燥した発泡体を取り出した後、またはそれに続いて、乾燥した発泡体に適用することができる。活性剤の添加は、活性剤が本明細書に記載の発泡および/またはそのように製造された発泡体の安定性に実質的に影響を及ぼさない限り、上記のように変更することができることが理解される。
【0193】
本明細書に記載の方法によって生成された発泡体は、単一層からなってもよく(例えば、本明細書に記載の方法を実施し、作製された乾燥発泡体を創傷被覆材として使用してもよい)、または発泡体は、2つ以上の層を含んでもよい。発泡体が複数の層(例えば、少なくとも2つの層)を含む場合、本明細書に記載の方法を繰り返し、各層を互いに接合して一体複合材を形成することができる。態様では、本明細書に記載の方法によって作製された発泡体は、少なくとも2つの層を含む。態様では、活性剤は、少なくとも2つの層の少なくとも1つの上または中に積層することができる。例えば、活性剤を層(すなわち、単一または複数)上に積層することは、活性剤を発泡体の表面上に直接適用することによって、または例えば、活性剤をトレイまたはモールド上に適用し、展延中に発泡体と接触させることによって行うことができる。代替的または追加的に、活性剤を本明細書に記載の組成物に入れることができ、したがって、活性剤は発泡層の内部部分の成分である。これらの例は、有利には、潜在的な治療効果の時間的および/または空間的分離を可能にし、本明細書に記載の本発明で使用することができる活性剤の多様性を広げることができる。例えば、1つの活性剤が皮膚と接触する発泡体の表面に配置され、別(例えば、同じまたは異なる活性剤)が発泡体層内に配置される場合、皮膚に最も近い活性剤は即時または迅速な治療効果を有するが、発泡体層中の活性剤は、後の時点でユーザに利益を提供するために時間的に制御される(例えば、活性剤は、多孔質発泡体を通って浸透する)。
【0194】
上記の方法は、完全に手動、完全に自動、または部分的に自動であってもよい。
【0195】
本明細書に記載のマトリックスを作製するための本明細書に記載の方法の利点は、本明細書に記載の方法が、発泡(例えば、ゼラチン)溶液のほぼ瞬時の架橋を可能にし、その後、乾燥容器と接触するスポンジの表面上に硬化および/または圧縮された「スキン」またはフィルム状物質を形成することなく、典型的には周囲圧力および温度で行われる風乾プロセスを可能にすることである。したがって、望ましくない表面層(例えば、前述の「スキン」)の存在を除去するための本明細書に記載のマトリックスのさらなる処理は回避される。さらに、本明細書に記載の方法は凍結乾燥を必要としないので、凍結乾燥によって多孔質マトリックスを得るための大型で高価な装置の必要性も回避される。このようにして、本発明の発泡体マトリックスを作製する手順は大幅に単純化され、本明細書に記載の硬化または圧縮されたスキンなどの物理的異常のない製品を作製する。
【0196】
さらに、組成物およびマトリックスの方法および使用が本明細書に記載される。本明細書に記載されるように、本明細書に記載されるマトリックスを作製するためのマトリックスおよび組成物は、表面上の微生物増殖を減少させるために使用することができる(例3および5も参照されたい)。これに関して、生体分子および生体適合性ポリマーの上記の溶液は、活性剤として、例えば銀をさらに含む。本明細書に記載されるように、活性剤)は、発泡層の表面に含まれてもよく、または発泡層の一体部分であってもよい。態様では、微生物は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、および抗生物質耐性腸球菌(antibiotic-resistant Enterococcus)から選択されるが、これらに限定されない。
【0197】
本明細書中に記載される方法によって作製されるスポンジを抗微生物活性のために使用するために、スポンジは表面に適用される(例えば、載置され、接着される)。表面は、1つ以上の微生物を有することが疑われるか、または1つ以上の微生物を有することが確認されている。スポンジの表面への適用、例えば、載置または接着は、1つ以上の微生物の増殖および/または展延を制御する方法である。態様では、表面は皮膚表面である。態様では、表面は、テーブル、椅子、または天板などの無生物の表面であるが、これらに限定されない。態様では、表面は医療機器の表面である。このようにして、本明細書に記載のマトリックスを使用して、医療機器および他の無生物を洗浄(例えば、滅菌する)することができる。
【0198】
医療機器は、典型的には、例えば、創傷の内部または外部で使用するための機器である。したがって、特定の態様では、医療機器は、被覆材、足場、骨折固定機器、カテーテル、ステント、インプラント、チュービング、ロッド、人工装具、内視鏡、心臓弁、ペースメーカー、歯科インプラント、および外科、医療または歯科用器具からなる群から選択される。
【0199】
態様では、本明細書に記載のマトリックスは、創傷被覆材、包帯、またはスポンジとして使用される。典型的には、マトリックスは、創傷または損傷の治療に有用な有効な止血剤である。典型的には、創傷または損傷は皮膚表面に対するものである。創傷または損傷を治療する方法も本明細書中に記載され、この方法は、本明細書中に記載のマトリックスを創傷または損傷部位に適用するステップを含む。適用は、例えば、マトリックスを皮膚または創傷上に置くこと(例えば、マトリックスで皮膚または創傷を覆うこと)、マトリックスを創傷内に挿入すること(例えば、創傷をマトリックスで満たすため)、またはマトリックスを皮膚または創傷に接着すること(例えば、接着は、医療グレードの接着剤を創傷の表面に適用し、続いてマトリックスを接着剤に適用する、または医療グレードの接着剤をマトリックスに適用し、続いてマトリックスを創傷に適用することによるものであり得る)であり得る。このようにして、本明細書に記載のマトリックスの使用は、創傷または損傷部位を治療するために企図される。例えば、本明細書に記載のマトリックスの適用は、さらなる出血を停止、減速、または防止することによって創傷または損傷部位を治療することができる。例えば、創傷または損傷部位へのマトリックスの適用は、他の物体が創傷または損傷部位に入るのを防ぐことができる。さらなる例では、マトリックスの適用は、活性剤の送達を可能にし、創傷修復に寄与するおよび/または鎮静作用のある疼痛緩和を提供する。典型的な態様では、創傷または損傷部位は皮膚表面に対するものである。
【0200】
したがって、本明細書に記載のマトリックスは、創傷被覆材およびバリア、外科用被覆材、止血用被覆材、ならびに治療薬および/または化学剤の送達を含むがこれらに限定されない様々な用途を有する。例えば、本明細書に記載のマトリックスの表面への本明細書に記載の活性剤の適用、続いて例えば皮膚へのマトリックスの適用は、創傷の治療に有用であるだけでなく、上記のように創傷または皮膚への活性剤の送達も可能にし、それによって追加のおよび/または代替の治療効果を提供することが企図される。
【0201】
上記の開示は、本発明を一般的に説明している。以下の具体的な例を参照することにより、より完全な理解を得ることができる。これらの例は、単に例示を目的として記載されており、本発明の範囲を限定することを意図していない。状況が好都合であると示唆または示す可能性があるため、形態の変更および等価物の置換が考えられる。本明細書では特定の用語が使用されているが、そのような用語は説明的な意味で意図されており、限定を目的とするものではない。
【実施例
【0202】
例1-ゼラチンスポンジ
本明細書に記載の本発明の範囲内のゼラチンスポンジを以下のように形成した。
精製水(500mL)を1Lのフラスコまたは容器に加えた。水をかきまぜて小さな渦を作り、36gのブタゼラチンを水に加えた。ゼラチンを液体中に均一に分散させるためにゆっくりと加えた。フラスコまたは容器を覆い、ゼラチンが完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら50℃に加熱した。次いで、0.52gのNHSを加え、完全に溶解するまで溶液を撹拌した。
【0203】
精製水(10mL)を50mLのファルコンチューブまたは容器に加えた。2.8gのEDCを水に加え、完全に溶解するまで溶液を撹拌することによって、使用直前にEDC溶液を調製した。
【0204】
ゼラチン/NHS混合物を(連続的に撹拌しながら)25~28℃に冷却して発泡溶液を作製した。発泡溶液をスタンドミキサーのボウルに移した。次いで、溶液を最大速度で1分間混合/発泡させた。混合を継続しながら、20mLの血清学的ピペットを使用して、溶液のすべてが30秒以内に分注されるように、EDC溶液をボウルに滴下した。加えたEDC液滴を直ちに溶液に混合した。すべてのEDC溶液を分注した後、さらに10秒間混合を続けた。
【0205】
次いで、直ちに発泡体を分注し、トレイに広げた。
【0206】
次に、発泡体を最長48時間乾燥させた。発泡体の周りの効率的な空気循環を確保するために、換気装置を使用した。乾燥したら、ゼラチンスポンジをトレイから取り出し、最終的な包装および加工のために所望のサイズに直接切断した。
【0207】
例2-ゼラチン-アルギン酸スポンジ
本明細書に記載の本発明の範囲内のゼラチン-アルギン酸スポンジを以下のように形成した。
ゼラチン溶液
精製水(500mL)を1Lのフラスコまたは容器に加えた。水をかきまぜて小さな渦を作り、次いで36gの魚ゼラチンを加えた。ゼラチンを液体中に均一に分散させるためにゆっくりと加えた。フラスコまたは容器を覆い、ゼラチンが完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら50℃に加熱した。
【0208】
アルギン酸溶液
精製水(490mL)を1Lのフラスコまたは容器に加えた。水をかきまぜて、0.25gの水酸化ナトリウムを加え、視覚的に溶解するまで3~5分間混合した。混合速度を上げて小さな渦を作り、40gのアルギン酸ナトリウムをゆっくりと加えて凝集を最小限にした。フラスコまたは容器を覆い、アルギン酸が完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら50℃に加熱した。
【0209】
ゼラチン/アルギン酸/グリセロール/NHS溶液
アルギン酸溶液をゼラチン溶液にゆっくりと加えて、完全な混合が行われるようにした。ゼラチン/アルギン酸塩溶液の温度を30℃に下げた。次いで、2.0gのグリセロール(1.59±0.03mL)を加え、完全に混合されるまで撹拌した。次いで、0.52gのNHSを加え、完全に溶解するまで撹拌した。
【0210】
EDC溶液
精製水(10mL)を50mLのファルコンチューブまたは容器に加えた。2.8gのEDCを水に加え、完全に溶解するまで溶液を撹拌することによって、使用直前にEDC溶液を調製した。
【0211】
発泡
ゼラチン/アルギン酸/グリセロール/NHS混合物を(連続的に撹拌しながら)25~28℃に冷却して発泡溶液を作製した。発泡溶液をスタンドミキサーのボウルに移した。次いで、発泡溶液を最大速度で4分間混合/発泡させた。混合を継続しながら、20mLの血清学的ピペットを使用して、溶液のすべてが30秒以内に分注されるように、EDC溶液をボウルに滴下した。加えたEDC液滴を直ちに溶液に混合した。すべてのEDC溶液を分注した後、さらに10秒間混合を続けた。
【0212】
次いで、直ちに発泡体を分注し、トレイに広げた。
【0213】
乾燥およびサイジング
発泡体を最長48時間乾燥させた。発泡体の周りの効率的な空気循環を確保するために、換気装置を使用した。乾燥したゼラチン-アルギン酸スポンジをトレイから取り出し、最終的な包装および加工のために所望のサイズに直接切断した。
【0214】
例3-抗微生物ゼラチン-CMCスポンジ
本明細書に記載の本発明の範囲内の抗微生物ゼラチン-CMCスポンジを以下のように形成した。
ゼラチン溶液
精製水(245mL)を1Lのフラスコまたは容器に加えた。水をかきまぜて、1.90gの乳酸銀を加えた。乳酸銀が溶解するまで溶液を混合した(約5~10分間)。混合速度を上げることによって小さな渦を作り出し、12.0gのゼラチンを溶液に加えた。ゼラチンを液体中に均一に分散させるためにゆっくりと加えた。フラスコまたは容器を覆い、ゼラチンが完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら60℃に加熱した。塩化ナトリウム(0.56g)をゆっくりと加えて、塩化銀の形成を開始した。
【0215】
CMC溶液
精製水(250mL)を2Lのフラスコまたは容器に加えた。次に、0.10gの水酸化ナトリウムを加え、視覚的に溶解するまで3~5分間混合した。混合速度を上げて小さな渦を作り、2.85gのCMCを加えて凝集を最小限にした。フラスコまたは容器を覆い、CMCが完全に溶解するまで連続的に撹拌しながら60℃に加熱した。
【0216】
ゼラチン/CMC溶液
ゼラチン溶液をCMC溶液にゆっくりと加えて、完全な混合が行われるようにした(約1時間撹拌した)。ゼラチン/CMC溶液の温度を25℃に下げた。
【0217】
EDTA溶液
EDTA(カルシウム二ナトリウム塩)(2g)を50mLのファルコンチューブに入れ、5mLの水をファルコンチューブに加えた。EDTAが溶解するまで、溶液を振盪しながら混合した。この溶液をゼラチン/CMC溶液に加えて、少なくとも5分間混合した。
【0218】
EDC/NHS溶液(使用直前に調製)
EDC(0.65g)およびNHS(0.10g)を50mlのファルコンチューブに移した。次に、EDC/NHSを含むファルコンチューブに2.5mLの水を加えた。EDC/NHSが溶解するまで、溶液を振盪しながら混合した(使用前に15分の混合時間を超えなかった)。
【0219】
発泡
混合物(0.5L)を混合ボウルに移した。次に、発泡体の体積が約2Lに増加するまで、混合物を最大速度で混合(ブレンド)した(約5分間)。次いで、EDC/NHS架橋剤を30秒以内に発泡体にゆっくりと加えた。その後、さらに10秒間発泡を継続した。
【0220】
次に、直ちに発泡体を分注し、トレイに広げた。
【0221】
乾燥およびサイジング
発泡体を最長48時間乾燥させた。発泡体の周りの効率的な空気循環を確保するために、換気装置を使用した。次いで、乾燥したゼラチン-CMCスポンジをトレイから取り出し、最終的な包装および加工のために所望のサイズに直接切断した。
【0222】
例4-抗微生物活性
上記の例3に従って調製した試料の抗微生物活性を、微生物大腸菌(Escherichia coli)(ATCC8739)、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococcus)(ATCC51575)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(ATCC10231)を使用する増殖阻害アッセイで試験した。
【0223】
【表1】
【0224】
例5-比較凍結乾燥スポンジ
凍結乾燥したゼラチンスポンジを以下のようにして作製した。
乳酸銀(0.965g)を50℃で600mLの水に加えて、銀塩の完全な溶解が達成されるまで溶液を混合した。その後、0.289gの塩化銀を銀溶液に加えて、塩化銀の懸濁液を形成した。次いで、ゼラチン(275ブルーム、5.778g)を塩化銀懸濁液に加えて、ゼラチンが溶解するまで混合物を撹拌した。別の容器に、1.133gのCMCを50℃で400mLのアルカリ水(pH9.0)に加えて、CMCがすべて溶解するまで混合物を撹拌した。ゼラチン/塩化銀懸濁液とCMC溶液を混合し、1.0gのEDTAナトリウムを加えて、EDTAが完全に溶解するまで撹拌した。最終ステップで、0.909gのEDCおよび0.140gのNHSをバイオポリマー混合物に加えて、溶解するまで撹拌した。さらに15分間混合した後、バイオポリマー混合物のアリコートをプラスチックトレイに注ぎ、24時間凍結乾燥して、銀を含有するゼラチン/CMCスポンジを得た。
【0225】
例6-銀溶出
上記の例3に従って調製した抗微生物スポンジ(銀を含むゼラチン/CMC)を、上記の例5に従って調製した銀スポンジを含むゼラチン/CMCと銀溶出プロファイルに関して比較した。
【0226】
手短に言えば、各タイプの抗微生物スポンジの試料を、37℃に維持された生理食塩水中で撹拌しながらインキュベートした。選択した間隔で、原子吸光分析による銀含有量の分析のために溶出液のアリコートを除去した。銀溶出アッセイの結果を表2に示す。
【表2】
【0227】
上記のように、2種類の抗微生物スポンジからの銀放出は本質的に同一であり、スポンジを調製するために使用された異なる方法(すなわち、本発明による風乾対凍結乾燥)にもかかわらず、銀溶出に関して最終製品の同様の特性を示した。
【0228】
例7-物理的特性
例1、2および3ならびに比較例5に従って調製したスポンジ試料を、それらの架橋度、熱安定性および吸水性に関して特徴付けた。ゼラチンマトリックスの吸水性を、37℃の水中で1時間インキュベートする前後の試料の重量差測定を含む手順に従って測定した。この時点で、試料の熱安定性も評価した。架橋度は、試料を37℃の水中で16時間インキュベートし、次いでインキュベート後の試料重量を測定する前に乾燥させたことを除いて同様に決定した。
【0229】
各試験試料の架橋度、熱安定性、吸水性(材料1gあたりに吸水された水のグラム数として表される)を表3に示す。
【0230】
【表3】
【0231】
上記の開示は、本発明を一般的に説明している。本明細書では特定の用語が使用されているが、そのような用語は説明的な意味で意図されており、限定を目的とするものではない。
【0232】
上記で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれのその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0233】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で詳細に説明したが、本発明の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変形が可能であることは当業者には理解されよう。
【国際調査報告】