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特表2022-506925ユーザの健康状態を分析するための携帯型電気化学センサシステムおよびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ユーザの健康状態を分析するための携帯型電気化学センサシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20220107BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N27/28 R
G01N27/26 371G
G01N27/327 357
G01N27/416 336G
G01N33/68
G01N33/53 M
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021525051
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 CA2019051567
(87)【国際公開番号】W WO2020087187
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/755,148
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/786,180
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/875,131
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】521194242
【氏名又は名称】カルディエーアイ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コウル,ラマン
(72)【発明者】
【氏名】サラハンディッシュ,ラジー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ギャング エー.ケー.エー. ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】バート,スムリタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスタリー,ニキール スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】カプール,アンモル シング
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045DA12
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB05
2G045JA07
(57)【要約】
【課題】ユーザの健康状態を分析する。
【解決手段】基板およびある体積のサンプル流体を受容するナノ構造感知面を有する電気化学センサ構造。サンプル流体体積を受容するための電気化学センサ構造のサンプル領域は、流体の体積が、ナノ構造感知面を含む電気化学センサ構造のサンプル領域の一部を動作可能に覆うのに十分であるようにサイズ設定されている。電気化学センサ構造は、携帯型ポイントオブケア(PoC)デバイスに接続可能である。PoCデバイスは、電気化学センサ構造のサンプル領域からサンプル流体のエネルギー特性を検出して、流体読み取り値を含む信号を生成することができ、流体読み取り値は、サンプル流体中のバイオマーカのエネルギー特性に関連し、それによって、サンプル流体中のバイオマーカの存在、不在、または量を示す。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体液サンプルを分析するための装置であって、
電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、前記電気化学センサ構造が、前記体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備える、ハウジングと、
前記電気化学センサ構造を使用して分析可能な1つ以上のバイオマーカを識別するための識別回路と、
前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための前記電気化学センサ構造の前記電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路と、
前記識別された1つ以上のバイオマーカに基づいて、バイオ感知パラメータのセットを判定するための、かつ前記分析回路を制御して、前記バイオ感知パラメータのセットに基づいて、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための、前記識別および分析回路に結合された制御回路と、
前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカの前記分析の分析結果を出力するための出力部と、を備える、装置。
【請求項2】
前記識別回路が、前記電気化学センサ構造の第2の回路のインピーダンスを測定することによって、前記1つ以上のバイオマーカを識別するためのものであり、前記第2の回路の抵抗が、前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の回路が、電極の第2のセットを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記識別回路が、前記電気化学センサ構造の前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する無線周波数識別(RFID)タグを読み取ることによって、前記1つ以上のバイオマーカを識別するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記RFIDタグが前記電気化学センサ構造上、または前記電気化学センサ構造を収容する運搬バイアル上にある、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
撮像構成要素をさらに備え、
前記識別回路が、前記撮像構成要素を使用して、前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像をスキャンすることによって、前記1つ以上のバイオマーカを識別するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記識別回路が、撮像構成要素を有し、かつ前記装置に機能的に結合されたデバイスに、前記撮像構成要素を使用して、前記1つ以上のバイオマーカを識別するために前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像をスキャンするように命令するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記画像が一次元バーコードまたは二次元バーコードである、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記画像が前記電気化学センサ構造上、または前記電気化学センサ構造を収容する運搬バイアル上にある、請求項6~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記分析回路が、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するために、前記第1の回路の1つ以上のインピーダンス、1つ以上の電流、および/または1つ以上の電圧を測定するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記分析回路が、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するために、前記第1の回路に電気的に結合するための少なくとも1つのポテンシオスタット回路を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポテンシオスタット回路が、直流(DC)ポテンシオスタット回路、交流(AC)ポテンシオスタット回路、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記結合電極のセットが、前記電気化学センサ構造の参照電極(RE)、制御電極(CE)、および作用電極(WE)に電気的に結合するための結合RE、結合CE、および結合WEを少なくとも含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記結合電極のセットが、前記電気化学センサ構造のRE、CE、および複数のWEに電気的に結合するための結合RE、結合CE、および複数のWEを少なくとも含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記結合電極のセットが、前記電気化学センサ構造のRE、CE、および3つ以上のWEに電気的に結合するための結合RE、結合CE、および3つ以上の結合WEを少なくとも含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記結合WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和された前記電気化学センサ構造のWEの第1のセットに電気的に結合するためのものであり、
前記結合WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋された前記電気化学センサ構造のWEの第2のセットに電気的に結合するためのものであり、
前記分析回路が、前記電気化学センサ構造のWEの前記第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算することにより、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記分析回路が、前記電気化学センサ構造のWEの前記第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算し、統計的方法を使用することにより、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記出力部が、前記分析結果を表示するためのスクリーンを備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記スクリーンが、前記分析結果を表示し、前記ユーザからの入力を受信するためのタッチスクリーンである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記出力部が、前記分析結果を出力するためのスピーカを備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
1つ以上のリモートデバイスと通信するためのネットワーキングモジュールをさらに備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記ネットワーキングモジュールが、BLUTOOTHモジュールである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記出力部が、前記分析結果を前記1つ以上のリモートデバイスに出力するためのものである前記ネットワーキングモジュールを備える、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記1つ以上のリモートデバイスが、前記分析結果に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための人工知能(AI)システムを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記ユーザからの入力を受信するための1つ以上のボタンをさらに備える、請求項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記1つ以上のボタンが、1つ以上の緊急サービスとの緊急通信を開始するためのSOSボタンを備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ハウジングが、前壁、後壁、上壁、下壁、および2つの対向する側壁を備え、
前記1つ以上のボタンが、前記側壁のうちの少なくとも1つの上に分散されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの第1のポートが、前記上壁または前記下壁上に位置する、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記装置に電気的に取り外し可能に結合するためのアダプタであって、複数の追加の電気化学センサ構造を受容するための複数の第2のポートを備える、アダプタをさらに備える、請求項1~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記複数の追加の電気化学センサ構造が、同じ機械的仕様および/または同じ電気的仕様を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記複数の追加の電気化学センサ構造が、異なる機械的仕様および/または異なる電気的仕様を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記装置が、複数の第1のポートを備える、請求項1~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記複数の第1のポートが、同じ機械的仕様および/または同じ電気的仕様を有する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記複数の第1のポートが、異なる機械的仕様および/または異なる電気的仕様を有する、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
少なくとも前記識別回路、前記分析回路、および前記制御回路に電力を供給するためのバッテリと、
前記バッテリを充電するための電源に電気的に結合するための第2のポートと、をさらに備える、請求項1~34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記第2のポートが、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポートである、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
スマートフォンに物理的および電気的に結合するための第3のポートをさらに備える、請求項1~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記分析回路および/または前記制御回路が、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro-BNP)を検出し、かつ分析するための電気化学モジュールと、蛍光モジュールと、アプタマーベースのリガンドを検出し、かつ分析するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モジュールと、代謝産物分析のための吸収モジュールと、を備える、請求項1~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記分析回路および/または前記制御回路が、前記識別された1つ以上のバイオマーカの濃度を判定するための検量線をその中に記憶するメモリをさらに備える、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記装置の地理空間情報を取得するための1つ以上の全地球測位システム(GNSS)構成要素をさらに備え、
前記出力が、前記分析結果および前記地理空間情報を出力するためのものである、請求項1~40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
前記1つ以上のリモートデバイスが、
前記ユーザの健康状態の評価を取得するために前記分析結果を評価することと、
前記分析結果、前記地理空間情報、および前記ユーザの健康状態の前記評価を記憶することと、
前記ユーザの健康状態の前記評価が第1の閾値を上回っているが第2の閾値を下回っている場合に、さらなる行動について前記ユーザに通知することと、
前記ユーザの健康状態の前記評価が前記第2の閾値を超えている場合に、緊急プロトコルを開始することと、を行うためのものである、請求項23を引用する請求項40に記載の装置。
【請求項42】
ユーザの体液サンプルを分析するための装置であって、
電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、前記電気化学センサ構造が、前記体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備える、ハウジングと、
前記体液サンプル中の1つ以上のバイオマーカを分析するための前記電気化学センサ構造の前記電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路と、
前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカの前記分析の分析結果を出力するための出力部と、を備え、
前記結合電極のセットが、前記電気化学センサ構造の参照電極(RE)、制御電極(CE)、および複数の作用電極(WE)に電気的に結合するための結合RE、結合CE、および複数の結合WEを少なくとも含む、装置。
【請求項43】
前記複数のWEが、前記電気化学センサ構造の3つ以上のWEに電気的に結合するための3つ以上の結合WEを含む、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記結合WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和された前記電気化学センサ構造のWEの第1のセットに電気的に結合するためのものであり、
前記結合WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋された前記電気化学センサ構造のWEの第2のセットに電気的に結合するためのものであり、
前記分析回路が、前記電気化学センサ構造のWEの前記第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算することにより、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである、請求項42または43に記載の装置。
【請求項45】
前記分析回路が、前記電気化学センサ構造のWEの前記第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算し、統計的方法を使用することにより、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
電気化学センサ構造であって、
基板と、
前記基板上に分散され、体液サンプルと接触するために前記基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、
前記電気化学センサ構造を使用して分析可能な前記体液サンプルの1つ以上のバイオマーカを識別するための識別構造と、を備える、電気化学センサ構造。
【請求項47】
前記基板が、ポリマーを含む、請求項46に記載の電気化学センサ構造。
【請求項48】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリアミドを含む、請求項47に記載の電気化学センサ構造。
【請求項49】
前記基板が、多孔質基板である、請求項46に記載の電気化学センサ構造。
【請求項50】
前記基板が、30%以上の多孔度を有するトラックエッチングされた膜である、請求項49に記載の電気化学センサ構造。
【請求項51】
前記基板が、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)膜を含む、請求項46に記載の電気化学センサ構造。
【請求項52】
前記識別構造が、前記電気化学センサ構造の前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する所定のインピーダンスを有する第2の回路を備える、請求項46~51のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項53】
前記識別構造が、前記電気化学センサ構造の前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する無線周波数識別(RFID)タグを備える、請求項46~51のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項54】
前記識別構造が、前記電気化学センサ構造の前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像を含む、請求項46~51のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項55】
前記画像が、前記電気化学センサ構造の前記1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する一次元バーコードまたは二次元バーコードを含む、請求項54に記載の電気化学センサ構造。
【請求項56】
前記電極の第1のセットが、少なくとも参照電極(RE)、制御電極(CE)、および作用電極(WE)を含む、請求項46~55のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項57】
前記電極の第1のセットが、少なくともRE、CE、および複数のWEを含む、請求項46~55のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項58】
前記電極の第1のセットが、少なくともRE、CE、および3つ以上のWEを含む、請求項46~55のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項59】
前記WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和され、前記WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋されている、請求項57または58に記載の電気化学センサ構造。
【請求項60】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットが、同じ捕捉リガンドを含む、請求項59に記載の電気化学センサ構造。
【請求項61】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットが、異なる捕捉リガンドを含む、請求項59に記載の電気化学センサ構造。
【請求項62】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットが、同じ捕捉リガンドを含む、請求項59に記載の電気化学センサ構造。
【請求項63】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットが、異なる捕捉リガンドを含む、請求項59に記載の電気化学センサ構造。
【請求項64】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットが、前記1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットと同じである、請求項59~63のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項65】
前記1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットが、前記1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットとは異なる、請求項59~63のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項66】
前記電極の第1のセットの各々が、クロム(Cr)の層および前記Cr層の上の金(Au)の層を含む、請求項56~65のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項67】
少なくとも1つのWEが、前記Au層の上に導電性ナノ材料の層をさらに含む、請求項66に記載の電気化学センサ構造。
【請求項68】
前記少なくとも1つのWEが、導電性ナノ材料の層の上に検出素子の層をさらに含む、請求項67に記載の電気化学センサ構造。
【請求項69】
前記CEが、前記サンプリング領域の少なくとも2つの縁に沿って延在し、それによって、前記電極の第1のセットの残りを取り囲む、請求項56~68のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項70】
前記体液サンプルを前記サンプリング領域に受容するためのサンプリングポートを形成する遠位端開口部を有する疎水性中間層と、
前記疎水性中間層の上にあり、前記サンプリング領域を覆う保護層と、をさらに含む、請求項46~69のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項71】
前記基板の前記サンプリング領域が、
毛細管効果を使用して前記体液サンプルを導入するための、その縁の周りの1つ以上の導入チャネルと、
そこから前記体液サンプルを受容し、前記体液サンプルの干渉成分を濾過するための、前記1つ以上の導入チャネルに隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニットと、
前記HF-PSCと前記電極の第1のセットとの中間である分析物ドロップチャンバであって、前記分析物ドロップチャンバが、前記濾過された体液サンプルが前記電極の第1のセットに接触することを可能にするために、前記HF-PSCから前記濾過された体液サンプルを受容する、分析物ドロップチャンバと、を備える、請求項46~69のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項72】
前記1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つが、漏斗形状のものであり、前記サンプリング領域の前記縁に隣接し、前記HF-PSCユニットに向かって先細になる開口部を備える、請求項71に記載の電気化学センサ構造。
【請求項73】
前記1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つが、前記基板上に刻印されている、請求項71または72に記載の電気化学センサ構造。
【請求項74】
前記1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つが、前記基板上のコーティングのギャップによって形成されている、請求項71または72に記載の電気化学センサ構造。
【請求項75】
前記HF-PSCユニットが、様々な孔径の対称および/または非対称孔を含む、請求項71~74のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項76】
各々が前記分析物ドロップチャンバ内またはその周りの入口を含み、前記分析物ドロップチャンバから前記電極の第1のセットまで延在する1つ以上の毛細管チャネルをさらに含み、
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、前記体液サンプルに対して親水性であり、その中の前記体液サンプルの体積を制御するために、前記入口までの距離での急激な拡張部を含み、
少なくとも1つのWEが、前記入口とその中の前記体液サンプルと相互作用するためのその前記拡張部との中間である場所で、前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つまで延在する、請求項71~75のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項77】
各々が前記分析物ドロップチャンバ内またはその周りの入口を含み、前記分析物ドロップチャンバから前記電極の第1のセットまで延在する1つ以上の毛細管チャネルをさらに含み、
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、前記体液サンプルに対して疎水性であり、その中の前記体液サンプルの体積を制御するために、前記入口までの距離での急激な先細り部分を含み、
少なくとも1つのWEが、前記入口とその中の前記体液サンプルと相互作用するためのその前記先細り部分との中間である場所で、前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つまで延在する、請求項71~75のいずれか一項に記載の電気化学センサ構造。
【請求項78】
電気化学センサ構造であって、
基板と、
前記基板上に分散され、体液サンプルと接触するために前記基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、を備え、
前記電極の第1のセットが、少なくとも参照電極(RE)、制御電極(CE)、および複数の作用電極(WE)を含む、電気化学センサ構造。
【請求項79】
前記複数のWEが、3つ以上のWEを含む、請求項78に記載の電気化学センサ構造。
【請求項80】
前記WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和され、前記WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋されている、請求項78または79に記載の電気化学センサ構造。
【請求項81】
電気化学センサ構造であって、
基板と、
前記基板上に分散され、体液サンプルと接触するために前記基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、を備え、
前記基板の前記サンプリング領域が、
毛細管効果を使用して前記体液サンプルを導入するための、その縁の周りの1つ以上の導入チャネル、
そこから前記体液サンプルを受容し、前記体液サンプルの干渉成分を濾過するための、前記1つ以上の導入チャネルに隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニット、および
前記HF-PSCと前記電極の第1のセットとの中間である分析物ドロップチャンバであって、前記分析物ドロップチャンバが、前記濾過された体液サンプルが前記電極の第1のセットに接触することを可能にするために、前記HF-PSCから前記濾過された体液サンプルを受容する、分析物ドロップチャンバ、を備える、電気化学センサ構造。
【請求項82】
前記1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つが、漏斗形状のものであり、前記サンプリング領域の前記縁に隣接し、前記HF-PSCユニットに向かって先細になる開口部を備える、請求項81に記載の電気化学センサ構造。
【請求項83】
電気化学センサ構造であって、
基板と、
前記基板上に分散され、体液サンプルと接触するために前記基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、
各々が前記サンプリング領域の入口から前記電極の第1のセットまで延在することを含む1つ以上の毛細管チャネルと、を備え、
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、前記入口までの距離にあり、その中の前記体液サンプルの体積を制御するために、変化した断面積を有する面積変化部分を含み、
少なくとも1つのWEが、前記入口とその中の前記体液サンプルと相互作用するためのその前記面積変化部分との中間である場所で、前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つまで延在する、電気化学センサ構造。
【請求項84】
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つが、前記体液サンプルに対して親水性であり、
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つの前記面積変化部分が、断面積が増加した前記少なくとも1つのWEの下流の部分である、請求項83に記載の電気化学センサ構造。
【請求項85】
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つが、前記体液サンプルに対して疎水性であり、
前記1つ以上の毛細管チャネルのうちの前記少なくとも1つの前記面積変化部分が、断面積が減少した前記少なくとも1つのWEの下流の部分である、請求項83に記載の電気化学センサ構造。
【請求項86】
ユーザの体液サンプルを分析するためのシステムであって、
前記体液サンプルをその上に受容するための電気化学センサ構造と、
前記体液サンプルを分析するための電気化学センサ構造と連携する検査装置と、を備え、
前記電気化学センサ構造が、
基板、
前記基板上に分散され、体液サンプルと接触するために前記基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路、および
前記電気化学センサ構造を使用して分析可能な前記体液サンプルの1つ以上のバイオマーカを識別するための識別構造、を備え、
前記検査装置が、
前記電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、前記電気化学センサ構造が、前記体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備える、ハウジング、
前記電気化学センサ構造を使用して分析可能な1つ以上のバイオマーカを識別するための識別回路、
前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための前記電気化学センサ構造の前記電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路、
前記識別された1つ以上のバイオマーカに基づいて、バイオ感知パラメータのセットを判定するための、かつ前記分析回路を制御して、前記バイオ感知パラメータのセットに基づいて、前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための、前記識別および分析回路に結合された制御回路、および
前記体液サンプル中の前記識別された1つ以上のバイオマーカの前記分析の分析結果を出力するための出力部、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月2日に出願された米国仮特許出願第62/755,148号、2018年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/786,180号、および2019年7月17日に出願された米国仮特許出願第62/875,131号の利益を主張し、その各々の内容が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、ユーザの健康状態を分析し、かつ監視するための携帯型電気化学センサシステムおよび方法に関し、具体的には、電気化学センサ構造に受容された患者の体液中の1つ以上のバイオマーカおよび/または疾患分析物を検出することによって、ユーザの健康状態を分析し、かつ監視するための、ポイントオブケア(PoC)デバイスおよび使い捨て電気化学センサを有する携帯型電気化学センサシステムに関する。PoCデバイスはまた、患者に地理空間医療を提供することに関連している。緊急の場合、PoCデバイスは地理空間情報を最寄りの緊急サービスに送信し、またはユーザの緊急連絡先および情報を共有してもよい。
【背景技術】
【0003】
診断医学の焦点は、病院ベースの検査から単純な在宅検査に移り、その結果、患者のライフスタイルに対する意識が高まっている。例えば、血圧モニタ、血糖計、心拍数モニタ付きのスマートウォッチなどの携帯型健康監視デバイスは、検査および診断のための診療所、医療研究所および/または病院に行くことなく患者の健康状態を監視するために広く使用されている。このような携帯型健康監視デバイスは、在宅検査を可能にし、医師および医療研究所を訪問する患者の時間を大幅に節約し、それによって彼らの生活の質を向上させる。このような携帯型健康監視デバイスはまた、診療所、医療研究所、および病院のリソースを大幅に節約する。
【0004】
携帯型健康監視デバイスは、ユーザの健康状態の便利な分析を可能にする手持ち式デバイスであってもよい。携帯型健康監視デバイスの例には、Ascensia(商標)BREEZE(商標)糖尿病ケアシステム(AscensiaおよびBREEZEは、スイス、バーゼルのAscensia Diabetes Care Holdings AGの商標である)およびGLUCOMETER ELITE(登録商標)血糖計(GLUCOMETER ELITEは、スイス、バーゼルのAscensia Diabetes Care Holdings AGの商標である)が含まれる。
【0005】
血糖計などのいくつかのタイプの携帯型健康監視デバイスは、患者の体液のサンプル中のバイオマーカ(グルコースなど)または疾患分析物(タンパク質、核酸分子、イオン性代謝物など)の量を検出し、かつ測定することにより、患者の健康状態を診断し、かつ監視する。バイオマーカは、特定の健康状態を示す、患者の体液中の1つ以上の特定の化合物である。
【0006】
ヒトの体液には複数のバイオマーカが存在する。ただし、在宅検査環境では、通常、携帯型健康監視デバイスで処理することができる体液サンプルの量は限られている。さらに、液体サンプル中の特定のバイオマーカの量は非常に少ない場合がある。したがって、患者の健康状態を判定するのに十分な精度で体液中に見出されたバイオマーカを収集し、検出し、かつ測定することが、常に携帯型健康監視デバイスおよびサンプリング構造にとっての課題である。
【0007】
さらに、グルコース監視デバイスなどの既存の携帯型健康監視デバイスは、体液サンプルから単一のバイオマーカしか検出できないが、患者の便宜のために、かつ患者の医療費を削減するために、1つ以上のバイオマーカを検出できる携帯型健康監視デバイスの必要性が存在する。
【0008】
既存の医療システムへの負担を軽減し、患者の医療へのアクセスを改善するために、診断用バイオ感知デバイス(以下、ポイントオブケア(PoC)デバイスとも称する)もまた、必要である。さらに、疾病を効果的に診断し、または予測し、かつ疾病管理を強化するための生理学的流体の在宅検査のために、訓練を受けていない消費者が使用するPoCデバイスの開発が求められている。より具体的には、疾病の診断と予後のための在宅検査のための、オンデマンドで、携帯型で、信頼性が高く、直感的で、かつ低コストのPoCデバイスに対する高い需要がある。
【0009】
例えば、当技術分野における心不全の標準治療は、医療サービスの提供において積極的ではなく遡及的である。心不全と診断された後、患者は通常、研究所検査のために定期的に医療提供者(HCP)を訪問する必要がある。これは、患者にとって時間のかかる負担であり、訪問の間に患者が危険にさらされる可能性があるため効果がない。
【0010】
切実に必要とされているが、携帯型の自宅での検査は完全なソリューションの一部にすぎない。特に緊急時に患者の健康に有意義な影響を与えるには、例えば心不全などの緊急の問題が進行性の衰弱状態および突然の声明を脅かす出来事につながる可能性があるため、患者は緊急医療サービスにアクセスする選択肢を有する必要がある。したがって、患者の場所、患者の履歴データ、および患者が応答しない場合の通信を含む緊急アクセスを改善するためのソリューションが必要である。しかしながら、現在の診断デバイスは、緊急の医療処置が必要な状況でも救急サービスとの通信が限定されており、緊急事態では患者を生命に脅かすリスクにさらす可能性がある。
【0011】
Hanらの米国特許第9,869,669号は、基板、基板上に設置された複数のナノチャネル、および複数の電極、基板上に設置された導波路、ならびに基板上に設置された分析チャンバおよび参照チャンバを含むセンサプラットフォームを教示している。各電極は、実質的に複数のナノチャネルの幅にわたって延在する。少なくとも1つの分析光共振器が分析チャンバ内に設置され、導波路の少なくとも一部分に光学的に結合されている。少なくとも1つの分析光共振器は、複数のナノチャネルのうちの少なくとも1つと流体連通している。少なくとも1つの参照光共振器が参照チャンバ内に設置され、導波路の少なくとも一部分に光学的に結合されている。少なくとも1つの参照光共振器は、複数のナノチャネルのうちの少なくとも1つの他のものと流体連通している。
【0012】
Sharmaらの米国特許出願公開第2016/0202250A1号は、ヒト心臓バイオマーカであるトロポニンI(cTnI)およびミオグロビン(Mb)の定量的検出のための、金属ナノ粒子/単層カーボンナノチューブ(MNP/SWCNT)ハイブリッドベースの化学抵抗バイオセンサを教示している。非常に特異的な心臓抗体である抗cTnI(Ab-cTnI)または抗Mb(Ab-Mb)は、SWCNTデバイス上に固定されたMNP上の部位特異的カルボキシル基に共有結合で固定化された。バイオセンサデバイスは、ソース/ドレイン電流電圧測定値によって特徴付けられた。デバイスの性能は、ヒト血清中のcTnIへの曝露時のSWCNTチャネルのコンダクタンスの変化を用いて調査された。MNPは、SWCNTに電荷密度を誘導することにより、高タンパク質負荷および電気信号の改善のために大きな表面積を提供し、高感度のcTnIおよびMbの低レベル検出をもたらした。
【0013】
Leeらの米国特許出願公開第2015/0083613A1号は、血糖を測定するための改善されたヘマトクリット測定精度を備えた電気化学バイオセンサを教示している。US2015/0083613によれば、測定されたヘマトクリット値を補正するための第1の電極部分およびグルコース濃度を測定するための第2の電極部分を含む電気化学バイオセンサは、測定されたヘマトクリット値の精度を改善し、測定されたヘマトクリット値を補正に使用した、測定された血糖濃度の精度をより改善するのに効果的である。これは、絶縁カバーが作用電極および補助電極よりも薄くなっているため、血液サンプルにさらされた第1の電極部分の第1の作用電極および第1の補助電極の面積が等しく、第1の作用電極と第2の作用電極との間の距離が一定になり、印刷中に位置決めエラーが発生した場合でも、電極面積が絶縁カバーによって常に維持されるためである。
【0014】
Buckらの米国特許第7,045,054B1号は、センサおよび分析物を検出するための方法を教示している。センサは各々、生体液中の分析物の濃度に比例した量の分析物を保持する親水性媒体の体積、媒体と接触している電極および酸化還元酵素、ならびに電子伝達メディエータを有する。流体はセンサに接触し、最初に所定の間隔で、メディエータを酸化するのに十分な電位を電極に断続的に印加し、印加された電位の持続時間の関数として電極を通る電流を感知する。印加された電位を酸化する印加されたメディエータは、電極を通る電流の経時変化率を判定するのに十分な期間維持される。電流の流れは、媒体中の分析物の既知の濃度の電流の流れと相関している。
【0015】
Wuらの米国特許出願公開第2018/0067071A1号は、測定デバイスおよび少なくとも3つの独立してアドレス指定可能な電極を含み、電極のうちの少なくとも2つが実質的に化学的に分離されている検査センサを含むバイオセンサシステムを教示している。1つ以上の作用電極は、2つ以上の対向電極と組み合わせてもよい。2つ以上の対向電極は、異なる電位で動作して、複数分析物の電気化学分析を提供してもよい。複数分析物の電気化学分析を実行するための分析方法が提供され、二次分析領域間の化学的混合に対する耐性を有する検査センサが提供される。
【0016】
Millerらの米国特許第7,723,099B2号は、干渉を低減した電気化学免疫センサシステムであって、固定化抗体と、標的分析物と、標識抗体との間のサンドイッチの形成に基づいて電気化学信号を生成する第1の免疫センサであって、信号の一部が、第1の免疫センサの領域における標識抗体の非特異的結合から生じる、第1の免疫センサと、免疫参照センサとして作用し、第1の免疫センサにおいて発生する非特異的結合の程度と同じまたは予測可能に関連する信号を生成し、固定化抗体と、サンプル内にあり、標的分析物ではない内因性または外因性タンパク質との間に免疫複合体を有する、第2の免疫センサと、を備える、電気化学免疫センサシステムを教示している。
【0017】
Labelleらの米国特許出願公開第2013/0183243号は、生物学的サンプルの存在を監視するための診断アッセイのための診断デバイスおよびそれを使用する方法を教示しており、デバイスは、1つセンサ上での少なくとも2つのアッセイ成分の判定を可能にする。より具体的には、US2013/0183243は、複数の分子認識素子を備えたマルチマーカ電気化学インピーダンス分光センサに関し、センサは、分子認識素子タイプの周波数を、同じセンサ上の他の分子認識素子タイプの周波数とは検出可能に異なる周波数にあるように変更するように調整された複数の異なる分子認識素子タイプを含む。
【0018】
Millerらの米国特許第7,910,352B2号は、干渉を低減した電気化学免疫センサシステムを教示している。このシステムは、固定化抗体と、標的分析物と、標識抗体との間のサンドイッチの形成に基づいて電気化学信号を生成する第1の免疫センサであって、信号の一部が、第1の免疫センサの領域における標識抗体の非特異的結合から生じる、第1の免疫センサと、免疫参照センサとして作用し、第1の免疫センサにおいて発生する非特異的結合の程度と同じまたは予測可能に関連する信号を生成し、固定化抗体と、サンプル内にあり、標的分析物ではない内因性または外因性タンパク質との間に免疫複合体を有する、第2の免疫センサと、を備える。
【0019】
Yangらの米国特許出願公開第2019/0076068A1号は、1つ以上の感知電極のためのインピーダンス関連パラメータの値を測定するために適用される診断用電気化学インピーダンス分光法(EIS)手順を教示している。パラメータは、実数インピーダンス、虚数インピーダンス、インピーダンスの大きさ、および/または位相角を含んでもよい。次に、インピーダンス関連パラメータの測定値は、センサ診断の実行、複数の冗長感知電極からの信号に基づく信頼性の高い融合センサ血糖値の計算、センサの較正、1つ以上の感知電極のすぐ近くにある干渉物の検出、および電気メッキ電極の表面積特性の検査に使用される。特定の周波数範囲で実質的にグルコースに依存しないインピーダンス関連パラメータが定義され得る。特定用途向け集積回路(ASIC)は、EISベースの診断、融合アルゴリズム、およびEISベースのパラメータの測定に基づく他のプロセスの実装を可能にする。
【0020】
Chodavarapuらの米国特許第8,653,833B2号は、システムであって、(a)信号生成器であって、少なくとも1つの所定の特性を有するプローブ信号を生成するための、かつ少なくともデジタルアナログ変換器を備えた、信号生成器と、(b)信号変換器であって、複数のアナログ入力信号のうちの少なくとも1つのアナログ入力信号のデジタル表現を生成するための、かつアナログデジタル変換器およびマルチプレクサのうちの少なくとも1つを備えた、信号変換器と、(c)センサであって、少なくとも第1の電気接点および第2の電気接点を含む、センサと、(d)参照インピーダンスと、(e)スイッチであって、信号生成器からプローブ信号を受信し、プローブ信号を、センサの第1の電気接点および参照インピーダンスのうちの少なくとも1つに連続的に、および選択的に、のうちの少なくとも1つで適用するための、スイッチと、(f)インピーダンス接続回路であって、センサの第2の電気接点および参照インピーダンスのうちの少なくとも1つを信号変換器に選択的に接続するための少なくともスイッチを備えた、インピーダンス接続回路と、(g)分析回路であって、生成されたプローブ信号の少なくともデジタル表現および少なくとも1つのアナログ入力信号のデジタル表現を受信することと、少なくともプローブ信号の特性を判定するために、生成されたプローブ信号のデジタル表現に対して第1のプロセスを実行して判定することと、少なくともプローブ信号の判定された特性に依存して、少なくとも1つのアナログ入力信号のデジタル表現の実数成分および虚数成分の少なくとも1つを生成するために、少なくとも1つのアナログ入力信号のデジタル表現に対して第2のプロセスを実行することと、少なくとも虚数成分に補正を適用することと、少なくとも参照インピーダンスならびに少なくとも1つのアナログ入力信号のデジタル表現の実数成分および虚数成分の少なくとも1つに依存して、センサのインピーダンスを判定することと、を行うためのものである、分析回路と、(h)第1のメモリであって、その後の検索のために判定されたインピーダンスを記憶するための、第1のメモリと、を備える、システムを教示している。
【0021】
Burkeらの米国特許第8,663,442B2号は、DC成分およびAC成分を有する励起信号を印加することを含む、生体液中の分析物を測定する方法を教示している。ACおよびDC応答が測定される。補正されたDC応答は、AC応答を使用して判定される。分析物の濃度は、補正されたDC応答に基づいて判定される。
【0022】
Royらの米国特許第8,158,430B1号は、様々な医療用途のためのポイントオブケア検査を提供するために、生体液からの分析物の検出を可能にする流体デバイスおよびシステムを教示している。
【0023】
JohnsonらのEP2,967,451B1は、サンプルを受容し、かつ分析するための携帯型リーダおよび使い捨てカートリッジを含む2014/144660ポイントオブケアセンサシステムを教示している。カートリッジは、各々が1つ以上のセンサを含む1つ以上のセンサチャネルを備えていてもよい。カートリッジにサンプルを提供した後、カートリッジをリーダに挿入することができ、リーダは、カートリッジと相互作用してカートリッジ上の検出を実行し、サンプル内の1つ以上の標的の存在および/または量を示す信号を受信する。カートリッジの例には、心臓パネル、敗血症パネルなどが含まれ得る。いくつかの実施形態では、同じセンサハードウェアが、異なる時間枠で実施される異なる標的の複数の測定のために構成されてもよい。カートリッジ上の固体および液体試薬の貯蔵および送達メカニズムもまた、その中に開示されている。
【0024】
Goldの米国特許出願公開第2016/0057565A1号は、ユーザが対象のオブジェクトに近接しているときなど、ユーザの生理学的パラメータの1つ以上を感知し、伝達し、かつ処理するシステムおよび方法を教示している。オブジェクトは、製品、場所、および他の人であってもよい。その一実施形態は、ユーザ、設計者、製造業者、マーケター、および売り手が、オブジェクトが(または多くのオブジェクトが)ユーザ(または多くのユーザ)によってどのように認識され、かつ使用されるかについての貴重な情報を確保することを可能にする。その様々な実施形態は、スマートオブジェクト(例えば、インターネット接続されたオブジェクト)およびダムオブジェクト(例えば、インターネットまたは他のネットワーク接続を持たないオブジェクト)と組み合わせて使用されてもよい。
【0025】
Zebarjadiらの米国特許出願公開第2015/0371350A1号は、患者が患者コンピューティングデバイスから医療サービスを要求できるシステムを教示している。医師は、医療を希望している、または必要としている患者とマッチしてもよい。患者は、コンピューティングデバイスを使用してシステムに登録する、または会員登録することができる。同じまたは異なるコンピューティングデバイスを使用して、患者は特定の場所で医療を要求してもよい。医師は、医療サービスの特許要求にマッチしてもよい。医師/患者のマッチングは、場所情報、患者の医療ニーズ、医師の医療行為、性別、言語スキル、または他の基準に基づいて行われてもよい。医師は、患者からの医療サービスの要求を受諾するか、または拒否することができる。医師が患者の医療ニーズを評価できるようにするために、双方向で、かつ少なくとも部分的に匿名化された通信が開始されてもよい。患者および/または医師に関連付けられたコンピューティングデバイスは、関連情報の収集、医療記録の記録、通信の管理、請求の処理、患者の場所へのナビゲート、および/または他の目的のために調整構成要素と組み合わせて使用されてもよい。
【0026】
Freyの米国特許第9,080,883B2号は、位置判定システムによって判定されたデバイスの現在の位置データに基づいて、特に建物から人を避難させるための情報を、携帯型デバイスに動的に出力する方法を教示している。建物内に位置する避難経路の現在の使用可能性は、センサシステムによって判定される。避難情報は、避難経路の現在の使用可能性ならびにデバイスの現在の位置および携帯型デバイスへの出力に基づいて、制御ユニットによって判定される。したがって、緊急事態では、その人の所在およびそれぞれの危険な状況の関数として、その人の専用の避難情報が判定され、その人のモバイルデバイス(例えば、スマートフォン、PDA)上に出力され得、これにより、とりわけ、建物または敷地の迅速かつ効率的な避難が可能になる。
【0027】
Malaviyaの米国特許出願公開第2017/0024531A1号は、ほぼリアルタイムまたはリアルタイムの接触者追跡調査を提供するための医療情報システムを教示している。このシステムは、医療施設に関連付けられた1つ以上のエンティティに関連する位置データを受信するように構成された位置データ受信機ユニットと、受信された位置データを利用して、1つ以上のコンテキストプロファイルを生成する、維持する、または更新するように構成されたコンテキストプロファイル管理ユニットであって、1つ以上のコンテキストプロファイルの各々が、1つ以上のエンティティの各々に対応する、コンテキストプロファイル管理ユニットと、を備える。感染制御、感染経路の開発などのアプリケーションでのほぼリアルタイムまたはリアルタイムの接触者追跡調査の使用に関連するデバイス、システム、および方法が提供される。
【0028】
Fellnerの米国特許第8,249,547B1号は、ウェアラブル部材およびウェアラブル部材に選択的に取り付け可能な別個にケースに入れられた携帯電話部材を含むウェアラブル緊急警報デバイスを教示している。ウェアラブル部材は、ウェアラブル部材をユーザの身体部位に取り付けるための取り付け部材、第1の信号を携帯電話部材に送信するための第1の送信機、第1の送信機用の電源、および携帯電話部材に信号を送信する第1の送信機を作動させるためのユーザが操作可能な第1のアクチュエータを含む。携帯電話部材は、携帯電話送受信機と第1の送信機との間に第1の通信リンク、ならびに携帯電話送受信機とリモート受信機との間のデータ、音声、およびメッセージのうちの少なくとも1つを送受信するための、携帯電話送受信機とリモート受信機との間の第2の通信リンクを確立するための携帯電話送受信機を含む。携帯電話部材をウェアラブル部材に選択的に取り外し可能に取り付け、携帯電話部材が第1のアクチュエータと係合して緊急信号を作動させることを可能にするための取り付け部材が提供されている。
【発明の概要】
【0029】
本明細書に開示される実施形態は、ユーザの健康状態を分析し、かつ監視するための携帯型電気化学センサシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、携帯型電気化学センサシステムは、体液からの1つ以上の分析物またはバイオマーカの存在を検出するためにバイオセンサを使用する。
【0030】
当業者が理解するように、分析物は、サンプルに対して実施される分析手順において関心のある化学成分、成分、または種である。「分析物(analyte)」という用語は、分析プロセスにおいて検出可能な血清塩化物または肝臓酵素などの比較的単純な要素または分子を指すことがよくある。
【0031】
当業者はまた、バイオマーカが、正常もしくは異常なプロセスの、または状態もしくは疾患の徴候として使用され得る、血液、他の体液、または組織に典型的に見出される生体分子であることを理解するであろう。バイオマーカは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定し、かつ評価されてもよい検出可能な特性を有する。「バイオマーカ(biomarker)」という用語は、悪性病変または心血管疾患などの非悪性疾患である可能性がある特定の疾患または疾患のグループを検出する、または診断するためのマーカを指すことがよくある。
【0032】
上記の違いにもかかわらず、当業者は、本明細書に記載の電気化学センサシステムおよび方法が、様々な実施形態において好適な分析物および/またはバイオマーカを検出するように適合されてもよいことを理解するであろう。したがって、以下の説明では、「分析物(analyte)」および「バイオマーカ(biomarker)」という用語は交換可能に使用されてもよい。
【0033】
本開示の一態様によれば、携帯型電気化学センサシステムは、ポイントオブケア(PoC)デバイスと、ユーザまたは患者の健康状態を分析し、かつ監視するための使い捨て電気化学センサ構造と、を備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、PoCデバイスは、哺乳動物の体液サンプルに見られるバイオマーカから情報を検出し、かつ収集するために、使い捨ての電気化学センサ構造と協調する。
【0035】
いくつかの実施形態では、電気化学センサ構造は、患者の体液サンプルを受容するためのサンプル領域を含む。電気化学センサ構造は、別様にPoCデバイスに結合されたものに挿入されてもよい。次に、PoCデバイスは、サンプル流体のエネルギー特性を測定することによって、受容された体液サンプルの健康状態を示す1つ以上のバイオマーカおよび/または疾患分析物の量を検出し、かつ測定する。いくつかの実施形態では、分析物濃度は電気化学的に定量化され、望ましくないタンパク質からのノイズは、濾過ユニットの導入によって低減される。
【0036】
本明細書に開示される携帯型電気化学センサシステムを使用すると、医師と直接会うことなく特定の疾病を診断することが可能であり、ユーザは、指先採取血液検査などの単純な診断検査のために診療所または病院を訪問することを回避することができ、それにより、診療所でのユーザの待ち時間およびこのような単純な診断検査を実行するために医療専門家が費やす時間が短縮される。
【0037】
本明細書に開示される携帯型電気化学センサシステムは、疾患を効果的に診断し、または予測し、疾患管理を強化するための生理学的流体の在宅検査のための訓練を受けていないユーザによる使用に好適である。
【0038】
本明細書に開示される携帯型電気化学センサシステムは、電気化学センサ構造に受容された体液中の1つ以上の分析物を検出することによって、患者の健康状態を監視するのに効率的である。分析物を正確に検出するための携帯型電気化学センサシステムの関連する方法および構成要素もまた、開示されている。
【0039】
本開示の一態様によれば、携帯型電気化学センサシステムは、リーダおよびセンサストリップとして機能するPoCデバイスを備える。
【0040】
様々な実施形態では、感知ストリップは、対応する対向電極および参照電極(それぞれ、CEおよびRE)とともに、単一または複数の作用電極(WE)を含んでもよい。体液から細胞成分を捕捉するのに熟練した分離ユニットHF-PSCもここに開示されている。電気化学センサは、携帯型PoCデバイスに接続されている。PoCデバイスは、電気化学センサ構造のサンプル領域からサンプル流体のエネルギー特性を検出して、流体読み取り値を含む信号を生成することができ、流体読み取り値は、サンプル流体中のバイオマーカのエネルギー特性に関連し、それによって、サンプル流体中の分析物の存在、不在、または量を示す。
【0041】
本明細書に開示されるPoCデバイスは、健康状態を示す体液中の特定のバイオマーカの量を測定する。PoCデバイスを使用することにより、ユーザは医師と直接会うことなく特定の疾病を診断してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、電気化学センサ構造またはストリップは、1つ以上の電極、可撓性基板、上部カバー層、および疎水性絶縁層を備える。サンプル流体をストリップのサンプル領域に配置してもよく、次にストリップをPoCデバイスに挿入する。PoCデバイスは、サンプル流体のエネルギー特性を測定することにより、サンプル流体中の特定の分析物の存在および/または量を判定する。
【0043】
本開示の一態様によれば、ユーザの体液サンプルを分析するための装置が開示されている。この装置は、電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、電気化学センサ構造が、体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備える、ハウジングと、電気化学センサ構造を使用して分析可能な1つ以上のバイオマーカを識別するための識別回路と、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための電気化学センサ構造の電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路と、識別された1つ以上のバイオマーカに基づいて、バイオ感知パラメータのセットを判定するための、かつ分析回路を制御して、バイオ感知パラメータのセットに基づいて、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための、識別および分析回路に結合された制御回路と、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカの当該分析の分析結果を出力するための出力部と、を備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、識別回路は、電気化学センサ構造の第2の回路のインピーダンスを測定することによって、1つ以上のバイオマーカを識別するためのものであり、第2の回路の抵抗が、1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化している。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2の回路は、電極の第2のセットを備える。
【0046】
いくつかの実施形態では、識別回路は、電気化学センサ構造の1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する無線周波数識別(RFID)タグを読み取ることによって、1つ以上のバイオマーカを識別するためのものである。
【0047】
いくつかの実施形態では、RFIDタグは、電気化学センサ構造上、または電気化学センサ構造を収容する運搬バイアル上にある。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置は、撮像構成要素をさらに備え、識別回路は、撮像構成要素を使用して、1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像をスキャンすることによって、1つ以上のバイオマーカを識別するためのものである。
【0049】
いくつかの実施形態では、識別回路は、撮像構成要素を有し、かつ装置に機能的に結合されたデバイスに、撮像構成要素を使用して、1つ以上のバイオマーカを識別するために1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像をスキャンするように命令するためのものである。
【0050】
いくつかの実施形態では、画像は、一次元バーコードまたは二次元バーコードである。
【0051】
いくつかの実施形態では、画像は、電気化学センサ構造上、または電気化学センサ構造を収容する運搬バイアル上にある。
【0052】
いくつかの実施形態では、分析回路は、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するために、第1の回路の1つ以上のインピーダンス、1つ以上の電流、および/または1つ以上の電圧を測定するように構成されている。
【0053】
いくつかの実施形態では、分析回路は、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するために、第1の回路に電気的に結合するための少なくとも1つのポテンシオスタット回路を備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポテンシオスタット回路は、直流(DC)ポテンシオスタット回路、交流(AC)ポテンシオスタット回路、またはそれらの組み合わせを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、結合電極のセットは、電気化学センサ構造の参照電極(RE)、制御電極(CE)、および作用電極(WE)に電気的に結合するための結合RE、結合CE、および結合WEを少なくとも含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、結合電極のセットは、電気化学センサ構造のRE、CE、および複数のWEに電気的に結合するための結合RE、結合CE、および複数のWEを少なくとも含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、結合電極のセットは、電気化学センサ構造のRE、CE、および3つ以上のWEを電気的に結合するための結合RE、結合CE、および3つ以上の結合WEを少なくとも含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、結合WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和された電気化学センサ構造のWEの第1のセットに電気的に結合するためのものであり、結合WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋された電気化学センサ構造のWEの第2のセットに電気的に結合するためのものであり、分析回路が、電気化学センサ構造のWEの第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算することにより、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである。
【0059】
いくつかの実施形態では、分析回路は、電気化学センサ構造のWEの第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算し、統計的方法を使用することにより、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである。
【0060】
いくつかの実施形態では、出力部は、分析結果を表示するためのスクリーンを備える。
【0061】
いくつかの実施形態では、スクリーンは、分析結果を表示し、ユーザからの入力を受信するためのタッチスクリーンである。
【0062】
いくつかの実施形態では、出力部は、分析結果を出力するためのスピーカを備える。
【0063】
いくつかの実施形態では、装置は、1つ以上のリモートデバイスと通信するためのネットワーキングモジュールをさらに備える。
【0064】
いくつかの実施形態では、ネットワーキングモジュールは、BLUTOOTHモジュールである。
【0065】
いくつかの実施形態では、出力部は、分析結果を1つ以上のリモートデバイスに出力するためのネットワーキングモジュールを備える。
【0066】
いくつかの実施形態では、1つ以上のリモートデバイスは、分析結果に基づいて、ユーザの健康状態を判定するための人工知能(AI)システムを備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、装置は、ユーザからの入力を受信するための1つ以上のボタンをさらに備える。
【0068】
いくつかの実施形態では、1つ以上のボタンは、1つ以上の緊急サービスとの緊急通信を開始するためのSOSボタンを備える。
【0069】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、前壁、後壁、上壁、下壁、および2つの対向する側壁を備え、1つ以上のボタンが、側壁のうちの少なくとも1つ上に分散されている。
【0070】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1のポートは、上壁または下壁上に位置する。
【0071】
いくつかの実施形態では、装置は、装置に電気的に取り外し可能に結合するためのアダプタであって、複数の追加の電気化学センサ構造を受容するための複数の第2のポートを備える、アダプタをさらに備える。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数の追加の電気化学センサ構造は、同じ機械的仕様および/または同じ電気的仕様を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、複数の追加の電気化学センサ構造は、異なる機械的仕様および/または異なる電気的仕様を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、装置は、複数の第1のポートを備える。
【0075】
いくつかの実施形態では、複数の第1のポートは、同じ機械的仕様および/または同じ電気的仕様を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、複数の第1のポートは、異なる機械的仕様および/または異なる電気的仕様を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも識別回路、分析回路、および制御回路に電力を供給するためのバッテリと、バッテリを充電するための電源に電気的に結合するための第2のポートと、をさらに備える。
【0078】
いくつかの実施形態では、第2のポートは、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポートである。
【0079】
いくつかの実施形態では、装置は、スマートフォンに物理的および電気的に結合するための第3のポートをさらに備える。
【0080】
いくつかの実施形態では、分析回路および/または制御回路は、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro-BNP)を検出し、かつ分析するための電気化学モジュールと、蛍光モジュールと、アプタマーベースのリガンドを検出し、かつ分析するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モジュールと、代謝産物分析のための吸収モジュールと、を備える。
【0081】
いくつかの実施形態では、分析回路および/または制御回路は、識別された1つ以上のバイオマーカの濃度を判定するための検量線をその中に記憶するメモリをさらに備える。
【0082】
いくつかの実施形態では、装置は、装置の地理空間情報を取得するための1つ以上の全地球測位システム(GNSS)構成要素をさらに備え、出力部は、分析結果および地理空間情報を出力するためのものである。
【0083】
いくつかの実施形態では、1つ以上のリモートデバイスは、ユーザの健康状態の評価を取得するために分析結果を評価することと、分析結果、地理空間情報、およびユーザの健康状態の評価を記憶することと、ユーザの健康状態の評価が第1の閾値を上回っているが第2の閾値を下回っている場合に、さらなる行動についてユーザに通知することと、ユーザの健康状態の評価が第2の閾値を超えている場合に、緊急プロトコルを開始することと、を行うためのものである。
【0084】
本開示の一態様によれば、ユーザの体液サンプルを分析するための装置が開示されている。この装置は、電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、電気化学センサ構造が、体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備えるハウジングと、体液サンプル中の1つ以上のバイオマーカを分析するための電気化学センサ構造の電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路と、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカの当該分析の分析結果を出力するための出力部と、を備える。結合電極のセットは、電気化学センサ構造の参照電極(RE)、制御電極(CE)、および複数の作用電極(WE)に電気的に結合するための結合RE、結合CE、および複数の結合WEを少なくとも含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、結合電極のセットは、電気化学センサ構造のRE、CE、および3つ以上のWEを電気的に結合するための結合RE、結合CE、および3つ以上の結合WEを少なくとも含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、結合WEのうちの少なくとも1つの第1のセットが、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和された電気化学センサ構造のWEの第1のセットに電気的に結合するためのものであり、結合WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋された電気化学センサ構造のWEの第2のセットに電気的に結合するためのものであり、分析回路が、電気化学センサ構造のWEの第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算することにより、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである。
【0087】
いくつかの実施形態では、分析回路は、電気化学センサ構造のWEの第1のセットと第2のセットとの間の電荷移動抵抗(RCT)の差に基づいて、分析物濃度を計算し、統計的方法を使用することにより、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するためのものである。
【0088】
本開示の一態様によれば、基板と、基板上に分散され、体液サンプルと接触するために基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、電気化学センサ構造を使用して分析可能な体液サンプルの1つ以上のバイオマーカを識別するための識別構造と、を備える、電気化学センサ構造が開示されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、基板はポリマーを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリアミドを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、基板は多孔質基板である。
【0092】
いくつかの実施形態では、基板は、30%以上の多孔度を有するトラックエッチングされた膜である。
【0093】
いくつかの実施形態では、基板は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)膜を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、識別構造は、電気化学センサ構造の1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する所定のインピーダンスを有する第2の回路を備える。
【0095】
いくつかの実施形態では、識別構造は、電気化学センサ構造の1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する無線周波数識別(RFID)タグを備える。
【0096】
いくつかの実施形態では、識別構造は、電気化学センサ構造の1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する画像を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、画像は、電気化学センサ構造の1つ以上のバイオマーカの識別情報を符号化する一次元バーコードまたは二次元バーコードを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、電極の第1のセットは、少なくとも参照電極(RE)、制御電極(CE)、および作用電極(WE)を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、電極の第1のセットは、少なくともRE、CE、および複数のWEを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、電極の第1のセットは、少なくともRE、CE、および3つ以上のWEを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、WEの少なくとも1つの第1のセットは、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和され、WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットは、同じ捕捉リガンドを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットは、異なる捕捉リガンドを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットは、同じ捕捉リガンドを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットは、異なる捕捉リガンドを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットは、1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットと同じである。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットは、1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットとは異なる。
【0108】
いくつかの実施形態では、電極の第1のセットの各々は、クロム(Cr)の層およびCr層の上の金(Au)の層を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのWEは、Au層の上に導電性ナノ材料の層をさらに含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのWEは、導電性ナノ材料の層の上に検出素子の層をさらに含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、CEは、サンプリング領域の少なくとも2つの縁に沿って延在し、それによって、電極の第1のセットの残りを取り囲む。
【0112】
いくつかの実施形態では、電気化学センサ構造は、体液サンプルをサンプリング領域に受容するためのサンプリングポートを形成する遠位端開口部を有する疎水性中間層と、疎水性中間層の上にあり、サンプリング領域を覆う保護層と、をさらに含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、基板のサンプリング領域は、毛細管効果を使用して体液サンプルを導入するための、その縁の周りの1つ以上の導入チャネルと、そこから体液サンプルを受容し、体液サンプルの干渉成分を濾過するための、1つ以上の導入チャネルに隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニットと、HF-PSCと第1の電極セットとの中間である分析物ドロップチャンバであって、分析物ドロップチャンバが、濾過された体液サンプルが第1の電極セットに接触することを可能にするために、HF-PSCから濾過された体液サンプルを受容する、分析物ドロップチャンバと、を備える。
【0114】
いくつかの実施形態では、1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つは漏斗形状のものであり、サンプリング領域の縁に隣接し、HF-PSCユニットに向かって先細になる開口部を備える。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つが基板上に刻印されている。
【0116】
いくつかの実施形態では、1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つは、基板上のコーティングのギャップによって形成されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、HF-PSCユニットは、様々な孔径の対称および/または非対称孔を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、電気化学センサ構造は、各々が分析物ドロップチャンバ内またはその周りの入口を含み、分析物ドロップチャンバから電極の第1のセットまで延在する1つ以上の毛細管チャネルをさらに含み、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、体液サンプルに対して親水性であり、その中の体液サンプルの体積を制御するために、入口までの距離での急激な拡張部を含み、少なくとも1つのWEが、入口とその中の体液サンプルと相互作用するためのその拡張部との中間である場所で、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つまで延在する。
【0119】
各々が分析物ドロップチャンバ内またはその周りの入口を含み、分析物ドロップチャンバから電極の第1のセットまで延在する1つ以上の毛細管チャネルをさらに含み、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、体液サンプルに対して疎水性であり、その中の体液の体積を制御するために、入口までの距離での急激な先細り部分を含み、少なくとも1つのWEが、入口とその中の体液サンプルと相互作用するためのその先細り部分との中間である場所で、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つまで延在する。
【0120】
本開示の一態様によれば、基板と、基板上に分散され、体液サンプルと接触するために基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、を備える、電気化学センサ構造が開示されている。電極の第1のセットは、少なくとも参照電極(RE)、制御電極(CE)、および複数の作用電極(WE)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、当該複数のWEは、3つ以上のWEを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、WEの少なくとも1つの第1のセットは、1つ以上の捕捉リガンドの第1のセットで過飽和され、WEのうちの少なくとも1つの第2のセットが、所定の濃度の1つ以上の捕捉リガンドの第2のセットで架橋されている。
【0123】
本開示の一態様によれば、基板と、基板上に分散され、体液サンプルと接触するために基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、を備える、電気化学センサ構造が開示されている。基板のサンプリング領域は、毛細管効果を使用して体液サンプルを導入するための、その縁の周りの1つ以上の導入チャネルと、そこから体液サンプルを受容し、体液サンプルの干渉成分を濾過するための、1つ以上の導入チャネルに隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニットと、HF-PSCと第1の電極セットとの中間である分析物ドロップチャンバであって、分析物ドロップチャンバが、濾過された体液サンプルが第1の電極セットに接触することを可能にするために、HF-PSCから濾過された体液サンプルを受容する、分析物ドロップチャンバと、を備える。
【0124】
いくつかの実施形態では、1つ以上の導入チャネルのうちの少なくとも1つは漏斗形状であり、サンプリング領域の縁に隣接し、HF-PSCユニットに向かって先細になる開口部を備える。
【0125】
本開示の一態様によれば、基板と、基板上に分散され、体液サンプルと接触するために基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、各々がサンプリング領域の入口から電極の第1のセットまで延在することを含む1つ以上の毛細管チャネルと、を備える、電気化学センサ構造が開示されている。1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つが、入口までの距離にあり、その中の体液サンプルの体積を制御するために、変化した断面積を有する面積変化部分を含み、少なくとも1つのWEが、入口とその中の体液サンプルと相互作用するためのその面積変化部分との中間である場所で、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つまで延在する。
【0126】
いくつかの実施形態では、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つは、体液サンプルに対して親水性であり、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つの面積変化部分は、断面積が増加した少なくとも1つのWEの下流の部分である。
【0127】
いくつかの実施形態では、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つは、体液サンプルに対して疎水性であり、1つ以上の毛細管チャネルのうちの少なくとも1つの面積変化部分は、断面積が減少した少なくとも1つのWEの下流の部分である。
【0128】
本開示の一態様によれば、ユーザの体液サンプルを分析するためのシステムが開示されている。このシステムは、体液サンプルをその上に受容するための電気化学センサ構造と、体液サンプルを分析するための電気化学センサ構造と連携する検査装置と、を備える。電気化学センサ構造は、基板と、基板上に分散され、体液サンプルと接触するために基板のサンプリング領域内に延在する電極の第1のセットを備える第1の回路と、電気化学センサ構造を使用して分析可能な体液サンプルの1つ以上のバイオマーカを識別するための識別構造と、を備える。この検査装置は、電気化学センサ構造を受容するための少なくとも1つの第1のポートを備えたハウジングであって、電気化学センサ構造が、体液サンプルに接触するための電極の第1のセットを有する第1の回路を備えるハウジングと、電気化学センサ構造を使用して分析可能な1つ以上のバイオマーカを識別するための識別回路と、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための電気化学センサ構造の電極の第1のセットに電気的に結合するための結合電極のセットを備える分析回路と、識別された1つ以上のバイオマーカに基づいて、バイオ感知パラメータのセットを判定するための、かつ、分析回路を制御して、バイオ感知パラメータのセットに基づいて、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカを分析するための、識別および分析回路に結合された制御回路と、体液サンプル中の識別された1つ以上のバイオマーカの当該分析の分析結果を出力するための出力部と、を備える。
【0129】
本発明は、以下の図面および説明を参照することにより、よりよく理解することができる。図中の構成要素は必ずしも一定の縮尺である必要はなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。さらに、図では、参照されているように、様々な図全体で対応する部品を示している。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1A】それぞれ、本開示のいくつかの実施形態による、健康監視システムならびに携帯型ポイントオブケア(PoC)デバイスおよび電気化学センサ構造を備えた携帯型健康監視システムの概略斜視図および平面図である。
図1B】それぞれ、本開示のいくつかの実施形態による、健康監視システムならびに携帯型ポイントオブケア(PoC)デバイスおよび電気化学センサ構造を備えた携帯型健康監視システムの概略斜視図および平面図である。
図2図1Aに示す健康監視システムの電気化学センサ構造の概略平面図であり、電気化学センサ構造は複数の電極を備えている。
図3A】電気化学センサ構造上の体液サンプル中の1つ以上のバイオマーカを測定するための電気化学センサ構造の電極に電気的に結合するための、図2に示すPoCデバイスの回路の概略図である。
図3B】電気化学センサ構造上の体液サンプル中の1つ以上のバイオマーカを測定するための電気化学センサ構造の電極に電気的に結合するための、図2に示すPoCデバイスの回路の概略図である。
図4A図1Aに示す健康監視システムの電気化学センサ構造の斜視図である。
図4B】断面線A-Aに沿った図4Aに示す電気化学センサ構造の断面図である。
図4C】断面線B-Bに沿った図4Aに示す電気化学センサ構造の断面図である。
図4D】断面線C-Cに沿った図4Aに示す電気化学センサ構造の断面図である。
図5A】基板、ならびに参照電極(RE)、制御電極(CE)および作用電極を含む複数の電極を有する、図4Aに示す電気化学センサ構造の概略図である。
図5B図4Aに示す電気化学センサ構造の概略図であり、基板およびWEを示しており、WEは、ZnOナノロッドを有するナノ構造感知面を含む。
図6A】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図6B】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図6C】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図6D】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図6E】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図6F】ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造の製造のためのプロセスを示す。
図7A】本開示のいくつかの実施形態による、図4Aに示される電気化学センサ構造を製造するためのプロセスを示す。
図7B】本開示のいくつかの実施形態による、図4Aに示される電気化学センサ構造を製造するためのプロセスを示す。
図7C】本開示のいくつかの実施形態による、図4Aに示される電気化学センサ構造を製造するためのプロセスを示す。
図7D】本開示のいくつかの実施形態による、図4Aに示される電気化学センサ構造を製造するためのプロセスを示す。
図7E】本開示のいくつかの実施形態による、図4Aに示される電気化学センサ構造を製造するためのプロセスを示す。
図8】本開示のいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の概略平面図である。
図9A】本開示のいくつかの実施形態による、無線周波数識別(RFID)リーダを有するPoCデバイスおよびRFIDタグを有する運搬バイアルを示し、PoCデバイスは、運搬バイアルのRFIDタグの情報を読み取ることによって、運搬バイアル内の電気化学センサ構造に関連付けられたバイオマーカのタイプを判定する。
図9B】本開示のいくつかの実施形態による、一次元バーコードスキャナを有するPoCデバイスおよび一次元バーコードを有する運搬バイアルを示し、PoCデバイスは、運搬バイアルの一次元バーコードの情報を読み取ることによって、運搬バイアル内の電気化学センサ構造に関連付けられたバイオマーカのタイプを判定する。
図10】本開示のいくつかの実施形態による、スマートフォンに物理的および電気的に結合するための接続ポートを有するPoCデバイスを示す。
図11】本開示のいくつかの実施形態による、スマートフォンに結合された図10に示すPoCデバイスを示し、運搬バイアルの二次元バーコードの情報を読み取るためにスマートフォンのカメラを使用して、運搬バイアル内の電気化学センサ構造のバイオマーカのタイプを判定する。
図12】本開示のいくつかの実施形態による、スマートフォンに結合された図10に示すPoCデバイスを示し、運搬バイアルの二次元バーコードの情報を読み取るためにスマートフォンのカメラを使用して、運搬バイアル内の電気化学センサ構造のバイオマーカのタイプを判定する。
図13】本開示のいくつかの実施形態による、異なる仕様に従って製造された異なるタイプの電気化学センサ構造に適応するためのストリップアダプタを示す。
図14図13に示すストリップアダプタの電気回路図である。
図15A】本開示のいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の一部の概略平面図である。
図15B】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の一部分の概略平面図である。
図16】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の一部分の概略平面図である。
図17A】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造のスクリーン印刷電極の例示的な製造プロセスの概略図を示す。
図17B】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造のスパッタ電極の例示的な製造プロセスの概略図を示す。
図18A】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の電極を製造するための堆積プロセスの進行を示す。
図18B】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の電極を製造するための堆積プロセスの進行を示す。
図18C】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の電極を製造するための堆積プロセスの進行を示す。
図18D】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の電極を製造するための堆積プロセスの進行を示す。
図18E】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の電極を製造するための堆積プロセスの進行を示す。
図18F】堆積または固定化バイオセンサ、有機化学物質、バイオリンカーおよびナノロッドの品質を含むストリップの品質の測定値を示すグラフである。
図19】本開示のさらにいくつかの実施形態による、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造の上面図であり、電気化学センサ構造は、導入チャネルを備え、電極に隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニットがそれに続く。
図20図19に示す電気化学センサ構造の概略図であり、導入チャネルおよびHF-PSCユニットを通過して、電極に接触するための分析物ドロップチャンバに入る流体サンプルを示す。
図21】2~6個の作用電極システムの電極アセンブリのために、体液から分析物を定量化するための作業スキーマを示す。
図22】体液分析のために図1Aに示される健康監視システムのPoCデバイスのモジュール構造を示すブロック図である。
図23】本開示のいくつかの実施形態による、体液分析のために図1Aに示される健康監視システムのPoCデバイスのモジュール構造を示すブロック図である。
図24A】本開示のいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプルの流れの安定性および体積の制御を伴う、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造のハイブリッド設計を示す。
図24B】本開示のいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプルの流れの安定性および体積の制御を伴う、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造のハイブリッド設計を示す。
図25A】本開示のさらにいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプル流の安定性および体積の制御を伴う、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造を示す。
図25B】本開示のさらにいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプル流の安定性および体積の制御を伴う、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造を示す。
図25C】本開示のさらにいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプル流の安定性および体積の制御を伴う、図1Aに示される健康監視システムの電気化学センサ構造を示す。
図26】本開示のいくつかの実施形態による、体液分析のために図1Aに示される健康監視システムのPoCデバイスによって実行されるプロセスを示すフローチャートである。
図27】本開示のさらにいくつかの実施形態による、体液分析のために図1Aに示される健康監視システムのPoCデバイスによって実行されるプロセスを示すフローチャートである。
図28】本開示のさらにいくつかの実施形態による、体液分析のプロセスを示すフローチャートである。
図29A】それぞれ、本開示のいくつかの実施形態による、健康監視システムの概略図および平面図である。
図29B】それぞれ、本開示のいくつかの実施形態による、健康監視システムの概略図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0131】
概要
本明細書に開示される実施形態は、一般に、ユーザの健康状態を監視するための携帯型電気化学センサシステムに関する。より具体的には、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、疾患の診断および予後のための在宅検査のためのポイントオブケア(PoC)デバイスなどのオンデマンド、携帯型、信頼性の高い、直感的、かつ低コストのバイオ感知デバイスに関する。いくつかの実施形態では、携帯型電気化学センサシステムは、診断用バイオ感知デバイスと、電気化学センサ構造に受容された患者の体液のサンプル中のタンパク質および他の分子などの様々な分析物を検出することによって患者の健康状態を監視するための使い捨て電気化学センサ構造などのサンプリング構造と、を備える。体液中の特定の分析物の存在、不在、または量の変動は、疾患の指標または予測因子として使用されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、電気化学センサ構造は、患者の体液のサンプルを受容するためのサンプル受容領域を含む。電気化学センサ構造のサンプル受容領域は、複数の電極を備え、1つ以上の分析物を検出するのに好適な1つ以上の検出素子をその上に有する基板を備えてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、基板は、1つ以上の分析物を検出するための1つ以上の検出素子をその上に備えた可撓性変更/未変更(処理または未処理)アクリルまたはポリマー膜ストリップなどの可撓性ポリマー材料でできていてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、PoCデバイスは、体液サンプル中の分析物と検出素子との間の電気化学反応を監視するための1つ以上のポテンシオスタット回路を備えてもよい。
【0135】
ポテンシオスタット回路は、DCポテンシオスタット回路を備えていてもよく、その用途はクロノアンペロメトリーおよびボルタンメトリーに限定でき、周波数応答アナライザと組み合わせて使用すると、インピーダンス分析システムとして使用されてもよい。
【0136】
特に、本明細書に開示されるシステムの構成要素は、AC、DC、またはそれらの組み合わせでサンプルを刺激するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、信号は、DC信号で特定の周波数オフセットを有するAC振幅を構成してもよい。検査信号はまた、異なる組み合わせで生成されてもよい。例えば、一実施形態は、サンプル検査のためにDC信号を単に使用して、いずれかの方向に電流を流し、それによって、基板の特性評価、認識、または分析を可能にしてもよい。より具体的には、システムは、基板の品質、電極のコンダクタンス、電極に固定化されたバイオセンサの品質、および分析物のバイオセンサへの結合効率に関連するがこれらに限定されない基準を測定するために周波数の範囲を使用する。
【0137】
いくつかの実施形態では、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によるシステムの診断は、結果として生じるナイキストプロット分析によって支援されるドメイン認識を通じて行われてもよい。例えば、ストリップ上の捕捉リガンドのナイキストプロット事前特性評価に依存することにより、新たにスキャンされたデータを比較して使用して、一定期間の保存後または使用前に固定化層の品質を測定してもよい。
【0138】
これらの実施形態では、PoCデバイスは、周波数応答アナライザに結合されたDCポテンシオスタット回路によって使用される3つの電極を備えてもよい。例えば、システムは、マルチプレクサによる電流から電圧への変換、システム内の追加の電極を収容する増幅器、ゲインステージ、および最終的な周波数応答アナライザ集積回路(IC)の4つのステージを含んでもよい。設計の変形例では、マルチプレクサを使用して、システムを較正モードと1つ以上の複数電極モード(例えば、3電極モード、4電極モード、…、および8電極モード)との間で切り替えてもよい。
【0139】
体液サンプルが電気化学センサ構造のサンプル領域に配置されると、体液サンプル中の分析物と検出素子との間の電気化学的相互作用が発生し、エネルギー変化を引き起こす。電気化学センサ構造は、サンプル流体にエネルギーを与え、サンプル流体中の特定の化合物の濃度を示すサンプル流体の読み取り値を生成するためにサンプルのエネルギー特性を測定するエクスビボPoCデバイスと連動している。サンプルの体積は、約10マイクロリットル(μL)から約20μLまで小さくてもよい。与えられるエネルギーは電気エネルギーであってもよく、測定されたエネルギー特性は電位差、電流、またはインピーダンスであってもよい。
【0140】
分析物は特定の検出素子に対して親和性および特異性を持っていることが多いため、電気化学センサ構造は一般に、特定のタイプの分析物を検出するために特別に製造する必要がある。
【0141】
抗体、核酸アプタマー、および酵素は、それぞれのバイオマーカに対する高い特異性および親和性のために、バイオ感知デバイスの検出素子としてよく使用される。特定の分析物に対する検出素子の高い特異性を考えると、デバイスのサンプリング領域は、1つのタイプの検出素子のみを含んでもよく、単一の分析物を検出するために使用されてもよい。さらに、異なる分析物は異なるエネルギー特性を持っている。したがって、PoCデバイスは、そのエネルギー特性を測定するために、特定の分析物に関して較正される必要がある。したがって、いくつかの実施形態では、複数の分析物を測定するためのPoCデバイスは、複数の分析物の各々に適応するためにその設定を調整するための較正機能を含んでもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、1つ以上のポテンシオスタット回路は、医療研究所などの好適な情報源から匿名で入手された、既知の濃度の標的疾患分析物(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro-BNP)、トロポニン、ck-mb、D-ダイマー、クレアチニン、電解質などであるがこれに限定されない)を有する希釈されたヒト血漿/血清/血液/流体サンプルを使用することによって較正されてもよい。次に、PoCデバイスのポテンシオスタット回路は、様々な分析物濃度のサンプルを使用して較正されてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、PoCデバイスは、分析されるバイオマーカを判定するために、電気化学センサ構造またはその運搬バイアル上の識別要素を使用する。識別要素は、検出電極、無線周波数識別(RFID)タグ、一次元バーコード、クイックレスポンス(QR)コードなどの二次元バーコードなどを含んでもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、携帯型電気化学センサシステムは、NT-プロBNP、心臓トロポニン(cTn)などのHF関連分析物を、指先からの採取などの単純なサンプリングプロセスで取得された血液サンプルなどの小さな体積の体液サンプルから検出し、かつ定量化することによって心不全(HF)を監視するように構成されてもよい。
【0145】
cTnは、心筋傷害の高感度で特異的なバイオマーカである。cTnは、急性冠症候群を示唆する症状を呈する患者のトリアージおよび管理をガイドする。一方、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルはまた、急性心筋梗塞でも上昇し、梗塞および左心室収縮機能障害の程度に関連する定量的な生化学的マーカである。したがって、BNPには予後的価値がある。BNP遺伝子転写の最も強力な誘導因子は、圧力または体積の増加による左心室(LV)壁の伸展である。ホルモン前駆体(proBNP)はBNPとNT-pro-BNPに切断され、BNP、NT-pro-BNP、およびproBNPの血清学的証拠が得られる。BNPの従来のアッセイは、proBNPおよびBNP、ならびにBNPの様々な分解フラグメントを検出するが、NT-pro-BNPアッセイはNT-pro-BNPおよびproBNPを検出する。BNPとNT-pro-BNPは腎臓を含む多くの臓器によって受動的に除去されるが、BNPの半減期はNT-pro-BNPよりも大幅に短くなる(例えば、約20分対60~120分)。したがって、NT-pro-BNPは、自宅または歩行環境での心不全の予後診断のアプリケーションにおいて、非常に有望な候補バイオマーカと見なされている。
【0146】
分析物結合信号の検出は、電気化学的信号、光信号(化学発光、反射率など)、または磁気変換信号に基づき得る。このような電気化学的検出方法は、電圧または電流のいずれかに依存して分析物の結合を検出し、小型化された電気バイオセンサデバイスでの実装に適している。これらの方法は、分析物が捕捉リガンドに結合するときに発生する電気インピーダンスの変化を監視し、それが次に標的分析物の濃度と相関する。
【0147】
HFバイオマーカ(例えば、NT-pro-BNP、cTnなど)の電気化学的検出および定量化の主な課題は、血中濃度が低いこと、したがって生体分子結合イベントの増幅(カットオフ値:0.125ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)未満=非急性心不全の除外)である。
【0148】
生体分子結合信号を増幅するために、ナノ構造感知面を利用する方法を使用して、改善された感度(例えば、1ng/mL未満)を達成してもよい。感知面は、対応する捕捉リガンドと結合する分析物のための選択的官能化部位を提供するために、増加した表面積対体積比および構造形態を有する標的トロポニン分子とサイズが一致するナノスケール寸法を有する。
【0149】
様々な実施形態の説明
ここで図1Aおよび図1Bに目を向けると、ユーザの健康状態を監視するための電気化学センサシステムが示され、一般に、参照番号100を使用して識別される。携帯型電気化学センサシステム100は、診断装置102と、使い捨て電気化学センサ構造などのサンプリング構造104と、を備える。
【0150】
これらの実施形態では、診断装置102は、Philos(商標)PoCデバイス(Philosは、カナダ、アルバータ州、カルガリーのCardiAI Technologies Ltd.の商標である)などの携帯型PoCデバイスであってもよく、個人使用に好適なサイズ(例えば、一実施形態では5センチメートル(cm)×7.5cm×2cmのサイズ)を有してもよい。これらの実施形態におけるPoCデバイス102は、スクリーン106と、ユーザ入力を受信するためのユーザ入力構造と、電気化学センサ構造104を受容するためのストリップ受信ポート110と、米国カリフォルニア州ハモサビーチのRFduino Inc.によって提供されるRFduinoマイクロコントローラなどの制御構造(図示せず)と、関連する回路と、を備える。PoCデバイス102はまた、様々な構成要素に電力を供給するためのバッテリなどの電源を備える。
【0151】
ユーザ入力構造は、ユーザ命令(例えば、PoCデバイス102のオン、またはオフ、診断プロセスの開始、診断プロセスで取得された読み取り値の表示、以前の診断読み取り値の表示など)および/またはユーザデータ(例えば、ユーザの年齢、性別、体重、身長など)などのユーザ入力を受信するための1つ以上のボタン108および/またはタッチセンシティブスクリーン(いくつかの実施形態ではタッチセンシティブスクリーン106など)を備えてもよい。
【0152】
回路は、バイオ感知のためのポテンシオスタット回路(後でより詳細に説明される)などの分析回路、ならびに、ユーザ命令操作の実行、電気化学センサ構造104の挿入の検出、バイオマーカの測定レベルの読み取りおよび表示、測定データの保存、傾向追跡のためのリモートデバイスへの測定データの送信などの他のタスクのための監視回路を備えてもよい。ポテンシオスタット回路は、電気化学センサ構造104の回路に対応して設計されてもよい。
【0153】
図2に示されるように、電気化学センサ構造104は、流体がその上を流れることを可能にする生体適合性基板122上に分散された複数の電極124~132を備えてもよい。基板の実効コンダクタンスおよび/またはインピーダンスに関連するパラメータを使用して、単一のエンティティ、または2つ以上のエンティティ間の相互作用に関する特性情報を明らかにするか、または導出することができる。エンティティは、単層、単層のスタック、タンパク質、オリゴヌクレオチド、酵素、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0154】
特に、この実施形態の電気化学センサ構造104は、参照電極(RE)124、制御電極(CE)126、および作用電極(WE)128を備え、これらはすべて、その中に受容された体液サンプル(図示せず)のエネルギー特性を測定するためにそのサンプリング領域134内に延在する。電極の表面は、電極から体液への電子伝達を媒介するために、変更されるか、または別様にメディエータで処理されてもよい。
【0155】
電気化学センサ構造104はまた、電気化学センサ構造104が検出するのに好適なバイオマーカのタイプを示すために、所定の抵抗または所定のインピーダンスを有するトレースによって結合された一対の識別電極130および132を備える。電極124~132は、金(Au)、クロム(Cr)、チタン、白金、銀などの導電性または半導電性金属でできているか、またはそれらを含んでもよい。
【0156】
このような電気化学的センサ構造104を用いて、分析回路は、対応して、電気化学的センサ構造104の電極124~132と電気的に係合するためのストリップ受容ポート110内の結合電極のセットを備える。
【0157】
図3Aおよび図3Bに示されるように、PoCデバイス102は、電気化学センサ構造104がストリップ受容ポート110に挿入されるときに電極124~132と電気的に係合するための複数の回路142および144を備える。
【0158】
図3Aに示されるように、分圧器の形態の第1の回路142は、バイオマーカのタイプを判定するために使用される。上記のように、識別電極130および132は、抵抗器Rによって表される、それらの間に所定の抵抗を有する。Rの抵抗は事前定義されており、電気化学センサ構造104が検出するのに好適なバイオマーカのタイプを示している。第2の回路144は、識別電極130および132と電気的に係合し、既知の抵抗を有する抵抗器Rを介してそれに電圧VREG(例えば、3.3V)を印加する。電圧信号VDetectは、RとRとの間から出力される。したがって、VDetect=VREG/(R+R)であり、Rの抵抗と、次に、バイオマーカのタイプが、VDetectをVREGと比較することによって得られてもよい。
【0159】
図3Bに示されるように、直流(DC)ポテンシオスタット回路の形態の第2の回路144は、WE128とRE124との間の電圧を制御するために使用される。本明細書では、電気化学センサ構造104上の体液サンプルは、WE128(カソードとして機能する)と、RE124(アノードとして機能する)と、CE126との間の電解質として機能する。演算増幅器148の性質のために、RE124およびUdの電圧が同じになるまで、CE126を通して電流が供給される。したがって、Uは、電解質の電圧を判定し、その結果、あまりにも低いUが十分な測定分解能を生成することができない可能性があり、あまりにも低いUが推論反応または表面特性変化をトリガする可能性があるため、バイオマーカ測定値の精度を判定する。
【0160】
したがって、回路144において、3電極構成は、一定のDC電圧が調整され、電気化学センサ構造104のWE128およびRE124上に印加されるDCポテンシオスタット回路に接続される。回路144は、インピーダンス測定値を検出し、かつ判定することによって、サンプル流体の分析のためのサンプル流体のエネルギー特性を判定するために使用されてもよい。当業者は、回路144が、グルコース検出で一般的に使用されるアンペロメトリータイプの測定にも使用できることを理解するであろう。さらに、電位差測定タイプの測定はまた、3電極構成を使用して実装されてもよい。この構成では、順方向(例えば、電圧を上げるなど)および逆方向(例えば、電圧を上げるなど)電流を測定して差動電流(順方向逆方向)を生成しながら、体液サンプルを刺激するために、所定の周波数の交流(AC)波が適用される。
【0161】
図3Bに示すように、制御構造152(例えば、マイクロコントローラ)は、VDetectをVREGと比較し、バイオマーカのタイプを判定する。次に、マイクロコントローラ152は、バイオ感知パラメータ(Uなど)を調整して、判定されたタイプのバイオマーカに適合させ、WE128の電圧を測定する。この実施形態では、増幅器156、抵抗器RおよびコンデンサCを含む増幅回路154は、WE128の信号を増幅するために使用される。このようにして、電気化学センサ構造104上の体液サンプル中のバイオマーカのエネルギー特性が測定され、患者の健康状態を判定するために使用される。
【0162】
および電解質の電圧がバイオマーカ測定値の精度を判定する一方で、電気化学センサ構造104の物理的および電気化学的構造もまた、バイオマーカ測定値の精度を判定する。さらに、電気化学センサ構造104の物理的および電気化学的構造はまた、防塵、電極の堅牢性、使いやすさ、製造コストなどの他の必要な特徴を判定する。
【0163】
図4A図4Dは、いくつかの実施形態における電気化学センサ構造104の物理的および電気化学的構造を示す。示されるように、電気化学センサ構造104は、電極124~132がその同じ側に堆積され、印刷され、または別様にそれに結合された基板122を備える。当業者が理解するように、電気化学センサ構造104の同じ側にすべての電極124~132を設けることは、電気化学センサ構造104の小型化を容易にし、それにより、エレガントなコネクタ設計、ユーザ取り扱いの容易さ、および体液のサンプリングのしやすさを提供する。
【0164】
識別電極130および132は、電気化学センサ構造104の近位端172(PoCデバイス102のストリップ受容ポート110に挿入するためのその端である)の周りに位置し、所定の抵抗Rで電気的に接続されている。電極RE124、CE126、およびWE128は、電気化学センサ構造104の近位端172からその遠位端174まで延在する。図4Bに示されるように、遠位側電極RE124’、CE126’、およびWE128’(それぞれ、RE124、CE126、およびWE128に対応し、接続される)は、同じ距離で横方向に離間する。電極RE124’は、電極CE126’またはWE128’の表面よりもはるかに大きな表面を有する。例えば、いくつかの実施形態では、WE128’、CE126’、およびRE124’の表面積比は、約1:1:4であってもよい。
【0165】
これらの実施形態における電気化学センサ構造104はまた、遠位側電極RE124’、CE126’、およびWE128’の周りのサンプリング領域134を除いて、電気化学センサ構造104の遠位部分(また、参照番号174を使用して識別される)を覆う疎水性中間層176を含む。疎水性中間層176は、体液サンプルをサンプリング領域134に受容し、遠位側電極RE124’、CE126’、およびWE128’と接触するための、後ろ向きのサンプリングポート(また、参照番号178を使用して識別される)を形成する遠位端開口部178を有する。電気化学センサ構造104は、疎水性中間層176の上に保護層180をさらに含み、遠位部分174(サンプリング領域134を含む)を覆う。これらの実施形態では、保護層180は、ガラスまたはプラスチックなどの好適な材料でできている。
【0166】
いくつかの実施形態では、基板122は、1つ以上のバイオマーカを検出するための1つ以上の検出素子をその上に備えた可撓性ポリイミド膜ストリップなどの可撓性ポリマー材料でできていてもよい。いくつかの実施形態では、可撓性基板122は、トラックエッチングされた膜、処理済みまたは未処理のアクリル基板などを含むがこれらに限定されない、変更または未変更ポリマー基板でできていてもよい。いくつかの実施形態では、トラックエッチングされた膜122は、多孔質ポリイミド膜であってもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、トラックエッチングされた膜122は、30%以上の多孔度を有してもよい。本明細書において、材料の多孔性は、材料の総体積に対する空隙または空の空間の体積の比率として定義される。いくつかの実施形態では、トラックエッチングされた膜122は、50%以上の多孔度を有してもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、トラックエッチングされた膜の細孔サイズ、形状、および密度を制御可能な方法で変化させることができ、その結果、選択された輸送および保持特性を有する膜を製造することができる。トラックエッチングされた膜の正確に判定された構造のために、基板122としてトラックエッチングされた膜を使用することは、従来の膜に対して明確な利点を生じさせる可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、トラックエッチングされた膜122の細孔サイズ、形状、および密度を制御可能な方法で変化させてもよく、その結果、選択された輸送および保持特性を有する膜を製造してもよい。より高い細孔密度を有する膜122は、金属層をより粗い表面とそれに結合することを可能にし、これにより、次に膜表面で成長する3次元(3D)ナノロッド(後述)のより大量の金属層を収容する能力の増加が可能になる。より多くのナノロッドは、抗体分子に利用可能なより多くの結合部位に関連し、それは次に、電気化学センサ構造104の全体的な感度を増加させる。さらに、より高い細孔密度を有する膜122はまた、その上の体液サンプルの流れを容易にする。
【0169】
図5Aは、基板122ならびに電極RE124’、CE126’、およびWE128’を示す電気化学センサ構造104の概略図である。図5Bは、基板122および電極WE128’を示す電気化学センサ構造104の概略図である。示されるように、電気化学センサ構造104は、改善された感度を達成するために、電気化学センサ構造104に結合するバイオマーカの量を増幅するために、そのサンプリング領域134において、ナノ構造感知面を備える。
【0170】
より具体的には、遠位側電極WE128’は、酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドなどの複数のナノロッド184を有するナノ構造感知面182を備える。いくつかの実施形態では、ZnOナノロッドは、(シードとして作用する)基板上の遠位側電極WE128’にZnOを堆積させ、次いで、水の沸点より低い温度で、好ましくは、ZnOナノロッドを「成長させる」ために約80℃で、コーティングされた電極を含む基板を硝酸亜鉛六水和物およびヘキサメチレンテトラミンからなる化学浴に浸漬することによって合成することができる。
【0171】
ナノロッド184は、検出素子188が高い特異性および親和性を有する特定のバイオマーカ190を検出するために、抗体、酵素、核酸アプタマーなどのような1つ以上の固定化捕捉リガンドなどの特定のタイプの検出素子188でコーティングされている。ナノロッド184はまた、対応するバイオマーカ190を捕捉して反応させるために、検出素子分子188をナノロッド184上に固定化する架橋分子186でコーティングされている。
【0172】
図6A図6Fは、これらの実施形態では、ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造104を製造するためのプロセスを示している。
【0173】
図6Aに示すように、約25μmの厚さのトラックエッチングされた多孔質ポリイミド膜が基板122として準備される。
【0174】
図6Bに示されるように、50ミリメートル(mm)の直径の露出を有するパターン化されたステンシルマスクが、電極RE124、CE126、およびWE128の場所で基板122に適用される。次に、スパッタコーティングまたは電子ビームコーティングを使用して、電極場所に25ナノメートル(nm)のCrおよび125nmのAuを堆積させ、電極RE124、CE126、およびWE128を形成する。
【0175】
図6Cに示されるように、電極WE128の場所で直径50mmの露出を有する二次ステンシルマスクが基板122に適用され、ZnOシード層192が従来のRFマグネトロンスパッタにおいて、酸素を使用せず、50ワット(W)の電力で、12標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン(Ar)プラズマで、純度99.99%のZnOを使用して、電極WE128上に選択的に堆積される。次に、堆積は、15ミリトール(mTorr)のベース圧力で約30分間行われる。
【0176】
堆積されたZnOシード層の厚さは約30±5nmであり、これは、米国ニューヨーク州プレインビューのVeeco Instruments Inc.によって提供されるDektak 8プロフィロメータなどの好適なプロフィロメータを使用して検証されてもよい。
【0177】
次に、図6Dに示されるように、ZnOナノロッドは、好適な水熱法を使用して、例えば、ZnOナノロッド184を「成長」させるための約80℃の温度および300回転/分(rpm)での30分間核形成のために、電極形成された基板112を50ミリモル(mM)の等モル濃度の硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO)およびチャンバ(HMTA)からなる化学浴に浸漬することによって、電極WE128上で合成される。次に、処理された基板112は、脱イオン水ですすがれ、空気乾燥される。
【0178】
図6Eおよび図6Fに示されるように、電極WE128へのタンパク質の固定化は、最初にジメチルスルホキシド(すなわち、DMSO)中の10mMのジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(すなわち、DSP)196を2時間使用し、次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1ミリリットルあたり1マイクログラム(μg/mL)の抗NT-pro-BNP抗体198を15分間使用することによって実施される。非結合DSPは、Thermo Scientific SuperBlock(商標)Blocking Buffer(SuperBlockは米国マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Fisher Scientific Inc.の商標である)などの好適なタンパク質ブロッキングバッファによってブロックされる。
【0179】
次に、ZnOナノロッドを有する電気化学センサ構造104が作製される。
【0180】
いくつかの実施形態では、金属酸化物ナノ構造は、電気化学的プロセスを介して1つ以上のWE電極上に金属酸化物を堆積させることによって合成されてもよい。
【0181】
図7A図7Eは、本開示のいくつかの代替の実施形態による、電気化学センサ構造104を製造するためのプロセスを示す。これらの実施形態では、ZnOナノロッドは使用されない。代わりに、表面積が増加し、したがって感度が改善されたバイオセンサを形成するために、カーボンナノチューブ、ナノサイズの金粒子などの高導電性ナノ材料206が、遠位側電極WE128’に適用される。
【0182】
図7Aに示されるように、基板122が最初に準備される。この例では、基板は、ポリ(メチルメタクリレート)(すなわち、PMMA)ならびにトラックエッチングされたポリアミド、ポリエステル、および/またはポリカーボネートでできているか、またはそれらを含む。
【0183】
PMMAは透明な熱可塑性プラスチックである。ポリカーボネートなどの他の材料と比較して、PMMAは透過率が高く、紫外線(UV)耐性が高く(したがって、時間の経過とともに黄変しない)、剛性が高くなる(したがって、引っかき抵抗が高くなる)。PMMAは、レーザ切断中に黄変したり焼けたりすることなく滑らかなレーザ切断に好適であり、劣化することなく再成形し、かつリサイクルできる。比較として、ポリカーボネートはレーザ切断中に簡単に黄変し、焼ける可能性がある。PMMAは、研磨も簡単である(例えば、怪我を防ぐために滑らかな縁を作成するため)。さらに、PMMAは、ポリカーボネートなどの他の材料と比較して費用効果が高い。
【0184】
図7Bに示されるように、第1のマスクを基板122に適用して、電極の場所の露出のみを行う、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着(PVD)、スパッタコーティング、電子ビームなどの好適な蒸着方法を使用して、電極WE128/128’、CE126/126’、およびRE124/124’は、Cr202の層を基板122上に堆積させ、Au204の層をCr層202上に堆積させることによって、基板122上に形成される。
【0185】
図示されていないが、識別電極130および132などの他の電極もまた、このステップで形成されてもよい。
【0186】
電極の堆積後、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、堆積された電極の特性検査を行うことができる。
【0187】
図7Cに示されるように、WE128/128’は、表面積が増加し、したがって感度が改善されたバイオセンサを形成するために、導電性ナノ材料206の層をAu層204上に適用することによって機能化される。このステップでは、CVD、PVD、スパッタコーティング、電子ビームなどの好適な堆積方法が、遠位側電極WE128’のみを露出する電極堆積基板122に適用された第2のマスクとともに使用されてもよい。
【0188】
ナノ材料層206の特性検査は、SEM、エネルギー分散型X線分析器(EDX)、透過型電子顕微鏡(TEM)、AFMなどを使用することによって実施されてもよい。
【0189】
図7Dに示すように、免疫グロブリンまたは抗体208は、検出素子の層を形成するWE128’のナノ材料層206に固定化され、抗体濃度および抗体と抗原との間の相互作用時間の最適化が実施される。次に、特性検査は、SEMおよび/またはAFMを使用して実施されてもよい。
【0190】
図7Eに示されるように、好適な生体材料または遮断剤212が抗体208にコーティングされている。
【0191】
次に、疎水性中間層176が電極124’、126’、および128’の周りに適用され、サンプリング領域134を形成する。電気化学センサ構造104の製造は、保護層180が疎水性中間層176に結合された後に完了する。
【0192】
これらの実施形態では、基板112は、非多孔性PMMA膜でできている。しかし、その上に堆積された高導電性ナノコンポジットは、トラックエッチングされた多孔質膜と比較して、抗体分子に利用可能な十分な結合部位を提供する。
【0193】
当業者は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの他の好適な材料が、他の実施形態において基板112を作製するために使用され得ることを理解するであろう。
【0194】
上記の実施形態では、電気化学センサ構造104は、それに関連付けられたバイオマーカのタイプを示すための識別電極130および132を備える。電気化学センサ構造104が挿入されるか、または別様にPoCデバイス102に結合されると、PoCデバイス102は、挿入された電気化学センサ構造104に関連付けられたバイオマーカのタイプをチェックする。PoCデバイス102が、電気化学センサ構造104がそれと互換性がないと判定した場合、PoCデバイス102は、警報または警告(例えば、スクリーン106上のビープ音および/または警告)を提示してもよい。
【0195】
図8に示されるいくつかの代替の実施形態では、電気化学センサ構造104は、識別電極を備えない。図8に示される例では、電気化学センサ構造104は、3つの電極RE124、CE126、およびWE128のみを備える。これらの実施形態では、携帯型電気化学センサシステム100は、以下に説明するように、電気化学センサ構造104が検出するのに好適なバイオマーカのタイプを判定するための他の好適な方法を使用してもよい。
【0196】
例えば、図9Aに示される一実施形態では、PoCデバイス102は、デバイスの背面に組み込まれたRFIDタグアンテナ222およびRFIDリーダ224を備える。同様に、電気化学センサ構造104を収容する運搬バイアル226(ストリップバイアルとも称される)は、RFIDタグアンテナ228と、ストリップバイアル226内に電気化学センサ構造104に関連付けられたバイオマーカのタイプの情報を記憶するRFIDチップ230と、を備える。PoCデバイス102は、RFIDリーダ224を使用して、ストリップバイアル226のRFIDチップ230内の情報を読み取り、電気化学センサ構造104が検出できるバイオマーカのタイプを判定してもよい。
【0197】
患者が新しい検査を開始する前に毎回、PoCデバイス102は、電気化学センサ構造104の識別情報を取得するために、運搬バイアル226をPoCデバイス102の近くに配置するように患者に求めてもよい。PoCデバイス102においてRFIDリーダによって受信された情報に基づいて、PoCデバイス102は、電気化学センサ構造104がそれと互換性があるかどうか(すなわち、同じバイオマーカを検出するために、PoCデバイス102および電気化学センサ構造104が互換性があるかどうか)を判定する。PoCデバイス102が、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104が互換性がないと判定した場合、PoCデバイス102は、警報または警告(例えば、スクリーン106上のビープ音および/または警告)を提示してもよい。
【0198】
いくつかの実施形態では、警報または警告を提示する代わりに、PoCデバイス102は、ストリップバイアル226から検出された情報に基づいて、ポテンシオスタット回路の電気パラメータを調整して、正確なバイオマーカ検出のために、ストリップバイアル226に含まれる電気化学センサ構造104のタイプに適合させてもよい。
【0199】
別の実施形態では、各電気化学センサ構造104は、それに関連付けられたバイオマーカのタイプの情報を記憶するRFIDチップを備えてもよい。PoCデバイス102が、電気化学センサ構造104が互換性がないと判定した場合、PoCデバイス102は、警報または警告(例えば、スクリーン106上のビープ音および/または警告)を提示してもよい。代替的に、PoCデバイス102は、電気化学センサ構造104から検出された情報に基づいて、そのポテンシオスタット回路の電気的パラメータを調整して、正確なバイオマーカ検出のために、それに適合させてもよい。
【0200】
図9Bに示される一実施形態では、PoCデバイス102は、一次元バーコードをスキャンするための一次元バーコードスキャナなどの撮像構成要素232を備える。同様に、ストリップバイアル226は、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104に関連付けられ、かつそれを使用することによって分析可能なバイオマーカの識別情報またはタイプを記憶する、符号化する、または別様に示す一次元バーコード234を含む。
【0201】
PoCデバイス102は、バーコードスキャナ232を使用して、ストリップバイアル226上の一次元バーコード234を読み取り、電気化学センサ構造104を使用することによって分析可能なバイオマーカのタイプを判定してもよい。PoCデバイス102が、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104が互換性がないと判定した場合、PoCデバイス102は、警報または警告(例えば、スクリーン106上のビープ音および/または警告)を提示する、または、上記のポテンシオスタット回路の電気的パラメータを調整してもよい。
【0202】
別の実施形態では、各電気化学センサ構造104は、それに関連付けられたバイオマーカのタイプを示す一次元バーコード(例えば、サンプリング領域134の反対側のその「下(bottom)」側)を含んででもよい。
【0203】
一実施形態では、PoCデバイス102は、マトリックスバーコードまたはQRコードなどの二次元バーコードをスキャンするためのスキャナまたは撮像構成要素を備える。同様に、ストリップバイアル226は、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104に関連付けられたバイオマーカのタイプを示すQRコードを含む。PoCデバイス102は、QRコードスキャナを使用して、ストリップバイアル226上のQRコードを読み取り、電気化学センサ構造104が検出できるバイオマーカのタイプを判定してもよい。PoCデバイス102が、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104が互換性がないと判定した場合、PoCデバイス102は、警報または警告(例えば、スクリーン106上のビープ音および/または警告)を提示する、または、上記のポテンシオスタット回路の電気的パラメータを調整してもよい。
【0204】
別の実施形態では、各電気化学センサ構造104は、それに関連付けられたバイオマーカのタイプを示すQRコードを(例えば、その背面に)含んでもよい。
【0205】
いくつかの実施形態では、PoCデバイスは、赤外線スキャナを有してもよく、赤外線スキャナを使用してそのストリップ受信ポート110に挿入された電気化学センサ構造104のタイプを認識して、電気化学センサ構造104が記憶される運搬バイアル上に位置する一次元バーコードまたはQRコードを読み取ってもよい。
【0206】
図10に示される一実施形態では、PoCデバイス102は、図1Aおよび図1Bに示されるものと同様である。しかしながら、この実施形態におけるPoCデバイス102は、スクリーンを備えない。代わりに、PoCデバイス102は、スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータなどのホストコンピューティングデバイスに物理的および電気的に結合するためのユニバーサルシリアルバス(USB)ポート(例えば、マイクロUSBポートまたはUSBタイプCポート)などの接続ポート242を備える。ホストコンピューティングデバイスは、タスクを実行するためにPoCデバイス102を制御し、かつそれと協調するための対応するアプリケーションプログラムを実行してもよい。
【0207】
例えば、図11に示されるように、ストリップバイアル226は、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104に関連付けられたバイオマーカのタイプを示すQRコード244を含む。PoCデバイス102は、スマートフォン246に結合され、スマートフォン246のカメラ248を使用して、ストリップバイアル226上のQRコード244を読み取り、電気化学センサ構造104が検出できるバイオマーカのタイプを判定する。
【0208】
図12に示されるような実施形態では、ストリップバイアル226は、ストリップバイアル226内の電気化学センサ構造104に関連付けられたバイオマーカのタイプを示す一次元バーコード234を含む。PoCデバイス102は、スマートフォン246に結合され、スマートフォン246のカメラ248を使用して、ストリップバイアル226上の一次元バーコード234を読み取り、電気化学センサ構造104が検出できるバイオマーカのタイプを判定する。
【0209】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、ポテンシオスタット回路および/または検出回路のみを含んでもよく、スマートフォンなどのコンピューティングデバイスに機能的に結合されてもよい。これらの実施形態では、PoCデバイス102は、ユーザに情報を表示するために必要な計算能力のために、また、必要であれば、QRコードや一次元バーコードなどの外部入力をスキャンするために、スマートフォンのプロセッサ、スクリーン、入力部(例えば、タッチスクリーン、物理ボタン、仮想ボタンなど)およびカメラを活用してもよい。
【0210】
いくつかの実施形態では、携帯型電気化学センサシステム100は、図13に示されるようなストリップアダプタ252を備える。ストリップアダプタ252は、PoCデバイス102のストリップ受容ポート110に挿入するのに好適な物理的および電気的仕様を備えたストリップインサート254を備える。ストリップインサート254は、電気配線258を介して、図13に示されるストリップ受信機256Aおよび256Bなどの複数のストリップ受信機256に電気的に接続されている。各ストリップ受信機256A、256Bは、対応するタイプの電気化学センサ構造104A、104Bを受信するように構成されている。これらの実施形態では、異なるタイプの電気化学センサ構造104Aおよび104Bは、異なる寸法を有してもよく、異なる電極構成を含んでもよい。
【0211】
例えば、図14に示されるように、電気化学センサ構造104Aは、その第1の側面262から第2の側面264まで、そのすべて「上(top)」側に3つの電極RE124、CE126、およびWE128を備える。しかしながら、電気化学センサ構造104Bは、その第1の側面262から第2の側面264まで、3つの電極WE128、RE124、およびCE126を含み、電極WE128およびCE126は「上(top)」側にあり、電極RE124は、その「上(top)」側とは反対の「下(bottom)」側にある(破線を使用して表されている)。
【0212】
したがって、図14に示されるように、ストリップ受信機256Aは、対応する「上(top)」側に、その電極WE128、RE124、およびCE126を正しく係合させるための電気化学センサ構造104Aの電極124、126、および128と同じ順序で配設された3つの電気端子124”、126”、および128”を有する。
【0213】
ストリップ受信機256Aは、電気化学センサ構造104Bの電極124、126、および128と同じ順序で配設された3つの電気端子124”、126”、および128”を有し、電気端子126”および128”が、対応する「上(top)」側にあり、電気端子124’’がその電極WE128、RE124、およびCE126に正しく係合させるために、対応する「下(bottom)」側にある。
【0214】
したがって、ストリップアダプタ252は、PoCデバイス102が、異なる製造業者によって製造された電気化学センサ構造104などの異なる仕様に従って製造された異なるタイプの電気化学センサ構造104に適応することを可能にする。
【0215】
いくつかの実施形態では、ストリップアダプタ252は、ストリップインサート254を備えない。むしろ、ストリップアダプタ252は、検査データをPoCデバイス102に転送するためにPoCデバイス102に無線で結合するための無線通信モジュールを備える。
【0216】
上記の実施形態では、PoCデバイス102は、1つのストリップ受容ポート110のみを備えるが、いくつかの代替の実施形態では、PoCデバイス102は、複数のストリップ受容ポート110を備えてもよい。複数のストリップ受容ポート110は、同じ物理的および電気的仕様を有してもよい。代替的に、複数のストリップ受容ポート110のうちの少なくともいくつかは、上記と同様の方法で、異なる電気化学センサ構造104を受容するための異なる物理的および電気的仕様を有してもよい。
【0217】
上記の実施形態では、WE128’、CE126’、およびRE124’の表面積比は、約1:1:4であってもよいが、いくつかの代替の実施形態では、WE128’、CE126’およびRE124’の表面積比は、電気化学センサ構造104上で使用されるバイオマーカまたは抗体のタイプに基づいて、または標的とされる分析物によって判定されてもよい。
【0218】
いくつかの代替の実施形態では、WE128’、CE126’、およびRE124’の表面積比は、電気化学センサ構造のナノ構造感知面に適用される検出素子の量に基づいて判定されてもよい。
【0219】
いくつかの代替の実施形態では、電極WE128’、CE126’、およびRE124’の表面積とサンプル領域134の表面積との間の比は、電気化学センサ構造104が特異的である検出素子またはバイオマーカの電気化学的特性に基づいて判定されてもよい。
【0220】
いくつかの実施形態では、サンプリングポート178の断面積とその高さとの間の比は、電気化学センサ構造104が特異的である検出素子またはバイオマーカの電気化学的特性に基づいて判定されてもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、電気化学的感知構造の検出素子および幾何学的パラメータは、NT-pro-BNPを検出するために判定される。
【0222】
いくつかの実施形態では、ナノ構造感知面は、分析物の結合に対して高い親和性および特異性を有する検出素子でコーティングされてもよい。
【0223】
いくつかの実施形態では、ナノ構造感知面は、NT-pro-BNPに結合するための高い親和性および特異性を有する検出素子でコーティングされてもよい。
【0224】
いくつかの実施形態では、電気化学センサシステム100は、検出可能なバイオマーカを有する任意の流体であり得るサンプル流体を分析するために使用されてもよい。
【0225】
いくつかの実施形態では、1つ以上の携帯型PoCデバイス102は、患者の健康データを評価し、軽微な健康問題を除外し、アクセス可能な個別の健康管理アドバイスを患者に提供し、深刻な患者固有の健康上の懸念を医療提供者に伝達するために、コンピュータまたはモバイルデバイス上で実行されるソフトウェアまたはファームウェアアプリケーションを介してアクセス可能な人工知能(AI)ベースのプラットフォームを有するコンピュータネットワークシステムなどの健康監視コンピュータネットワークシステムで使用されてもよい。AIベースのプラットフォームは、ニューラルネットワークを利用して、選択された様々なソースから入力された健康データを処理し、かつ分析し、個々の患者の健康状態の個別評価を生成することができる。このような健康監視システムは、医師と患者の両方が通信および監視ツールとして使用でき、医療へのアクセスを合理化し、医療リソースへの負担を軽減できる。
【0226】
いくつかの実施形態では、PoCデバイスは、電気化学センサ構造のサンプル領域上の体液サンプルの分析から収集されたデータを送信するための、イーサネット、WI-FI(登録商標)(WI-FIは、米国、テキサス州、オースティンのWi-Fi Allianceの登録商標である)、BLUETOOTH(登録商標)(BLUETOOTHは、米国、ワイオミング州、カークランドのBluetooth SIG Inc.登録商標である)、ZIGBEE(登録商標)(ZIGBEEは、米国、カリフォルニア州、サン・ラモンのZigBee Alliance Corp.の登録商標である)、3G、4G、および/または5G無線移動通信技術などの好適な有線または無線通信技術を使用して、AIプラットフォームに接続するための通信モジュールを備えてもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、電気化学センサ構造のサンプル領域に適用された流体サンプルからデータの有効な読み取り値を取得する場合にのみ、AIプラットフォームにデータを送信することができる。
【0228】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、1つ以上の測位モジュールなどの他の好適な周辺構成要素をさらに備えてもよい。
【0229】
いくつかの実施形態では、1つ以上の測位モジュールは、1つ以上の全地球航法衛星システム(GNSS)構成要素(例えば、米国の全地球測位システム(GPS)で動作するための1つ以上の構成要素、グローバル’naya Navigatsionnaya Sputnikovaya Sistema(ロシアのGLONASS)、欧州連合のガリレオ測位システム、および/または中国の北斗システム)であってもよい。
【0230】
ユーザの同意後、PoCデバイス102は、1つ以上の測位モジュールを使用して、ユーザの地理空間情報として使用することができる場所、都市、国などの地理空間情報を判定することができる。当業者が理解するように、地理空間データは、ユーザの様々なバイオマーカ情報に状況的文脈を提供し、したがって、患者の健康状態の全体的な評価を提供する。
【0231】
得られた地理空間情報は、Wi-Fi、3G、4G、5Gセルラー通信技術などの好適な通信技術を介して、PoCデバイス102からサーバに送信することができる。
【0232】
サーバは、PoCデバイス102から収集された地理空間情報を、心不全の有病率および発生率、医療資源利用の理解、再入院の頻繁な領域、心臓の健康に対する低い社会経済的状態の影響などの関連分野の研究のため、また、医療システムと政策立案者を支援するためのクリニカルパスの開発を支援するために使用することができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、ユーザの同意に基づいて、地理空間またはジオフェンシング追跡を(サーバの協調により)PoCデバイス102に実装して、患者の履歴、現在の患者の状態、および現在の患者の場所を第1の応答者に委任することができる。
【0234】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、他の健康監視デバイスと協調することができ、かつ/またはより包括的な健康監視ソリューションを提供するための追加の健康監視機能を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、GNSS統合PoCデバイス102を使用して、心臓イベントを患っている、または有するリスクが高い患者を追跡することができる。断続的ではないにしても一定のバイオマーカレベルの監視を必要とするHFのような慢性状態の場合、代償不全の場合(定常状態から慢性的な健康状態に至るまで)、「患者の治療への扉」時間が非常に重要になる。このデバイスは、都市、地方、遠隔地で患者の正確な場所を提供することにより、「イベントから治療まで」の時間を短縮する。
【0235】
これらの実施形態では、地理空間技術は、PoCデバイス102にとってミッションクリティカルであり得る。地理情報学が提供する主な価値提案は、突然の心臓イベントが発生した場合のジオロケーションとの緊急通信である。例えば、患者が応答しているが電話をかけることができない場合、患者は、PoCデバイス102のSOSボタンを押すことができる。次に、自動テキストレポートなどの緊急通信が1つ以上の緊急サービスに送信される。
【0236】
当業者は、他の実施形態も容易に利用可能であることを理解するであろう。
【0237】
例えば、図15Aは、本開示のいくつかの実施形態による、電気化学センサ構造104を示している。これらの実施形態では、電気化学センサ構造104は、これらの実施形態の電気化学センサ構造104が2つのWE128-1および128-2を備え、間にRE124が中間にあり、CE126がWE128-1および128-2の周りに延在することを除いて、上記のものと同様である。
【0238】
図15Bは、本開示のさらにいくつかの実施形態による電気化学センサ構造104を示している。これらの実施形態では、電気化学センサ構造104は、サンプリング領域134内のCE126が滑らかに通過するトレースを含み、2つのWE128-1および128-2が楕円形の電極端子を含むことを除いて、図15Aに示されるものと同様である。
【0239】
図15Bは、本開示のさらにいくつかの実施形態による電気化学センサ構造104を示している。これらの実施形態では、電気化学センサ構造104は、これらの実施形態の電気化学センサ構造104が、RE124および6つのWE128がCE126の円に封入された楕円形のCE126を含むことを除いて、図15Aに示されるものと同様である。楕円形のCE126は、カウンター配線CW302(両方に重なるドットによって示される)にのみ電気的に接続され、電気化学センサ構造104は、他の電極(例えば、RE124およびWE128)からのCE126を電気的に絶縁するための電極構成要素の間に挟まれた分離層または絶縁層(図示せず)を備える。代替的に、カウンター配線CW302は、RE124およびWE128を有する側とは反対側の基板の側にあってもよい。
【0240】
上記の電気化学センサ構造104の電極は、導電性インクおよび導電性または半導体金属をそれぞれ使用するスクリーン印刷またはスパッタ堆積プロセスを介して製造することができる。
【0241】
図17Aは、スクリーン印刷された電極の例示的な製造プロセス310の概略図を示している。図17Bは、スパッタ電極の例示的な製造プロセス340の概略図を示している。これらの例では、3つ以上の電極(ベース電極と表示される)が、処理された(すなわち、変更された)または未処理の(すなわち、変更されていない)ポリマー基板332上に製造され、続いてスクリーン印刷される。
【0242】
図17Aおよび図17Bに示されるように、基板332が最初に準備される(図17A、ステップ312;図17B図342)。次に、ベース電極(例えば、CE、WE1、WE2、およびRE)は、チタン、白金、金、クロム、銀などの導電性または半導電性材料を使用して、厚さが変化する他の素子を有する他の要素単一の素子または層として製造される(図17A、ステップ314;図17B図344)。
【0243】
ベース電極アセンブリは、100nmまでの金属酸化物(例えば、ZnO)層でスパッタコーティングされ得る(図17A、ステップ316;図17B図346)。高度に組織化された金属酸化物ナノ構造は、電気化学的または熱水的にシード層の上に製造することができる(図17A、ステップ318;図17B図348)。次に、捕捉リガンドは、特定の分析物に対して親和性を有して、新たに合成されたナノ構造の表面上に架橋され得る(図17A、ステップ320;図17B図350)。干渉成分の非特異的結合を回避するために、一般的なブロッカーまたは新規のブロッカーを感知面に統合することができる(図17A、ステップ322;図17B図352)。
【0244】
製造された電極およびナノ構造構成要素の表面形態および粗さを特徴づけるために、SEM、プロフィロメトリー、TEMおよびAFM技術を使用することができる。サイクリックボルタンメトリー、アンペロメトリー、およびEISを含むがこれらに限定されない様々な電気化学的手法を利用して、電気化学的データを取得し、標準を設定することができる。さらに、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびX線回折(XRD)を使用して、当該アセンブリの元素組成を分析することができる。
【0245】
図18A図18Fは、堆積プロセスの進行を示し、図18Aは、裸の電極362を備えた検査ストリップを示し、図18Bは、電極362上のナノロッド堆積364を示し、図18Cは、ナノロッド堆積364上に堆積された架橋剤366を示し、図18Dは、架橋剤366上に堆積された遮断剤368を示し、図18Eは、電極362上に堆積された抗体370を示している。
【0246】
図18Fは、堆積または固定化されたバイオセンサ、有機化学物質、バイオリンカーおよびナノロッドの品質を含む電極支持検査ストリップの品質の測定を示すグラフであり、横軸は実数インピーダンス測定を表し、垂直軸は虚数インピーダンスの測定値を表す。曲線372~378の各々は、異なる表面条件下でのストリップ104のEIS測定値から得られる。曲線372は、抗体370、遮断剤368、架橋剤366、および電極362に固定化されたナノロッド層364を含む、図18Eに示される理想的な固定化条件を表す。
【0247】
図19は、本開示のいくつかの実施形態による、複数の電極(例えば、CE、RE、および2~6個のWE)のアセンブリ382を有する電気化学センサ構造104の概略平面図である。電気化学センサ構造104は、毛細管効果を使用して流体サンプルをそれに隣接する異好性血漿分離成分(HF-PSC)ユニット386に導入するための1つ以上の導入チャネル384を備える。HF-PSCユニット386は、電極アセンブリ382に近接しており、電極アセンブリ382から離間しており、それらの間にギャップがあり、分析物ドロップチャンバ388を形成している。
【0248】
1つ以上の導入チャネル384は、基板112上に刻印され得るか、または代替的に導入チャネル384を形成するその中にギャップを備えた基板112上にコーティングされた好適な材料によって形成され得る。1つ以上の導入チャネル384は、任意の好適な幾何学的形状または寸法を有し得る。図19に示される例では、電気化学センサ構造104は、サンプリング領域134の縁に隣接し、HF-PSCユニット386に向かって先細になる開口部を有する1つの漏斗形状の導入チャネル384を備える。
【0249】
図20に示されるように、体液402が導入チャネル384に滴下されるとき、これは、効率的な流れ力学のために滴下された体液402の表面張力特性を利用し、したがって、定量化アッセイに必要な体積を低減する。
【0250】
導入チャネル384は、滴下された体液402を注ぎ、分析物は、他の流体成分と共に、HF-PSCユニット386を通って移動する。HF-PSCユニット386は、流体402の不要な干渉成分を濾過して除去し、別様にアッセイにおいて偽陽性または偽陰性の結果を誘発し得る干渉流体成分を捕捉するか、または保持するための特定のブロッカー構成要素が埋め込まれた分離器構成要素である。HF-PSCユニット386は、感度および選択を向上させるために干渉流体成分を捕捉するように変更し、かつ/または処理することができる。様々な実施形態では、HF-PSCユニット386は、様々な細孔サイズを有する対称および/または非対称の細孔を含み得る。いくつかの実施形態では、HF-PSCユニット386は、代替的に、アッセイの適用に応じて、未処理であり得る。
【0251】
次に、HF-PSCユニット386で得られた濾過された流体サンプルは、層状ナノ構造および特定の分析物(WE、CEおよびRE)のための架橋捕捉リガンドを有するまたは伴わないベース電極を備える電極アセンブリ382に接触するために、分析物ドロップチャンバ388に入る。様々な実施形態では、WE電極の数は、アッセイのタイプおよびアッセイの多重化に応じて変化し得る。
【0252】
図21は、2~6個の作用電極システムの電極アセンブリのための体液からの分析物の定量化のための作用スキーマ420を示し、所望の捕捉リガンドで埋め込まれ、過飽和された作用電極の1つ、体液成分の埋め込まれた過飽和リガンドとの相互作用、および分析物の定量化を示す簡略化された概念的なEISグラフを示す。
【0253】
示されるように、WE128-2などのWE128の1つは、捕捉リガンドで過飽和であり、他方のWE128-1は、類似または異なる捕捉リガンドの所定の濃度で架橋される(ステップ422)。定量化値は、必要なエンティティと干渉するエンティティの両方の標準曲線を定義する、以前に実行された実験から導出される。次に、PoCデバイス102は、EIS値(ステップ422および424で得られる)に関して最終出力値を計算するための数学的モデルを使用して、当該分析物の実際のアッセイ値を以下のように判定する。
分析物の濃度=RctWE2-RctWE1
ここで、RctWE1およびRctWE2がそれぞれ電極WE1とWE2との電荷電子移動に抵抗がある(RCTはまた、「電荷移動抵抗(charge transfer resistance)」と表される)。
【0254】
図19図21に示される実施形態では、電気化学センサ構造104は、2つのWE128を含み、一方のWEは、捕捉リガンド(過飽和WEとして表される)で過飽和され、他方のWEは、類似または異なる捕捉リガンド(実験WEと表される)の所定の濃度で架橋される。分析物の濃度は、過飽和WEと実験WEのRCTの差に基づいて計算される。
【0255】
電気化学センサ構造104が3つ以上のWE128を含むいくつかの実施形態では(例えば、図16に示されるように)、1つ以上のWEは過飽和WEであるように構成され得、他のWEは実験WEであるように構成され得る。分析物の濃度は、最尤推定量、最小二乗推定量、最小平均二乗誤差(MMSE)推定量などの好適な統計的方法を使用して、過飽和WEと実験WEのRCTの差に基づいて計算される。
【0256】
図22は、体液分析のための電気化学センサシステム100のモジュール構造440を示すブロック図である。示されるように、分析物は、分析物入口442(例えば、上記のような血液サンプルのための毛細管流入)を介して電気化学センサ構造104に入り、その分析物処理モジュール444によって処理され、これは、血液と複合体との混合をもたらす基板を通して与えられ得る。このような処理は、効率的な下流処理を可能にする複合体を含む最終的な血漿分離をもたらす。
【0257】
分析物処理モジュール444の出力は、電気化学モジュール448と、蛍光モジュール450と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モジュール452と、吸光度モジュール454と、を含む、PoCデバイス102のマルチモジュールセットアップ446に送られ、いくつかの実施形態では、単一の小型化されたモジュールに組み合わせるか、または別様に統合することができる。ここで、マルチモジュールセットアップ446は、ユーザが、血液分析のためにモジュール448~454のうちの好適な1つに切り替えることを可能にする。例えば、NT-pro-BNP検出は、電気化学モジュール448を必要とし、蛍光モジュール450およびPCRモジュール452は、アプタマーベースのリガンド認識を可能にするために一緒に作動し得、代謝産物パネルは、吸光度モジュール454を必要とし得る。
【0258】
検量線モジュール456は、PoCデバイス102のメモリ、または検量線(すなわち、較正されたデータセット)を記憶する安全な中央サーバ上のメモリであり得る。いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、中央サーバと通信して、ストリップ104のロット/バッチに関連する検量線を取得することができる。
【0259】
いくつかの実施形態では、スクリーン印刷技術を使用して、電極の配設を作成し、ストリップのロット/バッチのインピーダンス符号化された認識をもたらすことができる。このコードを使用して、PoCデバイス102は、分析物分析の前に正確な検量線を確立するために中央サーバと通信することができる。
【0260】
マルチモジュールセットアップ446からの生データは、メモリ456に安全に送信され、そこに記憶された検量線と比較されて、適切な単位で生物学的に関連する測定値(例えば、EISを通じて得られたバイオマーカ濃度)が得られる。次に、得られた測定値は、PoCデバイス102のディスプレイ458に表示され、かつ/またはBLUETOOTH(登録商標)などの好適な有線または無線通信技術を介して関連するモバイルデバイス460(例えば、ユーザのモバイルデバイスおよび/または医師のモバイルデバイス)に送信され、その上に表示される。
【0261】
いくつかの実施形態では、EISを介して得られた値はまた、固定化されたバイオセンサの有効性を診断するために使用され得る。例えば、一実施形態では、EISスイープを実行して、流体サンプルをそこに適用する前に、基板の「健康(health)」を予測することができる。
【0262】
図23は、本開示のいくつかの実施形態による、血液分析のためのPoCデバイス102のモジュール構造480を示すブロック図である。示されるように、PoCデバイス102は、ヒト血液サンプル中のNT-pro-BNPバイオマーカを検出するためのNT-pro-BNP検査ストリップ482、グルコース検査ストリップ484、クレアチニン検査ストリップ486、および他の好適なストリップ(例えば、電解質、トロポニンなどを検査するためのストリップ)などの、血液分析のための複数の電気化学センサ構造または使い捨てストリップ104と共に使用され得る。ストリップ104(例えば、ストリップ482~486)は、PoCデバイス102とインターフェースするためのユニバーサルストリップアダプタを有する。
【0263】
PoCデバイス102は、プログラム可能なACポテンシオスタット回路488およびプログラム可能なDCポテンシオスタット回路490を含み、これらは、電圧制御ならびにデータの記憶および分析を含み、メモリ494および通信モジュール496(例えば、Bluetoothモジュール)などの必要な構成要素を有する制御回路492(例えば、Arduinoマイクロコントローラ)によって制御される。PoCデバイス102はまた、発光ダイオード(LED)ディスプレイ498(または他の好適なディスプレイ)および様々な構成要素に電力を供給するためのバッテリ500を備える。
【0264】
検査のタイプに基づいて、PoCデバイス102は、プログラム可能なACポテンシオスタット回路488またはプログラム可能なDCポテンシオスタット回路490を検査のために自動的に使用することができる。検査結果は、分析のために制御回路492に送信され、そのメモリ494に記憶される。分析結果は、LEDディスプレイ498に表示され、かつ/または安全に、かつ無線でモバイルデバイス460に送信され、その上に表示される。
【0265】
いくつかの実施形態では、流体流れチャネルは、電極システムと一致して機能し得る。従来技術のシステムは、複数の電極を使用して、流れチャネル内に存在する流体の量を評価してきた。ストリップ設計を小型化するために、チャネル形状と電極設計の組み合わせが使用される。後でより詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、チャネルまたはマイクロチャネルは、入口ポートを介してアクセスされ得る。入口ポートの反対側では、チャネルの断面全体にくびれがある場合がある。関連する実施形態では、基板は、流体の流れを妨げる疎水性であるように処理することができる。電極からの電流の変化を測定することにより、流体の流れの安定性を評価することができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネルの寸法は、流体の完全な充填を可能にするように所定の体積を得るために事前に判定されている。
【0267】
図24Aおよび図24Bは、本開示のいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域内で受容される流体サンプルの流れの安定性および量の制御を伴う、電気化学センサ構造104のハイブリッド設計を示す。
【0268】
図24Aに示されるように、電気化学センサ構造104は、分析物ドロップチャンバ388の中または周囲に入口または入口開口部512を有し、分析物ドロップチャンバ388から電極領域に延在する1つ以上の毛細管チャネル510(マイクロチャネルまたはマイクロ流体チャネルとも称される)を備える。
【0269】
1つ以上の毛細管チャネル510は、基板122上に刻印され、または別様に形成することができ、流体サンプルに対して親水性であり得る。各マイクロチャネル510は、流体体積要件に基づいて事前的議された入口512と拡張部514との間の距離を伴う、実質的に急激な拡張部514(すなわち、幅および/またはその断面積の実質的に急激な増加)を備える。
【0270】
WEなどの電極518は、入口512と拡張部514との中間である場所でマイクロチャネル510まで延在し(すなわち、電極518は、入口512の下流であり、拡張部514の上流である)、その中の流体サンプルと直接相互作用することができる。したがって、電極518は、DCポテンシオスタット回路、ACポテンシオスタット回路、またはそれらの組み合わせを介してサンプルを検査するために使用され得る。
【0271】
体液のサンプリング中、流体の流れは、入口512からマイクロチャネル510に入り、そこに流れる。図24Aは、電極518に接近するフローフロント516を示している。図24Bは、電極518を通過するフローフロント516を示している。
【0272】
急激な拡張部514およびそれに関連付けられた表面張力効果は、マイクロチャネル510内の流体のフローフロントを妨げ、したがって、流体の体積を制御する。フローフロント516が電極518に接近していないとき、電極518によってスキャンされるインピーダンスは低い。フローフロント516が電極518を通過するとき、電極518によってスキャンされるインピーダンスは着実に増加し得、それによってフローフロント516の通過を示す。
【0273】
いくつかの実施形態では、急激な拡張部514およびそれに関連付けられた表面張力効果もまた、流体速度を制御するために使用され得る。
【0274】
電極518は、DC電圧を電極518に印加し、電流変化の速度を監視するDCポテンシオスタット回路490(図23を参照)に電気的に結合することができる。高インピーダンス測定(例えば、所定のインピーダンス閾値よりも大きい)で電流の速度がゼロになる場合、それは、マイクロチャネル510がその中に血液を受容するが、流れがないことを意味する。電流の速度が、所定の期間を超えて高インピーダンス測定(例えば、所定のインピーダンス閾値よりも大きい)でゼロ以外である場合、それは、マイクロチャネル510内の血液の量がストリップ検査に対して十分に許容可能であることを意味する。
【0275】
図25A図25Cは、本開示のさらにいくつかの実施形態による、そのサンプリング領域で受容される流体サンプルの流れの安定性および体積を制御する電気化学センサ構造104を示す。
【0276】
これらの実施形態における電気化学センサ構造104は、図24Aおよび24Bに示されるものと同様であり、分析物ドロップチャンバ388内またはその周囲に入口または入口開口512を有し、分析物ドロップチャンバ388から電極領域に延在する1つ以上のマイクロチャネル510を備える。1つ以上の毛細管チャネル510は、基板122上に刻印され、または別様に形成することができ、流体サンプルに対して疎水性であり得る。
【0277】
示されるように、各マイクロチャネル510は、流体体積を制御するための実質的に急激な先細り部分514’(すなわち、幅および/またはその断面積の実質的に急激な減少)を備える。入口512と先細り部分514’との間の距離は、流体量要件に基づいて事前に判定されている。
【0278】
WEなどの電極518は、入口512と先細り部分514’との中間である場所でマイクロチャネル510まで延在し(すなわち、電極518は、入口512の下流であり、先細り部分514’上流である)、その中の流体サンプルと直接相互作用することができる。電極518は、DCポテンシオスタット回路、ACポテンシオスタット回路、またはそれらの組み合わせを介してサンプルを検査するために使用され得る。
【0279】
図26は、本開示のいくつかの実施形態による、体液分析のためにPoCデバイス102によって実行されるプロセス600を示すフローチャートである。示されるように、PoCデバイス102の信号生成器602は、マルチプレクサ/デマルチプレクサ(マルチプレクサ/デマルチプレクサ)604を介して、信号(例えば、AC信号)をWE606~612に出力する。WE606~612の信号は、マルチチャネル電流電圧変換器614に供給され、電圧信号を、マルチプレクサ/デマックス616を介してDCポテンシオスタット回路618またはACポテンシオスタット回路620のいずれかに出力する。DCポテンシオスタット回路618および/またはACポテンシオスタット回路620の出力は、データ分析モジュール622によって分析される。データ分析モジュール622の分析結果は、出力モジュール624で読み取られ、表示され、および/または記憶される。
【0280】
図27は、本開示のいくつかの実施形態による、体液分析のためにPoCデバイス102によって実行されるプロセス700を示すフローチャートである。プロセス700は、ユーザが使用する検査のタイプおよびストリップ104を選択したときに開始する(ステップ702)。ストリップ104がPoCデバイス102に挿入されると、PoCデバイス102は、基板の品質およびバイオセンサ構成要素の完全性についてストリップ104を診断する(ステップ704)。検査がインピーダンスベースである場合、PoCデバイス102は、検査中のバイオマーカに適したインピーダンス範囲にそれ自体を自動的に較正する(ステップ706)。PoCデバイス102はまた、ストリップ104のタイプをチェックし、ストリップ104に適合させるためにそのパラメータを調整する(ステップ708)。
【0281】
PoCデバイス102は、インピーダンス、電圧、および電流の組み合わせを使用して、ストリップ104を検査することができる。PoCデバイス102が,トリップ104が使用可能でないと判定した場合(ステップ710の「いいえ」分岐)、プロセス700はステップ702に進み、PoCデバイス102はユーザにストリップ104を交換するように要求する。PoCデバイス102が、ストリップ104が実行可能であると判定すると(ステップ710の「はい」分岐)、次に、PoCデバイス102は、血液サンプルを提供するようにユーザに要求する(ステップ712)。
【0282】
血液サンプルを受容するとき、PoCデバイス102は、流れの安定性を評価し(ステップ714)、上記のように電極からの電流の変化を監視する(ステップ716)(図24Aおよび24Bも参照)。電流が変化している場合(ステップ718の「はい」分岐)、プロセス700は、電流変化をさらに監視するためにステップ716に戻る。
【0283】
電流変化が停止すると(ステップ718の「いいえ」分岐)、タイマーが開始されて相互作用期間を記録し(ステップ720)、PoCデバイス102は、所定の相互作用期間が満了した後にインピーダンスの測定を開始する(ステップ722)。次に、PoCデバイス102は、生の測定値を検量線と比較し(ステップ724)、濃度に関して結果を表示する(ステップ726)。定量的または定性的データもサーバにアップロードされる(ステップ730)。その後、検査セッションは終了する(ステップ732)。
【0284】
図28は、本開示のいくつかの実施形態による、体液分析のためのプロセス800を示すフローチャートである。プロセス800は、患者がPoCデバイス102を使用して検査を開始すると開始される(ステップ802)。PoCデバイス102は、健康監視ネットワークシステムに機能的に結合され、上記のようにサーバと通信している。
【0285】
プロセス700と同様に、ユーザは、検査用のバイオマーカのタイプを選択し(ステップ804)、適切なバイオマーカストリップ104をPoCデバイス102に挿入し(ステップ806)、指先から採取した血液サンプルをストリップ104に与える(ステップ808)。次に、PoCデバイス102は、バイオマーカレベルを定量化し、そのGNSS構成要素(例えば、そのGPS構成要素)を使用してそのジオロケーションを登録する(ステップ810)。ステップ812で、ユーザの健康状態の評価を得るために、検査およびジオロケーションデータが集約され、かつ評価される。
【0286】
これらの実施形態では、PoCデバイス102は、検査データと比較するための複数の閾値を含み、例えば、それを超えると異常な健康状態を示す第1の閾値およびそれを超えると重大な健康状態を示す第2の閾値を含む。
【0287】
ステップ814で、PoCデバイス102が、ユーザの健康状態の評価が第1の閾値より上であるが第2の閾値よりも低い(すなわち、異常であるが重大ではない健康状態)と判定した場合、PoCデバイス102は、次に健康監視ネットワークシステムと通信し、健康監視ネットワークシステムがさらなる行動のために患者に連絡することを可能にする(ステップ816)。次に、プロセス800はステップ822に進む。
【0288】
ステップ814で、PoCデバイス102が、ユーザの健康状態の評価が第1の閾値(すなわち、正常な健康状態)を下回っていると判定した場合、PoCデバイス102は、次に、ユーザの健康状態の評価を表示し、検査データおよびユーザの健康状態の評価を記録する(ステップ818)。次に、プロセス800はステップ822に進む。
【0289】
ステップ814で、PoCデバイス102が、ユーザの健康状態の評価が第2の閾値(すなわち、重大な健康状態)を超えていると判定した場合、PoCデバイス102は、次に、健康監視ネットワークシステムと通信して、緊急プロトコルを開始する(ステップ820)。患者はまた、PoCデバイス102を介して緊急事態を開始することができる(ステップ828)。次に、患者のレポートファイル(例えば、ユーザの履歴、バイオマーカデータ、地理的位置、健康状態評価などを有する)が、緊急連絡先(患者の医師など)および/またはサービスに送信される(ステップ824)。次に、プロセス800はステップ822に進む。
【0290】
ステップ822で、患者のレポートファイルは、健康監視ネットワークシステムのサーバに保存される。プロセス800は終了する(ステップ826)。
【0291】
当業者が理解するように、本明細書に開示されるPoCデバイス102は、手持ち式デバイスまたはデスクトップデバイスであるなどの様々なフォームファクタを有し得る。PoCデバイス102は、全血、血漿、血清、尿、および同様の生物学的標本などの体液に由来する好適なバイオマーカまたは分析物を監視し、生理学的に関連する情報を提供するために使用することができる。生理学的に関連する情報は、公的および/または私的医療システムを含むがこれらに限定されない医療従事者、医師、臨床および/または病院管理ネットワークに安全に転送され得る。
【0292】
PoCデバイス102は、モジュール方式で設計され、かつ実装され得、異なる分析物を検出するための複数の検出モジュールを備え得る。各検出モジュールは、分析物の濃度を確認するために特定の技術を採用する場合がある。PoCデバイス102はまた、外部デバイス(例えば、携帯電話、ハードドライブ、データセンター、コンピュータクラウドなど)との通信を開始するためのモジュールなどの追加のモジュールを備え得る。
【0293】
上記の実施形態では、PoCデバイス102は、ユーザ入力を受信するためのスクリーン106の横にある1つ以上のボタン108を備える。図29Aおよび29Bに示されるいくつかの代替の実施形態では、これらの実施形態におけるPoCデバイス102は、図1Aに示されるものと同様である。しかしながら、これらの実施形態では、PoCデバイス102は、その前壁902上のタッチスクリーン106、ストリップ104を受容するためのその上壁904上のストリップ受容ポート110、およびその2つの反対側の側壁906上の1つ以上のボタン108を備え得る。ボタン108は、ユーザ入力を受信し、様々な機能を実行するために使用することができる。例えば、ボタン108のうちの第1の1つは、PoCデバイス102をアクティブ化するか、またはスリープモードからウェイクアップするために使用され得、ボタン108のうちの第2の1つは、検査を開始するために使用され得、ボタン108のうちの第3の1つは、ユーザがスピーカを介して検査結果を再生することを選択したとき(例えば、PoCデバイスが検査結果を「読み取っている(reading)」とき)PoCデバイス102に統合されたスピーカの音量を調整するために使用され得る。当業者が理解するように、1つ以上のボタン108をPoCデバイス102の1つまたは2つの側壁906に配設することにより、ユーザが片手でPoCデバイス102を便利に操作することが容易になり得る。
【0294】
ストリップ受容ポート110は、好ましくは、ユーザの片手操作を妨害しないであろうPoCデバイス102の任意の好適な場所に位置し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ストリップ受容ポート110は、PoCデバイス102の下壁908上にあり得る。いくつかの他の実施形態では、ストリップ受容ポート110は、PoCデバイス102の側壁906のうちの1つであり得る。
【0295】
PoCデバイス102が複数のストリップ受信ポート110を含むいくつかの実施形態では、複数のストリップ受信ポート110は、好ましくは、ユーザの片手操作を妨害しないであろうその任意の場所でPoCデバイス102上に配設され得る。
【0296】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、PoCデバイス102のバッテリを充電するための電源に接続するためのUSBポート(例えば、マイクロUSBポートまたはUSBタイプCポート)または任意の好適なポートを備え得る。
【0297】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、図13に示されるものと同様であるが、接続ポートに挿入するのに適した物理的および電気的仕様を備えたストリップインサート254を有するストリップアダプタ252を受容するためのUSBポートなどの接続ポートを備え得る。これらの実施形態では、PoCデバイス102は、実装に応じて、ストリップ受信ポート110を備える場合と備えない場合がある。
【0298】
図2に示される実施形態では、PoCデバイス102は、そこに挿入された電気化学センサ構造104を使用して分析可能な1つ以上のバイオマーカを識別するための一対の識別電極130および132の抵抗を測定する。いくつかの代替の実施形態では、電気化学センサ構造104は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを示す所定の電気的特性を備えた識別回路を備える。
【0299】
同様に、PoCデバイス102は、そこに挿入された電気化学センサ構造104が挿入されたときに電気化学センサ構造104の識別回路に結合するための回路を備え、1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するための所定の電気的特性を判定する。
【0300】
例えば、いくつかの実施形態では、識別回路は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを示す所定の静電容量を有する回路であり得、PoCデバイス102は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するための所定の静電容量を判定するための回路を備える。
【0301】
いくつかの他の実施形態では、識別回路は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを示す所定のインダクタンスを有する回路であり得、PoCデバイス102は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するための所定のインダクタンスを判定するための回路を備える。
【0302】
さらにいくつかの他の実施形態では、識別回路は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを示すコードを記憶する回路(例えば、1つ以上の分析可能なバイオマーカを示すコードを記憶するICチップ)であり得、PoCデバイス102は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するための所定のインダクタンスを判定するためのICチップからコードを読み取るためのリーダ回路を備える。
【0303】
上記の実施形態のいくつかでは、PoCデバイス102は、1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するための電気化学センサ構造104を収容する電気化学的センサ構造104上または運搬バイアル上の画像(一次元バーコードまたは二次元バーコードなど)をスキャンするために画像構成要素(カメラなど)を使用する。当業者は、いくつかの実施形態において、1つ以上の分析可能なバイオマーカの同一性を符号化する他の好適な画像もまた、上記のように1つ以上の分析可能なバイオマーカを識別するために使用され得ることを理解するであろう。
【0304】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、ストリップ104上の流体サンプルの流れの安定性および体積を評価することができる。
【0305】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、ストリップ104に読み取られるかまたは送信される電圧および電流信号を支援するための1つ以上の構成要素を備え得る。
【0306】
いくつかの実施形態では、PoCデバイス102は、情報の安全な双方向通信を可能にする中央サーバに接続することができる。情報は、検量線、検査結果、ストリップ情報、ロット情報、バッチ情報、地理空間情報、ソフトウェア情報などであり得る。
【0307】
添付の図面を参照して実施形態を上述してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって定義されるようなその範囲から逸脱することなく、変形および修正がなされ得ることが理解されよう。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図26
図27
図28
図29A
図29B
【国際調査報告】