(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】リポタンパク質LP-Zを使用して肝疾患死亡率を予測する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/92 20060101AFI20220107BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20220107BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N33/92 Z
G01N24/08 510Q
G01N24/00 530K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525103
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019060290
(87)【国際公開番号】W WO2020097349
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520077160
【氏名又は名称】リポサイエンス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LIPOSCIENCE,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】521195548
【氏名又は名称】べス イスラエル ディーコネス メディカル センター,インク.
【氏名又は名称原語表記】BETH ISRAEL DEACONESS MEDICAL CENTER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ズェンハイ ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】オトボス,ジェームス,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シャラウロヴァ,イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイアラジャハ,エリアス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コナリー,マージェリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カーリー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アフドール,ネザム
(72)【発明者】
【氏名】ポポヴィ,ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】ペレズ-マトス,マリア
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB30
2G045DA62
2G045DA66
2G045DA67
2G045FA36
2G045JA01
(57)【要約】
本明細書には、生体サンプルに於いてNMR分光法に依りアルコール性肝炎からの患者死亡率を決定する方法、より具体的には、血漿及び血清中のリポタンパク質成分LP-Zに基づいてZ指数スコアを決定する方法が記載されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール性肝炎の患者死亡率を予測する方法であって、
被験者から得られた生体サンプルのNMRスペクトルを取得する工程と、
LP-X及びLP-Zを含む前記サンプルの前記NMRスペクトルに基づいて前記サンプル中のLP-Z及び総apoB含有リポタンパク質の濃度をプログラムに依り決定する工程と、
Z指数スコアを計算する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記取得する工程は、
被験者から得られた前記生体サンプルのNMRスペクトルについての測定された脂質シグナルの線形を生成する工程と、
前記サンプルについての計算された線形を作成する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算された線形は、LP-X及びLP-Zを含むリポタンパク質成分の導き出された濃度に基づくものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各リポタンパク質成分の導き出された濃度は、その成分についての参照スペクトル及び計算された参照係数の関数である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記作成する工程は、線形最小二乗フィット手法に基づいて前記計算された線形についての参照係数を計算する事を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルの初期の計算された線形と前記サンプルの測定された線形との間の相関度を決定する事と、
前記サンプルの前記計算された線形と前記測定された線形との間の前記相関度が予め決められた閾値を上回る場合に、前記計算された線形に基づいてLP-Zの存在を決定する事と、
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記Z指数スコアは、リポタンパク質LP-Z、LDL、及びVLDLの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記Z指数は、LP-Z濃度と総apoB含有リポタンパク質濃度との比である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Z指数は、以下の式:
Z指数=([LP-Z])/([VLDL]+[LDL]+[LP-Z])
に依って計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
0.6を超えるZ指数に依り、患者死亡率が90日以内に起こる事が予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
90日以内の患者死亡率の確度を予測する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生存の確度又は患者の治療に対する奏効を予測する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プログラムに依る決定の前に、
前記被験者の前記サンプルをNMR分光計に入れる事と、
NMRスペクトルをデコンボリューションする事と、
前記デコンボリューションされたNMRスペクトルに基づいて複数の選択されたリポタンパク質パラメーターのNMR由来の測定値を計算する事と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル中に存在する前記リポタンパク質成分の濃度及び死亡の確度を列記するレポートを生成する事を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記生体サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿の内の1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
NMR分析装置であって、
NMR分光計と、
前記分光計と通信するプローブと、
前記分光計と通信する制御装置と、
を備え、これらが、前記プローブ内の流体試料のLP-Zと関連付けられたNMRスペクトルの規定の単一ピーク領域のNMRシグナルを取得し、LP-Zレベルを提供する患者レポートを作成する様に構成されている、NMR分析装置。
【請求項17】
前記制御装置は、少なくとも1つの局所プロセッサ若しくは遠隔プロセッサと通信しており、ここで、前記少なくとも1つのプロセッサが、
(i)前記流体試料のフィッティング領域の複合NMRスペクトルを取得し、且つ、
(ii)規定のデコンボリューションモデルを使用して複合NMRスペクトルをデコンボリューションして、LP-Zレベルを生成する様に構成されている、請求項16に記載の分析装置。
【請求項18】
前記デコンボリューションモデルは、高密度リポタンパク質(HDL)成分、低密度リポタンパク質(LDL)成分、VLDL(超低密度リポタンパク質)/カイロミクロン成分、LP-X、LP-Y、及びLP-Zの内の少なくとも1つを含む、請求項17に記載の分析装置。
【請求項19】
前記プローブは、フロープローブである、請求項16に記載の分析装置。
【請求項20】
前記流体試料は、in vitroの血漿生体サンプルである、請求項16に記載の分析装置。
【請求項21】
前記流体試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿の生体サンプルである、請求項16に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/757,505号明細書の優先権の利益を主張するものであり、この内容は、引用に依り本明細書に全てが列挙されているかの様に援用される。
【0002】
本明細書には、血漿及び血清中の成分を決定する方法及びシステム、より具体的には、血漿及び血清中のリポタンパク質成分を決定する方法及びシステムが記載されている。
【背景技術】
【0003】
アルコール性肝炎(AH)は、米国に於ける肝疾患の入院の一般的な原因である。アルコール性肝疾患の範囲の中では、AHが最も急性な症状を引き起こし、全ての患者の内、死亡率は5%~10%であり、30%~50%迄がその重症型である。他の形態の肝不全とは異なり、AHの症状は、重大な肝細胞喪失又は高度線維化の不存在下で起こり得る血液凝固の重篤な欠陥(凝固障害)及び胆汁の鬱滞(胆汁鬱滞)に依って特徴付けられる。重篤なAHに於けるこの重度の肝細胞機能障害に関するメカニズムは依然として不明なところが多いままである。従来のAHの治療は、潜在的な短期間の効果の為に、選択された患者に於ける禁酒、栄養サポート、及びコルチコステロイドに限定されている。選ばれたAH患者には肝臓移植が可能である場合もある。疾患リスクの層別化はAHの臨床管理に於ける重要な課題であり、肝不全を伴う患者の中で転帰を予測し、肝臓移植に適切な患者候補を選択する事は依然として困難である。
【0004】
Maddrey判別関数(DF)、グラスゴーアルコール性肝炎スコア(GAHS)、年齢、血清ビリルビン、INR及び血清クレアチニン(ABIC)スコア、並びにLillieモデルを含む、AHに於ける幾つかの予後予測方略が研究されている。然しながら、これらのスコアは、死亡率を確実に予測し、肝臓移植に関する臨床的決定を導くものではない。慢性肝疾患の重症度を評価するのに使用される別のスコアリングシステムは、末期肝疾患モデル(MELD)である。MELDは、血清クレアチニン、総ビリルビン、プロトロンビン時間の国際標準化比(INR)、及びナトリウム濃度から計算されるスコアである。MELDは一般に、様々な形態の慢性肝疾患に起因する肝硬変を伴う患者の中での90日死亡率についての優れた予測因子であり、従来、肝臓移植の為の患者を選択し、肝臓移植待機リストにある患者をランク付けするのに使用されている。
【0005】
自発的な回復が滅多に起こらない非代償性肝硬変を伴う患者とは異なり、高いMELDスコアを有するにも拘わらず、かなりの割合のAHを伴う患者が禁酒及び支持療法で回復し得る。信頼度が高い予後予測方法は、臓器移植の候補となるAH患者を特定するのに役立つ可能性がある。
【0006】
肝臓の不可欠な機能の1つは、脂質及びリポタンパク質の代謝を調節する事である。トリグリセリドが豊富なリポタンパク質である超低密度リポタンパク質粒子(VLDL)の分泌は、肝臓細胞が細胞内に蓄積されたトリグリセリドを排出する事が出来る1つの経路である。VLDLは、コレステロールエステルが豊富な粒子である低密度リポタンパク質(LDL)に代謝される。循環に於けるVLDLからLDLへの変換は、肝臓に依り産生される一連の酵素に依存している。
【0007】
最近のデータは、核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、LDL並びにLP-X及びLP-Zを含む異常リポタンパク質を同定及び定量化する事が出来る事を示唆している。生体サンプル中のリポタンパク質の存在及び量を正確に決定し、リポタンパク質レベルを患者の転帰と関連付ける事に依って、予後予測方法を改善し、最終的には患者ケアを改善する事が出来る。従って、血漿サンプル又は血清サンプル中のリポタンパク質を正確に決定し、患者死亡率を予測するアッセイの為の方法及びシステムが必要とされている。本明細書には、NMR分光法を使用して生体サンプル中のLP-Zの量を正確に検出及び定量化し、LP-Zの量と患者死亡率との相関を取る新しい方法及びシステムが記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書には、NMR分光法を使用して生体サンプル中のLP-Zの存在及び量を正確に決定し、Z指数スコアを作成して、患者死亡率を予測する方法及びシステムが記載されている。本発明は、様々な方式で具体化され得る。或る特定の実施形態では、方法及びシステムは、被験者又は患者に於けるLP-Zの決定を含む。幾つかの実施形態では、方法は、患者の療法に対する奏効又は患者の90日以内の死亡率の確度を予測する事が出来る。
【0009】
幾つかの実施形態では、AHを伴う被験者の死亡率を予測する方法は、被験者から得られた血漿サンプル又は血清サンプルのNMRスペクトルを取得する工程と、サンプルのNMRスペクトルに基づいてサンプル中のLP-Z及び総apoB含有リポタンパク質の存在をプログラムに依り決定する工程とを含む。幾つかの例では、サンプルのNMRスペクトルは、正常なリポタンパク質の全てのサブクラス、並びに異常リポタンパク質LP-X、LP-Y、及びLP-Zを含み得る。或る特定の実施形態では、この方法は、Z指数スコアを計算する事を更に含む。場合に依っては、0.6を超えるZ指数は90日以内のアルコール性肝炎死亡率と相関し得る。
【0010】
更に他の実施形態は、NMR分析装置を対象としている。NMR分析装置は、NMR分光計と、分光計と通信するプローブと、分光計と通信する制御装置とを備える事が出来、これらは、プローブ内の流体試料のLP-Zと関連付けられたNMRスペクトルの規定の単一ピーク領域のNMRシグナルを取得し、LP-Zレベルを提供する患者レポートを作成する様に構成されている。幾つかの例では、プローブはフロープローブであり得る。
【0011】
制御装置は少なくとも1つの局所プロセッサ若しくは遠隔プロセッサを含んでいても、又はそれらと通信していても良く、ここで、少なくとも1つのプロセッサは、(i)in vitroの血漿生体サンプルのフィッティング領域の複合NMRスペクトルを取得し、且つ(ii)規定のデコンボリューションモデルを使用して複合NMRスペクトルをデコンボリューションして、LP-Zレベルを生成する様に構成されている。或る特定の実施形態では、デコンボリューションモデルは、高密度リポタンパク質(HDL)成分、低密度リポタンパク質(LDL)成分、VLDL(超低密度リポタンパク質)/カイロミクロン成分、LP-X、及び/又はLP-Y及びLP-Zの内の少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明の更なる特徴、利点、及び詳細は、図面及び以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読み取る事で当業者に依って理解され、その様な説明は本発明の単なる例示に過ぎない。一実施形態に関して記載される特徴は、それについて具体的に論じられていなくても他の実施形態と共に組み込まれ得る。即ち、一実施形態に関して記載された本発明の態様は、それに関連して具体的に記載されていなくても、異なる実施形態に組み込まれ得る事に留意されたい。即ち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴を、如何様にも及び/又はあらゆる組み合わせで組み合わせる事が出来る。出願人は、当初提出された任意のクレームを補正して、当初はその様にクレームされていないとしても、任意のその他のクレームの任意の特徴に従属させる及び/又は組み込む事が出来る権利を含む、当初提出された任意のクレームを変更する又は任意の新たなクレームを提出する権利を保有している。本発明の上記の及びその他の態様は、以下に示される明細書で詳細に説明されている。
【0013】
本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本開示はより良く理解され得る。然しながら、本発明は、多くの異なる形で具体化する事が出来、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。寧ろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的且つ完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝える為に提示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ヒト血清の例示的なNMRスペクトルを示す図である。
【
図2】例示的なNMRスペクトルのVLDL、LDL、又はHDLのサブクラスを示す図である。
【
図3】LP-X及びLP-Zについての参照シグナルを含むLP-Xデコンボリューションモデルを使用した血漿の例示的な分析を示す図である。
【
図4】NMR分析に依って決定された健康な患者及び肝疾患を伴う患者に於ける例示的なLP-Z濃度を示す図である。
【
図5】重篤なアルコール性肝炎に於ける90日生存を予測するZ指数の例示的なカプラン・マイヤー曲線を示す図である。
【
図6】重篤なアルコール性肝炎に於ける90日生存を予測するZ指数の例示的な反復測定を示す図である。
【
図7】健康な被験者と比較したアルコール性肝炎に於ける例示的なリポタンパク質プロファイルを示す図である。
【
図8】脂質及びトリグリセリドの化学構造を示す図である。
【
図9】健康な被験者に於けるリポタンパク質代謝を示す概略図である。
【
図10】アルコール性肝炎に於けるLP-X及びLP-Zについての例示的なリポタンパク質プロファイルを示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に依るZ指数モジュール及び/又は回路を使用して患者のリスクを分析するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願では、NMR分光法に依って決定されるLP-Z間の関連性をアルコール性肝炎(AH)患者由来の血漿サンプルについて調査し、AH患者の死亡率を追跡した。本明細書には、NMR分光法を使用して生体サンプル中のLP-Zの量に基づいてAH患者の死亡率を正確に予測する新しい方法が記載されている。本発明は、様々な方式で具体化され得る。
【0016】
幾つかの実施形態では、方法及びシステムは、被験者又は患者に於けるLP-Zの決定を含む。幾つかの実施形態では、方法は、患者の療法に対する奏効又は患者の90日以内の死亡率の確度を予測する事が出来る。
【0017】
幾つかの実施形態では、AHを伴う被験者の死亡率を予測する方法は、被験者から得られた血漿サンプル又は血清サンプルのNMRスペクトルを取得する工程と、LP-X及びLP-Zを含むサンプルのNMRスペクトルに基づいてサンプル中のLP-Z及びapoB含有リポタンパク質の存在をプログラムに依り決定する工程とを含む。幾つかの実施形態では、サンプルのNMRスペクトルはLP-Yを更に含む。或る特定の実施形態では、この方法はZ指数スコアを計算する事を更に含む。場合に依っては、0.6を超えるZ指数は90日以内のAH死亡率と相関し得る。
【0018】
リポタンパク質Z(LP-Z)は、低密度リポタンパク質(LDL)様の粒子である。LDLと同様に、LP-Zは、表面に両親媒性脂質を有し、粒子のコアに疎水性脂質を有するアポリポタンパク質B(apoB)を1コピー有している。本明細書でLP-Zと呼ばれる種は、以前には「非常にトリグリセリドが豊富なLDL(highly triglyceride enriched LDL)」と記載されていた(コストナー GMら(Kostner GM et al)著、バイオオケミカル・ジャーナル(Biochem J.)1976年;第157巻:第401頁~第407頁)。リポタンパク質X(LP-X)は、核磁気共鳴(NMR)分光法に依り定量化可能なリン脂質及び非エステル化コレステロールが豊富な異常な多重膜小胞粒子である。従来の脂質パネルは、LP-X又はLP-Zの存在を検出する事が出来ない。
【0019】
用語及び定義
同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。図面では、明確にする為に、或る特定の線の太さ、層、構成要素、要素、又は特徴が誇張されている場合がある。破線は、別段の指定が無い限り、任意の特徴又は操作を示している。
【0020】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する事のみを目的とし、本発明を限定する事を意図するものではない。本明細書で使用される場合に、単数形(“a”、“an”、及び“the”)は、文脈上別段の明記が無い限り、複数形も同様に含む事が意図される。本明細書で使用される場合に、「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、指定された特徴、整数、工程、操作、要素、及び/又は成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない事が更に理解されるであろう。本明細書で使用される場合に、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された事項の1つ以上のあらゆる全ての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合に、「XとYとの間」及び「略XとYとの間」等の語句は、X及びYを含むと解釈されるべきである。本明細書で使用される場合に、「略XとYとの間」等の語句は、「約Xと約Yとの間」を意味する。本明細書で使用される場合に、「略X~Y」は、「約X~約Y」を意味する。
【0021】
別段の規定が無い限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の属する技術分野に於ける当業者に依って通常理解されるのと同じ意味を有する。更に、通常使用される辞書で定義されている様な用語は、本明細書及び関連技術の文脈に於けるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないと理解されたい。良く知られる機能又は構成は、簡潔さ及び/又は明瞭さの為に詳細に記載されていない場合がある。
【0022】
「プログラムに依り」という用語は、コンピュータプログラム及び/又はソフトウェア、プロセッサ、若しくはASIC向けの操作を使用して実行される事を意味する。「電子的」という用語及びその派生語は、人為的取り決めに依るものでなく、電気回路及び/又はモジュールを備えたデバイスを使用して実行される自動化操作又は半自動化操作を指し、典型的には、プログラムに依り実行される操作を指す。「自動化」及び「自動的」という用語は、操作が最小限の手作業若しくは手入力しか伴わずに、又は手作業若しくは手入力なしで実行され得る事を意味する。「半自動化」という用語は、操作者に幾つかの入力又は起動をさせるが、計算及びシグナル取得、並びにイオン化成分(複数を含む)の濃度の計算は、手入力を必要とせずに電子的に、典型的にはプログラムに依り行われる。「約」という用語は、指定された値又は数値の±10%(平均値又は平均)を指す。
【0023】
「生体サンプル」という用語は、ヒト又は動物のin vitroの血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、CSFサンプル、唾液サンプル、洗浄液サンプル、喀痰サンプル、尿サンプル、又は組織サンプルを指す。本発明の実施形態は、ヒトの血漿又は血清の生体サンプルを評価するのに特に適切であり得る。血漿サンプル又は血清サンプルは、空腹時又は非空腹時であり得る。
【0024】
「患者」又は「被験者」という用語は広く使用されており、試験又は分析の為の生体サンプルを提供する個体を指す。
【0025】
「臨床病態」という用語は、医療介入、療法、療法の調整又は或る特定の療法(例えば、医薬品)の除外及び/又はモニタリングが適切である事を示し得るリスクのある病状を意味する。臨床病態の確度を特定する事に依り、臨床医はそれに応じて状態の発症を治療、遅延、又は抑止する事が出来る。臨床病態の例には、限定されるものではないが、CHD、CVD、脳卒中、2型糖尿病、前糖尿病、認知症、アルツハイマー病、癌、関節炎、関節リウマチ(RA)、腎臓病、肝疾患、肺疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、末梢血管疾患、鬱血性心不全、臓器移植反応、及び/又は免疫不全に関連する病状、タンパク質選別に於ける生物学的機能の異常、免疫及び受容体認識、炎症、病原性、転移、並びに他の細胞プロセスが含まれる。
【0026】
LP-Zを測定してZ指数を決定する方法
本明細書には、NMRを利用して生物学的サンプル中のLP-Zを特徴付けて、被験者に於けるAHを診断又は検知する新規の方法(即ち、アッセイ)が記載されている。幾つかの実施形態では、この方法は、AH患者に於ける死亡率を予測する事が出来る。該方法は、様々な方式で具体化され得る。
【0027】
NMR分光法は、in vitroの血漿サンプル又は血清サンプル由来の超低密度リポタンパク質(VLDL)粒子、低密度リポタンパク質(LDL)粒子、及び高密度リポタンパク質(HDL)粒子のサブクラス、並びにLP-X及びLP-Z等の異常リポタンパク質粒子を含む全範囲の循環リポタンパク質を同時に測定する為に使用されている。米国特許第4,933,844号明細書、米国特許第6,617,167号明細書、2018年11月13日に出願された米国特許出願第16/188,435号を参照の事(これらの内容は、引用に依り本明細書に全てが列挙されているかの様に援用される)。幾つかの実施形態では、サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿であり得る。
【0028】
概説すると、血漿サンプル及び/又は血清サンプル中のリポタンパク質を評価する為に、NMRスペクトルの化学シフト領域内の複数のNMR分光法由来のシグナルの振幅を複合メチルシグナルの包絡線のデコンボリューションに依って導き出す事で、サブクラスの濃度が得られる。
図1は、ヒト血清の例示的なNMRスペクトルを示し、脂質メチル基が強調されている。サブクラスは、NMR周波数及びリポタンパク質直径と関連付けられた多数(典型的には60超)の別個の寄与サブクラスのシグナルに依って表される。NMR評価は、測定された血漿NMRシグナルを分解して、VLDL、LDL、及びHDLについての異なるリポタンパク質の部分集合の濃度を生成し得る。これらの部分集合を、例えば、
図2に示される様に、VLDL、LDL、又はHDLのサブクラス内の特定のサイズ範囲に関連するものとして更に特徴付ける事が出来る。
図2に示される様に、サブクラスのシグナルを結合すると、測定されたシグナルが生成される。デコンボリューションに依って導き出されたサブクラスのシグナルの振幅は各サブクラスの濃度を示し得る。
【0029】
過去に、ノースカロライナ州バーリントンのLapCorp社から入手可能なNMR LIPOPROFILE(登録商標)リポタンパク質試験等の「先進的」なリポタンパク質試験パネルは、典型的には、全てのHDLサブクラスの濃度を合計した総HDL粒子(HDL-P)測定、及び全てのLDLサブクラスの濃度を合計した総LDL粒子(LDL-P)測定を含んでいた。LDL-P数は、それらの各粒子の濃度をnmol/L等の濃度単位で表す。HDL-P数は、それらの各粒子の濃度をμmol/L等の濃度単位で表す。
【0030】
洗練されたデコンボリューションモデルを用いたNMR分析は、最近では、生体サンプル中のLP-X及びLP-Zの濃度を決定する為に使用されている。
図3は、LP-X、LP-Y、及びLP-Zについての参照シグナルを含むLP-Xデコンボリューションモデルを使用した場合の、高ビリルビンを伴う患者由来の血漿の分析から得られた良好なフィット及び小さな残差シグナルの例を示している。
【0031】
NMR分光法を使用して、アルコール性肝炎(AH)を伴う患者等のLP-Zが蓄積している患者に於けるLP-Zを同定及び定量化する事が出来る。
図4に示される様に、LabCorp社に依って開発された生体サンプル中の循環リポタンパク質のプロファイルを定量化するNMRベースの方法論を利用したAH患者由来の血漿サンプルに対する最近の試験に依り、AHを伴う例示的な患者が著しく高いレベルの異常リポタンパク質LP-Zを有している事が分かった。特に、LP-Zのレベルは、AHを伴う患者に於いて健康な個体(HC)又は他の形態の慢性肝疾患を伴う患者と比較して明らかに高い場合がある。NMRをAH患者の予後診断に確実に使用するには、NMRに依って決定されたLP-Zと患者の死亡率との関連性を理解しなければならない。
【0032】
上記のAH試験に依り、AH患者の間では、LP-Z及び総apoB含有リポタンパク質の両方のレベルが、INRに依り測定した場合に逆相関した肝合成機能である事が更に確認された。LP-Zのレベルも総apoB含有リポタンパク質のレベルもAHを伴う患者の死亡率と頑健な相関を有し得ないが、これら2つのパラメーターは相反的に死亡率を予測する事が出来る。LP-Z及び総apoB含有リポタンパク質(VLDL、LDL、及びLP-Z)を同時に使用して死亡率を予測する事が出来る。LP-Zは死亡率と正の相関を有し得るのに対して、総apoB含有リポタンパク質は死亡率と負の相関を有し得る。本明細書に記載される新規のバイオマーカーであるZ指数は、患者死亡率とのこれらの相関を利用している。以下の式:
Z指数=([LPZ])/([VLDL]+[LDL]+[LPZ])
に依ってZ係数を計算する事が出来、ここで、リポタンパク質成分についての濃度単位はnmol/Lである。
【0033】
Z指数は、apoB含有リポタンパク質に於ける異常リポタンパク質LP-Zの割合を表す事が出来、AHに於ける循環リポタンパク質に障害をもたらす肝機能障害の程度を反映する事が出来る。Z指数は90日以内の短期死亡率を高度に予測する事が出来る。
図5の例示的なカプラン・マイヤー曲線に示される様に、Z指数は90日死亡率と頑健な相関を有し得る。Z指数が1%増加する毎に、死亡のハザード比は5%増加する(95%CI 1.02~1.08、p=0.001)。Z指数についての閾値は0.6であると決定された。0.6未満のZ指数では、LP-Zの同定から90日以内に患者の約5%しか死亡し得ない(
図5に示されるデータに於ける38人の被験者の内の2人)。それに対して、Z指数が0.6を超える場合、LP-Zの同定から90日以内に患者の略40%が死亡すると予想され得る(
図5に示されるデータでは、53人の被験者の内21人が90日で死亡した)。
【0034】
Z指数は、肝不全を伴う患者の転帰を予後予測する為の最近の基準であるMELDスコアよりも信頼度が高い予測因子となり得る。表1に示される様に、Z指数は、AHを伴う患者の間で90日死亡率を予測する能力で大幅にMELDスコアを凌ぐ事が出来る。
【表1】
【0035】
表2に示される様に、Z指数は又、AHに於ける転帰を予後予測する際に他の成分よりも信頼度の高い予測因子となり得る。
【表2】
【0036】
NMRに依って測定されたLP-Z及び総apoB含有リポタンパク質の濃度を使用してZ指数を計算する事が出来、これを使用して重篤なAHを伴う患者を効果的にリスク層別化する事が出来る。効果的なリスク層別化は、90日以内で死亡リスクの低い患者と死亡リスクの高い患者との区別を補助するのに特に有用であり得る。例えば、
図6に示される様に、Z指数は、転帰を予測する為の反復測定値として使用され得る。生存者の間のZ指数は14日目迄下降したが、死亡者についてのZ指数は一定に留まった。
【0037】
本明細書の開示は、NMR分光法を介してLP-Z及びapoB含有リポタンパク質を開示しているが、当業者はZ指数がNMR分光法に特化しているわけではない事を理解している。例えば、LP-Zの濃度を、ズダンブラック及びフィリピンを使用した脂質染色と組み合わせたアガロースゲル電気泳動を使用して推定する事が出来た。apoBの濃度はELISAに依り測定する事が出来る。
図7は、ズダンブラック試験及びフィリピン試験の両方に於いて、AHでの例示的なリポタンパク質プロファイルが、例示的な健康な被験者(HC)のプロファイルと比較して特徴的である事を示している。
【0038】
図8は、リン脂質(PL)、コレステロールエステル(CE)、及びトリグリセリド(TG)、並びに遊離コレステロール(FC)のリポタンパク質構造及び化学構造を示している。
図9は、健康な被験者に於けるリポタンパク質代謝での脂質の経路を示している。殆どの個体(即ち、「正常な」健康な被験者)は、非常に低いレベルのLP-X若しくはLP-Zを有するか、又はこれらを有しない。それに対して、健康な個体及び罹患した個体の両方に様々な量のLP-Yが見られる。閉塞性黄疸又はAHを伴う被験者等のLP-X又はLP-Zの存在を示す被験者では、LP-Zレベルは様々な程度に高まり得る。
【0039】
LP-X、LP-Y、及びLP-Zからのメチル脂質シグナルは其々、「通常の」リポタンパク質粒子とは異なり、NMR分光法に於いて独特なスペクトル形状及び位置を有している。AHでは、異常リポタンパク質LP-X及びLP-Zの蓄積を特徴とする循環リポタンパク質の独特なパターンを見る事が出来る。
図10は、AH患者に於ける例示的な特徴的なリポタンパク質プロファイルを示している。NMR分析に依って決定されるLP-X濃度及びLP-Z濃度の上昇は、健康な患者と肝疾患を伴う患者とを区別する事が出来る。これらのリポタンパク質は、重篤なアルコール性肝炎のリスク層別化についての効果的なバイオマーカーとなり得る。本明細書に記載されるアッセイは、これらの独特なスペクトル線形を利用して、血清サンプル又は血漿サンプル中のLP-X、LP-Y、及びLP-Zを検出及び定量化する。
【0040】
幾つかの実施形態では、上記方法は、サンプル中に存在するリポタンパク質成分の濃度及び死亡の確度を列記するレポートを生成する工程を更に含む。幾つかの実施形態では、LP-Zの存在について被験者を診断する方法は、被験者から得られた血漿サンプル又は血清サンプルのNMRスペクトルを取得する工程と、LP-X、LP-Y、及びLP-Zを含むサンプルのNMRスペクトルに基づいてサンプル中のLP-Zの存在をプログラムに依り決定する工程とを含む。幾つかの実施形態では、上記方法の取得する工程は、(a)被験者から得られた血漿サンプル又は血清サンプルのNMRスペクトルについての測定された脂質シグナルの線形を生成する事と、(b)サンプル中に存在する可能性のあるリポタンパク質成分の導き出された濃度に基づくサンプルについての計算された線形を作成する事とを含み、ここで、リポタンパク質成分は、LP-X、LP-Y、及びLP-Zを含み、各リポタンパク質成分の導き出された濃度は、その成分についての参照スペクトル及び計算された参照係数の関数であり、濃度が計算される3つのリポタンパク質成分は、LP-X、LP-Y、及びLP-Zである。
【0041】
幾つかの実施形態では、上記方法は、(c)サンプルの初期の計算された線形とサンプルの測定された線形との間の相関度を決定する事と、(d)サンプルの計算された線形と測定された線形との間の相関度が予め決められた閾値を上回る場合に、計算された線形に基づいてLP-Zの存在を決定する事とを更に含む。幾つかの実施形態では、上記方法の工程(b)は、計算された線形についての参照係数を線形最小二乗フィット手法に基づいて計算する事を含む。幾つかの実施形態では、サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿であり得る。
【0042】
ここで
図11を参照すると、全てではないにしても殆どの測定は、例えば米国特許第8,013,602号明細書(この内容は、引用に依り本明細書に全てが列挙されているかの様に援用される)に記載されるNMR臨床分析装置22と通信する又は少なくとも部分的にそれを搭載するシステム10上で又はそれを用いて実施する事が出来ると考えられる。
【0043】
システム10は、Z指数を決定するのに適したデータを収集するZ指数リスクモジュール370を含み得る。システム10は、分析装置22に搭載されていても又は分析装置22から少なくとも部分的に離れていても良い少なくとも1つのプロセッサ20pを含む分析回路20を含む事が出来る。後者の場合に、モジュール370及び/又は回路20は、全体的又は部分的にサーバ150上に存在し得る。サーバ150は、コンピュータネットワークを介したオンデマンドの計算資源の提供を含むクラウドコンピューティングを使用して提供され得る。これらの資源は、様々なインフラサービス(例えば、コンピュータ、記憶装置等)、並びにアプリケーション、データベース、ファイルサービス、電子メール等として具体化され得る。伝統的な計算モデルでは、データ及びソフトウェアは両者とも、典型的にはユーザのコンピュータ上に完全に収容されるが、クラウドコンピューティングでは、ユーザのコンピュータは、ソフトウェア又はデータを殆ど収容しておらず(事に依ると、オペレーティングシステム及び/又はウェブブラウザも)、外部コンピュータのネットワーク上で行われるプロセスの為の単なるディスプレイ端末として機能し得るにすぎない。クラウドコンピューティングサービス(又は複数のクラウド資源の集合)は、一般的には「クラウド」と呼称され得る。クラウド記憶装置は、データが1つ以上の専用サーバ上にホストされるのではなく複数の仮想サーバ上に記憶されるネットワーク接続されたコンピュータデータ記憶装置のモデルを含み得る。データ転送は、暗号化可能であり、HIPAA等の工業規格又は規制規格に準拠したあらゆる適切なファイアウォールを使用してインターネットを介して行われ得る。「HIPAA」という用語は、健康保険の携行性と責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act)に依り規定された米国の法律を指す。患者データは、受託番号又は識別子、性別、年齢、及び試験データを含み得る。
【0044】
分析結果は、インターネット等のコンピュータネットワークを介して、電子メール等を介して、患者、臨床医現場50、健康保険機関52、又は薬局51へと伝送され得る。結果は分析現場から直接送られ得るか、又は間接的に送られ得る。結果はプリントアウトされ、従来の郵便を介して送付され得る。この情報は又、有害事象のリスク増加を引き起こし得る処方箋若しくは薬物使用を監視する又は矛盾した医薬品の処方を防ぐ医療的警告を出す薬局及び/又は医療保険会社、又は患者にさえも伝送され得る。結果は、電子メールを介して患者に「ホーム」コンピュータに、又はスマートフォン若しくはノートパッド等の様な普及したコンピュータデバイスに送られ得る。結果は、例えば、全レポートのメール添付物、又はテキストメッセージ警告となり得る。
【0045】
方法、システム、及び分析装置の例示的な実施形態
以下で使用される場合に、方法、システム、又は分析装置に対する全ての参照は、それらの方法、システム、又は分析装置の其々に対する参照として択一的に理解されるべきである(例えば、「例示的な実施形態1~4」は、「例示的な実施形態1、2、3、又は4」として理解されるべきである)。
【0046】
例示的な実施形態1は、アルコール性肝炎の患者死亡率を予測する方法であって、被験者から得られた生体サンプルのNMRスペクトルを取得する工程と、LP-X及びLP-Zを含むサンプルのNMRスペクトルに基づいてサンプル中のLP-Z及び総apoB含有リポタンパク質の濃度をプログラムに依り決定する工程と、Z指数スコアを計算する工程とを含む、方法である。
【0047】
例示的な実施形態2は、上記方法の取得する工程が、被験者から得られた生体サンプルのNMRスペクトルについての測定された脂質シグナルの線形を生成する工程と、サンプルについての計算された線形を作成する工程とを含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0048】
例示的な実施形態3は、計算された線形が、LP-X及びLP-Zを含むリポタンパク質成分の導き出された濃度に基づくものである、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0049】
例示的な実施形態4は、各リポタンパク質成分の導き出された濃度が、その成分についての参照スペクトル及び計算された参照係数の関数である、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0050】
例示的な実施形態5は、上記作成する工程が、計算された線形についての参照係数を線形最小二乗フィット手法に基づいて計算する事を含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0051】
例示的な実施形態6は、サンプルの初期の計算された線形とサンプルの測定された線形との間の相関度を決定する事と、サンプルの計算された線形と測定された線形との間の相関度が予め決められた閾値を上回る場合に、計算された線形に基づいてLP-Zの存在を決定する事とを更に含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0052】
例示的な実施形態7は、Z指数スコアが、リポタンパク質LP-Z、LDL、及びVLDLの濃度を含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0053】
例示的な実施形態8は、Z指数が、LP-Z濃度と総apoB含有リポタンパク質濃度との比である、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0054】
例示的な実施形態9は、Z指数が、以下の式:
Z指数=([LP-Z])/([VLDL]+[LDL]+[LP-Z])
に依って計算される、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0055】
例示的な実施形態10は、0.6を超えるZ指数に依り、患者死亡率が90日以内に起こる事が予測される、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0056】
例示的な実施形態11は、90日以内の患者死亡率の確度を予測する、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0057】
例示的な実施形態12は、生存の確度又は患者の治療に対する奏効を予測する、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0058】
例示的な実施形態13は、プログラムに依る決定の前に、被験者のサンプルをNMR分光計に入れる事と、NMRスペクトルをデコンボリューションする事と、複数の選択されたリポタンパク質パラメーターのNMR由来の測定値をデコンボリューションされたNMRスペクトルに基づいて計算する事とを更に含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0059】
例示的な実施形態14は、サンプル中に存在するリポタンパク質成分の濃度及び死亡の確度を列記するレポートを生成する事を更に含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の方法である。
【0060】
例示的な実施形態15は、生体サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿の内の1つである、先行する何れかの実施形態の方法である。
【0061】
例示的な実施形態16は、NMR分光計と、分光計と通信するプローブと、分光計と通信する制御装置とを備え、これらが、プローブ内の流体試料のLP-Zと関連付けられたNMRスペクトルの規定の単一ピーク領域のNMRシグナルを取得し、LP-Zレベルを提供する患者レポートを作成する様に構成されている、NMR分析装置である。
【0062】
例示的な実施形態17は、制御装置が、少なくとも1つの局所プロセッサ若しくは遠隔プロセッサと通信しており、ここで、少なくとも1つのプロセッサが、(i)流体試料のフィッティング領域の複合NMRスペクトルを取得し、且つ(ii)規定のデコンボリューションモデルを使用して複合NMRスペクトルをデコンボリューションして、LP-Zレベルを生成する様に構成されている、先行する又は後続の何れかの実施形態の分析装置である。
【0063】
例示的な実施形態18は、デコンボリューションモデルが、高密度リポタンパク質(HDL)成分、低密度リポタンパク質(LDL)成分、VLDL(超低密度リポタンパク質)/カイロミクロン成分、LP-X、LP-Y及びLP-Zの内の少なくとも1つを含む、先行する又は後続の何れかの実施形態の分析装置である。
【0064】
例示的な実施形態19は、プローブが、フロープローブである、先行する又は後続の何れかの実施形態の分析装置である。
【0065】
例示的な実施形態20は、流体試料が、in vitroの血漿生体サンプルである、先行する又は後続の何れかの実施形態の分析装置である。
【0066】
例示的な実施形態21は、流体試料が、血液、血清、血漿、脳脊髄液、又は尿の生体サンプルである、先行する何れかの実施形態の分析装置である。
【符号の説明】
【0067】
10 シルテム
20 プロセッサ/分析回路
22 NMR分析装置
50 臨床医
51 薬局
52 健康保険機関
150 サーバ
227 インターネット
370 Z指数リスクモジュール
【国際調査報告】