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特表2022-506987患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法およびシステム、ならびにコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法およびシステム、ならびにコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525163
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019080486
(87)【国際公開番号】W WO2020094765
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/756,630
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18209230.4
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】521196925
【氏名又は名称】マイシュガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デューク、デイビッド エル
(72)【発明者】
【氏名】バンコセガー、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴレーデ、ヤン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
(57)【要約】
本開示は、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法に言及し、前記方法は、1つまたは複数のデータプロセッサを有するシステム(10)において、測定期間についての複数の血中グルコース測定値を表すスポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することであって、スポットモニタリング血中グルコース測定データが、血中グルコース測定値についての測定が実行された各々の測定時点を含み、血中グルコース測定値が、有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた第1の血中グルコース測定値と、有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた第2の血中グルコース測定値とを含み、血中グルコース値の第2の範囲が有害な血中グルコース値の第1の範囲とは異なる、スポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することと、カーネル密度推定およびベイズ則を含む解析アルゴリズムを適用することにより、第1の血中グルコース測定値および第2の血中グルコース測定値を含むスポットモニタリング血中グルコース測定データから、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第1の範囲内にある確率、および患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第2の範囲内にある確率を決定することであって、カーネル密度推定において、第1のカーネルバンド幅が第1の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用され、かつ第1のカーネルバンド幅とは異なる第2のカーネルバンド幅が第2の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用される、確率を決定することと、予測時点および予測時点における確率を示す出力データを提供することとを含む。さらに、システムおよびコンピュータプログラム製品が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法であって、前記方法が、1つまたは複数のデータプロセッサを有するシステム(10)において、
測定期間についての複数の血中グルコース測定値を表すスポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することであって、前記スポットモニタリング血中グルコース測定データが、前記血中グルコース測定値についての測定が実行された各々の測定時点を含み、前記血中グルコース測定値が、
有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた第1の血中グルコース測定値と、
有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた第2の血中グルコース測定値であって、血中グルコース値の前記第2の範囲が有害な血中グルコース値の前記第1の範囲とは異なる、前記第2の血中グルコース測定値と
を含む、
スポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することと、
カーネル密度推定およびベイズ則の適用を含む解析アルゴリズムを適用することにより、前記第1の血中グルコース測定値および前記第2の血中グルコース測定値を含む前記スポットモニタリング血中グルコース測定データから、
患者の前記血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの前記第1の範囲内にある確率、および
前記患者の前記血中グルコース値が前記予測時点において有害な血中グルコースの前記第2の範囲内にある確率
を決定することであって、
前記カーネル密度推定において、第1のカーネルバンド幅が前記第1の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用され、かつ前記第1のカーネルバンド幅とは異なる第2のカーネルバンド幅が前記第2の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用される、
確率を決定することと、
前記予測時点および前記予測時点における前記確率を示す出力データを提供することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記確率が、前記スポットモニタリング血中グルコース測定データから予測期間中の複数の予測時点において決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記確率の連続的な経過が、前記スポットモニタリング血中グルコース測定データから前記予測期間中の複数の予測時点について決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記解析アルゴリズムを適用することが、
有害な血中グルコース値の前記第1の範囲に割り当てられた少なくとも前記第1の血中グルコース測定値を含む前記スポットモニタリング血中グルコース測定データの第1の測定データサブセットから前記患者の前記血中グルコース値が前記予測時点において有害な血中グルコースの前記第1の範囲内にある前記確率を決定することと、
有害な血中グルコース値の前記第2の範囲に割り当てられた少なくとも前記第2の血中グルコース測定値を含む前記スポットモニタリング血中グルコース測定データの第2の測定データサブセットから前記患者の前記血中グルコース値が前記予測時点において有害な血中グルコースの前記第2の範囲内にある前記確率を決定することと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記血中グルコース測定値が、血中グルコース値の有害でない範囲に割り当てられた血中グルコース測定値を含み、血中グルコースの前記有害でない範囲が、有害な血中グルコースの前記第1および第2の範囲とは異なり、かつ
前記確率を決定することが、前記患者の前記血中グルコース値が前記予測時点において血中グルコースの前記有害でない範囲内にある確率を決定することを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記決定することが、前記カーネル密度推定において、前記第1および前記第2のカーネルバンド幅の両方とは異なる第3のカーネルバンド幅を適用することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記適用することが、前記カーネル密度推定において周期カーネルを適用することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のカーネルバンド幅が前記第2のカーネルバンド幅より広い、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記適用することが、
前記第1の血中グルコース測定値からの測定値のために第1のバンド幅値を適用することと、
前記第2の血中グルコース測定値からのさらなる測定値のために第2のバンド幅値を適用することと
を含み、
前記第1のバンド幅値が前記第2のバンド幅値とは異なる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
有害な血中グルコース値の前記第1の範囲が、前記患者について低血糖状態を示す血中グルコース測定値に割り当てられ、かつ
有害な血中グルコース値の前記第2の範囲が、前記患者について高血糖状態を示す血中グルコース測定値に割り当てられる、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定するためのシステム(10)であって、前記システム(10)が1つまたは複数のデータプロセッサを有し、かつ前記1つまたは複数のデータプロセッサが、請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法を行うように構成されている、システム(10)。
【請求項12】
1つまたは複数のプロセッサを有するコンピュータにロードされた場合に、請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法を行うように構成されたプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法に言及する。さらに、本開示は、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定するためのシステムに言及する。また、コンピュータプログラム製品が言及される。
【背景技術】
【0002】
糖尿病に対する治療の改善は、多くの場合に、朝の高血糖事象などの問題がある期間に焦点を当てることにより達成され得る。血中グルコース測定のレトロスペクティブ分析は、1日の経過を通じて血糖可動域の確率を評価することによりこれらの期間を明らかにすることができる。連続グルコースモニタリング(CGM)デバイスを使用する患者について、測定頻度(1/T)は非常に高く(測定時間間隔Tはおおよそ5~15分の範囲内である)、これにより高分解能での分析が可能となる。ここで、Ambulatory Glucose Profileは、糖尿病ケア学会の全体を通じて大きな許容を示した(Danne,et al.,Diabetes Care(2017)40)。対照的に、伝統的な(スポットモニタリング)血中グルコース測定(BGM)を行う患者について、1日当たりの試料の数は比較的少なく(例えば、約3~8の試料)、大抵は時間的に不均一に分布している。
【0003】
BGM実施患者についてのもっともらしい統計をそれでも得るために、測定はかなり大きい時間スロット(1時間毎または1日の四半分毎(quarter-daily))に群化(ビニング)され、これは結果的に分解能の損失に繋がる。まばらなBGMデータは通常、患者のグルコースダイナミクスならびに低血糖症および高血糖症などの有害事象の対応するリスクへの限られた洞察を提供する。
【0004】
文献US2011/313674A1は、糖尿病患者に対する治療を最適化する試験方法に言及し、前記方法は、バイオマーカーデータの少なくとも1つのサンプリングセットを収集すること、ならびにバイオマーカーデータのサンプリングセットについての確率分布関数、ハザード関数、リスク関数、およびリスク値を計算することを含む。確率分布関数は、バイオマーカーデータの確率分布を近似するために算出される。ハザード関数は、合併症のより高いリスクを示すサンプリングセットにおけるバイオマーカー読取りについてより高いハザード値をもたらす関数である。リスク関数は確率分布関数およびハザード関数の積であり、リスク値はリスク関数の積分により算出される。リスク値は、糖尿病患者の治療を調整することにより最小化され、少なくとも1つのサンプリングセットについてのリスク値が最適なリスクレベルまで最小化された場合に試験方法からの退場となる。
【0005】
文献US2015/190098A1は、適応性アドバイザリー制御相互作用性方法を開示し、前記方法は、血糖制御の最適化と共に糖尿病を有する患者を補助する生理学的および行動パラメーターおよびパターンのアルゴリズムベースの評価および交信を伴う。方法およびシステムは、患者についての情報:(i)EOデータ(例えば、血中グルコースの自己モニタリング(SMBG)およびCMG)、(ii)インスリンデータ(例えば、インスリンポンプログファイルまたは患者処置記録)、ならびに(iii)患者自己報告データ(例えば、自己処置行動、食事、および運動)の供給源を使用して、低血糖症のリスクを遡及的に評価し、インスリン送達のリスクベースの低減を遡及的に評価し、そして次に患者にリスクベースのインスリン低減システムが低血糖症を予防するためにどのように一貫して作用したのかを報告する。
【0006】
文献WO2018/153648A1は、血中グルコース調節医薬を用いた注射の分布の中心傾向および変動性を表すように構成された投薬歴を交信するためのシステムおよび方法を開示する。デバイスは、注射事象の分布内の注射事象の1つまたは複数の適格な群を得る方法を行うために適応されており、注射事象の各適格な群は群-時間指標を含む。注射事象の適格な群のセット内の注射事象の各々の適格な群のそれぞれについて以下が提供される:(i)時間を基準として、群-時間指標を使用して、注射事象の各々の適格な群に対応する群化された医療記録のサブセットを決定すること、ならびに(ii)注射事象の各々の適格な群の群化された医療記録のサブセットを処理して、相対的な時間に関する中心傾向の度合および変動性の度合を表すように構成されたディスプレイデータを得ること。ディスプレイデータが交信される。
【0007】
文献US2018/272063A1は、患者の生理学的状態をモニターするための注入デバイス、患者データ管理システム、および方法に言及する。注入デバイスは、ユーザーに流体を送達するために作動可能なアクチュエーション構成、ユーザーの生理学的状態を示す測定データを受け取る交信インターフェース、文脈的測定データを得るためのセンシング構成、およびアクチュエーション構成に連結された制御システムを含む。交信インターフェースおよびセンシング構成は、測定データおよび文脈的測定データにより影響される方式でアクチュエーション構成を自律的に作動させるための命令を決定するためならびに前記命令にしたがってアクチュエーション構成を自律的に作動させてユーザーに流体を送達するために提供される。
【0008】
文献US2007/282180A1は、身体の表面に適用される電極構成を含む、生きた身体中のグルコースレベルを測定するためのデバイスを開示する。グルコースレベルは、電気信号に対する電極構成の応答から導出される。2つの温度センサーがデバイス内の異なる位置に配置され、そのシグナルは、デバイスの正確性を向上させるために軟正および測定の間に使用される。デバイスはまた、グルコースレベルのより高次の導関数についての限度に基づく高または低血糖症の予測のために使用され得る。
【発明の概要】
【0009】
患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法およびシステムであって、確率が、スポットモニタリング血中グルコース測定に基づいて高い正確性で決定され得る、方法およびシステムを提供することが本開示の目的である。
【0010】
該目的を解決するために、独立請求項1による、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法が提供される。さらに、独立請求項11による、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定するためのシステムが提供される。さらに、請求項12はコンピュータプログラム製品に言及する。
【0011】
一態様によれば、患者の血中グルコース値またはレベルが予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法が提供される。方法は、1つまたは複数のデータプロセッサを有するシステムにおいて、測定期間についての複数の血中グルコース測定値を表すスポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することであって、スポットモニタリング血中グルコース測定データが、血中グルコース測定値についての測定が実行された各々の測定時点を含み、血中グルコース測定値が、有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた第1の血中グルコース測定値と、有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた第2の血中グルコース測定値とを含み、血中グルコース値の第2の範囲が有害な血中グルコース値の第1の範囲とは異なる、スポットモニタリング血中グルコース測定データを提供することを含む。カーネル密度推定およびベイズ則の適用を含む解析アルゴリズムを適用することにより、第1の血中グルコース測定値および第2の血中グルコース測定値を含むスポットモニタリング血中グルコース測定データから、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第1の範囲内にある確率、および患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第2の範囲内にある確率を決定すること。カーネル密度推定において、第1のカーネルバンド幅が第1の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用され、かつ第1のカーネルバンド幅とは異なる第2のカーネルバンド幅が第2の血中グルコース測定値の全てまたは一部のために適用される。予測時点および予測時点における決定された確率を示す出力データが提供される。
【0012】
別の態様によれば、患者の血中グルコース値またはレベルが予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定するためのシステムが提供される。システムは、患者の血中グルコース値またはレベルが予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法を行うように構成された1つまたは複数のデータプロセッサを有している。
【0013】
さらに、1つまたは複数のプロセッサを有するコンピュータにロードされた場合に、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法を行うように構成されたプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0014】
スポットモニタリング血中グルコース測定データは、単一の患者のために提供されてもよい。測定期間は、例えば、少なくとも24時間(日)に及んでもよい。例えば、スポットモニタリング血中グルコース値は、平均で1日当たり少なくとも4つのスポットモニタリング値と共に14日の測定期間をカバーしていてもよい。確率を決定するために数日間のスポットモニタリング血中グルコース測定データが考慮に入れられてもよい。スポットモニタリング血中グルコース測定データは、例えば、血中グルコース測定値を平均化することにより、前処理されてもよい。
【0015】
第1のバンド幅は、カーネル密度推定が適用される第1の血中グルコース測定値の全てまたはサブセットのために適用されてもよい。追加的または代替的に、第2のバンド幅は、カーネル密度推定が適用される第2の血中グルコース測定値の全てまたはサブセットのために適用されてもよい。
【0016】
出力データは、ディスプレイなどのシステムの出力デバイスにより出力されてもよい。
【0017】
システムは、以下の群:モバイルまたはセルホン、携帯式コンピュータデバイス、およびラップトップから選択されるデバイス中に実装されてもよい。
【0018】
スポットモニタリング血中グルコース測定から時間依存的な確率を決定するために適用されるカーネル密度推定は、ランダム変数、すなわち、スポットモニタリングされた血中グルコース測定値の確率密度関数を推定するノンパラメトリック法である。
【0019】
予測される血中グルコース値が(高い可能性、例えば、約50%より高い可能性で)有害な血中グルコース値の異なる範囲のうちの1つの範囲内にあるという発見に応答して、応答メッセージがシステムにより生成され、患者またはユーザーに出力されてもよい。例えば、何らかの起こりそうな有害事象(血中グルコース値が有害な血中グルコース値の範囲のうちの1つの範囲内になる可能性がある)に先立って何らかの炭水化物摂取または何らかのインスリン投薬が患者に提案されてもよい。
【0020】
有害な血中グルコースの第1および第2の範囲は、それぞれ低血糖症および高血糖症を指してもよい。
【0021】
一例では、有害な第1および第2の範囲は、低血糖症範囲またはクラスの部分的範囲を指す(例えば、両方の部分的範囲は70mg/dlより低いまたはそれに等しい血中グルコース値を指す)が、低血糖症の異なる部分的範囲をカバーしてもよい。別の例では、有害な第1および第2の範囲は、高血糖症範囲またはクラスの部分的範囲を指す(例えば、両方の部分的範囲は180mg/dlに等しいまたはそれより高い血中グルコース値を指す)が、高血糖症の異なる部分的範囲をカバーしてもよい。
【0022】
確率は、スポットモニタリング血中グルコース測定データから予測期間中の複数の予測時点において決定されてもよい。例えば、24時間の予測期間が適用されてもよい。
【0023】
確率の連続的な経過は、スポットモニタリング血中グルコース測定データから予測期間中の複数の予測時点において決定されてもよい。予測期間に及ぶ連続的な確率曲線が決定されてもよい。そのような連続的な経過または曲線は、非連続的(離散的)に測定されたスポットモニタリング血中グルコース値から決定される。
【0024】
方法において、解析アルゴリズム、特にカーネル密度推定を適用することは、有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた少なくとも第1の血中グルコース測定値を含むスポットモニタリング血中グルコース測定データの第1の測定データサブセットから患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第1の範囲内にある確率を決定することを含んでもよい。患者の血中グルコース値が有害な血中グルコースの第1の範囲内にある確率を決定することは、第1の血中グルコース測定値のみにカーネル密度推定を適用することにより達成されてもよい。患者の血中グルコース値が有害な血中グルコースの第1の範囲内にある確率を決定することは、血中グルコース値が低血糖症を指し示すのかどうかを決定することを含んでもよい。例えば、70mg/dlより低いまたはそれに等しい血中グルコース値は、低血糖症を指し示すと考えられてもよい。
【0025】
解析アルゴリズム、特にカーネル密度推定を適用することは、有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた少なくとも第2の血中グルコース測定値を含むスポットモニタリング血中グルコース測定データの第2の測定データサブセットから患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコースの第2の範囲内にある確率を決定することを含んでもよい。患者の血中グルコース値が有害な血中グルコースの第2の範囲内にある確率を決定することは、第2の血中グルコース測定値のみにカーネル密度推定を適用することにより達成されてもよい。患者の血中グルコース値が有害な血中グルコースの第2の範囲内にある確率を決定することは、血中グルコース値が高血糖症を指し示すのかどうかを決定することを含んでもよい。例えば、180mg/dlに等しいまたはそれより高い血中グルコース値は、高血糖症を指し示すと考えられてもよい。
【0026】
血中グルコース測定値は、血中グルコース値の有害でない範囲に割り当てられた血中グルコース測定値を含んでもよく、血中グルコースの有害でない範囲は、有害な血中グルコースの第1および第2の範囲とは異なる。確率を決定することは、患者の血中グルコース値が予測時点において血中グルコースの有害でない範囲内にある確率を決定することを含んでもよい。そのような確率を決定することのために適用されるカーネルバンド幅は、第1のカーネルバンド幅、および第2のカーネルバンド幅のうちの少なくとも1つとは異なっていてもよい。患者の血中グルコース値が血中グルコースの有害でない範囲内にある確率を決定することは、血中グルコース値が、高血糖症および低血糖症のうちの1つを指し示すものではない血中グルコース値範囲の外側にあるのかどうかを決定することを指してもよい。例えば、70mg/dl~180mg/dlの血中グルコース値は、有害でない範囲を指し示すと考えられてもよい。
【0027】
さらに別の例では、確率を決定することは、患者の血中グルコース値が予測時点においてさらなる血中グルコース範囲内にある確率を決定することであって、不明の範囲とも称され得るさらなるまたは追加の血中グルコース範囲が、全ての血中グルコースの有害でない範囲、有害な血中グルコースの第1の範囲、および有害な血中グルコースの第2の範囲とは異なる、確率を決定することを含んでもよい。そのような確率を決定することのために適用されるカーネルバンド幅は、第1のカーネルバンド幅、第2のカーネルバンド幅、および血中グルコース値が血中グルコースの有害でない範囲内にある確率を決定することのために適用されるカーネルバンド幅のうちの少なくとも1つとは異なっていてもよい。
【0028】
決定することは、カーネル密度推定において、第1および第2のカーネルバンド幅の両方とは異なる第3のカーネルバンド幅を適用することをさらに含んでもよい。
【0029】
方法において、適用することは、カーネル密度推定において周期カーネルを適用することを含んでもよい。
【0030】
第1のカーネルバンド幅は第2のカーネルバンド幅より広くてもよい。例えば、第1のカーネルバンド幅は、約1.2~約2.0の係数だけより広くてもよい。
【0031】
適用することは、第1の血中グルコース測定値からの測定値のために第1のバンド幅値を適用すること、および第1の血中グルコース測定値からのさらなる測定値のために第2のバンド幅値を適用することを含んでもよく、第1のバンド幅値は第2のバンド幅値とは異なる。この例では、有害な第1および第2の範囲にそれぞれ割り当てられた第1および第2の血中グルコース測定値のためのバンド幅変動または適応だけでなく、有害な第1の範囲に割り当てられた異なる第1の血中グルコース測定値がある。第1および第2のバンド幅値は、第2のカーネルバンド幅および第3のカーネルバンド幅のうちの少なくとも1つとは異なっていてもよい。
【0032】
同様に、代替的または追加的に、第2の血中グルコース測定値からの測定値のために第1のバンド幅値を適用すること、および第2の血中グルコース測定値からのさらなる測定値のために第2のバンド幅値を適用することが提供されてもよく、第1のバンド幅値は第2のバンド幅値とは異なる。
【0033】
代替的な例では、単一のバンド幅値が、1つの側において有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた全ての第1の血中グルコース測定値、および/または他の側において有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた全ての第2の血中グルコース測定値のために適用される。
【0034】
以下が提供されてもよい:有害な血中グルコース値の第1の範囲が、患者について低血糖状態を示す血中グルコース測定値に割り当てられ、かつ有害な血中グルコース値の第2の範囲が、患者について高血糖状態を示す血中グルコース測定値に割り当てられる。
【0035】
方法のために上記に開示される実施形態は、適宜変更の上でシステムに適用されてもよい。
【0036】
糖尿病ケアが、患者の血中グルコースレベルが有害でない範囲内にある時間帯を増加させることに向かっていることに焦点を当てると、提案される技術は、時間帯を推定する他に、患者が時間帯の維持に対して課題を経験する日内の特有の時間を強調するための堅牢なやり方を提供する。HbA1cまたは時間帯などの高レベルの測定基準は、理解が容易な治療成功の測定基準を提供するが、必要とされる治療調整に直接的に翻訳することが困難である。日内の問題がある時間、すなわち、有害な範囲内にある患者の血中グルコースレベルを同定することは、より良好に治療問題に関連付けられ、結果的に具体的な調整に翻訳され得る。
【0037】
技術はさらに、患者に対する治療推奨または調整を作出し、かつ日内の特有の期間に患者の焦点をシフトさせるために使用され得る問題がある日内期間の同定を可能とする。日内の時間に基づいて、観察に繋がる異なる基礎となる問題があり得る。これは、例えば、自動化治療推奨システムの部分としてのモデルの利用および教育資料の提供を可能とする。来たる有害事象の決定された確率に基づいて通知が生成され、患者に送信(出力)され得る。カーネル密度推定を伴う方法のため、患者は、有害事象が起こり得る前に通知を受けることができ、それにより行動変化が促され得る。
【0038】
提案される技術はまた、患者特異的な課題およびフィードバックを推進し得る。患者について、有害でない血中グルコース値が日内の課題となる時間の間に決定された場合、正の強化が提供され得る。
【0039】
医療提供者および患者の両方のために迅速な治療成績評価を可能とする包括的な視覚的表現(例えば、出力データによる)が提供され得る。BGM治療評価用のエントリーポイントが提供されてもよい。問題がある時間帯を明らかにすることができ、これをさらに調べることができる。人の治療における潜在的な正または負の変化を指し示すために、有害な状態にある確率の変化の発生が強調され得る。例えば、低血糖状態にある確率が外来の間の一晩に変化した場合、それに合わせた通知が医療提供者に提供され得る。
【0040】
結果としてもたらされる確率密度関数は連続的であり、ビニングに起因する分解能の問題を抱えておらず、該問題は最終的に、不正確な日内期間を決定することの他に、検索される日内期間が複数のビンにわたり広がっている場合に十分な制御と共に日内期間を決定できないことに繋がり得る。
【0041】
さらに、これもスポットモニタリング測定の一種である血中グルコースの自己モニタリング(SMBG)の歪みについて、1日毎を基準とした証拠を通じた正規化により分布が説明され得るので、例えば、ある特定の事象または日内の時間における血中グルコース測定頻度の増加に起因する、データ歪みの効果は、複数日について決定される確率に影響しない。
【0042】
提案される技術により、スポットモニタリング血中グルコース測定結果の評価または分析が改善される。適用される通りの統計解析を含む分析。(測定により)実験的に集められた結果の評価が改善され得る。スポットモニタリング血中グルコース測定結果から、スポットモニタリング血中グルコース測定が実行された測定時点とは異なる時点、特に測定時点に隣接する時点(隣接時点)においても、患者の血中グルコースレベルが有害な(または有害でない)範囲内にある確率についての予測が導出される。
【0043】
さらなる実施形態の説明
以下において、例により、実施形態が図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】スポットモニタリング血中グルコース測定(BGM)データを提供するため、およびそのようなBGMデータから、患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定するための構成の図式的な表現である。
図2】連続グルコースモニタリング(CGM)データから算出された各時点についてのある特定のクラス内にある確率のグラフ表現である。
図3】低血糖症クラスにおけるフィッティング関数と共に離散的なカーネルバンド幅値のグラフ表現である。
図4】高血糖症クラスにおけるフィッティング関数と共に離散的なカーネルバンド幅値のグラフ表現である。
図5】離散的な血中グルコース測定値から推定された推定確率密度関数(PDF)のグラフ表現である。
図6】各日内時間についての高血糖状態、低血糖状態、または有害でない血中グルコース状態にある確率のグラフ表現である。
図7】正規化後の推定PDFの極座標表現である。
図8】CGMデータセットから決定された確率と比較した離散的なBGM値から決定された高血糖状態、低血糖状態、または有害でない血中グルコース状態にある確率のグラフ表現である。
図9】1日当たりの測定数の関数としての平方誤差の残差和(RSS)のグラフ表現である。
図10】離散的なBGM値から決定された、低血糖状態、有害でない血中グルコース状態、高血糖状態、または不特定の状態にある確率のグラフ表現を示す。
図11】離散的なBGM値から決定された、低血糖状態、有害でない血中グルコース状態、高血糖状態、または不特定の状態にある確率の別のグラフ表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
患者の血中グルコース値が予測時点において有害な血中グルコース範囲内にある確率を決定する方法およびシステムが提供される。方法は、1つまたは複数のデータプロセッサを有するシステム10において、測定期間についての複数の血中グルコース測定値を表すスポットモニタリング血中グルコース測定(BGM)データを提供することであって、血中グルコース測定値が、有害な血中グルコース値の第1の範囲に割り当てられた第1の血中グルコース測定値と、有害な血中グルコース値の第2の範囲に割り当てられた第2の血中グルコース測定値とを含み、血中グルコース値の第2の範囲が有害な血中グルコース値の第1の範囲とは異なる、スポットモニタリング血中グルコース測定(BGM)データを提供することを含む。BGMデータは、入力デバイス11を通じてシステム10に提供され、入力デバイス11は、スポットモニタリング測定デバイス(図示せず)またはBGMデータがスポットモニタリング測定後に貯蔵されたデータベースに接続され得る。有害な第1および第2の範囲は、それぞれ低血糖症および高血糖症を指してもよい。
【0046】
カーネル密度推定は、BGMデータの測定データサブセットまたは全てから、患者の血中グルコース値が有害な血中グルコースの第1の範囲内または有害な血中グルコースの第2の範囲内にある予測時点についての確率を決定するために適用される。さらに、確率は、有害でない範囲内にある血中グルコース値について決定されてもよい。
【0047】
システム10において実行されるカーネル密度推定において、第1のカーネルバンド幅が第1の血中グルコース測定値のために適用され、かつ第1のカーネルバンド幅とは異なる第2のカーネルバンド幅が第1の血中グルコース測定値のために適用される。予測時点および予測時点における決定された確率を示す出力データがシステム10において提供され、ディスプレイおよび/またはオーディオデバイスなどの出力デバイス12を通じて出力される。
【0048】
【0049】
一例では、1人の患者についてのスポットモニタリング測定の結果により離散的な測定値が提供される。
【0050】
24時間サイクルを超える作動は、しかしながら、真夜中の直前に測定される血中グルコース測定データもまた、真夜中の直後に決定される結果としてもたらされる確率に影響するはずであることを意味する。伝統的なガウスカーネルはそのような条件に順応することができない。代わりに、
を有するフォン・ミーゼスカーネルが用いられ、これは0≦θ≦2πの角度θの関数である。周期カーネル型の例であるミーゼスカーネルはそのため、モジュール演算が必要とされる事例、例えば、ある特定の値に達すると数がラップアラウンドする事例において機能する。カーネルバンド幅は、のより大きい値についての関係性
を介して分散σ2に関する。値θiは、分布関数の平均に類似した、各フォン・ミーゼスカーネルが集中した位置に対応する。
【0051】
tが範囲[0,24]からのものである1時間単位での日内時間tは、-π≦θ≦πであるような角度に変換されなければならず、これは
により達成される。
【0052】
【0053】
目標は、特有の日内時間、についての特有のクラスcjを有する事象の発生の確率を決定することである。クラスは、有害な血中グルコースの範囲および/または血中グルコースの有害でない範囲に対応してもよい。特に、クラスは、高血糖状態、低血糖状態、および有害でない血中グルコース状態にそれぞれ対応してもよい。血中グルコース測定データにおいて時間がまばらであることは、これを特に困難にする。
【0054】
血中グルコース測定データを使用して条件付きの確率P(t|cj)を算出することができ、ベイズ則を適用することにより、確率P(t|cj)から条件付きの確率P(cj|t)
を算出することができる。
【0055】
クラスcjについての事前確率を式P(cj)=nj/Nから導出することができ、njは特有のクラス内の血中グルコース測定の数であり、Nは血中グルコース測定の総数である。
【0056】
所与の血中グルコース値に近い隣接する時間についての特有の事象クラスcj内にある確率は、血中グルコースの測定された値に依存する。血中グルコース測定が極めて大きい場合、血中グルコース値がその時間の近くで血中グルコースの有害でない範囲内にある可能性は低い。
【0057】
臨床的なCGMデータセットは、特有のグルコース値についてのカーネルバンド幅vを決定するために使用される。顕著なことに、カーネルバンド幅vは血中グルコース値に関して適応性である。これに対し、測定の周囲の時間ウィンドウ中の各クラスのPDFがCGMデータセットから決定される。
【0058】
図2は、CGMデータセットPDFの結果としてもたらされる各時点についてのある特定のクラス内にある確率のグラフ表現を示す。クラスc1は、70mg/dlより低いまたはそれに等しい(低血糖症)かつ区画20までの血中グルコース値に対応し、クラスc2は、70mg/dl~180mg/dl(血中グルコースの有害でない範囲)かつ区画21までの血中グルコース値に対応し、クラスc3は、180mg/dlに等しいまたはそれより高い(高血糖症)かつ区画22までの血中グルコース値に対応する。
【0059】
曲線23は低血糖症PDFに対応し、曲線24は、血中グルコースの有害でない範囲PDFプラス低血糖症PDFに対応する。この例では3つのクラスc1、c2、c3のみがあるので、対応するPDFは各時点について合計して1となる(100%の確率に対応する)。
【0060】
その後に、ガウス分布が次に各クラスについてフィッティングされ、クラス内の任意のグルコースのためのカーネルバンド幅を決定するために、連続的なカーネルバンド幅値31、41がもたらされる。図3は、低血糖症クラスにおいてフィッティング関数31と共に離散的なカーネルバンド幅値30のグラフ表現を示す一方、図4は、高血糖症クラスにおいてフィッティング関数41と共に離散的なカーネルバンド幅値40のグラフ表現を示す。各々のx軸は血中グルコース値gに対応し、y軸はカーネルバンド幅値vに対応する。
【0061】
離散的なカーネルバンド幅値40は、より大きい血中グルコース値gについてより高い程度のノイズを呈する。低血糖症クラスについて、離散的なカーネルバンド幅値30についてのフィッティング関数31は、式
を有する。
【0062】
高血糖症クラスについて、離散的なカーネルバンド幅値40についてのフィッティング関数41は、式
を有する。
【0063】
血中グルコースの有害でない範囲のクラスについて、カーネルバンド幅は定数(v2)である。
【0064】
血中グルコース値の全範囲にわたりカーネルバンド幅vを決定するために、フィッティング関数が組み合わせられる:
【0065】
【0066】
図5は、離散的なBGM値50a、51a、52aからそれぞれ決定された、決定されたPDF50、51、52のグラフ表現を示す。
【0067】
x軸は、1時間単位で0~24の日内時間を表す。PDF50、51、52はまだ正規化されていない。PDF50および血中グルコース測定値50aは有害でない血中グルコース状態に対応し、PDF51および血中グルコース測定値51aは高血糖状態に対応し、PDF52および血中グルコース測定値52aは低血糖状態に対応する。PDF50は、有害でない血中グルコース状態に割り当てられた血中グルコース測定値50aから決定された。PDF51は、高血糖状態への血中グルコース測定値51aから決定された。さらに、PDF52は、低血糖状態への血中グルコース測定値52aから決定された。
【0068】
図5から分かるように、ある特定の日内時間における低血糖および高血糖状態に割り当てられた血中グルコース測定値の出現は、それらの日内時間における対応するPDFのより大きい値と符合する。
【0069】
図6は、1時間単位で0~24の各日内時間についての高血糖状態、低血糖状態、または有害でない血中グルコース状態にある確率のグラフ表現を示す。曲線60は正規化後のPDF52に対応し、曲線61は正規化後のPDF52プラス正規化後のPDF50に対応する。曲線60の下にある区画62は、ある特定の日内時間についての低血糖状態にある確率を表す。曲線60および61の間にある区画63は、ある特定の日内時間についての有害でない血中グルコース状態にある確率を表す。曲線61の上にある区画64は、ある特定の日内時間についての高血糖状態にある確率を表す。
【0070】
日内時間の周期性は、極座標においてより十分に示され得る。ここで、図7は、正規化後の決定されたPDF50、51、52の極座標表現を示す。PDF70、71、および72はそれぞれPDF50、51、および52に対応する。0~24時間の日内時間は、0~2πの角度(時計回り)に対応する。原点73からの半径距離の増加は、PDF70、71、および72のより高い値に対応する。円74は0のPDF値に対応し、円75は1のPDF値に対応する。血中グルコース測定値70a、71a、および72aはそれぞれ血中グルコース測定値50a、51a、および52aに対応する。
【0071】
図8は、CGMデータセットから決定された確率と比較した離散的なBGM値から決定された高血糖状態、低血糖状態、または有害でない血中グルコース状態にある確率のグラフ表現を示す。曲線81の下にある区画80は、離散的なBGM値から決定されたある特定の日内時間についての低血糖状態にある確率を表す。曲線81および曲線83の間にある区画82は、離散的なBGM値から決定されたある特定の日内時間についての有害でない血中グルコース状態にある確率を表す。曲線83の上にある区画84は、離散的なBGM値から決定されたある特定の日内時間についての高血糖状態にある確率を表す。対応的に、曲線81aの下の区画は、CGM値から決定されたある特定の日内時間についての低血糖状態にある確率を表し、曲線81aおよび曲線83aの間の区画は、CGM値から決定されたある特定の日内時間についての有害でない血中グルコース状態にある確率を表し、曲線83aの上の区画は、CGM値から決定されたある特定の日内時間についての高血糖状態にある確率を表す。
【0072】
モデル性能は、CGMデータセット全体を使用した確率を、BGM使用の場合をシミュレートするCGMデータセットのサブセットからの決定された確率と比較することにより評価され得る。この目的のために、14日の期間の36人の患者のCGMデータセットを用いて、グラウンドトゥルースPDFを得た。その後に、カーネルバンド幅を算出し、1日当たりの測定数の変動と共にCGMデータセットの部分試料を使用してPDFを決定した。結果としてもたらされた決定されたPDFを、平方誤差の相対的な残差和(RSS)を介してグラウンドトゥルースPDFと比較した。
【0073】
これは図9により示され、図9は、1日当たりの用いられる測定数の関数としてのRSS誤差のグラフ表現を示す。1日当たりの測定数が増加するにつれて、RSS誤差は減少する。モデル性能は、1日当たり約4回の測定においてプラトーに達する。
【0074】
別の例では、不特定または不明の状態に対応する追加のまたはさらなるクラスを含めることにより、クラスを決定することにおける不確実性を考慮に入れることができる。より多くの血中グルコース測定値を含めるにつれて、不特定の状態のクラスの影響は低減される。不確実性は、1日にわたり均一に広がったデータにより表される。このクラスのデータ点の数を調整して、決定されたPDFに対して単一の血中グルコース測定が有する影響力を制御することができる。そのため、PDFを決定することに対する外れ値事象の影響が制御され得る。
【0075】
図10および図11は、離散的なBGM値から決定された、低血糖状態100、110、有害でない血中グルコース状態101、111、高血糖状態102、112、または不特定もしくは不明の状態103、113にある確率のグラフ表現(血中グルコースについての確率のさらなる範囲)をそれぞれ示す。夜の時間の間に患者によってより少ないデータが測定された。結果として、夜の時間の間の決定された確率はより少ない証拠に基づき、これは、特に午前1時から午前3時までの日内時間についての不特定または不明の状態103、113にあるより大きい確率により指し示される。確率を決定するために用いられる血中グルコース測定データのサイズの減少は、不特定の状態にある確率の増加を結果としてもたらす。図10による例において用いられた血中グルコース測定データのサイズは、図11による例におけるものよりも大きい。対応的に、不特定の状態103に対応する区画は、不特定の状態113に対応する区画よりも小さい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】