(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】呼吸不全の検出および/または予測のための気道内圧の継続的管理のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61M16/00 370Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525075
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 CA2019051604
(87)【国際公開番号】W WO2020093177
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521195076
【氏名又は名称】ノバレスプ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハナフィアラムダリ、ハメド
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、クラウス マイケル
(57)【要約】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラについてさまざまな実施形態が本明細書に記載される。コントローラは、呼吸不全を検出し、あるいは少なくとも1つのPSG信号が測定されたときに呼吸不全を予測するために、現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を生成するプロセッサを備える。呼吸指数値は、ユーザが現時点において直面している呼吸不全を軽減または除去し、あるいは予測される呼吸不全の発生を防止するために、制御信号を更新する必要があるかどうかを判定するためのしきい値と比較される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取り、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)パラメータを測定するための1つのPSGデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記現在の監視時間期間についての少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または
生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記呼吸補助装置の制御信号を更新し、そうでない場合には前記呼吸補助装置の制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記ユーザからの前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定する少なくとも1つのPSGセンサに電子的に結合する、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのPSGが、前記ユーザから測定されたEEG、EOG、EMG、ユーザの呼気中の呼吸CO2、O2、および/または何らかの他の気体のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量、前記ユーザへと供給される空気の圧力、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量、前記ユーザの呼吸器系の抵抗のうちの1つである、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の圧力であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1または5に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0Hz~0.9Hzの周波数範囲について決定される、請求項1、5、または6のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系の抵抗であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzよりも上、好ましくは0.5Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1または5~7のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.3Hz~0.6Hzの周波数範囲について決定される、請求項1または5~8のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のインピーダンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzの周波数について決定される、請求項1または5~9のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記現在の時間期間が、呼吸不全事象の約0.1~120秒前、より好ましくは約0.1~60秒前の範囲であり、前記ベースライン期間は、約120~300秒前の範囲である、請求項4~10のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項12】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項13】
ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助装置と、
前記呼吸補助装置に結合し、使用時にユーザによって着用されてユーザへと空気流を提供する入口要素と、
請求項1~12のいずれか一項によって定義される呼吸補助装置コントローラと
を備えるシステム。
【請求項14】
前記呼吸補助装置が、麻酔器、COPDの酸素供給器、ICU換気装置、家庭用換気装置、人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)装置、BiPAP装置、APAP装置、およびPAP装置を含む任意の種類の侵襲または非侵襲換気(NIV)装置である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信し、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定するための1つのPSGデータを受信するステップと、
前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または
生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記ユーザからの少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定する少なくとも1つのPSGセンサに電子的に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのPSGが、前記ユーザから測定されたEEG、EOG、EMG、ユーザの呼気中の呼吸CO2、O2、および/または何らかの他の気体のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量、前記ユーザへと供給される空気の圧力、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量、前記ユーザの呼吸器系の抵抗のうちの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の圧力であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15または19に記載の方法。
【請求項21】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0Hz~0.9Hzの周波数範囲について決定される、請求項15、19、または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系の抵抗であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzよりも上、好ましくは0.5Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15または19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.3Hz~0.6Hzの周波数範囲について決定される、請求項15または19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のインピーダンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzの周波数について決定される、請求項15または19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記現在の時間期間が、呼吸不全事象の約0.1~120秒前、より好ましくは約0.1~60秒前の範囲であり、前記ベースライン期間は、約120~300秒前の範囲である、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
アクチュエータが、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するために使用され、前記気道内圧の摂動は、少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項15~18または22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH2Oである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信するステップと、
前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項31】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、および
ベースライン加重呼吸状態値からの前記現在の加重呼吸状態値の偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項32】
前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するための前記センサデータが、前記呼吸補助装置から前記ユーザへと供給される空気の圧力および空気流量の少なくとも一方に基づく、請求項31に記載のコントローラ。
【請求項33】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置の使用を最初に開始するときの初期監視期間または前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用しているときにいかなる呼吸不全事象も存在しない健康呼吸期間において前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項34】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用している最中の最近の監視期間に基づいて、前記ユーザから取得された測定値から定期的に更新される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項35】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザと比べて同じ身体サイズ、年齢、性別、および慢性的な呼吸器の状態を有する個人の集団から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項36】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記慢性的な呼吸器の状態について治療を受けた後に正常に呼吸しているときに前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項37】
前記重みの値は、さまざまな患者集団についてさまざまな呼吸器状態および該呼吸器状態のさまざまな重症度レベルに基づいて分類された重みの表における値から決定される、請求項31~36のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項38】
前記ユーザが或る呼吸器状態を有するかどうか、および該呼吸器状態の重症度レベルに応じて、リアクタンス値に適用される第1の重みが、抵抗値に適用される第2の重みと比べてより大きく、あるいはより小さい、請求項31~36のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項39】
前記現在の加重呼吸状態値および前記ベースライン加重呼吸状態値が、インピーダンス値である、請求項31~38のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項40】
前記プロセッサに電気的に結合し、前記プロセッサによって制御され、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するアクチュエータ
を備える、請求項31~39のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項41】
前記呼吸補助装置が前記アクチュエータを備え、あるいは前記呼吸補助装置コントローラが前記アクチュエータを備える、請求項40に記載のコントローラ。
【請求項42】
前記気道内圧の摂動が、FOT測定のための少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項40または41に記載のコントローラ。
【請求項43】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項42に記載のコントローラ。
【請求項44】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH
2Oである、請求項43に記載のコントローラ。
【請求項45】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項31~44のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項46】
第1の空気流経路を介して前記呼吸補助装置に解除可能に結合する第1の端部と、前記呼吸補助を受けるために前記ユーザによって使用される入口要素に第2の空気流経路によって解除可能に結合する第2の端部とを備えるハウジング
を有する、請求項31~45のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項47】
ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助装置と、
前記呼吸補助装置に結合し、使用時にユーザによって着用されてユーザへと空気流を提供する入口要素と、
請求項31~46のいずれか一項によって定義される呼吸補助装置コントローラと
を備えるシステム。
【請求項48】
前記呼吸補助装置が、麻酔器、COPDの酸素供給器、ICU換気装置、家庭用換気装置、人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)装置、BiPAP装置、APAP装置、およびPAP装置を含む任意の種類の侵襲または非侵襲換気(NIV)装置である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのデータを受信するステップと、
前記データを受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、および
前記現在の加重呼吸状態値のベースライン加重呼吸状態値からの偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように電子的に構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項50】
前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するための前記センサデータは、前記呼吸補助装置から前記ユーザへと供給される空気の圧力および空気流量の少なくとも一方に基づく、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置の使用を最初に開始するときの初期監視期間または前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用しているときにいかなる呼吸不全事象も存在しない健康呼吸期間において前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用している最中の最近の監視期間に基づいて、前記ユーザから取得された測定値から定期的に更新される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザと比べて同様の身体サイズ、年齢、および性別を有する個人の集団から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項54】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記慢性的な呼吸器の状態について治療を受けた後に正常に呼吸しているときに前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項55】
前記重みの値は、さまざまな呼吸器状態および該呼吸器状態のさまざまな重症度レベルに基づいて分類された重みの表から決定される、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ユーザが或る呼吸器状態を有するかどうか、および該呼吸器状態の重症度レベルに応じて、リアクタンス値に適用される第1の重みが、抵抗値に適用される第2の重みと比べてより大きく、あるいはより小さい、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記現在の加重呼吸状態値および前記ベースライン加重呼吸状態値が、インピーダンス値である、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
アクチュエータが、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するために使用され、前記気道内圧の摂動は、FOT測定が行われているときに少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項49~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH
2Oである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年11月10日に出願された米国仮特許出願第62/758,577号の利益を主張し、米国仮特許出願第62/758,577号の全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
呼吸不全および他の呼吸関連の特徴の検出および/または予測を通じて呼吸装置のユーザに呼吸補助を提供するように呼吸装置を動作させるために使用され得る装置および方法について、さまざまな実施形態が本明細書において説明される。
【背景技術】
【0003】
急性または慢性の呼吸器疾患(COPD、喘息、ARDS)または呼吸関連症状(例えば、睡眠時無呼吸)を患う個人が、呼吸機能を正常なレベルに維持するために、補助装置を必要とする場合がある。人工呼吸器、気道陽圧(PAP)装置、または持続的気道陽圧(CPAP)装置などの補助装置が、呼吸補助を提供するために一般的である。しかしながら、そのような補助装置は、正常な呼吸機能の維持に関してきわめて重要であるが、これらの装置は、ユーザの呼吸器系へと加わる圧力または流れの大きさに起因するストレスまたは緊張の結果として、ユーザにとって害および苦痛を引き起こす可能性もある。さらに、すべての装置は、現在のところ遡及的であり、呼吸困難または呼吸苦を事前に予測および予防することはできない。したがって、ユーザの不都合を識別して最小限に抑えるための方法およびシステムが望まれている。
【0004】
さまざまな種類の呼吸不全についてさまざまなレベルの機械的支援が存在することが、技術的に知られている。最も基本的な形態においては、吸気酸素濃度を、通常の大気の酸素含有量である21%を上回る割合へと増加させることができる。これは、身体に関する酸素の代謝要求を満たすことを必要とする患者を助ける。次に高いレベルの換気補助は、吸入された気体混合物の酸素含有量が、患者の身体の恒常性を維持するうえで充分でない場合の問題に対処する。これは、CO2の滞留も問題になりつつあることを意味している。これらの種類の呼吸不全については、身体の代謝の最終生成物としてのCO2を除去するために、気道内圧を大気圧よりも上へと積極的に高めるなど、より侵襲的な換気のやり方が必要とされる。これには、きつくフィットするマスクが必要であるため、システムに加えることができる圧力に限界がある。吸入される酸素の増加およびマスクによって促進される気道内圧の上昇ではもはや充分でない場合、ぴったりとフィットさせた気管内チューブおよび/または気管切開を換気装置と併せて使用するいわゆる機械的換気が、換気のために使用される。換気装置によって制御されるパラメータとして、患者へと適用される1回ごとの呼吸の量、および毎分の呼吸数が挙げられ、これらを総合して、例えば毎分などの長い特定の時間区間の患者の換気量を制御することが可能になる。さらに、典型的には、機械的換気は、空気中の21%から100%までの吸入酸素の割合、および呼吸サイクルの吸気対呼気比も制御する。これらの手段が、血中酸素およびCO2レベルを安全な生理学的限界内に維持するために充分でない場合、反対の呼気終末圧力(PEEP)およびI/E吸気対呼気比が適用される。換気の監視に関する限り、呼気終末CO2、吸気CO2、吸気O2、呼気O2、動脈血圧/体積ダイアグラムの血液ガス分析、ならびに患者の吸気および呼気換気量の体積測定など、技術的に知られたさまざまな方法が存在する。
【発明の概要】
【0005】
睡眠時無呼吸において、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の「代表的(gold standard)」な診断試験は、睡眠中に呼吸、心臓、筋肉、および神経のパラメータを監視する睡眠ポリグラフ(PSG)である。これらの種々の生理学的および神経学的パラメータを監視することで、血液の酸素飽和度の評価、換気の休止の評価、睡眠相を判断するためのEEG活動の評価、および自発性の筋肉活動を判断するためのEMGの評価が可能になる。
【0006】
広い態様において、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラが提供され、このコントローラは、ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取り、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)パラメータを測定するための1つのPSGデータを受け取る入力部と、前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記現在の監視時間期間についての少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定することによって生成し、前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成される。
【0007】
少なくとも一実施形態において、前記プロセッサは、前記ユーザからの前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定する少なくとも1つのPSGセンサに電子的に結合する。
【0008】
少なくとも一実施形態において、前記少なくとも1つのPSGは、前記ユーザから測定されたEEG、EOG、EMG、ユーザの呼気中の呼吸CO2、O2、および/または何らかの他の気体のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザへと供給される空気の流量、前記ユーザへと供給される空気の圧力、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量、前記ユーザの呼吸器系の抵抗のうちの1つである。
【0010】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザへと供給される空気の流量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される。
【0011】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザへと供給される空気の圧力であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される。
【0012】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0Hz~0.9Hzの周波数範囲について決定される。
【0013】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザの呼吸器系の抵抗であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzよりも上、好ましくは0.5Hzよりも上の周波数範囲について決定される。
【0014】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.3Hz~0.6Hzの周波数範囲について決定される。
【0015】
少なくとも一実施形態において、前記生理学的呼吸信号は、前記ユーザの呼吸器系のインピーダンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzの周波数について決定される。
【0016】
少なくとも一実施形態において、前記現在の時間期間は、呼吸不全事象の約0.1~120秒前、より好ましくは約0.1~60秒前の範囲であり、前記ベースライン期間は、約120~300秒前の範囲である。
【0017】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラが提供され、このコントローラは、ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行することによって生成し、前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成される。
【0018】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法が提供され、この方法は、前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信し、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定するための1つのPSGデータを受信するステップと、前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定することによって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップとを含む。
【0019】
少なくとも一実施形態において、アクチュエータが、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するために使用され、前記気道内圧の摂動は、少なくとも1つの周波数を有するように生成される。
【0020】
少なくとも一実施形態において、前記少なくとも1つの周波数は、0.001Hz~100THzの範囲内にある。
【0021】
少なくとも一実施形態において、前記少なくとも1つの周波数は、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH2Oである。
【0022】
少なくとも一実施形態においては、測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む。
【0023】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法が提供され、この方法は、前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信するステップと、前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行することによって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップとを含む。
【0024】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラが提供され、このコントローラは、ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取るプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、およびベースライン加重呼吸状態値からの前記現在の加重呼吸状態値の偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成することによって生成し、前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成される。
【0025】
少なくとも一実施形態において、前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するための前記センサデータは、前記呼吸補助装置から前記ユーザへと供給される空気の圧力および空気流量の少なくとも一方に基づく。
【0026】
少なくとも一実施形態において、前記ベースライン加重呼吸状態値は、前記ユーザが前記呼吸補助装置の使用を最初に開始するときの初期監視期間または前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用しているときにいかなる呼吸不全事象も存在しない健康呼吸期間において前記ユーザから取得された測定値から決定される。
【0027】
少なくとも一実施形態において、前記ベースライン加重呼吸状態値は、前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用している最中の最近の監視期間に基づいて、前記ユーザから取得された測定値から定期的に更新される。
【0028】
少なくとも一実施形態において、前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有し、前記ベースライン加重呼吸状態値は、前記ユーザと比べて同じ身体サイズ、年齢、性別、および慢性的な呼吸器の状態を有する個人の集団から決定される。
【0029】
少なくとも一実施形態において、前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値は、前記ユーザが前記慢性的な呼吸器の状態について治療を受けた後に正常に呼吸しているときに前記ユーザから取得された測定値から決定される。
【0030】
少なくとも一実施形態において、前記重みの値は、さまざまな患者集団についてさまざまな呼吸器状態および該呼吸器状態のさまざまな重症度レベルに基づいて分類された重みの表における値から決定される。
【0031】
少なくとも一実施形態において、前記ユーザが或る呼吸器状態を有するかどうか、および該呼吸器状態の重症度レベルに応じて、リアクタンス値に適用される第1の重みが、抵抗値に適用される第2の重みと比べてより大きく、あるいはより小さい。
【0032】
少なくとも一実施形態において、前記現在の加重呼吸状態値および前記ベースライン加重呼吸状態値は、インピーダンス値である。
【0033】
少なくとも一実施形態において、このコントローラは、前記プロセッサに電気的に結合し、前記プロセッサによって制御され、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するアクチュエータを備える。
【0034】
少なくとも一実施形態においては、前記呼吸補助装置が前記アクチュエータを備え、あるいは前記呼吸補助装置コントローラが前記アクチュエータを備える。
【0035】
少なくとも一実施形態において、前記気道内圧の摂動は、FOT測定のための少なくとも1つの周波数を有するように生成される。
【0036】
少なくとも一実施形態において、このコントローラは、第1の空気流経路を介して前記呼吸補助装置に解除可能に結合する第1の端部と、前記呼吸補助を受けるために前記ユーザによって使用される入口要素に第2の空気流経路によって解除可能に結合する第2の端部とを備えるハウジングを有する。
【0037】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法が提供され、この方法は、前記空気流の空気流パラメータを測定するためのデータを受信するステップと、前記データを受信して前記測定を実行し、ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、および前記現在の加重呼吸状態値のベースライン加重呼吸状態値からの偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成することによって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように電子的に構成されたプロセッサを動作させるステップと、前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップとを含む。
【0038】
別の広い態様において、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムが提供され、このシステムは、少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助装置と、前記呼吸補助装置に結合し、使用時にユーザによって着用されてユーザへと空気流を提供する入口要素と、本明細書における適用可能な教示のいずれかによって定義される呼吸補助装置コントローラとを備える。
【0039】
少なくとも一実施形態において、前記呼吸補助装置は、麻酔器、COPDの酸素供給器、ICU換気装置、家庭用換気装置、人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)装置、BiPAP装置、APAP装置、およびPAP装置を含む任意の種類の侵襲または非侵襲換気(NIV)装置である。
【0040】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することで、明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な例が、本出願の好ましい実施形態を示しているが、本出願の技術的思想および技術的範囲に含まれるさまざまな変更および修正が、この詳細な説明から当業者にとって明らかになるがゆえに、あくまでも例示として提示されているにすぎないことを理解されたい。
【0041】
本明細書に記載されるさまざまな実施形態のより良い理解をもたらし、これらのさまざまな実施形態をどのように実施できるのかをより明瞭に示すために、少なくとも1つの典型的な実施形態を示しており、以下で説明される添付の図面を、あくまでも例として参照する。図面は、本明細書に記載される教示の範囲を限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本明細書における教示に従い、呼吸不全の検出および/または予測に基づいてユーザによる使用の最中に呼吸補助装置を制御または調整するための呼吸補助システムの典型的な実施形態のブロック図である。
【0043】
【
図2】本明細書における教示に従い、呼吸不全の検出および/または予測に基づいてユーザによる使用の最中に呼吸補助装置を制御または調整するための呼吸補助システムの別の典型的な実施形態のブロック図である。
【0044】
【
図3】呼吸補助システムと共に使用することができる呼吸補助装置コントローラの典型的な実施形態のブロック図である。
【0045】
【
図4】本明細書における教示に従い、呼吸不全の検出を利用して呼吸補助装置の設定を調整する呼吸補助制御方法の典型的な実施形態のフローチャートである。
【0046】
【
図5】本明細書における教示に従い、呼吸不全の予測を利用して呼吸補助装置の設定を調整する呼吸補助制御方法の典型的な実施形態のフローチャートである。
【0047】
【
図6】抵抗およびリアクタンスの典型的な波形を示している。
【0048】
【
図7】抵抗およびリアクタンスの波形の別の例を示している。
【0049】
【
図8】本明細書における教示による呼吸不全の予測を利用して呼吸補助装置の設定を調整する呼吸補助制御方法の別の典型的な実施形態のフローチャートである。
【0050】
【
図9】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第1の患者から得られた流量データについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0051】
【
図10】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第1の患者から得られた圧力データについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0052】
【
図11】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第2の患者から得られた生理学的呼吸器系の抵抗データについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0053】
【
図12】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第1の患者から得られた一回換気量データについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0054】
【
図13】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第2の患者から得られた生理学的呼吸器系のリアクタンスデータについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0055】
【
図14】患者群から観察された一般的な結果を代表していた第2の患者から得られた生理学的呼吸器系のインピーダンスデータについて、ベースライン時間期間に対する無呼吸事象前の時間期間のパワーの変化のさまざまなパーセンタイルにおける曲線を示すチャートである。
【0056】
本明細書に記載の典型的な実施形態のさらなる態様および特徴は、以下の説明を添付の図面と併せて検討することで、明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0057】
特許請求される主題の少なくとも1つの実施形態の例を提供するために、本明細書の教示によるさまざまな実施形態を、以下で説明する。本明細書に記載されるいかなる実施形態も、特許請求される主題を限定しない。特許請求される主題は、以下で説明されるいずれか1つの装置または方法のすべての特徴を有する装置または方法に限定されず、あるいは本明細書に記載される装置および/または方法のうちの複数またはすべてに共通の特徴に限定されない。特許請求される主題の実施形態ではない本明細書に記載の装置または方法が存在し得る可能性がある。本明細書に記載されている主題であって、本書類において特許請求されていない主題は、継続特許出願などの別の保護手段の主題となる可能性があり、出願人、発明者、または所有者は、決してそのような主題を本書類における開示によって放棄し、権利放棄し、あるいは公衆に捧げることを意図していない。
【0058】
説明を簡潔かつ明瞭にするために、適切と考えられる場合には、対応する要素または類似の要素を示すために図面間で参照番号を繰り返すことがあることを、理解できるであろう。さらに、本明細書に記載の実施形態の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が説明される。しかしながら、本明細書に記載の実施形態を、これらの具体的な詳細によらずに実施できることを、当業者であれば理解できるであろう。他の場合に、本明細書に記載の実施形態を不明瞭にすることがないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。また、説明は、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0059】
本明細書において使用されるとき、「結合した」または「結合させる」という用語が、これらの用語が使用される文脈に応じて、いくつかの異なる意味を有することができることにも留意されたい。例えば、「結合した」または「結合させる」という用語は、機械的な意味合い、流体に関する意味合い、または電気的な意味合いを有することができる。例えば、本明細書において使用されるとき、「結合した」または「結合させる」という用語は、2つの要素または装置が、例えば特定の状況に応じて、電気信号、電気的接続、機械的要素、流体、または流体輸送経路を介して、互いに直接接続されてよく、あるいは1つ以上の中間の要素または装置を介して互いに接続されてよいことを、示すことができる。
【0060】
本明細書において使用されるとき、「および/または」という用語が、論理和(inclusive-or)を表すことを意図していることにも留意されたい。すなわち、「Xおよび/またはY」は、例えば、XまたはYあるいは両方を意味するように意図される。さらなる例として、「X、Y、および/またはZ」は、XまたはYまたはZあるいはこれらの任意の組み合わせを意味するように意図される。
【0061】
本明細書において使用されるとき、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの程度の用語は、修飾される用語について、最終結果が大きくは変化しないような妥当な量の逸脱を意味することに留意されたい。これらの程度の用語を、修飾される用語について、これらに限られるわけではないが1%、2%、5%、または10%などの逸脱を、この逸脱が修飾される用語の意味を否定しないと考えられるならば含むと、解釈することもできる。
【0062】
さらに、本明細書における端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含されるすべての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、それらのすべての数および分数は、例えば、これらに限られるわけではないが1%、2%、5%、または10%など、最終結果が有意には変化しないという条件での言及対象の数の一定量までの変動を意味する「約」という用語によって修飾されると推定されることを、理解すべきである。
【0063】
本明細書の教示に従って説明される装置、システム、または方法の典型的な実施形態は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実装されてよい。例えば、本明細書に記載の実施形態を、少なくとも部分的に、少なくとも1つの処理要素と、少なくとも1つの記憶要素(すなわち、少なくとも1つの揮発性メモリ素子および少なくとも1つの不揮発性メモリ素子)とを備える1つ以上のプログラマブルデバイス上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムを使用することによって実現することができる。ハードウェアは、ハードウェアの実装に応じて、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ボタン、キー、スライダ、などのうちの少なくとも1つを含む1つ以上の入力デバイス、ならびにディスプレイ、スピーカ、プリンタ、などのうちの少なくとも1つを含む1つ以上の出力デバイスを備えることができる。
【0064】
「ユーザ」という用語が、呼吸補助装置を使用している人間を包含することに留意されたい。いくつかの場合、ユーザは、自宅または非医療環境において呼吸補助装置を使用している個人であってよい。他の場合に、ユーザは、例えば診療所または病院などの医療環境において呼吸補助装置を使用している患者であってよい。
【0065】
強制振動法(FOT)としても知られているオシロメトリを、呼吸診断の分野において、ユーザの呼吸器系の機械的特性を明らかにするために、ユーザが正常に呼吸しているときに気道内圧に変動を重畳させ、結果として生じる圧力および流量を測定することによって実行することができる。そして、例えば、測定された圧力および流量を使用して、呼吸器系の機械インピーダンスを決定することができる。この機械インピーダンスは、周波数ドメインにおける流量に対する振動圧力の比であり、周波数の関数としての複素量として表すことができる。より具体的には、機械インピーダンスの実部を、呼吸器系抵抗(Rrs)とみなすことができ、虚部を、呼吸器系リアクタンス(Xrs)とみなすことができる。
【0066】
呼吸器系の複素機械インピーダンスを説明する場合、通常は、関心対象の周波数範囲にわたって平均Rrsおよび平均Xrsの挙動を表すことが一般的である。これらの平均値は、通常は、例えば複数の有限の重なり合う時間ウインドウから得られた圧力および流量の測定値に対してフーリエ変換を実行することにより、周波数ドメイン法を使用して推定されたインピーダンス値を平均化することから計算することができ、あるいは短時間の重なり合う時間期間も効果的に調べることができる再帰的時間ドメイン法から計算された時間経過における平均化から計算することが可能である。
【0067】
しかしながら、本発明の発明者は、呼吸の最中にRrsおよびXrsに生じる時間変動が、個人の呼吸および呼吸器系に関する情報を含む可能性があることを明らかにした。それぞれRvarおよびXvarとして表すことができるRrsおよびXrsの時間変動を、短時間フーリエ変換(STFT)またはウェーブレット変換などの周波数ドメイン法を使用して決定することができる。吸気と呼気との間のXvarの振幅の変動が、呼吸器の健康の徴候を含むことが明らかになっているが、本発明の発明者は、RvarおよびXvarがFOTを使用して決定されており、RvarおよびXvarが時間につれて変化しているとき、RvarとXvarとの間に関連があることを明らかにした。
【0068】
例えば、喘息患者においては抵抗の変動が大きくなり、COPD患者においてはリアクタンスの変動が大きくなることが知られている。しかしながら、本発明の発明者は、COPD患者のリアクタンスのこれらの変動の一部が抵抗の変動へと漏出することを発見し、さらに、本発明の発明者は、これらの両方を正確な診断および監視のために考慮すべきであることも発見した。本発明の発明者は、喘息患者においても同じ状況が発生し、リアクタンスの変動が抵抗の変動へと漏出し、リアクタンスおよび抵抗の両方が診断および効果的な治療のための意思決定に含まれる必要があることを発見した。
【0069】
したがって、RrsおよびXrsを別々に監視する従来からの技術は、個人の肺の健康に関する本質的な情報を欠いている可能性がある。しかしながら、本明細書における教示によれば、RvarおよびXvarが監視され、RvarとXvarとの間の関係を使用して、RvarおよびXvarの対象の人物が呼吸不全に直面しているなど、特定の状況を判断することができる。これは、この分野の何者によっても、これまでに判断されていない。
【0070】
呼吸不全を、呼吸障害または小気道などの人間または動物の呼吸器系の負の変化を引き起こし得るすべての疾患および状態を包含すると理解することができる。いくつかの場合、呼吸不全は、OSAまたは喘息発作などの最中に発生する一時的な呼吸の事象であってよく、あるいは肺がん、嚢胞性線維症、または慢性閉塞性肺疾患などの慢性的な呼吸器の状態に起因してもよい。
【0071】
本明細書における教示の一態様によれば、本発明の発明者は、RvarとXvarとの間の関連または関係を使用して、発生しつつある呼吸不全を検出し、そのような場合に個人をより正常な呼吸に戻す上で役に立つ是正措置をとるために使用される呼吸指数を決定できることを明らかにした。措置は、これらに限られるわけではないが、ユーザの血液における低酸素血症または低炭酸ガス血症を回避するためにユーザの気道を開いた状態に保つために適用されるさまざまな技術を含むことができる。例えば、COPD患者の場合、XvarとRvarとの組み合わせが呼吸不全を示すとき、呼吸補助装置の吸気および呼気の圧力を調整する必要がある。さらに、呼吸補助装置は、やはりその特定の疾患において助けとなるように、患者へと供給される気体の混合物を変更することができる(例えば、COPDにおいて、患者へと供給される酸素の濃度を変化させることができる)。指数は、RvarとXvarとの組み合わせであってよい。従来は、これは一度も行われておらず、好都合なことに、これは、短い時間期間で個人の呼吸器の健康状態を改善するために使用することができる。
【0072】
RvarとXvarとの間の関連または関係を、物理的要素を使用して作製されたベンチトップ型肺シミュレータを使用して決定することができ、その例は、「BENCHTOP WITHIN-BREATH DYNAMIC LUNG SIMULATOR」という名称の2018年11月9日(金)に出願された米国仮特許出願第62/758,394号および「BENCHTOP WITHIN-BREATH DYNAMIC LUNG SIMULATOR」という名称の2019年11月8日(金)に出願された米国特許出願第16/678,153号に記載されており、これらの出願の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0073】
例えば、
図6が、20Hzの摂動周波数を使用してベンチトップ型肺シミュレータ(上記の米国仮出願に記載)についてFOTを実行して得られた抵抗(R
var)波形500およびリアクタンス(X
var)波形502の一例を示している。ベンチトップ型肺シミュレータにおいて抵抗のみが変化させられているが、測定値は、リアクタンスも変化していることを示している。この漏出は、肺の健康のより良好な診断および監視に役立てることができるため、重要である。
【0074】
別の例において、
図7が、やはり20Hzの摂動周波数でベンチトップ型肺シミュレータ(上記の米国仮出願に記載)についてFOTを使用して得られた抵抗(R
var)波形550およびリアクタンス(X
var)波形552を示している。ベンチトップ型肺シミュレータにおいてリアクタンスだけが変化させられているが、同じ周波数において抵抗の漏出が存在し、FOTによって測定される抵抗の変動を生じさせるだけでなく、リアクタンスが変化していないときに測定される平均抵抗も増加させる。
【0075】
本明細書における教示の別の態様によれば、本発明の発明者は、RvarとXvarとの間の関連または関係を、特定の生理学的および/または神経学的パラメータの測定と併せて使用することで、呼吸不全がいつ発生するかを予測し、そのような場合に個人が予測された呼吸不全に直面する可能性を低減するための是正措置を講じるために使用することができる呼吸指数を決定できることを明らかにした。例えば、RvarおよびXvarの変化、したがってZvarの変化、ならびにそれらの加重バージョンRvar,w、Xvar,w、およびZvar,wを、生理学的測定(例えば、CO2)および/または神経学的測定(例えば、EEG)と相関させて、呼吸不全がいつ生じるかを予測することができる。しかしながら、この場合、是正措置が個人が呼吸不全に直面し始めた後にしか行われないがゆえに本質的に反応的である前述の呼吸検出技術とは対照的に、是正措置が、呼吸不全を回避するように予防的である。これまでは、予測に基づく予防的な是正措置は一度も行われておらず、好都合なことに、これを個人の呼吸器の健康状態を悪化させず、さらには/あるいは許容範囲内に留めるように使用することができる。
【0076】
本明細書における教示の別の態様によれば、本発明の発明者は、患者が正常に呼吸しているときに得られたベースライン値に対する生理学的呼吸パラメータの特定の特性の変化を使用して、睡眠時無呼吸または呼吸不全のような呼吸事象がいつ発生するかを予測することができることを明らかにした。これらの教示の例は、
図8~
図14に関してさらに説明される。
【0077】
前述の態様のいずれにおいても、一般的には数字である決定された指数に応じて、呼吸補助装置の動作パラメータを、呼吸補助装置のユーザが直面する呼吸不全が最小限になることを保証するように調整することができる。したがって、これらの指数の少なくとも1つを使用して、呼吸補助装置の動作を制御するために使用されるフィードバック制御信号を生成することができる。これらの指数を、呼吸指数信号と総称することができる多数の数が生成される所与の時間期間について決定することができる。呼吸指数信号を、この所与の時間期間にわたって呼吸補助装置を制御するために使用することができる。
【0078】
したがって、本明細書における教示は、呼吸指数の決定、および呼吸指数と少なくともいくつかの場合にはしきい値によって表されてよい基準値との比較に基づいて、呼吸不全を検出し、あるいは少なくとも1つの他の生理学的信号が測定される場合に呼吸不全を予測するための肺機構のリアルタイム評価を提供する。呼吸不全を低減、緩和、または回避するために、呼吸指数を継続的に決定し、呼吸補助装置の設定を継続的に管理するために使用することができる。
【0079】
これまでは、呼吸補助装置のユーザの呼吸不全を自動化されたやり方で判断することは、不可能であった。したがって、呼吸補助装置は、従来は、呼吸補助装置の動作パラメータを何度も設定し、調整する医師によって手動で制御されていた。これは、ユーザが呼吸不全に直面し始めた場合に、ユーザが直面する呼吸不全の影響または量を低減すべく呼吸補助装置を自動的に調整することが従来は不可能であり、呼吸補助装置の動作の調整に関する応答時間がきわめて重要であるいくつかの状況において致命的となる可能性があるため、有害であった。さらに、そのような従来からの技術は、差し迫った呼吸不全の予測さえも不可能である。
【0080】
より最近では、伝統的なFOT/オシロメトリを含む他の技術が、呼吸補助装置のパラメータを自動的に調整するために使用されている。しかしながら、伝統的なFOTは平均化を使用するため、検出が行われるまでに数秒の遅延が存在する。これも、ユーザの健康にとって有害である。さらに、単なる空気流または酸素レベルの感知などの技術を利用する呼吸補助装置の自動調整は、呼吸器系の全体の健康の充分な情報をもたらさない。
【0081】
本明細書の教示に従い、呼吸補助装置のユーザの指数を決定し、ユーザが呼吸不全に直面していない特定の範囲にユーザの呼吸器の健康を維持するように呼吸補助装置を制御するための制御信号を生成する技術は、使用が自由意思である呼吸補助装置の(すなわち、睡眠時無呼吸装置に関する)使用の採用率を高めると確信される。さらに、この方法は、呼吸不全を比較的迅速に検出または予測することができ、ユーザが直面する呼吸不全のレベル/量を低減し、あるいは呼吸不全の発生さえ防止するように呼吸補助装置を制御すべく迅速に反応的または予防的なステップを講じることもできるため、ユーザが直面するあらゆる呼吸不全への呼吸補助装置の適応の速度の向上などの技術的利点をもたらす。これは、呼吸不全の増大が、ユーザに致命的ではないにしても重大な結果をもたらす可能性があるいくつかの場合に、きわめて重要になり得る。
【0082】
ここで
図1を参照すると、本明細書における教示の少なくとも1つの実施形態に従い、呼吸不全の検出および/または予測に基づいて強制振動法を使用して呼吸補助装置を制御または調整するための呼吸補助システム100のブロック図が示されている。システム100は、空気輸送経路104および108を介し、例えば喉頭チューブ、呼吸マスク、または気管内チューブ109(以下では、「入口要素」と総称する)を介してユーザ110へともたらされる空気流を生成する呼吸補助装置102を備える。空気流は、空気の少なくとも1つの圧力パルス、空気の連続的な流れ、または空気の圧力パルスと空気の連続的な流れとの重ね合わせであってよい。空気流は、呼吸補助装置102の対応する入力制御部を介して呼吸補助装置102の空気圧および流量の少なくとも一方を調整することによって制御可能である。
【0083】
いくつかの実施形態において、呼吸補助装置102は、ユーザに呼吸の支援を提供するための人工呼吸器であってよい。他の実施形態において、呼吸補助装置102は、ユーザに呼吸の支援を提供するためのCPAP、APAP、BiPAP、またはPAP装置であってよい。他の実施形態において、呼吸補助装置102は、これらに限られるわけではないが肺のクリーニングおよび分泌物の吐出においてユーザを補助する呼吸治療提供装置などの呼吸治療提供装置であってよい。他の場合に、呼吸補助装置102は、ORにおける麻酔器、ICU換気装置、COPDの家庭用換気装置および酸素供給器、ならびに呼吸器疾患を抱えるユーザに呼吸補助を提供する任意の他の機械であってよい。したがって、一般に、呼吸不全の検出および/または予測、ならびに呼吸不全を低減し、除去し、あるいは未然に防ぐために取られる予防的または反応的な措置に関して本明細書において説明される教示は、侵襲的な換気(チューブあり)および非侵襲的な換気(チューブなし)を含むすべての種類の換気において使用することが可能である。
【0084】
呼吸補助装置コントローラ106は、空気輸送経路104(流路104とも呼ばれることもある)を介して呼吸補助装置102に結合し、呼吸補助装置102から空気流を受け取り、空気輸送経路108および入口要素109を介してユーザ110に空気流を届ける。本開示における「空気」という用語が、一般に、システムを通る気体および他の粒子の流れを指して使用されることに留意されたい。例えば、人工呼吸器の出力は、限定はしないが、これに限られるわけではないが、例えば典型的には蒸気であるが、気体であってもよい麻酔薬など、空気以外の気体および/または蒸気を含むことができる。PAP装置においては、水蒸気を空気と組み合わせることができる。呼吸補助装置のいくつかの実施形態においては、気体の薬剤(すなわち、ステロイド、酸素、窒素、など)を空気流に添加し、呼吸器の健康および/または測定された快適性レベルに基づいて換気下の患者に提供することができる。例えば、薬剤は、ユーザのCPAP体験を改善するために毎日使用することができる適切な量のステロイドを含むことができる。空気流を、入口要素109を介してユーザ110に届けることができる。本実施形態において、入口要素109は、ユーザ110の鼻および口を覆って装着され、あるいは代替マスクに関して鼻だけを覆って装着されるマスクであってよい。他の実施形態では、入口要素109は、挿管または気管切開によって気管に挿入される気管内チューブであってよい。
【0085】
呼吸装置102が人工呼吸器である実施形態においては、空気輸送経路104(流路とも呼ばれる)だけでなく、実際には2つの空気経路(図示せず)が存在し、一方の経路は吸気に使用され、他方の経路は呼気に使用される。
図1に示される経路は、呼吸補助装置102がPAP装置である場合に当てはまる。したがって、呼吸補助装置102が、空気が空気輸送経路104から空気輸送経路108へと流れることを可能にする少なくとも1つの経路を提供することを、理解できるであろう。さらに、呼吸補助装置コントローラ106が少なくとも部分的または完全に呼吸補助装置102からユーザ110への空気流の経路に「直列に」組み込まれる実施形態が存在できることを、理解できるであろう。
【0086】
この典型的な実施形態において、呼吸補助装置コントローラ106は、ユーザ110へと届けられている空気流のさまざまなパラメータを測定するための1つ以上のセンサ(図示せず)を備える。例えば、センサをユーザ110が着用するマスクに取り付けることができ、これは、センサから得られるセンサデータについて理想的なSNRをもたらすことができる。あるいは、例えば超音波センサなどのセンサを、配管経路に取り付けることができる。いずれの場合も、これらのセンサを使用して、吸気および呼気の両方を測定することができる。しかしながら、PAP装置の場合に、チューブ108が吸気の流れだけを運ぶがゆえに、そのようなセンサはマスクの近くに配置される一方で、人工呼吸器においては、センサをマスクまたは気管内チューブに取り付けることができ、あるいは吸気の経路および呼気の経路に使用されるチューブに沿ったあらゆる場所に配置することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、呼吸補助装置コントローラ106は、これらのセンサを含まなくてもよいが、代わりに、呼吸補助装置102も空気流パラメータを測定するためのセンサを装備することができるため、呼吸補助装置102からこれらのパラメータを読み取ることができる。呼吸補助装置コントローラ106は、空気圧の変化を有する強制振動信号をもたらすための装置をさらに備えることができる。いくつかの実施形態においては、空気圧および空気流の両方を測定するためのセンサが存在する。他の実施形態においては、空気流または空気圧を測定するために専用のセンサを使用することができ、したがって2つ以上のセンサを呼吸補助装置コントローラ106と共に使用することができる。例えば、いくつかのセンサ技術は、動きを検出するためにレーザを使用するか、あるいは超音波を用いて、1つのセンサを使用して圧力および流量の両方を検出することができる(測定される流量は、測定された圧力を既知の抵抗で除算することによって決定することができるため)。
【0088】
呼吸補助装置コントローラ106は、空気量、空気圧、および空気流などの測定された空気流パラメータを使用して、呼吸補助装置102の動作を調整するためのフィードバックとして使用することができる制御信号112を生成することができる。例えば、呼吸補助装置コントローラ106は、例えば、呼吸不全の発生の検出を実行し、ユーザがもはや呼吸不全に直面しないように是正措置を提供するための制御信号を生成する方法300などの制御方法を使用することができる。
【0089】
あるいは、いくつかの実施形態において、呼吸補助コントローラ106は、例えば、呼吸不全がいつ発生するか(例えば、おそらくは次の数分まで、かつ次の数分を含む)を予測し、ユーザが予測された呼吸不全に直面することがないように予防措置を提供するための制御信号を生成する方法500などの制御方法を使用することができる。そのような実施形態において、追加の測定信号を使用して、この予測的な方法を実施することができる。例えば、測定信号は、睡眠ポリグラフ検査(PSG)の最中に得られ、以下ではPSG信号と呼ばれる生理学的および/または神経学的信号のうちの1つ以上であってよい。したがって、PSG信号は、少なくとも1つの生理学的信号および/または少なくとも1つの神経学的信号を含む。そのような信号を測定するためのセンサは、
図1には示されていないが、そのようなセンサは当業者に知られている。
【0090】
検出および予測の両方の実施形態において、制御信号112を使用して、呼吸補助装置102の調整可能なパラメータのうちの1つまたはいくつかあるいはすべてを調整することができる。例えば、調整可能なパラメータは、空気流の流量、空気流の体積、空気流の圧力、空気流の特定の変化(空気流の流量、体積、圧力、および振幅などの変化)の頻度、空気流の振幅、および呼吸補助装置102によって生成され得る空気流の位相のうちの少なくとも1つを含む。
【0091】
ここで
図2を参照すると、本明細書における教示に従い、呼吸不全の検出および/または予測に基づいてユーザによる使用の最中に呼吸補助装置202を制御または調整するための呼吸補助システム200の典型的な実施形態のブロック図が示されている。
図1における要素に対応する要素には、同様の番号が付されている。呼吸補助システム100の構成と同様に、呼吸補助装置202は、空気輸送経路204および204’ならびに呼吸チューブ208を介してユーザ210へともたらされる空気流を生成し、空気流は、特定の条件下で呼吸補助装置202の動作を変更するために、呼吸補助装置コントローラ206によって監視される。
図1と同様に、空気流を、入口要素209を介してユーザ210へと届けることができる。この典型的な実施形態において、入口要素209は、ユーザ210の鼻を覆い、随意によりユーザの口を覆って装着されるマスクであってよい。他の実施形態では、入口要素209は、挿管または気管切開によって気管に挿入される気管内チューブであってよい。
【0092】
図2は、使用され得るさまざまなシステム構成要素に関する追加の詳細を提供する。いくつかの実施形態では、呼吸補助装置202は、呼吸の支援を提供するための人工呼吸器であってよい。他の実施形態において、呼吸補助装置202は、呼吸の支援を提供するためのPAP装置であってよい。呼吸補助装置102について説明したように、他の選択肢が、呼吸補助装置202について利用可能である。
【0093】
本実施形態において、呼吸補助装置202は人工呼吸器であり、呼吸補助装置202を出る空気流および呼吸補助装置202に戻る空気流のそれぞれのための吸気チューブ204および呼気チューブ204’を提供する。吸気チューブ204および呼気チューブ204’を、チューブコネクタ214を使用して、一方の空気流経路において呼吸補助装置コントローラ206に接続することができる。次いで、空気流は、呼吸補助装置コントローラ206の別の空気流経路を通ってユーザ210へと流れることができる。吸気チューブ204からの空気流を、所望の周波数の空気の振動を生じさせるモータまたはアクチュエータ(以下では、両方の場合を指して「アクチュエータ」と呼ぶ)216によって生成される強制振動からの摂動の対象とすることができる。アクチュエータは、例えば、スピーカ、電磁石、圧電阻素子、ピストン、およびモータのうちの1つであってよい。アクチュエータの選択は、装置206の物理的なサイズなどの設計仕様、ならびに部品表(Bill of Materials)(BOM)に課される制限に依存し得る。いくつかの実施形態において、アクチュエータ216が、呼吸補助装置コントローラ206にではなく、呼吸補助装置202に含まれてよいことに留意されたい。あるいは、いくつかの実施形態においては、呼吸補助装置202および呼吸補助装置コントローラ206の両方が、別個のアクチュエータを含んでもよい。
【0094】
振動圧力信号は、空気圧および空気流の測定の実行に関して現実的な任意の周波数であってよい振動周波数を有する。例えば、周波数は、0.001Hz~100MHzの範囲、または最大1THzまでの範囲も含むことができるが、これら限定されない。いくつかの実施形態において、周波数範囲は、5Hz、10Hz、または20Hzの下側周波数から100MHzまたは1THzの上側周波数までである。いくつかの実施形態において、周波数範囲は、40Hzから100MHzまたは1THzの上側周波数までである。いくつかの実施形態において、周波数は、約37Hzまたは約79Hzであり、これらの周波数の高調波は、FOTの測定中に互いに干渉することがない。いくつかの実施形態において、異なる高調波を有する多周波信号を使用することができる。例えば、振動信号は、方形波または三角波であってよい。多周波信号は、異なる周波数においてインピーダンスを計算する場合などの特定の状況において有用である。振動圧力信号は、ユーザ210の修正呼吸および/または自発呼吸に重畳される。
【0095】
いくつかの実施形態においては、生成される振動圧力信号を、所望の圧力をもたらすように制御することもできる。いくつかの場合、約0.01cmH2O~約2cmH2Oのピークツーピーク値を超えない圧力(すなわち、生成される振動信号の振幅)を生成することが好ましいかもしれない。いくつかの他の場合、圧力は、振動の周波数、あるいは流量センサおよび/または圧力センサの感度および精度に基づいて選択されてよい。いくつかの場合、振動の振幅(すなわち、圧力)は、逆周波数の傾向(1/f)に従うことができる。例えば、6、11、および19Hzの周波数が使用される場合、6Hzにおける圧力の振幅は、11Hzにおける圧力の振幅よりも大きい。同様に、11Hzにおける圧力の振幅は、19Hzにおける圧力の振幅よりも大きい。
【0096】
吸気チューブ204および呼気チューブ204’を、ユーザ210に到達する前に、呼吸チューブ208に接続されたチューブ継手218を使用する接合部において組み合わせることができる。チューブ継手218の後で、組み合わせられた空気流を感知して、空気流および空気圧などのパラメータを決定することができる。この典型的な実施形態においては、流れトランスデューサ220および圧力トランスデューサ221を備える感知システムが使用される。流れトランスデューサ220が、流量トランスデューサまたは空気流トランスデューサとも呼ばれることに、留意されたい。トランスデューサ220および221に使用されるセンサの種類は、例えば、これに限られるわけではないが超音波、空気圧、および圧電トランスデューサなど、任意の適切なトランスデューサ装置であってよい。いくつかの実施形態においては、空気流を、センサとして使用される呼吸気流計をまたぐ圧力降下を記録することによって測定および計算することができる。
【0097】
流れトランスデューサ220および圧力トランスデューサ221の出力を、さらなる処理に先立って事前調整することができる。例えば、トランスデューサ220および221からの出力信号を、所望の信号振幅を得るために適切な増幅器224によって増幅することができる。例えば、いくつかの実施形態において、増幅器224は、関心対象の周波数への注目を助けるべく信号雑音を低減するために使用することができるロックイン増幅器であってよい。各々の測定信号について別々の増幅器を使用することができ、あるいはデュアルチャネル増幅器を使用してもよいことに、留意されたい。
【0098】
次いで、増幅された信号をフィルタ処理して、無関係な周波数ドメイン情報を除去することができる。本実施形態においては、アクチュエータ216によって生成される振動の周波数に対応するように中心周波数が調整される帯域通過フィルタ226を使用することができる。いくつかの実施形態において、通過帯域を、単一の周波数がFOTに使用されるときにノッチフィルタを使用できるように、充分に狭くすることができる。帯域通過フィルタ226は、狭い通過帯域を有するが、変調された呼吸情報を含む測定信号内の任意のサイドローブを含むように充分な大きさであることが好ましい。
【0099】
信号が増幅およびフィルタ処理された後に、信号は、以下でさらに詳しく説明されるように、呼吸補助装置202へともたらされて呼吸補助装置202の動作を調整する制御信号212を生成するために、さらなる処理および分析のためにプロセッサ228によって受信される。いくつかの実施形態において、プロセッサ228は、プログラマブル・マイクロコントローラまたはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプログラマブルデバイスであってよい。他の実施形態において、プロセッサは、ArduinoプラットフォームまたはRaspberry Piプラットフォームなどのシングルボード・コンピュータ・システム・プラットフォームの一部であってよい。さらに他の実施形態において、信号のフィルタ処理は、別個のフィルタ処理装置226が必要でなくてもよいように、デジタル信号処理(DSP)技術の使用などにより、プロセッサ228を使用して実行されてもよい。
【0100】
制御信号212を、当業者に知られている任意の方法を使用して呼吸補助装置202へともたらすことができる。例えば、制御信号212を、有線接続を介してもたらすことができる。しかしながら、他の実施態様において、制御信号は、呼吸補助装置202に無線で通信されてもよい。測定された空気流パラメータおよび制御信号を、呼吸補助装置コントローラ206に設けられる随意によるディスプレイ230に表示することも可能である。
【0101】
呼吸補助装置コントローラ206を、呼吸補助装置202の動作の不断の調整を可能にするために、ユーザ210へともたらされる空気流の圧力および流量を継続的に監視するように動作するように構成することができる。そうすることにより、リアルタイムまたはほぼリアルタイムの適応的な調整を行って、ユーザ210が直面する呼吸不全を最小限に抑えることを、可能にすることができる。他の実施形態においては、呼吸補助装置コントローラ206を、例えば30秒ごとまたは60秒ごとなどの設定された時間間隔で間欠的に動作するように制御してもよい。そのような動作条件は、呼吸補助装置コントローラ206が電池で動作する場合に好ましく、呼吸補助装置202の稼働寿命を延ばすのに役立つ可能性がある。
【0102】
システム200が、ユーザが呼吸不全にまもなく直面することを予測するために使用される実施形態において、感知システムは、ガスセンサ222と、PSGセンサ223と総称されるPSGで使用される1つ以上のセンサとを含む少なくとも2つの追加のセンサをさらに含む。ガスセンサ222は、CO2ガスセンサであってよい。PSGセンサ223は、少なくとも1つの生理学的信号および/または少なくとも1つの神経学的信号を取得するために使用される1つ以上のセンサを含むことができる。例えば、生理学的信号は、ECG信号、EOG信号、およびEMG信号のうちの1つ以上を含み、神経学的信号は、EEG信号および末梢神経生理学的検査(PNE)信号のうちの1つ以上を含む。これらの信号を、当業者に知られているように、ユーザ210上の特定の位置に配置された電極を使用して測定することができる。CO2信号も、取得することができる生理学的測定値である。PSG信号を、増幅器224および帯域通過フィルタ226の種々のチャネルによって既知のとおりに前処理して、これらの信号がさらなる分析のためにプロセッサ228へと送られる前に、これらの特定の信号のノイズを低減することもできる。PSG信号の増幅およびフィルタ処理のための環境は、当業者に知られている。呼吸不全を検出して反応的な措置をとるだけの実施形態において、ガスセンサ222およびPSGセンサ223は、システム200に含まれない。
【0103】
図3が、空気流の監視および呼吸補助装置202の制御に必要なさまざまな構成要素が単一の装置内に取り付けられ、装置を呼吸補助装置202に物理的に「直列に」使用することを可能にする一体型呼吸補助装置コントローラ250の典型的な実施形態を示している。したがって、呼吸補助装置コントローラ250を、直列装置と呼ぶことができる。
図3に示される参照番号は、
図2に示した構成要素についてすでに説明した参照番号におおむね対応する。
【0104】
さらに、一体型呼吸補助装置コントローラ250が、ユーザが直面するであろう呼吸不全の予測に使用される実施形態において、コントローラ250は、ガスセンサ222をさらに含み、PSGセンサ223に接続されてよい。いくつかの実施形態においては、PSGセンサ223によって測定された信号を、例えば無線通信ラジオまたはBlueToothモジュールなどの短距離通信モジュール(どちらも図示せず)を含むセンサ一体型呼吸補助装置コントローラ250に無線で送信することができる。したがって、呼吸不全を検出して反応的な措置だけを行う実施形態において、ガスセンサ222およびPSGセンサ223は、一体型呼吸補助装置コントローラ250に含まれない。
【0105】
呼吸補助装置コントローラ250は、第1の端部252aおよび第2の端部252bを備えるハウジング252を有する。端部252bを、チューブコネクタ214を介して吸気チューブ204および呼気チューブ204’に取り付けることができる。端部252aを、チューブ継手218’を使用して呼吸チューブ208に取り付けて、ユーザ210へと換気を提供することができる。吸気チューブ204と呼気チューブ204’とを接合する接合部(すなわち、チューブコネクタ214)が、装置250の内部にあり、チューブ継手218も装置250の内部にあることに、留意されたい。したがって、いくつかの実施形態においては、呼吸補助装置コントローラ206を、呼吸チューブ208を吸気チューブ204および呼気チューブ204’に取り付け、接続し、あるいは接合するための拡張チューブアダプタとみなすことができる。しかしながら、呼吸補助装置コントローラ250がCPAP装置と共に使用される場合、呼気がこの場合には大気へと排出されるがゆえに、呼気チューブ204’が存在しないことに留意されたい。
【0106】
ここで
図4を参照すると、圧力および空気流の測定値を取得し、これらの測定値を使用してユーザの呼吸不全の発生を検出し、呼吸補助装置の動作を制御してユーザの呼吸不全を停止させ、あるいは軽減するために使用することができる呼吸補助制御方法300の典型的な実施形態を示すフローチャートが示されている。説明を容易にするために、呼吸補助システム200において示した要素を、方法300のさまざまなステップの説明において使用する。しかしながら、この技術を、一体型呼吸補助装置コントローラ250においても使用することができることを、理解すべきである。
【0107】
方法300は、呼吸補助装置202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに開始することができる。動作302に始まって、プロセッサ228は、所望の周波数範囲内の1つ以上の振動周波数を有する振動圧力信号を生成するようにアクチュエータ216(例えば、モータ)を動作させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、所望の周波数範囲は、0.01Hz~1THzの間の任意の周波数であってよい。すでに述べたように、振動は、単一周波数振動であってよい。しかしながら、他の実施形態において、振動圧力信号は、いくつかの振動周波数を含むことができる(すなわち、振動が正弦波ではない場合)。動作302を、すでに述べたように、連続的または周期的に行うことができる。
【0108】
動作304において、流れトランスデューサ220および圧力トランスデューサ221などの呼吸補助装置コントローラ206内のセンサが、ユーザへと送られる空気流(摂動を含む)の流量および圧力をそれぞれ測定する。検出された信号を増幅器224によって増幅し、この場合にはアクチュエータ216によって生成された振動の周波数に対応する中心周波数を有する帯域通過フィルタ226によってフィルタ処理することができる。やはりすでに述べたように、いくつかの実施形態においては、通過帯域を、単一の周波数がFOT測定において使用される場合にノッチフィルタを代わりに使用することができるように、充分に狭くすることができる。
【0109】
増幅およびフィルタ処理を適用することによって信号を処理した後に、処理後の信号は、さらなる処理のためにプロセッサ228によって受信される。動作306において、プロセッサ228は、測定された信号を使用して、時間につれての空気流の体積V(t)およびユーザの呼吸器系の機械インピーダンスを決定することができる。体積V(t)を、測定された流量信号に既知のバイアスまたは一定の体積を加え、積分することによって決定することができる。機械インピーダンスを決定するために、プロセッサ228は、処理された流量および圧力信号にウインドウ処理関数を適用して周期性の強制(すなわち、周波数ドメインにおける漏れの低減)を助け、次いで各々のウインドウにおいてこれらの信号のフーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換FFTによる)を実行することができる。いくつかの実施形態において、信号に、アクチュエータ216によって生成される6Hzの単一周波数の正弦波振動に関して1/6秒など、短い期間についてウインドウを適用することができる。不確定性原理の下で、より短い期間は、周波数分解能の低下につながる可能性があるが、時間分解能は向上する。一般に、有用なウインドウ処理期間は、周波数分解能の過度の低下をもたらすことがない短いウインドウを提供するために、振動圧力信号に使用される最大振動周波数の逆数に対応することができる。他の実施形態では、ウインドウは、例えば4秒など、より長くてもよい。信号を、帯域通過フィルタ処理および短いウインドウ処理時間ゆえに、充分に不変であると仮定できることを、理解できるであろう。いくつかの実施形態においては、ハニング型またはハミング型のウインドウを使用して、ウインドウのエッジ付近の信号振幅を小さくして周波数ドメインにおける漏れを低減することによって周期性の強化をさらに助けることができる。他の実施形態において、ウインドウは、重なり合うウインドウ(例えば、隣接するウインドウが最大で50%の重なり合いを有する)であってもよい。他の実施形態においては、他の種類のウインドウが使用に適するかもしれない。例えば、いくつかの場合に、矩形のウインドウを使用することが可能であり得る。
【0110】
さらに動作306において、ウインドウ処理関数が適用された後に、各々の時間ウインドウにおける圧力および流量のフーリエ変換を使用して、その時間ウインドウにおける平均機械インピーダンスZ
rsの推定値を求めることができる。より具体的には、機械インピーダンスを、各々のウインドウにおける圧力信号および流量信号のフーリエ変換の間の比として表すことができ、
【数1】
ここで、角周波数ω=2πf(fはアクチュエータ216の振動周波数)において、P(ω)は、測定された圧力信号のFFTであり、Q(ω)は、測定された流量信号のFFTである。式1を適用し、ユーザ210の気道開口部において測定された圧力および流量を使用することによって、インピーダンスを決定することができる。
【0111】
機械インピーダンスZ
rsは、胸腔内および胸腔外気道、肺組織、ならびに胸壁の空気流抵抗に主に起因し得る呼吸抵抗(R
rs)に対応する実部と、肺および胸壁の弾性的性質ならびに振動する空気の慣性から生じ得るリアクタンス(X
rs)に対応する虚部とによる複素量である。したがって、インピーダンスを、式2に示されるように、実部と虚部との和として記述することができる。
Z
rs(ω)=R
rs(ω)+jX
rs(ω)(2)
パラメータR
rs(ω)およびX
rs(ω)を、さまざまな呼吸器モデルを測定されたデータに当てはめて呼吸器系のさまざまな特性を識別することによって、特徴付けることができる。例えば、一般的に使用されるモデルは、X
rs(ω)を周波数ωに対して一定であると仮定することができる単一区画モデルであり、したがって
【数2】
であり、E
rsおよびI
rsは、それぞれ呼吸器系のエラスタンスおよびイナータンスを表す理想化された集中要素であってよい。したがって、呼吸器系の特性の例は、リアクタンス/エラスタンスを含み、イナータンスも含む。
【0112】
さらに、各々の時間ウインドウにおける抵抗およびリアクタンスの決定が、選択された振動周波数について、時間に対する連続関数Rvar(t)およびXvar(t)をもたらすことにも留意されたい。FOT振動信号に複数の周波数が使用される場合、抵抗およびリアクタンスを、各々の周波数について別個に上述したやり方で計算することができる。Rvar(t)およびXvar(t)の別個の時間経過挙動を、分析のために考慮される各々の周波数について発生させることができる。あるいは、Xvarの平均値を、Xvarの平均値を振動周波数に対してプロットすることによって、異なる周波数について調査することができる。同様に、Rvarについても同じことを行うことができる。各々の周波数を個別かつ順次にフィルタ処理するように構成されてよい単一のバンドパスフィルタが存在してもよく、あるいはフィルタ処理を実行するために同時に使用される一式の振動周波数のうちの固有の周波数にそれぞれ調整された複数の帯域通過フィルタ(例えば、くし形フィルタ)が存在してもよいことに、留意されたい。すでに述べたように、体積V(t)を、流量信号の積分として決定することができる。
【0113】
さらに動作306において、式(1)に従って決定されたインピーダンスが、初期時間期間にわたって繰り返し実行され、ユーザの正常で健康な機能する呼吸器系を表すユーザの呼吸器系のインピーダンスZref,w(t)のベースラインが得られる。これを、さまざまなやり方で行うことが可能であり、ベースライン加重インピーダンスZref,w(t)を決定する方法の一例は、式(2)
Zref,w(t)=[(Rvar(t)*wR)2+(Xvar(t)*wx)2]1/2(2)
に従って重み付けされた尺度を求めることであり、
ここで、Zref,w(t)は、例えば10秒などの監視時間期間についてのベースライン加重インピーダンスであるが、5秒、20秒、および60秒などの他の時間期間を使用することもできる。より長い時間期間が使用される場合、ノイズを低減するために平均化を使用することができる。例えば、ベースライン測定値を決定するためのデータを収集するために使用される時間が60秒である場合、平均化を6回行って、10秒の監視時間期間についてのベースライン読み取り値を得ることができる。ベースライン加重インピーダンス値は、ユーザが呼吸補助装置202の使用を初めて開始する初期監視時間期間において決定される。ユーザごとにベースライン読み取り値を決定する利点は、パーソナライズの見地である。例えば、同じ身体サイズ(例えば、身長および質量)および同じ性別の2名の患者が、依然として2つの異なる呼吸パターンを有する可能性があり、したがって異なるベースライン加重インピーダンス値を有すると考えられる。
【0114】
パラメータwRおよびwXは、監視時間区間において決定された抵抗およびリアクタンスにそれぞれ適用される重みである。重みwRおよびwXを、例えば喘息などの呼吸状態を有する場合の特定のユーザに基づいて決定することができる。重みを実装することができる1つのやり方は、さまざまな疾患(すなわち、呼吸器状態)および各疾患(すなわち、各々の呼吸器状態)のさまざまな重症度レベルについて重みのテーブルを有することである。重みを文献研究から決定することができ、次いで、所与の呼吸器状態についての特定の重みが、特定のユーザについて、その特定のユーザがその呼吸器状態を有するときに使用される。あるいは、ユーザについて初期評価を実行することによって、ユーザごとに重みを決定することができる。
【0115】
重みパラメータについてのこの初期評価を、抵抗またはリアクタンスのどちらが特定のユーザにとってより重要であるかを決定するために行うことができ、次いで、その決定に基づいて重みを関連付けることができる。例えば、平均Xおよび平均Rの測定値から、ユーザを、これらに限られるわけではないが喘息、COPD、CF、またはいびきなどの特定の呼吸器状態を有すると分類することができる(例えば、いびきは差し迫る気道閉鎖の警報であり得るため、いびきを呼吸不全として検出することができる)。呼吸器状態の分類に基づいて、ユーザのRおよびXの相対的な重み付けは、同じ呼吸器状態を有する集団のデータに基づいてデータベースまたはルックアップテーブルを使用して決定される。一例として、喘息を有すると分類されたユーザにおいてRvarをXvarよりも高く重み付けることができる一方で、COPDを有すると分類されたユーザにおいてXvarをRvarよりも高く重み付けることができる。したがって、ユーザが特定の呼吸器状態およびその特定の呼吸器状態の特定の重症度レベルを有するかどうかに応じて、抵抗に適用される重みと比べてより大きい重み、またはより小さい重みを、リアクタンスに適用することができる。
【0116】
代案の実施形態において、ベースライン加重インピーダンス値を、初期ベースライン加重インピーダンスが決定された後に、一定の間隔で決定し直すことができる。例えば、ベースライン加重インピーダンスを、5分ごと、10分ごと、30分ごと、60分ごと、またはそれ以上にて決定することができる。見直された最新のベースライン加重インピーダンス値を決定する頻度を、ユーザが何らかの種類の慢性的な呼吸器の状態を抱えているかどうかに基づいて決定することができる。例えば、患者が重度の睡眠時無呼吸を抱えている場合、睡眠の最初の5分間が、残りの夜の良好な基準となり得る。しかしながら、患者がCOPDまたは重度の喘息に罹患している場合、重みを患者が入眠する前に、より定期的に、すなわち5分ごとに決定することができる。これは、疾患の性質、ならびに喘息およびCOPDが小気道疾患であるが、睡眠時無呼吸が上気道疾患であるという事実に起因する。
【0117】
ユーザが慢性的な呼吸器の状態を抱えている場合に、ユーザが何らかの治療を受け、ユーザの呼吸器系が正常に働いている直後に、ベースライン加重インピーダンス値をユーザについて決定することができることに留意されたい。治療は、空気パファーからの吸入薬、気道の拡張を助けるために他の薬物を摂取することまたは他の装置から治療を受けること、ならびに場合によっては肺からの粘液をゆるめて除去することを含むことができる。あるいは、ベースライン加重インピーダンス値を、体重(+/-10%以内)、身長(+/-10%以内)、および性別など、ユーザと同等の生理学的特性を有する健康な集団の標準呼吸パターンに基づいて、そのユーザについて予測される標準呼吸パターンを使用することから得ることができる。あるいは、ベースライン加重インピーダンス値を、標準呼吸パターンを使用し、さらにユーザが治療を受けた後にいくつかの測定を実行することによって得ることもできる。
【0118】
次いで、方法300は動作308に進み、方法300が動作320において終了するまで呼吸補助装置202によって実施されている間に、加重インピーダンスZvar,w(t)の継続的な監視が実行される。とくには、動作308において、現在の監視時間期間についての現在の加重インピーダンスZvar,w(t)は、式(3)に従って決定される。
Zvar,w(t)=[(Rvar(t)*wR)2+(Xvar(t)*wx)2]1/2(3)
式(3)が、同じ重みが適用されるという点で式(2)と同様であるが、これが現在の時間期間のRvar(t)およびXvar(t)について行われることを、見て取ることができる。
【0119】
次いで、方法300は動作310に進み、時間変化する呼吸指数K(t)の値(すなわち、呼吸指数信号)が、ベースライン加重インピーダンスZ
ref,w(t)現在の加重インピーダンスZ
var,w(t)の組み合わせに基づいて決定される。例えば、指数K(t)を、ベースライン加重インピーダンスZ
ref,w(t)に対する現在の加重インピーダンスZ
var,w(t)の偏差に基づいて決定することができ、その例を式4に示す。
【数3】
したがって、呼吸指数信号K(t)は1に正規化される。指数K(t)の値を決定するための上記の方法が一例として提供されており、代案の実施形態において、指数K(t)を他の方法を使用して決定してもよいことに留意されたい。例えば、指数K(t)を、Z
ref,w(t)に対するZ
var,w(t)の正規化された合計の標準偏差を使用して決定することができる。あるいは、他の統計的方法を適用して、Z
ref,w(t)に対するZ
var,w(t)の変化を決定/追跡することができる。指数信号が、本方法が適用された第1の監視時間期間に対する監視時間期間の数に対応する整数である指数nに関するものであることに留意されたい。したがって、各々の時間期間は、その特定の時間期間の単一のインデックス値を定めるために使用されるいくつかのデータ点を含む。
【0120】
次いで、方法300は、指数K(t)をしきい値Thと比較する動作312に進む。しきい値Thの値を、実験データまたは母集団データに基づいて各々の呼吸不全状態を検出するために定められたしきい値の表から取得することができる。したがって、現在の監視時間期間のユーザの呼吸パターンの指数値K(t)が、呼吸不全を検出(または、方法400のように予測)するために使用され、指数値K(t)を、治療を調整する(すなわち、ユーザのニーズに応じて呼吸補助装置の設定を調整する)ために使用することができる。指数K(t)がしきい値よりも小さい場合、これは、ユーザが呼吸不全に直面していないこと、またはユーザの呼吸器の健康に大きな変化がないことを示す。この場合、方法300は、呼吸補助装置202の現在の設定を維持する動作314に進む。
【0121】
しかしながら、指数K(t)がしきい値Thの値よりも大きい場合、指数K(t)としきい値との比較は、ユーザが呼吸不全に直面している可能性を示し、あるいは現在の監視時間期間中にユーザの呼吸器の健康に他の何らかの有意な変化があったことを示す。この場合、方法300は動作316に進み、ユーザの呼吸器の健康が改善し、それまでに直面していた呼吸不全にもはや直面しなくなるように、呼吸補助装置の設定が変更される。調整をさまざまなやり方で行うことができる。呼吸補助装置202の動作を調整する実際のやり方は、ユーザのベースラインの呼吸器の健康に依存し得る。呼吸補助装置202の動作の調整の一例は、次の監視時間期間について指数値K(t)で所定の圧力係数を乗算し、結果を古い圧力(Pold)に適用して新しい圧力(Pnew)を決定するなど、何らかの方法によって圧力を更新することである。一例として、所定の圧力係数は5cmH20であってよい。所定の圧力係数の大きさは、ユーザが現時点において慢性の呼吸器の状態にあるかどうかに基づいて決定されてよい。例えば、軽度の睡眠時無呼吸は、呼吸補助装置202を使用して5cmH2Oの圧力の空気流を適用することによって軽減可能である。しかしながら、重度の睡眠時無呼吸は、呼吸補助装置202を使用して10cmH2Oの圧力の空気流を必要とする可能性がある。他方で、COPD患者の場合、非侵襲換気(NIV)デバイスを、5および15cmH2Oという所定の2つのレベルの圧力で使用することができ、これは、これらのデバイスについて典型的に使用される圧力範囲が約0~20cmH2Oの範囲であるため、許容可能である。圧力を、患者が慢性状態に対応していないときの測定値で決定することができ(すなわち、測定を患者が睡眠中でない日中に実行することができる)、あるいは特定の患者特性および/または慢性状態の重症度に鑑みて患者に適した圧力レベルを決定する文献からの表に基づいて決定することができる。あるいは、家庭医、呼吸器科医、または睡眠医などの医師が、やはり文献に基づいて圧力レベルを決定し、患者に処方することができる。
【0122】
方法300が動作314または316を実行した後に、方法300は、方法300の動作を続けるべきかどうかを判断する動作318へと進む。動作318における条件が真である場合、方法300は動作320に進み、終了する。動作318における条件が真でない場合、方法300は動作304に進み、センサ値の取得を続け、現在の加重インピーダンスを監視し、指数値を生成し、指数値をしきい値と比較して、ユーザがいつ呼吸不全に直面しているかを判定し、直面している場合には、呼吸不全を軽減し、あるいは停止させるために呼吸補助装置202の動作を更新する。
【0123】
ここで
図5を参照すると、圧力および空気流の測定値と、少なくとも1つの他の生理学的測定値とを取得し、これらの測定値を使用して、ユーザの呼吸不全がいつ発生するかを予測し、予測される呼吸不全の発生を防止するように呼吸補助装置の動作を制御する予防的な措置を講じるために使用することができる呼吸補助制御方法400の典型的な実施形態を示すフローチャートが示されている。
図4の説明と同様に、説明を容易にするために、呼吸補助システム200において示した要素を、方法400のさまざまなステップの説明において使用する。しかしながら、この技術を、一体型呼吸補助装置コントローラ250においても使用することができることを、理解すべきである。
【0124】
方法400は、方法300と同様のやり方で、呼吸補助装置202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに開始する。動作402は、FOTを実行するための動作302と同じであり、動作404は、流れトランスデューサ220および圧力トランスデューサ221などのセンサが、ユーザへと送られる空気流(摂動を含む)の流量および圧力をそれぞれ測定するために使用され、これらの測定信号が、動作304で得られた測定信号と同様のやり方で前処理されるという点で、動作304と同様である。しかしながら、動作404は、動作404がXXによって表される少なくとも1つのPSG信号の取得も含むという点で、動作304とは異なる。PSG信号XXは、ユーザの呼気中のCO2、O2、および/または何らかの他の気体、ユーザのECG(すなわち、脳活動)、EOG(すなわち、眼球運動)、およびEMG(すなわち、骨格筋活動)のうちの1つ以上を含む。これらの信号を、すでに述べたとおりに測定することができる。ここでは、呼吸不全を予測するために、呼吸の圧力および流れの測定値に加えて、PSG信号が使用される。これは、呼吸の圧力および流れの測定のみを使用して呼吸不全を検出した
図4の方法300とは対照的である。
【0125】
増幅およびフィルタ処理を適用することによって信号を処理した後に、処理後の信号は、さらなる処理のためにプロセッサ228によって受信される。動作406において、プロセッサ228は、データを分析して、分析されたデータのさまざまな時間ウインドウについて平均機械インピーダンスZrsならびに抵抗Rrs(t)およびリアクタンスXrs(t)の推定値を得るためのウインドウおよび周波数変換の使用に関して方法300の動作306で説明したように、時間につれての空気流の体積V(t)およびユーザの呼吸器系の機械インピーダンスを決定することができる。さらに、動作406は、動作306について説明したやり方と同様のやり方で、分析されるデータのさまざまな時間ウインドウにおける抵抗およびリアクタンスのそれぞれの重みパラメータwRおよびwX、ベースライン加重インピーダンスZref,w(t)、および現在の加重インピーダンスZvar,w(t)を決定する。しかしながら、動作406は、動作406が、追加の生理学的および/または神経学的信号XXについてベースライン加重PSG信号XXref,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)を決定することも含むという点で、動作306とは異なる。ベースライン加重PSG信号XXref,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)が、少なくとも2つのPSG信号を使用して決定される場合、これらのPSG信号は、何らかのやり方で組み合わせられる。例えば、時系列データの複数のストリームが存在するため、データストリームのペアの相互相関、クロススペクトル密度、またはコヒーレンスを決定することができ、これがペア周波数またはデータストリームのペアの間の関係を表すがゆえに、より豊富な分析モードを提供することができる。例えば、圧力データと流量データとの間のコヒーレンスが、さらなる分析に使用することができる時系列データとして使用することができる0~1の間の値をもたらすことができる。
【0126】
次いで、方法400は動作408に進み、方法400が動作420において終了するまで呼吸補助装置202によって実施されている間に、現在の加重インピーダンスZvar,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)の継続的な監視が実行される。現在の加重インピーダンスZvar,w(t)は、式(3)に従って求めることができる。現在の加重PSG信号XXvar,w(t)は、計算が現在の時間ウインドウからのデータを使用して行われることを除いて、XXref,w(t)と同じ式を使用して求められる。
【0127】
動作408は、呼吸器の状態に基づく第1の時間変化する指数K
1(t)(すなわち、第1の指数信号)およびPSGの状態に基づく第2の時間変化する指数K
2(t)(すなわち、第2の指数信号)の値を決定することをさらに含む。例えば、第1の指数K
1(t)は、式(5)に従ってベースライン加重インピーダンスに対する現在の加重インピーダンスの偏差を追跡することができる。第2の指数K
2(t)は、式(6)に従ってベースライン加重PSG信号に対する現在の加重PSG信号の偏差を追跡することができる。
【数4】
式(5)および(6)は、例として提示されており、指数K
1(t)およびK
2(t)を決定する他の技術が存在し得る。式(5)および(6)に基づいて、K
1(t)およびK
2(t)は、1以下の大きさを有するように正規化される。他の実施形態においては、指数信号K
1(t)およびK
2(t)を決定するために、式(5)および(6)の代わりに他の式を使用することができる。
【0128】
次いで、方法400は、第1および第2の指数信号K1(t)およびK2(t)を組み合わせて、呼吸指数信号K12(t)を生成する動作410へと進む。この組み合わせを、式(7a)または式(7b)に従って行うことができる。
K1,2(t)=K1(t)*K2(t)(7a)
K1,2(t)=K1(t)/(K1(t)+K2(t))+K2(t)/(K1(t)+K2(t))(7b)
あるいは、K1(t)およびK2(t)のK1,2(t)への組み合わせを、別の技術を使用して行うことができる。呼吸指数K1,2(t)は、呼吸指数K1,2(t)が呼吸不全の予測に使用される一方で、呼吸指数K(t)が呼吸不全の検出に使用される点で、呼吸指数K(t)と異なる。
【0129】
次いで、方法400は、指数K1,2(t)をしきい値Th12と比較する動作412に進む。しきい値Th12を、実験データまたは母集団データに基づいて各々の呼吸不全状態を予測するために定められたしきい値の表から取得することができる。呼吸指数K1,2(t)がしきい値よりも小さい場合、これは、ユーザが差し迫った将来(例えば、次の数十秒~1分程度)において呼吸不全を発症する可能性が低いことを表す。この場合、方法400は、呼吸補助装置202の現在の設定を維持する動作414に進む。
【0130】
しかしながら、指数K1,2(t)がしきい値よりも大きい場合、これは、呼吸指数としきい値との比較により、ユーザが差し迫った将来(例えば、次の数十秒~1分程度)において呼吸不全を発症する可能性が高いと予測されたことを表す。この場合、方法400は、ユーザが予測された呼吸不全に直面する可能性を低減するように、呼吸補助装置202の設定を変更する動作416へと進む。調整をさまざまなやり方で行うことができる。呼吸補助装置202の動作を調整する実際のやり方は、ユーザのベースラインの呼吸器の健康に依存し得る。例えば、予測される呼吸不全が睡眠時無呼吸である場合、ユーザの呼吸器系において流れがゼロになることを回避するように、呼吸補助装置202を制御することができる。例えば、重度の睡眠時無呼吸の場合、無呼吸の発生を防ぐために、圧力の増加がより積極的(すなわち、5cmH2O刻み)でなければならないかもしれない。しかしながら、軽度の睡眠時無呼吸の場合、圧力の1cmH2Oの増加で、無呼吸事象の発生を防止することができるかもしれない。
【0131】
方法400が動作414または416を実行した後に、方法400は、方法400の動作を続けるべきかどうかを判定する動作418へと進む。動作418における条件が真である場合、方法400は動作420に進み、終了する。動作418における条件が真でない場合、方法400は動作404に進み、センサ値を取得し、現在の加重インピーダンスおよび現在の加重PSGを監視し、2つの指数値K1(t)およびK2(t)を生成し、これらの指数値を呼吸指数信号K1,2(t)へと組み合わせ、K1,2(t)をしきい値と比較して、ユーザが近いうちに呼吸不全に直面する可能性を予測し、予測された呼吸不全を回避するように呼吸補助装置202の動作を更新することを続ける。
【0132】
重みパラメータ(wrおよびwx)は、弾性部分から離れ、あるいは逸脱しており、代わりに抵抗部分に影響を及ぼしているユーザの呼吸器系の反応性/弾性部分の特定の部分を反映することができる(例えば、ときには、抵抗およびエラスタンス自体が呼吸に伴って正弦波的に変化するという事実などの他の要因が関与するため、正弦波エラスタンスおよび正弦波体積の乗算は、エラスタンスの一部の位相を、空気流と同相になるように、したがってより抵抗性になるように変化させる可能性がある)。この逸脱の結果は、これらに限られるわけではないが、特定の肺領域の虚脱、ユーザの肺の不均一性の増加、またはユーザの肺内の液体の存在などのさまざまな要因に起因して、気道の閉塞または呼吸器系に対する深い苦痛のいずれかとして物理的に現れる可能性があるため、ユーザに苦痛を引き起こす可能性がある。したがって、決定されたパラメータを使用して、呼吸不全を最小限に抑えるための呼吸補助装置202の調整、呼吸器疾患の存在の診断または特定、ならびに例えばCOPD患者の呼吸または喀出を助けるための生成される空気流の圧力、流量、および水分のうちの少なくとも1つなどの呼吸補助装置202の動作パラメータの調整に関する治療結果を得るための呼吸補助装置202の動作のうちの少なくとも1つを実行することができる。
【0133】
ここで
図8を参照すると、圧力および空気流の測定値を取得し、これらの測定値を使用して、ユーザについて呼吸不全がいつ発生するかを予測し、予測される呼吸不全の発生を防止するように呼吸補助装置の動作を制御する予防的な措置を講じるために使用することができる呼吸補助制御方法600の別の典型的な実施形態を示すフローチャートが示されている。
図4および
図5の説明と同様に、説明を容易にするために、呼吸補助システム200において示した要素を、方法600のさまざまなステップの説明において使用する。しかしながら、この技術を、一体型呼吸補助装置コントローラ250においても使用することができることを、理解すべきである。
【0134】
方法600は、方法300および400と同様のやり方で、呼吸補助装置202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに開始する。動作602は、FOTを実行するための動作302および402と同じであるが、呼吸不全を予測するために使用される生理学的パラメータが測定にFOT技術を必要としない場合、動作602は随意であってよいことに留意されたい。例えば、方法600において使用することができる生理学的測定値は、流量、圧力、および一回換気量のうちの1つであってよく、その場合、FOT法は必要とされず、動作602を省くことができる。あるいは、方法600において使用することができる生理学的測定値は、抵抗、リアクタンス、およびインピーダンスのうちの1つであってもよく、その場合、動作602のFOT方法が実行される。
【0135】
動作604は、呼吸不全の予測の実行に使用されている生理学的パラメータに応じて、圧力信号および流量信号の両方ではなく、それらの一方のみを受信することを含むことができるという点で、動作304と比較してわずかに異なり得る。例えば、呼吸不全を予測するために圧力が使用されている場合、圧力信号のみが測定され、受信される。あるいは、抵抗、リアクタンス、またはインピーダンスなどの生理学的パラメータが呼吸不全を予測するために使用されている場合には、流量信号および圧力信号の両方が測定され、動作604において受信される。これらの場合の各々において、信号をすでに述べたように測定することができる。
【0136】
すでに説明したように必要に応じて増幅およびフィルタ処理を適用することによって信号を処理した後に、処理後の信号は、さらなる処理のためにプロセッサ228によって受信される。動作606において、プロセッサ228は、呼吸不全の発生前の特定の期間についての生理学的パラメータのベースライン値を決定する。これを、ユーザについて睡眠検査を実行し、各々の時間セグメントが呼吸事象の発生前のベースライン時間期間を含んでいる生理学的パラメータを決定するための複数の時間セグメントデータを収集し、生理学的パラメータの特性のベースライン特性値を決定し、次いで実際の使用中にその特性の現在の特性値を決定し、現在の特性値をベースライン特性値と比較して、呼吸不全が差し迫っている可能性が高いと予測すべき充分に大きな変化が存在するかどうかを判定することによって、決定することができる。
【0137】
本発明の発明者は、男性8人および女性2人を含み、全体の平均年齢が53歳である重度の睡眠時無呼吸を抱える10人の患者のCPAPメモリカードからのデータを使用する第1の研究と、すべて男性であり、重度の睡眠時無呼吸を抱えており、全体の平均年齢が51歳である7人の入院患者からのデータを使用する第2の研究とを含む患者から得られた睡眠検査データに基づいて、動作606において行われた決定を差し迫る呼吸不全の予測に使用できると判断した。上記第2の研究群に関して、すべてのデータは一晩について記録され、したがって第2の研究群の患者についての睡眠時無呼吸事象の数は、CPAPメモリカードから得られたデータにおける睡眠時無呼吸事象の数よりも少なかったが、第2の研究群からのデータは、一晩の検査において連続的に行われたFOT検査のFOTデータを含んでいる。すべてのデータが睡眠時無呼吸事象を有していたが、これらの発見は、他の種類の呼吸不全にも適用可能であると考えられる。これは、一般に、さまざまな種類の呼吸器状態に関して、呼吸が健康であったときに記録された信号と比べ、呼吸不全の発生前に記録された信号において、スペクトル密度特性に有意差が存在することが発見されたためである。例えば、これは、睡眠時無呼吸を有していた患者、ならびに空気流データおよびインピーダンスデータの両方に現れていたCOPDに関連する呼気流の制限などの他の呼吸器状態を有していた他の患者の空気流データおよびインピーダンスデータにおいて発見されている。
【0138】
例えば、ここで
図9を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間について得られた流量データに関し、無呼吸事象の前(おおむね240秒前から300秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線700を示す図が示されており、これは、すべての患者から観察された一般的な結果を代表していた第1の研究群からの第1の患者から得られたものである。データを、この第1の患者から2年の時間期間にわたって取得し、この2年の時間期間において、9,494回の閉塞性睡眠時無呼吸事象が発生した。曲線を、現在の流量データのパワースペクトル密度を決定し、ベースライン流量データのパワースペクトル密度で除算することによって得た。曲線702、704、706、708、および710は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線702~710から、0.4Hzに相対パワースペクトル密度のピークが存在することを見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン流量データに対する現在の流量データの0.4Hzにおける相対パワースペクトル密度を、しきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を上回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、患者へと供給される空気の流量であり、特性は、パワースペクトル密度であり、呼吸指数値を、相対パワースペクトル密度から決定することができる。相対パワースペクトル密度が一貫して変化し、睡眠時無呼吸事象のおおむね40秒前に、0.2Hzよりも下の周波数範囲および2Hzよりも上の周波数範囲において著しく減少することを、見て取ることができる。
【0139】
これらの結果を、実際の呼吸不全事象の前の他の時間期間についても観察できており、したがって10秒(約30~40秒)の時間期間を呼吸不全の約100秒前まで拡張することができ、10秒についての分析を行う代わりに、約0.1~120秒、または約0.1~60秒、あるいは約5~60秒の時間期間について分析を行ってもよいことに留意されたい。これは、
図10~
図14で説明される他の生理学的呼吸信号において得られた結果についても観察された。
【0140】
別の例として、ここで
図10を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間について得られた圧力データに関し、無呼吸事象の前(おおむね240秒前から300秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線800を示す図が示されており、これは、第1の研究群からの第1の患者から得られたものである。曲線は、現在の圧力データのパワースペクトル密度を決定し、ベースライン圧力データのパワースペクトル密度で除算することによって得られる。曲線802、804、806、808、および810は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線802~810から、0.5Hzに相対パワースペクトル密度のピークが存在することを見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン圧力データに対する現在の圧力データの約0.5Hzにおける相対パワースペクトル密度を、しきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を上回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、患者へと供給される空気流の圧力であり、特性は、圧力のパワースペクトル密度である。呼吸指数値を、圧力の相対パワースペクトル密度から決定することができる。相対パワースペクトル密度が一貫して変化し、睡眠時無呼吸事象のおおむね40秒前に、0.2Hzよりも下の周波数範囲および2Hzよりも上の周波数範囲において著しく減少することを、見て取ることができる。
【0141】
別の例として、ここで
図11を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間についてFOT法に8Hzの周波数を使用して得られた抵抗データに関し、無呼吸事象の前(おおむね120秒前から180秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線900を示す図が示されており、これは、第2の研究群からの第2の患者から得られたものである。曲線は、患者の呼吸器系の現在の抵抗のパワースペクトル密度を決定し、ベースライン抵抗データのパワースペクトル密度で除算することによって得られる。曲線902、904、906、908、および910は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線902~910から、無呼吸事象の約30秒前まで、相対パワースペクトル密度が0.4Hzよりも上の周波数について1未満に減少することを見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン抵抗データに対する抵抗データの約0.4Hz以上(例えば、0.5Hz)における相対パワースペクトル密度を、しきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を下回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、(患者の呼吸器系の)抵抗であり、特性は、抵抗のパワースペクトル密度である。呼吸指数値を、抵抗の相対パワースペクトル密度から決定することができる。相対パワースペクトル密度が一貫して変化し、睡眠時無呼吸事象のおおむね30秒前に、0.4Hzよりも上の周波数範囲(例えば、約0.5Hz)においてしきい値を下回って著しく減少することを、見て取ることができる。
【0142】
別の例として、ここで
図12を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間について得られた一回換気量に関し、無呼吸事象の前(おおむね240秒前から300秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線1000を示す図が示されており、これは、第1の研究群からの第1の患者から得られたものである。曲線は、現在の一回換気量のパワースペクトル密度を決定し、ベースライン一回換気量データのパワースペクトル密度で除算することによって得られる。曲線1002、1004、1006、1008、および1010は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線1002~1010から、無呼吸事象の約30秒~40秒前の総一回換気量の減少に対応して一回換気量データのパワーが全周波数にわたって減少することを、見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン一回換気量データに対する現在の一回換気量データの0Hzから最大約10Hzまでの周波数範囲についての相対パワースペクトル密度を、約0.3のしきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を下回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、患者が吸い込む空気の一回換気量であり、特性は、一回換気量のパワースペクトル密度である。呼吸指数値を、一回換気量の相対パワースペクトル密度から決定することができる。相対パワースペクトル密度が一貫して変化し、睡眠時無呼吸事象のおおむね30秒前に、約0Hz~約0.9Hzの周波数範囲においてしきい値を下回って著しく減少することを、見て取ることができる。
【0143】
別の例として、ここで
図13を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間についてFOT法に4Hzの周波数を使用して得られたリアクタンスデータに関し、無呼吸事象の前(おおむね120秒前から180秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線1100を示す図が示されており、これは、第2の研究群からの第2の患者から得られたものである。曲線は、患者の呼吸器系の現在のリアクタンスのパワースペクトル密度を決定し、ベースラインリアクタンスデータのパワースペクトル密度で除算することによって得られる。曲線1102、1104、1106、1108、および1110は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線1102~1110から、無呼吸事象の約30秒前まで、相対パワースペクトル密度がすべての周波数にわたって減少するが、0.3~0.6Hzの範囲および1.2Hzよりも上で最も顕著であることを見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン圧力データに対する現在のリアクタンスデータの約0.3Hzから0.6Hzまでの相対パワースペクトル密度を、しきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を下回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、(患者の呼吸器系の)リアクタンスであり、特性は、リアクタンスのパワースペクトル密度である。呼吸指数値を、リアクタンスの相対パワースペクトル密度から決定することができる。ベースライン圧力データに対する現在のリアクタンスデータの約0.3から0.6Hzまでの相対パワースペクトル密度が、睡眠時無呼吸事象の約40秒前にしきい値を下回ることを、見て取ることができる。
【0144】
別の例として、ここで
図14を参照すると、無呼吸事象の前(おおむね30秒前から40秒前まで)の10秒の時間期間についてFOT法に8Hzの周波数を使用して得られたインピーダンスデータに関し、無呼吸事象の前(おおむね120秒前から180秒前まで)の約60秒のベースライン時間期間に対するパワーの変化について、さまざまなパーセンタイルにおける曲線1200を示す図が示されており、これは、第2の研究群からの第2の患者から得られたものである。曲線は、患者の呼吸器系の現在のリアクタンスのパワースペクトル密度を決定し、ベースラインリアクタンスデータのパワースペクトル密度で除算することによって得られる。曲線1202、1204、1206、1208、および1210は、それぞれ75番目のパーセンタイル(上位四分の一)、68番目のパーセンタイル、中央値、32番目のパーセンタイル、および25番目のパーセンタイルを表しており、x軸は対数目盛りで示されている。曲線1202~1210から、無呼吸事象の約30秒前まで、相対パワースペクトル密度が0.4Hzよりも上の範囲の周波数について減少することを見て取ることができる。したがって、この特定の患者について、ベースライン圧力データに対する現在のインピーダンスデータの約0.4Hzまたは他の適切な周波数における相対パワースペクトル密度を、しきい値と比較することができ、相対パワースペクトル密度がしきい値を下回る場合、それは、睡眠時無呼吸事象が差し迫っている可能性が高いことを表す。これは、研究の他の患者においても見られており、この患者集団について使用することができるが、代案の実施形態においては、パワースペクトル密度を決定するための異なる周波数、ならびに異なる患者集団についての異なるしきい値(例えば、年齢、性別、呼吸状態の種類、および呼吸状態の重症度のうちの少なくとも1つに基づく)を使用してもよい。別の代案の実施形態において、パワースペクトル密度の測定が行われる周波数およびしきい値は、性能を改善するために患者ごとに個別化されてもよい。したがって、少なくとも1つの実施形態において、生理学的呼吸信号は、(患者の呼吸器系の)インピーダンスであり、特性は、インピーダンスのパワースペクトル密度である。呼吸指数値を、インピーダンスの相対パワースペクトル密度から決定することができる。ベースライン圧力データに対する現在のリアクタンスデータの約0.4Hzにおける相対パワースペクトル密度が、睡眠時無呼吸事象の約40秒前にしきい値を下回ることを、見て取ることができる。
【0145】
上記の例のすべてにおいて、相対パワー密度は、約0.1~約60秒の時間ウインドウにわたって特定のデータについて決定される。より長い時間ウインドウは、データにノイズがより多い場合に有用である。次いで、動作608において、時間変化する指数K3(t)が相対パワースペクトル密度に基づいて決定され、その後に、動作610において、指数K3(t)がしきい値Th3と比較される。しきい値Th3の値は、他の方法300および400について前述したように、被験者のさまざまな母集団からの値の表を使用し、ユーザに対応する被験者の母集団のしきい値を見つけることで取得することができる。比較が、呼吸不全事象が差し迫っている可能性が低いことを示す場合、方法600は動作612に進み、呼吸補助装置202の動作パラメータは同じままにされる。そうではなく、比較が、呼吸不全事象が差し迫っている可能性が高いことを示す場合には、方法600は動作614に進み、呼吸補助装置202の動作パラメータが、呼吸不全の発生の可能性を回避または低減するように(前述のように)調整される。
【0146】
パワースペクトル密度が決定される動作608において、これをさまざまなやり方で行うことができることに留意されたい。例えば、ウェルチ法を使用して、記録された信号のパワースペクトル密度を分解することができる。上述したように、呼吸不全から離れた時点と呼吸不全事象の直前の時点とでパワースペクトル密度を比較すると、いくつかの周波数成分のパワーは、呼吸不全事象が生じる約30秒前に一貫して減少する。
【0147】
別の実施形態として、高速フーリエ変換を使用してパワースペクトル密度値を得ることができる。あるいは、Constant-Q変換を使用することが可能であり、Constant-Q変換は、記録されるデータのパワーが1/fスケーリング則におおむね従って徐々に衰え、したがってより高い周波数においては絶対パワーが著しく低くなり、パワーの相対変化がきわめて大きくなるがゆえに好都合であり得る。Constant-Q変換などの周波数において対数であるパラメータ化を使用することで、パワーの間隔が(FFT法のように線形な間隔ではなく)対数になるため、より安定なパワー推定値をもたらすことができる。
【0148】
代案の実施形態において、
図8の方法600を、
図9~
図14に関して説明した生理学的呼吸信号のうちの少なくとも2つを使用して指数を決定するように変更でき、これらの指数を組み合わせてしきい値と比較して、差し迫る呼吸不全事象の発生を予測できることに留意されたい。これは、使用中に発生する偽陽性および偽陰性の数を減らすうえで有用であり得る。
【0149】
本明細書に記載のさまざまな検出および予測方法において、他の加重測定量を、各々の監視時間期間のXX、Rvar、Xvar、XXvar、およびPhB信号に基づいて使用することができ、Zvar,w、Zref,w、XXvar,w、XXref,w、およびPhCが例として与えられていることに留意されたい。したがって、ベースライン加重インピーダンスおよび現在の加重インピーダンスの測定量を、より一般的には、対応する監視時間期間におけるXvarおよびRvarを使用してそれぞれ決定されるベースライン加重呼吸状態値および現在の加重呼吸状態値と呼ぶことができる。
【0150】
これまでの段落は、本明細書の教示による上述の実施形態の利点を示しており、なぜならば、ユーザが呼吸不全に直面しているかどうか、またはユーザがまもなく呼吸不全に直面すると予測されるかどうかに関する継続的な情報を欠いている現在の呼吸補助装置のすき間を埋めることができるからである。この予測方法は、追加の生理学的信号を使用するが、ユーザが医療施設に長期間にわたって滞在する場合、これらの信号を取得することはそれほど困難ではない。
【0151】
別の態様において、サイズが小さく軽量である呼吸補助装置コントローラを有することのさらなる利点が、異なるチューブアダプタを使用することによってあらゆる呼吸補助装置での使用に適合させることができることであることを、理解できるであろう。異なるチューブアダプタの使用は、チューブの抵抗の補償を必要とする可能性もあるが、少なくともいくつかの実施形態においては、チューブに余分な抵抗を追加することがない(例えば、0.6cmH2O/L/s未満)ように、アクチュエータ216を主たるチューブ経路から外しておくことができる。
【0152】
別の態様において、コントローラを利用する本明細書に記載の呼吸補助装置コントローラおよび/またはシステムの実施形態の少なくとも1つを、単一の周波数で動作させることによってさらに簡略化することができる。公知の単一周波数FOT装置は、呼吸に近い周波数(例えば4~5Hz)で動作することが一般的であるが、本明細書に記載のさまざまな実施形態は、より高い周波数で動作することができ、これにより、より小型でより軽量のアクチュエータ216の使用が可能になり、呼吸補助装置コントローラについて、既存の呼吸補助装置において直列のやり方でより容易に使用することができるように、電力消費の削減、より正確な信号処理、およびより小さな占有面積を可能にできる。これは、周波数が高いほど呼吸ノイズに汚染されにくく、より高い信号対雑音比(SNR)が得られるからである。結果として、ユーザへと送られる空気圧摂動の振動について必要な振幅が小さくなり、より小型、より軽量、かつおそらくは安価であるアクチュエータによってもたらすことが可能になる。さらに、より高い振動周波数を使用することで、ユーザ(例えば、患者)が自身へともたらされる空気流の振動を感知することでユーザが受ける不快感も低減される。
【0153】
別の態様においては、本明細書に記載の実施形態のいずれも、呼吸補助装置コントローラ202を使用して、マスクがユーザの顔および/または鼻と接するマスクの周囲における漏れを補償するように変更することができる。例えば、マスク漏れを、本明細書に記載の呼吸補助装置コントローラまたは呼吸装置のいずれかによって検出することができ、その後に、呼吸補助装置コントローラが、呼吸装置へともたらされる制御信号を調整して、空気漏れを補償するようにユーザへと供給される空気流の圧力を増加させることができる。
【0154】
本明細書に記載された本出願人の教示は、例示の目的のためにさまざまな実施形態に関連しているが、本明細書に記載の実施形態は例となるように意図されているため、本出願人の教示は、そのような実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本明細書に記載および例示された本出願人の教示は、その全体的な範囲が添付の特許請求の範囲に定義されている本明細書に記載の実施形態から逸脱することなく、さまざまな代案、修正、および均等物を包含する。
【手続補正書】
【提出日】2020-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取り、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)パラメータを測定するための1つのPSGデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記現在の監視時間期間についての少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または
生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記呼吸補助装置の制御信号を更新し、そうでない場合には前記呼吸補助装置の制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記ユーザからの前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定する少なくとも1つのPSGセンサに電子的に結合する、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのPSGが、前記ユーザから測定されたEEG、EOG、EMG、ユーザの呼気中の呼吸CO2、O2、および/または何らかの他の気体のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量、前記ユーザへと供給される空気の圧力、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量、前記ユーザの呼吸器系の抵抗のうちの1つである、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の圧力であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1または5に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0Hz~0.9Hzの周波数範囲について決定される、請求項1、5、または6のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系の抵抗であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzよりも上、好ましくは0.5Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項1または5~7のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.3Hz~0.6Hzの周波数範囲について決定される、請求項1または5~8のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のインピーダンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzの周波数について決定される、請求項1または5~9のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記現在の時間期間が、呼吸不全事象の
約120秒前
まで、より好ましくは
約60秒前
までの範囲であり、前記ベースライン期間は、約120~300秒前の範囲である、請求項4~10のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項12】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取り、さらに随意により前記PSGデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が検出されたこと、または呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項13】
ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助装置と、
前記呼吸補助装置に結合し、使用時にユーザによって着用されてユーザへと空気流を提供する入口要素と、
請求項1~12のいずれか一項によって定義される呼吸補助装置コントローラと
を備えるシステム。
【請求項14】
前記呼吸補助装置が、麻酔器、COPDの酸素供給器、ICU換気装置、家庭用換気装置、人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)装置、BiPAP装置、APAP装置、およびPAP装置を含む任意の種類の侵襲または非侵襲換気(NIV)装置である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信し、さらに随意により少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定するための1つのPSGデータを受信するステップと、
前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定して、第1の指数値を生成し、前記少なくとも1つのPSG信号から決定される第2の指数値を生成し、前記第1および第2の指数値から前記呼吸指数値を生成すること、または
生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて、前記呼吸指数値を決定すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記ユーザからの少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を測定する少なくとも1つのPSGセンサに電子的に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのPSGが、前記ユーザから測定されたEEG、EOG、EMG、ユーザの呼気中の呼吸CO2、O2、および/または何らかの他の気体のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量、前記ユーザへと供給される空気の圧力、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量、前記ユーザの呼吸器系の抵抗のうちの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の流量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザへと供給される空気の圧力であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.2Hzよりも下または約2Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15または19に記載の方法。
【請求項21】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザが吸い込む空気の一回換気量であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0Hz~0.9Hzの周波数範囲について決定される、請求項15、19、または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系の抵抗であり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzよりも上、好ましくは0.5Hzよりも上の周波数範囲について決定される、請求項15または19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.3Hz~0.6Hzの周波数範囲について決定される、請求項15または19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生理学的呼吸信号が、前記ユーザの呼吸器系のインピーダンスであり、前記相対パワースペクトル密度は、約0.4Hzの周波数について決定される、請求項15または19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記現在の時間期間が、呼吸不全事象の
約120秒前
まで、より好ましくは
約60秒前
までの範囲であり、前記ベースライン期間は、約120~300秒前の範囲である、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
アクチュエータが、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するために使用され、前記気道内圧の摂動は、少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項15~18または22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH2Oである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信するステップと、
前記データを電子的に受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を予測するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを決定し、前記ユーザの呼吸器系のリアクタンス、抵抗、およびインピーダンスのうちの少なくとも1つを含む生理学的呼吸信号の現在の時間期間とベースライン期間との間の相対パワースペクトル密度に基づいて前記呼吸指数値を生成するために、ユーザについて強制振動法(FOT)を実行すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると予測されることを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項31】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助装置の動作を制御するためのコントローラであって、
ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受け取る入力部と、
前記入力部に電子的に結合し、前記センサデータを受け取るプロセッサと
を備えており、
前記プロセッサは、前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、および
ベースライン加重呼吸状態値からの前記現在の加重呼吸状態値の偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成すること
によって生成し、
前記呼吸指数値としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持する
ことにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように構成されている、コントローラ。
【請求項32】
前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するための前記センサデータが、前記呼吸補助装置から前記ユーザへと供給される空気の圧力および
/または空気流
量の測定に基づく、請求項31に記載のコントローラ。
【請求項33】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置の使用を最初に開始するときの初期監視期間または前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用しているときにいかなる呼吸不全事象も存在しない健康呼吸期間において前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項34】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用している最中の最近の監視期間に基づいて、前記ユーザから取得された測定値から定期的に更新される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項35】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザと比べて同じ身体サイズ、年齢、性別、および慢性的な呼吸器の状態を有する個人の集団から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項36】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記慢性的な呼吸器の状態について治療を受けた後に正常に呼吸しているときに前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項31または32に記載のコントローラ。
【請求項37】
前記重みの値は、さまざまな患者集団についてさまざまな呼吸器状態および該呼吸器状態のさまざまな重症度レベルに基づいて分類された重みの表における値から決定される、請求項31~36のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項38】
前記ユーザが或る呼吸器状態を有するかどうか、および該呼吸器状態の重症度レベルに応じて、リアクタンス値に適用される第1の重みが、抵抗値に適用される第2の重みと比べてより大きく、あるいはより小さい、請求項31~36のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項39】
前記現在の加重呼吸状態値および前記ベースライン加重呼吸状態値が、
FOT測定から決定されるインピーダンス値である、請求項31~38のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項40】
前記プロセッサに電気的に結合し、前記プロセッサによって制御され、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するアクチュエータ
を備える、請求項31~39のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項41】
前記呼吸補助装置が前記アクチュエータを備え、あるいは前記呼吸補助装置コントローラが前記アクチュエータを備える、請求項40に記載のコントローラ。
【請求項42】
前記気道内圧の摂動が、FOT測定のための少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項40または41に記載のコントローラ。
【請求項43】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項42に記載のコントローラ。
【請求項44】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH
2Oである、請求項43に記載のコントローラ。
【請求項45】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項31~44のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項46】
第1の空気流経路を介して前記呼吸補助装置に解除可能に結合する第1の端部と、前記呼吸補助を受けるために前記ユーザによって使用される入口要素に第2の空気流経路によって解除可能に結合する第2の端部とを備えるハウジング
を有する、請求項31~45のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項47】
ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助装置と、
前記呼吸補助装置に結合し、使用時にユーザによって着用されてユーザへと空気流を提供する入口要素と、
請求項31~46のいずれか一項によって定義される呼吸補助装置コントローラと
を備えるシステム。
【請求項48】
前記呼吸補助装置が、麻酔器、COPDの酸素供給器、ICU換気装置、家庭用換気装置、人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)装置、BiPAP装置、APAP装置、およびPAP装置を含む任意の種類の侵襲または非侵襲換気(NIV)装置である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
呼吸補助装置によってユーザへと供給される空気流を調整するための方法であって、
前記空気流の空気流パラメータを測定するためのデータを受信するステップと、
前記データを受信して前記測定を実行し、
ユーザの呼吸不全を検出するために現在の監視時間期間において決定される呼吸指数値を、
前記現在の監視時間期間について前記測定された空気流パラメータから決定されるユーザの呼吸器系のリアクタンスおよび抵抗の重み付けに基づいて現在の加重呼吸状態値を決定すること、および
前記現在の加重呼吸状態値のベースライン加重呼吸状態値からの偏差に基づいて前記呼吸指数値を生成すること
によって生成することにより、前記現在の監視時間期間の前記呼吸補助装置の前記制御信号を生成するように電子的に構成されたプロセッサを動作させるステップと、
前記呼吸指数としきい値との比較が、呼吸不全が発生すると検出されたことを示している場合に、前記制御信号を更新し、そうでない場合には前記制御信号を以前の設定に維持するステップと、
前記制御信号を前記呼吸補助装置へと送信して、使用中に前記呼吸補助装置の動作を調整するステップと
を含む方法。
【請求項50】
前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するための前記センサデータは、前記呼吸補助装置から前記ユーザへと供給される空気の圧力および
/または空気流
量に基づく、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置の使用を最初に開始するときの初期監視期間または前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用しているときにいかなる呼吸不全事象も存在しない健康呼吸期間において前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記呼吸補助装置を使用している最中の最近の監視期間に基づいて、前記ユーザから取得された測定値から定期的に更新される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザと比べて同様の身体サイズ、年齢、および性別を有する個人の集団から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項54】
前記ユーザが慢性的な呼吸器の状態を有する場合に、前記ベースライン加重呼吸状態値が、前記ユーザが前記慢性的な呼吸器の状態について治療を受けた後に正常に呼吸しているときに前記ユーザから取得された測定値から決定される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項55】
前記重みの値は、さまざまな呼吸器状態および該呼吸器状態のさまざまな重症度レベルに基づいて分類された重みの表から決定される、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ユーザが或る呼吸器状態を有するかどうか、および該呼吸器状態の重症度レベルに応じて、リアクタンス値に適用される第1の重みが、抵抗値に適用される第2の重みと比べてより大きく、あるいはより小さい、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記現在の加重呼吸状態値および前記ベースライン加重呼吸状態値が、インピーダンス値である、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
アクチュエータが、前記ユーザへと供給される空気流に重ね合わせられる気道内圧の摂動を生成するために使用され、前記気道内圧の摂動は、FOT測定が行われているときに少なくとも1つの周波数を有するように生成される、請求項49~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの周波数が、0.001Hz~100THzの範囲内にある、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの周波数が、約37Hzまたは約79Hzにあり、前記気道内圧の摂動は、約0.1cmH
2Oである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
測定された信号が、前記プロセッサによって処理される前に前処理され、前記前処理は、増幅およびフィルタ処理を含む、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】