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特表2022-507041真菌の菌核が含まれた植物管理用固形組成物及びその用途
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  • 特表-真菌の菌核が含まれた植物管理用固形組成物及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】真菌の菌核が含まれた植物管理用固形組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20220111BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220111BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20220111BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220111BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20220111BHJP
   A01N 63/30 20200101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N1/14 Z
C12N1/00 P
A01P13/00
A01P3/00
A01N25/08
A01N63/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525180
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2019014258
(87)【国際公開番号】W WO2020091335
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0132686
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149928
【氏名又は名称】モグ リサーチ センター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Moghu Research Center Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダル-ソ・キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA58X
4B065BD05
4B065BD10
4B065CA47
4H011AA01
4H011AB01
4H011BA01
4H011BB21
4H011BC06
4H011BC08
4H011BC19
4H011BC20
4H011BC22
4H011DA03
4H011DH10
(57)【要約】
本発明は、生態撹乱植物として指定されたアレチウリを含む標的植物を駆除するか、芝のダラースポット病を含む土壌伝染病の発生を抑制することができる菌核組成物に関するものであって、さらに詳細には、菌核を形成する真菌の菌核と菌核形成菌の栄養素と吸水性素材を含む組成物を適切に使用することで、アレチウリとダラースポット病を効果的に駆除することができ、微生物を含む生物学的製品の生産、保存と流通過程だけではなく、使用過程で発生する問題点を大きく解決する効果を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌の休眠状態菌核と、
炭素源及び窒素源栄養素と、を含んで乾燥したことを特徴とする休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項2】
前記固形組成物は、吸水性素材、粘着剤及び防腐剤のうち、いずれか1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項3】
前記真菌の休眠状態菌核は、スクレロティニア属、スクレロチウム属及びリゾクトニア属のうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項4】
前記真菌の休眠状態菌核は、1個~5個であることを特徴とする請求項1に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項5】
前記固形組成物は、球状(globular)または押出型ペレット(extruded pellet)状であることを特徴とする請求項1に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項6】
前記炭素源及び窒素源栄養素は、固形組成物のうち、1~20重量%含まれたことを特徴とする請求項1に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物。
【請求項7】
請求項1~6のうち、いずれか1項に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物を除草用として使用する方法。
【請求項8】
請求項1~6のうち、いずれか1項に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物を真菌性土壌伝染病抑制用として使用する方法。
【請求項9】
前記除草用は、アレチウリ除草用であることを特徴とする請求項7に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物を除草用として使用する方法。
【請求項10】
前記真菌性土壌伝染病は、ダラースポット病、芝褐斑病、またはイネ紋枯病のうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載の休眠状態菌核が含まれた固形組成物を真菌性土壌伝染病抑制用として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌の菌核が含まれた植物管理用固形組成物及びその用途に係り、植物管理方法のうち、特に雑草及び土壌伝染病(soil born disease)に係わる生物学的防除に関する。本発明は、生態撹乱植物と指定されたアレチウリ(burcucumber,Sicyos angulatus)のように管理対象である標的植物(target plant)の生育を効果的に抑制し、ダラースポット病(dollar spot,Sclerotinia homoeocarpa)を含む土壌伝染病の発生を抑制する菌核含有固形組成物に関する。また、本発明は、真菌(カビ、fungus)が形成する菌核及び前記菌核菌株の生長に必要な栄養素と、菌核及び栄養素を収容することができる吸水性素材を含む固形組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国で発生する草本は、約3,611種であり、つる植物が18種(6.0%)、草本植物135種、木本植物83種程度である。
【0003】
ところで、山林庁が発表した前記植物のうち、代表的な管理対象植物の分布図を見れば、葛(kudzu, Pueraria lobata)、アレチウリ(burcucumber, Sicyos angulatus, EPPO code: SIYAN)、カナムグラ(Japanesehop、Humulusjaponicas)は、それぞれ全国土の1.5%、1%、及び1%ほどであり、徐々に占有率が高くなっており、迅速な防除が求められると報告される(カン・ビョンファ、2014)。
【0004】
その中、特に、アレチウリは、外来の生態撹乱植物であって、最も広く知られているが、生態学的には、川辺に沿って主に生え、道路周辺、遊閑地、農耕地などに広く分布する。
アレチウリの種子は、種皮(seed coat)が堅く、吸水性が低いので、休眠性が高く、種子が形成された当該年度には、自然環境でほとんど発芽せず、3年~7年間土壌で生存し、一年生植物であって一日30cm以上非常に早く生育することができる。また、全長20m以上にもなり、個体当たり最大80,000個まで種子が繁殖し、水、動物、ヒトなどによって非常に広く伝播される特性があり、最近には、漢江水系と洛東江水系とを中心に川辺と道路周辺に急速に拡散しており、地域別代表水系において防除せねばならない重要な標的植物となっている。そのために、各地方自治体では、アレチウリ防除事業を積極的に推進しているが、適当な方法がなく、効果を期待し難い実情である。
【0005】
現在まで知られたアレチウリ防除方法としては、手取り、耕うん、刈取りなど物理的方法と、除草性物質を用いた化学的方法、宿主特異性が高い植物病源菌を用いる生物学的方法などがあるが、実務上、物理的方法を用いる場合がほとんどであるので、人件費、作業者の危険露出、作業範囲の制限、時間的制限などの問題があった。
【0006】
その中、微生物を用いる生物学的方法は、アレチウリに発生する植物病を探索して病原性を評価し、アレチウリに選択的に病気を起こす植物病源菌を選抜して使用する方式であるが、今まで知られた方法では、植物病原性微生物の生産、保存、流通など、過程が非常に複雑であり、薬効も環境によって非常に不安定であって、商業的に成功した事例が非常に少なかった。これは、生きている微生物を用いた製品化において、温度、湿度、直射日光など環境要因にその効用性が大きく影響を受けるからであるが、特に自然状態の系に処理される場合、本来製品の作用安定性と効果性は、非常に短時間だけ期待され、長時間の薬効は、期待することができなかった。また、微生物製剤製品の生産、流通、及び保存過程で高い温度や圧力が適用される場合、微生物の生物学的活性が減少または不活性化されうるので、保存または流通過程で温度や湿度が適切ではなかったり、直射日光に直接露出されたりするということは、望ましくなかった。このために、生物学製剤のほとんどは、有効期間が非常に短く、冷蔵保存のような煩わしい管理が必須であった。
【0007】
ところで、真菌(カビ、fungi)のうち、一部では、他の菌と異なって生活環の特定段階で菌核(sclerotium)を形成する真菌があるが(以下、「菌核形成菌」と称する)、菌核とは、一般的に菌糸(mycelium)が育ちながら集積されて硬化された菌糸塊(hardened compact mycelial mass)と定義される。この菌核は、環境が不利な条件で生存するために形成され、生育環境が生態的に適正な状態に変われば、自らまた発芽し、菌糸を形成しながら育つ特性がある。Smithら(2015)によれば、菌核を形成する真菌類の系統発生的な関連性と栄養的特性分析結果、菌核形成菌は、生態的に様々であり、分類系統学的に約20個の目(orders)と85個の属(genera)に広範囲に散在されている。これら菌核形成菌のうち、スクレロティニア(Sclerotinia)、スクレロチウム(Sclerotium)、リゾクトニア(Rhizoctonia)とボトリチス(Botrytis)属は、代表的な植物病源菌であって、寄主植物(hostplant)に対する病原性を有する。ところで、今まで菌核形成菌の菌核は、それ自体で植物管理のための効用性が報告されておらず、ただ実験室内でその菌糸培養体(mycelia culture)の組成物、または菌糸体の懸濁液による実験を通じて標的植物を抑制する効果が一部報告されている。すなわち、分類学的に子嚢菌類(Ascomycetes)の菌核形成菌であるスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105(Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105)菌株は、クローバのようなマメ科植物(Leguminosae)に相対的に高い選択的病原性を有すると報告されており(大韓民国特許100496011、クローバに対する除草活性を有するスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105及びそれを用いたクローバ除草用菌糸体懸濁液の製造方法)、病原性評価でも、稲、麦、とうもろこし、小麦及び芝のような単子葉植物には、病原性がないが、大豆、ピーナッツ、エンドウ、及びカウピーのような双子葉マメ科植物には弱い病原性があり、雑草のうち、禾本科であるイヌビエ、ケイヌビエ、及びタイヌビエには、病原性がないが、アシカキと雑草性稲には、一部病原性があった。カヤツリグサ科であるタマガヤツリ、ミズガヤツリ、ヒデリコ、イヌホタルイ、及びクログワイ、ミズアオイ科であるコナギとミズアオイ、マメ科であるクサネム及びクローバ、オモダカ科であるオモダカ及びウリカワ、ツユクサ科であるイボクサ、タデ科であるタデ、そしてガマ科であるガマには、病原性があり、アカバナ科であるミズユキノシタとキク科であるタウコギには、病原性がないと記載されている。
【0008】
また、分類学的に担子菌類(Basidiomycetes)の菌核形成菌であるスクレロチウムデルフィニーBWC04-107(Sclerotium delphinii BWC04-107)菌糸懸濁液を用いた実験において、除草剤パラクアット(paraquat)抵抗性であるヒメムカシヨモギのようなキク科植物(Asteraceae)に相対的に高い選択的病原性を有すると報告されており(大韓民国特許100769363、パラクアット系抵抗性ヒメムカシヨモギ類防除用スクレロチウムデルフィニーBWC04-107菌株及びそれを用いて製造される菌糸体懸濁液)、病原性評価結果では、ポテト、隠元豆、さつまいも、燕麦、キビ、緑豆、カウピー、小麦、稲、麦、モロコシ、とうもろこし、エンドウ、ナタマメ、ソラマメ、栗、豆、小豆、タバコ、えごま、ピーナッツ、鳩麦、胡麻、茄子、唐辛子、にんじん、いちご、ニンニク、大根、ハクサイ、ニラ、サンチュ、すいか、及びキャベツには、病原性がなかったが、キュウリには、病原性が存在しており、雑草のうちには、ヒルムシロ科のヒルムシロ、ナス科のイヌホオズキ、ウキクサ科のウキクサ、イグサ科のイグサ、カタバミ科のカタバミ、キク科のオオブタクサ、アメリカセンダングサ、セイヨウタンポポ、コウライキバナタンボボ及びタンポポ、カヤツリグサ科のクログワイ及びイヌホタルイ、トクサ科のスギナ、アブラナ科のシロイヌナズナ、スベリヒユ科のスベリヒユ、オモダカ科のオモダカ、ツユクサ科であるツユクサ、トウダイグサ科のエノキグサ、タデ科のタデ、ミチヤナギ、スイバ、ヒメスイバ、ヒルガオ科のネナシカズラ、アメリカネナシカズラ、マメダオシ及びハマネナシカズラ、アカザ科のアカザ、ミズアオイ科のホテイアオイ、ミズアオイ、コナギ、イネ科のスズメノテッポウ、カラスムギ、メヒシバ、ヒエ及びオオクサキビには、病原性がないが、キク科のヒメムカシヨモギ、ケナシヒメムカシヨモギ、アレチノギク、ヒメジョオン、カワラヨモギ、ケショウヨモギ 、ヨモギ、タカヨモギ、ハハコグサ及びヒメチチコグサ、マメ科のクサネム及びクローバには、病原性があると記載されている。
【0009】
海外での菌核形成菌を用いた事例としては、スクレロチウムロルフシーSC64(Sclerotium rolfsii SC64)菌株が広葉雑草(broadleaf weed)に対するバイオ除草としての可能性を立証し、包装実験で多様な雑草で病原性を検定しているが、この実験は、菌核ではない菌糸培養体を用いた特徴がある(Tangら. 2011, Field evaluation of Sclerotium rolfsii, a biological control agent for broadleaf weeds in dry direct-seeded rice. Crop Protection 30, 1315-1320.)。
【0010】
アメリカ特許US5994267、8557735は、スクレロティニア・ミノール(Sclerotinia minor)IMI344141菌株がキク科タンポポ種類を含む広葉雑草雑草を効果的に防除する除草効果があると報告したが、これは穀物が含まれた培地で菌糸体を培養した後、粉砕し、追加的な培地成分を混合し、直径約1.7mmの粒子(particle)状に製造し、芝生で20~60g/m2ほど使用するように粒子化した製剤で活性化された菌糸を使用しただけであり、菌核自体を利用したものではない。すなわち、前記アメリカ特許組成物は、麦(barley)、キビ(millet)、米(rice)または小麦(wheat)穀物を粉砕し、アルギン酸ナトリウムまたはカオリン(kaolin clay)を混合して粒子(particle)状に製造され、これら粒子表面に粘着剤(sticking agent)で塗布したが、微生物生存期間は、11日未満であり、保存期間は14日に過ぎず、産業的利用が非常に制限的であった。
【0011】
植物病害管理のための微生物を用いた生物学的方法は、同じ棲息地空間及び栄養素に対する微生物間の競争で優点するように組成することが一代案にもなる。韓国ゴルフ場芝に発生する主要病害としては、褐色葉枯病(large patch;病源菌Rhizoctonia solani)、ダラースポット病(dollar spot;病源菌Sclerotinia homoeocarpa)などが含まれるが、これら土壌伝染病は、ゴルフ場の芝張替えが容易ではなく、化学農薬で管理するので、化学的汚染に係わる恐れが高い。ダラースポット病を起こす病源菌Sclerotinia homoeocarpaは、本発明の組成物に使用されたスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105(Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105)菌株と分類学的に属名(genus name)が同一であるが、大韓民国特許第100496011号において、BWC98-105菌株は、芝に対する病原性がないという記載から、その使用時に芝に対する被害はないと予想される。したがって、BWC98-105菌株の菌核を含む本発明の組成物を、ダラースポット病が発生する前に散布すれば、芝が生育する土壌と地表面空間で定着し、以後、ダラースポット病が発生する時点では、BWC98-105菌株とダラースポット病菌は、同一棲息地及び栄養素に対して生態的に競争することで、ダラースポット病の発生が抑制される効果を提供可能となる。
【0012】
本発明は、菌核自体を用いた除草のみならず、土壌伝染病抑制のために開発されたものであって、特に従来の菌糸培養体使用方式とは異なって、硬化された皮に溜まって活性化されていない休眠状態の菌核自体を使用することで、製品化段階、保管及び流通段階、及び現場での散布使用便宜性において活性が消失することなく、簡便に使用することができる菌核(sclerotia)そのものを活用しようとした特徴がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記問題を解決するために本発明では、真菌の生活環過程で一定段階で形成される構造体である菌核を用いるが、その栄養素を含んでもよい。
【0014】
また、本発明は、吸水性素材を含み、菌核活性時に薬効が安定して効率よく発現され、生産、保存、流通、及び使用過程など、全体としての管理費用と便利性を改善しようとする。
【0015】
本発明は、菌核形成菌の菌糸培養体または懸濁液を使用せず、硬化された菌核自体を生物学的防除に活用しようとした特徴がある。
【0016】
微生物を含む生物学的製品に係わる従来技術の問題点を解決するために、真菌のうち、菌核形成菌の構造体菌核に着目して、製品の生産、保存、流通、及び使用過程の問題点を解決し、安定した薬効を提供する組成物を提供しようとする。
【0017】
また、本発明の組成物を使用して、アレチウリなど標的植物を効率よく抑制する方法を提供しようとする。
【0018】
また、芝のダラースポット病のような土壌伝染病の発生を抑制する方法を提供するために、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記のような課題を解決するために本発明は、真菌の休眠状態菌核と、炭素源及び窒素源栄養素と、を含んで乾燥したことを特徴とする、休眠状態菌核が含まれた固形組成物を提供することができる。
【0020】
また、前記固形組成物は、吸水性素材、粘着剤、及び防腐剤のうち、いずれか1つ以上をさらに含み、前記真菌の休眠状態菌核は、スクレロティニア属、スクレロチウム属及びリゾクトニア属のうち、いずれか1つとして提供し、真菌の休眠状態菌核は、1個~5個提供し、球状(globular)または押出型ペレット状(extruded pellet)剤型を提供し、固形組成物の炭素源及び窒素源栄養素は、固形組成物のうち、1~20重量%含まれるように提供することができる。
【0021】
また、前記固形組成物は、除草用または真菌性土壌伝染病抑制用として使用するが、除草用は、アレチウリ除草用とし、土壌伝染病は、ダラースポット病、芝褐斑病またはイネ紋枯病のうち、いずれか1つでもある。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、生物学的休眠状態である菌核自体を防除技術に提供する効果がある。
【0023】
本発明は、菌核を使用することで、製品生産、保存、流通など製品化、保管、流通及び現場での使用便宜性を提供し、散布後には、環境条件が適した場合にのみ菌核が活性化されるように支援することができる。
【0024】
本発明は、菌核含有固形組成物に菌核栄養素を含むことで、発芽後、菌糸の生長に必要な炭素源、窒素源など栄養成分を効果的に供給して防除効果を極大化することができる。
【0025】
本発明は、栄養素を吸水性素材に含むように支援することで、自然状態で降雨などによる水分供給時に、菌核発芽及び菌糸生長に必要な水分供給時間をさらに延長する効果を提供することができる。
【0026】
本発明は、真菌の菌核、栄養素及び吸水性素材を共に構成し、汚染微生物抑制のための抑制物質をさらに含めて提供することで、水分供給時に初期菌核が発芽して菌糸が生長する間、菌核形成菌の栄養素に対して競争する汚染微生物の生長を抑制する効果を提供することができる。
【0027】
本発明は、アレチウリ及び菌核形成菌による病原性が知られた標的植物の管理方法を提供することができる。
【0028】
本発明は、芝で発生したダラースポット病のような土壌伝染病発生を抑制する効果的な管理方法を提供することができる。
【0029】
本発明は、製品生産者、流通業者と現場使用者に使用便宜性及び経済性を提供することができる。
【0030】
また、本発明の効果は、前述したものなどに限定されず、言及されていない他の効果は、後述する具体的な記載から認められねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の菌核組成物実験に使用された菌核である。
図2】菌核を含む球状ペレット製剤の写真である。
図3】球状ペレット製剤を拡大した写真である。
図4】本発明で実施したスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105(Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105)菌株によるアレチウリ幼苗に係わる病原性調査写真であり、幼苗の基底部で菌糸が育ち、幼苗の基底部に苗立枯れ病(damping-off)の症状を示し、菌核が形成されることを確認することができる。
図5】自然環境でスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105(Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105)菌株の球状ペレット製剤を散布した区域で無処理対照群の被覆度(A)と比較して、アレチウリが枯死して被覆度(B)が顕著に減少した状態の写真である。
図6】自然環境でスクレロティニアトリホリオルムBWC98-105(Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105)菌株の球状ペレット製剤を散布後、BWC98-105菌株によって感染され、枯死したアレチウリの茎と、茎上に再形成された菌核の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の説明において関連公知機能あるいは構成に係わる具体的な説明が、本発明の要旨を不明にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0033】
また、後述用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語であって、使用者、運用者の意図または判例などによっても異なる。したがって、その定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されねばならない。
【0034】
本発明は、菌核組成物及びその用途に関するものであって、生物学的休眠状態である菌核そのものを防除技術に提供しようとする。
【0035】
本発明は、真菌の菌核が含まれたことを特徴とする植物管理用固形組成物を提供し、固形組成物は、菌核形成菌生長に必要な栄養素をさらに含むか、前記固形組成物は、吸水性素材をさらに含んでもよい。
【0036】
本発明の真菌は、スクレロティニア属、スクレロチウム属、及びリゾクトニア属のうち、いずれか1つでもあり、栄養素は、砂糖やブドウ糖を炭素源とし、窒素源としては、大豆粕や酵母抽出物を含むが、炭素源及び窒素源が含まれた栄養素の総含量は、固形組成物に1~20重量%含まれうる。
【0037】
本発明において、吸水性素材は、素材自重の10倍以上の水を吸収することができる高吸水性高分子でもある。
【0038】
本発明の固形組成物は、除草用または土壌伝染病管理用の用途として提供することができ、除草用用途は、アレチウリまたはクローバ駆除用であり、土壌伝染病管理の用途は、ダラースポット病、芝褐斑病、またはイネ紋枯病管理用でもある。
【0039】
本発明の固形組成物は、1個~5個の菌核を含むが、球状(globular)または押出型ペレット(extruded pellet)状にも作製される。
【0040】
本発明の真菌の菌核は、標的植物の除草用として用いる方法を提供可能であるか、真菌の菌核を土壌伝染病管理用として用いる方法を提供することができる。
【0041】
本発明の菌核組成物は、アレチウリなど標的植物を選択的に駆除するバイオ除草剤の機能を提供し、芝のダラースポット病など土壌伝染病を効果的に抑制するバイオ殺菌剤の機能を提供する。しかし、その意味に限定されず、概念的に同等レベルの成分をいずれも含む用語として定義することができる。
【0042】
土壌伝染病(soil-borne diseases)とは、病原体が休眠状態、または増殖後、土壌中に潜在していて、寄主作物に侵入して起こる病気であると定義することができる。
【0043】
標的植物とは、管理の対象になる植物であって、本発明では、アレチウリまたはクローバが該当する。
【0044】
<実施準備>
本発明に使用する真菌は、菌核を形成すると報告された真菌(Smith ME, Henkel TW., Rollins JA. 2015. How many fungi make scleortia? Fungal Ecology 13, 211-220)のうち、植物病原性真菌の菌核で構成されうる。
【0045】
菌核形成真菌のうち、特にスクレロティニア(Sclerotinia)、スクレロチウム(Sclerotium)、リゾクトニア(Rhizoctonia)属に属する真菌のうち、1つ以上の真菌から得られた菌核でもあるが、菌核組成物に菌核の発芽及び生育に必要な炭素源、窒素源などや微量元素を含む栄養素を含むが、標的植物によって異なるように設計することができる。
【0046】
菌核組成物に使用された吸水性素材は、自重の10倍以上の水分を吸収する特性を有することが望ましいが、これを通じて水分供給時間を延長する効果を提供し、栄養素及び水をして、菌核発芽及び生長を促進するようにする。
【0047】
本発明の前記菌核組成物は、副材料として増量剤、防腐剤と粘着剤のうち、1つ以上を含んでもよい。
【実施例
【0048】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
<実施例1> 乾燥環境における菌核の生存力比較
菌核の生存力を、菌糸培養体及び乾燥環境で比較した。菌核形成菌としては、Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105(寄託番号:KACC93004P、以下「菌核形成菌1」と称する)の菌核(以下「菌核1」と称する)と、Sclerotium delphinii BWC04-107(寄託番号:KACC93031P、以下「菌核形成菌2」と称する)の菌核(以下「菌核2」と称する)を、菌糸培養状態の菌糸培養体及び硬化された菌核自体で比較した。
【0050】
菌核形成菌の菌核は、ポテトデキストロース寒天培地(potato dextrose agar、PDA;Difco社)で2週以上25℃で培養して確保し、菌核形成菌の菌糸培養体は、PDAにおいて5日間25℃で培養し、菌核形成以前段階で確保した。
【0051】
菌糸培養体は、菌核形成菌が育っているPDAの切片(横1cm x 縦1cm x 厚さ0、5cm)を汚染されないように切って使用するが、菌核と菌糸培養体を各2セットずつ準備し、1セットは、乾燥過程なしにポテトデキストロース寒天培地に置床した後、25℃で培養し、他の1セットは、乾燥器(dry oven)に3日間50℃で乾燥させた後、ポテトデキストロース寒天培地に置床し、25℃で培養した。
【0052】
実験は、5回反復処理し、ポテトデキストロース寒天培地で育つコロニー(colony)の直径を測定して生存力を比較した。
【0053】
【表1】
【0054】
[表1]のように本発明の菌核形成菌の菌核は、50℃、3日間の乾燥環境でも生存し、生産、製造、流通過程で劣悪な条件でも活性が保持されると見られるが、既に活性された菌糸培養体は、乾燥過程でいずれも不活性化され、一定時間経過後にも菌糸が育つことができなかった。したがって、本発明の組成物は、乾燥環境でも活性が保持される菌核の特性を確認することで、実施環境に頻繁に露出される乾燥した環境において効率よく生存可能であることを確認した。
【0055】
<製造例1~製造例7> 菌核組成物の製造
前記実施例1に基づいて[表2]のような組成比率で固形組成物を完成した。まず、用意された菌核を糖衣機に入れて回転させつつ残り組成物の粉末を追加した後、水を適切に噴霧しつつコーティングし、また粉末を追加し、水を噴霧する過程を繰り返してコーティングすることで、直径4mm程度の球状ペレットを作って乾燥することで、製造例の組成物を完成した。[表2]ペレット組成比は、水分が除外された組成比である。
【0056】
組成物で炭素源としては、市販ブドウ糖粉末と窒素源として脱脂大豆粕(soybean meal)粉末を使用し、防腐剤は、クエン酸(citric acid)粉末を使用した。ペレット製剤化時に、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)粉末を吸水性素材と粘着剤として使用し、増量剤としては、販売中のシリカ(silica)粉末を使用した。炭素源や窒素源を含む栄養素の総含量は、固形組成物に1~20重量%以内で需要者の要求によって適切に含んでもよい。
【0057】
【表2】
【0058】
また、これら製造例と対比するために、対照群として前記2つの実験菌株の菌核が形成される前に菌糸培養体を用いた比較例1、2を準備したが、比較例1は、Sclerotinia trifoliorum BWC 98-105の菌糸培養体、比較例2は、Sclerotium delphinii BWC04-107の菌糸培養体である。
【0059】
<実施例2> 温室条件でアレチウリに対する除草効果
前記製造例1~4及び比較例1を利用して、アレチウリ幼苗に対する病原性検定を通じて除草効果を確認した。
【0060】
アレチウリ種子を発芽させた後、床土ポット(直径8.5cm、高さ6.5cm)に播種して温室で育成した後、幼苗本葉が2~3個形成される生育段階で各製造例と比較例組成物をアレチウリのつる周辺に処理した。各製造例の球状ペレットは、アレチウリ幼苗ごとに5個ずつ処理し、各比較例の菌糸培養体は、菌核形成菌が育っているポテトデキストロース寒天培地の切片(横1cm x 縦1cm x 厚さ0.5cm)を切って処理した。
【0061】
一方、製造例と比較例は、各10個体のアレチウリ幼苗として2セットを設計した。そのうちの1セットは、製造例1、2の処理後、底面潅水して常に十分な水分が供給されるようにし、他の1セットは、1週間毎日最小量の水をかけてアレチウリが枯れないほどに管理していて、8日目からは、底面潅水して十分な水分が供給されるようにしながら、処理群による病原性を調査し、その結果、下記表3の通りである。
【0062】
【表3】
【0063】
前記[表3]の表示において、「-」は、10個体でいずれも病原性がないことを、「+」は、10個体のうち、3個体未満で菌糸体が観察されるが、立枯症状はないことを、「++」は、10個体のうち、5個体以上で菌糸体が観察され、弱い立枯症状が示されたことを、「+++」は、10個体のうち、9個体以上で菌糸体が観察され、植物体が枯れて褐変し、枯死することを、それぞれ表示したものである。
【0064】
実験結果、[表3]のように製造例1、2は、アレチウリ幼苗に対して安定した病原性を示し、製造例3、4でも、病原性を確認したが、発現が遅く、その効果も低かった。すなわち、比較例1、2は、底面潅水条件では迅速に病原性が発現されたが、一週間、底面潅水をせず、水分供給を制限した条件では、病原性が現われていない。それを通じて、製造例1、2は、乾燥条件及び多湿条件が一貫性なしに現われる自然環境でも、安定して病原性が発現されるという点を確認した。また、比較例1、2を通じて、活性状態の菌糸培養体は、使用時点から水分供給が不十分であれば、不活性化されるので、製剤導入に大きな限界があることを確認した。
【0065】
<実施例3> 自然環境でアレチウリに対する除草効果
自然環境での実験は、アレチウリの自然発生が観察された2018年4月初からソウル近郊で実施した。まず、アレチウリ群落を試験区(大きさ4m x 5m)に区分し、表2の製造例1、2を平方メートル当たり10g程度(=200g/試験区)で3回(1次:5月20日、2次:6月30日、3次:7月15日)均一に散布した。また、同じ大きさの試験区1つには、何も処理せず、無処理対照群として使用した。1次散布時点でアレチウリ茎は、1mの長さを超えつつ、本格的に地表面上で匍匐し始めた。1次散布後、35日間の平均気温、降雨日数、及び降雨量は、それぞれ21.3℃、12日、206.5mmであり、2次散布後、35日間の平均気温、降雨日数、及び降雨量は、それぞれ26.9℃、14日、305.6mmであり、3次散布後、28日間の平均気温、降雨日数、及び降雨量は、それぞれ30.0℃、9日、35.0mmであって、3ヶ月以上実施された実施期間の温度と水分供給は、非常に不規則な状態であった。
【0066】
アレチウリは、4月初旬に出芽が観察され、1次散布日である5月13日の平均気温は、15℃であり、最低気温は、12.7℃、そして最高気温は、20.0℃であり、この時点で、アレチウリは、本葉が5~10個程度であった。製造例1、2のアレチウリに対する除草効果は、被覆度で評価したが、被覆度とは、無処理対照群の試験区においてアレチウリのつるが覆っている地表面積の被覆程度を肉眼で判断した後、全面被覆100%を基準としたものであり、各時点に被覆度を算定し、経時的調査の結果[表4]のような効果が確認された。
【0067】
【表4】
【0068】
[表4]のように製造例1、2は、2次調査時点で被覆度が20-30%レベルに減少し、3次調査時点にも保持された。これを通じて、本発明の製造例1、2は、温度と湿度などが一定していない自然環境でもアレチウリ除草効果が非常に良いという事実を確認した。すなわち、1次調査時点では、薬効が観察されていないが、2次調査時点からは、本発明の組成物である製造例1、2の試験区には、何らの措置も取っていない無処理対照群よりも被覆度がはるかに低く、1次調査時点で被覆度の差が観察されていない理由として、アレチウリのつるは、1~3mレベルに育ったが、地表面を覆うほど十分に育っておらず、平均気温が21.3℃と低く、梅雨の本格開始以前であって、湿度が低かったためであると見られる。
【0069】
しかし、2次調査時点では、追加的な2次散布だけではなく、気温及び湿度が高くなったので、製造例1、2の試験区では、アレチウリつるの被覆度が無処理対照群よりも大きく低く、[図5]写真のように2次調査時点でアレチウリの被覆度を確実に異なるということを確認した。また、被覆度の低い所を詳細に見た[図6]の写真では、アレチウリのつるにおいて、菌核形成菌の菌糸が生長し、標的植物を感染させてつる枯れ症状、及び2次菌核が再び形成されていることも観察された。これは、菌核が消失しない場合には、当該地域標的植物に係わる管理が持続的に可能であることを裏付ける。しかし、無処理対照群では、[図5]の写真のように、つる枯れ症状や菌核形成が観察されていない。
【0070】
また、本発明の組成物散布後、3次調査時点に、製造例1、2の試験区では、依然としてアレチウリ被覆度がさらに低く保持された。これを通じて、温度と湿度の変化が大きく、直射日光が照射される自然環境でさえも、製造例1、2の組成物は、活性状態ではないにも拘わらず、生存していて、梅雨時期以後の高温多湿な環境条件で活性状態となり、アレチウリに対する病原性を発現し、抑制効果も卓越したことを確認した。また、被覆度が低く、空き空間には、非漂的植物であるアカザ、イヌホオズキ、ネコジャラシなどが完全に根付いていた。
【0071】
<実施例4> クローバに対する除草効果
実施例4は、製造例1、2を土壌に散布し、クローバに対する除草効果を確認したものである。実験は、ガラス温室で実施したが、四角ポット(横45cm x 縦30cm x 高さ5.5cm)に自然に生長するクローバ群落を四角ポットに移植し、温室で育て、クローバが定着して十分に育つように3週間管理した。
【0072】
次いで、製造例1、2を平方メートル当たり10gレベルに均一に散布した後、5個ポットは、底面潅水を通じて土壌に水分を十分に供給し、5個ポットは、底面潅水をせず、クローバが枯れないほどに最大限乾燥した土壌条件で管理した。除草効果は、四角ポットの面積対比でクローバが生長しない面積の比率(%)を計算して評価し、[表5]のように調査された。
【0073】
【表5】
【0074】
[表5]で製造例1、2は、クローバに対する病原性が発現されたことが確認され、製造例3、4でも病原性を確認することができたが、製造例1、2に比べて、さらに遅く発現され、レベルも非常に低い状態であった。
【0075】
しかし、比較例1、2では、底面潅水条件において、病原性が早く、かつ高く発現されたが、散布後、1週間、底面潅水を行わない乾燥条件では、除草効果がほとんど現われず、活性が消失したということが分かる。すなわち、製造例1、2は、たとえ初期活性化段階まで時間がかかったとしても、以後、病原性が高く発現され、除草効果が長時間高く保持されているが、最初から活性状態に投入された比較例1、2は、最初から病原性が高く発現されたが、乾燥した環境では、早く不活性化され、以後除草効果が全くなく、現場使用時に相当な制約があるということが分かる。
【0076】
つまり、製造例1、2の菌核組成物は、菌糸培養体と異なって、野生状態でも長期間にわたって効率よくクローバを防除可能であるという点を確認した。
【0077】
<実施例5> ダラースポット病(dollar spot)に対する抑制効果の調査
ダラースポット病誘発病源菌Sclerotinia homoeocarpaは、分類学的に本発明に使用された菌核形成菌Sclerotinia trifoliorumと属名(genus name)が同一であり、生物学的観点で類似しているが、本発明の組成物に使用されたSclerotinia trifoliorum BWC 98-105は、芝に対する病原性がないと報告された点で異なる。また、菌核形成菌Sclerotium delphiniiは、分類学的には異なるが、土壌伝染病原性真菌という点で、生態的に類似した面がある。このために、本発明の組成物製造例1、2は、ダラースポット病発生以前に散布する場合、芝が生長する空間を先占することができ、定着すれば、ダラースポット病菌との生態的競争によってダラースポット病が少なく発生する。これを実施例5を通じて確認された。
【0078】
実施例5では、前記製造例1、2を使用してガラス温室で実施された。ダラースポット病(dollar spot、Sclerotinia trifoliorum)に抑制効果が実際にあるかを評価した。すなわち、ダラースポット病は、芝の種類に関係なく、大部分の芝種類に病原性を示すので、西洋芝の一種であるクリーピングベントグラス(creeping bentgrass, Agrostis palustris)を利用し、四角ポット(横45cm x 縦30cm x 高さ5.5cm)に植物栽培用床土を適切に入れた後、クリーピングベントグラスカーペットを四角ポットに合わせて切って植え、温室で3週間育てた。そして、前記製造例1、2を平方メートル当たり約10gレベル(=1.5g/ポット)に散布し、底面潅水を行いつつ、1週間育てた後、芝が生長する表面に5個の孔(直径1cm、深さ約2cm)を形成し、ダラースポット菌の土壌接種体の孔ごとに3gずつ接種した。この際、ダラースポット病菌の土壌接種体は、オートミール:砂:水=1:20:40の重量比で混合した後、ポテトデキストロース寒天培地で育てた菌糸培養体を入れ、10日間25℃で培養して準備した。実験結果分析において、ダラースポット病に対する抑制効果は、四角ポットで育つベントグラスの被害面積率。すなわち、ダラースポット病の発生による被害面積を、四角ポット面積で割って100を乗算した数値で評価したが、[表6]のように確認された。
【0079】
【表6】
【0080】
すなわち、[表6]のように実施例5の製造例1、2の場合、散布後、被害程度を28日経過時点に確認したところ、約8%にとどまったが、無処理対照群では、最初には被害が類似した程度であったが、28日経過後には、約47%レベルまで急増した。これは、製造例1、2の場合、クリーピングベントグラスのダラースポット病に相当な抑制効果があるということを示すと共に、管理植物である芝、クリーピングベントグラスに対しては、病原性がないということを同時に確認したものである。
【0081】
つまり、実施例5は、前記製造例1、2が環境条件が一定していない状態で使用されても、芝のダラースポット病は、非常に効果的に抑制しつつも、芝には、有害ではない肯定的効果を立証したものである。これを通じて、本発明の実施例で提示はしていないが、病原性病菌に対する生態学的競争を通じて病源菌抑制効果があるという点を適用すれば、芝褐色葉枯病(large patch、病源菌 Rhizoctonia solani)とイネ紋枯病菌(rice sheath blight、病源菌 Rhizoctonia solani)にも、菌核組成物利用時に類似した効果が予想される。このような効果は、当該技術分野の熟練された当業者であれば、下記特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から外れない範囲内で本発明を多様に修正及び変更して実施可能であろう。
【0082】
また、本発明の組成物製剤例1、2の単位面積当たり散布量と散布回数については、別途評価を行っていないが、前記実験から散布量と散布回数が増加すれば、作用効果が比例的に増加するということは合理的に予測される。但し、除草及び病源菌抑制のために菌核活性化が先行されねばならないので、製品化段階では、温度、湿度または直射日光など環境要因を反映して散布時期が散布量及び散布回数のように考慮されねばならない。
【0083】
前述したように、本発明の組成物製造例1、2は、温室実験と自然環境条件で生態撹乱種であるアレチウリを効果的に駆除する効果があるということを確認した。また、管理対象植物であるクローバ駆除に活用性が高く、ダラースポット病にも非常に効果的であるということを明確に確認した。
【0084】
本発明では、実験の便宜上、前記実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練された当業者であれば、特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から外れない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更して実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、植物管理及び除草用として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】