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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】新規ブタロタウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20220111BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20220111BHJP
   C07K 14/14 20060101ALI20220111BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 35/765 20150101ALI20220111BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220111BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N7/00
C12N15/40 ZNA
C07K14/14
C07K16/10
A61K35/765
A61P31/14
A61K39/12
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525206
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2019080811
(87)【国際公開番号】W WO2020099293
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】18205672.1
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】デ・グルーフ,アド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーメイ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ホーク,コーネリア・マリア
(72)【発明者】
【氏名】デイス,マルティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA73
4C085CC08
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC61
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA31
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規ロタウイルス、特に単離されたウイルス(当該ウイルスは、ブタB群ロタウイルス(ブタRVB)の亜種のメンバーであり、ブタにおいて下痢を引き起こす)、前記ウイルスのDNA断片および対応するタンパク質、前記ウイルス、DNAおよび/またはタンパク質に基づくワクチン、前記ウイルスおよび/またはタンパク質と反応性の抗体、ならびに、前記ウイルス検出用診断キットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタB群ロタウイルス遺伝子型G12の亜種のメンバーである単離されたロタウイルスであって、
その野生型においてブタの下痢を引き起こし、
前記ウイルスが、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列または当該配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレームを含むウイルスゲノムを有することを特徴とする、ウイルス。
【請求項2】
配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列が、外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7をコードすることを特徴とする、請求項1に記載の単離されたウイルス。
【請求項3】
オープンリーディングフレームを含む核酸断片であって、
前記オープンリーディングフレームが、少なくとも200ヌクレオチドを含み、
前記核酸断片が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性レベルを有する配列に相当するヌクレオチド配列を有することを特徴とする、核酸断片。
【請求項4】
前記オープンリーディングフレームが、外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7をコードすることを特徴とする、請求項3に記載の核酸断片。
【請求項5】
前記オープンリーディングフレームが、異種プロモーターの制御下にあることを特徴とする、請求項3または4に記載の核酸断片。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項記載の核酸断片のオープンリーディングフレームによってコードされる組換えタンパク質。
【請求項7】
外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7またはその断片であって、
配列番号2に従うタンパク質であるか、または、当該配列と少なくとも93%の同一性レベルを有するタンパク質であることを特徴とする、糖タンパク質またはその断片。
【請求項8】
ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染防御のために使用されるワクチンであって、
当該ワクチンは、免疫原性有効量の請求項1または2に記載のウイルス、または免疫原性有効量の請求項6に記載の組換えタンパク質、または免疫原性有効量の請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または免疫原性有効量の請求項3~5のいずれか1項に記載の核酸断片と、医薬的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする、ワクチン。
【請求項9】
動物の予防的治療において使用するための、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
請求項1または2に記載のウイルス、または請求項6に記載の組換えタンパク質、または請求項7に記載の外ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性である、抗体または抗血清。
【請求項11】
請求項1または2に記載のウイルス、またはその抗原性物質、または請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性である抗体の検出のための診断検査キットであって、
前記検査キットが、請求項1または2に記載のウイルス、またはその抗原性物質、または請求項6に記載の組換えタンパク質、請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7を含むことを特徴とする、診断検査キット。
【請求項12】
請求項1または2に記載のウイルス、またはその抗原物質、または請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7の検出のための診断検査キットであって、
前記検査キットが、請求項1または2に記載のウイルスもしくはその抗原物質と反応性の、または請求項6に記載の組換えタンパク質と反応性の抗体と反応性の、または請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性の抗体を含むことを特徴とする、診断検査キット。
【請求項13】
請求項8または9に記載のワクチンを動物に全身投与することにより、ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染から動物を防御する方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載のウイルス、または請求項6に記載の組換えタンパク質、または請求項7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または請求項3~5のいずれか一項に記載の核酸断片と、薬学的に許容可能な担体とを混合することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染から動物を防御するためのワクチンの製造に使用するための、請求項1または2に記載のウイルス、または請求項6に記載の組換えタンパク質、または請求項7に記載の外ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または請求項3から5のいずれか1項に記載の核酸断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタの下痢性疾患を引き起こす新規ロタウイルス、前記ウイルスの核酸フラグメントおよび対応するタンパク質、前記ウイルス、核酸および/またはタンパク質に基づくワクチン、前記ウイルスおよび/またはタンパク質に反応性の抗体、ならびに、前記ウイルス検出のための診断検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的背景
過去数十年にわたり、世界中でブタ肉の摂取量が大幅に増加している。その結果、市場のニーズの高まりに対応するために、農場の数と規模の増加が見られる。畜産で一般に知られているとおり、多数の動物が同居すると、あらゆる種類の病気にかかりやすい。また、多数の動物を飼育すると、感染の危険性が高まる。若齢の動物、例えばブタなどに特に起こるこれらの病気の1つは、ロタウイルスによる感染症である。
【0003】
ロタウイルス(RV)は、幼児および若齢の動物(哺育および離乳子ブタを含む)における急性胃腸炎の主要原因として十分に確立されている。ロタウイルス性腸炎は、悪心、嘔吐、水様性下痢および微熱を特徴とする軽度から重度の疾患である。いったん被験体がウイルスに感染すると、症状が現れる前に約2日間の潜伏期間がある。病気の期間は急性である。症状は嘔吐から始まることが多く、続いて4~8日間の多量の下痢が起こる。脱水症は、細菌性病原体により生ずるもののほとんどよりも、ロタウイルス感染症でよくみられ、ロタウイルス感染症に関連する最も一般的な死因である。さらに、これらのロタウイルスは、ヒトロタウイルスとの遺伝子交換のための潜在的な貯蔵所である。家畜の病原体として、特に若齢の子牛および子ブタにおいて、ロタウイルスは高い罹病率および死亡率に関連する治療費のため、農家に経済的損失をもたらす。
【0004】
RVはレオウイルス科に属し、11セグメントの二本鎖RNA(dsRNA)で構成されるゲノムを有し、抗原特性および内側ウイルスカプシドタンパク質6(VP6)の配列に基づき、現在8つのグループ(A~H)に分類されている。ヒトRVAおよびRVCについては世界中で記載されているが、現在の報告はヒトRVB株が中国でのみ記載されていることを示している。ブタRVBは1980年代に初めて同定された。
【0005】
RVB株を細胞培養に適応させることは困難であるため、RVB株の血清学的および分子的特徴付けには限界がある。外側カプシドタンパク質VP7をコードする遺伝子のペアワイズ同一性(pairwise identities)に基づくブタRVB株の分類は、Kuga et al.、2009(Arch Virol 2009;154(11):1785-95)及びMarthaler et al.、2012(Virology 2012 Nov 10; 433(1):85-96)により提唱されている。Kugaらは、38株のブタRVB株のVP7の配列を決定し、G遺伝子型分類を目的とした系統樹およびペアワイズ同一性頻度グラフを構築した。これらの解析に基づき、ヌクレオチドカットオフ値67%および76%を用いて、さらに12のクラスターに分けられる5つの遺伝子型を提唱した。Marthalerらは、既報のおよび新たに配列決定されたRVB株を用いて、適合したVP7分類(「Marthaler分類」に続く)を開発し、80%のヌクレオチド同一性カットオフ値に基づく20のG遺伝子型をもたらした。
【0006】
ロタウイルス外側カプシドタンパク質VP7およびVP4は、独立した中和抗体を誘導し(Greenberg et al.、J。Virol.、1983、47:267-275; Hoshino et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1985、82:8701-8704)、疾患に対する関連防御能を有することが十分に確立されている。VP4はスパイク状に突出するビリオンの表面に位置する一方、VP7はビリオンの外側表面を形成する糖タンパク質である。その構造的機能とは別に、株のG遺伝子型を決定し、VP4とともに、感染に対する免疫に関与する。
【0007】
最近、スペインの農場の子ブタにおいて新生児下痢の集団発生が観察されたが、雌ブタはRVAに対するワクチン接種を受けていた。したがって、ワクチン接種により初乳中にRVAに対する母体抗体が存在していたはずである。そこで、感染被験者からサンプルを採取し、ウイルスの有無を分析した。
【0008】
ロタウイルスBのVP7タンパク質に属する核酸配列が見いだされ、これは試料中のRVBの存在と関連づけることができる。試料中のRVBの存在も臨床的観察を説明することができた。VP7タンパク質をコードするほぼ完全長のヌクレオチド配列を配列番号1に示す。
【0009】
驚くべきことに、サンプル中に検出されたVP7配列が既知のRVB遺伝子型からのVP7配列と遺伝的に異なることが、遺伝子解析によって見出された。このように、被験体は、これまで疾患引き起こすことが知られていなかったRVB型を罹患したと結論された。
【0010】
本発明の目的
したがって、本発明の目的は、ブタの下痢に関連する新たな感染性病原体を提供するとともに、その疾患に対するブタの防御、予防、改善および/または治療、または疾患の症状の少なくとも減少および/または疾患の死亡率の減少を目的とするワクチンを提供することである。さらに、関連する感染因子を検出し、同定する手段を提供することも本発明の目的である。
【0011】
発明の概要
本発明は、ブタB群ロタウイルス遺伝子型G12の亜種のメンバーである単離されたロタウイルスを提供し、このロタウイルスは、その野生型においてブタの(新生児の)下痢を引き起こし、前記ウイルスは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列、または、当該配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレームを含むウイルスゲノムを有することを特徴とする。本ウイルスは実際にはRNAウイルスであるが、特定のDNA配列に対応する同一性レベルを有するウイルスゲノムのオープンリーディングフレームを発現するのが一般的である。一般に知られているように、これは、ウイルスゲノムの実際のRNA配列がそのDNA配列から転写され得ることを発現する。
【0012】
さらに、本発明は、少なくとも100ヌクレオチドを含むオープンリーディングフレームを含む核酸断片(DNAまたはRNAのいずれか)(ここで、前記核酸断片は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性レベルを有することを特徴とする)、ならびに、当該核酸断片によってコードされるタンパク質を提供する。好ましくは、当該断片は、100超のヌクレオチド、例えば、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、730から740までのヌクレオチドを含む。
【0013】
本発明はさらに、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性レベルを有する核酸断片によってコードされることを特徴とする、外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7を提供する。かかるタンパク質の例を配列番号2に示す。
【0014】
本発明は、さらに、ブタRVBによって引き起こされる感染に対してブタを防御するためのワクチンを提供し、当該ワクチンは、本明細書に記載される免疫原学的有効量のウイルスと薬学的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明は、さらに、ブタRVBによって引き起こされる感染に対してブタを防御するためのワクチンを提供し、当該ワクチンは、免疫学的有効量の本明細書に記載のタンパク質または外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7または核酸断片と、薬学的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする。
【0016】
当該ワクチンは、動物の予防的治療において使用され得る。
【0017】
本発明は、さらに、本明細書に記載の、ウイルスまたはタンパク質または外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性の抗体または抗血清を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、本明細書に記載のウイルスもしくはその抗原物質、またはタンパク質、または外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性の抗体の検出のための診断検査キットを提供する。
【0019】
本発明は、さらに、本明細書に記載のウイルスもしくはその抗原物質または外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7の検出のための診断検査キットを提供する。
【0020】
発明の詳細な説明
上述の疾患症状の原因病原体は、新規ロタウイルスB(RVB)、特に、疾患を引き起こすG12遺伝子型のRVBの存在と関連している可能性があることが見出された。遺伝子型G12のRVBは様々なロタウイルスに感染した罹患ブタから分離されているが(Marthaler 2012参照)、遺伝子型12のRVBがブタの疾患と明白に関連しているのはこれが初めてである。遺伝子解析により、サンプル中に見出されたヌクレオチド配列は、RVBの外側ウイルスカプシドタンパク質VP7(要するに「VP7カプシドタンパク質」または「VP7」)のオープンリーディングフレームに属することが明らかになった。DNA断片のヌクレオチド配列を配列番号1に示す。対応するアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0021】
既知のDNA配列と配列番号1とほぼ完全長のDNA断片との最大同一性は、Marthalerら、2012による分類提案に含まれる遺伝子型G12に分類されるブタVP7遺伝子と87%の同一性である。Marthalerらが提唱したVP7分類では、80%のヌクレオチド同一性カットオフ値に基づいて20のG遺伝子型が得られた。しかし、Marthalerらは、遺伝子型間および遺伝子型内の同一性の重複についても報告した。これに続いて、G12遺伝子型RotaBウイルスのいずれも、ブタにおける疾患、もちろん新生児下痢症についても、関連性は明らかではなかった。
【0022】
このため、本発明者らは、配列番号1のヌクレオチド配列を、新規ウイルス、特に新規ブタRVB、特に新規遺伝子型のRVB、Marthaler分類内のG12遺伝子型と最も類似性の高いVP7をコードする遺伝子を含むウイルスに暫定的に配置することにした。
【0023】
RVBの既知のVP7配列と、本発明による新規ウイルスのVP7 DNA配列との関係を示す系統樹を図1に提供するが、この図は、2つのサブ図からなり、第1の図は「図B」、第2の図は「図A」と表される。系統樹は近隣結合法を用いてMEGA‐Xソフトウェアで作成し、ギャップまたは挿入の場合はペアワイズ欠失を行った。参考文献:Tamura K,et al.、MEGA6: molecular evolutionary genetics analysis using maximum likelihood, evolutionary distance, and maximum parsimony methods. Mol. Biol. Evol. 2011;28: 2731-2739。この新しいウイルスは、この系統樹(第一の部分、下方節)ではNew RotaB VP7 Spainと呼ばれている。
【0024】
したがって、一実施形態において、本発明は、ブタRVBによる病原性感染、特にG12遺伝子型のブタRVBによる病原性感染からブタを防御するための方法において、抗原として使用するために、配列番号1のDNA断片によってコードされるVP7タンパク質を提供する。VP7タンパク質は、典型的には、ワクチン組成物、すなわちブタに投与するのに安全な組成物を含み、以下で説明するように、VP7は薬学的に許容可能な担体と混合される。
【0025】
これらの遺伝子およびタンパク質の天然変異は、ロタウイルスの個々の代表間に存在し得ることが理解されるであろう。例えばVP7のようなカプシドタンパク質配列にわずかな変化をもたらす遺伝的変異が実際に存在する。第一に、いわゆる「第2および第3塩基におけるゆらぎ」が存在し、それらがコードするアミノ酸配列中に気づかれないままで起こり得るヌクレオチド変化、例えば、トリプレットTTA、TTG、TCA、TCT、TCGおよびTCCはすべてロイシンをコードすることを説明する。さらに、本発明による新規ウイルスの代表間のわずかな変異がアミノ酸配列において見られることがある。
これらの変異は、全体の配列におけるアミノ酸の相違(単数または複数)、または、前記配列におけるアミノ酸(単数または複数)の欠失、置換、挿入、逆位または付加によって反映され得る。生物学的および免疫学的活性を本質的に変化させないアミノ酸置換は、例えば、"The Proteins“Academic Press New York (1979)においてNeurathらによって記載されている。関連アミノ酸間のアミノ酸置換または進化において頻繁に発生する置換は、とりわけ、Ser/Ala、Ser/Gly、Asp/Gly、Asp/Asn、Ile/Valである(Dayhof、M.D.、Atlas of protein sequence and structure、Nat.Biomed.Res.Found.、Washington D.C.、1978、vol.5、suppl.3を参照のこと)。他のアミノ酸置換には、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Leu/Ile、Leu/ValおよびAla/Gluが含まれる。この情報に基づき、LipmanとPearsonは、迅速かつ高感度なタンパク質比較法を開発し(Science 227、1435-1441、1985)、相同タンパク質間の機能的類似性を決定した。この発明の例示的な実施形態のこのようなアミノ酸置換、ならびに欠失および/または挿入を有する変異は、本発明の範囲内である。
【0026】
これによって、本発明によるブタロタウイルスの異なる代表から単離された場合に、VP7タンパク質が100%を有意に下回る相同レベルを有し得る一方で、依然として本発明によるブタロタウイルスのVP7タンパク質を表すことができる理由が説明される。
【0027】
このことは、例えば、上述したMarthalerら、2009による論文の図3における系統樹において明らかに反映されており、ここでは、それにもかかわらず、単一クレード(one single clade)内においてさえ、ヌクレオチド配列をコードするVP7が、全体的なゲノムヌクレオチド配列が有意に異なることが示されている。
【0028】
したがって、本発明によるウイルスは、とりわけ、そのゲノムが、配列番号1に示されているヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列に相当するヌクレオチド配列を含むという特徴を有する単離されたウイルスとして記載される。特に、本発明によるウイルスは、ブタB群ロタウイルス(ブタRVB)の亜種のメンバーであるロタウイルスであり、配列番号1に示されるヌクレオチド配列がVP7をコードするオープンリーディングフレームに属することを特徴とする。
【0029】
本発明のために、「同一性レベル」とは、配列番号1の配列、および/またはブタロタウイルスのVP7をコードする対応領域、および/または同一性レベルが決定されるべき対応するアミノ酸配列の同一性レベルと理解されるべきである。同一性レベルの決定に適したプログラムは、NCBFs基本局所アラインメントサーチツールのヌクレオチドブラストプログラム(blastn)であり、「Align two or more sequences」選択肢およびスタンダード設定(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を使用する。そこにおいて、同一性は、BLAST (Stephen Altschul、Warren Gish、Webb Miller、Eugene Myers、and David J.Lipmann at National Institutes of Health (NIH)、Journal of Molecular Biology、1990)で使用される(標準的な)Blastnアルゴリズムに基づいている。
【0030】
本発明によるウイルスは、典型的には単離されたウイルスである。本発明の目的のために、「単離された」とは、自然界でウイルスが関連している組織から遊離したことを意味する。
【0031】
本実施形態の好ましい形態は、ウイルス、例えば、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも91%、より好ましくは、好ましい順に、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列を含む単離ウイルスに関する。
【0032】
本発明によるウイルスは、生、弱毒化生または不活化形態であり得る。上記で示すように、ウイルスのVP7をコードする遺伝子のDNA配列を特徴付ける。現在ではとりわけDNAまたはRNAワクチンの基礎として、コードされたタンパク質に基づくサブユニットワクチンの調製用に、または診断目的のため、以下で広範に説明されるように使用することができるので、VP7をコードするORFに属するとされる配列番号1のヌクレオチド配列の同定は、非常に有用である。
【0033】
したがって、別の実施形態では、本発明は、少なくとも100、好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300、400または500のヌクレオチドを含むオープンリーディングフレームを含む核酸断片(例えば、DNAまたはRNA)に関し、前記核酸断片は、配列番号1に示されたヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは、好ましい順に、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらに100%の同一性レベルを、配列番号1に示されたヌクレオチド配列に対して有することを特徴とする。
【0034】
さらに別の実施形態では、本発明は、オープンリーディングフレームがVP7またはその断片をコードすることを特徴とする、上記の核酸断片に関する。
【0035】
本発明で使用される用語「その断片」は、完全長VP7タンパク質の任意のより小さい部分に関することができる。ワクチン接種において使用するためには、そのような部分は、免疫原性特性を付与するのに適しているべきである。すなわち、その断片は、ワクチン接種された被験体において免疫応答を誘導するのに機能的であり、これを「免疫原性断片」と命名することができる。
【0036】
本発明による核酸断片は、コードされたタンパク質の異種性発現に適した形態とすることができる。このような形態は、ウイルス核酸の異種発現に適したベクターまたは他の形態であり得る。典型的には、ベクターは、異種発現に適したプロモーターを含む。したがって、好ましい実施態様において、本発明による核酸断片は、異種プロモーターの制御下にあるか、または異種プロモーターの制御下でオープンリーディングフレームに導入される。
【0037】
したがって、別の実施形態では、本発明は、本発明による核酸断片によってコードされるタンパク質、特に外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または、異種発現系で産生されるその断片に関する。この実施形態の好ましい形態は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVP7に関する。
【0038】
本発明によるウイルスのこのようなVP7は、抗原としての使用、特にワクチンにおける抗原としての使用、より具体的にはサブユニットワクチンに使用するのに適している。さらに、これらを用いて抗体を作製することができる。さらに、以下に説明するように、診断検査を可能にする。
【0039】
さらに、本発明は、新規ウイルスの異なるタンパク質の全コード領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供し、新規ウイルスがロタウイルスに属することを確認する。本発明によって提供されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号1~22によって以下に示される:
【表1】
【0040】
したがって、本発明によるウイルスは、単離ウイルスとしてさらに記載することができ、そのゲノムが、セグメント1~11のタンパク質をコードする上記のヌクレオチド配列、すなわち、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21のヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を含むという特徴を有する。
【0041】
本発明の利点の一つは、ウイルス性下痢に罹患したブタの様々な臓器および体液、あるいはロタウイルス感染に関連するその他の徴候および症状における新規ロタウイルスの有無を分析し、以下に記載するようにワクチンを動物に投与することにより、健康な動物における疾患の治療または疾患の集団発生の予防を可能にすることが今や初めて可能になることである。
【0042】
本発明に係る「ワクチン」は、対象動物に投与しても安全であり、病原微生物に対するその動物の防御免疫を誘導する、すなわち、微生物に対する防御を誘導することができる医薬品組成物である。
【0043】
微生物に対する「防御」とは、その微生物による病原性感染の予防、改善および/または治療(治癒を含む)を補助することを意味し、例えば、病原体による感染に起因する1以上の臨床徴候を予防または軽減することを意味する。
【0044】
したがって、本発明の別の実施形態は、ブタにおけるロタウイルス感染、特にブタRVBによって引き起こされる感染、さらに特にG12遺伝子型のブタRVBによって引き起こされる感染を防御、すなわち予防、改善および/または治療するためのワクチンに関し、ここで、かかるワクチンは、本発明によるウイルスと薬学的に許容可能な担体とを含む。したがって、この点において防御は、疾患のアウトブレイク、すなわち、ウイルス感染によって引き起こされる(新生児)下痢または胃腸炎を防止するためのワクチン接種、ならびに、疾患の症状を減少させるためのワクチン接種を含むと解釈されるべきである。
【0045】
好ましくは、本発明によるワクチンは、感染と約2日間の疾患アウトブレイクとの間の時間が短いこと、および、ウイルス性下痢が非常に伝染性であることを考慮すると、疾患の予防のために使用される。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、ブタRVBの感染によって引き起こされる新生児下痢から防御するためのワクチンに関する。したがって、本発明はさらに、雌ブタワクチン接種のためのワクチンに向けられる。
【0047】
本発明において「雌ブタワクチン接種」とは、子ブタに受動免疫を伝達し、本明細書に記載のブタRVBの感染に対する防御を提供するための雌ブタの分娩前免疫化を意味する。雌動物に抗体を誘導することにより、子ブタはワクチン接種した動物の初乳の摂取を介して感染に対する適切な防御に到達する。したがって、子ブタにおいて防御効果を有することが示されている抗原は、雌ブタにワクチン接種して、子ブタにおいて、典型的には少なくとも生後0日から21日の間のウインドウにおいて、明確な防御効果を到達させるのに有用であり得る。
【0048】
したがって、本発明は、雌ブタのワクチン接種のため、および、子ブタがワクチン接種された雌ブタから初乳を取り込むことを可能にするための、本明細書に記載されるワクチンの使用にも関する。最適な防御に到達するために、初乳は典型的には48時間以内に、特に子ブタの生後24時間以内に取り込まれる。
【0049】
本発明によるワクチンにおける使用に適した薬学的に許容される担体の例は、例えば、滅菌水、生理食塩水、および、PBSなどの水性緩衝液である。さらに、本発明によるワクチンは、以下に記載されるように、アジュバント、安定剤、抗酸化剤および他のものなどの他の添加剤を含み得る。
【0050】
本発明によるワクチンは、本発明によるウイルスを弱毒化生または不活化形態で含むことができる。
【0051】
弱毒化生ウイルスワクチン、すなわち、本発明によるウイルスを生弱毒化形態で含むワクチンは、不活化ワクチンよりも、それらが自然の感染経路を最もよく模倣するという利点を有する。さらに、それらの複製能力は、少量のウイルスによるワクチン接種を可能にし;それらの数は、免疫系のトリガーレベルに達するまで自動的に増加するであろう。その瞬間から、免疫系が引き金となり、最終的にウイルスを排除することになる。弱毒生ウイルスとは、野外から分離されたウイルスと比較して、毒性レベルが低下したウイルスである。毒性レベルの低下したウイルスは、ウイルス感染の典型的な症状を引き起こさないウイルスと考えられる。しかし、弱毒化生ウイルスを使用することの欠点としては、本質的には一定の毒性が残されていることが考えられる。このことは、病原性のレベルが許容できる限り、すなわち、ワクチンが少なくともブタが下痢その他の典型的な感染症状を起こさない限り、真の欠点ではない。もちろん、弱毒生ワクチンの残りの病原性が低いほど、ワクチン接種中/接種後の体重増加に対するワクチン接種の影響は少なくなる。したがって、本発明の本実施形態の好ましい1つは、ウイルスが弱毒生形態である本発明によるウイルスを含むワクチンに関する。
【0052】
弱毒化ウイルスは、例えば、本発明によるウイルスを突然変異誘発物質の存在下で増殖させることにより得られ、その後、子孫レベルの減少および/または複製速度の低下を示すウイルスを選択することができる。かかる物質の多くは当技術分野で既知である。
【0053】
不活化ワクチンは、弱毒化生ワクチンとは対照的に、本質的に安全である。なぜなら、残りの病原性が残っていないからである。通常、弱毒化生ワクチンと比較していくぶん高用量のウイルスを含むという事実にもかかわらず、既に他の疾患に罹患しているブタにおいては、例えば、ワクチンの好ましい形態である可能性がある。不完全な栄養または準最適な畜舎のような次善の条件下で飼育されているブタも、不活化ワクチンの恩恵を受けるであろう。
【0054】
したがって、本実施形態の別の好ましい形態は、ウイルスが不活化形態である本発明によるウイルスを含むワクチンに関する。
【0055】
不活化の標準的な方法は、ホルムアルデヒドによる古典的な処理である。不活性化のために当技術分野でよく知られている他の方法は、UV-放射線、ガンマ-放射線、二元エチレンイミンによる処理およびチメロサールである。当業者はこれらの方法を適用する方法を知っている。好ましくは、本発明によるウイルスは、β-プロピオラクトン、グルタルアルデヒド、エチレン-イミンまたはホルムアルデヒドで不活性化される。ウイルスを不活化する他の方法もまた、本発明において具現化されることは言うまでもない。
【0056】
不活化されたロタウイルス全体がワクチンの良好な基礎となるが、その生産は高価で手間がかかるかもしれない。特に、ブタRVB株を細胞培養に適応させることは、当該技術分野では依然として困難である(Sanekata et al.、J Clin Microbiol.1996 Mar;34(3):759-761)。
【0057】
代替的なアプローチは、宿主細胞による効果的な認識に必要な中和エピトープを保持する1つ以上のロタウイルスタンパク質またはその免疫原性部分を発現させることにより、サブユニットまたは組換えワクチンを開発することである。外側カプシドの2つのタンパク質成分であるVP7およびVP4はいずれも中和抗体と反応し、これらのタンパク質のいずれかを対象とするモノクローナル抗体(MAb)はロタウイルスを中和する能力がある。
【0058】
VP7は、主要な外側カプシドタンパク質であり、ウイルスの抗原特性を決定する主な原因である。これは免疫原性の高い糖タンパク質であるため、サブユニットワクチンへの含有の第一候補である。したがって、ウイルス全体を使用するための魅力的な代替法は、ロタウイルスサブユニットの使用であり、より好ましくはVP7によって形成されるサブユニットの使用である。VP7によって形成されるサブユニットは、ワクチンに使用する前に不活化する必要がないという利点があり、したがって、それらは本質的に安全であるという追加の利点を有する。さらに、かかるサブユニットの異種性産生のためのクローニングおよび異種性発現系は、以下に記載するように、当技術分野で利用可能であり、確立されている。さらに、他のロタウイルスタンパク質が存在しない場合、組換えVP7は、天然の抗原決定基を媒介することが示されている(Khodabandehlooら、Iran J Public Health)2012; 41(5): 73-84.)。
【0059】
組換えワクチンは、合成メッセンジャーRNA、RNAレプリコン、および裸のDNAベクターを含む、DNAおよびRNAワクチンなどのワクチンを含む核酸構築物として提供することもできる。そのようなワクチン接種戦略の1つに、アルファウイルス由来レプリコンRNA粒子(RP)の使用が含まれ[Vander Veen,et al.Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012) doi: 10.1017/S1466252312000011;Kamrud,et al.J Gen Virol91(Pt 7):1723-1727(2010)]、これは、ベネズエラ馬脳炎ウイルス25(VEE)[Pushko,et al.Virology 239:389-401(1997)]、Sindbis (SIN) [Bredenbeek,et al.Journal of Virology 67:6439-6446(1993)]、Semliki Forest virus(SFV) [Liljestrom and Garoff、Biotechnology (NY) 9:13561361(1991)]など、いくつかの異なるアルファウイルスから開発された。RPワクチンは、増殖欠損アルファウイルスRNAレプリコンを宿主細胞に送達し、インビボで所望の抗原トランスジェニック遺伝子の発現をもたらす[Pushkoら、Virology 30 239(2):389-401(1997)]。RPは、いくつかの従来のワクチン製剤と比較した場合、魅力的な安全性および有効性プロファイルを有する[Vander Veen,et al.Anim Health 6 Res Rev.13(1):1-9.(2012)]。RPプラットフォームは病原性抗原をコードするために使用されており、ブタおよび家禽用のUSDA認可ワクチンのいくつかの基礎となっている。
【0060】
したがって、本発明の別の実施形態は、ロタウイルス感染、特にブタRVBによって引き起こされる感染、特にG12遺伝子型のブタRVBによって引き起こされるさらなる感染を防御、すなわち予防、改善または治療するためのワクチンに関し、かかるワクチンは、免疫原性有効量のVP7タンパク質もしくはその免疫原性断片または対応する核酸構築物と、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0061】
ロタウイルスVP7の発現は、当該分野において、大腸菌、ヘルペスウイルス、哺乳動物細胞におけるワクシニアウイルスおよびバキュロウイルスについて報告されている。しかし、そのほとんどは完全長VP7タンパク質ではなかった。サルロタウイルスSA11 VP7を真核細胞(VP7sc)の表面に固定する高度な技術は、組換えワクシニアウイルスおよびアデノウイルスを用いて行われている。発現したVP7タンパク質は、抗原性および免疫原性の両方であり、マウスのロタウイルス疾患に対する受動的防御を誘導すると思われた(Both et al.,Virology 1993;193:940-950)。
【0062】
ウイルス遺伝子発現のために正しい系を用いることは、生物学的に活性な組換えタンパク質を生産する上で非常に重要である。バキュロウイルス発現系には、組換えタンパク質の溶解性、正しいフォールディング、シグナルペプチドの切断、オリゴマー形成、機能活性、リン酸化およびグリコシル化など、多くのタンパク質発現のために選択されるシステムとなった独特な特徴がいくつかある。バキュロウイルスは、ロタウイルスタンパク質の産生のための発現系として当技術分野で成功裏に使用されている(McGonigal TP et al.、Virus Res.1992;23(1-2):135-150; Redmont MJ et al.、Vaccine)。1993;11:273-281.; Fiore L et al.、J Gen Virol.1995;76(Pt 8):1981-1988)。したがって、バキュロウイルス系は、免疫学的及び機能的研究を可能にするのに必要なコンホメーション要件を有する高収率で組換えタンパク質の合成の可能性を提供する点で、VP7の発現の候補である(Fiore L et al.、J Gen Virol.、1995;76(Pt 8):1981-1988; Ishida SI et al.、J clin Microbiol.)。1996;34(7):1694-1700)。
【0063】
ロタウイルスカプシドタンパク質を製造するために現在使用されているほとんどの発現系は、バキュロウイルスに基づく発現系である。バキュロウイルスに基づく発現系における高度に免疫原性のロタウイルスカプシドタンパク質の産生方法は、例えば当該技術分野で記載されている(McGonigal TP et al.、Virus Res.1992;23(1-2):135-150)。
【0064】
さらに、バキュロウイルス発現系及びバキュロウイルス発現ベクター全般については教科書(Baculovirus Expression Vectors、A Laboratory Manual.By David R.O’Reilly、Lois K.MillerおよびVerne A.Luckow.Publisher: Oxford University Press、May 1994;およびBaculovirus and Insect Cell Expression Protocols。In: Methods in Molecular Biologytm(商標), Volume 388 (2007)。編集者: David W.Murhammer)。
【0065】
バキュロウイルスに基づく発現系も市販されており、例えばInvitrogen Corporation、1600 Faraday Avenue、Carlsbad、California 92008、USAからである。バキュロウイルスに基づく発現系の代替法は、酵母に基づく発現系である。酵母発現系は、例えば、「Production of recombinant proteins: novel microbial and eukaryotic expression systems by Gerd Gellissen、ISBN: 3-527-31036-3による新規微生物および真核生物発現系」に記載されている。Research Corp.Technologies,5210 East Williams Circle、Suite 240、Tucson、AZ 85711-4410 USAからは、とりわけすぐに使用できる発現系が市販されている。酵母および昆虫の細胞発現系は、例えば、米国カリフォルニア州94303-4607パロアルトのクロンテック・ラボラトリーズ(Clontech Laboratories、Inc.4030 Fabian Way)から市販されている。また、改変アルファウイルスに基づくウイルスレプリコン粒子(RP)を用いたAlphaVax(登録商標)アルファワクチンプラットホームシステムテクノロジーにより、組換え発現を行うこともできる。
【0066】
したがって、VP7またはその断片は、バキュロウイルス発現系などの適切な発現系においてVP7をコードする遺伝子またはその断片を含むORFの異種発現によって得ることができる。組換えVP7またはその断片は容易に大量に作製することができ、免疫原性が高い。
【0067】
組換えVP7またはその断片の発現は、当技術分野で既知の哺乳動物細胞ベースの発現系においても当然可能であるが、これらの系は、バキュロウイルスベースの発現系と比較すると、使用するには高価である可能性が最も高い。
【0068】
ワクチン中の組換えVP7の量は、典型的には、全ウイルスワクチンに用いられる量の約1~10倍、好ましくは2~5倍である。例えば、Khodabandehlooら、Iran J Public Health.2012; 41(5):73-84は組換えVP7に対する抗体価を報告したが、これはウイルス全体に対する抗体と比較して約4倍低く、これはウイルス全体に免疫原性VP4が追加的に存在することで説明される。通常、1~100μgの量の組換えVP7がワクチン用量として非常に適しているであろう。VP7の免疫原性フラグメントを用いる場合には、500μgまでの量が必要になる可能性があり、ここで、免疫化を達成するのに必要な量は、組換えタンパク質の長さに依存する。コストの観点から、好ましい量は組換えVP7の1~50μgの範囲にあり、1~25μgの範囲でより好ましいであろう。投与経路は不活化全ウイルス粒子と同等であろう。
【0069】
不活化全ウイルスまたは組換えVP7もしくはその免疫原性断片に基づく本発明のワクチンは、好ましくはアジュバントを含む。従来のアジュバント、例えば、フロイント完全および不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、クイルA(登録商標)、鉱油、例えばBayol(登録商標)またはMarkol(登録商標)、植物油およびCarbopol(登録商標)(ホモポリマー)、またはDiluvac(登録商標)・Forteは、当該技術分野でよく知られているものである。ワクチンはまた、いわゆる「ビヒクル」を含み得る。ビヒクルとは、ポリペプチドに共有結合することなく、そのポリペプチドが接着する化合物である。しばしば使用されるビヒクル化合物は、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたはアルミニウムオキシド、シリカ、カオリンおよびベントナイトである。
【0070】
原則として、本発明によるワクチンは、1回のみ投与することができる。しかしながら、特に不活化ワクチンの場合、全ウイルスワクチン、組換えVP7または免疫原性断片であり、好ましくは第1の、そして、第2の追加(booster)ワクチン接種さえ与えられる。通常、1回目の接種から少なくとも2週間後に1回目の追加接種を行う。追加接種に非常に適した時期は、1回目の接種から3~16週間後である。2回目の追加免疫は、必要であれば、通常、1回目の追加免疫後4~50週間の間に行う。
【0071】
不活化全ウイルスワクチンアプローチおよび組換えVP7アプローチの代替法は、ブタを宿主動物とする組換え非ロタウイルス生ベクターを、新規のブタRVB VP7遺伝子またはその免疫原性断片のキャリアとして用いることである。
【0072】
ブタを宿主動物とする適切な組換え非ロタウイルスベクターの中でも、仮性狂犬病ウイルス(PRV)およびブタコレラウイルス(CSFV)の2種類のベクターが保菌動物として特に適している。ワクチンにおけるこのような組換えウイルスの使用は、ワクチン接種された動物がPRVとRVBまたはCSFVとRVBの両方に対して同時にワクチン接種されるようになるという付加的利点を有する。
【0073】
弱毒化生CSFVベクターも組換え生ベクターとして非常に適している。例として、N<pro>遺伝子が欠失した弱毒化生CSFVがMayerらによって記載されている(Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology、Academic Press、London、1987)。このような弱毒化生ウイルスは、とりわけ、N<pro>遺伝子の欠失部位でVP7遺伝子の挿入を可能にする。このような組換え生CSFVベクターは、本発明のVP7遺伝子に適した担体を等しく形成する。
【0074】
本発明によるVP7遺伝子またはその断片の発現は、哺乳動物細胞において機能的である任意の適当な異種プロモーターの制御下に持ち込むことができる(以下参照)。異種プロモーターは、本発明による新規ブタロタウイルスの野生型におけるVP7遺伝子の転写を担うプロモーターではないプロモーターである。本発明によるウイルスに属さない別のロタウイルスのVP7の転写を担うロタウイルスプロモーターであってもよいし、非ロタウイルスプロモーターであってもよい。
【0075】
したがって、本発明の別の実施形態は、本発明によるVP7またはその断片をコードする遺伝子を含むDNA断片に関し、前記遺伝子が機能的異種プロモーターの制御下にあることを特徴とする。哺乳動物細胞において機能的であるプロモーターは、哺乳動物細胞においてプロモーターの下流に位置する遺伝子の転写を駆動することができるプロモーターである。
【0076】
哺乳動物細胞において機能的である適切なプロモーターの例には、(ヒト)サイトメガロウイルス即時型プロモーター(Seed、B.ら、840-842、1987; Fynan,E.F.ら、PNAS 90、11478-11482、1993; Ulmer,J.B.ら、Science 259、1745-1748、1993)、Rous肉腫ウイルス (RSV、Gorman、CM.ら、PNAS779、677-6781、1982; Fynan et al.、上)、MPSV LTR (Staceyら、J.Virology 50、725-732、1984)、SV40即時型初期プロモーター(Sprague J. et al.、J。Virology 45、773、1983)、SV-40プロモーター(Berman、P.他、Science、222、524527、1983)、メタロチオネインプロモーター(Brinster、R.L.et al.、Nature 296、39-42、1982)、熱ショックプロモーター(heat shock promoter) Voellmyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4949-53、1985)、Ad2およびβ-アクチンプロモーターの主要な後期プロモーター(Tangら、Nature 356、152-154、1992)を含む。調節配列にはターミネーター配列およびポリアデニル化配列も含まれ得る。使用可能な配列の中には、よく知られているウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、SV40ポリアデニル化配列、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)ターミネーターおよびポリアデニル化配列がある。
【0077】
したがって、この実施形態の別の形態は、RVBによって引き起こされる感染に対してブタを防御するためのワクチンに関し、前記ワクチンは、機能的プロモーターおよび薬学的に許容可能な担体の制御下で、本発明によるVP7またはその免疫原性断片をコードするDNA断片を含む組換え生非RVBベクターを含むことを特徴とする。
【0078】
さらに、組換え生非RVBベクターは、VP7またはその免疫原性断片の免疫原性有効量を発現しているべきである。
【0079】
不活化全ウイルスワクチン、組換えVP7ワクチンまたは組換え生非RVBベクターによるワクチン接種の代替法は、DNAワクチン接種の使用である。
【0080】
このようなDNAワクチン接種は、本発明によるVP7をコードする遺伝子を有するDNA断片を適当なプロモーターの制御下で宿主動物に導入することに基づいている。DNAが宿主の細胞に取り込まれると、VP7またはその断片をコードする遺伝子が転写され、転写産物は宿主の細胞内でVP7に翻訳される。これはロタウイルスの自然感染過程とよく似ている。適当なプロモーターは、上記例示のように、哺乳動物細胞において機能的であるプロモーターである。
【0081】
適当なプロモーターの制御下でVP7またはその断片をコードする遺伝子を有するDNA断片は、例えばプラスミドであり得る。このプラスミドは環状または線状の形態であり得る。
【0082】
ブタのDNAワクチン接種の成功例は、とりわけ、Gerdtsら、Journal of General Virology 78:2139-2146(1997)に記載されているようにオーエスキー病に対するワクチン接種の成功である。著者らは、ヒトサイトメガロウイルスの主要な最初期プロモーターの制御下で糖タンパク質Cを担持するDNA断片を用いるDNAワクチンについて記載する。ワクチン接種は、50μgのDNA量で2週間間隔で4回行った。ワクチン接種した動物は、イムノブロットでそれぞれの抗原を認識し、中和活性を示す血清抗体を発現した。
【0083】
ブタのDNAワクチン接種が成功したもう一つの例は、Gorresら、Clinical Vaccine Immunology 18: 1987-1995(2011)によって提供される。彼らは、パンデミックおよび古典的ブタH1N1インフルエンザの双方に対するブタのDNAワクチン接種の成功について報告した。彼らは、プライミング後3週目および6週目に、機能的プロモーターの制御下でインフルエンザH1N1のHA遺伝子を含むDNAワクチンを、プライミングワクチン接種および2つの相同的ブーストでワクチン接種した。したがって、この実施形態の別の形態はまた、RVBによって引き起こされる感染に対してブタを防御するためのワクチンに関し、前記ワクチンが、機能性プロモーターの制御下で本発明によるVP7遺伝子またはその断片を含むDNA断片と、薬学的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする。
【0084】
さらに、本発明によるVP7またはその断片をコードする遺伝子を含むDNA断片は、VP7またはその免疫原性有効量のVP7または免疫原性断片を発現していなければならない。
【0085】
本発明による全ウイルス、本発明による組換えVP7もしくはその免疫原性断片、組換え生ベクターもしくは本発明によるDNAワクチンに基づく本発明のワクチンの「免疫原性有効量」を構成するものは、所望される効果および標的生物に依存する。本明細書で用いる用語「免疫原性有効量」は、非免疫化ブタにおける野生型ロタウイルスの感染によって引き起こされる病理学的効果と比較した場合、野生型ロタウイルスの感染によって引き起こされる病理学的効果を減少させる程度まで、ブタに免疫応答を誘導するのに必要なウイルス、組換えタンパク質、組換え生ベクターまたはDNAワクチンの量に関する。
【0086】
治療が「免疫学的に有効」かどうかの決定は、例えば、ワクチン接種した動物に実験的攻撃感染を施し、次いで標的動物の疾患の臨床的徴候、血清学的パラメータを決定すること、または病原体の再分離を測定した後、これらの所見を野生感染ブタで観察された所見と比較することによって達成することができる。
【0087】
投与されるウイルス量は、投与経路、アジュバントの存在および投与の瞬間に依存する。
【0088】
本発明によるウイルスを含む生ワクチンの好ましい量は、例えば組織培養感染用量(TCID50)として発現される。例えば、生ウイルスの場合には、ウイルスの残りの毒性に応じて、動物用量当たり10~10TCID50の間の用量範囲が有利に使用され得る。好ましくは、10~10のTCID50が使用される。
【0089】
多くの投与方法を適用することができ、全て当該技術分野で知られている。本発明によるワクチンは、好ましくは、注射(筋肉内または腹腔内経路を介して)または経口により動物に投与される。
【0090】
投与のためのプロトコールは、標準的なワクチン接種のプラクティスに従って最適化することができる。いずれの場合も、皮内注射器(IDAL)による投与が一つの投与方法である。ワクチンが、本発明に従って不活化ウイルスまたは組換えタンパク質を含む場合、投与量は、投与されるウイルス粒子の数としても表されるであろう。生きたウイルス粒子の投与と比較すると、生きたウイルス粒子は、免疫系によって除去される前に、標的動物内である程度複製するので、通常、投与量はいくぶん高くなるであろう。不活性化ウィルスに基づくワクチンでは、通常、約10~10粒子の範囲のウィルス粒子量が適している。使用するアジュバントによってその量が異なる場合もあるが、典型的には定義された範囲内である。
【0091】
ワクチンが本発明による組換えタンパク質を含む場合、その用量は、マイクログラムのタンパク質で表すこともできる。組換えタンパク質に基づくワクチンについては、適当な用量は、通常、タンパク質の1~500マイクログラムの範囲であろう。この場合も、使用するアジュバントによって異なる。
【0092】
VP7をコードする遺伝子を含むDNA断片をワクチンが含む場合、用量はDNAのマイクログラムで表されるであろう。適当な投与量は、通常、DNAの5~500マイクログラムの範囲であろう。用量は、とりわけ、使用される発現プラスミドの効率に依存し得る。典型的には、動物当たり20~50マイクログラムの量のプラスミドが、効果的なワクチン接種に十分であろう。
【0093】
本発明によるワクチンは、養ブタとの関連において投与に適しており、かつ所望の適用経路および所望の効果に一致する任意の形態をとることができる。本発明によるワクチンの調製は、当業者にとって従来の方法によって行われる。
【0094】
経口投与のためには、ワクチンは、好ましくは、経口投与に適した担体、すなわち、セルロース、食物、またはアルファ-セルロースのような代謝性物質、または植物もしくは動物起源の異なる油と混合される。
【0095】
実際には、ブタは、多くの病原性ウイルスまたは微生物に対するワクチンを接種する。
【0096】
したがって、ブタ用の本発明によるワクチンを、例えば、ブタに病原性のウイルスもしくは微生物の追加の免疫原、または前記ウイルスもしくは微生物の免疫原をコードする遺伝情報と組み合わせることは、実用的および経済的な理由の両方から、非常に魅力的である。
【0097】
したがって、本発明の好ましい形態は、ワクチンが、少なくとも1つの他のブタ病原性微生物もしくはブタ病原性ウイルスおよび/または少なくとも1つの他の免疫原性成分および/または前記ブタ病原性微生物もしくはブタ病原性ウイルスの他の免疫原性成分および/または前記他の免疫原性成分をコードする遺伝物質を含む、本発明によるワクチンに関する。免疫原性または免疫原性成分は、動物において免疫応答を誘導する化合物である。例えば、全ウイルスもしくは細菌、またはそのウイルスもしくは細菌のタンパク質もしくは糖部分であり得る。
【0098】
ブタに病原性を示す最も一般的な病原性ウイルスおよび微生物は、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア(Brachyspira hyodysenteriae)、アフリカブタコレラウイルス、ニパウイルス、ブタサーコウィルス、ブタトルクテノウイルス(Porcine Torque Teno virus)、仮性狂犬病ウイルス、ブタインフルエンザウィルス、ブタパルボウイルス、ブタ呼吸器・生殖症候群ウイルス(PRRS)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス、伝染性胃腸炎ウィルス、ロタウイルス、大腸菌、豚丹毒菌、気管支敗血症菌、サルモネラ・コレレスイス、ヘモフィルス・パラスイス、パスツレラ・マルトシダ、ブタ連鎖球菌、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびアクチノバチルス・プルロニューモニアである。
【0099】
したがって、本発明のより好ましい形態は、本発明に従うワクチンであって、ブタに対して病原性のウイルスまたは微生物が、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア(Brachyspira hyodysenteriae)、アフリカブタコレラウイルス、ニパウイルス、ブタサーコウィルス、ブタトルクテノウイルス(Porcine Torque Teno virus)、仮性狂犬病ウイルス、ブタインフルエンザウィルス、ブタパルボウイルス、ブタ呼吸器・生殖症候群ウイルス(PRRS)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス、伝染性胃腸炎ウィルス、ロタウイルス、大腸菌、豚丹毒菌、気管支敗血症菌、サルモネラ・コレレスイス、ヘモフィルス・パラスイス、パスツレラ・マルトシダ、ブタ連鎖球菌、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびアクチノバチルス・プルロニューモニアの群から選択されるワクチンに関する。
【0100】
さらに別の実施形態は、本発明に従うワクチンの調製方法に関し、本発明に従うウイルスおよび/または本発明に従う組換えタンパク質、および/または本発明に従うVP7もしくはその断片をコードするDNA断片、および/または本発明に従うVP7もしくはその断片をコードする生組換え非ロタウイルスベクターと、医薬的に許容可能な担体とを混合することを含む。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、ワクチンにおける使用のための、本発明に従うウイルス、および/または組換えタンパク質、および/または本発明に従うVP7もしくはその免疫原性断片、および/または本発明に従うVP7もしくはその免疫原性断片をコードするDNA断片、および/または本発明に従うVP7もしくはその免疫原性断片をコードする生組換え非ロタウイルスベクターに関する。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるワクチンの製造方法に関し、当該方法は、本明細書で定義されるウイルス、または免疫原性有効量のVP7もしくはその免疫原性断片、またはVP7もしくはその免疫原性断片をコードする組換えベクターと、医薬的に許容可能な担体とを混合することを含む。
【0103】
別の実施形態では、本発明は、ブタRVBによって引き起こされる感染からブタを防御するためのワクチンの製造に使用するための、本明細書で定義されるウイルス、DNA断片、VP7もしくはその免疫原性断片、またはVP7もしくはその免疫原性断片をコードする組換えベクターに関する。
【0104】
前述したように、ロタウイルス感染は感染力が強い。これは、最初の臨床徴候が顕在化するずっと前に、ある特定のブタ集団にロタウイルスが存在するかどうかを知ることが重要であることを意味する。したがって、疾患に対する効率的な防御のためには、ロタウイルスの存在を迅速かつ正確に検出することが重要である。
【0105】
したがって、本発明によるウイルスの感染の検出に適した診断ツールを提供することが、本発明の別の目的である。
【0106】
これらのツールは、部分的にウイルスに対する抗体の利用可能性に依存している。このような抗体は、例えば、ロタウイルス感染の診断検査に用いることができる。本発明によるウイルスに対する抗体または抗血清を含む抗体または抗血清は、たとえば、ウイルスのブタ、家禽または例えばウサギへの本発明によるワクチン接種の後、約4週間後に、出血、凝固した血液の遠心分離および血清のデカンティングによって迅速かつ容易に得ることができる。かかる方法は、当該分野において公知である。
【0107】
本発明によるウイルスに対して作製された抗体の調製のための他の方法(ポリクローナル、モノ特異的またはモノクローナル(またはその誘導体)であってもよい)も、当技術分野で既知である。ポリクローナル抗体が望まれる場合、ポリクローナル血清を産生およびプロセシングするための技術は、数十年にわたり当技術分野で周知である。本発明によるウイルスに対して反応性のモノクローナル抗体は、当技術分野においても古くから知られている技術によって近交系マウスを免疫することによって調製することができる。
【0108】
したがって、本発明の別の実施形態は、本発明によるウイルスと反応性の抗体または抗血清に関する。
【0109】
本発明によるウイルスまたはそのウイルスの抗原物質の検出に基づく診断検査キット、したがって、RVB感染の検出に適した診断検査キットは、例えば、標準的なELISA検査を含むことができる。このような試験の一例では、ELISAプレートのウェルの壁を、ウイルスに対する抗体でコーティングする。試験対象物質とインキュベートした後、ウイルスと反応する標識抗体をウェルに加える。試験する材料が本発明による新規ウイルスを実際に含む場合、このウイルスはELISAのウェルにコーティングされた抗体に結合するであろう。次にウェルに添加されるであろうウイルスと反応性の標識抗体は、続いてウイルスに結合し、発色反応によりウイルスの抗原物質の存在が明らかになるであろう。
【0110】
したがって、本発明のさらに別の実施形態は、本発明によるウイルスまたはウイルスの抗原材料の検出のための診断試験キットに関し、当該キットは、本発明によるウイルスまたはその抗原材料と反応性の抗体を含む。ウイルスの抗原物質は広い意味で解釈されるべきである。例えば、ウイルスが崩壊した形で存在する場合や、ウイルス外膜タンパク質を含むウイルスエンベロープ物質である場合がある。ウイルスの材料がウイルスに対して作られた抗血清と反応する限り、抗原物質と考えられる。
【0111】
本発明によるウイルスまたは当該ウイルスの抗原物質と反応し、従ってRVB感染の検出に適した抗体の血清中での検出に基づく診断検査キットは、例えば、標準ELISA試験を含むことができる。このような試験では、ELISAプレートのウェルの壁は、例えば、本発明によるウイルスまたはその抗原物質でコーティングすることができる。試験する材料、例えば本発明による新規ウイルスに感染していると疑われる動物の血清とインキュベートした後、本発明によるウイルスと反応する標識抗体をウェルに添加する。本発明による新規ウイルスに対する抗体が被験血清中に存在する場合、これらの抗体はELISAのウェルにコーティングされたウイルスに結合するであろう。その結果、ウイルスに反応する後に追加された標識抗体は結合せず、呈色反応も見られなくなる。したがって、呈色反応の欠如は、本発明によるウイルスと反応する抗体の存在を明らかにするであろう。
【0112】
したがって、本発明のさらに別の実施形態は、本発明によるウイルスまたは本発明によるウイルスもしくはその抗原性物質を含むウイルスの抗原性物質と反応性の抗体の検出のための診断試験キットに関する。
【0113】
イムノアッセイのデザインは様々であろう。例えば、イムノアッセイは、競合反応または直接反応に基づいてもよい。さらに、プロトコルは、固体支持体を使用することもあれば、細胞性物質を使用することもある。抗体-抗原複合体の検出は、標識された抗体の使用を含んでいてよく;標識は、例えば、酵素、蛍光-、化学発光-、放射性-または色素分子であってよい。
【0114】
試料中での本発明によるウイルスと反応性の抗体の検出に適した方法には、上記ELISAに加えて、免疫蛍光検査(IFT)およびウエスタンブロット分析が含まれる。
【0115】
本発明によるウイルスの有無を診断するための、代替的ではあるが迅速かつ容易な診断試験は、上記に言及されるPCR試験であり、本発明による新規ウイルスのVP7 DNA断片の特定領域と反応性のPCRプライマーセットを含む。この文脈において特に、例えば、新規ウイルスのVP7遺伝子、すなわち、レオウイルス科の他のメンバーに存在しないものを意味する。
【0116】
本発明により提供される新規VP7遺伝子配列を、他のロタウイルスの既知のVP7遺伝子とともに単純なコンピュータ解析することにより、当業者は、新規ウイルスの検出および/または新規ウイルスと他のウイルス(ブタ)病原体との識別のための診断試験のための特異的PCR-プライマーを開発することができる。
【0117】
したがって、別の実施形態は、本発明に係るウイルスの検出用診断検査キットに関し、前記キットは、本発明に従うウイルスのDNA断片のVP7遺伝子配列の領域と特異的に反応するPCRプライマーセットを含むことを特徴とする。
【0118】
実施例
例1:子ブタにおける新規ロタウイルスの同定
最近、スペインの大規模養ブタ業者の農場の子ブタにおいて、ロタウイルス感染の明らかな臨床徴候を伴う新生児下痢の集団発生が観察されたが、その雌ブタにはRVAに対するワクチンが接種されていた。
【0119】
感染ブタで観察された臨床症状は、生後1週目の下痢であり、密度の異なる黄色便、時には液状便、時には濃厚便が認められた。初産雌ブタおよび経産雌ブタの子ブタが罹患した。罹患率は非常に高く(一部のロットの同腹仔の40%)、死亡率は5~6%であった。
【0120】
下痢症状のため、Coliclos Prosystem(登録商標)RCE(メルクアニマルヘルス)を用いてブタにワクチン接種した。これは、授乳子ブタにおいてロタウイルス性下痢、腸管毒血症および大腸菌症の予防の補助としてブタに使用するためのワクチンであり、当該ワクチンは、2つの主要なロタウイルスA遺伝子型(G4、G5)、4つの主要なE.coli線毛抗原およびC.パーフリンジェンスC型トキソイドを含む。しかし、ワクチン接種によって症状が消失したわけではなかった。
【0121】
特に、感染物質の「フィードバック」により免疫が得られ、症状が消失したことから、ウイルスの関与が疑われた。
【0122】
ワクチン接種により初乳中にRVAに対する母体抗体が存在していたはずである。ワクチン接種制度にもかかわらず、ロタウイルスの徴候について妥当な説明がつかないまま、サンプルを検査分析のために送付した。
【0123】
ロタの臨床徴候が明らかな6群(「ロタ群」)の雌ブタと、徴候のない3群(「対照群」)の被験者から、直腸スワブを採取することでサンプルを回収した。各群から、雌ブタと子ブタ3頭から直腸スワブを採取した。サンプルは、VIDISCA(cDNA-AFLP(増幅断片長多型)に基づくウイルス発見、van der Hoekら(Nat Med 2004; 10: 368-373)が最初に報告した方法)によりウイルスの有無を分析した。VIDISCAに基づくウイルス発見は、未知のゲノム、例えばヒト病原性ウイルスの増幅のための迅速かつ効果的なツールを提供する新規アプローチである。VIDISCA法は、標的配列の二重制限酵素プロセシングおよび増幅のためのプライミング部位としてその後役立つオリゴヌクレオチドアダプターの連結に基づく。この方法は制限部位の共通の存在に基づいているので、再現性のある、種特異的な増幅パターンの生成をもたらす。この方法では、ウイルスRNA/DNAの増幅と同定が可能であり、DNAウイルスではより低いカットオフ値10(5)コピー/ml、RNAウイルスでは10(6)コピー/mlである。
【0124】
VIDISCA法を用いたところ、「ロタ群」の雌ブタ6頭中5頭において、配列番号1のヌクレオチド配列、および、未知のロタウイルスのVP7タンパク質に属する配列番号2のアミノ酸配列を有する配列が高レベルで検出された。これらの雌ブタのうち、3頭の子ブタはいずれもウイルス血症を示唆する高レベルのウイルスの存在が認められた。6番目の雌ブタの子ブタにおいては、検出レベル付近で低レベルのウイルスのみが検出された。「対照群」のうち2頭では、ウイルスは検出されなかった。もう一方の対照群では、被験子ブタ3頭中2頭において、検出レベル付近でウイルスが極めて低レベル検出された。この群の他の動物(雌ブタおよび子ブタ)はウイルス陰性であることがわかった。すべての被験動物の直腸スワブには、他のロタウイルスは認められなかった。これは、新たに発見されたロタウイルスが、ロタ誘導性疾患の誘発の原因であったに違いないことを意味する。系統解析の結果、この新規ウイルスはロタウイルスBのG12遺伝子型内のロタウイルスBに属することが明らかになった(図1参照;「New RotaB VP7 Spain」として示された新規ウイルス)。この遺伝子型のロタウイルスは、当該技術分野において疾患を引き起こしていることが明らかにされているわけではない。新株はG12属内の新病原性亜属の代表であると考えられる。
【0125】
さらに、11種類の異なるタンパク質の全コード領域(1セグメントあたり1タンパク質)を,Illuminaシークエンシングにより取得し、新規ロタウイルスの配列番号1~22の配列を明らかにした。セグメント2~11のタンパク質については、全長コード領域、すなわち開始から停止までの配列を得た。セグメント1のタンパク質については、部分コード領域の配列を得た。
【0126】
ゲノムアセンブリは、血清サンプルから得られた配列決定情報から得た。以下のように、Illumiaシークエンシングを行った:
【0127】
サンプル「I18-45_Serum-nr-49 Sow D3004 Spain」を用いて、セグメントのライブラリー作成および配列決定を行った。110μlの材料を10,000 x gで10分間スピンダウンし、ターボDNアーゼ(Thermofisher)によって、報告されるとおり処理した後(de Vries M、et al.PLoS One、2011;6(1):e16118.doi:10.1371/journal.pone.0016118)、Boom抽出法により核酸を抽出した(Boom R、et al.J Clin Microbiol.28(3): 495-503、1990)。サンプルはdsDNA Fragmentase (New England Biolabs社)を用いて剪断した。剪断したサンプルを、AMPure XPビーズ(agencourt AMPure XP PCR、Beckman Coulter)によって、(サンプル:ビーズ)1:1.8の割合で精製し、酵素を除去した。精製後、サンプルをDNAポリメラーゼI、Large (Klenow) Fragment(New England Biolabs社)で修復した。末端修復試料をAMPure XPビーズによって、(サンプル:ビーズ)1:1.8の比率で精製して酵素を除去した後、Klenowフラグメント(3’-5’ Exo-)(New England Biolabs社)を用いて、サンプルをA-tailに供した(A-tailed)。サンプルを、AMPure XPビーズによって、(サンプル:ビーズ)1:1.8の比率で精製し、ポリメラーゼを除去した。NEBNext Multiplex Oligos for Illumina(New England Biolabs)由来の気泡アダプターを、T4リガーゼを用いてA-tailに供したサンプルに連結した。サイズ選択はAMPure XPビーズを用いて、まず(サンプル:ビーズの)比率1:0.5で行い、400bpより大きいサイズのほとんどの断片が確実に除去されるようにした後、上清にAMPure XPビーズを追加して、(サンプル:ビーズの)最終比率1:0.85となるようにし、200~400bpの間のDNA断片を結合させ、200bpより小さい断片を除去した。


サイズ選択後、Bubbleアダプターは、NEBNext Multiplex Oligos for Illumina (New England Biolabs社)のUSER酵素を用いて開封した。次に、NEBNext Multiplex Oligos for Illumina (New England Biolabs)およびQ5 hotstart mastermix (New England Biolabs)からのアダプター特異的プライマーによって、28サイクルPCRを実施した;30秒98℃、10秒98℃および75秒65℃のサイクル、その後5分65℃。PCR後、サンプルはAMPure XPビーズを用いて、(サンプル:ビーズ)1:0.5の割合でサイズ選択を行い、400bpより大きいサイズの断片を除去し、上清に更なるAMPure XPビーズを加えて、(サンプル:ビーズ)1:0.85の割合で200~400bpの間のDNA断片を結合させ、200bpより小さい断片を除去した。次に、Qubit dsDNA HS Assay Kit (Thermofisher)でDNA濃度を測定し、高感度DNA分析キットによりバイオアナライザーでサイズを確認した。このライブラリーは、ペアードエンドシークエンシングとv2キット(Illumina)を用いてMiSeq (Illumina)を用いて配列決定した。品質管理およびトリミングは、以下の設定(phred 33、LEADING:3 TRAILING:3 SLIDINGWINDOW:4:15 MINLEN:36)でTrimmomatic 0.35を使用して行い、アセンブリは、以下の設定(「careful」-「only-assembler」-「paired reads」)でSPAdes バージョン3.5.0-Darwinを使用して行う。セグメント(5’および3’)の末端配列を有するために、新規に組み立てたコンティグを、それぞれKR052709.1、KR052710.1、KR052711.1、KR052712.1、KR052713.1、KR052714.1、KR052715.1、KR052716.1、KR052717.1、KR052718.1、KR052719.1のセグメント1~11にアラインメントした。組み立てられた配列は全て、各セグメントの最も近い近縁体: AB673232.1; KF882541.1; KR052716.1; KR052717.1; KX869737.1; KX362400.1; KX869732.1; KX869733.1; KX869733.1; KX869735.1; MG272043.1; MG272114.1にアラインメントすることにより、品質について目視でチェックした。
【0128】
例2:新規ロタウイルスの単離および当該新規ロタウイルスによる子ブタの再感染
緒言
本研究の目的は、帝王切開の、初乳を与えない(CD/CD)子ブタにおいて、例1の新規B群ロタウイルス(新規RVB)野外分離株を増殖させることであった。
【0129】
本研究は、新たに発見されたウイルスの感染能を確認するために実施した。感染性ウイルスの動物継代は、病原性を維持し、腸内容物中の高力価のウイルスをもたらすはずである。それに加えて、ウイルスが発生した農場で観察された臨床症状、すなわち下痢が再現されるべきである。
【0130】
子ブタがロタウイルスに対する母体由来の干渉抗体を獲得するのを防ぐため、または分娩中にロタウイルスやその他のウイルスに感染するのを防ぐためには、帝王切開と初乳の剥奪が必要である。自然分娩または他のヒト補助による出産手段は、子ブタの意図しない感染の可能性が高く、試験の妨げとなる。
【0131】
日齢が進んだ子ブタはロタウイルス感染に対する感受性が低いため、子ブタは3日齢で感染させた。早期の感染は、単に消化管の感染ではなく、全身性のウイルス血症や消化管の感染を引き起こす可能性が高い。
【0132】
材料および方法
本研究では、CD/CD子ブタ5頭を用いた。子ブタに番号を付け、実験施設に輸送した。輸送のために、子ブタを特定の病原体を含まない輸送容器に入れ、その後、気候制御された動物輸送車で輸送した。実験施設に到着すると、子ブタは隔離室に収容された。
【0133】
3日齢(試験第0日)で、子ブタ1頭あたり、例1で得た糞便由来ウイルスで構成される新規RVB分離株の接種材料5mLを、子ブタに胃内感染させた。
【0134】
感染性物質の調製のために、同一の新規RVBを保有する子ブタ7頭(異なる雌ブタ3頭由来)の糞便内容物をプールした(総量12mL)。ウイルスを活性化するために、トリプシンを2U/mLの最終濃度に加えた。材料を37℃で30分間インキュベートし、その後EMEM-培地を用いて容量を30mLに増加させた。
【0135】
既知濃度のアンプリコンを含むプラスミドのタイトレーションシリーズ(titration series)に基づき、プール試料中のRVBの量は2.26×10コピー/μlであった。接種材料にはアストロウイルスも含まれており、そのためにqPCR診断アッセイが設定されたが、標準曲線は設定されなかった。接種試料のCt値は32.75であった。
【0136】
シリンジおよび栄養チューブ/尿道カテーテルを用いて、子ブタ1頭あたり接種材料5mLを胃内に投与した。接種材料を適用した後、2mLの空気を、シリンジを用いて胃管を通して穏やかに押し込み、チューブの内容物を完全に空にした。必要であれば、接種後、70%エタノール含有紙タオルで子ブタの口を拭いた。
【0137】
攻撃接種日から感染3日後まで、すべての子ブタについて下痢の臨床徴候を観察した。感染前および感染後に、直腸開口部から直接1日1回、すべの子ブタから個々の糞便サンプルを採取した。成功しなかった場合、直腸スワブ試料を採取した。感染後3日目(72時間)に、子ブタを剖検した。剖検時に、腸の内容物および空腸、回腸、結腸および盲腸組織の擦過物を、子ブタ1頭につき2つのプールサンプルとして採取した。さらに、(免疫)組織化学のために、空腸、回腸、盲腸および結腸から小さな組織サンプルを採取した。
【0138】
子ブタには試験第0日までSwincoオプティケア2100ミルクを与えた。試験第0日から実験終了時(試験第3日)まで、子ブタにSwincoオプティケアミルクシルバーを与えた。
【0139】
qPCR
糞便検体について逆転写定量PCR(RT-qPCR)を実施した。
Magnapure methodology(ロシュ)を用いて核酸(NA)を抽出した。
【0140】
新規ロタBウイルスの特異的RT-qPCRをNA抽出物について実施した。
フォワードプライマー:5’-CAGACGATCTGATAGGGATGTATTG-3’ (配列番号23)
リバースプライマー:5’-ATGTCCGTGACGTAGTATCTTC-3’(配列番号:24)
【0141】
qPCRプロトコル:5分55℃、5分95℃、[10秒94℃、25秒58℃]x39
【0142】
qPCRを実施するために使用したキットはInvitrogen SuperScript(商標)III Platinum(商標)One-Step qRT-PCRキットであった。既知濃度のアンプリコンを含むプラスミドのタイトレーションシリーズに基づいて定量を行った。
【0143】
NA抽出物について、アストロウイルス特異的RT-qPCR法を実施した。
フォワードプライマー:5’-GTGCAGATGTGTTGGCGTATAAG-3’(配列番号:25)
リバースプライマー:5’-TGAAGCGTACAAACCAGGATGAG-3’(配列番号26)
【0144】
qPCRプロトコル:3分55℃、5分95℃、[15秒95℃、30秒60℃]x39
【0145】
qPCRを実施するために使用したキットはInvitrogen SuperScript(商標)III Platinum(商標)One-Step qRT-PCRキット、カタログnr.11732020であった。タイトレーションシリーズに基づく定量は実施しなかった。
【0146】
結果
全動物の健康状態は、動物試験を通してモニターされた。感染21時間後、子ブタは最初に下痢および食欲減退の症状と診断された。すべての子ブタが初発農場で観察されたものと同様の臨床症状を発現した。
【0147】
【表2】
【0148】
RVBのqPCR定量:
試験中に採取した全糞便サンプルから核酸を抽出し、RVB特異的qPCR法でRVBの有無をスクリーニングした。結果を下記表1に示す:
【表3】
【0149】
試験開始時の子ブタの糞便サンプルにRVBは存在しなかった。感染24時間後に、感染子ブタの糞便からRVBを検出することができた。RVBは、翌日採取したサンプル中に残存していた。48時間後に採取した子ブタ4のサンプルは分析に利用できなかった。
【0150】
試験中の糞便または糞便スワブの分析は半定量的であった。臨床症状の進行の間、便は水様性となる。糞は定量化された量では回収されなかった。
【0151】
その後、全サンプルについて、アストロウイルスのqPCR定量を実施し、Next Generation Sequencingによって診断され、qPCRを用いて検証された低濃度で接種材料中に存在するこのウイルスが、動物試験の間、動物に影響を及ぼさないことを確認した。
【0152】
試験中に回収した糞便サンプルは全て、qPCR法を用いてアストロウイルスの有無を分析したが、アストロウイルス陽性であった糞便検体はなかった。したがって、このウイルスの複製は示されなかった。
【0153】
結論として、本研究において、新規ロタBウイルスのインビボ感染能、複製および病原性が確認された。
【0154】
したがって、本発明は、以下の実施形態に関する:
【0155】
1.ブタB群ロタウイルス遺伝子型G12の亜種のメンバーである単離されたロタウイルスであって、
その野生型においてブタの下痢を引き起こし、
前記ウイルスが、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列または当該配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレームを含むウイルスゲノムを有することを特徴とする、ウイルス。
2.配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するヌクレオチド配列が、外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7をコードすることを特徴とする、実施形態1に記載の単離されたウイルス。
3.オープンリーディングフレームを含む核酸断片であって、
前記オープンリーディングフレームが、少なくとも200ヌクレオチドを含み、
前記核酸断片が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性のレベルを有する配列に相当するヌクレオチド配列を有することを特徴とする、核酸断片。
4.前記オープンリーディングフレームが、外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7をコードすることを特徴とする、実施形態3に記載の核酸断片。
5.前記オープンリーディングフレームが、異種プロモーターの制御下にあることを特徴とする、実施形態3または4に記載の核酸断片。
6.実施形態3~5のいずれか一項に記載の核酸断片によってコードされる組換えタンパク質。
7.外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7またはその断片であって、実施形態3~5のいずれか一項に記載の核酸断片によってコードされることを特徴とする、糖タンパク質VP7またはその断片。
8.外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7またはその断片であって、配列番号2に従うタンパク質であるか、または当該配列と少なくとも90%の同一性レベルを有するタンパク質であることを特徴とする、糖タンパク質VP7またはその断片。
9.ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染防御のために使用されるワクチンであって、
当該ワクチンは、免疫原性有効量の実施形態1または2に記載のウイルス、または免疫原性有効量の実施形態6に記載の組換えタンパク質、または免疫原性有効量の実施形態7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または免疫原性有効量の実施形態3~5のいずれか1項に記載の核酸断片と、医薬的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする、ワクチン。
10.動物を予防的治療において使用するための、実施形態9に記載のワクチン。
11.実施形態1もしくは2に記載のウイルス、または実施形態6に記載の組換えタンパク質、または実施形態7もしくは8に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性である、抗体または抗血清。
12.実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルス、またはその抗原性物質、または実施形態7に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性である抗体の検出のための診断検査キットであって、
前記検査キットが、実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルス、またはその抗原性物質、または実施形態6に記載の組換えタンパク質、実施形態7または8に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7を含むことを特徴とする、診断検査キット。
13.実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルス、またはその抗原物質、または実施形態7または8に記載の外部ウイルスカプシド糖タンパク質VP7の検出のための診断検査キットであって、
前記検査キットが、実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルスもしくはその抗原物質と反応性の、または実施形態6に記載の組換えタンパク質と反応性の、または実施形態7または8に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7と反応性の抗体を含むことを特徴とする、診断検査キット。
14.実施形態9または10に記載のワクチンを動物に全身投与することにより、ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染から動物を防御する方法。
15.実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルスの混合、または実施形態6に記載の組換えタンパク質、または実施形態7または8に記載の外側ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または実施形態3~5のいずれか1項に記載の核酸断片と、薬学的に許容可能な担体とを混合することを含むことを特徴とする、実施形態14に記載の方法。
16.ブタB群ロタウイルスによって引き起こされる感染に対して動物を防御するためのワクチンの製造に使用するための、実施形態1および2のいずれか1項に記載のウイルス、または実施形態6に記載の組換えタンパク質、または実施形態7または8に記載の外ウイルスカプシド糖タンパク質VP7、または実施形態3~5のいずれか1項に記載の核酸断片。
【配列表】
2022507053000001.app
【国際調査報告】