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特表2022-507096熱可塑性組成物、電線および電線を備える物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】熱可塑性組成物、電線および電線を備える物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/10 20060101AFI20220111BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220111BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20220111BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220111BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20220111BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08L71/10
C08L79/08 B
C08L71/12
C08L63/00 A
C08L61/10
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525295
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2019059625
(87)【国際公開番号】W WO2020095268
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/757,442
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイ ミアン
(72)【発明者】
【氏名】三井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラマリンガム ハリハラン
(72)【発明者】
【氏名】木下 努
(72)【発明者】
【氏名】林 桂
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002CC033
4J002CD053
4J002CH083
4J002CH091
4J002CJ001
4J002CM042
4J002FD036
4J002FD056
4J002FD076
4J002FD096
4J002FD206
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ01
5G309RA02
(57)【要約】
熱可塑性組成物は芳香族ポリ(ケトン)、ポリ(エーテルイミド)、および反応性添加物を含み、各成分は本明細書で規定される特定の量で存在する。熱可塑性組成物は、電線を形成するために、導線上に配置される絶縁層において有用となり得る。熱可塑性組成物を含む物品は、電気装置部品、鉄道車両部品、自動車部品、海上船舶部品、建設部品、建設部材、建築部材、または航空機部品を含む用途において特に有用となり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50から99.9重量パーセント、または60から95重量パーセント、または70から90重量パーセント、または70から80重量パーセントの芳香族ポリ(ケトン)、
0.1から50重量パーセント、または5から40重量パーセント、または10から30重量パーセント、または15から25重量パーセントのポリ(エーテルイミド)、
0.1から20重量パーセント、または0.5から10重量パーセント、または1から7重量パーセント、または2から6重量パーセントの反応性添加物、
を含む、熱可塑性組成物であって、
各成分の重量パーセントは、前記組成物の総重量に基づく、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記芳香族ポリ(ケトン)は、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくはポリ(エーテルエーテルケトン)を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記ポリ(エーテルイミド)は、下記式の単位を含み、
【化1】
式中、
Rは、置換または非置換C6-20芳香族炭化水素基、置換または非置換の直鎖または分枝鎖C4-20アルキレン基、置換または非置換C3-8シクロアルキレン基であり、
Tは、-O-または式-O-Z-O-の基であり、前記-O-または前記-O-Z-O-基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にあり、および、
Zは任意で、1から6個のC1-8アルキル基、1-8個のハロゲン原子、もしくは前記の少なくとも1つを含む組み合わせで置換された芳香族C6-24単環式または多環式基であり、
好ましくは、
Rは、下記式の二価基であり、
【化2】
式中、Qは、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、-P(R)(=O)-(式中、RはC1-8アルキルまたはC6-12アリールである)、-C2y-(式中、yは、1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)、または-(C10-(式中、zは、1から4の整数である)であり、および、
Zは、下記式のジヒドロキシ化合物から誘導される基であり、
【化3】
式中、
およびRは、各々独立してハロゲン原子または一価C1-6アルキル基であり、
pおよびqは、各々独立して0から4の整数であり、
cは、0から4であり、ならびに、
は、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-C(O)-、またはC1-18有機架橋基である、請求項1または2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルイミドは、下記式の単位をさらに含むコポリマであり、
【化4】
式中、
各R’は独立して、C1-13一価ヒドロカルビル基であり、各Rは、C2-20ヒドロカルビル基であり、前記シロキサンのEは、2から50、5から30、または10から40であり、前記イミドの前記RおよびZは、請求項3における通りであり、および、nは、5から100の整数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記反応性添加物は、少なくとも1つの反応性末端基を含むポリマ添加物であり、
好ましくは、前記反応性末端基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基、無水物基、メルカプト基、フェノール基、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、またはそれらの組み合わせを含み、
より好ましくは、前記反応性末端基は、フェノール基、エポキシ基、または(メタ)アクリル基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記反応性添加物は、官能化フェニレンエーテルオリゴマ、エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記組成物は、5wt%までの添加物組成物をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
前記添加物組成物は、抗酸化剤、熱安定剤、水安定剤、紫外線吸収剤、加工助剤、および着色剤の1つ以上を含む、請求項7に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記組成物は、
溶融ポリマ混合物を20℃/分の速度で冷却して測定すると、250℃以上の結晶化温度、
250から450℃、より好ましくは300から400℃の溶融温度、
ASTM D790に従い決定すると、2500MPaを超える、好ましくは3000MPaを超える曲げ弾性率、
ASTM D790に従い決定すると、100MPaを超える、好ましくは125MPaを超える曲げ応力、
ASTM D638に従い決定すると、50MPaを超える、好ましくは75MPaを超える引張応力、
1.82MPaで、ASTM D648に従い決定すると、100℃を超える、好ましくは150℃を超えるHDT、
の1つ以上を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
導線と、
前記導線上に配置された絶縁層であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物から形成された押出層を含む、絶縁層と、
を含む電線であって、
任意で、前記絶縁層は、前記導線と前記押出層の間に配置された1つ以上の介在層をさらに含む、電線。
【請求項11】
前記導線を被覆する前記押出層は、下記特性の1つ以上を有する、請求項10に記載の電線:
5%を超える、好ましくは50%以上の引張伸び、
10kVを超える、好ましくは13kVを超える、より好ましくは15kVを超える降伏電圧、
2.5MPaを超える、好ましくは2.7MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらにいっそう好ましくは8MPaを超える接着強度。
【請求項12】
前記導線は、銅、アルミニウム、鉛、金、銀、鉄、ニッケル、クロム、または、前記の少なくとも1つを含む合金を含み、および、
前記導線は、長方形断面を有する、請求項10または11に記載の電線。
【請求項13】
前記押出層は、250マイクロメートル未満、好ましくは160マイクロメートル未満の厚さを有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の電線。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項に記載の電線を備える物品。
【請求項15】
電気装置部品、鉄道車両部品、自動車部品、海上船舶部品、建設部品、建設部材、建築部材、または航空機部品である、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性組成物、電線および電線を備える物品に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/757,442号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリーレンエーテルケトン)などの芳香族ポリ(ケトン)は、高温に対するそれらの抵抗性、結晶化可能性、溶融押出性、および射出成形性のために高く評価されており、よって、多くの用途において万能で有用なものになっている。強度、剛性、耐化学性、および耐熱性などの特性は、多種多様の消費者製品の要求を満たすために、他のポリ(ケトン)を様々な他のポリマとブレンドすることにより調整することができる。しかしながら、多くの現在の芳香族ポリ(ケトン)組成物は、ある一定の家電用途における場合など、高熱に対する抵抗性を要求する用途には、好適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、多くの産業用途のために、とりわけ、家電において、良好な機械的特性、優れた耐熱性および耐化学性、改善された接着、および優れた電気性能を有する改善された芳香族ポリ(ケトン)組成物が当技術分野では引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
熱可塑性組成物は、50から99.9重量パーセント、または60から95重量パーセント、または70から90重量パーセント、または70から80重量パーセントの芳香族ポリ(ケトン)、0.1から50重量パーセント、または5から40重量パーセント、または10から30重量パーセント、または15から25重量パーセントのポリ(エーテルイミド)、0.1から20重量パーセント、または0.5から10重量パーセント、または1から7重量パーセント、または2から6重量パーセントの反応性添加物を含み、各成分の重量パーセントは組成物の総重量に基づく。
【0006】
電線は導線と、導線上に配置された絶縁層とを含み、絶縁層は熱可塑性組成物から形成された押出層を含み、任意で、絶縁層は、導線と押出層の間に配置された1つ以上の介在層をさらに含む。
【0007】
物品は電線を備える。
【0008】
上記および他の特徴は、下記詳細な説明により例示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、芳香族ポリ(ケトン)、ポリ(エーテルイミド)、および反応性添加物の組み合わせを含有する熱可塑性組成物に関する。予想外に、芳香族ポリ(ケトン)、ポリ(エーテルイミド)、および反応性添加物のブレンドは、バランスのとれた機械的特性、耐熱性および耐化学性、および電気特性を有する組成物を提供することができる。
【0010】
したがって、本開示の一態様は、50から99.9重量パーセントの芳香族ポリ(ケトン)、0.1から50重量パーセントのポリ(エーテルイミド)、および0.1から20重量パーセントの反応性添加物を含む熱可塑性組成物であり、各成分の量は組成物の総重量に基づく。
【0011】
芳香族ポリ(ケトン)は、式(1)の繰り返し単位を含み、
【化1】
(1)
式中、Arは、独立して各事象で、6-30個の炭素を有する置換または非置換、単環式または多環式芳香族基である。例示的なAr基としては、置換または非置換フェニル、トリル、ナフチル、およびビフェニルが挙げられるが、それらに限定されない。非置換フェニルが好ましい。いくつかの実施形態では、芳香族ポリ(ケトン)は式(1)および式(2)の繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)とすることができ、
【化2】
(2)
式中、Arは以上で規定される通りである。いくつかの実施形態では芳香族ポリケトンはポリ(エーテルケトン)を含む。ポリ(エーテルケトン)は、式(3)の繰り返し単位を含み、
【化3】
(3)
式中、Arは以上で規定される通りであり、Arは、独立して各事象で、6-30個の炭素を有する置換または非置換、単環式または多環式芳香族基である。Arは、Arと同じか、または異なり得る。いくつかの好ましい実施形態では、ArおよびArはフェニル基、好ましくは非置換フェニル基である。
【0012】
いくつかの実施形態では、芳香族ポリ(ケトン)はポリ(エーテルエーテルケトン)を含む。ポリ(エーテルエーテルケトン)は、式(4)の繰り返し単位を含み、
【化4】
(4)
式中、ArおよびArは以上で規定される通りである。Arは、独立して各事象で、6-30個の炭素を有する置換または非置換、単環式または多環式芳香族基である。Ar、Ar、およびArは、互いに同じか、または異なり得る。加えて、Ar、Ar、およびArの2つは互いに同じとすることができ、3番目は異なり得る。いくつかの実施形態ではAr、Ar、およびArはフェニル基、好ましくは非置換フェニル基である。
【0013】
ポリ(アリーレンエーテルケトン)は一般に知られており、多くの例が市販されている。市販の芳香族ポリ(ケトン)の例としては、ビクトレックス(VICTREX)から入手可能な商標名ピーク(PEEK)(商標)で販売されているものが挙げられる。
【0014】
一態様では、芳香族ポリ(ケトン)は、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくは式(4)のポリ(エーテルエーテルケトン)を含む。
【0015】
熱可塑性組成物は芳香族ポリ(ケトン)を、50から99.9重量パーセントの量で含む。この範囲内で、芳香族ポリ(ケトン)は、少なくとも60重量パーセント、または少なくとも70重量パーセントの量で存在することができる。また、この範囲内で、芳香族ポリ(ケトン)は、最大95重量パーセントまで、または最大90重量パーセントまで、または最大80重量パーセントまでの量で存在することができる。
【0016】
芳香族ポリ(ケトン)に加えて、熱可塑性組成物は、ポリ(エーテルイミド)をさらに含む。ポリ(エーテルイミド)は1を超える、例えば2から1000、または5から500、または10から100の、式(5)の構造単位を含み、
【化5】
(5)
式中、各Rは独立して同じかまたは異なり、置換または非置換二価有機基、例えば置換または非置換C6-20芳香族炭化水素基、置換または非置換直鎖または分枝鎖C4-20アルキレン基、置換または非置換C3-8シクロアルキレン基、特に前記のいずれかのハロゲン化誘導体である。いくつかの実施形態ではRは下記式(6)の1つ以上の二価基であり、
【化6】
(6)
式中、Qは-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、-P(R)(=O)-であり、RはC1-8アルキルまたはC6-12アリール、-C2y-(式中、yは、1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)、または-(C10-(式中、zは、1から4の整数である)である。いくつかの実施形態では、Rはm-フェニレン、p-フェニレン、またはジアリーレンスルホン、特にビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,3’-フェニレン)スルホン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせである。いくつかの実施形態では、R基の少なくとも10モルパーセントまたは少なくとも50モルパーセントはスルホン基を含み、他の実施形態ではR基はスルホン基を含まない。
【0017】
さらに、式(5)では、Tは-O-または式-O-Z-O-の基であり、-O-または-O-Z-O-基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にあり、Zは任意で、1から6個のC1-8アルキル基、1から8個のハロゲン原子、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせで置換された芳香族C6-24単環式もしくは多環式部分であり、ただし、Zの価数を超えないことを条件とする。例示的なZ基としては、式(7)の基が挙げられ、
【化7】
(7)
式中、RおよびRは各々独立して、同じかまたは異なり、例えば、ハロゲン原子または一価C1-6アルキル基であり、pおよびqは各々独立して0から4の整数であり、cは0から4であり、ならびにXは、ヒドロキシ-置換された芳香族基を連結させる架橋基であり、架橋基とCアリーレン基のヒドロキシ置換基は、Cアリーレン基上で互いにオルト、メタ、またはパラ(特定的にはパラ)で配置される。架橋基Xは、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-C(O)-、またはC1-18有機架橋基とすることができる。C1-18有機架橋基は環状または非環状、芳香族または非芳香族とすることができ、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、またはリンなどのヘテロ原子をさらに含むことができる。C1-18有機基は、それに連結されたCアリーレン基が各々、C1-18有機架橋基の共通のアルキリデン炭素または異なる炭素に連結されるように配置することができる。Z基の具体例は式(7a)の二価基であり、
【化8】
(7a)
式中、Qは-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、-P(R)(=O)-(式中、RはC1-8アルキルまたはC6-12アリールである)、または-C2y-(式中、yは、1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)である。特定の実施形態では、Zは、ビスフェノールAから誘導され、そのため、式(7a)におけるQは2,2-イソプロピリデンである。
【0018】
式(5)における一実施形態では、Rはm-フェニレン、p-フェニレン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせであり、Tは-O-Z-O-(式中、Zは式(7a)の二価基である)である。あるいは、Rはm-フェニレン、p-フェニレン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせであり、Tは-O-Z-O(式中、Zは式(7a)の二価基である)であり、Qは2,2-イソプロピリデンである。そのような材料は、サビック(SABIC)から商標名ウルテム(ULTEM)で入手可能である。あるいは、ポリエーテルイミドは、式(5)の追加の構造ポリエーテルイミド単位を含むコポリマとすることができ、ここで、R基の少なくとも50モルパーセント(mol%)はビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,3’-フェニレン)スルホン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせであり、残りのR基はp-フェニレン、m-フェニレンまたは前記の少なくとも1つを含む組み合わせであり、および、Zは2,2-(4-フェニレン)イソプロピリデン、すなわち、ビスフェノールA部分であり、その一例はサビックから商標名エクステム(EXTEM)で市販されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリ(エーテルイミド)は、ポリエーテルイミド単位ではない追加の構造イミド単位、例えば、式(8)のイミド単位を任意で含むコポリマであり、
【化9】
(8)
式中、Rは式(5)で記載される通りであり、各Vは同じか、または異なり、置換または非置換C6-20芳香族炭化水素基、例えば下記式の四価リンカーであり、
【化10】
式中、Wは単結合、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、C1-18ヒドロカルビレン基、-P(R)(=O)-(式中、RはC1-8アルキルまたはC6-12アリールである)、または-C2y-(式中、yは、1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)である。これらの追加の構造イミド単位は、好ましくは単位の総数の20mol%未満を占め、より好ましくは、単位の総数の0から10mol%、または単位の総数の0から5mol%、または単位の総数の0から2モル%の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリ(エーテルイミド)中に追加のイミド単位は存在しない。
【0020】
ポリ(エーテルイミド)は、式(9)の芳香族ビス(エーテル無水物)またはその化学等価物の式(10)の有機ジアミンとの反応を含む、当業者に知られている方法のいずれかにより調製することができ、
【化11】
(9)
N-R-NH
(10)
式中、TおよびRは以上で記載されるように規定される。ポリエーテルイミドのコポリマは、式(9)の芳香族ビス(エーテル無水物)およびビス(エーテル無水物)ではない追加のビス(無水物)、例えばピロメリット酸二無水物またはビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物の組み合わせを用いて製造することができる。
【0021】
芳香族ビス(エーテル無水物)の例示的な例としては、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(ビスフェノールA二無水物またはBPADAとしても知られている)、3,3-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、および4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物が挙げられる。異なる芳香族ビス(エーテル無水物)の組み合わせが使用され得る。
【0022】
有機ジアミンの例としては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、4-メチルノナメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、N-メチル-ビス(3-アミノプロピル)アミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、ビス(3-アミノプロピル)スルフィド、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレン-ジアミン、5-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレン-ジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,5-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(2-クロロ-4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,4-ビス(p-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス(p-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-メチル-o-アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p-メチル-o-アミノペンチル)ベンゼン、1,3-ジアミノ-4-イソプロピルベンゼン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス-(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)としても知られている)、およびビス(4-アミノフェニル)エーテルが挙げられる。前記化合物の任意の位置異性体が使用され得る。前記のいずれかのC1-4アルキル化またはポリ(C1-4)アルキル化誘導体、例えば、ポリメチル化1,6-ヘキサンジアミンが使用され得る。これらの化合物の組み合わせもまた、使用され得る。いくつかの実施形態では、有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、またはそれらの組み合わせである。
【0023】
ポリ(エーテルイミド)は、式(5)のポリエーテルイミド単位および式(11)のシロキサンブロックを含む、ポリ(シロキサン-エーテルイミド)コポリマを含むことができ、
【化12】
(11)
式中、Eは2から100、2から31、5から75、5から60、5から15、または15から40の平均値を有し、各R’は独立して、C1-13一価ヒドロカルビル基である。例えば、各R’は独立して、C1-13アルキル基、C1-13アルコキシ基、C2-13アルケニル基、C2-13アルケニルオキシ基、C3-6シクロアルキル基、C3-6シクロアルコキシ基、C6-14アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-13アリールアルキル基、C7-13アリールアルコキシ基、C7-13アルキルアリール基、またはC7-13アルキルアリールオキシ基とすることができる。前記基はフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせで完全に、または部分的にハロゲン化することができる。一実施形態では臭素または塩素は存在せず、別の実施形態ではハロゲンは存在しない。前記R基の組み合わせが同じコポリマで使用され得る。一実施形態では、ポリシロキサンブロックは、最小炭化水素含有量を有するR’基を含む。特定の実施形態では、最小炭化水素含有量を有するR’基はメチル基である。
【0024】
ポリ(シロキサン-エーテルイミド)は、式(9)の芳香族ビス(エーテル無水物)、以上で記載される有機ジアミン(10)を含むジアミン成分またはジアミンの組み合わせ、および式(12)のポリシロキサンジアミンの重合により形成することができ、
【化13】
(12)
式中、R’およびEは、式(11)で記載される通りであり、Rは各々独立して、C-C20炭化水素、特にC-C20アリーレン、アルキレン、またはアリーレンアルキレン基である。一実施形態では、RはC-C20アルキレン基、特定的にはC-C10アルキレン基、例えばプロピレンであり、Eは5から100、5から75、5から60、5から15、または15から40の平均値を有する。式(12)のポリシロキサンジアミンを作製するための手順は当技術分野でよく知られている。
【0025】
いくつかのポリ(シロキサン-エーテルイミド)では、ジアミン成分は、例えば、米国特許4,404,350号に記載されるように、10から90モルパーセント(mol%)、または20から50mol%、または25から40mol%のポリシロキサンジアミン(12)および10から90mol%、または50から80mol%、または60から75mol%のジアミン(10)を含有することができる。ジアミン成分はビス無水物(複数可)との反応前に物理的に混合することができ、よって、実質的にランダムコポリマが形成される。あるいは、ブロックまたは交互コポリマは、(10)および(12)の、芳香族ビス(エーテル無水物)(9)との選択反応により形成させることができ、その後に一緒に反応させられるポリイミドブロックが作製される。よって、ポリ(シロキサン-イミド)コポリマはブロック、ランダム、またはグラフトコポリマとすることができる。一実施形態では、コポリマはブロックコポリマである。
【0026】
特定のポリ(シロキサン-エーテルイミド)の例は、米国特許第4,404,350号、4,808,686号および4,690,997号に記載される。一実施形態では、ポリ(シロキサン-エーテルイミド)は式(13)の単位を有し、
【化14】
(13)
式中、シロキサンのR’およびEは式(11)における通りであり、イミドのRおよびZは、式(5)における通りであり、Rは、式(12)における通りであり、nは、5から100の整数である。ポリ(シロキサン-エーテルイミド)の特定の実施形態では、エーテルイミドのRはフェニレンであり、ZはビスフェノールAの残基であり、Rはn-プロピレンであり、Eは2から50、5から30、または10から40であり、nは5から100であり、シロキサンの各R’はメチルである。
【0027】
ポリ(シロキサン-エーテルイミド)におけるポリ(シロキサン)単位およびエーテルイミド単位の相対量は所望の特性に依存し、本明細書で提供されるガイドラインを使用して選択される。特に、上記のように、ブロックまたはグラフトポリ(シロキサン-エーテルイミド)コポリマは、Eのある一定の平均値を有するように選択され、および、組成物において所望のwt%のポリ(シロキサン)単位を提供するのに有効な量で選択され、使用される。一実施形態では、ポリ(シロキサン-エーテルイミド)は、ポリ(シロキサン-エーテルイミド)の総重量に基づき、10から50wt%、10から40wt%、または20から35wt%のポリ(シロキサン)単位を含む。
【0028】
ポリ(エーテルイミド)は、340から370℃で、6.7キログラム(kg)重量を用いて、米国材料試験協会(ASTM)D1238により測定すると、0.1から10グラム/分(g/分)のメルトインデックスを有することができる。いくつかの実施形態では、ポリ(エーテルイミド)は、ポリスチレン標準を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定すると、1,000から150,000グラム/モル(ダルトン)の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施形態では、ポリ(エーテルイミド)は10,000から80,000ダルトンのMwを有する。そのようなポリ(エーテルイミド)は典型的には、25℃のm-クレゾール中で測定すると、0.2デシリットル/グラム(dl/g)を超える、または、より特定的には、0.35から0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0029】
熱可塑性組成物は、ポリ(エーテルイミド)を、0.1から50重量パーセントの量で含む。この範囲内で、ポリ(エーテルイミド)は、少なくとも5重量パーセント、または少なくとも10重量パーセント、または少なくとも15重量パーセントの量で存在することができる。また、この範囲内で、ポリ(エーテルイミド)は、最大40重量パーセントまで、または最大30重量パーセントまで、または最大25重量パーセントまでの量で存在することができる。
【0030】
芳香族ポリ(ケトン)およびポリ(エーテルイミド)に加えて、熱可塑性組成物は、反応性添加物をさらに含む。反応性添加物は1つ以上の反応性部分を含み、反応性部分としては、限定はされないが、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基、無水物基、メルカプト基、フェノール基、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一態様では、反応性添加物は少なくとも1つの反応性末端基を含むポリマ添加物とすることができる。好ましくはポリマ添加物上の反応性末端基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基、無水物基、メルカプト基、フェノール基、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、またはそれらの組み合わせ、より好ましくはフェノール基、エポキシ基、または(メタ)アクリル基を含む。
【0031】
特定の実施形態では、反応性添加物は、官能化フェニレンエーテルオリゴマ、エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂、またはそれらの組み合わせとすることができる。フェニレンエーテルオリゴマは式(14)のフェニレンエーテル繰り返し単位を含み、
【化15】
(14)
式中、各繰り返し単位について、各Zは独立して、ハロゲン、非置換もしくは置換C1-12ヒドロカルビル(ただし、ヒドロカルビル基は三級ヒドロカルビルではないことを条件とする)、C1-12ヒドロカルビルチオ、C1-12ヒドロカルビルオキシ、またはC2-12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離する)であり、および各Zは独立して水素、ハロゲン、非置換もしくは置換C1-12ヒドロカルビル(ただし、ヒドロカルビル基は三級ヒドロカルビルではないことを条件とする)、C1-12ヒドロカルビルチオ、C1-12ヒドロカルビルオキシ、またはC2-12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離する)である。いくつかの実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)オリゴマは、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル繰り返し単位を含む。
【0032】
フェニレンエーテルオリゴマは単官能性または二官能性とすることができる。例えば、それはポリマ鎖の一端に少なくとも1つの官能基を有することができる。官能基は以上で記載される通りとすることができ、好ましくはヒドロキシル基または(メタ)アクリレート基である。いくつかの実施形態では、フェニレンエーテルオリゴマは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。単官能性ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)オリゴマの一例はサビックから入手可能なノリル(NORYL)(商標)樹脂SA120である。
【0033】
いくつかの実施形態では、フェニレンエーテルオリゴマは二官能性とすることができる。例えば、それは、オリゴマ鎖の両端に官能基を有することができる。官能基は、例えば、ヒドロキシル基または(メタ)アクリレート基とすることができる。ポリマ鎖の両端に官能基を有する二官能性ポリマは、「テレケリック」ポリマとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、フェニレンエーテルオリゴマは、式(15)の二官能性フェニレンエーテルオリゴマを含み、
【化16】
(15)
式中、QおよびQは各々独立してハロゲン、非置換もしくは置換C1-12一級または二級ヒドロカルビル、C1-12ヒドロカルビルチオ、C1-12ヒドロカルビルオキシ、およびC2-12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離する)であり、QおよびQの各事象は独立して、水素、ハロゲン、非置換もしくは置換C1-12一級または二級ヒドロカルビル、C1-12ヒドロカルビルチオ、C1-12ヒドロカルビルオキシ、およびC2-12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離する)であり、xおよびyは独立して、0から30、特定的には0から20、より特定的には0から15、さらにより特定的には0から10、さらにいっそう特定的には0から8であり、ただし、xおよびyの合計は少なくとも2、特定的には少なくとも3、より特定的には少なくとも4であることを条件とし、Lは、式(16)による構造を有し、
【化17】
(16)
式中、RおよびRおよびRおよびRの各事象は独立して、水素、ハロゲン、非置換もしくは置換C1-12一級または二級ヒドロカルビル、C1-12ヒドロカルビルチオ、C1-12ヒドロカルビルオキシ、およびC2-12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離する)であり、zは0または1であり、Yは下記の構造を有し、
【化18】
式中、R、R、R、R、およびRの各事象は独立して、水素、C-C12ヒドロカルビル、またはC-Cヒドロカルビレンであり、任意で、RおよびRまたはRおよびRは一緒にC-Cシクロアルキレン基となる。さらに式(15)では、Xは独立して、各事象で水素または(メタ)アクリレート基である。
【0034】
いくつかの実施形態では、フェニレンエーテルオリゴマは式(17)の二官能性フェニレンエーテルオリゴマを含み、
【化19】
(17)
式中、QおよびQの各事象は独立して、メチル、ジ-n-ブチルアミノメチル、またはモルホリノメチルであり、およびaおよびbの各事象は独立して、0から20であり、ただし、aおよびbの合計は少なくとも2であることを条件とし、Xは独立して、各事象で水素または(メタ)アクリレート基である。例示的な二官能性フェニレンエーテルオリゴマとしては、ノリル(商標)樹脂SA90およびノリル(商標)樹脂SA9000が挙げられ、各々、サビックから入手可能である。
【0035】
フェニレンエーテルオリゴマは、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン標準を用いて決定すると、500から7,000グラム/モルの数平均分子量、および500から15,000グラム/モルの重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン標準を用いて決定すると、数平均分子量は750から4,000グラム/モル、重量平均分子量は1,500から9,000グラム/モルとすることができる。
【0036】
反応性添加物はエポキシ樹脂を含むことができる。反応性添加物として有用なエポキシ樹脂は、ポリグリシジルエーテルを形成するための、フェノールまたはポリフェノールのエピクロロヒドリンとの反応により生成させることができる。エポキシ樹脂の生成に有用なフェノールの例としては、置換または非置換ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヒドロキノン、レゾルシノール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、およびフェノールまたはo-クレゾールから誘導されるノボラック樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂はまた、ポリグリシジルアミンを形成させるための、p-アミノフェノールまたはメチレンジアニリンなどの芳香族アミンの、エピクロロヒドリンとの反応により生成させることができる。特定の態様では、反応性添加物は、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンとの反応から形成されるエポキシ樹脂を含む。
【0037】
反応添加物はまた、ノボラックフェノール樹脂を含むことができる。ノボラックフェノール樹脂は、フェノールをホルムアルデヒドと反応させることにより作製することができる。「フェノール」という用語は、本明細書では、ヒドロキシル基を有する置換および非置換フェニル、アリール、および縮合芳香環を含む。ホルムアルデヒド対フェノールのモル比は1未満である。特定の実施形態では、フェノールはビスフェノールAであり、得られたビスフェノールAノボラック樹脂は100から150g/eq、または110から130g/eqのヒドロキシル基当量とすることができる。
【0038】
熱可塑性組成物は、0.1から20重量パーセントの量の反応性添加物を含む。この範囲内で、反応性添加物は、少なくとも0.5重量パーセント、または少なくとも1重量パーセント、または少なくとも2重量パーセントの量で存在することができる。また、この範囲内で、反応性添加物は、最大10重量パーセントまで、または最大7重量パーセントまで、または最大6重量パーセントまでの量で存在することができる。
【0039】
芳香族ポリ(ケトン)、ポリ(エーテルイミド)、および反応性添加物に加えて、熱可塑性組成物は、任意で、添加物組成物をさらに含むことができる。添加物組成物は、所望の特性を達成するように選択された1つ以上の添加物を含み、ただし、添加物(複数可)はまた、熱可塑性組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼすことがないように選択されるということを条件とする。添加物組成物または個々の添加物は、組成物を形成するために成分を混合する間の好適な時間に混合することができる。添加物組成物としては、衝撃改質剤、流動改質剤、フィラー(例えば、微粒子ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、炭素、鉱物、または金属)、補強剤(例えば、ガラス繊維)、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線(UV)安定剤、UV吸収添加物、可塑剤、潤滑剤、剥離剤(例えば、離型剤)、帯電防止剤、防曇剤、抗菌薬、着色剤(例えば、染料または顔料)、表面効果添加物、放射安定剤、難燃剤、抗ドリップ剤(例えば、PTFE-被包されたスチレン-アクリロニトリルコポリマ(TSAN))、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、抗酸化剤、熱安定剤、水安定剤(hydrostabilizer)、紫外線吸収剤、加工助剤、および着色剤の組み合わせが使用され得る。添加物は有効であることが一般に知られている量で使用される。例えば、添加物組成物(衝撃改質剤、フィラー、または補強剤以外)の総量は、最大5重量パーセントまで、または0.001から5重量パーセント、または0.01から5重量パーセントとすることができ、各々、熱可塑性組成物の総重量に基づく。
【0040】
熱可塑性組成物は溶融混合またはドライブレンドと溶融混合の組み合わせにより調製することができる。溶融混合は、一または二軸押出機あるいはせん断および熱を成分に適用することができる同様の混合装置において実施することができる。溶融混合はコポリマの溶融温度以上、かつ、コポリマのいずれかの分解温度未満の温度で実施することができる。
【0041】
材料成分は全て、最初に、処理システムに添加することができる。いくつかの実施形態では、材料成分は、順次および/または1つ以上のマスターバッチの使用により添加することができる。押出機内の1つ以上のベント口を介して溶融物に真空を適用し、組成物中の揮発性不純物を除去することは有利となり得る。いくつかの実施形態では、溶融混合は押出機を用いて実施され、組成物は押出機から一ストランドまたは複数のストランドで出て行く。ストランドの形状は使用されるダイの形状に依存し、特別な制限はない。いくつかの実施形態では、組成物はポリマおよび、存在すれば、任意の添加物を溶融混合した生成物である。熱可塑性組成物の例示的な調製は、下記実施例においてさらに記載される。
【0042】
熱可塑性組成物は1つ以上の有利な特性を示すことができる。例えば、熱可塑性組成物は、溶融ポリマ混合物を20℃/分の速度で冷却して測定すると、250℃以上の結晶化温度を有することができる。熱可塑性組成物は250から450℃、より好ましくは300から400℃の溶融温度を有することができる。熱可塑性組成物は、ASTM D790に従い決定すると、2500MPaを超える、好ましくは3000MPaを超える曲げ弾性率を有することができる。熱可塑性組成物は、ASTM D790に従い決定すると、100MPaを超える、好ましくは125MPaを超える曲げ応力を有することができる。熱可塑性組成物は、ASTM D638に従い決定すると、50MPaを超える、好ましくは75MPaを超える引張応力を有することができる。熱可塑性組成物は、1.82MPaでASTM D648に従い決定すると、100℃を超える、好ましくは150℃を超える熱たわみ温度を有することができる。
【0043】
本明細書で記載される熱可塑性組成物は、電線用途において特に有用となり得る。したがって、熱可塑性組成物を含む電線は本開示の別の態様である。電線は導線と、導線上に配置された絶縁層を含み、絶縁層は熱可塑性組成物から形成された押出層を含む。
【0044】
組成物は押出コーティングなどの好適な方法により導線に適用され、被覆線が形成される。例えば、スクリュー、クロスヘッド、ブレーカプレート、ディストリビュータ、ニップル、およびダイが備えられたコーティング押出機が使用され得る。溶融熱可塑性組成物は、導線の周囲上に配置された被覆物を形成する。押出コーティングは、シングルテーパーダイ、ダブルテーパーダイ、他の適切なダイまたはダイの組み合わせを採用することができ、導体を中心に配置し、ダイリップ蓄積を回避する。
【0045】
いくつかの実施形態では、押出コーティング前に熱可塑性組成物を乾燥させることが有用となり得る。例示的な乾燥条件は60から150℃で2から20時間である。
【0046】
いくつかの実施形態では、押出コーティング中、熱可塑性組成物は、コーティングの形成前に、1つ以上のフィルタに通して溶融濾過される。いくつかの実施形態では、熱可塑性組成物は実質的に、80マイクロメートルを超えるサイズの粒子を有さない。いくつかの実施形態では、存在するいずれの微粒子も、40マイクロメートル以下のサイズである。いくつかの実施形態では、実質的には、20マイクロメートルを超えるサイズの微粒子は存在しない。微粒子の存在およびサイズは、10ミリリットルの、クロロホルムなどの溶媒に溶解させた1グラムの熱可塑性組成物の溶液を使用し、それを顕微鏡法または光散乱技術を使用して分析することにより決定することができる。実質的に微粒子はないとは、1グラムサンプルあたり、3以下の微粒子、より特定的には、2以下の微粒子、さらにいっそう特定的には、1以下の微粒子を有するとして規定される。低レベルの微粒子は、導電性欠陥を有さない被覆線上の絶縁層を提供する、および、改善された機械的特性を有するコーティングを提供するのに有益である。
【0047】
押出コーティング中の押出機温度は一般に、芳香族ポリ(ケトン)およびポリ(エーテルイミド)の分解温度未満である。加えて処理温度は、導体のために被覆物が得られるように十分流動性の溶融組成物を提供するように調整され、例えば、熱可塑性組成物の軟化点より高く、または、より特定的には熱可塑性組成物の融点より少なくとも20℃高い。
【0048】
押出コーティング後、導線は通常、水浴、水噴霧、空気ジェットまたは前記冷却方法の1つ以上を含む組み合わせを使用して冷却される。例示的な水浴温度は20から90℃、または80から90℃である。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物は導線に適用され、導線上に配置され、これと物理的に接触した被覆物が形成される。いくつかの実施形態では、絶縁層は導線と押出層の間に配置された1つ以上の介在層を含むことができる。
【0050】
一般に知られている導線を被覆する任意の方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、組成物が導線と被覆物の間に1つ以上の介在層を有する導線に適用され、導線上に配置された絶縁層が形成される。例えば、任意的な接着促進層が導線と押出層の間に配置され得る。別の例では、導線は、押出層を適用する前に、金属不活性化剤で被覆することができる。あるいは、金属不活性化剤は、熱可塑性組成物と混合することができる。別の例では、介在層は、場合によっては、発泡される、熱可塑性または熱硬化性組成物を含む。
【0051】
導体は単一ストランドまたは複数のストランドを含むことができる。場合によっては、複数のストランドは束ね、より、編むことができ、または前記の組み合わせが可能であり、導体が形成される。加えて、導体は円形または楕円形などの様々な形状を有することができる。導線に好適な材料としては、銅、アルミニウム、鉛、金、銀、鉄、ニッケル、クロム、および前記金属の少なくとも1つを含む合金が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な実施形態では、導線は銅である。導線はまた、例えば、スズ、金または銀で被覆することができる。いくつかの実施形態では、導線は光ファイバを含む。
【0052】
導体の断面積および被覆物の厚さは変動する可能性があり、典型的には、被覆線の所望の用途により決定される。被覆線は、限定はされないが、例えば、自動車用ハーネスワイヤ、家電機器用ワイヤ、電力用ワイヤ、機器用ワイヤ、情報通信用ワイヤ、電気自動車、および船、航空機用のワイヤ、などを含む被覆線として使用することができる。熱可塑性組成物を含む被覆電線から利益を得ることができる特定用途は、高熱、薄壁ワイヤコーティングを必要とするものであり、例えば、高熱列車、自動車、航空機、およびデータ伝送途用である。いくつかの特定の実施形態では、物品は、熱可塑性組成物を含む被覆物を有する電線を備えることができ、物品は鉄道車両部品、自動車部品、または航空機部品である。
【0053】
いくつかの実施形態では、押出層は250マイクロメートル未満、好ましくは160マイクロメートル未満の厚さを有することができる。導線の断面積の最長寸法は、例えば、0.1から5ミリメートルとすることができる。例えば、導線が円形断面積を有する場合、導線は0.1から1ミリメートルの直径を有することができる。例えば、導線が長方形断面積を有する場合、長方形断面の最長寸法は1から5ミリメートルとすることができる。
【0054】
複数の被覆線を合わせ、ケーブルを形成することができる。ケーブルは追加の保護要素、構造要素、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例示的な保護要素は被覆線の群を取り囲むジャケットである。ジャケットおよび被覆線上の被覆物は、単独で、または組み合わせて、本明細書で記載される熱可塑性組成物を含むことができる。構造要素は、典型的には追加の剛性、強度、形状保持能力などを提供する非導電性部分である。
【0055】
導線を被覆する押出層は1つ以上の望ましい特性を示すことができる。例えば、導線を被覆する押出層は5%を超える、好ましくは50%以上の引張伸びを有することができる。導線を被覆する押出層は10kVを超える、好ましくは13kVを超える、より好ましくは15kVを超える降伏電圧を有することができる。導線を被覆する押出層は2.5MPaを超える、好ましくは2.7MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらにいっそう好ましくは8MPaを超える接着強度を有することができる。
【0056】
電線を備える物品は本開示の別の態様を表す。例えば、熱可塑性組成物を含む電線は電気装置部品、鉄道車両部品、自動車部品、海上船舶部品、建設部品(a construction component)、建設部材(construction component)、建築部材(a building component)、または航空機部品に特に有用となり得る。
【0057】
実施形態によれば、熱可塑性組成物を含む造形、形成、または成形物品もまた、提供される。物品を作製する方法は、本明細書で記載される熱可塑性組成物の成分をブレンドし、熱可塑性組成物を提供する工程、および熱可塑性組成物から物品を形成する工程を含む。熱可塑性組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、回転成形、ブロー成形または熱成形などの様々な手段により有用な造形品に成形することができる。熱可塑性組成物を含む他の物品としては、例えば、コンピュータおよび事務機筐体、例えばモニター用筐体、携帯用電子装置筐体、例えば携帯電話用筐体、電気コネクタ、および照明器具部品、装飾品、家庭用電気製品、屋根、温室、サンルーム、水泳プール囲い、薄壁物品、例えば電子装置用筐体などが挙げられる。組成物から形成させることができる物品の追加の例としては、電気部品、例えば継電器、およびエンクロージャ、家電、例えばラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ドッキングステーション、携帯情報端末(PDA)、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータのためのエンクロージャおよび部品、および通信部品、例えば基地局端末用部品が挙げられる。組成物から形成させることができる物品のさらなる例としては、光ガイド、光ガイドパネル、レンズ、カバー、シート、フィルム、など、例えば、LEDレンズ、LEDカバー、などが挙げられる。
【0058】
この開示は、下記実施例によりさらに説明され、それらの実施例は非限定的である。
【実施例
【0059】
下記実施例のために使用される材料は表1に記載される。
【0060】
【表1】
【0061】
下記実施例の組成物を二軸押出機上でのコンパウンディングにより調製した。各成分を一緒にブレンドし、メインフィーダーに送り込んだ。組成物のストランドを切断してペレットとし、次いで、乾燥させ、その後、成形し、試験した。コンパウンディング条件は、表2にまとめて示す。
【0062】
【表2】
【0063】
ファナック(FANUC)射出成形機を用い、表3でまとめて示された射出成形プロファイルに従い、サンプルを射出成形した。
【0064】
【表3】
【0065】
成形されたサンプルを、下記試験方法に従い試験した。
【0066】
熱たわみ温度(HDT)をASTM D648に従い、1.82MPaの試験応力および6.4ミリメートルのサンプル厚さを使用して測定した。
【0067】
ノッチ付きアイゾッド衝撃強さ(NII)をASTM D256に従い、5lbf/ftの振り子エネルギーを使用して測定した。
【0068】
引張特性をASTM D638に従い、5ミリメートル/分の試験速度を使用して測定した。
【0069】
曲げ特性をASTM D790に従い、1.27ミリメートル/分の試験速度および6.4ミリメートルのサンプル厚さを使用して測定した。
【0070】
Tg、Tm、およびTcを含む熱特性を、示差走査熱量測定(DSC)によりISO11357に従い、20℃/分の加熱/冷却速度を使用して測定した。
【0071】
比重(「Sg」)をASTM D792に従い測定した。
【0072】
導線の形状と同様の押出ダイを使用して、エナメル層および接着層を有する導線上で特定の組成物を押し出すことにより、試験ワイヤサンプルを作製した。本実施例では、4つの角で縁が面取りされた長方形断面を有する銅導線を使用した。導線を3層で被覆した:エナメル層、接着層、およびコーティング組成物を含む押出層。組成物を含むコーティングの厚さは150±10マイクロメートルとした。コーティング層の降伏電圧(BDV)を、JIS C3216-5に従い、試験した。加えて、試験ワイヤサンプルの各々の2片を、エポキシ樹脂またはエポキシエステル樹脂などの含浸ワニスを使用し、続いて硬化させることにより、平面で面接触させて互いに緊密に接触させた。ワニスを用いた接着強度を、JIS K6850の修正版に従い、標準重ねせん断設計の代わりに上記サンプルを使用して試験した。
【0073】
表4は組成物および測定した特性を示す。成分量は、組成物の総重量に基づき重量パーセントで与えられる。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示されるように、機能性添加物を含む実施例E1-E5による組成物は、80MPaを超える引張応力、130MPaを超える曲げ応力、15J/mを超えるNII、および150℃を超えるHDTを示す。試験ワイヤ実施例E2-E3は接着表面での基材破壊モードを示す。ワニスと押出組成物の間の接着強度の最大読み取り値は下部の材料により制限された。
【0076】
この開示は下記態様をさらに包含し、それらの態様は非限定的である。
【0077】
態様1:50から99.9重量パーセント、または60から95重量パーセント、または70から90重量パーセント、または70から80重量パーセントの芳香族ポリ(ケトン)、0.1から50重量パーセント、または5から40重量パーセント、または10から30重量パーセント、または15から25重量パーセントのポリ(エーテルイミド)、0.1から20重量パーセント、または0.5から10重量パーセント、または1から7重量パーセント、または2から6重量パーセントの反応性添加物を含む熱可塑性組成物であって、各成分の重量パーセントは組成物の総重量に基づく。
【0078】
態様2:芳香族ポリ(ケトン)は、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくはポリ(エーテルエーテルケトン)を含む、態様1の熱可塑性組成物。
【0079】
態様3:ポリ(エーテルイミド)は下記式の単位を含み、
【化20】
式中、Rは置換または非置換C6-20芳香族炭化水素基、置換または非置換の直鎖または分枝鎖C4-20アルキレン基、置換または非置換C3-8シクロアルキレン基であり、TはO-または式-O-Z-O-の基であり、-O-または-O-Z-O-基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位にあり、Zは任意で、1から6個のC1-8アルキル基、1-8個のハロゲン原子、もしくは前記の少なくとも1つを含む組み合わせで置換された芳香族C6-24単環式または多環式基であり、好ましくは、Rは下記式の二価基であり、
【化21】
式中、Qは-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、-P(R)(=O)-(式中、RはC1-8アルキルまたはC6-12アリールである)、-C2y-(式中、yは、1から5の整数である)またはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)、または-(C10-(zは、1から4の整数である)であり、およびZは下記式のジヒドロキシ化合物から誘導される基であり
【化22】
式中、RおよびRは各々独立してハロゲン原子または一価C1-6アルキル基であり、pおよびqは各々独立して0から4の整数であり、cは0から4であり、ならびにXは単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-C(O)-、またはC1-18有機架橋基である、態様1または2の熱可塑性組成物。
【0080】
態様4:ポリエーテルイミドは下記式の単位をさらに含むコポリマであり
【化23】
式中、各R’は独立して、C1-13一価ヒドロカルビル基であり、各RはC2-20ヒドロカルビル基であり、シロキサンのEは2から50、5から30、または10から40であり、イミドのRおよびZは、態様3における通りであり、nは、5から100の整数である、態様1から3のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物。
【0081】
態様5:反応性添加物は少なくとも1つの反応性末端基を含むポリマ添加物であり、好ましくは、反応性末端基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基、無水物基、メルカプト基、フェノール基、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、またはそれらの組み合わせを含み、より好ましくは、反応性末端基はフェノール基、エポキシ基、または(メタ)アクリル基を含む、態様1から4のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物。
【0082】
態様6:反応性添加物は官能化フェニレンエーテルオリゴマ、エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、態様1から5のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物。
【0083】
態様7:組成物は、5wt%までの添加物組成物をさらに含む、態様1から6のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物。
【0084】
態様8:添加物組成物は抗酸化剤、熱安定剤、水安定剤、紫外線吸収剤、加工助剤、および着色剤の1つ以上を含む、態様7の熱可塑性組成物。
【0085】
態様9:組成物は、溶融ポリマ混合物を20℃/分の速度で冷却して測定すると、250℃以上の結晶化温度、250から450℃、より好ましくは300から400℃の溶融温度、ASTM D790に従い決定すると、2500MPaを超える、好ましくは3000MPaを超える曲げ弾性率、ASTM D790に従い決定すると、100MPaを超える、好ましくは125MPaを超える曲げ応力、ASTM D638に従い決定すると、50MPaを超える、好ましくは75MPaを超える引張応力、1.82MPaで、ASTM D648に従い決定すると、100℃を超える、好ましくは150℃を超えるHDTの1つ以上を示す、態様1から8のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物。
【0086】
態様10:導線と、導線上に配置された絶縁層とを含む電線であって、絶縁層は態様1から9のいずれか1つ以上の熱可塑性組成物から形成された押出層を含み、任意で、絶縁層は、導線と押出層の間に配置された1つ以上の介在層をさらに含む、電線。
【0087】
態様11:導線を被覆する押出層は、下記特性の1つ以上を有する、態様10の電線:5%を超える、好ましくは50%以上の引張伸び、10kVを超える、好ましくは13kVを超える、より好ましくは15kVを超える降伏電圧、2.5MPaを超える、好ましくは2.7MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらにいっそう好ましくは8MPaを超える接着強度。
【0088】
態様12:導線は、銅、アルミニウム、鉛、金、銀、鉄、ニッケル、クロム、または、前記の少なくとも1つを含む合金を含み、および導線は長方形断面を有する、態様10または11の電線。
【0089】
態様13:押出層は、250マイクロメートル未満、好ましくは160マイクロメートル未満の厚さを有する、態様10から12のいずれか1つ以上の電線。
【0090】
態様14:態様10から13のいずれか1つ以上の電線を備える物品。
【0091】
態様15:物品は電気装置部品、鉄道車両部品、自動車部品、海上船舶部品、建設部品、建設部材、建築部材、または航空機部品である、態様14の物品。
【0092】
組成物、方法、および物品は選択的に、本明細書で開示される任意の適切な材料、工程、または成分を含み、これから構成され、またはこれから本質的に構成される。組成物、方法、および物品は加えて、またはその代わりに、組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に別段必要とされない、任意の材料(または種)、工程、または成分を欠く、または実質的に含まないように策定することができる。
【0093】
本明細書で開示される範囲は全て終点を含み、終点は独立して、互いに組み合わせ可能である。「組み合わせ」はブレンド、混合物、合金、反応生成物、などを含む。「第1の」、「第2の」などという用語は順序、量、または重要性を示さず、むしろ、1つの要素を別の要素と識別するために使用される。「1つの(a、an)」または「その(the)」という用語は量の制限を示さず、本明細書で別記されない限り、または、文脈により明確に否定されない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「または」は、別段の明確な規定がない限り、「および/または」を意味する。明細書を通して、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、などへの言及は、実施形態との関連で記載される特定の要素が、本明細書で記載される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態では存在しても、しなくてもよいことを意味する。「それらの組み合わせ」という用語は、本明細書では、列挙された要素の1つ以上を含み、限定されておらず、指定されていない1つ以上の同様の要素の存在が可能である。加えて、記載される要素は様々な実施形態において任意の好適な様式で組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0094】
本明細書で反対のことが特定されない限り、全ての試験基準は本出願の出願日、または、優先権が主張されている場合、試験基準が現れる最先の優先権出願の出願日の時点で効力のある最新の標準である。
【0095】
別に規定されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、本出願が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。引用される全ての特許、特許出願、および他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願内の用語が、組み込まれる参考文献内の用語と矛盾または対立する場合、本出願の用語が、組み込まれる参考文献の対立する用語に優先する。
【0096】
化合物は、標準命名法を用いて記載される。例えば、任意の示された基により置換されていないいずれの位置も、示された結合、または水素原子により満たされたその原子価を有すると理解される。2つの文字または記号間にないダッシュ(「-」)は、置換基のための結合点を示すために使用される。例えば、-CHOはカルボニル基の炭素を介して結合される。
【0097】
本明細書では、「ヒドロカルビル」という用語は、それだけで使用されるか、あるいは、別の用語の接頭辞、添え字、または断片として使用されるかに関係なく、炭素および水素のみを含有する残基を示す。残基は脂肪族もしくは芳香族、直鎖、環状、二環式、分枝、飽和、または不飽和とすることができる。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素部分の組み合わせを含有することができる。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換されたと記載される場合、それは、置換残基の炭素および水素メンバーに加えて任意で、ヘテロ原子を含有してもよい。よって、置換されたと特定的に記載される場合、ヒドロカルビル残基はまた、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、などを含有することができ、または、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有することができる。「アルキル」という用語は、分枝または直鎖、不飽和脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ならびにn-およびs-ヘキシルを意味する。「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖、一価炭化水素基を意味する(例えば、エテニル(-HC=CH))。「アルコキシ」は、酸素を介して連結されるアルキル基(すなわち、アルキル-O-)、例えばメトキシ、エトキシ、およびsec-ブチルオキシ基を意味する。「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖、飽和、二価脂肪族炭化水素基を意味する(例えば、メチレン(-CH-)または、プロピレン(-(CH-))。「シクロアルキレン」は、二価環状アルキレン基、-C2n-xを意味し、式中、xは環化(複数可)にとって代わられる水素の数である。「シクロアルケニル」は、1つ以上の環および環内の1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する一価基を意味し、ここで、環員は全て炭素である(例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシル)。「アリール」は、特定数の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基、例えばフェニル、トロポン、インダニル、またはナフチルを意味する。「アリーレン」は、二価アリール基を意味する。「アルキルアリーレン」は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。「アリールアルキレン」は、アリール基で置換されたアルキレン基を意味する(例えば、ベンジル)。接頭辞「ハロ」は、1つ以上のフルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基を含む基または化合物を意味する。異なるハロ基(例えば、ブロモおよびフルオロ)の組み合わせ、またはクロロ基のみが存在することができる。接頭辞「ヘテロ」は、化合物または基がヘテロ原子である少なくとも1つの環員(例えば、1、2、または3つのヘテロ原子)を含むことを意味し、ヘテロ原子(複数可)は各々、独立してN、O、S、Si、またはPである。「置換された」は、化合物または基が、水素の代わりに、各々独立して、C1-9アルコキシ、C1-9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、C1-6アルキルスルホニル(-S(=O)-アルキル)、C6-12アリールスルホニル(-S(=O)-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CHSO-)、C3-12シクロアルキル、C2-12アルケニル、C5-12シクロアルケニル、C6-12アリール、C7-13アリールアルキレン、C4-12ヘテロシクロアルキル、およびC3-12ヘテロアリールとすることができる少なくとも1つ(例えば、1、2、3、または4つ)の置換基で置換されたことを意味し、ただし、置換された原子の標準原子価を超えないことを条件とする。基内で示される炭素原子の数はいずれの置換基も除外する。例えば、-CHCHCNはニトリルで置換されたCアルキル基である。
【0098】
特定の実施形態について記載してきたが、現在のところ、予期されない、または、予期され得ない代替、改変、変更、改善および実質的な等価物について、出願人または当業者は、思い着くことができる。したがって、出願された、補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのような代替、改変、変更、改善および実質的な等価物を包含することが意図される。
【国際調査報告】