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特表2022-507140熱膨張性セルロース系ミクロスフェア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】熱膨張性セルロース系ミクロスフェア
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/08 20060101AFI20220111BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B01J13/08
C08J9/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525560
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2019081076
(87)【国際公開番号】W WO2020099440
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】18205826.3
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, 6824 BM Arnhem, the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアソン,ボ
(72)【発明者】
【氏名】ウィトマンズ,ロエル
(72)【発明者】
【氏名】ラルソン,クロン,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】フロム,マリン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,カベサス,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ルーダ,マークス
(72)【発明者】
【氏名】マーティレス,ポーラ
【テーマコード(参考)】
4F074
4G005
【Fターム(参考)】
4F074AA97
4F074BA35
4F074BA91
4F074CB84
4F074CB85
4F074DA33
4F074DA39
4F074DA59
4G005AA01
4G005AB14
4G005AB21
4G005BA06
4G005BB06
4G005BB08
4G005DB13Y
4G005DB13Z
4G005DC02X
4G005DE10
4G005EA01
4G005EA06
4G005EA08
(57)【要約】
本発明は、発泡剤含有中空コアを囲むポリマーシェルを含む熱膨張性ミクロスフェアであって、ポリマーシェルは、少なくとも125℃のガラス転移温度(T)を有するカルボキシレート官能化セルロースを含む、熱膨張性ミクロスフェアに関する。本発明はまた、そのような熱膨張性ミクロスフェアを調製する方法であって、任意選択で乳化剤を含む水相を、有機溶媒、発泡剤、および少なくとも125℃のTを有するカルボキシレート官能化セルロースを含む有機相と混合して、ミクロスフェア分散液を形成するステップを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空コアを囲むポリマーシェルを含む熱膨張性ミクロスフェアであって、前記中空コアは発泡剤を含み、前記ポリマーシェルは少なくとも125℃のガラス転移温度(T)を有するカルボキシレート官能化セルロースを含む、熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項2】
カルボキシレート基が、式(I)
【化1】
(式中、
Aは、-H、-OH、-OR、-C(O)OHおよび-C(O)ORから選択され;
AがC=O基に直接結合するよう、Rは存在しない;またはRは、直鎖、分岐もしくは環状であってもよい1~11個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の脂肪族基、並びに5員および6員芳香族環から選択され;ここで、Rは、-OH、ハライド、C1~4アルキル、およびC1~4アルコキシから選択される1個または複数の置換基で任意選択に置換されており、前記C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシ基は、ハライドおよび-OHから選択される1個または複数の基で任意選択に置換されており;
は出現する毎に、ハライドおよび-OH基から選択される1個または複数の置換基を任意選択で有する、C1~4アルキル基から独立して選択される)
である、請求項1に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項3】
以下の条件:
(a)AはHおよびC(O)OHから選択される;
(b)Rは1~7個の炭素原子を含む;
(c)Rは、(i)飽和の直鎖または分岐脂肪族
【化2】
基;(ii)環状
【化3】
脂肪族基、(iii)「y」個の二重結合を含む不飽和の直鎖または分岐脂肪族
【化4】
基;(iv)「y」個の二重結合を含む不飽和の環状脂肪族
【化5】
基;および(v)
【化6】
芳香族基から選択される
(式中、
vは1~11の範囲の整数であり;
wは3~11の範囲の整数であり;
xは2~11の範囲の整数であり;
yは1または2であり;
zは5または6であり、
は出現する毎に、H、-OH、ハライド、C1~4アルキル、およびC1~4アルコキシから独立して選択され、前記C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシ基は、ハライドおよび-OHから選択される1個または複数の基で任意選択に置換されている);
(d)Rは、11個以下の炭素原子を有する
【化7】
基から選択される
(式中、
Eは、上記(c)において定義される通りの
【化8】
であり;
pおよびrは、それぞれ独立して、0~8の整数であり、p+rは少なくとも1であり;
qおよびsは、それぞれ、それぞれの非環状脂肪族成分中の二重結合の数であり、0、1および2からそれぞれ独立して選択される)
のうち1つまたは複数が当てはまる、請求項2に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項4】
前記カルボキシレート官能化セルロースの前記カルボキシレート官能基が、任意選択で置換されたC~C脂肪族カルボキシレート基、および任意選択で置換されたC芳香族環を含むカルボキシレート基から選択される、請求項3に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項5】
前記カルボキシレート官能基が、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエートおよびフタレートから選択される、請求項4に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項6】
以下の条件:
(a)前記カルボキシレート官能化セルロースの数平均分子量(M)は、1000~700000の範囲である;
(b)前記カルボキシレート官能化セルロースのTは、少なくとも130℃である;
(c)前記カルボキシレート官能化セルロースのTは、215℃以下である
のうち1つまたは複数が当てはまる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項7】
前記発泡剤が、5.0bara圧で25℃を超える沸点を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項8】
以下の条件:
(a)前記発泡剤は、3.0bara圧、または1.013bara圧で25℃を超える沸点を有する;
(b)前記発泡剤は、1.013bara圧で250℃以下の沸点を有する;
(c)前記発泡剤は、(i)C~Cアルキルからそれぞれ選択されるアルキル基を有するジアルキルエーテル、(ii)C~C12アルカン、および(iii)C~C12ハロアルカンから選択される
のうち1つまたは複数が当てはまる、請求項7に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項9】
前記発泡剤がC~C12イソアルカンから選択される、請求項8に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項10】
1種または複数の発泡剤が、5~50重量%の量で前記ミクロスフェア中に存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱膨張性ミクロスフェア。
【請求項11】
熱膨張性ミクロスフェアを調製する方法であって、任意選択で乳化剤を含む水相を、有機溶媒、発泡剤および少なくとも125℃のTを有するカルボキシレート官能化セルロースを含む有機相と混合して、中空コアを囲むポリマーシェルを有するミクロスフェアの分散液を形成するステップを含み、前記ポリマーシェルは前記カルボキシレート官能化セルロースを含み、前記中空コアは前記発泡剤を含む、方法。
【請求項12】
前記水相を、前記カルボキシレート官能化セルロースが可溶の1種または複数の有機溶媒で予備飽和させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下の条件:
(a)前記乳化剤は、非変性コロイダルシリカ、オルガノシラン変性コロイダルシリカ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、およびポリビニルアルコールから選択される;
(b)前記溶媒は、1~10個の炭素原子を有する、エステル、アミド、ケトン、アルコールおよびエーテルから選択される;
(c)前記有機相のカルボキシレート官能化セルロース含有率は、0.1~50重量%の範囲である;
(d)前記有機相の発泡剤含有率は、0.5~20重量%の範囲である;
(e)前記水相の乳化剤含有率は、0.01~20重量%の範囲である;
(f)前記有機相と前記水相の混合物の有機相含有率は、0.1~45重量%の範囲である;
(g)前記カルボキシレート官能化セルロースは、請求項2~6のいずれか1項に記載の通りである;
(h)前記発泡剤は、請求項7~9のいずれか1項に記載の通りである;
(i)前記熱膨張性ミクロスフェアは、前記混合物から分離される
のうち1つまたは複数が当てはまる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記膨張性ミクロスフェアを、続いて熱処理によって膨張させて膨張ミクロスフェアを形成する、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
熱膨張性または膨張ミクロスフェアが、乾燥形態で、またはスラリーもしくは湿潤ケーキとしてもたらされる、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系バイオポリマーから製造される熱膨張性ミクロスフェアおよびその製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性ミクロスフェアは当業界で公知であり、例えば米国特許第3615972号、国際公開第00/37547号および国際公開第2007/091960号に記載されている。幾つかの例としては、商品名Expancel(登録商標)の下で販売されている。それらは膨張して非常に軽量で低密度の充填剤を形成することができ、発泡したまたは低密度の樹脂、塗料およびコーティング、接合剤、インクおよび亀裂充填剤などの用途に使用されている。多くの場合、膨張性ミクロスフェアを含む消費者向け製品としては、軽量の靴底(例えばランニングシューズ)、壁紙などのテクスチャーカバー、日光の反射および遮蔽コーティング、食品包装用シーラント、ワインコルク、人工レザー、保護ヘルメットライナー用発泡体および自動車用ウエザーストリップが挙げられる。
【0003】
熱膨張性ポリマーミクロスフェアは、通常、加熱で膨張する発泡剤を含む中空コアを有する熱可塑性ポリマーシェルを含む。発泡剤の例は、室温で液体であるが加熱すると蒸気になる低沸点炭化水素またはハロゲン化炭化水素が挙げられる。膨張ミクロスフェアを生成するために、膨張性ミクロスフェアは加熱され、熱可塑性ポリマーシェルは軟化し、発泡剤は蒸気になり膨張し、その結果ミクロスフェアを膨張させる。典型的には、ミクロスフェアの直径は、膨張する間に1.5~8倍増加させることができる。
【0004】
ミクロスフェアに一般に使用される熱可塑性ポリマーに関連する問題は、それらが持続可能な供給源に由来しないということである。典型的なモノマーは、アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、二塩化ビニリデンおよびスチレンに基づくものを含み、主として石油化学の供給源に由来する。さらに、多くのポリマーは生分解性でないか、または少なくとも生分解はするがあまりに遅く環境中で累積的集積のリスクがある。
【発明の概要】
【0005】
したがって本発明は、バイオ由来のポリマーを使用して、熱膨張性ポリマーミクロスフェアを見出すことを対象とする。
【0006】
本発明は、中空コアを囲むポリマーシェルを含む熱膨張性ミクロスフェアであって、中空コアは発泡剤を含み、ポリマーシェルは少なくとも125℃のガラス転移温度(T)を有するカルボキシレート官能化セルロースを含む、熱膨張性ミクロスフェアである。
【0007】
本発明はまた、そのような膨張性ミクロスフェアを調製する方法であって、任意選択で乳化剤を含む水相を、有機溶媒、発泡剤および少なくとも125℃のTを有するカルボキシレート官能化セルロースを含む有機相と混合して、ミクロスフェアの分散液を形成するステップを含む方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】単一コア(図1A)ミクロスフェアと多重コア(図1B)ミクロスフェアの違いを示す図である。
図2】実施例40のミクロスフェアの熱膨張の前(図2A)および後(図2B)の顕微鏡写真を示す図である。図2Aは149.5℃、図2Bは203.4℃で、20℃/分の温度スロープを用いて得られた。
図3】実施例12のミクロスフェアの熱膨張の前(図3A)および後(図3B)の顕微鏡写真を示す図である。図3Aは130.0℃、図3Bは172.4℃で、20℃/分の温度スロープを用いて得られた。
図4】実施例4のミクロスフェアの熱膨張の前(図4A)および後(図4B)の顕微鏡写真を示す図である。図4Aは170.5℃、図4Bは217.9℃で、20℃/分の温度スロープを用いて得られた。
図5】実施例47のミクロスフェアの熱処理の前(図5A)および後(図5B)の顕微鏡写真を示す図である。図5Aは102.7℃、図5Bは144.6℃で、20℃/分の温度スロープを用いて得られた。
図6】実施例32のミクロスフェアの熱処理の前(図6A)および後(図6B)の顕微鏡写真を示す図である。図6Aは107.0℃、図6Bは151.5℃で、20℃/分の温度スロープを用いて得られた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2~6のすべての写真において、スケールバーは400μmである。
【0010】
膨張性ミクロスフェアは、カルボキシレート官能化セルロースを含むポリマーシェルに基づく。官能基は、1個のカルボキシレート基、または複数のカルボキシレート基であり、典型的にはC~C12カルボキシレートから選択される。カルボキシレート部分は、カルボキシレート官能基とセルロースの間の連結の一部を形成する、すなわち、セルロースはエステル連結によってカルボキシレート官能基に連結される。
【0011】
ポリマーシェルは、1種または複数のポリマー成分を含んでもよく、またはそれらからなってもよく、少なくとも1つの成分、複数の成分またはすべてのポリマー成分は、そのようなカルボキシレート官能化セルロースから選択される。シェルが本明細書において記載のもの以外のポリマー(すなわち、少なくとも125℃のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシレート官能化セルロースでない)を含む場合には、典型的にはそれらの含有率は、50重量%未満、例えば30重量%未満、または10重量%未満、例えば9重量%以下である。これらの百分率はシェルの合計ポリマー含有率を基準にしている。
【0012】
実施形態において、カルボキシレート官能化セルロースのカルボキシレート官能基は式(1)によって表すことができる。
【0013】
【化1】
【0014】
式(1)において、Aは、-H、-OH、-OR、-C(O)OHおよび-C(O)ORから選択される。実施形態において、Aは-Hおよび-C(O)OHから選択される。
【0015】
は存在しなくてもよい、すなわち、Aは直接C=O基に結合してもよい。しかしながら、存在する場合、Rは、直鎖、分岐または環状であってもよい、1~11個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪族基から選択することができる。
【0016】
は、また5員および6員芳香族環から選択することができる。
【0017】
は、-OH、ハライド、C1~4アルキル、およびC1~4アルコキシから選択される1個または複数の置換基を任意選択で含んでいてもよく、前記C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシ基は、ハライドおよび-OHから選択される1個または複数の基で任意選択に置換されている。
【0018】
実施形態におけるRは、1~7個の炭素原子、例えば1~5個または1~3個の炭素原子を含む。
【0019】
は出現する毎に、ハライドおよび-OH基から選択される1個または複数の置換基を任意選択で有する、C1~4アルキル基、例えばC1~2アルキル基から独立して選択される。実施形態において、C1~4アルキル基またはC1~2アルキル基は非置換である。
【0020】
実施形態において、Rは、飽和の直鎖または分岐脂肪族
【0021】
【化2】
基、または環状
【0022】
【化3】
脂肪族基であってもよい。vは、1~11の範囲、例えば1~6または1~4などの1~8の範囲の整数である。wは3~11、例えば4~6の範囲の整数である。
【0023】
は出現する毎に、H、-OH、ハライド、C1~4アルキル、およびC1~4アルコキシから独立して選択され、前記C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシ基は、ハライドおよび-OHから選択される1個または複数の基で任意選択に置換されている。
【0024】
他の実施形態において、Rは、「y」個の二重結合を含む不飽和の直鎖または分岐脂肪族
【0025】
【化4】
基であってもよい。xは、2~11、例えば2~6または2~4の範囲の整数である。yは二重結合の数を表し、典型的には1または2である。
【0026】
さらなる実施形態において、Rは、「y」個の二重結合を含む不飽和の環状脂肪族
【0027】
【化5】
基であってもよく、yは典型的には1または2である。
【0028】
なおさらなる実施形態において、R
【0029】
【化6】
芳香族基であってもよい。zは5および6から選択される整数である。
【0030】
なおさらなる実施形態において、Rは、環状脂肪族または芳香族環を含む直鎖または分岐脂肪族基であってもよい。したがって、Rは、11個以下の炭素原子を有する
【0031】
【化7】
基であってもよく、Eは上記において定義された通りの
【0032】
【化8】
である。pおよびrは、それぞれ独立して0~8の整数であり、p+rは少なくとも1である。qおよびsはそれぞれ、それぞれの非環状脂肪族成分中の二重結合の数である。実施形態において、qおよびsはそれぞれ、0、1および2から独立して選択される。
【0033】
ハライドは、典型的にはFおよびClから選択される。しかしながら、実施形態において、基A、R、RおよびRにハライドが存在しないように、官能基はハライドを含まない。
【0034】
実施形態において、少なくとも1個のR基はHである。他の実施形態において、2個以下のR基はH以外であり、さらなる実施形態において、1個以下のR基はH以外である。なおさらなる実施形態において、R基はすべてHである。
【0035】
、RおよびRの上記の定義において、複数の-OH置換基がある場合、典型的には炭素原子1個当たり1個以下の-OH置換基が存在する。
【0036】
ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたC~C脂肪族(アルキレン)基である。他の実施形態において、Rは、任意選択で置換されたC芳香族環である。さらなる実施形態において、Rは非置換である。
【0037】
実施形態において、セルロース置換基の官能基は、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエートおよびフタレートから選択される。さらなる実施形態において、それはアセテート、プロピオネートおよびブチレートから選択される。
【0038】
1個または複数のカルボキシレート基によるセルロースのヒドロキシル基の置換度(DS)は、0.9~3.5の範囲であってもよく、実施形態において、1.5~3.5の範囲、例えば2.5~3.3の範囲である。
【0039】
任意選択で、他の官能基が官能化セルロース中に存在してもよい。例えばカルボキシレート官能基でまだ置換されていないセルロース分子の-OH基は、例えば、C~Cアルコキシ基から選択される1個のアルコキシ基、または複数のアルコキシ基と置き換えられてもよい。他の実施形態において、それほど好ましくないが、-OH基はハライド基、例えばF、Clと置き換えることができる。そのような他の官能基が存在する場合、それらは、1個または複数のカルボキシレート基より低モル量である。実施形態において、他の官能基によるセルロースの置換度は、1以下、例えば0.5以下または0.2以下である。さらなる実施形態において、カルボキシレート基以外の基による置換度は0.1以下である。
【0040】
実施形態において、カルボキシレート官能化セルロースは酢酸セルロースである。実施形態において、セルロースは、2個以上の相異なるカルボキシレート基を用いてさらに官能化することができる。実施形態において、これらの追加のカルボキシレート基中、Rは脂肪族無置換のCまたはC基であり、AはHである(すなわち、カルボキシレート基はプロピオネートおよびブチレートから選択される)。
【0041】
ミクロスフェアのシェルを形成する官能化セルロースのガラス転移温度(T)は、少なくとも125℃である。Tは、例えばNishio et al; Cellulose, 2006 (13), 245-259に記載されている方法を使用して、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して測定することができ、ここで、5mgの試料は、常温(25℃)~240℃で窒素雰囲気下、20℃/分の速度で最初に加熱し、次いで、直ちに-50℃に急冷し、その後、窒素雰囲気下20℃/分で-50℃~240℃の第2回の加熱をし、第2の加熱サイクルを基準にしてTを計算する。より低いTを有する官能化セルロース材料を使用すると得られる膨張特性はあまり一貫性がない。
【0042】
実施形態において、カルボキシレート官能化セルロースのTは、少なくとも130℃、例えば少なくとも135℃、または少なくとも141℃である。実施形態において、カルボキシレート官能化セルロースのTは、215℃以下、例えば、200℃以下、または190℃以下である。実施形態において、Tは125~215℃の範囲、例えば125~200℃、または125~190℃の範囲である。さらなる実施形態において、Tは、130~215℃、例えば130~200℃、または130~190℃の範囲である。他の実施形態において、Tは、135~215℃、例えば135~200℃、または135~190℃の範囲である。なおさらなる実施形態において、Tは、141~215℃、例えば141~200℃、または141~190℃の範囲である。
【0043】
官能化セルロースの融点は、典型的にはT値より高く、実施形態において130℃より高い。実施形態において、融点は150℃より高い。融点は、典型的には270℃以下、例えば250℃以下である。
【0044】
カルボキシレート官能化セルロースのTおよび融点は、官能化セルロースの官能基を変えることによって、または分子量を変えることによって、修正または制御することができる。
【0045】
熱膨張性ミクロスフェアは中空であり、ここでシェルはカルボキシレート官能化セルロースを含み、中空の中心またはコアは1種または複数の発泡剤を含む。ミクロスフェアを調製するために使用されるカルボキシレート官能化セルロースは、典型的には1.1~1.35g/cmの密度を有する。膨張ミクロスフェアにおいて、密度は典型的には1g/cm未満であり、適切には0.005~0.8g/cm、または0.01~0.6g/cmの範囲である。さらなる実施形態において、膨張ミクロスフェアの密度は0.01~0.4g/cmの範囲である。より高い密度、特に1g/cm以上の密度は、一般にミクロスフェア試料が使用に適していないことを意味する。
【0046】
実施形態において、ミクロスフェアを形成するために使用される官能化セルロースの数平均分子量(M)は、1000~700000の範囲、例えば2000~500000の範囲である。実施形態において、それは、10000~100000、例えば10000~80000の範囲である。
【0047】
実施形態において、さらにポリマーシェルの性質を高めるために、ポリマーシェルは、カルボキシレート官能化セルロースの基と反応する、またはカルボキシレート官能化セルロースの付近に相互貫入ポリマー網目を形成する物質を含むことができる。この方法において、ポリマーシェルのバリア性をさらに改善し、おそらくポリマーシェルの機械的性質を改善することが可能である。
【0048】
カルボキシレート官能化セルロースの基と反応することによりミクロスフェアの性質を改善することができる物質の例は、ピロメリト酸二無水物とも称される1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トリメシン酸クロリドおよびグリオキサールなどの架橋剤である。
【0049】
カルボキシレート官能化セルロースの基との反応および/またはそれら自体での反応によってカルボキシレート官能化セルロースの付近の相互貫入ポリマー網目を形成する物質は、例えば製紙業界において湿潤強力剤として知られている。そのような物質の例は、ポリ(アミノアミド)エピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒドおよびメラミンホルムアルデヒドである。
【0050】
さらなる実施形態において、ポリマーシェルは、ポリマーシェルの機械的性質およびガスバリアを改善する粒子を含むことができる。そのような粒子の例は、タルク、モンモリロナイト、ナノ結晶性セルロースおよびベントナイトなどの様々なタイプのクレーである。
【0051】
幾つかの要因が高密度をもたらす場合がある。例えば、高密度が不十分なミクロスフェア収率に起因する場合がある、すなわちポリマー材料中のミクロスフェアの百分率が低過ぎて、全体の密度を許容水準まで下げることができない。別の問題は不十分な膨張特性であり、ミクロスフェアのあまりにも多くが十分な発泡剤を含まないため十分な膨張が可能でなくなることがある。これは、ポリマーシェルが、発泡剤に対して浸透性が大きすぎることに起因し、または、単一発泡剤含有コアの代わりに、シェル内に多種の発泡剤を含有するコア(例えばミクロスフェアの泡またはスポンジのように)がある場合、いわゆる「多数コア」ミクロスフェアの形成による場合がある。そのような多重コアミクロスフェアにおいて、発泡剤濃度は典型的には低過ぎて、密度を十分に低減することができない。別の原因は、ポリマーの凝集または集合であり、不十分なミクロスフェアの生成およびより高密度の材料をもたらす。凝集した材料または貧弱に膨張するミクロスフェアの割合が高すぎると、得られたミクロスフェア生成物の膨張特性において大規模な不均質性を引き起こし得る。滑らかな仕上がりが望ましい場合には、これはコーティングなどの表面に敏感な用途について特に不利である。
【0052】
単一コアおよび多重コアミクロスフェアの例証となる断面は、図1Aおよび図1Bにそれぞれ示し、ポリマー1の領域はクロスハッチ区域によって表し、発泡剤含有領域2は空白の区域によって表す。
【0053】
1種または複数の発泡剤は、一般に5.0bara圧で25℃を超える、または3.0bara圧で25℃を超える沸点を有し、ここで、「bara」は絶対バールを表す。実施形態において、それらは、大気圧(1.013bara)で25℃を超える沸点を有する。典型的には、それらは、大気圧で250℃以下、例えば、220℃以下または200℃以下の沸点を有する。それらは好ましくは不活性であり、官能化セルロースシェルと反応しない。高い圧力での沸点はクラウジウス-クラペイロンの式を使用して計算することができる。
【0054】
発泡剤の例としては、ジアルキルエーテル、アルカンおよびハロゲン化炭素、例えばクロロカーボン、フルオロカーボンまたはクロロフルオロカーボンが挙げられる。実施形態において、ジアルキルエーテルはC~Cアルキル基からそれぞれ選択される2個のアルキル基を含む。実施形態において、アルカンはC~C12アルカンである。実施形態において、ハロアルカンはC~C10ハロアルカンから選択される。ハロアルカンは塩素およびフッ素から選択される1種または複数のハロゲン原子を含むことができる。ジアルキルエーテル、アルカンおよびハロアルカン中のアルキル基またはハロアルキル基は、直鎖、分岐または環状であってもよい。1種または複数の発泡剤の1つまたは混合物を使用することができる。
【0055】
実施形態において、環境上の理由で、1種または複数の発泡剤はアルキルエーテルおよびアルカンから選択され、さらなる実施形態において、1種または複数の発泡剤はアルカンから選択される。ハロアルカンは、好ましくは、その可能性のあるオゾン層破壊性によって、また一般により高い地球温暖化係数により回避される。
【0056】
使用することができる適切な発泡剤の例としては、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、n-ブタン、イソブタン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソデカンおよびイソドデカンが挙げられる。実施形態において、発泡剤はC~C12イソアルカンから選択される。
【0057】
膨張性ミクロスフェアにおいて、1種または複数の発泡剤は、典型的には、官能化セルロースおよび発泡剤の合計重量に基づいて5~50重量%、例えば5~45重量%、または10~40重量%の範囲の量で存在する。
【0058】
カルボキシレート官能化セルロース材料は、商業的に購入することができ、または公知手段によって、例えばセルロースを硫酸などの強酸の存在下で適切なカルボン酸と混合することによって、または例えばNishio et al; Cellulose, 2006 (13), 245-259に記載されているように塩化アシルとのセルロースの塩基触媒反応によって製造することができる。
【0059】
それらは、適切な有機溶媒または溶媒の混合物に溶解し、1種または複数の発泡剤を添加し、任意選択で1種または複数の乳化剤を含む水相と混合することにより、ミクロスフェアに形成することができる。ある時間(例えば5分~10時間の範囲などの1分~20時間)の後に、任意選択で積極的に混合しながら、例えば撹拌によって未膨張のミクロスフェアが形成し、例えばデカンテーションまたは濾過などの従来の技法を使用して、固体として分離することができる。
【0060】
混合は常温で行うことができるが、5~75℃の範囲の温度を使用することができる。
【0061】
実施形態において、水相は、カルボキシレート官能化セルロース含有有機相と混合する前に、カルボキシレート官能化セルロースが可溶な1種または複数の有機溶媒で予備飽和させてもよい。さらなる実施形態において、混合物は、例えば1~100時間、または2~50時間の期間、放置または撹拌することができ、溶媒/水混合物の少なくとも一部を蒸発させる。これは、10~95℃の範囲の温度で、例えば20~90℃の温度で可能である。
【0062】
乳化剤は、水相中のカルボキシレート官能化セルロース-含有有機相の小滴を安定させるのを助け、実施形態において、水相(すなわち水中油型エマルション)中の有機相のエマルションの形成を支援する。
【0063】
小滴またはエマルションの小滴の安定化は幾つかの理由で好ましい。安定化がないと、カルボキシレート変性セルロースおよび発泡剤を含む小滴の融着が生じ得る。融着には、不均一な小滴サイズ、ミクロスフェアの不十分な収率などの負の効果がある場合があり、またミクロスフェアの凝集が増加し得る。
【0064】
乳化剤は、典型的には水相中に0~20重量%、例えば0.01~20重量%、0.05~10重量%、0.1~5重量%の量で存在する。さらなる実施形態において、乳化剤は水相中に0.1~1重量%の量で存在する。
【0065】
乳化剤の選択は特に限定されず、無機または有機乳化剤から選ぶことができる。
【0066】
乳化剤として機能することができる無機材料の例としては、シリカ、特にコロイダルシリカが挙げられ、非変性の「裸の」形態で使用することでき、または、任意選択で例えばオルガノシラン変性シリカまたはコロイダルシリカを使用し表面変性してその疎水性/親水性の特性を調整することができる。
【0067】
実施形態において、オルガノシラン中の「オルガノ」基は、C1~20アルキル、C1~20アルケニル、C5~6アリール、およびO、SおよびNから選択される1個または複数の(例えば1~3)ヘテロ原子を有するC5~6ヘテロアリールから選択することができる。これらの基はそれぞれ、ハライド、ヒドロキシ、エポキシ、チオール、アミノ、C1~20アルキルアミノ、ジ-C1~20アルキルアミノ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ-C1~20アルキルアミノ、(ヒドロキシ-C1~20アルキル)(C1~20アルキル)アミノ、ジ(ヒドロキシ-C1~20アルキル)アミノC1~20アルコキシ、C1~20アミド、C1~20ウレイド、C1~20メルカプト、C3~20エポキシアルコキシ、C1~20アルキルアクリレート、エチレングリコールまたは1~20のエチレングリコール基を有するそのオリゴマー、およびプロピレングリコールまたは1~20のプロピレングリコール基を有するそのオリゴマーから選択される1個または複数の基で任意選択に置換されていてもよい。脂肪族基はいずれも直鎖、分岐または環状であってもよい。
【0068】
オルガノシラン変性シリカまたはコロイダルシリカは、典型的には、式RSiX4~n、(式中、Rは上記の特定された有機基の1つであり、Xはハライド、ヒドロキシまたはC1~6アルコキシであり、nは1~3の範囲、典型的には1または2の整数である)を有するオルガノシラン化合物とシリカ(またはコロイダルシリカ)を反応させることにより生成することができる。
【0069】
適切なシラン化合物としては、トリス-(トリメトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン;ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン;エポキシ基含有シラン(エポキシシラン)、グリシドキシおよび/またはグリシドキシプロピル基含有シラン、例えばガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン;ビニル基含有シラン、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン;ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロリド、ビニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、およびその混合物が挙げられる。米国特許第4927749号は、使用することができるさらに適切なシランを開示している。
【0070】
使用することができるシリカの例は、コロイダルシリカに関係する商品名Levasil(商標)、Bindzil(商標)およびLudox(商標)の下で市販されているものを含む。シリカの固体形はヒュームドシリカを含み、沈降シリカもまた使用することができ、これは水に分散して細かい懸濁液を形成することができる。ヒュームドシリカの供給源は商品名Cab-o-Sil(商標)およびAerosil(商標)の下で市販されているものを含む。
【0071】
他の無機乳化剤はコロイダルクレー(例えばチョークおよびベントナイト)、並びにAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ti、NiおよびMnの塩、酸化物および水酸化物(例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、およびアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケルまたはマンガンの水酸化物)を含む。
【0072】
固体、無機の乳化剤が使用され、固体無機粒子が、水相と有機相の間の界面にある場合、それらはいわゆる「ピッカリング」エマルションを生成することができる。
【0073】
有機乳化剤は、アニオン、カチオン、両性、双性イオンおよび非イオン性の界面活性剤を含み、これらは一般に公知であり、市販されている。
【0074】
例としては、ソルビタンエステル(商品名Span(商標)の下で市販のものなどの)、例えばソルビタンモノラウレート(例えばSpan(商標)20)およびソルビタンモノオレエート(例えばSpan(商標)80)を含む。さらなる例は、ポリエトキシ化ソルビタンエステル(例えば商品名Tween(商標)の下で市販のもの)、例えばPEG-20ソルビタンモノラウレート(Tween(商標)20)、PEG-20ソルビタンモノオレエート(Tween(商標)80)およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(Tween(商標)85)を含む。他の例としては、C~C22アルキル硫酸塩、例えばドデシル硫酸ナトリウム;式 C2n+1(OC2m-OSO (式中、nは6~22であり、mは2~3であり、pは2~4である)のアニオンを有する硫酸塩、例えばラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびC12~14パレス-3硫酸ナトリウム;C6~22アルキル配糖体、例えばラウリルグルコシド;式C2n+1C(O)N(X)CH(C[OH])CHOH(式中、nは6~22であり、XはHまたはC1~4アルキルである)のグルカミド、例えばカプリルメチルグルカミド、ラウリルメチルグルカミドおよびドデシルグルカミド;C2~16カルボキシレート基で置換されたアミノ酸およびそれらの塩、例えばココイルグルタミン酸ナトリウムまたはジナトリウムおよびラウロイルサルコシン酸ナトリウム;C6~22脂肪酸およびそれらの塩、例えばオレイン酸ナトリウムおよびオレイン酸カリウム;5~25グリコール単位を有するポリエチレングリコール置換フェノール例えばp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルポリエチレングリコールエーテル(トリトン(商標)X-100として入手可能である);C6~22アルキルアミンオキシド、例えばラウラミンオキシド、C6~22アルキルアルコール、例えばセチルアルコールおよびステアリルアルコールが挙げられる。さらなる例としては、ポリマー乳化剤、例えば(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸のポリマー(例えばポリメチルメタクリル酸)および少なくとも1個のC3~10アルケニル基および少なくとも1個のC1~4アルキル基を有する有機アンモニウム塩に基づくポリマー、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(polyDADMAC)が挙げられる。
【0075】
消費者向けの食器洗剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、C12~14パレス-3-硫酸ナトリウムおよびラウラミンオキシドを含む商品名Yes(登録商標)およびFairy(登録商標)の下で市販されているものを、乳化剤の供給源として使用することができる。
【0076】
乳化剤の他の例は、任意選択で部分的にまたは完全に鹸化されたポリビニルアルコールを含む。実施形態において、ポリビニルアルコールは、70~100mol%の範囲、例えば80~100mol%、または80~98mol%の範囲の加水分解度を有する。4%の水溶液のHoppler粘度は1~70mPas、または他の実施形態において3~40mPasの範囲であってもよい(DIN 53015に従って20℃で測定して)。
【0077】
1種または複数の乳化剤を使用することができる。有機乳化剤と無機乳化剤の混合物も使用することができる。
【0078】
有機溶媒は、エステル、アミド、アルデヒド、ケトン、アルコール(グリコールを含む)およびエーテル、例えば3~12個の炭素原子を有するものから選択される1個または複数の官能基を有するものから選択することができる。エステル、ケトンおよびエーテルは、実施形態において、環状構造の一部であってよい。さらなる例は、ハロゲンがフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される、1~6個の炭素原子を有するハロアルカン、および1~6個の炭素原子を有するハロカルボン酸を含む。実施形態において、使用されるアルコールはグリコールである。
【0079】
使用することができる有機溶媒の例としては、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、n-ギ酸プロピル、イソギ酸プロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、n-酢酸ブチル、ギ酸n-ペンチル、ギ酸イソペンチル、酢酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸エチル、イソ酪酸イソブチル、n-プロピオン酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸2-エチルヘキシル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn-アミルケトン、メシチルオキシド、アセトフェノン、シクロヘキサノン、フタル酸ジエチル、乳酸エチル、酢酸ベンジル、ブチロラクトン、アセチルアセトン、メチルシクロヘキサノン、ベンズアルデヒド、ジイソブチルケトンジアセトンアルコール、エチレングリコール、グリセリル-α-モノクロロヒドリン、プロピレングリコール、グリコールエーテル(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル)、グリコールエーテルエステル(例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールおよびジメチルホルムアミドが挙げられる。溶媒の他の例は、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、n-メチル-2-ピロリドン、塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロ酢酸、臭化メチル、ヨウ化メチル、トリクロロエチレンおよび四塩化エチレンを含む。有機溶媒は、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。有機溶媒は水を含むことができるが、典型的には、水相と混合する前の有機溶媒の含水率は、5重量%未満、すなわち0~5重量%の水、例えば0~1重量%の水である。
【0080】
実施形態において、溶媒は、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチルおよびアセトンの1つまたは複数から選択される。
【0081】
典型的には、有機相のカルボキシレート官能化セルロース含有率は0.1~50重量%の範囲である。実施形態において、それは0.5~25重量%の範囲、例えば1~15重量%の範囲であってもよい。
【0082】
有機相中の発泡剤の量は、典型的には0.5~20重量%の範囲、例えば1~15重量%の範囲である。実施形態において、有機相中の発泡剤の重量は、カルボキシレート官能化セルロースの重量と等しいかまたはより少なく、例えば、発泡剤とカルボキシレート官能化セルロースとの重量比は1.0以下、例えば0.8以下であってもよい。実施形態において、最小の重量比は0.1、またはさらなる実施形態において0.2である。実施形態において、有機相中の発泡剤とカルボキシレート官能化セルロースとの重量比は、0.1~1.0の範囲、例えば0.2~0.8の範囲である。
【0083】
有機相と水相との重量比は、0.1~45重量%の範囲、例えば1~30重量%、3~25重量%または4~15重量%の範囲であってもよい。
【0084】
カルボキシレート官能化セルロースの基と反応させる物質および/または粒子がポリマーシェルの性質をさらに改善するために添加される場合、典型的には、これらの物質および/または粒子は、有機相(すなわち、カルボキシレート官能化セルロース、溶媒および発泡剤を含有する相)に添加される。
【0085】
未膨張のミクロスフェアは、典型的には、5~500μm、または実施形態において10~400μmなどの1~1000μmの範囲の体積平均粒度(直径)、すなわちD(0.5)値を有する。
【0086】
膨張ミクロスフェアは、典型的には未膨張のミクロスフェアより大きく、直径が元の直径の1.5~8倍の範囲、例えば、2~7倍または3~6倍である。
【0087】
粒度は、光散乱法、例えばレーザー回折、例えば低角レーザー光散乱(LALLS)を使用して適切に測定される。また、それらは膨張前後のミクロスフェアの写真または電子顕微鏡写真画像からの画像解析によって測定することができる。
【0088】
膨張性ミクロスフェアを膨張させるために、それらを、発泡剤の沸点および官能化セルロースのTより高い温度で、かつまたミクロスフェアの融点より下の温度に加熱することができる。膨張を停止するために、ミクロスフェアを、官能化セルロースのTおよび/または発泡剤の沸点未満に冷却することができる。
【0089】
膨張性ミクロスフェアを加熱する方法としては、例えば国際公開第2004/056549号、国際公開第2014/198532号および国際公開第2016/091847号に記載のように、蒸気または加圧蒸気などの熱媒体との直接または間接の接触が挙げられる。さらなる実施形態において、任意選択で蒸気と混合された他の加熱ガス(例えば空気または窒素)との直接または間接の接触を使用することができる。なおさらなる実施形態において、間接加熱が使用される場合、液体の熱媒体、例えば加熱した油を使用することができる。別の実施形態において、IR照射をミクロスフェアの加熱に使用することができる。
【0090】
熱膨張性熱可塑性ミクロスフェアの膨張性質は熱力学的分析器(例えばMettler TMA 841)を使用して評価することができ、適切なソフトウェア、例えばSTAReソフトウェアを使用して、定量的データを画像から得ることができる。Tstartは、膨張が始まる温度であり、Tmaxは最大の膨張が得られる温度である。
【0091】
膨張性または膨張熱可塑性ミクロスフェアは、湿潤形態(例えば水スラリーまたは湿潤ケーキとして)で、または乾燥粉としてもたらされてもよい。それらは、例えば使用する場所の現地で膨張させるために、未膨張の形態でもたらされてもよく、または末端使用の場所への配送前に前もって膨張させてもよい。
【0092】
ミクロスフェアは、例えば紙(例えば、エンボス紙シート、紙充填剤、サイズ剤)、インク、コルク、セメント系組成物、接着剤、発泡体、絶縁材料、コーティング、ゴム系製品、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、セラミック、不織複合材料、充填剤などの製作に、例えばそのような用途での軽量充填剤を提供する多くの用途において使用することができる。
【0093】
本明細書において記載の熱膨張性ミクロスフェアは、乾燥、湿潤またはスラリー中の場合に、熱膨張させることができる。また、それらは、長期間(湿潤、乾燥、スラリーのいずれでも)、例えば少なくとも1週間、少なくとも1カ月または少なくとも4カ月、発泡剤を保持することができる。さらに、その膨張は典型的には不可逆であり、すなわち、熱膨張の後にミクロスフェアを冷却しても、膨張する前の大きさに収縮することはない。
【実施例
【0094】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図される。以下に詳述するように、ミクロスフェアを調製するために2つの合成経路を使用した。これらは一般に「溶媒抽出」法および「溶媒蒸発」法と称する。
【0095】
Mettler TMA 841熱力学的分析器を使用して、PCでSTAReソフトウェアを実行するインターフェースで膨張特性を評価した。加熱速度は20℃/分であり、0.06Nの荷重(正味)を使用した。
【0096】
膨張前後のミクロスフェアの目視分析にはLeica(商標) DM1000 LED顕微鏡を使用し、Leica(商標) Application Suite、バージョン4.8.0ソフトウェアをPCで実行することによって得られる画像解析を用いた。図2~6の写真は、Linkam(商標)LTS420加熱ステージを取り付けた同型の顕微鏡を使用して集めた。
【0097】
Mettler Toledo DSC 822eデバイスを使用して、示差走査熱量測定(DSC)を得た。
【0098】
合成法1-溶媒抽出
磁気撹拌子を用いてポリマーを終夜溶解することにより、適切な有機溶媒中のカルボキシレート官能化セルロースポリマーの溶液を調製した。
【0099】
溶液に発泡剤を添加し、混合物を2分間撹拌して、沈降したポリマーを再溶解した。
【0100】
1500rpm(実施例1、7~12、16~17、19、21~28、30~32)、2000rpm(実施例33~38、40~41)、900rpm(実施例44~46)または1000rpm(実施例47)で作動するタービン撹拌機を使用する一定撹拌の下で、蒸留水中の界面活性剤の混合物へこの溶液を20~30秒間にわたって添加した。有機溶液の添加が完了した後、同じ撹拌速度でさらに10分間混合物を撹拌した。
【0101】
次いで、00R等級濾紙に通して混合物を濾過した。濾過した固体は水を用いて2回洗浄し、分析の前に換気フード中室温で終夜乾燥した。
【0102】
合成法2-溶媒蒸発
磁気撹拌子を用いてポリマーを終夜溶解することにより、酢酸エチルまたはギ酸エチル中のカルボキシレート官能化セルロースポリマーの溶液を調製した。
【0103】
発泡剤を添加し、混合物を2分間撹拌して、沈降したポリマーを再溶解した。
【0104】
1500rpm(実施例2~6、13~15、18、20、29)、2000rpm(実施例39)または6000rpm(実施例42~43)でタービン撹拌機を用いて絶えず水相を撹拌しながら、酢酸エチルまたはギ酸エチルで飽和させた蒸留水中の界面活性剤の混合物にこの有機溶液を約10秒間にわたって添加した。有機溶液の添加の完了後、同じ撹拌速度でさらに2分間混合物を撹拌した。磁気撹拌子を用いて高速で撹拌しながら、結果として得られた混合物を約10秒間にわたって300mlの蒸留水へ注いだ。撹拌速度を下げ、換気フードの後ろで14~18時間混合物を撹拌した。およそ4~5時間の後、蒸発を補うためにさらにいくらかの蒸留水を添加した。
【0105】
次いで、00R等級濾紙に通して混合物を濾過し、残存する固体は水を用いて2回洗浄した。換気フード中室温で終夜乾燥した後、固体を集めて分析した。
【0106】
表1は、ミクロスフェアを調製するために使用したカルボキシレート官能化セルロースポリマーを列挙する。それらは、酢酸セルロース(CA)、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)または酢酸酪酸セルロース(CAB)のいずれかであった。
【0107】
【表1】
【0108】
表2に、使用した界面活性剤を列挙する。幾つかの事例において、使用の前に、所定の比で水を用いてそれらを希釈した。
【0109】
【表2】
【0110】
調製した試料の詳細を表3に示し、表4に得られたミクロスフェアのデータを示す。数値で比較できない事項については、走査電子顕微鏡検査を使用する光学的観察が、ミクロスフェアの存在を裏付けた。
【0111】
【表3-1】
【0112】
【表3-2】
【0113】
【表3-3】
【0114】
【表4-1】
【0115】
【表4-2】
【0116】
これらのデータは、より高いT値、すなわち、125℃以上を有するカルボキシレート官能化セルロース組成物が、バイオ系ミクロスフェアを製造するために使用することができることを明らかにする。より低いTのカルボキシレート官能化セルロース材料は、ミクロスフェアの低収率、またはより不十分な品質のミクロスフェアをもたらす傾向がある。また、実施例31および32に関して、非カルボキシレート官能化セルロースの使用はまた、不十分な膨張特性を有するミクロスフェアをもたらす。
【0117】
図面に幾つかの代表的試料の顕微鏡写真を示す。図2~4は、良好なミクロスフェア膨張特性を示した試料の実施例(それぞれ、実施例40、12および4)を示す。図5および6はミクロスフェアの形成が明白であった試料を示すが、膨張特性または試料品質は不十分であった(それぞれ、実施例47および32)。
【0118】
図5および6において、例えば、より大きいミクロスフェアのみが膨張するように見え、ミクロスフェアの膨張が一貫しないのは明白である。
【0119】
実施例22~25の膨張性質をそれらの調製の直後、また1カ月および4カ月後に評価した。表5に結果を示し、膨張性能を実質上喪失せずにミクロスフェアを数カ月間保管することができることは強調される。
【0120】
【表5】
【0121】
表6は、Malvern Mastersizer 2000デバイスを使用して集めた、膨張前のミクロスフェアの光散乱データを示す。
【0122】
【表6】
【0123】
表7は、顕微鏡検査および画像解析に基づく膨張ミクロスフェアの特性データを示す。
【0124】
【表7】
【0125】
表8~9は、ポリマーのブレンドから製造したミクロスフェアについてのデータ(実施例48~55)を示す。すべての事例において、使用した溶媒は、酢酸エチルおよび酢酸メチル各5.0gの混合物であった。成功裡に膨張性ミクロスフェアを得た。
【0126】
【表8】
【0127】
Levamelt(商標)900は、Arlanxeo Deutschland GmbHからの、90重量%の酢酸ビニル含有率を含む、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーである。Tは21℃である。
【0128】
PVPVAは、イソプロパノール中の溶液としてAldrichから得られたポリ(ビニルピロリドンco-酢酸ビニル)である。分子量、Mは約13000である。測定したT値は73℃であった。使用の前に、乾燥することにより、イソプロパノールを除去して粉末を形成した。
【0129】
PPCは、50000の平均分子量、Mを有するSigma Aldrichから得られたポリプロピレンカルボネートである。
【0130】
PCLは、80000の平均分子量Mを有するSigma Aldrichから得られたポリカプロラクトンである。
【0131】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】