(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】抗体薬物複合体及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20220111BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220111BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20220111BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220111BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K47/65
A61K47/54
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P37/02
A61P31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525570
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2019112663
(87)【国際公開番号】W WO2021022678
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】201910723947.8
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463064
【氏名又は名称】煙台邁百瑞国際生物医薬股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MabPlex International Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 60, Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China (Shandong) Pilot Free Trade Zone, 264006, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 楽楽
(72)【発明者】
【氏名】黄 長江
(72)【発明者】
【氏名】孫 友祥
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗娜
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA22
4C085AA23
4C085AA25
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB36
4C085DD52
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、1つ又は複数のシステイン残基又はシステイン誘導体残基を薬物連結用担体として、抗体の限定される結合部位で1つ又は複数の薬物分子を同時にカップリングすることにより、より高いペイロードを有し、毒性の低い薬物を選択してADC製品を調製でき、大きな治療域のADC製品が得られる。さらに、複数の薬物分子を1つの連結部位でカップリングすることができるため、同一のDAR値を有する抗体薬物複合体を調製する場合には、本発明の方法により得られたADC製品は、より良好な均一性を有する。また、生産に使用する抗体の量も大幅に削減できるため、生産コストを効果的に削減できる。本発明の方法によって調製される抗体薬物複合体は、同一の部位で1つの薬物分子のみを連結することができる抗体薬物複合体と比較して、カップリングされる薬物分子の全量が大幅に減少される場合には、依然として腫瘍細胞に対して同じ阻害効果または殺傷効果を発揮することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)~(IV)で示される抗体薬物複合体。
【化1】
(式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
B
1、B
2、B
3、......、B
nは、システイン残基又はシステイン誘導体残基であり、同一でも異なっていてもよく、B
1とB
2、B
2とB
3、……、B
n-1とB
nは、脱水縮合により形成されたペプチド結合によって連結され、
L
1、L
2、L
3、L
4、......、L
n+1は、任意の連結ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、前記L
1は、B
1におけるアミノ基末端に共有結合し、前記L
2とB
1、L
3とB
2、L
4とB
3、……、L
n+1とB
nは、メルカプト基によって共有結合され、前記L
2とD
1、L
3とD
2、L
4とD
3、……、L
n+1とD
nは、共有結合し、
D
1、D
2、D
3、……、D
nは、任意の活性薬物ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
Zは、任意の基であり、式(I)におけるB
1のカルボニル基又は式(II)におけるB
2のカルボニル基又は式(III)におけるB
3のカルボニル基又は式(IV)におけるB
nの
カルボニル基に共有結合し、
nは、4以上の整数であり、活性薬物ユニットが連結されている分岐の数を表し、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。)
【請求項2】
前記B
1、B
2、B
3、......、B
nの構造は、それぞれ、式(V)で示される、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【化2】
(式中、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。)
【請求項3】
前記Zは、
【化3】
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
前記抗体薬物複合体は、式(VI-1)~(VI-5)で示される構造を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【化4】
【化5】
(式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
L
1、L
2、L
3、L
4、L
5は、任意の連結ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
D
1、D
2、D
3、D
4は、任意の活性薬物ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。)
【請求項5】
前記L
1は、抗体のアミノ残基又はメルカプト残基に共有結合し、好ましくは、前記L
1は、抗体上のメルカプト残基に共有結合し、より好ましくは、前記L
1は、抗体の鎖間ジスルフィド結合が切断された後に形成されたメルカプト残基に共有結合している、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項6】
前記L
1、L
2、L
3、L
4、……、L
n+1は、切断可能なリンカー、切断可能なリンカーの組み合わせ又は切断不可能なリンカーである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項7】
前記切断可能なリンカーは、ペプチドユニット及びポリスルフィド結合を含み、前記ペプチドユニットは、2~20個のアミノ酸を含み、好ましくは、前記ペプチドユニットは、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれ、前記ポリスルフィド結合は、2~8個の硫黄原子を含み、好ましくは、前記ポリスルフィド結合は、ジスルフィド結合(-S-S-)、トリスルフィド結合(-S-S-S-)、テトラスルフィド結合(-S-S-S-S-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項6に記載の抗体薬物複合体。
【請求項8】
前記L
1は、以下の構造を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【化6】
【請求項9】
前記L
2、L
3、L
4、……、L
n+1は、以下の構造を含む、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【化7】
【請求項10】
前記抗体又はその機能的結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fv(「scFv」)、二重抗体、線状抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、又は抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質を含み、好ましくは、前記抗体は、ヒト化モノクローナル抗体又は完全ヒト抗体である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項11】
前記抗体は、IgG抗体又はその機能的結合フラグメントであり、さらに好ましくは、前記抗体は、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4である、ことを特徴とする請求項10に記載の抗体薬物複合体。
【請求項12】
前記活性薬物ユニットは、細胞毒性分子、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患治療薬、抗炎症薬又は感染症治療薬である、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項13】
前記細胞毒性分子は、微小管阻害薬又はDNA損傷剤を含むが、これらに限定されなく、さらに好ましくは、前記微小管阻害薬は、ドラスタチン(dolastatin)及オーリスタチン(auristatin)類の細胞毒性分子、メイタンシン(maytansine)類の細胞毒性分子を含むが、これらに限定されなく、前記DNA損傷剤は、カリケアミシン(calicheamicin)類、デュオカルマイシン(duocarmycin)類、アントラマイシン誘導体PBD、カンプトテシン(camptothecins)及カンプトテシン誘導体、SN-38を含むが、これらに限定されなく、さらに好ましくは、前記オーリスタチン(auristatin)類の細胞素分子は、MMAE又はMMAF又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されなく、前記メイタンシン類の細胞毒性分子は、DM1、DM4又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されなく、さらに好ましくは、前記細胞毒性分子は、以下の構造、
【化8】
であることを特徴とする請求項12に記載の抗体薬物複合体。
【請求項14】
前記抗体薬物複合体の構造は、以下の通りである、ことを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【化9】
(式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。)
【請求項15】
有効量の請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物、及び薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体の、がん治療薬の調製における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品分野に関し、具体的には、1つ又は複数のシステイン残基又はシステイン誘導体残基を薬物連結用担体として形成された抗体薬物複合体及びその応用に関し、前記薬物連結用担体は、必要に応じて抗体の限定される結合部位で1つ又は複数の薬物分子を同時に複合化することができる。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)とは、化学的リンカー(Linker)を介して生物学的に活性である薬物(Drug)と抗体(Antibody)を連結してなるバイオ医薬品を意味する。ADCは、精密誘導兵器システムのようなものであり、そのうち、生物活性のある薬が抗体の誘導の下で殺傷力を持つ弾薬として使用され、病気の細胞を正確に攻撃する。従って、ADCは、細胞毒性薬分子の高効率と抗体の高標的性という2つの利点を兼ね備える。2019年7月までに、世界で承認されている抗体薬物複合体は6つだけである(表1)。
【0003】
【0004】
抗体上で選択された結合部位の非一意性及び結合反応の複雑さのために、実際、最終的に得られたADC製品は、抗体に結合された数が異なる薬物、異なる部位を有するADC混合物であり、ADC薬物の調製の不均一性は、薬物の製造と品質管理に大きな課題をもたらす。製品の均一性を考えると、重要な指標であるDAR値(drug-antibody ratio、薬物抗体比)、即ち、単位数の抗体で運ぶことができる薬物分子の数である。平均DAR値が小さすぎると、抗体で運ぶ薬物分子が少なすぎ、全体的な有効性に影響を及ぼす。平均DAR値が大きすぎると、抗体で運ぶ薬物分子が多すぎ、ADC全体が不安定になり、薬物動態パラメータが変化し、血漿クリアランスの増加、半減期の短縮、及び全身毒性の増加につながる可能性がある。
【0005】
現在、ADCには、アミンカップリング、チオールカップリング、架橋カップリング(cross-link)という3つの典型的なカップリング形態が含まれる。
アミンカップリングは、薬物がリンカーによって抗体のリジン(Lys)残基にカップリングするものである。第1世代ADC医薬品であるMylotargは、アミンカップリングの形態を使用するが、IgGには100近くのリジンが含まれているため、カップリングの位置は、抗体の軽鎖及び重鎖での40近くの露出したリジン残基にある可能性があり、また、リジンによってカップリングすると各抗体に複数の異なる数の小分子薬物がカップリングするので、アミンカップリングにより得られたADC医薬品は、非常に不均質に混合し、製品の均一性が非常に悪く、薬物のPK/PD及び治療時間域に深刻な影響を及ぼす(http://www.sohu.com/a/277791166_464404を参照)。
チオールカップリングは、最初に抗体の鎖間ジスルフィド結合を開いて遊離システイン(Cys)残基を形成し、次に、システイン残基とペアリングできるリンカー-薬物複合体とカップリングするものである。IgGには4対の鎖間ジスルフィド結合しかないため、すべての鎖間ジスルフィド結合が開いた後に8つの遊離システイン残基が形成されるので、単一のチオールカップリングによって形成されるADCの平均DAR値は0~8であり、チオールカップリングは各抗体に結合される数をより適切に制御できるが、鎖間ジスルフィド結合の切断は抗体の安定性を大幅に低下させる。
【0006】
架橋カップリングは、チオールカップリングに基づいて開発された新しいカップリング方法であり、チオールカップリングと同様に、まず、抗体中の鎖間ジスルフィド結合を開いて2つの遊離システイン残基を形成し、その後、さらにこれらの2つの遊離システイン残基と同時にペアリングするものである。1つの抗体あたり4対の鎖間ジスルフィド結合しかないため、鎖間ジスルフィド結合がすべて開いた後、8つの遊離システイン残基を形成するので、架橋カップリングによって形成されるADCの平均DAR値は、0~4であり、チオールカップリングと比較して、架橋カップリングは、製品の均一性をよりよく制御できるだけでなく、カップリングされた抗体の安定性を大幅に向上させることもできる。しかし、架橋カップリング法によるDAR値は、最大4であり、つまり、1つの抗体あたり最大で4つの薬物がカップリングされるだけであり、腫瘍細胞の表面にある抗原の数が限られているため、効果的なADC活性に必要な抗原発現レベルは、異なる抗原特性によって変化する。ADCは、致死量の細胞毒性薬を確実に送達するために、少なくとも104個の抗原/細胞を必要とする。理想的には、ADCの抗体部分の標的となる抗原は、腫瘍細胞の表面に均一に発現し、コピー数が多い(>105/細胞)必要がある。腫瘍細胞の表面には、通常、限られた数の抗原しかなく(約5000~106個の抗原/細胞)、ADCの平均DARは、3.5~4であり(例えば、Brentuximab vedotinの平均DAR値は4であり、Trastuzumab emtansineの平均DAR値は3.5である。)、腫瘍細胞に送達される薬剤の量が非常に少ないため、腫瘍細胞に対する薬効が低く、これは、ADCの臨床的失敗の主な理由の1つと考えられている。
【0007】
腫瘍細胞の表面には限られた数の抗原しかないため、抗体によって運ばれる限られた数の小分子薬物が腫瘍細胞を効果的に殺すことができるようにするために、特に強い毒性を持つ小分子薬物が臨床診療でよく使用されている。現在、ADCで使用されている小分子薬物には、主にauristatin、メイタンシン(maytansine)、カリケアミシン(calicheamicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)などがある。これらの小分子薬物は、従来の化学療法薬と比較して、癌細胞に対してより強い殺傷効果があり、通常、標的細胞を殺すことができる平均用量は4~6分子である。これらの毒性が特に強い小分子薬物は、生体内で標的から外れると、患者にとって致命的となる可能性があり、それ以外は、これらの小分子薬物の毒性が特に強いため(例えば、多くの細胞に対するDM1のIC50は、約10-11mol/Lであり、DM4のIC50は、約10-12mol/Lであり(文献1:Widdison WC、 Wilhelm SD、 Cavangh EE、 et al. Semisynthetic maytansine analogues for the targeted treatment of cancer [J]. J Med Chem、 2006、 49: 4392-4408;文献2:Lambert JM. Antibody-maytansinoid conjugates: a new strategy for the treatment of cancer [J]. Drugs Future、 2010、 35: 471-480.)、MMAEのIC50は、約10-11~10-9mol/Lである。)、オフターゲットおよび時期尚早の薬物放出が発生した場合、患者に大きなリスクがある。FDAは、承認申請が受理されている20のADC研究新薬(invesligational new drugs、IND)の包括的な分析を実施し、ADC薬の動物に対する毒性は、主に造血系毒性、肝臓毒性および生殖毒性であり、部分的に皮膚毒性および腎毒性を有し、その中で造血系、肝臓および生殖系の毒性は、小分子細胞毒薬に直接関連する(文献3:Saber H、Leighton JK. An FDA oncology analysis of antibody- drug conjugates[J]. ReguL Toxicol Pharmacol、2015、71(3):444-452)。毒性の低い小分子薬物を選ぶ場合には、効果的に負荷されている小分子薬物の数は低すぎるため、発生した薬効が低すぎ、さらに、臨床的な失敗をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は、さらに多い活性ユニット(Drug)をカップリングすることができる新規な抗体薬物複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、以下の通りである。
本発明は、式(I)~(IV)で示される抗体薬物複合体を提供する。
【0010】
【0011】
【0012】
式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
B1、B2、B、……、Bnは、システイン残基又はシステイン誘導体残基であり、同一でも異なっていてもよく、B1とB2、B2とB3、……、Bn-1とBnは、脱水縮合により形成されたペプチド結合によって連結され、
L1、L2、L3、L4、……、Ln+1は、任意の連結ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、前記L1とB1のアミノ基末端は、共有結合し、前記L2とB1、L3とB2、L4とB3、……、Ln+1とBnは、メルカプト基を介して共有結合し、前記L2とD1、L3とD2、L4とD3、……、Ln+1とDnは、共有結合し、
D1、D2、D3、......、Dnは、任意の活性薬物ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
Zは、式(I)におけるB1のカルボニル基又は式(II)におけるB2のカルボニル基
又は式(III)におけるB3のカルボニル基又は式(IV)におけるBnのカルボニル基に共
有結合している任意の基であり、
nは、4以上の整数であり、活性薬物ユニットが連結されている分岐の数を表し、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。
【0013】
さらに、前記B1、B2、B3、......、Bnの構造は、それぞれ式(V)で示される。
【0014】
【0015】
式中、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。
さらに、前記Zは、
【0016】
【0017】
さらに、前記抗体薬物複合体は、式(VI-1)~(VI-5)で示される構造を有する。
【0018】
【0019】
【0020】
式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
L1、L2、L3、L4、L5は、任意の連結ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
D1、D2、D3、D4は、任意の活性薬物ユニットであり、且つ互いに独立し、同一でも異なっていてもよく、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。
【0021】
さらに、前記L1は、抗体上のアミノ残基又はメルカプト残基に共有結合し、好ましくは、前記L1は、抗体上のメルカプト残基に共有結合し、より好ましくは、前記L1は、抗体の鎖間ジスルフィド結合が切断された後に形成したメルカプト残基に共有結合する。
さらに、前記L1、L2、L3、L4、……、Ln+1は、切断可能なリンカー、切断可能なリンカーの組み合わせ又は切断不可能なリンカーである。
さらに、前記切断可能なリンカーは、ペプチドユニット及びポリスルフィド結合を含み、前記ペプチドユニットは、2~20個のアミノ酸を含み、好ましくは、前記ペプチドユニットは、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれ、前記ポリスルフィド結合は、2~8個の硫黄原子を含み、好ましくは、前記ポリスルフィド結合は、ジスルフィド結合(-S-S-)、トリスルフィド結合(-S-S-S-)、テトラスルフィド結合(-S-S-S-S-)から選ばれる。
【0022】
幾つかの具体的な実施例では、前記L1は、以下の構造から選ばれる。
【0023】
【0024】
幾つかの具体的な実施例では、前記L2、L3、L4、……、Ln+1は、以下の構造から選ばれる。
【0025】
【0026】
さらに、前記抗体又はその機能的結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fv(「scFv」)、二重抗体、線状抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、又は抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質を含み、好ましくは、前記抗体は、ヒト化モノクローナル抗体又は完全ヒト抗体である。
さらに、前記抗体は、IgG抗体又はその機能的結合フラグメントであり、さらにより好ましくは、前記抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。
【0027】
さらに、前記活性薬物ユニットは、細胞毒性分子、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患治療薬、抗炎症薬又は感染症治療薬である。
さらに、前記細胞毒性分子は、微小管阻害薬又はDNA損傷剤を含むが、これらに限定されなく、さらに好ましくは、前記微小管阻害薬は、ドラスタチン(dolastatin)及びオーリスタチン(auristatin)類の細胞毒性分子、メイタンシン(maytansine)類の細胞毒性分子を含むが、これらに限定されず、前記DNA損傷剤は、カリケアミシン(calicheamicin)類、デュオカルマイシン(duocarmycin)類、アントラマイシン誘導体PBD、カンプトテシン(camptothecins)及びカンプトテシン誘導体、SN-38を含むが、これらに限定されず、さらに好ましくは、前記オーリスタチン(auristatin)類の細胞毒性分子は、MMAE又はMMAF又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されず、前記メイタンシン類の細胞毒性分子は、DM1、DM4又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されず、さらに好ましくは、前記細胞毒性分子は、以下の分子を含む。即ち
【0028】
【0029】
さらに、前記抗体薬物複合体の構造は、以下の通りである。即ち、
【0030】
【0031】
式中、
Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8から選ばれる。
【0032】
本発明は、さらに、有効量の上記のいずれか1つに記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩又は溶媒和物、及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明は、さらに、上記のいずれか1つに記載の抗体薬物複合体の、がん治療薬の調製における用途を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る抗体薬物複合体は、1つ又は複数のシステイン残基又はシステイン誘導体残基を薬物連結用担体として、抗体の限定される結合部位に1つ又は複数の薬物を同時にカップリングすることにより、より高いペイロード(payload)を有する抗体薬物複合体を容易に調製することができる。理論的には、より高いペイロードのADCを調製できるため、選択され得る、カップリングされる薬物の範囲も広くなり、それにより、毒性の低い薬物を選択してADC製品を調製し、大きな治療域のADC製品が得られる。さらに、複数の薬物分子を1つの連結部位でカップリングすることができるため、同一のDAR値を有する抗体薬物複合体を調製する場合には、本発明の方法により得られたADC製品は、より良好な均一性を有する。また、生産に使用する抗体の量も大幅に削減できるため、生産コストを効果的に削減できる。別に、実験において、本発明の方法によって調製される抗体薬物複合体は、同一の部位で1つの薬物分子のみを連結する抗体薬物複合体よりも、カップリングされる薬物分子の全量が大幅に減少される場合には、依然としても腫瘍細胞に対して同じ抑制効果または殺傷効果をもたらすこともできることを予想外に発見した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
明細書の様々な側面に関連する様々な用語は、明細書及び特許請求の範囲全体で使用されている。特に明記しない限り、そのような用語は、当技術分野においてそれらの通常の意味を有する。その他の具体的に定義された用語は、本明細書で提供されている定義と一致ものと理解する必要がある。
本明細書で使用される「1つ」、「1種」及び「前記」という用語は、標準的な慣習に従って使用され、文脈上別段の指示がない限り、1つまたは複数を意味する。従って、例えば、「抗体薬物複合体」への言及は、2つ又はそれ以上の抗体薬物複合体の組み合わせなどを含む。
本明細書において「含む」という言葉を使用して説明する場合以外は、さらに「...からなる」及び/又は「基本に...からなる」という言葉で説明する類似の場合があることを理解すべきである。
本発明の広い範囲に示されている数値範囲およびパラメータの近似値であるが、具体的な実施例に示されている数値は、可能な限り正確に記録されている。しかしながら、いずれの値にもそれぞれの測定値に存在する標準偏差によって引き起こされる一定のエラーが本質的に含まれている。また、本明細書に開示されるすべての範囲は、そこに含まれるすべてのサブ範囲をカバーすると理解されるべきである。例えば、記載されている「1~10」という範囲は、最小値1から最大値10まで(エンドポイントを含む)のすべてのサブ範囲、つまり、最小値1又はそれ以上から始まるすべてのサブ範囲、例えば、1~6.1、及び最大値10又はそれ以下まで終わるすべてのサブ範囲、例えば、5.5~10を含むことを理解すべきである。また、「本明細書に組み込まれる」と呼ばれる参照は、その全体が組み込まれるものとして理解されるべきである。
【0035】
本発明で使用される
とは、
を含む基がここで化学結合を介して他の基と結合していることを意味する。
本発明に係る連結ユニット、リンカーは、交換可能に使用することができ、本発明に係る活性なユニット、薬物、毒物は、交換可能に使用することができる。
本発明に係る「抗原」という用語とは、免疫応答を誘発するか、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合され得る任意の分子を指す。免疫応答には、抗体産生又は特異的細胞の活性化、あるいはそれらの両方が含まれる。当業者は、ほとんどすべてのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立つことができることを容易に理解する。一般に、抗原は内因的に発現することができ、即ち、ゲノムDNAから発現するか、又は組換え的に発現するか、又は化学的に合成することができる。本発明に係る「抗原」とは、特にこれらの腫瘍関連抗原を指し、これらの腫瘍関連抗原は、業界でよく知られており、抗体調製法及び当業界でよく知られている情報によって調製することができる。がんの診断及び治療に使用できる効果的な細胞レベルの標的化合物を開発するために、研究者は膜貫通型又は他の腫瘍関連ペプチドを見つけようとする。これらの標的化合物は、1種又は複数種の癌細胞の表面に特異的に発現することができるが、1種又は複数種の非癌細胞の表面にはほとんど又はまったく発現していない。一般に、そのような腫瘍関連ペプチドは、非癌細胞の表面よりも、癌細胞の表面でより過剰に発現している。そのような腫瘍関連因子を確認すると、抗体ベースのがん治療の標的特異性を大きく向上させることができる。腫瘍関連抗原は、以下の腫瘍関連抗原(1)~(36)を含むが、これらに限定されない。便宜上、当業界でよく知られている抗原関連情報には、名称、他の名称、遺伝子バンクのアクセッション番号を含む。次のようにマークが付けられる。腫瘍関連抗原に対応する核酸及びアミノ酸配列は、Genbankのような公開データベースで見つけることができる。抗体の標的として対応する腫瘍関連抗原は、すべてのアミノ酸配列の変異体及び相同体を含み、実際に確認された配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、又は95%の相同性を有するか、又は引用された腫瘍関連抗原配列に対して完全に同一の生物学的特性および特徴を有する。腫瘍関連抗原(1)~(37)は、以下の通りである。
【0036】
(1)BMPR1B(骨形成タンパク質受容体-IB型、Genbank受託番号NM_001203);
(2)E16(LAT1、SLC7A5、Genbank受託番号NM_003486);
(3)STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原、Genbank受託番号NM_012449);
(4)0772P(CA125、MUC16、Genbank受託番号AF361486);
(5)MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン、Genbank受託番号NM_005823);
(6)Napi3b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質担体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b、Genbank受託番号NM_006424);
(7)Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7回トロンボスポンジン反復(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B、Genbank受託番号AB040878);
(8)PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008016Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子、Genbank受託番号AY358628);
(9)ETBR(エンドセリンB型受容体、Genbank受託番号AY275463);
(10)MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315、Genbank受託番号NM_017763);
(11)STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質、Genbank受託番号AF455138);
(12)TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4、、Genbank受託番号NM_017636);
【0037】
(13)CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌由来増殖因子、Genbank受託番号NP_003203又はNM_003212);
(14)CD21(CR2(補体受容体2)又はC3DR(C3d/エプスタインバーウイルス受容体)又はHs.73792、Genbank受託番号M26004);
(15)CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29、Genbank受託番号NM_000626);
(16)FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C、Genbank受託番号NM_030764);
(17)HER2(ErbB2、Genbank受託番号M11730);
(18)NCA(CEACAM6、Genbank受託番号M18728);
(19)MDP(DPEP1、Genbank受託番号BC017023);
(20)IL20Rα(IL20Ra、ZCYTOR7、Genbank受託番号AF184971);
(21)Brevican(BCAN、BEHAB、Genbank受託番号AF229053);
(22)EphB2R(DRT、ERK、Hek5、EPHT3、Tyro5、Genbank受託番号NM_004442);
(23)ASLG659(B7h、Genbank受託番号AX092328);
(24)PSCA(前立腺幹細胞抗原前駆体、Genbank受託番号AJ297436);
(25)GEDA(Genbank受託番号AY260763);
(26)BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3、Genbank受託番号AF116456);
(27)CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム、Genbank受託番号AK026467);
(28)CD79a(CD79A、CD79α、免疫グロブリン関連アルファ、Igベータ(CD79B)と共有結合により相互作用し、IgM分子と表面上で複合体を形成し、B細胞分化に関与するシグナルを伝達するB細胞特異的タンパク質、Genbank受託番号NP_001774.1);
【0038】
(29)CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、CXCL13ケモカインによって活性化され、リンパ球遊走及び体液性防御において機能し、HIV-2感染ならびに恐らくはAIDS、リンパ腫、骨髄腫、及び白血病の発症において役割を果たすGタンパク質結合受容体、Genbank受託番号NP_001701.1);
(30)HLA-DOB(ペプチドと結合し、CD4+Tリンパ球にそれらを提示するMHCクラスII分子(Ia抗原)のベータサブユニット、Genbank受託番号NP_002111.1);
(31)P2X5(プリン受容体P2Xリガンド依存性イオンチャネル5、細胞外ATPによって開閉されるイオンチャネル、これはシナプス伝達及び神経発生に関与する可能性があり、不足すると特発性排尿筋不安定の病態生理の一因となる場合がある。Genbank受託番号NP_002552.2);
(32)CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2、Genbank受託番号NP_001773.1);
(33)LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチ反復(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質、これはB細胞活性化及びアポトーシスを制御し、機能喪失は全身性エリテマトーデスを有する患者における疾患活性の増加と関連する。Genbank受託番号NP_005573.1);
(34)FcRH1(Fc受容体様タンパク質1、C2型Ig様及びITAMドメインを含有する免疫グロブリンFcドメインの推定受容体、これはBリンパ球分化において役割を有する可能性がある。Genbank受託番号NP_443170.1);
(35)IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2、B細胞発生及びリンパ腫形成において可能な役割を有する推定免疫受容体、転座による遺伝子の制御解除が一部のB細胞悪性腫瘍で生じる。Genbank受託番号NP_112571.1);
(36)TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン、成長因子のEGF/ヘレグリンファミリー及びフォリスタチンに関連する。Genbank受託番号AF179274);
(37)その他相関的抗原。
【0039】
本発明に係る「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、様々な抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない。通常、抗体は、ジスルフィド結合によって互いに連結された少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖、又はその抗原結合分子を含む。各重鎖には、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3という3つの定常ドメインを含む。各軽鎖には、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、CLという恒定構造域を含む。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保守的な領域が点在する。各々の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、3つのCDR及び4つのFRを含み、アミノ基末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介できる。別段の指定がない限り、本発明における「抗体」という用語は、インタクトな抗体と競合的に特異的結合する、インタクトな免疫グロブリン又はその抗原結合部分も含む。抗原結合部分は、組換えDNA技術、インタクトな抗体の酵素的または化学的切断により生成することができる。抗原結合部分は、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二価抗体、三価抗体、四価抗体、及びポリペプチドと結合する特異的抗原を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。本発明に係る「抗体」という用語は、さらに、天然および非天然(組換え産生)抗体の両方、ヒト及び非ヒト抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む。)、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む四量体抗体、抗体軽鎖モノマー、抗体重鎖モノマー、抗体軽鎖ダイマー、抗体重鎖ダイマー、抗体軽鎖-抗体重鎖ペア、細胞内抗体(例えば、Stocks 、(2004)Drug DiscoveryToday 9(22):960-66を参照)、抗体融合タンパク質(この用語は抗体-薬物コンジュゲートを含み、本明細書で「抗体コンジュゲート」と呼ぶこともある)、ヘテロコンジュゲート抗体(heteroconjugate antibody)、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)、ラクダ抗体、アフィボディ(affybody)、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗-抗Id抗体)、ミニ抗体、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と呼ぶこともある)及びその抗原結合断片を含む。
本発明に係る「機能性断片」という用語は、抗体フラグメントがそれが由来する抗体の重鎖又は軽鎖可変領域の部分配列からなるか、又はそれらを含むことを意味し、前記部分配列は、その由来する抗体と同じ結合特異性および十分な親和性を保持するのに十分であり、好ましくは、少なくともその由来する抗体の親和性の1/100であり、より好ましくは、少なくとも1/10である。このような機能的断片は、少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは、その由来する抗体配列の10、15、25、50及び100個の連続するアミノ酸を含む。
【0040】
「ヒト化抗体」という用語は、抗体において非ヒト抗体に由来するCDR領域を含み、且つその抗体分子の他の部分が1種(又は複数種)のヒト抗体に由来する抗体を指す。しかも、結合親和性を保持するために、フレームワーク(FRと称される)領域のいくつかの残基を修飾することができる(Jones et al.、Nature、321:522-525、1986;Verhoeyen et al.、Science、239:1534-1536、1988;Riechmann et al.、Nature、332:323-327、1988)。本発明に係るヒト化抗体又はその断片は、当業者に知られている技術によって調製することができる(例えば、文献Singer et al.、J.Immun.150:2844-2857、1992;Mountain et al.、Biotechnol.Genet.Eng.Rev.、10:1-142、1992、又はBebbington et al.、Bio/Technology、10:169-175、1992を参照)。
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がある種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列はマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来するものを指す。本発明によるキメラ抗体又はその断片は、遺伝子組換え技術を使用して調製することができる。例えば、前記キメラ抗体は、プロモーター及び非ヒト、特に本発明によるマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列、及びヒト抗体の定常領域をコードする配列を含む組換えDNAをクローニングすることによって作製することができる。このような組換え遺伝子によってコードされる本発明に係るキメラ抗体は、例えば、マウス-ヒトキメラであり、その抗体の特異性は、マウスDNAに由来する可変領域によって決定され、且つそのアイソタイプは、ヒトDNAに由来する定常領域によって決定される。キメラ抗体を作製する方法は、例えば、文献Verhoeyn et al.(BioEssays、8:74、1988)を参照することができる。
「モノクローナル抗体」という用語は、単一の分子組成を有する抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0041】
幾つかの具体的な実施例では、本発明に係る抗体は、モロリズマブ(Muromomab)-CD3、アブシキシマブ(Abciximab)、リツキシマブ(Rituximab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、パリビズマブ(Palivizumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、エタネルセプト(Etanercept)、バシリキシマブ(Basiliximab)、ゲムツズマブ(gemtuzumab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、イブリツモマブ(Ibritumomab)、アダリムマブ(Adalimumab)、Alefacept、オマリズマブ(Omalizumab)、エファリズマブ(Efalizumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、セツキシマブ(Cetuximab)、ABT-806、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、パニツムマブ、エクリズマブ(EcμLizumab)、Rilonacept、セルトリズマブ(Certolizumab)、ロミプロスチム(Romiplostim)、AMG-531、ゴリムマブ(Golimumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、ABT-874、ベラタセプト(Belatacept)、ベリムマブ(Belimumab)、Atacicept、抗CD20抗体、カナキヌマブ(Canakinumab)、トシリズマブ(Tocilizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、HuMax CD20、Trimelimumab、トレメリムマブ(tremelimumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、IDEC-114、イノツズマブ(Inotuzumab)、HuMax EGFR、アフリベルセプト(Aflibercept)、HuMax-CD4、テプリズマブ(Teplizumab)、Ontuxizumab、カツマキソマブ(Catumaxomab)、抗EpCAM抗体IGN101、Adecatumumab、オレゴボマブ(Oregovomab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、Girentuximab、デノスマブ(Denosumab)、バピネオズマブ (Bapineuzumab)、モタビズマブ(Motavizumab)、エファングマブ(efumgumab)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)、LY2469298、及びラキシバクマブ(Raxibacumab)を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明に係る「連結ユニット」という用語とは、タンパク質/抗体分子および薬物分子とそれぞれ反応することができる二官能性または多官能性を有する分子を指し、したがって、「ブリッジ」としてタンパク質/抗体と薬物とを連結される。細胞内での薬物放出のメカニズムによれば、「リンカー」又は「抗体薬物複合体のリンカー」は、切断不可能なリンカー(non-cleavable linker)及び切断可能なリンカー(cleavable linker)に分類することができる。
切断不可能なリンカーは、比較的安定したリンカーであり、その構造は生体内環境で分解及び破壊することが困難である。切断不可能なリンカーを含む抗体薬物複合体である場合には、その薬物放出メカニズムは、複合体が抗原に結合して細胞によってエンドサイトーシスされた後、抗体はリソソームで酵素的に消化され、小分子薬物とリンカーと抗体アミノ酸残基からなる活性分子が放出される。それによりもたらす薬物分子の構造変化は、その細胞毒性を低下させていないが、活性分子は帯電しているため(アミノ酸残基)、隣接する細胞に浸透することができない。従って、このような活性薬物は、標的抗原を発現しない腫瘍細胞(抗原54性細胞)に隣接する腫瘍細胞を殺すことができない(傍観者効果、bystander effect)(Bioconjugate Chem.2010、21、5-13)。通常の切断不可能なリンカーは、例えば、MCリンカー及びMCCリンカーなどがある。
【0043】
【0044】
切断可能なリンカーは、その名称に示すように、標的細胞内で切断され、活性薬物(小分子薬物自体)を放出することができる。切断可能なリンカーは、化学的に不安定なリンカーと酵素に不安定なリンカーという2つの主要なカテゴリに分類できる。
化学的に不安定なリンカーは、血漿と細胞質の特性の違いにより、選択的に切断されてもよい。このような特性には、pH、グルタチオン濃度などが含まれる。
pH感受性リンカーは、通常に酸切断リンカーと称される。このようなリンカーは、血液の中性環境下(pH 7.3~7.5)で相対的に安定するが、弱酸性のエンドソーム(pH 5.0~6.5)及びリソソーム(pH 4.5~5.0)内で加水分解される。第一世代の抗体薬物複合体は、そのようなリンカー、例えば、ヒドラゾン、カーボネート、アセタール、ケタール類を使用することは多い。酸断裂リンカーの限定される血漿安定性のために、そのようなリンカーによる抗体薬物複合体は、一般的に、短い半減期(2~3日)を有する。このような短い半減期は、新世代の抗体薬物複合体におけるpH感受性リンカーの応用をある程度制限している。
グルタチオン感受性リンカーは、ジスルフィド結合リンカーとも呼ばれる。薬物の放出は、細胞内でのグルタチオンの高濃度(ミリモル範囲)と血中のグルタチオンの比較的低濃度(マイクロモル範囲)の違いによって引き起こされる。腫瘍細胞については、特に、上記のように、その酸素含有量が少ないため、レダクターゼ活性が増加し、グルタチオン濃度が高くなる。ジスルフィド結合は熱力学的に安定しているため、血漿中での安定性が良好である。
【0045】
酵素に不安定なリンカー、例えば、ペプチドリンカーは、薬物放出をよりよく制御することができる。ペプチドリンカーは、リソソームプロテアーゼ、例えば、カテプシン(Cathepsin B)又はプラスミン(一部の腫瘍組織では、このような酵素の含有量が増加する)によって効果的に切断される。このようなペプチドリンカーは、細胞外の不適切なpHと血清プロテアーゼ阻害剤により、通常は細胞外でプロテアーゼが不活性になるため、血漿循環において非常に安定していると考えられている。高い血漿安定性と良好な細胞内切断選択性および有効性の観点から、酵素に不安定なリンカーは、抗体薬物複合体の切断可能なリンカーとして広く使用されている。典型的な酵素に不安定なリンカーは、例えば、vcリンカーなどがある。
【0046】
【0047】
自殺型リンカーは、一般的に、切断可能なリンカーと活性薬物の間に埋め込まれているか、又はそれ自体で切断可能なリンカーの一部である。自殺型リンカーの作用機序は、切断可能なリンカーが適切な条件下で切断された後に、自殺型リンカーが自発的に構造を再配列し、それに連結された活性薬物を放出することができる。通常の自殺型リンカーは、例えば、p-アミノベンジルアルコール類(PAB)などである。
【0048】
【0049】
本発明に係る「活性なユニット」という用語は、所望の生物学的活性を有し、本発明のコンジュゲートを調製するための反応性官能基を有する任意の化合物を広く指す。所望の生物学的活性には、ヒト又は他の動物の疾患の診断、治癒、緩和、治療、及び予防が含まれる。新薬の継続的な発見及び開発に伴い、これらの新薬も本発明の薬剤に含まれるべきである。具体的には、前記薬物は、細胞毒性薬物、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患治療薬、抗炎症薬又は感染症治療薬を含むが、これらに限定されない。より具体的には、前記薬物は、微小管阻害薬又はDNA、RNA損傷剤を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本発明に係る活性なユニットは、以下の化合物を含むが、これらに限定されない。
(a)エルロチニブ、ボルテゾミブ、フルベストラント、スーテント、レトロゾール、メシル酸イマチニブ、PTK787/ZK222584、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、AG1478、AG1571、チオテパ、シクロホスファミド、ブスルファン、インプロスルファン(Improsulfan)、ピポスルファン、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、ウレドーパ、エチレンイミン、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン、ブラタシン、ブラタシノン(Bullatacinone)、カンプトセシン、トポテカン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065、アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、KW-2189、CB1-TM1、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン、カリケアマイシンγ1、カリケアマイシンω1、ダイネマイシン、ダイネマイシンA、クロドロネート、エスペラマイシン、ネオカルジノスタチン発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン、モルホリノアドリアマイシン、シアノモルホリノアドリアマイシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームアドリアマイシン、デオキシドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、5-フルオロウラシル、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エトグルシド(etoglucid)、硝酸ガリウム、ヒドロキシカルバミド、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ポリサッカライド-K(Polysaccharide K)、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、T-2トキシン、シクロスポリンA、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、パクリタキセル、パクリタキセルベースのアルブミン工学ナノ粒子製剤、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、白金、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害薬RFS 2000、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物又は酸;
【0050】
(b)モノカイン、リンホカイン、伝統的なポリペプチドホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、肝細胞増殖因子、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤プロラクチン、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、ミューラー阻害物質、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、トロンボポイエチン、エリスロポイエチン、骨誘導因子、インターフェロン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、コロニー刺激因子(「CSF」)、マクロファージ-CSF、顆粒球-マクロファージ-CSF、顆粒球-CSF、インターフェロン(IL)、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、腫瘍壊死因子、TNF-α、TNF-β、ポリペプチド因子、LIF、kit リガンド、又はそれらの任意の組み合わせ;
【0051】
(c)ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、テタノスパスミン、ベロトキシン、コレラ毒素、アマニチン、アマニチン誘導体、α-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン誘導体、テトロドトキシン、ブレベトキシン、シガトキシン、ガストロトキシン、AM毒素、ツブリシン、ゲルダナマイシン、メイタンシン類化合物、カリケアマイシン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、メトトレキサート、ビンデシン、SG2285、ドラスタチン、ドラスタチン類似体、オーリスタチン、クリプトフィシン、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体及び代謝物、リゾマイシン、リゾマイシン誘導体、CC-1065、CC-1065類似体又は誘導体、デュオカルマイシン、エンジイン系抗生物質、エスペラミシン、エポチロン、Azonafide、アプリジン、トキソイド、又はそれらの任意の組み合わせ;
【0052】
(d)親和性リガンド、ここで、前記親和性リガンドは、基質、阻害剤、刺激剤、神経伝達物質、放射性同位元素、又はそれらの任意の組み合わせ;
(e)放射性標識化合物、32P、35S、蛍光色素、高電子密度化試薬、酵素、ビオチン、ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、ハプテン、免疫原性タンパク質、標的に対して相補的な配列を有する核酸分子、又はそれらの任意の組み合わせ;
(f)免疫調節化合物、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤および抗寄生虫剤、又はそれらの任意の組み合わせ;
(g)タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン、ナロキシフェン、LY117018、オナプリストン又はトレミフェン;
(h)4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、レトロゾール又はアナストロゾール;
(i)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロレリン、ゴセレリン又はトロキサシタビン;
(j)アロマターゼ阻害剤;
(k)プロテインキナーゼ阻害剤;
(l)脂質キナーゼ阻害剤;
(m)アンチセンスオリゴヌクレオチド;
(n)リボザイム;
(o)ワクチン;及び
(p)抗血管新生剤。
【0053】
本発明の幾つかの実施形態では、前記「活性なユニット」は、メイタンシン類化合物、V-ATPase阻害剤、アポトーシス促進剤、Be12阻害剤、McL1阻害剤、HSP90阻害剤、IAP阻害剤、mTOr阻害剤、微小管安定化剤、微小管不安定化剤、アウリスタチン(auristatin)、ドラスタチン(dolastatin)、MetAP(メチオニルアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRMlの核輸出阻害剤、DPPIV阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ミトコンドリアにおけるリン酸転移反応の阻害剤、タンパク質合成阻害剤、キナーゼ阻害剤、CDK2阻害剤、CDK9阻害剤、キネシン阻害剤、HDAC阻害剤、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター、DNA副溝結合剤、DHFR阻害剤、及びドラスタチンペプチド、ビタミンA前駆体、葉酸から選ばれる。
本発明の幾つかの実施形態では、前記「活性なユニット」は、細胞毒性薬物(例えば、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、アルカロイド)、免疫増強剤又は放射性同位素である。好ましくは、前記薬物は、アマニチン(amanitins)、アントラサイクリン(anthracyclines)、バッカチン(baccatins)、カンプトテシン(camptothecins)、セマドチン(cemadotins)、コルヒチン(colchicines)、コルセミド(colcimids)、コンブレタスタチン(combretastatins)、クリプトフィシン(cryptophycins)、ディスコデルモライド(discodermolides)、ドセタキセル(docetaxel)、アドリアマイシン(doxorubicin)、エキノマイシン(echinomycins)、エレウセロビン(eleutherobins)、エポチロン(epothilones)、エストラムスチン(estramustines)、レキシトロプシン(lexitropsins)、メイタンシン(maytansines)、メトトレキサート(methotrexate)、ネトロプシン(netropsins)、ピューロマイシン(puromycins)、リゾキシン(rhizoxins)、タキサン(taxanes)、チューブリシン(tubuLysins)、又はビンカアルカロイド(vinca alkaloids)から選ばれる。より好ましくは、前記「薬物」は、MMAD(モノメチルアウリスタチン D、Monomethyl auristatin D)及びその誘導体、MMAE(モノメチルアウリスタチン E、Monomethyl auristatin E)及びその誘導体、MMAF(モノメチルアウリスタチン F、Monomethyl auristatin F)及びその誘導体、メイタンシン誘導体DM1(Mertansine derivative M1)、メイタンシン誘導体DM4(Mertansine derivative M4)、デュオカルマイシン(Duocarmycine)及びその誘導体、カリケアミシン(Calicheamicin)及びその誘導体、PBDA(Pyrrolobenzodiazepines)、アドリアマイシン(Doxorubicin)、ビンカアルカロイド(Vinca Alkaloids)、Metrotrexate、ビンブラスチン(Vinblastine)、ダウノルビシン(Daunorubicin)及びその誘導体、ツブリシン(tubμLysins)及びその誘導体から選ばれる。
【0054】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、メイタンシン(maytansine)又はマイタンシノイド (maytansinoids)である。メイタンシン化合物は、微小管のチューブリン形成を阻害することにより、細胞増殖を阻害する(Science 1975、189、1002-1005;US 5208020)。マイタンシノイドは、メイタンシンの誘導体である。メイタンシン及びマイタンシノイドは、いずれも効率よい細胞毒性を持つが、主に腫瘍に対するそのような分子の選択性が低いため、がん治療の臨床応用には大きな制限がある。但し、それらは、そのような高細胞毒性により抗体薬物複合体における薬物部分の第一選択薬になる。以下、メイタンシン、マイタンシノイド 、及び抗体薬物複合体でよく使用されている3つのマイタンシノイドの分子構造を示す。
【0055】
【0056】
マイタンシノイド合成の主な原料は、メイタンシノール(maytansinol)であり、主にアンサマイシン(ansamitocins)の加水分解によって得られる。アンサマイシンは、発酵により調製することができる。アンサマイシン誘導体(WO 2012/061590)及びアラニルメイタンシノール(US 2012/0121615)は、抗体薬物複合体の薬物「弾頭」としても使用されることが報告されている。
【0057】
【0058】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、オーリスタチン(auristatins)のペプチド系薬物である。オーリスタチンのペプチド系薬物は、ドラスタチン 10(dolastatin 10)の類似体であり、後者は海洋軟体動物ウミウシから単離された生物学的に活性なポリペプチドである(US 7498298)。ドラスタチン10は、チューブリン(ビンクリスチンと同じ結合領域)に結合することにより、チューブリンの重合を阻害する。ドラスタチン10、オーリスタチンPE、オーリスタチンEは、いずれも線状ポリペプチドであり、4つのアミノ酸(それらのうち、3つのアミノ酸は、ドラスタチン類化合物に固有するものである。)及びC-末端のアミド基を含む。2つの代表的なオーリスタチン類化合物、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)は、いずれも抗体薬物複合体における薬物部分の第一選択薬である。
【0059】
【0060】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、Tubulysins類薬物である。Tubulysinsは、は粘液細菌から抽出された天然物の一種であり、チューブリンの重合を効果的に阻害できるため、抗有糸分裂活性を示し、その中で、Tubulysin Dが最も優れた活性を持つ。Tubulysin Dは、複雑なテトラペプチド化合物であり、その構造にO-アシル/N、O-アセタール官能基を含むため、酸性及びアルカリ性のいずれかの条件下でも不安定である。US2011/0021568及びUS 2013/0224228には、それぞれ、Tubulysinの一連の類似体であって、その構造に上記の不安定な官能基を除去するとともに、高い細胞活性を持つものを開示している。
【0061】
【0062】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、カリケアミシン(calichemicins)類薬物である。カリケアミシン類薬物は、抗腫瘍抗生物質であり、DNAの副溝に結合し、特定の部位でDNAの二重らせん構造を破壊することにより、細胞アポトーシスが引き起こされる。カリケアミシン類薬物は、in vitroでサブピコモルレベルの高活性を有するが、治療指数が低いため、臨床応用の可能性はない。しかしながら、それらは、この高活性により抗体薬物複合体の理想的な候補薬物(例えば、ゲムツズマブ オゾガマイシン及びInotuzumab Ozogamicin)になる。
【0063】
【0064】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、アドリアマイシン(doxorubicins)である。アドリアマイシンは、DNAの二重らせん構造に挿入してDNA複製をブロックすることができるため、化学療法薬として使用される。但し、アドリアマイシンの細胞毒性が低いため(ヒト癌細胞株の場合、50%阻害濃度は0.1~0.2マイクロモルであるが、抗体薬物複合体に使用される細胞毒性薬物の活性は、通常、サブナノモルレベルである。)、抗体薬物複合体へのその応用は普遍的ではない。
【0065】
【0066】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、ベンゾジピロール類抗生物質(duocarmycins、CC-1065など)及び他のシクロプロパピロロインドール-4-オン(cyclopropapyrroloind-4-one、CPI)誘導体である。このような化合物は、効果的なDNA副溝結合アルキル化剤である。シクロプロパベンジンドール-4-オン(cyclopropabenzindol-4-one、CBI)類似体は、より安定した化学構造、より高い生物活性を持ち、また、天然のCPIアルキル化サブユニットを含む親化合物よりも合成しやすい。代表的なCBI誘導体の1つは、フェノール性ヒドロキシル保護誘導体CBI(下図を参照)であり、プロドラッグの毒性が弱められ、且つ水溶性が増強されている。
【0067】
【0068】
ある特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolo[2,1-c][1,4]benzodi-azepines、PBDs)又はPBDダイマー(PBD dimers)である。PBDは、ストレプトマイセスが生産する天然物の一種であり、その独特な特徴は、プリン-グアニン-プリン配列で、DNA副溝に歪みのない共有結合付加物を形成できる。DNA配列を標的として制御するための小分子戦略の一部として、また、新規な抗癌及び抗菌薬としてのPBDの適用は、ますます注目を集めている(Biochemistry 2008、47、11818-11829)。柔軟な炭素鎖を使用して2つのPBDユニットのC8/C8’のヒドロキシル基を連結すると、得られたダイマーは、増強された生物活性を持つ(WO 2011/130616)。PBDダイマーは、配列選択性DNA損傷、例えば、その生物学的活性を主に担うと考えられる回帰性の5’-Pu-GATC-Py-3’鎖間架橋を形成すると考えられる。これらの化合物は、非常に効率よい細胞毒性薬であることが証明されており、抗体薬物複合体の候補薬として使用できる。
【0069】
【0070】
他の特定の実施例では、前記「活性なユニット」は、上記の種類のみに限定されず、抗体薬物複合体で使用できるすべての薬物も含む。
【0071】
本発明に係る「医薬組成物」という用語は、特定の目的を達成するために組み合わされる、少なくとも1つの薬物と、場合により薬学的に許容される担体または添加剤との組み合わせを意味する。幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、本発明の目的を達成するために共に機能することができる限り、時間及び/又は空間において分離された組み合わせを含む。例えば、医薬組成物に含まれる成分は、全体として対象に投与するか、又は個別に対象に投与することができる。医薬組成物に含まれる成分が対象に別々に投与される場合、前記成分は、同時にまたは順次に対象に投与され得る。好ましくは、前記薬学的に許容される担体は、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)などの等張塩溶液、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール又はポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、トリグリセリドである。使用される薬学的に許容される担体のタイプは、特に、本発明による組成物が経口、鼻腔、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与用に処方されるかどうかに依存する。本発明による組成物は、添加剤として湿潤剤、乳化剤または緩衝物質を含むことができる。
本発明の医薬組成物、ワクチン又は薬物製剤は、経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与などの任意の適切な経路によって投与することができる。
本発明に係る「有効量」という用語は、医学的疾患の症状または状態を改善または予防するのに十分な量を含む。特定の患者又は獣医学的被験者の有効量は、例えば、治療される状態、患者の一般的な健康状態、投与方法及び投与量、及び副作用の重症度などの要因に応じて変化させることができる。有効量は、有意な副作用又は毒性作用を回避する最大投与量又は投与スケジュールにすることができる。
【実施例】
【0072】
以下、具体的な実施形態により本発明をさらに説明する。これらの実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。以下の実施形態で特定の条件を指定しない実験方法は、通常、従来の条件または製造元が推奨する条件に従って実施され、具体的な供給源が記載されていない試薬は、市場で購入されている通常の試薬である。特に明記されていない限り、すべての百分率、比率、割合、又は部は、重量とするものである。
本発明に係る重量体積パーセントの単位は、当業者に周知であり、例えば、100mlの溶液中の溶質の重量を指す。
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての本分野および科学的用語は、当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載されたものと類似又は同等である任意の方法及び材料は、本発明の方法に適用することができる。本明細書に記載されている好ましい実施形態及び材料は、例示されたものだけである。
【0073】
実施例1 化合物1の調製
【0074】
【0075】
マレイミドヘキサン酸145.4mgをDMF 10mLに溶解させ、HATU 244.7mg及びDIPEA 226μLを加え、室温で撹拌した。MMAF 201.9mgをDMF 5mLに溶解させ、上記の反応系にゆっくりと滴下し、室温で16h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、製品(マレイミドヘキサノイル-MMAF、Mc-MMAF)90.3mg(収率36%)を得た。LC-MS :(M+H)+ 924.8、(M-H)- 923.2。
マレイミドヘキサノイル-MMAF 36.1mgをDMF 1.5mLに溶解させ、Cys-Cys 5.6mg及びDIPEA 2.1μLを加え、室温で3h撹拌し、さらに、Cys-Cys 1.1mgを加え、室温で2h撹拌した。6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステル17.7mg及びDIPEA 25μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物1 20.0mg(収率45%)を得た。LC-MS :(M+2H)2 + 1134.1、(M-2H)2- 1132.2。
【0076】
実施例2 化合物2の調製
【0077】
【0078】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 40.1mgをDMF 1.5mLに溶解させ、Cys-Cys-Cys 4.4mg及びDIPEA 2.1μLを加え、室温で2h撹拌し、さらに、Cys-Cys-Cys 1.8mgを加え、室温で2h反応させ、さらにCys-Cys-Cys 0.9mgを加え、室温で2h反応させた。6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステル 13.5mg及びDIPEA 21μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物2 23.1mg(収率49%)を得た。LC-MS:(M+3H)3 + 1648.4、(M-3H)3- 1646.3。
【0079】
実施例3 化合物3の調製
【0080】
【0081】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 31.6mgをDMF 2mLに溶解させた。Cys-Cys 3.9mg及びDIPEA 2.9μLを加え、室温で4h撹拌し、さらにCys-Cys 1.2mgを加え、室温で3h撹拌し、さらにCys-Cys 0.8mgを加え、室温で16h撹拌した。1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-チオグリコール酸 12.1mg及びTSTU 10.4mgを1.5mL DMFに溶解させ、DIPEA 17μLを加え、室温で2h撹拌した後、上記の反応系に添加し、室温で5h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物3 18.4mg(収率29%)を得た。LC-MS:(M+2H)2 + 1199.3、(M-2H)2- 1197.4。
【0082】
実施例4 化合物4の調製
【0083】
【0084】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 55.0mgをN,N-ジメチルホルムアミド 1.5mLに溶解させ、Cys-Cys 11.6mgを加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 4.3μLを加え、室温で3h撹拌した。MP2-PNP(2-(2-Maleimidoethoxy)ethyl(4-nitrophenyl)carbonate、マレイミドエトキシエチル-p-ニトロフェニルカーボネート)36.1mgを反応系に加え、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 51μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物4 18.0mg(収率27%)を得た。LC-MS:(M+2H)2+ 1142.3、(M-2H)2- 1141.1。
【0085】
実施例5 化合物5の調製
【0086】
【0087】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 55.0mgをN,N-ジメチルホルムアミド1.5mLに溶解させ、11.6mg Cys-Cysを加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 4.3μLを加え、室温で3h撹拌した。マレイミドプロピオニルアミノ-オクタポリエチレングリコールプロピオネートスクシンイミジルエステル(Mal-Propionamide-PEG8-propionate-OSu)71.0mgを反応系に加え、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 51μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物5 19.3mg(収率28%)を得た。LC-MS:(M+2H)2+ 1324.1、(M-2H)2- 1324.0。
【0088】
実施例6 化合物6の調製
【0089】
【0090】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 63.0mgをN,N-ジメチルホルムアミド 2.0mLに溶解させ、Cys-Cys 13.3mgを加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 4.8μLを加え、室温で3h撹拌した。Mc-VC-PAB-PNP 86.6mgを反応系に加え、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 58μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物6 47.4mg(収率52%)を得た。LC-MS:(M+2H)2+ 1336.0、(M-2H)2- 1334.6。
【0091】
実施例7 化合物7の調製
【0092】
【0093】
実施例1の調製方法に従ってマレイミドヘキサノイル-MMAFを調製した。マレイミドヘキサノイル-MMAF 46.6mgをN,N-ジメチルホルムアミド 2.0mLに溶解させ、Cys-Cys 10.9mgを加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 3.6μLを加え、室温で3h撹拌した。PY-MAA-VC-PAB-PNP84.4mgを反応系に加え、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン 48μLを加え、室温で15h撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留除去し、分取液体クロマトグラフィーにかけて精製し、化合物7 31.0mg(収率43%)を得た。LC-MS:(M+2H)2+ 1401.2、(M-2H)2- 1399.4。
【0094】
実施例8 抗体薬物複合体(ADC)の調製
抗体薬物複合体を合成するための通用する方法は、以下の通りである。
方法A:pH=7.4のPBSバッファーで抗Her-2抗体を10mg/mLの溶液として調製し、2.4モル当量のTCEPを加え、1時間振とうして均一に混合し、次に5.0モル当量のリンカー-毒素を加え、振とうして均一に混合し、1h反応させ、反応終了後、残りの小分子を限外ろ過で除去し、疎水クロマトグラフィー(HIC-HPLC)にかけてDAR、薬物分布、裸の抗体比の検出を実施した。
方法B:pH=9のホウ酸-ホウ砂バッファーで抗Her-2抗体を10mg/mLの溶液として調製し、5モル当量のTCEPを加え、1時間振とうして均一に混合し、次いで6.0モル当量のリンカー-毒素を加え、振とうして均一に混合し、3h反応させ、反応終了後、残りの小分子を限外ろ過で除去し、疎水クロマトグラフィー(HIC-HPLC)にかけてDAR、薬物分布、裸の抗体比の検出を実施した。
上記の通用するADC調製方法により以下の化合物(Aは、任意の抗体又はその機能的結合フラグメントであり、mは、1、2、3、4、5、6、7、8である)を調製する。
【0095】
【0096】
実施例9 SK-BR-3腫瘍細胞株に対するADCの阻害試験
SK-BR-3腫瘍細胞(ヒト乳がん細胞)を消化し、遠心して収集した後、カウントし、細胞液を0.5~1.5×105cells/mLに希釈し、96ウェルプレートの各ウェルにその細胞懸濁液100μLを加えた。37℃、5%CO2インキュベーターで一晩インキュベートし、翌日、対応する9つの濃度勾配のADC医薬品を加え、別にゼロ濃度のADC医薬品の細胞を対照とした。72h培養した後にCell Counting Kit-8(単にCCK-8キットと称される。)を使用して発色を行い、発色後の96ウェルプレートをマイクロプレートリーダーで450nmにおけるOD値を検出した。Prismソフトウェアは、OD値の計算によりIC50値を得た。フィティングされる曲線が「S字曲線」を示し、かつR2 ≧ 0.95である場合には、IC50値は、有効で報告可能である。
平均DAR値が3.87のADC-0(比較例1)、平均DAR値が7.18のADC-0(比較例2)、平均DAR値が4.3のADC-10(比較例3)、平均DAR値が4.29のADC-34(比較例4)を選択してSK-BR-3腫瘍細胞株の増殖阻害試験を行い、それらのIC50値は、表3に示した。
【0097】
【表3】
*比較例1を基準として、抗体用量の変化=(比較例X-比較例1)/比較例1;Xは、対応する比較例を表す。
*比較例1を基準として、MMAF用量の変化=(比較例X-比較例1)/比較例1;Xは、対応する比較例を表す。
【0098】
比較例2は、抗体で連結されるMMAF部位の数を増やすことにより、DAR値を7.18に向上させた。比較例1よりも、同じ効果が得られる場合、比較例2は、使用される抗体の量(即ち、ADC中の抗体量、合成プロセス中の抗体の損失を考慮せずに、抗体の使用量は、ADCの濃度と同じである。)を効果的に低減させることができるが、MMAFの使用量は、19.3%増加した。
比較例3は、1つのリンカーに2つのMMAFが連結され、DAR値(4.3)は比較例1(3.87)に相当し、比較例1よりも、同じ効果が得られる場合、比較例3は、抗体の使用量を効果的に65.9%減少させ、MMAFの使用量を24.3%減少させた。
比較例4は、1つのリンカーに3つのMMAFが連結され、DAR値は比較例1に相当し、比較例1よりも、同じ効果が得られる場合、比較例4は、抗体の使用量を効果的に85.5%減少させ、MMAFの使用量を51.8%減少させた。
以上のデータの比較から、ADC-10及びADC-34は、より効率的な細胞活性を示し、それらがもたらす効果は、抗体中のMMAFの数の増加によるADCの効果の向上だけではなく、さらに、同量のMMAFを搭載した条件下で、シングルポイントマルチウォーヘッド(細胞毒薬物)の連結方式により抗体の使用量及び毒素の使用量を効果的に低減させる効果を発揮することを示し、予想外の技術的効果を発揮した。また、単一連結部位-複数の弾頭の方式により、さらに、ADC製品の均一性を非常に効果的に改善でき、医薬品の製造プロセス及び品質管理を効果的に促進できる。
【0099】
本発明は、それぞれの具体的な実施形態によって例示されて説明された。しかしながら、当業者は、本発明がそれぞれの具体的な実施形態に限定されず、本発明の範囲内で様々な変更または修正を行うことができ、かつ本明細書の様々な場所で言及される様々な技術的特徴を互いに組み合わせることができ、本発明の精神および範囲から逸脱しないことを理解すべきである。これらの変更および修正は、いずれも本発明の範囲内である。
【国際調査報告】