(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】加法的に製造され処理された物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/379 20170101AFI20220111BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220111BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220111BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20220111BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220111BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20220111BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220111BHJP
【FI】
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y40/00
B29C64/106
B29C64/153
B29C64/165
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525573
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080582
(87)【国際公開番号】W WO2020099241
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アクテン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】シュテルン,フランク-ステファン
(72)【発明者】
【氏名】トムチェク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】メットマン,ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ビュスゲン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ディジョルジオ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】キュンツェル,ヨーナス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL55
4F213WW06
4F213WW15
4F213WW34
4F213WW38
(57)【要約】
本発明は、a)加法的製造による物品の製造ステップであって、該物品は、少なくとも1つの第1の材料を、基材上に繰り返し層状に、物品の断面に対応する空間的に選択的な様式で配置することによって製造されるステップを含み、さらにつ追加的に、b)処理された物品を得るために、基材上にまだ存在するか、または基材からすでに分離されている加法的製造によって製造された物品を、≧Tに加熱された液体、または≧Tに加熱された第2の材料の粉末床と≧1分間、少なくとも部分的に接触させるステップを含み、Tは≧25℃の温度を意味するステップを含む、処理された物品を製造する方法に関係する。本発明はさらに、このような形式の方法で製造された物品に関係する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)加法的製造手段による物品の製造ステップであって、前記物品は少なくとも1つの第1の材料を、物品の断面に対応する、層状および空間的に選択的な方法で繰り返し基板上に配置することによって生成されるステップ、
を含む、処理された物品を製造する方法であって、
さらに、
b)処理された物品を得るために、基材上にまだ存在するか、または基材からすでに分離されている加法的製造によって製造された前記物品を、≧Tに加熱された液体または≧Tに加熱された第2の材料の粉末床と、≧1分間、少なくとも部分的に接触させるステップであって
- Tは≧25℃、好ましくは≧50℃、より好ましくは≧75℃、特に好ましくは≧150℃の温度であるステップ、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記方法が
A)方法ステップb)の前に、加法的製造によって製造された物品を基板から取り外すステップ;
B)方法ステップb)の前に、加法的製によって製造された物品から未反応の第1の材料を少なくとも部分的に除去するステップ:
C)方法ステップa)において加法的製造によって製造された物品を化学線の手段によって後硬化するステップ;
D)方法ステップb)の後に処理された物品を取り出す前に、加熱された液体または加熱された粉末床を200℃未満の領域の温度に冷却するステップ;
E)方法ステップb)の間または後に物品から第2の材料を少なくとも部分的に機械的に除去するステップ;および
F)方法ステップb)の後に、液体または粉末から物品を除去した後に、溶媒を用いて第2の材料を洗浄除去する方法であって、前記溶媒は、T≦200℃の領域の温度で≦30分間、第1の材料に対する溶媒または共反応物ではないステップ;
から選択される少なくとも1つのさらなる方法ステップまたはさらなる方法ステップの組合せを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加法的方法が、高速焼結、選択的レーザー溶融、選択的レーザー焼結、選択的熱焼結、バインダージェット、電子ビーム溶融、溶融堆積モデリング、溶融フィラメント製造、ビルドアップ溶接、摩擦撹拌溶接、ワックス堆積モデリング、輪郭形成、金属粉末塗布法、コールドガススプレー、ステレオリソグラフィー、3Dスクリーン印刷法、光散乱電気泳動堆積、FDM法による高金属粉末充填熱可塑性樹脂の印刷、インクジェット法によるナノスケール金属粉末、DLP(直接光処理)、インクジェット、連続光界面処理(CLIP)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
方法ステップb)において物品を液体または粉末床と接触させる間に、液体または粉末床を、少なくとも断続的に高圧下、特に≧1バール~≦1000バールの範囲内の圧力下に置くことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
方法ステップb)において物品を液体または粉末床と接触させる間に、液体または粉末床を≧0.01bar~≦1barの範囲内の圧力で少なくとも断続的に減圧下に置くことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
方法ステップb)において物品を液体または粉末床と接触させる間に、粉末床または液体の形態の第2の材料を少なくとも断続的に不活性ガスで充満させることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の材料が水溶性であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の材料は、酸、塩基または有機溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の材料が二酸化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、金属、金属塩、糖、有機塩、ポリエチレンワックス、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、および粉末床を形成するための前記物質の少なくとも1つを含む混合物からなる群のうちの少なくとも1つから、またはシリコーン油、パラフィン油、フッ素化炭化水素、ポリエチレンワックス、塩水、金属溶融物、イオン性液体、および前記物質のうちの少なくとも1つを液体として含む混合物からなる群のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
方法ステップb)で確立される摂氏で表される温度Tが、平均して、第1の材料の破壊温度の95%以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
方法ステップb)で確立される温度Tが≧40℃~≦2000℃の範囲内であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
方法ステップb)で確立された温度Tが第1の材料のビカー(Vicat)軟化温度よりも50℃低い温度よりも高いこと、および方法ステップb)で確立された温度Tが第1の材料のビカー軟化温度よりも150℃高い温度よりも低く、ビカー軟化温度はDIN EN ISO 306:2014-03に対して確認され得ることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに1項に記載の方法
【請求項13】
方法ステップb)において得られた物品と粉末床との接触が、≧1分~≦174時間の範囲内の期間行われることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
方法ステップb)の過程で好ましくは粉末床または液体の温度Tが変更され、温度曲線が任意選択で-190℃~+2000℃の温度を含み、特に、方法ステップb)で得られた物品と粉末床との接触が≧1分~≦72時間行われることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに1項に記載の方法によって得ることができる処理された物品。
【請求項16】
処理された物品がDIN EN ISO 527-2:2012による引張試験において、方法ステップb)の前の未処理の物品の引張強度よりも大きい引張強度を有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
処理された物品の密度が、方法ステップb)の前の未処理の物品の密度よりも大きいことを特徴とする、請求項15または16に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加法的製造手段によって物品を製造する方法に関する。本発明はさらに、そのような方法によって製造された物品に関する。
【0002】
加法的製造方法は、物品が1層ごとに構築される方法を意味する。したがって、それらは、フライス削りまたはドリル削りなどの物品を製造する他の方法とは著しく異なる。後者の方法では、材料の除去を介して物品がその最終形状をとるように処理される。したがって、加法的な方法は材料付加法であり、一方、従来方法は材料除去法と呼ぶことができる。
【0003】
材料、例えば、今日主に粉末ベースの加法的製造方法で使用されているポリマーに基づいて形成される物品は、射出成形などの他のプラスチック加工方法で知られているような材料の特性とは基本的に異なる機械的特性を有することができる。加法的製造方法によって加工される場合、使用される熱可塑性材料は、それらの特定の特性を失う。
【0004】
ナイロン-12(PA12)は、レーザー焼結などの粉末ベースの積層造形法に現在最も一般的に使用されている材料である。PA12は、射出成形または押出成形で処理された場合の高い強度と靭性で注目に値する。たとえば、市販のPA12は、射出成形後の破断点伸びが200%を超えている。対照的に、レーザー焼結法で製造されたPA12製品は、約15%の破断点伸びを示する。このコンポーネントはもろいため、典型的なPA12コンポーネントとは見なされなくなった。同じことが、レーザー焼結用の粉末形態で供給されるポリプロピレン(PP)にも当てはまる。この材料ももろくなり、PP特有の強靭で弾力性のある特性を失う。その理由は、ポリマーの形態に見いだされる。
【0005】
レーザーまたはIRによる溶融操作中、特に冷却中に、いわゆる半結晶性ポリマー(PA12やPPなど)の不規則な内部構造が発生する。半結晶性ポリマーの内部構造(形態)は、部分的に高レベルの秩序によって特徴付けられる。ポリマー鎖の特定の割合は、冷却の過程で結晶性の密に詰まった構造を形成する。溶融および冷却中、これらの微結晶は、不完全に溶融した粒子の境界、粉末粒子の以前の粒界、および粉末に存在する添加剤上で不規則に成長する。このように形成された形態の不規則性は、機械的応力下での亀裂の形成を促進する。粉末ベースの加法的方法で避けられない残留気孔率は、亀裂の成長を促進する。
【0006】
結果として、このように形成されたコンポーネントの脆弱性が生じる。これらの影響の解明については、European Polymer Journal 48(2012),page 1611-1621を参照されたい。レーザー焼結で使用されるブロック共重合体に基づく弾性ポリマーは、加法的製造法によって物品を生成するときに、粉末として処理されて使用されるポリマーに典型的ではない特性のプロファイルも示す。現在、熱可塑性エラストマー(TPE)がレーザー焼結に使用されている。現在入手可能なTPEから製造された製品は、凝固後の残留気孔率が高く、TPE材料元来の強度はそれから製造された製品では測定できない。したがって、実際には、これらの多孔質成分に必要な特性のプロファイルを確立するために、その後、液体の硬化ポリマーで浸透される。上記の追加措置にもかかわらず、強度と伸びは低いレベルにとどまる。追加の方法の複雑さ、および依然として不十分な機械的特性は、これらの材料の経済的実行可能性を低下させる。
【0007】
ポリマー粒子を使用するレーザー焼結法では、粒子を加熱雰囲気で処理できるように、これらは一般に密閉容積またはチャンバー内で処理される。このようにして、レーザーの作用による粒子の焼結のために克服しなければならない温度差を減らすことが可能である。一般に、ポリマーの熱特性は、レーザー焼結法で可能な処理温度に影響を与えると言える。したがって、従来技術は、そのようなポリマーのための様々な解決策およびそれらを処理する方法を提案してきた。
【0008】
US2005/0080191A1は反応性特性および溶融性特性を有する少なくとも1つのポリマーを含み、少なくとも1つのポリマーは、液体バインダーと反応するために選択され、少なくとも1つのポリマーの融点またはガラス転移温度を超える温度で溶融可能で固体フリーフォーム製造方法で使用するための粉末システムに関する。少なくとも1つのポリマーは少なくとも1つの反応性ポリマーおよび少なくとも1つの溶融性ポリマーを含んでもよく、少なくとも1つの溶融性ポリマーは約50℃~約250℃の範囲の融点またはガラス転移温度を有する可能性がある。
【0009】
従来技術においては、得られた成分が均一な材料特性を有する加法的製造方法が依然として必要とされている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術から知られている欠点を少なくとも部分的に克服することである。より詳細には、本発明の目的が特に製造される構成要素の高い安定性、特に層方向に平行な安定性、および/または均一な構成要素特性を可能にすることができる方法を提供することである。
【0011】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴を有する方法によって達成される。この目的は、請求項16の特徴を有する物品によって、本発明に従ってさらに達成される。本発明の好ましい構成は従属請求項、説明または図面に記載されており、また、従属請求項または説明または図面に記載または詳細に記載されたさらなる特徴は個別にまたは任意の組合せで、文脈が別段の明確な指示をしない限り、本発明の主題であり得る。
【0012】
本発明は、
a)加法的製造による物品の製造ステップであって、該物品は、少なくとも1つの第1の材料を、基材上に繰り返し層状に、物品の断面に対応する空間的に選択的な様式で配置することによって製造されるステップを含む、処理された物品を製造する方法を提供する。ここで想定されているのは、当該方法はさらに、
b)処理された物品を得るために、基材上にまだ存在するか、または基材からすでに分離されている加法的製造によって製造された物品を、≧Tに加熱された液体、または≧Tに加熱された第2の材料の粉末床と≧1分間、好ましくは≧1分間~≦2時間、少なくとも部分的に接触させるステップを含み、
ここで、
- Tは≧25℃、好ましくは≧50℃、より好ましくは≧75℃、特に好ましくは≧150℃の温度である。
【0013】
このような手法は、特に好都合なやり方で、加法的方法によって物品を作り出すことを可能にし、
ここで、
製造された物品は高い安定性を有し、同時に均一な特性を有する。
【0014】
従って、本発明は、加法的製造手段による物品の製造法に関する。ここで製造される物品は、基本的に限定されない。より詳細には、加法的製造が有効な方法で、多種多様な異なる用途のための多種多様な異なる物品の作製を可能にし、同時に、無制限の幾何学的形状を可能にする。したがって、製造される物品はまた、いかなる制限も受けず、代わりに、ここに記載される方法は、原則として、加法的方法によって製造され得る任意の物品を成形するのに役立つことができる。しかしながら、ここに記載される方法は、高い安定性または均質な機械的特性を必要とする物品に特に好ましい。
【0015】
加法的方法に関しても同様に限定されない。原則として、この方法は、任意の加法的方法に対して可能であり得る。
【0016】
加法的製造方法は、物品が1層ごとに構築される方法を指す。したがって、それらは、フライス削りまたはドリル削りなどの物品を製造する他の方法とは著しく異なる。後者の方法では、物品が材料の除去を介してその最終形状をとるように処理される。
【0017】
加法的な製造方法は、異なる材料および処理技術を使用して、層ごとに物品を構築する。溶融堆積モデリング(FDM)では、例えば、熱可塑性ワイヤが液化され、ノズルを用いて可動ビルドプラットフォーム上に層毎に堆積される。固化は固体物品を生じる。ノズルおよび構築プラットフォームは、物品のCAD図面に基づいて制御される。この物品の幾何学的形状が複雑である場合、例えば幾何学的アンダーカットを有する場合、支持材料をさらに印刷し、物品の完成後に再び除去しなければならない。
【0018】
さらに、熱可塑性粉末を使用して物品を1層ごとに構築する加法的な製造方法が存在する。このケースでは、粉末の薄い層がいわゆる塗布機の手段によって塗布され、次いで、エネルギ源の手段によって選択的に溶融される。ここで、周囲の粉末は、構成要素の幾何学的形状を支持する。従って、複雑な幾何学的形状は、上述のFDM法よりも経済的に製造することができる。さらに、異なる物品を、いわゆる粉末床において密に充填された様式で配置または製造することができる。これらの利点のために、粉末ベースの加法的製造方法は、市場で最も経済的に実行可能な加法的製造方法の一つである。したがって、それらは、主に工業的利用者によって使用される。粉末ベースの加法的製造方法の例は、選択的レーザ焼結(SLS)または高速焼結(HSS)と呼ばれるものである。これらは、プラスチック中に選択的溶融のためのエネルギーを導入する方法において互いに異なる。レーザ焼結法では、エネルギーは偏向レーザビームを介して導入される。高速焼結(HSS)法と呼ばれるものでは例えば、EP 1648686に記載されているように、エネルギーは粉末床に選択的に印刷されるIR吸収体と組み合わされて、赤外線(IR)源を介して導入される。選択熱焼結(SHS)と呼ばれるものは、熱可塑性粉末を選択的に溶融するために、従来のサーマルプリンタの印刷ユニットを利用する。
【0019】
直接粉末法/粉末床システムはレーザ溶融法として知られており、選択的レーザ溶融(SLM)、レーザカシングおよび直接金属‐レーザ焼結(DMLS)のような種々の商品名で市販されている。このプロセス原理からの唯一の例外は、電子ビームが完全真空下で使用される電子ビーム溶融(EBM)プロセスである。金属粉体層の溶接装置は、欧州のConcept Laser GmbH、EOS GmbH、ReaLizer GmbH、RenishawおよびSLM Solutions GmbHから現在入手可能である。これらの会社は選択的レーザ溶融の同様の原理に基づく多数のシステムを提供するが、それら自体のプロセスに異なる名称を与えている。米国に本拠を置く3D Systemsは、選択的レーザー融解に基づくシステムも提供している。正しい機械の選択はエンドユーザの要件に依存し、問題のシステムの主要な特徴のいくつかは、レーザユニットのタイプ、粉末の取扱い、および構築チャンバである。
【0020】
スウェーデンに本拠を置くArcam AB社は、溶融プロセスのエネルギー源として電子ビームを使用する粉末ベッド溶接システムを製造している。パウダーベッド溶接とCNC加工を組み合わせたハイブリッドシステムは、日本企業Matsuuraが供給している。
【0021】
粉末床を使用する別のシステムは、ヘガネス(Hoeganaes)デジタル金属法である。このシステムはfcubic社が開発したもので、金属粉末の厚さ45マイクロメートルの層に特殊な「インク」を堆積させるために精密インクジェットを使用している。さらに45マイクロメートルの粉末層を適用し、部品が完成するまで印刷工程を繰り返す。次いで、極限の大きさと強度を達成するために、部品が排出され、焼結される。このシステムの利点の一つは、レーザまたは電子ビーム方法論で起こる部分溶融を伴わずに、室温(RT、20°Cに相当)で構築が起こることである。原則として、構築中に支持構造体は粉末床によって支持されるので、支持構造体の必要もない。
【0022】
粉末を供給するシステムが同じ出発材料を使用するとしても、材料を層ごとに追加する方法にはかなりの差がある。粉末はノズルを通って流れ、ジェットによって処理された部品の表面上で直接溶融される。
【0023】
粉末供給を伴うシステムは、レーザクラッディング、指向性エネルギー堆積およびレーザ金属堆積と呼ばれる。この方法は高精度であり、0.1mmから数センチメートルの間の厚さを有する材料層の自動堆積に基づいている。シース材料の基材への冶金学的結合およびアンダーカットの欠如はこの方法の特徴の一部である。本プロセスは、小さな入熱が基板を透過するという点で他の溶接技術とは異なる。
【0024】
この技術における開発は、レーザー工学によるネットシェーピング(LENS)粉体供給システムであり、これはOptomecによって使用されている。この工法により、既設部品に材料を追加することが可能となり、その手段は剪断されたタービンブレードや射出成形インサートのような、損傷を受けた高価な金属部品の修理に使用することができ、部品のクランプ及び「コーティング」材料に高い柔軟性を提供することである。
【0025】
同じ原理で動作するシステムを供給する会社は、フランスのBeAM、ドイツのTrumpf、および米国のSciakyである。ハイブリッドシステムに対する興味深いアプローチは、DMG Moriによって供給されるアプローチである。レーザクラッド原理と5軸加工システムを組み合わせることにより、多くの産業の分野で新たな使用分野が開かれる。
【0026】
MarkforgedからのADAM(原子拡散加法的製造)プロセスは、様々な金属粉末の選択から始まる。次の工程は、プラスチックバインダー中で層ごとに粉末を成形することである。印刷後、部品はオーブンで焼結され、バインダーが燃え落ち、完全な密度の究極の金属部分に粉末を固める。
【0027】
要約すると、一例として、この方法の文脈において使用可能な加法的方法は上記のものであり、例えば、以下に列挙される加法的方法も含む。好適な例は、高速焼結、選択的レーザー溶解、選択的熱焼結、バインダー噴射、電子ビーム溶融、溶融堆積モデリング、溶融フィラメント作製、ビルドアップ溶接、摩擦撹拌溶接、ワックス堆積モデリング、輪郭加工、金属粉末塗布法、コールドガス噴霧、ステレオリソグラフィー、3Dスクリーン印刷法、光散乱電気泳動堆積、FDM法による高度に金属粉末充填された熱可塑性プラスチックの印刷、インクジェット法によるナノスケール金属粉末、DLP(直接光処理)、インクジェット、連続光界面処理(CLIP)を含む。
【0028】
ここで述べる方法は先ず、a)加法的製造の手段による成形物の作成、とりわけ、成形物が積層構造に対応した空間的に選択的な方法で、少なくとも1つの最初の材料を基板上に繰り返し、配置、特に溶接および/または重合および/または接合によって作成されることを含む。従って、この工程は、加法的方法のための通常の操作である。
【0029】
使用される基材は、原則として、物品が構築され得る任意の表面であり得る。例えば、基板は固体基板であってもよいが、これに限定されない。物品が形成される材料は、ここでは複数の連続する層に形成される物品の断面に従って構築される。したがって、物品の断面はすべての層の断面であり、その結果、物品は全体的に、断面プロファイルに従って、したがって、その幾何学的形状に従って構築される。
【0030】
加法的な製造方法において、またはステレオリソグラフィー法と同様に、二次元法によって作業する3D印刷法において、フォトポリマー溶液が露光される。ここでの露光は、レーザー光線の手段によって特別な点で行われるのではなく、二次元領域にわたって行われる。この目的のために、これらの部位で材料を硬化させるために、露光マトリックスがそれぞれの層上に投影される。
【0031】
DLP(digital light processing)法では、フォトポリマー表面に上方からドットパターンを投影し、構築プラットフォームを層毎に溶液中に落下させる。この方法の利点は、異なる露光強度も硬化の変化を可能にすることである。これは、例えば、支持構造体がより少ない程度で硬化した場合に、支持構造体を除去することをより容易にする。
【0032】
LCM (lithography-based ceramic manufacturing)と呼ばれる3D印刷法では、フォトポリマー浴が上部からではなく、底部から露出される。具体的には、この方法が固体成分(セラミック)とフォトポリマー溶液との混合物を露光するために使用される。得られたグリーン体は、3D印刷後に焼結され、バインダーが焼き切れる。この3D印刷方法の利点は、異なる顆粒を使用する選択肢である。
【0033】
CLIP (連続液体界面生成)法を使用して、可視層なしで物体を生成することができる。液状樹脂の光重合は、紫外線(硬化)と酸素(硬化防止)との整合手段により制御される。樹脂タンクのベースは、コンタクトレンズのような透明で透過性の材料からなる。これにより、最下層における酸素の手段によって「不感帯」を作り出すことができ、これにより、槽から連続的に上方に引き出される物体のさらなる構築が可能になる。
【0034】
ステレオリソグラフィー(SLA法)では、フォトポリマーとも呼ばれる光硬化性プラスチックがレーザーによって薄層に硬化される。この方法は、感光性(感光性)プラスチックのベースモノマーが充填された溶融浴中で行われる。各ステップの後、ワークピースは、数ミリメートルだけ浴の中に下げられ、1つの層厚の大きさだけ前の位置の下の位置に戻される。
【0035】
特に、第1の原料がメタルである場合には、インクジェット法を手段して作用する方法を用いることができる。ここで挙げることができる例は、バインダー噴射である。
【0036】
また、第1の材料としては、原則として、アディティブ法を手段して加工可能なものであればよい。したがって、使用される材料は例えば、適切な条件下で溶融し、再び固化することができる任意の材料であってもよい。また、第1の材料のみを用いてもよいし、材料混合物を用いてもよいし、複数の第1の材料を用いてもよい。複数の第1の材料が使用される場合、これらは、異なる層に配置されてもよく、または同じ層に配置されてもよい。
【0037】
原則として、第1の材料は、基材上に粉末形態であってもよく、またはすでに溶融した形態で基材に適用されてもよい。
【0038】
本発明の方法の有利な実施形態では、第1の材料の少なくとも一部が溶融性ポリマーを含む。好ましくは第1の材料全体、または本方法において第1の材料として使用される全ての粒子は溶融可能なポリマーを含む。粒子の少なくとも90重量%が≦0.25mm、好ましくは≦0.2mm、より好ましくは≦0.15mmの粒子直径を有することがさらに好ましい。溶融性ポリマーを含む粒子は例えば、さらなる溶融性ポリマーが粒子中に存在しないような均一な構造を有する可能性がある。
【0039】
熱可塑性材料の適切な粉末は様々な標準的なプロセス、例えば、粉砕プロセス、極低温粉砕、沈殿プロセス、噴霧乾燥プロセスなどを介して製造することができる。
【0040】
溶融可能なポリマーと同様に、粒子はまた、充填剤、安定剤等のようなさらなる添加剤、ならびにさらなるポリマーを含んでもよい。粒子中の添加剤の総含有量は例えば、≧0.1重量%~≦60重量%、好ましくは≧1重量%~≦40重量%であり得る。
【0041】
さらなる好ましい実施形態では、溶融可能なポリマーはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、TPE(熱可塑性エラストマー)、熱可塑性プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)、またはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、および上記ポリマーのブレンドおよび/または合金から選択される。
【0042】
溶融可能なポリマーは、好ましくは芳香族および/または脂肪族ポリイソシアネートと適切な(ポリ)アルコールおよび/または(ポリ)アミンまたはそれらのブレンドとの反応から少なくとも部分的に得られるポリウレタンである。好ましくは、使用される(ポリ)アルコールの少なくとも一部が線状ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオールまたはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群からのものを含む。好ましい実施形態では、これらの(ポリ)アルコールまたは(ポリ)アミンが末端アルコールおよび/またはアミン官能基を有する。さらなる好ましい実施形態において、(ポリ)アルコールおよび/または(ポリ)アミンは、52~10000g/molの分子量を有する。好ましくは、供給原料としてのこれらの(ポリ)アルコールまたは(ポリ)アミンが5~150℃の範囲の融点を有する。溶融可能なポリウレタンの調製のために少なくとも部分的に使用することができる好ましいポリイソシアネートは、TDI、MDI、HDI、PDI、H12MDI、IPDI、TODI、XDI、NDIおよびデカンジイソシアネートである。特に好ましいポリイソシアネートは、HDI、PDI、H12MDI、MDIおよびTDIである。
【0043】
同様に、溶融可能なポリマーは、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールTMCをベースとするポリカーボネートであることが好ましい。
【0044】
あるいは、第1の材料が金属である場合もある。この構成では、使用分野が例えば、医療技術、航空セクター、自動車セクター、または宝飾品製造セクターにあり得る。第1の材料に適した金属としては、例えば、工具鋼、マルエージング鋼またはマルテンサイト硬化鋼、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、コバルト-クロム合金、ニッケル基合金、例えば超合金、チタンおよびチタン合金、例えば商業純度のもの、銅および銅合金、または貴金属、例えば金、白金、パラジウム、銀が挙げられる。本発明の方法において、物品は、層ごとに構築される。塗布と照射の繰り返し回数が十分に少なければ、組み立てる二次元物品を参照することも可能である。このような二次元物品は、コーティングとして特徴付けることもできる。例えば、その構築のために、≧2~≦20回の塗布および照射の繰り返しを行うことができる。
【0045】
前駆体から物品を製造する方法であって、同様に、ここに記載される方法の一部であってよく、特に工程A)の工程の一部であってよい方法は、下記のステップを含む。
I)前駆体の第1の選択された断面に対応する、キャリアに接合された構造材料の層を得るために、基板とも呼ばれ得る、キャリア上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させるステップ;
II)前駆体のさらなる選択された断面に対応し、前に適用された層に接合される構造材料のさらなる層を得るために、前に適用された構造材料の層の上にフリーラジカル架橋樹脂を堆積させるステップ;
III)工程II)を、前駆体が形成されるまで繰り返すステップであって;ここで、少なくとも工程II)における遊離基架橋樹脂の堆積は、前駆体のそれぞれ選択された断面に対応する遊離基架橋性樹脂の選択された領域の暴露および/または照射によって行われるステップ。
【0046】
この方法では、工程III)の後に、工程IV)をさらに行う:
IV)工程III)の後に得られた前駆体を、さらなる化学線および/または熱誘導後硬化の作用によってフリーラジカル架橋樹脂中で後架橋を得るのに十分な条件下で処理する。
【0047】
この構成では、物品はこのようにして2つの製造段階で得られる。第1の製造段階は、構築段階とみなすことができる。この構築段階はインクジェット法、ステレオリソグラフィーまたはDLP(デジタルライトプロセッシング)法のような光線光学系加法的製造法の手段によって実施することができ、工程I)、II)およびIII)によって表される。第2の製造段階は硬化段階とみなすことができ、段階IV)の主題である。構築段階の後に得られた前駆体または中間物体は、ここではその形状をそれ以上変化させることなく、より機械的に耐久性のある物体に変換される。本発明の文脈において、加法的製造プロセスにおいて前駆体が得られる材料は、一般に「構築材料」と呼ばれる。
【0048】
本方法の工程I)は、フリーラジカル架橋樹脂を担体上に堆積させることを含む。これは通常、インクジェット、ステレオリソグラフィおよびDLPプロセスにおける第一段階である。このようにして、前駆体の第1の選択された断面に対応する、キャリアに接合された構築材料の層が得られる。
【0049】
工程III)の指示に従って、工程II)は、所望の前駆体が形成されるまで繰り返される。工程II)は前駆体のさらなる選択された断面に対応し、前に適用された層に接合される構築材料のさらなる層を得るために、フリーラジカル架橋樹脂を前に適用された構築材料の層上に堆積することを含む。以前に適用された構築材料の層は、工程I)からの第1の層であってもよく、または工程II)の以前の反復による層であってもよい。
【0050】
本発明によれば、フリーラジカル架橋樹脂(少なくとも工程II)(好ましくは工程Iでも)は、それぞれの場合に選択された物品の断面に対応するフリーラジカル架橋性樹脂の選択された領域の露光および/または照射によって堆積される。これは樹脂の選択的露光(ステレオリソグラフィー、DLP)によって、または樹脂の選択的適用、それに続く露光工程(これは樹脂の先行する選択的適用のために、もはや選択的である必要はない)(インクジェットプロセス)のいずれかによって、達成され得る。
【0051】
本発明の文脈において、「フリーラジカル架橋性樹脂」および「フリーラジカル架橋性樹脂」という用語が使用され、フリーラジカル架橋性樹脂はここではフリーラジカル架橋反応を引き起こす露光および/または照射によってフリーラジカル架橋性樹脂に変換される。ここで「露光」とは近赤外線と近紫外線(波長1400nm~315nm)との間の範囲の光の作用を意味し、残りのより短い波長範囲は「照射」という用語、例えば、遠紫外線、x線、ガンマ線および電子ビームによって包含される。
【0052】
それぞれの断面は、製造される物品のモデルが作成されるCADプログラムによって適切に選択される。この操作は「スライシング」としても知られており、フリーラジカル架橋性樹脂の露光および/または照射を制御するための基礎として役立つ。
【0053】
フリーラジカル架橋性樹脂は、≧5mPas~≦100,000 mPasの粘度(23℃、DIN EN ISO 2884-1:2006-09)を有することが好ましい。したがって、それは、少なくとも加法的製造の目的においては液体樹脂とみなされるべきである。粘度は、好ましくは≧50mPas~≦10,000 mPas、より好ましくは≧500mPas~≦1000 mPasである。
【0054】
フリーラジカル架橋性樹脂は硬化性成分と同様に、安定剤、充填剤などの非硬化性成分を含むことが好ましい。
【0055】
工程IV)における処理は、最も単純な場合、室温(20℃)、または好ましくは室温より高い温度での貯蔵とすることができる。
【0056】
工程IV)は、前駆体の構築材料の全体がそのゲル点に達したときにのみ行われることが好ましい。ゲル点に到達したと考えられるのは、ISO 6721-10:2015に準拠したプレート/プレート振動粘度計による20℃での動的-機械的解析(DMA)において、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’のグラフが交差する場合である。前駆体はフリーラジカル架橋を完了させるために、任意にさらなる露光および/または照射にさらされる。フリーラジカル架橋レジンは、貯蔵弾性率G’(DMA、ISO 6721-10:2015によるプレート/プレート振動粘度計、20℃、せん断速度1/s)≧106 Paを示すことができる。
【0057】
フリーラジカル架橋性樹脂は、充填剤、UV-安定剤、フリーラジカル抑制剤、酸化防止剤、離型剤、水捕捉剤、スリップ添加剤、消泡剤、流動剤、レオロジー添加剤、難燃剤および/または顔料などの添加剤をさらに含有する可能性がある。充填剤および難燃剤を除くこれらの助剤および添加剤は、典型的にはフリーラジカル架橋性樹脂に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%までの量で存在する。難燃剤は、典型的にはフリーラジカル架橋性樹脂の総重量に基づいて使用される難燃剤の総量として計算して、70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下の量で存在する。
【0058】
好適な充填剤の例は、AlOH3、CaCO3、TiO2などのメタル顔料、および他の公知の通例の充填剤である。これらの充填剤は、フリーラジカル架橋性樹脂の総重量に基づいて、使用される充填剤の総量として計算して、好ましくは70重量%以下、好ましくは50重量%以下、特に好ましくは30重量%以下の量で使用される。
【0059】
好適なUV安定剤は、好ましくはベンゾフェノン誘導体、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-1-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スベレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ドデカンジオエート;ベンゾフェノン誘導体、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノンまたは2,2’-ジヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;ベンゾトリアゾール誘導体、例えば2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-(2H -ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)- 4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル- 1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、イソオクチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1 -フェニルエチル)フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール;オキサラニリド化合物、例えば、2-エチル-2’-エトキシオキサラニリドまたは4-メチル-4’-メトキシオキサラニリド;サリチル酸エステル、たとえばサリチル酸フェニル、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸4-tert-オクチル;桂皮酸エステル誘導体、例えば、メチルα-シアノ-β-メチル-4-メトキシシンナメート、ブチルα-シアノ-β-メチル-4-メトキシシンナメート、エチルα-シアノ-β-フェニルシンナメート、イソオクチルα-シアノ-β-フェニルシンナメート;およびマロン酸エステル誘導体、例えば、ジメチル4-メトキシベンジリデンマロネート、ジエチル4-メトキシベンジリデンマロネート、ジメチル4-ブトキシベンジリデンマロネートである。これらの好ましい光安定剤は個々に、または互いに任意の所望の組み合わせで使用することができる。
【0060】
特に好ましいUV安定剤は、<400nmの波長の放射線を完全に吸収するものである。これらには、例えば、言及したベンゾトリアゾール誘導体が含まれる。特に好ましいUV安定剤は、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールおよび/または2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノールである。
【0061】
例として列挙されるUV安定剤の1つ以上は、フリーラジカル架橋性樹脂の総重量に基づいて、使用されるUV安定剤の総量として計算して、好ましくは0.001~3.0重量%、より好ましくは0.005~2重量%の量で、フリーラジカル架橋性樹脂に任意に添加される。
【0062】
好適な酸化防止剤は好ましくは立体障害フェノールであり、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(イオノール)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、および2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)である。これらは、必要に応じて、個々に、または互いに任意の所望の組み合わせで使用することができる。これらの酸化防止剤は、フリーラジカル架橋性樹脂の総重量に基づいて使用される酸化防止剤の総量として計算して、好ましくは0.01~3.0重量%、より好ましくは0.02~2.0重量%の量で使用される。
【0063】
好適なフリーラジカル阻害剤/遅延剤は特に、所望の(照射された)領域外での樹脂配合物の制御されていないフリーラジカル重合を特異的に阻害するものである。これらは、前駆体における良好な輪郭鮮鋭度および画像形成精度のための鍵である。適切なフリーラジカル阻害剤は、照射/露光工程からの所望のフリーラジカル収率、および二重結合含有化合物の重合速度および反応性/選択性に従って選択されなければならない。適切なフリーラジカル阻害剤の例は、2,2-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)、フェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンエーテル、キノンアルキドおよびニトロキシル化合物ならびにそれらの混合物、ベンゾキノン、銅塩、カテコール、クレゾール、ニトロベンゼン、および酸素である。これらの酸化防止剤は、好ましくは0.001重量%~3重量%の量で使用される。
【0064】
上記の方法ステップa)に加えて、特にその後に、したがって物品の構築後に、または物品の幾何学的形状の構築後に、本明細書に記載される方法は、以下のさらなる方法ステップを有することがさらに想定される:
b)処理された物品を得るために、≧Tに加熱された液体、または≧1分間≧Tに加熱された第2の材料の粉末床を用いて、基材上にまだ存在するか、または基材からすでに分離されている、加法的製造方法によって製造された物品を少なくとも部分的に接触させるステップであって、
- Tは、≧25℃、好ましくは≧50℃、より好ましくは≧75℃、特に好ましくは≧150℃の温度であり、
- 温度は適切な場合、例えば、第1の材料としてのポリマーの場合、第1の材料のガラス転移温度Tgが達成されるように選択されることが好ましく、
- 第2の材料は、第1の材料とは特に異なる、前記ステップ。
【0065】
この方法ステップにおいて、予め成形された物品はこのようにして所望の物品を得るために、さらに処理される。より詳細には、この方法ステップb)が特にその安定性およびその特性の均質性、ならびに予め成形された物品の所望の幾何学的形状の保持に関して、作製された物品の特性を改善するのに役立つ。
【0066】
この目的のために、基材上に依然として存在するか、または基材から既に分離されている、加法的製造によって作製された物品の少なくとも部分的な接触、したがって部分的にとどまる接触、または完全な接触が存在する。したがって、物品は例えば、基材から取り外すことができ、例えば、接触を可能にするために、液体または粉末床に入れることができる。また、物品と液体または粉末床との接触を可能にするために、粉末床または液体を形成するための粉末を充填することができる空間に基材を設けることも可能である。ただし、この工程は、上記実施例に限定されるものではない。
【0067】
接触は特に、定義された条件下で行われるべきである。より詳細には、接触は高圧で、従って1バールの大気圧より高い圧力で行われる。あるいは、接触は減圧、すなわち1バールの大気圧未満の圧力で実施することもできる。しかし、原則として、標準圧力、すなわち1バールでの接触も本発明の範囲に包含される。
【0068】
さらに、接触は粉末床または液体を用いて行われ、当該粉末床または液体は、接触前または接触中に、したがって物品と粉末床または液体との接触前または接触の間に、≧25℃、好ましくは≧50℃、より好ましくは≧75℃、特に好ましくは≧150℃の領域内の温度Tに加熱されることが特に想定される。例えば、粉末床または液体が加熱される温度Tは、≧45℃、例えば≧60℃、さらに好ましくは≧90℃、さらに好ましくは≧120℃、さらに好ましくは≧150℃、さらに好ましくは≧180℃の範囲内であってもよい。
【0069】
さらに、選択された実施形態では、接触が好ましくは放射の手段による上流構築工程の構築空間温度より高い温度で、予備成形物品を任意に位置選択的に後架橋するために、充分なUV-VIS透明性およびUV-VIS安定性を有する透明液を用いて行われることが想定される。
【0070】
さらに、接触は、規定された時間の間行われることが想定される。この時間は、特に≧1分、例えば≧5分、さらに好ましくは≧5分、さらに好ましくは≧10分、さらに好ましくは≧15分、さらに好ましくは≧20分、好ましくは<72時間、好ましくは<48時間、より好ましくは<24時間の範囲内である。好ましくは、接触が1分~72時間、好ましくは10分~48時間、好ましくは20分~24時間の範囲内の時間行われる。
【0071】
好ましい実施形態において、加法的に製造された物品は、粉末床または液体と接触され、ここで、液体または粉末床は<50℃の温度を有し、続いて、加法的に製造された物品と一緒に所望の最終温度まで加熱される。
【0072】
さらなる好ましい実施形態において、加法的に製造された物品は、所望の接触時間の後、制御された様式で加熱された液体または加熱された粉末床と一緒に<50℃の温度に冷却され、その後、除去され、液体または粉末床から解放される。
【0073】
このようにして、加法的に製造された成分の特性を所望の様式で変化させるために、後架橋、焼結、結晶化または溶融プロセスを特に制御することが可能である。
【0074】
別の好ましい実施形態では、加法的に製造された物品があらかじめ予熱された粉末床または液体と接触され、液体または粉末床は>50℃の温度であり、任意選択で既に目標温度である。
【0075】
さらなる好ましい実施形態では、加法的に製造された物品が所望の接触時間の後、加熱された液体または加熱された粉末床と一緒に、<50℃、好ましくは<30℃の温度まで、<10分、好ましくは<5分の期間内に急冷される。好ましくは、物品が加熱された液体または加熱された粉末床との所望の接触時間の後に、1秒~10分の範囲内の期間にわたって急冷される。急冷は好ましくは50℃未満の温度を有する流体中に、好ましくは10~50℃の範囲内の温度で導入することによって行われる。流体は当業者がその目的のために選択し、他の場所で言及された要求を満たす任意の流体であってもよい。流体は好ましくは水であり、好ましくは室温(20℃)である。
【0076】
このようにして、加法的焼結成分の特性を所望の方法で変化させるために、結晶化および溶融プロセス、特にガラス転移プロセスを特に制御することが可能である。
【0077】
ここで望まれる特性は結晶子の大きさ、密度、結晶化のレベル、硬度、強度、引張歪み、耐摩耗性、透明性などである。
【0078】
さらに、粉末床または液体、したがって第2の材料の材料も選択可能であり、基本的に限定されない。適切な粉末は特に、選択された条件下で分解せず、第1の材料と反応しないものである。原則として、粉末床の粉末は、第1の材料に対して不活性であることが好ましい。
【0079】
液体についても同様である。これも、第1の材料(複数可)に対して、したがって物品が構築される材料に対して不活性であるという条件で、原則的に選択可能である。さらに、液体を使用する場合、液体が第1の材料のための溶媒ではないことが重要である。
【0080】
好ましい実施形態では、加法的に製造された物品と接触して加熱した後に、可逆的に液化した粉末、または固化した液体を使用することも可能である。例としては所望の焼結温度で溶融する塩、または例えば溶媒の蒸発、または例えば溶媒中での沈殿によって所望の温度で加法的に製造された物品と接触すると固化する濃塩溶液が挙げられる。このようにして、物品は、好ましくは水またはアルコールのような溶媒の手段によって、引き続いて洗い落とすことができる安定な殻を有する方法で覆うことができる。
【0081】
さらに好ましい態様において、加法的に製造された物品は、高い融点またはガラス転移点を有する低分子量材料の塩溶液または他の濃厚溶液に繰り返し浸漬され、続いて安定なクラストが形成されるまで乾燥され得る。クラストは、好ましくは後の熱処理のために加法的に製造された物品の形状を安定化させ、前記処理後に水または別の溶媒で容易に再び洗い流すことができる。溶媒または水は、好ましくは処理において加法的方法で製造された物品を膨潤させないか、またはそれを10体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは3体積%以下だけ膨潤させる。
【0082】
好ましい実施形態では、熱処理されるべき3D製造物品がここで塩溶液に浸漬され、再びそこから除去され、表面上の塩は任意選択で熱的に乾燥され、任意選択で、作業を複数回繰り返すことができ、したがって、物品を所望の温度で加熱することができる安定な塩クラストを生成することができ、塩クラストは機械的手段による熱処理の後に、または好適な溶媒、例えば水、アルカリ、酸の手段によって、物品から再び除去することができる。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、加法的に製造された物品が高い融点またはガラス転移点を有する低分子量材料の濃厚溶液に繰り返し浸漬され、続いて安定なクラストが形成されるまで乾燥させることができる。クラストは、後の熱処理のために加法的に製造された物品の形を安定化させ、前記処理後に水または他の溶剤を手段することによって容易に洗い流すことができる。
【0084】
物品の周りにクラストが形成される、記載された方法の各々の特別な利点は、多孔質構造もまた、下流の熱応力における製品中の細孔の浸透および安定化によって、制御された様式で安定化され得るか、または得られ得ることである。
【0085】
「溶媒ではない」とは、より詳細には20℃での液体中の当該成分の溶解度が≦10g/L、好ましくは≦1g/L、より好ましくは≦0.1g/L、特に好ましくは≦0.01g/Lであることを意味する。特に好適な液体はまた、物品のいかなる望ましくない変色ももたらさず、物品を可逆的にのみ、または好ましくは全く膨潤させない。
【0086】
液体に関して、劣化現象を示すことなく、第1の材料、例えば熱可塑性材料の軟化温度まで繰り返し加熱することができることは、特に好適な例の特定の特徴である。
【0087】
第2の材料としての液体の表面張力は、好ましくは第1の材料、例えば構成要素の熱可塑性材料の表面張力よりも少なくとも10mN/m小さいかまたは大きい。
【0088】
好ましくは低揮発性の無極性液体を使用することが可能であり、これは加圧下で所望の温度に加熱することができるが、その後、得られる処理された物品から容易に除去することができる。
【0089】
原則として、好ましくは、第1の材料(複数可)が粉末床および液体の材料、または基本的に第2の材料とは異なる場合があり得る。第2の材料は、当業者が本発明の目的のために使用する任意の材料を含むことができる。第2の材料は、好ましくは第1の材料よりも高い融点を有する。
【0090】
さらに好ましい実施形態では、方法ステップb)で使用される液体が第2の材料として、シリコーン油、パラフィン油、フッ素化炭化水素、ポリエチレンワックス、塩水、金属溶融物、塩溶融物またはイオン性液体および前述の液体の混合物からなる群から選択される。塩水のケースでは、飽和アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩化物溶液、例えば、LiCl、KCl、NaClおよび/またはMgCl2、CaCl2およびそれらの混合物が好ましい。上記の材料または液体は特に、使用される条件、例えば、温度および圧力下でさえ安定かつ非変色性であり、すなわち、酸化または還元様式で物品を変色せず、水中で低い酸性または塩基性電位しか有さず、さらに、物品の効果的な処理を可能にするので、有利であることが見出された。
【0091】
有利には、方法ステップb)で使用される粉末床が二酸化ケイ素、例えば砂またはガラス、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、金属、金属塩、糖、有機塩、ポリエチレンワックス、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、または前述の物質の少なくとも1つを含む混合物からなる群から選択される第2の材料として粒子を含有する。ここでは、0.2Wm-1K-1以上の高熱電性を持つ粉末が特に優先される。本明細書において、熱伝導率はTK04 Application Note,2015,TeKa,Berlin,Germany,“Testing fragments and powder”に記載されているように測定することができる。または、23℃で固体であり、適用温度で固体と溶融物との間で容易にかつ可逆的に変換することができる粉末。したがって、特に有利な生成物は、軟化温度より20℃高い温度および粉末形態の高い脆性、すなわち23℃での固体形態における低い変形能、好ましくはDIN EN ISO 527-2:2012に対する引張試験において<50%、好ましくは<30%およびより好ましくは<20%の破断伸びを有する低粘度<10000mPas、好ましくは<5000mPas、より好ましくは<2000mPasおよびさらに好ましくは<1000mPasを溶融物中に有するものである。上記材料は使用される条件、例えば温度および圧力下でも安定であり、物品の効果的な処理を可能にするので、特に有利であることが見出された。さらに、前述の材料は、本質的に残留物なしで物品から除去することができる。
【0092】
第2の材料が粉末床の形態で使用される場合、第2の材料の粉末粒子は、好ましくは5~5000μmの範囲内、または好ましくは10~2000μmの範囲内、または好ましくは50~500μmの範囲内の粒径を有する。粒径は、ISO 13320:2009-10に基づく静止レーザー回析の手段によるレーザー回析により決定する。
第2の材料または粉末床が金属塩を含むことがより好ましい。第2の材料については、第1の材料の融点よりも高い融点を有する塩を選択することが特に可能である。これは物品を高温で処理することも可能にし、有利には比較的高温でこのような塩を取り扱い、それと接触する際の使用者に対する危険性を減少させるが、これはこれらが容易かつ迅速に皮膚または衣類から除去され得るからである。さらに、塩が水溶性である場合には、この場合、処理後または方法ステップb)の後に、塩または第2の材料を容易にすすぐことが可能であるため、好ましい場合がある。特に好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、炭酸カリウム(K2 CO3)、塩化リチウム(LiCl)、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)からなる群から選択される。
【0093】
このような金属塩を用いることにより、物品の表面構造を向上させることができ、安定性をさらに向上させることができる。改善された表面構造は例えば、表面の減少した多孔性において明らかにされる。改善された特性は例えば、物品の高い硬度、物品の高い弾性率、物品の高い引裂強さにおいて、未処理物品に対して明らかにされる。
【0094】
さらに、上記の第2の材料、すなわち上記の粉末または液体の場合、あるいは第2の材料として適切な他の物質の場合、これらは水溶性であることが有利であり得る。これは、特に、水溶性物質が物品上で簡単な方法で部分的に溶解され、従って、物品から除去され得るからである。
【0095】
第2の材料は、酸、塩基または有機溶媒に可溶であることがさらに好ましい場合がある。この構成においても、物品上の物質を簡単な方法で部分的に溶解させ、それによって物品から除去することが可能である。
【0096】
さらに、方法ステップb)は、第2の材料として臨界二酸化炭素を使用して実施される場合もある。臨界二酸化炭素または超臨界CO2は圧力および温度が二酸化炭素の臨界点を超える場合に形成される:したがって、二酸化炭素はとりわけ、304.13 K(30.980℃)を超える温度および7.375MPa(73.75バール)を超える圧力で存在すべきである。この構成の特定の利点は二酸化炭素が超臨界条件下で物品を効果的に処理することができ、処理後、標準条件下で物品からガスとして特に簡単で残留物のない方法で除去することができることであると考えることができる。
【0097】
したがって、本発明の方法では、加法的製造方法によって得られた物品を、加熱された液体または加熱された粉末床と少なくとも部分的に接触させる。得られた物品はバインダーのおかげで寸法的に安定なままであり、少なくとも1つの第1の材料を「焼結」または後硬化させて、処理された物品を得ることができる。
【0098】
特に、物品を粉末床又は液体と接触させることは、他の箇所に記載されているように、物品の特性及び方法自体を明らかに改善することができることが見出された。
【0099】
ここに記載される方法は、当該技術分野又は標準において一般的な慣行である選択的レーザ焼結又は/又は高速焼結方法に勝る複数の利点を有する。例えば、ビルドスペース温度は、バインダ噴射に類似した方法におけるように低くてもよい。その後の、しかし空間的に分離可能な焼結操作によって、加熱されたビルドスペースが必要ないので、プロセスを明確に単純化し、コストを下げることが可能になる。
【0100】
本発明の方法はまた、SLSおよびHSプロセスにおけるビルドスペース法に関する問題が生じないので、ほとんどすべての熱可塑性粉末の処理を可能にする。本発明の方法によれば、本発明者が知っている限り、信頼性のある方法で、すなわち、好ましくは有機ポリマー材料に基づく、使用される粉末の軟化温度の、好ましくは<5℃、より好ましくは<20℃、最も好ましくは<40℃の構築空間温度で、非晶質熱可塑性プラスチックを加工して、高品質の機械的構成要素、すなわち、射出成形された構成要素の強度の少なくとも50%を有する構成要素を得ることも、初めて可能である。
【0101】
本発明の方法は、液体/粉末床がSLSおよびHS法における粉末と同様に、保護的に重力を打ち消すので、複雑な構成要素の幾何学的形状をさらに達成することができる。
【0102】
より詳細には、物品が物品の構築のために作製された層の平面に平行な方向においてさえ、改善された安定性を達成し得ることが見出された。さらに、機械的性質の高い均質性を得ることが可能である。また、本発明の方法は加圧下で実施することができるという事実によっても得られる。圧力は、好ましくはここでは粉末または液相の機械的圧縮によって達成することができる。好ましい実施形態では、圧力が例えば、ガスの正圧を印加することによっても得ることができる。
【0103】
さらなる好ましい実施形態では、ここで使用されるガスが好ましい処理温度で酸化作用も還元作用も有さない不活性ガスである。ここでの好ましい不活性ガスは、CO2、N2、アルゴン、ネオンである。
【0104】
本発明の方法は、バインダーが通常の焼結方法で生じる多孔性の一部を防止するので、標準的な焼結方法によって得られるものよりも高い密度、硬度および強度を有する材料を与えることができる。
【0105】
焼結後、液体または粉末の温度は、好ましくは処理される物品の軟化温度未満の<50℃の値に下げられ、処理された物品が得られる。処理された物品は、好ましくは洗浄される。
【0106】
物品を得た後、または方法ステップb)の後、物品を粉末床または液体から取り出し、任意選択で基材から取り外すこともできる。続いて、物品から粉末床または液体の残留物を除去することができる。
【0107】
粉末床を設ける際には、物品から、例えば、ブラッシングまたは圧縮エアのような通常の方法を手段することによって粉末残渣を除去することができる。液体を使用する際には、これらを、例えば、物品に対して不活性であるさらなる溶媒の手段によって洗い流すことができ、および/または物品を乾燥させることができる。
【0108】
好ましくは、本方法は下記から選択される少なくとも1つのさらなる方法ステップ、またはさらなる方法ステップの組み合わせを含む場合がある:
A)方法ステップb)の前に、加法的製造によって生成された物品を基板から取り外すステップ;
B)方法ステップb)の前に、加法的方法で製造された物品から未反応の第1の材料、特に液体材料、粉末または支持材料を少なくとも部分的に除去するステップ;
C)方法ステップa)において加法的製造によって生成された物品を、化学線の手段によって後硬化させるステップ;
D)方法ステップb)の後に処理された物品を取り出す前に、加熱された液体または加熱された粉末床を、200℃未満の領域、特に160℃以下の領域、好ましくは130℃以下の領域、さらに好ましくは50℃以下の領域、さらに好ましくは30℃以下の領域の温度に冷却するステップ;
E)方法ステップb)の間または後に、機械的手段によって物品から第2の物質を少なくとも部分的に除去すること、例えば、濾過、吹き込み、吸引、振盪、紡糸またはこれらの少なくとも2つの組合せの手段によって第2の物質を除去するステップ;および
F)方法ステップb)の後、液体または粉末から物品を除去した後、第2の材料を溶媒で洗浄除去するステップであって、該溶媒は、T≦200℃の領域、特に≦150℃の領域、好ましくは≦100℃の領域、さらに好ましくは≦60℃の領域、さらに好ましくは≦40℃の領域、さらに好ましくは≦20℃の領域の温度で、好ましくは≦30分の期間、特に≦25分の期間、好ましくは≦20分の期間、さらに好ましくは≦15分の期間、さらに好ましくは≦10分の期間、さらに好ましくは≦5分の期間で第1の材料の溶媒または共反応物ではない、ステップ。当該期間は、好ましくは≧1秒~≦30分、または好ましくは≧10秒~≦20分である。
【0109】
洗浄による除去において、第2の材料は、好ましくは第1の洗浄工程において、物品の全面積に対して90%を超える程度まで、または好ましくは95%を超える程度まで、または好ましくは99%を超える程度まで除去される。
【0110】
したがって、上述のステップA)~F)は物品が方法ステップb)において粉末床または液体で十分に処理された場合に、それぞれ単独で、または基本的に自由に選択することができる組み合わせで実行することができるさらなる有利なステップを記載する。
【0111】
方法ステップA)により、特に簡単な方法で粉末床または液体で物品を処理することができ、また特に均一な特性を得ることができる。
【0112】
方法ステップB)は、物品上に存在する破壊物質が不均一性をもたらすことなく、物品上の粉末床または液体の直接作用を可能にすることができる。
【0113】
方法ステップC)はさらに、物品が、同時に均一な特性を有する特に高い安定性を達成することを可能にする。
【0114】
方法ステップD)はまた、粉末床または液体からの物品の手順的に有利な除去を可能にする。
【0115】
方法ステップE)はまた、物品を高純度で得ることを可能にする。この方法ステップは、粉末床の残留物および液体の残留物の両方に対して行うことができる。同じことが、原則として、方法ステップF)にも当てはまる。
【0116】
物品が得られた後、すなわち、とりわけ方法ステップb)の前に、標準的な後処理方法により、その寸法安定性を増加させることができる。例えば、適当なコーティングまたは注入材料、例えば、水性ポリウレタン分散液を用いたコーティングまたは注入、その後、不活性液または不活性粉末材料に触れる前に、軟化温度(軟化温度は未処理物品の融解温度として定義される)より20℃以上低い温度で乾燥および硬化させることによっても寸法安定性を増大させることができる。
【0117】
さらなる好ましい実施形態では、方法ステップb)において物品を液体または粉末床と接触させる間に、液体または粉末床を少なくとも断続的に高圧下に置く。好ましくは相対圧力、すなわちゲージ圧は≧1バール~≦1000バール、特に≧1.5バール~≦200バール、好ましくは≧2バール~≦50バール、より好ましくは≧2.5バール~≦20バール、最も好ましくは≧4バール~≦10バールの範囲内である。この加圧は、適当な気体を噴射する手段によって、またはオートクレーブ容積を機械的に減少させることによって、グラスまたはメタルで作られた適当なオートクレーブ内で行うことができる。液体または粉末床への高圧の適用において、液体または粉末床の温度は、加圧を伴わないプロセス変法と比較して、例えば≧5℃または≧10℃低下され得る。
【0118】
さらに、方法ステップb)において物品を液体または粉末床と接触させる間に、液体または粉末床を高圧下または減圧下に少なくとも断続的に置くことが好ましい。好ましくは相対圧力、すなわち減圧は≧0.01bar~≦1bar、特に≧0.03bar~≦0.9bar、好ましくは≧0.05bar~≦0.8bar、より好ましくは≧0.08bar~≦0.7barの範囲内である。この排気は、オートクレーブ中に存在する適切な気体を取り除く手段によって、またはオートクレーブの容積を機械的に増加させることによって、ガラスまたはメタルで作られた適切なオートクレーブ中で行うことができる。液体または粉末床への減圧の適用において、液体または粉末床の温度は、加圧を伴わないプロセス変法と比較して、例えば≧5℃または≧10℃低下され得る。
【0119】
さらに、方法ステップb)において、物品を液体または粉末床の形態の第2の材料と接触させる間、粉末床または液体を少なくとも断続的に不活性ガスで満たすか、または不活性ガスを少なくとも断続的に液体に導くことが好ましい。ここで、不活性ガスとは、特に、物品の材料および粉末床または液体の材料と反応しないようなガスを意味すると理解されてもよい。より具体的には、ガスが物品および粉末床または液体の材料に対して酸化特性を全く有さないように構成されるべきである。不活性気体は、より好ましくはヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)および二酸化炭素(CO2)からなる群から選択され得る。
【0120】
方法ステップb)で確立された温度Tは摂氏度で表され、第1の材料の破壊温度の平均≦95%であることがさらに好ましく、破壊温度は第1の材料の20℃/分の加熱速度での窒素下でのTGA分析における10重量%の損失として決定される。これにより、物品の効果的な処理を、物品上で穏やかな処理と組み合わせることが可能になる。
【0121】
方法ステップb)における温度Tは、≧40℃~≦2000℃の範囲内であることがさらに好ましい場合がある。ここで、温度Tは、≧50℃から≦1500℃の範囲内、さらに好ましくは≧60℃から≦1000℃の範囲内、さらに好ましくは≧80℃から≦800℃の範囲内、さらに好ましくは≧100℃から≦600℃の範囲内、さらに好ましくは≧140℃から≦300℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0122】
方法ステップb)における温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも50℃低い温度よりも高く、温度Tは第1の材料のVicat軟化温度よりも150℃高い温度よりも低いことがさらに好ましく、Vicat軟化温度はDIN EN ISO 306:2014-03によって確認することができる。方法ステップb)における温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)より30℃低い温度よりも高く、温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも120℃高い温度よりも低いことが特に好ましく、方法ステップb)における温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも25℃低い温度よりも高く、温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも100℃高い温度よりも低いことがさらに好ましく、方法ステップb)における温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも20℃低い温度よりも高く、温度Tは第1の材料のVicat軟化温度よりも90℃高い温度よりも低いことがさらに好ましく、方法ステップb)における温度Tは第1の材料のVicat軟化温度(VST)よりも15℃低い温度よりも高いことがさらに好ましく、および温度Tが第1の材料のビカー軟化温度より80℃高い温度未満であることが好ましい。これにより、物品に対して効果的な処理を、物品に対して穏やかな処理と組み合わせることが可能になる。
【0123】
さらに好ましい実施形態において、方法ステップb)における温度Tは実用において、溶融性ポリマーを第一の材料として使用し、この温度における弾性率を、DMAの手段によって決定し、溶融性ポリマーの貯蔵弾性率をG-(1/sのせん断速度でのISO 6721-10:2011-08に対するDMA、プレート/プレート振動粘度計)として、≧105Pa~≦108 Pa、好ましくは≧5.105Pa~≦5.107 Pa、より好ましくは≧1.106Pa~≦1.10Paとするように、さらに選択される。これにより、グリーン体の変形の危険性を最小限に抑えつつ、物品を効果的に処理することができる。
【0124】
さらに好ましくは物品の効果的な処理のために、方法ステップb)において得られた物品と粉末床との接触は≧1分~≦174時間の範囲内の期間行われる場合がある。さらに好ましくは、方法ステップb)において得られた物品と粉末床との接触は≧10分~≦48時間の範囲内、さらに好ましくは≧15分~≦24時間の範囲内、さらに好ましくは≧20分~≦8時間の範囲内の期間行われてもよい。
【0125】
例えば、上記の期間の場合、特に≧1分~≦72時間の処理時間の場合、方法ステップb)における物品の処理のために、粉末床または液体の温度Tは、好ましくは方法ステップb)の過程で変化し、温度曲線が、任意選択で-190℃~+2000℃の温度を含むことができる場合がさらにあり得る。これは、特に適応的な処理を可能にし、処理中に物品の変化する特性に反応するか、またはそれを考慮することが可能である。
【0126】
さらなる好ましい実施形態では、第1の材料がバインダーを含む場合、摂氏で表される温度Tが架橋後のバインダーの破壊温度の≦95%、好ましくは≦90%、より好ましくは≦85%であり、破壊温度は窒素流中20℃/分の加熱速度での熱重量分析において≧10%の質量損失が確立される温度として定義される。この構成においても、物品の効果的かつ同時に穏やかな処理を可能にすることが可能である。
【0127】
以下の表1および表2には本発明により特に好ましいが、いかなる点においても限定されない、粉末床または液体のための第1の材料および材料の組み合わせの例が明記されている。
【0128】
本発明の方法における第1の材料としての方法ステップa)のための溶融可能なポリマーまたは熱可塑性樹脂と、方法ステップb)のための第2の材料としての液体との特に好適な組み合わせの例を、以下の表1に列挙する:
【0129】
本発明の方法における、第1の材料としての方法ステップa)のための溶融可能なポリマーまたは熱可塑性物質と、方法ステップb)のための第2の材料としての粉末床の材料との特に適切な組み合わせの例を、以下の表2に列挙する:
【0130】
本発明はさらに、上記に詳細に記載された方法によって得ることができる処理された物品を提供する。このような物品は特に、改善された機械的特性を有することができる。本発明の方法によって製造される物品は、500μm以下、好ましくは200μm以下、または好ましくは100μm以下、または好ましくは10~500μmの範囲内、または好ましくは50~100μmの範囲内の平均粗さRa(DIN EN ISO 4287:2010-07)を有する表面を有する。
【0131】
このような物品はその特に高い安定性、同時に、物品による特に均質な機械的特性についても特に注目に値する。
【0132】
機械的性質に関しては、特に、高い物理的安定性および引張強さの尺度としての密度、特に層の平面における物品の安定性に言及すべきである。
【0133】
この点に関して、DIN EN ISO 527-2:2012による引張試験において、製品は未処理物品の引張強さよりも大きい引張強さを有すること、言い換えれば、処理物品の層は方法ステップb)の後に、方法ステップb)の前よりも大きい互いに対する引張強度を有することが特に好ましい。ここで、DIN EN ISO 527-2:2012による引張試験において、処理された物品の層は未処理物品の引張強度よりも、≧10%、好ましくは≧20%、さらに好ましくは≧30%、さらに好ましくは≧50%、さらに好ましくは≧100%の大きさだけ大きい、互いに対する引張強度を有することが特に好ましく、ここで、上記の値は、未処理物品または方法ステップb)の前の物品の引張強度に関する。
【0134】
さらに、処理された物品の密度が未処理の物品の密度よりも大きいこと、言い換えれば、方法ステップb)の後の密度が方法ステップb)の前の密度よりも大きいことが好ましい場合がある。ここで、処理された物品の密度が、未処理物品の密度よりも、未処理物品の密度に基づいて、または方法ステップb)の前の物品の密度に基づいて、≧2%、好ましくは≧5%、さらに好ましくは≧8%、さらに好ましくは≧10%大きいことが特に好ましい。
【0135】
これらの機械的特性は特に、従来の加法的に製造される物品と比較することによって、ここに記載される方法によって改善され得る。
【0136】
本方法のさらなる利点および技術的特徴については、以下の物品の説明が参照され、その逆も同様である。
【0137】
実施例
以下では、方法ステップa)においてFDMまたはSLS法またはDLP法によって生成され、方法ステップb)によって処理された物品が方法ステップb)の前後でその特性について検査される、様々な実験を詳細に説明する。
【0138】
試験方法:
ショアA:DIN ISO 7619-1:2012-02によれば、必要な試験片の厚さは、得られた試験片を複数積み重ねることによって達成された。
【0139】
引張試験:DIN EN ISO 527-2:2012に従って、試験片は、測定前24時間、標準気候条件下で保存されなかった。
【0140】
IR (ATR):2170~2380の波数範囲におけるイソシアネートバンドの最大高さと2600~3200の波数範囲におけるCH伸縮振動の最大高さの比の評価。
【0141】
機器:
FDMプリンタ:実験のために、Massportal Pharaoh XD 20 FDM/FFF 3Dプリンタを使用した。これは、非常にしっかりと閉じた構築空間およびボーデン押出機を特徴とする。
SLSプリンタ:実験のために、Farsoon FS251P 3Dプリンタを使用した。
DLPプリンタ:実験のために、Autodesk Ember 3Dプリンタを使用した。
【0142】
出発物質:
シリコーン油(シリコーン油浴):LABC Labortechnik Zillger KGからのSilotherm200 Infrasolv、無色のシリコーン油(熱担体油)を、専門の実験室供給業者を介して供給し、供給源として使用した。
NaCl:粒径0.1~0.9mmの食用塩。
砂(ろ過砂):粒度0.4~0.8mmの石英砂。
樹脂A:
- 1,6-HDI三量体とヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物であって、以下の理想化された構造を有する反応物25g:
- 50gのポリウレタンアクリレートEbecryl 4101(Allnex SAから供給)
- アクリル酸ブチル25g(Sigma Aldrichから入手)
- 光開始剤Omnirad 1173(IGM Resinsから入手)3g
(あるいは、Autodesk Ember 3Dプリンターを使用した場合、1.5gのIGM Resinsからの光開始剤Omnirad BL 750および0.13gの2,5-ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェンを、Omnirad 1137の代わりにフリーラジカルスカベンジャーとして使用した)。
- Desmodur(登録商標)N3600(Covestro Deutschland AG)55.6重量%およびJeffcat(登録商標)Z110(Huntsman Co.から入手)44.4重量%からなる触媒錯体0.5g。
【0143】
これらの樹脂A出発材料をThinky ARE250遊星ミキサー中で混合し、2000回転/分の速度で室温で約2分間混合した。
【0144】
実験17:フリーラジカル硬化性樹脂Aを、異なる寸法のコーティングバーを用いて、ガラスプレート上に3層ずつ、上下に延伸し、従って、DLP 3Dプリンターの様式で3D印刷法をシミュレートした。ガラス板は酢酸エチル中の大豆レシチンの1%溶液で予め処理し、乾燥させた。大豆レシチンは、後に再び硬化フィルムを基材から剥離することを可能にするための剥離剤として作用した。寸法は400μm、300μmおよび200μmであった。適用したそれぞれの層を、5m/分のベルト速度で、水銀およびガリウム放射線源を用いて、Superfici UV硬化ユニット中でそれぞれ硬化させた。ランプ出力とベルト速度は被覆基板に作用する1300mJ/cm2の放射強度をもたらした。これにより、合計約900μmの3層構造が得られた。硬化したフィルムをガラス基板から注意深く除去して、機械的およびIR分光分析特性決定のための試験片を得た。
【0145】
特に断らない限り、すべての赤外スペクトルは、ATRユニットを備えたBruker FT-IRスペクトロメータで測定した。
【0146】
フィルム上の遊離NCO基の変化の相対測定のために、Bruker FT-IR分光計(Tensor II)を使用した。サンプルを白金ATRユニットと接触させた。試料の接触面積は2×2mmであった。測定の過程で、IR放射線は、波数に従って試料中に3~4μm浸透した。次いで、サンプルから吸収スペクトルを得た。異なる硬度のサンプルの不均一な接触を補償するために、2600~3200(CH2、CH3)の波数範囲におけるベースライン補正および正規化を、すべてのスペクトルについて行った。「遊離」NCO基のピーク高さを2170~2380の波数範囲で決定し、最高ピークに対するNCOシグナルの比を2900~3200(CH)の範囲で確認した。
【0147】
DIN ISO 7619-1:2012-02に基づくショアA硬度の測定のために、膜の個々の層を組み合わせて、少なくとも6mmの高さの試験片を形成し、硬度値を決定した。
【0148】
実験18:実験17に記載したように、フリーラジカル硬化性樹脂Aをガラス板上に引き下げ、UV硬化させ、ガラス基板から除去した。続いて、自立フィルムを塩床に垂直に導入し、その結果、それは塩によって完全に取り囲まれた。その後、オーブン中、185℃で1時間、標準雰囲気下で保存した。IR分光法および硬度測定を、実験17に記載したように、この後硬化フィルムについて行った。
【0149】
実験19*:実験17に記載したように、フリーラジカル硬化性樹脂Aをガラス板上に引き下げ、UV硬化させ、ガラス基板から除去した。続いて、自立フィルムをオーブンに垂直に自立させて導入した。その後、オーブン中、185℃で1時間、標準雰囲気下で保存した。このフィルムは硬化プロセス中に湾曲してUを与え、これは硬化後に寸法的に安定であった。実験17に記載したように、本後硬化フィルムについてIR分光法および硬度測定を行った。
【0150】
本発明に従って使用されるTPUは、2つの標準的な加工方法:プレポリマー法およびワンショット/スタティックミキサー法によって製造された。
【0151】
プレポリマー法では、ポリオールまたはポリオール混合物を180~210℃に予熱し、最初にイソシアネートの一部を充填し、200~240℃の温度で変換する。ここで用いた二軸押出機の速度は約270~290rpmである。この先行する部分反応は、残留イソシアネートおよび連鎖延長剤と完全に反応する、直鎖状の、わずかに予備延長されたプレポリマーを、押出機のさらに下方に与える。この方法は、EP-A 747 409に一例として記載されている。
【0152】
ワンショット/スタティックミキサー法では、全てのコモノマーを、スタティックミキサーまたは別の好適な混合装置を手段することにより、短時間(20秒未満)で高温(250℃を超える)で均質化し、次いで、完全に反応させ、90~180℃の温度および260~280rpmのスピードで二軸スクリュー押出機を手段することにより排出する。この方法は、一例としてDE 19924089に記載されている。
【0153】
TPU 1.75mmフィラメント
TPU (熱可塑性ポリウレタン)は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに基づいて1000g/molの数平均分子量を有する1モルのポリエーテルポリオール(DuPont)と、5.99モルのブタン-1,4-ジオールと、>98重量%の4,4’-MDIを有する6.99モルの工業用ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)と、0.25重量%のIrganox(登録商標)1010(BASF SEからのペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)と、0.3重量%のロキサミド3324とからプレポリマー法によって調製した。
【0154】
フィラメントを標準的な方法によって粒状材料から押し出し、水浴中で冷却し、熱風ゾーン中で乾燥させ、ワインダーを用いて巻き取った。3Dプリンタで使用する前に、フィラメントを40℃で48時間乾燥させた。
【0155】
原料TPU 1/TPU 2からなるTPU粉末ブレンド:TPU1およびTPU 2の粉末から、それぞれの成分を秤量して粉末ブレンドを製造した。2つの材料を市販のTM5 Thermomix中で設定10で2×5秒間混合した。
【0156】
原料TPU 1
TPU(熱可塑性ポリウレタン)1を、約56.7重量%のアジピン酸および約43.3重量%のブタン-1,4-ジオールに基づいて約900g/molの数平均分子量を有するポリエステルジオール(Covestro)1モルと、約1.41モルのブタン-1,4-ジオールと、約0.21モルのヘキサン-1,6-ジオールと、約1.62モルの工業用ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)と、>98重量%の4,4’-MDIと、0.05重量%のIrganox(登録商標)1010(BASF SEからのペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)と、1.1重量%のLicowax(登録商標)E(Clariantからのモンタン酸エステル)と、250ppmのジオクト酸スズとから調製した。
【0157】
原料TPU 2
TPU (熱可塑性ポリウレタン)2を、約56.7重量%のアジピン酸および約43.3重量%のブタン-1,4-ジオールに基づいて約900g/molの数平均分子量を有するポリエステルジオール(Covestro)1モルと、約2.38モルのブタン-1,4-ジオールと、約0.22モルのヘキサン-1,6-ジオールと、約2.6モルの工業用ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)と、>98重量%の4,4’-MDIと、0.05重量%のIrganox(登録商標)1010(BASF SEからのペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)と、1.1重量%のLicowax(登録商標)E(Clariantからのモンタン酸エステル)と、250ppmのジオクト酸スズとから調製した。
【0158】
TPUに対して0.2重量%の疎水化ヒュームドシリカを流動剤(Evonik社のAerosil(登録商標)R972)として、原料TPU 1および原料TPU 2の下で調製したTPUに添加し、この混合物を極低温条件下(極低温粉砕)でピンドディスクミルで機械的に処理して粉末を得、次いで篩い分け機の手段によって分級した。90質量%の粒子径は140μm未満であった(レーザー回析(HELOS粒径解析)の手段により測定)。
【0159】
1.75mmフィラメントPC1(Makrolon(登録商標)XT5010、MVR(300℃/1.2kg)に基づく)34 cm3/10分:フィラメントを、通常法によって顆粒状物質から押し出し、空冷し、ワインダーを使用して巻き取った。
【0160】
工程1において、FDM印刷法(条件については表3を参照)により、TPU AフィラメントおよびPC1 S2を使用して、ISO 527-2 2012に準拠した形態の引張試験片を作製した。
【0161】
また、ステップ1において、原料TPU 1と原料TPU 2 S2との粉末混合物から、SLS印刷法(条件については表3を参照)によって製造されたものも、ISO 527-2 2012に準拠した引張試験片であった。
【0162】
また、DLP印刷法(条件については表3参照)により工程1で製造したものは、ISO 527-2 2012に準拠した形態のS2引張試験片であった。
【0163】
工程2では、得られた引張試験片を熱後硬化に供した。比較実験は*によって同定され、硬化後の条件に変動がある(表4参照)。その後の熱処理は空気循環乾燥キャビネット中で、規定温度で、250mlのアルミニウム皿中の媒体中に試験される試験片を水平に配置し、媒体で完全に覆い、乾燥キャビネットを室温から目標温度まで30分以内に加熱しながら行った。目標温度に達した後、試験片を目標温度で所望の時間加熱した。その後、アルミニウム皿を熱いうちに乾燥キャビネットから取り出し、実験台上で室温に冷却した。室温に達した後、しかし30分後までに、サンプルを取り出し、乾燥させ、そして例えば水ですすぐことによって培地を除去した。
【0164】
熱後硬化後、得られた引張試験片を、機械的および化学的組成についてさらに分析した(表5参照)。比較実験の結果は、*によって再び同定される。
【0165】
【0166】
FDM法では、外部層(トップ固体層/下部固体層)なしで印刷を行った。2つの外側トラック(周囲)および45°の充填物を使用した。すべてのサンプルをZ方向、すなわち構築プラットフォーム上に垂直に印刷した。
【0167】
方法ステップ1の後に作製された物品の特性は、以下の表5に比較実験として詳細に記載されている。
【0168】
【0169】
本発明の方法についての結果の比較は、非熱処理試験片と比較して、本発明による熱処理後の機械的特性の明確な改善を示す。さらに、空気よりも高い密度を有する媒体中での加熱貯蔵は、試験片が重力にあまり積極的にさらされないので、試験片の寸法安定性の明確な改善を達成した。これは、実験19の比較例で明らかなように、支持されていない幾何学的形状を有する複雑な構成要素が熱的に後硬化される場合に特に明らかである。支持されていない幾何学的形状は、硬化プロセス中に重力によって変形され、この変形された形状で硬化した。
【国際調査報告】