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特表2022-507157調節可能な赤外透過率を有するガラスセラミックデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】調節可能な赤外透過率を有するガラスセラミックデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20220111BHJP
   C03C 4/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G02B5/22
C03C4/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525590
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019058311
(87)【国際公開番号】W WO2020101874
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/768,433
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デイネカ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コール,ジェシー
【テーマコード(参考)】
2H148
4G062
【Fターム(参考)】
2H148CA00
2H148CA05
2H148CA06
2H148CA12
2H148CA13
2H148CA17
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA02
4G062EA03
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4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062ED01
4G062EE01
4G062EE02
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4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
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4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH08
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062MM23
4G062NN01
4G062NN12
4G062NN15
(57)【要約】
退色領域および未退色領域を有するガラスまたはガラスセラミック基板を備えたデバイス、装置、および方法が開示されている。その例は、IR波長光を透過させる領域、およびIR光に実質的に不透明である領域を有する基板を備える。その例は、可視波長光および/またはUV波長光に対していくらかのまたは全ての領域において追加の不透明性を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスにおいて、
約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含むガラスまたはガラスセラミック材料から作られた基板、
を備え、
前記基板は、未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、700~2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘る該未退色/退色領域における平均吸光度比は7.5以上であり、
前記基板は、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明である、デバイス。
【請求項2】
前記基板が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Zn、Se、Nb、Ru、Rh、In、Sn、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの任意の組合せがドープされることのある、タングステンおよび/またはモリブデンを含む酸化物または亜酸化物からなる変更可能な結晶相を含み、この変更可能な成分の量が約0.35モル%から約30モル%である、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記基板がドーパントを含み、該ドーパントが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnからなる群より選択される元素を含む、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
前記基板が、
315nmから400nmの紫外線Aの波長範囲、
280nmから315nmの紫外線Bの波長範囲、および
100nmから280nmの紫外線Cの波長範囲、
の1つ以上において実質的に不透明である、請求項1から3いずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
装置において、
ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置する光学デバイスであって、該ガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含む、光学デバイス、
を備え、
前記パネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、該退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、
前記パネルは、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明であり、
前記パネルの退色個別領域は、前記光学デバイスに隣接して位置している、装置。
【請求項6】
前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光学検出器を含む、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光源を含む、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記退色個別領域が複数の退色個別領域を含み、各領域が、前記パネルの主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている、請求項5から7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記パネルが湾曲した主面を含む、請求項5から8いずれか1項記載の装置。
【請求項10】
隠れた近赤外(NIR)光学デバイスであって、
ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置するNIRカメラであって、該ガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含む、NIRカメラ、
を備え、
前記パネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、該退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、
前記パネルは、100nmから700nmのUVおよび可視波長範囲において実質的に不透明であり、
前記パネルの退色個別領域は、前記NIRカメラのレンズに隣接して位置している、隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2018年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/768433号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、ガラスおよび/またはガラスセラミックを含む物品に関し、より詳しくは、そのような物品を形成するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の波長範囲において透明であり、他の点では、より大型のパネルに調和する「窓」を備えたパネルの領域は、「デッドフロント」と称されることがある。一例において、デッドフロントは、隠し検出器またはカメラを含むことがある。商業的に価値のある波長範囲の1つに、近赤外(NIR)がある。
【0004】
市販の射出成形可能な黒色のNIR透過プラスチックを利用して、NIRカメラ/センサ/などの個別の「デッドフロント」筐体を製造することができる。これらのプラスチックは、UVおよび可視光遮蔽性であるが、IRおよびマイクロ波透過性であることがある。しかしながら、そのような材料には、いくつかの欠点がある。第一の欠点は、ガラスまたはガラスセラミックと比べて不十分な機械的性能である。第二の欠点は費用であり、これは重大であり得る。第三の欠点はNIR光の漏れである。何故ならば、筐体はNIRにおいて完全に透明であろうし、このことは、センサ/検出器の性能を損ない、また前記デバイスが、これらの波長で作動する他のデバイスからの望ましくない介入を受け得るからである。NIR遮蔽コーティングが使用されることがあるが、一般に、マイクロ波周波数を減衰させる金属薄膜からなり、これらの周波数は、多くの場合、デッドフロントの背後にあるカメラなどのデバイスと無線通信するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、新たなデバイス、例えば、デッドフロントおよび/または隠しデバイスの開発が必要とされている。また、NIR波長が透過できる材料であって、効果的なデッドフロント隠蔽を与える材料も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの技術的難題などは、以下の開示に記載された例により対処される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】いくつかの例示の実施の形態による、銀ドープ材料の吸光度スペクトル
図1B】いくつかの例示の実施の形態による、図1Aからの材料の平均吸光度データの表
図2A】いくつかの例示の実施の形態による、別の銀ドープ材料の吸光度スペクトル
図2B】いくつかの例示の実施の形態による、図2Aからの材料の平均吸光度データの表
図3A】いくつかの例示の実施の形態による、コバルトドープ材料の吸光度スペクトル
図3B】いくつかの例示の実施の形態による、図3Aからの材料の平均吸光度データの表
図4】いくつかの例示の実施の形態によるデバイスまたは装置の説明図
図5】いくつかの例示の実施の形態によるデバイスまたは装置の説明図
図6】いくつかの例示の実施の形態による別のデバイスまたは装置の説明図
図7】いくつかの例示の実施の形態によるデバイスまたは装置の説明図
図8A】いくつかの例示の実施の形態による別のデバイスまたは装置の説明図
図8B】いくつかの例示の実施の形態による別のデバイスまたは装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の記載および図面は、当業者が実施できるほど十分に特定の実施の形態を説明している。他の実施の形態は、構造的、論理的、電気的、過程のおよび他の変更を含むことがある。いくつかの実施の形態の部分および特徴が、他の実施の形態の部分および特徴に含まれる、またはそれに代えて使用されることがある。請求項に述べられた実施の形態は、それらの請求項の利用可能な同等物を全て包含する。
【0009】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、その説明から当業者には明白である、または特許請求の範囲および添付図面と共に、以下の説明に記載されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0010】
ここに用いられているように、「および/または」という用語は、2つ以上の項目のリストに使用されている場合、列挙された項目のいずれか1つは、それ自体で利用されても、または列挙された項目の2つ以上の任意のいずれの組合せで利用されても差し支えないことを意味する。例えば、組成物が、成分A、B、および/またはCを含有すると記載されている場合、その組成物は、Aのみを、Bのみを、Cのみを、AとBを組合せで、AとCを組合せで、BとCを組合せで、もしくはA、B、およびCを組合せで、含有し得る。
【0011】
この文書において、第1と第2、上部と底部などの関係語は、必ずしも、どのような実際のそのような関係、もしくはそのような実体または作用の間の順序も要求または暗示せずに、ある実体または作用を別の実体または作用から区別するためだけに使用されている。
【0012】
本開示の改変は、当業者および本開示を行うまたは利用する者に想起されるであろう。したがって、図面に示され、先に記載された実施の形態は、単に、説明目的のためであり、均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈されるように、本開示の範囲を限定する意図はなく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義されることが理解される。
【0013】
本開示の構造、および他の構成要素は、どの特定の材料にも限定されないことが、当業者に理解されるであろう。ここに開示された本開示の他の例示の実施の形態は、特に明記のない限り、幅広い材料から形成されてもよい。
【0014】
本開示の目的に関して、「結合された」(その形態の全て:結合する、結合している、結合されたなど)という用語は、概して、互いの直接的または間接的な2つの構成要素の結合(電気的または機械的)を意味する。そのような結合は、事実上静止していても、事実上可動性であってもよい。そのような結合は、2つの構成要素と、互いとの単一体として一体成形された任意の追加の中間部材により、または2つの構成要素により(電気的または機械的)達成されてもよい。そのような結合は、特に明記のない限り、事実上永久的であっても、もしくは事実上取外し可能または解放可能であってもよい。
【0015】
ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要はないが、必要に応じて、許容差、変換係数、丸め、測定誤差など、並びに当業者に公知の他の要因を反映して、近似および/またはそれより大きいか小さいことがあることを意味する。範囲の値または端点を記載する上で「約」という用語が使用される場合、その開示は、言及されている特定の値または端点を含むと理解すべきである。明細書における範囲の数値または端点に「約」が付いていようとなかろうと、範囲の数値または端点は、2つの実施の形態:「約」により修飾されているもの、および「約」により修飾されていないものを含む意図がある。範囲の各々の端点は、他の端点に関してと、他の端点と関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0016】
特に明記のない限り、全ての組成は、バッチ配合されたままのモルパーセント(モル%)で表されている。当業者に理解されるように、様々な溶融成分(例えば、フッ素、アルカリ金属、ホウ素など)は、成分の溶融中に異なるレベルの気化(例えば、蒸気圧、溶融時間および/または溶融温度の関数として)に曝されることがある。それゆえ、「約」という用語は、そのような成分に関して、ここに与えられたバッチ配合されたままの組成と比べて、最終物品を測定したときに、約0.2モル%以内の値を包含することが意図されている。先のことを念頭に置いて、最終物品とバッチ配合されたままの組成との間の実質的な組成の等価性が予測される。
【0017】
本開示の目的に関して、「バルク」、「バルク組成」、および/または「全体組成」という用語は、全物品の全体組成を含むことが意図されており、これは、結晶相および/またはセラミック相の形成のためにバルク組成と異なるかもしれない「局所組成」または「局部組成」と区別されるであろう。
【0018】
ここに用いられているように、「物品」、「ガラス物品」、「セラミック物品」、「ガラスセラミック」、「ガラス要素」、および「ガラスセラミック物品」という用語は、交換可能に使用され、最も広い意味で、ガラスおよび/またはガラスセラミック材料から全体がまたは部分的に製造された任意の物体を含むために使用されることがある。
【0019】
ここに用いられているように、「ガラス状態」という用語は、結晶化せずに、剛性状態に冷却された、溶融の生成物である、本開示の物品内の無機非晶相材料を称する。ここに用いられているように、「ガラスセラミック状態」は、ガラス状態と、ここに記載されたような、「結晶相」および/または「結晶性沈殿」との両方を含む、本開示の物品内の無機材料を称する。
【0020】
熱膨張係数(CTE)は、×10-7/℃で表され、特に明記のない限り、約0℃から300℃の温度範囲に亘り測定された値を表す。「比較的低いCTE」および「低CTE」という用語は、少なくとも約5×10-7/℃だけコアガラス層の出発組成物のCTEより低いCTEを有する出発ガラス組成物(例えば、ドロー、積層、および/またはイオン交換前の)に関して、本開示において交換可能に使用される。クラッドガラス層のCTEは、約5×10-7/℃から約70×10-7/℃、約10×10-7/℃から約60×10-7/℃、または約10×10-7/℃から約50×10-7/℃の範囲の量だけ、コアガラス層のCTEより低いこともある。例えば、コアガラス層は、約100×10-7/℃のCTEを有することがあり、クラッドガラス層は、約50×10-7/℃のCTEを有することがあり、よって、コアガラス層とクラッドガラス層のCTEの間に約50×10-7/℃の差がある。
【0021】
「薄いガラス」または「比較的薄いガラス」という用語は、本開示における積層ガラス構造に関して、交換可能に使用され、約3mmを超えない全厚を有する積層構造を意味する意図がある。
【0022】
「機械的に強化されたガラス積層板」、「機械的に強化されたガラス積層構造」および「機械的強化」という用語は、高CTEコアガラスを低CTEクラッドガラスに積層することによって形成され、それによって、積層後に積層板が冷却されたときにクラッドガラス中に圧縮応力が生じるガラス積層板を意味するために、本開示の積層ガラス構造に関して使用される。これらの圧縮応力は、外部から印加された機械的応力を相殺することができ、これには、積層板を強化する正味の効果がある。
【0023】
本記載に使用されるような「化学的に強化された」および「化学的強化」という用語は、本開示の分野の当業者に理解されるように、主面およびエッジの1つ以上でガラスの表面領域に圧縮応力を生じるためにイオン交換過程を使用して強化されたガラス(例えば、コアガラス層、クラッドガラス層など)を意味することが意図されている。
【0024】
本開示の材料、デバイス、および装置の選択された例により、追加のイオン交換処理を必要としないレベルでクラッド/コア層のCTE不一致による強化が可能になり、これにより、比較的低コストで、軽量の、耐久性の高い積層ガラスセラミック物品が得られる。
【0025】
ここに用いられているように、「透過」および「透過率」は、吸収、散乱、および反射を考慮に入れた、外部透過または透過率を称する。フレネル反射は、ここに報告された透過および透過率値から差し引かれていない。
【0026】
ここに用いられているように、「不透明」という用語は、1.0OD/mm以上、1.3OD/mm以上、または1.5OD/mm以上、もしくは2OD/mm以上、の平均吸光度として定義される。一例において、「不透明」と記載される材料は、粗い粒子による光の散乱によらず、光の吸収のためにこの性質を有する。
【0027】
ここに用いられているように、「ヘイズ」という用語は、ASTM手順D1003にしたがって測定された、約1mmの透過経路を有する試料における±2.5°の角度の円錐の外側に散乱した透過光の百分率を称する。様々な例によれば、ある物品は、低いヘイズを示すことがある。例えば、その物品は、約20%以下、または約15%以下、または約12%以下、または約11%以下、または約10.5%以下、または約10%以下、または約9.5%以下、または約9%以下、または約8.5%以下、または約8%以下、または約7.5%以下、または約7%以下、または約6.5%以下、または約6%以下、または約5.5%以下、または約5%以下、または約4.5%以下、または約4%以下、または約3.5%以下、または約3%以下、または約2.5%以下、または約2%以下、または約1.5%以下、または約1%以下、または約0.5%以下、または約0.4%以下、または約0.3%以下、または約0.2%以下、または約0.1%以下、もしくはそれらの間の任意と全ての値および範囲のヘイズを示すことがある。その物品のヘイズは、1mm厚の試料について、ヘイズ測定に関して先に概説された手順にしたがって測定される。
【0028】
ここに用いられているように、「光学密度単位」、「OD」および「OD単位」は、I0は、試料に入射する光の強度であり、Iは、試料を透過した光の強度である、OD=-log(I/I0)により与えられる分光計により測定される、試験される材料の吸光度の尺度として一般に理解されるような、光学密度単位を称するために、本開示において交換可能に使用される。さらに、本開示に使用される「OD/mm」または「OD/cm」という用語は、光学密度単位(すなわち、光学分光計により測定されるような)を試料の厚さ(例えば、ミリメートルまたはセンチメートルの単位)で割ることにより決定される、吸光度の正規化された尺度である。それに加え、特定の波長範囲に亘り言及された任意の光学密度単位(例えば、280nmから380nmのUV波長における3.3OD/mmから24.0OD/mm)は、指定波長範囲に亘る光学密度単位の平均値として与えられる。
【0029】
またここに用いられているように、「[成分]を含まない[ガラスまたはガラスセラミック]」(例えば、「カドミウムおよびセレンを含まないガラスセラミック」)という用語は、列挙された成分を完全に含まず、または実質的に含まず(すなわち、<500ppm)、列挙された成分が、ガラスまたはガラスセラミック中に能動的に、意図的に、または目的をもって添加またはバッチ配合されないように調製されるガラスまたはガラスセラミックを示す。
【0030】
本開示の物品は、ここに概説された組成の1つ以上を有するガラスおよび/またはガラスセラミックでできている。その物品は、いくつの用途にも用いることができる。例えば、基板、素子、レンズ、カバーおよび/またはいくつの光学素子関連用途および/または審美的用途における他の要素の形態で用いることもできる。
【0031】
その物品は、バッチ配合されたままの組成物から形成され、ガラス状態で注型される。その物品は、後に、徐冷および/または熱加工(例えば、熱処理)されて、複数のセラミックまたは結晶粒子を有するガラスセラミック状態を形成することがある。用いられる注型技術に応じて、その物品は、追加の熱処理を行わずに、容易に結晶化し、ガラスセラミックになることがある(例えば、実質的に、ガラスセラミック状態に注型される)ことが理解されよう。成形後の熱加工が用いられる例において、その物品の一部、大半、実質的に全てまたは全てが、ガラス状態からガラスセラミック状態に転換されることがある。それゆえ、その物品の組成は、ガラス状態および/またはガラスセラミック状態に関して記載されることがあるが、その物品のバルク組成は、その物品の局所部分が異なる組成を有する(すなわち、セラミックまたは結晶性沈殿の形成により)にもかかわらず、ガラス状態とガラスセラミック状態との間で転換される場合、実質的に変わらないままであろう。
【0032】
様々な例によれば、その物品は、Al、SiO、B、WO、MoO、RO、RO、および多数のドーパントを含むことがあり、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの1つ以上であり、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上である。ここに与えられた教示から逸脱せずに、多数の他の成分(例えば、F、As、Sb、Ti、P、Ce、Eu、La、Cl、Brなど)が含まれることがあることが理解されよう。
【0033】
その物品は、約1モル%から約99モル%のSiO、または約1モル%から約95モル%のSiO、または約45モル%から約80モル%のSiO、または約60モル%から約99モル%のSiO、または約61モル%から約99モル%のSiO、または約30モル%から約99モル%のSiO、または約58モル%から約78モル%のSiO、または約55モル%から約75モル%のSiO、または約50モル%から約75モル%のSiO、または約54モル%から約68モル%のSiO、または約60モル%から約78モル%のSiO、または約65モル%から約67モル%のSiO、または約60モル%から約68モル%のSiO、または約56モル%から約72モル%のSiO、または約60モル%から約70モル%のSiOを有することがある。SiOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。SiOは、主なガラス形成酸化物として働き、物品の安定性、耐失透性および/または粘度に影響することがある。
【0034】
その物品は、約0モル%から約50モル%のAl、または約0.5モル%から約20モル%のAl、または約0.5モル%から約15モル%のAl、または約7モル%から約15モル%のAl、または約0.6モル%から約17モル%のAl、または約0.6モル%から約14モル%のAl、または約7モル%から約14モル%のAl、または約9.5モル%から約10モル%のAl、または約9モル%から約14モル%のAl、または約9.5モル%から約11.5モル%のAl、または約0.3モル%から約10モル%のAl、または約0.3モル%から約15モル%のAl、または約2モル%から約16モル%のAl、または約5モル%から約12モル%のAl、または約8モル%から約12モル%のAl、または約5モル%から約10モル%のAlを含むことがある。Alの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。Alは、条件付きの網目構造形成材の機能を果たし、低いCTEの安定な物品、物品の剛性、および溶融および/または成形の促進に寄与することがある。
【0035】
その物品は、WOおよび/またはMoOを含むことがある。例えば、MoOに加えたWOは、約0.35モル%から約30モル%であることがある。MoOは約0モル%であることがあり、WOは約1.0モル%から約20モル%である、またはMoOは約0モル%であることがあり、WOは約1.0モル%から約14モル%である、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約1.0モル%から約16モル%である、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約9モル%である、またはMoOは約1.9モル%から約12.1モル%であり、WOは約1.7モル%から約12モル%である、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約7.1モル%である、またはMoOは約1.9モル%から約12.1モル%であり、WOは約1.7モル%から約4.5モル%である、またはMoOは約0モル%であり、WOは約1.0モル%から約7.0モル%である。MoOに関して、そのガラス組成物は、約0.35モル%から約30モル%のMoO、または約1モル%から約30モル%のMoO、または約0.9モル%から約30モル%のMoO、または約0.9モル%から約20モル%のMoO、または約0モル%から約1.0モル%のMoO、または約0モル%から約0.2モル%のMoOを有することがある。WOに関して、そのガラス組成物は、約0.35モル%から約30モル%のWO、または約1モル%から約30モル%のWO、または約1モル%から約17モル%のWO、または約1.9モル%から約10モル%のWO、または約0.35モル%から約1モル%のWO、または約1.9モル%から約3.9モル%のWO、または約2モル%から約15モル%のWO、または約4モル%から約10モル%のWO、または約5モル%から約7モル%のWOを有することがある。WOおよび/またはMoOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。
【0036】
その物品は、約2モル%から約40モル%のB、または約4モル%から約40モル%のB、または約4.0モル%から約35モル%のB、または約4.0モル%から約27モル%のB、または約5.0モル%から約25モル%のB、または約9.4モル%から約10.6モル%のB、または約5モル%から約20モル%のB、または約4.6モル%から約20モル%のB、または約9.3モル%から約15.5モル%のB、または約10モル%から約20モル%のB、または約10モル%から約25モル%のBを含むことがある。Bの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。Bは、CTE、密度、およびその物品を低温でより容易に溶融し、成形できるようにする粘度を低下させるために使用されるガラス形成酸化物であることがある。
【0037】
その物品は、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含むことがある。そのアルカリ金属酸化物は、化学式ROにより表されることがあり、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbO、CsOおよび/またはその組合せの内の1つ以上である。その物品は、約0.1モル%から約50モル%のRO、または約0モル%から約14モル%のRO、または約3モル%から約14モル%のRO、または約5モル%から約14モル%のRO、または約6.4モル%から約9.6モル%のRO、または約2.9モル%から約12.2モル%のRO、または約9.7モル%から約12.8モル%のRO、または約0.6モル%から約10モル%のRO、または約0モル%から約15モル%のRO、または約3モル%から約12モル%のRO、または約7モル%から約10モル%のROのアルカリ金属酸化物組成を有することがある。ROの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。アルカリ酸化物(例えば、LiO、NaO、KO、RbO、およびCsO)は、(i)溶融温度を低下させる、(ii)成形性を高める、(iii)イオン交換による化学的強化を可能にする、および/または(iv)特定の晶子への分割するための種として、を含む多数の理由のために、物品中に含まれることがある。
【0038】
様々な例によれば、ROからAlを引いた値は、約-35モル%から約7モル%、または約-12モル%から約2.5モル%、または約-6モル%から約0.25モル%、または約-3.0モル%から約0モル%に及ぶ。ROからAlを引いた値の上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。
【0039】
その物品は、少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むことがある。そのアルカリ土類金属酸化物は、化学式ROにより表されることがあり、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上である。その物品は、約0.02モル%から約50モル%のRO、または約0.01モル%から約5モル%のRO、または約0.02モル%から約5モル%のRO、または約0.05モル%から約10モル%のRO、または約0.10モル%から約5モル%のRO、または約0.15モル%から約5モル%のRO、または約0.05モル%から約1モル%のRO、または約0.5モル%から約4.5モル%のRO、または約0モル%から約1モル%のRO、または約0.96モル%から約3.9モル%のRO、または約0.2モル%から約2モル%のRO、または約0.01モル%から約0.5モル%のRO、または約0.02モル%から約0.22モル%のROを含むことがある。ROの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。様々な例によれば、ROはROより多いことがある。さらに、その物品は、ROを含まないことがある。アルカリ土類酸化物(例えば、MgO、CaO、SrO、およびBaO)およびZnOなどの他の二価酸化物は、物品の溶融挙動を改善することがあり、物品のCTE、ヤング率、および剛性率を増加させる働きをすることもできる。
【0040】
その物品は、約0.01モル%から約5モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.5モル%のSnO、または約0.05モル%から約0.5モル%のSnO、または約0.05モル%から約2モル%のSnO、または約0.04モル%から約0.4モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.4モル%のSnO、または約0.04モル%から約0.16モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.21モル%のSnO、または約0モル%から約0.2モル%のSnO、または約0モル%から約0.1モル%のSnOを含むことがある。SnOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。その物品は、溶融中のガス状含有物の除去を支援するために、少濃度で清澄剤として(例えば、他の清澄剤としては、CeO、As、Sb、Cl、Fなどが挙げられるであろう)SnOも含むことがある。特定の清澄剤は、酸化還元対、色中心、および/または核形成するおよび/または物品中に形成された晶子の間に入る種としても働くことがある。
【0041】
その物品の特定の成分の組成は、他の成分の存在および/または組成に依存するであろう。例えば、WOが約1モル%から約30モル%である場合、その物品は、約0.9モル%以下のFeをさらに含む、またはSiOが約60モル%から約99モル%である。別の例において、WOが約0.35モル%から約1モル%である場合、その物品は、約0.01モル%から約5.0モル%のSnOを含む。別の例において、MoOが約1モル%から約30モル%である場合、SiOは約61モル%から約99モル%である、またはFeが約0.4モル%以下であり、ROはROより多い。別の例において、MoOが約0.9モル%から約30モル%であり、SiOが約30モル%から約99モル%である場合、その物品は、約0.01モル%から約5モル%のSnOを含む。
【0042】
その物品は、カドミウムを実質的に含まず、セレンを実質的に含まないことがある。様々な例によれば、その物品は、紫外、可視、色および/または近赤外吸光度を変えるために、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pb、Pd、Au、Cd、Se、Ta、Bi、Ag、Ce、Pr、Nd、およびErからなる群より選択される少なくとも1種類のドーパントをさらに含み得る。それらのドーパントは、物品内で約0.0001モル%から約1.0モル%の濃度を有することがある。例えば、その物品は、約0.01モル%から約0.48モル%のAg、約0.01モル%から約0.13モル%のAu、約0.01モル%から約0.03モル%のV、約0モル%から約0.2モル%のFe、約0モル%から約0.2モル%のFe、および約0.01モル%から約0.48モル%のCuOの内の少なくとも1つを含むことがある。別の例によれば、その物品は、約0.01モル%から約0.75モル%のAg、約0.01モル%から約0.5モル%のAu、約0.01モル%から約0.03モル%のV、および約0.01モル%から約0.75モル%のCuOの内の少なくとも1つを含むことがある。その物品は、ガラスを軟化させるために、約0モル%から約5モル%の範囲でフッ素を含むことがある。その物品は、物品の物理的性質をさらに変更し、結晶成長を調節するために、約0モル%から約5モル%のリンを含むことがある。その物品は、物品の物理的および光学的(例えば、屈折率)性質をさらに変更するために、Ga、Inおよび/またはGeOを含むことがある。以下の微量不純物が、紫外、可視(例えば、390nmから約700nm)、および近赤外(例えば、約700nmから約2500nm)吸光度をさらに変更する、および/または物品に蛍光を発生さるために、約0.001モル%から約0.5モル%の範囲で存在することがある:Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Te、Ta、Re、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLu。さらに、物品の物理的性質および粘度をさらに変更するために、特定の組成物にPを少量添加することがある。
【0043】
ここに概説したような物品の他の成分の任意の他の組成および/または組成範囲と共に、SiO、Al、WO、MoO、WOとMoO、B、RO、RO、V、Ag、Au、CuO、SnO、およびドーパントの上述した組成および組成範囲の各々が使用されることがあることが理解されよう。
【0044】
タングステン、モリブデン、または混合タングステン-モリブデン含有アルカリガラスの従来の形成は、溶融過程中の溶融成分の分離によって妨げられてきた。溶融過程中のガラス成分の分離により、溶融ガラス内のアルカリタングステン酸塩の、したがって、そのような溶融物から注型された物品の認知された溶解限界がもたらされる。従来、タングステン、モリブデン、または混合タングステン-モリブデン溶融物がわずかでも過アルカリであった場合(例えば、RO-Al=約0.25モル%以上)、溶融したホウケイ酸ガラスは、ガラス層と緻密な液体の第二相の両方を形成した。アルカリタングステン酸塩の第二相の濃度は、完全な混合、高温での溶融、および小さいバッチサイズ(~1000g)の利用によって減少させることができるであろうが、完全になくすことはできず、有害な第2の結晶層の形成をもたらし得る。このアルカリタングステン酸塩相の形成は、溶融の初期段階で生じ、ここで、酸化タングステンおよび/または酸化モリブデンが「遊離した」または「未結合の」アルカリ炭酸塩と反応すると考えられる。形成されるホウケイ酸ガラスに対してアルカリタングステン酸塩および/またはアルカリモリブデン酸塩の高密度のために、その塩は、急激に隔離し、および/または層になり、坩堝の底部に溜まり、密度の著しい差のために、ガラス中に急速に可溶化しない。RO成分はガラス組成物に有益な性質を与えるであろうから、溶融物内のRO成分の存在を単に減少させることは望ましくないであろう。
【0045】
「結合した」アルカリの使用によって、均質な単相のWまたはMo含有過アルカリ溶融物が得られることがあることが、本開示の発明者等により発見された。本開示の目的に関して、「結合した」アルカリは、アルミナ、ボリアおよび/またはシリカに結合したアルカリ元素であり、一方で、「遊離した」または「未結合の」アルカリは、アルカリがシリカ、ボリアまたはアルミナに結合していない、アルカリ炭酸塩、アルカリ硝酸塩および/またはアルカリ硫酸塩である。例示の結合したアルカリとしては、長石、霞石、ホウ砂、スポジュメン、他のナトリウムまたはカリウム長石、アルカリアルミノケイ酸塩、アルカリケイ酸塩、および/またはアルカリと1つ以上のアルミニウム、ホウ素および/またはケイ素原子を含有する他の天然に存在するおよび人工的に生成された鉱物が挙げられるであろう。アルカリを結合形態で導入することにより、アルカリは、溶融物中に存在するWまたはMoと反応せず、緻密なアルカリタングステン酸塩および/またはアルカリモリブデン酸塩液体を形成するであろう。さらに、バッチ材料のこの変更により、どのようなアルカリタングステン酸塩および/またはアルカリモリブデン酸塩の第二相も形成せずに、強力に過アルカリの組成物(例えば、RO-Al=約2.0モル%以上)の溶融が可能になるであろう。これにより、溶融温度および混合方法を変えることができ、それでも、単相の均質ガラスを生成する。アルカリタングステン酸塩相およびホウケイ酸ガラスは完全には非混和性ではないので、長期の撹拌によっても、それらの二相を混合して、単相物品を注型できるであろうことが理解されよう。
【0046】
ガラス溶融物が、一旦、注型され、ガラス状態物品に固化されたら、その物品を徐冷、熱処理、または他のやり方で熱加工して、その物品内に結晶相を形成してもよい。したがって、その物品は、ガラス状態からガラスセラミック状態に転換されるであろう。このガラスセラミック状態の結晶相は、様々な形態を取ることがある。様々な例によれば、結晶相は、物品の熱処理された領域内に複数の沈殿として形成される。それゆえ、その沈殿は、概して結晶性の構造を有するであろう。
【0047】
ここに用いられているように、「結晶相」は、三次元で周期的なパターンで配列された原子、イオンまたは分子からなる固体である、本開示の物品内の無機材料を称する。さらに、本開示において言及された「結晶相」は、特に明記のない限り、以下の方法を使用して存在すると判断される。第一に、結晶性沈殿の存在を検出するために、粉末X線回折(「XRD」)が用いられる。第二に、XRDがうまくいかない場合(例えば、沈殿のサイズ、量および/または化学的性質のために)、結晶性沈殿の存在を検出するために、ラマン分光法(「ラマン」)が用いられる。必要に応じて、XRDおよび/またはラマン技術により得られた結晶性沈殿の判定を目視で確認または他の様式で実証するために、透過電子顕微鏡法(「TEM」)が用いられる。特定の状況下で、沈殿の量および/またはサイズは、沈殿の目視による確認が特に困難であることが判明するほど小さいことがある。それゆえ、沈殿の存在を判断するためにより多い量の材料を採取する上で、XRDおよびラマンのより大きい試料サイズが都合よいであろう。
【0048】
結晶性沈殿は、概して、棒状または針状形態を有することがある。沈殿は、約1nmから約500nm、または約1nmから約400nm、または約1nmから約300nm、または約1nmから約250nm、または約1nmから約200nm、または約1nmから約100nm、または約1nmから約75nm、または約1nmから約50nm、または約1nmから約25nm、または約1nmから約20nm、または約1nmから約10nmの最長長さ寸法を有することがある。沈殿のサイズは、電子顕微鏡法を使用して測定されることがある。本開示の目的に関して、「電子顕微鏡法」という用語は、最初に走査型電子顕微鏡を使用し、もし沈殿を解像できない場合には、次に、透過電子顕微鏡を使用して、沈殿の最長長さを目測することを意味する。結晶性沈殿は、概して、棒状または針状形態を有するであろうから、沈殿は、約2nmから約30nm、または約2nmから約10nm、または約2nmから約7nmの幅を有するであろう。沈殿のサイズおよび/または形態は、均一、実質的に均一、または異なってもよいことが理解されよう。一般に、前記物品の過アルミニウム組成物は、約100nmから約250nmの長さおよび約5nmから約30nmの幅を持つ針状形状を有する沈殿を生じるであろう。その物品の過アルカリ組成物は、約10nmから約30nmの長さおよび約2nmから約7nmの幅を有する針状沈殿を生じるであろう。その物品のAg、Auおよび/またはCuを含有する例は、約2nmから約20nmの長さ、および約2nmから約10nmの幅または直径を有する棒状沈殿を生じるであろう。その物品中の結晶相の体積分率は、約0.001%から約20%、または約0.001%から約15%、または約0.001%から約10%、または約0.001%から約5%、または約0.001%から約1%に及ぶであろう。
【0049】
沈殿の比較的小さいサイズは、沈殿により散乱される光の量を減少させて、ガラスセラミック状態にあるときの物品の高い光学的透明度をもたらす上で都合よいであろう。下記により詳しく説明されるように、沈殿のサイズおよび/または量は、物品の異なる部分が異なる光学的性質を有することがあるように物品に亘り異なることがある。例えば、沈殿が存在する物品の部分は、異なる沈殿(例えば、サイズおよび/または量)が存在するおよび/または沈殿が存在しない物品の部分と比べて、吸光度、色、光の反射率および/または透過率、並びに屈折率の変化をもたらすことがある。「不透明な」領域の選択された例において、沈殿の比較的小さいサイズは、粗い粒子による光の散乱によってではなく、吸光度の関数として、不透明性を与える。
【0050】
前記沈殿は、酸化タングステンおよび/または酸化モリブデンでできていることがある。前記結晶相は、(i)W、(ii)Mo、(iii)Vとアルカリ金属陽イオン、および(iv)Tiとアルカリ金属陽イオン:の内の少なくとも1つの、結晶相の約0.1モル%から約100モル%の、酸化物を含む。理論で束縛するものではないが、物品の熱加工(例えば、熱処理)中、タングステンおよび/またはモリブデン陽イオンが凝集して、結晶性沈殿を形成し、それによって、ガラス状態をガラスセラミック状態に転換させると考えられる。その沈殿中に存在するモリブデンおよび/またはタングステンは、還元されている、または部分的に還元されていることがある。例えば、沈殿内のモリブデンおよび/またはタングステンは、0と約+6の間の酸化状態を有することがある。様々な例によれば、モリブデンおよび/またはタングステンは、+6の酸化状態を有することがある。例えば、沈殿は、WOおよび/またはMoOの一般化学構造を有することがある。しかしながら、タングステンおよび/またはモリブデンのかなりの割合が+5の酸化状態にもあり得、その沈殿は、非化学量論的タングステン亜酸化物、非化学量論的モリブデン亜酸化物、「モリブデンブロンズ」および/または「タングステンブロンズ」として知られているであろう。上述したアルカリ金属および/またはドーパントの1つ以上が、沈殿内に存在して、WまたはMoの+5電荷を補うことがある。タングステンおよび/またはモリブデンブロンズは、MWOまたはMMoOの一般化学形態を取り、式中、M=H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびUであり、0<x<1である、非化学量論的タングステンおよび/またはモリブデン亜酸化物の一群である。構造MWOおよびMMoOは、還元されたWOまたはMoOの網状構造の孔が、M原子により無作為に占められている、固体欠陥構造であると考えられ、M原子は、M+陽イオンおよび自由電子に解離する。「M」の濃度に応じて、材料の性質は、金属から半導体に及び、それによって、様々な光吸収および電子特性を調整することができる。5+WまたはMoが多いほど、相殺するためにより多くのM+陽イオンが必要になるであろうし、xの値が大きくなる。
【0051】
前記物品の一部、大半、実質的に全てまたは全てが熱加工されて、沈殿を形成することがある。熱加工技術としては、以下に限られないが、炉(例えば、熱処理炉)、マイクロ波、レーザおよび/または物品の局部および/またはバルク加熱の他の技術が挙げられるであろう。結晶性沈殿は、熱加工を受けている間に、均質様式で物品内で内部核形成し、ここで、物品は熱加工されて、ガラス状態がガラスセラミック状態に転換される。それゆえ、いくつかの例では、物品は、ガラス状態とガラスセラミック状態の両方を含むことがある。物品がバルクで熱加工される(例えば、丸ごとの物品が炉内に入れられる)例において、沈殿は、物品全体に亘り均一に形成するであろう。言い換えると、沈殿は、物品の表面から物品の中身(すなわち、表面から約10μm超)に亘り存在することがある。物品が局部的に熱加工される(例えば、レーザにより)例において、沈殿は、熱加工が十分な温度に達する(例えば、熱源に近接した物品の表面で、および中身に)ところだけに存在することがある。物品は、沈殿を生じるために複数の熱加工を経てもよいことが理解されよう。それに加え、またはそれに代えて、熱加工は、既に形成された(例えば、先の熱加工の結果として)沈殿を除去するおよび/または変更するために利用されることがある。例えば、熱加工により、沈殿が分解されることがある。
【0052】
様々な例によれば、前記物品は、沈殿が存在するところと、沈殿が存在しないところの両方(すなわち、ガラス状態またはガラスセラミック状態にある部分)において、電磁スペクトルの可視領域(すなわち、約400nmから約700nm)において光学的に不透明であることがある。
【0053】
それゆえ、様々な例によれば、前記物品のガラスセラミック状態は、追加のコーティングまたは膜を使用せずに、沈殿の存在に基づいて、可視領域(すなわち、約400nmから約700nm)において光を吸収する。いくつかの実施において、その物品のガラスセラミック状態は、スペクトルの可視領域(例えば、約400nmから約700nm)における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、10%/mm未満、9%/mm未満、8%/mm未満、7%/mm未満、6%/mm未満、5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、およびさらには1%/mm未満の透過率により特徴付けられる。いくつかの例において、そのガラスセラミック状態は、スペクトルの可視領域における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、またさらには少なくとも99%/mmを吸収する、またはその吸収を有する。
【0054】
様々な例によれば、前記物品のガラスセラミック状態は、追加のコーティングまたは膜を使用せずに、沈殿の存在に基づいて、紫外(「UV」)領域(すなわち、約400nm未満の波長)の光を吸収する。いくつかの実施において、その物品のガラスセラミック状態は、スペクトルのUV領域(例えば、約200nmから約400nm)の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、10%/mm未満、9%/mm未満、8%/mm未満、7%/mm未満、6%/mm未満、5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、およびさらには1%/mm未満の透過率により特徴付けられる。いくつかの例において、そのガラスセラミック状態は、スペクトルのUV領域における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、またさらには少なくとも99%/mmを吸収する、またはその吸収を有する。
【0055】
前記ガラスセラミック状態は、約320nmから約420nmの急なUVカットオフ波長を有することがある。例えば、そのガラスセラミック状態は、約320nm、約330nm、約340nm、約350nm、約360nm、約370nm、約380nm、約390nm、約400nm、約410nm、約420nm、約430nm、またはそれらの間の任意の値で急なUVカットオフを有することがある。
【0056】
前記ガラスセラミック状態は、約420nmから約700nmの急な可視光カットオフ波長を有することがある。例えば、そのガラスセラミック状態は、約420nm、約430nm、約440nm、約450nm、約460nm、約470nm、約480nm、約490nm、約500nm、約510nm、約520nm、約530nm、またはそれらの間の任意の値で急な可視光カットオフを有することがある。
【0057】
いくつかの例において、前記物品のガラスセラミック状態は、スペクトルの近赤外領域(NIR)(例えば、約700nmから約2700nm)における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り全て、約5%/mm超、約10%/mm超、約15%/mm超、約20%/mm超、約25%/mm超、約30%/mm超、約40%/mm超、約50%/mm超、約60%/mm超、約70%/mm超、約80%/mm超、約90%/mm超、およびこれらの値の間の全ての下限より大きい透過率を有する。
【0058】
さらに他の例において、前記物品のガラスセラミック状態は、スペクトルのNIR領域における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り全て、約90%/mm未満、約80%/mm未満、約70%/mm未満、約60%/mm未満、約50%/mm未満、約40%/mm未満、約30%/mm未満、約25%/mm未満、約20%/mm未満、約15%/mm未満、約10%/mm未満、約5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、1%/mm未満、さらに0.1%/mm未満、およびこれらの値の間の全ての上限より小さい透過率を有する。
【0059】
他の例において、前記物品のガラスセラミック状態は、スペクトルのNIR領域における光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、または少なくとも99%/mm、またさらには99.9%/mmを吸収する、またはその吸収を有する。
【0060】
ガラスまたはガラスセラミック材料における可視吸光度は、MWOなど、特定のナノ結晶タングステン酸塩の形成から生じ得、式中、Mは、あるドーパントであり、Mが、アルカリまたは銀(Ag)などの1+陽イオンである場合、0<x<2であり、Mが、Mn、Mg、およびFeなどの2+陽イオンである場合、0<x<1である。これらのタングステン酸塩相のいくつかは、NIR吸収性ではなく、転じて、高いNIR透過率を維持しつつ、強力なUVおよびVIS吸光度を生じ得る。一例において、これらのガラスにおける可視吸収および/またはUV吸収は、ドーパントとしてのコバルトの導入により生じる。NIR吸収性ではなく、転じて、高いNIR透過率を維持しつつ、強力なUVおよびVIS吸光度を生じ得る他のドーパントとしては、以下に限られないが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnの任意の組合せが挙げられる。これらのドーパントは、そのガラスセラミックのガラス相または結晶相のいずれか、もしくはガラス相と結晶相の両方の中に留まることがある。
【0061】
図1Aは、一例による基板を備えたデバイスの吸光度データのグラフ100を示す。図1Aの例において、基板102および104は、AgおよびW含有ガラスセラミックである。基板102は、90分間に亘り525℃で熱処理され、次いで、1℃/分で450℃に冷却されたものであり、IR遮蔽性(すなわち、未退色)である。基板104は、90分間に亘り625℃で熱処理され、周囲空気中で急冷されたものであり、IR透過性(すなわち、IR透明性)である。図1Aおよび1Bからのデータにより、単一組成物が、それぞれ、UV(280~400nm)およびVIS(400~700nm)領域において少なくとも2.5OD/mmおよび0.5OD/mmの吸光度を提供できることが明らかである。
【0062】
未退色領域データ102が、退色領域データ104と共に、グラフに示されている。グラフ100から分かるように、退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.5以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.3以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.1以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmの赤外波長スペクトルの大半に亘り0.1以下の光学吸光度を示す。
【0063】
図1Bは、図1Aにグラフで示されたデバイス基板の平均吸光度値を含む表110を示す。表110は、700~2000nmのIR波長範囲における退色領域(IR透過性)の0.1の平均吸光度値を示す。表110は、700~2000nmのIR波長範囲における未退色領域(IR遮蔽性)の1.8の平均吸光度値をさらに示す。
【0064】
図2Aは、一例による基板を備えたデバイスの吸光度データのグラフ200を示す。図2Aの例において、基板202および204は、AgおよびW含有GC(RTSガラスコード196JGN)である。196JGNのより詳しい化学的性質が、下記の表1に含まれている。基板202は、525℃で熱処理され、1℃/分で450℃に冷却されたものであり、IR遮蔽性(すなわち、未退色)である。基板204は、1時間に亘り650℃で熱処理され、周囲空気中で冷却されたものであり、IR透過性(すなわち、退色されている)である。図2Aおよび2Bからのデータにより、単一組成物が、熱処理の関数として、近赤外波長範囲において高い平均吸光度の比を提供できることが明らかになる。
【0065】
未退色領域データ202が、退色領域データ204と共に、グラフに示されている。グラフ200から分かるように、退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.3OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.1OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、約700nmから約2700nmの赤外波長スペクトルの大半に亘り0.1OD/mm以下の光学吸光度を示す。
【0066】
図2Bは、図2Aにグラフで示されたデバイス基板の平均吸光度値を含む表210を示す。表210は、700~2000nmのIR波長範囲における退色領域(IR透過性)の0.2OD/mmの平均吸光度値を示す。表210は、700~2000nmのIR波長範囲における未退色領域(IR遮蔽性)の4.3OD/mmの平均吸光度値をさらに示す。
【0067】
図3Aは、一例による基板を備えたデバイスの吸光度データのグラフ300を示す。図3Aの例において、基板302および304は、UVおよびVIS領域に低い透過率を有し、低いか高いかのいずれかのNIR透過率を示し得る、Ag、WおよびMo含有GC(RTSガラスコード196JHH)である。1時間に亘り650℃で熱処理され、周囲空気中で冷却された試料304は、IR透過性(すなわち、退色されている)であり、2時間に亘り525℃で熱処理され、次いで1℃/分で450℃に冷却された試料302は、IR遮蔽性(すなわち、未退色)である。196JHHのより詳しい化学的性質が、下記の表1に含まれている。図3Aおよび3Bからのデータにより、単一組成物が、約1mmの厚さで、熱処理の関数として、近赤外波長範囲において10%未満の平均可視透過率および高い平均吸光度の比を提供できることが明らかである。
【0068】
未退色領域データ302が、退色領域データ304と共に、グラフに示されている。グラフ300から分かるように、退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.3OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、700から2700nmのIRスペクトルにおいて少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.1OD/mm以下の光学吸光度を示す。一例において、その退色領域は、約700nmから約2700nmの赤外波長スペクトルの大半に亘り0.1OD/mm以下の光学吸光度を示す。
【0069】
図3Bは、図3Aにグラフで示されたデバイス基板の平均吸光度値を含む表310を示す。表310は、700~2000nmのIR波長範囲における退色領域(IR透過性)の0.2OD/mmの平均吸光度値を示す。表310は、700~2000nmのIR波長範囲における未退色領域(IR遮蔽性)の1.5OD/mmの平均吸光度値をさらに示す。
【0070】
図4は、装置400の一例を示す。装置400は、先の例に記載されたようなガラスまたはガラスセラミック基板のパネル410の背後に位置する光学デバイス420を備える。図4は、未退色領域412、および退色した個別領域414を示す。退色領域414は、選択された波長の光422の透過を可能にする。一例において、未退色領域412は、幅広い範囲の波長に亘り2.0OD/mm以上の光学吸光度を有する。一例において、未退色領域412は、可視波長範囲およびIR範囲に亘り2.0OD/mm以上の光学吸光度を有する。一例において、未退色領域412は、可視波長範囲およびUV範囲、並びにIR範囲に亘り2.0OD/mm以上の光学吸光度を有する。
【0071】
一例において、退色領域414は、700nmから2700nmの赤外波長範囲において少なくとも50nm幅の波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の光学吸光度を有する。一例において、退色領域414は、700から2700nmのIRスペクトルの大半に亘り0.5OD/mm以下の光学吸光度を有する。
【0072】
図4に示されるように、このパネルの退色領域414は、光学デバイスに隣接して位置している。そのような構成は、いくつかの用途において有用であり得る。一例において、光学デバイス420は、近赤外(IR)光学検出器を含む。そのようなデバイスにおいて、退色領域414は、発生源から送られているIR光伝送の検出を可能にし、退色領域414の特定形状を使用して、所望の方向からのIR光伝送のみを選択することができる。パネル410の他の未退色領域412は、他の発生源からの望ましくないノイズを遮蔽する。そのようなデバイスの1つに、スマートウォッチの心拍検出器または血中酸素検出器が含まれるであろう。それに加え、前記材料は、NIRにおいて透明であるか不透明であるかにかかわらず、可視領域において実質的に不透明であるので、その材料は、光学デバイス420を視界から隠す。
【0073】
一例において、退色領域414および未退色領域412は、同じ材料から形成され、その後の処理により、材料の選択された部分が変更(退色)されて、退色領域414を形成し、選択されていない部分が未退色領域412として残される。処理の一例に、局所レーザ加熱がある。他の例としては、以下に限られないが、火炎処理、太陽灯、電気オーブンなどがある。一例において、退色領域414は、NIR波長範囲のみにおいて退色されている。一例において、材料の残りは、退色されていてもいなくても、可視波長およびUV波長などの他の波長において、実質的に不透明のままである。
【0074】
一例において、光学デバイス420は、近赤外(NIR)光源を含む。そのようなデバイスにおいて、退色領域414はNIR波長を透過させることができ、退色領域414の特定形状を使用して、光学デバイス420から伝送されているNIR光の他の望ましくない方向を遮蔽することができる。そのようなデバイスの1つに、単一パネルの背後に一体化されたスマートウォッチの心拍検出器または血中酸素検出器が含まれることがあり、ここで、1つの退色領域は、トランスミッタの前に位置しており、1つの退色領域は、検出器の前に位置している。
【0075】
一例において、光学デバイス420は、近赤外(NIR)カメラを含む。そのようなデバイスにおいて、退色領域414は、発生源から送られているまたは発生源から反射されているIR光伝送の検出を可能にし、退色領域414の特定形状を使用して、所望の方向からのIR光伝送のみを選択することができる。パネル410の他の未退色領域412は、他の発生源からの望ましくない光を遮蔽する。それに加え、パネル410は、例えば、デッドフロントカメラとしてのカメラを隠すために使用されることがある。
【0076】
選択された例において、退色領域414は、IR光を透過させるので、IRカメラは、退色領域414の前に位置しているときに、設計されたように作動する。選択された例において、パネル410の退色領域414および未退色領域412は両方とも、可視光スペクトルにおいて実質的に不透明であるので、退色領域414は、可視光で見られたときに、完全に一体化する。退色領域414はIR光の下で透明に見えるので、IR撮像装置のみが、退色領域414の存在を検出することができ、一方で、未退色領域412は、IR光下で不透明に見える。ほとんどの隠しカメラの設定は、可視スペクトル下で(人の目により)見られることを含むので、上述したようなパネルを使用したデッドフロントカメラは、裸眼(すなわち、装置を見ている誰か)に隠すのに特に効果的である。それに加え、ガラスセラミックパネル410の光学吸光度は、全厚に亘り一定であるので、パネルの吸光度は、デッドフロントカメラに多くの場合使用される薄いコーティングほどは、引っ掻き傷の影響は受けないであろう。さらに、上述されたようなガラスまたはガラスセラミック材料は、高分子パネルおよび/またはほとんどのコーティングと比べて、より耐久性がある。それに加え、これらのガラスセラミックは、ラジオおよび無線通信周波数で、それらを減衰させる特定のコーティングと異なり、実質的に透明である。
【0077】
カメラが一例として使用されているが、記載されたような基板およびパネルから、光学デバイスおよび装置のいくつでも恩恵を受けるであろう。退色領域および未退色領域を使用する他の例示のデバイスとしては、以下に限られないが、自律車両ナビゲーションシステム、様々なホーム・オートメーション製品、虹彩スキャナ、拡張現実システム、機械視覚システムなどが挙げられる。
【0078】
図5は、基板502およびクラッド層504を備えた、UVおよびNIRにおいて実質的に不透明な例示のパネル500を示す。一例において、クラッド層504は、基板502とは異なる熱膨張係数(CTE)を有する。一例において、CTEの差は、亀裂成長を防ぎ、所望の層502、504の間の界面で層502、504内の圧縮応力を維持する応力勾配を与える。図5の例において、退色領域506は、上述した例と同じように基板502内に位置しており、その基板は、クラッド層504により保護されている。CTEの不一致が記載されているが、他の例において、クラッド層504は基板502とCTEが一致しており、クラッド層504は、基板502に物理的バリアを与える。
【0079】
図6は、UVおよびVISにおいて実質的に不透明であるが、調整可能なNIR透過率を有するコアとクラッドの積層板のさらに別の例を示す。図6の例において、先の例に記載されたような退色領域608を含む基板(またはコア)606を備えたパネル600が示されている。第1のクラッド層602および第2のクラッド層604は、基板606の反対の主面の上に位置しているのが示されている。図5の例と同様に、クラッド層602、604は、基板606と異なる熱膨張係数(CTE)を与えることがある。この性質は、界面に保護応力を与えるであろう。図6に示されたような三層系の場合、コアとクラッドは、CTEが一致または不一致のいずれであっても差し支えなく、CTEが不一致の場合、対称構造であるので、積層板は反らない。
【0080】
基板とクラッド層との間の領域を記載するために、「界面」という用語が使用されているが、その用語は、明確に区別された界面を暗示しないことがある。選択された例において、複数のクラッド層は、溶融されることがあり、基板と1つのクラッド層または複数のクラッド層との間に組成および性質の勾配を含むことがある。
【0081】
いくつかの実施において、パネル(500、600)は、機械的強化過程(例えば、コアおよびクラッドガラス層のCTE不一致による)および化学的強化過程(例えば、イオン交換過程による)の両方から圧縮応力を有するように形成され、深い圧縮応力領域が生じている。得られたパネル(500、600)は、機械的または化学的いずれかの強化過程のみを使用して達成できるCSおよび/またはDOLレベルよりも高い、複合圧縮応力(CS)および/または圧縮応力層の深さ(DOL)を有する。いくつかの例において、1つ以上の層が、その外面で、50MPa超、250MPa超、約50MPaから約400MPa、約50MPaから約300MPa、約250MPaから約600MPa、または約100MPaから約300MPaの範囲の圧縮応力(CS)を有するように、基板とクラッド層のCTE不一致による機械的強化がパネル(500、600)に施される。さらに、いくつかの実施の形態において、1つ以上の層が、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、200MPaから約1000MPa、または約200MPaから約800MPaの範囲のCSを持つ圧縮応力領域を有するように、イオン交換過程による化学的強化がパネル(500、600)に施される。機械的および化学的強化の両方が施されたパネル500の例において、層の内の1つ以上が、その外面で、700MPaから1000MPa(例えば、機械的強化から約300MPaおよび化学的強化から約700MPa)ほど高い圧縮応力(CS)を有し得る。
【0082】
図7は、NIR波長を透過させる複数の退色個別領域706およびNIR波長に不透明である複数の未退色領域704を備えた、UVおよびVIS波長領域において実質的に不透明なパネル702を備えた装置700を示す。図7の例において、各退色個別領域706は、パネル702の主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている。図から分かるように、これにより、入射する、または出射するNIR波長の追加の選択性が可能になる。
【0083】
図7は、入射ビーム708の角度が、退色領域706の角度と実質的に一致するので、入射ビーム708がどのように退色領域706を通過できるかを示す。入射ビーム710は、退色領域706の角度と実質的に揃っておらず、したがって、パネル702を通過して、パネル702の背後に位置する光学デバイス712に到達しない。例示のパネル702は、任意の特定の光学用途に必要に応じて、入射光の追加の選択性を与えるために、本開示に記載された例示のデバイスまたは装置のいずれに使用してもよい。図7の例において、適切な角度のNIR波長のみが、このデバイスを透過することができる。UVおよびVIS波長は、入射角にかかわらず、パネル702を通過しない。
【0084】
図8Aは、基板821を含むパネル822を備えた、UVおよびNIR波長で実質的に不透明な別の装置820を示す。基板821は、NIR波長を透過させる複数の退色個別領域826およびNIR波長を透過させない複数の未退色領域824を含む。図8Aの例において、各退色個別領域826は、パネル822の主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている。図7の例と同様に、これにより、入射する、または出射するNIR波長の追加の角度選択性が可能になる。
【0085】
図8Aのパネル822は、第1のクラッド層843および第2のクラッド層836の追加をさらに含む。図示された例において、クラッド層834、836は、基板822の反対の主面の上に位置しているのが示されている。図5および6の例と同様に、クラッド層834、836は、基板821と異なる熱膨張係数(CTE)を与えることがある。この性質は、界面で保護応力を与えるであろう。
【0086】
図8Aは、入射ビーム828の角度が、退色領域826の角度と実質的に一致するので、NIRの入射ビーム828がどのように退色領域826を通過できるかを示す。入射ビーム830は、退色領域826の角度と実質的に揃っておらず、したがって、入射ビーム830は、パネル822を通過して、パネル822の背後に位置する光学デバイス822に到達しない。例示のパネル822は、任意の特定の光学用途に必要に応じて、入射光の追加の角度選択性を与えるために、本開示に記載された例示のデバイスまたは装置のいずれに使用してもよい。
【0087】
図8Bは、UVおよび可視領域において実質的に不透明であるが、選択的に調整可能なNIR透過率を有する別の装置840を示す。この装置840は、多数の構成部材を含むパネル841を備えている。パネル841は、コア870、第1のクラッド842および第2のクラッド852を含む。第1のクラッド842は、NIR波長を透過させる複数の退色個別領域846およびNIR波長を透過させない複数の未退色領域844を含む。図8Bの例において、各退色個別領域846は、パネル842の主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている。先に記載された例と同様に、これにより、入射光、または出射光の追加の選択性が可能になる。第2のクラッド852も、複数の未退色領域856および複数の未退色領域854を含む。各退色個別領域856は、クラッド852の主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている。先に記載された例と同様に、これにより、入射光、または出射光の追加の選択性が可能になる。
【0088】
一例において、コア870は、基板842、852と異なる熱膨張係数(CTE)を有する。この性質は、パネル841の増加した強化を与えることがある。選択された例において、コア870は、下記に記載されたように実施されたときに、増加した角度選択性を与える、基板842、852の間の間隔を与える。
【0089】
図8Bは、入射ビーム864がどのようにクラッド852の退色領域852を通過し、さらにクラッド842の退色領域846を通過できるのかを示す。コア870により間隔が空けられた2つのクラッド842、852の追加により、入射光に追加の選択性が与えられる。一例において、退色領域856は、追加の選択性を与えるために、退色領域846から水平方向にずれている。一例において、退色領域856は、追加の選択性を与えるために、退色領域846と比べて異なる角度で形成されている。一例において、退色領域856、846の間のずれおよび異なる角度の両方は、伝送されている、または装置840により受信されているNIR波長の追加の角度選択性を与える。
【0090】
例として、入射光862は退色領域856を通過するが、未退色領域844によりクラッド842で停止する。入射光860は、退色領域856からの入射光860における異なる角度の結果として、クラッド852または842のいずれも通過しないのが示されている。入射光864のみが、両方のクラッド852、842を通過し、光学デバイス872に到達するのが示されている。
【実施例
【0091】
表1は、先に記載されたデバイスおよび装置の1つ以上に使用されることのある材料の3つの例示の化学的性質を示している。
【0092】
【表1】
【0093】
表2は、先に記載されたデバイスおよび装置の1つ以上に使用されることのある材料の10の追加の例示の化学的性質を示している。
【0094】
【表2】
【0095】
ここに開示されたデバイスおよび装置をよりよく説明するために、実施の形態の非限定リストがここに与えられる。
【0096】
実施例1は、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含むガラスまたはガラスセラミック材料から作られた基板を備えたデバイスを含む。その基板は、未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、700~2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘る未退色/退色領域における平均吸光度比は7.5以上であり、その基板は、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明である。
【0097】
実施例2は、前記基板が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Zn、Se、Nb、Ru、Rh、In、Sn、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの任意の組合せがドープされることのある、タングステンおよび/またはモリブデンを含む酸化物または亜酸化物からなる変更可能な結晶相を含み、この変更可能な成分の量が約0.35モル%から約30モル%である、実施例1のデバイスを含む。
【0098】
実施例3は、前記基板がドーパントを含み、そのドーパントが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnからなる群より選択される元素を含む、実施例1~2のいずれか1つのデバイスを含む。
【0099】
実施例4は、前記ドーパントがAgを含む、実施例1~3のいずれか1つのデバイスを含む。
【0100】
実施例5は、前記ドーパントがCoを含む、実施例1~4のいずれか1つのデバイスを含む。
【0101】
実施例6は、前記基板が、315nmから400nmの紫外線Aの波長範囲において実質的に不透明である、実施例1~5のいずれか1つのデバイスを含む。
【0102】
実施例7は、前記基板が、280nmから315nmの紫外線Bの波長範囲において実質的に不透明である、実施例1~6のいずれか1つのデバイスを含む。
【0103】
実施例8は、前記基板が、100nmから280nmの紫外線Cの波長範囲において実質的に不透明である、実施例1~7のいずれか1つのデバイスを含む。
【0104】
実施例9は、前記基板の表面上に1つ以上のクラッド層をさらに含み、その1つ以上のクラッド層が、その基板と異なる熱膨張係数(CTE)を有する、実施例1~8のいずれか1つのデバイスを含む。
【0105】
実施例10は、前記1つ以上のクラッド層が、基板の反対の主面の上のクラッド層を含む、実施例1~9のいずれか1つのデバイスを含む。
【0106】
実施例11は、ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置する光学デバイスを備えた装置であって、そのガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含み、そのパネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、その退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、そのパネルは、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明であり、そのパネルの退色個別領域は、光学デバイスに隣接して位置している、装置を含む。
【0107】
実施例12は、前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光学検出器を含む、実施例11の装置を含む。
【0108】
実施例13は、前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光源を含む、実施例11~12のいずれか1つの装置を含む。
【0109】
実施例14は、前記光学デバイスが、近赤外(NIR)カメラを含む、実施例11~13のいずれか1つの装置を含む。
【0110】
実施例15は、前記退色個別領域が複数の退色個別領域を含み、各領域が、パネルの主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている、実施例11~14のいずれか1つの装置を含む。
【0111】
実施例16は、前記パネルが複数の層を含み、2つ以上の層の各々が複数の退色個別領域を含み、各領域が、パネルの主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている、実施例11~15のいずれか1つの装置を含む。
【0112】
実施例17は、前記複数の層が、その複数の層の隣接する層と異なる熱膨張係数(CTE)を有する1つ以上の層を含む、実施例11~16のいずれか1つの装置を含む。
【0113】
実施例18は、前記パネルが湾曲した主面を含む、実施例11~17のいずれか1つの装置を含む。
【0114】
実施例19は、前記パネルが、そのパネルの表面上に1つ以上のクラッド層を含み、その1つ以上のクラッド層が、そのパネルの隣接領域と異なる熱膨張係数(CTE)を有する、実施例11~18のいずれか1つの装置を含む。
【0115】
実施例20は、前記1つ以上のクラッド層が、パネルの反対の主面の上のクラッド層を含む、実施例11~19のいずれか1つの装置を含む。
【0116】
実施例21は、隠れた近赤外(NIR)光学デバイスを含む。この光学デバイスは、ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置するNIRカメラを含み、そのガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含む。そのパネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、その退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、そのパネルは、100nmから700nmのUVおよび可視波長範囲において実質的に不透明であり、そのパネルの退色個別領域は、NIRカメラのレンズに隣接して位置している。
【0117】
実施例22は、前記基板が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Zn、Se、Nb、Ru、Rh、In、Sn、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの任意の組合せがドープされることのある、タングステンおよび/またはモリブデンを含む酸化物または亜酸化物からなる変更可能な結晶相を含み、この変更可能な成分の量が約0.35モル%から約30モル%である、実施例21の隠れた近赤外(NIR)光学デバイスを含む。
【0118】
実施例23は、前記基板がドーパントを含み、そのドーパントが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnからなる群より選択される元素を含む、実施例21~22のいずれか1つの隠れた近赤外(NIR)光学デバイスを含む。
【0119】
実施例24は、前記基板が、Agを含むドーパントを含む、実施例21~23のいずれか1つの隠れた近赤外(NIR)光学デバイスを含む。
【0120】
実施例25は、前記基板が、Coを含むドーパントを含む、実施例21~24のいずれか1つの隠れた近赤外(NIR)光学デバイスを含む。
【0121】
本明細書を通じて、複数の例が、単一の例として記載された構成要素、操作、または構造を実施してもよい。1つ以上の方法の個々の操作が、別個の操作として示され、記載されているが、その個々の操作の1つ以上は、同時に行われてもよく、それらの操作は、示された順序で行われることは要求されない。例示の構成において別個の構成要素として提示されている構造および機能性は、複合構造または構成要素として実施されてもよい。同様に、単一の構成要素として提示された構造および機能性は、別個の構成要素として実施されてもよい。これらと他の変更、改変、追加、および改善は、この中の主題の範囲に入る。
【0122】
本発明の主題の概要が、特定の例示の実施の形態を参照して記載されてきたが、本開示の実施の形態のより広い範囲から逸脱せずに、これらの実施の形態に様々な改変および変更を行ってよい。本発明の主題のそのような実施の形態は、実際に、複数が開示されていたとしても、本出願の範囲をどの単数の開示または発明の概念に自発的に限定する意図なく、単に便宜上、「本発明」という用語により、個別にまたは集合的に、ここに称されることがある。
【0123】
ここに示された実施の形態は、当業者が、開示された教示を実施できるほど十分に詳しく記載されている。本開示の範囲から逸脱せずに、構造的および論理的置換および変更が行えるように、他の実施の形態が使用され、そこから想起されることがある。したがって、詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、様々な実施の形態の範囲は、付随の請求項の権利が与えられる等価物の全範囲と共に、その請求項によってしか、定義されない。
【0124】
ここに用いられているように、「または」という用語は、包括的または排他的な意味のいずれで解釈されてもよい。さらに、複数の例が、1つの例として、ここに記載された供給源、操作、または構造に与えられることがある。それに加え、様々な供給源、操作、モジュール、エンジン、およびデータ蓄積の間の境界は、いくぶん任意であり、特定の説明の構成の文脈において、特定の操作が示されている。機能性の他の割り当てが考えられ、本開示の様々な実施の形態の範囲に入るであろう。一般に、例示の構成において別個の供給源と表された構造および機能性は、複合構造または供給源として実施されてもよい。同様に、1つの供給源として示された構造および機能性は、別個の供給源として実施されてもよい。これらの他の変更、改変、追加、および改善は、付随の特許請求の範囲により示された本開示の実施の形態の範囲に入る。したがって、明細書および図面は、制限的な意味というよりもむしろ、説明として見なされるべきである。
【0125】
先の記載は、説明目的のために、特定の例示の実施の形態を参照して記載されてきた。しかしながら、先の説明の議論は、包括的である、または可能性のある例示の実施の形態を、開示された精確な形態に限定する意図はない。上記教示に鑑みて、多くの改変および変更が可能である。その例示の実施の形態は、関与する原理およびそれらの実際の用途を最良に説明し、それによって、当業者が、検討されている特定の用途に適したように、様々な改変と共に様々な例示の実施の形態を最良に利用するために、選択され、記載された。
【0126】
「第1」、「第2」などの用語は、様々な要素を記載するためにここに使用されることがあるが、これらの要素は、これらの用語により限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためだけに使用される。例えば、現在の例示の実施の形態の範囲から逸脱せずに、第1の接触は第2の接触と称することができ、同様に、第2の接触は第1の接触と称することができる。第1の接触と第2の接触は両方とも接触であるが、それらは同じ接触ではない。
【0127】
この中の例示の実施の形態の記載に使用される専門用語は、特定の例示の実施の形態を記載する目的だけのためであり、限定を意図するものではない。例示の実施の形態および付随の実施例の説明に使用されるように、名詞は、特に明記のない限り、複数の対象も含むことが意図されている。ここに用いられているような「および/または」という用語は、関連して列挙された項目の1つ以上の任意と全ての可能な組合せを称し、それを包含することも理解されよう。「含む」および/または「含んでいる」という用語は、本明細書に使用される場合、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素、および構成要素の存在を明確に述べるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはその群の存在または追加を排除するものではないこともさらに理解されよう。
【0128】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0129】
実施形態1
デバイスにおいて、
約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含むガラスまたはガラスセラミック材料から作られた基板、
を備え、
前記基板は、未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、700~2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘る該未退色/退色領域における平均吸光度比は7.5以上であり、
前記基板は、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明である、デバイス。
【0130】
実施形態2
前記基板が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Zn、Se、Nb、Ru、Rh、In、Sn、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの任意の組合せがドープされることのある、タングステンおよび/またはモリブデンを含む酸化物または亜酸化物からなる変更可能な結晶相を含み、この変更可能な成分の量が約0.35モル%から約30モル%である、実施形態1に記載のデバイス。
【0131】
実施形態3
前記基板がドーパントを含み、該ドーパントが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnからなる群より選択される元素を含む、実施形態1または2に記載のデバイス。
【0132】
実施形態4
前記ドーパントがAgを含む、実施形態3に記載のデバイス。
【0133】
実施形態5
前記ドーパントがCoを含む、実施形態3に記載のデバイス。
【0134】
実施形態6
前記基板が、315nmから400nmの紫外線Aの波長範囲において実質的に不透明である、実施形態1から5のいずれか1つに記載のデバイス。
【0135】
実施形態7
前記基板が、280nmから315nmの紫外線Bの波長範囲において実質的に不透明である、実施形態6に記載のデバイス。
【0136】
実施形態8
前記基板が、100nmから280nmの紫外線Cの波長範囲において実質的に不透明である、実施形態7に記載のデバイス。
【0137】
実施形態9
前記基板の表面上に1つ以上のクラッド層をさらに含み、該1つ以上のクラッド層が、該基板と異なる熱膨張係数(CTE)を有する、実施形態1から8のいずれか1つに記載のデバイス。
【0138】
実施形態10
前記1つ以上のクラッド層が、前記基板の反対の主面の上のクラッド層を含む、実施形態9に記載のデバイス。
【0139】
実施形態11
装置において、
ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置する光学デバイスであって、該ガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含む、光学デバイス、
を備え、
前記パネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、該退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、
前記パネルは、400nmから700nmの可視波長範囲において実質的に不透明であり、
前記パネルの退色個別領域は、前記光学デバイスに隣接して位置している、装置。
【0140】
実施形態12
前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光学検出器を含む、実施形態11に記載の装置。
【0141】
実施形態13
前記光学デバイスが、近赤外(NIR)光源を含む、実施形態11または12に記載の装置。
【0142】
実施形態14
前記光学デバイスが、近赤外(NIR)カメラを含む、実施形態11から13のいずれか1つに記載の装置。
【0143】
実施形態15
前記退色個別領域が複数の退色個別領域を含み、各領域が、前記パネルの主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている、実施形態11から14のいずれか1つに記載の装置。
【0144】
実施形態16
前記パネルが複数の層を含み、2つ以上の層の各々が複数の退色個別領域を含み、各領域が、前記パネルの主面に垂直な方向に対してある角度で向けられている、実施形態11から15のいずれか1つに記載の装置。
【0145】
実施形態17
前記複数の層が、該複数の層の隣接する層と異なる熱膨張係数(CTE)を有する1つ以上の層を含む、実施形態16に記載の装置。
【0146】
実施形態18
前記パネルが湾曲した主面を含む、実施形態11から17のいずれか1つに記載の装置。
【0147】
実施形態19
前記パネルが、該パネルの表面上に1つ以上のクラッド層を含み、該1つ以上のクラッド層が、該パネルの隣接領域と異なる熱膨張係数(CTE)を有する、実施形態11から18のいずれか1つに記載の装置。
【0148】
実施形態20
前記1つ以上のクラッド層が、前記パネルの反対の主面の上のクラッド層を含む、実施形態19に記載の装置。
【0149】
実施形態21
隠れた近赤外(NIR)光学デバイスであって、
ガラスまたはガラスセラミックのパネルの背後に位置するNIRカメラであって、該ガラスセラミックは、約0.1質量%から約50質量%の結晶相を含む、NIRカメラ、
を備え、
前記パネルは、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り1.0OD/mm以上の平均光学吸光度を有する未退色領域および少なくとも部分的に溶解したまたは変更された結晶相を含む退色個別領域を含み、該退色個別領域は、700nmから2000nmの近赤外(NIR)波長範囲に亘り0.5OD/mm以下の平均光学吸光度を有し、
前記パネルは、100nmから700nmのUVおよび可視波長範囲において実質的に不透明であり、
前記パネルの退色個別領域は、前記NIRカメラのレンズに隣接して位置している、隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【0150】
実施形態22
前記基板が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Zn、Se、Nb、Ru、Rh、In、Sn、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuの任意の組合せがドープされることのある、タングステンおよび/またはモリブデンを含む酸化物または亜酸化物からなる変更可能な結晶相を含み、この変更可能な成分の量が約0.35モル%から約30モル%である、実施形態21に記載の隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【0151】
実施形態23
前記基板がドーパントを含み、該ドーパントが、Co、Ni、Cu、Se、Bi、Cr、V、Fe、およびMnからなる群より選択される元素を含む、実施形態21または22に記載の隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【0152】
実施形態24
前記基板が、Agを含むドーパントを含む、実施形態22または23に記載の隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【0153】
実施形態24
前記基板が、Coを含むドーパントを含む、実施形態22または23に記載の隠れた近赤外(NIR)光学デバイス。
【符号の説明】
【0154】
400、700、820、840 装置
410、500、600、702、822、841 パネル
412、506、608 退色領域
414、704、824、844 未退色領域
420 光学デバイス
422 光
502、606、821 基板
504 クラッド層
602、843 第1のクラッド層
604、836 第2のクラッド層
706、826、846、856 退色個別領域
708、828 入射光
710、830 入射ビーム
842 第1のクラッド
852 第2のクラッド
870 コア
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】