(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20220111BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20220111BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220111BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20220111BHJP
【FI】
G01T1/17 A
G01T1/24
A61B6/03 320Q
G01N23/046
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525659
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 SE2019051011
(87)【国際公開番号】W WO2020106198
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512120638
【氏名又は名称】プリズマティック、センサーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】PRISMATIC SENSORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】マッツ、ダニエルソン
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA01
2G001DA09
2G001HA14
2G188AA02
2G188BB02
2G188CC28
2G188DD05
2G188DD16
2G188EE12
2G188EE39
4C093AA22
4C093CA35
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB14
4C093EB17
(57)【要約】
各々が検出器素子を備えるいくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づく光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法であって、X線検出器サブモジュールが、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向される、方法が提供される。各検出器サブモジュールまたはウェハは、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。基本的に、本方法は、X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するステップ(S1)、および電荷拡散の決定された推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するステップ(S2)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が検出器素子(22)を備えるいくつかのX線検出器サブモジュール(21)またはウェハに基づく光子計数X線検出器(20)におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法であって、
前記X線検出器サブモジュール(21)が、前記X線がエッジを通って入ることを前提として、前記エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、
各検出器サブモジュール(21)またはウェハが、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される前記検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にし、
前記方法が、
- 前記X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用または前記X線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するステップ(S1)、および
- 前記電荷拡散の決定された推量に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定するステップ(S2)
を含む、方法。
【請求項2】
前記X線検出器サブモジュール(21)の各々が、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、前記検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子(22)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、いくつかの入射X線光子の各々および/またはいくつかのX線検出器サブモジュールの各々について、電荷拡散の対応する推量を決定するため、ならびに、それぞれのX線検出器サブモジュールにおける前記入射X線光子の前記相互作用の初期点の推量を決定するために実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電荷拡散の推量が、前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子によって検出されるような、前記コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて決定される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
電荷拡散の推量を決定する前記ステップ(S1)が、前記電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、前記電荷拡散の推量が、前記電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記入射X線光子の前記相互作用の初期点が、前記雲の測定された幅および前記雲の積分された電荷に基づいて推定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定する前記ステップ(S2)が、
- 前記X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、前記X線検出器サブモジュール内の前記X線光子の検出点と前記電荷拡散の推量に基づいた前記相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するステップ、および
- 前記検出器サブモジュールの厚さに沿って、前記検出点および距離の決定された前記推量に基づいて、前記相互作用の初期点の推量を決定するステップ
を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記電荷拡散の幅が、測定または推定され、前記検出点と前記相互作用の初期点との間の距離が、前記電荷拡散または分布の前記測定された幅に基づいて決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の相互作用点の推量を決定するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の前記相互作用点の推量を決定する前記ステップが、前記検出器素子が前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記電荷雲プロファイルを決定し、曲線あてはめを実施し、前記曲線がそのピークを有する場所を見つけ出し、前記ピークを特定の方向における前記相互作用点として特定することを伴う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出器素子が前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の前記相互作用点の推量を決定する前記ステップが、最も高い電荷を検出した画素を前記相互作用点として特定することによって実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、主要面において前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子が、画素のアレイを提供し、この場合、前記画素が、分解されるべき電荷雲よりも小さい、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
各々が検出器素子(22)を備えるいくつかのX線検出器サブモジュール(21)またはウェハに基づく光子計数X線検出器(20)におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするためのシステム(25;30;40;50;100;200)であって、
前記X線検出器サブモジュールが、前記X線がエッジを通って入ることを前提として、前記エッジがX線源(10)の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、
各検出器サブモジュール(21)またはウェハが、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される前記検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にし、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用または前記X線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するように構成され、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、電荷拡散の決定された前記推量に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定するように構成される、システム(25;30;40;50;100;200)。
【請求項16】
前記X線検出器サブモジュール(21)の各々が、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、前記検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子(22)を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、いくつかの入射X線光子の各々および/またはいくつかのX線検出器サブモジュールの各々について、電荷拡散の対応する推量を決定するように、ならびに、それぞれのX線検出器サブモジュールにおける前記入射X線光子の前記相互作用の初期点の推量を決定するように構成される、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することによって前記電荷拡散の推量を決定するように構成される、請求項15から17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって前記電荷拡散の推量を決定するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記雲の測定された幅および前記雲の積分された電荷に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記入射X線光子の前記相互作用の初期点を推定するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、前記X線検出器サブモジュール内の前記X線光子の検出点と前記電荷拡散の推量に基づいた前記相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するように構成され、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記検出器サブモジュールの厚さに沿って、前記検出点および距離の決定された前記推量に基づいて、前記相互作用の初期点の推量を決定するように構成される、請求項15から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷拡散の幅を測定または推定するように、および前記電荷拡散または分布の前記測定された幅に基づいて前記検出点と前記相互作用の初期点との間の距離を決定するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の相互作用点の推量を決定するように構成される、請求項15から22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて、前記検出器素子が前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の前記相互作用点の推量を決定するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷雲プロファイルを決定し、曲線あてはめを実施し、前記曲線がそのピークを有する場所を見つけ出し、前記ピークを特定の方向における前記相互作用点として特定するために構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、最も高い電荷を検出した画素を前記相互作用点として特定することによって、前記検出器素子が前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の前記相互作用点の推量を決定するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、主要面において前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している前記検出器素子(22)が、画素のアレイを提供するように設計および配置され、この場合、前記画素が、分解されるべき電荷雲よりも小さい、請求項15から26のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記X線検出器サブモジュール(21)のうちの少なくとも1つが、半導体基板または材料であって、前記半導体基板に配置される複数のアクティブ積分型画素(22)を備える、半導体基板または材料を備える、請求項15から27のいずれかに記載のシステム。
【請求項29】
前記アナログ信号処理の少なくとも一部が、前記アクティブ積分型画素内へ積分される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
各X線検出器サブモジュール(21)が、前記入ってくるX線の方向に検出器素子のいくつかの深さセグメント(22)を有する、請求項15から29のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
前記X線検出器サブモジュール(21)が、効果的な検出器面積または体積を形成するための構成で、前後に配置される、および/または横並びに配置される、請求項15から30のいずれかに記載のシステム。
【請求項32】
前記検出器素子(22)の少なくとも一部が、前記入射X線の方向に直交する方向においてよりも、前記入射X線の方向において、少なくとも2:1の関係で、長い伸長を有する、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、プロセッサ(210)およびメモリ(220)を備え、前記メモリ(220)が、前記プロセッサ(210)によって実行可能な命令を含み、それにより、前記プロセッサ(210)が、電荷拡散の推量または測定量を決定し、決定した前記電荷拡散の推量に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定するように動作可能である、請求項15から32のいずれかに記載のシステム。
【請求項34】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子によって検出されるような、前記コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて、前記電荷拡散の推量を決定するように構成される、請求項15から33のいずれかに記載のシステム。
【請求項35】
請求項15から34のいずれかに記載のシステム(25;30;40;50;100;200)を備える、X線画像システム(100)。
【請求項36】
前記X線画像システム(100)が、コンピュータ断層撮影(CT)システムである、請求項35に記載のX線画像システム。
【請求項37】
プロセッサ(210)によって実行されるとき、前記プロセッサ(210)に、請求項1から14のいずれかに記載の方法を実施させる命令を含む、コンピュータプログラム(225;35)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案された技術は、X線画像およびX線検出器に関し、より詳細には、光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法および対応するシステム、ならびに対応するX線画像システム、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像などの放射線画像は、医療用途においておよび非破壊試験のために長年にわたって使用されている。
【0003】
通常、X線画像システムは、X線源およびX線検出器システムを含む。X線源は、X線を放出し、これが撮像されるべき対象または物体を通過し、次いでX線検出器システムによって登録される。一部の物質が、他よりも大きい割合のX線を吸収するため、画像は、対象または物体の形を成す。
【0004】
図1を参照して、例証的なX線画像システム全体の簡単な概観から始めることが有用であり得る。この非限定的な例において、X線画像システム100は、基本的に、X線源10、X線検出器システム20、および関連した画像処理デバイス30を備える。一般に、X線検出器システム20は、任意選択のX線光学系によって集束させられて、物体もしくは対象またはその部分をすでに通過している場合のある、X線源10からの放射を登録するために構成される。X線検出器システム20は、画像処理デバイス30による画像処理および/または画像再構築を可能にするために、好適なアナログ処理および読出しエレクトロニクス(X線検出器システム20に統合され得る)を介して画像処理デバイス30に接続可能である。
【0005】
図2は、X線を放出するX線源10と、X線が物体を通過した後にX線を検出するX線検出器システム20と、検出器からの生の電気信号を処理し、それをデジタル化するアナログ処理回路25と、補正を適用すること、測定データを一時的に格納すること、またはフィルタリングすることなど、測定データに対するさらなる処理動作を実行し得るデジタル処理回路40と、処理データを格納し、さらなる後処理および/または画像再構築を実施し得るコンピュータ50とを備えるX線画像システム100の一例を示す概略図である。
【0006】
検出器全体は、X線検出器システム20、または関連したアナログ処理回路25と組み合わされたX線検出器システム20と見なされ得る。
【0007】
デジタル処理回路40および/またはコンピュータ50を含むデジタル部は、X線検出器からの画像データに基づいて画像再構築を実施するデジタル画像処理システム30と見なされ得る。画像処理システム30は、したがって、コンピュータ50、または代替的に、デジタル処理回路40およびコンピュータ50の組み合わされたシステム、またはおそらくは、デジタル処理回路が画像処理および/もしくは再構築のためにもさらに特化される場合には、単独でデジタル処理回路40として、見られ得る。
【0008】
一般に使用されるX線画像システムの一例は、X線の扇または円すいビームを生成するX線源、および患者または物体を透過されるX線の割合を登録するための反対側のX線検出器システムを含み得るコンピュータ断層撮影(CT)システムである。X線源および検出器システムは、通常、撮像される物体の周りを回転するガントリに装着される。
【0009】
したがって、
図1および
図2に例証されるX線源10およびX線検出器システム20は、このように、CTシステムの一部として配置され得、例えば、CTガントリに装着可能であり得る。
【0010】
X線画像検出器の課題は、検出したX線から最大限の情報を抽出して、物体または対象の画像への入力を提供することであり、この場合、物体または対象は、密度、組成、および構造に関して描写される。フィルムスクリーンを検出器として使用することは依然として一般的であるが、最も一般的には、今日の検出器は、デジタル画像を提供する。
【0011】
現代のX線検出器は、通常、入射X線を電子に変換する必要があり、これは、典型的には、光吸収を通じて、またはコンプトン相互作用を通じて発生し、結果として生じる電子は、通常、そのエネルギーが失われるまで2次可視光を作成しており、この光が、今度は、感光材料によって検出される。半導体に基づき、この場合は、X線によって作成される電子が、電場印加を通じて収集される電子正孔対に関して電荷を作成している、検出器も存在する。
【0012】
従来のX線検出器は、エネルギー積分型であり、したがって、各々の検出された光子から検出された信号への寄与は、そのエネルギーに比例し、従来のCTにおいて、測定結果は、単一のエネルギー分布について獲得される。したがって、従来のCTシステムによって生成される画像は、ある特定の外観を有し、この場合、異なる組織および物質は、特定の範囲内で典型的な値を示す。
【0013】
検出器が多数のX線からの積分された信号を提供し、この信号は、画素内の入射X線の数の最良の推測を取得するために、後になってのみデジタル化されるという意味で、積分モードで動作する検出器が存在する。
【0014】
光子計数検出器は、いくつかの用途において実行可能な代案としても台頭しており、現在、それらの検出器は、主にマンモグラフィにおいて商業的に利用可能である。光子計数検出器は、原則としてX線ごとのエネルギーが測定され得、これにより物体の組成に関する追加の情報をもたらすことから、利点を有する。この情報は、画像品質を増加させるため、および/または放射線量を減少させるために使用され得る。
【0015】
さらなる改善は、例えば、
図3に概略的に例証されるような、いわゆるエネルギー識別光子計数検出器の開発に関する。このタイプのX線検出器においては、各々の登録された光子は、しきい値のセットと比較される現在のパルスを生成し、それにより、いくつかのいわゆるエネルギービンの各々に入射する光子の数を数える。これは、画像再構築プロセスに非常に有用であり得る。
【0016】
WO2017/015473は、コンプトンおよび核医学イメージング、PETイメージング、ならびにX線CTイメージング能力のうちの1つまたは複数を組み込む集積検出器システムによる強化された放射線画像のための検出器設計およびシステムに関する。検出器設計は、ガス、シンチレータ、半導体、低温(Geおよび超電導体など)、および構造化検出器を採用し得る、エッジオン(edge-on)もしくはフェイス・オン(face-on)検出器、またはエッジオンおよびフェイス・オン検出器の組合せからなる検出器モジュールの1つまたは複数の層を採用する。検出器は、追跡能力を実装し得、不一致または一致検出モードで動作し得る。
【0017】
US2011/0155918は、画素化画像検出器において共有電荷を提供するためのシステムおよび方法に関する。1つの方法は、電荷分布が、少なくとも2つの画素によって検出され、その少なくとも2つの画素から電荷情報を獲得しているような構成にある画素化固体光子検出器のために複数の画素を提供することを含む。本方法は、獲得した電荷情報に基づいて複数の画素と電荷分布との相互作用の位置を決定することをさらに含む。
【0018】
US2015/0025852は、半導体放射検出器からの信号間の電荷収集の正しい決定を行う方法に関する。
【0019】
US2016/0124096は、電極間隔よりも良好な分解能を有するクロス・ストリップ幾何形状で提供されるX線検出器に関する。基本概念は、電極パターンを検出器スラブに対して約45度回転させることによるアナログ電荷雲再構築であり、これにより、すべての電極に対する等しい長さ、および垂直積層へのより容易な積分などの性能利益を提供する。
【0020】
US2017/0212254は、第1の放射線散乱層、第2の放射線散乱層、および第1の放射線散乱層と第2の放射線散乱層との間に配設される放射線吸収層を含むコンプトンカメラのための検出器に関する。第1の放射線散乱層および放射線吸収層は、第1の検出器の少なくとも一部を構成し、第2の放射線散乱層および放射線吸収層は、第2の検出器の少なくとも一部を構成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
全体的な目的は、光子計数X線検出器に関連した改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
提案された技術によると、光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法および対応するシステム、ならびに対応するX線画像システム、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品を提供することが望ましい。
【0023】
第1の態様によると、各々が検出器素子を備えるいくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づく光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法であって、X線検出器サブモジュールが、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向される、方法が提供される。各検出器サブモジュールまたはウェハは、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。基本的に、本方法は、
- X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するステップ、および
- 電荷拡散の決定された推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するステップ
を含む。
【0024】
第2の態様によると、各々が検出器素子を備えるいくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づく光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするためのシステムであって、X線検出器サブモジュールが、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向される、システムが提供される。各検出器サブモジュールまたはウェハは、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。基本的に、本システムは、X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するように構成される。本システムはまた、電荷拡散の決定された推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するように構成される。
【0025】
第3の態様によると、第2の態様に従うシステムを備えるX線画像システムが提供される。
【0026】
第4の態様によると、対応するコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品が提供される。
【0027】
この方法では、X線画像および/または画像再構築は大幅に改善され得る。例えば、分解能が著しく改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】X線画像システム全体の一例を示す概略図である。
【
図2】X線画像システムの別の例を示す概略図である。
【
図3】エネルギー識別光子計数検出器を実装するための概念構造の一例を示す概略図である。
【
図4A】例示的な実施形態に係るX線検出器サブモジュールの一例を示す概略図である。
【
図4B】横並びに配置される、例えば、X線焦点に位置するX線源に対してわずかに湾曲した全体幾何形状にある、いくつかの検出器サブモジュールを備えるモジュラX線検出器の一例を示す概略図である。
【
図4C】横並びに配置され、また前後に積層されるいくつかの検出器サブモジュールを備えるモジュラX線検出器の一例を示す概略図である。
【
図4D】前後に積層される、ここではウェハと称される、いくつかのX線検出器サブモジュールに基づく光子計数X線検出器の一例を示す概略図である。
【
図5】深さセグメント化されたX線検出器内のセグメントの関数としての光子計数率の一例を示す概略図である。
【
図7A】x-z平面における特定のウェハの画素の一例を示す概略図である。
【
図7B】電荷雲についてのx方向における電荷雲プロファイルの一例を示す概略図である。
【
図7C】電荷雲についてのz方向における電荷雲プロファイルの一例を示す概略図である。
【
図7D】電荷拡散または雲の幅が、X線検出器の検討対象の検出器サブモジュールまたはウェハの厚さに沿った、相互作用の初期点から検出点までの距離にどれくらい依存するかの一例を示す概略図である。
【
図8】光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法の一例を示す概略フロー図である。
【
図9】一実施形態に係るX線検出器サブモジュールの一例を示す概略図である。
【
図10】一実施形態に係るX線検出器サブモジュールの別の一例を示す概略図である。
【
図11】一実施形態に係るアクティブ積分型画素の一例を示す概略図である。
【
図12】別の実施形態に係るアクティブ積分型画素の別の例を示す概略図である。
【
図13】さらなる実施形態に係るアクティブ積分型画素のさらに別の例を示す概略図である。
【
図14】さらに別の実施形態に係るアクティブ積分型画素の依然として別の例を示す概略図である。
【
図15】一実施形態に係るコンピュータ実装形態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一般に、X線光子は、X線検出器の半導体材料の内側で電子正孔対に変換され、この場合、電子正孔対の数は、一般的に、光子エネルギーに比例する。電子および正孔は、検出器素子の方へドリフトし、その後、光子計数検出器を出ていく。このドリフトの間、電子および正孔は、検出器素子内に電流を誘発する。
【0030】
各々が検出器素子を備えるいくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づく光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の改善された推定を可能にすることが望ましく、ここで、X線検出器サブモジュールは、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向される。
【0031】
各検出器サブモジュールまたはウェハは、前面/主要面および裏面など、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面(前面/主要面)の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。
【0032】
基本概念は、X線検出器の(特定の)検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定し、電荷拡散の決定された推量に少なくとも部分的に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定することである。
【0033】
述べたように、X線検出器サブモジュールは、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状に配向される。
【0034】
エッジオンは、X線検出器のための設計であり、この場合、X線検出器素子または画素などのX線センサは、入ってくるX線に対してエッジオンで配向される。
【0035】
一例として、X線検出器サブモジュールの各々は、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子を備え得る。これは、通常、いわゆる深さセグメント化されたX線検出器サブモジュールに対応する。しかしながら、提案された技術は、深さセグメント化されていないX線検出器サブモジュールとの使用にも適用可能である。検出器素子は、入射X線の方向に実質的に直交する方向にアレイとして配置され得る一方、検出器素子の各々は、入射X線に対してエッジオンで配向される。言い換えると、X線検出器サブモジュールは、深さセグメント化されなくてもよいが、依然として、入ってくるX線に対してエッジオンで配置され得る。
【0036】
特定の例では、検出器素子または画素の少なくとも一部は、入射X線の方向に直交する方向においてよりも、入射X線の方向において、少なくとも2:1の関係で、長い伸長を有する。言い換えると、検出器素子または画素は、幾何学的設計において非対称であり得、入射X線の方向に直交する(垂直の)方向における伸長よりも、入射X線の方向において少なくとも2倍の伸長(深さ)を有し得る。
【0037】
電荷拡散の推量は、例えば、X線検出器サブモジュールまたはウェハにわったって分布している検出器素子によって検出されるような、コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて決定され得るということを理解されたい。
【0038】
特定の例では、電荷拡散の推量を決定するステップは、電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することを含む。
【0039】
一例として、電荷拡散は、電荷雲によって表され得、電荷拡散の推量は、電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって決定され得る。電荷拡散の推量が、検出器素子によって検出されるような誘導電流によって表され得るため、電荷雲の形状および/または幅は、故に、測定または検出された誘導電流に関連し得る。
【0040】
任意選択的に、検出器サブモジュールの厚さに沿った入射X線光子の相互作用の初期点は、雲の測定された幅および雲の積分された電荷に基づいて推定される。説明されるように、電荷雲の表現は、検出器サブモジュールのトリガされた検出器素子上の誘導電流によって提供され得る。
【0041】
例として、検出器サブモジュールの厚さに沿った、検出器サブモジュールにおけるX線光子の検出点と電荷拡散の推量に基づいた相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定し、次いで、検出器サブモジュールの厚さに沿って、検出点および決定された距離の推量に基づいて、相互作用の初期点の推量を決定することが可能であり得る。
【0042】
相互作用は、X線光子と半導体基板(典型的にはシリコン製)との間の相互作用である。
【0043】
検出器サブモジュールまたはウェハの厚さは、一般的には、検出器サブモジュールの、裏面および前面などの2つの対向する側面の間に延びる。
【0044】
例として、電荷拡散の形状、および特に幅が、測定または推定され、検出点と相互作用の初期点との間の距離は、電荷拡散または分布の形状または幅に基づいて決定される。
【0045】
例えば、検出器サブモジュールまたはウェハにわたって前面に分布している検出器素子は、画素のアレイを提供し、この場合、画素は、一般的には、分解されるべき電荷雲よりも小さい。
【0046】
特定の例では、検出器素子が検討対象の検出器サブモジュールまたはウェハの前面/主要面に分布している2つの方向は、典型的には、検出器サブモジュールの長さおよび深さ方向を含む。入ってくるX線の方向は、一般的には、深さ方向に対応し、これが、このタイプのX線検出器を深さセグメント化されたX線検出器またはエッジオンX線検出器と呼ぶ理由である。
【0047】
例として、電荷拡散の推量がいくつかの特定の検出器サブモジュールまたはウェハの各々において決定され得る設計を有することが可能であり、ここで、対応する検出器サブモジュールまたはそれぞれの検出器サブモジュールにおける入射X線光子の相互作用点の推量が決定され得る。これはまた、いくつかの入射X線光子の各々について実施され得る。
【0048】
言い換えると、本方法は、いくつかの入射X線光子の各々および/またはいくつかのX線検出器サブモジュールの各々について、電荷拡散の対応する推量を決定するため、および、それぞれのX線検出器サブモジュールにおける入射X線光子の相互作用の初期点の推量を決定するために実施される。
【0049】
提案された技術は、X線画像および/または画像再構築に対する大幅な改善、より詳細には、著しく増加した分解能を提供する。
【0050】
電荷拡散に関する情報はまた、検出器素子が検出器サブモジュールまたはウェハの前面に分布している2つの方向のうちの少なくとも一方における改善された分解能を提供するために使用され得る。例えば、増加した分解能は、これらの方向のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて、相互作用点をより正確に決定することによって獲得され得る。検討対象の方向は、検出器サブモジュールまたはウェハの長さおよび/または深さ方向を含み得る。
【0051】
例として、深さセグメント化されたX線検出器は、複数の検出器サブモジュールを含み得、それらの各々が、入ってくるX線の方向に検出器素子のいくつかの深さセグメントを有する。
【0052】
例えば、検出器サブモジュールは、効果的な検出器面積または体積を形成するための構成で、前後に配置され得、および/または横並びに配置され得る。
【0053】
図4Aは、例示的な実施形態に係るX線検出器サブモジュールの一例を示す概略図である。この例では、X線検出器サブモジュール21のセンサ部は、X線がエッジを通って入ることを前提として、深さ方向においていわゆる深さセグメントに分割される。各検出器素子22は、通常、主要構成要素として電荷収集電極を有するダイオードに基づく。
【0054】
通常、検出器素子は、検出器の個々のX線感光副素子である。一般に、光子相互作用は、検出器素子内で起こり、したがって発生した電荷は、検出器素子の対応する電極によって収集される。各検出器素子は、典型的には、入射X線束を一連のフレームとして測定する。フレームは、フレーム時間と呼ばれる指定の時間間隔の間の測定データである。
【0055】
図4Bは、横並びに配置される、例えば、X線焦点に位置するX線源に対してわずかに湾曲した全体幾何形状にある、いくつかの検出器サブモジュール21を備えるモジュラX線検出器の一例を示す概略図である。
【0056】
図4Cは、横並びに配置され、また前後に積層されるいくつかの検出器サブモジュール21を備えるモジュラX線検出器の一例を示す概略図である。X線検出器サブモジュールは、X線検出器システム全体を構築するために横並びに一緒に組み立てられ得るより大きい検出器モジュールを形成するために、前後に積層され得る。
【0057】
上記のように、エッジオンは、X線検出器のための設計であり、この場合、X線検出器素子または画素などのX線センサは、入ってくるX線に対してエッジオンで配向される。
【0058】
例えば、検出器は、少なくとも2つの方向に検出器素子を有し得、ここで、エッジオン検出器の方向のうちの1つは、X線の方向に成分を有する。そのようなエッジオン検出器は、時に、入ってくるX線の方向に検出器素子の2つ以上の深さセグメントを有して、深さセグメント化されたX線検出器と称される。
【0059】
代替的に、X線検出器は、深さセグメント化されなくてもよいが、依然として、入ってくるX線に対してエッジオンで配置される。
【0060】
検出器トポロジに応じて、検出器素子は、例えば、検出器がフラット・パネル検出器であるとき、画素に対応し得る。しかしながら、深さセグメント化された検出器は、いくつかの検出器ストリップを有すると見なされ得、各ストリップがいくつかの深さセグメントを有する。そのような深さセグメント化された検出器では、各深さセグメントは、深さセグメントの各々がその独自の個々の電荷収集電極と関連付けられる場合は特に、個々の検出器素子と見なされ得る。
【0061】
深さセグメント化された検出器の検出器ストリップは、通常、普通のフラット・パネル検出器の画素に対応する。しかしながら、深さセグメント化された検出器を3次元画素アレイと見なすことも可能であり、この場合、各画素(時に、ボクセルと称される)は、個々の深さセグメント/検出器素子に対応する。光子計数検出器は、いくつかの用途において実行可能な代案として台頭しており、現在、それらの検出器は、主にマンモグラフィにおいて商業的に利用可能である。光子計数検出器は、原則としてX線ごとのエネルギーが測定され得、これにより物体の組成に関する追加の情報をもたらすことから、利点を有する。この情報は、画像品質を増加させるため、および/または放射線量を減少させるために使用され得る。
【0062】
エネルギー積分型システムと比較して、光子計数CTは、以下の利点を有する。第一に、エネルギー積分型検出器によって信号へと積分される電子雑音は、光子計数検出器内のノイズフロアを上回る最低エネルギーしきい値を設定することによって拒否され得る。第二に、エネルギー情報が検出器によって抽出され得、これが、最適なエネルギー重み付けによりコントラスト雑音比を向上させることを可能にし、また、いわゆる基底物質分解が効果的に実施されることを可能にし、この基底物質分解により、調査される対象または物体における異なる材料および/または構成要素が識別および定量化され得る。第三に、3つ以上の基本物質が使用され得、これは、造影剤、例えば、ヨウ素またはガドリニウムの分布が定量的に決定されるKエッジ・イメージングなどの分解技術に役立つ。第四に、検出器残光がなく、高い角度分解能が獲得され得ることを意味する。最後になるが、より高い空間分解能が、より小さい画素サイズを使用することによって達成され得る。
【0063】
任意の計数X線光子検出器における問題は、いわゆるパイルアップ問題である。X線光子の束率が高いとき、2つの後続の電荷パルスを区別することにおける問題が存在し得る。上で述べたように、フィルタ後のパルス長さは、整形時間に依存する。このパルス長さが、2つのX線光子誘起電荷パルス間の時間よりも長い場合、パルスは一緒に大きくなり、2つの光子は区別不可能であり、1つのパルスとして数えられ得る。これが、パイルアップと呼ばれる。高い光子束におけるパイルアップを回避する1つの方法は、したがって、小さい整形時間を使用すること、または、本明細書に説明される任意選択の実施形態において提案されるような深さセグメント化を使用することである。
【0064】
吸収効率を増大させるために、検出器は、それに応じてエッジオンで配置され得、この場合、吸収深さは、任意の長さに選択され得、検出器は、非常に高い電圧に至ることなしに、依然として完全に消耗され得る。
【0065】
特に、シリコンは、電荷担体(電子正孔対)の作成に必要とされる高純度および低エネルギー、ならびにまた、X線の高い比率の場合さえも作用することを意味する、これらの電荷担体の高移動度など、検出器材料として多くの利点を有する。
【0066】
半導体X線検出器サブモジュールは通常、半導体検出器モジュールのうちの少なくともいくつかの間に統合され得る任意選択の散乱防止モジュールを除き、ほぼ完ぺきな幾何学的効率を有するほぼ任意のサイズの完全な検出器を形成するために一緒にタイル化される。
【0067】
いわゆる光子計数エッジオンX線検出器に関する一般的なさらなる情報は、例えば、光子計数エッジオンX線検出器の一例を開示する米国特許第8,183,535号において見つけることができる。米国特許第8,183,535号においては、検出器領域全体を形成するために一緒に配置される複数の半導体検出器モジュールが存在し、この場合、各半導体検出器モジュールがX線センサを備え、このX線センサは、入ってくるX線に対してエッジオンで配向され、X線センサ内で相互作用するX線の登録のための集積回路に接続される。
【0068】
先述のように、X線検出器全体は、例えば、検出器サブモジュールまたはウェハに基づき得、それらの各々が、入ってくるX線の方向にいくつかの深さセグメントを有する。
【0069】
そのような検出器サブモジュールは、次いで、任意の効果的な検出器面積または体積を形成するための様々な構成で、前後に配置もしくは積層され得、および/または横並びに配置され得る。例えば、CT用途のための完全な検出器は、典型的には、200cm2よりも大きい総面積を有し、これは、1500~2000個の検出器モジュールなど、大量の検出器モジュールを結果としてもたらす。
【0070】
例として、検出器サブモジュールは、一般的には、例えば、平面またはわずかに湾曲した全体構成で、横並びに配置され、および/または積層され得る。
【0071】
一般に、入ってくるX線は、できる限り多くの空間/エネルギー情報を提供するために、できる限り多くの検出器素子またはセグメントを通過する機会を有することが望ましい。
【0072】
X線相互作用は、センサの深さ(長さ)に沿って異なる深さセグメントにおいて分布および発生しているため、計数率全体は、例えば、各セグメント内の計数率の一例を示す概略図である
図5に見られ得るように、深さにおけるセグメントにわたって分布する。この例では、第1のセグメントは、X線源に最も近いセグメントである。
【0073】
例として、深さ40mmのセンサにわたって、400セグメント以上を有することが可能であり、計数率はそれに応じて減少する。センサ深さは、線量効率に不可欠であり、セグメント化が、パルス・パイルアップから保護し、本システムの空間分解能を維持する。
【0074】
例として、電流は、例えば、先に述べた
図3に概略的に例証されるように、例えば、整形フィルタ(SF:Shaping Filter)が後に続く電荷感応増幅器(CSA:Charge Sensitive Amplifier)を通じて測定され得る。
【0075】
1つのX線イベントからの電子および正孔の数は、X線エネルギーに比例するため、1つの誘導電流パルス内の全電荷が、このエネルギーに比例する。電流パルスは、CSA内で増幅され、次いでSFフィルタによってフィルタリングされる。SFフィルタの適切な整形時間を選択することによって、フィルタリング後のパルス振幅は、電流パルス内の全電荷に比例し、したがってX線エネルギーに比例する。SFフィルタの後、パルス振幅は、1つまたは複数の比較器(COMP)において、その値を1つまたはいくつかのしきい値(T1~TN)と比較することによって測定され得、計数器が導入され、それにより、パルスがしきい値よりも大きい場合の回数が記録され得る。この方法では、ある特定の時間フレーム内で検出されているそれぞれのしきい値(T1~TN)に対応するエネルギーを超えるエネルギーを有するX線光子の数を数えるおよび/または記録することが可能である。
【0076】
いくつかの異なるしきい値を使用する場合、いわゆるエネルギー識別光子計数検出器が獲得され、この場合、検出された光子は、様々なしきい値に対応するエネルギービンに分類され得る。時に、この特定のタイプの光子計数検出器は、マルチビン検出器とも称される。
【0077】
一般に、エネルギー情報は、新しい種類の画像が作成されることを可能にし、この場合、新しい情報が利用可能であり、従来の技術に固有の画像アーチファクトは除去され得る。
【0078】
言い換えると、エネルギー識別光子計数検出器では、パルス高さは、比較器においていくつかのプログラム可能なしきい値(T1-TN)と比較され、パルス幅に従って分類され、このパルス幅が今度はエネルギーに比例する。
【0079】
しかしながら、任意の電荷感応増幅器における固有問題は、それが、検出された電流に電子雑音を追加することである。実際のX線光子の代わりに雑音を検出することを回避するために、したがって、雑音値がしきい値を超える回数がX線光子の検出を邪魔することがないように十分に低いように、十分に高い最低しきい値を設定することが重要である。
【0080】
ノイズフロアを上回る最低しきい値を設定することによって、X線画像システムの放射線量の減少における大きな障害である電子雑音は、著しく減少され得る。
【0081】
整形フィルタは、整形時間の大きい値が、X線光子によって引き起こされる長いパルスをもたらし、フィルタ後に雑音振幅を減少させるという一般的性質を有する。整形時間の小さい値は、短いパルスおよびより大きい雑音振幅をもたらす。したがって、できる限り多くのX線光子を数えるためには、長い整形時間が、雑音を最小限にして、比較的小さいしきい値レベルの使用を可能にするために所望される。
【0082】
パルス高さが比較器において比較されるしきい値のセットまたは表の値は、光子計数検出器によって生成される画像データの品質に影響を及ぼす。さらには、これらのしきい値は、温度依存である。したがって、一実施形態において、電力消費回路によって生成される較正データは、セットまたは表またはしきい値(T1~TN)である。
【0083】
しかしながら理解されたいのは、エネルギー識別光子計数検出器を有する必要はないが、これには特定の利点が伴うということである。
図4Dは、ここではウェハと称されるいくつかのX線検出器サブモジュール21に基づく光子計数X線検出器の一例を示す概略図である。ウェハ21は、前後に積層される。各ウェハが、長さ(x)および厚さ(y)を有すること、ならびに各ウェハが深さ方向(z)においてもセグメント化されること、いわゆる深さセグメント化、が見られ得る。単に一例として、ウェハの長さは、25~50mmのオーダーにあり得、ウェハの深さは、25~50mmの同じオーダーにあり得る一方、ウェハの厚さは、300~900umのオーダーにあり得る。
【0084】
例として、各ウェハは、入ってくるX線の方向(z)を含む2つの方向に、ウェハにわたって分布している検出器素子を有する。
【0085】
各ウェハは、前面および裏面など、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さ(y)を有して、画素とも称される検出器素子が通常配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。
【0086】
提案された技術のより良い理解のため、コンプトン効果の基本概念を思い出すことが有用であり得る。
【0087】
入ってくるX線光子は、本明細書では単純に光効果と称される光電子効果、またはコンプトン相互作用のいずれかを通じて、検出器モジュールの半導体材料と相互作用し得る(
図6を参照されたい)。コンプトン散乱とも称されるコンプトン相互作用は、荷電粒子、通常、電子による、光子の散乱である。それは、コンプトン効果と呼ばれる、光子のエネルギーの減少を結果としてもたらす。光子のエネルギーの一部は、リコイリング電子へ転送される。光子は、半導体基板を通るその経路の間、複数のコンプトン相互作用に関与し得る。簡潔には、コンプトン相互作用において、入射X線光子は、初期軌道位置からはじき出されていわゆる二次または「自由」電子を形成する電子との相互作用によって、その元の経路から偏向される。そのような二次電子はまた、光効果の結果であり得、この場合、入射X線光子の全エネルギーが、電子へ転送される。
【0088】
より詳細には、X線光子は、コンプトン相互作用または光効果を通じて二次電子を作成し得る。電子は、X線光子から運動エネルギーを得て、短い距離、例えば、1um~50um移動し、その経路の間、電子正孔対を励起する。すべての電子正孔対は、作成するのに約3.6eVかかり、これは、例えば、電子に対する15keV成膜エネルギーを有するコンプトン相互作用は、いわゆる電荷雲を形成するおよそ4200の電子正孔対を作成することを意味する。雲は、電場線に従って移動またはドリフトし、検出器サブモジュールまたはウェハの裏面が正にバイアスされる場合、正孔は、検出器サブモジュールまたはウェハの前面に配置される読出し電極の方へ移動し、電子は、裏面の方へ移動する。ドリフト中、電荷雲を形成する電子正孔対はまた、拡散の対象となり、これは、基本的には、電荷雲がサイズを増大させることを意味する。
【0089】
読出し電極は、検出器素子または画素として機能している。例として、裏面の電圧は、およそ200Vであり、前面における仮想接地であり得る。
【0090】
当然ながら、電荷雲を分解することができるように、センサ領域を比較的高い分解能、例えば、5um~100um分解能へ細分しながら、ビームに対してX線検出器エッジオンを配向すること(すなわち、入ってくるX線に対するエッジオン)が提案される。
【0091】
図7Aは、x-z平面における特定のウェハの画素のうちのいくつかの一例を示す概略図である。この例では、画素22は、概して、分解されるべき電荷雲よりも小さい。例えば、電荷雲は、100umのオーダーの幅を有し得、したがって画素は、通常、それよりも小さい、またはさらに著しく小さいように設計される。故に、半導体基板を通って進むX線光子は、典型的には、検出器モジュール内の複数の近傍画素をカバーする電荷雲を結果としてもたらす。これは、単一のX線光子が複数の画素内のイベント検出をトリガする可能性が高いことを意味する。
【0092】
画素22は正方形として例証されるが、画素は、矩形であってもよく、または他の形態を有してもよいことを理解されたい。
【0093】
補足的態様によると、電荷拡散に関する情報は、検出器素子が検出器サブモジュールまたはウェハの前面に分布している2つの方向のうちの少なくとも一方における改善された分解能を提供するために使用され得る。例えば、増加した分解能は、これらの方向のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて獲得され得る。検討対象の方向は、検出器サブモジュールまたはウェハの長さ(x)方向および/または深さ(z)方向を含み得る。
【0094】
例として、本方法は、したがって、検出器素子がX線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するステップをさらに含む。
【0095】
例えば、検出器素子が主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するステップは、検出器素子がX線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて実施され得る。
【0096】
図7Bは、電荷雲についてのx方向における電荷雲プロファイルの一例を示す概略図である。
【0097】
図7Cは、電荷雲についてのz方向における電荷雲プロファイルの一例を示す概略図である。
【0098】
一例として、これは、1つまたは複数の電荷雲プロファイル(例えば、
図7Bおよび
図7Cを参照されたい)を決定すること、ならびに、加重平均および/または最小平均二乗法などの任意の標準曲線あてはめ法を通じて曲線あてはめを実施することを伴い得る。例えば、曲線がそのピークをどこに有するかを見つけ出し、ピークを特定の方向における相互作用点として特定することは、副画素分解能にまで、例えば、1um分解能まで、大幅に分解能を改善することができる。これは、およそ1mmの分解能を有し得る従来のX線画像システムの空間分解能と比較され得る。
【0099】
代替的に、検出された画素22のうちのどれが相互作用点として最も高い電荷を有するかに関する情報を使用することが可能であり得る。例えば、検出器素子が主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するステップは、最も高い電荷を検出した画素を相互作用点として特定することによって実施され得る。
【0100】
しかしながら理解されたいのは、上に説明されるような適切な曲線あてはめにより、副画素分解能を獲得することが可能であり得るということである。
【0101】
先に示されるように、本発明者らは、光子の検出点が、検出器サブモジュールまたはウェハの厚さ(y)に沿って、相互作用の初期点とはかなり著しく異なり得るということに気付いた。
【0102】
注意深い分析および実験の後、本発明者らは、電荷拡散または雲の形状、および特に幅が、X線検出器の検討対象の検出器サブモジュールまたはウェハの厚さに沿った、相互作用の初期点から検出点までの距離に依存するということにさらに気付いた。これは、3つの異なる距離または深さ(100μm、300μm、および600μm)について、
図7Dに概略的に示される。
【0103】
例として、電荷雲の断面が円形ではなくむしろ楕円形または他の形態のものであり、これにより、z-x平面において異なる方向では異なる伸長を有する場合、電荷拡散の関連尺度として電荷雲断面の最も小さい幅を使用することが好ましい。
【0104】
電荷雲の移動中、電荷は拡散し、これは、静電反発力によって加速される。誘導電流は、前面近くで発生する電荷の移動によって支配される。拡散は時間の関数であるため、電荷雲は、前面近く(電荷担体に寄与するには取るに足りない拡散)と比較して、相互作用が裏面近くで発生する(より長い時間)場合、より幅広になる(前面での収集時)。合計エネルギー(電子正孔雲の積分された電荷)および雲の幅を知ることにより、エッジオン・ウェハの厚さに沿った相互作用点の推定を可能にする。
【0105】
同時またはほぼ同時のイベントが近傍検出器素子(x-y平面内)で検出される光子計数検出器の領域は、これにより、入射X線光子と半導体材料との間の相互作用点を示す深さ情報(z方向における)も提供する。したがって、
図7Dに概略的に示されるように、検出領域が大きいほど電荷拡散は広くなり、より小さい検出領域および狭い電荷拡散(100μmなど)の場合と比較して、より離れた相互作用点(600μmなど)を示唆する。実験は、分解能が大幅に、例えば50umまで、改善され得ることを示した。これは、どのウェハで相互作用が起こるかを単に知ることと比較して、大幅な改善である。またここでは、およそ50umの分解能以内で、相互作用の初期点がウェハの厚さに沿ってどこで発生したかを知ることが可能である。
【0106】
したがって、ある意味で、提案された技術は、コンプトン相互作用または半導体材料を通る経路の間の光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散および分布を決定、または測定、または別途推定することによって、半導体材料内の入射X線光子の相互作用点を推定することに向けられると考えられ得る。相互作用点に関する情報は、次いで、X線画像および/または画像再構築において本X線画像システムによって使用され得る。
【0107】
図8は、光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法の一例を示す概略フロー図である。光子計数X線検出器は、いくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づき、いくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハの各々が、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子を備える。
【0108】
各検出器サブモジュールまたはウェハは、前面および裏面など、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。
【0109】
基本的に、本方法は、
S1:X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するステップ、および
S2:電荷拡散の決定された推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するステップ
を含む。
【0110】
この方法では、X線画像および/または画像再構築はかなり改善され得る。例えば、分解能が著しく改善され得る。
【0111】
例として、検出器サブモジュールの厚さに沿った、検出器サブモジュールにおけるX線光子の検出点と電荷拡散の推量に基づいた相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定し、次いで、検出器サブモジュールの厚さに沿って、検出点および決定された距離の推量に基づいて、相互作用の初期点の推量を決定することが可能であり得る。
【0112】
言い換えると、検出器サブモジュールの厚さに沿って相互作用の初期点を推定するステップは、以下のステップ:
- X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、X線検出器サブモジュール内のX線光子の検出点と電荷拡散の推量に基づいた相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するステップ、および
- 検出器サブモジュールの厚さに沿って、検出点および距離の決定された推量に基づいて、相互作用の初期点の推量を決定するステップ
を含み得る。
【0113】
検出器サブモジュールまたはウェハの厚さは、一般的には、検出器サブモジュールの裏面と前面との間のドリフト方向に延びる。
【0114】
例として、電荷拡散の形状、および特に幅が、測定または推定され、検出点と相互作用の初期点との間の距離は、電荷拡散または分布の形状または幅に基づいて決定される。
【0115】
例えば、電荷拡散は、電荷雲によって表され得、検出器サブモジュールまたはウェハにわたって主要面に分布している検出器素子は、画素のアレイを提供し得、この場合、画素は、一般的には、分解されるべき電荷雲よりも小さい。
【0116】
以下において、提案された技術に好適なX線検出器サブモジュールおよび画素を提供するための実施形態の非限定的な例が説明される。
【0117】
先行技術においては、時には単に検出器モジュールと称される検出器サブモジュールを、検出器モジュールが電気ルーティングのためおよびいくつかのASICのための半導体ベースの基板を有するという意味で、いわゆるマルチチップ・モジュール(MCM)として実装することが提案されている。ルーティングは、各画素からASIC入力への信号のための接続、ならびにASICから外部メモリおよび/またはデジタル・データ処理への接続を含む。ASICへの電力は、これらの接続において大きい電流のために必要とされる断面の増加を考慮して同様のルーティングを通じて提供され得るが、電力は、別個の接続を通じて提供されてもよい。故に、先行技術においては、各々の個々の画素は、後続のASICチャネルに接続され、この場合、シリコン基板上でASICおよび電気ルーティングを統合するためにMCM技術が用いられる。
【0118】
提案された技術は、検出器モジュール内でアクティブ積分型画素を使用することによって、先行技術のX線検出器に勝るさらなる改善をもたらす。これは、電気信号のアナログ処理の一部がASICから画素内へ移動されることを意味する。例えば、ASICから画素へ前置増幅を移動させることは、画素からASICへ信号をルーティングするために長いトレースが必要とされないため、前置増幅器への入力におけるキャパシタンスを下げる。画素内のアナログ信号処理の少なくとも一部を積分するさらなる利点としては、より小さい画素サイズが挙げられ、これにより画素あたりの電力消費を低減し、最小雑音しきい値の低減を可能にする。
【0119】
図9は、一実施形態に係る、チップまたはウェハとも称される検出器モジュールの概略図である。この例では、検出器モジュール21は、半導体基板または材料であって、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える、半導体基板または材料を備える。特定の実施形態において、複数のアクティブ積分型画素は、図に示されるように、半導体基板の主要面(前面)に、グリッドもしくはマトリクス状に、または他のパターンで配置される。図はまた、X線源に面し、X線が検出器モジュールに入射するエッジに対する異なる深さセグメントにおける画素の配置を例証する。
【0120】
一実施形態において、検出器モジュールはまた、図内では読出し回路、制御回路、およびアナログ・デジタル変換(ADC)回路として例示される、アナログ処理回路および/またはデジタル処理回路などのさらなる処理回路を備える。これらのさらなる処理回路は、1つもしくは複数のASIC内に、または1つもしくは複数のASICとして、実装され得る。
【0121】
さらなる処理回路は、有利には、半導体基板内に、複数のアクティブ積分型画素と同じ主要面(前面)に配置される。そのような場合、さらなる処理回路は、好ましくは、図に示されるようなX線源および入射X線から離れる方に面するエッジにおける、またはこのエッジと関連した主要面の部分または一部に配置される。この実施形態は、さらなる処理回路のために使用される検出器モジュールの部分を低減することによって、検出器モジュールのいかなる不感領域も低減する。加えて、さらなる処理回路は、入射のエッジから最も離れて配置されることによって、入ってくるX線から保護される。
【0122】
例証的であるが非限定的な例において、アクティブ積分型画素を備える半導体基板の領域は、10×10mm、15×15mm、20×20mm、25×25mm、30×30mm、35×35mm、40×40mm、または45×45mmなど、5×5mm~最大50×50mmであり得る。また、アクティブ積分型画素を有する矩形領域などの非正方形領域が可能である。
【0123】
図4Dでは、各ウェハが、1つの検出器モジュールを備え得るか、または複数の検出器モジュールを備え得る。後者の場合、検出器モジュールは、単一ユニットとして取り扱われ得るウェハを形成するために、セラミック基板などの薄い基板に装着され得る。時に、この単一ユニット自体が、検出器モジュール、または検出器サブモジュールと称され得る。単に一例として、ウェハの幅は、25~50mmのオーダーにあり得、ウェハの深さは、25~50mmの同じオーダーにあり得る一方、ウェハの厚さは、300~900μmのオーダーにあり得る。
【0124】
図9はまた、いわゆる検出器ダイオード(電極)を有するアクティブ積分型画素を、読出しエレクトロニクスおよび相互接続と一緒に概略的に示す。各々のそのようなアクティブ積分型画素は、典型的には、μm範囲のサイズを有する。一実施形態において、アクティブ積分型画素は、正方形であり、典型的には、検出器モジュール内のすべてのアクティブ積分型画素が同じ形状およびサイズを有する。しかしながら、
図10に示されるように、矩形など、画素のための他の形状を使用すること、ならびに/または、同じ検出器モジュール内に異なるサイズおよび/もしくは形状を有するアクティブ積分型画素を有することが可能である。
図10では、アクティブ積分型画素は、同じ幅だが異なる深さを有する。例えば、アクティブ積分型画素の深さは、異なる深さセグメントでは、以て、X線が検出器モジュールに入射するエッジまでの距離に基づいて、増加し得る。これは、このエッジにおけるアクティブ積分型画素が、好ましくは、反対のエッジに最も近いアクティブ積分型画素と比較してより小さい深さを有することを意味する。そのような実施形態において、検出器モジュールは、2つ以上の異なる深さを有するアクティブ積分型画素を含み得る。
【0125】
異なる画素深さ、および特に、深さセグメントまたはX線が検出器モジュールに入射するエッジまでの距離の関数としての画素深さは、アクティブ積分型画素におけるイベントを検出する確率または可能性を調整するために使用され得る。
【0126】
提案された技術の特定の態様によると、
図3に例証されるアナログ信号処理のすべてまたは一部は、画素へと積分され得、以て、いわゆるアクティブ積分型画素を形成する。
【0127】
述べられたように、本発明の一態様は、エッジオン光子計数検出器に関する。エッジオン光子計数検出器は、入射X線に面するそれぞれのエッジを有する少なくとも1つの検出器モジュールを備える。少なくとも1つの検出器モジュールは、半導体基板を備える。
【0128】
特定の例では、エッジオン光子計数検出器はまた、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える。
【0129】
一実施形態において、エッジオン光子計数検出器は、横並びに配置され、および/または積層される、複数の検出器モジュールを備える。
【0130】
エッジオン光子計数検出器は、典型的には、検出器モジュールのための半導体材料としてシリコンベースで製造される。
【0131】
シリコンの低い阻止能を補うため、検出器モジュールは、典型的には、それらのエッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、これにより吸収厚さを増大させる。臨床CTにおける高い光子束に対処するために、深さセグメント内へのアクティブ積分型画素のセグメント化構造が好ましくは適用され、これは、シリコン基板上の深さセグメントに個々のアクティブ積分型画素を埋め込むことによって達成される。
【0132】
特定の実施形態において、半導体基板は、浮遊帯(FZ:Float Zone)シリコン製である。FZシリコンは、垂直帯溶融によって獲得される極めて純度の高いシリコンである。垂直構成では、溶融シリコンは、電荷が分離しないようにするために十分な表面張力を有する。格納容器の必要性の回避が、シリコンの汚染を防ぐ。故に、FZシリコン内の軽不純物の濃度は極めて低い。FZシリコンウェハの直径は、一般的には、成長中の表面張力限界に起因して、200mm以下である。超純電子グレードシリコンの多結晶ロッドが、RF加熱コイルを通過し、これが、結晶インゴットが成長する局所的な溶融帯を作成する。種晶が、成長を開始するために一端において使用される。プロセス全体は、真空チャンバ内または不活性ガスパージ内で実行される。溶融帯は、それと一緒に不純物を運び出し、故に、不純物濃度を低減する。コアドーピング、ピルドーピング、ガスドーピング、および中性子変換ドーピングのような特殊なドーピング技術が、不純物の均一な濃度を組み込むために使用され得る。
【0133】
半導体基板は、一実施形態において、高抵抗FZシリコンなど、高抵抗シリコン製である。本明細書で使用される場合、高抵抗シリコンは、1kΩcmよりも大きいバルク抵抗率を有する単結晶シリコンと定義される。
【0134】
複数のアクティブ積分型画素は、半導体基板内のアクティブ積分相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画素として実装され得る。故に、アクティブ積分型画素のアナログ回路は、CMOS技術を使用して生成され得る。
【0135】
図11~
図14は、画素内の異なるアナログ読出しエレクトロニクスを有するそのようなアクティブ積分型画素の様々な実施形態を例証する。これらの図では、画素の電流生成部は、電流パルスまたはダイオード信号を出力するダイオードとして例証される。
【0136】
図11は、アクティブ積分型画素またはダイオードによって生成される電流パルスに基づいて出力信号を生成するように構成される増幅器を備えるアクティブ積分型画素の一実施形態を例証する。一実施形態において、増幅器は、電流パルスを電圧信号内へ積分するように構成される電荷感応増幅器(CSA)である。
【0137】
増幅器、好ましくはCSAからの、電圧信号などの出力信号は、この実施形態においては、例えば1つまたは複数のASICSの形態にある、検出器モジュール内の半導体基板内に配置される外部処理回路へルーティングされる(
図9および
図10の読出し、Ctrl、およびADCを参照されたい)。
【0138】
検出器モジュール内のアクティブ積分型画素の数の増加により、画素あたりの計数率は減少し、また、雑音要件が緩和される。これは、比較的低い電力消費および低い帯域幅を有する増幅器が、アクティブ積分型画素内で使用され得ることを示唆する。さらには、ダイオードの性質に起因して、シングルエンド増幅器が好ましい。これがさらに、複雑性の低い増幅器を可能にする。ダイオード・キャパシタンスが低いほど、増幅器からの入力参照雑音は、より大きい画素サイズを使用した場合と比較して、支配的ではなくなる。
【0139】
図12は、アクティブ積分型画素の別の実施形態を例証する。この実施形態は、増幅器に加えて、整形フィルタとも称されるパルス整形器を備える。このパルス整形器は、増幅器からの出力信号をフィルタリングするように構成される。
【0140】
ダイオードからの電流パルスは、好ましくは、CSAを使用して積分される。典型的には、これは、CSAの出力において、ゆっくりと動く電圧を生成する。この挙動を補うために、極零点相殺回路などの相殺回路(CC:Cancellation Circuit)が配置され、CSAおよびパルス整形器に接続される。この極零点CCは、電荷/電流積分を維持したままCSAの低速応答を相殺するか、または少なくとも抑制する。したがって、時定数が、パルス整形器の整形器積分時間によって、代わりに決定される。
【0141】
パルス整形器からの出力信号は、この実施形態においては、例えば1つまたは複数のASICの形態にある、検出器モジュール内の半導体基板内に配置される外部処理回路へルーティングされる(
図9および
図10の読出し、Ctrl、およびADCを参照されたい)。
【0142】
図13は、アクティブ積分型画素のさらなる実施形態を例証する。この実施形態は、パルス整形器に接続され、かつその下流に配置される、アナログストレージを備える。このアナログストレージは、パルス整形器からの出力信号を少なくとも一時的に格納し、保持するために、アクティブ積分型画素内に実装され得る。これは、例えば、制御信号(ctrl)に基づいた、および/または、クロック信号(clk)に基づいて制御されるなど、スケジュールされた時間インスタンスにおける、アクティブ積分型画素およびアナログストレージからのデータの制御された読出しを可能にする。
【0143】
図13に示されるようなアナログストレージはまた、
図11に示されるような一実施形態において、すなわち、いかなるパルス整形器もなしに、使用されてもよい。そのような場合、アナログストレージは、増幅器(CSA)に接続されるか、または極零点CCを通じて増幅器(CSA)に接続される。
【0144】
図14に示されるようなさらに別の実施形態において、画素は、図では比較器として表されるイベント検出器を備える。このイベント検出器は、このとき、パルス整形器からの出力信号のパルス振幅を、図では雑音しきい値によって表されるしきい値と比較することによって、光子イベントを検出するように構成される。
【0145】
特定の実施形態において、イベント検出器は、パルス振幅としきい値との比較に基づいてトリガ信号を生成するように構成され、好ましくは、パルス振幅がしきい値に等しいか、またはこれを超える場合、トリガ信号を生成する。
【0146】
この実施形態において、アナログストレージの読出しは、イベント検出器によって出力されるトリガ信号によって制御され得る。したがって、このときアナログストレージ内のデータの読出しは、好ましくは、イベント検出器が、雑音しきい値によって表されるようなノイズフロア(に等しいか、または)を上回るパルス振幅を有することによって表されるようなアクティブ積分型画素による光子イベントの検出を確認するときにのみ発生する。
【0147】
言い換えると、イベント検出器として作用する比較器は、典型的にはアクティブ積分型画素に対して外部に配置される読出し回路にシグナリングするために使用され得る(
図9および
図10内の読出しを参照されたい)。この読出し回路は、イベント検出器からのトリガ信号に基づいてアナログストレージを読み出す。読出しデータは、次いで、しきい値(T
1~T
N)と比較されるなど、さらに処理され(
図3を参照されたい)、および/またはADCにおいてデジタル化され得る(
図9および
図10を参照されたい)。
【0148】
アナログストレージ内のデータの読出しが実施されない場合、その中のデータは、例えば先入れ先出し(FIFO)方式で動作することによって、連続してフラッシュされ得る。これは、アナログストレージからのデータの非同期読出し、およびそれにより読出し中の電力消費の低減を可能にする。
【0149】
イベント検出器からのトリガ信号は、検出器モジュール内の近傍アクティブ積分型画素にも供給されて、それらをトリガしてデータを格納することができ、このデータはその後、読み出されて、さらに処理され得る。これは、雑音しきい値処理をパスしなかったとしても、データの特性の検出を可能にする。
【0150】
別の実施形態において、アナログストレージの読出しは、アクティブ積分型画素内のイベント検出器からのトリガ信号だけでなく、検出器モジュール内の少なくとも1つの近傍アクティブ積分型画素からのそれぞれのトリガ信号にも基づいて実施される。
【0151】
アクティブ積分型画素の実装は、先行技術のソリューションと比較して、画素のサイズの減少を可能にする。この小さいサイズのアクティブ積分型画素は、検出器サブモジュール内の複数のアクティブ積分型画素が、単一のX線光子によって生成される電荷雲を検出することを可能にする。これが今度は、エッジオン光子計数検出器の特定の検出器サブモジュールにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量の決定、および、例えば先に説明されるような、電荷拡散の決定された推量に少なくとも部分的に基づいた検出器サブモジュールの厚さに沿ったX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にする。
【0152】
本明細書に説明される方法およびデバイスは、様々な方法で組み合わされ、再配置され得るということを理解されたい。
【0153】
例えば、特定の機能が、ハードウェア内で、または好適な処理回路による実行のためにソフトウェア内で、またはその組合せで実施され得る。
【0154】
本明細書に説明されるステップ、機能、手順、モジュール、および/またはブロックは、汎用電子回路および特定用途向け回路の両方を含む、半導体技術、ディスクリート回路、または集積回路技術などの任意の従来の技術を使用して、ハードウェア内で実施され得る。
【0155】
特定の例は、1つまたは複数の好適に構成されたデジタル信号プロセッサおよび他の既知の電子回路、例えば、特殊化した機能を実施するために相互接続されるディスクリート論理ゲート、または特定用途向け集積回路(ASIC)を含む。
【0156】
代替的に、本明細書に説明されるステップ、機能、手順、モジュール、および/またはブロックのうちの少なくともいくつかは、1つまたは複数のプロセッサまたは処理ユニットなどの好適な処理回路による実行のためのコンピュータプログラムなどのソフトウェア内で実施され得る。
【0157】
処理回路の例としては、限定されるものではないが、1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、1つもしくは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、1つもしくは複数の中央処理装置(CPU)、ビデオ加速ハードウェア、および/あるいは、1つもしくは複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、または1つもしくは複数のプログラマブル論理制御器(PLC)などの任意の好適なプログラマブル論理回路が挙げられる。
【0158】
提案された技術が実施される任意の従来のデバイスまたはユニットの一般的な処理能力を再使用することが可能であり得ることも理解されたい。例えば、既存のソフトウェアの再プログラミングによって、または新規のソフトウェア構成要素を追加することによって、既存のソフトウェアを再使用することも可能であり得る。
【0159】
第2の態様によると、各々が検出器素子を備えるいくつかのX線検出器サブモジュールまたはウェハに基づく光子計数X線検出器におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするためのシステムであって、X線検出器サブモジュールが、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向される、システムが提供される。
【0160】
各検出器サブモジュールまたはウェハは、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にする。
【0161】
基本的に、本システムは、X線検出器の検出器サブモジュールもしくはウェハにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するように構成される。本システムはまた、電荷拡散の決定された推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するように構成される。
【0162】
述べられたように、X線検出器サブモジュールは、X線がエッジを通って入ることを前提として、エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され得る。
【0163】
一例として、X線検出器サブモジュールの各々は、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子を備え得る。これは、通常、いわゆる深さセグメント化されたX線検出器サブモジュールに対応する。しかしながら、提案された技術は、先に説明されるように、深さセグメント化されていないX線検出器サブモジュールとの使用にも適用可能である。
【0164】
例として、本システムは、いくつかの入射X線光子の各々および/またはいくつかのX線検出器サブモジュールの各々について、電荷拡散の対応する推量を決定するように、ならびに、それぞれのX線検出器サブモジュールにおける入射X線光子の相互作用の初期点の推量を決定するように構成され得る。
【0165】
特定の例では、本システムは、電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することによって、電荷拡散の推量を決定するように構成される。
【0166】
一例として、電荷拡散は、電荷雲によって表され得、本システムは、電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって、電荷拡散の推量を決定するように構成され得る。
【0167】
代替的または補足的な例として、電荷拡散は、X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子によって検出されるような、コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる解放された電子正孔対のドリフトから生じる誘導電流によって表され得る。
【0168】
例えば、本システムは、雲の測定された幅および雲の積分された電荷に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った入射X線光子の相互作用の初期点を推定するように構成され得る。
【0169】
特定の例では、本システムは、X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、X線検出器サブモジュール内のX線光子の検出点と電荷拡散の推量に基づいた相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するように構成され、本システムは、検出器サブモジュールの厚さに沿って、検出点および距離の決定された推量に基づいて相互作用の初期点の推量を決定するように構成される。
【0170】
一例として、本システムは、電荷拡散の幅を測定または推定するように、および電荷拡散または分布の測定された幅に基づいて検出点と相互作用の初期点との間の距離を決定するように構成され得る。
【0171】
任意選択的に、本システムは、検出器素子がX線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するように構成される。
【0172】
この場合、本システムは、検出器素子がX線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて、検出器素子が主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するように構成され得る。
【0173】
例えば、本システムは、電荷雲プロファイルを決定し、曲線あてはめを実施し、曲線がそのピークを有する場所を見つけ出し、ピークを特定の方向における相互作用点として特定するために構成され得る。
【0174】
代替的に、または補足的に、本システムは、最も高い電荷を検出した画素を相互作用点として特定することによって、検出器素子が主要面に分布している2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における入射X線光子の相互作用点の推量を決定するように構成され得る。
【0175】
先に示されるように、電荷拡散は、電荷雲によって表され得、主要面においてX線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子は、画素のアレイを提供するように設計および配置され得、この場合、画素は、分解されるべき電荷雲よりも小さい。
【0176】
任意選択的に、X線検出器サブモジュールのうちの少なくとも1つは、半導体基板または材料であって、半導体基板に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える、半導体基板または材料を備える。
【0177】
一例として、アナログ信号処理の少なくとも一部は、アクティブ積分型画素内へ積分され得る。
【0178】
例として、各X線検出器サブモジュールは、入ってくるX線の方向に検出器素子のいくつかの深さセグメントを有する。
【0179】
好ましくは、X線検出器サブモジュールは、効果的な検出器面積または体積を形成するための構成で、前後に配置され、および/または横並びに配置され得る。
【0180】
例えば、散乱防止モジュールが、X線検出器サブモジュールの少なくともいくつかの間に統合され得る。
【0181】
好ましくは、本システムは、X線検出器サブモジュールまたはウェハにわったって分布している検出器素子によって検出されるような、コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて、電荷拡散の推量を決定するように構成され得る。
【0182】
第3の態様によると、第2の態様に従うシステムを備えるX線画像システムが提供される。
【0183】
例として、本X線画像システムは、コンピュータ断層撮影(CT)システムであり得る。
【0184】
特定の例では、本X線画像システムは、画像再構築を実施するためのX線検出器システムに接続される関連した画像処理デバイスをさらに備える。
【0185】
第4の態様によると、対応するコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品が提供される。
【0186】
特に、プロセッサによって実行されるとき、本明細書に説明されるような方法をプロセッサに実施させる命令を含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0187】
例えば、そのようなコンピュータプログラムが格納されている非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品も提供され得る。
【0188】
図15は、一実施形態に係るコンピュータ実装形態の一例を示す概略図である。この特定の例では、システム200は、プロセッサ210およびメモリ220を備え、メモリは、プロセッサによって実行可能な命令を含み、これにより、プロセッサは、本明細書に説明されるステップおよび/または行為を実施するように動作可能である。命令は、典型的には、メモリ220内で予め構成され得るか、または外部メモリ・デバイス230からダウンロードされ得るコンピュータプログラム225、235として整理される。任意選択的に、システム200は、入力パラメータおよび/または結果として生じる出力パラメータなどの関連データの入力および/または出力を可能にするために、プロセッサ210および/またはメモリ220に相互接続され得る入力/出力インターフェース240を備える。
【0189】
特定の例では、メモリは、プロセッサによって実行可能なそのような命令のセットを含み、それにより、プロセッサは、電荷拡散の推量または測定量を決定し、決定した電荷拡散の推量に基づいて、検出器サブモジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定するように動作可能である。
【0190】
用語「プロセッサ」は、特定の処理、決定、計算タスクを実施するためにプログラム・コードまたはコンピュータプログラム命令を実行することができる任意のシステムまたはデバイスとして、一般的な意味で解釈されるべきである。
【0191】
1つまたは複数のプロセッサを含む処理回路は、したがって、本コンピュータプログラムを実行するとき、本明細書に説明されるものなどの明確に定められた処理タスクを実施するように構成される。
【0192】
処理回路は、上に説明したステップ、機能、手順、および/またはブロックを実行することだけに専念する必要なく、他のタスクも実行し得る。
【0193】
提案された技術はまた、そのようなコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読媒体220、230を備えるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0194】
例として、ソフトウェアまたはコンピュータプログラム225、235は、通常、コンピュータ可読媒体220、230、特に不揮発性媒体上にあるか、またはそこに格納されるコンピュータプログラム製品として実現され得る。コンピュータ可読媒体は、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、コンパクト・ディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ・ディスク、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)メモリ、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)ストレージ・デバイス、フラッシュ・メモリ、磁気テープ、または任意の他の従来のメモリ・デバイスを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の取外し可能または取外しができないメモリ・デバイスを含み得る。本コンピュータプログラムは、したがって、コンピュータまたは等価の処理デバイスのオペレーティング・メモリ内に、その処理回路による実行のために、読み込まれ得る。
【0195】
方法フローは、1つまたは複数のプロセッサによって実施されるとき、コンピュータ動作フローと見なされ得る。対応するデバイス、システム、および/または装置は、機能モジュールの群と定義され得、この場合、プロセッサによって実施される各ステップが、機能モジュールに対応する。この場合、機能モジュールは、プロセッサ上で実行するコンピュータプログラムとして実施される。故に、デバイス、システム、および/または装置は、代替的に、機能モジュールの群と定義され得、この場合、機能モジュールは、少なくとも1つのプロセッサ上で実行するコンピュータプログラムとして実施される。
【0196】
メモリ内に存在する本コンピュータプログラムは、したがって、プロセッサによって実行されるとき、本明細書に説明されるステップおよび/またはタスクの少なくとも一部を実施するように構成される適切な機能モジュールとして整理され得る。
【0197】
代替的に、主にハードウェア・モジュールによって、または代替的にハードウェアによって、モジュールを実現することが可能である。ソフトウェア対ハードウェアの程度は、純粋に実装形態選択である。
【0198】
上述される実施形態は、単に一例として提供されるものであり、提案された技術がそれに限定されないことを理解されたい。様々な修正、組合せ、および変更が、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対してなされ得ることは、当業者によって理解されるものとする。特に、異なる実施形態における異なる部分ソリューションは、技術的に可能な場合には、他の構成で組み合わされ得る。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が検出器素子(22)を備えるいくつかのX線検出器サブモジュール(21)またはウェハに基づく光子計数X線検出器(20)におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするための方法であって、
前記X線検出器サブモジュール(21)が、前記X線がエッジを通って入ることを前提として、前記エッジがX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、
各検出器サブモジュール(21)またはウェハが、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される前記検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にし、
前記方法が、
- 前記X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用または前記X線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するステップ(S1)、および
- 前記電荷拡散の決定された推量に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定するステップ(S2)
を含む、方法。
【請求項2】
前記X線検出器サブモジュール(21)の各々が、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、前記検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子(22)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電荷拡散の推量が、前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子によって検出されるような、前記コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて決定される、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
電荷拡散の推量を決定する前記ステップ(S1)が、前記電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することを含む、請求項1から
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、前記電荷拡散の推量が、前記電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって決定さ
れ、
前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記入射X線光子の前記相互作用の初期点が、前記雲の測定された幅および前記雲の積分された電荷に基づいて推定される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定する前記ステップ(S2)が、
- 前記X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、前記X線検出器サブモジュール内の前記X線光子の検出点と前記電荷拡散の推量に基づいた前記相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するステップ、および
- 前記検出器サブモジュールの厚さに沿って、前記検出点および距離の決定された前記推量に基づいて、前記相互作用の初期点の推量を決定するステップ
を含む、請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記電荷拡散の幅が、測定または推定され、前記検出点と前記相互作用の初期点との間の距離が、前記電荷拡散または分布の前記測定された幅に基づいて決定される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の相互作用点の推量を決定するステップをさらに含む、請求項1から
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記検出器素子が前記X線検出器サブモジュールまたはウェハの前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの少なくとも一方における前記入射X線光子の前記相互作用点の推量を決定する前記ステップが、前記検出器素子が前記主要面に分布している前記2つの方向(x,z)のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて実施される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、主要面において前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子が、画素のアレイを提供し、この場合、前記画素が、分解されるべき電荷雲よりも小さい、請求項1から
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
各々が検出器素子(22)を備えるいくつかのX線検出器サブモジュール(21)またはウェハに基づく光子計数X線検出器(20)におけるX線光子の相互作用の初期点の推定を可能にするためのシステム(25;30;40;50;100;200)であって、
前記X線検出器サブモジュールが、前記X線がエッジを通って入ることを前提として、前記エッジがX線源(10)の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、
各検出器サブモジュール(21)またはウェハが、異なる電位の2つの対向する側面を伴う厚さを有して、画素とも称される前記検出器素子が配置される側面の方へ電荷がドリフトすることを可能にし、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器の検出器サブモジュールまたはウェハにおける、コンプトン相互作用または前記X線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定するように構成され、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、電荷拡散の決定された前記推量に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記相互作用の初期点を推定するように構成される、システム(25;30;40;50;100;200)。
【請求項12】
前記X線検出器サブモジュール(21)の各々が、入ってくるX線の方向を含む2つの方向に、前記検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子(22)を備える、請求項1
1に記載のシステム。
【請求項13】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷拡散の形状および/または幅を測定または推定することによって前記電荷拡散の推量を決定するように構成される、請求項1
1または1
2のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記電荷雲の形状および/または幅を測定または推定することによって前記電荷拡散の推量を決定するように構成さ
れ、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記雲の測定された幅および前記雲の積分された電荷に基づいて、前記検出器サブモジュールの厚さに沿った前記入射X線光子の前記相互作用の初期点を推定するように構成される、請求項1
3に記載のシステム。
【請求項15】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器サブモジュールの厚さに沿った、前記X線検出器サブモジュール内の前記X線光子の検出点と前記電荷拡散の推量に基づいた前記相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定するように構成され、
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記検出器サブモジュールの厚さに沿って、前記検出点および距離の決定された前記推量に基づいて、前記相互作用の初期点の推量を決定するように構成される、請求項1
1から
14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記電荷拡散が、電荷雲によって表され、主要面において前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している前記検出器素子(22)が、画素のアレイを提供するように設計および配置され、この場合、前記画素が、分解されるべき電荷雲よりも小さい、請求項1
1から
15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
各X線検出器サブモジュール(21)が、前記入ってくるX線の方向に検出器素子のいくつかの深さセグメント(22)を有する、請求項1
1から
16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記システム(25;30;40;50;100;200)が、前記X線検出器サブモジュールまたはウェハにわたって分布している検出器素子によって検出されるような、前記コンプトン相互作用または光効果を通じた相互作用から生じる電子正孔対を動かすことによって引き起こされる誘導電流に基づいて、前記電荷拡散の推量を決定するように構成される、請求項1
1から
17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
請求項1
1から
18のいずれかに記載のシステム(25;30;40;50;100;200)を備える、X線画像システム(100)。
【請求項20】
プロセッサ(210)によって実行されるとき、前記プロセッサ(210)に、請求項1から1
0のいずれかに記載の方法を実施させる命令を含む、コンピュータプログラム(225;35)。
【国際調査報告】