(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】エッジオン光子計数検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/24 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
G01T1/24
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021525661
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 SE2019051012
(87)【国際公開番号】W WO2020106199
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512120638
【氏名又は名称】プリズマティック、センサーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】PRISMATIC SENSORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】マッツ、ダニエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ、ウィクナー
(72)【発明者】
【氏名】クリステル、スベンソン
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188CC28
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE03
2G188EE07
2G188EE29
(57)【要約】
エッジオン光子計数検出器(20)は、入射X線に面するそれぞれのエッジを有する少なくとも1つの検出モジュールを備える。少なくとも1つの検出モジュールは、半導体基板を備える。エッジオン光子計数検出器(20)はまた、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射X線に面するそれぞれのエッジを有する少なくとも1つの検出モジュールであって、
半導体基板を備える、少なくとも1つの検出モジュールと、
前記半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素と、
を備える、エッジオン光子計数検出器(20)。
【請求項2】
前記アクティブ積分型画素は、検出素子として動作し、前記検出素子の電気信号のアナログ処理を実施するように構成される、請求項1に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項3】
アナログ処理回路(25)を備え、
前記アナログ処理回路(25)の少なくとも一部が、前記複数のアクティブ積分型画素内に実装され、
前記アナログ処理回路(25)の任意の残りの部分が、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)に実装され、前記少なくとも1つのASICが、前記少なくとも1つの検出モジュール内に配置される、請求項1または2に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検出モジュールが、少なくとも2つの方向に配置される前記複数のアクティブ積分型画素を備え、
前記少なくとも2つの方向のうちの1つが、前記入射X線の方向に成分を有するか、または
前記複数のアクティブ積分型画素が、前記入射X線の方向に実質的に直交の方向にアレイとして配置され、前記アクティブ積分型画素の各々が、前記入射X線に対してエッジオンで配向される、請求項1から3のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項5】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記半導体基板の主要面にグリッドまたはマトリクス状に配置される、請求項1から4のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項6】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記グリッドまたはマトリクス状のアクティブ積分型画素と入射X線に面するそれぞれのエッジとの間の距離に依存する同じ幅および深さを有する、請求項5に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項7】
前記複数のアクティブ積分型画素を備える前記半導体基板の領域は、5×5mm~最大50×50mmの間隔以内で選択される、請求項5または6に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの検出モジュールは、アナログ処理回路(25)を備え、
前記アナログ処理回路(25)の少なくとも一部は、前記複数のアクティブ積分型画素に実装され、
前記アナログ処理回路(25)の任意の残りの部分は、入射X線に面するそれぞれのエッジと反対側の前記少なくとも1つの検出モジュールのそれぞれのエッジにおいて、またはそれと関連して、前記半導体基板の前記主要面の一部分において実装される、請求項5から7のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項9】
前記複数のアクティブ積分型画素の少なくとも一部分は、前記アクティブ積分型画素によって生成される電流パルスに基づいて出力信号を生成するように構成される、増幅器、好ましくは、電荷感応性増幅器(CSA)、およびより好ましくは、シングルエンドCSAを備える、請求項1から8のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項10】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記増幅器からの前記出力信号をフィルタリングするように構成されるパルス整形器を備え、および/または
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記増幅器および前記パルス整形器に接続される、相殺回路(CC)、好ましくは極零点CCを備える、請求項9に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項11】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記パルス整形器に接続され、かつその下流に配置され、前記パルス整形器からの出力信号を少なくとも一時的に格納および保持するように構成される、アナログストレージを備える、請求項10に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項12】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、
前記パルス整形器からの出力信号のパルス振幅をしきい値と比較することによって、光子イベントを検出し、
前記パルス振幅が前記しきい値に等しいか、またはそれを超過する場合に、トリガ信号を生成するように構成される、イベント検出器を備える、請求項11に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項13】
前記アナログストレージ内のデータの読出しは、前記イベント検出器によって出力される前記トリガ信号によって制御され、ならびに/または
前記アナログストレージ内のデータの読出しは、前記アクティブ積分型画素内の前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて、および前記少なくとも1つの検出モジュール内の少なくとも1つの近傍アクティブ積分型画素からのそれぞれのトリガに基づいて実施される、請求項12に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項14】
前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて前記アナログストレージからデータを読み出すように構成される読出し回路を備えるデジタル処理回路(40)を備える、請求項12または13に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項15】
前記増幅器は、前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて低電力スリープ・モードに入るように構成される、請求項12から14のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項16】
前記半導体基板は、好ましくは、浮遊帯(FZ)シリコン、高抵抗シリコン、および高抵抗FZシリコンからなる群から選択される、シリコン製であり、前記高抵抗シリコンおよび前記高抵抗FZシリコンは、1kΩcmよりも大きいバルク抵抗を有する、請求項1から15のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項17】
入射X線に面するそれぞれのエッジを有し、横並びに配置され、および/または積層される複数の検出モジュールを備える、請求項1から16のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項18】
複数の検出モジュールは、ウェハを形成するために、基板、好ましくは、セラミック基板に装着され、前記ウェハは、25mmから最大50mmの間隔以内で選択される幅、25mmから最大50mmの間隔以内で選択される深さ、および300μmから最大900μmの間隔以内で選択される厚さを有する、請求項17に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項19】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記半導体基板内のアクティブ積分相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画素として実装される、請求項1から18のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項20】
前記アクティブ積分型画素の少なくとも一部は、前記入射X線の方向に直交する方向においてよりも、前記入射X線の方向において、少なくとも2:1の関係で、長い伸長を有する、請求項1から19のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器(20)を備える、X線画像システム(100)。
【請求項22】
前記X線画像システム(100)は、コンピュータ断層撮影(CT)システム(100)である、請求項21に記載のX線画像システム。
【請求項23】
前記X線画像システム(100)は、コンプトン相互作用または検出モジュール内のX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散を推定するように構成され、
前記X線画像システム(100)は、前記推定された電荷拡散に基づいて、前記検出モジュールの厚さに沿った前記X線光子と前記検出モジュールとの間の相互作用の初期点を推定するように構成される、請求項21または22に記載のX線画像システム。
【請求項24】
前記X線画像システム(100)は、前記複数のアクティブ積分型画素が前記検出モジュールの主要面に分布している2つの方向のうちの少なくとも一方において、前記X線光子と前記検出モジュールとの間の相互作用の初期点の分解能を増大させるため、前記電荷拡散に関する情報を使用するように構成される、請求項23に記載のX線画像システム。
【請求項25】
前記電荷拡散は、電荷雲によって表され、
前記複数のアクティブ積分型画素の少なくとも一部分は、前記電荷雲よりも小さいサイズを有する、請求項23または24に記載のX線画像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、概して、エッジオン光子計数検出器、およびそのようなエッジオン光子計数検出器を備えるX線画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像などの放射線画像は、医療用途においておよび非破壊試験のために長年にわたって使用されている。通常、X線画像システムは、X線源およびX線検出器システムを含む。X線源は、X線を放出し、これが撮像されるべき対象または物体を通過し、次いでX線検出器システムによって登録される。一部の物質が、他よりも大きい割合のX線を吸収するため、画像は、対象または物体の形を成す。
【0003】
一般に使用されるX線画像システムの一例は、コンピュータ断層撮影(CT)システムである。そのようなCTシステムは、X線源が円弧状の検出器に面した状態にある扇ビーム幾何形状に基づく。患者の周囲の異なる角度での大量のX線投影の取得は、線源および検出器を1秒未満以内に360度にわたって連続的に回転させることによって実施される。減弱した(患者の後の)X線強度および減弱していない(患者の前の)X線強度の両方が記録され、そこから、患者内の線減弱係数の3D空間分布が再構築され、器官および組織の輪郭を正確に描く。
【0004】
検出器は、CTシステムを含むX線システムの最も重要な構成要素のうちの1つである。光ダイオードに結合されるシンチレータからなるシンチレーション検出器は、現代のX線システムにおいて最も頻繁に使用される。これらの検出器において、相互作用するX線光子は、まず、シンチレータ内でシンチレーション光に変換される。電子正孔対は、光ダイオード内のシンチレーション光の吸収を通じて生成される。相互作用する光子によって特定の露出時間にわたって付与されるエネルギーは、積分されて、合計付与エネルギーに比例する光ダイオードによって出力される電気信号を獲得する。このやり方では、検出器内の検出素子および読出しエレクトロニクスによって生成される電子ノイズもまた、画像再構築のため、アナログ・デジタル変換する特定用途向け集積回路(ASIC)を介してデータ処理システムへ伝送される出力信号内へ積分される。
【0005】
次世代X線およびCT画像システムにおいて使用され得る光子計数検出器は、エネルギー積分型検出器と比較して全く異なるやり方で作用する。入射X線光子は、光子エネルギーに比例するパルス振幅を有する電気パルスへ直接転送される。これらの電気パルスは、次いで、対応するASICチャネルへ供給される。各ASICチャネルは、典型的には、電荷感応性前置増幅器、パルス整形器、いくつかのパルス高比較器、および計数器を含む。増幅および整形された後、各電気パルスは、いくつかのプログラム可能なしきい値と比較され、そのパルス高に従って分類され、対応する計数器が増分される。
【0006】
エネルギー積分型検出器と比較して、光子計数検出器は、以下の利点を有する。第一に、エネルギー積分型検出器によって信号内へ積分される電子ノイズは、光子計数検出器内のノイズフロアを上回る最低エネルギーしきい値を設定することによって拒否され得る。第二に、物質分解は、検出器によって抽出されるエネルギー情報を使用することによって実施される準備が整っており、この物質分解により、試験される患者内の異なる成分が特定および定量化され得る。第三に、3つ以上の基本物質が使用され得、これは、造影剤、例えば、ヨウ素またはガドリニウムの分布が定量的に決定されるKエッジ・イメージングなどの分解技術に役立つ。最後になるが、より高い空間分解能が、より小さい画素サイズを使用することによって達成され得る。現在のエネルギー積分型検出器の1mm2の典型的な画素サイズと比較して、光子計数検出器は、通常、平方ミリメートル未満の画素サイズを使用する。例えば、シリコン・ストリップ光子計数検出器は、0.2mm2の画素サイズを有し得る。
【0007】
光子計数X線検出器のための最も有望な材料は、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、およびシリコンである。CdTeおよびCZTは、臨床CTにおいて使用される高エネルギーX線の高吸収効率のために、いくつかの光子計数スペクトルCT計画において採用される。しかしながら、これらのCT計画は、CdTe/CZTのいくつかの欠点に起因して、ゆっくりと進行している。CdTe/CZTは、低い電荷キャリア移動度を有し、これが、臨床現場で遭遇するものよりも10倍低い束率で深刻なパルス・パイルアップを引き起こす。この問題を緩和する1つの方法は、画素サイズを減少させることであるが、一方でそれは、電荷共有およびKエスケープの結果として、増大したスペクトル歪をもたらす。また、CdTe/CZTは、電荷トラップを被り、これは、光子束が特定のレベルより上に達するときに、出力計数率の急速な低下を引き起こす極性化をもたらす。
【0008】
対照的に、シリコンは、より高い電荷キャリア移動度を有し、極性化の問題がない。成熟した製造プロセスおよび比較的低いコストもまたその利点である。しかしながら、シリコンは、CdTe/CZTが有さない制限を有する。シリコン・センサは、その低い阻止能を補うために非常に厚くなければならない。典型的には、シリコン・センサは、入射光子の大半を吸収するために数センチメートルの厚さを必要とするが、CdTe/CZTは、数ミリメートルしか必要としない。その一方で、シリコンの長い減衰経路はまた、検出器を、個々に読み出される異なる深さセグメントへ分割することを可能にする。これが、ひいては、検出効率を増大させ、シリコンベースの光子計数検出器を、CT内の高束を適切に取り扱うことができるものにする。
【0009】
Physics in Medicine & Biology (2016) 61 : 4183-4200は、電荷結合デバイス(CCD)ベースの電荷移動スキームを使用したスペクトル検知検出器概念を開示する。検出器の電極は、エネルギー感応性データを収集し、特定の線積分をスペクトル的に計算するために、動的にグループ化される。
【0010】
米国特許第7,170,049号は、複数の画素を有する画素化テルル化カドミウム亜鉛(CZT)検出器に基づいた光子計数モード検出器であって、画素の各々が放射線を検出するために使用される、光子計数モード検出器に関する。この検出器はまた、第1の側面に形成される複数の半田ボールおよび第2の側面に形成される複数の接点を有するボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージを含む。BGAパッケージはまた、少なくとも1つの集積回路(IC)チップが装着される空洞を有する。ICチップは、複数の読出しチャネルを有し、読出しチャネルの各々が、半田ボールのうちの対応する1つを介して画素のうちの対応する1つに結合されて、画素のうちの対応する1つによって検出される放射線に対応する電気信号を受信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本実施形態は、概して、エッジオン光子計数検出器、およびそのようなエッジオン光子計数検出器を備えるX線画像システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、エッジオン光子計数検出器に関する。本エッジオン光子計数検出器は、入射X線に面するそれぞれの縁を有する少なくとも1つの検出モジュールを備える。少なくとも1つの検出モジュールは、半導体基板を備える。本エッジオン光子計数検出器はまた、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える。
【0013】
好ましくは、本エッジオン光子計数検出器は、検出素子として動作し、また検出素子の電気信号のアナログ処理を実施するように構成され得るアクティブ積分型画素を備える。これは、エッジオン光子計数検出器を構築するための新規かつ唯一の特徴である。
【0014】
本発明の別の態様は、実施形態に係るエッジオン光子計数検出器を備えるX線画像システムに関する。
【0015】
本発明は、検出モジュール内でアクティブ積分型画素を使用することによって、先行技術のX線検出器に勝る改善をもたらす。これは、電気信号の処理の一部がASICなどの関連処理回路から画素内へ移動させられることを意味する。画素内の信号処理の少なくとも一部のこのような積分は、より小さい画素サイズ、画素あたりの電力消費における低減、および最小ノイズしきい値の低減を可能にする。
【0016】
実施形態は、そのさらなる目的および利点と一緒に、添付の図面と統合して以下の説明を参照することにより最良に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係るX線画像システムの概略ブロック図である。
【
図2】別の実施形態に係るX線画像システムの概略ブロック図である。
【
図3】さらなる実施形態に係るX線画像システムの概略ブロック図である。
【
図4】一実施形態に係るエッジオン光子計数検出器の概略図である。
【
図5】別の実施形態に係るエッジオン光子計数検出器の概略図である。
【
図6】いくつかのX線検出モジュールまたはウェハに基づいたエッジオン光子計数検出器の概略図である。
【
図7】一実施形態に係るX線検出モジュールの概略図である。
【
図8】一実施形態に係るX線検出モジュールの概略図である。
【
図9】一実施形態に係るダイオード信号の処理の概略図である。
【
図10】一実施形態に係るアクティブ積分型画素の概略図である。
【
図11】別の実施形態に係るアクティブ積分型画素の概略図である。
【
図12】さらなる実施形態に係るアクティブ積分型画素の概略図である。
【
図13】さらに別の実施形態に係るアクティブ積分型画素の概略図である。
【
図14】一実施形態に係るアナログストレージの概略図である。
【
図15】本エッジオン光子計数検出器の深さ方向に沿った増大する画素サイズを使用する概念を概略的に説明する図である。
【
図16】アクティブ積分型画素間のダイオード・ツー・ダイオード・キャパシタンス(diode-to-diode capacitance)を部分的に例証する図である。
【
図17】分解されるべき電荷雲と一緒に検出モジュールの部分を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態は、概して、エッジオン光子計数検出器、およびそのようなエッジオン光子計数検出器を備えるX線画像システムに関する。
【0019】
それは、
図1を参照した例証的なX線画像システム全体の簡単な概観により有用であり得る。この例証的であるが非限定的な例において、X線画像システム100は、基本的に、X線源10、X線検出器システム20、および関連した画像処理システムまたはデバイス30を備える。一般に、X線検出器システム20は、任意選択的にX線光学系によって集束させられて、物体、対象、またはその一部を通過した、X線源10からの放射を登録するように構成される。X線検出器システム20は、画像処理システム30による画像処理および/または画像再構築を可能にするために、X線検出器システム20に少なくとも部分的に統合される好適なアナログおよび読出しエレクトロニクスを介して、画像処理システム30に接続可能である。
【0020】
図2は、X線を放出するX線源10と、X線が物体を通過した後にX線を検出する、エッジオン光子計数検出器を伴うX線検出器システム20と、本エッジオン光子計数検出器からの生の電気信号を処理し、それをデジタル化するアナログ処理回路25と、補正を適用すること、測定データを一時的に格納すること、またはフィルタリングすることなど、測定データに対するさらなる処理動作を実行し得るデジタル処理回路40と、処理データを格納し、さらなる後処理および/または画像再構築を実施し得るコンピュータ50と、を備えるX線画像システム100の一例を示す概略図である。本発明によると、アナログ処理回路25のすべてまたは一部は、X線検出器システム20に実装され得る。
【0021】
本エッジオン光子計数検出器全体は、X線検出器システム20、または関連したアナログ処理回路25と組み合わされたX線検出器システム20と見なされ得る。
【0022】
デジタル処理回路40および/またはコンピュータ50を含むデジタル部は、本エッジオン光子計数検出器からの画像データに基づいて画像再構築を実施する画像処理システム30と見なされ得る。画像処理システム30は、したがって、コンピュータ50、または代替的に、デジタル処理回路40およびコンピュータ50の組み合わされたシステム、またはおそらくは、デジタル処理回路が画像処理および/もしくは再構築のためにもさらに特化される場合には、単独でデジタル処理回路40として、見られ得る。
【0023】
図3は、X線画像システムの例証的な例としてのCTシステムの概略ブロック図である。CTシステムは、ディスプレイおよび何らかの形態のオペレータ・インターフェース、例えば、キーボードおよびマウスを有するオペレータコンソールを介してオペレータから、コマンドを受信しパラメータを走査するコンピュータを備える。オペレータ供給されたコマンドおよびパラメータは、次いで、X線制御器、ガントリ制御器、およびテーブル制御器に制御信号を提供するためにコンピュータによって使用される。具体的には、X線制御器は、テーブル上に横たわっている物体または患者へのX線の放出を制御するために、X線源に電力およびタイミング信号を提供する。ガントリ制御器は、X線源および本エッジオン光子計数検出器を備えるガントリの回転速度および位置を制御する。テーブル制御器は、患者テーブルの位置および患者の走査範囲を制御および決定する。
【0024】
一実施形態において、コンピュータはまた、本エッジオン光子計数検出器から出力される画像データの後処理および画像再構築を実施する。以て、コンピュータは、
図1および
図2に示されるような画像処理システムに対応する。関連ディスプレイは、オペレータが再構築画像およびコンピュータからの他のデータを観察することを可能にする。
【0025】
ガントリ内に配置されるX線源は、X線を放出する。エッジオン光子計数検出器の形態にあるX線検出器は、X線が患者を通過した後にX線を検出する。本エッジオン光子計数検出器は、センサまたは検出素子とも称される複数の画素、および検出モジュール内に配置される、ASICなどの関連処理回路によって形成される。アナログ処理部の少なくとも一部分は、画素で実装されるが、任意の残りの処理部は、例えば、ASICで実装される。一実施形態において、ASICは、画素からのアナログ信号をデジタル化する。ASICはまた、補正を適用すること、測定データを一時的に格納すること、および/またはフィルタリングすることなど、測定データに対するさらなる処理動作を実施し得るデジタル処理部を備え得る。X線投影データを取得するための走査の間、ガントリおよびそこに取り付けられた構成要素は、アイソセンターの周りで回転する。
【0026】
エッジオンは、光子計数検出器のための設計であり、この場合、X線検出素子または画素などのX線センサは、入ってくるX線に対してエッジオンで配向される。
【0027】
例えば、本光子計数検出器は、少なくとも2つの方向に画素を有し得、ここで、本エッジオン光子計数検出器の方向のうちの1つは、X線の方向に成分を有する。そのようなエッジオン光子計数検出器は、時に、入ってくるX線の方向に画素の2つ以上の深さセグメントを有して、深さセグメント化された光子計数検出器と称される。
【0028】
代替的に、画素は、入射X線の方向に実質的に直交する方向にアレイ(深さセグメント化されない)として配置され得、画素の各々は、入射X線に対してエッジオンで配向され得る。換言すると、本光子計数検出器は、深さセグメント化されなくてもよいが、依然として、入ってくるX線に対してエッジオンで配置され得る。
【0029】
吸収効率を増大させるために、本エッジオン光子計数検出器は、それに応じてエッジオンで配置され得、この場合、吸収深さは、任意の長さに選択され得、本エッジオン光子計数検出器は、非常に高い電圧に至ることなしに、依然として完全に消耗され得る。
【0030】
光子計数検出器は、いくつかの用途において実行可能な代案として台頭しており、現在、それらの検出器は、主にマンモグラフィにおいて商業的に利用可能である。光子計数検出器は、原則としてX線ごとのエネルギーが測定され得、これにより物体の組成に関する追加の情報をもたらすことから、利点を有する。この情報は、画像品質を増加させるため、および/または放射線量を減少させるために使用され得る。
【0031】
エネルギー積分型システムと比較して、光子計数CTは、以下の利点を有する。第一に、エネルギー積分型検出器によって信号へと積分される電子ノイズは、光子計数検出器内のノイズフロアを上回る最低エネルギーしきい値を設定することによって拒否され得る。第二に、エネルギー情報が光子計数検出器によって抽出され得、これが、最適なエネルギー重み付けによりコントラストノイズ比を向上させることを可能にし、また、いわゆる基底物質分解が効果的に実施されることを可能にし、この基底物質分解により、調査される対象または物体における異なる材料および/または構成要素が識別および定量化され得る。第三に、3つ以上の基本物質が使用され得、これは、造影剤、例えば、ヨウ素またはガドリニウムの分布が定量的に決定されるKエッジ・イメージングなどの分解技術に役立つ。第四に、検出器残光がなく、高い角度分解能が獲得され得ることを意味する。最後になるが、より高い空間分解能が、より小さい画素サイズを使用することによって達成され得る。
【0032】
本実施形態のX線検出器は、1つまたは複数の、すなわち、少なくとも2つの検出モジュールを備える、すなわちモジュラX線検出器である、エッジオン光子計数検出器である。
図4は、例示的な実施形態に係るエッジオン光子計数検出器の概略図である。検出モジュールは、好ましくは、横並びに、例えば、X線焦点に位置しているX線源に対してわずかに湾曲した全体幾何形状に、配置される。
図5は、横並びに配置され、また前後に積層されるいくつかの検出モジュールを有するエッジオン光子計数検出器の概略図である。検出モジュールは、エッジオン光子計数検出器全体を構築するために横並びに一緒に組み立てられ得る検出モジュールのより大きいセットまたはグループを形成するために、前後に積層され得る。
【0033】
いわゆるエッジオン光子計数検出器に関する一般的なさらなる情報は、例えば、エッジオン光子計数検出器の一例を開示する米国特許第8,183,535号において見つけられ得る。米国特許第8,183,535号においては、検出器領域全体を形成するために一緒に配置される複数の半導体検出モジュールが存在し、この場合、各半導体検出モジュールは、入ってくるX線に対してエッジオンで配向され、X線センサ内で相互作用するX線の登録のための集積回路に接続されるX線センサを備える。
【0034】
本明細書で説明されるように、エッジオン光子計数検出器全体は、例えば、ウェハとも称される、典型的にはグループまたはセットで配置される検出モジュールに基づき得る(
図6を参照されたい)。そのような検出モジュールは、次いで、任意の効果的な検出器面積または体積を形成するための様々な構成で、前後に配置もしくは積層され得、および/または横並びに配置され得る。例えば、CT用途のための完全なエッジオン光子計数検出器は、典型的には、200cm
2よりも大きい総面積を有し、これは、1500~2000個の検出モジュールなど、大量の検出モジュールを結果としてもたらす。
【0035】
例として、検出モジュールは、一般的には、例えば、平面またはわずかに湾曲した全体構成で、横並びに配置され、および/または積層され得る。
【0036】
入射X線光子のX線相互作用は、検出モジュールの深さ(長さ)に沿って異なる深さにおいて分布および発生しているため、計数率全体は、深さにおいて画素に分布している。いくつかの実施形態において、画素は、X線が入射するエッジオン光子計数検出のエッジに関して画素の深さに応じて、異なる深さセグメントで整理されているものと見なされ得る。この例では、第1の深さセグメントは、X線源に最も近い深さセグメントである。例として、40mmの深さにわたって、400深さセグメント以上を有することが可能であり、計数率はそれに応じて減少する。深さは、線量効率にとって重要であり、セグメント化が、パルス・パイルアップから保護し、本X線画像システムの空間分解能を維持する。
【0037】
先行技術においては、検出モジュールは多くの場合、検出モジュールが電気ルーティングのためおよびいくつかのASICのための半導体ベースの基板を有するという意味で、いわゆるマルチ・チップ・モジュール(MCM)として実装されている。ルーティングは、各画素からASIC入力への信号のための接続、ならびにASICから外部メモリおよび/またはデジタル・データ処理への接続を含む。ASICへの電力は、これらの接続において大きい電流のために必要とされる断面の増加を考慮して同様のルーティングを通じて提供され得るが、電力は、別個の接続を通じて提供されてもよい。故に、先行技術においては、各々の個々の画素は、後続のASICチャネルに接続され、この場合、シリコン基板上でASICおよび電気ルーティングを統合するためにMCM技術が用いられる。
【0038】
本発明は、検出モジュール内でアクティブ積分型画素を代わりに使用することによって、先行技術のX線検出器に勝るさらなる改善をもたらす。これは、電気信号のアナログ処理の一部がASICから画素内へ移動されることを意味する。例えば、ASICから画素へ前置増幅を移動させることは、画素からASICへ信号をルーティングするために長いトレースが必要とされないため、前置増幅器への入力におけるキャパシタンスを下げる。画素内のアナログ信号処理の少なくとも一部を積分するさらなる利点としては、より小さい画素サイズが挙げられ、これにより画素あたりの電力消費を低減し、最小ノイズしきい値の低減を可能にする。
【0039】
換言すると、アクティブ積分型画素は、検出素子として動作し、また検出素子の電気信号のアナログ処理を実施するように構成され得る。
【0040】
図7は、一実施形態に係る、チップとも称される検出モジュールの概略図である。検出モジュールは、半導体基板または材料であって、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える、半導体基板または材料を備える。特定の実施形態において、複数のアクティブ積分型画素は、図に示されるように、半導体基板の主要面(前面)に、グリッドもしくはマトリクス状に、または別のパターンで配置される。半導体の主要面は、典型的には、X線源に面するエッジに垂直である。図はまた、X線源に面し、X線が検出モジュールに入射するエッジに対する異なる深さセグメントにおける画素の配置を例証する。
【0041】
一実施形態において、検出モジュールはまた、図内では読出し回路、制御回路、およびアナログ・デジタル変換(ADC)回路として例示される、アナログ処理回路および/またはデジタル処理回路などのさらなる処理回路を備える。このさらなる処理回路は、1つもしくは複数のASIC内に、または1つもしくは複数のASICとして、実装され得る。
【0042】
さらなる処理回路は、有利には、半導体基板内に、複数のアクティブ積分型画素と同じ主要面(前面)に配置される。そのような場合、さらなる処理回路は、好ましくは、図に示されるようなX線源および入射X線から離れる方に面するエッジにおける、またはこのエッジと関連した主要面の部分または一部に配置される。この実施形態は、さらなる処理回路のために使用される検出モジュールの部分を低減することによって、検出モジュールのいかなる不感領域も低減する。加えて、さらなる処理回路は、入射のエッジから最も離れて配置されることによって、入ってくるX線から保護される。故に、一実施形態において、少なくとも1つの検出モジュールは、アナログ処理回路およびデジタル処理回路を備える。アナログ処理回路の少なくとも一部は、少なくとも1つの検出モジュール内に配置される複数のアクティブ積分型画素に実装される。アナログ処理回路の任意の残りの部分、および任意選択的にデジタル処理回路は、入射X線に面するそれぞれのエッジと反対側の少なくとも1つの検出モジュールのそれぞれのエッジにおいて、またはそれと関連して、半導体基板の主要面の一部分において実装される。
【0043】
例として、少なくとも1つの検出モジュールは、少なくとも2つの方向に配置される複数のアクティブ積分型画素を備え、ここで、少なくとも2つの方向のうちの1つは、入射X線の方向に成分を有する。代替的に、複数のアクティブ積分型画素は、入射X線の方向に実質的に直交する方向にアレイとして配置され得、アクティブ積分型画素の各々は、入射X線に対してエッジオンで配向され得る。
【0044】
例証的であるが非限定的な例において、アクティブ積分型画素を備える半導体基板の領域は、10×10mm、15×15mm、20×20mm、25×25mm、30×30mm、35×35mm、40×40mm、または45×45mmなど、5×5mm~最大50×50mmであり得る。また、アクティブ積分型画素を有する矩形領域などの非正方形領域が可能である。
【0045】
特定の例では、アクティブ積分型画素の少なくとも一部は、入射X線の方向に直交する方向においてよりも、入射X線の方向において、少なくとも2:1の関係で、長い伸長を有する。換言すると、アクティブ積分型画素は、幾何学的設計において非対称であり得、入射X線の方向に直交する(垂直の)方向における伸長よりも、入射X線の方向において少なくとも2倍の伸長(深さ)を有し得る。
【0046】
図6では、各ウェハが、1つの検出モジュールを備え得るか、または複数の検出モジュールを備え得る。後者の場合、検出モジュールは、単一ユニットとして取り扱われ得るウェハを形成するために、セラミック基板などの薄い基板に装着され得る。単に一例として、ウェハの幅は、25~50mmのオーダーにあり得、ウェハの深さは、25~50mmの同じオーダーにあり得る一方、ウェハの厚さは、300~900μmのオーダーにあり得る。
【0047】
図7はまた、いわゆる検出器ダイオード(電極)を有するアクティブ積分型画素を、読出しエレクトロニクスおよび相互接続と一緒に概略的に示す。各々のそのようなアクティブ積分型画素は、典型的には、μm範囲のサイズを有する。一実施形態において、アクティブ積分型画素は、正方形であり、典型的には、検出モジュール内のすべてのアクティブ積分型画素が同じ形状およびサイズを有する。しかしながら、
図8に示されるように、矩形など、画素のための他の形状を使用すること、ならびに/または、同じ検出モジュール内に異なるサイズおよび/もしくは形状を有するアクティブ積分型画素を有することが可能である。
図8では、アクティブ積分型画素は、同じ幅だが異なる深さを有する。例えば、アクティブ積分型画素の深さは、異なる深さセグメントでは増加し得、以て、X線が検出モジュールに入射するエッジまでの距離に基づく。これは、このエッジにおけるアクティブ積分型画素が、好ましくは、反対のエッジに最も近いアクティブ積分型画素と比較してより小さい深さを有することを意味する。そのような実施形態において、検出モジュールは、2つ以上の異なる深さを有するアクティブ積分型画素を含み得る。換言すると、複数のアクティブ積分型画素は、グリッドまたはマトリクス状のアクティブ積分型画素と入射X線に面する検出モジュールのエッジとの間の距離に依存する同じ幅および深さを有する。
【0048】
異なる画素深さ、および特に、深さセグメントまたはX線が検出モジュールに入射する縁までの距離の関数としての画素深さは、アクティブ統合画素におけるイベントを検出する確率または可能性を調整するために使用され得る。
図15は、検出モジュールの異なる深さにおける吸収を示すことによってこの概念を概略的に説明する。上方パネルに示されるように、入ってくる光子は、エッジからより離れたアクティブ積分型画素と比較して、エッジに近い(x=0)アクティブ積分型画素においてイベントをトリガする傾向がより強い。曲線下の同じ領域に対応する、光子が特定の地点で半導体基板に吸収されない確率が同じであることを前提とすることにより、アクティブ積分型画素の深さは、増加するx、すなわち検出モジュールの深さのために増加する必要がある、ということを示す。
【0049】
一般に、コンプトン散乱後の光子も含め、X線光子は、検出モジュールの半導体基板の内側で電子正孔対に変換され、この場合、電子正孔対の数は、一般的に、光子エネルギーに比例する。電子および正孔は、アクティブ積分型画素の方へドリフトしており、その後、本光子計数検出器を出ていく。このドリフトの間、電子および正孔は、アクティブ積分型画素内に電流を誘発し、この電流は、例えば、
図9に概略的に示されるように、整形フィルタ(SF)とも称されるパルス整形器が後に続く電荷感応性増幅器(CSA)を通じて測定され得る。
【0050】
より詳細には、入ってくるX線光子は、光電効果またはコンプトン相互作用のいずれかを通じて検出モジュールの半導体基板と相互作用し得る。コンプトン散乱とも称されるコンプトン相互作用は、荷電粒子、通常、電子による、光子の散乱である。それは、コンプトン効果と呼ばれる、光子のエネルギーの減少を結果としてもたらす。光子のエネルギーの一部は、リコイリング電子へ転送される。光子は、半導体基板を通るその経路の間、複数のコンプトン相互作用に関与し得る。このコンプトン相互作用の結果として、半導体基板内の電荷の拡散および/または分布が存在することになる。
【0051】
より詳細には、X線光子は、コンプトン相互作用または光効果を通じて二次電子を作成し得る。電子は、X線光子から運動エネルギーを得て、短い距離、例えば、1μm~50μm移動し、その経路の間、電子正孔対を励起する。すべての電子正孔対は、作成するのに約3.6eVかかり、これは、例えば、電子に対する15keV成膜エネルギーを有するコンプトン相互作用は、いわゆる電荷雲を形成するおよそ4200の電子正孔対を作成することを意味する。電荷雲は、電場線に従って移動し、検出モジュールの裏面が正にバイアスされる場合、正孔は、検出モジュールの前面に配置される、読出し電極、すなわち、アクティブ積分型画素の方へ移動し、電子は、裏面の方へ移動する。読出し電極は、検出モジュールの前面において、検出素子または画素として機能している。例として、裏面の電圧は、およそ200Vであり、例証的であるが非限定的な例として、前面における仮想接地であり得る。
【0052】
1つのX線イベントからの電子および正孔の数は、X線エネルギーに比例するため、1つの誘導電流パルス内の全電荷が、このエネルギーに比例する。ダイオード信号とも称される電流パルスは、CSA内で増幅され、次いでパルス整形器によってフィルタリングされる。パルス整形器の適切な整形時間を選択することによって、フィルタリング後のパルス振幅は、電流パルス内の全電荷に比例し、したがってX線エネルギーに比例する。パルス整形器の後、パルス振幅は、1つまたは複数の比較器(COMP)において、その値を1つまたはいくつかのしきい値(T1~TN)と比較することによって測定され、計数器が導入され、それにより、パルスがしきい値よりも大きい場合の回数が記録され得る。このやり方では、ある特定の時間フレーム内で検出されているそれぞれのしきい値(T1~TN)に対応するエネルギーを超過するエネルギーを有するX線光子の数を数えるおよび/または記録することが可能である。
【0053】
いくつかの異なるしきい値を使用する場合、いわゆるエネルギー識別光子計数検出器が獲得され、この場合、検出された光子は、様々なしきい値に対応するエネルギー・ビンに分類され得る。時に、このタイプの光子計数検出器は、マルチ・ビン検出器とも称される。一般に、エネルギー情報は、新しい種類の画像が作成されることを可能にし、この場合、新しい情報が利用可能であり、従来の技術に固有の画像アーチファクトは除去され得る。換言すると、エネルギー識別光子計数検出器では、パルス高さは、比較器においていくつかのプログラム可能なしきい値(T1-TN)と比較され、パルス高さに従って分類され、このパルス高さが今度はエネルギーに比例する。
【0054】
しかしながら、任意のCSAにおける固有の問題は、それが、検出された電流に電子ノイズを追加することである。実際のX線光子の代わりにノイズを検出することを回避するために、したがって、ノイズ値がしきい値を超過する回数がX線光子の検出を邪魔することがないように十分に低いように、十分に高い最低しきい値を設定することが重要である。
【0055】
ノイズフロアを上回る最低しきい値を設定することによって、X線画像システムの放射線量の減少における大きな障害である電子ノイズは、著しく減少され得る。
【0056】
パルス整形器は、整形時間の大きい値が、X線光子によって引き起こされる長いパルスをもたらし、フィルタ後にノイズ振幅を減少させるという一般的性質を有する。整形時間の小さい値は、短いパルスおよびより大きいノイズ振幅をもたらす。したがって、できる限り多くのX線光子を数えるためには、長い整形時間が、ノイズを最小限にして、比較的小さいしきい値レベルの使用を可能にするために所望される。
【0057】
パルス高さが比較器において比較されるしきい値のセットまたは表の値は、本エッジオン光子計数検出器によって生成される画像データの品質に影響を及ぼす。さらには、これらのしきい値は、温度依存である。したがって、一実施形態において、本エッジオン光子計数検出器内の電力消費回路によって生成される較正データは、しきい値(T1~TN)を設定するために使用され得る。
【0058】
本発明によると、
図9に例証されるアナログ信号処理のすべてまたは一部は、画素内へ積分され、以て、いわゆるアクティブ積分型画素を形成する。
【0059】
本発明の一態様は、エッジオン光子計数検出器に関する。本エッジオン光子計数検出器は、入射X線に面するそれぞれの縁を有する少なくとも1つの検出モジュールを備える。少なくとも1つの検出モジュールは、半導体基板を備える。本エッジオン光子計数検出器はまた、半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素を備える。
【0060】
一実施形態において、エッジオン光子計数検出器は、横並びに配置され、および/または積層される、複数のそのような検出モジュールを備える。
【0061】
エッジオン光子計数検出器は、典型的には、検出モジュールのための半導体材料としてシリコンベースで製造される。
【0062】
シリコンの低い阻止能を補うため、検出モジュールは、典型的には、それらのエッジが
図4~
図5、
図7~
図8に示されるようなX線源の方へ向けられているエッジオン幾何形状で配向され、これにより吸収厚さを増大させる。臨床CTにおける高い光子束に対処するために、深さセグメント内へのアクティブ積分型画素のセグメント化構造が好ましくは適用され、これは、
図4~
図5、
図7~
図8に示されるようなシリコン基板上の深さセグメントに個々のアクティブ積分型画素を埋め込むことによって達成される。
【0063】
特定の実施形態において、半導体基板は、浮遊帯(FZ:Float Zone)シリコン製である。FZシリコンは、垂直帯溶融によって獲得される極めて純度の高いシリコンである。垂直構成では、溶融シリコンは、電荷が分離しないようにするために十分な表面張力を有する。格納容器の必要性の回避が、シリコンの汚染を防ぐ。故に、FZシリコン内の軽不純物の濃度は極めて低い。FZシリコンウェハの直径は、一般的には、成長中の表面張力限界に起因して、200mm以下である。超純電子グレードシリコンの多結晶ロッドが、RF加熱コイルを通過し、これが、結晶インゴットが成長する局所的な溶融帯を作成する。種晶が、成長を開始するために一端において使用される。プロセス全体は、真空チャンバ内または不活性ガスパージ内で実行される。溶融帯は、それと一緒に不純物を運び出し、故に、不純物濃度を低減する。コア・ドーピング、ピル・ドーピング、ガス・ドーピング、および中性子変換ドーピングのような特殊なドーピング技術が、不純物の均一な濃度を組み込むために使用され得る。
【0064】
半導体基板は、一実施形態において、高抵抗FZシリコンなど、高抵抗シリコン製である。本明細書で使用される場合、高抵抗シリコンは、1kΩcmよりも大きいバルク抵抗率を有する単結晶シリコンと定義される。
【0065】
複数のアクティブ積分型画素は、半導体基板内のアクティブ積分相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画素として実装され得る。故に、アクティブ積分型画素のアナログ回路は、CMOS技術を使用して生成され得る。
【0066】
図2に示され、上述するように、エッジオン光子計数検出器20は、アナログ処理回路25およびデジタル処理回路40を備え得る。一実施形態によると、アナログ処理回路25の少なくとも一部は、複数のアクティブ積分型画素に実装される。アナログ処理回路25の任意の残りの部分は、デジタル処理回路40またはその一部分も任意選択的に備える少なくとも1つのASICに実装される。この少なくとも1つのASICは、一実施形態において、エッジオン光子計数検出器20の少なくとも1つの検出モジュール内に配置される。
【0067】
図10~
図13は、画素内の異なるアナログ読出しエレクトロニクスを有するそのようなアクティブ積分型画素の様々な実施形態を例証する。これらの図では、画素の電流生成部は、電流パルスまたはダイオード信号を出力するダイオードとして例証される。
【0068】
図10は、アクティブ積分型画素またはダイオードによって生成される電流パルスに基づいて出力信号を生成するように構成される増幅器を備えるアクティブ積分型画素の一実施形態を例証する。一実施形態において、増幅器は、電流パルスを電圧信号内へ積分するように構成される電荷感応増幅器(CSA)である。
【0069】
増幅器、好ましくはCSAからの、電圧信号などの出力信号は、この実施形態においては、例えば1つまたは複数のASICの形態にある、検出モジュール内の半導体基板内に配置される外部処理回路へルーティングされる(
図7および
図8の読出し、Ctrl、およびADCを参照されたい)。
【0070】
検出モジュール内のアクティブ積分型画素の数の増加により、画素あたりの計数率は減少し、また、ノイズ要件が緩和される。これは、比較的低い電力消費および低い帯域幅を有する増幅器が、アクティブ積分型画素内で使用され得ることを示唆する。さらには、ダイオードの性質に起因して、シングルエンド増幅器が好ましい。これがさらに、複雑性の低い増幅器を可能にする。ダイオード・キャパシタンスが低いほど、増幅器からの入力リファレンスノイズは、より大きい画素サイズを使用した場合と比較して、支配的ではなくなる。
【0071】
図11は、アクティブ積分型画素の別の実施形態を例証する。この実施形態は、増幅器に加えて、整形フィルタとも称されるパルス整形器を備える。このパルス整形器は、増幅器からの出力信号をフィルタリングするように構成される。
【0072】
ダイオードからの電流パルスは、好ましくは、CSAを使用して積分される。典型的には、これは、CSAの出力において、ゆっくりと動く電圧を生成する。この挙動を補うために、好ましくは、極零点相殺回路などの相殺回路(CC:Cancellation Circuit)が配置され、CSAおよびパルス整形器に接続される。この極零点CCは、電荷/電流積分を維持したままCSAの低速応答を相殺するか、または少なくとも抑制する。したがって、時定数が、パルス整形器の整形器積分時間によって、代わりに決定される。
【0073】
パルス整形器からの出力信号は、この実施形態においては、例えば1つまたは複数のASICの形態にある、検出モジュール内の半導体基板内に配置される外部処理回路へルーティングされる(
図7および
図8の読出し、Ctrl、およびADCを参照されたい)。
【0074】
図12は、アクティブ積分型画素のさらなる実施形態を例証する。この実施形態は、パルス整形器に接続され、かつその下流に配置される、アナログストレージを備える。このアナログストレージは、パルス整形器からの出力信号を少なくとも一時的に格納し、保持するために、アクティブ積分型画素内に実装され得る。これは、例えば、制御信号(ctrl)に基づいた、および/または、クロック信号(clk)に基づいて制御されるなど、スケジュールされた時間インスタンスにおける、アクティブ積分型画素およびアナログストレージからのデータの制御された読出しを可能にする。
【0075】
図12に示されるようなアナログストレージはまた、
図10に示されるような一実施形態において、すなわち、いかなるパルス整形器もなしに、使用されてもよい。そのような場合、アナログストレージは、増幅器(CSA)に接続されるか、または極零点CCを通じて増幅器(CSA)に接続される。
【0076】
図13に示されるようなさらに別の実施形態において、画素は、図では比較器として表されるイベント検出器を備える。このイベント検出器は、このとき、パルス整形器からの出力信号のパルス振幅を、図ではノイズしきい値によって表されるしきい値と比較することによって、光子イベントを検出するように構成される。
【0077】
特定の実施形態において、イベント検出器は、パルス振幅としきい値との比較に基づいてトリガ信号を生成するように構成され、好ましくは、パルス振幅がしきい値に等しいか、またはこれを超過する、または超過する場合、トリガ信号を生成する。
【0078】
この実施形態において、アナログストレージの読出しは、イベント検出器によって出力されるトリガ信号によって制御され得る。したがって、このときアナログストレージ内のデータの読出しは、好ましくは、イベント検出器が、ノイズしきい値によって表されるようなノイズフロア(に等しいか、または)を上回るパルス振幅を有することによって表されるようなアクティブ積分型画素による光子イベントの検出を確認するときにのみ発生する。
【0079】
換言すると、イベント検出器として作用する比較器は、典型的にはアクティブ積分型画素に対して外部に配置される読出し回路にシグナリングするために使用され得る(
図7および
図8内の読出しを参照されたい)。例えば、読出し回路は、先に述べたデジタル処理回路に含まれ得る。この読出し回路は、イベント検出器からのトリガ信号に基づいてアナログストレージを読み出す。読出しデータは、次いで、しきい値(T
1~T
N)と比較されるなど、さらに処理され得(
図9を参照されたい)、および/またはADCにおいてデジタル化され得る(
図7および
図8を参照されたい)。
【0080】
アナログストレージ内のデータの読出しが実施されない場合、その中のデータは、例えば先入れ先出し(FIFO)方式で動作することによって、連続してフラッシュされ得る。これは、アナログストレージからのデータの非同期読出し、およびそれにより読出し中の電力消費の低減を可能にする。
【0081】
イベント検出器からのトリガ信号は、検出モジュール内の近傍アクティブ積分型画素にも供給されて、それらをトリガしてデータを格納することができ、このデータはその後、読み出されて、さらに処理され得る。これは、ノイズしきい値処理をパスしなかったとしても、データの特性の検出を可能にする。
【0082】
別の実施形態において、アナログストレージの読出しは、アクティブ積分型画素内のイベント検出器からのトリガ信号だけでなく、検出モジュール内の少なくとも1つの近傍アクティブ積分型画素からのそれぞれのトリガ信号にも基づいて実施される。
【0083】
一実施形態において、本エッジオン光子計数検出器内のすべての検出モジュールが、アクティブ積分型画素を備える。そのような場合、すべてのアクティブ積分型画素は、同じタイプまたは画素実装形態のものであり得、すなわち、上に説明され
図10~
図13に示される実施形態のいずれかに従うなど、同じまたは対応する処理回路を備え得る。別の実施形態において、本エッジオン光子計数検出器内の異なる検出モジュールは、異なるタイプまたは実装形態のアクティブ積分型画素を有し得る。例えば、本エッジオン光子計数検出器内の検出モジュールのうちの少なくとも1つは、上に説明され
図10~
図13に示される実施形態のうちの1つなど、第1の画素実装形態に従うアクティブ積分型画素を備え得る一方、本エッジオン光子計数検出器内の少なくとも1つの他の検出モジュールは、上に説明され
図10~
図13に示される実施形態のうちの別のものなど、第2の異なる画素実装形態に従うアクティブ積分型画素を備え得る。そのような場合、異なる検出モジュール内のアクティブ積分型画素は、異なる処理回路を含み得る。
【0084】
アクティブ積分型画素を備える少なくとも1つの検出モジュール、および従来の画素を備える少なくとも1つの検出モジュールを備えるエッジオン光子計数検出器を有することも可能であり、この場合、処理回路は、1つまたは複数のASIC内など、画素の外側に存在する。例えば、物体または患者を通過した入射X線放射を捕捉する傾向がより強い、本エッジオン光子計数検出器の中央部分における検出モジュールは、アクティブ積分型画素を備え得る一方、本エッジオン光子計数検出器の周辺検出モジュールは、従来の画素を備え得る。一般的に、本エッジオン光子計数検出器の中央部分は、物体または患者を通過した入射X線放射を捕捉する傾向がより強く、以て、それが物体または患者を撮像するために使用されるべき検出データを生成することに関与することから、典型的には、精度に関してより重要である。本エッジオン光子計数検出器の周辺部分は、物体または患者を通過したX線を捕捉する傾向があまりなく、以て、本エッジオン光子計数検出器のそれらの部分における精度は、中央部分における精度よりも低くてもよいが、依然として、本エッジオン光子計数検出器の全体的な許容可能な画像精度を達成する。
【0085】
図17は、検出モジュールのいくつかのアクティブ積分型画素を例証する概略図である。この例では、アクティブ積分型画素は、概して、分解されるべき電荷雲によって表される電荷拡散よりも小さい。例えば、電荷雲は、100μmのオーダーで幅を有し得、したがってアクティブ積分型画素、または少なくともその一部分は、通常、それよりも小さい、またはさらに著しく小さいように設計される。故に、半導体基板を通って進むX線光子は、典型的には、検出モジュール内の複数の近傍アクティブ積分型画素をカバーする電荷雲を結果としてもたらす。これは、単一のX線光子が複数のアクティブ積分型画素内のイベント検出をトリガする可能性が最も高いことを意味する。一実施形態において、したがって、アナログストレージからのデータの読出しは、複数の近傍アクティブ積分型画素におけるイベントの検出、以て、これらのアクティブ積分型画素内のトリガ信号の生成が条件とされ得る。
【0086】
例えば、アナログストレージの読出しは、少なくともN個の近傍アクティブ積分型画素内のイベント検出器が、トリガ間隔以内でトリガ信号を生成および出力するときに実施される。一例として、エッジ画素を除く、
図7および
図8における検出モジュール内のアクティブ積分型画素の大半は、8つの近傍アクティブ積分型画素を有する。そのような場合、現在のアクティブ積分型画素のアナログストレージの読出しは、現在のアクティブ積分型画素内のトリガ信号の生成の前または後の規定の時間期間以内での、8つの近傍アクティブ積分型画素のうちの、例えば、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4つにおけるトリガ信号の生成が条件とされ得る。
【0087】
検出モジュール内のアクティブ積分型画素の総電力消費を低減するためのさらなるソリューションは、そこに実装されているアナログ回路の少なくとも一部分を、イベント検出器によるイベント検出の後、低電力スリープ・モードに入れることである。例えば、アクティブ積分型画素の増幅器(CSA)は、イベント検出器からのトリガ信号に基づいて、一時的に低電力スリープ・モードに入ることができる。この低電力スリープ・モードはこのとき、既定の時間期間に実行し得、その後に、増幅器(CSA)はもう一度通常動作モードに入る。
【0088】
増幅器の出力を下げる理由は、一旦アクティブ積分型画素が電気信号を捕捉し、それをイベントとして検出すると、一般的には、同じアクティブ積分型画素が既定の時間期間以内に新たにイベントを検出する可能性が低いためである。
【0089】
図14は、アナログストレージの実装形態例を示す概略図である。図は、アナログストレージからの格納されたデータまたは値の出力と一緒に、パルス整形器からの出力を示す。一実施形態において、グローバルリファレンス対ローカルリファレンスまたはグラウンドのいかなる影響も低減するために、電圧は、例えば、任意選択的に各アクティブ積分型画素のために個々に調整されるローカル・オフセットであり得る、整形器出力およびそのローカルリファレンスを使用して、異なって格納され得る。次いで、値がアナログストレージから読まれるとき、コンデンサにわたる電圧差は、例えば、アクティブ積分型画素のためのグローバル・グラウンド(global ground)であり得る、グローバルリファレンスを使用して、検知される。
【0090】
図16は、検出モジュール内に互いに近い多くの小さいアクティブ積分型画素を有することの結果として、互いに近い多くの小さいダイオードを置くことの効果を例証する。例証されたダイオード・ツー・ダイオード・キャパシタンスは、ダイオードが小さくなればなるほど、増幅器(CSA)の入力で見られる寄生容量において優勢である。故に、一旦画素寸法が減少すると、ダイオード(アクティブ積分型画素)間の側壁容量は、ダイオードのボトム・トップ・キャパシタンス(bottom-top capacitance)と同じ量だけ減少しない。アナログ・フロント・エンドの必要とされる入力リファレンスノイズは、キャパシタンスが増加するにつれて増加する。ノイズ性能は、電力消費が高いほど改善され、電力消費を低く保つために、キャパシタンスは最小限にされることが好ましい。
【0091】
アクティブ積分型画素を形成するためにアナログ回路の少なくとも一部を画素に実装することは、先行技術のソリューションと比較して、画素のサイズにおける低減を可能にする。この小さいサイズのアクティブ積分型画素は、検出モジュール内の複数のアクティブ積分型画素が、
図17に示されるように単一のX線光子によって生成される電荷雲を検出することを可能にする。これは、ひいては、本エッジオン光子計数検出器を備える本X線画像システムが、本エッジオン光子計数検出器の特定の検出モジュールにおける、コンプトン相互作用またはX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散の推量を決定することを可能にする。
【0092】
電荷拡散の推定は、ひいては、さらなる処理のために使用され得る。例えば、検出モジュールの厚さに沿った相互作用の初期点は、本X線画像システムによって、電荷拡散の決定された推量に少なくとも部分的に基づいて推定され得る。さらには、電荷拡散の決定された推量は、検出モジュール内の入射X線光子の相互作用点の著しく改善された推量を提供するために使用され得る。
【0093】
例として、検出モジュールの厚さに沿った、検出モジュールにおけるX線光子の検出点と、電荷拡散の決定された推量に基づいたX線光子と半導体基板との間の相互作用の初期点との間の、距離の推量を決定し、次いで、検出モジュールの厚さに沿って、検出点および距離の決定された推量に基づいて、相互作用の初期点の推量を決定することが可能であり得る。検出モジュールの厚さは、一般的には、検出モジュールの裏面と前面との間の拡散の方向に延びる。特に、電荷拡散の形状、および特に幅が、測定または推定され、検出点と相互作用の初期点との間の距離は、電荷拡散または分布の形状または幅に基づいて決定される。
【0094】
別の例では、電荷拡散に関する情報は、アクティブ積分型画素が検出モジュールの主要(前)面に分布している2つの方向のうちの少なくとも一方において、X線光子と検出モジュールとの間の相互作用の初期点の改善された分解能を提供するため、本X線画像システムによって使用され得る。例えば、増加した解像度は、これらの方向のうちの一方または両方における電荷雲プロファイルの情報に基づいて獲得され得る。検討対象の方向は、
図6に示されるような検出モジュールまたはウェハの幅方向および/または深さ方向を含み得る。
【0095】
代替または補足として、上で述べられたように、電荷拡散の決定された推量に少なくとも部分的に基づいて、検出モジュールの厚さに沿った相互作用の初期点を推定することが望ましい場合もある。
【0096】
したがって、電荷拡散に関する情報が、アクティブ積分型画素を備えるエッジオン光子計数検出器内の検出モジュールの3つの方向のうちの少なくとも1つにおいて分解能を改善するために使用され得ることが示されている。
【0097】
本発明のさらなる態様は、実施形態に係るエッジオン光子計数検出器を備えるX線画像システムに関する。本X線画像システムは、一実施形態において、CTシステムである。一実施形態において、本X線画像システムはまた、X線源、および任意選択的に、画像処理システムを備える。
【0098】
上に説明される実施形態は、本発明のいくつかの例証的な例として理解されるべきである。様々な修正、組合せ、および変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対してなされ得ることは、当業者によって理解されるものとする。特に、異なる実施形態における異なる部分ソリューションは、技術的に可能な場合には、他の構成で組み合わされ得る。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射X線に面するそれぞれのエッジを有する少なくとも1つの検出モジュールであって、半導体基板を備え、
前記半導体基板が、入射X線光子を前記半導体基板内の電子正孔対に変換することを可能にすることによって、前記入射X線光子を電気パルスに直接転送することを可能にするように構成された、少なくとも1つの検出モジュールと、
前記半導体基板内に配置される複数のアクティブ積分型画素と、を備
え、
前記複数のアクティブ積分型画素は、少なくとも2つの方向に配置され、前記少なくとも2つの方向のうちの1つは、前記入射X線の方向に成分を有するか、または、
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記入射X線の方向に実質的に直交する方向にアレイとして配置され、前記アクティブ積分型画素の各々は、前記入射X線に対してエッジオンで配向され、
前記複数のアクティブ積分型画素は、ドリフトする電子および/または正孔から誘導された電流を検出するための検出素子として動作し、前記検出素子の電気信号のアナログ処理を実施するように構成され、
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記アクティブ積分型画素によって生成される電流パルスに基づいて出力信号を生成するように構成される増幅器と、前記増幅器の下流のアナログストレージと、を備え、前記アナログストレージは前記アクティブ積分型画素および前記アナログストレージからのデータの制御された読出しを可能にする、エッジオン光子計数検出器(20)。
【請求項2】
アナログ処理回路(25)を備え、
前記アナログ処理回路(25)の少なくとも一部が、前記複数のアクティブ積分型画素内に実装され、
前記アナログ処理回路(25)の任意の残りの部分が、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)に実装され、前記少なくとも1つのASICが、前記少なくとも1つの検出モジュール内に配置される、請求項
1に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項3】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記半導体基板の主要面にグリッドまたはマトリクス状に配置される、請求項1
または2に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項4】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記グリッドまたはマトリクス状のアクティブ積分型画素と入射X線に面するそれぞれのエッジとの間の距離に依存する同じ幅および深さを有する、請求項
3に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項5】
前記複数のアクティブ積分型画素を備える前記半導体基板の領域は、5×5mm~最大50×50mmの間隔以内で選択される、請求項
3または
4に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの検出モジュールは、アナログ処理回路(25)を備え、
前記アナログ処理回路(25)の少なくとも一部は、前記複数のアクティブ積分型画素に実装され、
前記アナログ処理回路(25)の任意の残りの部分は、入射X線に面するそれぞれのエッジと反対側の前記少なくとも1つの検出モジュールのそれぞれのエッジにおいて、またはそれと関連して、前記半導体基板の前記主要面の一部分において実装される、請求項
3から
5のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項7】
前記複数のアクティブ積分型画素の少なくとも一部分は、前記アクティブ積分型画素によって生成される電流パルスに基づいて出力信号を生成するように構成される、増幅器、好ましくは、電荷感応性増幅器(CSA)、およびより好ましくは、シングルエンドCSAを備える、請求項1から
6のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項8】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記増幅器からの前記出力信号をフィルタリングするように構成されるパルス整形器を備え、および/または
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記増幅器および前記パルス整形器に接続される、相殺回路(CC)、好ましくは極零点CCを備える、請求項
7に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項9】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、前記パルス整形器に接続され、かつその下流に配置され、前記パルス整形器からの出力信号を少なくとも一時的に格納および保持するように構成される、アナログストレージを備える、請求項
8に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項10】
前記複数のアクティブ積分型画素の前記少なくとも一部分は、
前記パルス整形器からの出力信号のパルス振幅をしきい値と比較することによって、光子イベントを検出し、
前記パルス振幅が前記しきい値に等しいか、またはそれを超過する場合に、トリガ信号を生成するように構成される、イベント検出器を備える、請求項
9に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項11】
前記アナログストレージ内のデータの読出しは、前記イベント検出器によって出力される前記トリガ信号によって制御され、ならびに/または
前記アナログストレージ内のデータの読出しは、前記アクティブ積分型画素内の前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて、および前記少なくとも1つの検出モジュール内の少なくとも1つの近傍アクティブ積分型画素からのそれぞれのトリガに基づいて実施される、請求項1
0に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項12】
前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて前記アナログストレージからデータを読み出すように構成される読出し回路を備えるデジタル処理回路(40)を備える、請求項1
0または1
1に記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項13】
前記増幅器は、前記イベント検出器からの前記トリガ信号に基づいて低電力スリープモードに入るように構成される、請求項1
0から1
2のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項14】
前記半導体基板は、好ましくは、浮遊帯(FZ)シリコン、高抵抗シリコン、および高抵抗FZシリコンからなる群から選択される、シリコン製であり、前記高抵抗シリコンおよび前記高抵抗FZシリコンは、1kΩcmよりも大きいバルク抵抗を有する、請求項1から1
3のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項15】
前記複数のアクティブ積分型画素は、前記半導体基板内のアクティブ積分相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画素として実装される、請求項1から1
4のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれかに記載のエッジオン光子計数検出器(20)を備える、X線画像システム(100)。
【請求項17】
前記X線画像システム(100)は、コンピュータ断層撮影(CT)システム(100)である、請求項
16に記載のX線画像システム。
【請求項18】
前記X線画像システム(100)は、コンプトン相互作用または検出モジュール内のX線光子に関連した光効果を通じた相互作用から生じる電荷拡散を推定するように構成され、
前記X線画像システム(100)は、前記推定された電荷拡散に基づいて、前記検出モジュールの厚さに沿った前記X線光子と前記検出モジュールとの間の相互作用の初期点を推定するように構成される、請求項
16または
17に記載のX線画像システム。
【請求項19】
前記X線画像システム(100)は、前記複数のアクティブ積分型画素が前記検出モジュールの主要面に分布している2つの方向のうちの少なくとも一方において、前記X線光子と前記検出モジュールとの間の相互作用の初期点の分解能を増大させるため、前記電荷拡散に関する情報を使用するように構成される、請求項
18に記載のX線画像システム。
【請求項20】
前記電荷拡散は、電荷雲によって表され、
前記複数のアクティブ積分型画素の少なくとも一部分は、前記電荷雲よりも小さいサイズを有する、請求項
18または
19に記載のX線画像システム。
【国際調査報告】