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特表2022-507206フルオロポリマー分散液を作るためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】フルオロポリマー分散液を作るためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/30 20060101AFI20220111BHJP
   C08F 14/22 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 4/30 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08F2/30 Z
C08F14/22
C08F214/22
C08F4/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525664
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 US2019059979
(87)【国際公開番号】W WO2020101963
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/758,831
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ティー・ゴールドバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ボネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ピー・カーン
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J011KA12
4J011KA15
4J011KA27
4J011KB03
4J011KB04
4J011KB08
4J011KB29
4J011NA12
4J011NA19
4J011NA28
4J011NA30
4J011NA36
4J015BA02
4J100AC22Q
4J100AC23Q
4J100AC24P
4J100AC25Q
4J100AC26Q
4J100AC27Q
4J100AC29Q
4J100AC31Q
4J100AE38Q
4J100AE39Q
4J100AR32Q
4J100BB07Q
4J100BB18Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA00
4J100DA22
4J100EA09
4J100FA20
4J100FA29
(57)【要約】
本発明は、より高い熱安定性を有する非フッ素化界面活性剤を使用して安定なフルオロポリマーラテックスを製造するプロセスに関する。重合は、通常使用されるものよりも高い圧力で実行される。得られるポリマーは、より低い圧力で同様の条件下で製造されたものと比較して、改善された溶融色の安定性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定したフルオロポリマーエマルジョンを形成するためのプロセスであって、
反応器において、開始剤、及び任意的にフッ素を含まない界面活性剤を含む水性媒体中で1つ又は複数のフルオロモノマーを、800psiを超える圧力で重合することを含み、
前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのセグメントを含む、繰り返し単位が2~200、好ましくは3~100、より好ましくは5~50である非フッ素化非イオン性乳化剤を含む、
プロセス。
【請求項2】
前記重合中の圧力が1000psiを超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記重合中の圧力が少なくとも1100psi、好ましくは少なくとも1150psi、より好ましくは少なくとも1200psiである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記重合中の圧力が1000psiを超えて2500psiまでである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記重合中の圧力が1100psi~2000psiである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG-MA)、ジメチルポリエチレングリコール(DMPEG)、ポリエチレングリコールブチルエーテル(PEGBE)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールフェノールオキシド(Triton X-100)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(PPG-MA)、及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記界面活性剤が式1の乳化剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
1-[(CH2-CH2-O-)Xm-[(CH2-CH(CH3)-O-)Yn-[(CH2-CH2-O-)Zk-T2 (式1)
式中、X、Y、及びZは2~200であり、m、n、kは0~5であり、m、n及びkの少なくとも1つは0より大きく、T1及びT2は水素、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、エーテル及び/又は炭化水素などの末端基である。
【請求項8】
前記界面活性剤が、好ましくはPEG中央ブロック及びPPGエンドブロックを有する、トリブロックコポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非フッ素化非イオン性乳化剤が、プロセス中に、フルオロポリマー固形分の重量に対して、0~1%、好ましくは100ppm~1%で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記重合中に界面活性剤が添加されない、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記フルオロモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソブチレン、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、及びペルフルオロプロピルビニルエーテルからなる群から選択される1つ又は複数のフルオロモノマーである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記フルオロポリマーが、少なくとも50モル%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが70~100モル%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含み、1つ又は複数の他のフルオロモノマーのレベルが0~30モル%である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
100ppm~10,000ppmの1つ又は複数のイオン性又はイオン化可能な開始剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸塩のアルカリ金属塩、過硫酸ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル、及びペルオキシ二炭酸塩からなる群、好ましくは過硫酸塩のアンモニウム又はアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1つ又は複数の開始剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
生成される安定なエマルジョン中の固形分レベルが、少なくとも33.5重量%、好ましくは34重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、好ましくは36重量%を超え、より好ましくは37重量%を超えるフルオロポリマー固形分である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
生成される安定なエマルジョン中の固形分レベルが、少なくとも33.5~50重量%、又は34を超え45重量%までの固形分、より好ましくは35~45重量%、より好ましくは36~45重量%、より好ましくは37~45重量%のフルオロポリマー固形分である、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
重合反応の開始後までに前記界面活性剤が添加されない、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
重合反応の開始前に前記界面活性剤の少なくとも一部が添加される、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ポリマーのYIが20以下である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセスから製造されたポリマー。
【請求項22】
染料;着色剤;耐衝撃性改良剤;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;流動助剤;金属、カーボンブラック及びカーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;架橋剤;ワックス;溶剤;可塑剤;並びに帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項21に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より高い熱安定性(すなわち、より少ない黄変)を有する非フッ素化界面活性剤を使用して、高固形分ラテックス、フルオロポリマー分散液を形成するためのプロセスに関する。重合は、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールのセグメントを含む乳化剤で、通常使用されるものよりも高い圧力で行われる。このプロセスは、界面活性剤をほとんど又はまったく使用しない場合にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
乳化重合は、フルオロポリマーを形成するための好ましい方法であり、平均粒子サイズが20nm~1000nmの範囲のフルオロポリマー粒子、及び一般に10cP未満の低粘度を有するラテックスを生成する。この範囲は、せん断と貯蔵において安定しており、ポンプやその他の一般的な液体プロセス技術によって簡単に運ぶことができる。
【0003】
市販のフルオロポリマーの分野では、液相(水相)中のポリマー粒子の安定な分散を得るために、安定化添加剤を使用しなければならないことが一般に理解されている。界面活性剤又は乳化剤として知られる一般的な添加剤には、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)などのイオン性両親媒性物質と、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(TRITON X-100など)などの非イオン性両親媒性物質が含まれる。これらの化合物は、(フルオロ)ポリマー粒子と水相の界面を安定化するように作用し、粒子間相互作用の強度と全体的な強度を低下させ、液相からの固体の早期凝固を抑制する。これらのタイプの界面活性剤で作られたエマルジョンは、機械的剪断による凝固に対する安定性の向上を示すことがよくあり、非常に低い粘度を維持しながら固体濃度を上げることがしばしば可能であるが、どちらも、フルオロポリマー樹脂の効率的で費用効果の高い商業生産を可能にするだけでなく、固体の低粘度の水性分散液が必要な用途、例えば高性能建築用塗料の基材などでの直接使用を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆に、これらの界面活性剤は、フルオロポリマーラテックスの望ましい特性を改善するが、連鎖移動によるフリーラジカル重合反応を妨害するという望ましくない作用を有する。この干渉は、重合速度の低下、生産スループットの低下、及び界面活性剤構造の一部をフルオロ(共)ポリマー自体に組み込む可能性として現れる。これにより、黄色や茶色を与えるなど、望ましくない方向で最終材料の物理的特性が変化する可能性がある。
【0005】
これらの問題に対処するために、当業者は、フルオロモノマー重合反応を妨害又は関与しないフルオロモノマー重合のために(ペル)フッ素化界面活性剤を広く利用してきた。このアプローチは非常に効果的であるが、これらのフッ素系界面活性剤の生物学的及び環境的持続性、ならびにそれらの毒性に関して重大な懸念が生じている。したがって、それらの使用を中止することが非常に望ましい。最近、C8及び長鎖の過フッ素化界面活性剤の使用を排除する規制が施行され、短鎖(過)フッ素化界面活性剤も近い将来段階的に廃止されることが予想される。
【0006】
例えば米国特許第8,080,621号、第8,124,699号、第8,158,734号、第8,338,518号、第8,765890号、及び第9,068,071号に記載されているように、フルオロ界面活性剤を含まない、安定なフルオロポリマーが製造されている。毒性の問題を解決する一方で、フッ素化されていない界面活性剤で製造されたフルオロポリマーは、熱老化の下で酸化し、フルオロポリマーの望ましくない黄変を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、重合圧力が800psiより大きく13000psiまで、好ましくは1000psiより大きく3000psiまで、より好ましくは1100psiから2000psiまでにある場合に、熱色安定性が改善された安定した低粘度の高固形分水性フルオロポリマーエマルジョンを生成できることが見出された。ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)又はそれらの組み合わせの少なくとも1つのセグメントを含む非フッ素化非イオン性乳化剤を含む界面活性剤を使用し、繰り返し単位は2~200、好ましくは3~100、より好ましくは5~50で、プロセスは、少なくとも33.5重量%、好ましくは34重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、より好ましくは少なくとも36%の固形分レベルで実行される。重合は、少なくとも37重量%、あるいは少なくとも38重量%の固形分レベルで実行できることが見出された。界面活性剤は、重合反応の開始前及び/又は開始後に添加することができる。
【0008】
本発明の利点は、生成されたフルオロポリマーの溶融処理されたプラークが、関連する対照に対して改善された熱色安定性を示すことであり、これは、押出成形や射出成形などの溶融加工技術を使用して最終部品や製品を生成する多くのフルオロ(コ)ポリマー用途にとって重要な要素である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、同等の固形分及び実行時間を使用する標準的な重合プロセスと比較して、より低いレベルの開始剤及び/又は界面活性剤を使用することができる。界面活性剤及び/又は開始剤の存在は、ポリマーの色に悪影響を与える可能性がある。重合に使用する界面活性剤及び/又は開始剤を少なくすると、最終生成物中の界面活性剤及び/又は開始剤が減少し、生成物がより白くなる(黄変が少ない)。
【0010】
本発明の実施形態において、本発明は、少なくとも33.5重量%のフルオロポリマー、好ましくは34重量%を超えるフルオロポリマー又は35重量%を超えるフルオロポリマーを含む、熱的に安定なフルオロポリマーエマルジョン組成物を生成する方法に関する。ここで、重合プロセスは、800psiを超え、好ましくは1000psiを超え、より好ましくは少なくとも1100psi、好ましくは少なくとも1200psiの圧力で実行される。すべての場合において、プロセスはフッ素系界面活性剤を含まない。
【0011】
組成物中のフルオロポリマー固形分のレベルは、33.5~50重量%、好ましくは34超えから45重量%、より好ましくは35超えから45重量%、より好ましくは36~45重量%である。ラテックス中のフルオロポリマー固形分のレベルは、37重量%を超え得る。
【0012】
一実施形態では、形成される安定なフルオロポリマー組成物又はエマルジョンは、界面活性剤をほとんど又は全く含まず、高いフルオロポリマー固形分を有することができる。ラテックスは、イオン交換、洗浄、又は他の追加の単位操作を使用せずに、界面活性剤がほとんど又はまったく存在しない固体樹脂に乾燥させることができる。
【0013】
本発明の安定なフルオロポリマーエマルジョン組成物は、少なくとも70重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を有するホモポリマー又はコポリマーであり得る。
【0014】
本発明の安定なフルオロポリマーエマルジョン組成物は、100ppm~10,000ppmの1つ又は複数の開始剤をさらに含むことができる。好ましくは、開始剤は、少なくとも1つの過硫酸塩を含む。
【0015】
別の実施形態では、安定なフルオロポリマーエマルジョン組成物は、ゼロの界面活性剤のレベルを有する。
【0016】
一実施形態は、以下のステップを含む、安定なフルオロポリマーエマルジョンを形成するための方法である。
a)攪拌しながら、反応混合物を反応器に充填する。前記反応混合物は、1つ又は複数のフルオロモノマー、非フッ素化界面活性剤を含む。
b)反応混合物を少なくとも25℃、好ましくは少なくとも50℃、又は少なくとも80℃であるが、145℃以下の温度に加熱し、1つ又は複数の開始剤を添加する。
c)反応器を、800psiを超え、好ましくは1000psiを超え、より好ましくは少なくとも1100psiの圧力に加圧する。
d)重合が完了するまで、追加のモノマーと開始剤、及び任意的に界面活性剤を連続的又は断続的に供給する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、熱色安定性が改善された、本発明のプロセスから製造されるフルオロポリマー組成物に関する。
【0018】
フルオロポリマー組成物は、任意的に、染料;着色剤;耐衝撃性改良剤;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;流動助剤;金属、カーボンブラック及びカーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;架橋剤;ワックス;溶剤;可塑剤;並びに帯電防止剤を含み得る。
【0019】
本発明の態様
【0020】
態様1.安定したフルオロポリマーエマルジョンを形成するためのプロセスであって、反応器において、開始剤、及び任意的にフッ素を含まない界面活性剤を含む水性媒体中で1つ又は複数のフルオロモノマーを、800psiを超える圧力で重合することを含み、前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのセグメントを含む、繰り返し単位が2~200、好ましくは3~100、より好ましくは5~50である非フッ素化非イオン性乳化剤を含む、プロセス。
【0021】
態様2.前記重合中の圧力が1000psiを超える、態様1に記載のプロセス。
【0022】
態様3.前記重合中の圧力が少なくとも1100psi、好ましくは少なくとも1150psi、より好ましくは少なくとも1200psiである、態様1又は2に記載のプロセス。
【0023】
態様4.前記重合中の圧力が1000psiを超えて2500psiまでである、態様1に記載のプロセス。
【0024】
態様5.前記重合中の圧力が1100psi~2000psiである、態様4に記載のプロセス。
【0025】
態様6.前記界面活性剤が、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG-MA)、ジメチルポリエチレングリコール(DMPEG)、ポリエチレングリコールブチルエーテル(PEGBE)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールフェノールオキシド(Triton X-100)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(PPG-MA)、及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、態様1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【0026】
態様7.前記界面活性剤が式1の乳化剤を含む、態様1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
1-[(CH2-CH2-O-)Xm-[(CH2-CH(CH3)-O-)Yn-[(CH2-CH2-O-)Zk-T2 (式1)
式中、X、Y、及びZは2~200であり、m、n、kは0~5であり、m、n及びkの少なくとも1つは0より大きく、T1及びT2は水素、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、エーテル及び/又は炭化水素などの末端基である。
【0027】
態様8.前記界面活性剤が、好ましくはPEG中央ブロック及びPPGエンドブロックを有する、トリブロックコポリマーを含む、態様1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【0028】
態様9.前記非フッ素化非イオン性乳化剤が、プロセス中に、フルオロポリマー固形分の重量に対して、0~1%、好ましくは100ppm~1%で存在する、態様1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【0029】
態様10.前記重合中に界面活性剤が添加されない、態様1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【0030】
態様11.前記フルオロモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロプ-1-エン、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、及びペルフルオロプロピルビニルエーテルからなる群から選択される1つ又は複数のフルオロモノマーである、態様1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0031】
態様12.前記フルオロポリマーが、少なくとも50モル%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含む、態様1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【0032】
態様13.前記フルオロポリマーが70~100モル%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含み、1つ又は複数の他のフルオロモノマーのレベルが0~30モル%である、態様1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【0033】
態様14.100ppm~10,000ppmの1つ又は複数のイオン性又はイオン化可能な開始剤をさらに含む、態様1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【0034】
態様15.前記開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸塩のアルカリ金属塩、過硫酸ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル、及びペルオキシ二炭酸塩からなる群、好ましくは過硫酸塩のアンモニウム又はアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1つ又は複数の開始剤を含む、態様1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【0035】
態様16.生成される安定なエマルジョン中の固形分レベルが、少なくとも33.5重量%、好ましくは34重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、好ましくは36重量%を超え、より好ましくは37重量%を超えるフルオロポリマー固形分である、態様1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【0036】
態様17.生成される安定なエマルジョン中の固形分レベルが、少なくとも33.5~50重量%、又は34を超え45重量%までの固形分、より好ましくは35~45重量%、より好ましくは36~45重量%、より好ましくは37~45重量%のフルオロポリマー固形分である、態様1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【0037】
態様18.重合反応の開始後までに前記界面活性剤が添加されない、態様1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【0038】
態様19.重合反応の開始前に前記界面活性剤の少なくとも一部が添加される、態様1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【0039】
態様20.前記ポリマーのYIが20以下である、態様1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【0040】
態様21.態様1~20のいずれか一項に記載のプロセスから製造されたポリマー。
【0041】
態様22.染料;着色剤;耐衝撃性改良剤;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;流動助剤;金属、カーボンブラック及びカーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;架橋剤;ワックス;溶剤;可塑剤;並びに帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、態様21に記載のポリマー。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本出願に記載されているすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。組成物中のすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、重量%であり、すべての分子量は、特に明記しない限り、PMMAを標準として使用するGPCによって決定される重量平均分子量として与えられる。
【0043】
「ポリマー」という用語は、特に明記しない限り、ホモポリマー、コポリマーの両方、及びターポリマー(3つ以上のモノマー単位)を意味するために使用される。任意のコポリマー又はターポリマーは、ランダム、ブロック状、又はグラジエントであり得、ポリマーは、線状、分岐、星型、くし型、又は他の任意の形態であり得る。
【0044】
本発明のフルオロポリマーラテックス組成物に関する「安定な」という用語は、反応器から流出するラテックスは、凝固物を形成することなく注入及びポンプ輸送することができることを意味し、凝固物は、100メッシュのスクリーンを通過しない材料として定義される。このような凝固物には、硬い粒子と湿った物質の塊(「ブロブ」とも呼ばれる)が含まれる。本発明の安定なフルオロポリマーラテックスは、3ヶ月の貯蔵後に視覚的に沈降しないものであり、又はある程度の沈降が生じた場合、穏やかに攪拌することで再分散させることができる。沈降時に凝固物が形成される場合、その材料は不安定であると見なされる。6%を超える凝固物が回収されると、十分に安定していない。
【0045】
フルオロポリマー
【0046】
本発明のフルオロポリマーには、少なくとも50重量%の1つ又は複数のフルオロモノマーを含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。本発明において使用される「フルオロモノマー」という用語は、フリーラジカル重合反応を受けることができるフッ素化及びオレフィン不飽和モノマーを意味する。本発明による使用に適した例示的なフルオロモノマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニリデン(VDF);テトラフルオロエチレン(TFE);トリフルオロエチレン(TrFE);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);ヘキサフルオロプロペン(HFP);フッ化ビニル(VF);3,3,3-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロプ-1-エン(HFIB);ペルフルオロブチルエチレン(PFBE);ペンタフルオロプロペン;3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン;2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン;1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン;1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン;1,1,1,-トリフルオロプロペン;1,3,3,3-テトラフルオロプロペン;2,3,3,3-テトラフルオロプロペン;1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン;ペルフルオロメチルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖ペルフルオロビニルエーテルを含むフッ素化又はペルフルオロビニルエーテル;フッ素化ジオキソール;C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン;C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン;及びそれらの組み合わせ。本発明の実施において製造されるフルオロポリマーには、上記のフルオロモノマーの重合生成物、例えば、ポリフッ化ビニリデン(VDF)をそれ自体で重合することによって製造されるホモポリマーが含まれる。
【0047】
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン及びフッ化ビニリデンモノマー単位を有するものなどのターポリマーを含む、フルオロターポリマーも想定される。最も好ましくは、フルオロポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。本発明は、PVDFに関して例示されるが、当業者は、4つ以上のフルオロモノマーを含むものを含む他のフルオロポリマーが、PVDFという用語が例示される場合にも表され得ることを認識するであろう。
【0048】
本発明のポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、PVDFホモポリマー、コポリマー又はポリマーアロイである。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーには、フッ化ビニリデン(VDF)を重合することによって作製されたホモポリマー、及びフッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマーと高級ポリマーが含まれ、フッ化ビニリデン単位は、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量の51重量%を超え、好ましくは70重量%を超え、より好ましくは、モノマー単位の総重量の75重量%を超える。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマー(一般に本明細書では「コポリマー」と呼ばれる)は、フッ化ビニリデンを、以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル;トリフルオロエテン;テトラフルオロエテン;3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、及び3,3,3-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロプ-1-エンなどの1つ又は複数の部分的又は完全にフッ素化されたアルファオレフィン;ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ-n-プロピルビニルエーテル、及びペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのペルフルオロビニルエーテル;ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)やペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール;アリル;部分的にフッ素化されたアリル;又は、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル又は3-アリルオキシプロパンジオールなどのフッ素化アリルモノマー;並びにエテン又はプロペン。好ましいコポリマー又はターポリマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、及びヘキサフルオロプロペン(HFP)で形成される。
【0049】
好ましいコポリマーには、約55~約99重量%のVDF、及び対応して約1~約45重量%のHFP、好ましくは2~30重量%のHFPのレベルを含むもの;VDFとCTFEのコポリマー;VDF/HFP/TFEのターポリマー;VDFとTFEのコポリマー;及びVDFと1,1,1,2-テトラフルオロプロペンのコポリマーが含まれる。
【0050】
本発明の一実施形態では、すべてのモノマー単位がフルオロモノマーであることが好ましいが、フルオロモノマーと非フルオロモノマーとのコポリマーも本発明によって想定される。非フルオロモノマーを含むコポリマーの場合、モノマー単位の少なくとも60重量%はフルオロモノマーであり、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%がフルオロモノマーである。有用なコモノマーには、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、非フッ素含有ハロゲン化エチレン、ビニルピリジン、及びN-ビニル線状と環状アミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
界面活性剤
【0052】
本発明での使用に適した乳化剤(界面活性剤)は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)又はそれらの組み合わせのうちのセグメントを含む、繰り返し単位が2~200、好ましくは3~100、より好ましくは5~50である非フッ素化非イオン性乳化剤である。本発明で使用されるグリコールベースの乳化剤には、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG-MA)、ジメチルポリエチレングリコール(DMPEG)、ポリエチレングリコールブチルエーテル(PEGBE)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールフェノールオキシド(Triton X-100)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(PPG-MA)、及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
ブロックを含み、以下の式1を有する乳化剤は、押出又は他の製造技術のための常温での変色に抵抗する淡色ポリマーを製造するのに好ましい。
1-[(CH2-CH2-O-)Xm-[(CH2-CH(CH3)-O-)Yn-[(CH2-CH2-O-)Zk-T2 (式1)
式中、X、Y、及びZは2~200であり、m、n、kは0~5である。T1及びT2は水素、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、エーテル及び/又は炭化水素などの末端基である。
【0054】
本発明の1つの好ましいブロックコポリマーは、PEG及びPPGブロックを含む式1のトリブロックコポリマーである。これらのトリブロックポリマーは、PEG又はPPGのいずれかの中央ブロックを持ち、エンドブロックは中央ブロックのそれとは異なり得る。一実施形態では、PEGブロックは、トリブロックの30重量%未満、好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満を構成する。1つの特に好ましいトリブロックコポリマーは、PEG中央ブロック及びPPGエンドブロックを有するトリブロックである。
【0055】
乳化剤は、ヒドロキシル、カルボキシレート、ベンゾエート、スルホン酸塩、ホスホン酸、アクリレート、メタクリレート、エーテル、炭化水素、フェノール、官能化フェノール、エステル、脂肪エステルなどのように、各末端に同じ又は異なる末端基を含み得る。末端基には、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、及びアミン、アミド、環状炭化水素などの他の基若しくは官能基性を含めることができる。例えば、Mnが約375のポリエチレングリコールアクリレート、Mnが約570のポリエチレングリコール、Mnが約526のポリエチレングリコールメタクリレート、Mnが約250のジメチルエチレングリコール、Mnが約206のポリエチレングリコールブチルエーテル、Mnが約300のポリエチレングリコール、 Mnが約475のポリプロピレングリコールアクリレート、Mnが約400のポリプロピレングリコール、Mnが約375のポリプロピレングリコールメタクリレート(PPG-MA)、Mnが約250のポリテトラメチレングリコール及びフェノールオキシド末端基を有するポリエチレングリコール、より具体的には、PPG-b-PEG-b-PPG(BASFのPluronic 31R1及び25R2)、PEG-b-PPG-b-PEG(BASFのPluronic L101及びL-92)、PPG(Pluronic P-4000)、及びPEG(Pluronic E-2000)などの、PEG、PPG、PTMGのシングル、ジ、及びトリブロック、他の多くの例を使用して、本発明の安定したフルオロポリマー分散液を製造することができる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールのセグメントを含む乳化剤を使用する。
【0057】
乳化剤は、一般に、分散液中に形成されたフルオロポリマーの総ポリマー固形分に対して、2ppm~2.5%、100ppm~1%(10,000ppm)、及び100ppm~0.5%(5000ppm)のレベルで使用される。本発明の他の実施形態では、総モノマーに対して、0.01重量%未満、好ましくは0.004重量%未満の非常に低レベルの界面活性剤を使用することができる。本発明の別の実施形態では、重合プロセスを通して界面活性剤を使用しない。すべての場合において、反応の圧力は、800を超え、好ましくは1000psiを超え、より好ましくは少なくとも1100psi、より好ましくは少なくとも1200psiである。圧力は、1000psiを超え約2500psiまでであり得、好ましくは1100~2000psiであり得る。
【0058】
本プロセスには、フッ素化又は部分的にフッ素化された乳化剤を含まない。
【0059】
重合プロセスにおいて、本発明の乳化剤は、重合前に前もってすべて添加するか、重合中に連続的に供給するか、重合の前後に部分的に供給するか、又は重合が開始してしばらく進行した後に供給することができる。
【0060】
本発明の乳化剤は、重合の開始後までに供給されない場合、フルオロモノマー転化率が少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも1%に達した後に供給され得る(転化率は、[(形成されたポリマーの質量)/完成時の総ポリマーの質量)×100]として定義される)。好ましくは、乳化剤の添加は、フルオロポリマーの転化率が15%に達する前に、より好ましくはそれが10%に達する前に開始される。
【0061】
連鎖移動剤
【0062】
連鎖移動剤は、生成物の分子量を調節するために、必要に応じて重合に添加される。それらは、反応の開始時に一度に、又は反応全体を通して断続的若しくは連続的に重合に添加され得る。連鎖移動剤の添加の量及び方式は、使用される特定の連鎖移動剤の活性、及びポリマー生成物の所望の分子量に依存する。重合反応に添加される連鎖移動剤の量は、反応混合物に添加されるモノマーの総重量に対して、好ましくは約0.05~約5重量%、より好ましくは約0.1~約2重量%である。
【0063】
本発明において有用な連鎖移動剤の例には、連鎖移動剤として機能し得るアルコール、炭酸塩、ケトン、エステル、及びエーテルなどの酸素化化合物;クロロカーボン、ハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、及びハイドロクロロフルオロカーボンなどのハロカーボンとハイドロハロカーボン;エタン及びプロパンが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
開始剤
【0065】
反応は、無機過酸化物、酸化剤と還元剤の「レドックス」の組み合わせ、有機過酸化物及びアゾ型化合物を含むフッ素化モノマーの重合について知られている任意の適切な開始剤の添加によって開始及び維持することができる。典型的な無機過酸化物の例は、過硫酸塩のアンモニウム又はアルカリ金属塩である。「レドックス」システムはさらに低い温度で動作でき、例には次の組み合わせがある:過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、又は過硫酸塩などの酸化剤;特定の例である還元金属塩、鉄(II)塩などの還元剤;任意的に、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの活性剤と組み合わせる。重合に使用できる有機過酸化物の中には、過酸化アルキル、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル、及び過オキシ二炭酸塩のクラスがある。ジアルキルペルオキシドの例はジ-t-ブチルペルオキシドであり、ペルオキシエステルの例はt-ブチルペルオキシピバレート及びt-アミルペルオキシピバレートであり、ペルオキシジカルボナートの例はジ(n-プロピル)ペルオキシジカルボナート、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカルボナート、及びジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナートである。アゾ型開始剤には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルブタンジニトリルなどが含まれる。
【0066】
有用なイオン開始剤には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、過リン酸塩、及び過マンガン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。イオン性基を含む有機過酸化物などの酸末端基を有する有機開始剤を含む、当技術分野で知られている他のイオン性開始剤もまた、本発明での使用が想定され、その一例はコハク酸過酸化物である。あるいは、過酸化水素などのヒドロキシルラジカル生成開始剤も同様に機能する。当技術分野で一般的に実施されているように、これらのタイプの開始剤は、第3の触媒成分も添加され得る「レドックス」タイプの開始システムにおいて還元剤と組み合わせて使用することができる。イオン化可能な無機過酸化物と他の無機又は有機過酸化物とのブレンドも考えられる。過硫酸カリウムは特に好ましい開始剤である。
【0067】
重合に必要な開始剤の量は、その活性及び重合に使用される温度に関連している。使用される開始剤の総量は、一般に、使用されるモノマーの総重量に対して0.002重量%~2.5重量%である。これらの化合物は、十分な重合速度を維持するのに十分なレベルで、典型的には全モノマーに対して100ppm~10,000ppm、好ましくは200ppm~2,000ppm、そして最も好ましくは200ppm~1,500ppmで添加される。開始剤は完全に最初の供給に供給することができるが、一般には遅らせて反応の過程で供給される。
【0068】
典型的には、反応を開始するために十分な開始剤が最初に添加され、次いで、好適な速度で重合を維持するために、追加の開始剤が任意的に添加され得る。開始剤は、選択した開始剤に応じて、単体、溶液、懸濁液、又は乳濁液で添加することができる。特定の例として、ペルオキシ二炭酸塩は、水性エマルジョンの形態で好適に添加される。
【0069】
反応条件
【0070】
本発明のフルオロ界面活性剤を含まないフルオロポリマーエマルジョンの重合は、標準的な重合技術と比較して、高圧で行われる。圧力は、800psiを超え、好ましくは1000psiを超え、より好ましくは少なくとも1100psi、より好ましくは少なくとも1200psiである。圧力は、800~約13000psi、好ましくは1000psiを超え2500psiまで、さらにより好ましくは1100~2000psiであり得る。本発明のフルオロ界面活性剤を含まないフルオロポリマーエマルジョンの重合は、典型的なフルオロポリマーエマルジョンの重合温度の温度で行われる。フッ化ビニリデンポリマー及びコポリマーの重合において、反応温度は、25℃~145℃、好ましくは50℃を超え、より好ましくは80℃を超える。好ましい実施形態では、この反応温度は、重合の過程の間、一定(+/-1℃)に保たれる。安定なエマルジョン中の固形分レベルは、少なくとも33.5重量%、好ましくは34重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、好ましくは36重量%を超え、より好ましくは37重量%を超える。
【0071】
重合は、バッチモードで実行することができ、又は好ましくは、モノマー及び開始剤の少なくとも一部は初期投入され、モノマー及び/又は開始剤の一部は、遅らせて重合の過程で供給される。
【0072】
他の添加剤
【0073】
本発明のフルオロポリマー組成物はまた、限定されないが、以下を含む典型的な添加剤を含み得る:染料;着色剤;耐衝撃性改良剤;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;流動助剤;金属、カーボンブラック及びカーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;架橋剤;ワックス;溶剤;可塑剤;並びに帯電防止剤。白色化を提供する他の添加剤(酸化亜鉛などの金属酸化物フィラー;リン酸塩又は亜リン酸塩安定剤;及びフェノール安定剤を含むがこれらに限定されない)もまた、フルオロポリマー組成物に添加することができる。
【0074】
特性
【0075】
生成されたエマルジョンの粒子サイズは、低圧で生成された生成物とほぼ同じか、又はわずかに大きいだけである。観察された粒子サイズの一般的な範囲は350nm未満、好ましくは300nm未満である。一般的に、粒子サイズは100nmを超える。
【0076】
本発明で製造される安定なエマルジョン中の固形分レベルは、少なくとも33.5重量%、好ましくは34重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、好ましくは36重量%を超え、より好ましくは37重量%を超える。40又はそれ以上の重量%を超える固形分の重量%も想定される。好ましい固形分範囲は、33.5~50重量%、又は34を超え45重量%までの固形分、より好ましくは35~45重量%、より好ましくは36~45重量%、より好ましくは37~45重量%である。
【0077】
本発明のこれらのラテックスの貯蔵寿命は非常に良好であり、3ヶ月を超える貯蔵後、沈降がほとんどなく、凝固物の形成が観察されないまま、流動性及び元の粘度を保持している。さらに、ラテックスは、貯蔵容器への排出、注入、攪拌、機械的ポンピングなどの一般的な流体移送技術に対して安定している。
【0078】
ラテックス粘度は、典型的には1.0cP~50cP、好ましくは1.5~25cPである。
【0079】
本発明の目的のために、20以下のYIは許容可能であると見なされる。20を超えるYIは受け入れられない。15未満のYI値が推奨される。
【0080】
用途
【0081】
本発明のフルオロ界面活性剤を含まないフルオロポリマーエマルジョンは、界面活性剤含有フルオロポリマーエマルジョンが有用である任意の用途において有用である。界面活性剤のレベルが低いため、本発明のフルオロポリマーは、熱老化を伴う用途において特に有用である。界面活性剤の量が減少しているため、低圧での重合運転と比較して、酸化して着色を生成する界面活性剤が少なくなり、放射線が材料に適用されて架橋が促進される用途がある。
【実施例
【0082】
発明の説明と例:高圧FSF
実施例1:ラテックス合成:8717gの脱イオン水、6.54gのPPO-PEO-PPOブロックコポリマー(BASF Pluronic(登録商標)31R1)、及び20.0gの酢酸エチルを反応器に加えた。反応器を攪拌し、83℃に加熱し、フッ化ビニリデンで1250psiに加圧した。2.0重量%の酢酸ナトリウム三水和物(「SAT」)を含む2.0重量%の過硫酸カリウム水溶液(「KPS」)の供給を650g/時で開始した。圧力降下の開始時に、KPS/SAT供給は200g/hrに減少した。1250psiの反応圧力を維持するために、追加のVDFを必要に応じて供給した。1000~3000g/hrの範囲のVDF取り込みを維持するために、この方法で供給を継続した。加圧に使用したものを含め、合計6213gのVDFが反応器に供給されるまで、すべての供給を続けた。モノマーの供給を停止し、圧力を10分間自発的に低下させ、その時点で反応器を大気圧に排気し、室温に冷却した。ラテックスを反応器から排出し、対流式オーブンで一晩乾燥させた。33.5重量%の固形分を有する14328.0gのラテックスを回収した。
【0083】
表1に記載の変更を除いて、同じ一般的手順を試験2~12に使用した。追加の試験のデータを表1に示す。試験は、例1と同様に、同じ反応器/攪拌機のセットアップで、反応圧力とターゲットラテックス固形物の合計を変更して実行した。
【0084】
【表1】
【0085】
例2~5は低圧反応制御を表し、試験9~12は本発明を示すものである。試験6と7は、より低い固形分を示す。
【0086】
試験例1は、より高い圧力を使用するが、より低い固形分(34%未満の固形分)を示している。低圧(650psi)でのコントロール試験が行われ(例3~5)、33%を超える固形分まで行われた試験ではかなりの量の凝固物が観察され、全凝固は~36%固形分で起こった。より高い圧力では、凝固物の量は低いままであり(製品全体の5%未満)、最大39.0%固形分のラテックスでさえあった(例9~12)。その濃度を超えると、ラテックスが固体に完全に凝固してしまう。注目すべきは、試験時間によって証明されるように、すべての試験が「典型的な」速度の範囲内にあることである。もちろん、この時間は、開始剤の総量と供給スケジュール、及び対象となるラテックス固形分の総量などの複数の要因の影響を受けるが、新しいプロセス条件を使用しても試験時間が長くなることはなく、生産性に悪影響を与えないことはすぐにわかる。1.5~3.5時間程度の「典型的な」反応時間が維持された。
【0087】
表1の合成試験から生成された乾燥材料を溶融し、すべて同じ材料である、同じプレスプレート上で、直径約2.5インチ×厚さ約1/8インチの4枚のディスクにプレスした。230℃で10分間加熱した後、ディスクを取り出した。
【0088】
ミノルタ比色計を使用して、各ディスクについてYI(黄色度指数)を測定した(YIは、機器で測定された吸光度から計算された値である)。通常の値は-10から約30のスケールである。一般に、YI=30を超える値は、機器の検出器を飽和させる「茶色」であるため、30を超える数値は無意味である。YI=7未満は非常に優れていると見なされ、目で見て「きれいに見える」白である。YIの値は低い方が最も望ましい。本発明の目的のために、20以下のYIは許容可能であると見なされる。
【0089】
高圧試験が実施された場合、YIは、低圧試験よりも著しく改善された。
【国際調査報告】