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特表2022-507213シリコン、ジルコニウム、および酸素を含む導電性スパッタターゲット
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  • 特表-シリコン、ジルコニウム、および酸素を含む導電性スパッタターゲット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】シリコン、ジルコニウム、および酸素を含む導電性スパッタターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
C23C14/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021525674
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2019081074
(87)【国際公開番号】W WO2020099438
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】2018/5796
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505360498
【氏名又は名称】ソレラス・アドヴァンスト・コーティングス・ビーヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】カレッティー,ジャンガスプロ・イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ボスヘル,ウィルマート・シリール・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】デブライネ,ダヴィッド・カレル
(72)【発明者】
【氏名】ゴバン,ギー
(72)【発明者】
【氏名】ファック,フレディ
(72)【発明者】
【氏名】アイリアノ,ユベール
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC05
4K029DC07
4K029DC12
4K029DC13
(57)【要約】
スパッタリング用ターゲットは、SiZrを含み、式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(1+x)以下であり、ターゲットは、28.29°+/-0.3°でシリコン2シータピーク、または30.05°+/-0.3°で正方晶相ZrO 2シータピークを有するXRDパターンを有する。ターゲットは、1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらに1オームcm未満の低抵抗率を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiZrを含むスパッタリング用ターゲット(100)であって、式中、xが0.02超であるが5以下であり、yが0.03超であるが2(1+x)以下であり、前記ターゲットが、28.29°+/-0.3°でシリコン2シータピーク、または30.05°+/-0.3°で正方晶相ZrO 2シータピークを有するXRDパターンを有する、ターゲット(100)。
【請求項2】
少なくとも50原子%のSiZrを含む、請求項1に記載のターゲット(100)。
【請求項3】
前記SiZrのフラクションが、材料の顕微鏡的なスプラットからなるラメラ構造を有する、請求項1または2に記載のターゲット(100)。
【請求項4】
前記ターゲットが、90%超のSi、Zr、およびO元素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のターゲット(100)。
【請求項5】
1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらには1オームcm未満の抵抗率を有する、請求項4に記載のターゲット(100)。
【請求項6】
xが、0.05超であるが1未満であり、好ましくは0.1~0.5であり、yが、0.1超であるが2(0.6+x)未満であり、好ましくは0.2~2(0.3+x)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項7】
前記ターゲット(100)が、Siからなるラメラ(101、102)と、ZrOからなるラメラと、を含み、zが、0.05超であるが2以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項8】
前記ターゲット(100)が、混合酸化化合物からなる少なくとも1重量%のラメラを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項9】
前記ターゲット(100)が、金属粒子をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項10】
スパッタリング用導電性SiZrターゲットを製造する(204)ための方法であって、式中、xが0.02超であるが5以下であり、yが0.03超であるが2(x+1)以下であり、前記方法が、
-ジルコニウムおよびシリコン酸化物もしくはシリコン亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコンおよびジルコニウム酸化物もしくはジルコニウム亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコン亜酸化物およびジルコニウム亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコン/ジルコニウム酸化化合物の粒子を含む粉末を提供すること(201)と、
-バッキング基板を提供すること(202)と、
-前記粉末を、SiZr(式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(1+x)以下である)の組成を有するスパッタリング用ターゲットが得られるような量で、前記バッキング基板上に溶融形態で投射して、前記投射した粉末を冷却かつ固化させること(204)と、を含む、方法。
【請求項11】
前記粉末を投射することが、噴霧すること(213)を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンジルコニウム酸化物スパッタターゲットの分野に関する。より具体的には、それは、導電性シリコンジルコニウム酸化物スパッタターゲット、およびそのようなターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途(表面、光学的、トリボロジー的などの保護など)は、基板の表面に特殊かつ所定の特性を付与する、基板を覆う1つまたは複数の材料の層の存在を必要とする。多くのタイプの材料および特殊な用途に好適な典型的な技術は、スパッタリングによる材料の堆積である。
【0003】
スパッタリングによって材料が堆積する技術は、すでに何十年も知られている。典型的には、アルゴンなどの不活性ガス、または酸素もしくは窒素などの活性ガスが存在する低圧チャンバ内でプラズマが生成され、いわゆる「スパッタターゲット」(堆積される材料を含有する)と、スパッタ材料の層が堆積される「基板」との間に高電圧が印加される。ガス原子をイオン化することができ、スパッタターゲットにガス原子を衝突させ、その結果、原子がスパッタターゲットから解放され、それらが堆積される基板に移動する。
【0004】
典型的には、以下の3種類の電源が使用されている:DC電力、ACまたはパルス電力(例えば、1~100kHzの周波数におけるkHzの範囲内)およびRF電力(例えば、0.3~100MHzの周波数におけるMHzの範囲内)。DC電力は、典型的に、スパッタターゲットが導電性スパッタ材料を含有するときに使用される。AC電力は、典型的には、堆積層が低導電性を有するとき、または誘電性であるときに使用される。高周波電力(RF電力)は、導電性が低い材料のスパッタリングを可能にするが、スパッタリング領域は、定在波効果により制限される。さらに、堆積は、不均一になり、同じ電力レベルについてのスパッタ速度は、典型的には、DCプロセスよりも著しく低い。
【0005】
したがって、いくつかのタイプの層は、例えば、誘電体層を得ることが困難である。例えば、酸化膜は、それらを選択可能な透明度で作製することができ、それらをレンズ、フィルタなどのような光学的用途に好適にするため、しばしば所望される。非晶質膜は、通常、耐久性があり、かつ摩耗に耐性があるため、好ましい。しかしながら、酸化膜の堆積は、以下で説明される理由により困難である。
【0006】
金属ターゲットに酸素を含むガス混合物をスパッタリングすることによる、堆積によって酸化層を提供することが可能である。しかしながら、これは、重度のヒステリシス挙動をもたらす場合があり、これは、プロセスの不安定性につながる。いくつかの用途のための比較的高い量の酸素ガスは、スパッタ速度の低下につながる場合がある。文書「OBERSTE-BERGHAUS et al.,Film Properties of Zirconium Oxide Top Layers from Rotatable Targets,2015 Society of Vacuum Coaters,58th Annual Technical Conference Proceedings,Santa Clara,CA April 25-30,2015,p.228-234」は、セラミックターゲットの使用がヒステリシス挙動を緩和することができ、金属ターゲットを使用したスパッタ処理にわたって3倍高い膜堆積率を可能にすることを開示している。
【0007】
ガス混合物中の酸素はまた、ターゲット上に寄生アーキング(parasitic arcing)を引き起こす場合がある。セラミックターゲットは、US2012/055783に開示されるように、アーキングを低減する準非反応性スパッタリングの使用を可能にし得る。
【0008】
しかしながら、非導電性ターゲット材料に基づくスパッタコーティングを提供することは、難題であり、高周波電力システムを必要とする場合がある。ターゲットを通して信号を容量的に結合することは、ターゲットの前で振動電子によって生成されたプラズマから正イオンを引き付けるためにターゲット表面上に自己バイアスを確立することを可能にし得る。RFスパッタリングは、EP3032566に開示されるように、電力を非導電性ターゲット、例えば、スパッタリングのための均一な電界を提供するための電子マッチングユニットまたは特殊な形状および分散電極に結合するための追加の調整を必要とする。回転円柱状マグネトロンの場合、送電は、ターゲットチューブの端部に対応する位置にさらに制限され、これは、プラズマ密度の均一性、したがってターゲットチューブに沿ったスパッタ速度に深刻な影響を及ぼす場合がある。さらに、RFスパッタリング装置は、DCまたはACスパッタリングと比較して同様のスパッタ速度を実現するために著しく高価である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、良好なスパッタターゲット、およびそれを生産するための方法を提供することであり、これは、工業用および大面積コーティングシステムと互換性のある方法で、シリコンおよびジルコニウムの酸化物または酸窒化物を含む層を提供することを可能にする。
【0010】
上記の目的は、本発明による方法およびデバイスによって達成される。
【0011】
第1の態様では、本発明は、SiZrを含む、スパッタリング用ターゲットを提供し、式中、x(Zrの場合)は、0.02超であるが5以下であり、y(Oの場合)は、0.03超であるが2(1+x)以下である。本発明の実施形態によるターゲットは、28.29°+/-0.30°でシリコン2シータピーク、および/または30.05°+/-0.30°で正方晶相ZrOピークを有するXRDパターンを有する。
【0012】
本発明の実施形態によるターゲットは、SiZrターゲットであり得、これは、ターゲット材料の大部分がSiZrであることを意味する。
【0013】
本発明の実施形態によるターゲットは、ラメラ構造を有し得る。
【0014】
本発明の実施形態によるターゲットでは、SiZrのフラクションは、材料の顕微鏡的なスプラットからなるラメラ構造を有する。ラメラ構造は、ラメラと呼ばれる(顕微鏡レベルで)微細で識別可能な層を含む。本発明では、ターゲットのバッキング基板上に溶融形態で投射された原材料のスプラットによって、ラメラを形成する。本発明の実施形態では、ラメラは、0.1μm~10μmの厚さを有する層であり得る。ラメラの組成は、投射された原材料に依存する。
【0015】
本発明の実施形態では、ラメラ構造は、噴霧プロセス、例えば、限定されないが、熱噴霧プロセスによる。
【0016】
本発明の実施形態では、ターゲットは、90%超のSi、Zr、およびO元素を含む。ターゲットは、50原子%以上のSiZr化合物を含み得る。本発明の実施形態では、ターゲットは、1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらには1オームcm未満の抵抗率を有する。本発明の実施形態の利点は、ターゲットが光学コーティングを提供するのに好適な低周波ACスパッタリングプロセス、またはさらにはDCスパッタリングプロセスで使用することができるように十分に高い導電率を提示することである。
【0017】
本発明の特定の実施形態によるターゲットでは、xは、0.05超であるが1未満、好ましくは0.1~0.5であり得、yは、0.1超であるが2(0.6+x)未満、好ましくは0.2~2(0.3+x)であり得る。本発明の実施形態の利点は、屈折率nを正確に制御できることである。
【0018】
本発明の実施形態によるターゲットは、SiからなるラメラおよびZrOからなるラメラを含み得、zは、0.25超であるが2以下である。特定の実施形態では、ZrOからなるラメラは、亜酸化ジルコニウム酸化物を含み得る。本発明の実施形態の利点は、ラメラの亜酸化組成がターゲットの抵抗率を低減し得、アーキングを低減し得ることである。
【0019】
本発明の実施形態によるターゲットは、混合酸化化合物、例えば、SiZrからなる少なくとも1重量%のラメラを含み得、例えば、nおよびmは、亜酸化組成を提供する。
【0020】
本発明の実施形態の利点は、高いスパッタリングレートを得ることができることである。
【0021】
本発明の実施形態によるターゲットは、金属粒子をさらに含み得る。本発明の実施形態の利点は、ターゲット中に含まれる金属粒子のタイプおよび量を合わせることによって、ターゲットの制御可能かつ低抵抗を得ることができる。
【0022】
第2の態様では、本発明は、スパッタリング用の導電性SiZrターゲットを製造するための方法を提供し、式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(x+1)以下である。この方法は、
- ジルコニウムおよびシリコン酸化物もしくはシリコン亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコンおよびジルコニウム酸化物もしくはジルコニウム亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコン亜酸化物およびジルコニウム亜酸化物の粒子を含み、かつ/またはシリコンジルコニウム酸化化合物の粒子を含む粉末を提供することと、
- バッキング基板を提供することと、
- その粉末を、SiZr(式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(x+1)以下である)の組成を有するスパッタリング用ターゲットが得られるような量で、バッキング基板上に溶融形態で投射して、投射した粉末を冷却かつ固化させることと、を含む。
【0023】
本発明の実施形態の利点は、シリコンジルコニウム酸化物層を提供するための導電スパッタターゲットを提供できることである。本発明の実施形態の利点はまた、導電スパッタターゲットを、ガス混合物中の酸素の使用がほとんどまたは全くない、シリコンジルコニウム酸窒化物層を提供するための純窒素または窒素/アルゴン反応雰囲気中で実行できることである。ジルコニウム粉末自体を利用しなくてもよいため、火災の危険性を低減することができるという利点がある。
【0024】
本発明の実施形態による方法は、粉末を投射するための噴霧、例えば熱噴霧を含み得る。
【0025】
本発明の特定の好ましい態様は、添付の独立および従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴は、単に特許請求の範囲で明示的に述べられるだけではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0026】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に説明される実施形態(複数可)を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】バッキング基板の上部にターゲット材料を用いた、本発明の実施形態によるスパッタリング用ターゲットの断面を図示する図である。
図2】本発明の実施形態によるターゲットを製造するためのプロセスのスキームである。
図3】本発明の実施形態による2つのターゲットからのターゲット材料から得られたXRDパターンを示す図である。
図4】ジルコニウム酸化物の異なる相に対応する2つのピークを示す、図3のXRDパターンのズームされた部分を示す図である。
図5】熱噴霧された高純度シリコン粉末の比較例のXRDパターンを示す図である。
図6】本発明の実施形態によるターゲットの断面の、スプラットまたはラメラを示す異なる倍率での2つの電子顕微鏡画像を示す図である。
図7】本発明の実施形態によるターゲットの断面の、スプラットまたはラメラを示す異なる倍率での2つの電子顕微鏡画像を示す図である。
図8】本発明の実施形態によるターゲットの抵抗率(図8および図9)ならびに抵抗(図10および図11)を測定するための異なる設定を示す図である。
図9】本発明の実施形態によるターゲットの抵抗率(図8および図9)ならびに抵抗(図10および図11)を測定するための異なる設定を示す図である。
図10】本発明の実施形態によるターゲットの抵抗率(図8および図9)ならびに抵抗(図10および図11)を測定するための異なる設定を示す図である。
図11】本発明の実施形態によるターゲットの抵抗率(図8および図9)ならびに抵抗(図10および図11)を測定するための異なる設定を示す図である。
【0028】
図面は、単に概略的なものであり、非限定的である。図面では、いくつかの要素のサイズは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0029】
請求項におけるあらゆる参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0030】
異なる図面では、同一の参照符号は、同一または類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応していない。
【0032】
説明および特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランク付け、またはあらゆる他の方法で順序を記述するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0033】
さらに、説明および特許請求の範囲における上部、下部などの用語は、説明目的で使用されており、必ずしも相対位置を説明するために使用されているわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で置き換え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の向きで動作することができることを理解されたい。
【0034】
特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを除外するものではないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ、または言及されたような構成要素の存在を指定すると解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップもしくは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではないが、それはまた、構成要素AおよびBのみからなるデバイスを包含することができる。それは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素のみが、AおよびBであることを意味する。
【0035】
本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らないが、そうであってもよい。さらに、この開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態では、特定の特徴、構造、または特性を任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0036】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解において助けとなる目的で、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられることがあることが理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、特許請求された発明が、各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴より少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、これによってこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各特許請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0037】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴は含まず、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0038】
本明細書で提供される説明では、多数の特定の詳細が明記されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、および技術は、詳細には示されていない。
【0039】
本発明の実施形態では、シリコン酸化ジルコニウム(SZO)の組成に言及する場合、Si、Si原子1個当たりx個のZr原子、およびSi原子1個当たりy個のO原子を含む組成に言及し、xおよびyは、0と異なる。
【0040】
シリコンジルコニウム酸化物を含むスパッタターゲットは、特殊な機械的、光学的、および化学的特性を有する酸化または酸窒化シリコンジルコニウムコーティングを有する基板を提供することができる。スパッタリングされたコーティングのいくつかの用途は、光学スタックまたはUVブロッカーの保護オーバーコートとして、光学スタックの機能を改善し得る高屈折率の層として(例えば、反射防止コーティングとして)などであり得る。
【0041】
シリコンジルコニウム酸化物をターゲット材料として使用する場合の問題は、材料が通常、高い電気的抵抗を有し、これがターゲットを電気的に絶縁性にすることである。電気絶縁性ターゲットの欠点は、DCまたは中波ACでスパッタすることが不可能であるが、RFでのスパッタリングが必要とされることである。
【0042】
本発明は、スパッタターゲットおよびその製造に関し、ターゲットは、スパッタリングに使用されるとき、光学層(例えば、所定の制御可能な屈折率を有する層)などの層に、良好な耐薬品性および耐摩耗性を提供し得るSiZrを含む。
【0043】
第1の態様では、本発明は、SiZrを含むか、またはそれから作製されるスパッタターゲットを提供し、式中、Zrの量xは、Si原子1個当たり0.02超であるが5以下のZr原子であり、酸素の量yは、Siの原子1個当たり0.03超であるが2(1+x)以下のO原子である(すなわち0.02<x≦5および0.03<y≦2(1+x))。例えば、組成は、より好ましくは、0.05<x<1および0.1<y<2(0.6+x)、例えば0.1<x<0.5<および0.2<y<2(0.3+x)であり得る。組成は、光学的特性(例えば、非吸収性であり、かつ所望の屈折率を有する)、機械的特性(例えば、低摩擦およびより高い硬度)、ならびに化学的特性(例えば、より高い耐食性を有する)の所望のバランスを成し遂げるために調節され得る。
【0044】
本発明のターゲットは、導電性である。例えば、そのようなターゲットは、1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらには1オームcm未満の抵抗率を有し得る。したがって、これらのターゲットは、標準DC、もしくはパルスDC、または5Hz~500kHz、典型的には100Hz~100kHzの中波ACでスパッタすることが有利であり得る。これは、基板の大きな表面積にわたっても、高速で均一な膜を形成することを可能にする。
【0045】
ターゲット材料は、ラメラ構造を有し得る。それらは、例えば、熱噴霧によって噴霧することによって生産され得る。
【0046】
図1は、ターゲット100またはその一部の断面を示し、バッキング基板105にわたって所定の厚さを有するターゲット材料104を示す。ターゲット材料は、SiZrを含み、式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(1+x)以下であり、抵抗率は、1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらには1オームcm未満である。
【0047】
本発明の実施形態では、図1に示されるように、SiZrターゲット100は、サイズがターゲットの組成に依存するであろう不均質組成のラメラ101、102を含む。これらのラメラは、スプラットを含み得るか、またはそれからなり得、シリコン、例えば、純シリコン、ジルコニウム酸化物(ZrO、zは、0.05超であり、例えば、0.25超であるが2以下である)、またはシリコンジルコニウム酸化物との組み合わせを含み得る。図中の相対サイズは、縮尺通りではなく、ラメラを示すために誇張されることに留意されたい。
【0048】
さらに、ターゲットは、亜酸化Si組成、亜酸化Zr組成、または両方の組み合わせを有するラメラを含み得る。
【0049】
特定の実施形態では、ZrOを含むラメラは、ZrOの亜酸化組成を含む。「亜酸化組成」とは、酸素の量を例えば、ZrO中の化学量論量と比較して減少する酸化組成を意味し、zは、2未満、好ましくは約1.9、最も好ましくは約1.8であり得る。亜酸化組成は、酸素を欠いており、その結果、酸素空孔が生じ、これにより、自由電荷担体および導電性にもつながり得る。したがって、ターゲットは、そのような亜酸化材料の存在のおかげで高いイオン伝導率を提示し得る。
【0050】
コーティングの抵抗率は、抵抗率を合わせたSiを含むターゲット、例えば、高純度Siを有するラメラ、またはBドープシリコンを含むラメラを使用することによって調節され得る。
【0051】
本発明の実施形態によるターゲットはまた、金属粒子、例えばTi、Zr、Nb、W、Cu、Al、Bなどの存在のおかげで高い電気伝導率を提示し得る。
【0052】
加えて、隣接するラメラ(例えば、シリコンラメラ)との抵抗率差を低減することも、アーキング現象を低減または防止する。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、ターゲットは、ターゲットのスパッタリングの均質性を改善する、顕微鏡レベルで良好かつ均質な混合を提示する。
【0054】
本発明の実施形態では、ターゲットはまた、少なくとも1重量%のSiZr混合酸化化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、それは、亜酸化化合物であり得、nおよびmは、亜酸化組成を提供する。
【0055】
本発明の実施形態では、ターゲットは、典型的には、ターゲットを製造する噴霧プロセスにより生じる、ラメラ構造を有する。セラミック、非可塑性粒子の特定の場合、熱噴霧は、ラメラ構造を提供し得る。しかしながら、本発明は、噴霧に限定されず、例えば、レーザークラッディングプロセスなどの他の技術は、ラメラ構造を提供し得る。異なるラメラは、異なる結晶度、異なる密度などを有し得る。ラメラは、ターゲット製造条件(例えば、噴霧された粒子の粉末)に応じて、0.0001mmの平均体積を有する材料の顕微鏡的なスプラットによって形成され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、ラメラは、純Siおよび/またはジルコニウム酸化物、好ましくは亜酸化ジルコニウム酸化物、および/または混合酸化化合物、例えば、SiZr混合酸化化合物の前述のラメラ101、102を含む。
【0057】
噴霧によって生産されるラメラ構造を有するターゲットは、通常、基板の粒子のスパッタリングを改善する粗化された表面および/または細孔を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ターゲットの表面は、アーキングなどのスパッタリング中に、その粗さおよび考えられる後続の問題を低減するために研磨することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、20%未満、好ましくは15%未満、好ましくは10%未満、および最も好ましくは5%未満の多孔率は、堆積中の熱応力を低減する点で有益であり得るSiZrターゲットが得られる。
【0059】
本発明のターゲットは、管状ターゲット(例えば、角柱ターゲット、円筒状ターゲットなど)または平面ターゲットであり得、本発明は、ターゲットの任意の特殊な形状によって制限されない。バッキング基板105は、例えば、ステンレス鋼を含んでもよく、またはそれから作製されてもよく、任意選択で、冷却システムなどのような他の特徴を含み得る。加えて、ターゲット材料の接着を促進するために、結合層またはコート106を含み得る。結合層106は、当業者によって既知の任意の好適な層であり得る。本発明はまた、バッキング基板なしの自立形平面ターゲットを提供し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ターゲットは、XRD分析がその上で実行されるとき、パターンが、特殊なSi関連およびジルコニウム酸化物関連ピークを提示するような構造を提示する。特定のXRDパターンの分析を以下に行う。具体的には、ターゲットは、Siピークならびに/または特に30.05°+/-0.3°および31.2°+/-0.3°の角度2シータ位置で、ジルコニウム酸化物の正方晶および単斜晶ピークに関連するピークを提示し得る。
【0061】
本発明のターゲットは、スパッタリングによって基板上に材料層を得るために使用することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態によるスパッタターゲットは、反応性スパッタリングプロセスで使用することができ、例えば、優先的に酸素、窒素、または両方の混合物であり得る反応性ガスを含有する。基板は、ガラス、プラスチックなどのような任意の好適な基板であり得る。
【0062】
反応性スパッタリングは、亜化学量論的ターゲット材料から開始して、所望の化学量論的組成を制御し、提供することを可能にするため好ましい。加えて、ターゲット長さに沿って反応性ガス流を制御することは、より高い厚さ均一性を有する層を得ることに寄与し得、例えば、基板上の大きな面積にわたって高度に均一な膜を得ることができる。堆積層の厚さの良好な制御も得ることができる。反応性スパッタリングは、例えば、酸素および/または窒素を含む反応性ガス中でスパッタリングプロセスを実行することを含む。ターゲットは、シリコン(例えば、純シリコン)およびジルコニウム酸化物(例えば、亜酸化酸化物)の混合物を有するラメラを含み得る。ターゲットが酸化組成物のみからなる場合、透明膜を得ることは可能であるが、ターゲットは、非導電性であり、堆積は、遅いが、ターゲットが完全に非酸化である場合、反応性ガスは、高濃度の酸素および/または窒素を有し、スパッタリングを制御することが困難である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によるターゲットは、スパッタリング中に存在するターゲット組成および反応性ガスのタイプによって光学的特性が変動し得る透明な層を形成するために使用され得る。例えば、屈折率nは、1.5~2.0で調節され得る。層は、SZO化合物を含み得、相対量のSiおよびZr、ならびにそれらのそれぞれの酸化物は、所定の指標nを得るように調整され得る。SZOセラミックターゲットはまた、窒化物モードでスパッタリングして、ガス混合物中に酸素を含まないシリコンジルコニウム酸窒化物透明膜を成長させて、酸素ガスヒステリシスをもたらさず、かつはるかに優良なプロセス安定性をもたらし得る。ターゲットはまた、例えば、大面積ガラスコーティング、例えば、反射防止コーティング、低放射性もしくは熱反射用途、または他のタイプの光学コーティングのために使用することもできる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によるターゲットは、SiとZrとの混合物のおかげで、より高い耐傷性および耐摩耗性を有する層(例えば、透明層などの光学層)を形成するために使用され得る。層は、異なる程度の結晶性を提示してもよく、例えば、それは、非晶質であってもよく、化学的安定性を改善させてもよい(粒界が存在しないため、腐食性元素の拡散経路が少ない)。
【0065】
多層膜はまた、制御可能な光学的および機械的特性を有する、例えば、環境ガス中の酸素および/または窒素の量を変動させることによって得ることができる。例えば、上部層は、より高い耐食性および耐摩耗性を提示してもよく、非晶質などであってもよい一方、上部層と基板との間の層は、異なる特性を有し得る。
【0066】
これらの特性を有する1つまたは複数の層は、本発明の実施形態による単一のターゲットおよび任意選択で、単一のステップで有利に得られ、スパッタリングされた基板の単純な設定および高速処理を可能にし得る。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、ターゲットの微細構造は、組成物および粒径の均質性が高く、後者は、典型的には、100nm未満である(一方、ラメラは、通常、微小測定範囲内である)。ターゲット層の良好な熱伝導率とともに、ターゲット厚全体にわたって改善された均質性および小さな粒径は、この安定した挙動が、スパッタリングプロセス中にターゲット層の徐々に減少する厚さ全体にわたって維持されることを保証する。例えば、アーキングなどのスパッタ材料の特性の局所的な変化による望ましくない効果も強く低減され、最終生成物のスパッタ堆積層における均質性の改善につながる。より高いターゲット厚さにより、スパッタターゲットを使用することが可能であり、それにより、スパッタリングプロセスにおいて著しく長い時間が提供される。これは、スパッタターゲット当たりのより長い動作時間につながり、これにより、スパッタターゲットを置き換えるためにスパッタリングプロセスを停止する必要なく、より長いスパッタコーティングの実行を可能にする。
【0068】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の実施形態によるスパッタターゲットを製造する方法を提供する。
【0069】
この方法は、バッキング基板にわたって少なくともSZO材料を投射するステップを含む。材料は、好ましくは粉末として提供され、それは、例えば、熱噴霧によって基板上に提供される。粉末は、溶融され、バッキング基板上に投射することができ、投射された材料は、冷却され固化し、それによって、SiZrを含むか、またはそれから作製される導電性スパッタターゲットを得ることができ、Zrの量xは、0.02超であるが5以下であり、酸素の量yは、0.03超であるが2(1+x)以下である。
【0070】
ターゲットは、ソース材料から、例えば粉末形態で生産される。いくつかの実施形態では、ソース材料は、主に、Si、Zr、およびO、例えば、少なくとも80%、90%、95%、99%以上、例えば、以下の形態からなる:
・SiおよびZrO(0.25<z<=2)のいずれか、
・またはZrおよびSiO(0.25<z<=2)、
・またはSiOおよびZrO(0.1<v<=1.9、0.1<w<=2-v)、
・またはSiZr化合物(式中、aおよびbは、最終組成物中でそれぞれxおよびyに等しくなり得るが、それを必要としない)であって、例えば、金属または亜酸化Siおよび/もしくはZrで補充され得る、化合物、
・またはこれらの材料の組み合わせ。
【0071】
図2の図は、本発明の実施形態による方法のステップおよび任意のステップを示す。この方法は、シリコンおよびジルコニウム酸化物もしくは亜酸化物、ならびに/またはジルコニウムおよびシリコン酸化物もしくは亜酸化物粒子、ならびに/またはシリコン亜酸化物およびジルコニウム亜酸化物、ならびに/または粉末状のシリコン-ジルコニウム酸化物を別個の材料または化合物材料として含む粉末を提供するステップ201を含む。これは、例えば、シリコン((亜)酸化物)粒子およびジルコニウム((亜)酸化物)粒子を粉末形態で提供すること211を含み得る。
【0072】
本発明の実施形態の利点は、粉末形態の純ジルコニウムの使用が必ずしも必要ではなく、それによって火災の危険性を低減することであり、これは、本発明は、可燃性が少ないかまたは全く可燃性ではないジルコニウムの酸化物または化合物を使用し得るためである。本発明の実施形態の利点はまた、導電スパッタターゲットを、ガス混合物中の酸素の使用がほとんどまたは全くない、シリコンジルコニウム酸窒化物層を提供するための純窒素または窒素/アルゴン反応雰囲気中でスパッタリングできることである。
【0073】
この方法は、平面基板、管状(例えば、角柱、円筒状)基板などであり得るバッキング基板を提供すること202をさらに含む。例えば、それは、ステンレス鋼バッキング基板、または任意選択で冷却システムを含み得る銅、モリブデン、もしくはチタンバッキング基板であり得る。
【0074】
この方法は、組成SiZrを有する最終ターゲット(式中、xは、0.02超であるが5以下であり、yは、0.03超であるが2(1+x)以下である)が得られるような量で、例えば噴霧213、例えば熱噴霧によって、バッキング基板にわたって粒子を投射すること203をさらに含む。
【0075】
熱噴霧プロセスは、少なくとも部分的に溶融したソース材料(Si、Zrを含む、金属または酸化状態で、場合によってはAl、Cuなどの金属成分も含む)の液滴をスパッタリングバッキング基板上に加速して投射することからなり、それらは、衝撃で平坦化し、固化してコーティングを形成する。供給原料の粉末粒子は、典型的には10~200ミクロンのサイズ範囲であり、自由に流動し、これにより、これらの粉末を、ガス、典型的にはアルゴンによって装置への供給ホースおよびインジェクターを通して運びながら、噴霧装置に一貫して供給することが可能である。本発明の実施形態では、火炎噴霧、プラズマ噴霧、さらに冷却噴霧(粒子が可塑性変形性、例えば、金属粒子である場合)、またはHVOFなどの異なるタイプの熱噴霧が適用され得る。
【0076】
スパッタリングプロセスの環境は、ターゲット生産中に制御することができ、これは、酸化の程度および原料の還元を制御することを可能にする。
【0077】
焼結および結合のプロセスによって作製された従来技術のスパッタブルターゲットとは異なり、本発明の方法は、おそらく結合材料の存在による、バッキング基板への最適な接着が存在するため、高い電力密度および堆積速度でのスパッタリングでターゲットを使用することを可能にする。さらに、噴霧プロセスは、ターゲット材料の厚さおよび組成を良好に制御することを可能にする。
【0078】
したがって、この方法は、第1の態様の実施形態による組成を有するSZO導電性ターゲットを得ること204を可能にする。それは、亜酸化SZO組成を得ること214を含み得る。例えば、これは、ソース材料として亜酸化酸化物粒子を提供することによって行うことができ、または例えば、それは、熱噴霧中に生じ得る。より詳細には、加熱により酸素が失われる場合がある。いくつかの実施形態では、酸素は、回復しない。これは、亜酸化SZO組成をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、熱噴霧は、有利には、酸化材料の粉末を使用することを可能にすると同時に、熱効果(例えば、酸化粉末を加熱すること)によって酸化物中の酸素量を減少させることを可能にし、したがって、最終的なターゲット上で亜酸化化合物を得て214、したがって、その抵抗を低減させる。
【0079】
本発明の実施形態による方法は、バッキング基板105およびスパッタリング用材料の堆積されたトップコート104を含む、図1に示されるようなターゲット100を提供し得る。トップコート104は、1mmの厚さを有し得るが、数ミリメートル、例えば、少なくとも4mm、または4mm~12mm、またはそれ以上が好ましい。例えば、6mmまたは9mmを提供することができる。
【0080】
この方法は、純Siのラメラ、およびZrOのラメラを含むターゲットを、好ましくは亜酸化組成で得ること224を含み得る。ラメラのサイズは、粉末粒子のサイズによって制御され得る。ラメラのサイズは、その濃度に従って材料ごとに増加し得る。組成は、主に供給原料を制御することによって制御され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、粉末を提供するステップは、Ti、Zr、Nb、W、Cu、Al、Bなどのさらなる金属の粒子を提供することを含む。粉末はまた、溶融してスパッタリングすることができ、したがって、低抵抗率で本発明の実施形態によるターゲットを得ることができる。
【0082】
この方法は、例えば、バッキング基板の冷却を提供する(例えば、冷却システムを含むバッキング基板を使用することによって、もしくは外部冷却を提供することによって)、および/またはターゲット材料のバッキング基板への接着性を改善するための中間接合層を提供することによって、他のステップを含み得る。
【0083】
スパッタターゲット基板は、バッキング基板105、および任意選択で、金属、例えばAl、Cu、Ni、もしくは他の金属元素、またはNi-Al合金などのそれらの混合物などの結合コートから構成され得る。いくつかの実施形態では、この方法は、この結合コート106を提供することを含む。
【0084】
例示的なターゲットの分析
図3は、2つの35インチSi:ZrOターゲットの「粉末XRD」によるXRDパターンを示し、zは、およそ1.85であり、これは、0.23に近いxのターゲット組成、およびSiZrについて0.42に近いyの値にほぼ対応する。ターゲットは、単斜晶ZrO粉末を含むSiおよびジルコニウム酸化物粉末の噴霧によって製造した。2つのターゲットの測定結果は両方とも、グラフ化され、位置が実質的に重複する。
【0085】
XRDピークの測定は、Cu K-アルファ放射線下で行われる。SiおよびZrOピークのみが存在することが示されている。単斜晶m-ZrOおよび正方晶t-ZrO相の両方が検出される。これらのピークの一部は、図3のズームされた部分301に対応する、図4に示される。SiOピーク、または他のSi-O相に関連するピークは検出されていない。
【0086】
特に、図4のピークの分析は、供給原料が単斜晶ZrO粉末であるにもかかわらず、正方晶t-ZrO相が存在することを示す。この相は、熱噴霧により形成されることが示唆される。さらに、約30°および約31.2°の位置における、正方晶相と単斜晶相との間の相対強度rは、概してr≧0.1である。この特定の例では、相対強度t-ZrO/m-ZrOは、1に近い。
【0087】
シェラー分析によって得られた粒径は、ZrOについてはおよそ20nm、Siについてはおよそ40nmである。
【0088】
図5は、熱噴霧された純シリコン粉末から得られたXRDパターンを示す。図3における噴霧されたSZOターゲットの場合、同じSiXRDピークが検出され、同じK-αラインピーク分割も観察される。
【0089】
図6および図7は、逆散乱電子(BSE)モードにおける2つの電子顕微鏡(EM)画像を示す。これらは、それぞれ50倍および100倍の倍率での同じターゲットの2つの画像である。これらの画像は、典型的なターゲット微細構造を表し、グレー値は、材料のZ(原子質量)をマッピングする。より重い原子は、より多くの散乱およびより軽い画像を与え、より軽い元素は、より暗い画像を提供する。図6は、コーティングの特徴的なラメラ構造、ならびにSi(ダークグレー)およびZrO材料(白)の均質な分布を示す。特に、図7の画像(200μmの縮尺)は、より高いコントラストを示し、これは、いくつかの多孔質(黒いドット)とともにSiおよびZrOの別々のスプラットを明らかにする。
【0090】
一連のSiZrターゲット試料は、生産方法を変動させ、かつSi含有粒子およびZr含有粒子の相対濃度を変化させることによって生産されている。この一連の試料にわたって、SiZrターゲット組成のバリエーションを得、xは、0.04超かつ0.5未満であるが、y値は、0.1~1で見出される。
【0091】
加えて、図8図11に示される、およそ9mmの材料厚さを有する例示的なターゲットのターゲット材料の抵抗率および抵抗は、異なる方法によって測定されている。ターゲット100は、担体バッキング、例えば、担体バッキングチューブ107上に配置され、異なるプローブがターゲットの表面に適用される。
【0092】
図8に設定が示されている、抵抗率を測定する4点法は、電圧Vを提供する電圧源および電流Iを提供する電流源を含む4点プローブ1001に基づいている。抵抗率は、以下の式から得られる:
【数1】

(式中、パラメータtおよびsは、それぞれ、ターゲットの厚さおよび接触間の空間である。)。これは、以下のように簡略化することができる:
ρ=2πV/I
【0093】
接点間の間隔1.59mmを使用した4点法による最小および最大測定抵抗率は、ρ最小である:2Ω・cm、ρ最大:3Ω・cm
【0094】
図9に設定が図示される抵抗率を測定する3点法は、所定の領域(本例では円形プレート1101が提供する円形領域)を通して電流を送り、ターゲットの電流および電圧を測定することに基づいており、この場合、プレート1101の中心1102を通して測定される。抵抗率は、以下の式から得られる:
V/I=R=ρ・D/S
【0095】
式中、Dは、厚さ(cm)であり、Sは、接触面(cm)である。
【0096】
結果は、ρ最小である:1Ω・cm ρ最大:3Ω・cm。
【0097】
図10に設定が示される2点法は、所定の距離d、この場合は10mmで、2つのプローブ1201、1202(スチールポイントまたはNiメッキ真鍮プローブを有するプローブ)間の抵抗を単純に測定する。これらは、抵抗測定の結果である:
NIメッキ真鍮、最小:100Ω最大:400Ω
スチールポイント最小:200Ω最大:300Ω
【0098】
抵抗率が2Ω・cmと仮定すれば、抵抗の理論シミュレーションは、およそ300Ωである。
【0099】
図11に設定が図示される一点法は、プローブ1301を使用してターゲット表面とバッキングチューブとの間の抵抗を測定することに基づく。これらは、抵抗測定の結果である:
NIメッキ真鍮、最小:60Ω最大:200Ω
スチールポイント最小:80Ω最大:160Ω
2Ω・cmの理論シミュレーション:R~200Ω
【0100】
したがって、本発明によって得られる例示的なターゲットは、10Ω・cm未満(3Ω・cm未満であっても)の抵抗率を有することが示される。したがって、ターゲットは、導電性と見なすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiZrを含むスパッタリング用ターゲット(100)であって、式中、xが、Si原子1個当たり0.02超であるが5以下のZrの原子であり、yが、Si原子1個当たり0.03超であるが2(1+x)以下のOの原子であり、少なくとも50原子%のSiZr を含み、前記ターゲットが、Cu K-アルファ放射線下で測定された、28.29°+/-0.3°でシリコン2シータピーク、または30.05°+/-0.3°で正方晶相ZrO 2シータピークを有するXRDパターンを有する、ターゲット(100)。
【請求項2】
前記SiZrのフラクションが、材料の顕微鏡的なスプラットからなるラメラ構造を有する、請求項に記載のターゲット(100)。
【請求項3】
前記ターゲットが、90%超のSi、Zr、およびO元素を含む、請求項1または2に記載のターゲット(100)。
【請求項4】
1000オームcm未満、好ましくは100オームcm未満、より好ましくは10オームcm未満、さらには1オームcm未満の抵抗率を有する、請求項に記載のターゲット(100)。
【請求項5】
Xが、0.05超であるが1未満であり、好ましくは0.1~0.5であり、yが、0.1超であるが2(0.6+x)未満であり、好ましくは0.2~2(0.3+x)である、請求項1~のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項6】
前記ターゲット(100)が、Siからなるラメラ(101、102)と、ZrOからなるラメラと、を含み、zが、0.05超であるが2以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項7】
前記ターゲット(100)が、混合酸化化合物からなる少なくとも1重量%のラメラを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項8】
前記ターゲット(100)が、金属粒子をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のターゲット。
【国際調査報告】