(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】内部ガス分析用のプローブを備えた直接還元シャフト炉
(51)【国際特許分類】
C21B 13/02 20060101AFI20220111BHJP
F27B 1/28 20060101ALI20220111BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C21B13/02
F27B1/28
F27D21/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525759
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2018058888
(87)【国際公開番号】W WO2020099908
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファラハニ,マヒディ
(72)【発明者】
【氏名】ファーリー,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ツビク,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ルセナ・モゴヨン,ガブリエル・ヘスス
【テーマコード(参考)】
4K012
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC09
4K045AA01
4K045BA02
4K045DA04
4K045NA02
4K056AA11
4K056BA01
4K056CA02
4K056CA07
4K056FA13
4K056FA15
(57)【要約】
直接還元シャフト炉は、その還元ゾーン内に垂直に配置された少なくとも1つのプローブを有する。プローブは、好ましくは、還元ゾーンの上部から底部まで延在している。プローブは、その長さに沿ったガスサンプリングおよび少なくとも1つのタイプのガス分析装置へのガスの伝送を可能にする。プローブはまた、採取されたガスサンプルの温度および圧力の測定を可能にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鉱石を直接還元する装置であって、
垂直シャフト炉であって、金属鉱石還元ゾーンを有するシャフト炉と、
前記垂直シャフト炉の前記還元ゾーン内からガスをサンプリングするための少なくとも1つのプローブと、を備え、
前記少なくとも1つのプローブが、前記還元ゾーン内に垂直に配置され、還元ゾーン全体を通って延在しており、
前記プローブは、複数のサンプリング管を備え、各サンプリング管は、上部および端部を有し、前記サンプリング管は、少なくとも1つの支持管内に配置されている、装置。
【請求項2】
前記支持管は、全ての前記サンプリング管の前記上部の一部を包み込んで支持する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サンプリング管のそれぞれの前記端部が、そこを通るガスサンプルの取り入れを可能にするように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サンプリング管のそれぞれの前記端部が、前記ガスサンプルの温度を測定するためにその中に配置された熱電対をさらに含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプリング管が、それぞれ異なる長さからなり、前記還元ゾーン内の異なる深さからのサンプルの取り入れを可能にするように、異なる距離で前記還元ゾーンを通って下方に延在している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記サンプリング管のそれぞれは、
前記サンプリング管の残りの部分と同じ長さであり、
ガス取入ポートであって、その壁を貫通して前記サンプリング管の残りの部分とはその長さに沿った異なる位置に配置され、そこを通るガスサンプルの取り入れを可能にするように構成されたガス取入ポートを有し、
前記端部を有し、該端部が、ガスがそこを通って入るのを防ぐために閉鎖されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記サンプリング管のそれぞれが、前記ガスサンプルの温度を測定するために前記ガス取入ポートに隣接して配置された熱電対をさらに含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記サンプリング管のうちの第1のサンプリング管が、前記支持管内に同心円状に入れ子にされ、前記第1のサンプリング管は前記支持管よりも長く、前記支持管から突出した端部を有し、
後続の各サンプリング管が、前のサンプリング管内に同心円状に入れ子にされ、前記前のサンプリング管から突出した端部を有するように前記前のサンプリング管よりも長い、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記サンプリング管のそれぞれの前記端部が、そこを通るガスサンプルの取り入れを可能にするように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記サンプリング管のそれぞれの前記端部が、前記ガスサンプルの温度を測定するためにその中に配置された熱電対をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、ガス分析システムをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ガス分析システムが、組成分析の前に前記ガスサンプルを冷却するためのガス冷却システムを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ガス分析システムが、ガス組成分析装置をさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ガス組成分析装置が質量分析計を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ガス分析システムがまた、ガス圧力測定システムも備える、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、直接還元シャフト炉を含む任意の種類のシャフト炉に関する。より具体的には、本発明は、直接還元シャフト炉用の内部センサに関する。特に、本発明は、温度を測定し、その還元ゾーン内の異なるレベルでガスサンプルを収集するための、少なくとも1つのプローブを有する直接還元シャフト炉に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質の金属化ペレットを製造するための直接還元プロセスは、極めて高い熱効率を有する。直接還元鉄(DRI)は、鉄鉱石(塊、ペレット、または微粒子の形態)が還元ガスによって鉄に直接還元されることにより生成される。ヘマタイト/マグネタイト鉱石は、直接還元に適している。
【0003】
還元鉄は、炭化水素に富むガス、一酸化炭素、水素、または元素状炭素の存在下で高温の炉内で加熱されたときに鉄鉱石が受ける化学変化から、その名称が由来する。直接還元とは、鉄の融点未満の温度で酸化鉄を金属鉄に還元するプロセスを指す。そのような固体プロセスの生成物は、直接還元鉄と呼ばれる。
【0004】
このプロセスは、垂直シャフト型炉1を使用し、その描写は
図1に示されている。シャフト炉1は、炉の上部領域に還元ゾーン2を有し、炉の下部領域に冷却ゾーン3を有する。任意の外部源からの高温還元ガスは、ガス入口4を通って還元ゾーン2に導入される。全体的なプロセスの説明のために、本明細書で利用される還元ガスは、主に、天然ガス、石油蒸留物、メタン、エタン、プロパン、ブタン、もしくは他の容易に気化可能な炭化水素などの炭化水素、または石炭ガス化装置などの任意の供給源からの合成ガスの連続接触改質によって一般に生成されるCOおよびH
2からなる。還元プロセスの目的は、鉱石を溶融することなく金属鉄に変換するために、様々な形態の鉄鉱石(サイズ決めされた鉱石、精鉱、ペレット、ミルスケール、炉粉など)に含まれる酸素を除去することである。還元プロセス温度は、通常、800~1200℃である。
【0005】
少なくとも85%還元され、好ましくは少なくとも90%還元された金属化製品が製造される。金属酸化物材料または負荷物の重力流は、粒状金属酸化物材料を炉の上部に装入し、炉の底部から金属化生成物を取り出すことによって確立される。還元剤成分としてCOおよびH2を有する高温還元ガスは、炉の端部の中間の燃焼管および管状入口システムを通って材料の流れに導入される。ガスは材料を通って上方に向流し、金属酸化物のかなりの部分を還元し、上部ガスを形成する。上部ガスは、ガス出口5を通って炉の上部から除去される。
【0006】
直接還元(DR)シャフト炉中の下降する原材料は、炉の各レベルで異なるガス組成および温度に直面する。DR炉内の全体的な反応は、以下の通りである:
全体的な反応
Fe2O3+3H2⇒2Fe+3H2O
Fe2O3+3CO⇒2Fe+3CO2
しかしながら、最終的な全体的な反応を得るための多数の中間反応が存在する。これらの中間反応は、以下を含む:
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現時点では、任意の所与の時点で還元ゾーン内の任意のレベルでどの反応が起こっているかを判定する方法はない。したがって、シャフト炉内のガス分析のin-situ測定は現在存在しないため、当業者は、その入力および出力(気体および固体)に基づいてDR還元ゾーンのみをモデル化することができる。炉内のガス組成、温度、および圧力を測定することは、様々なレベルでの還元電位、還元速度、シャフト炉に沿った化学反応の発生、圧力降下、炭化現象、in-situ改質、ならびに温度プロファイルなどの有用な情報を提供することができる。したがって、当該技術分野では、その還元ゾーンに熱ガスプローブを含む直接還元シャフト炉が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化鉱石の直接還元のための装置である。装置は、酸化鉱石還元ゾーンを有する垂直シャフト炉と、垂直シャフト炉の還元ゾーン内からガスをサンプリングするための少なくとも1つのプローブとを含む。プローブは、前記還元ゾーン内に垂直に配置され、還元ゾーン全体を通って延在することができる。プローブは、複数のサンプリング管を含むことができる。各サンプリング管は、上部および端部を有することができる。サンプリング管は、少なくとも1つの支持管内に配置されることができる。支持管は、全てのサンプリング管の上部の一部を包み込んで支持することができる。
【0010】
サンプリング管の端部は、ガスサンプルを取り入れ可能に構成されることができる。サンプリング管のそれぞれの端部は、ガスサンプルの温度を測定するためにその中に配置された熱電対を含むことができる。各サンプリング管は異なる長さを有し、還元ゾーン内の異なる深さからのサンプルの取り入れを可能にするように、異なる距離で還元ゾーンを通って下方に延在している。
【0011】
各サンプリング管は、他のサンプリング管と同じ長さであってもよい。各サンプリング管は、その壁を貫通して配置されたガス取入ポートを有することができる。各ガス取入ポートは、サンプリング管の長さに沿って、残りのサンプリング管のポートとは異なる位置に配置される。各ガス取入ポートは、そこを通るガスサンプルの取り入れを可能にするように構成されることができる。各サンプリング管の端部は、ガスがそこを通って入るのを防ぐために閉鎖されることができる。各サンプリング管は、ガスサンプルの温度を測定するためにガス取入ポートに隣接して配置された熱電対をさらに含むことができる。
【0012】
第1のサンプリング管は、支持管内に同心円状に入れ子にされることができる。第1のサンプリング管は、支持管よりも長く、支持管から突出した端部を有することができる。後続の各サンプリング管は、前のサンプリング管内に同心円状に入れ子にされることができ、前のサンプリング管から突出する端部を有するように前のサンプリング管よりも長くすることができる。サンプリング管の端部は、ガスサンプルを取り入れることができるように構成されることができる。各サンプリング管の端部は、ガスサンプルの温度を測定するために、その中に配置された熱電対をさらに含むことができる。
【0013】
酸化鉱石の直接還元のための装置は、組成分析および圧力測定の前にガスサンプルを冷却するガス冷却システムを含むことができるガス分析システムおよび圧力測定システムをさらに含むことができる。ガス分析システムは、質量分析計またはレーザー/赤外線分析計とすることができるガス分析装置をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本ガス分析プローブが設置されることができる垂直シャフト型炉の概略図である。
【
図2A】本発明において使用されるプローブ6の第1の実施形態の直径にわたる断面図である。
【
図2B】プローブ6の第1の実施形態の側面図である。
【
図2C】プローブ6の第1の実施形態の3D斜視図である。
【
図3】プローブ6の第2の実施形態の側面図である。
【
図4】本発明において使用するためのプローブ6の別の実施形態の側面図を示している。
【
図5】本発明において使用するためのプローブ6の伸縮式実施形態の3D斜視図である。
【
図6】還元ゾーン内に垂直に配置されたプローブ6と組み合わせたDRシャフト炉1の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、その還元ゾーン内に垂直に配置された少なくとも1つのプローブを有するDRシャフト炉に関する。プローブは、好ましくは、還元ゾーンの上部から底部まで延在している。プローブは、その長さに沿ったガスサンプリング、ならびに少なくとも1つのタイプのガス分析装置および圧力測定機器へのガスの伝送を可能にする。プローブはまた、採取されたガスサンプルの温度の測定を可能にすることができる。したがって、DR炉とプローブとの本発明の組み合わせは、炉内の異なるレベルでのガスサンプルおよび温度の取り入れを可能にする。プローブは、DRシャフト炉の直径に沿った1つ以上の位置に垂直に設置されることができる。
【0016】
本発明において使用されるプローブ6の第1の実施形態の異なる描写が、
図2A~
図2Cに示されている。本実施形態では、異なる長さを有するガスサンプリング管8と、支持管7とが分離されている。本実施形態では、全てのガスサンプリング管8は、支持管7よりも長い。ガスサンプルは、その開放端を通ってサンプリング管に引き込まれる。熱電対(図示せず)が、各サンプリング管8の開放端に配置されることができる。これは、DR炉の還元ゾーンの温度プロファイル測定を可能にし、分析のために採取されるガスの温度を示す。この実施形態では、全てのサンプリング管8は、還元ゾーン全体に沿ってガスサンプルを採取するために、全て異なる長さからなる。
図2Aは、プローブ6の第1の実施形態の直径にわたる断面図である。
図2Bは、プローブ6の第1の実施形態の側面図である。最後に、
図2Cは、プローブ6の第1の実施形態の3D斜視図である。
【0017】
別の実施形態では、複数の支持管7が存在してもよい。
図3は、プローブ6の、この第2の実施形態の側面図である。2本以上の支持管7がサンプリング管8を保持することができる。支持管7’と7’’との間に隙間があってもよく、サンプリング管8は、この隙間で終端して、還元ゾーンのこのレベルでサンプルを採取することができる。ここでも、熱電対(図示せず)が各サンプリング管8の開放端に配置されることができる。
【0018】
図4は、本発明において使用するためのプローブ6の、さらに別の実施形態を示している。この実施形態では、単一の支持管7があり、全てのサンプリング管8は、ほぼ同じ長さである。各サンプリング管8は、ガスサンプルが還元ゾーン全体に沿って採取されることを可能にするように、その上の異なる位置にサンプリングポート9を有する。上述したように、サンプリングポート9に隣接する各サンプリング管8には、熱電対(図示せず)が設置されることができる。
【0019】
図5は、本発明において使用するためのプローブ6の伸縮性実施形態を示している。この実施形態では、サンプリング管8は、支持管7内に伸縮式に入れ子にされている。したがって、第1のサンプリング管8は、支持管7内に同心円状に入れ子にされている。第1のサンプリング管8は、支持管7よりも長く、そこから突出している。次に、別のサンプリング管8が第1のサンプリング管内に同心円状に入れ子にされている。この同心入れ子は、還元ゾーン全体をサンプリングするために必要なまたは所望される数のガスサンプリング管8を提供するために、追加のサンプリング管8によって続けられる。追加の各サンプリング管8は、入れ子にされている前のサンプリングポートよりも長く、そこから突出している。他の実施形態として、各サンプリング管8の(ガスサンプリング)終端部に熱電対(図示せず)が設置されてもよい。
【0020】
支持管7およびサンプリングポート8は、DR炉の高温条件および腐食雰囲気に適するように選択された材料から形成される。
【0021】
一般に、プローブ6は、DR炉還元ゾーン内の異なるレベルでガスサンプルを採取すると共に、(必要に応じて)温度を測定するように設計される。ガスサンプルは、ガス分析および圧力測定に使用される。プローブ6は、DRシャフト炉還元ゾーンの直径に沿って最大5つの異なる位置に垂直に設置されることができる。
【0022】
図6は、温度測定システムおよび、それに取り付けられたガス分析システムの概略図と共にシャフト炉プローブ6の概略図を示している。ガス分析システムは、ガス伝送路14と、ガスサンプルを冷却するガス冷却装置10とを含む。次いで、ガスサンプルは、ガス組成分析システム11、およびガス圧力測定システム12の双方に導かれる。温度測定システム13は、熱電対/伝送線路15を含む。
【0023】
サンプル分析システム11は、質量分析計またはレーザー/赤外線分析計を含むことができる。
【0024】
プローブ6は、炉屋根に固定されてもよい。固定は、例えば、プローブ6の上部に溶接フランジを使用することによって達成されることができる。管(支持体7およびサンプリング8)は、より高い機械的強度および曲げおよび破壊に対する耐性を与えるために、それらの長さに沿って互いに溶接されてもよい。
【国際調査報告】