(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ポリカーボネートアロイ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220111BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220111BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20220111BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L23/08
C08J3/20 CES
C08J3/20 CET
B29B9/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525821
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2019114377
(87)【国際公開番号】W WO2020098497
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811348965.4
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】楊 燕
(72)【発明者】
【氏名】李 明昆
(72)【発明者】
【氏名】黄 険波
(72)【発明者】
【氏名】葉 南▲ビャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼ 偉
(72)【発明者】
【氏名】董 相茂
(72)【発明者】
【氏名】艾 軍偉
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA13
4F070AA18
4F070AA50
4F070AB01
4F070AB03
4F070AB08
4F070AB09
4F070AB11
4F070AC75
4F070AC76
4F070AE00
4F070AE03
4F070AE30
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC06
4F070FC07
4F201AA10
4F201AA19
4F201AA28
4F201AB07
4F201AR06
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BK01
4F201BK02
4F201BK15
4F201BK26
4F201BL08
4F201BL43
4J002BB042
4J002BB062
4J002BB072
4J002BB082
4J002BP012
4J002BP022
4J002CG001
4J002CG011
4J002FD046
4J002FD056
4J002FD076
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネート80重量部と、エチレン共重合体5~30重量部とを成分として含むポリカーボネートアロイを開示する。本発明は、ポリカーボネートの成形加工性が低く、その製品が応力割れしやすいなどの欠点を改善し、本発明のポリカーボネートアロイは、優れた加工性、耐応力割れ性の利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート80重量部と、エチレン共重合体5~30重量部とを成分として含む、ことを特徴とするポリカーボネートアロイ。
【請求項2】
ポリカーボネート80重量部と、エチレン共重合体12~23重量部とを成分として含む、ことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項3】
前記エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体から選択される少なくとも1種であり、前記アクリル酸のエチレン共重合体は、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項4】
前記エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体から選択される、ことを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項5】
前記エチレン共重合体は、反応活性基を含有するエチレン共重合体から選択され、エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体から選択される少なくとも1種であり、反応活性基は無水マレイン酸基、エポキシ基のうちの少なくとも1種であり、反応活性基のグラフト率が0.1~15%であり、前記アクリル酸のエチレン共重合体は、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項6】
前記反応活性基を含有するエチレン共重合体におけるエチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項7】
前記ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族・脂肪族ポリカーボネートから選択され、前記ポリカーボネートの重量平均分子量が1.8万~2.8万である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項8】
加工助剤および/または添加剤0~10重量部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートアロイ。
【請求項9】
ポリカーボネート、エチレン共重合体、加工助剤及び/または添加剤を所定の配合比率で高速ミキサーにて均一に混合するステップと、次に、二軸押出機に投入して、220℃~240℃の温度で溶融混合し、その後、造粒、冷却、乾燥をしてポリカーボネートアロイを得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項8に記載のポリカーボネートアロイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子材料の技術分野に関し、特にポリカーボネートアロイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)は性能に優れたエンジニアリングプラスチックであり、優れた力学的性質及び優れた寸法安定性を有し、熱安定性、耐候性、耐クリープ性及び耐熱性が高い。しかし、PC分子鎖が剛直な基を有するため、その溶融粘度が高く、成形加工性が低く、また、PC分子鎖の剛性が高く、分子鎖の可動性が低いため、発生した可逆性の高弾性変形に対する回復性が低く、残留内部応力が生じやすく、その成形製品が応力割れしやすくなってしまう(応力割れは溶媒がアロイの分子の間に浸透し、分子の間の構造を破壊し、分子力に影響を与え、大量の分子を切断し、最終的に材料割れを招き、化学試薬は、直接化学作用または分子分解を引き起こすことなく、実際に、分子構造に浸透して、ポリマー鎖の内部分子力を損害し、それにより、分子切断を加速する)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上の技術的欠陥を克服し、優れた加工性、耐応力割れ性の利点を有するポリカーボネートアロイを提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、上記ポリカーボネートアロイの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される
ポリカーボネート80重量部と、エチレン共重合体5~30重量部とを成分として含む、ポリカーボネートアロイ。
【0006】
好ましくは、
ポリカーボネート80重量部と、エチレン共重合体12~23部重量部とを成分として含む。
【0007】
前記エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体から選択される少なくとも1種であり、前記アクリル酸のエチレン共重合体は、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種である。
【0008】
好ましくは、前記エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体から選択される。
【0009】
他のオプションとしては、前記エチレン共重合体は、反応活性基を含有するエチレン共重合体から選択され、エチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体から選択される少なくとも1種であり、反応活性基は無水マレイン酸基、エポキシ基のうちの少なくとも1種であり、反応活性基のグラフト率が0.1~15%である。
【0010】
好ましくは、前記反応活性基を含有するエチレン共重合体におけるエチレン共重合体はアクリル酸のエチレン共重合体から選択される。
【0011】
前記ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族・脂肪族ポリカーボネートから選択され、好ましくは、前記ポリカーボネートの重量平均分子量が1.8万~2.8万である。
【0012】
加工助剤および/または添加剤0~10重量部をさらに含む。
【0013】
上記ポリカーボネートアロイの製造方法は、ポリカーボネート、エチレン共重合体、加工助剤及び/または添加剤を所定の配合比率で高速ミキサーにて均一に混合するステップと、次に、二軸押出機に投入して、220℃~240℃の温度で溶融混合し、その後、造粒、冷却、乾燥をしてポリカーボネートアロイを得るステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
本発明は、ポリカーボネートに所定量のエチレン共重合体を加えることで、ポリカーボネートの加工性(加工成形サイクル及び加工成形性(R角)の共同評価)、応力割れ性能を改善し、さらに、本発明は、好ましくはアクリル酸のエチレン共重合体を選択し、ポリカーボネートアロイの加工性をさらに向上させる。よって、本発明のポリカーボネートアロイは、優れたな加工性及び耐応力割れ性の利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、特定の実施形態にて、本発明についてさらに説明する。以下の実施例は本発明の好適な実施形態であるが、本発明の実施形態は以下の実施例で制限されない。
【0016】
実施例、比較例の原材料は市販されるものであり、具体的には以下のとおりである。
EMA:エチレン・メタクリル酸共重合体;
EEA:エチレン・アクリル酸エチル共重合体;
EMA-g-GMA:エチレン・メタクリル酸・グラフト・エポキシ基(GMAはエポキシ基である);
EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合体;
SEBS:スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体;
PP-g-GMA ポリプロピレン・グラフト・エポキシ基;
ポリカーボネートA:重量平均分子量が2.8万の芳香族ポリカーボネート;
ポリカーボネートB:重量平均分子量が1.8万の脂肪族ポリカーボネート;
ポリカーボネートC:重量平均分子量が8千の芳香族ポリカーボネート;
ポリカーボネートD:重量平均分子量が3万の芳香族ポリカーボネート;
抗エージング剤:酸化防止剤:紫外線エージング防止剤=1:1。
【0017】
実施例及び比較例でのポリカーボネートアロイの製造方法は、ポリカーボネート、エチレン共重合体を所定の配合比率で高速ミキサーにて均一に混合し、次に、二軸押出機に投入して、220℃~240℃の温度で溶融混合し、その後、造粒、冷却、乾燥をしてポリカーボネートアロイを得ることである。
【0018】
各テスト方法:
(1)内部応力テストは、サンプルを95%の氷酢酸に3分間浸し、膨潤せず、割れないと、耐応力割れ性が高いことが示される。
【0019】
(2)加工成形サイクル:
T=(0.013x+3.6)+(0.0085*m+0.5)+(0.6D2+0.3D)+D2/(α×π2)ln[8/π2×(tc-tm)/(tx-tm)]
x:機台の型締力(トン)
m:製品の総重量(グラム)
D:製品の最大肉厚(mm)
α:接着剤の熱拡散係数mm2sec-1
tc:溶融温度(℃)
tm:金型温度(℃)
tx:熱変形温度(℃)
【0020】
(3)加工成形性(R角):射出成形加工製品に対して、成形後の製品の縁のR角を測定し、成形後に製品縁のR角が設計されるR角に近いほど、加工成形性が高くなり、製品のR角が10mmに設計されると、規格が10≦R角≦13mmの範囲を満たすと、加工成形性が高いと考え、R角>13mmであると、加工成形性が低いと考える。
【0021】
【0022】
実施例1~5から分かるように、エチレン共重合体の使用量及び加工性の向上に伴い、一般的に、エチレン共重合体の使用量が12~23部であると、統合性能が高く、産業応用価値が高い。
【0023】
実施例3/6~8から分かるように、アクリル酸のエチレン共重合体を加えるポリカーボネートアロイの加工性が高い。
【0024】
実施例3/9~11から分かるように、ポリカーボネートの重量平均分子量が1.8~2.8万の範囲内であり、製品性能が高い。
【0025】
比較例1から分かるように、エチレン共重合体を加えないと、その加工性が低く、耐応力割れ性が低い。
【0026】
比較例2から分かるように、従来の相溶化剤PP-g-GMAを加えると、加工性がわずかに向上し、耐応力割れ性がわずかに向上し、さらに、プレス後にR角が比較例1より大きい。
【国際調査報告】