(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電力変換器の制御方法、関連するシステムおよび装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220111BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526265
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080981
(87)【国際公開番号】W WO2020099377
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513132966
【氏名又は名称】ジーイー エナジー パワー コンバージョン テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GE Energy Power Conversion Technology Ltd.
【住所又は居所原語表記】Boughton Road,Rugby,Warwickshire CV21 1BU,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】エル・ジハッド,ハムザ
(72)【発明者】
【氏名】サヴァリット,エリーゼ
(72)【発明者】
【氏名】シアラ,サミ
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770EA01
5H770EA25
(57)【要約】
パルス幅変調タイプのアルゴリズムによって駆動される多相電力変換器の制御方法であって、チャートの非線形ゾーンに位置する少なくとも1つの相の駆動設定値または駆動設定値に関連付けられたパルス持続時間を含む制御パラメータが、それがチャートの線形ゾーンにあるように先のパラメータの値を変更することによって変更される(42,45,46)。各相の制御パラメータは同様に変更される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調タイプのアルゴリズムによって駆動される多相電力変換器(2)の制御方法であって、チャート(ABQ、ABQ1)の非線形ゾーンにある少なくとも1つの相(7,8,9)の駆動設定値または駆動設定値に関連付けられたパルス持続時間を含む制御パラメータが、それが前記チャートの線形ゾーンにあるように前記パラメータの値を変更することによって変更され、各前記相(7,8,9)の前記制御パラメータが同様に変更され、前記方法が
a)前記チャート(ABQ、ABQ1)により前記制御パラメータに関連付けられた少なくとも1つの補正値が決定される第1のステップ(40)と、
b)各前記補正値と前記制御パラメータとの間の差のセットが決定される第2のステップ(41)と、
c)その最小の差に関連付けられた前記補正値が選択され、前記補正値が非線形ゾーンに位置する前記制御パラメータより小さい場合前記補正値に関連付けられた前記差を前記制御パラメータから減算することにより、または前記補正値が非線形ゾーンに位置する前記制御パラメータよりも大きい場合前記補正値に関連付けられた前記差を前記制御パラメータに加算することにより駆動値が各相(7,8,9)について決定され、各制御パラメータが前記チャート(ABQ、ABQ1)の非線形ゾーンに位置するかどうかを判定することを含む第3のステップ(42)と
を含むこと特徴とする。
【請求項2】
すべての前記相(7,8,9)の前記駆動値が前記チャート(ABQ、ABQ1)の線形ゾーンに位置する場合、ステップ(43)中に前記駆動値を含む新規制御パラメータが、前記多相変換器(2)を制御することができる駆動装置に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの相(7,8,9)の前記駆動値が前記チャート(ABQ、ABQ1)の非線形ゾーンに位置する場合で、さらに複数の値がすべての前記差の中に存在する場合、ステップ(44)中に、以前に選択された前記差が削除され、前記ステップc)が繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つの相(7,8,9)の前記駆動値が前記チャート(ABQ、ABQ1)の非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての前記差が空の場合、ステップ(45)中に、前記制御パラメータが選択され、前記最小の差に関連付けられた前記補正値が前記相(7,8,9)の前記制御パラメータよりも小さい場合、前記相(7,8,9)の前記制御パラメータから前記最小の差を減算することにより、または前記最小の差に関連付けられた前記補正値が前記相(7,8,9)の前記制御パラメータよりも大きい場合、前記相(7,8,9)の前記制御パラメータに前記最小の差を加算することにより非線形ゾーン内の前記相(7,8,9)の前記駆動値が計算され、前記駆動値および他の相(7,8,9)の各制御パラメータを含む前記新規制御パラメータが、前記多相変換器(2)を制御することができる駆動装置に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの相(7,8,9)のうちの1つの制御パラメータが前記チャート(ABQ、ABQ1)の非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての前記差が空の場合、補正値の異なる組み合わせが決定され、それぞれが駆動ベクトルを形成し、各駆動ベクトルが二次元駆動ベクトルに変換され、各前記相(7,8,9)の前記制御パラメータを含む制御パラメータベクトルが二次元基準ベクトルに変換され、各二次元駆動ベクトルの2次誤差が前記二次元基準ベクトルに対して決定され、最小誤差に関連付けられた前記二次元駆動ベクトルが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記最小誤差に関連付けられた前記二次元駆動ベクトルが制御パラメータベクトルに変換され、制御パラメータの組み合わせが前記3相変換器(2)を制御することができる駆動装置に送信されるステップ(47)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
多相電力変換器(2)の制御を最適化するシステム(11)であって、前記多相電力変換器(2)が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するように、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の制御の方法の実施のための手段を備えることを特徴とする、多相電力変換器(2)の制御を最適化するシステム(11)。
【請求項8】
請求項7に記載の方法の前記実施のための多相電力変換器(2)の電圧制御システム(1)であって、駆動設定値を相(7,8,9)毎に生成することができる調整装置(10)と、前記調整装置(10)によって送信される駆動設定値を受信し、前記変換器(2)を制御することができる制御最適化システム(11)とを備え、前記多相電力変換器(2)が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するように、前記最適化システム(11)が前記駆動設定値から生成された駆動値を送信することを特徴とする、多相電力変換器(2)の電圧制御システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器の電圧制御に関し、より詳細には、多相電力変換器の制御を最適化するための方法、その方法を実施するための装置、およびその装置を含む電圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器は、パワー半導体構成部品、通常電界効果トランジスタを備える。
【0003】
半導体に固有の物理的特性により、パワー半導体は、その破壊を防止するためにオンまたはオフ状態に保持しなければならない伝導または遮断の最小持続時間が課せられる。
【0004】
例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の場合、伝導または遮断の最小持続時間は5から30μsまで変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/179608号明細書
【発明の概要】
【0006】
電圧で電力変換器を制御するための現行のアルゴリズム、具体的にはパルス幅変調(PWM)タイプの制御アルゴリズムは、例えば、関連するパルスの幅を変更するようにして半導体の切り替え持続時間が最小持続時間未満の相の制御値を変更することによって、切り替え持続時間を最小持続時間未満にならないようにする。
【0007】
半導体の伝導の持続時間を取り消しまたは増加させるように、既定の値から計算された値を、相の駆動設定値または駆動設定値に関連付けられたパルスの持続時間に加算するまたはそれから減算する。
【0008】
実際、半導体構成部品は、その最小伝導持続時間よりも短い持続時間で伝導するのではなく遮断されることが好ましい。
【0009】
半導体技術に応じたチャートを使用して、駆動値または関連付けられたパルスの持続時間に従った既定の値を決定することができる。
【0010】
しかし、制御アルゴリズムを介さずに、相の電圧駆動設定値から既定の値を加算または減算すると、通常基準電圧に対して電力変換器の出力電圧に歪みが起きる。
【0011】
図1および
図2を参照すると、相の制御基準信号の値を補正するためのチャートABQの一例、および変調率に応じた変換器の出力での相の電圧の基本波の振幅の一例がそれぞれ示されている。
【0012】
【0013】
相の制御値は、正規化曲線C1に従って初期駆動設定値により決定される。
【0014】
曲線C1は、制御信号の0値に対して対称である。基準信号の正の値に注目する。
【0015】
駆動設定値が区間[0、V2](ゾーンZ1)または[V3、1](ゾーンZ2)内にある場合、制御値は、もはや初期駆動設定値に比例しない。
【0016】
非線形ゾーンZ1およびZ2のため、これら2つの制御値区間で電力変換器の動作は最適ではなくなる。
【0017】
駆動設定値がこれらの区間の外側に位置する場合、制御値は基準信号に比例する。この制御は線形である。
【0018】
対称性により、区間[V6、0]および[-1,V7]によって定められるゾーンZ3およびZ4は、非線形ゾーンである。
【0019】
ゾーンZ1、Z2、Z3およびZ4はそれぞれ、曲線C1が段を有する場合、中間点V1、V4、V5およびV8を含む。
【0020】
値V1、V2、V3およびV4は正であり、値V5、V6、V7およびV8は負である。
【0021】
例えば、V2は-V6に等しく、V3は-V7に等しく、V1はV2/2に等しく、V4は1-V2/2に等しく、V5はV6/2に等しく、V8は-1+V6/2に等しい。
【0022】
もちろん、特定の用途、具体的にはマルチレベルの用途では、チャートABQは、曲線C1上に分布する3つを越える非線形ゾーンを含むことができる。
【0023】
上記非線形ゾーンにおける曲線C1の形状および勾配は、ゾーン毎に異なってもよい。
【0024】
図2では、直線D1は、基本波の振幅が変調率に比例する場合である、駆動設定値がゾーンZ1、Z2、Z3およびZ4のいずれの中にも含まれない場合に、電力変換器の動作が最適であることを表す。
【0025】
しかし、非線形ゾーンZ1、Z2、Z3およびZ4は、基本波の振幅がもはや変調率の設定値に比例しない所にある。
【0026】
これらの非線形ゾーンの1つでの変換器の動作により、変換器の性能の低下がもたらされる。
【0027】
非線形ゾーンZ1、Z2、Z3およびZ4において、相の出力電圧が変更されるため、変換器によって発生する電源電圧に歪みが現れる。
【0028】
相間の電圧値が一定でなくなる。その結果、変換器の出力電圧システムは、もはやバランスがとれず、高調波が現れる。
【0029】
図3は、駆動設定値に関連付けられたパルスの持続時間に応じた相の制御チャートABQ1の一例を示す。
【0030】
相の制御パルスの持続時間は、正規化曲線C2に従った初期駆動設定値パルスの持続時間によって決定される。
【0031】
駆動設定値パルスの持続時間が区間[0,V12](ゾーンZ5)内にある場合、制御パルスの持続時間は、もはや初期駆動設定値パルスの持続時間に比例しない。
【0032】
前述したように、変換器によって発生する電源電圧には歪みが現れる。
【0033】
したがって、特に電力変換器の非線形で動作するゾーンを削減することにより、また変換器の出力において電圧システムが実質的にバランスがとれるように変換器の出力電圧のパルスの幅を調整することにより、従来技術による電圧制御の電力変換器の制御に関連した欠点を克服することを提案する。
【0034】
上記の観点から、第1の態様に従って、パルス幅変調タイプのアルゴリズムによって駆動される多相電力変換器の制御方法を提案するが、ここでチャートの非線形ゾーンに位置する少なくとも1つの相の駆動設定値または駆動設定値に関連付けられたパルス持続時間を含む制御パラメータを、それがチャートの線形ゾーンにあるように上記パラメータの値を変更することによって変更する。
【0035】
各相の制御パラメータは同様に変更される。
【0036】
本方法は、
a)チャートによって制御パラメータに関連付けられた少なくとも1つの補正値が決定される第1のステップと、
b)補正値の各々と制御パラメータとの間の差のセットが決定される第2のステップと、
c)最小の差に関連付けられた補正値が選択され、補正値が非線形ゾーンに位置する制御パラメータよりも小さい場合には、先の補正値に関連付けられた差を制御パラメータから減算することにより、または補正値が非線形ゾーンに位置する制御パラメータよりも大きい場合には、先の補正値に関連付けられた差を制御パラメータに加算することにより、駆動値が各相について決定され、各制御パラメータがチャートの非線形ゾーンに位置するかどうかが判定される、第3のステップ(42)と
を含む。
【0037】
すべての相の駆動値がチャートの線形ゾーンに位置する場合、ステップ中に、先の駆動値を含む新規制御パラメータが、多相変換器を制御することができる駆動装置に送信される。
【0038】
少なくとも1つの相の駆動値がチャートの非線形ゾーンに位置する場合で、さらに複数の値がすべての差の中に存在する場合、ステップ中に、以前に選択された差が削除され、先の第3のステップが繰り返される。
【0039】
相の駆動値がチャートの非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての差が空の場合、ステップ中に、制御パラメータが選択され、非線形ゾーン内の相の駆動値は、最小の差に関連付けられた補正値が相の制御パラメータよりも小さい場合、相の制御パラメータから最小の差を減算することにより、または最小の差に関連付けられた補正値が相の制御パラメータよりも大きい場合、相の制御パラメータに最小の差を加算することによって計算され、先の駆動値および他の相の各制御パラメータを含む新規制御パラメータは、多相変換器を制御することができる駆動装置に送信される。
【0040】
少なくとも2つの相のうちの1つの制御パラメータがチャートの非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての差が空の場合、補正値の異なる組み合わせが決定され、それぞれが駆動ベクトルを形成し、各駆動ベクトルが二次元駆動ベクトルに変換され、各相の制御パラメータを含む制御パラメータベクトルが二次元基準ベクトルに変換され、各二次元駆動ベクトルの2次誤差が二次元基準ベクトルに対して決定され、最小誤差に関連付けられた二次元駆動ベクトルが決定される。
【0041】
有利なことには、方法は、最小誤差に関連付けられた二次元駆動ベクトルが制御パラメータベクトルに変換され、制御パラメータの組み合わせが3相変換器を制御することができる駆動装置に送信されるステップを含む。
【0042】
別の態様によれば、多相電力変換器の制御を最適化するためのシステムが提案される。
【0043】
このシステムは、多相電力変換器が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するように、上記で定義したような制御方法を実施するための手段を備える。
【0044】
さらに別の態様によれば、上記で定義したような方法を実施するための多相電力変換器の電圧制御システムが提案される。
【0045】
このシステムは、駆動設定値を相毎に生成することができる調整装置と、この調整装置によって送信される駆動設定値を受信し、変換器を制御することができる制御最適化システムとを備え、この最適化システムは、多相電力変換器が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するように駆動設定値から生成された駆動値を送信する。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は、単に非限定的な例として与えられた本発明の実施形態の以下の説明を読み、次の図面を参照すると明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】既述で、相の制御基準信号の値の補正チャートの一例を示す図である。
【
図2】既述で、変調率に応じた変換器の出力での相の電圧の基本波の振幅の一例を示す図である。
【
図3】既述で、相の制御基準信号に関連付けられたパルスの持続時間の補正チャートの一例を示す図である。
【
図4】多相電力変換器の電圧制御システムの一実施形態を示す図である。
【
図5】最適化装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図6】最適化装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図7】多相電力変換器の電圧制御アルゴリズムの例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】本発明によって提案されるアルゴリズムによる変調率に応じた変換器の出力での相の電圧の基本波の振幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図4を参照すると、電圧制御システム1とその制御システムにより電圧制御され負荷3に電力を供給する多相電力変換器とを備えた、ここでは電動機で形成された負荷の電力供給の一実施形態が示されている。
【0049】
電力変換器2は、例えば3相変換器である。
【0050】
電力変換器2は、3相電力供給ネットワークRに接続された電源回路を備える。
【0051】
変換器2は、有利なことに、半導体スイッチング構成部品、例えばIGBTトランジスタを備える。
【0052】
変換器2は、半導体構成部品のスイッチングの制御を提供する3つの制御入力4、5および6を備える。これらの入力は、制御システム1に接続され、電動機3に接続された変換器2のそれぞれの出力7、8、および9を駆動し、各出力は、変換器の出力電圧システムの相に対応する。
【0053】
制御システム1は、最適化システム11に接続された調整装置10を備える。
【0054】
調整装置10は、最適化システム11のそれぞれの入力15、16および17に接続された3つの出力12、13および14を備える。
【0055】
最適化システム11の出力18、19、および20は、変換器2の制御入力4、5、および6にそれぞれ接続されている。
【0056】
調整装置10は、第1の入力21で受信した設定値および第2の入力22で受信した測定値から、変換器2の相7、8、および9の各々の駆動設定値を作成する。この調整装置は、設定点、例えばトルクとしての設定点から電動機3を駆動することができる調整ループを備える。
【0057】
この装置の入力として受信される測定値は、電動機3に装備された測定手段23からもたらされる。
【0058】
図5は、最適化システム11の第1の実施形態を示す。
【0059】
最適化システム11は、変換器の駆動装置24、および最適化装置34を備える。
【0060】
駆動装置24は、最適化システム11の出力18、19、および20にそれぞれ接続された3つの出力25、26、および27、ならびに最適化装置34の出力31、32、および33にそれぞれ接続された3つの入力28、29、および30を備える。
【0061】
最適化装置34は、最適化システム11の入力15、16、および17にそれぞれ接続された3つの入力35、36、および37を備える。
【0062】
駆動装置24は、最適化装置34がパルス幅変調(PWM)方式で決定した駆動値から、各相7,8,9の制御値を生成する。したがって、駆動装置24の入力28、29、および30で受信される信号は、変換器2の制御変調信号である。
【0063】
最適化装置34は、最適化アルゴリズムALGを実装し、その機能は、電力変換器2の電圧制御を最適化することだが、それは変換器2が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するような駆動値を最適化装置の出力31、32、および33の各々が送信するからである。
【0064】
「実質的にバランスがとれた」とは、3相電圧システムの相間の3つの電圧の値が公差の程度に等しく、それらの間で2π/3だけ位相がずれていることを意味する。
【0065】
これを行うために、アルゴリズムALGは、チャートABQの非線形ゾーンに位置する少なくとも1つの相の駆動設定値を含む制御パラメータを、それがチャートABQの線形ゾーンに位置するように先のパラメータの値を変更することによって変更し、同様にして各相の駆動設定値を変更する。
【0066】
最適化装置34は、例えば、マイクロプロセッサを備える処理ユニットから実行される。しかし、それはアルゴリズムALGを実装することができる任意の装置でもよい。
【0067】
以下では、上記で説明したものと同一の要素は、同じ数字の参照によって示される。
【0068】
図6を参照すると、最適化システム11の第2の実施形態が記載されている。
【0069】
変換器を駆動するための装置24、および最適化するための装置34がある。
【0070】
最適化装置34の出力31、32、および33は、最適化システム11の出力18、19、および20にそれぞれ接続され、最適化装置34の入力35、36、および37は、駆動装置24の出力25、26、および27にそれぞれ接続されている。
【0071】
駆動装置24の入力28、29、および30は、最適化システム11の入力15、16、および17にそれぞれ接続されている。
【0072】
最適化装置34は、電力変換器2の電圧制御を最適化する機能を有する最適化アルゴリズムALG1を実装し、それにより最適化装置の出力31、32、および33の各々は、変換器2が実質的にバランスがとれた電圧システムを提供するような駆動値を供給する。
【0073】
これを行うために、アルゴリズムALG1は、チャートABQ1の非線形ゾーンに位置する少なくとも1つの相の駆動設定値に関連付けられたパルス持続時間を含む制御パラメータを、それがチャートABQ1の線形ゾーンにあるように先のパラメータの値を変更することによって変更し、同様にして各相の駆動設定値に関連付けられたパルス持続時間を変更する。
【0074】
アルゴリズムALGとALG1は、アルゴリズムALGがチャートABQの非線形領域に位置する少なくとも1つの駆動設定値を変更し、アルゴリズムALG1がチャートABQ1の非線形領域に位置する駆動設定値に関連付けられた少なくとも1つのパルス持続時間を変更する点で異なる。
【0075】
アルゴリズムALGとALG1は、変換器の異なる制御パラメータをそれぞれ処理し、異なるチャートを使用することにより同様に動作する。
【0076】
図7を参照すると、多相電力変換器の電圧制御を最適化するためのアルゴリズムALGの実施例が示されている。
【0077】
アルゴリズムALG1の実施態様は、駆動設定値をその駆動設定値に関連付けられたパルスの持続時間で置き換えること、またチャートABQをチャートABQ1で置き換えることにより、アルゴリズムALGの実施態様と同じになる。
【0078】
相7、8、および9のうちの少なくとも1つの駆動設定値が、チャートABQの非線形ゾーンZ1、Z2、Z3、またはZ4に位置すると仮定する。
【0079】
ここでは、相7の駆動設定値が非線形ゾーンZ2に位置すると仮定する。
【0080】
第1のステップ40の間に、最適化装置34は、チャートによって駆動設定値に関連付けられた2つの補正値のセットを決定する。
【0081】
相7については、最適化装置34は、補正値V3および1を保持する。
【0082】
しかし、3つの相の各相の駆動設定値が非線形ゾーンに位置する場合、各相に2つの制御値が関連付けられ、最適化装置34は、6つの制御値を決定する。
【0083】
第2のステップ41の間に、最適化装置34は、補正値V3および1の各々と駆動設定値との間の差のセットを決定する。
【0084】
ステップ42で、最適化装置は、最小の差に関連付けられた補正値を選択する。
【0085】
次いで、最適化装置は、補正値が非線形ゾーンに位置する駆動設定値よりも小さい場合には、先の補正値からの関連する差を駆動設定値から減算することにより、または補正値が非線形ゾーンに位置する駆動設定値よりも大きい場合には、先の補正値に関連する差を駆動設定値に加算することにより、各相の駆動値を決定する。
【0086】
最後に、最適化装置は、各駆動値がチャートABQの非線形ゾーンに位置するかどうかを判定する。
【0087】
すべての駆動値がチャートABQの線形ゾーンに位置する場合、ステップ43の間に、最適化装置34は、駆動値を含む新規制御パラメータを駆動装置24に送信する。
【0088】
アルゴリズムALG1の実施中、駆動値は、駆動装置を備える電力変換器2の入力4、5、および6に直接送信される。
【0089】
相の駆動値がチャートABQの非線形ゾーンに位置する場合で、さらに複数の値がすべての差の中に存在する場合、ステップ44の間に、最適化装置34は、ステップ42で以前に選択された差を削除する。
【0090】
次いで、第3のステップ42に戻る。
【0091】
相の駆動値がチャートABQの非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての差が空の場合、以下のステップ45の間に、最適化装置34は、制御パラメータを選択し、最小の差に関連付けられた補正値が相の駆動設定値よりも小さい場合、相の駆動設定値から最小の差を減算することにより、または最小の差に関連付けられた補正値が相の駆動設定値よりも大きい場合、相の駆動設定値に最小の差を加算することにより、非線形ゾーンの相の駆動値を計算する。
【0092】
次いで、最適化装置34は、先の駆動値および調整装置10から受信した他の各相の駆動設定値を含む新規制御パラメータの値を駆動装置24に送信する。
【0093】
アルゴリズムALG1の実施中、最適化装置34は、駆動装置を備える電力変換器2の入力4、5、および6に駆動値を直接送信する。
【0094】
少なくとも2つの相のうちの少なくとも1つの駆動値がチャートABQの非線形ゾーンに位置する場合で、さらにすべての差が空の場合、ステップ46の間に、最適化装置34は、補正値の4つの異なる組み合わせを決定する。
【0095】
各組み合わせは駆動ベクトルを形成する。
【0096】
最適化装置34は、例えばクラーク変換を用いて、各駆動ベクトルを二次元駆動ベクトルに変換し、各位相の駆動設定値を含む制御パラメータベクトルを二次元基準ベクトルに変換する。
【0097】
最適化装置34は、二次元基準ベクトルに対する各二次元駆動ベクトルの2次誤差を決定し、最小誤差に関連付けられた二次元駆動ベクトルを決定する。
【0098】
次に、ステップ47で、最適化装置34は、最小誤差に関連付けられた二次元駆動ベクトルを制御パラメータベクトルに変換し、駆動設定値の組み合わせを駆動装置24に送信する。
【0099】
アルゴリズムALGおよびALG1は、相の制御値の1つまたは駆動値の1つが非線形ゾーンに位置するたびに実施される。
【0100】
図8を参照すると、変調率に応じた変換器の出力における相7、8、および9の電圧の基本波の振幅の一例が示されている。
【0101】
相の電圧の基本波の振幅は、追加の範囲Z5およびZ6上の変調率に比例している。
【0102】
有利なことに、電力変換器の線形動作区間が拡張された。
【0103】
電力変換器は、変換器の出力電圧が変換器の出力においてバランスがとれたまたは実質的にバランスがとれた電圧システムを形成するように駆動されている。
【0104】
例えば、変調率の線形ゾーンは、4~9%増加している。
【0105】
その結果、変換器の出力電圧の値は、変調率の線形ゾーンに含まれた領域で高くなる。
【0106】
電力と強度の係数が等しいと、変換器によって伝送される電力の値は、最適化装置の使用中高くなる。
【0107】
さらに、最適化装置は、電力が電気負荷からネットワークに伝送される場合、例えば電動機3が発電モードで動作している場合にも動作する。
【0108】
変調率が0値付近に位置する非線形ゾーン内にある場合、制御パラメータが線形ゾーン内にあるように、ほぼ正方形の単極信号が変調信号に加えられ、各相の制御パラメータが、0変調率まで線形性を保証するように同様に変更されることが好ましい。
【0109】
この技術は、「トグルPWM(Toggle PWM)」として知られている。
【符号の説明】
【0110】
1 電圧制御システム
2 電力変換器
3 負荷、電動機
4 制御入力
5 制御入力
6 制御入力
7 相、出力
8 相、出力
9 相、出力
10 調整装置
11 最適化システム
12 出力
13 出力
14 出力
15 入力
16 入力
17 入力
18 出力
19 出力
20 出力
21 第1の入力
22 第2の入力
23 測定手段
24 駆動装置
25 出力
26 出力
27 出力
28 入力
29 入力
30 入力
31 出力
32 出力
33 出力
34 最適化装置
35 入力
36 入力
37 入力
40 第1のステップ
41 第2のステップ
42 第3のステップ
ABQ チャート
ABQ1 制御チャート
【国際調査報告】