IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ストラ エンソ オーワイジェイの特許一覧

<>
  • 特表-表面処理組成物 図1
  • 特表-表面処理組成物 図2
  • 特表-表面処理組成物 図3
  • 特表-表面処理組成物 図4
  • 特表-表面処理組成物 図5
  • 特表-表面処理組成物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】表面処理組成物
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20220111BHJP
   D21H 19/34 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H19/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526317
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2019059266
(87)【国際公開番号】W WO2020099967
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】1851421-6
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッキ、ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055AG11
4L055AG12
4L055AG34
4L055AG40
4L055AG45
4L055AG46
4L055AG47
4L055AG51
4L055AG59
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG75
4L055AG89
4L055AG94
4L055AH02
4L055AH10
4L055AH37
4L055BE08
4L055CF01
4L055CF41
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA20
4L055EA23
4L055EA31
4L055EA32
4L055FA15
4L055GA05
4L055GA06
4L055GA15
(57)【要約】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)などのナノセルロースと粒子とを含む表面処理組成物が提供される。粒子は、支持材料と、多価金属の塩を含む活性材料とを含む。そのような表面処理組成物を含む様々な製品及び前記組成物を使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロース及び粒子を含む表面処理組成物であって、前記粒子が支持材料及び多価金属の塩を含む活性材料を含む、上記組成物。
【請求項2】
ナノセルロースの量が、表面処理組成物の乾燥量に基づいて計算した場合、0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、最も好ましくは0.1~10重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノセルロースがミクロフィブリル化セルロース(MFC)である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性材料が、塩化カルシウムなどのカルシウム塩を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記支持材料が、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス、トリグリセリド、金属石鹸、及びスチレン/アクリラート若しくはスチレン/ブタジエンのコポリマー又はこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子が、活性材料を含むコアを含み、前記コアが、前記支持材料を含むシェルに封入されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記コアが活性材料及び結合材料を含み、前記シェルが支持材料で作られている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記結合材料が、ワックス、例えばポリエチレンワックス、トリグリセリド、金属石鹸、又は例えばスチレン/アクリラート若しくはスチレン/ブタジエンのコポリマーからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒子が、少なくとも50重量%、好ましくは75重量%、最も好ましくは80重量%の量で前記活性材料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子の球径が、100~0.01μm、好ましくは50~0.1μm、最も好ましくは10~0.5μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記支持材料が、熱及び/又は圧力及び/又はpHの変化にさらされたとき、前記活性材料を放出するように適合化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)などの1つ以上のカチオン性ポリマー、又はアルキルケテンダイマー(AKD)若しくはアクリル系コポリマーなどのサイジング剤、好ましくはデンプンをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が顔料、好ましくはデンプン及び顔料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物がデンプンを含み、粒子の量がデンプンの量に基づいて1~100重量部である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物がデンプン及び顔料を含み、顔料の量がデンプンの量に基づいて1~500重量部である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
表面処理された繊維ウェブの製造方法であって、
a)パルプから繊維ウェブを形成する工程、及び
b)前記繊維ウェブを少なくとも1つの層でコーティング又は表面サイジングする工程であって、前記繊維ウェブが請求項1~15のいずれか一項に定義された表面処理組成物でコーティング又は表面サイジングされる工程を含み、さらに必要に応じて、c)熱及び/又は圧力及び/又はpHの変化の適用によって前記繊維ウェブの表面上の前記粒子から前記活性材料を放出させる工程を含む方法。
【請求項17】
前記活性材料を粒子から放出させる工程c)が、前記繊維ウェブの乾燥又はカレンダ加工において達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
印刷された繊維ウェブの製造方法であって、請求項16~17の工程(a)~(b)及び必要に応じて(c)を含み、その後に、(d)インクジェット印刷技術及び/又はフレキソ印刷技術を使用して、コーティング又は表面サイジングされた繊維ウェブに印刷を施す工程が続き、前記繊維ウェブが好ましくは紙又は板紙である、上記方法。
【請求項19】
前記組成物が1~20g/m又は1~15g/mのコート重量で塗布される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に定義された表面処理組成物を含む紙又は板紙製品。
【請求項21】
包装材料の製造方法であって、
a.セルロース系繊維を含むボール紙基材を提供する工程、
b.請求項1~15のいずれか一項に定義された表面処理組成物で前記基材の少なくとも1つの表面を処理する工程、
c.前記の処理された表面の少なくとも一部にインクで印刷を施す工程、及び
d.前記の印刷された表面上に少なくとも1つのポリマー層を塗布する工程
を含む上記方法。
【請求項22】
紙又は板紙製品基材と、請求項1~15のいずれか一項に定義された表面処理組成物を最内層として含み、必要に応じて、前記最内層の少なくとも一部に印刷された水性インクをさらに含み、また必要に応じて、前記の印刷された最内層に塗布された熱可塑性ポリマー層をさらに含む、紙又は板紙製品。
【請求項23】
好ましくはインクジェット又はフレキソ印刷機を使用して印刷された、請求項1~15のいずれか一項に定義された表面処理組成物を含む、印刷された紙又は板紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット又はフレキソ印刷に使用するための紙、ボール紙又は他の繊維ウェブのコーティング又はサイジング、並びに包装材料及び本方法によって製造された包装材料の製造を目的とする表面処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、紙又はボール紙などの印刷される基材に高い要求を課す。インクジェット印刷を使用する場合、インクを迅速に乾燥させなければならず、しかも高い印刷品質を提供しなければならない。当技術分野では、インクが表面に迅速に固定化されることになるため、表面へ多価塩を塗布(コーティング若しくは表面サイジングによる、又は噴霧による)すると、印刷品質の向上がもたらされることが示されている。コーティング及び/又はサイジング組成物への塩の添加に伴う1つの問題は、それらが、混合中だけでなく、コーティングの塗布及びレベリング中におけるレオロジー問題、並びに特に大量の塩を添加する場合に望ましくない沈殿を引き起こす可能性があることである。
【0003】
国際公開第2011098973号は、多価金属の塩及びワックスを含む支持材料を含む粒子を含むコーティング組成物を提供することによってこの問題に対する解決策を提供し、この場合塩は、熱、pHの変化又は圧力などの誘因にさらされると支持材料から放出される。この方法では、粒子は、コロイド分散液の形態で紙/ボール紙の表面に塗布される。
【0004】
国際公開第2011098973号に開示されている方法の1つの問題は、系(コロイド分散液)が場合によっては安定剤、分散助剤及び/又はレオロジー調整剤を必要とすることである。しかしながら、当技術分野で使用される典型的な安定剤及びレオロジー調整剤は、系に含まれる塩又はワックスと常に適合するとは限らない。かかる典型的助剤は、しばしば強いアニオン性又は両性であり、塩カチオンを凝集させる可能性がある。
【0005】
国際公開第2015136493号は、優れたバリア特性、ベースの板紙とポリマー層との間の良好な接着性及び良好な印刷品質を有する、例えば食品又は液体の包装に適した、ポリマー押出コーティング又は積層による処理が施されたボール紙材料に関する。これは、セルロース繊維を含むボール紙基材の少なくとも1つの表面を結合剤及び金属塩で処理し、前記の処理された表面の少なくとも一部にインクで印刷を施し、前記の印刷された表面上に少なくとも1つのポリマー層を塗布することによって達成される。
【0006】
本技術の利点には、改善された印刷精度、ウィッキング及びブリーディング(減少)、改善されたインク乾燥時間、維持又は改善された印刷密度、良好な印字走行性、改善された剪断安定性(コーティング/サイジング組成物)、改善された電解質安定性、凝固の減少、良好な破損取り扱い及び/又は良好なコーティング品質のうちの1つ以上が含まれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施態様では、ナノセルロース及び粒子を含む表面処理組成物が提供され、この粒子は、支持材料及び多価金属の塩を含む活性材料を含む。
【0008】
別の実施態様では、表面処理された繊維ウェブの製造方法であって、
a)パルプから繊維ウェブを形成する工程と、b)繊維ウェブを少なくとも1つの層でコーティング又は表面サイジングする工程を含み、繊維ウェブが本明細書に記載の表面処理組成物でコーティング又は表面サイジングされるものとする、方法が提供される。
【0009】
別の実施態様では、上記工程(a)~(b)を含み、続いて、(d)インクジェット及び/又はフレキソ印刷技術を使用して、コーティング又は表面サイジングされた繊維ウェブに印刷を施す工程を含む、印刷された繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0010】
別の実施態様では、本明細書に記載の表面処理組成物を含む紙又は板紙製品が提供される。
【0011】
さらに別の実施態様では、包装材料を製造する方法であって、セルロース繊維を含むボール紙基材を提供する工程、前記基材の少なくとも1つの表面を本明細書に記載の表面処理組成物で処理する工程、前記の処理された表面の少なくとも一部にインクで印刷を施す工程、及び前記の印刷された表面上に少なくとも1つのポリマー層を塗布する工程を含む方法が提供される。
【0012】
さらに別の実施態様では、紙又は板紙製品基材と、本明細書に記載の表面処理組成物を最内層として含み、必要に応じて、前記最内層の少なくとも一部に印刷された水性インクをさらに含んでいてもよく、また必要に応じて、前記の印刷された最内層に塗布された熱可塑性ポリマー層をさらに含んでいてもよい、紙又は板紙製品が提供される。
【0013】
さらに別の実施態様では、好ましくはインクジェットプリンタ又はフレキソ印刷プリンタを使用して印刷された、本明細書に記載の表面処理組成物を含む印刷された紙又は板紙製品が提供される。
【0014】
本技術のさらなる詳細は、以下の説明及び実施形態並びに従属請求項に提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工BergaJet紙を使用した基準となるものとの、単色印刷における黒色濃度の比較を示す。
図2】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工上質インクジェット紙(基準のコピー用紙Colorlok)の光学濃度を示す。K100=100%のインク被覆率を有する黒色印刷領域、C100=100%のインク被覆率を有するシアン印刷領域、M100=100%のインク被覆率を有するマゼンタ印刷領域、Y100=100%のインク被覆率を有する黄色印刷領域。
図3】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工上質インクジェット紙(基準のコピー用紙Colorlok)の粒状性を示す。
図4】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工上質インクジェット紙(基準のコピー用紙Colorlok)のモトルを示す。
図5】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工上質インクジェット紙(基準のコピー用紙Colorlok)の線幅を示す。
図6】3つの異なるコーティング(例1に記載の試料1、試料2及び試料3)を有する紙と、非塗工上質インクジェット紙(基準のコピー用紙Colorlok)の線の凹凸状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書では、a)ミクロフィブリル化セルロース(MFC)などのナノセルロースと、b)支持材料及び多価金属の塩を含む活性材料を含む粒子とを含む表面処理組成物が記載されている。本発明者らは、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)などのナノセルロースを使用すると、インクの乾燥時間及び印刷精度が改善され得ること(インクが互いにブリーディングしないこと)、及びナノセルロースが得られた同じ印刷品質で存在する場合、本明細書に定義された粒子の濃度がより低くなり得ることを見出した。
【0017】
本明細書で使用される場合、「表面処理組成物」という用語は、コーティング又は表面サイジング組成物などに関する。
【0018】
a.ナノセルロース
ナノセルロースは、ナノ構造セルロースを指す用語である。ナノセルロースは、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)とも呼ばれるセルロースナノファイバー(CNF)、ナノ結晶性セルロース(NCC又はCNC)、又は細菌によって産生されるナノ構造セルロースを指す細菌性ナノセルロースのいずれかであり得る。
【0019】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、特許出願の文脈において、少なくとも1つの寸法が100nm未満であるナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的又は全体的にフィブリル化したセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルは100nm未満の直径を有するが、実際のフィブリルの直径又は粒径分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は供給源及び製造方法によって異なる。
【0020】
最小のフィブリルは、基本フィブリルと呼ばれ、約2~4nmの直径を有する(例えば、Chinga-Carrasco,G.、「セルロース繊維、ナノフィブリル及びミクロフィブリル:植物生理学及び繊維技術観点から見たMFC成分の形態学的シーケンス」(Cellulose fibres,nanofibrils and microfibrils,:The morphological sequence of MFC components from plant physiology and fibre technology point of view)、ナノスケール・リサーチ・レターズ(Nanoscale research letters)2011、6:417を参照)が、ミクロフィブリル(Fengel,D.,「細胞壁多糖類の超構造挙動」(Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides)、Tappi J.、1970年3月、第53巻、第3号)としても定義される基本フィブリルの凝集形態は、例えば、拡張精製プロセス又は圧力降下分解プロセスを使用することによってMFCを製造するときに得られる主生成物であることが一般的である。供給源及び製造過程に応じて、フィブリルの長さは、約1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化し得る。粗MFCグレードは、フィブリル化繊維、すなわち仮道管(セルロース繊維)から突出したフィブリルのかなりの部分を含み得、ある一定量のフィブリルが仮道管(セルロース繊維)から遊離している。
【0021】
MFCについては、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースミクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体(aggregrates)及びセルロースミクロフィブリル凝集体などの異なる同義語がある。MFCはまた、水に分散したときに大きな表面積又は低固形分(1~5重量%)でゲル状材料を形成するその能力などの様々な物理的又は物理化学的特性を特徴とし得る。セルロース繊維は、好ましくは、形成されたMFCの最終比表面積が、BET法を用いて凍結乾燥材料について判定された場合、約1~約300m/g、例えば1~200m/g、又はより好ましくは50~200m/gである程度までフィブリル化される。
【0022】
MFCを作製するための様々な方法、例えば、フィブリルのシングルパス若しくはマルチプルパス精製、予備加水分解、その後の精製又は高剪断崩壊若しくは遊離などが存在する。MFC製造をエネルギー効率が良くかつ持続可能なものにするためには、通常、1つ又はいくつかの前処理工程が必要とされる。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすために、酵素的又は化学的に前処理されることもあり得る。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に修飾されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(又はそれより多くの)官能基を含む。そのような基としては、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド基及び/又はカルボキシル基(N-オキシル介在による酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上記方法の1つで修飾又は酸化された後、繊維をMFC又はナノフィブリルサイズのフィブリルに分解することがより容易である。
【0023】
ナノフィブリルセルロースは、いくつかのヘミセルロースを含み得、量は植物供給源によって異なる。前処理された繊維、例えば加水分解された、予め膨潤された、又は酸化されたセルロース原料の機械的崩壊は、精製機、グラインダ、ホモジナイザ、コロイダ、摩擦グラインダ、超音波粉砕装置、単軸若しくは二軸スクリュー押出機、マイクロフルイダイザ、マクロフルイダイザ若しくはフルイダイザ型ホモジナイザなどのフルイダイザなどの適切な装置を用いて行われる。MFC製造方法に応じて、製品はまた、微粉、又はナノ結晶性セルロース、又は例えば木材繊維若しくは製紙過程に存在する他の化学物質を含有し得る。生成物はまた、効率的にはフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子を含有し得る。
【0024】
MFCは、広葉樹繊維または針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から製造される。MFCはまた、微生物供給源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、又は他の非木材繊維供給源から作製することもできる。MFCは、好ましくは、未使用繊維からのパルプ、例えば機械的パルプ、化学的パルプ及び/又は化学機械的パルプを含むパルプから製造される。MFCはまた、破損紙又は再生紙から作製することもできる。
【0025】
上記のMFCの定義には、結晶性領域と非晶質領域の両方を有する複数の基本フィブリルを含むセルロースナノファイバー材料を定義するセルロースナノフィブリル(CNF)に関する新たに提案されたTAPPI標準W13021が含まれるが、限定される訳ではない。
【0026】
一実施態様では、ナノセルロースは、天然ミクロフィブリル化セルロース、ナノ結晶性セルロース、化学的に誘導体化されたナノ結晶性セルロース及び化学的に誘導体化されたミクロフィブリル化セルロース、又はこれらのいずれか1つ以上の組合せからなる群から選択される。
【0027】
「天然ミクロフィブリル化セルロース」は、好ましくはクラフトパルプ又は溶解パルプなどのパルプから作製される。パルプに対し、フィブリル化を促進するために、酵素処理又は加水分解修飾などを行うことはできるが、パルプは誘導体化されてはいない。
【0028】
「ナノ結晶性セルロース」は、典型的には、HCl又はHSOなどの酸性媒質中での強い加水分解によって作製される。
【0029】
化学的に誘導体化されたミクロフィブリル化セルロースの例は、例えばN-オキシル介在による酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」、リン酸化ミクロフィブリル化セルロース又はアセチル化ミクロフィブリル化セルロースである。
【0030】
b.支持材料と、多価金属の塩を含む活性材料とを含む粒子
本明細書に開示される組成物は、活性材料及び支持材料を含む粒子を含む。活性材料は、二価金属又は三価金属などの多価金属の塩を含む。一実施形態では、使用される塩は、CaCl又はMgClなどの金属塩である。本発明によれば、支持材料は、熱及び/又は圧力及び/又はpHの変化にさらされたときに粒子から活性材料を放出するように適合化される。かくして、活性材料は、少なくとも組成物が繊維ウェブの表面に塗布され、製紙過程の後の段階で活性化又は刺激されるまで、粒子中に「捕捉」され得る。その結果、組成物のレオロジーに対する活性材料の悪影響は回避されるが、表面特性に対するその所望の効果は保持又は増強される。本発明は、組成物のコロイド安定性、したがってレオロジーに悪影響を及ぼすことなく、サイジング組成物又はコーティング組成物に高濃度の多価金属を投入することを可能にする。かくして、サイジング又はコーティングされた紙又は板紙の印刷性を改善することができる。さらにまた、粒子を使用すると、組成物中の多価塩の遊離アニオン、例えば塩化物イオンの濃度が低下し、それによって腐食のリスクが低下する。本発明の一実施形態では、多価金属塩は塩化カルシウムである。
【0031】
活性材料は、代替的又は追加的に、酢酸、塩酸又はリン酸に対し少なくとも1つの酸、例えばクエン酸を含んでもよい。かくして、通常は低pHに適合しない炭酸カルシウムなどの成分を使用することができる一方で、印刷品質に対する低pHの利点を依然として得ることができる。一実施形態では、活性材料は、一価又は多価の塩及び酸を含む。かくして、pH低下及び塩が印刷品質に二重の影響を及ぼすので、印刷品質はさらに改善され得る。
【0032】
粒子の支持材料は、ポリエチレンワックス、プロピレンワックス、カルナバワックス、マイクロワックスなどのワックス、トリグリセリド、PEG、金属石鹸、及びスチレン/アクリラート又はスチレン/ブタジエンのコポリマー並びにこれらのいずれかの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、粒子の支持材料は、不活性かつ耐水性であるか、又は所定の溶解速度を有する。
【0033】
支持材料は、熱の影響を受けやすいものであり得、60~180℃、例えば70~180℃、好ましくは70~110℃の融点又はガラス転移点を有し得る。これらの範囲内の融点又はガラス転移点を有する場合、支持材料は、組成物でウェブを表面処理することによって形成された繊維ウェブの乾燥又はカレンダ加工において溶融又は形成/成形され得、それにより、活性材料は、乾燥又はカレンダ加工セクションで粒子から放出され、ウェブの表面にブルームされ得る。
【0034】
支持材料は、代替的又は追加的に、pH変化の影響を受けやすいものであり得る。支持材料は、例えば、7未満、又は好ましくは5~7のpHなどの低pHに供された場合に溶解され得る。pHの影響を受けやすい支持材料は、例えば、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタラート、酢酸コハク酸ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、フタル酸ポリビニル酢酸エステル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、アルギン酸ナトリウム若しくはステアリン酸、又は上記物質の混合物の群から選択することができる。ステアリン酸は、低pH及び高温の両方の影響を受けやすい支持材料の一例である。
【0035】
粒子は、活性材料を含むコアを含み得、このコアは、支持材料を含むシェル内に封入される。コア-シェル構造を作製することにより、より明確な粒子形態及び懸濁液中のより良好な安定性を得ることができる。シェルは、支持材料、例えば、熱及び/又は圧力及び/又はpHの変化にさらされると溶融、溶解又は破壊され、それによってコア内の材料が粒子から放出され得るスチレン/アクリラートのコポリマーで作製され得る。コアは、結合された形態又は別個の形態で活性材料を含んでいてもよい。活性材料は、例えば、粒子状の結晶塩であってもよい。あるいは、コアは、活性材料と結合材料との複合体であってもよい。結合材料は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス、トリグリセリド及び金属石鹸からなる群から選択され得る。結合材料は、60~180℃、例えば70~180℃、好ましくは70~110℃の融点を有し得る。結合材料の融点は、支持材料の融点と類似しているか又は同じであり得る。コアは、界面活性剤及び/又はキレート剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
支持材料は、酢酸、塩酸又はリン酸に対し、クエン酸などの酸の分散した微細に分割された粒子をさらに含んでいてもよい。一実施形態では、粒子はコア/シェル構造であり、コアは活性材料として一価又は多価の塩を含み、セルは分散した微細に分割された酸の粒子を含む。かくして、酸及び塩の両方を、通常は低pH及び/又は金属塩と適合しないコーティング/サイジング組成物に添加することができる。支持材料が溶融、溶解又は破壊されると、組成物が繊維ウェブ上に塗布された後、酸が放出されてpH低下を引き起こし、それによって印刷性が改善される。同時に、塩が放出されることで、印刷性がさらに向上する。
【0037】
一実施形態では、粒子は、支持材料と活性材料との複合体である。かかる複合粒子は、例えば、活性材料としての多価金属塩及び支持材料としてのステアリン酸カルシウムから形成され得る。金属塩とワックスとの比率は、1:0.1~1:100の範囲内であり得る。例で使用されるワックスはパルミチン酸およびステアリン酸を含むが、他の脂肪酸又はワックス及びそれらの混合物の使用も考えられる。
【0038】
粒子は、活性材料、例えば多価金属塩を少なくとも30重量%の量、例えば40~70重量%の範囲、又は70~80重量%の範囲で含み得る。かくして、組成物は高濃度の活性材料を含み得る。したがって、粒子は、コロイド不安定化を引き起こすことなく、例えばコーティング組成物に添加され得る。
【0039】
粒子は、ボールミル、ハンマーミル、円錐ミルなどの異なる混合及び粉砕方法によって調製され得る。粉砕中、温度を40℃超、例えば60℃超~250℃未満に上昇させてもよい。1つの好ましい調製工程では、塩が最初に粉砕され、支持材料(例、ワックス)が溶融される。その後、粉砕した塩と溶融したワックスとを混合し、激しく撹拌した後、冷却することにより、機能性粒子を形成する。粉砕又は混合中に、ポリマー、帯電防止剤、凝固防止剤、安定剤、保湿剤などのさらなる添加剤を添加することができる。さらなる添加剤は、例えば、噴霧又は乾燥状態で添加され得る。粒子は、製造過程及び配合表のタイプに応じてさらに分画又は分級される。平均粒径は、0.1~1000μmであり得る。粒子は、乾燥形態又は湿式分散液としてコーティング配合物に添加することができる。
【0040】
支持材料は、組成物が繊維ウェブの表面に塗布された後の抄紙機での後続工程で粒子から活性材料を放出するように適合化され得る。支持材料は、例えば、後続のウェブの乾燥又はカレンダ加工において活性材料を放出するように適合化され得る。あるいは、支持材料は、形成された紙又は板紙の印刷時に印刷機で活性材料を放出するように適合化され得る。
【0041】
粒子は、界面活性剤又は親水コロイドなどの少なくとも1つの安定剤をさらに含んでもよい。安定剤は、組成物中の他のコーティング又はサイジング成分の投入と適合するように選択されるべきである。例えば、組成物がアニオン性成分を含む場合、安定剤は、好ましくは中性、両性又はアニオン性であるべきである。
【0042】
本発明は、アニオン性に帯電した表面処理組成物に多価金属の塩を添加すると特に有利であり、その理由は、このような組成物は、低濃度であっても多価イオンに対して特に感受性があるためである。
【0043】
粒子の平均球径は、100~0.01μm、好ましくは50~0.1μm、さらにより好ましくは10~0.5μm、又は1~5μm、又は0.5~1.5μmであり得る。これらの範囲内の球形直径を有する粒子は、顔料粒子とほぼ同じサイズを有するため、例えばフィルムプレス又はブレードコーティングにおいてレオロジー的問題又はコーティング欠陥を引き起こすこともない。
【0044】
表面処理組成物は、高濃度の活性材料を含む粒子を含み、この活性材料は、組成物がウェブの表面に塗布された後に制御された方法で粒子から放出される。組成物中にかかる粒子を使用すると、本明細書に記載の組成物と同じ高濃度の活性材料を含む先行技術の組成物に関連するレオロジー及び粘度の問題が低減される。その結果、レオロジー又は粘度の問題を引き起こすことなく、より高濃度の活性材料を使用することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「粒子から放出」という表現は、活性材料が、それが粒子内にあるか又は別の方法で粒子の一部に保持されている状態から、活性材料が粒子形態の一部ではなくウェブの表面と接触している状態に変換されることを意味する。したがって、活性材料は、別個の材料として粒子から放出されてもよく、又は結合形態で、例えば支持材料若しくは結合材料に結合しているか又は別の方法で付着している形態で粒子から放出されてもよい。
【0046】
この技術は、紙又は板紙のインクジェット印刷性を高めるために、多価イオンの塩をサイジング組成物、特にアニオン帯電したサイジング組成物に投入する場合に特に有利である。前記塩は、例えば、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム又は酢酸バリウムであり得る。前記アニオン性サイジング組成物は、例えば、アニオン性ロジン石鹸サイジング剤、アニオン性ポリマースチレン無水マレイン酸サイジング剤又はポリ塩化アルミニウムを含み得る。
【0047】
粒子は、シェル/コア構造であってもよく、活性材料は、支持材料のシェル内にコアとして封入される。かかる粒子は、例えば、乳化重合法を用いて製造することができる。
【0048】
別法として、粒子は、活性材料と支持材料との混合物を含む複合構造であってもよい。例えば、シェル/コア構造として形成する代わりに、粒子は、ステアリン酸カルシウムと塩化カルシウムとの複合体であってもよい。前述の粒子は、50重量%以上の量のカルシウムを含み得る。ステアリン酸カルシウム/塩化カルシウム粒子は、バッチプロセスでステアリン酸カルシウムを塩化カルシウムと混合することによって形成され得る。その後、形成された粒子は、例えばデンプン及び界面活性剤の使用によって安定化される。
【0049】
粒子はまた、例えば、ステアリン酸カルシウムと塩化カルシウムとを乾式ブレンドすることによって形成され得、その後、混合物を粉砕し、最終的に分画する。次いで、前記安定化システムを使用することによって、粒子を溶液中で安定化することができる。
【0050】
複合材料はまた、湿式紡糸、エレクトロスピニング又はエレクトロスプレーなどの紡糸法を使用して作成することもできる。かかる方法では、水溶性ワックスを、例えば塩化カルシウムとブレンドし、次いで紡糸する。溶液の温度は、好ましくは、添加された成分との溶解性及びブレンド性を確実にするために、支持材料又は結合材料、例えばワックスの融点を超えるべきである。材料は、基材上に直接的若しくは別のコレクタ板上に間接的に、又は溶液中に、紡糸又は噴霧(微粒子)され得る。
【0051】
表面処理組成物の他の成分
本明細書に記載の表面処理組成物は、コーティング組成物又はサイジング組成物に一般的に使用される他の成分をさらに含んでいてもよい。組成物は、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)などのカチオン性ポリマー、アルキルケテンダイマー(AKD)又はアクリル系コポリマーなどの一般的に使用されるサイジング剤をさらに含んでもよい。組成物は、アクリル酸メチルなどの酸コポリマーをさらに含んでもよい。一実施形態では、表面処理組成物はデンプンを含む。
【0052】
一実施形態において、本明細書に記載の表面処理組成物は、染料及び顔料の両方のインクジェットインク用のオフセット紙の表面処理に特に有用である。インクジェットに特に適した実施形態において、本明細書に記載の表面処理組成物は、デンプンなどのカチオン性ポリマーをさらに含む。さらなる実施形態では、本明細書に記載の表面処理組成物は、顔料をさらに含む。なおさらなる実施形態において、本明細書に記載の表面処理組成物は、デンプンなどのカチオン性ポリマーと顔料の両方をさらに含む。
【0053】
一実施形態において、本明細書に記載の表面処理組成物は、支持材料及び活性材料を含む粒子を、前記組成物の乾燥量に基づいて計算した場合、1~99重量%、又は好ましくは1~30重量%又は1~25重量%又は5~25重量%の量で含む。表面処理組成物は、好ましくは前記組成物の総乾燥量に基づいて、例えば1~90重量%、又は20~80重量%、又は30~70重量%の量の炭酸カルシウムなどの無機顔料をさらに含んでいてもよい。表面処理組成物は、例えばデンプン又はラテックスなどの結合剤を、好ましくは1~90重量%、又は好ましくは5~80重量%又は5~30重量%又は10~30重量%の量でさらに含んでいてもよい。表面処理組成物は、前記表面処理組成物の乾燥量に基づいて計算して、0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、最も好ましくは0.1~10重量%の量のナノセルロースをさらに含み得る。
【0054】
本明細書に記載の表面処理組成物がデンプンを含む場合の実施形態では、ナノセルロースの量は、デンプンの量に基づくと1~100重量部である。
【0055】
本明細書に記載の表面処理組成物がデンプンを含む場合の実施形態では、粒子の量は、デンプンの量に基づくと1~100重量部である。
【0056】
本明細書に記載の表面処理組成物がデンプン及び顔料を含む場合の実施形態では、顔料の量は、デンプンの量に基づくと1~500重量部である。
【0057】
コーティング
一実施形態において、表面処理組成物は、1~20g/m又は1~15g/mの範囲のコート重量で塗布されるが、このコート重量は、顔料、結合剤及び/又はラテックスなどを含む全コート重量を指すものとする。別の実施形態において、コート重量は、とりわけ乾燥時間を促進するために、より少量、例えば1~10又は1~5g/mの範囲である。
【0058】
紙又は板紙製品
本発明はさらに、上記の表面処理組成物を含む紙又は板紙製品、並びにこれらの製品を含む、好ましくは印刷がインクジェット印刷技術及び/又はフレキソ印刷技術によるものである、印刷された紙又は板紙に関する。
【0059】
これらの紙又は板紙製品を含む印刷された紙又は板紙は、好ましくは、水系顔料インクを使用してインクジェット技術で印刷され得る。
【0060】
しかしながら、本発明は、インクジェットのみに限定されるものではなく、さらに、例えば水系染料又は顔料インクが使用されるフレキソ印刷において印刷品質を改善するために使用することができる。
【0061】
本技術は、印刷方法の1つが顔料水系インクジェットインクに基づくものである、ハイブリッド印刷製品にさらに適用可能である。さらに、本発明はまた、本明細書において染料粒子と顔料粒子の両方を含有するインクに関するものである、ハイブリッドインクによる印刷にも適用可能である。
【0062】
包装材料
本発明はさらに、本明細書に記載の表面処理組成物を最内層として有する紙又は板紙製品を含む包装材料に関する。紙又は板紙製品は、前記最内層の少なくとも一部に印刷された水性インクを含み得、また必要に応じて前記の印刷された最内層に塗布された熱可塑性ポリマー層をさらに含んでいてもよい。
【0063】
本発明に従って製造された包装材料は、良好な印刷性を示す。ボール紙基材は、本明細書に記載の表面処理組成物で表面処理され得るが、ポリマー層の良好な接着を可能にすることが示されている。
【0064】
本発明はさらに、セルロース系繊維を含むボール紙基材と、本明細書に記載の表面処理組成物を含む最内層と、前記最内層の少なくとも一部に印刷された水性インクと、前記の印刷された最内層に塗布されたポリマー層とを含む包装材料に関する。
【0065】
ポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。ポリマーは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリ乳酸(PLA)及び/又は前述の熱可塑性物質の改変を含むこれらのいずれかのバイオベース材料を含み得る。ポリマーは、任意の既知のコーティング又はフィルム塗布技術の使用によって、例えば押出コーティングによって印刷表面に塗布されてもよい。ポリマーバリアコーティング層はまた、1つ又はいくつかの層に塗布され得る。
【0066】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法によって製造された包装材料に関する。本発明による包装材料は、例えば乾燥状態又は液状の食品、化粧品又は医薬品の包装に適している。
【0067】
「セルロース系繊維を含むボール紙基材」とは、少なくとも100gsm又は少なくとも150gsm、より好ましくは少なくとも180gsmの坪量を有するベースボール紙を意味し、硫酸塩パルプ、クラフトパルプ、ソーダパルプ又は亜硫酸パルプなどの化学パルプ、機械パルプ、高精製パルプ(MFC)、サーモメカニカルパルプ又はケミサーモメカニカルパルプであり得る未漂白又は漂白パルプからの繊維を含み、原料は、ボール紙を製造するのに適した針葉樹、広葉樹、リサイクル繊維又は非木材をベースとすることができる。好ましくは、ボール紙基材は、3プライ、例えばトッププライ、バックプライ及びミドルプライなど、少なくとも2つのプライを含む多層ボール紙基材である。ボール紙基材は、例えばデンプン及び着色を含む添加剤を用いて、トッププライの表面上で表面サイジングされ得る。また、バックプライは、表面サイジング及び/又は着色されていてもよく、又はシングルコーティング若しくはダブルコーティングされていてもよい。
【0068】
本出願の文脈において、「最内の」という用語は、層がボール紙基材上に直接塗布されていることを意味する。
【0069】
本発明で使用されるインクは、顔料、又は顔料及び染料を含み、水性若しくは溶媒ベース、又は水性及び(共)溶媒の混合物であり得、その結果インク粒子に適した分散媒が形成される。好ましくは、インクはアニオン性ナノ粒子(着色剤として)を含む。好ましくは、インクは、インクジェット印刷の使用によって、したがって最も好ましくは、リールからリールへの供給又はシート供給のいずれかの高速インクジェット印刷の使用によって印刷されるが、フレキソ印刷、オフセット印刷、液体トナー電子写真印刷及び/又は例えばフレキソ印刷とインクジェットとの組合せを意味するハイブリッド印刷などの他の印刷技術も適用可能である。基材は、顔料を含むインクで印刷される前に追加のプライマー層を備えてもよい。かかるプライマー層は、顔料を含まない塩又はインクを含んでいてもよく、通常のフレキソ印刷法又は輪転グラビア法のいずれかで適用され得る。したがって、インクジェットインクの堆積前に追加のプライマー層を高速インクジェットで塗布することもできる。
【0070】
本発明の包装材料は、さらなるバリア層を備えていてもよい。バックプライには、例えば、1つ又はいくつかの層にポリマーバリアが設けられていてもよい。
【0071】
製法
本発明はさらに、インクジェット若しくはフレキソ印刷された紙若しくは板紙などの表面処理及び印刷された紙若しくは板紙、又は他の繊維ウェブの製造方法に関する。前記製法は、パルプから繊維ウェブを形成する工程と、繊維ウェブを本発明の表面処理組成物の少なくとも1つの層でコーティング又は表面サイジングする工程とを含む。繊維ウェブの表面サイジングは、乾燥セクション、例えばサイズプレスで、又は抄紙機のウェットエンドで適用され得る。この製法は、活性材料が繊維ウェブの表面上の粒子から放出されるように繊維ウェブを処理する後続工程をさらに含む。これは、抄紙機での後続の工程において、例えば表面処理されたウェブの乾燥又はカレンダ加工において、又はpHを変化させることによって、例えば熱を加えることによって組成物に含まれる酸を活性化することによって達成され得る。この製法は、インクジェット印刷及び/又はフレキソ印刷技術を使用して、得られたコーティング又は表面サイジングされた紙又は板紙に印刷を施す工程をさらに含むことができる。
【0072】
本発明はさらに、包装材料の製造方法であって、
a.セルロース系繊維を含むボール紙基材を提供する工程、
b.前記基材の少なくとも1つの表面を本明細書に記載の表面処理組成物で処理する工程、
c.前記処理された表面の少なくとも一部にインクで印刷を施す工程、及び
d.前記の印刷された表面上に少なくとも1つのポリマー層を塗布する工程
を含む製造方法に関する。
【0073】
ボール紙基材は、例えばデンプン及び着色を含む添加剤を用いて、トッププライの表面上で表面サイジングされ得る。また、バックプライは、表面サイジング及び/又は着色されていてもよく、又はシングルコーティング若しくはダブルコーティングされていてもよい。一実施形態において、基材は、デンプン及び添加剤を用いて表面サイジングされる。さらなる実施形態において、基材は、デンプン及び着色を用いて表面サイジングされる。さらなる実施形態において、表面処理組成物は、少なくとも0.1g/mの量で表面に塗布される。なおさらなる実施形態において、デンプンは、少なくとも0.1g/mの量で表面に塗布される。
【0074】
本明細書に記載の表面処理組成物は、限定される訳ではないが、噴霧、カーテンコーティング、押出コーティング、フィルムプレスコーティング又はブレードコーティングを含む、表面サイジング、積層又はコーティングなどの任意の既知の塗布技術を使用してボール紙基材の表面に塗布され得る。
【0075】
ポリマーは、任意の既知のコーティング又はフィルム塗布技術の使用によって、例えば押出コーティングによって印刷表面に塗布されてもよい。ポリマーバリアコーティング層はまた、1つ又はいくつかの層に塗布され得る。
【0076】
発明の具体的な実施形態
実施形態1.ミクロフィブリル化セルロース(MFC)などのナノセルロースと、支持材料及び多価金属の塩を含む活性材料を含む粒子とを含む表面処理組成物。
【0077】
実施形態2.ナノセルロースの量が、表面処理組成物の乾燥量に基づいて計算した場合、0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、最も好ましくは0.1~10重量%である、実施形態1に記載の組成物。
【0078】
実施形態3.組成物が分散液の形態である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の組成物。
【0079】
実施形態4.支持材料が、熱及び/若しくはpHの変化にさらされたとき、又は熱及び圧力にさらされたときに、粒子から活性材料を放出するように適合化されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0080】
実施形態5.前記活性材料が、塩化カルシウムなどのカルシウム塩を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0081】
実施形態6.前記活性材料が酸を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0082】
実施形態7.前記支持材料が、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス、トリグリセリド、金属石鹸、及びスチレン/アクリラート若しくはスチレン/ブタジエンのコポリマー又はこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0083】
実施形態8.前記支持材料が、熱の影響を受けやすく、60~180℃、好ましくは70~110℃の融点又はガラス転移点を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0084】
実施形態9.前記粒子が、活性材料を含むコアを含み、このコアが、支持材料を含むシェルに封入されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0085】
実施形態10.前記コアが活性材料及び結合材料を含み、前記シェルが支持材料で作られている、実施形態9に記載の組成物。
【0086】
実施形態11.前記結合材料が、ワックス、例えばポリエチレンワックス、トリグリセリド、金属石鹸、又は例えばスチレン/アクリラート若しくはスチレン/ブタジエンのコポリマーからなる群から選択される、実施形態10に記載の組成物。
【0087】
実施形態12.前記粒子が、少なくとも50重量%、好ましくは75重量%、最も好ましくは80重量%の量で活性材料を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
【0088】
実施形態13.前記粒子の球径が、100~0.01μm、好ましくは50~0.1μm、最も好ましくは10~0.5μmである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0089】
実施形態14.前記支持材料が、熱及び/又は圧力及び/又はpHの変化にさらされたとき、活性材料を放出するように適合化されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
【0090】
実施形態15.前記支持材料が、前記組成物で表面処理された紙、板紙又は繊維ウェブの乾燥中に活性材料を放出するように適合されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0091】
実施形態16.前記粒子が少なくとも1つの安定剤、例えば親水コロイド及び/又は界面活性剤をさらに含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0092】
実施形態17.前記組成物が、アニオン性、両性又は非イオン性に帯電している、実施形態1~16のいずれか1つに記載の組成物。
【0093】
実施形態18.前記組成物が、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)などの1つ以上のカチオン性ポリマー、又はアルキルケテンダイマー(AKD)若しくはアクリル系コポリマーなどのサイジング剤をさらに含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
【0094】
実施形態19.前記組成物がデンプンを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0095】
実施形態20.前記組成物が、1つ以上のレオロジー調整剤、顔料、着色剤、染料、架橋剤又は殺生物剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0096】
実施形態21.前記組成物が顔料を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0097】
実施形態22.前記組成物がデンプン及び顔料を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0098】
実施形態23.前記組成物がデンプンを含み、ナノセルロースの量がデンプンの量に基づいて1~100重量部である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0099】
実施形態24.前記組成物がデンプンを含み、粒子の量がデンプンの量に基づいて1~100重量部である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0100】
実施形態25.前記組成物がデンプン及び顔料を含み、顔料の量がデンプンの量に基づいて1~500重量部である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0101】
実施形態26.前記組成物が1~20g/m又は1~15g/mのコート重量で塗布される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0102】
実施形態27.表面処理された繊維ウェブの製造方法であって、
a)パルプから繊維ウェブを形成する工程と、
b)前記繊維ウェブを少なくとも1つの層でコーティング又は表面サイジングする工程を含み、前記繊維ウェブが、先行する実施形態のいずれか1つで定義された表面処理組成物でコーティング又は表面サイジングされるものとする、方法。
【0103】
実施形態28.(c)熱及び/又は圧力の適用及び/又はpHの変化によって、前記繊維ウェブの表面上の粒子から前記活性材料を放出させる工程をさらに含む、実施形態27に記載の方法。
【0104】
実施形態29.前記活性材料を粒子から放出させる工程c)が、前記繊維ウェブの乾燥又はカレンダ加工において達成される、実施形態28に記載の方法。
【0105】
実施形態30.実施形態27~29の工程(a)~(b)及び必要に応じて(c)を含み、その後に、(d)インクジェット印刷技術及び/又はフレキソ印刷技術を使用して、コーティング又は表面サイジングされた繊維ウェブに印刷を施す工程が続く、印刷された繊維ウェブの製造方法。
【0106】
実施形態31.前記繊維ウェブが紙又は板紙である、実施形態27~30のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態32.前記組成物が1~20g/m又は1~15g/mのコート重量で塗布される、実施形態27~31のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態33.実施形態1~26のいずれか1つに定義された表面処理組成物を含む紙又は板紙製品。
【0109】
実施形態34.前記包装材料の製造方法であって、
a.セルロース系繊維を含むボール紙基材を提供する工程、
b.実施形態1~26のいずれか1つに定義された表面処理組成物で前記基材の少なくとも1つの表面を処理する工程、
c.前記の処理された表面の少なくとも一部にインクで印刷を施す工程、及び
d.前記の印刷された表面上に少なくとも1つのポリマー層を塗布する工程
を含む方法。
【0110】
実施形態35.実施形態1~19のいずれか1つに定義の表面処理組成物が、少なくとも0.1g/mの量で表面に塗布される、実施形態27~34のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態36.デンプンが少なくとも0.1g/mの量で表面に適用される、実施形態27~35のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態37.前記ポリマー層が、ポリエチレン(PE)及び/又はポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリ乳酸(PLA)及び/又はこれらのいずれかのバイオベース材料を含む、実施形態27~36のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態38.実施形態27~37のいずれか1つの方法によって製造された包装材料。
【0114】
実施形態39.紙又は板紙製品基材と、実施形態1~26のいずれか1つに定義された表面処理組成物を最内層として含む、紙又は板紙製品。
【0115】
実施形態40.前記最内層の少なくとも一部に印刷された水性インクをさらに含む、実施形態39に記載の紙又は板紙製品。
【0116】
実施形態41.前記の印刷された最内層に塗布された熱可塑性ポリマー層をさらに含む、実施形態39~40のいずれか1つに記載の紙又は板紙製品。
【0117】
実施形態42.実施形態1~26のいずれか1つに定義された表面処理組成物を含む、印刷された紙又は板紙製品。
【0118】
実施形態43.インクジェット又はフレキソ印刷機を使用して印刷される、実施形態41に定義された印刷された紙又は板紙製品。
【0119】
実施形態44.改善されたインク乾燥時間、印刷精度及び/又はコーター走行性を有するインクで印刷するための紙又は板紙製品を得るために繊維ウェブを処理するための、実施形態1~26のいずれか1つに定義された表面処理組成物の使用。
【0120】
実施形態45.前記印刷がインクジェット印刷又はフレキソ印刷である、実施形態44に記載の使用。
【0121】

例1
本明細書に記載の表面処理組成物を評価するために、以下の試料3で処理した紙を用いた単色印刷における黒色濃度を、以下の試料1でコーティングした紙の基準、試料2でコーティングした紙の基準、及び非塗工BergaJet紙を使用した基準と比較する一連の試験を実施した。
【0122】
試料1、2及び3の原紙は、Imatra MillsのPM6からの120g/mの非塗工紙であった。
【表1】
【0123】
ワックス/塩粒子を、以下に従って乾式造粒製造方法で作製した:
15kgのCaCl(Tetrachemicals:CC road 77%)
1.6kgのステアリン酸ワックス(Radiacid R 0436、Tallow系C16/C18飽和)
【0124】
ワックス対金属塩の比は1:10(受取時)である。塩及びワックスを乾燥形態で混合し、次いでハンマーミルで粉砕した。
【0125】
図1は、単色印刷において異なるコーティング及び黒色濃度を使用した結果を示す。
【0126】
例2
図2図3図4図5及び図6は、上記の3つの異なるコーティング試料1、試料2及び試料3を有する紙、並びにコピー用紙Colorlokについての、通常設定及びDPI:600でのプリンタ-HPOfficejet 6100による4色印刷の結果を示す。使用される試験画像は、図2に示す通りである。
【0127】
図2は、光学濃度を示す。「光学濃度」はDIN 16536で測定した。K100=100%インク被覆率を有する黒色印刷領域;C100=100%インク被覆率を有するシアン印刷領域;M100=100%インク被覆率を有するマゼンタ印刷領域;Y100=100%インク被覆率を有する黄色印刷領域
【0128】
「粒状性」及び「印刷モトル」は両方とも不均一性の尺度である。
【0129】
図3は、「印刷モトル」を示し、ISO/IEC13660に従って測定した。
【0130】
図4は「粒状性」を示し、ISO/IEC13660に従って測定した。
【0131】
図5は「線幅」を示し、ISO/IEC13660に従って測定した。
【0132】
図6は、「線の凹凸状態」を示し、ISO/IEC13660に従って測定された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】