(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼの阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20220111BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20220111BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
C07D401/14
C07D413/14
A61K31/517
A61K31/5377
A61K31/538
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526424
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2019118136
(87)【国際公開番号】W WO2020098716
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811351513.1
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521204792
【氏名又は名称】ベイジン、レシプロカファーマシューティカルズ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RECIPROCAPHARMACEUTICALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パン、チェンイン
(72)【発明者】
【氏名】チアオ、チャオドン
(72)【発明者】
【氏名】リー、シタオ
(72)【発明者】
【氏名】タオ、コアンユ
(72)【発明者】
【氏名】シー、ヤンシア
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ルイ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB01
4C063BB09
4C063CC31
4C063CC52
4C063CC54
4C063DD12
4C063DD31
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086BC51
4C086BC69
4C086BC73
4C086BC74
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書においてはBtk阻害活性を有する式(I)の化合物が開示され、本明細書において全ての変数は定義されるとおりである。本化合物は、自己免疫疾患、異種免疫疾患、癌または血栓塞栓性疾患などの疾患の治療に使用することができる。また、式(I)の化合物を含む医薬組成物も開示される。さらに、共有結合によってブルトン型チロシンキナーゼの活性を阻害することができる化合物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
Wは、H、C
1-6アルキル、ハロゲン化C
1-3アルキルまたは5~7員含窒素脂肪族環で置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、および-C(O)-R
3からなる群から選択され、ここで、R
3は、C
1-3アルキル、ジ(C
1-3アルキル)アミノ、またはアリールで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり、
Xは、ハロおよびC
1-6アルキルからなる群から選択され、かつ、Xは、ピリドン環上の任意の結合可能な位置に結合しており;
Yは、H、ハロ、C
1-6アルキル、およびC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルコキシからなる群から選択され;
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキル、C(O)、S(O)およびS(O)
2からなる群から選択され;
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR
4R
5で置換されていてもよいC
1-6アルキル、ハロまたは置換されていてもよいC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルケニル、およびC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルキニルからなる群から選択され、ここで置換されていてもよいC
1-3アルキルの置換基はジ(C
1-3アルキル)アミノ、または5~7員含窒素脂肪族環であり;かつ
-NR
4R
5におけるR
4およびR
5は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルキルおよびC
2-3アルケニルカルボニルからなる群から選択されるか、またはR
4およびR
5の一方と、-NR
4R
5で置換されていてもよいC
1-6アルキルにおける1個の炭素原子とが、それらが結合している原子と一緒になって、5~7員の含窒素脂肪族環を形成するが、
R
1がH、またはC
1-3アルコキシ若しくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、L
1は存在せず、かつ、R
2がH、またはC
1-3アルコキシもしくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、L
2は存在しない]
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)が、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含んでなる、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記不飽和炭素-炭素結合が、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合である、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
式中、
Wが、H、-CF
3または
【化2】
で置換されていてもよいアリール、および-C(O)-R
3からなる群から選択され、ここで、R
3が、アリールで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり;
Yが、H、ハロおよびC
1-3アルコキシからなる群から選択され;
R
1およびR
2が、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルおよびC(O)からなる群から選択され;
L
1およびL
2が、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR
4R
5で置換されたC
1-6アルキル、置換C
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルケニル、およびC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルキニルからなる群から選択され、ここで、置換C
1-3アルキルの置換基は、ジメチルアミノ、
【化3】
であり;
-NR
4R
5におけるR
4およびR
5が、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルキル、およびC
2-3アルケニルカルボニルからなる群より選択されるか、またはR
4およびR
5の一方、および-NR
4R
5で置換されたC
1-6アルキルにおける1つの炭素原子が、それらが結合している原子と一緒になってテトラヒドロピロール環を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
式中、
Wが、Hから選択され;
Xが、C
1-6アルキルから選択され;
Yが、HおよびC
1-3アルコキシからなる群から選択され;
R
1およびR
2が、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルキル、およびC(O)からなる群から選択され;
L
1およびL
2が、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR
4R
5で置換されていてもよいC
1-6アルキル、ジ(C
1-3アルキル)アミノC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルケニル、およびC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルキニルからなる群から選択され;かつ
-NR
4R
5におけるR
4およびR
5が、それぞれ独立に、同一または異なり、HおよびC
2-3アルケニルカルボニルからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
式中、
R
1およびR
2の一方が、HまたはC
1-3アルコキシもしくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルであり、他方がC(O)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
式中、
R
1およびR
2の一方が、Hであり、他方がC
1-3アルコキシもしくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)が、-NR
6-C(O)-CH=CH
2、-NR
6-C(O)-C≡C-CH
3、-NR
6-C(O)-CH=CH
2CH
2N(CH
2)
2、
【化4】
からなる群から選択され、ここで、R
6が、HまたはC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルキルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)が、
【化5】
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
式中、
WがHから選択され、Xがメチルから選択され、YがHおよびメトキシからなる群から選択され、-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)が-NR
6-C(O)-CH=CH
2であり、ここでR
6がH、またはC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
式中、
YがC
1-6アルキルまたはC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり、R
1およびR
2の一方がC
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、R
1およびR
2の一方ならびにYが、それらが結合している原子と一緒になって、5~7員の窒素含有脂肪族環を形成することができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
式中、
YがC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり、かつ、R
1およびR
2の一方がC
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、R
1およびR
2の一方ならびにYが、それらが結合している原子と一緒になってモルホリン環を形成することができる、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
前記化合物が、
【化6】
【化7】
【化8】
からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項14】
前記化合物が、
【化9】
からなる群からさらに選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
前記塩が酸付加塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項16】
前記酸付加塩が無機酸付加塩または有機酸付加塩である、請求項15に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
前記塩が、化合物中の酸性プロトンを金属イオンで置換して形成される塩、または有機塩基もしくは無機塩基を化合物に配位して形成される塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
治療上有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
ブルトン型チロシンキナーゼの活性を阻害するための医薬の製造における、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項20】
前記阻害が共有結合により行われる、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記阻害が、化合物とブルトン型チロシンキナーゼ上のアミノ酸残基との間に共有結合を形成することによって達成される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記医薬が、自己免疫疾患、異種免疫疾患、炎症性疾患、癌、および血栓塞栓性疾患からなる群から選択される疾患を治療するために使用される、請求項19~21のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)の活性を阻害する化合物に関する。本発明の化合物は、新規な骨格構造を有し、B細胞に関連する疾患を治療するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
「分子標的療法」は、薬物スクリーニングの標的として腫瘍細胞の分化および増殖に関与するいくつかの重要な酵素を用いて癌を治療する方法であり、抗癌薬の研究および開発における重要な分野となっている。近年、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)シグナル伝達経路は研究の焦点となっており、PTKと腫瘍細胞の増殖、分化、移動およびアポトーシスとの関係について多くの知見が得られている。チロシンキナーゼ経路を妨害または遮断する方針が腫瘍の治療に用いられているため、高い阻害活性を有するPTK阻害剤の開発が新規な抗腫瘍薬を開発するための重要な方法となっている。
【0003】
PTKにおいて、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)は、非受容体型チロシンキナーゼのTecファミリーに属する。Btkは、細胞表面上のB細胞受容体(BCR)の刺激を下流の細胞内応答に結びつけるB細胞シグナル伝達経路において重要な役割を果たし、B細胞の成熟、活性化、シグナル伝達および生存の重要なモジュレーターである。したがって、B細胞に関連する多くのヒト疾患は、Btkの過剰発現に関連している。研究により、チロシンキナーゼの作用を遮断することによって腫瘍細胞の伝播を破壊し、腫瘍を抑制する目的を達成できることが証明されている。その結果、Btk阻害剤は、B細胞媒介を効果的に防止する治療手段であり、主にX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの治療に臨床的に使用されている。さらに、Btkは、様々な生命シグナルプロセスおよび腫瘍組織微小環境の調節に関与し(文献5参照)、自己免疫疾患、異種免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性疾患および固形腫瘍の治療標的でもあることが研究により示されている。
【0004】
最も成功したBtk阻害剤はイブルチニブであり、これは本願発明者のうちの一人によって共同開発された(文献1および2参照)。FDAはこの薬物を「画期的な(breakthrough)」新薬と指定し、研究開発は広く見込まれている。しかしながら、依然としてより多くのBtk阻害剤の開発が必要とされている。
【0005】
本願発明者の一部は、Btk阻害活性を有することが確認された(アミノフェニルアミノ)ピリミジニルベンズアミド阻害剤を先の特許出願(文献3参照)で報告している。
【0006】
また、現在のキナゾリン構造を有するタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤には、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブなどの薬物が含まれる。しかしながら、それらは主に上皮細胞成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを標的とし、それらの骨格構造は基本的に4-アニリノキナゾリンである。また、文献4には、アミノキナゾリンを骨格とする化合物が開示されているが、SrcファミリーのLckキナーゼを標的としている。
【0007】
上記の背景に鑑みて、依然としてBtkに対するより高効率の阻害剤の開発が必要とされており、共有結合の様式でブルトン型チロシンキナーゼの活性を阻害する化合物の開発が優先されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
文献1:CN101610676A
文献2:Zhengying Pan, et al., Chem Med Chem, 2007, 2, pp. 58-61
文献3:WO2013060098A1
文献4:Erin F. Dimauro, et al., J. Med. Chem., 2006, 49, pp. 5671-5686
文献5:Pal Singh S, et al., Mol Cancer,19 Feb 2018;17(1):57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規な骨格構造を有するBtkに対する高効率キナーゼ阻害剤化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様では、式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
Wは、H、C
1-6アルキル、ハロゲン化C
1-3アルキルまたは5~7員含窒素脂肪族環で置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、および-C(O)-R
3からなる群から選択され、ここで、R
3は、C
1-3アルキル、ジ(C
1-3アルキル)アミノ、またはアリールで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり、該アリールは、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル、インデニルなどが挙げられ、該ヘテロアリールは
【化2】
などが挙げられ;
Xは、ハロおよびC
1-6アルキルからなる群から選択され、かつ、Xは、ピリドン環上の任意の結合可能な位置に結合しており;
Yは、H、ハロ、C
1-6アルキル、およびC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルコキシからなる群から選択され;
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキル、C(O)、S(O)およびS(O)
2からなる群から選択され;
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR
4R
5で置換されていてもよいC
1-6アルキル、ハロまたは置換されていてもよいC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルケニル、およびC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルキニルからなる群から選択され、ここで置換されていてもよいC
1-3アルキルの置換基はジ(C
1-3アルキル)アミノ、または5~7員含窒素脂肪族環であり;かつ
-NR
4R
5におけるR
4およびR
5は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルキルおよびC
2-3アルケニルカルボニルからなる群から選択されるか、またはR
4およびR
5の一方と、-NR
4R
5で置換されていてもよいC
1-6アルキルにおける1個の炭素原子とが、それらが結合している原子と一緒になって、5~7員含窒素脂肪族環を形成するが、
R
1がH、またはC
1-3アルコキシ若しくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、L
1は存在せず、かつ、R
2がH、またはC
1-3アルコキシ若しくはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルである場合、L
2は存在しない]
またはその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0011】
好ましい実施態様において、式(I)中の-N(R1-L1)(R2-L2)は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含む。さらに好ましい実施態様において、-N(R1-L1)(R2-L2)中に少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含む式(I)の化合物は、不可逆的な共有結合の様式で(例えば、ブルトン型チロシンキナーゼ上のアミノ酸残基と共有結合を形成することによって)ブルトン型チロシンキナーゼの活性を阻害する。好ましい態様において、不飽和炭素-炭素結合は、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合である。
【0012】
好ましい実施態様において、
Wは、H、-CF
3または
【化3】
で置換されていてもよいアリール、および-C(O)-R
3からなる群から選択され、ここで、R
3は、アリールで置換されていてもよいC
1-3アルコキシであり;
Yは、H、ハロおよびC
1-3アルコキシからなる群から選択され;
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルコキシまたはジ(C
1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC
1-3アルキルおよびC(O)からなる群から選択され;
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR
4R
5で置換されたC
1-6アルキル、置換C
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルケニル、およびC
1-3アルキルで置換されていてもよいC
2-3アルキニルからなる群から選択され、ここで、置換C
1-3アルキルの置換基は、ジメチルアミノ、
【化4】
であり;
-NR
4R
5におけるR
4およびR
5は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C
1-3アルキル、およびC
2-3アルケニルカルボニルからなる群より選択されるか、またはR
4およびR
5の1つ、および-NR
4R
5で置換されたC
1-6アルキルにおける1つの炭素原子は、それらが結合している原子と一緒になってテトラヒドロピロール環を形成する。
【0013】
別の好ましい実施態様では
Wは、Hから選択され;
Xは、C1-6アルキルから選択され;
Yは、HおよびC1-3アルコキシからなる群から選択され;
R1およびR2は、それぞれ独立に、同一または異なり、H、C1-3アルコキシで置換されていてもよいC1-3アルキル、およびC(O)からなる群から選択され;
L1およびL2は、それぞれ独立に、同一または異なり、-NR4R5で置換されていてもよいC1-6アルキル、ジ(C1-3アルキル)アミノC1-3アルキルで置換されていてもよいC2-3アルケニル、およびC1-3アルキルで置換されていてもよいC2-3アルキニルからなる群から選択され;かつ
-NR4R5におけるR4およびR5は、それぞれ独立に、同一または異なり、HおよびC2-3アルケニルカルボニルからなる群から選択される。
【0014】
別の好ましい実施態様において、R1およびR2の一方は、HまたはC1-3アルコキシもしくはジ(C1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC1-3アルキルであり、他方はC(O)である。
【0015】
別の好ましい実施態様において、R1およびR2の一方は、Hであり、他方はC1-3アルコキシもしくはジ(C1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC1-3アルキルである。
【0016】
別の好ましい実施態様において、-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)は、-NR
6-C(O)-CH=CH
2、-NR
6-C(O)-C≡C-CH
3、-NR
6-C(O)-CH=CH
2CH
2N(CH
2)
2、
【化5】
からなる群から選択され、ここで、R
6は、HまたはC
1-3アルコキシで置換されていてもよいC
1-3アルキルである。
【0017】
別の好ましい実施態様において、-N(R
1-L
1)(R
2-L
2)は、
【化6】
からなる群から選択される。
【0018】
別の好ましい実施態様において、WはHから選択され、Xはメチルから選択され、YはHおよびメトキシからなる群から選択され、かつ、-N(R1-L1)(R2-L2)は-NR6-C(O)-CH=CH2であり、ここでR6は、H、またはC1-3アルコキシで置換されていてもよいC1-3アルキルである。
【0019】
別の好ましい実施態様において、YがC1-6アルキルまたはC1-3アルコキシで置換されていてもよいC1-3アルコキシであり、かつ、R1およびR2の一方がC1-3アルコキシまたはジ(C1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC1-3アルキルである場合、R1およびR2の一方ならびにYは、それらが結合している原子と一緒になって、5~7員の窒素含有脂肪族環を形成することができる。
【0020】
別の好ましい実施態様において、YがC1-3アルコキシで置換されていてもよいC1-3アルコキシであり、R1およびR2の一方がC1-3アルコキシまたはジ(C1-3アルキル)アミノで置換されていてもよいC1-3アルキルである場合、R1およびR2の一方とYとは、それらが結合している原子と一緒になってモルホリン環を形成することができる。
【0021】
本発明の別の態様において、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩が提供され、ここで、化合物は、
【化7】
【化8】
【化9】
からなる群から選択される。
【0022】
さらに化合物は、
【化10】
からなる群からさらに選択される。
【0023】
本発明の化合物は、その薬学的に許容可能な塩として調製または使用することができる。これは、当技術分野で公知の任意の塩形成法によって行うことができる。例えば、薬学的に許容可能な塩は、無機酸付加塩または有機酸付加塩などの酸付加塩であってもよい。例えば、薬学的に許容可能な塩は、化合物中の酸性プロトンを金属イオンに置換して形成される塩、または有機塩基または無機塩基を化合物に配位させる形成された塩であってもよい。
【0024】
本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼの阻害剤を提供するものである。また、本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼの活性を共有結合様式で阻害する阻害剤化合物を提供するものである。本発明は、特にブルトン型チロシンキナーゼ上のアミノ酸残基と共有結合を形成することができる化合物を提供するものである。
【0025】
本発明の別の態様によれば、有効量の本発明の上記化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明はまた、ブルトン型チロシンキナーゼの活性を阻害するための医薬の製造における、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供するものである。好ましい態様において、阻害は共有結合によって行われる。さらに好ましい態様において、阻害は、化合物とブルトン型チロシンキナーゼ上のアミノ酸残基との間に共有結合を形成することによって達成される。
【0027】
本発明の別の態様において、以下の疾患または状態:自己免疫疾患、異種免疫疾患、炎症性疾患、癌、および血栓塞栓性疾患を処置するための医薬の製造における、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、骨格として2-ピリドン環に結合した(アミノフェニルアミノ)キナゾリンを有するBtkに対する高効率のキナーゼ阻害剤化合物を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例23および26の化合物を2つの濃度(0.5μMおよび5μM)でBTKと共に1時間インキュベートし、次いでSci.Rep.2015,5,16136に従って調製したプローブを添加し、1時間インキュベートした後のSDS-PAGE電気泳動からの走査結果を示すグラフである。結果は、蛍光プローブで標識されたBTKに対する2つの濃度の化合物の阻害効果を示す。
【発明の具体的説明】
【0030】
別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、特許請求の対象が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同一の意味を有する。標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg, Advanced Organic Chemistry, 4th Ed., Vols. A(2000)and B(2001),Plenum Press, New Yorkをはじめとする参考文献に見出すことができる。
【0031】
「C1-6アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む1~6個の炭素原子を有するアルキル基を指し、n-プロピルおよびイソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどの全ての可能な異性体形態を含む。「C1-6アルキル」は、C1-2アルキル、C1-3アルキル、C1-4アルキル、C1-5アルキル、C2-5アルキル、C3-5アルキル、C4-5アルキル、C3-4アルキル、C3-5アルキルおよびC4-5アルキルなどのその中に含まれる全ての部分範囲を含む。「C1-3アルキル」には、メチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルが含まれる。「C2-3アルケニル」には、ビニル(-CH=CH2)、プロペニル(-CH=CHCH3)およびイソプロペニル(-C(CH3)=CH2)が含まれる。「C2-3アルキニル」には、エチニル(-C≡CH)およびプロピニル(-C≡CCH3)が含まれる。芳香族基は、4n+2π電子を含有する非局在化π電子系を有する平面環を指し、nは整数である。芳香族基は、5、6、7、8、9個、または9個超の環原子から形成され得る。芳香族基は置換されていてもよい。芳香族基には、「アリール」(環原子が炭素原子のみからなる)および「ヘテロアリール」(環原子が炭素原子と、例えば酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される1つまたは複数のヘテロ原子とからなる)が含まれる。「アリール」および「ヘテロアリール」には、単環式または縮合多環式(すなわち、隣接する対の環原子を共有する環)基が含まれる。「アリール」の例には、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル、およびインデニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
「ヘテロアリール」の例には、
【化11】
などが含まれる。
【0033】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。「C1-3アルコキシ」とは、(C1-3アルキル)O-を指し、ここで、C1-3アルキルは、本明細書に定義されるとおりである。ジ(C1-3アルキル)アミノとは、ジ(C1-3アルキル)N-を指し、ここで、C1-3アルキルは、本明細書に定義されるとおりである。C2-3アルケニルカルボニルとは、(C2-3アルケニル)C(O)-を指し、ここで、C2-3アルケニルは、本明細書に定義されるとおりである。「ハロゲン化C1-3アルキル」とは、ハロ-(C1-3アルキル)-を指し、ここで、C1-3アルキルは、本明細書に定義されるとおりである。ハロゲン化C1-3アルキルには、C1-3アルキル中の全ての水素原子がハロゲンで置換されている過ハロゲン化C1-3アルキル、例えば-CF3、-CH2CF3、-CF2CF3、-CH2CH2CF3などが含まれる。
【0034】
5~7員の窒素含有脂肪族環は、少なくとも1つの窒素原子を含有する飽和単環式環であって、各環が5、6または7個の原子(水素原子または水素原子が置換されている場合の置換基を除く)を含む環を指す。例えば、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジアザシクロヘキサン、1,4-ジアザシクロヘキサン、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソキサゾリジニル、チオモルホリニル、イミダゾリニル等が挙げられる。例えば、5~7員の含窒素脂肪族環などの複素環基は、該基に含まれる置換可能な炭素原子または置換可能な窒素原子を介して、好ましくは窒素原子を介して化合物の主構造に結合している。
【0035】
製剤、組成物または成分に関して「薬学的に許容可能」という用語は、本明細書で使用される場合、治療を受けている対象の健康全般に対して持続的な有害効果を有さないことを意味するか、または化合物の生物学的活性もしくは特性を無力化せず、比較的非毒性であることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「ブルトン型チロシンキナーゼ」という用語は、例えば、米国特許第6326469号(GenBank受託番号NP_000052)に開示されているような、ホモ・サピエンス由来のブルトン型チロシンキナーゼを指す。
【0037】
本明細書で使用される「有効量」または「治療上有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の症状の1つまたは複数をある程度軽減する、投与されている薬剤または化合物の十分な量を指す。結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減および/もしくは緩和、または生体系の任意の他の所望の変化であってもよい。例えば、治療的使用のための「有効量」は、過度の有害な副作用を伴わずに疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる量である。任意の個体の症例における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定することができる。「治療上有効量」という用語には、例えば、予防有効量が含まれる。本明細書に開示される化合物の「有効量」は、過度の有害な副作用を伴わずに所望の薬理学的効果または治療的改善を達成するのに有効な量である。「有効量」または「治療上有効量」は、化合物の代謝の変動、対象の年齢、体重、状態全般、治療されている状態、治療されている状態の重症度、および処方医師の判断に起因して、対象ごとに変動し得ることが理解される。ほんの一例として、治療上有効量は、限定することなく用量漸増臨床試験などの日常的な実験によって決定され得る。
【0038】
キナーゼの「阻害する」、「阻害している」または「阻害剤」という用語は、本明細書で使用される場合、ブルトン型チロシンキナーゼの活性の阻害を指す。
【0039】
本明細書中に記載される自己免疫疾患としては、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、スティル病、若年性関節炎、狼瘡、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オルド甲状腺炎、グレーブス病、関節リウマチ症候群、多発性硬化症、感染性神経炎、急性播種性脳脊髄炎、アジソン病、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、全身性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経失調症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、強皮症、および外陰部痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書中に記載される異種免疫疾患としては、移植片対宿主病、移植、輸血、アナフィラキシー、アレルギー(例えば、植物花粉、ラテックス、薬物、食物、昆虫毒、動物の毛、動物の鱗屑、チリダニ、またはゴキブリ屑に対するアレルギー)、I型過敏症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書中に記載される炎症性疾患としては、喘息、炎症性腸疾患、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頸炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合識炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、喉頭炎、乳腺炎、骨髄炎、脊髄炎心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎孟腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、膣炎、脈管炎、および外陰炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書に記載の癌、例えば、B細胞増殖疾患としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性濾胞帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、およびリンパ腫様肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書に記載の血栓塞栓性疾患としては、心筋梗塞、狭心症(不安定狭心症を含む)、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術後の再閉塞または再狭窄、脳卒中、一過性虚血、末梢動脈閉塞性障害、肺塞栓症、および深部静脈血栓症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
上記疾患の各症状の診断および予後の評価は当技術分野で公知である。例えば、Harrison's Principles of Internal, 16th Ed., 2004, The McGraw-Hill Companies, Inc. Dey, et al. (2006), Cytojournal 3(24)、および「Revised European American Lymphoma」(REAL)分類システム(例えば、National Cancer Instituteが管理するウェブサイトを参照のこと)を参照のこと。
【0045】
前述の疾患のいずれかを治療するためのBtk阻害剤化合物の治療上有効用量の範囲を確立するために多くの動物モデルが有用である。
【0046】
前述の疾患の1つに対する化合物の治療有効性は、治療過程中に最適化することができる。例えば、治療を受けている対象は、疾患症状または病態の軽減を、所与の用量のBtk阻害剤を投与することによって達成されるin vivo Btk活性の阻害と相関させるための診断評価を受けることができる。当技術分野で公知の細胞アッセイを使用して、Btk阻害剤の存在下または非存在下でのBtkのin vivo活性を決定することができる。例えば、活性化Btkはチロシン223(Y223)およびチロシン551(Y551)でリン酸化されるので、P-Y223またはPY551陽性細胞のリン酸特異的免疫細胞化学染色を使用して、細胞集団におけるBktの活性化を検出または定量することができる(例えば、染色細胞対非染色細胞のFACS分析による)。例えば、Nisitani, et al. (1999), Proc. Natl. Acad. Sci, USA 96:2221-2226を参照されたい。したがって、対象に投与されるBtk阻害剤化合物の量は、対象の疾患状態を治療するのに最適なBtk阻害レベルを維持するように、必要に応じて増加または減少させることができる。
【0047】
本明細書に記載される化合物の合成に使用する出発物質は、合成され得るか、または限定することなく、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, Wisconsin)、Bachem(Torrance, California)、もしくはSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)などの商業的供給源から得ることができる。本明細書に記載される化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、March, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 4th Ed., (Wiley 1992); Carey and Sundberg, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000, 2001); Green and Wuts, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, 3rd Ed., (Wiley 1999); Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991); およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)(それらの全体は参照することにより本明細書に組み込まれるものとする)に記載されているような当業者に公知の技術および材料を用いて合成することができる。本明細書に記載される化合物を合成するための他の方法は、国際特許公開第WO 01/01982901, Arnold, et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 10 (2000) 2167-2170; Burchat, et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12 (2002) 1687-1690に見出され得る。本明細書に開示される化合物を調製するための一般的な方法は、当技術分野で公知の反応に由来してもよく、反応は、本明細書に提供される分子中に見出される様々な部分の導入のために、当業者によって適切であるとみなされる適切な試薬および条件の使用によって改変され得る。以下の合成方法を指針として用いることができる。
【0048】
反応の生成物は、所望であれば従来の技術(濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、単離および精製してもよい。そのような生成物は、物理定数およびスペクトルデータを含む従来の手段を使用して特徴付けられ得る。
【0049】
本明細書に記載の化合物は、単一の異性体または異性体の混合物として、本明細書に記載の合成方法を使用して調製することができる。
【0050】
本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数の立体中心を有することができ、各中心は、RまたはS立体配置で存在することができる。本明細書に提示される化合物には、すべてのジアステレオマー、エナンチオマー、およびエピマーの形態、ならびにそれらの適切な混合物が含まれる。立体異性体は、所望であれば、当技術分野公知の方法(例えば、キラルクロマトグラフィーカラムによる立体異性体の分離)によって得られ得る。
【0051】
ジアステレオマー混合物は、公知の方法(例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶化)によって、それらの物理的化学的差異に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離され得る。一つの実施態様において、エナンチオマーは、キラルクロマトグラフィーカラムによって分離することができる。他の実施態様において、エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、アルコール)との反応によってエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純粋なエナンチオマーに変換する(例えば、加水分解する)ことによって分離することができる。ジアステレオマー、エナンチオマー、およびそれらの混合物を含むすべてのそのような異性体は、本明細書に記載される組成物の一部と見なされる。
【0052】
本明細書に記載の方法および製剤は、本明細書に記載の化合物のN-オキシド、結晶形態(多形としても知られる)、または薬学的に許容可能な塩、ならびに同じタイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝物の使用を含む。いくつかの状況において、化合物は互変異性体として存在し得る。全ての互変異性体は、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。加えて、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態、ならびに水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒との溶媒和形態で存在することができる。本明細書に提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に開示されているとみなされる。
【0053】
非酸化形態は、N-オキシドから適切な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなどであるが、これらに限定されない)中、0~80℃で、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物などであるが、これらに限定されない)で処理することによって調製することができる。
【0054】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される化合物は、プロドラッグとして調製される。「プロドラッグ」とは、in vivoで親薬物に変換される薬剤を指す。いくつかの状況において、親薬物よりも投与が容易であるため、プロドラッグは多くの場合有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、親薬物よりも医薬組成物への溶解度が改善され得る。プロドラッグは、部位特異的組織への薬物輸送を増強するために、可逆的薬物誘導体として設計され得る。いくつかの実施態様において、プロドラッグの設計は、効果的に水溶性を増加させる。例えば、Fedorak, et al., Am. J. Physiol, 269: G210-218(1995); McLoed, et al., Gastroenterol, 106: 405-413(1994); Hochhaus, et al., Biomed. Chrom., 6: 283-286 (1992); J. Larsen and H. Bundgaard, Int. J. Pharmaceutics, 37, 87(1987); J. Larsen, et al., Int. J. Pharmaceutics, 47, 103 (1988); Sinkula, et al., J. Pharm. Sd., 64: 181-210 (1975); T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, the A.C.S. Symposium Series, Vol. 14; およびEdward B. Roche, Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987 (すべて参照することによりそれらの全体は本明細書に組み込まれる)。プロドラッグの非限定的な例は、水溶性が移動性に有害である細胞膜を横切る伝達を促進するためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、水溶性が有益である細胞内に入ると、活性実体であるカルボン酸に代謝的に加水分解される、本明細書に記載の化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得、ここで、ペプチドは代謝されて活性部分を現す。特定の実施態様において、in vivo投与の際に、プロドラッグは、化合物の生物学的、薬学的または治療的に活性な形態に化学的に変換される。特定の実施態様において、プロドラッグは、1つまたは1つ以上の工程または方法によって酵素的に代謝され、化合物の生物学的、薬学的または治療的に活性な形態となる。薬学的に活性な化合物は、プロドラッグを生成するように改変され得、その結果、活性な化合物がin vivo投与の際に再生される。プロドラッグは、薬物の代謝安定性または輸送特性を変化させるように、副作用または毒性を隠すように、薬物の風味を改善するように、または薬物の他の特徴または性質を変化させるように設計され得る。一度薬学的に活性な化合物が知られるならば、in vivoでの薬力学的プロセスおよび薬物代謝の知識に基づいて、当業者はその化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady (1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York, pages 388-392; Silverman (1992), The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, Academic Press, Inc., San Diego, pages 352-401, Saulnier, et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。
【0055】
本明細書に記載される化合物のプロドラッグ形態であって、そのプロドラッグがin vivoで代謝されて本明細書に示される誘導体を生成するものは、特許請求の範囲内に含まれる。いくつかの場合において、本明細書に記載される化合物のいくつかは、活性化合物のプロドラッグまたは別の誘導体であってもよい。
【0056】
本明細書に記載される化合物は、同位体を含む化合物を包含し、これは、分子式および構造式において本明細書に列挙されるものと同一であるが、1つ以上の原子が、同じ元素を有するが、通常天然に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する核種によって置換されるという事実についてである。例えば、水素が本明細書に記載される化合物中の任意の位置に存在する場合、それはまた、水素の同位体(例えば、プロチウム、重水素、三重水素など)がその位置で生じる場合を含む。本明細書に記載される化合物中に組み込むことができる同位体の例としては、限定されないが、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素および塩素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clが挙げられる。ある特定の同位体(例えば、3Hおよび14Cなどの放射性同位体)を含む本明細書に記載される化合物は、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。
【0057】
追加のまたはさらなる実施態様において、本明細書に記載される化合物は、必要とする生物への投与時に代謝されて代謝産物を生成し、次いでこれを使用して、所望の治療効果を含む所望の効果を発揮する。
【0058】
本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容可能な塩として、形成されてもよく、および/または使用されてもよい。薬学的に許容可能な塩の種類としては、(1)遊離塩基形態の化合物を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸などの薬学的に許容可能な無機酸;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、馬尿酸、ゲンチジン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、ニコチン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸などと反応させることによって形成される酸付加塩;(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウムまたはカルシウム)、またはアルミニウムイオンによって置換される場合に形成される塩;あるいは(3)有機塩基または無機塩基と配位することによって形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。許容可能な有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルグルカミンなどが挙げられる。許容可能な無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0059】
薬学的に許容可能な塩の対応する対イオンは、限定するものではないが、イオン交換クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、誘導結合プラズマ、原子吸光分光法、質量分析法、またはそれらの任意の組み合わせを含む様々な方法を使用して分析および同定し得る。
【0060】
塩は、以下の技術のうちの少なくとも1つを使用することによって回収することができる:濾過、非溶媒を用いた沈殿後の濾過、溶媒の蒸発、または水溶液の場合には凍結乾燥。
【0061】
薬学的に許容可能な塩を言及している際は、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形が含まれることを理解するべきである。溶媒和物は、化学量論量の溶媒または非化学量論量の溶媒のいずれかを含有し、水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒を用いた結晶化のプロセス中に形成され得る。水和物は、溶媒が水である場合に形成されるか、またはアルコラートは、溶媒がアルコールである場合に形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセスの間に都合よく調製または形成されることができる。加えて、本明細書に提供される化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本明細書に提供される化合物および方法の目的のために非溶媒和形態と等価であると考えられる。
【0062】
本明細書に記載される化合物は、非晶質形態、粉砕形態およびナノ粒子形態を含むが、これらに限定されない様々な形態であり得る。加えて、本明細書に記載される化合物は、多形としても知られる結晶形態を含む。多形は、化合物の同一の元素組成の異なる結晶充填配置を含む。多形は、通常異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学および電気特性、安定性、ならびに溶解度を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および保存温度などの様々な因子により、単結晶形態が優勢になり得る。
【0063】
薬学的に許容可能な塩、多形および/または溶媒和物のスクリーニングおよび特徴付けは、限定するものではないが、熱分析、X線回折、分光法、蒸気吸着、および顕微鏡検査を含む様々な技術を使用して行うことができる。熱分析方法は、限定するものではないが、多形転移を含む熱化学分解または熱物理的プロセスに対処し、そのような方法は、多形形態間の関係を分析し、重量減少を決定し、ガラス転移温度を見出すために、または賦形剤適合性を研究するために使用される。そのような方法としては、示差走査熱量測定(DSC)、変調示差走査熱量測定(MDCS)、熱重量分析(TGA)、ならびに熱重量分析兼赤外線分析(TG/IR)が挙げられるが、これらに限定されない。X線回折法としては、単結晶および粉末回折計ならびにシンクロトロン源が挙げられるが、これらに限定されない。使用されている様々な分光技術としては、ラマン、FTIR、UVIS、およびNMR(液体および固体状態)が挙げられるが、これらに限定されない。様々な顕微鏡技術としては、偏光顕微鏡法、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を有する走査型電子顕微鏡法(SEM)、EDXを有する環境制御走査型電子顕微鏡法(気体または水蒸気雰囲気中)、IR顕微鏡法、およびラマン顕微鏡法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書における担体としては、従来の希釈剤、賦形剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、滑剤、必要に応じて香味剤、甘味剤等が挙げられ、これらは薬学分野において通常用いられるものである。本発明の薬剤は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、経口液剤、注射剤などの種々の形態に調製することができる。様々な剤形の上記医薬は、薬学分野における従来の方法によって調製することができる。
【0065】
本明細書中で使用される場合、IC50とは、最大応答の50%阻害(例えば、Btkの阻害)を、このような応答を測定するアッセイにおいて達成する特定の試験化合物の量、濃度または投薬量をいう。
【0066】
本明細書を通して、当業者であれば安定な化合物を提供するためにその基および置換基を選択することができる。
【実施例】
【0067】
以下の具体的かつ非限定的な例は、単なる例示として解釈されるべきであり、本開示をいかなる形でも限定するものではない。さらに詳述することなく、当業者であれば本明細書の記載に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。
【0068】
別段の指定がない限り、本明細書の実施例で使用される様々な化合物、試薬、材料などは、当業者が一般的に使用する手法によって合成または取得されたものである。
【0069】
化合物の合成
以下の合成スキームでは以下の略語を使用する。
Boc:t-ブトキシカルボニル;
BOPCl:ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)スルフィニルクロリド;
DCM:ジクロロメタン;
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;
DMF:ジメチルホルムアミド;
DPB:ビス(ピナコラト)二ホウ素;
Et:エチル;
HATU:2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
Me:メチル;
NMP:N-メチルピロリドン;
Pd(dppf)Cl2:[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロリド;
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム;
PMB:p-メトキシベンジル;
rt/RT:室温;
TEA:トリエチルアミン;
TFA:トリフルオロ酢酸;
THF:テトラヒドロフラン;
XantPhos:4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルキサンテン。
【0070】
合成スキームI
工程1:
【化12】
炭酸グアニジン(281g、1.56mol)、DIEA(540mL、3.12mol)およびNMP(1L)の混合溶液を撹拌しながら150~160℃に加熱し、NMP(100ml)中、5-ブロモ-2-フルオロベンズアルデヒド(250g、1.20mol)の溶液をゆっくり滴下した。3時間反応させた後、温度を100℃に下げた。氷(2kg)と水(4L)を加え、黄褐色固体を析出させた。30分間撹拌を続けた後、反応液を減圧濾過し、水(1L)とエタノール(1L)で洗浄した。得られたフィルターケーキを5Lフラスコに移し、エタノール(2L)を加えた。混合物を2時間撹拌し、濾過し、エタノール(0.5L)、トルエン/エタノール(1:1、0.5L)およびトルエン(0.5L)で順次洗浄し、乾燥させて、化合物3を淡黄色固体として得た(168g、48%)。
【0071】
工程2:
【化13】
化合物3(5.0g、22.3mmol)、ヨウ化第一銅(4.30g、22.3mmol)およびジヨードメタン(9.0mL、114mmol)をTHF(100mL)中に溶解した。亜硝酸イソアミル(9.0mL、68mmol)を添加し、窒素雰囲気下で2.5時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却し、酢酸エチル(500mL)および1N HCl(500mL)を添加した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過および濃縮した。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン、100%)で分離して、化合物4(2.60g、35%)を白色に近い粉末固体として得た。
【0072】
工程3:
【化14】
化合物4(4.0g、12.0mmol)およびN-Boc-m-フェニレンジアミン(3.7g、17.9mmol)を1,4-ジオキサン(200mL)中に溶解し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロリド(820mg、1.1mmol)および炭酸セシウム(19.5g、60.0mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、100℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、減圧下でセライトを通して濾過した。得られた濾液を酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:1)で分離することにより、化合物5(3.4g,68%)を淡黄色粉末状固体として得た。
【0073】
工程4:
【化15】
化合物5(3.37g、8.1mmol)およびビス(ピナコラト)二ホウ素(12.17g、3.1mmol)をジメチルホルムアミド(200mL)に溶解し、[(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ))フェロセン]パラジウム ジクロリド(594mg、0.8mmol)および酢酸カリウム(4.0g、40.5mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、80℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて、減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1~5:1)で分離することにより、化合物6(2.63g,70%)を淡黄色粉末状固体として得た。
【0074】
工程5:
【化16】
水素化ナトリウム(3.2g、72.7mmol)を500mLのテトラヒドロフラン中に分散させた。室温で撹拌しながら4-メトキシベンジルアルコール(10.0g、72.4mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液をゆっくり加えた。室温で30分間撹拌した後、3-ブロモ-2-クロロ-4-メチルピリジン(10.0g、48.4mmol)を加えた。反応系を75℃に加熱し、5時間撹拌した。反応完了後、水(50mL)でクエンチし、酢酸エチルで希釈した。分液後、有機相を水および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製することにより、化合物8(12.0g,81%)を淡黄色粘性液体として得た。
【0075】
工程6:
【化17】
化合物6(230mg,0.50mmol)と化合物8(230mg,0.75mmol)をアセトニトリルと水の混合溶液(60mL/20mL)に溶解し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロライド(37mg,0.05mmol)と炭酸カリウム(414mg,3.00mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、82℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:1)で分離することにより、化合物9(200mg,71%)を黄色粉末状固体として得た。
【0076】
工程7:
【化18】
化合物9(550mg、0.98mmol)を100mLのジクロロメタン中に分散させた。撹拌しながら25mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと反応系に滴下した。最終反応系を室温で2時間絶えず撹拌した後、減圧下で濃縮して固体を得た。残渣を酢酸エチル中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=15:1)で精製して、化合物10(264mg、79%)を淡黄色固体として得た。
【0077】
合成スキームII
方法1:
【化19】
化合物10(430mg,1.25mmol)をTHFと水の混合溶媒(200mL,4:1(V/V))に分散させた後、トリエチルアミン(0.26mL,1.87mmol)を加えた。ゆっくり攪拌しながら、塩化アクリロイル(150μL,1.87mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応溶液を室温で2時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製して、化合物11(367mg、収率:92%)を淡黄色粉末固体として得た。
【0078】
方法2:
【化20】
化合物10(25mg、0.07mmol)および2-ブテン酸(7mg、0.08mmol)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶解した後、HATU(40mg、0.11mmol)を加えた。ゆっくり撹拌しながら、トリエチルアミン(30μL、0.22mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応液を70℃に加熱し、3時間撹拌した。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。減圧濃縮後、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=25:1)で精製して、化合物12(15mg、収率:52%)を淡黄色粉末固体として得た。
【0079】
方法3:
【化21】
化合物10(1.10g、3.21mmol)および4-ブロモ-2-トランス-ブテン酸(0.69g、4.14mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解した後、HATU(2.20g、5.78mmol)を加えた。ゆっくり撹拌しながら、トリエチルアミン(1.3mL、9.63mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応液を室温で3時間撹拌した。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。減圧濃縮後、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。最終有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)で精製して、化合物13(1.10g、収率:70%)を淡黄色粉末固体として得た。
【0080】
化合物13(146mg、0.3mmol)をTHF(5mL)中に溶解させた後、DIPEA(98μL、0.6mmol)を加えた。ゆっくり撹拌しながら、ジメチルアミン溶液(67μL、0.6mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応溶液を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製して、化合物14(84mg、収率:62%)を淡黄色粉末状固体として得た。
【0081】
合成スキームIII
工程1:
【化22】
化合物10(90mg,0.26mmol)をTHFと水の混合溶媒(30mL,1:1(V/V))に分散させた後、トリエチルアミン(62μL,0.45mmol)を加えた。撹拌しながら、Boc
2O(80μL,0.35mmol)を0℃でゆっくり反応系に滴下した。反応溶液を室温で24時間撹拌した後、酢酸エチルを加えて溶解させ、分液した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)で精製することにより、化合物15(61mg、収率53%)を淡黄色固体として得た。
【0082】
工程2:
【化23】
化合物15(61mg、0.14mmol)、リン酸カリウム(117mg、0.55mmol)およびヨウ化第一銅(11mg、0.06mmol)をNMP(5mL)中に分散させ、化合物16(40μL、0.28mmol)およびN,N’-ジメチルエチレンジアミン(15μL、0.14mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、85℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で6時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~2:1)で分離することにより、化合物17(84mg,99%)を黄緑色粉末状固体として得た。
【0083】
工程3:
【化24】
化合物17(84mg、0.14mmol)をジクロロメタン25mLに分散させ、撹拌しながらトリフルオロ酢酸5mLをゆっくり反応系に滴下した。最終的な反応系を室温で1時間絶えず撹拌した後、減圧濃縮して固体を得た。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で精製し、化合物18(30mg,43%)を黄色粉末固体として得た。
【0084】
工程4:
【化25】
化合物18(23mg,0.05mmol)をTHFと水の混合溶媒(15mL,3:1(V/V))中に分散させた後、トリエチルアミン(10μL,0.07mmol)を加えた。ゆっくり撹拌しながら、塩化アクリロイル(6μL,0.07mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応溶液を室温で3時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で精製して、化合物19(17mg、収率:67%)を薄黄緑色の粉末固体として得た。
【0085】
合成スキームIV
工程1:
【化26】
化合物3(500mg、2.25mmol)およびビス(ピナコラト)二ホウ素(860mg、3.38mmol)をジメチルホルムアミド(50mL)に溶解し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロリド(165mg、0.23mmol)および酢酸カリウム(1.1g、11.25mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、85℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~1:1)で分離することにより、化合物20(310mg,51%)を淡黄色粉末状固体として得た。
【0086】
工程2:
【化27】
化合物20(140mg、0.5mmol)と化合物8(230mg、0.75mmol)をアセトニトリルと水の混合溶液(40mL/15mL)に溶解させ、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロリド(37mg,0.05mmol)と炭酸カリウム(414mg,3.00mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、82℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:2)で分離することにより、化合物21(111mg,60%)を黄色粉末状固体として得た。
【0087】
工程3:
【化28】
化合物22(2.0g,22.83mmol)をTHFと水の混合溶媒(250mL,4:1(V/V))中に分散させた後、トリエチルアミン(4.8mL,34.25mmol)を加えた。ゆっくり撹拌しながら、塩化アクリロイル(2.8mL,34.25mmol)をゆっくり反応系に滴下した。反応溶液を室温で12時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物23(6.17g、粗収率:99%)を白色に近い粉末固体として得た。
【0088】
60%水素化ナトリウム(1.5g、37.5mmol)をテトラヒドロフラン50mL中に分散させた後、0℃で撹拌しながら化合物23(1.5g、5.5mmol)をゆっくり加えた。反応系を室温に温め、30分間撹拌した。ヨードエタン(1.5mL、18.7mmol)を溶液に滴下した。反応系を60℃に加熱し、20h撹拌した。反応完了後、水(50mL)でクエンチし、酢酸エチルで希釈した。分液後、有機相を水および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、化合物24(1.2g,70%)を深黄色粘性液体として得た。
【0089】
工程4:
【化29】
化合物24(1.2g、4.0mmol)および化合物21(1.0g、2.7mmol)を1,4-ジオキサン(100mL)中に溶解し、Pd
2(dba)
3(250mg、0.27mmol)、XantPhos配位子(312mg、0.54mmol)および炭酸セシウム(4.4g、13.5mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、アルゴン雰囲気下で82℃に加熱して20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:2)で分離することにより、化合物25(840mg,57%)を黄色粉末状固体として得た。
【0090】
工程5:
【化30】
化合物25(100mg、0.18mmol)をジクロロメタン25mL中に分散させ、撹拌しながらトリフルオロ酢酸5mLをゆっくり反応系に滴下した。最終的な反応系を室温で絶えず1時間撹拌した後、減圧下で濃縮して固体を得た。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で精製し、化合物26(31mg,40%)を淡黄色粉末固体として得た。
【0091】
合成スキームV
方法1:
【化31】
化合物26(30mg、0.07mmol)を無水酢酸(10mL)に溶解し、4-ジメチルアミノピリジン(8mg)を添加した。反応系を100℃で2時間加熱した。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温まで冷却し、回転させて溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:2)で分離することにより、化合物27(14mg,43%)を白色に近い粉末状固体として得た。
【0092】
方法2:
【化32】
化合物26(50mg,0.12mmol)をNMP(5mL)中に溶解し、ヨウ化第一銅(10mg,0.05mmol)、リン酸カリウム(100mg,0.50mmol)、2-ヨードオキサゾール(50mg,0.24mmol)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(15μL,0.12mmol)を順次加えた。反応系を85℃で24時間加熱した。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温まで冷却し、回転させて溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=25:1)で分離して、化合物28(30mg,51%)を黄色粉末状固体として得た。
【0093】
合成スキームVI
工程1:
【化33】
60%水素化ナトリウム(6.0g、150mmol)を300mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、0℃で撹拌しながら化合物22(6.6g、30mmol)をゆっくり加えた。反応物を室温に温め、30分間撹拌した。ヨードエタン(3.6mL、45mmol)を溶液に添加した。反応系を60℃に加熱し、20時間撹拌した。反応完了後、水(50mL)でクエンチし、酢酸エチルで希釈した。分液後、有機相を水および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、化合物29(5.2g,70%)を深黄色粘性液体として得た。
【0094】
工程2:
【化34】
化合物29(470mg、1.9mmol)および化合物21(590mg、1.6mmol)を1,4-ジオキサン(50mL)中に溶解し、Pd
2(dba)
3(147mg、0.20mmol)、XantPhos配位子(185mg、0.40mmol)および炭酸セシウム(2.6g、8.0mmol)を加えた。反応系をアルゴンで3回パージし、100℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で20時間反応させた。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応溶液を室温に冷却し、セライトで濾過した。得られた濾液を回転させて減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルおよび水で希釈した。分液後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:1)で分離することにより、化合物30(276mg,56%)を黄色粉末状固体として得た。
【0095】
工程3:
【化35】
化合物30(84mg、0.17mmol)をジクロロメタン10mL中に分散させ、撹拌しながらトリフルオロ酢酸1mLをゆっくりと反応系に滴下した。最終的な反応系を室温で絶えず1時間撹拌した後、減圧下で濃縮して固体を得た。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で精製して、化合物31(42mg、66%)を黄色粉末固体として得た。
【0096】
合成スキームVII
工程1:
【化36】
化合物30(50mg、0.10mmol)および2-ブチン酸(51mg、0.60mmol)をNMP(10mL)に溶解させた後、BOPC1(150mg、0.60mmol)を加えた。反応溶液を室温で3時間撹拌した。出発物質は、TLCによって検出されるように枯渇していた。反応系に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。粗化合物32を次の工程に直接使用した。
【0097】
工程2:
【化37】
ステップ1からの粗化合物32をジクロロメタン6mL中に分散させ、トリフルオロ酢酸1.5mLを撹拌しながら反応系にゆっくりと滴下した。最終的な反応系を室温で1時間絶えず撹拌した後、減圧下で濃縮して固体を得た。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和食塩水で順次洗浄した。最終的な有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=15:1)で精製して、化合物33(16mg、2段階収率34%)を黄色粉末固体として得た。
【0098】
試験例1:Btkのin vitro阻害活性の分析
本発明の化合物のBtkに対する半阻害濃度(IC50)を決定するために、無細胞キナーゼアッセイにおいて、下記の方法または同様の方法を用いた。
【0099】
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)法を用いて、Btkキナーゼ活性を決定した。測定は、96ウェルアッセイプレートを用いて50μLの反応体積で行った。キナーゼ、阻害剤、ATP(キナーゼに対するKmで)、および1μMペプチド基質(ビオチン-AVLESEEELYSSARQ-NH2)を、20mM Tris、50mM NaCl、MgCl2(キナーゼに依存して5~25mM)、MnCl2(0~10mM)、1mM DTT、0.1mM EDTA、0.01%ウシ血清アルブミン、0.005%Tween-20、および10%DMSOからなる反応緩衝液中で1時間、pH7.4でインキュベートした。反応を、25μLの1×Lance緩衝液(Perkin-Elmer)中の1.2当量のEDTA(二価カチオンに対して)の添加によってクエンチした。1×Lance緩衝液中のストレプトアビジン-APC(Perkin-Elmer)およびEu標識p-Tyr100抗体(Perkin-Elmer)を25μLの容量で添加して、それぞれ100nMおよび2.5nMの最終濃度を得た。混合物を1時間インキュベートさせた。TR-FRETシグナルを、330nmの励起波長(λEx)ならびに615および665nmの検出波長(λEm)でマルチモードプレートリーダー上で測定した。活性は、615nmにおける蛍光に対する665nmにおける蛍光の比によって決定した。各化合物について、酵素活性を、異なる濃度の化合物の存在下で測定した。陰性対照反応を、阻害剤の非存在下で、6回反復で実施し、2つの無酵素対照を使用してベースライン蛍光レベルを決定した。プログラムBatch Ki(Kuzmic, et al. (2000), Anal. Biochem. 286:45-50)を用いてフィッティングすることにより、IC50を得た。
【0100】
本発明の実施例化合物1~50を、上記合成スキームI~VIIに従って合成した。実施例化合物の具体的な合成スキームおよび特徴付けを、以下の表1に示す。Btkのインビトロ阻害活性の分析において、本発明の実施例化合物1~50のIC50値を決定した。IC50値はIC50値の間隔に従って与えられ、ここで「+++」はIC50<100nMを意味し、「++」は100nM≦IC50<1000nMを意味し、「+」は1000nM≦IC50<10000nMを意味する。
【0101】
表1.実施例化合物の合成およびBtk IC
50値
【表1】
【0102】
上記表1の最後の欄の有効性データから分かるように、本出願の化合物は、Btkに対して優れた阻害効果を達成することができる。特に、実施例2、5、19、23、24、26、33、34、37、38、44、45、46および50の化合物は、特に優れた阻害効果を持っていた。
【0103】
試験例2:BTKに対する共有結合阻害アッセイ
このアッセイは、実施例23および26の化合物を用いて行った。使用した試薬は以下の通りである。
BTKキナーゼ:商品名:carna、製品番号:08-180、濃度:200ng/μl;
DMSO:商品名:sigma、製品番号:D4540;
BTK酵素活性緩衝液:1×キナーゼ緩衝液+1mM DTT+5mM MgCl2+50nM SEB;
BTKプローブ(100μM):Sci. Rep. 2015, 5, 16136(Pan Zhengying, et al.)に従って調製;
実施例23および26の化合物:上記のように調製し、それぞれ2つの濃度(0.5μM/5μM)で調製。
【0104】
アッセイの工程は以下の通りである。
1.試料の順序は、1%DMSO、0.5μMの実施例23の化合物、5μMの実施例23の化合物、0.5μMの実施例26の化合物、および5μMの実施例26の化合物であった。化合物、BTK、プローブおよび2×ローディングバッファーを、ピペットを使用して5本の200μl EPチューブに添加した。
【0105】
2.実施例23および26の化合物の最終濃度は0.5μMおよび5μMであり、対照群は1%DMSOであった。化合物はまずDMSOを用いて上記最終濃度の100倍に調整し、BTK酵素活性緩衝液で40倍に希釈した。反応のために、4μl/ウェルの化合物をピペットを用いて10μlシステムに添加して、その最終濃度に到達させた。1%DMSOの場合、ストック溶液をBTK酵素活性緩衝液で40倍に希釈した。
【0106】
3.BTK(200ng/μl)を10ng/μlに希釈し、プローブ(100μM)を2.5μMに希釈した。それらを後で使用するために氷上に置き、プローブを光から保護した。
【0107】
4.各チューブに、4μlのBTK、続いて4μlの実施例化合物を添加した。1時間のインキュベーション後、プローブを添加し、次いで暗所で1時間インキュベートした。
【0108】
5.2×ローディング緩衝液を調製した。プローブをインキュベートした後、10μlの2×ローディング緩衝液を各ウェルに加え、十分に混合し、100℃で10分間加熱して試料を調製した。
【0109】
6.10μl(20ngのBTKおよび0.5μMのプローブを含有する)をロードした。SDS-PAGE後にスキャニングを行った。サンプルの順序はスポッティングの順序とした。
【0110】
SDS-PAGEスキャン結果を
図1に示す。蛍光スキャン結果は、対照として1%DMSOを用いて、0.5μMの濃度が、5μMの濃度であっても、両方の化合物が蛍光プローブによるBTKの標識を完全に阻害し得ることを示した。それがBTKに可逆的に結合する化合物である場合、プローブは、化合物およびBTKの混合物との1時間のインキュベーション中に放出されたBTKに結合し、蛍光バンドをもたらす。蛍光走査結果は、実施例23および26の化合物を2つの濃度で組換えBTKと1時間インキュベートした後、遊離BTKがプローブに結合できなかったことを示し、これは実施例23および26の化合物が組換えBTKに不可逆的に共有結合することを示す。
【0111】
試験例3:細胞生存率アッセイ
インビトロ細胞生存率アッセイを、以下のステップに従って実施例1~50の化合物を使用して行った。
1.OCI-LY7細胞を回収した後、それらを37℃、5%CO2、および95%湿度で培養した。
2.実施例1~50の化合物について、異なる濃度の8つの化合物溶液をそれぞれ調製した。各濃度の化合物溶液50μLを96ウェル黒色プレートに添加した。
3.細胞濃度を約30,000細胞/mLに調整した。100μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートに加え、十分に混合した。最終細胞密度は約3,000細胞/ウェルであった。
4.96ウェルプレートを37℃、5%CO2、および湿度95%で72時間置いた。
5.細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、カタログ番号G7572)の方法によって測定した。蛍光データをマイクロプレートリーダー(EnVision(商標)、多機能マイクロプレート検出器、PerkinElmer)で読み取った。
6.得られた蛍光データをGraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。各実施例化合物の各濃度における細胞生存率を計算し、各実施例化合物のIC50間隔を得た。
【0112】
各実施例化合物のIC50値を以下の表2に列挙し、ここで「+++」はIC50<500nMを意味し、「++」は500nM≦IC50<2500nMを意味し、「+」は2500nM≦IC50を意味する。
【0113】
表2.インビトロでのOCI-LY7細胞に対する各実施例化合物の阻害
【表2】
【0114】
本明細書に記載される例および実施態様は、例示目的のみのためであり、それらを踏まえた様々な修正または変更は当業者に示唆されるものであり、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきものであることを理解されよう。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【国際調査報告】