(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ARG1及び/又はARG2の阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20220111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220111BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220111BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220111BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220111BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220111BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220111BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220111BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220111BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220111BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220111BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220111BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20220111BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20220111BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220111BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
A61P43/00 111
A61P37/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P31/00
A61P37/08
A61P25/00
A61P25/16
A61P19/10
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/04
A61P25/28
A61P21/00
A61P43/00 105
A61P7/06
A61P1/18
A61P1/04
A61P17/06
A61P11/06
A61P13/12
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K31/69
A61K33/243
A61K31/704
A61K31/282
A61K45/00
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526441
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019061657
(87)【国際公開番号】W WO2020102646
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521205744
【氏名又は名称】アーカス バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーティー ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー コリーヌ ニコール
(72)【発明者】
【氏名】グレンジ レベッカ ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ギュネイ テザン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ スティーブン ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】カリシアク ヤロスロウ
(72)【発明者】
【氏名】レレティ マンモーハン レディ
(72)【発明者】
【氏名】リンジ- エリック アレン
(72)【発明者】
【氏名】マンダール デバシス
(72)【発明者】
【氏名】ニューコム エリック トーマス
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ ジェイ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン ブランドン リード
(72)【発明者】
【氏名】スー ヨンリ
(72)【発明者】
【氏名】トラン アィン スー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H048
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA371
4C084ZA372
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC201
4C084ZC202
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA43
4C086EA10
4C086GA16
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA45
4C086ZA55
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB31
4C086ZC20
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA02
4C206ZA16
4C206ZA22
4C206ZA36
4C206ZA37
4C206ZA45
4C206ZA55
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZA97
4C206ZB07
4C206ZB09
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZB31
4C206ZC20
4H048AA01
4H048AB21
4H048AB23
4H048AB24
4H048AB28
4H048AB29
4H048VA11
4H048VA12
4H048VA13
4H048VA20
4H048VA30
4H048VA32
4H048VA75
4H048VB10
(57)【要約】
ARG1及びARG2の少なくとも一方の阻害剤である化合物、並びに該化合物を含有する組成物、並びに該化合物を合成する方法が本明細書に記載される。ARG1及びARG2によって少なくとも部分的に媒介される癌関連障害及び免疫関連障害を含む多種多様な疾患、障害及び病態の治療のためのかかる化合物及び組成物の使用も本明細書に記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
XはN又はCR
4aであり、
各R
1は独立してH又はC
1~8アルキルであり、
R
2はH又はCH
3であり、
各R
3は独立してH若しくはC
1~8アルキルであるか、又は2つのR
3基が接合して、非置換であるか、若しくは1つ~4つのR
aで置換された5員若しくは6員環を形成し、
各R
4a、R
4b、R
4c及びR
4dは独立してH、ハロゲン、CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ヒドロキシアルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8ハロアルコキシ、-X
1-Y、-X
1-SO
2R
5a及び-X
1-NR
5bR
5cからなる群より選択され、
各R
5a、R
5b及びR
5cは独立してH、C
1~8アルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8アルキルC(O)-、C
3~7シクロアルキル、3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR
5b及びR
5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C
3~7シクロアルキル又は3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールの各々が非置換であるか、又は1つ~4つのR
bで置換され、
各X
1は結合、-O-、C
1~6アルキレン又は-O-C
1~6アルキレンであり、ここで、アルキレン部分は非置換であるか、又は1つ~4つのR
c及び0若しくは1つのオキソで置換され、
各R
a、R
b及びR
cは独立してハロゲン、CN、OH、NH
2、CO
2H、C
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル及びフェニルであるか、又は2つのR
cが組み合わさって、非置換であるか、若しくは1つ~3つのR
dで置換されたC
3~6シクロアルキルを形成し、
各Yは独立してフェニル、5員若しくは6員のヘテロアリール、3員~7員のヘテロシクロアルキル又はC
3~6シクロアルキルであり、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのR
dで置換され、
各R
dは独立してハロゲン、C
1~4アルキル、アミノ、アミノC
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、OH及びC
1~4ヒドロキシアルキルである)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
XがN又はCR
4aであり、
各R
1が独立してH又はC
1~8アルキルであり、
R
2がH又はCH
3であり、
各R
3が独立してH若しくはC
1~8アルキルであるか、又は2つのR
3基が接合して、非置換であるか、若しくは1つ~4つのR
aで置換された5員若しくは6員環を形成し、
各R
4a、R
4b、R
4c及びR
4dが独立してH、ハロゲン、CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ヒドロキシアルキル、C
1~8ハロアルキル、-X
1-Y、-X
1-SO
2R
5a及び-X
1-NR
5bR
5cからなる群より選択され、
各R
5a、R
5b及びR
5cが独立してH、C
1~8アルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8アルキルC(O)-、C
3~7シクロアルキル、3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR
5b及びR
5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C
3~7シクロアルキル又は3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールの各々が非置換であるか、又は1つ~4つのR
bで置換され、
各X
1が結合、又は非置換であるか、若しくは1つ~4つのR
cで置換されたC
1~6アルキレンであり、
各R
a、R
b及びR
cは、独立してハロゲン、CN、OH、NH
2、C
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル及びフェニルであるか、又は2つのR
cが組み合わさってC
3~6シクロアルキルを形成し、
各Yが独立してフェニル又は5員若しくは6員のヘテロアリールであり、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのR
dで置換され、
各R
dが独立してハロゲン、C
1~4アルキル、アミノ、アミノC
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、OH及びC
1~4ヒドロキシアルキルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項3】
式:
【化2】
を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
式:
【化3】
を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
式:
【化4】
を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化5】
を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化6】
を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化7】
を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式:
【化8】
を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式:
【化9】
を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
式:
【化10】
を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
R
4bがH、CH
3、CN、CF
3、F及びClからなる群より選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
式:
【化11】
を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
式:
【化12】
を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
【化13】
からなる群より選択される式を有する、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
表1の化合物から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
ARG1、ARG2、又はARG1及びARG2の両方によって少なくとも部分的に媒介される疾患、障害又は病態を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記疾患、障害又は病態がARG1によって少なくとも部分的に媒介される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患、障害又は病態がARG2によって少なくとも部分的に媒介される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患、障害又は病態がARG1及びARG2によって少なくとも部分的に媒介される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物をアルギナーゼ媒介性免疫抑制の進行を逆転させる、止める又は遅らせるのに効果的な量で投与する、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患、障害又は病態が、癌である、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、前立腺、結腸、直腸、膵臓、子宮頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、頸部、皮膚(黒色腫及び基底細胞癌を含む)、中皮内層、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎、甲状腺、腎臓若しくは骨の癌であるか、又は結腸直腸癌、頭頸部癌、膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫(カポジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌若しくは精巣セミノーマである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、黒色腫、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、卵巣癌、カポジ肉腫、腎細胞癌、頭頸部癌及び食道癌からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患、障害又は病態が、免疫関連の疾患、障害又は病態である、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫関連の疾患、障害又は病態が、関節リウマチ、腎不全、ループス、喘息、乾癬、結腸炎、膵炎、アレルギー、線維症、貧血症、線維筋痛、アルツハイマー病、鬱血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、パーキンソン病、感染症、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性接触皮膚炎及び他の湿疹、全身性硬化症及び多発性硬化症からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物と少なくとも1つの付加的な治療剤とを含む組合せ。
【請求項29】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が化学療法剤、免疫調節剤及び/又は炎症調節剤、又は放射線である、請求項28に記載の組合せ。
【請求項30】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項28に記載の組合せ。
【請求項31】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が、CD73を阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項30に記載の組合せ。
【請求項32】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が、A
2aR及び/又はA
2bRを阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項30に記載の組合せ。
【請求項33】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項28に記載の組合せ。
【請求項34】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD1、PDL1、BTLA、LAG3、B7ファミリーメンバー、TIM3、TIGIT又はCTLA4の少なくとも1つの活性を遮断する、請求項33に記載の組合せ。
【請求項35】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD1又はPDL1の活性を遮断する、請求項34に記載の組合せ。
【請求項36】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ及びデュルバルマブからなる群より選択される、請求項35に記載の組合せ。
【請求項37】
TIGITの活性を遮断する付加的な治療剤を更に含む、請求項35又は36に記載の組合せ。
【請求項38】
前記付加的な治療剤が、TIGITの活性を、そのリガンドを活性化することによって遮断する、請求項37に記載の組合せ。
【請求項39】
前記免疫チェックポイント阻害剤がTIGITの活性を遮断する、請求項33に記載の組合せ。
【請求項40】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、TIGITの活性を、そのリガンドを活性化することによって遮断する、請求項39に記載の組合せ。
【請求項41】
被験体におけるアデノシンのレベルを調節する治療剤を更に含む、請求項33~40のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項42】
前記治療剤が、CD73を阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項41に記載の組合せ。
【請求項43】
前記治療剤が、A
2aR及び/又はA
2bRを阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項41に記載の組合せ。
【請求項44】
化学療法剤を更に含む、請求項30~43のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項45】
前記化学療法剤が白金系又はアントラサイクリン系化学療法剤を含む、請求項44に記載の組合せ。
【請求項46】
前記化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群より選択される、請求項45に記載の組合せ。
【請求項47】
放射線を更に含む、請求項30~46のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項48】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が化学療法剤である、請求項28に記載の組合せ。
【請求項49】
前記化学療法剤が白金系又はアントラサイクリン系化学療法剤を含む、請求項48に記載の組合せ。
【請求項50】
前記化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群より選択される、請求項49に記載の組合せ。
【請求項51】
放射線を更に含む、請求項48~50のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項52】
被験体における癌を治療する方法であって、該被験体に有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物及び少なくとも1つの付加的な治療剤を投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が化学療法剤、免疫調節剤及び/又は炎症調節剤、又は放射線である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が、CD73を阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が、A
2aR及び/又はA
2bRを阻害することによって被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの付加的な治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD1、PDL1、BTLA、LAG3、B7ファミリーメンバー、TIM3、TIGIT又はCTLA4の少なくとも1つの活性を遮断する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD1又はPDL1の活性を遮断する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ及びデュルバルマブからなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
TIGITの活性を遮断する付加的な治療剤を更に含む、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記付加的な治療剤が、TIGITの活性を、そのリガンドを活性化することによって遮断する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記免疫チェックポイント阻害剤がTIGITの活性を遮断する、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、TIGITの活性を、そのリガンドを活性化することによって遮断する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記被験体におけるアデノシンのレベルを調節する治療剤を投与することを更に含む、請求項57~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記治療剤が、CD73を阻害することによって前記被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記治療剤が、A
2aR及び/又はA
2bRを阻害することによって前記被験体におけるアデノシンのレベルを調節する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
化学療法剤を更に含む、請求項54~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記化学療法剤が白金系又はアントラサイクリン系化学療法剤を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群より選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
放射線を更に含む、請求項68~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記化合物及び前記少なくとも1つの付加的な治療剤を組合せで投与する、請求項52~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記化合物及び前記少なくとも1つの付加的な治療剤を順次投与する、請求項52~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記化合物及び前記少なくとも1つの付加的な治療剤の投与の前記治療期間が重複する、請求項52~71のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/768,284号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する出願であり、この出願の全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下でなされた発明の権利に関する記載]
該当なし
【0003】
[コンパクトディスクで提出した添付の「配列表」、表又はコンピュータプログラムリストへの参照]
該当なし
【背景技術】
【0004】
アルギナーゼは、L-アルギニンをL-オルニチン及び尿素へと代謝する肝尿素サイクルにおいて基本的な役割を果たす。加えて、アルギナーゼは、炎症によって誘発される免疫機能不全、腫瘍免疫回避、感染性疾患の免疫抑制及び免疫病理の原因となるか又はそれらに関与することが示されている(非特許文献1)。
【0005】
ヒトでは、アルギナーゼI(ARG-1)及びアルギナーゼII(ARG-2)の2つのアルギナーゼアイソエンザイムが存在する。これらは、同じ生化学反応を触媒するが、細胞発現、調節及び細胞内局在性の点で異なる(非特許文献2)。ARG-1は、アルギニンを腫瘍微小環境から枯渇させ、増殖及びサイトカイン分泌の停止等のT細胞機能障害を引き起こす(非特許文献3、非特許文献4)。高レベルのアルギナーゼが胃癌、結腸癌、乳癌及び肺癌を含む様々な癌を有する患者で見出されている(非特許文献5、非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bronte V, Zanovello P (2005b). Regulation of immune responses by L-arginine metabolism. Nat Rev Immunol 5: 641-654
【非特許文献2】Jenkinson et al. (1996). Comparative properties of arginases. Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol 114: 107-132
【非特許文献3】Rodriguez et al (2002). Regulation of T cell receptor CD3zeta chain expression by L-arginine. J Biol Chem 277: 21123-21129
【非特許文献4】Munder, Arginase in the Immune System, British Journal of Pharmacology (2009) 158 638-651
【非特許文献5】Suer et al (1999). Arginase and ornithine, as markers in human non-small cell lung carcinoma. Cancer Biochem Biophys 17:125-31
【非特許文献6】Singh et al (2000). Arginase activity in human breast cancer cell lines: N(omega)-hydroxy-L- arginine selectively inhibits cell proliferation and induces apoptosis in MDA-MB-468 cells. Cancer Res 60:3305-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、アルギナーゼ阻害剤が当該技術分野で必要とされている。本発明は、この必要性に対処し、関連する利点ももたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルギナーゼを阻害する化合物及び該化合物を含む組成物(例えば医薬組成物)に関する。化合物の合成方法を含む、かかる化合物及び組成物については、以下で詳細に説明する。
【0009】
本発明は、アルギナーゼによって完全に又は部分的に媒介される多種多様な疾患、障害及び病態の治療及び/又は予防のためのかかる化合物及び組成物の使用にも関する。かかる疾患、障害及び病態については、本明細書の他の部分で詳細に説明する。他に指定のない限り、本発明の化合物の使用が本明細書に記載される場合、かかる化合物が組成物(例えば医薬組成物)の形態であってもよいことを理解されたい。
【0010】
以下で論考されるように、本発明の化合物は、アルギナーゼの阻害によって活性を示すと考えられるが、化合物の基礎的な作用機序の正確な理解は、本発明の実施に必要とされない。
【0011】
アルギナーゼは、哺乳動物において2つのアイソフォームで存在する酵素である。ARG-1は細胞質ゾルに見られ、主に肝臓において発現されるが、ARG-2はミトコンドリアに見られ、腎臓、小腸、脳、単球及びマクロファージにおいて発現される。アルギナーゼは、組織再生、細胞増殖及び抗炎症応答を可能にする下流の代謝経路に重要な前駆体であるアミノ酸L-アルギニンからオルニチン及び尿素への変換を触媒する。L-アルギニンは、一酸化窒素合成酵素(NOS)によっても代謝され、マクロファージの細胞傷害機構に重要な反応性の高い化合物である一酸化窒素を生じ得る。ARG-1は、腫瘍に浸潤する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)において選択的に発現され、腫瘍微小環境からのアルギニンの枯渇をもたらすと考えられる。この枯渇は、TCRの主要なシグナル伝達要素であるTCRζ鎖の発現の喪失を更にもたらし、増殖障害及びサイトカイン産生の減少を引き起こす。このため、本発明の或る特定の実施の形態は、腫瘍微小環境においてアルギニンレベルを上昇させ、それにより身体の細胞傷害性T細胞の活性化を可能にすることによって癌を治療する化合物及び方法を提供する。Timosenko, Modulation of cancer-specific immune responses by amino acid degrading enzymes. Immunotherapy (2017) 9(1), 83-97を参照されたい。
【0012】
特定の一態様では、本発明は、式(I):
【化1】
(式中、
XはN又はCR
4aであり、
各R
1は独立してH又はC
1~8アルキルであり、
R
2はH又はCH
3であり、
各R
3は独立してH若しくはC
1~8アルキルであるか、又は2つのR
3基が接合して、非置換であるか、若しくは1つ~4つのR
aで置換された5員若しくは6員環を形成し、
各R
4a、R
4b、R
4c及びR
4dは独立してH、ハロゲン、CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ヒドロキシアルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8ハロアルコキシ、-X
1-Y、-X
1-SO
2R
5a及び-X
1-NR
5bR
5cからなる群より選択され、
各R
5a、R
5b及びR
5cは独立してH、C
1~8アルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8アルキルC(O)-、C
3~7シクロアルキル、3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR
5b及びR
5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C
3~7シクロアルキル又は3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールの各々が非置換であるか、又は1つ~4つのR
bで置換され、
各X
1は結合、-O-、C
1~6アルキレン又は-O-C
1~6アルキレンであり、ここで、アルキレン部分は非置換であるか、又は1つ~4つのR
c及び0若しくは1つのオキソで置換され、
各R
a、R
b及びR
cは独立してハロゲン、CN、OH、NH
2、CO
2H、C
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル及びフェニルであるか、又は2つのR
cが組み合わさって、非置換であるか、若しくは1つ~3つのR
dで置換されたC
3~6シクロアルキルを形成し、
各Yは独立してフェニル、5員若しくは6員のヘテロアリール、3員~7員のヘテロシクロアルキル又はC
3~6シクロアルキルであり、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのR
dで置換され、
各R
dは独立してハロゲン、C
1~4アルキル、アミノ、アミノC
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、OH及びC
1~4ヒドロキシアルキルである)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物若しくは溶媒和物を提供する。
【0013】
幾つかの実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤を投与することを含む、被験体(例えばヒト)における癌を治療又は予防する方法を企図する。幾つかの実施の形態では、本発明は、被験体に本明細書に記載される化合物の少なくとも1つをアルギナーゼ媒介性免疫抑制の進行を逆転させる、止める又は遅らせるのに効果的な量で投与することによって被験体における癌を治療又は予防する方法を含む。幾つかの実施の形態では、アルギナーゼ媒介性免疫抑制は、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)によって媒介される。
【0014】
本明細書に記載される化合物及び組成物を用いて治療され得る癌の例としては、前立腺、結腸直腸、膵臓、子宮頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、頸部、皮膚(黒色腫及び基底細胞癌(basal carcinoma)を含む)、中皮内層(mesothelial lining)、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎、甲状腺、腎臓又は骨の癌、膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌(basocellular carcinoma)及び精巣セミノーマが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の幾つかの実施の形態では、癌は黒色腫、結腸癌、膵癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、子宮頸癌又はカポジ肉腫である。本発明の化合物及び組成物による治療候補となる癌は、以下で更に論考される。
【0015】
本発明は、骨髄移植又は末梢血幹細胞移植を受けている被験体を、治療有効量のアルギナーゼ阻害剤を投与することによって治療する方法を企図する。
【0016】
或る特定の実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤(例えば本発明の新規の阻害剤)を投与することを含む、被験体(例えばヒト)における感染性障害(例えばウイルス感染)を治療又は予防する方法を企図する。幾つかの実施の形態では、感染性障害は、ウイルス感染(例えば慢性ウイルス感染)、細菌感染、真菌感染又は寄生虫感染である。或る特定の実施の形態では、ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス又はサイトメガロウイルスである。
【0017】
更に他の実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤を投与することを含む、被験体(例えばヒト)における免疫関連疾患、障害又は病態を治療又は予防する方法を企図する。免疫関連疾患、障害及び病態の例は、以下に記載する。
【0018】
アルギナーゼ活性の調節によって完全に又は部分的に治療又は予防することができる他の疾患、障害及び病態は、本発明のアルギナーゼ阻害剤化合物の候補適応症である。
【0019】
本発明は、1つ以上の付加的な作用物質と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を更に企図する。1つ以上の付加的な作用物質は、異なる作用機序によって機能し得る。幾つかの実施の形態では、かかる作用物質は、放射線(例えば限局放射線療法又は全身放射線療法)及び/又は非薬理学的性質の他の治療法を含む。併用療法を用いる場合、本明細書に記載される化合物(複数の場合もある)及び1つの付加的な作用物質(複数の場合もある)は、単一の組成物又は複数の組成物の形態であってもよく、治療法を同時に、順次に又は幾つかの他の計画によって行うことができる。例としては、本発明は、放射線段階に続いて化学療法段階を行う治療計画を企図する。併用療法は、相加効果又は相乗効果を有し得る。併用療法の他の利点は、以下に記載する。
【0020】
特定の実施の形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす免疫チェックポイントの遮断は、ヒト癌治療法において有望なアプローチであることが示されている。一部が様々なタイプの腫瘍細胞において選択的に上方調節され、遮断の候補となる免疫チェックポイント(リガンド及び受容体)の例としては、PD1(プログラム細胞死タンパク質1)、PDL1(PD1リガンド)、BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)、TIM3(T細胞膜タンパク質3)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)及びキラー細胞抑制受容体が挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤及びそれとの併用療法は、本明細書の他の部分で詳細に論考される。
【0021】
他の実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含む、被験体における癌を治療する方法を提供する。かかる作用物質としては、アルキル化剤(例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イソファミド(isofamide)、メクロレタミン、メルファラン及びウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード、チオテパ等のアジリジン、ブスルファン等のメタンスルホン酸エステル、ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン)、カルムスチン、ロムスチン及びストレプトゾシン等のニトロソウレア、トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばイリノテカン)、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン等の白金錯体、マイトマイシン、プロカルバジン、ダカルバジン及びアルトレタミン等の生体還元性アルキル化剤)、アントラサイクリン系治療剤(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン及びイダルビシン)、DNA鎖切断剤(例えばブレオマイシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えばアムサクリン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ドキソルビシン、エトポシド及びテニポシド)、DNA小溝結合剤(例えばプリカマイシン)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート及びトリメトレキサート等の葉酸アンタゴニスト、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビン及びフロクスウリジン等のピリミジンアンタゴニスト、メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン等のプリンアンタゴニスト、アスパラギナーゼ、並びにヒドロキシウレア等のリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤)、チューブリン相互作用剤(例えばビンクリスチン、エストラムスチン、ビンブラスチン、ドセタキソール(docetaxol)、エポチロン誘導体及びパクリタキセル)、ホルモン剤(例えばエストロゲン、結合型エストロゲン、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベステロール(diethylstilbesterol)、クロルトリアニセン(chlortrianisen)、ジエネストロール、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン及びメゲストロール等のプロゲスチン、並びにテストステロン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン及びメチルテストステロン等のアンドロゲン)、副腎コルチコステロイド(例えばプレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾロン)、黄体形成ホルモン放出剤又はゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニスト(例えば酢酸ロイプロリド及び酢酸ゴセレリン)、及び抗ホルモン抗原(例えばタモキシフェン、フルタミド等の抗アンドロゲン剤、並びにミトタン及びアミノグルテチミド等の抗副腎剤)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、当該技術分野で既知の他の作用物質(例えば三酸化ヒ素)及び将来開発される他の化学療法剤と組み合わせたアルギナーゼ阻害剤の使用も企図する。
【0022】
癌を治療する方法に関する幾つかの実施の形態では、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせた治療有効量の本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の投与は、いずれか単独の投与によって観察される癌生存率よりも高い癌生存率をもたらす。癌を治療する方法に関する更なる実施の形態では、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせた治療有効量の本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の投与は、1つの作用物質単独の投与によって観察される腫瘍サイズの減少又は腫瘍成長よりも大きな腫瘍サイズの減少又は腫瘍成長の鈍化をもたらす。
【0023】
更なる実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つのシグナル伝達阻害剤(STI)を投与することを含む、被験体における癌を治療又は予防する方法を企図する。特定の実施の形態では、少なくとも1つのSTIは、bcr/ablキナーゼ阻害剤、上皮成長因子(EGF)受容体阻害剤、her-2/neu受容体阻害剤及びファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)からなる群より選択される。他の候補STI剤については本明細書の他の部分で説明する。
【0024】
本発明は、被験体における腫瘍細胞の拒絶を増強する方法であって、少なくとも1つの化学療法剤及び/又は放射線療法と共にアルギナーゼ阻害剤を投与することを含み、生じる腫瘍細胞の拒絶がアルギナーゼ阻害剤、化学療法剤又は放射線療法のいずれか単独の投与によって得られるよりも大きい、方法も企図する。
【0025】
更なる実施の形態では、本発明は、被験体に治療有効量の少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤及びアルギナーゼ阻害剤以外の少なくとも1つの免疫調節剤を投与することを含む、被験体における癌を治療する方法を提供する。特定の実施の形態では、少なくとも1つの免疫調節剤は、CD4OL、B7、B7RP1、抗CD40、抗CD38、抗ICOS、4-IBBリガンド、樹状細胞癌ワクチン、IL2、IL12、ELC/CCL19、SLC/CCL21、MCP-1、IL-4、IL-18、TNF、IL-15、MDC、IFN-a/IFN-13、M-CSF、IL-3、GM-CSF、IL-13、抗IL-10、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤及びアデノシン2受容体アンタゴニストからなる群より選択される。他の候補免疫調節剤については本明細書の他の部分で説明する。
【0026】
本発明は、被験体に治療有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのアルギナーゼ阻害剤及び治療有効量の抗感染症薬(複数の場合もある)を投与することを含む、被験体(例えばヒト)における感染性障害(例えばウイルス感染)を治療又は予防する方法を含む実施の形態を企図する。
【0027】
本発明の幾つかの実施の形態では、付加的な治療剤は、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又はflt3リガンドを含むサイトカインである。本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス、コクサッキーウイルス及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含むが、これらに限定されないウイルス感染(例えば慢性ウイルス感染)を治療又は予防する方法も企図する。(単独で又は併用療法の一部として)感染を治療するための本明細書に記載される化合物の使用は、以下で更に論考する。
【0028】
付加的な実施の形態では、感染性障害の治療は、治療有効量の本発明のアルギナーゼ阻害剤の投与と組み合わせたワクチンの同時投与によって達成される。幾つかの実施の形態では、ワクチンは、例えば抗HIVワクチンを含む抗ウイルスワクチンである。他の実施の形態では、ワクチンは、結核又はマラリアに対して効果的である。更に他の実施の形態では、ワクチンは、腫瘍ワクチン(例えば黒色腫に対して効果的なワクチン)であり、腫瘍ワクチンは、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)を発現するようにトランスフェクトされた遺伝子改変腫瘍細胞又は遺伝子改変細胞株を含む遺伝子改変腫瘍細胞又は遺伝子改変細胞株を含み得る。特定の実施の形態では、ワクチンは、1つ以上の免疫原性ペプチド及び/又は樹状細胞を含む。
【0029】
幾つかの実施の形態では、本発明は、本明細書に記載される化合物を1つ以上の抗微生物剤と組み合わせて使用する方法を企図する。
【0030】
アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤の投与による感染の治療に関する或る特定の実施の形態では、アルギナーゼ阻害剤及び付加的な治療剤の両方の投与後に観察される感染の症状は、いずれか単独の投与後に観察される同じ感染の症状と比べて改善する。幾つかの実施の形態では、観察される感染の症状は、ウイルス量の減少、CD4+T細胞数の増加、日和見感染の減少、生存期間の増加、慢性感染の根絶又はそれらの組合せであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
該当なし
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を更に説明する前に、本発明が本明細書に記載される特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0033】
値の範囲を提示する場合、文脈上明らかに他の指示のない限り、下限の単位の10分の1までの、その範囲の上限と下限との間の各中間値、及びその規定の範囲内の任意の他の規定の又は中間の値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、そのより小さな範囲に独立して含まれていてもよく、規定の範囲内の任意の具体的に除外される限界値を条件として、同様に本発明に包含される。規定の範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。他に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0034】
本明細書で使用される場合、数量を特定しない単数形(singular forms "a," "an," and "the")は、文脈上明らかに他の指示のない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲が任意の要素を除外するように作成されてもよいことに更に留意されたい。このため、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に(solely)」、「のみ(only)」等の排他的な専門用語の使用、又は「否定的」限定の使用の先行詞となることを意図したものである。
【0035】
本明細書で論考される刊行物は、単に本願の出願日前のそれらの開示のために提示される。さらに、提示される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独自に確認する必要があり得る。
【0036】
概要
例えば、アルギナーゼの阻害のための化合物及び組成物、並びにそれを含む医薬組成物が本明細書で提供される。例えば、アルギナーゼの阻害によって行われる、疾患、障害若しくは病態、又はその症状を治療又は予防する方法も本明細書で提供される。
【0037】
定義
他に指定のない限り、以下の用語は、下記の意味を有することを意図したものである。他の用語は、本明細書全体を通して他の部分で定義される。
【0038】
「アルキル」という用語は、単独で又は別の置換基の一部として、他に記載のない限り、指定の炭素原子数を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する(すなわち、C1~8は1個~8個の炭素を意味する)。アルキルは、C1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C1~6、C1~7、C1~8、C1~9、C1~10、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C3~4、C3~5、C3~6、C4~5、C4~6及びC5~6等の任意の数の炭素を含み得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等が挙げられる。
【0039】
「アルキレン」という用語は、指定の炭素原子数を有し、少なくとも2つの他の基に連結する直鎖又は分岐飽和脂肪族ラジカル、すなわち二価炭化水素ラジカルを指す。アルキレンに連結する2つの部分は、アルキレン基の同じ原子又は異なる原子に連結することができる。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH2)n-(ここで、nは1、2、3、4、5又は6である)の二価ラジカルであり得る。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、secブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。本願においてX1基と称されることが多いアルキレン基は、置換されていても又は非置換であってもよい。X1を含む基が任意に置換される場合、任意の置換がその部分のアルキレン部分上にあってもよいことが理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、本明細書に示される任意の化学構造中の単結合、二重結合又は三重結合と交差する波線「
【化2】
」は、分子の残りの部分への単結合、二重結合又は三重結合の付着点を表す。さらに、環(例えばフェニル環)の中心に伸びる結合は、利用可能な環の頂点のいずれかでの付着を示すことを意図する。環に付着するとして示された複数の置換基が、安定した化合物をもたらすか、他の形で立体的に適合した環の頂点を占めることが当業者には理解される。二価の成分については、表示は、いずれの配向(順方向又は逆方向)も含むことを意図したものである。例えば、基「-C(O)NH-」は、-C(O)NH-又は-NHC(O)-のいずれの配向の連結も含むことを意図する。同様に「-O-CH
2CH
2-」は、-O-CH
2CH
2-及び-CH
2CH
2-O-の両方を含むことを意図する。
【0041】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、単独で又は別の置換基の一部として、他に記載のない限り、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」等の用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意図する。例えば、「C1~4ハロアルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル等を含むことを意図する。
【0042】
「アリール」という用語は、他に記載のない限り、単一の環であっても、又は互いに縮合した若しくは共有結合的に連結した複数の環(最大3つの環)であってもよい多価不飽和、通例、芳香族の炭化水素基を意味する。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。
【0043】
上記の用語(例えば「アルキル」及び「アリール」)は、幾つかの実施形態では、任意に置換される。各タイプのラジカルについて選択される置換基を以下に提示する。
【0044】
アルキルラジカル(しばしばアルキレン、アルケニル及びアルキニルと称される基を含む)の任意の置換基は、0~(2m’+1)(ここで、m’は、かかるラジカル中の炭素原子の総数である)の範囲の数でハロゲン、-OR’、-NR’R’’、-SR’、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)2R’、-NH-C(NH2)=NH、-NR’C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-NR’S(O)2R’’、-CN(シアノ)、-NO2、アリール、アリールオキシ、オキソ、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選択される様々な基であり得る。R’、R’’及びR’’’は、各々独立して水素、非置換のC1~8アルキル、非置換のアリール、1つ~3つのハロゲンで置換されたアリール、C1~8アルコキシ若しくはC1~8チオアルコキシ基、又は非置換のアリール-C1~4アルキル基を指す。R’及びR’’が同じ窒素原子に付着している場合、それらが窒素原子と組み合わさって3員、4員、5員、6員又は7員の環を形成してもよい。例えば、-NR’R’’は、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意図する。
【0045】
同様に、アリール基の任意の置換基は多様であり、概して、0から芳香環系上の空の原子価の総数までの範囲の数で-ハロゲン、-OR’、-OC(O)R’、-NR’R’’、-SR’、-R’、-CN、-NO2、-CO2R’、-CONR’R’’、-C(O)R’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’’C(O)2R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NH-C(NH2)=NH、-NR’C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-NR’S(O)2R’’、-N3、ペルフルオロ(C1~C4)アルコキシ及びペルフルオロ(C1~C4)アルキルから選択され、ここで、R’、R’’及びR’’’は、独立して水素、C1~8アルキル、C1~8ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C2~8アルケニル及びC2~8アルキニルから選択される。他の好適な置換基には、炭素原子数1~6のアルキレン係留(tether)によって環原子に付着した上記のアリール置換基の各々が含まれる。
【0046】
アリール環の隣接原子上の置換基の2つが、式-T-C(O)-(CH2)q-U-(式中、T及びUは、独立して-NH-、-O-、-CH2-又は単結合であり、qは0~2の整数である)の置換基で任意に置き換えられてもよい。代替的には、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つが、式-A-(CRfRg)r-B-(式中、A及びBは、独立して-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-又は単結合であり、rは1~3の整数であり、Rf及びRgは、各々独立してH又はハロゲンである)の置換基で任意に置き換えられてもよい。そのように形成された新たな環の単結合の1つが二重結合で任意に置き換えられてもよい。代替的には、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つが、式-(CH2)s-X-(CH2)t-(式中、s及びtは、独立して0~3の整数であり、Xは-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-又は-S(O)2NR’-である)の置換基で任意に置き換えられてもよい。-NR’-及び-S(O)2NR’-中の置換基R’は、水素又は非置換のC1~6アルキルから選択される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)を含むことを意図する。
【0048】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本明細書に記載される化合物上に見られる特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸又は塩基を用いて調製された活性化合物の塩を含むことを意図する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、中性形態のかかる化合物を無溶媒で(neat)又は好適な不活性溶媒中で十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容可能な無機塩基に由来する塩の例としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩及び亜鉛塩等が挙げられる。薬学的に許容可能な有機塩基に由来する塩としては、置換アミン、環状アミン、天然アミン等を含む、一級、二級及び三級アミン、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン及びトロメタミン等の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、中性形態のかかる化合物を、無溶媒で又は好適な不活性溶媒中で十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等のような無機酸に由来する塩、及び酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等のような比較的無毒の有機酸に由来する塩が挙げられる。アルギネート等のようなアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸等のような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S.M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照されたい)。本発明の或る特定の具体的な化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも変換することが可能な塩基性及び酸性の官能基の両方を含有する。
【0049】
中性形態の化合物は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって再生することができる。親形態の化合物は、極性溶媒への溶解性等の或る特定の物理的特性の点で様々な塩形態とは異なるが、その他の点では、塩は本発明の目的上、親形態の化合物と同等である。塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物をもたらす化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境で化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物へと変換することができる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバ内に入れることで本発明の化合物へとゆっくりと変換することができる。プロドラッグについては本明細書の他の部分でより詳細に説明する。
【0050】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物をもたらす化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境で化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物へと変換することができる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバ内に入れることで本発明の化合物へとゆっくりと変換することができる。
【0051】
本発明の或る特定の化合物は、非溶媒和形態、及び水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。概して、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含されることが意図される。本発明の或る特定の化合物は、複数の結晶又は非晶質形態で存在し得る。概して、全ての物理的形態は、本発明によって企図される用途について同等であり、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0052】
本発明の或る特定の化合物は、不斉炭素原子(光学的中心)又は二重結合を有する。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体及び個々の異性体(例えば別個の鏡像異性体)は全て、本発明の範囲に包含されることが意図される。立体化学的描写が示される場合、異性体の1つが存在し、他の異性体を実質的に含まない化合物を指すことを意図する。別の異性体を「実質的に含まない」とは、2つの異性体の少なくとも80/20、より好ましくは90/10若しくは95/5、又はそれ以上の比率を示す。幾つかの実施形態では、異性体の1つが少なくとも99%の量で存在する。
【0053】
本発明の化合物は、かかる化合物を構成する原子の1つ以上に天然に見られない割合の原子同位体を含有してもよい。同位体の天然に見られない割合は、天然に見られる量から問題の原子100%からなる量までの範囲と定義され得る。例えば、化合物に放射性同位体、例えば三重水素(3H)、ヨウ素-125(125I)若しくは炭素-14(14C)、又は非放射性同位体、例えば重水素(2H)若しくは炭素-13(13C)を組み込むことができる。かかる同位体変化は、本願の他の部分に記載されるものに付加的な有用性をもたらし得る。例えば、本発明の化合物の同位体変異体は、限定されるものではないが、診断試薬及び/又は画像化試薬として、又は細胞傷害性/放射性毒性治療剤としての有用性を含む付加的な有用性を有する可能性がある。さらに、本発明の化合物の同位体変異体は、治療時の安全性、忍容性又は有効性の向上に寄与し得る薬物動態及び薬力学的特徴の変化を有する可能性がある。本発明の化合物の全ての同位体変化が、放射性か否かに関わらず、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0054】
「患者」又は「被験体」という用語は、ヒト又は非ヒト動物(例えば哺乳動物)を指すために区別なく使用される。
【0055】
「投与」、「投与する」等の用語は、例えば被験体、細胞、組織、器官又は体液に適用される場合、例えばアルギナーゼの阻害剤、それを含む医薬組成物又は診断剤と被験体、細胞、組織、器官又は体液との接触を指す。細胞との関連では、投与は試薬と細胞との接触(例えばin vitro又はex vivoでの接触)、及び体液が細胞と接触する場合の試薬と体液との接触を含む。
【0056】
「治療する」("treat", "treating")、「治療」等の用語は、疾患、障害若しくは病態、又はその症状が、例えば診断、観察された後に、被験体を冒す疾患、障害若しくは病態の根本原因の少なくとも1つ、又は被験体を冒す疾患、障害、病態と関連する症状の少なくとも1つを一時的又は永続的に除去、低減、抑制、緩和又は改善するために開始される一連の行動(アルギナーゼの阻害剤又はそれを含む医薬組成物の投与等)を指す。このため、治療は活動性疾患を阻害すること(例えば、疾患、障害若しくは病態、又はそれらと関連する臨床症状の進行又は更なる進行を阻止すること)を含む。
【0057】
「治療を必要とする」という用語は、本明細書で使用される場合、医師又は他の介護者によって行われる、被験体が治療を必要とするか又は治療から利益を得るという判断を指す。この判断は、医師又は介護者の専門知識の領域にある様々な要因に基づいて行われる。
【0058】
「予防する」("prevent", "preventing")、「予防」等の用語は、概して特定の疾患、障害又は病態に罹患しやすい被験体との関連で、疾患、障害、病態等を発症する被験体のリスクを一時的若しくは永続的に防止、抑制、阻害若しくは低減するために(例えば臨床症状の非存在によって決定される)、又はその発症を遅延させるように(例えば、疾患、障害、病態又はその症状の発症前に)開始される一連の行動(アルギナーゼ阻害剤又はそれを含む医薬組成物の投与等)を指す。或る特定の例では、この用語は、疾患、障害若しくは病態の進行を遅らせるか、又は有害な若しくは他の点で望ましくない状態へのその進行を阻害することも指す。
【0059】
「予防を必要とする」という用語は、本明細書で使用される場合、医師又は他の介護者によって行われる、被験体が予防処置を必要とするか又は予防処置から利益を得るという判断を指す。この判断は、医師又は介護者の専門知識の領域にある様々な要因に基づいて行われる。
【0060】
「治療有効量」という表現は、単独での又は医薬組成物の一部としての、また単回投与での又は一連の投与の一部としての、被験体に投与した場合に疾患、障害又は病態の任意の症状、局面又は特徴に対して任意の検出可能なプラスの効果を有することが可能な量での被験体への作用物質の投与を指す。治療有効量は、関連の生理的効果を測定することによって確認することができ、投与計画及び被験体の病態の診断分析等との関連で調整することができる。例としては、投与後の特定の時点でのアルギナーゼ阻害剤(又は、例えばその代謝産物)の血清レベルの測定は、治療有効量が使用されたかを示すことができる。
【0061】
「変化をもたらすのに十分な量」という表現は、特定の療法の実施前(例えばベースラインレベル)及び実施後に測定された指標のレベルに検出可能な差があることを意味する。指標には、任意の客観的パラメーター(例えば血清濃度)又は主観的パラメーター(例えば被験体の幸福感)が含まれる。
【0062】
「小分子」という用語は、約10kDa未満、約2kDa未満又は約1kDa未満の分子量を有する化学化合物を指す。小分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、及び合成分子が挙げられるが、これらに限定されない。治療的には、小分子は、大きな分子よりも細胞に対してより透過性であり、分解の影響を受けにくく、免疫応答を引き起こす可能性が低い場合がある。
【0063】
「リガンド」という用語は例えば、受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用することができるペプチド、ポリペプチド、膜会合若しくは膜結合分子、又はそれらの複合体を指す。リガンドは、天然及び合成リガンド、例えばサイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、突然変異タンパク質、及び抗体に由来する結合組成物、並びに小分子を包含する。この用語は、アゴニストでもアンタゴニストでもないが、受容体の生物学的特性、例えばシグナル伝達又は接着に大きな影響を与えることなく受容体に結合することができる作用物質も包含する。さらに、この用語は、例えば化学的又は組換え方法によって可溶型の膜結合リガンドへと変化した膜結合リガンドを含む。リガンド又は受容体は、完全に細胞内であってもよく、すなわち、細胞質ゾル、核又はその他の細胞内コンパートメント内に存在していてもよい。リガンドと受容体との複合体は、「リガンド-受容体複合体」と称される。
【0064】
「阻害剤」及び「アンタゴニスト」、又は「活性化剤」及び「アゴニスト」という用語はそれぞれ、例えばリガンド、受容体、補助因子、遺伝子、細胞、組織又は器官等の活性化のための阻害分子又は活性化分子を指す。阻害剤は、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体又は細胞を減少させる、遮断する、防止する、活性化を遅延させる、不活性化する、脱感作する又は下方調節する分子である。活性化剤は、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体又は細胞を増加させる、活性化する、促進する、活性化を増強する、感作する又は上方調節する分子である。阻害剤は、構成的活性を低減、遮断又は不活性化する分子とも定義され得る。「アゴニスト」は、標的と相互作用して標的の活性化の増大を引き起こす又は促進する分子である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用(複数の場合もある)に拮抗する分子である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を防止、低減、阻害又は中和し、アンタゴニストは、アゴニストが特定されていない場合であっても標的、例えば標的受容体の構成的活性を予防、阻害又は低減することができる。
【0065】
「調節する」、「調節」等の用語は、アルギナーゼの機能又は活性を直接的又は間接的に増大又は低下させる分子(例えば活性化剤又は阻害剤)の能力を指す。調節因子は、単独で作用してもよく、又は補助因子、例えばタンパク質、金属イオン若しくは小分子を用いてもよい。調節因子の例としては、小分子化合物及び他の生体有機分子が挙げられる。小分子化合物の多数のライブラリー(例えばコンビナトリアルライブラリー)が市販されており、調節因子を特定するための出発点とすることができる。当業者は、所望の特性を有する1つ以上の化合物を特定するためにかかる化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる1つ以上のアッセイ(例えば生化学的又は細胞ベースアッセイ)を開発することが可能である。その後、熟練した医薬品化学者は、かかる1つ以上の化合物を、例えばその類似体及び誘導体を合成し、評価することによって最適化することが可能である。合成研究及び/又は分子モデリング研究を活性化剤の特定に用いることもできる。
【0066】
分子の「活性」は、リガンド又は受容体への分子の結合、触媒活性、遺伝子発現又は細胞シグナル伝達、分化若しくは成熟を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性の調節等を記載する又は指す場合がある。「増殖活性」という用語は、例えば正常な細胞分裂、並びに癌、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移及び血管新生を促進する、それに必要とされる又はそれと特異的に関連する活性を包含する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「同等の」、「同等の活性」、「と同等の活性」、「同等の効果」、「と同等の効果」等は、定量的及び/又は定性的に考えられ得る相対語である。この用語の意味は、それらが用いられる文脈に依存することが多い。例としては、どちらも受容体を活性化する2つの作用物質は、定性的観点からは同等の効果を有すると考えられ得るが、定量的観点からは、2つの作用物質は、当該技術分野で認められるアッセイ(例えば用量応答アッセイ)又は当該技術分野で認められる動物モデルにおいて決定された際に、一方の作用物質がもう一方の作用物質の活性の20%しか達成することができない場合に同等の効果を欠いていると考えられ得る。或る結果と別の結果とを(例えば或る結果と参照標準とを)比較する場合に、「同等の」は、或る結果が参照標準から35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満外れていることを意味することが多い(常にそうとは限らない)。特定の実施形態では、或る結果は、参照標準から15%未満、10%未満又は5%未満外れている場合に参照標準と同等である。例としては、限定されるものではないが、活性又は効果は、有効性、安定性、溶解性又は免疫原性を指す場合がある。
【0068】
「実質的に純粋な」とは、成分が組成物の全量の約50%超、典型的にはポリペプチドの全量の約60%超を占めることを示す。より典型的には、「実質的に純粋な」とは、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%又はそれ以上が対象の成分である組成物を指す。場合によっては、ポリペプチドは、組成物の全量の約90%超又は約95%超を占める。
【0069】
「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」という用語は、リガンド/受容体、抗体/抗原又は他の結合対に言及する場合、タンパク質及び他の生体物質(biologics)の不均一集団におけるタンパク質の存在を決定付ける結合反応を示す。このため、指定の条件下では、指定のリガンドは特定の受容体に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に相当量では結合しない。企図される方法の抗体又は抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物は、任意の他の抗体又はそれに由来する結合組成物の親和性よりも少なくとも2倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも20倍高い又は少なくとも100倍高い親和性で、その抗原、又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に結合する。特定の実施形態では、抗体は、例えばスキャッチャード分析(Munsen, et al. 1980 Analyt. Biochem. 107:220-239)によって決定される、約109L/mol超の親和性を有する。
【0070】
例えば細胞、組織、器官又は生物の「応答」という用語は、生化学的又は生理学的挙動、例えば濃度、密度、接着、又は生体コンパートメント内での移動、遺伝子発現率、又は分化の状態の変化を包含し、この変化は活性化、刺激若しくは治療、又は遺伝的プログラミング等の内部機構と関連付けられる。或る特定の状況では、「活性化」、「刺激」等の用語は、内部機構及び外部又は環境因子によって調節される細胞活性化を指し、「阻害」、「下方調節」等の用語は、逆の効果を指す。
【0071】
本明細書で区別なく使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、遺伝的にコードされたアミノ酸及び遺伝的にコードされていないアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、及び修飾ポリペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。この用語は、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する又は有しない異種及び同種リーダー配列との融合タンパク質、免疫学的にタグ付けされたタンパク質等を含むが、これらに限定されない融合タンパク質を含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、「変異体」及び「ホモログ」という用語は、参照アミノ酸又は核酸配列のそれぞれと同様のアミノ酸又はDNA配列を指すために区別なく使用される。この用語は、自然発生変異体及び非自然発生変異体を包含する。自然発生変異体は、ホモログ(或る種と別の種とでアミノ酸又はヌクレオチド配列がそれぞれ異なるポリペプチド及び核酸)及び対立遺伝子変異体(種内の或る個体と別の個体とでアミノ酸又はヌクレオチド配列がそれぞれ異なるポリペプチド及び核酸)を含む。このため、変異体及びホモログは、自然発生DNA配列及びそれによってコードされるタンパク質、及びそれらのアイソフォーム、並びにタンパク質又は遺伝子のスプライス変異体を包含する。この用語は、1つ以上の塩基が自然発生DNA配列とは異なるが、遺伝コードの縮重のために依然として自然発生タンパク質に相当するアミノ酸配列へと翻訳される核酸配列も包含する。非自然発生変異体及びホモログには、アミノ酸又はヌクレオチド配列のそれぞれの変化を含み、配列の変化が人工的に導入された(例えば突然変異タンパク質)、例えば変化が人間の介入(「人の手」)によって実験室内で生成したポリペプチド及び核酸が含まれる。したがって、非自然発生変異体及びホモログは、1つ以上の保存的置換及び/又はタグ及び/又はコンジュゲートによって自然発生配列とは異なるものを指す場合もある。
【0073】
「突然変異タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、突然変異した組換えタンパク質を広く指す。これらのタンパク質は、通常は単一又は複数のアミノ酸置換を保有し、部位特異的若しくはランダム突然変異誘発に供したクローン化遺伝子、又は完全合成遺伝子に由来することが多い。
【0074】
「DNA」、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」等の用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、又はその類似体を指すために本明細書で区別なく使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、線状及び環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマー等が挙げられる。
【0075】
アルギナーゼ及びその阻害
上記のように、本発明の化合物が活性をもたらす化合物の基礎的な作用機序の正確な理解は、本発明の実施に必要とされず、化合物(又はそのサブセット)は、アルギナーゼを阻害すると考えられる。本発明の化合物は概して、本明細書でアルギナーゼ阻害剤と称されるが、「アルギナーゼ阻害剤」という用語が、アルギナーゼの阻害によって個別に作用するが、付加的な機構によっても作用する化合物を包含することを理解されたい。
【0076】
望ましい特徴を有するアルギナーゼ阻害剤の特定
本発明は、一部には、治療に適切な少なくとも1つの特性又は特徴を有するアルギナーゼの阻害剤の特定に関する。候補阻害剤は、例えば当該技術分野で認められるアッセイ又はモデルを用いて特定することができ、その例を本明細書に記載する。
【0077】
特定後に、候補阻害剤を、阻害剤の特徴に関するデータ(例えば、溶解性又は安定性を決定する手段である薬物動態パラメーター)を与える手法を用いて更に評価することができる。候補阻害剤と参照標準(現在の阻害剤の「クラス最高」であり得る)との比較は、かかる候補の潜在的実現性を示唆する。
【0078】
本発明の化合物
本明細書では、式(I):
【化3】
(式中、
XはN又はCR
4aであり、
各R
1は独立してH又はC
1~8アルキルであり、
R
2はH又はCH
3であり、
各R
3は独立してH若しくはC
1~8アルキルであるか、又は2つのR
3基が接合して、非置換であるか、若しくは1つ~4つのR
aで置換された5員若しくは6員環を形成し、
各R
4a、R
4b、R
4c及びR
4dは独立してH、ハロゲン、CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ヒドロキシアルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8ハロアルコキシ、-X
1-Y、-X
1-SO
2R
5a及び-X
1-NR
5bR
5cからなる群より選択され、
各R
5a、R
5b及びR
5cは独立してH、C
1~8アルキル、C
1~8ハロアルキル、C
1~8アルキルC(O)-、C
3~7シクロアルキル、3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR
5b及びR
5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C
3~7シクロアルキル又は3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールの各々が非置換であるか、又は1つ~4つのR
bで置換され、
各X
1は結合、-O-、C
1~6アルキレン又は-O-C
1~6アルキレンであり、ここで、アルキレン部分は非置換であるか、又は1つ~4つのR
c及び0若しくは1つのオキソで置換され、
各R
a、R
b及びR
cは独立してハロゲン、CN、OH、NH
2、CO
2H、C
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル及びフェニルであるか、又は2つのR
cが組み合わさって、非置換であるか、若しくは1つ~3つのR
dで置換されたC
3~6シクロアルキルを形成し、
各Yは独立してフェニル、5員若しくは6員のヘテロアリール、3員~7員のヘテロシクロアルキル又はC
3~6シクロアルキルであり、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのR
dで置換され、
各R
dは独立してハロゲン、C
1~4アルキル、アミノ、アミノC
1~4アルキル、C
1~4ハロアルキル、OH及びC
1~4ヒドロキシアルキルである)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物若しくは溶媒和物が提供される。
【0079】
幾つかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物若しくは溶媒和物は、
XがN又はCR4aであり、
各R1が独立してH又はC1~8アルキルであり、
R2がH又はCH3であり、
各R3が独立してH若しくはC1~8アルキルであるか、又は2つのR3基が接合して、非置換であるか、若しくは1つ~4つのRaで置換された5員若しくは6員環を形成し、
各R4a、R4b、R4c及びR4dが独立してH、ハロゲン、CN、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、C1~8ヒドロキシアルキル、C1~8ハロアルキル、-X1-Y、-X1-SO2R5a及び-X1-NR5bR5cからなる群より選択され、
各R5a、R5b及びR5cが独立してH、C1~8アルキル、C1~8ハロアルキル、C1~8アルキルC(O)-、C3~7シクロアルキル、3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR5b及びR5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C3~7シクロアルキル又は3員~7員のヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールの各々が非置換であるか、又は1つ~4つのRbで置換され、
各X1が結合、又は非置換であるか、若しくは1つ~4つのRcで置換されたC1~6アルキレンであり、
各Ra、Rb及びRcは、独立してハロゲン、CN、OH、NH2、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル及びフェニルであるか、又は2つのRcが組み合わさってC3~6シクロアルキルを形成し、
各Yが独立してフェニル又は5員若しくは6員のヘテロアリールであり、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのRdで置換され、
各Rdが独立してハロゲン、C1~4アルキル、アミノ、アミノC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、OH及びC1~4ヒドロキシアルキルである、化合物である。
【0080】
式(I)の幾つかの実施形態では、XはCR4aである。式(I)の他の実施形態では、XはNである。
【0081】
式(I)の幾つかの選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、各R4a、R4b、R4c及びR4dは、独立してH、F、Cl、CN、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4ハロアルキル、-X1-Y、-X1-SO2R5a及び-X1-NR5bR5cからなる群より選択される。更なる実施形態では、各R4a、R4b、R4c及びR4dは、独立してH、F、Cl、CN、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4ハロアルキル及び-X1-NR5bR5cからなる群より選択される。更なる実施形態では、各R4a、R4b、R4c及びR4dは、独立してH、F、Cl、CN、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4ハロアルキル及び-X1-NR5bR5cからなる群より選択され、R4a、R4b及びR4cの少なくとも1つが-X1-NR5bR5cである。また更なる実施形態では、R4cは-X1-NR5bR5cである。
【0082】
式(I)の幾つかの選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、R5a、R5b及びR5cの各々が独立してH、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C1~4アルキルC(O)-、C3~6シクロアルキル、3員~6員のヘテロシクロアルキル、フェニル、ピリジル及びアミノ酸からなる群より選択されるか、又はR5b及びR5cが接合して4員~6員環を形成し、ここで、4員~6員環、C3~6シクロアルキル又は3員~6員のヘテロシクロアルキル、フェニル及びピリジルの各々は、非置換であるか、又は1つ~4つのRbで置換される。
【0083】
式(I)の幾つかの選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、X
1は結合である。式(I)の他の選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、X
1は、非置換であるか、又は1つ若しくは2つのR
cで置換されたメチレン又はエチレン基である。式(I)の更に他の選択される実施形態では、X
1はメチレン、エチレン、
【化4】
である。
【0084】
式(I)の幾つかの選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、-NR
5bR
5cは-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCH
2CF
3、-NHCH(CH
3)
2、-NHC(O)CH
3、
【化5】
からなる群より選択される。
【0085】
式(I)の幾つかの選択される実施形態及び上で論考される実施形態のいずれかでは、Yは存在する場合、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3-トリアゾリル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群より選択され、各々が非置換であるか、又は1つ~3つのRdで置換される。
【0086】
選択される一群の実施形態では、式:
【化6】
(式中、各R
1、R
2、各R
3、R
4b、R
4c、R
4d及びXは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0087】
別の選択される一群の実施形態では、式:
【化7】
(式中、各R
1、R
2、各R
3、R
4a、R
4b、R
4c及びR
4dは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0088】
別の選択される一群の実施形態では、式:
【化8】
(式中、各R
1、R
2、各R
3、R
4a、R
4b及びR
4cは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0089】
別の選択される一群の実施形態では、式:
【化9】
(式中、R
1、R
2、各R
3、R
4a、R
4b及びR
4cは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0090】
更に別の選択される実施形態では、式:
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
4a、R
4b及びR
4cは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0091】
幾つかの選択される実施形態では、式:
【化11】
(式中、R
1、R
4a、R
4b及びR
4cは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0092】
更に別の選択される実施形態では、式:
【化12】
(式中、R
1、各R
c、R
4b及びR
4cは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0093】
更に別の選択される実施形態では、式:
【化13】
(式中、R
1、各R
c、R
4a及びR
4bは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する式(I)の化合物が提供される。
【0094】
幾つかの選択される実施形態では、式(I)の化合物は、式:
【化14】
(式中、R
1、各R
c及びR
4bは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する。
【0095】
式(Ii)の更なる選択される実施形態では、R4bはH、CH3、CN、CF3、F及びClからなる群より選択される。
【0096】
幾つかの選択される実施形態では、式(I)の化合物は、式:
【化15】
(式中、下付き文字nは1、2又は3であり、R
1及びR
4bは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する。
【0097】
幾つかの選択される実施形態では、式(I)の化合物は、式:
【化16】
(式中、R
1及びR
4bは、式(I)又は上に提示される実施形態のいずれかを参照して与えられる意味を有する)を有する。
【0098】
幾つかの選択される実施形態では、式(I)の化合物は、
【化17】
からなる群より選択される式を有する。
【0099】
幾つかの選択される実施形態では、表1のいずれか1つの化合物が提供される。
【0100】
幾つかの選択される実施形態では、式(I)の化合物の重水素化形態が提供される。重水素で、水素が存在し得る任意の位置で独立して水素を置換してもよい。
【0101】
合成方法
概して、本明細書で提供される化合物は、下記実施例に記載される従来の方法によって調製することができる。
【0102】
プロドラッグ、及び薬物送達及び/又は半減期延長の他の手段
本発明の幾つかの態様では、本明細書に記載される化合物をプロドラッグ形態で投与する。
【0103】
治療活性の延長をもたらすために、送達担体を用いて薬物分子を改変することができる。かかる担体は、薬物部分を溶媒-担体混合物中に物理化学的に配合して非共有的に使用されるか、又は薬物部分の官能基の1つへの担体試薬の永続的な共有結合によって使用される(概して、国際公開第20150202317号を参照されたい)。
【0104】
幾つかの非共有アプローチが好ましい。例としては、限定されるものではないが、或る特定の実施形態では、ポリマー担体への非共有薬物封入を有するデポー配合物が用いられる。かかる配合物では、薬物分子を担体材料と合わせ、薬物分子がバルク担体中に分散するように処理する。例としては、注射用懸濁液として投与される微粒子ポリマー-薬物凝集体(例えばDegradex(商標) Microsphere(Phosphorex, Inc.))、単回ボーラス注射として投与される、ゲルとして配合したポリマー-薬物分子凝集体(例えばLupron Depot(商標)(AbbVie Inc.))、及び担体が薬物を可溶化することが可能なポリマー又は非ポリマー実体(entity)であり得るリポソーム配合物(例えばDepoCyt(商標)(Pacira Pharmaceuticals))が挙げられる。これらの配合物では、薬物分子の放出は、担体が膨潤するか又は物理的に崩壊した場合に生じ得る。他の例では、化学分解により生物学的環境への薬物の拡散が可能となり、かかる化学分解プロセスは、自己加水分解性であるか又は酵素触媒によるものであり得る。数ある制限の中でも、非共有薬物封入は、薬物の非制御放出の防止を必要とし、薬物の放出機構が生分解に依存することから、患者間の変動が引き起こされ得る。
【0105】
特定の実施形態では、小分子及び大分子の両方を含む薬物分子が、永続的な共有結合によって担体にコンジュゲートする。液体への低い溶解性を示す或る特定の小分子治療剤は、親水性ポリマーにコンジュゲートすることによって可溶化することができ、その例を本明細書の他の部分に記載する。大分子タンパク質に関しては、半減期延長は例えば、パルミトイル部分による永続的な共有結合修飾、及びそれ自体が延長された半減期を有する別のタンパク質(例えばAlbuferon(商標))による永続的な共有結合修飾によって達成することができる。概して、担体を薬物に共有結合的にコンジュゲートした場合、薬物分子は生物活性の低下を示す。
【0106】
或る特定の例では、非共有ポリマー混合物を含む薬物分子又は永続的な共有結合を含む薬物分子のいずれかに関連する制限は、薬物をポリマー担体に化学的にコンジュゲートするプロドラッグアプローチを用いることによって首尾よく対処することができる。この状況では、不活性であるか又は薬物部分自体よりも活性が低い治療剤は、活性分子実体へと予想通りに変換される。放出される薬物と比較して低下したプロドラッグの生物活性は、薬物の徐放又は制御放出が所望される場合に有利である。このような例では、薬物の放出が時間をかけて起こるため、薬物の反復投与及び頻回投与の必要性が少なくなる。プロドラッグアプローチは、薬物部分自体が胃腸管内で吸収されないか又は吸収が最適ではない場合にも有利であり得る。これらの例では、プロドラッグが薬物部分の吸収を促進し、その後しばらくしてから(例えば初回通過代謝により)切断される。生物活性薬物分子は通例、担体部分と薬物分子のヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基との間に形成される一時的結合によってポリマー担体部分に連結される。
【0107】
上記のアプローチは、幾つかの制限を伴う。プロドラッグ活性化は、担体と薬物分子との間の一時的結合の酵素的若しくは非酵素的切断、又はその両方の逐次的組合せ(例えば酵素段階に続く非酵素的修飾)によって生じ得る。酵素を含まないin vitro環境(例えば水性緩衝液)では、エステル又はアミド等の一時的結合が加水分解を受ける場合があるが、対応する加水分解速度は、治療有効範囲外であるような速度であり得る。対照的に、in vivo環境ではエステラーゼ又はアミダーゼが通例存在し、エステラーゼ及びアミダーゼは、2倍から最大で数桁の加水分解動態の顕著な触媒的加速を引き起こす可能性がある(例えば、Greenwald et al., (1999) J Med Chem 42(18):3857-67を参照されたい)。
【0108】
本明細書に記載されるように、プロドラッグは、i)生物学的前駆体(bioprecursors)及びii)担体結合プロドラッグに分類することができる。生物学的前駆体は、担体基を含有せず、官能基の代謝的生成によって活性化される。対照的に、担体結合プロドラッグでは、生物活性実体の官能基での一時的連結によって活性物質を担体部分にコンジュゲートする。好ましい官能基は、ヒドロキシル又はアミノ基である。結合化学及び加水分解条件はどちらも、用いられる官能基のタイプによって異なる。担体は、生物学的に不活性であっても(例えばPEG)又は標的化特性を有していてもよい(例えば抗体)。担体結合プロドラッグの担体部分の切断は、対象の生物活性実体を生じ、生物活性実体の脱保護官能基の性質がその生物活性に寄与することが多い。
【0109】
一時的連結が不安定なエステル結合である多くの巨大分子プロドラッグが特許及び科学文献に記載されている。これらの場合、生物活性実体の官能基は、ヒドロキシル基又はカルボン酸のいずれかである(例えばCheng et al. (2003) Bioconjugate Chem 14:1007-17を参照されたい)。加えて、担体を生物活性実体のアミノ基(複数の場合もある)(例えば、タンパク質のN末端又はリジンアミノ基)に連結することが生体高分子及び或る特定の小分子薬物にとって有利であることが多い。プロドラッグの調製時に、ヒドロキシル又はフェノール基と比較して高い求核性のために、より化学選択的にアミノ基に対処することができる。このことは、非選択的コンジュゲーション反応が、広範な特性評価又は精製を必要とし、活性部分の反応収率及び治療効果を低下させる望ましくない生成物混合物をもたらす、多様な異なる反応性官能基を含有するタンパク質及びペプチドにとって特に適切である。
【0110】
概して、アミド結合は、加水分解に対してエステル結合よりも安定し、アミド結合の切断速度は、担体結合プロドラッグにおける治療的有用性にとっては遅すぎる場合がある。結果として、プロドラッグアミド結合の切断性の制御をもたらすために構造化学成分を付加することが有利であり得る。担体実体によっても薬物によっても与えられない、これらの付加的な切断制御化学成分は、概して「リンカー」と称される。プロドラッグリンカーは、一時的結合の加水分解速度に対して大きな影響を及ぼす可能性があり、リンカーの化学的性質の変動は、特定の特性をもたらすことが多い。標的化放出のための特異的酵素によるアミン含有生物活性部分のプロドラッグ活性化は、リンカーの構造が対応する内因性酵素によって基質として認識される構造モチーフを示すことを必要とする。これらの場合、一時的結合の切断は、酵素によって触媒される一段階プロセスで生じる。例えば、シタラビンの酵素的放出は、様々な種類の腫瘍塊において濃度が比較的高いプロテアーゼプラスミンによって達成される。
【0111】
患者間の変動は、主要な酵素的切断の大きな欠点である。酵素レベルは、被験体間で顕著に異なり、酵素的切断によるプロドラッグ活性化の生物学的変動をもたらす可能性がある。酵素レベルも投与部位に応じて異なり得る(例えば、皮下注射については、身体の或る特定の部位が他の部位よりも予測可能な治療効果をもたらす)。加えて、酵素依存性担体結合プロドラッグの薬物動態特性についてin vivo-in vitro相関を確立することは困難である。
【0112】
薬物部分のアミノ基への一時的連結を用いる他の担体プロドラッグは、カスケード機構に基づく。カスケード切断は、マスキング基と活性化基との構造的組合せから構成されるリンカー化合物によって可能となる。マスキング基は、エステル又はカルバメート等の第1の一時的連結によって活性化基に付着する。活性化基は、第2の一時的連結(例えばカルバメート)によって薬物分子のアミノ基に付着する。第2の一時的連結の安定性又は加水分解への感受性は、マスキング基の存在又は非存在によって異なる。マスキング基の存在下では、第2の一時的連結は高度に安定し、薬物分子を治療的に有用な動態で放出する可能性は低いが、マスキング基の非存在下では、この連結は極めて不安定となり、薬物部分の急速な切断及び放出が生じる。
【0113】
第1の一時的連結の切断は、カスケード機構の律速段階である。第1の段階は、活性化基の分子転位(例えば、Greenwald et al. (1999) J Med Chem 42:3657-67に記載される1,6-除去)を誘導することができ、転位により第2の一時的連結がはるかに不安定となり、その切断が誘導される。理想的には、第1の一時的連結の切断速度は、所与の治療状況における薬物分子の所望の放出速度と同一である。加えて、第2の一時的連結の切断は、その不安定性が第1の一時的結合の切断によって誘導された実質的に直後であることが望ましい。
【0114】
別の実施形態は、トリメチルロックラクトン化に基づくポリマーアミノ含有プロドラッグを含む(例えば、Greenwald et al. (2000) J Med Chem 43(3):457-87を参照されたい)。このプロドラッグ系では、置換o-ヒドロキシフェニル-ジメチルプロピオン酸が、第1の一時的連結としてのエステル、カーボネート又はカルバメート基によってPEGに連結し、第2の一時的連結としてのアミド結合によって薬物分子のアミノ基に連結する。薬物放出における律速段階は、第1の連結の酵素的切断であり、続いてラクトン化による迅速なアミド切断が起こり、芳香族ラクトン副生成物が放出される。Greenwald et al.によって記載されるプロドラッグ系の主な不利点は、一時的連結の切断後のキノンメチド又は芳香族ラクトンのような反応性の高い潜在的に毒性の芳香族小分子副生成物の放出である。潜在的に毒性の実体が薬物と1:1の化学量論で放出され、高いin vivo濃度をとる恐れがある。
【0115】
1,6-除去に基づく芳香族活性化基を含むカスケードプロドラッグの或る特定の実施形態では、マスキング基は担体から構造的に分離している。これは、ポリマー担体と活性化基との間に安定結合を用いることによって達成することができ、安定結合はカスケード切断機構に関与しない。担体がマスキング基として働かない場合、活性化基を安定結合によって担体に共役し、潜在的に毒性の副生成物(活性化基等)の放出を回避する。活性化基とポリマーとの安定した結合はまた、不明確な薬理を有する薬物-リンカー中間体の放出を抑制する。
【0116】
前項に記載されるアプローチの第1の例は、マンデル酸活性化基をベースとするポリマープロドラッグ系を含む(例えば、Shabat et al. (2004) Chem Eur J 10:2626-34を参照されたい)。このアプローチでは、マスキング基をカルバメート結合によって活性化基に連結する。活性化基は、アミド結合によってポリアクリルアミドポリマーと永続的にコンジュゲートする。触媒抗体によるマスキング基の酵素的活性化後にマスキング基が環化によって切断され、薬物が放出される。活性化基は、薬物放出後も依然としてポリアクリルアミドポリマーに接続している。同様のプロドラッグ系は、マンデル酸活性化基及び酵素的に切断可能なエステル結合マスキング基をベースとする(例えば、Lee et al. (2004) Angew Chem 116:1707-10を参照されたい)。
【0117】
上述のリンカーを使用する場合、1,6-除去段階により依然として反応性の高い芳香族中間体が生成する。芳香族部分がポリマー担体に永続的に付着したままであっても、潜在的に毒性の副生成物による副反応又は免疫原性効果が生じる可能性がある。このため、酵素依存性ではなく、切断時に反応性芳香族中間体を生成しない脂肪族プロドラッグリンカーを用いてアミン含有活性作用物質のポリマープロドラッグを形成するリンカー技術を生み出すことが有利である。かかる例の1つでは、組織型プラスミノーゲン活性化因子及びウロキナーゼにおけるアミノ基の可逆的修飾のためにPEG5000-無水マレイン酸が使用される(例えば、(1987) Garman et al. FEBS Lett 223(2):361-65を参照されたい)。マレアミド酸連結の切断によるpH7.4の緩衝剤でのインキュベーション後のPEG-uPAコンジュゲートからの機能酵素の再生は、一次速度則に従い、半減期はおよそ6時間である。マレアミド酸連結の不利点は、より低pH値でのコンジュゲートの安定性の欠如である。
【0118】
更なるアプローチは、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシン)リンカーをベースとしたPEGカスケードプロドラッグ系を含む(例えば、(2004) J Med Chem 47:726-34を参照されたい)。この系では、2つのPEG担体分子を、薬物分子のアミノ基と共役したビシン分子に一時的結合によって連結する。プロドラッグ活性化における第1の段階は、両方のPEG担体分子とビシン活性化基のヒドロキシ基とを接続する第1の一時的連結の酵素的切断を伴う。PEGとビシンとの間の異なる連結が、異なるプロドラッグ活性化動態をもたらす。プロドラッグ活性化における第2の段階は、ビシン活性化基を薬物分子のアミノ基に接続する第2の一時的連結の切断を伴う。この系の不利点は、この第2の一時的ビシンアミド連結の遅い加水分解速度であり、これが天然の親薬物分子と比較して異なる薬物動態、免疫原性、毒性及び薬力学的特性を示す可能性があるビシン修飾プロドラッグ中間体の放出をもたらす。
【0119】
特定の実施形態では、酵素又は生体輸送系の基質であることから、ジペプチドを標的化又は標的輸送のためのプロドラッグ開発に利用する。ジペプチドプロドラッグ形成の非酵素的経路、すなわち分子内環化を受けて対応するジケトピペラジン(DKP)を形成し、活性薬物を放出する能力は、確立されていない。
【0120】
幾つかの実施形態では、薬物パラセタモールのジペプチドエステルについて記載されているように、ジペプチドをエステル結合によって薬物部分に付着させる(Gomes et al. (2005) Bio & Med Chem Lett)。この場合、環化反応は、4面体型中間体を形成するエステル炭素原子に対するペプチドのN末端アミンの求核攻撃からなり、これに続いてアミンから脱離基オキシアニオンへのプロトン移動と共にペプチド結合の同時形成が起こり、環状DKP生成物及び遊離薬物が生じる。この方法は、in vitroでヒドロキシル含有薬物に適用可能であるが、in vivoでは、対応するジペプチドエステルが緩衝剤中よりもはるかに速い速度でパラセタモールを放出することから、エステル結合の酵素加水分解と競合することが見出されている(Gomes et al. (Molecules 12 (2007) 2484-2506)。ペプチダーゼに対するジペプチド系プロドラッグの感受性は、少なくとも1つの非天然アミノ酸をジペプチドモチーフに組み込むことによって対処することができる。しかしながら、エステル結合を切断することが可能な内因性酵素は、ペプチダーゼに限定されず、かかるプロドラッグ切断の酵素依存性が依然として予測不可能なin vivo性能を生じさせる。
【0121】
幾つかの実施形態では、酵素依存性は、ジペプチドエステルプロドラッグがジペプチドのアミノ末端でホルミル化され、酵素的脱ホルミル化を用いてジケトピペラジン形成及びその後のエステル-ジペプチド結合の切断が開始し、続いて薬物分子が放出されるようなDKPプロドラッグへと意図的に改変される(例えば、米国特許第7,163,923号を参照されたい)。更なる例としては、オクタペプチドがエステル連結によってビンブラスチンの4-ヒドロキシル基に付着し、N末端ヘキサペプチドの特異的な酵素的除去後にDKP形成によってエステル結合切断を受ける(Brady et al. (2002) J Med Chem 45:4706-15を参照されたい)。
【0122】
DKP形成反応の範囲は、アミドプロドラッグにも広げられている。例としては、シタラビンのジペプチジルアミドプロドラッグについてのジケトピペラジン形成を用いたプロドラッグ活性化が米国特許第5,952,294号に記載されている。この場合、一時的連結がジペプチドのカルボニルとシタラビンの芳香族アミノ基との間に形成される。しかしながら、担体又は他の半減期延長部分又は官能基が存在しないことから、かかるコンジュゲートについて徐放効果を達成し得る可能性は低い。
【0123】
ジペプチド伸長のジケトピペラジン形成によってペプチドを放出することが可能なGLP-1等の生物活性ペプチドを含むジペプチドプロドラッグも記載されている(例えば、国際公開第2009/099763号を参照されたい)。生物活性ペプチド部分は、生物活性ペプチドの循環の延長を達成するために、そのアミノ酸側鎖残基の1つに付加的なPEG鎖を含んでいてもよい。しかしながら、このアプローチは、幾つかの大きな不利点を伴う。第一に、PEG鎖を、ペプチドの生物活性を損なうことなくペプチドに連結する必要があり、これは多くのペプチド系生物活性剤で達成することが困難であり得る。第二に、ペグ化ペプチド自体が生物活性であるため、ジペプチドプロ部分(promoiety)がペプチドの生物活性に影響を及ぼし、その受容体結合特性に悪影響を与える恐れがある。
【0124】
本発明の化合物と共に用いることができる具体的な技術の例としては、ProLynx(San Francisco,CA)及びAscendis Pharma(Palo Alto,CA)によって開発されたものが挙げられる。ProLynxの技術プラットホームでは、循環する半固体巨大分子コンジュゲートからの小分子及びペプチドの制御された予測可能な持続放出を可能にするために異なる速度で切断するように予めプログラムされた新規のリンカーのセットが利用される。この技術により、治療剤の所望の定常状態血清レベルが数週間~数カ月にわたって維持される。
【0125】
Ascendisの技術プラットホームは、小分子及びペプチドの特性を向上させるためにプロドラッグ及び持続放出技術の利点を組み合わせたものである。循環中では、独自のプロドラッグにより、生理的pH及び温度条件によって支配される所定の速度で非修飾活性親治療剤が放出される。治療剤は、非修飾形態で放出されるため、元の作用機序を保持する。
【0126】
阻害剤特性を向上させるための修飾
本明細書で開示される治療法の1つ以上の物理的特性及び/又はそれを行う方法を改善することは有益であることが多く、場合によっては必要不可欠である。物理的特性の改善には、例えば水溶性、バイオアベイラビリティ、血清半減期及び/又は治療半減期を増大し、及び/又は生物活性を調節する方法が含まれる。
【0127】
当該技術分野で既知の修飾としては、ペグ化、Fc融合及びアルブミン融合が挙げられる。概して大分子作用物質(例えばポリペプチド)に関連するにも関わらず、かかる修飾は近年、特定の小分子を用いて評価されている。例としては、免疫グロブリンFcドメインとコンジュゲートしたアデノシン2a受容体の小分子アゴニストがChiang, M. et al. (J. Am. Chem. Soc., 2014, 136(9):3370-73)に記載されている。小分子-Fcコンジュゲートは、強力なFc受容体及びアデノシン2a受容体相互作用を保持し、非コンジュゲート小分子と比較して優れた特性を示した。小分子治療剤へのPEG分子の共有結合も記載されている(Li, W. et al., Progress in Polymer Science, 2013 38:421-44)。
【0128】
他の既知の修飾としては、薬物動態、薬力学及び毒性プロファイルを改善するための重水素化が挙げられる。重水素のより大きな原子質量のために、炭素-重水素結合の切断には炭素-水素結合よりも大きなエネルギーが必要とされる。これらのより強い結合は、切断がより困難であるため、薬物代謝速度が非重水素化形態と比較して遅くなり、これにより投与頻度の低減が可能となり、毒性が更に低下し得る(Charles Schmidt, Nature Biotechnology, 2017, 35(6): 493-494、Harbeson, S. and Tung, R., Medchem News, 2014(2): 8-22)。
【0129】
治療的及び予防的使用
本発明は、広範な疾患、障害及び/又は病態、及び/又はその症状の治療又は予防における本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。特定の用途について以下で詳細に説明するが、本発明がそのように限定されないことを理解されたい。さらに、特定の疾患、障害及び病態の一般的なカテゴリーを以下に記載するが、疾患、障害及び病態の一部が2つ以上のカテゴリーの成員であってもよく、他が開示のカテゴリーのいずれの成員でなくてもよい。
【0130】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される疾患、障害及び/又は病態は、少なくとも部分的にアルギナーゼによって媒介される。
【0131】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤は、アルギナーゼ媒介性免疫抑制の活性を逆転させる、止める又は遅らせるのに効果的な量で投与される。
【0132】
腫瘍関連(Oncology-related)障害。本発明によると、アルギナーゼ阻害剤は、癌、例えば子宮、子宮頸部、乳房、前立腺、精巣、胃腸管(例えば食道、中咽頭、胃、小腸若しくは大腸、結腸、又は直腸)、腎臓、腎細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭部又は頸部、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳(例えば神経膠腫)、神経節、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)の癌、並びに造血系及び免疫系(例えば脾臓又は胸腺)の癌を含む増殖性病態又は障害を治療又は予防するために使用することができる。本発明は、例えば免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、休眠腫瘍、ウイルス誘発癌(例えば上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌及びパピローマウイルス)、腺癌、リンパ腫、癌腫、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形癌、化学物質誘発癌、転移及び血管新生を含む他の癌関連疾患、障害又は病態を治療又は予防する方法も提供する。本発明は、T細胞を飢餓状態にし、それらの活性化及び増殖を妨げるアルギニンの枯渇を逆転させるためのアルギナーゼの阻害を企図する(Rodriguez et al (2004), Arginase I production in the tumor microenvironment by mature myeloid cells inhibits T-cell receptor expression and antigen-specific T-cell responses. Cancer Res. 64(16), 5839-5849)。特定の実施形態では、腫瘍又は癌は結腸癌、卵巣癌、乳癌、黒色腫、肺癌、膠芽腫又は白血病である。癌関連疾患、障害及び病態という用語(複数の場合もある)の使用は、直接的又は間接的に癌と関連した病態を広く指すことを意図し、この用語には例えば血管新生及び異形成等の前癌状態が含まれる。
【0133】
或る特定の実施形態では、癌は転移性である若しくは転移性となるリスクがある可能性があり、又は広範な組織に生じる可能性がある(血液又は骨髄の癌(例えば白血病)を含む)。幾つかの更なる実施形態では、本発明の化合物は、T細胞寛容を克服するために使用することができる。
【0134】
幾つかの実施形態では、本発明は、アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤又は診断剤を用いて増殖性病態、癌、腫瘍又は前癌状態を治療する方法を提供し、その例を本明細書の他の部分に記載する。
【0135】
免疫及び炎症関連障害。本明細書で使用される場合、「免疫疾患」、「免疫病態」、「免疫障害」、「炎症性疾患」、「炎症性状態」、「炎症性障害」等の用語は、幾つかの治療的利点が得られるように本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤によって治療することができる炎症性要素を有する任意の免疫関連病態(例えば自己免疫疾患)又は障害を広く包含することを意図する。かかる病態は、他の疾患、障害及び病態と密接に関連し合うことが多い。例としては、「免疫病態」は、免疫系による根絶に抵抗する感染(急性及び慢性)、腫瘍及び癌を含む癌、腫瘍及び血管新生等の増殖性病態を指す場合がある。
【0136】
本発明のアルギナーゼ阻害剤は、免疫応答の増大又は増強、免疫化の改善(これにはワクチンの有効性の増大が含まれる)、炎症の増大に使用することができる。免疫不全疾患、免疫抑制治療、急性及び/又は慢性感染、及び老化と関連する免疫不全は、本明細書で開示される化合物を用いて治療することができる。アルギナーゼ阻害剤を用いて、骨髄移植、化学療法又は放射線療法を受けた患者を含む医原的に誘導された免疫抑制を患う患者の免疫系を刺激することもできる。
【0137】
本開示の特定の実施形態では、アルギナーゼ阻害剤は、アジュバント活性を与えることによって抗原に対する免疫応答を増大又は増強するために使用される。特定の実施形態では、抗原又はワクチンに対する免疫応答を延長するために、少なくとも1つの抗原又はワクチンを少なくとも1つの本発明のアルギナーゼ阻害剤と組み合わせて被験体に投与する。ウイルス、細菌及び真菌、又はその一部分、タンパク質、ペプチド、腫瘍特異抗原及び核酸ワクチンを含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの抗原性作用物質又はワクチン成分を少なくとも1つの本発明のアルギナーゼ阻害剤と組み合わせて含む治療用組成物も提供される。
【0138】
本発明の化合物及び組成物を用いて治療又は予防され得る免疫及び炎症関連疾患、障害及び病態の非限定的なリストには、関節炎(例えば関節リウマチ)、腎不全、ループス、喘息、乾癬、大腸炎、膵炎、アレルギー、線維症、外科合併症(例えば炎症性サイトカインが治癒を妨げる場合)、貧血及び線維筋痛が含まれる。慢性炎症と関連し得る他の疾患及び障害としては、アルツハイマー病、鬱血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、パーキンソン病、感染症、炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)、アレルギー性接触皮膚炎及び他の湿疹、全身性硬化症、移植、並びに多発性硬化症が挙げられる。
【0139】
他の免疫関連障害においても、アルギナーゼ機能の阻害が免疫寛容及び子宮内での胎児拒絶の予防にも役割を果たし得ることが企図される。
【0140】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤は、免疫エフェクター細胞の数を低減するために免疫抑制剤と組み合わせることができる。
【0141】
アルギナーゼ阻害剤が(例えば現在の療法の限界のために)特に有効であり得る上述の疾患、障害及び病態の幾つかについて以下でより詳細に説明する。
【0142】
概して関節の内膜(滑膜)における慢性炎症を特徴とする関節リウマチ(RA)には、米国の人口のおよそ1%(約210万人)が罹患している。炎症過程におけるTNF-a及びIL-1を含むサイトカインの役割についての更なる理解から、新たなクラスの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の開発及び導入が可能となった。作用物質(一部がRAの治療法と重なる)としては、ENBREL(エタネルセプト)、REMICADE(インフリキシマブ)、HUMIRA(アダリムマブ)及びKINERET(アナキンラ)が挙げられる。これらの作用物質の幾つかは、特定の患者集団において症状を緩和し、構造的損傷の進行を阻害し、身体機能を改善するが、有効性が改善され、補完的な作用機序を有し、重大な副作用がより少ない(fewer/less)代替的な作用物質が依然として必要とされている。
【0143】
一連のよく見られる免疫介在性慢性皮膚疾患である乾癬には、米国内で450万人超が罹患しており、そのうち150万人が、この疾患の中等度ないし重症型を有すると考えられている。さらに、乾癬患者の10%超が、関節周辺の骨及び結合組織を損傷する乾癬性関節炎を発症している。乾癬の基礎的生理の理解の改善から、例えば疾患の炎症性の原因となるTリンパ球及びサイトカインの活性を標的とする作用物質が導入された。かかる作用物質としては、ENBREL(エタネルセプト)、REMICADE(インフリキシマブ)及びHUMIRA(アダリムマブ)を含むTNF-α阻害剤(関節リウマチ(RA)の治療にも使用される)、並びにAMEVIVE(アレファセプト)及びRAPTIVA(エファリズマブ)等のT細胞阻害剤が挙げられる。これらの作用物質の幾つかは、或る特定の患者集団において或る程度まで効果的であるが、いずれも全ての患者を効果的に治療するとは示されていない。
【0144】
微生物関連障害。本発明は、アルギナーゼ阻害剤による治療が有益であり得る任意のウイルス性、細菌性、真菌性、寄生虫性又は他の感染性疾患、障害又は病態の治療及び/又は予防における本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。
【0145】
企図されるウイルス性の疾患、障害及び病態の例としては、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HIV、AIDS(その徴候、例えば悪液質、認知症及び下痢を含む)、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス、コクサッキーウイルス及びサイトメガロウイルス(CMV)によって引き起こされる感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
かかる疾患及び障害の更なる例としては、ブドウ球菌及び連鎖球菌感染症(例えば、それぞれ、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌)及びストレプトコッカス・サングイニス(streptococcus sanguinis))、リーシュマニア、トキソプラズマ、トリコモナス、ジアルジア、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)、バチルス・アントラシス(bacillus anthracis:炭疽菌)及びシュードモナス・エルギノーサ(pseudomonas aeruginosa:緑膿菌)によって引き起こされる感染症が挙げられる。幾つかの実施形態では、疾患又は障害としては、マイコバクテリウム感染症(例えば、マイコバクテリウム・レプラ(Mycobacterium leprae:らい菌)又はマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis:結核菌))又はリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)若しくはトキソプラズマ・ゴンディによって引き起こされる感染症が挙げられる。本発明の化合物は、敗血症を治療し、細菌増殖を減少させるか又は阻害し、炎症性サイトカインを低減又は阻害するために使用することができる。
【0147】
更なる実施形態は、ドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、大形リーシュマニア(Leishmania major)、エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)又は四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)を含むが、これらに限定されない寄生虫感染の治療を企図する。抗寄生虫療法は、予防的に(例えば、寄生虫感染が高頻度に見られる地域に被験体が旅行する前に)行われることが多い。
【0148】
他の障害。本発明の実施形態は、少なくとも幾らかのレベルのアルギナーゼ阻害から利益を得る可能性がある任意の他の障害の治療又は予防のための被験体への本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の投与を企図する。かかる疾患、障害及び病態としては、例えば心臓血管(例えば心虚血)、消化器(例えばクローン病)、代謝(例えば糖尿病)、肝臓(例えば肝線維症、NASH及びNAFLD)、肺(例えばCOPD及び喘息)、眼科(例えば糖尿病性網膜症)及び腎臓(例えば腎不全)の障害が挙げられる。
【0149】
医薬組成物
本発明のアルギナーゼ阻害剤は、被験体への投与に好適な組成物の形態とすることができる。概して、かかる組成物は、アルギナーゼ阻害剤(複数の場合もある)と、1つ以上の薬学的に許容可能な又は生理学的に許容可能な希釈剤、担体又は添加剤とを含む「医薬組成物」である。或る特定の実施形態では、アルギナーゼ阻害剤は、治療上許容可能な量で存在する。医薬組成物を本発明の方法に使用することができる。このため、例えば医薬組成物は、本明細書に記載される治療的及び予防的方法及び使用の実施のために被験体にex vivo又はin vivoで投与することができる。
【0150】
本発明の医薬組成物は、意図される方法又は投与経路に適合するように配合することができる。例示的な投与経路を本明細書に記載する。さらに、医薬組成物は、本発明によって企図される疾患、障害及び病態を治療又は予防するために、本明細書に記載される他の治療効果のある作用物質又は化合物と組み合わせて使用することができる。
【0151】
有効成分(例えばアルギナーゼ機能の阻害剤)を含有する医薬組成物は、経口使用に好適な形態、例えば錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルション、ハード若しくはソフトカプセル、又はシロップ、溶液、マイクロビーズ若しくはエリキシルとすることができる。経口使用を対象とする医薬組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、かかる組成物は、薬学的に的確な口当たりの良い製剤をもたらすために、例えば甘味料、着香料、着色料及び防腐剤等の1つ以上の作用物質を含有していてもよい。錠剤、カプセル等は、有効成分を錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容可能な添加剤と混合して含有する。これらの添加剤は例えば、希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム、造粒剤及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン又はアルギン酸、結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシアゴム、及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。
【0152】
経口投与に好適な錠剤、カプセル等は、コーティングされていなくても、又は胃腸管内での崩壊及び吸収を遅延させ、それにより持続的な作用をもたらすために既知の手法によってコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を用いることができる。これらを当該技術分野で既知の手法によってコーティングし、制御放出のための浸透圧性治療用錠剤を形成することもできる。更なる作用物質としては、投与組成物の送達を制御するため、生分解性又は生体適合性の粒子又は高分子物質、例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、ポリ無水物、ポリグリコール酸、エチレン-酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、又はラクチド/グリコリド共重合体、ポリラクチド/グリコリド共重合体、若しくはエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。例えば、経口剤は、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル、若しくはポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルをそれぞれ用いたコアセルベーション法若しくは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、又はコロイド薬物送達系に封入することができる。コロイド分散系としては、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む巨大分子錯体、ナノカプセル、マイクロスフェア、マイクロビーズ及び脂質ベース系が挙げられる。上述の配合物の調製方法は、当業者に明らかである。
【0153】
経口使用のための配合物は、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン若しくは微結晶性セルロースと混合されたハードゼラチンカプセル、又は有効成分が水若しくは油媒体、例えば落花生油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合されたソフトゼラチンカプセルとして与えることもできる。
【0154】
水性懸濁液は、その製造に好適な添加剤と混合して活性物質を含有する。かかる添加剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム;分散剤又は湿潤剤、例えば、天然ホスファチド(例えば、レシチン)、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。水性懸濁液は、1つ以上の防腐剤も含有し得る。
【0155】
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は鉱油、例えば流動パラフィンに懸濁することによって配合することができる。油性懸濁液は増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。上記のような甘味料及び着香料を、口当たりの良い経口用製剤をもたらすために添加してもよい。
【0156】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1つ以上の防腐剤と混合して有効成分を与える。好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を本明細書に例示する。
【0157】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルションの形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブ油又はラッカセイ油、又は鉱油、例えば、流動パラフィン、又はこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、天然ガム、例えば、アカシアガム又はトラガカントガム;天然ホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン、及び脂肪酸に由来するエステル又は部分エステル;ヘキシトール無水物、例えば、ソルビタンモノオレエート;及び部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。
【0158】
医薬組成物は通例、治療有効量の本発明によって企図されるアルギナーゼ阻害剤と1つ以上の薬学的かつ生理学的に許容可能な配合剤とを含む。好適な薬学的に許容可能な又は生理学的に許容可能な希釈剤、担体又は添加剤としては、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸及び重硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、p-ヒドロキシ安息香酸エチル又はp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、溶媒、充填剤、増量剤、洗浄剤、緩衝剤、ビヒクル、希釈剤及び/又はアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、好適なビヒクルは、場合により非経口投与用の医薬組成物に一般的な他の材料を添加した生理食塩溶液又はクエン酸緩衝生理食塩水であり得る。中性緩衝生理食塩水又は血清アルブミンと混合した生理食塩水が更に例示的なビヒクルである。本明細書で企図される医薬組成物及び投与形態に使用することができる様々な緩衝剤が当業者には容易に認識される。典型的な緩衝剤としては、薬学的に許容可能な弱酸、弱塩基又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例として、緩衝剤成分は、水溶性物質、例えば、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸及びそれらの塩であり得る。許容可能な緩衝剤としては、例えば、Tris緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)及びN-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)が挙げられる。
【0159】
医薬組成物を配合した後に、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル内に保管してもよい。かかる配合物は、使用準備済の形態、使用前に再構成を必要とする凍結乾燥形態、使用前に希釈を必要とする液体形態、又は他の許容可能な形態のいずれかで保管することができる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、単回用の容器(例えば単回用のバイアル、アンプル、シリンジ又は自己注射器(例えばEpiPen(商標))と同様)内で提供され、他の実施形態では、複数回用の容器(例えば複数回用のバイアル)が提供される。
【0160】
配合物は、急速分解又は体内からの排出から組成物を保護するための担体、例えばリポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグ及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出配合物を含んでいてもよい。例えば、単独での又は蝋と組み合わせたモノステアリン酸グリセリル又はステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を用いることができる。インプラント(例えば埋め込みポンプ)及びカテーテルシステム、緩徐注射ポンプ及びデバイスを含む任意の薬物送達装置をアルギナーゼ阻害剤の送達に用いることができ、これらは全て当業者に既知である。
【0161】
概して皮下又は筋肉内に行われる蓄積注射を、本明細書で開示されるアルギナーゼ阻害剤を規定の期間にわたって放出するために利用してもよい。蓄積注射は、通常は固体又は油ベースであり、概して本明細書に記載される配合成分の少なくとも1つを含む。当業者は、考え得る配合物及び蓄積注射の使用に精通している。
【0162】
医薬組成物は、滅菌注射用水性又は油脂性懸濁液の形態とすることができる。この懸濁液は、本明細書で言及される好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて既知の技術に従って配合することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としてもよい。用いることができる許容可能な希釈剤、溶媒及び分散媒としては、水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)及びそれらの好適な混合物が挙げられる。加えて、滅菌不揮発性油が溶媒又は懸濁媒として従来用いられている。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を用いることができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸が注射剤の調製に使用される。特定の注射用配合物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質(例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン)を加えることによって達成することができる。
【0163】
本発明は、直腸投与用の坐剤の形態でのアルギナーゼ阻害剤の投与を企図する。坐剤は、薬物と、常温で固体であるが、直腸温で液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性添加剤とを混合することによって調製することができる。かかる材料としては、ココアバター及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
本発明によって企図されるアルギナーゼ阻害剤は、現在知られている又は将来開発される任意の他の好適な医薬組成物の形態(例えば鼻腔用又は吸入用のスプレー)としてもよい。
【0165】
投与経路
本発明は、任意の適切な方法でのアルギナーゼ阻害剤及びその組成物の投与を企図する。好適な投与経路としては、経口、非経口(例えば筋肉内、静脈内、皮下(例えば注射又はインプラント)、腹腔内、嚢内、関節内、腹腔内、脳内(実質内)及び脳室内)、経鼻、膣内、舌下、眼内、直腸、局所(例えば経皮)、口腔投与及び吸入が挙げられる。概して皮下又は筋肉内に行われる蓄積注射を、本明細書で開示されるアルギナーゼ阻害剤を規定の期間にわたって放出するために利用してもよい。
【0166】
本発明の特定の実施形態は、経口投与を企図する。
【0167】
併用療法
本発明は、単独での又は1つ以上の活性治療剤と組み合わせたアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。付加的な活性治療剤は、小化学分子、巨大分子、例えばタンパク質、抗体、ペプチボディ(peptibodies)、ペプチド、DNA、RNA、若しくはかかる巨大分子の断片、又は細胞療法若しくは遺伝子療法であり得る。かかる併用療法では、様々な活性作用物質が異なる補完的な作用機序を有することが多い。かかる併用療法は、作用物質の1つ以上の用量を低減し、それにより作用物質の1つ以上と関連する有害作用を低減又は排除することにより、特に有利であり得る。さらに、かかる併用療法は、基礎疾患、障害又は病態に対して相乗的な治療効果又は予防効果を有する可能性がある。
【0168】
本明細書で使用される場合、「組合せ」は、別個に投与することができる、例えば別個の投与のために別個に配合される療法剤(例えばキット内で提供することができる)、及び単一の配合物中で共に投与することができる療法剤(すなわち、「合剤(co-formulation)」)を含むことを意図する。
【0169】
或る特定の実施形態では、アルギナーゼ阻害剤は、順次に投与又は適用され、例えば或る作用物質が1つ以上の他の作用物質の前に投与される。他の実施形態では、アルギナーゼ阻害剤は、同時に投与され、例えば2つ以上の作用物質が同時に又はほぼ同時に投与される。2つ以上の作用物質は、2つ以上の別個の配合物中に存在していても、又は単一の配合物に組み合わせてもよい(すなわち、合剤)。2つ以上の作用物質が順次に投与されるか又は同時に投与されるかに関わらず、本発明の目的上、これらは組合せで投与されるとみなされる。
【0170】
本発明のアルギナーゼ阻害剤は、その状況下で適切な任意の方法で少なくとも1つの他の(活性)作用物質と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質及び少なくとも1つの本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療は、一定期間にわたって維持される。別の実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質による治療を減少させるか又は中断し(例えば被験体が安定している場合)、本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療を一定の投与計画で維持する。更なる実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質による治療を減少させるか又は中断し(例えば被験体が安定している場合)、本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療を減少させる(例えば用量の低減、投与頻度の低減又は治療計画の短縮)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質による治療を低減又は中断し(例えば被験体が安定している場合)、本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療を増加させる(例えば用量の増加、投与頻度の増加又は治療計画の延長)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質による治療を維持し、本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療を減少させるか又は中断する(例えば用量の低減、投与頻度の低減又は治療計画の短縮)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性作用物質による治療及び本発明のアルギナーゼ阻害剤による治療を減少させるか又は中断する(例えば、用量の低減、投与頻度の低減又は治療計画の短縮)。
【0171】
腫瘍関連障害。本発明は、アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤又は診断剤を用いて増殖性病態、癌、腫瘍、又は前癌疾患、障害若しくは病態を治療及び/又は予防する方法を提供する。幾つかの実施形態では、付加的な治療剤又は診断剤は、放射線、免疫調節剤若しくは化学療法剤、又は診断剤である。本発明に使用することができる好適な免疫調節剤としては、CD4OL、B7及びB7RP1;抗CD40、抗CD38、抗ICOS及び4-IBBリガンド等の刺激受容体に対する活性化モノクローナル抗体(mAb);樹状細胞抗原負荷(in vitro又はin vivo);樹状細胞癌ワクチン等の抗癌ワクチン;ILL IL2、IL12、IL18、ELC/CCL19、SLC/CCL21、MCP-1、IL-4、IL-18、TNF、IL-15、MDC、IFNa/b、M-CSF、IL-3、GM-CSF、IL-13及び抗IL-10等のサイトカイン/ケモカイン;細菌性リポ多糖(LPS);インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤及び免疫刺激性オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0172】
或る特定の実施形態では、本発明は、腫瘍成長の相加的又は相乗的抑制を達成するためのシグナル伝達阻害剤(STI)と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の投与を含む腫瘍成長の腫瘍抑制方法を提供する。本明細書で使用される場合、「シグナル伝達阻害剤」という用語は、シグナル伝達経路の1つ以上の段階を選択的に阻害する作用物質を指す。本発明のシグナル伝達阻害剤(STI)としては、(i)bcr/ablキナーゼ阻害剤(例えばGLEEVEC)、(ii)キナーゼ阻害剤及び抗体を含む上皮成長因子(EGF)受容体阻害剤、(iii)her-2/neu受容体阻害剤(例えばHERCEPTIN)、(iv)Aktファミリーキナーゼ又はAkt経路の阻害剤(例えばラパマイシン)、(v)細胞周期キナーゼ阻害剤(例えばフラボピリドール)、並びに(vi)ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤が挙げられる。免疫調節に関与する作用物質を、癌患者における腫瘍成長の抑制のために本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤と組み合わせて使用することもできる。
【0173】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa);エチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamines)(これには、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンが含まれる);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti-adrenals)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金及び白金配位錯体、例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;アントラサイクリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
化学療法剤には、抗エストロゲン、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン及びトレミフェンを含む抗エストロゲン、並びに抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン、並びに上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体等の腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。或る特定の実施形態では、併用療法は、1つ以上の化学療法剤を含む化学療法計画を含む。或る特定の実施形態では、併用療法は、ホルモン又は関連ホルモン剤の投与を含む。
【0175】
アルギナーゼ阻害剤と組み合わせて用いることができる付加的な治療法としては、放射線療法、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、又は抗原提示細胞(例えば樹状細胞療法)(かかる抗原提示細胞を刺激するために使用されるTLRアゴニストを含む)が挙げられる。
【0176】
或る特定の実施形態では、本発明は、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を癌患者に投与する個別免疫療法の新たな有望な形態である養子細胞療法と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。養子細胞療法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、及び例えばキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように改変されたT細胞を用いて検討されている。養子細胞療法は概して、個体からT細胞を採取し、特定の抗原を標的とするか又は抗腫瘍効果を増強するように細胞を遺伝子操作し、細胞を十分な数まで増殖させ、遺伝子操作したT細胞を癌患者に注入することを含む。T細胞は、増加させた細胞を後に再注入する患者から採取しても(例えば自己)、又はドナー患者から採取してもよい(例えば同種異系)。
【0177】
或る特定の実施形態では、本発明は、遺伝子発現をサイレンシングするためのRNA干渉に基づく療法と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。RNAiは、低分子干渉RNA(siRNA)へのより長い二本鎖RNAの切断から始まる。siRNAの一方の鎖を、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボヌクレオタンパク質複合体に組み込み、続いてこれを用いて組み込まれたsiRNA鎖に少なくとも部分的に相補的なmRNA分子を特定する。RISCは、mRNAに結合するか又はmRNAを切断することができ、いずれの場合も翻訳を阻害する。
【0178】
或る特定の実施形態では、本発明は、アデノシンのレベルを調節する作用物質と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。かかる治療剤は、ATPをADP、ADPをAMPに加水分解するエクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1(CD39又は分化抗原群39としても知られるENTPD1)、及びAMPをアデノシンに変換するエクト5’-ヌクレオチダーゼ(CD73又は分化抗原群73としても知られるNT5E又は5NT)を含む、ATPからアデノシンへの変換を触媒するエクトヌクレオチドに作用し得る。CD39及びCD73の酵素活性は、様々な細胞(例えば免疫細胞)に伝達されるプリン作動性シグナルの持続時間、大きさ及び化学的性質を修正する上で戦略的役割を果たす。これらの酵素活性の変化は、癌、自己免疫疾患、感染、アテローム性動脈硬化症及び虚血再灌流傷害を含む幾つかの病態生理学的事象の経過を変更するか又はその結果を決定する可能性があり、これらの外酵素が様々な障害を管理するための新規の治療標的となることが示唆される。
【0179】
代替的には、かかる治療剤は、アデノシン2受容体(A2R)アンタゴニストであり得る。アデノシンは、4つの異なるGタンパク質共役受容体:A1R、A2aR、A2bR及びA3Rに結合し、活性化することができる。T細胞、ナチュラルキラー細胞、及び樹状細胞等の骨髄系細胞上で発現されるA2aR受容体へのアデノシンの結合は、サイクリックAMPの細胞内レベルを上昇させ、かかる細胞の成熟及び/又は活性化を損なう。このプロセスは、癌細胞に対する免疫系の活性化を顕著に損なう。加えて、A2ARは、抗炎症性サイトカインの選択的な増強、PD-1及びCTLA-4の上方調節の促進、LAG-3及びFoxp3+制御性T細胞の生成の促進、並びに制御性T細胞の阻害の媒介に関連付けられている。PD-1、CTLA-4及び他の免疫チェックポイントは本明細書で更に論考される。本明細書に記載される組合せでのA2Rアンタゴニストの組合せは、それらの異なる作用機序を考慮すると、少なくとも相加的な効果をもたらす可能性がある。
【0180】
或る特定の実施形態では、本発明は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、特にPI3Kγアイソフォームの阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。PI3Kγ阻害剤は、骨髄系細胞の調節によって、例えば抑制性骨髄系細胞を阻害するか、免疫抑制性腫瘍浸潤マクロファージを抑制するか、又はマクロファージ及び樹状細胞を刺激して、効果的なT細胞応答に寄与するサイトカインを生じさせることによって抗癌免疫応答を刺激し、癌の進行及び伝播の減少をもたらすことができる。
【0181】
或る特定の実施形態では、本発明は、低酸素誘導因子(HIF)の阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。HIF転写因子は、低酸素レベルを感知し、それに応答するために用いられるシグナル伝達経路に不可欠である。固形腫瘍の微小環境は、低酸素であることが知られており、腫瘍細胞が生き延び、転移するために代謝、成長、増殖及び血管新生と関連する遺伝子の誘導を必要とする。特に、HIF-2αアイソフォームは癌、炎症性及び免疫調節病態と関連付けられている。
【0182】
免疫チェックポイント阻害剤。本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ機能の阻害剤の使用を企図する。
【0183】
全ての癌に特徴的な膨大な数の遺伝子変化及びエピジェネティック変化は、免疫系が腫瘍細胞とそれらの正常な対応物とを区別するために用いることができる多様な抗原をもたらす。T細胞の場合、T細胞受容体(TCR)による抗原認識によって開始する応答の最終的な大きさ(例えば、サイトカイン産生又は増殖のレベル)及び質(例えば、生じる免疫応答のタイプ、例えばサイトカイン産生のパターン)は、共刺激シグナルと阻害シグナルとのバランスによって調節される(免疫チェックポイント)。正常な生理的条件下では、免疫チェックポイントは、自己免疫の防止(すなわち、自己寛容の維持)、更には免疫系が病原性感染に応答する際の損傷からの組織の保護に不可欠である。免疫チェックポイントタンパク質の発現は、重要な免疫耐性機構としての腫瘍によって異常調節され得る。
【0184】
T細胞は、i)全ての細胞内コンパートメントにおいてタンパク質に由来するペプチドを選択的に認識するそれらの能力、ii)抗原発現細胞を直接認識し、死滅させるそれらの能力(細胞傷害性Tリンパ球(CTL)としても知られるCD8+エフェクターT細胞による)、並びにiii)適応エフェクター機構及び自然エフェクター機構を統合するCD4+ヘルパーT細胞によって多様な免疫応答を調整するそれらの能力のために内因性抗腫瘍免疫を治療的に操作する取り組みの主要な焦点であった。
【0185】
臨床状況では、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす免疫チェックポイントの遮断は、ヒト癌治療法における有望なアプローチであることが示されている。
【0186】
T細胞媒介性免疫は、それぞれが応答を最適化するように刺激シグナル及び阻害シグナルを釣り合わせることによって調節される複数の逐次段階を含む。免疫応答におけるほぼ全ての阻害シグナルは、細胞内シグナル伝達経路を最終的に調節するが、多くが膜受容体によって開始し、そのリガンドは膜結合型又は可溶性のいずれかである(サイトカイン)。T細胞活性化を調節する共刺激及び阻害受容体及びリガンドは、癌では正常組織と比較して過剰発現されないことが多いが、組織におけるT細胞エフェクター機能を調節する阻害リガンド及び受容体は、一般に腫瘍細胞上又は腫瘍微小環境と関連する非形質転換細胞上で過剰発現される。可溶性及び膜結合型受容体-リガンド免疫チェックポイントの機能は、アゴニスト抗体(共刺激経路)又はアンタゴニスト抗体(阻害経路)を用いて調節することができる。このため、癌療法に現在承認されている殆どの抗体とは対照的に、免疫チェックポイントを遮断する抗体は、腫瘍細胞を直接標的とせず、内因性抗腫瘍活性を増強するために、むしろリンパ球受容体又はそれらのリガンドを標的とする(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252-64を参照されたい)。
【0187】
遮断の候補となる、一部が様々なタイプの腫瘍細胞において選択的に上方調節される免疫チェックポイント(リガンド及び受容体)の例としては、PD1(プログラム細胞死タンパク質1)、PDL1(PD1リガンド)、BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)、TIM3(T細胞膜タンパク質3)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)、並びに構造的特徴に基づいて2つのクラス:i)キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)及びii)C型レクチン受容体(II型膜貫通受容体ファミリーのメンバー)に分けることができるキラー細胞抑制受容体が挙げられる。他のあまり定義されていない免疫チェックポイントは、文献に記載されており、受容体(例えば2B4(CD244としても知られる)受容体)及びリガンド(例えば、B7-H3(CD276としても知られる)及びB7-H4(B7-S1、B7x及びVCTN1としても知られる)等の或る特定のB7ファミリー阻害リガンド)の両方を含む(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252-64を参照されたい)。
【0188】
本発明は、上述の免疫チェックポイント受容体及びリガンド、並びにまだ記載されていない免疫チェックポイント受容体及びリガンドの阻害剤と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ機能の阻害剤の使用を企図する。免疫チェックポイントの或る特定の調節因子が現在利用可能であるが、他は後期開発中である。例えば、完全ヒト化CTLA4モノクローナル抗体イピリムマブ(YERVOY;Bristol-Myers Squibb)は、2011年に黒色腫の治療に承認された時点で、米国において規制当局の承認を受けた最初の免疫チェックポイント阻害剤となった。CTLA4と抗体とを含む融合タンパク質(CTLA4-Ig;アバタセプト(ORENCIA;Bristol-Myers Squibb))が関節リウマチの治療に使用されており、他の融合タンパク質が、エプスタインバーウイルスに感作された腎移植患者において効果的であることが示されている。PD1抗体が開発中であり(例えばニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)及びランブロリズマブ(Merck))、抗PDL1抗体も評価されている(例えばMPDL3280A(Roche))。ニボルマブは黒色腫、肺癌及び腎癌の患者において見込みを示している。
【0189】
本発明の一態様では、特許請求されるアルギナーゼ阻害剤を、どちらも抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす、T細胞に対する(i)刺激(共刺激を含む)受容体のアゴニスト又は(ii)阻害(共阻害を含む)シグナルのアンタゴニストである腫瘍免疫療法薬(immuno-oncology agent)と組み合わせる。或る特定の刺激及び阻害分子は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである。共刺激又は共阻害受容体に結合する膜結合リガンドの重要なファミリーの1つは、B7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)及びB7-H6を含むB7ファミリーである。共刺激又は共阻害受容体に結合する膜結合型リガンドの別のファミリーは、CD40及びCD4OL、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD3OL、4-1BBL、CD137(4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LT13R、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンa/TNF13、TNFR2、TNFa、LT13R、リンホトキシンa 1132、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む同種TNF受容体ファミリーメンバーに結合する分子のTNFファミリーである。
【0190】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、免疫応答を刺激するためのT細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えばIL-6、IL-10、TGF-B、VEGF及び他の免疫抑制性サイトカイン)又はT細胞活性化を刺激するサイトカインである。
【0191】
一態様では、T細胞応答は、開示のアルギナーゼ阻害剤と、(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1及びTIM-4等のT細胞活性化を阻害するタンパク質のアンタゴニスト(例えば免疫チェックポイント阻害剤)、及び/又は(ii)B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX4OL、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3及びCD2等のT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニストの1つ以上との組合せによって刺激することができる。癌の治療のために本発明のアルギナーゼ阻害剤と組み合わせることができる他の作用物質としては、NK細胞上の阻害受容体のアンタゴニスト又はNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが挙げられる。例えば、本明細書の化合物は、リリルマブ等のKIRのアンタゴニストと組み合わせることができる。
【0192】
併用療法のための更に他の作用物質としては、RG7155(国際公開第11/70024号、国際公開第11/107553号、国際公開第11/131407号、国際公開第13/87699号、国際公開第13/119716号、国際公開第13/132044号)又はFPA-008(国際公開第11/140249号、国際公開第13169264号、国際公開第14/036357号)を含むCSF-1Rアンタゴニスト抗体等のCSF-1Rアンタゴニストを含むが、これらに限定されない、マクロファージ又は単球を阻害するか又は枯渇させる作用物質が挙げられる。
【0193】
別の態様では、開示のアルギナーゼ阻害剤は、陽性共刺激受容体に結合するアゴニスト作用物質、阻害受容体を介したシグナル伝達を減弱する遮断薬、アンタゴニスト、及び抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増大する1つ以上の作用物質、腫瘍微小環境内の異なる免疫抑制経路を克服する(例えば、阻害受容体連結(例えばPD-L1/PD-1相互作用)を遮断し、Tregを枯渇させるか若しくは阻害し(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えばダクリズマブ)を用いるか、又はex vivoでの抗CD25ビーズ枯渇による)、又はT細胞アネルギー若しくは枯渇を逆転させる/防ぐ)作用物質、及び腫瘍部位での自然免疫活性化及び/又は炎症を誘発する作用物質の1つ以上と共に使用することができる。
【0194】
一態様では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストCTLA-4抗体等のCTLA-4アンタゴニストである。好適なCTLA-4抗体としては、例えばYERVOY(イピリムマブ)又はトレメリムマブが挙げられる。
【0195】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストPD-1抗体等のPD-1アンタゴニストである。好適なPD-1抗体としては、例えばOPDIVO(ニボルマブ)、KEYTRUDA(ペムブロリズマブ)又はMEDI-0680(AMP-514;国際公開第2012/145493号)が挙げられる。腫瘍免疫療法薬としては、PD-1結合に対するその特異性が疑問視されてはいるが、ピディリズマブ(CT-011)を挙げることもできる。PD-1受容体を標的とする別のアプローチは、AMP-224と呼ばれる、IgG1のFc部分と融合したPD-L2(B7-DC)の細胞外ドメインから構成される組換えタンパク質である。
【0196】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストPD-L1抗体等のPD-L1アンタゴニストである。好適なPD-L1抗体としては、例えばMPDL3280A(RG7446;国際公開第2010/077634号)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS-936559(国際公開第2007/005874号)及びMSB0010718C(国際公開第2013/79174号)が挙げられる。
【0197】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストLAG-3抗体等のLAG-3アンタゴニストである。好適なLAG3抗体としては、例えばBMS-986016(国際公開第10/19570号、国際公開第14/08218号)、又はIMP-731若しくはIMP-321(国際公開第08/132601号、国際公開第09/44273号)が挙げられる。
【0198】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アゴニストCD137抗体等のCD137(4-1BB)アゴニストである。好適なCD137抗体としては、例えばウレルマブ(urelumab)及びPF-05082566(国際公開第12/32433号)が挙げられる。
【0199】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アゴニストGITR抗体等のGITRアゴニストである。好適なGITR抗体としては、例えばBMS-986153、BMS-986156、TRX-518(国際公開第06/105021号、国際公開第09/009116号)及びMK-4166(国際公開第11/028683号)が挙げられる。
【0200】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アゴニストOX40抗体等のOX40アゴニストである。好適なOX40抗体としては、例えばMEDI-6383又はMEDI-6469が挙げられる。
【0201】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストOX40抗体等のOX4OLアンタゴニストである。好適なOX4OLアンタゴニストとしては、例えばRG-7888(国際公開第06/029879号)が挙げられる。
【0202】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アゴニストCD40抗体等のCD40アゴニストである。また別の実施形態では、腫瘍免疫療法薬は、アンタゴニストCD40抗体等のCD40アンタゴニストである。好適なCD40抗体としては、例えばルカツムマブ(lucatumumab)又はダセツズマブが挙げられる。
【0203】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、アゴニストCD27抗体等のCD27アゴニストである。好適なCD27抗体としては、例えばバルリルマブ(varlilumab)が挙げられる。
【0204】
別の態様では、腫瘍免疫療法薬は、MGA271(B7H3に対する)(国際公開第11/109400号)である。
【0205】
本発明は、上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体を包含する。
【0206】
代謝性疾患及び心血管疾患。本発明は、アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤又は診断剤を用いて或る特定の心血管及び/又は代謝関連疾患、障害及び病態、並びにそれに付随する障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0207】
高コレステロール血症(更にはアテローム性動脈硬化症)の治療のための併用療法に有用な治療剤の例としては、コレステロールの酵素的合成を阻害するスタチン(例えばCRESTOR、LESCOL、LIPITOR、MEVACOR、PRAVACOL及びZOCOR)、コレステロールを隔離し、その吸収を防ぐ胆汁酸樹脂(例えばCOLESTID、LO-CHOLEST、PREVALITE、QUESTRAN及びWELCHOL)、コレステロール吸収を遮断するエゼチミブ(ZETIA)、トリグリセリドを還元し、HDLを穏やかに増加させ得るフィブリン酸(例えばTRICOR)、LDLコレステロール及びトリグリセリドを穏やかに減少させるナイアシン(例えばNIACOR)、及び/又は上述のものの組合せ(例えばVYTORIN(エゼチミブとシンバスタチン))が挙げられる。本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤と組み合わせた使用の候補となり得る代替的なコレステロール治療には、様々な栄養補助食品及び薬草(例えばニンニク、ポリコサノール及びグッグル)が含まれる。
【0208】
本発明は、上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体を包含する。
【0209】
免疫及び炎症関連障害。本発明は、アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤又は診断剤を用いて免疫関連疾患、障害及び病態、並びに炎症性要素を有する疾患、障害及び病態を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0210】
併用療法において有用な治療剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン及び他のプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸及びチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フイロフェナク(fuirofenac)、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク(oxpinac)、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン及びゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸及びトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサル及びフルフェニサール)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム及びテノキシカム)、サリチレート(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)及びピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)。他の組合せとしては、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤が挙げられる。
【0211】
併用する他の活性作用物質としては、ステロイド、例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン又はヒドロコルチゾンが挙げられる。かかる組合せは、必要とされるステロイド用量を漸減することによってステロイドの1つ以上の有害作用を低減又は更には排除することができることから特に有利であり得る。
【0212】
例えば関節リウマチの治療のために組合せで使用することができる活性作用物質の付加的な例としては、サイトカイン抑制性抗炎症薬(複数の場合もある)(CSAID)、他のヒトサイトカイン又は成長因子、例えばTNF、LT、IL-10、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-15、IL-16、IL-18、EMAP-II、GM-CSF、FGF又はPDGFに対する抗体又はそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0213】
活性作用物質の特定の組合せは、異なる時点で自己免疫カスケード及び後続の炎症カスケードに干渉することができ、キメラ、ヒト化又はヒトTNF抗体、REMICADE、抗TNF抗体フラグメント(例えばCDP870)、及び可溶性p55又はp75 TNF受容体、その誘導体、p75TNFRIgG(ENBREL)又はp55TNFR1gG(LENERCEPT)、可溶性IL-13受容体(sIL-13)、更にはTNFa変換酵素(TACE)阻害剤等のTNFアンタゴニストが含まれる。同様に、IL-1阻害剤(例えばインターロイキン-1変換酵素阻害剤)が効果的であり得る。他の組合せとしては、インターロイキン11、抗P7及びp-セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)が挙げられる。本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤と組み合わせて有用な作用物質の他の例としては、インターフェロン-131a(AVONEX)、インターフェロン-13lb(BETASERON)、コパキソン、高圧酸素、静脈内免疫グロブリン、クラブリビン(clabribine)、及び他のヒトサイトカイン又は成長因子に対する抗体又はそれらのアンタゴニスト(例えば、CD40リガンド及びCD80に対する抗体)が挙げられる。
【0214】
微生物疾患。本発明は、アルギナーゼ阻害剤及び少なくとも1つの付加的な治療剤又は診断剤(例えば、1つ以上の他の抗ウイルス剤及び/又はウイルス療法と関連しない1つ以上の作用物質)を用いてウイルス性、細菌性、真菌性及び寄生虫性疾患、障害及び病態、並びにそれに付随する障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0215】
かかる併用療法には、以下のものを含むが、それらに限定されない、様々なウイルス生活環段階を標的とし、種々の作用機序を有する抗ウイルス剤が含まれる:ウイルス脱殻の阻害剤(例えばアマンタジン及びリマンタジン)、逆転写酵素阻害剤(例えばアシクロビル、ジドブジン及びラミブジン)、インテグラーゼを標的とする作用物質、ウイルスDNAへの転写因子の付着を遮断する作用物質、翻訳に影響を与える作用物質(例えばアンチセンス分子)(例えばホミビルセン)、翻訳/リボザイム機能を調節する作用物質、プロテアーゼ阻害剤、ウイルス集合調節物質(例えばリファンピシン)、抗レトロウイルス薬、例えばヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(例えばアジドチミジン(AZT)、ddl、ddC、3TC、d4T)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えばエファビレンツ、ネビラピン)、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤、及びウイルス粒子の放出を防ぐ作用物質(例えばザナミビル及びオセルタミビル)。或る特定のウイルス感染(例えばHIV)の治療及び/又は予防は、抗ウイルス剤の群(「カクテル」)を必要とすることが多い。
【0216】
アルギナーゼ阻害剤との併用に企図される他の抗ウイルス剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アバカビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリジェン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ボセプレビレルテット(boceprevirertet)、シドホビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、http://en.wikipedia.org/wiki/Fusion_inhibitorガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、各種インターフェロン(例えば、ペグインターフェロンアルファ-2a)、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネクサビル(nexavir)、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リトナビル、ピラミジン(pyramidine)、サキナビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン及びザルシタビン。
【0217】
本発明は、抗寄生虫薬と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ機能の阻害剤の使用を企図する。かかる作用物質としては、チアベンダゾール、パモ酸ピランテル、メベンダゾール、プラジカンテル、ニクロサミド、ビチオノール、オキサムニキン、メトリホナート、イベルメクチン、アルベンダゾール、エフロールニチン、メラルソプロール、ペンタミジン、ベンズニダゾール、ニフルチモックス及びニトロイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。寄生虫性障害の治療に有用であり得る他の作用物質が当業者には認識される。
【0218】
本発明の実施形態は、細菌性障害の治療又は予防に有用な作用物質と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。抗菌剤は、作用機序に基づくもの、化学構造に基づくもの、及び活性スペクトルに基づくものを含む様々な方法で分類することができる。抗菌剤の例としては、細菌細胞壁を標的とするもの(例えばセファロスポリン及びペニシリン)若しくは細胞膜を標的とするもの(例えばポリミキシン)、又は必須細菌酵素を妨げるもの(例えばスルホンアミド、リファマイシン及びキノリン)が挙げられる。タンパク質合成を標的とする殆どの抗菌剤(例えばテトラサイクリン及びマクロライド)が静菌性であるが、アミノグリコシド等の作用物質は殺菌性である。抗菌剤をカテゴリー化する別の手段は、それらの標的特異性に基づく。「狭スペクトル」作用物質は、特定のタイプの細菌(例えば、連鎖球菌等のグラム陽性菌)を標的とするが、「広域スペクトル」作用物質は、より広範な細菌に対して活性を有する。特定の細菌感染への使用に適切な抗菌剤のタイプが当業者には認識される。
【0219】
本発明の実施形態は、真菌性障害の治療又は予防に有用な作用物質と組み合わせた本明細書に記載されるアルギナーゼ阻害剤の使用を企図する。抗真菌剤としては、ポリエン(例えば、アムホテリシン、ナイスタチン及びピマリシン);アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール及びケトコナゾール);アリルアミン(例えば、ナフチフィン及びテルビナフィン)及びモルホリン(例えば、アモロルフィン);並びに代謝拮抗物質(例えば、5-フルオロシトシン)が挙げられる。
【0220】
本発明は、上記の作用物質(及び作用物質のクラスのメンバー)の薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体を包含する。
【0221】
投与
本発明のアルギナーゼ阻害剤は、例えば投与の目的(例えば所望の回復度)、配合物を投与する被験体の年齢、体重、性別、並びに健康及び体調、投与経路、並びに疾患、障害、病態又はその症状の性質に応じた量で被験体に投与され得る。投与計画では、投与される作用物質(複数の場合もある)と関連する任意の有害作用の存在、性質及び程度が考慮に入れられる場合もある。効果的な投与量及び投与計画は、例えば安全性試験及び用量漸増試験、in vivo研究(例えば動物モデル)及び当業者に既知の他の方法から容易に決定することができる。
【0222】
概して、投与パラメーターにより、投与量が被験体に対して不可逆的に毒性となり得る量(最大耐量(MTD))より少なく、被験体に対して測定可能な効果をもたらすのに必要とされる量以上であることが決定付けられる。かかる量は、例えばADMEと関連する薬物動態及び薬力学的パラメーターにより、投与経路及び他の要因を考慮に入れて決定される。
【0223】
有効量(ED)は、作用物質を服用した被験体の一部で治療応答又は所望の効果をもたらす作用物質の用量又は量である。作用物質の「50%有効量」すなわちED50は、それを投与した集団の50%において治療応答又は所望の効果をもたらす作用物質の用量又は量である。ED50は、作用物質の効果の合理的な期待値の尺度として一般に用いられるが、必ずしも臨床医が全ての関連要因を考慮に入れて適切であると判断し得る用量であるとは限らない。このため、状況によっては、有効量が算出されたED50を上回り、他の状況では、有効量が算出されたED50を下回り、更に他の状況では、有効量が算出されたED50と同じである。
【0224】
加えて、本発明のアルギナーゼ阻害剤の有効量は、1回以上の投与で被験体に投与した場合に、健常な被験体と比較して所望の結果をもたらす量であり得る。例えば、特定の障害を患っている被験体について、有効量は、その障害の診断パラメーター、尺度、マーカー等を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は90%超改善する用量であり得る。ここで、100%は、正常な被験体が示す診断パラメーター、尺度、マーカー等と規定される。
【0225】
或る特定の実施形態では、本発明によって企図されるアルギナーゼ阻害剤を、1日当たり約0.01mg/kg~約50mg/kg又は約1mg/kg~約25mg/kg(被験体の体重)の投与量レベルで1日1回以上、(例えば経口で)投与し、所望の治療効果を得ることができる。
【0226】
経口剤の投与については、組成物を1.0mg~1000mgの有効成分、特に1.0mg、3.0mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、20.0mg、25.0mg、50.0mg、75.0mg、100.0mg、150.0mg、200.0mg、250.0mg、300.0mg、400.0mg、500.0mg、600.0mg、750.0mg、800.0mg、900.0mg及び1000.0mgの有効成分を含有する錠剤、カプセル等の形態で与えることができる。
【0227】
或る特定の実施形態では、所望のアルギナーゼ阻害剤の投与量は、「単位投与形態」に含有される。「単位投与形態」という表現は、各単位が単独で又は1つ以上の付加的な作用物質と組み合わせて所望の効果をもたらすのに十分な所定量のアルギナーゼ阻害剤を含有する、物理的に分離した単位を指す。単位投与形態のパラメーターが特定の作用物質及び達成すべき効果によって異なることが理解される。
【0228】
キット
本発明は、本明細書に記載される化合物及びその医薬組成物を含むキットも企図する。キットは概して、下記のような様々な構成要素を収容する物理的構造の形態であり、例えば上記の方法を実行する際に利用することができる。
【0229】
キットは、被験体への投与に好適な医薬組成物の形態とすることができる、本明細書で開示される化合物(例えば滅菌容器内で与えられる)の1つ以上を含み得る。本明細書に記載される化合物は、使用準備済の形態(例えば錠剤又はカプセル)、又は投与前に、例えば再構成若しくは希釈を必要とする形態(例えば粉末)で与えることができる。本明細書に記載される化合物が使用者により再構成又は希釈する必要がある形態である場合、キットは、本明細書に記載される化合物と共に又は別個にパッケージングされた希釈剤(例えば滅菌水)、緩衝剤、薬学的に許容可能な添加剤等を含んでいてもよい。併用療法が企図される場合、キットが幾つかの作用物質を別個に含んでいてもよく、又はそれらが既にキット内で組み合わせられていてもよい。キットの各構成要素が個々の容器に収納されていてもよく、様々な容器が全て単一のパッケージに入っていてもよい。本発明のキットは、それに収容された構成要素を適切に維持するために必要とされる条件(例えば冷蔵又は冷凍)に対して設計され得る。
【0230】
キットは、その中の構成要素の識別情報及びそれらの使用説明書(例えば投与パラメーター、作用機序、薬物動態及び薬力学を含む有効成分(複数の場合もある)の臨床薬理、有害作用、禁忌等)を含むラベル又は添付文書(packaging insert)を含み得る。ラベル又は添付文書は、ロット番号及び使用期限等のメーカー情報を含んでいてもよい。ラベル又は添付文書は、例えば構成要素を収容する物理的構造に組み込まれていても、物理的構造内に別個に含まれていても、又はキットの構成要素(例えばアンプル、チューブ又はバイアル)に貼り付けられていてもよい。
【0231】
ラベル又は添付文書は、コンピューター可読媒体、例えばディスク(例えばハードディスク、カード、メモリーディスク)、光学ディスク、例えばCD-ROM/RAM若しくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープ、又は電気記憶媒体、例えばRAM及びROM、又はこれらのハイブリッド、例えば磁気/光学記憶媒体、FLASH媒体若しくはメモリー型カードを付加的に含んでいても、又はそれに組み込まれていてもよい。幾つかの実施形態では、実際の説明書はキットに含まれず、リモートソースから、例えばインターネットを介して説明書を得るための手段が与えられる。
【0232】
実験
以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に与えるために提示され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、下記の実験が行われたこと、又はそれらが行うことができる全ての実験であることを示すことを意図するものでもない。現在時制で記される例示的な記載が必ずしも行われたわけではなく、それに記載される性質のデータ等を生成するために、その記載を行うことができることを理解されたい。用いられる数(例えば量、温度等)に関して正確さを確保する取り組みがなされたが、幾らかの実験誤差及び偏差が考慮されるものとする。
【0233】
別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス度(℃)であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。以下のものを含む、標準的な略語を使用する:wt=野生型;bp=塩基対;kb=キロベース;nt=ヌクレオチド;aa=アミノ酸;s又はsec=秒;min=分;h又はhr=時間;ng=ナノグラム;μg=マイクログラム;mg=ミリグラム;g=グラム;kg=キログラム;dl又はdL=デシリットル;μl又はμL=マイクロリットル;ml又はmL=ミリリットル;l又はL=リットル;μM=マイクロモル;mM=ミリモル;M=モル;kDa=キロダルトン;i.m.=筋肉内(に);i.p.=腹腔内(に);SC又はSQ=皮下(に);QD=1日1回;BID=1日2回;QW=週1回;QM=月1回;HPLC=高速液体クロマトグラフィー;BW=体重;U=ユニット;ns=統計的に有意でない;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;IHC=免疫組織化学;DMEM=ダルベッコ変法イーグル培地;EDTA=エチレンジアミン四酢酸。
【0234】
材料及び方法
以下の一般的な材料及び方法を、記載がある場合は使用し、又は下記実施例で使用することができる。
【0235】
分子生物学における標準方法は、科学文献に記載されている(例えば、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、並びに細菌細胞におけるクローニング及びDNA突然変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞及び酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質及びタンパク質発現(第3巻)、並びにバイオインフォマティクス(第4巻)を記載しているAusubel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1-4, John Wiley and Sons, Inc. New York, N.Y.を参照されたい)。
【0236】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離及び結晶化を含むタンパク質精製の方法、並びに化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の作製、及びタンパク質のグリコシル化が科学文献に記載されている(例えば、Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vols. 1-2, John Wiley and Sons, Inc., NYを参照されたい)。
【0237】
例えば抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能ドメイン、グリコシル化部位及び配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージ及びデータベースが利用可能である(例えば、GCG Wisconsin Package(Accelrys, Inc.,San Diego,CA)及びDeCypher(商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,NV)を参照されたい)。
【0238】
本明細書に記載される化合物の評価の基礎とすることができるアッセイ及び他の実験的手法が文献中に多く記載されている。例としては、質量分析ベースのリガンド結合アッセイ(例えば、Massink, A. et al. Purinergic Signaling (2015) 11:581. https://doi.org/10.1007/s11302-015-9477-0、Dionisotti S. et al. J Pharmacol Exp Ther. (1996) 298:726-732を参照されたい)を用いて、本発明の化合物の様々な特性を確認することができる。
【0239】
本発明の化合物を評定するために機能アッセイを用いることもできる。
【実施例】
【0240】
一般的方法:
特許請求の範囲に示される分子の調製に利用可能な様々な方法があることが当業者には認識される。
【0241】
上記の様々な方法を本発明の化合物の調製に用いたが、その一部を実施例に例示する。下記実施例の重水素化形態は、適切な重水素化中間体を用いて合成することができる。
【0242】
実施例1:rac-(1R,2S)-1-アミノ-4-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化18】
工程1:-78℃の無水THF(310mL)中の4-シアノインダノン(14.6g、93.3mmol)の懸濁液に、LiHMDS(THF中1M、93.3mL)を滴加した。溶液を-78℃で30分間撹拌した。この時点で、ヨウ化アリル(17mL、186mmol、2当量)をゆっくりと添加した。反応物を続いて-78℃で3時間撹拌した後、一晩にわたって徐々に室温まで温めた。反応物を飽和NH
4Cl溶液(70mL)及びH
2O(100mL)の添加によってクエンチし、続いてEtOAc(×2)に抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の10%EtOAc)によって精製して、生成物を黄色の油(5.75g、31%)として得た。C
13H
12NOのESI MS [M+H]
+、計算値198.1、実測値198.2。
【0243】
工程2:工程1からの生成物(5.75g、29mmol)を50%エタノール水溶液(44mL)に溶解し、(NH4)2CO3(20g、115mmol、4当量)、続いてKCN(3.79g、58mmol、2当量)を添加した。反応混合物を圧力管内で80℃に36時間加熱した。室温まで冷却した後、4N HClをpH3に達するまでゆっくりと添加した。この時点で、粗反応混合物を真空で濃縮し、EtOAc(400mL)を添加した。有機層を分離し、水層をEtOAc(300mL)で再抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の70%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を黄色の油(5.0g、1.5:1 dr、64%)として得た。C15H14N3O2のESI MS [M+H]+、計算値268.1、実測値268.0。
【0244】
工程3:THF(125mL)中の工程2からの生成物(4.5g、1.5:1 dr、16.8mmol)の溶液に、Et3N(2.5mL、18.1mmol、1.1当量)及びBoc2O(18.3g、83.9mmol、5当量)、続いて触媒DMAP(0.41g、3.4mmol、20mol%)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。この時点で、反応混合物を真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の25%EtOAc)によって精製して、所望のジアステレオマーを無色の油(2.6g、33%)として得た。C20H21N3O4のESI MS [M-Boc+H]-、計算値367.1、実測値367.2。
【0245】
工程4:工程3からの生成物(2.6g、5.55mmol)をDME(50mL)及び1N NaOH(50mL)に溶解した。反応物を室温で1.5時間撹拌し、その時点で反応物を真空で還元し(DMEを除去するため)、得られた溶液をCH2Cl2(15mL)で洗浄した。水層を続いて10N HClを用いてpH7に中和し、更に精製することなく次の工程に使用した。C14H15N2O2のESI MS [M+H]+、計算値243.1、実測値243.0。
【0246】
工程5:工程4からの粗反応混合物に、NaHCO3をpH10となるまで添加し、続いてTHF(25mL)及びBoc2O(12.1g、55.5mmol)を添加した。得られた混合物を60℃に16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、真空で還元し(THFを除去するため)、続いてCH2Cl2(15mL)で洗浄した。層を分離し、水層をpH3に酸性化した後、EtOAc(×3)に抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これを更に精製することなく次の工程に使用した。C19H21N2O4のESI MS [M-H]-、計算値341.2、実測値341.0。
【0247】
工程6:MeCN(6mL)中の工程5からの粗生成物の溶液に、Cs2CO3(1.53g、11.1mmol)及びBnBr(0.79mL、6.66mmol)を添加した。反応物を50℃に1時間加熱し、その時点で溶媒を真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の10%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の油(0.7g、2工程にわたって30%)として得た。C21H21N2O2のESI MS [M-Boc+H2]+、計算値333.2、実測値333.2。
【0248】
工程7:窒素雰囲気下の脱気CH2Cl2(3.2mL)中の[Ir(cod)Cl]2(43.5mg、0.065mmol、4mol%)及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(51.8mg、0.13mmol、8mol%)の溶液を室温で30分間撹拌した。この時点で、反応物を0℃まで冷却し、脱気CH2Cl2(2.0mL)中の工程6からの生成物(700mg、1.62mmol)の溶液を添加し、続いてピナコールボラン(0.35mL、2.4mmol、1.5当量)を滴加し、反応物を即座に室温まで温め、更に1.5時間撹拌した。この時点で、反応物を冷H2O(1mL)の滴加によってクエンチし、続いてH2O(10mL)及びEtOAc(20mL)を更に添加した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の40%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の油(725mg、81%)として得た。C27H34BN2O4のESI MS [M-Boc+H2]+、計算値461.3、実測値461.2。
【0249】
工程8:Parrシェーカー容器内のMeOH(3mL)中の工程7からの生成物(210mg、0.38mmol)の溶液に、ラネーNi(H2O中のスラリー、0.16mL)を添加した。容器を排気し、H2(×3)を再充填し、Parrシェーカー(H2圧:50psi)に24時間置いた。この時点で、反応物を湿潤セライトで慎重に濾過し、濾過ケーキをCHCl3/EtOAc混合物で十分に洗浄した。溶媒を真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2→CH2Cl2中の15%MeOH、1vol%のNH4OHを添加)によって精製して、所望の生成物を白色の泡状物質(30mg、17%)として得た。C26H36BN2O6のESI MS [M+H]+、計算値483.1、実測値483.2。
【0250】
工程9:隔膜を装着した40mLのシンチレーションバイアル内で、工程8からの生成物(30mg、0.062mmol)をMeOH(3mL)に溶解し、反応物を不活性窒素雰囲気下に置いた。Pd/C(10wt%、16mg)を添加し、バイアルを排気し、窒素(×3)を再充填した後、H2(1atm)を導入した。反応物を室温で1時間撹拌した。この時点で、反応混合物を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過し、これをMeOHで十分に洗浄した。溶媒を真空で濃縮して、所望の生成物を白色の泡状物質(24.3mg、定量的)として得た。生成物を更に精製することなくそのまま次の工程に使用した。C19H30BN2O6のESI MS [M+H]+、計算値393.2、実測値393.2。
【0251】
工程10:工程9からの生成物(24.3mg、0.062mmol)をジオキサン(2mL)中の4N HClに懸濁し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、表題化合物を白色の固体(22.4mg、定量的)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.56 - 7.10 (m, 3H), 4.20 (s, 2H), 3.41 - 3.33 (m, 1H), 2.84 - 2.74 (m, 1H), 2.66 - 2.52 (m, 1H), 1.81 - 1.72 (m, 1H), 1.67 - 1.58 (m, 1H), 1.57 - 1.36 (m, 2H), 0.95 - 0.76 (m, 2H)。C14H22BN2O4のESI MS [M+H]+、計算値293.2、実測値293.8。
【0252】
実施例2:rac-(1R)-6-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化19】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.68-7.65 (m, 2H), 7.43 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.29 (dd, J = 16.8, 8.1 Hz, 1H), 2.81 (dd, J = 16.7, 10.0 Hz, 1H), 2.69 - 2.56 (m, 1H), 1.69 - 1.57 (m, 1H), 1.54 - 1.41 (m, 1H), 1.34 (qd, J = 12.9, 7.7 Hz, 2H), 0.70 (ddt, J = 20.2, 15.4, 7.4 Hz, 2H)。C
14H
17BN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値289.1、実測値289.0。
【0253】
実施例3:rac-(1R,2S)-1-アミノ-6-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化20】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.42 - 7.40 (m, 2H), 7.36 (t, J = 1.1 Hz, 1H), 4.16 (s, 2H), 3.31 (dd, J = 16.0, 8.2 Hz, 1H), 2.79 (dd, J = 16.0, 9.8 Hz, 1H), 2.65 - 2.52 (m, 1H), 1.79 - 1.67 (m, 1H), 1.60 (qt, J = 12.0, 6.8 Hz, 1H), 1.54 - 1.37 (m, 2H), 0.91 - 0.75 (m, 2H)。C
14H
21BN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値293.2、実測値293.2。
【0254】
実施例4:rac-(1R,2S)-1-アミノ-5-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化21】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.29 - 7.23 (m, 2H), 7.22 - 7.12 (m, 1H), 4.03 (s, 2H), 3.17 (dd, J = 16.0, 8.2 Hz, 1H), 2.68 (dd, J = 16.0, 9.9 Hz, 1H), 2.58 - 2.35 (m, 1H), 1.69 - 1.53 (m, 1H), 1.53 - 1.40 (m, 1H), 1.39 - 1.21 (m, 2H), 0.71 - 0.65 (m, 2H)。C
14H
22BN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値293.1、実測値293.2。
【0255】
実施例5:rac-(1R,2S)-1-アミノ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-6-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化22】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.29 - 7.25 (m, 1H), 6.99 - 6.93 (m, 2H), 3.80 (d, J = 0.4 Hz, 3H), 3.21 (dd, J = 15.3, 8.1 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 15.2, 9.7 Hz, 1H), 2.59 - 2.49 (m, 1H), 1.72 (ddd, J = 10.2, 8.0, 4.8 Hz, 1H), 1.64 - 1.50 (m, 1H), 1.50 - 1.35 (m, 2H), 0.83 (tq, J = 15.1, 8.7, 7.5 Hz, 2H)。C
14H
20BNO
5のESI MS [M-(OH)
2]
+、計算値259.1、実測値259.1。
【0256】
実施例6:rac-(1R,2S)-1-アミノ-6-クロロ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化23】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 6.93 - 6.91 (m, 1H), 6.90 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 8.0, 0.8 Hz, 1H), 2.80 (dd, J = 14.9, 7.0 Hz, 1H), 2.33 - 2.16 (m, 2H), 1.29 - 1.16 (m, 1H), 1.13 - 1.00 (m, 1H), 1.00 - 0.84 (m, 2H), 0.40 - 0.20 (m, 2H)。C
13H
17BClNO
4のESI MS [M+H]
+、計算値298.1、実測値298.0。
【0257】
実施例7:(1R,2S)-1-アミノ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化24】
表題化合物を実施例1と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.39 - 7.25 (m, 4H), 3.27 (dd, J = 15.8, 8.3 Hz, 1H), 2.77 (dd, J = 15.8, 9.7 Hz, 1H), 2.58 - 2.46 (m, 1H), 1.78 - 1.66 (m, 1H), 1.66 - 1.53 (m, 1H), 1.53 - 1.37 (m, 2H), 0.91 - 0.72 (m, 2H)。C
13H
18BNO
4のESI MS [M+H]
+、計算値264.1、実測値264.1。
【0258】
実施例8:rac-(1R,2S)-4-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化25】
工程1:0℃の無水THF(1.7mL)中のベンジルエステル(170mg、0.39mmol)の懸濁液に、NaHMDS(THF中1M、0.43mL、1.1当量)を滴加した。溶液を0℃で15分間撹拌した。この時点で、ヨードメタン(50μL、0.79mmol、2当量)をゆっくりと添加した。反応物を一晩にわたって徐々に室温まで温めた。反応物を飽和NH
4Cl溶液(10mL)の添加によってクエンチし、続いてEtOAc(2×20mL)に抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の10%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の油(130mg、69%)として得た。C
22H
23N
2O
2のESI MS [M-Boc+H]
+、計算値347.2、実測値347.2。
【0259】
工程2:窒素雰囲気下の脱気CH2Cl2(0.8mL)中の[Ir(cod)Cl]2(7.4mg、0.011mmol、4mol%)及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(8.7mg、0.022mmol、8mol%)の溶液を室温で30分間撹拌した。この時点で、反応物を0℃まで冷却し、脱気CH2Cl2(0.7mL)中の工程1からの生成物(130mg、0.27mmol)の溶液を添加し、続いてピナコールボラン(80μL、0.55mmol、2当量)を滴加し、反応物を即座に室温まで温め、更に1.5時間撹拌した。この時点で、反応物を冷H2O(1mL)の滴加によってクエンチし、続いてH2O(10mL)及びEtOAc(20mL)を更に添加した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の35%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の油(70mg、46%)として得た。C28H36BN2O4のESI MS [M-Boc+H2]+、計算値475.3、実測値475.3。
【0260】
工程3:隔膜を装着した40mLのシンチレーションバイアル内で、工程2からの生成物(70mg、0.013mmol)をMeOH(3mL)に溶解し、反応物を不活性窒素雰囲気下に置いた。Pd/C(10wt%、13mg)を添加し、バイアルを排気し、窒素(×3)を再充填した後、H2(1atm)を導入した。反応物を室温で16時間撹拌した。この時点で、反応混合物を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過し、これをMeOHで十分に洗浄した。溶媒を真空で濃縮して、所望の生成物を白色の泡状物質(61mg、定量的)として得た。生成物を更に精製することなくそのまま次の工程に使用した。C21H34BN2O4のESI MS [M-Boc+H]+、計算値389.3、実測値389.2。
【0261】
工程4:工程3からの生成物(61mg、0.013mmol)を、ジオキサン(1.5mL)及び4N HCl水溶液中の4N HClに懸濁した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。溶媒を真空で除去した粗残渣をRP-HPLC(アセトニトリル及び水の0→10%勾配)によって精製して、所望の生成物を白色の固体(22mg、46%)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.53 - 7.22 (m, 3H),4.20 (s, 2H), 3.49 - 3.40 (m, 1H), 2.97 - 2.67 (m, 2H), 2.51 (s, 3H), 1.75 - 1.55 (m, 2H), 1.56 - 1.37 (m, 2H), 0.90 - 0.74 (m, 2H)。C15H22BN2O4のESI MS [M-H]-、計算値305.2、実測値305.0。
【0262】
実施例9:rac-(1R,2S)-5-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化26】
表題化合物を実施例8と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.27 (s, 1H), 7.21 (s, 2H), 4.03 (s, 2H), 3.27 - 3.17 (m, 1H), 2.67 (dd, J = 15.8, 8.3 Hz, 1H), 2.62 - 2.53 (m, 1H), 2.36 (s, 3H), 1.58 - 1.39 (m, 2H), 1.38 - 1.23 (m, 2H), 0.77 - 0.58 (m, 2H)。C
15H
24BN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値307.2、実測値307.2。
【0263】
実施例10:rac-(1R)-6-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化27】
表題化合物を実施例8と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.44 (d, J = 1.1 Hz, 2H), 7.33 (s, 1H), 4.17 (s, 2H), 3.37 (dd, J = 16.2, 8.1 Hz, 1H), 2.81 (dd, J = 16.1, 8.0 Hz, 1H), 2.75 - 2.66 (m, 1H), 2.51 (s, 3H), 1.70 - 1.52 (m, 2H), 1.53 - 1.35 (m, 2H), 0.82 (tt, J = 15.8, 8.0 Hz, 2H)。C
15H
24BN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値307.2、実測値307.2。
【0264】
実施例11:rac-(1R,2S)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-4-[(メチルアミノ)メチル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化28】
表題化合物を実施例8と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 7.70 - 7.15 (m, 3H), 3.48 - 3.29 (m, 1H), 3.22 - 3.04 (m, 1H), 3.04 - 2.36 (m, 2H), 2.80 - 2.47 (m, 7H), 2.04 - 1.42 (m, 4H), 1.05 - 0.77 (m, 2H)。C
16H
24BN
2O
4のESI MS [M-H]
-、計算値319.1、実測値319.2。
【0265】
実施例12:rac-(1R,2S)-5-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-6-メトキシ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化29】
表題化合物を実施例8と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.14 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 4.09 - 3.89 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.25 - 3.00 (m, 1H), 2.68 - 2.41 (m, 2H), 2.35 (s, 3H), 1.49 - 1.36 (m, 2H), 1.38 - 1.17 (m, 2H), 0.81 - 0.53 (m, 2H)。C
16H
26BN
2O
5のESI MS [M+H]
+、計算値337.2、実測値337.2。
【0266】
実施例13:rac-(1R,2S)-5-(アミノメチル)-6-クロロ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化30】
表題化合物を実施例8と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.47 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 4.48 - 4.15 (m, 2H), 3.42 - 3.23 (m, 1H), 2.87 - 2.68 (m, 2H), 2.52 (s, 3H), 1.74 - 1.33 (m, 4H), 0.90 - 0.67 (m, 2H)。C
15H
23BClN
2O
4のESI MS [M+H]
+、計算値341.1、実測値341.0。
【0267】
実施例14:rac-(1R,2S)-1-アミノ-6-(2-アミノエチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸:
【化31】
工程1:ベンジルエステル(365mg、0.75mmol、1.0当量)、トリフルオロホウ酸カリウム塩(207mg、0.8mmol、1.1当量)、Pd(dppf)Cl
2×CH
2Cl
2(31mg、0.04mmol、5mol%)及びCs
2CO
3(735mg、2.3mmol、3.0当量)の入った火炎乾燥バイアルをN
2パージし、脱気トルエン(3.5mL)及びH
2O(1.2mL)で希釈した。得られた混合物をN
2で5分間脱気し、得られた反応混合物を90℃で20時間加熱した。室温まで冷却した後、EtOAc(10mL)及び飽和NH
4Cl水溶液(2mL)を添加した。有機層をブライン(2mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中の0→40%EtOAc)によって精製して、表題化合物を白色の泡状物質(263mg、64%)として得た。
【0268】
工程2、3及び4は、実施例8と同様に行った。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 3.32 - 3.19 (m, 3H), 2.97 (td, J = 7.0, 3.8 Hz, 2H), 2.80 - 2.70 (m, 1H), 2.60 - 2.50 (m, 1H), 1.78 - 1.65 (m, 1H), 1.65 - 1.52 (m, 1H), 1.52 - 1.36 (m, 2H), 0.89 - 0.74 (m, 2H)。C15H23BN2O4のESI MS [M-OH]+、計算値289.2、実測値289.2。
【0269】
実施例15:rac-(1R,2S)-1-アミノ-5-(2-アミノエチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化32】
表題化合物を実施例14と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.44 - 7.05 (m, 3H), 3.32 - 3.13 (m, 3H), 2.99 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.85 - 2.72 (m, 1H), 2.68 - 2.52 (m, 1H), 1.80 - 1.66 (m, 1H), 1.70 - 1.53 (m, 1H), 1.50 - 1.36 (m, 2H), 0.97 - 0.64 (m, 2H)。C
15H
22BN
2O
3のESI MS [M-H
2O+H]
+、計算値289.2、実測値289.2。
【0270】
実施例16:rac-(1R,2S)-1-アミノ-6-(2-アミノエチル)-5-クロロ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸:
【化33】
表題化合物を実施例14と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.47 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 3.34 - 3.14 (m, 4H), 3.10 - 3.00 (m, 1H), 2.85 - 2.74 (m, 1H), 2.61 (q, J = 10.7, 9.4 Hz, 1H), 1.80 - 1.66 (m, 1H), 1.65 - 1.51 (m, 1H), 1.51 - 1.38 (m, 2H), 0.90 - 0.74 (m, 2H)。C
15H
22BClN
2O
4のESI MS [M-(OH)]
+、計算値323.1、実測値323.0。
【0271】
実施例17:(1R,2S)-6-(アミノメチル)-5-クロロ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化34】
工程1:(R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(32.0g、264.9mmol、3当量)を無水トルエン(300mL)に懸濁し、90℃まで加熱した後、Ti(OEt)
4(18.3mL、88.3mmol、1当量)を一度に添加した。固体6-ブロモ-5-クロロ-1-インダノン(21.5g、88.3mmol、1当量)を少量ずつ(in portions)添加した(1時間以内)。添加後に、反応混合物を90℃で1.5時間撹拌した後、室温まで冷却した。Na
2SO
4×10H
2O(28.4g、88.3mmol、1当量)及びセライト(20g)を添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。濃緑色の懸濁液をセライトに通して濾過し、固体をEtOAc(3×100mL)で洗浄した。合わせた有機物を蒸発させ、粗物質をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→6:4のヘキサン:EtOAc)によって精製して、緑色の固体(25.9g、85%)を得た。
【0272】
工程2:Pd2(dba)3(662mg、0.722mmol、2.5mol%)を無水脱気THF(100mL)に溶解し、トリブチルホスフィン(0.723mL、2.9mmol、10mol%)を一度に添加した。混合物を室温で10分間撹拌した後、4℃まで冷却した。炭酸アリルメチル(6.7mL、57.8mmol、2当量)、続いてTEA(8.0mL、57.8mmol、2当量)を添加した。最後に、工程1からの固体イミン(10g、28.9mmol)を添加し、反応混合物を約1℃で6時間撹拌した後、飽和NH4Cl水溶液(50mL)でクエンチした。有機層を分離し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を少量のEtOAcで洗浄し、生成物を淡色の(pale)固体(5g、45%)として得た。
【0273】
工程3:1Lの丸底フラスコ内で無水THF(240mL)を-78℃まで冷却した。次いで、トルエン(155mL、155mmol、1.5当量)中のジエチルアルミニウムシアニドの1M溶液を添加し、-78℃で5分間撹拌した。次いで、無水イソプロパノール(10.5mL、103mmol、1.0当量)を滴加した後、混合物を即座に冷却浴から取り出し、室温で1時間撹拌した。別の2Lの丸底フラスコ内で、工程2からの生成物(40g、103mmol)を無水THF(560mL)に溶解した。この混合物を-78℃まで冷却し、シアン化アルミニウム混合物を1時間かけて滴加した。添加の完了後に混合物を冷却浴から取り出し、室温で一晩撹拌した。混合物を再び-78℃まで冷却し、飽和NaHCO3(300mL)を用いてクエンチした。これを室温まで温め、1時間撹拌した。混合物を砂で濾過し、EtOAc(2L)で洗浄した。次いで、混合物をブラインで洗浄し、有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→1:1 ヘキサン:EtOAc)によって精製して、所望の生成物(33.2g、77%)を得た。
【0274】
工程4:-78℃のMeOH(360mL)中の工程3からのニトリル(15g、36mmol、1.0当量)の溶液に、30%(w/w)H2O2水溶液(9.3mL、90mmol、2.5当量)を滴加した。これに続いてK2CO3(12.5g、90mmol、2.5当量)を添加した。混合物を0℃まで温め、12時間撹拌し、TLCによってモニタリングした。反応の完了後に、混合物を氷冷水(1L)に注ぎ入れ、1時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過によって回収し、水(3×200mL)で洗浄し、粗アミド(12g)を白色の固体として得て、これを精製することなく次の工程に使用した。
【0275】
工程5:MeOH(50mL)中の工程4からのアミド(11g、25mmol)の溶液を0℃まで冷却し、MeOH(50mL)中の3M HClを滴加した(10分以内)。冷却浴を取り除き、反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣をトルエン(2×100mL)と共沸させ、アミドを淡褐色の固体として得た。粗物質を厚肉圧力容器に入れ、2M KOH(253mL)で希釈し、150℃で60時間加熱した。反応混合物を冷却し、濾過してKOHを除去した。濾液を0℃まで冷却し、濃HCl(約20mL)を用いてpHを7に慎重に調整した。得られた溶液を直接次の工程に使用した。
【0276】
工程6:工程5からのpH7の水溶液にTHF(253mL)、続いて固体NaHCO3(16g、190.5mmol)及び(Boc)2O(30g、138mmol)を室温で添加した。得られた混合物を70℃で20時間撹拌した。室温まで冷却した後、EtOAc(300mL)及び飽和NH4Cl水溶液(150mL)を添加した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、粗生成物を得て、これを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0277】
工程7:MeCN(51mL)中の工程6からの粗物質の溶液に、Cs2CO3(18.2g、55.8mmol、2.2当量)及び臭化ベンジル(6.0mL、50.7mmol、2.0当量)を添加した。得られた混合物を70℃に12時間加熱した。室温まで冷却した後、EtOAc(400mL)及び飽和NH4Cl水溶液(150mL)を添加した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→8:2のヘキサン:EtOAc)によって精製して、ベンジルエステル(5g、4工程にわたって38%)を得た。
【0278】
工程8:THF(96mL)中の工程7からのベンジルエステル(5.0g、9.6mmol、1.0当量)の溶液を0℃まで冷却し、MTBE(25mL、25mmol、2.6当量)中の1M KHMDSを滴加した。反応混合物を0℃で20分間撹拌した後、MeI(3mL、48mmol、5.0当量)を滴加した。更に15分後に反応混合物を室温まで温め、3時間撹拌した後、EtOAc(200mL)及び飽和NH4Cl水溶液(50mL)でクエンチした。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→9:1のヘキサン:EtOAc)によって精製して、表題化合物を白色の泡状物質(3.0g、59%)として得た。C26H29BrClNO4のESI MS [M+H]+、計算値534.1、実測値534.0。
【0279】
工程9:工程8からの生成物(0.50g、0.93mmol、1.0当量)をトルエンと3回共沸させた後、無水THF(19mL)に溶解した。溶液を-78℃まで冷却し、ヘキサン(0.41mL、1.0mmol、1.1当量)中のn-ブチルリチウムの2.5M溶液を滴加した。30分間撹拌した後、DMF(1.0mL)を迅速に添加し、得られた反応混合物を-78℃で更に30分間撹拌した。ドライアイス-アセトン浴を氷浴に置き換え、撹拌を0℃で更に20分間続けた。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(100mL)でクエンチし、水相をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→7:3のヘキサン:EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の油(0.33g、72%)として得た。
【0280】
工程10:工程9からの生成物(0.53g、1.1mmol、1.0当量)をトルエンと3回共沸させた後、無水MeCN(11mL)に溶解した。t-ブチルカルバメート(0.51g、4.4mmol、4.0当量)、トリエチルシラン(0.70mL、4.4mmol、4.0当量)及びトリフルオロ酢酸(0.16mL、2.2mmol、2.0当量)を窒素雰囲気下で順次添加し、65℃に加熱した。12時間後に混合物を飽和NaHCO3水溶液(100mL)で処理した。水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の35%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を白色の固体(0.41g、64%)として得た。
【0281】
工程11:工程10からの生成物(0.41g、0.70mmol、1.0当量)をジクロロメタン(7mL)に溶解し、撹拌溶液を排気し、窒素を3回再充填した。この溶液に、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(24mg、0.035mmol、5mol%)、続いて1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(28mg、0.070mmol、10mol%)を添加した後、得られた混合物を排気し、窒素を3回再充填した。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、ジクロロメタン(2mL)中のピナコールボラン(0.30mL、1.0mmol、1.4当量)の溶液をシリンジポンプで1.5時間かけて滴加した。添加後に氷浴を取り除き、反応物を室温で更に1時間撹拌した。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(50mL)でクエンチし、水相をジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の35%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を白色の固体(0.43g、86%)として得た。
【0282】
工程12:工程11からの生成物(0.43g、0.60mmol、1.0当量)に6N HCl(5mL)を添加し、混合物を120℃に加熱した。15時間後に反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。粗生成物を水で溶解し、濃縮した。このプロセスを繰り返して残留塩酸を全て除去した。粗生成物を水(5mL)に溶解し、DOWEX(商標) 550-OH樹脂(7g)にロードして、これをMeOH(3×100mL)及び水(3×100mL)ですすいでから使用した。混合物を25分間撹拌し、樹脂を濾過によって回収し、水(3×20mL)、メタノール(3×20mL)、ジクロロメタン(3×20mL)及び水(3×20mL)で順次洗浄した。樹脂を2N HCl(5mL)で処理し、15分間撹拌し、濾過した。このプロセスを繰り返した後、合わせた水性濾液を凍結し、凍結乾燥して、最終生成物を白色の固体(156mg、66%)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.54 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 4.30 (m, 2H), 3.36 (dd, J = 15.8, 8.1 Hz, 1H), 2.81 (dd, J = 17.7, 8.0 Hz, 1H), 2.76 - 2.67 (m, 1H), 2.50 (s, 3H), 1.67 - 1.36 (m, 4H), 0.87 - 0.72 (m, 2H)。C15H21BClN2O3のESI MS [M-H2O+H]+、計算値323.1、実測値323.0。
【0283】
実施例18:rac-(1R,2S)-5-クロロ-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-1-(メチルアミノ)-6-[(メチルアミノ)メチル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化35】
工程1:実施例17の工程10からの中間体(0.14g、0.23mmol、1.0当量)をトルエンと3回共沸させた後、無水THF(2.3mL)に溶解した。撹拌溶液を0℃まで冷却し、MTBE(0.60mL、0.57mmol、2.5当量)中のKHMDSの1.0M溶液を滴加した。20分間撹拌した後、ヨードメタン(70μL、1.2mmol、5.0当量)を滴加し、得られた反応混合物を0℃で更に20分間撹拌した。氷浴を取り除き、撹拌を室温で更に30分間続けた。反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液(20mL)でクエンチし、水相をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中の0→20%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を白色の固体(0.15g、100%超)として得て、これを精製することなく次の工程に使用した。
【0284】
工程2:実施例17の工程11と同様。所望の生成物を白色の固体(0.13g、2工程にわたって75%)として得た。
【0285】
工程3:表題化合物を実施例17の工程12と同様に合成した。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.56 (s, 1H), 7.42 (s, 1H), 4.36 (m, 2H), 3.37 (dd, J = 16.5, 8.2 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 16.3, 8.1 Hz, 1H), 2.73 (s, 3H), 2.54 - 2.49 (m, 1H) 2.51 (s, 3H), 1.67 - 1.53 (m, 2H), 1.50 - 1.38 (m, 2H), 0.87 - 0.73 (m, 2H)。C16H23BClN2O3のESI MS [M-H2O+H]+、計算値337.2、実測値337.0。
【0286】
実施例19:(1R,2S)-6-(アミノメチル)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化36】
工程1:無水DMF(3.1mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1-インダノン中間体(324mg、0.625mmol;実施例17の工程7からの中間体と同様に調製した)の溶液をN
2で15分間脱気した後、Zn(CN)
2(73mg、0.625mmol)及びPd(PPh
3)
4(36mg、0.031mmol、5mol%)を添加した。バイアルをPTFEライニング隔膜キャップで密閉し、80℃に3時間加熱した。付加的な量のPd(PPh
3)
4(36mg、0.031mmol、5mol%)及びZn(CN)
2(73mg、0.625mmol)を添加し、反応物を80℃で2時間撹拌した。反応物を室温まで冷却し、H
2O(10mL)及びMTBE(10mL)で希釈した。有機層をH
2O(2×5mL)で洗浄した後、合わせた水層をMTBE(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の20%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を黄色の油(195mg、67%)として得た。
【0287】
工程2、3及び4は、実施例8と同様に行った。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.36 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 4.25 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.18 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 3.37 (dd, J = 16.3, 7.9 Hz, 1H), 2.89 - 2.67 (m, 2H), 2.51 (s, 3H), 1.69 - 1.50 (m, 2H), 1.50 - 1.31 (m, 2H), 0.90 - 0.67 (m, 2H)。C15H22BFN2O4のESI MS [M+H]+、計算値325.2、実測値325.2。
【0288】
実施例20:(1R,2S)-6-[(1R)-1-アミノエチル]-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化37】
工程1:N
2下の無水THF(9.6mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1-インダノン中間体(500mg、0.964mmol、実施例17の工程7からの中間体と同様に調製した)の溶液を-78℃まで冷却し、ヘキサン(1.2mL、1.2mmol、1.2当量)中のn-BuLiの2.5M溶液を滴加した。添加の完了後に、反応物を-78℃で30分間撹拌した後、無水THF(1.2mL)中の[N(E),S(S)]-N-エチリデン-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(336mg、1.93mmol、2当量)を滴加した。-78℃浴を0℃浴に置き換え、得られた混合物を45分間撹拌した。反応物を飽和NH
4Cl水溶液(100mL)でクエンチし、EtOAc(150mL)に注ぎ入れた。層を分離し、水層をEtOAc(2×100mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過した。混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中の0→70%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を無色の泡状物質(240mg、42%)として得た。
【0289】
工程2は、実施例8と同様に行った。
【0290】
工程3は、実施例17と同様に行った。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.38 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 3.35 (dd, J = 16.5, 8.2 Hz, 1H), 2.79 (dd, J = 16.5, 7.9 Hz, 1H), 2.72 - 2.63 (m, 1H), 2.47 (s, 3H), 1.62 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.63 - 1.51 (m, 2H), 0.88 - 0.72 (m, 2H)。注:ベンジルプロトン共鳴は、残留H2Oにより不明瞭である(約4.77ppm)。この共鳴は、メタノール-d4中で観察される(δ4.65(q、J=7.0Hz、1H))。C16H25BFN2O4のESI MS [M+H]+、計算値339.2、実測値339.2。
【0291】
実施例21:(1R,2S)-6-[(1S)-1-アミノエチル]-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化38】
表題化合物を[N(E),S(R)]-N-エチリデン-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミドを用いて実施例20と同様に合成した。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ 7.39 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 3.36 (dd, J = 16.5, 8.2 Hz, 1H), 2.80 (dd, J = 16.2, 8.1 Hz, 1H), 2.75 - 2.65 (m, 1H), 2.48 (s, 3H), 1.64 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.62 - 1.51 (m, 2H), 1.52 - 1.35 (m, 2H), 0.87 - 0.72 (m, 2H)。注:ベンジルプロトン共鳴は、残留H
2Oにより不明瞭である(約4.77ppm)。この共鳴は、メタノール-d
4中で観察される(δ4.65(q、J=7.0Hz、1H))。C
16H
23BFN
2O
3のESI MS [M-OH]
+、計算値321.2、実測値321.2。
【0292】
実施例22:(1R,2S)-6-{[(1R,2R)-2-アミノシクロペンチル]オキシ}-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化39】
工程1:無水ジオキサン(136mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1-インダノン中間体(3.0g、6.8mmol)、KOAc(2.0g、20.4mmol、3当量)及びB
2Pin
2(2.6g、10.2mmol、1.5当量)の混合物に窒素を10分間スパージした(sparged)後、Pd(dppf)Cl
2(498mg、0.68mmol、10mol%)を添加した。スパージングを5分間続けた後、混合物を100℃で一晩撹拌した。混合物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、セライトパッドに通して濾過した。濾液を真空で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の20%EtOAc)を用いて精製して、所望の生成物(1.8g、49%)を得た。
【0293】
工程2:ジオキサン(14mL)中の工程1からの中間体(1.6g、3.3mmol)及びNMO(0.43g、3.6mmol、1.1当量)の溶液を80℃で3時間撹拌した。混合物を真空で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の40%EtOAc)を用いて精製して、所望の生成物(0.78g、62%)を得た。
【0294】
工程3:無水THF(21mL)中の工程2からの中間体(800mg、2.1mmol)、Boc保護アミノアルコール(750mg、3.2mmol、1.5当量)及びPPh3(840mg、3.2mmol、1.5当量)の混合物を0℃まで冷却した。DIAD(646mg、3.2mmol、1.5当量)を滴加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。H2Oでクエンチした後、混合物をCH2Cl2で抽出し、合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の40%EtOAc)を用いて残渣を精製して、所望の生成物(1.0g、収率83%)を得た。
【0295】
工程4:実施例17の工程11と同様。所望の生成物を白色の固体(900mg、73%)として得た。
【0296】
工程5:実施例17の工程12と同様。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.05 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.60 - 4.53 (m, 1H), 3.67 (q, J = 7.7 Hz, 1H), 3.23 - 3.09 (m, 1H), 2.67 - 2.53 (m, 2H), 2.38 (s, 3H), 2.19 - 2.06 (m, 1H), 2.06 - 1.94 (m, 1H), 1.77 - 1.20 (m, 8H), 0.76 - 0.55 (m, 2H)。C19H28BFN2O5のESI-MS [M+H]+、計算値394.2、実測値394.3。
【0297】
実施例23:(1R,2S)-6-[1-アミノシクロプロピル]-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化40】
工程1:無水シクロペンチルメチルエーテル(13.5mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1-インダノン中間体(1.8g、4.07mmol)の脱気溶液に、XPhos-Pd-G2(160mg、0.20mmol)を添加した。シクロプロパンカルボニトリル(0.36mL、4.88mmol)を滴加し、撹拌混合物を排気し、窒素を3回再充填した。反応混合物を室温で10分間撹拌した後、塩化テトラメチルピペリジニル亜鉛塩化リチウム(TMPZnCl・LiCl)(THF中1.0M、4.88mL、4.88mmol)を、温度を30℃未満に維持しながら15分間かけて滴加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した後、80℃に1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、メタノールで処理し、セライトパッドに通して濾過し、真空で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の30%EtOAc)を用いて残渣を精製して、所望の生成物(1.26g、収率72%)を得た。
【0298】
工程2:MeOH(14mL)中の工程1からのニトリル(0.59g、1.38mmol)の溶液に、0℃で30%(w/w)H2O2水溶液(0.47mL、4.14mmol)を滴加し、続いてK2CO3(0.38g、2.76mmol)を添加した。混合物を室温まで温め、TLCによってモニタリングした。反応の完了後に混合物を水に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機物をチオ硫酸ナトリウムの水溶液、続いてブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2→CH2Cl2中の10%MeOH)を用いて精製して、所望の生成物(0.52g、収率85%)を得た。
【0299】
工程3:アセトニトリル(13.5mL)及びtert-ブタノール(1.1mL)中の工程2からのアミド(0.2g、0.45mmol)の溶液に、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(PIFA)(0.22g、0.50mmol)を一度に添加した。反応混合物を50℃に2時間加熱した。室温まで冷却した後、EtOAc及び飽和NaHCO3水溶液を添加した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の30%EtOAc)を用いて残渣を精製して、所望の生成物(140mg、収率62%)を得た。
【0300】
工程4:実施例17の工程11と同様。所望の生成物を白色の固体(145mg、収率83%)として得た。
【0301】
工程5:実施例17の工程12と同様。所望の生成物を白色の固体(74mg、84%)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.44 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 3.37 (dd, J = 16.3, 7.8 Hz, 1H), 2.90 - 2.70 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 1.67 - 1.53 (m, 2H), 1.53 - 1.36 (m, 4H), 1.31 - 1.19 (m, 2H), 0.88 - 0.71 (m, 2H)。C17H24BFN2O3のESI-MS [M-H2O+H]+、計算値333.2、実測値333.0。
【0302】
実施例24:(1R,2S)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-6-[(2R)-ピロリジン-2-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸
【化41】
工程1:-78℃のTHF(33mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1-インダノン中間体(1.02g、2.31mmol)の溶液に、n-BuLi(ヘキサン中2.5M、0.88mL、0.95当量)を滴加した。反応混合物を-78℃で30分間撹拌した。この時点で、THF(10.6mL)中の(S
2S)-N-[(1E)-4-クロロブチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(0.97g、4.62mmol、2.0当量)の溶液を、15分かけて上記の反応混合物にゆっくりと添加した。反応混合物を-78℃で更に1時間撹拌した。反応物を続いて0℃まで温め、飽和NH
4Cl溶液(10mL)及びH
2O(10mL)でクエンチし、続いてEtOAc(×2)に抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の80%EtOAc)によって精製して、生成物を黄色の油(297mg、22%)として得た。C
28H
43ClFN
2O
5SのESI MS [M+H]
+、計算値573.2、実測値573.2。
【0303】
工程2:工程1からの生成物(297mg、0.519mmol)をTHF(2.2mL)に溶解した。反応混合物を0℃まで冷却した後、LiHMDS(THF中1M、0.78mL、1.5当量)を滴加した。反応混合物を即座に室温まで温め、更に1時間撹拌した。この時点で、反応物を飽和NH4Cl溶液(10mL)及びH2O(10mL)でクエンチし、続いてEtOAc(×2)に抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮し、粗残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン→ヘキサン中の80%EtOAc)によって精製して、生成物を無色の油(278mg、定量的)として得た。C28H42FN2O5SのESI MS [M+H]+、計算値537.3、実測値537.1。
【0304】
工程3:実施例17の工程11と同様。所望の生成物を無色の油(240mg、70%)として得た。C34H54BFN2O7のESI MS [M+H]+、計算値687.2、実測値687.4。
【0305】
工程4:工程3からの生成物(240mg、0.36mmol)を6N HClに懸濁し、反応混合物を120℃に16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を真空で除去し、粗残渣を得て、これをRP-HPLC(CH3CN/H2O)によって精製して、(1R,2S)-2-[3-(ジヒドロキシボラニル)プロピル]-5-フルオロ-1-(メチルアミノ)-6-[(2R)-ピロリジン-2-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸を白色の固体(92mg、76%)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.31 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.17 - 7.13 (m, 1H), 3.42 - 3.21 (m, 3H), 2.79 - 2.62 (m, 2H), 2.43 (s, 3H), 2.41 - 2.29 (m, 1H), 2.22 - 2.10 (m, 3H), 2.08 - 2.00 (m, 1H), 1.58 - 1.45 (m, 2H), 1.40 - 1.29 (m, 2H), 0.82 - 0.60 (m, 2H). 19F NMR (376 MHz, D2O) δ -113.7。C18H27BFN2O4のESI MS [M+H]+、計算値365.2、実測値365.2。
【0306】
分析方法
LC:Agilent 1100シリーズ;質量分析計:Agilent G6120BA、シングル四重極
LC-MS法:LCMSカラム Waters XSelect(商標)HSS C18 3.5μm(2.1mm×75mm)、35℃、流速0.9mL/min、B 0%→100%の2.5min勾配、B 100%で0.5minの洗浄;A=ギ酸0.1%/アセトニトリル5%/水94.9%;B=ギ酸0.1%/水5%/アセトニトリル94.9%
フラッシュカラム:ISCO Rf+
逆相HPLC:ISCO-EZ;カラム:Kinetex 5μm EVO C18 100 A;250mm×21.2mm(Phenomenex)
【0307】
組換えヒトARG1及びARG2を用いたアルギナーゼ結合酵素アッセイによる化合物の効力の測定
精製組換えヒトARG1及びARG2を50mMビシン(pH8.5)、100μM MnCl2、20%グリセロール及び1mM DTT中、それぞれ14.4μM及び7.56μMの最終ストック濃度で調製した。2.5nMのARG1又はARG2のいずれかを、384ウェルマイクロプレート(Corning(商標) #3640)において37℃で1時間、40μlの総容量の10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.1mM MnCl2及び2.5%DMSO中で様々な濃度の化合物と共にインキュベートした。アルギナーゼ酵素反応を、10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)及び0.1mM MnCl2中で37℃にてプレインキュベートした10μlの4mM L-アルギニンを酵素及び化合物の混合物に添加し、最終反応条件:様々な濃度の化合物を含む10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.1mM MnCl2及び2%DMSO中の2nMのARG1又はARG2及び0.8mMのL-アルギニンをもたらすことによって開始した。37℃で2時間のインキュベーション後に、10μlの反応物を透明384ウェルマイクロプレート(Greinerの#781801)内の10μlの検出ミックス(Arginase Activity Colorimetric Assay Kit(BioVision Inc.の#K755-100)のArginase Assay Buffer中の204μMアミノ-2-ボロノ-6-ヘキサン酸、0.25μlのArginase Enzymeミックス、0.25μlのArginase Developer、0.25μlのArginase Converter Enzyme)中に移すことによってアルギナーゼ酵素反応を停止させた。プレートを即座にプレートリーダー(Synergy(商標) Neo2 Multi-Mode Microplate Reader)に入れ、37℃にて570nmでの吸収をモニタリングした。12分~20分の時点での吸収値を用いて化合物の効力を算出した。DMSOブランクの値(最小阻害=100%活性)を陰性対照として用いた。陽性対照は、8μlの酵素及びDMSOミックスを10μlの検出ミックスに添加し、続いて2μlのL-アルギニンを添加することによって確立した(最大阻害=0%活性)。パーセント活性を算出するために式1を用いた。Abs570nmは、所与の化合物濃度での値である:
%活性=(Abs570nm-最大)/(最小-最大)×100 式1
【0308】
酵素活性の50%の喪失を生じた化合物の濃度(IC50)を、式2(式中、Nはヒル係数である)を用いてGraphPad Prismによって算出した:
%活性=最低+(最高-最低)/(1+([I]/IC50)N) 式2
【0309】
カウンタースクリーニングを行い、試験化合物による結合酵素の任意の阻害を特定した。10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.1mM MnCl2及び2%DMSO中の様々な濃度の化合物を含む10μlの0.26mM尿素を、アルギナーゼ酵素反応ミックスの代わりに10μlの検出ミックスに添加した。吸収を570nmで上記のようにモニタリングした。無基質ブランク(尿素を含まない;最大阻害=0%活性)及びDMSOブランク(最小阻害=100%活性)の値を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。平らな用量応答曲線が、いかなる結合酵素も阻害しない化合物について予想された。カウンタースクリーニングでの不活性を用いて、結果がARG1及びARG2のIC50値を正確に反映していることが確認された。
【0310】
下記表1に示す構造及び活性を有する付加的な化合物を調製し、評価した。調製方法には上記実施例と同様の合成法を用いた。
【0311】
【0312】
本発明の実施のための本発明者らに知られる最良の態様を含む本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。前述の説明を読むことで、開示の実施形態の変形形態が当業者(individuals working in the art)に明らかとなる可能性があり、当業者がかかる変形形態を必要に応じて用いることができることが期待される。したがって、本明細書に具体的に記載される以外の形で本発明が実施され、適用法で認められる場合に、本発明が本明細書に添付の特許請求の範囲に挙げられる主題の全ての変更形態及び均等物を含むことが意図される。さらに、考え得る全ての変形形態における上記の要素の任意の組合せが、本明細書で別段の指示がないか又は明らかに文脈と矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0313】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、アクセッション番号及びその他の引用文献は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ具体的かつ個別に引用することにより本明細書の一部をなすことが示されるかのように、引用することにより本明細書の一部をなす。
【国際調査報告】