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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】新療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220111BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220111BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61K31/711
A61P1/04
C07H21/04
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526472
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2019081377
(87)【国際公開番号】W WO2020099585
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】1818579.3
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520430033
【氏名又は名称】インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ツァルガリ、アレゾウ
(72)【発明者】
【氏名】サンドウォール、ペルニラ
(72)【発明者】
【氏名】アドマイヤー、シャルロット
(72)【発明者】
【氏名】ニッテル、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゼルホウニ、ピーター
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C057CC05
4C057DD03
4C057MM01
4C057MM04
4C076AA12
4C076BB05
4C076CC16
4C076FF11
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA60
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZA68
(57)【要約】
本発明は、患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のためのオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、該オリゴヌクレオチドは、配列5’-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3’(配列番号2)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のためのオリゴヌクレオチドであって、配列5’-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3’(配列番号2)を含む前記オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのCGジヌクレオチドがメチル化されていない、請求項1に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオチドが骨格修飾を有し、好ましくは、前記骨格修飾が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾によって表されるリン酸骨格修飾である、請求項1または2に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記骨格修飾が前記オリゴヌクレオチドの5’-および/または3’-末端に位置する、請求項3に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが配列5’-GACAGTTCGTCCATC-3’(配列番号1)を有し、ここで、CGジヌクレオチドはメチル化されていない、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドがコビトリモドである、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
患者が以前に活動性潰瘍性大腸炎の治療をされたことがある、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
患者が以前に活動性潰瘍性大腸炎の治療のための1つ以上の治療剤を受けたことがある、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
1つ以上の治療剤が請求項1から6のいずれかで定義されるオリゴヌクレオチドを含む、請求項8に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
該オリゴヌクレオチドが維持療法としての使用のためである、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
患者が抗炎症療法に対して不応性であるまたは不十分に反応するまたは不寛容である、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドの個々の用量がそれらの個々の用量の間の一定の間隔をもって患者に投与される、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
個々の用量が前記オリゴヌクレオチドの10mgから350mgの用量である、請求項12に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
個々の用量が前記オリゴヌクレオチドの約30mg、または約125mgまたは約250mgの用量である、請求項12に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
個々の投与の間の間隔が1週間から12ヶ月である、請求項12から14のいずれか1項に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
個々の投与の間の間隔が1週間、4週間、6週間、8週間、12週間、6ヶ月または12ヶ月である、請求項15に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
個々の投与の間の間隔が4週間、8週間または12週間、好ましくは4週間または8週間である、請求項16に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
患者が少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、より好ましくは少なくとも5年または10年間または無期限に、一定の間隔で個々の用量を投与される、請求項12から17のいずれか1項に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
単剤療法としての使用のためである、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
患者が活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための1つ以上の追加の治療剤を受けている、請求項1から18のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドが粘膜に局所的に投与される、好ましくは前記オリゴヌクレオチドが直腸に投与される、前述の請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
請求項1、7から9および11のいずれかで定義される患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のための、請求項1から6のいずれかで定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項23】
薬学的に許容される担体が水であり、好ましくは医薬組成物が実質的に前記オリゴヌクレオチドおよび水からなる、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
請求項1、7から9および11のいずれかで定義される患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防する方法であって、請求項1から6のいずれかで定義されるオリゴヌクレオチドまたは請求項22もしくは23のいずれかで定義される組成物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項25】
請求項1、7から9および11のいずれかで定義される患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための薬剤の製造のためのオリゴヌクレオチドの使用であって、該オリゴヌクレオチドが請求項1から6のいずれかで定義されるとおりのものである前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、オリゴヌクレオチド、特にコビトリモドの投与を含む、活動性潰瘍性大腸炎(UC)の再発を予防するための新療法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
潰瘍性大腸炎(UC)は、直腸および結腸粘膜の慢性炎症によって特徴付けられる疾患であり、第1の段階では最も内側の膜に影響を与える。当該疾患は、病態、症状および治療の異なる活動性および非活動性段階の両方を伴い、再発する。潰瘍性大腸炎の根本的原因はわかっておらず、何が疾患をトリガーして非活動性および活動性形態の間で再発させるのかも知られていない(Irvine,E.J.(2008) Inflamm Bowel Dis 14(4):554-565)。2012年に報告されたUCの最も高い年間発生率は、ヨーロッパでの10万人年あたり24.3、アジアおよび中東での10万人年あたり6.3、並びに北米での10万人年あたり19.2であり、有病率はヨーロッパで10万人あたり505例、北米で10万人あたり249例であった(Molodecky NA、Soon IS、Rabi DMら Gastroenterology.2012:142(1):46-54)。
【0003】
活動性潰瘍性大腸炎の症状は、血液を伴う進行性軟便および排便頻度の増加を含む。活動性粘膜炎症は内視鏡検査で診断される。便は膿、粘液および血液を含み、しばしば、尿意緊急性(しぶり)を伴う腹部のけいれんと関連する。下痢は、潜行性に発症するか、またはよりまれには全く突然に発症するかもしれない。重症の場合には、症状は、発熱および全身倦怠感を含むかもしれない。重度の段階では、腸壁の深い炎症が腹部の圧痛、頻脈、発熱および腸穿孔のリスクと共に発症するかもしれない。さらに、潰瘍性大腸炎の患者は、関節痛および関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症および眼の炎症などの腸外の症状に苦しむかもしれない。寛解または非活動性潰瘍性大腸炎の場合、患者は通常、腸の症状がない。
【0004】
炎症を起こしたおよび損傷した粘膜の程度は、潰瘍性大腸炎の患者間で異なる。直腸のみに影響を与える潰瘍性大腸炎は、潰瘍性直腸炎と呼ばれる。炎症性の変化が脾臓の屈曲部まで結腸の左側に存在する場合、この状態は遠位大腸炎として呼ばれる。広範囲の潰瘍性大腸炎においては横行結腸も影響を受け、膵臓炎は結腸全体を巻き込む疾患を指す。
【0005】
活動性粘膜炎症は内視鏡検査によって診断され、血管のパターン形成の喪失、浮腫、点状出血、自然出血および線維性滲出液によって特徴付けられる。内視鏡画像は、直腸から始まり、結腸内にさまざまな程度まで近位に広がる連続的な炎症の画像である。内視鏡検査で得られ、組織学的検査を受けた生検は、状態を診断するのに役立つ。クロストリジウム・ディフィシル、カンピロバクター、サルモネラおよび赤痢菌を含む感染症の原因は、潰瘍性大腸炎に似ているかもしれず、便培養で除外することができる。
【0006】
潰瘍性大腸炎の医学的管理は、活動性疾患の治療と寛解の維持に分けられる。
【0007】
疾患の活動期の治療は重要であるが、さらなる活動期への再燃(relapse)またさらなる活動期の再発(recurrence)の予防(prevention)または予防法(prophylaxis)は、障害の長期管理にとって極めて重要である。維持療法は、長期間にわたる薬物の使用である。そのような維持療法は、例えば、活動期の頻度を減らすために、すなわち、患者を疾患の非活動期に保つために使用することができる。
【0008】
活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防する例は、低い疾患活動性指標、正常体重、または低い組織病理学的スコア(例えば3未満)を維持すること、および寛解状態を維持することによって活動性潰瘍性大腸炎状態への再燃を避けることを含む。
【0009】
活動性潰瘍性大腸炎の寛解を誘導するために、多くの治療法が利用可能である。活動性潰瘍性大腸炎の患者の治療は、炎症を軽減し、結腸の治癒と粘膜の回復を促進することを目的とする。軽症の場合、この病気は、スルファサラジンおよび5-アミノサリチル酸(5-ASA)などのアミノサリチレートを含む従来の薬物で制御されるかもしれない(Sutherland,L.、F.Martin、S.Greer、M.Robinson、N.Greenberger、F.Saibil、T.Martin、J.Sparr、E.ProkipchukおよびL.Borgn(1987)Gastroenterology 92:1894-1898)、およびグルココルチコステロイド(GCS)(Domenech、E.、M.ManosaおよびE.Cabre(2014).Dig Dis 32(4):320-327)。直腸および直腸S状結腸領域に限定される遠位疾患は、通常、直腸製剤を使用して寛解にもたらされる。範囲がより近位である、および/または症状がより重度である場合は、経口GCSも必要とされる。
【0010】
GCSに不応性または不寛容になった、またはGCSの使用を使用したくない、および潰瘍性大腸炎の重度または中等度の発作に苦しむ患者の場合、シクロスポリン、6-メルカプトプリン[6-MP]、アザチオプリン[AZA]、メトトレキサートおよびタクロリムスなどの免疫調節剤が典型的には使用される。これらの免疫調節剤は、アミノサリチレートに不応性または不寛容になった、またはアミノサリチレートを使用したくない、および潰瘍性大腸炎の重度または中等度の発作に苦しむ患者にも使用されるかもしれない。
【0011】
潰瘍性大腸炎のさらなる治療オプションは、生物学的薬剤を含む(Fausel,R.およびA.Afzali(2015)Ther Clin Risk Manag 11:63-73)。中等度から重度の潰瘍性大腸炎の治療に現在承認されている3つのTNF-α阻害剤は、インフリキシマブ、アダリムマブ、およびゴリムマブである。3つ全てが、それらの使用に関連する潜在的なリスクを有しており、特定の患者、例えば制御不能な感染症、進行した心不全、神経学的状態を伴う患者では、および腫瘍の成長を加速する潜在的なリスクのために、悪性腫瘍の病歴のある患者では避けられるべきである。TNF-α阻害剤療法の他の潜在的な悪影響は、好中球減少症、肝毒性、血清病、白血球破砕性血管炎、乾癬状発疹を含む発疹、自己免疫の誘導、並びにアナフィラキシー、痙攣、および低血圧を含む注射または注入部位の反応を含む。潰瘍性大腸炎のさらなる治療オプションは、ベドリズマブなどの抗インテグリン抗体、およびトファシチニブなどのJAK阻害剤を含む。
【0012】
活動性潰瘍性大腸炎の寛解を誘導するのに有効であることが知られている治療剤もまた、寛解を維持するのに有益であるかまたは適切であるかどうかは予測できない。
【0013】
実際、潰瘍性大腸炎の活動性症状の治療に推奨される薬剤のほとんどが、長期維持療法には適していない。すなわち、GCSは、それらの長期使用に関連する重大な副作用、およびステロイド依存性疾患を発症する可能性があるため、一般的に維持療法には推奨されない。全身性GCSでの維持療法は、文献で明示的に使用しないよう推奨されてきている(Prantera,C.およびS.Marconi(2013) Therap Adv Gastroenterol 6(2):137-156)。中等度から重度の症状のある患者は、免疫抑制剤(例えばシクロスポリン、6-メルカプトプリン[6-MP]、アザチオプリン[AZA]、メトトレキサート[MTX]およびタクロリムス)からいくらかのメリットを得るかもしれない。しかしながら、これらの薬剤の使用は、作用の遅い開始(3から6ヶ月)のため誘導治療として、および骨髄抑制、感染症、肝毒性、膵炎、および悪性腫瘍を含む有害事象(AE)のため維持療法として制限されている。(Kombluth A、Sachar DB.Am J Gastroenterol.、2010;105(3):501-23;quiz 524およびBeaugerie L、Brousse N、Bouvier AMら Lancet.2009;374(9701):1617-25)。生物学的薬剤については、患者の大部分(>50%)が時間とともに生物学的TNF-α阻害剤に対する反応を失うことが見い出されてきた(Fausel,R.およびA.Afzali(2015)Ther Clin Risk Manag 11:63-73)。それらの深刻な副作用と組み合わされて、これは、そのような生物学的薬剤が従って理想的な長期維持解決策を表さないことを意味する。
【0014】
上記で論じた制限にもかかわらず、潰瘍性大腸炎の維持療法として現在使用されている活性剤は、アミノサリチレート、6-MP、AZA、TNF-α阻害剤[インフリキシマブ、アダリムマブおよびゴリムマブなどの]、ベドリズマブおよびトファシチニブを含む。
【0015】
適切な長期維持療法がない場合、ほとんどの場合に、寛解状態の患者の再燃は避けられなくなる。潰瘍性大腸炎は、慢性的に活動性になり、利用可能な治療法に対して本質的に不応性になるかもしれない。そのような場合の唯一の残る行動方針は結腸切除術である。全結腸切除術は、重度の潰瘍性大腸炎における治癒の可能性のある選択肢であるが、回腸嚢不全、骨盤敗血症、女性の不妊症、および夜間の糞便の汚れなどの合併症が伴うかもしれないため、リスクを伴う人生を変える手術である。これらの合併症は、最終的には約0.5%の場合に死亡につながるかもしれない(Ferrante Mら、Inflamm Bowel Dis 2008;14:20-8)。従って、潰瘍性大腸炎の再燃を予防するために、長期の維持療法を見い出だすことが望ましい。
【0016】
コビトリモド(Kappaproct/DIYS0150)は、配列5’-GACAGTTCGTCCATC-3’(配列番号1)を有する長さ19塩基の修飾された一本鎖DNAベースの合成オリゴデオキシリボヌクレオチドである。ここで、CGジヌクレオチドはメチル化されておらず、およびここで、アスタリスク(*)は、免疫細胞に存在するToll様受容体9(TLR9)を標的とすることにより免疫調節剤として機能する、配列中のホスホロチオエート結合を示す。これらの免疫細胞(すなわち、B細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC)は、結腸および鼻粘膜などの粘膜表面にかなり豊富に存在する。免疫系は、潰瘍性大腸炎に関連する変化の主要なメディエーターである。潰瘍性大腸炎患者の結腸および直腸の粘膜は、組織への損傷につながる活動性免疫細胞を含む。コビトリモドは、炎症領域に局所投与されるかもしれず、これが薬物をかなり多数の目的の標的細胞と密接に接触する状況とし、TLR9発現細胞が豊富な領域に薬物が到達するのを確実とする。コビトリモドによるこれらの細胞の活性化は、コビトリモドの臨床効果の重要な要因であると信じられているI型インターフェロンおよびインターロイキン10(IL-10)などのさまざまなサイトカインを誘導する。
【0017】
コビトリモドを用いたさまざまな非臨床安全性試験、並びに活動性潰瘍性大腸炎患者の寛解を誘導するコビトリモドの能力を評価するための4つの臨床試験が実施されてきた。全体として、コビトリモドに関するデータは、潰瘍性大腸炎の患者に対するポジティブなベネフィットリスク評価を支持する。コビトリモドは、安全で十分に忍容性があり、活動性潰瘍性大腸炎の患者における臨床反応および寛解の誘導、並びに重度の積極的治療不応性潰瘍性大腸炎または中等度から重度の積極的治療不応性潰瘍性大腸炎の患者の症候性および内視鏡的寛解に有効であることが示されてきた。
【0018】
活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための安全で効果的な維持療法の不足、および既知の療法に関連する問題を考慮すると、より優れた有効性、安全性および忍容性プロファイルを有する新しい維持療法の開発の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0019】
コビトリモドの投与は、既知の潰瘍性大腸炎療法の副作用なしに、活動性潰瘍性大腸炎およびそれに関連する衰弱性症状の再発またはそれらへの再燃を予防するために使用できることが、今や驚くべきことに見い出された。
【0020】
従って、本発明は、患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のためのオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、該オリゴヌクレオチドは、配列5’-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3’(配列番号2)を含む。
【0021】
本発明はまた、本明細書で定義される患者における本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明はまた、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される組成物を本明細書で定義される患者に投与することを含む、前記患者において、本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防する方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、本明細書で定義される患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための薬剤の製造のための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0024】
好ましい実施態様においては、オリゴヌクレオチドはCGジヌクレオチドがメチル化されていない配列5’-GACAGTTCGTCCATC-3’(配列番号1)を有する。すなわち、好ましい実施態様においては、オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。ホスホロチオエート結合は、配列内のアスタリスク(*)によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、0週目および4週目に30mgのコビトリモドを投与した後の4週目における持続的な症候性寛解状態の患者の割合、並びに8週目および12週目にその患者群でその割合がどのように変化するかを示す。
図2図2は、実施例2における患者p12の治療経過を示し、数ヶ月間の時間に対する大腸炎活動性指標[CAI]を示す。線上の数字は、特定の時点での特定のCAIスコアを示す。上の破線より上の値のCAIスコアは患者が疾患において重度の発赤を有することを、下の破線より下の値のCAIスコアは患者が臨床的寛解の状態にあることを示す。数字のない線は、1日あたりに与えられるデコルチンの量[mg]でのステロイド治療の経過を示す。灰色の矢印は投薬訪問(2010年3月26日、2010年4月28日、2010年5月26日、2010年8月25日、2010年9月22日、2010年10月19日)を示し、黒い矢印はCAIスコアが確立できた訪問(2010年4月1日、2010年5月5日、2010年5月19日、2010年6月23日、2010年7月12日、2010年9月1日、2010年10月25日、2010年11月24日、2011年3月9日)をおよび右側の灰色の矢印は、治療を行う医師が治療のフォローアップを行うために最後に全ての患者に連絡を取った2011年3月24日の状態を示す。
図3図3は、実施例3における各群の動物からの代表的な結腸の写真である。
図4図4は、実施例3における各治療群の結腸長さ(cm)を示し、各群の平均±SDとして表されている。有意性[*:p<0.05、***:p<0.005、および****:p≦0.001]は、Tukeyの多重比較検定を使用した一元配置分散分析(One-Way ANOVA)によって決定された。
図5図5は、実施例3における各治療群の結腸重量/長さの比率を示し、各群の平均±SDとして表されている。有意性[*:p<0.05、***:p<0.005、および****:p≦0.001]は、Tukeyの多重比較検定を使用した一元配置分散分析(One-Way ANOVA)によって決定された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書で引用される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、典型的にはヒトの患者を指す。しかしながら、患者は、哺乳類などの他の脊椎動物であってもよい。用語「対象」および「患者」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0028】
本明細書で使用する場合、言葉「治療」および「治療すること」は、疾患もしくは状態の治療および/もしくは改善および/もしくは予防または徴候の重篤化/悪化の軽減、並びに疾患もしくは状態の原因の治療を包含すると理解されるべきであり、対象の状態を改善または安定化させるように、状態の症状、臨床徴候および根本的な病状を逆転、軽減または阻止することを含んでもよい。
【0029】
「予防」および疾患または状態(の再発)を「予防すること」への言及は、疾患または状態の予防法(prophylaxix)および/または阻害を包含する。用語「予防すること」は当技術分野で認識されており、潰瘍性大腸炎またはその関連する症状などの状態に関連して使用される場合、当技術分野で十分に理解されており、薬物または組成物を受けていない対象と比較して、対象における病状の症状の頻度を軽減するか、または発症を遅らせる薬物、例えばオリゴヌクレオチド、および/または組成物の投与を含む。
【0030】
潰瘍性大腸炎という疾患は、当業者によく知られている。当業者は、疾患の活動期および寛解期の概念に十分に精通しているであろう。潰瘍性大腸炎は、典型的な症状に特徴付けられる疾患の活動期としておよび、典型的には疾患の活動期の治療に続き、本質的に症状のない寛解期として現れる。潰瘍性大腸炎の活動期を示す典型的な症状は、血便および便の頻度の増加を含む。潰瘍性大腸炎の活動期は、メイヨー(Mayo)および修正メイヨー(Modified Mayo)スコアリングシステムを含む、以下で論じるような、さまざまな異なるスコアリングシステムを使用して診断することができる。
【0031】
本発明の文脈において、活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防することへの言及は、疾患の活動期の再発を予防すること、すなわち患者を寛解状態に維持し維持療法を提供することを指すことが意図される。
【0032】
すなわち、本発明は、潰瘍性大腸炎の活動期の再発または該活動期への再燃を予防する(すなわち、維持療法を提供する)ための本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【0033】
すなわち、活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃の予防は、例えば統計的におよび/または臨床的に有意な量だけ、例えば、発症を遅らせること(症状間の時間を延長すること)、またはオリゴヌクレオチドで治療されていない対照集団に対する、治療された集団における潰瘍性大腸炎の活動期の1つ以上の数(発生)、頻度、重症度または期間を軽減させることを含む。すなわち典型的には、患者は臨床的寛解の状態のままである。患者の粘膜治癒(一般的に内視鏡的外観により評価される)も典型的には維持される。すなわち、臨床的寛解および粘膜治癒は、好ましくは、患者において維持/持続される。
【0034】
患者の最高の生活の質を確保するために、活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃を可能な限り長期間予防することは臨床的に有益である。寛解は、本明細書で論じられるように、少なくとも1ヶ月間の欠如または最小限の症状として定義されるかもしれない。潰瘍性大腸炎が治癒できない慢性状態であることを考慮すると、典型的には再発または再燃の予防は、長期間、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、例えば少なくとも5年または10年間の再発/再燃の予防を指す。理想的には、再発/再燃は無期限に予防される。
【0035】
寛解は、臨床的寛解、症候性寛解、内視鏡的寛解および/または組織病理学的寛解として定義されるかもしれない。寛解はまた、一般に症候性寛解に対応する患者から報告された寛解であってもよい。
【0036】
臨床的寛解は、臨床活動性(Clinical Activity)(Rachmilewitz)指標(CAI)、メイヨースコアまたは修正メイヨースコアを参照して本明細書で定義されるとおりであってもよい。症候性寛解(または患者から報告された寛解)は、一週の便の頻度が35未満で、便に血がないことと定義されるかもしれない。内視鏡検査中に粘膜の治癒が観察される(例えばメイヨーサブスコアが2未満)場合に、内視鏡的寛解が生じる。組織病理学的寛解は、2未満のGeboesスコア、またはグレード0または1のナンシー(Nancy)指標として定義されるかもしれない。深い寛解は、内視鏡的寛解および組織病理学的寛解の両方が観察される場合である。
【0037】
一面においては、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を臨床的寛解状態に維持するために使用される。別の面においては、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を症候性寛解(または患者から報告された寛解)状態に維持するために使用される。別の面においては、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を内視鏡的寛解状態(すなわち、粘膜治癒が維持されている)に維持するために使用される。別の局面においては、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を組織病理学的寛解状態に維持するために使用される。
【0038】
好ましくは、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を(a)臨床的寛解および症候性寛解、または(b)臨床的寛解および内視鏡的寛解、または(c)臨床的寛解および組織病理学的寛解、または(d)症候性寛解および内視鏡的寛解状態に、または(e)症候性寛解および組織病理学的寛解状態に、または(f)内視鏡的寛解および組織病理学的寛解状態に維持するために使用される。より好ましくは、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を(a)臨床的寛解、症候性寛解および内視鏡的寛解、または(b)臨床的寛解、症候性寛解および組織病理学的寛解、または(c)臨床的寛解、内視鏡的寛解、および組織病理学的寛解、または(d)症候性寛解、内視鏡的寛解および組織病理学的寛解状態に維持するために使用される。最も好ましくは、本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者を臨床的寛解、症候性寛解、内視鏡的寛解および組織病理学的寛解状態に維持するために使用される。
【0039】
本発明による使用のためのオリゴヌクレオチドは、患者をステロイドフリーの寛解状態に維持するために使用されてもよい。この場合、患者はステロイドの同時投与を必要とすることなく寛解状態に保たれる。
【0040】
「再発」または「再燃」への言及は、患者が以前に活動性潰瘍性大腸炎に苦しんだことがあることを示す。寛解または回復の期間を経験した後、患者が活動性潰瘍性大腸炎を示す1つ以上の症状を経験する場合、患者は「再発」または「再燃」する。典型的には、患者は、本明細書で定義されるような、活動性潰瘍性大腸炎に関連する1つ以上の症状、および通常は治療後の活動期の間の本質的に症状のない期間(「寛解」または「回復」)を経験したことがある。オリゴヌクレオチドの投与は、典型的にはそれらの症状のない期間を可能な限り長く、例えば、上記で定義されるような特定の期間延長する。
【0041】
すなわち、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドは、以前に活動性潰瘍性大腸炎を経験した患者における使用のためである。本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドは、患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のためである。典型的には、患者は、潰瘍性大腸炎に苦しんでいると診断されてきている。典型的には、患者は、以前に本明細書で定義される潰瘍性大腸炎の1つ以上を経験したことがあり、本発明における使用のためのオリゴヌクレオチドは、任意の期間のさらなるそのような活動期を予防するように作用する。
【0042】
典型的には、患者は、軽度、中等度または重度の活動性潰瘍性大腸炎に関連する1つ以上の症状を経験したことがある。オリゴヌクレオチドは、以前に軽度、中等度または重度の活動性潰瘍性大腸炎を経験したことのある患者における使用のためであってもよい。オリゴヌクレオチドは、患者における軽度、中等度または重度の活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のためであってもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、以前に軽度の活動性潰瘍性大腸炎を経験したことのある患者における使用のためであってもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、以前に中等度の活動性潰瘍性大腸炎を経験したことのある患者における使用のためであってもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、以前に重度の活動性潰瘍性大腸炎を経験したことのある患者における使用のためであってもよい。軽度、中等度および重度の語句は、言及された疾患指標のいずれかを参照して本明細書に記載されているとおりであってもよい。
【0043】
潰瘍性大腸炎の患者は、典型的には寛解から重度の活動性までの範囲の疾患重症度のスペクトルを示す。臨床評価は、潰瘍性大腸炎患者を参照によりその全体が本明細書に組み込まれるD’Haens,Gastroenterology 2007;132:763-786で定義されている4つの疾患活動性サブグループ;(1)寛解(≦2または3便/日、便中に血液および/または膿が存在せず、全身症状なし);(2)軽度の活動性疾患(3もしくは4便/日並びに/または毎日未満の便中の血液および/もしくは膿の存在、発熱もしくは体重減少の全身症状なし);(3)最小限の全身症状を有する中等度の活動性疾患(>4便/日並びに/または血液および/もしくは膿の毎日の存在);および(4)重度の活動性疾患(>6血便/日、および発熱、頻脈、貧血、または赤血球沈降速度ESRによって示される毒性の証拠)に分類するために使用することができる。本明細書に記載されている他のスコアリングシステムも、同様に患者の疾患の重症度を分類するために使用することができる。
【0044】
典型的には、本発明に従って治療される患者は、活動性潰瘍性大腸炎に苦しんでいない。典型的には、本発明に従って治療される患者は、メイヨースコアまたは修正メイヨースコア、好ましくは修正メイヨースコアによって決定されるように、活動性潰瘍性大腸炎に苦しんでいない。EMAは、2018年6月28日付の「潰瘍性大腸炎の治療のための新しい医薬品の開発に関するガイドライン」で、修正メイヨースコアが推奨されることを示した。同様に、FDAは、2016年8月にドラフトで発行された「潰瘍性大腸炎:臨床試験の評価項目-業界向けガイダンス」で、修正メイヨースコアが推奨されることを示した。
【0045】
すなわち、本発明のオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載のように寛解状態にある患者、すなわち潰瘍性大腸炎が不活性状態にある患者への投与用である。
【0046】
潰瘍性大腸炎の寛解期にある患者は、典型的には修正メイヨースコア≦2であり、直腸出血のサブスコアが0、便の頻度のサブスコアが0または1、内視鏡検査のサブスコアが0または1である。
【0047】
潰瘍性大腸炎患者における反応または寛解の誘導は、1つ以上の標準的な疾患指標に従って決定されてもよい。典型的な疾患指標は、下記のものを含むが、これらに限定されない;(i)臨床的および生化学的疾患活動性によって決定される疾患活動性、(ii)内視鏡的疾患活動性によって決定される疾患活動性、(iii)複合臨床的および内視鏡的疾患活動性指標によって決定される疾患活動性、(iv)生活の質、(v)組織学的疾患活動性。これらの指標は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるD’Haens,Gastroenterology 2007;132:763-786で論じられている。
【0048】
臨床的および生化学的疾患活動性によって決定される疾患活動性に基づく指標は、トゥルーラブ(Truelove)およびウィッツ(Witts)の重度指標;パウエル-タック(Powell-Tuck)(セントマークス(St.Mark’s))指標;臨床活動性(Rachmilewitz)指標(CAI);活動性(Seo)指標;医師の全般評価;リクティガー(Lichtiger)(修飾されたトゥルーラブおよびウィッツの重度指標)指標;治験責任医師の全般評価;単純な臨床大腸炎活動性指標;個々の症状スコアに基づく改善;潰瘍性大腸炎の臨床スコア;および患者に定義された寛解を含む。これらの指標は、D’Haens(同上)で論じられている。
【0049】
内視鏡的疾患活動性によって決定される疾患活動性に基づく指標は、トゥルーラブ(Truelove)およびウィッツ(Witts)のシグモイドスコープ評価;バロン(Baron)スコア;パウエル-タック(Powell-Tuck)シグモイドスコープ評価;内視鏡(Rachmilewitz内視鏡)指標;シグモイドスコープ指標;シグモイドスコープ炎症グレードスコア;メイヨースコア柔軟な直腸S状結腸鏡検査評価;サザーランド(Sutherland)粘膜外観評価;および修正された男爵スコアを含む。これらの指標は、D’Haens(同上)で論じられている。
【0050】
複合臨床および内視鏡疾患活動性指標によって決定される疾患活動性に基づく指標は、メイヨースコア(メイヨー臨床スコア/疾患活動性指標);修正されたメイヨースコアおよびサザーランド(Sutherland)指標(疾患活動性指標/UC疾患活動性指標)を含む。メイヨースコアおよびサザーランド指標は、D’Haens(同上)で論じられている。
【0051】
生活の質に基づく指標は、IBD患者の懸念の評価フォーム;および炎症性腸疾患アンケート(IBDQ)を含む。これらの指標は、D’Haens(同上)で論じられている。
【0052】
組織学的疾患活動性に基づく指標は、ゲボーズ(Geboes)指標およびリレイ(Riley)指標並びにナンシー(Nancy)指標およびロバーツ(Robarts)指標などのさらなる指標などのD’Haens(同上)で論じられているものを含む。
【0053】
潰瘍性大腸炎患者を評価するための好ましい指標は、臨床活動性(Rachmilewitz)指標、メイヨースコアおよび修正されたメイヨースコアを含む。
【0054】
臨床活動性(Rachmilewitz)指標は、7つの変数:便の数、血便、症状状態の治験責任医師による全般評価、腹痛またはけいれん、大腸炎による体温、腸外症状、検査所見を考慮した指標である。これは、D’Haens(同上)および参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRachmilewitz D.,BMJ 1989;298:82-86でさらに論じられている。臨床活動性(Rachmilewitz)指標の決定は、0から29ポイントの範囲の患者のスコアを生成する(スコアが高いほど、より重度の疾患を意味する)。
【0055】
臨床的寛解は、臨床活動性(Rachmilewitz)指標スコア≦4ポイントとして考えられるかもしれない。臨床活動性(Rachmilewitz)指標によって決定される反応は、患者が治療前よりも治療後はより低いスコアを有することを意味する。
【0056】
メイヨースコアは、便の頻度、直腸出血、柔軟な直腸S状結腸鏡検査の所見、および医師の全般評価(PGA)の4つの項目を考慮した指標である。これは、さらにD’Haens(同上)および参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSchroeder KWら、N Engl J Med 1987;317:1625-1629で論じられている。メイヨースコアの決定は、0から12ポイントの範囲のスコアを生成する(スコアが高いほど、より重度の疾患を意味する)。4つの特定の項目に加えて、12ポイントの指標計算に含まれることを意図されていないが、PGAサブスコアを決定するときの一般的な幸福の尺度として使用されるべきである患者の機能評価も測定される。
【0057】
4つの項目のそれぞれのメイヨースコアは、以下の表に示されているように決定される。
【0058】
【表1】
【0059】
メイヨースコアによる寛解(完全反応)は、(1)便の頻度(正常な便の頻度)、(2)直腸出血(直腸出血なし)、(3)患者の機能評価スコア(一般的に良好)、(4)内視鏡所見(正常)、およびPGAスコア0の完全な解決として定義されてもよい。メイヨースコアによって決定される部分的反応は、典型的にはPGAスコアにおける改善(ベースラインからの最小1ポイントの減少)および少なくとも1つの他の臨床評価(便の頻度、直腸出血、患者の機能評価、内視鏡所見)における改善、およびいかなる他の臨床評価でも悪化のないことを必要とする。
【0060】
あるいは、臨床的寛解はメイヨースコア0として、臨床的改善(反応)はメイヨースコア≧3ポイントにおけるベースラインからの減少として定義されてもよい。
【0061】
あるいは、臨床的寛解はメイヨースコア0として、臨床的改善(反応)はメイヨースコア≧3ポイントにおけるベースラインからの減少(またはベースラインのメイヨースコアが≦3ポイントであった場合は≧2ポイントの減少)として定義されてもよい。
【0062】
あるいは、メイヨースコアによって決定される寛解は、内視鏡検査および直腸出血の両方でサブスコア0、並びに便の頻度およびPGAサブスコアでスコア0または1を必要とするとして定義されてもよい。反応は、メイヨースコア≧3ポイントにおけるベースラインからの減少として定義されてもよい;臨床的反応は、メイヨースコア(内視鏡サブスコアなし、部分メイヨースコアとしても知られる)≧2ポイントにおけるベースラインからの減少として定義されてもよく、内視鏡反応は、内視鏡サブスコア≧1ポイントにおけるベースラインからの減少として定義されてもよい。
【0063】
あるいは、臨床的寛解は、いずれの個々のサブスコアも>1ポイントの合計メイヨースコア≦2ポイントとして定義されてもよく、臨床反応は、合計メイヨースコア≧3ポイントおよび≧30%におけるベースラインからの減少並びに直腸出血サブスコア≧1ポイントにおける減少または絶対直腸出血サブスコア0または1として定義されてもよく、粘膜治癒は、絶対内視鏡サブスコア0または1として定義されてもよい。
【0064】
典型的には、活動性潰瘍性大腸炎を有する患者はメイヨースコア≧2である。潰瘍性大腸炎の寛解期にある患者は、典型的にはメイヨースコア≦2である。
【0065】
修正メイヨースコアは、上記で定義されたメイヨースコアに関連する。修正メイヨースコアは、例えば、内視鏡検査のスコアがもろさをあまり考慮していないという点でメイヨースコアと異なる。この修正メイヨースコアのスコア表は以下に示すとおりである。代替の修正メイヨースコアは、PGAサブスコアのないメイヨースコアであってもよい。
【0066】
修正メイヨースコアは、典型的には既知の方法(Schroder KW、Tremaine WJ、Ilstrup DM.(1987)N Engl J Med 317(26):1625-9)に従って評価される。
【0067】
直腸出血サブスコアのグレード1でもろさのない修正メイヨーは0-12の範囲であり、スコアが高いほど、より重度の疾患を示す。
【0068】
直腸出血サブスコアのグレード1でもろさのない修正メイヨーは、通常、以下のスコアリングシステムを使用して評価することができる。患者を評価するためのそのようなシステムの使用は、当業者にとって日常的であろう。
【0069】
【表2】
【0070】
修正メイヨースコアの寛解および反応値は、メイヨースコアについて上記で示したとおりである。修正メイヨースコアは、典型的には
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM515143.pdf
で見つけられるFDAのドラフトガイダンス文書「潰瘍性大腸炎:業界向けの臨床試験評価項目ガイダンス」に従って評価される
【0071】
あるいは、修正メイヨースコアは、結腸内視鏡検査/S状結腸鏡検査のスコアがもろさをあまり考慮していないという点で、また医師の全般評価が決定的ではないという点で、メイヨースコアと異なるかもしれない。すなわち、修正メイヨースコアのスコア表は、以下のようであってもよい。
【0072】
【表3】
【0073】
この代替の修正メイヨースコアの寛解および反応値は、典型的にはメイヨースコアについて上記で示したとおりである。あるいは、寛解は、この代替の修正メイヨースコアに従って、i)直腸出血0、ii)便頻度0または1(0週目のベースラインから少なくとも1ポイント減少)、およびiii)内視鏡検査スコア0または1(もろさを除く)のサブスコアによって定義されてもよい。臨床反応は、臨床的寛解、または合計の修正メイヨースコア>3ポイントおよび>30%におけるベースラインからの減少として定義されてもよい。
【0074】
潰瘍性大腸炎の寛解の誘導は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるS.P.L.Travis,Aliment Pharmacol Ther 2011;34:113-124に示される基準、すなわち、好ましくは内視鏡的粘膜治癒によって確認される、直腸出血、切迫感および便頻度の増加の完全な停止に従ってもよい。
【0075】
あるいは、反応または寛解の誘導は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるE.F.Stange、Journal of Crohn’s and Colitis(2008)2、1-23;S.P.L.Travis、Journal of Crohn’s and Colitis(2008)2、24-62;K Geboes、Gut 2000;47:404-409に示される基準に従ってもよい。
【0076】
潰瘍性大腸炎の重症度および患者が寛解状態にあるかどうかの決定は、1つ以上の標準的な指標、例えば上記で論じられた修正メイヨースコアを参照することによって測定することができる。
【0077】
本発明のオリゴヌクレオチドは、不活性な潰瘍性大腸炎疾患を有する患者への投与のためのものである。例えば、患者は、直腸出血サブスコア0、便頻度サブスコア0または1、および内視鏡サブスコア0または1の修正メイヨーサブスコア≦2を有していてもよい。オリゴヌクレオチドの投与は、典型的には患者が直腸出血サブスコア0、便頻度サブスコア0または1、および内視鏡サブスコア0または1の修正メイヨーサブスコア≦2を有する期間を、上記で定義したように、可能な限り長く、例えば特定の期間延長する。
【0078】
活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃の予防は、いずれの適切なスコアリングシステムにおいても、例えば修正メイヨースコアにおいて悪化しないことによって意味付けされ得る。典型的には、本発明の治療は、可能な限り長く、例えば上記で定義された特定の期間、治療された患者にとって、いかなる適切なスコアリングシステムにおいても、例えば修正メイヨースコアにおいて悪化しないという結果につながる。
【0079】
典型的には、本発明の治療は、修正メイヨースコアによって決定されるように、活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃を予防する。
【0080】
潰瘍性大腸炎の治療で提示される典型的な臨床状況は、疾患の急性/活動期に苦しんでいる患者である。臨床医の仕事は、まず急性/活動期に対処することであり、また、活動性潰瘍性大腸炎および/またはそれに関連する症状の再発またはそれらへの再燃を可能な限り長く予防する体制を確立することである。
【0081】
従って、典型的には、本発明に従って治療される患者は、以前に潰瘍性大腸炎の治療を受けたことがある。好ましくは、患者は、以前に潰瘍性大腸炎の治療に成功していた、すなわち、本発明に従って治療される患者は、典型的にはもはや潰瘍性大腸炎の活動期に苦しんでいない、すなわち、患者は寛解または回復の状態にある。典型的には、この以前の治療は、活動性潰瘍性大腸炎を治療する、すなわち活動性潰瘍性大腸炎の寛解を誘導するのに有効な1つ以上の治療剤の投与を含む。特定の実施態様においては、1つ以上の治療剤は、オリゴヌクレオチド、特にコビトリモドを含む。他の実施態様においては、1つ以上の治療剤は、オリゴヌクレオチド以外のものであり、例えば、本明細書で定義される潰瘍性大腸炎の治療のための1つ以上の追加の治療剤を含んでもよく、例えば、免疫調節薬、抗インテグリン療法薬、TNF-α阻害剤、免疫抑制薬、JAK阻害剤、または潰瘍性大腸炎を治療するための他の適切な薬物から選択されてもよい。
【0082】
適切な薬物の特定の例は、アミノサリチレート(5-ASA[メサラミンとしても知られる]、スルファサラジン、オルサラジンおよびバルサラジドなどの)、GCS(プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンおよびブデソニドなどの)、アザチオプリン(AZA)、6-メルカプトプリン(6-MP)、タクロリムス、メトトレキサート、シクロスポリン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブ(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTIVIO(登録商標))、SMAD7アンチセンスオリゴヌクレオチド(モンゲルセン(Mongersen))、天然IFN-β、デコルチン、トファシチニブ(XELJANZ(登録商標))、エトロリズマブ、オザニモド、SHP647、フィルゴチニブ、ミリキズマブ、アプレミラスト(OTEZLA(登録商標))、エストラシモド、AJM300、ウパダシチニブ、リサンキズマブ、BI655130、PF-06700841、PF-06651600およびIMU-83、並びにそれらの同等物を含む。
【0083】
本発明に従って治療される対象は、典型的には治療に対して不応性であるまたは不十分に反応するまたは不寛容である。本発明に従って治療される対象は、典型的には抗炎症療法に対して不応性であるまたは不十分に反応するまたは不寛容である。すなわち、典型的には、対象は、抗炎症療法、好ましくは潰瘍性大腸炎のための抗炎症療法を以前に受けたことがあるか、または現在受けている。潰瘍性大腸炎のための抗炎症療法は本明細書で論じられており、典型的にはGCS、TNF-α阻害剤、抗インテグリン療法薬、アミノサリチレートおよびJAK阻害剤を含み、それらの特定の例は上記されている。
【0084】
不応性疾患または治療に不十分に反応する疾患は、典型的には少なくとも1つのコースの治療歴、例えば抗炎症療法にもかかわらず、活動性疾患の徴候および症状が持続する疾患である。
【0085】
治療、例えば抗炎症療法に対する不寛容は、治療が、許容されない、例えば典型的には治療の中止につながる副作用を対象に引き起こしたことを意味する。
【0086】
典型的には、対象は、潰瘍性大腸炎のためのアミノサリチレート、好ましくは5-ASA療法を以前に受けたことがあるか、または現在受けている。
【0087】
典型的には、対象は、潰瘍性大腸炎のための経口、直腸、または非経口の糖質コルチコイド(GCS)、好ましくは経口GCS療法を以前に受けたことがあるか、または現在受けている。
【0088】
典型的には、対象は、潰瘍性大腸炎のためのTNF-α阻害剤療法薬を以前に受けたことがあるか、または現在受けている。
【0089】
典型的には、対象は、潰瘍性大腸炎のためのベドリズマブなどの抗インテグリン療法を以前に受けたことがあるか、または現在受けている。
【0090】
典型的には、抗炎症療法に対して不応性であるまたは不十分に反応するまたは不寛容である対象は、経口、直腸、または非経口GCS治療に対する不十分な反応、または反応の喪失(すなわち、不応性である)または不寛容を示すかまたは以前に示したことがある(以前の副作用によるGCS治療なしを含む)。
【0091】
典型的には、抗炎症療法に対して不応性であるまたは不十分に反応するまたは不寛容である対象は、GCS治療に対する不十分な反応(例えば、ステロイド不応性)、またはステロイド依存性、または反応の喪失、または不寛容の病歴または現在の状態を有する。ステロイド/GCSは、典型的には潰瘍性大腸炎を治療する過程で対象に受けられているであろう。
【0092】
ステロイド不応性は、典型的には経口でプレドニゾン1日40-60mgに相当する用量または4週間の期間にわたる静脈内(IV)で最大0.75mg/Kg/日のプレドニゾロンを含む少なくとも1つの誘導レジメンの歴史にもかかわらず、持続的に活動性の潰瘍性大腸炎の徴候および症状を示す患者を指す。
【0093】
ステロイド依存は、典型的にはステロイドを開始してから3ヶ月以内に活動性潰瘍性大腸炎が再発することなくステロイドをプレドニゾロン10mg/dと同等以下に減らすことができない、またはステロイドを中止してから3ヶ月以内に再燃する患者を指す。
【0094】
GCS治療の不寛容は、典型的には患者がGCS治療後にクッシング症候群、骨減少症/骨粗鬆症、高血糖症、不眠症、感染症または患者が許容できない他の副作用を経験したことを意味する。
【0095】
典型的には、患者は、少なくとも1つの免疫調節剤、免疫抑制療法、TNF-α阻害剤または抗インテグリンに対する不十分な反応、反応の喪失、または不寛容を示すか、または以前に示したことがある。これらの薬剤は、典型的には潰瘍性大腸炎を治療するために患者に投与されているであろう。
【0096】
免疫調節剤に対する不十分な反応、または反応の喪失は、典型的には経口アザチオプリン(≧1.5mg/kg)または6-メルカプトプリン(≧0.75mg/kg)の少なくとも1つの8週間レジメンなどの免疫調節薬での以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続することを意味する。
【0097】
免疫調節剤に対する不寛容は、典型的には対象が免疫調節剤を受けた後、悪心/嘔吐、腹痛、膵炎、肝機能検査(LFT)異常、リンパ球減少症、チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子変異、または感染症を経験したことを意味する。
【0098】
TNF-α阻害剤に対する不十分な反応、または反応の喪失は、インフリキシマブ(5mg/kg(IV)、少なくとも2週間間隔で2用量);ゴリムマブ(200/100mg(SC)、少なくとも2週間間隔で2用量);またはアダリムマブ(160/80mg(SC)、少なくとも2週間間隔で2用量)の少なくとも1つの4週間の誘導レジメン(または現在のラベルに従って推奨される用量)などのTNF-α阻害剤での以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続すること;または以前の臨床的利益に続く維持投与中の症状の再発を意味する。
【0099】
TNF-α阻害剤に対する不寛容は、TNF-α阻害剤を受けた後の注入関連反応、脱髄、うっ血性心不全、感染症、発疹または上記の他の副作用リストを意味する。
【0100】
抗インテグリンに対する不十分な反応、または反応の喪失は、ベドリズマブ300mg(IV)の少なくとも10週間のレジメンなどの、または現在のラベルで推奨されているような抗インテグリンでの以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続すること、または以前の臨床的利益に続く維持投与中の症状の再発を意味する。
【0101】
特定の実施態様においては、患者は、以前にオリゴヌクレオチドを使用して活動性潰瘍性大腸炎の治療をされたことがあり、その後、オリゴヌクレオチドはまた、その再発/再燃を予防するために使用される。従って、本発明はまた、オリゴヌクレオチドを使用する活動性潰瘍性大腸炎の以前の治療後の患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃の予防における使用のための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチド、特にコビトリモドを提供する。そのような実施態様においては、寛解を誘導するため、および活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃を予防するために投与されるオリゴヌクレオチドの投与量は、同じであっても異なっていてもよい。
【0102】
典型的には、本発明に従って治療される患者は、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃または該活動期の再発にかかりやすい。
【0103】
この薬は、活動性潰瘍性大腸炎の再発または該大腸炎への再燃にかかりやすい患者の継続的な治療に特に有用である。上記明細書中のオリゴヌクレオチドは、活動性潰瘍性大腸炎に関連する症状の再発または該症状への再燃を予防するため、および/または患者の状態を改善するための維持療法として使用することができる。
【0104】
典型的には、対象は、左側潰瘍性大腸炎、すなわち、直腸S状結腸炎を含む遠位大腸炎と診断されている。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、複数の連結された個々のヌクレオシド単位から形成されるポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAもしくはcDNA、プラスミド、ベクター、または細菌DNAを含む既存の核酸源から得ることができるが、好ましくは合成法によって生成される。ヌクレオシド残基は、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合することができる。そのようなヌクレオシド間結合は、天然のヌクレオシド間ホスホジエステル結合、またはホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホルアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオシド間結合などの、しかしこれらに限定されない実際に修飾されたヌクレオシド間を、限定されることなく含む。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、1つ以上の立体特異的ヌクレオシド間結合(例えば、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル結合)を有するポリヌクレオシドを包含する。本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」および「ジヌクレオチド」は、結合がリン酸基を含むかどうかにかかわらず、任意のそのようなヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオシドおよびジヌクレオシドを含むことが明確に意図される。特定の好ましい実施態様においては、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、もしくはホスホロジチオエート結合、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0106】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、タンパク質基、親油性基、挿入剤、ジアミン、葉酸、コレステロールおよびアダマンタンを含むがこれらに限定されない追加の置換基を有するポリヌクレオシドを包含する。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックされた核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを有する骨格セクションを有するオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない、任意の他のポリマー含有核酸塩基を包含する。アルキルリンカーは、分岐または非分岐、置換または非置換、およびキラル的に純粋またはラセミ混合物であってもよい。
【0107】
本発明のオリゴヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、またはそれらの混合物を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「修飾ヌクレオシド」は、修飾複素環式塩基、修飾糖部分、またはそれらの組み合わせを含むヌクレオシドである。いくつかの実施態様においては、修飾されたヌクレオシドは、本明細書に記載されているように、非天然のピリミジンまたはプリンヌクレオシドである。いくつかの実施態様においては、修飾ヌクレオシドは、2’-置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシドまたは2’-デオキシ-2’-置換-アラビノシドである。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリッドオリゴヌクレオチド」は、複数のタイプのヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドである。
【0109】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」は、ハイブリッドおよびキメラオリゴヌクレオチドを含む。「キメラオリゴヌクレオチド」は、その配列構造内に複数のタイプのヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドである。そのようなキメラオリゴヌクレオチドの1つの好ましい例は、ホスホロチオエート、ホスホジエステルまたはホスホロジチオエート領域、およびアルキルホスホネートまたはアルキルホスホノチオエート結合などの非イオン性結合を含むキメラオリゴヌクレオチドである(US5635377およびUS5366878)。
【0110】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」はまた、環状化された変異体および環状オリゴヌクレオチドを含む。
【0111】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの天然に生じるホスホジエステル、または1つの修飾ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエートヌクレオシド間結合を含むが、しかしながら、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、N-メチルヒドロキシルアミン、2’OMe(2’位のオキシメチル基)、カーボネート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホルアミデート、特に一級アミノホスホルアミデート、N3ホスホルアミデートおよびN5ホスホルアミデート、並びに立体特異的結合(例えば、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル結合)を含むがこれらに限定されない好ましい結合または実際に骨格修飾もまた想定される。
【0112】
ヌクレオシドの糖部分は、非天然に生じる糖部分であり得る。本明細書において、「天然に生じる糖部分」は、核酸の一部として天然に生じる糖部分、例えば、リボースおよび2’-デオキシリボースであり、「非天然に生じる糖部分」は、核酸の一部として天然に生じないが、例えば、ヘキソースに限定されないオリゴヌクレオチドの骨格に使用することができる任意の糖である。アラビノースおよびアラビノース誘導体は、好ましい糖部分の例である。
【0113】
修飾または置換オリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、およびヌクレアーゼ存在下での安定性の増大などの望ましい特性のために、天然型よりもしばしば好まれる。オリゴヌクレオチドは、好ましくは約8と約40との間、最も好ましくは約8と約20との間であるが、通常は10個を超え100個以上までのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される。正確なサイズは、次にオリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用に依存する多くの要因に依存するであろう。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、またはそれらの組み合わせを含む任意の方法で生成されてもよい。
【0114】
本発明における使用のためのオリゴヌクレオチドは、配列5’-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3’(配列番号2)を含む。典型的には、少なくとも1つのCGジヌクレオチドはメチル化されていない。
【0115】
典型的には、前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格修飾を有する。骨格修飾は、典型的にはホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。
【0116】
ホスホロチオエート結合は、配列、例えばCGジヌクレオチドがメチル化されていない配列5’-GACAGTTCGTCCATC-3’(配列番号1)中のアスタリスク(*)で説明できる。
【0117】
好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは、CGジヌクレオチドがメチル化されていない配列5’-GACAGTTCGTCCATC-3’(配列番号1)を有する。すなわち、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。
【0118】
本発明の治療は、典型的には可能な限り長く、例えば本明細書で定義される期間、再発/再燃を予防するために、患者に前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を与えることを含む。複数の用量は、典型的にはオリゴヌクレオチドの予防/保護効果を可能な限り延長するように間隔を置いて配置され、好ましくは、個々の用量は、一定の間隔で投与される。
【0119】
典型的には、個々の投与の間の間隔は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも4週間または少なくとも6週間または少なくとも8週間である。典型的には、個々の投与の間の間隔は、最大12ヶ月、好ましくは最大6ヶ月、より好ましくは最大12週間である。誤解を避けるために、「間隔」により、個々の投与の間の期間が意味される。すなわち、(例えば)4週間の間隔の場合、それぞれの個々の用量の投与間の期間は4週間である。
【0120】
典型的には、個々の投与の間の間隔は、1週間から12ヶ月、好ましくは4週間から6ヶ月、より好ましくは4週間から12週間、例えば4週間から8週間または8週間から12週間である。
【0121】
典型的には、個々の投与の間の間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、12週間、6ヶ月または12ヶ月である。好ましくは、個々の投与の間の間隔は、1週間、4週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間または8週間である。すなわち、本発明の好ましい一面においては、個々の投与の間の間隔は4週間である。本発明の別の好ましい一面においては、個々の投与の間の間隔は8週間である。
【0122】
上記の投与体制、すなわち、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの個々の用量を患者に投与する体制は、それが継続的な維持療法を提供するようにある期間継続される。潰瘍性大腸炎が治癒できない慢性状態であることを考慮すると、これは実際には、患者は一般に、本明細書に記載の体制を長期間、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、例えば少なくとも5年または10年間受けるであろうことを意味する。実際には、一部の患者は、必要な限り(例えば、医師によって決定されるように)または無期限に、本明細書に記載される体制で投与される必要があるかもしれない。
【0123】
典型的には、上記で概説された投与体制で投与される個々の用量は、10mgから350mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくは20から300mgの前記オリゴヌクレオチドである。典型的には、同じ用量のオリゴヌクレオチドがそれぞれの個々の用量/投与ごとに投与されるが、異なる用量が使用されてもよい。
【0124】
前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量は、例えば、10から50mg、好ましくは15から45mg、より好ましくは20から40mg、さらにより好ましくは25から35mg、さらにより好ましくは26から34mg、さらにより好ましくは27から33mg、さらにより好ましくは28から32mg、さらにより好ましくは29から31mg、特には約30mgであってもよい。
【0125】
前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量は、例えば、100mgから150mg、好ましくは100mgを超えて150mgまで、より好ましくは101mgから150mg、さらにより好ましくは105mgから145mg、さらにより好ましくは110から140、さらにより好ましくは115から135、さらにより好ましくは120から130、さらにより好ましくは121から129、さらにより好ましくは122から128、さらにより好ましくは123から127、さらにより好ましくは124から126mg、特には約125mgであってもよい
【0126】
あるいは、前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量は、150mgから350mg、好ましくは175mgから325mg、より好ましくは200mgから300mg、さらにより好ましくは210から290、さらにより好ましくは220から280、さらにより好ましくは230から270、さらにより好ましくは240から260、さらにより好ましくは245から255、さらにより好ましくは249から251mg、特には約250mgであってもよい。
【0127】
本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約30mgであり、患者に投与される個々の用量の間の間隔は1週間、4週間、6週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間または8週間である。すなわち、本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の投与量は約30mgであり、それらの個々の用量の間の間隔は4週間である。本発明の別の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約30mgであり、個々の用量の間の間隔は8週間である。これらの体制は、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年もしくは2年間、例えば少なくとも5年もしくは10年間または無期限に継続される
【0128】
本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約125mgであり、患者に投与される個々の用量の間の間隔は1週間、4週間、6週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間または8週間である。すなわち、本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約125mgであり、それらの個々の用量の間の間隔は4週間である。本発明の別の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約125mgであり、個々の用量の間の間隔は8週間である。これらの体制は、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年もしくは2年間、例えば少なくとも5年もしくは10年間または無期限に継続される。
【0129】
本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約250mgであり、患者に投与される個々の用量の間の間隔は1週間、4週間、6週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間、8週間または12週間、より好ましくは4週間または8週間である。すなわち、本発明の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約250mgであり、それらの個々の用量の間隔は4週間である。本発明の別の好ましい一面においては、患者は、一定の間隔で前記オリゴヌクレオチドの複数の用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約250mgであり、個々の投与の間隔は8週間である。これらの体制は、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年もしくは2年間、例えば少なくとも5年もしくは10年間または無期限に継続される。
【0130】
活性剤の投与量の文脈において、本明細書で使用される「約」は、+/-10%、典型的には+/-5%、好ましくは+/-1%を意味する。
【0131】
上記の投与体制において、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量(本明細書で指定される量の)は、特定の週数の間隔をおいて複数の機会に患者に投与される。これは、指定された期間で分けられた指定された用量/投与の間に、患者がいかなる追加のオリゴヌクレオチドも受けないことを意味する。
【0132】
本明細書で使用される場合、ある週数離れた期間への言及は、特定の実施態様においては正確にその週数離れた用量の投与を意味し、例えば4週間は正確に28日を意味するであろう。しかしながら、これからの小さな変形は依然として本発明の範囲内にあることが認められるであろう。そのような小さな変形は、例えば患者の病気または薬物の利用不可により避けられないかもしれない。すなわち、本明細書で使用される場合、ある週数離れた期間は、週数+/-3日、好ましくは+/-2日、より好ましくは+/-1日を意味する。すなわち、この文脈において、「4週間離れた」は、25-31日離れた、典型的には26-30日離れた、または27-29日離れた投与を意味する。
【0133】
本発明における使用のための薬物は、以下でより詳細に説明されるように、適応症のための単剤療法治療として、または適応症のための補助療法として他の薬物と共に投与されてもよい。補助(または「アドオン」)療法の場合、本発明における使用のための薬物は、他の薬物と同時に、別々に、または連続して、例えば、固定用量の組み合わせでまたは別々の用量で投与されてもよい。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「アドオン」は、現在の療法または薬物体制を中止することなく、現在の療法または薬物体制に加えて前記オリゴヌクレオチドを投与することを指す。
【0135】
すなわち、オリゴヌクレオチドは、単剤療法として、または活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防のための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。典型的には、オリゴヌクレオチドは、単剤療法として、または抗炎症薬、免疫調節薬、抗インテグリン療法薬、TNF-α阻害剤、免疫抑制薬、JAK阻害剤または潰瘍性大腸炎を治療するための他の適切な薬物または潰瘍性大腸炎を治療するための他の適切な薬物から選択される活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防のための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。前記オリゴヌクレオチドと組み合わせての使用に適したそのような薬物の例は、アミノサリチレート(5-ASA[メサラミンとしても知られる]、スルファサラジン、オルサラジンおよびバルサラジドなどの)、GCS(プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンおよびブデソニドなどの)、アザチオプリン(AZA)、6-メルカプトプリン(6-MP)、タクロリムス、メトトレキサート、シクロスポリン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブ(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、SMAD7アンチセンスオリゴヌクレオチド(モンゲルセン)、天然IFN-β、デコルチン、トファシチニブ(XELJANZ(登録商標))、エトロリズマブ、オザニモド、SHP647、フィルゴチニブ、ミリキズマブ、アプレミラスト(OTEZLA(登録商標))、エストラシモド、AJM300、ウパダシチニブ、リサンキズマブ、BI655130、PF-06700841、PF-06651600およびIMU-83、並びにそれらの同等物を含むが、それらに限定されない。
【0136】
本発明の目的のために、用語「組み合わせて」および「アドオン」は、同じ患者における同じ疾患を治療する過程でを意味し、オリゴヌクレオチドおよび1つ以上の追加の治療剤を、同時投与、並びに最大数ヶ月離れた時間的に間隔をあけた順序を含む任意の順序で投与することを含む。
【0137】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドは、粘膜に局所的になどの局所的に投与される。
【0138】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドは結腸内に投与される。結腸内投与は、典型的には直腸に行われる。結腸内投与は、好ましくは浣腸またはカテーテルを使用して行われる。結腸内投与は、好ましくは、浣腸による(すなわち、直腸浣腸による)投与を含む。結腸内投与は、例えば、結腸内視鏡生検チャネルを通して挿入された噴霧カテーテルまたは他の適切な医療機器の助けを借りて結腸内視鏡検査中に行われる局所的なものであってもよい。前記オリゴヌクレオチドは、下行結腸の上部または結腸の横断領域に送達されてもよい;しかしながら、適切な場合は他の地域も可能である。胃腸管の他の部分への局所投与も可能である。さらにこの一面の別の実施態様においては、前記オリゴヌクレオチドは、吸入、鼻腔内、非経口、経口、皮内、皮下、膣および直腸投与などのしかしこれらに限定されない任意の適切な投与経路によって投与することができる。さらに、さらに、特定の実施態様においては、前記オリゴヌクレオチドの全身投与が使用されてもよい。
【0139】
オリゴヌクレオチドは、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物の形態で投与されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、水、安定化剤、可溶化剤、脂質、または医薬製剤における使用のための当技術分野で周知の他の材料を包含する。担体の特性は、特定の用途の投与経路に依存するであろうことが理解されよう。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、免疫調節オリゴヌクレオチドの有効性を妨害せず、細胞、細胞培養物、組織、または生命体などの生物学的システムと適合性がある材料を指す。好ましくは、生物学的システムは、脊椎動物などの生体である。
【0141】
典型的には、組成物は、液体担体または泡中のオリゴヌクレオチドの溶液である。通常は、組成物は、液体担体中のオリゴヌクレオチドの溶液である。
【0142】
典型的には、担体は、水、好ましくは滅菌水である。すなわち、典型的には組成物は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドおよび水を含む。
【0143】
好ましくは、担体は水であり、オリゴヌクレオチド(組成物の形態の)は、例えば直腸浣腸として結腸内に投与される。
【0144】
オリゴヌクレオチドは、水中で有利に安定であることが見い出されており、従って、実質的に本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドおよび水からなる組成物としてオリゴヌクレオチドを投与することが可能である。組成物は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドおよび水からなってもよい。
【0145】
実質的に成分からなる組成物は、他の成分が組成物の本質的な特性に実質的に影響しないという条件で、それが実質的に構成される成分並びに他の成分を含む組成物を指す。典型的には、実質的に特定の成分からなる組成物は、95重量%以上(組成物の総重量に対して)のそれらの成分または99重量%以上(組成物の総重量に対して)のそれらの成分を含むであろう。
【0146】
すなわち、実質的に本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドおよび水からなる組成物は、95重量%以上のオリゴヌクレオチドおよび水(組成物の総重量に対して)または99重量%以上のオリゴヌクレオチドおよび水(組成物の総重量に対して)を含む。
【0147】
医薬組成物中のオリゴヌクレオチドの濃度は、投与されるオリゴヌクレオチドの投与量を含むいくつかの要因に依存して変化するであろう。溶液である組成物中のオリゴヌクレオチドの典型的な濃度は、0.01mg/mlから10mg/ml、いくつかの場合には0.1mg/mlから6mg/ml、いくつかの場合には0.1mg/mlから1mg/ml、いくつかの場合には2から3mg/ml、いくつかの場合には4から6mg/mlである。
【0148】
本発明はまた、本明細書で定義される患者における本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0149】
上記で定義された使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴はまた、使用のための組成物の好ましい特徴である。
【0150】
本発明はまた、本明細書で定義される対象における、本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のための薬剤の製造における、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチド、または本明細書で定義される医薬組成物の使用を提供する。
【0151】
上記で定義された使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴はまた、オリゴヌクレオチドまたは組成物の使用のための好ましい特徴である。
【0152】
本発明はまた、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される組成物を前記対象に投与することを含む、本明細書で定義される対象において、本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防する方法を提供する。
【0153】
本発明はまた、本明細書で定義される患者における活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための薬剤の製造のための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0154】
上記で定義された使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴はまた、オリゴヌクレオチドの使用の好ましい特徴である。
【0155】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明する。
【実施例
【0156】
実施例1-臨床試験研究
このランダム化二重盲検プラセボ対照試験においては、中等度から重度の活動性UCの131人の患者がランダム化され、ベースラインと4週目に下部GI内視鏡検査中に局所的に投与される2回のオリゴヌクレオチド コビトリモド[30mg]またはプラセボの単回投与を受けた。主要評価項目は、12週目における臨床活動性(Rachmilewitz)指標[CAI]≦4として定義される臨床的寛解であった。副次的評価項目は、粘膜治癒および患者から報告された主要な結果の症候性寛解[便に血がなく、毎週の便頻度<35]を含んだ。
【0157】
適格な患者は、組み入れ前2週間以上の糖質コルチコイド[GCS][プレドニゾロン]同等物≧10mg/日]での治療にもかかわらず、臨床活動性指標[CAI]≧9および内視鏡的メイヨースコア≧2の中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎を有し、4週間以上のメサラジン≧2.4g/日、開始用量として少なくとも0.75mg/kgのGCS、3ヶ月以上のアザチオプリンまたはメルカプトプリン、および/またはTNF-α阻害剤の1つの適切な治療コースでの治療に失敗または不寛容であった成人であった。患者は、試験前にシクロスポリンまたはタクロリムスでの治療を試みていてもよかった。プラセボ群の4人の患者[9.3%]およびコビトリモド群の5人の患者[6.2%]は、研究開始前にシクロスポリンを使用していたが、研究中は使用しなかった。
【0158】
試験中、患者はスルファサラジン、アミノサリチレート、またはチオプリンを服用していることができ、安定した用量で経口GCSを服用しているべきである。試験中または登録前4週間のシクロスポリン、タクロリムスもしくはTNF-α阻害剤、または登録前2週間の抗生物質もしくは非ステロイド性抗炎症薬[NSAID]との併用療法は許可されなかった。劇症大腸炎の現在の診断、即時手術のしるし、活動性感染の兆候[温度≧38℃]、またはヘモグロビン<100g/Lを有する場合、患者は、除外された。追加の除外基準は、現在の非経口栄養、輸血、C.ディフィシル感染、現在または過去の結腸悪性腫瘍および/または異形成、主要臓器機能の臨床的に重大な欠陥、および登録の30日前までの治験療法の同時または以前の使用であった。妊娠しているまたは授乳している女性は除外された。
【0159】
適格な患者は、2:1の比率でランダム化され、便内容物のための適切な腸洗浄後に0週目と4週目に内視鏡検査を介してコビトリモド[30mg]を、または50mLの滅菌水で希釈された一致するプラセボ(matching placebo)の投与を受けた。適用は、内視鏡検査中に噴霧カテーテルを使用して、粘膜炎症部位の近位で、または広範囲の大腸炎の場合には結腸の横断面で行われた。患者は、投与後2時間横になったままでいるように求められた。患者は、1、4、8、12、22、および52週間後の訪問でフォローアップされた。0、4、および12週目に、患者は、内視鏡評価を受け、最も炎症を起こした粘膜領域から生検が行われた。ICON[テキサス、USA]は、ランダムに並べ替えられたブロックの方法を使用したコンピューター生成手順によってランダム化コードを作成した。経口GCS治療は、組み入れの少なくとも2週間前に開始された10mg以上の安定した1日用量で必須であった。ステロイドの漸減は、患者が臨床的寛解に達したとき、最も早くて12週目に、欧州クローン病および大腸炎組織[ECCO]ガイドラインに従って標準的な漸減スケジュールで行われた。
【0160】
評価項目
主要評価項目は、CAIスコア≦4であると定義された12週目の臨床的寛解の誘導であった。この尺度を使用した臨床的利益が以前の人道的使用(compassionate use)で観察されたため、この評価項目が選択された。副次的評価項目は、粘膜治癒[内視鏡メイヨーサブスコア≦1、内視鏡検査は一元的には読み取られない];1、4、8、22および52週での臨床的寛解;臨床的寛解および粘膜治癒;症候性寛解[便に血がなく、毎週の便頻度<35として定義される];単一の試験組織病理学者によって評価される4週目および12週目の組織学的Geboesスコア;結腸切除までの時間;並びに炎症性腸疾患質問票[IBDQ]および36項目の短い形式の調査[SF36]スコアに基づく生活の質を含んだ。事後的に、症候性寛解および粘膜治癒の両方を達成した対象の合計スコアが定義された。
【0161】
安全性評価
安全性および忍容性は、試験全体を通して評価された。安全性は、生命兆候、ECG結果、実験室変数(laboratory variables)、および有害事象[AE]報告によって評価された。患者は、いつでも自由に試験への参加を中止することができ、または治験責任医師の裁量で試験からはずされ得た。
【0162】
結果および結論
図1は、4週目での症候性寛解(血便および便頻度で証明される)の患者の割合を、8週目および12週目に同じ群の患者でその割合がどのように変化するかについての情報と共に示す。
【0163】
0週目に30mgのコビトリモドを投与された患者の32.1%は、4週目に症候性の寛解状態にあった(活性薬物とプラセボとの間で18.1%のデルタ)。上記で論じられたように、これらの患者は4週目に別の30mg用量のコビトリモドを投与された。8週目までに、患者の28.4%が寛解状態にあった(4週齢目の割合と比較して3.7%の減少)(活性薬物とプラセボとの間で16.8%のデルタ)。患者は、8週目にはコビトリモドのさらなる用量を投与されなかった。12週目までに、患者の23.5%が寛解状態にあった(8週目の割合と比較して4.9%の減少)(活性薬物とプラセボとの間で11.8%のデルタ)。
【0164】
これらの結果は、0週目のコビトリモドの用量による寛解の誘導後、患者が潰瘍性大腸炎の活動期に再燃する傾向があることを示す。しかしながら、患者が潰瘍性大腸炎の活動期に再燃する傾向は、プラセボ治療を受けた患者には当てはまらなかったことだがコビトリモドのさらなる用量の投与によって軽減される。これは、12週目と比較した8週目の結果から明らかである。8週目の患者は4週目(つまり4週間前)のコビトリモドのさらなる用量から恩恵を受けたため、より少ない患者が潰瘍性大腸炎の活動期に再燃する。対照的に、12週目では、患者は4週間前(すなわち8週目)にコビトリモドのさらなる用量を受けていないため、より多くの患者が潰瘍性大腸炎の活動期に再燃する。
【0165】
これらの結果から、活動性潰瘍性大腸炎から寛解している患者(例えば、コビトリモドの投与による寛解の誘導後)は、コビトリモドのさらなる用量が提供されない限り、潰瘍性大腸炎の活動期に再燃する傾向があると結論付けることができる。コビトリモドのこれらのさらなる用量は、患者を寛解状態に保ち、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃を予防するのに役立つ。従って、いったん寛解が誘導された後のコビトリモドの反復投与は、患者を寛解状態に維持し、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃を予防する。
【0166】
実施例2-人道的使用プログラムからの臨床データ
この実施例は、人道的使用プログラムの一環として収集された未公開の実験データに関連する。潰瘍性大腸炎の診断は、臨床的、内視鏡的および組織学的特徴に基づいて確立された。書面による同意が患者のために受け取られ、治療は関連する地域の倫理委員会によって承認された。
【0167】
患者は、5年前に潰瘍性大腸炎と最初に診断され、ステロイドおよび免疫抑制療法(GCS、インフリキシマブおよび天然IFN-β)に不応性となった49歳の男性であった。実験的な追加療法の形で、再燃は天然のインターフェロンベータ(フィブラフェロン)で4年間治療された。保険会社が支払い契約を更新しなかったため、この治療は停止されなければならなかった。2010年1月の重度の再燃は、アザチオプリンおよび5-ASAと組み合わせた高用量のステロイドで治療されたが成功しなかった。患者は、さらに1月末にインフリキシマブの1回用量を受けたが、これが2010年2月の敗血症を伴う重度のサルモネラ症に至った。インフリキシマブと組み合わせた高用量のステロイドでの治療は、2010年3月にCAIスコアを14から9に低下させるのにいくらかの効果があった。しかしながら、対象は依然として疾患の非常に活動性の状態にあった。
【0168】
従って、コビトリモドでの複数用量治療体制が考慮され、2010年3月26日に最初の用量が与えられ、4週間間隔で2回の追加用量が投与された。
【0169】
患者は、現在の療法へのアドオンとして、4週間間隔で50mLの滅菌水で希釈された30mgのコビトリモドの3回用量を受けた。薬物の適用は、結腸内視鏡検査中に結腸内視鏡生検チャネルを通して挿入された噴霧カテーテルの助けを借りて行われ、おおよそ下行結腸の上部または横断領域に送達された。1週間後、患者のCAIスコアは4ポイント低下し、ほぼ臨床的寛解に達した(図2を参照)。
【0170】
コビトリモドがもう2回投与されることになっている事実のため、医師は非常にゆっくりとしたステロイド漸減体制を開始することを決定した。2回目のコビトリモド点滴の時点である4週目に、患者はステロイドの漸減を続けながら完全寛解に達した。コビトリモドの最後の投与およびさらなるステロイドの漸減を受けながら、完全な臨床的寛解はさらなる2ヶ月間維持された。
【0171】
悪化の兆候(CAIスコアの増加)を受けて、2010年8月25日に開始されたコビトリモドの別の複数用量体制でこの再燃を治療することが決定された。今回は4週間以内に臨床的寛解に達し、8週目までに患者は再び2011年3月まで5ヶ月間維持された完全な臨床的寛解状態にあった(図2を参照)。
【0172】
図2は患者p12の治療経過を示す。描かれているのは、数ヶ月間の時間に対する大腸炎活動性指標[CAI]である。上の破線より上の値のCAIスコアは、患者が疾患において重度の発赤を有することを、下の破線より下の値のCAIスコアは患者が臨床的寛解の状態にあることを示す。数字のない実線は、1日あたりに与えられるデコルチンの量[mg]でのステロイド治療の経過を示す。灰色の矢印は投薬訪問(2010年3月26日、2010年4月28日、2010年5月26日、2010年8月25日、2010年9月22日、2010年10月19日)を示し、黒い矢印はCAIスコアが確立できた訪問(2010年4月1日、2010年5月5日、2010年5月19日、2010年6月23日、2010年7月12日、2010年9月1日、2010年10月25日、2010年11月24日、2011年3月9日)をおよび右側の灰色の矢印は、治療を行う医師が治療のフォローアップを行うために最後に全ての患者に連絡を取った2011年3月24日の状態を示す。
【0173】
図2のCAIスコアは、コビトリモドの初回用量後にいったん患者が寛解状態(CAI<4)になると、コビトリモドのさらなる反復投与が、患者を寛解状態に維持し、疾患の再燃を予防することを示す。患者p12の最初の複数用量体制では、コビトリモドの反復投与が、患者を3ヶ月間(5月、6月および7月)寛解状態に保った。同様に、患者p12の2回目の複数用量体制については、反復投与は、患者を5ヶ月超の間(2011年3月まで)寛解状態に保った。このデータから、コビトリモドのさらなる用量が一定の間隔で投与された場合、寛解が維持され得、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃が予防され得るであろうことが期待される。コビトリモドの投与がいったん停止されると、数ヶ月後に患者が活動性疾患状態に再燃したことは注目すべきことである。図2のデータは、コビトリモドの投与が維持された場合、CAIスコアが抑制され得、患者が寛解状態に維持され得るであろうことを示す。従って、いったん寛解が誘導されたときのコビトリモドの反復投与は、患者を寛解状態に維持し、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃を予防する。
【0174】
実施例3-慢性UCのDSSモデルでのマウス試験
この試験の目的は、慢性DSS誘発マウス大腸炎モデルにおける維持療法としてのコビトリモドの有効性を試験することであった。
【0175】
動物
37匹の雄のC57BL/6マウスが慢性DSS誘発大腸炎試験に登録され、試験前の5日間の安定化期間飼育された。全ての動物は、サニチップ寝具を有するHEPA換気ケージに収容された。濃縮のために、ドームおよび滅菌綿のスクラッチパッドが提供された。蛍光灯は12時間周期で提供された。温度および湿度は毎日監視され記録され、20-23℃の温度と30-70%の相対湿度に維持された。2018S 18%タンパク質げっ歯類維持食が自由に提供された。
【0176】
製剤
コビトリモドは、実験の開始時に、125μg/100μl(1.25μg/μl、用量1)または500μg/100μl(5μg/μl、用量2)のいずれかに生理食塩水中で希釈された。溶液は、等分され、実験期間中4℃で維持された。各投与日に、100μlがマウスに直腸投与された。FTY-720(S1P1受容体阻害剤)がdH2Oに溶解され、陽性対照の役割を果たした。30グラムの平均体重を使用して1mg/kgの用量で、化合物が調製され、100μLが各動物に毎日経口投与された。
【0177】
マウスでの500μgの用量は、ヒトでの125mgの用量とおおよそ同等である(「業界向けガイダンス-成人の健康ボランティアにおける治療法の初期臨床試験における最大安全開始用量の推定」、米国保健福祉省薬物評価および研究のための食品医薬品管理センター、2005年7月を参照)。マウスでの125μgの用量は、ヒトでの30mgの用量と広い意味で同等である。このマウスモデルで観察される結果は、125mgまたは30mgのコビトリモドの個々の用量で投与されたヒトで観察される効果を予測するものであると考えることができるであろう。
【0178】
DSS誘発慢性大腸炎の実験計画
9週齢のマウスが、オートクレーブ処理水に溶解した2%DSSを5日間自由に摂取し(群2-5、群ごとにn=8)、次の5日間はオートクレーブ処理した飲料水に切り替えられた。このサイクルが、DSS処置とオートクレーブ処理水との間で5日ごとに交互にして、合計30日の期間繰り返された。各5日間のDSS処置フェーズの間は、5日間のサイクルの3日目に新鮮な2%DSSが提供された。群1(n=5)は、試験全体を通してオートクレーブ処理水のみを自由に摂取した対照(ナイーブマウス)として役割を果たした。4日目に、群3(n=8)のマウスが陽性対照(群3、n=8)としてFTY-720を経口投与され、試験の終了まで毎日の用量が続けられた。また、試験4日目から、動物は、ビヒクル(群2、n=6)、または2つの異なる用量のコビトリモド(群4および群5、群あたりn=8)が直腸内投与された。群2については、群2の2匹のマウスがDSS処置に期待どおりに反応しなかった、すなわち、使用したUCモデルと互換性がなく、分析から除外されたため、n=6であった。群2、4、および5は、8、12、16、20、24、および28日目に再度投与された。
【0179】
【表4】
【0180】
臨床的および組織学的観察
体重、便の硬さ(stool consistency)、便の血液、体調スコア、および身体の健康が投与日、および0日目から試験30日目の終了までの各投与日の2日後に記録された。動物は、スコアリング/投与日に、および20%を超える体重減少が観察された場合は毎日身体の健康における変化が観察された。治療前の体重の20%超を失った動物が監視され、72時間食餌/ハイドロゲルが与えられた。長期にわたる体重減少、または疾患による痛みおよび苦痛の兆候のために動物が終了することはなかった。
【0181】
試験は、30日目に終了し、全ての動物について剖検が行われた。脾臓が重さを量られ、次いで廃棄された。結腸長さと重量が記録され、各動物について重量/長さの比率が計算された。動物の各群(対照群および治療群の両方-図3を参照)から1つの代表的な結腸の写真が撮られた。統計分析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して行われた。
【0182】
結果
ヒトにおけるIBDの長期にわたるおよび再燃する性質をより正確に反映する慢性型の大腸炎は、維持療法における薬物の有効性を評価するのにより適している。慢性実験マウスモデルにおいては、動物は長期間DSS処置を受ける。経口で受けたDSSは、上皮細胞の死を引き起こし、バリア機能を損い、その後の炎症を引き起こす。従って、通常、飲料水中の低い割合のDSSが慢性モデルでは使用される。
【0183】
本慢性実験マウスモデルにおいては、2%のDSSのみが使用され、DSS処置およびオートクレーブ処理水は5日ごとに交互に行われた。結果として、観察された臨床症状は非常に軽度であった。マウスは試験を通して最大で5%の体重を失い、従って臨床評価項目における薬物の効果を区別することは困難である。しかしながら、動物が安楽死させられた後に結腸長さを測定したときに、能動的治療とプラセボ治療との間の最も明白な違いが明らかになった。結腸の長さの減少は、IBDの基本的な兆候である。結腸の長さがDSS誘発大腸炎の重症度に逆リンクすることが、クーパーらによって報告された(H S Cooper、S N Murthy、R S Shah、D J Sedergran、デキストラン硫酸ナトリウム実験マウス大腸炎の臨床病理学的研究.実験室調査(Laboratory investigation).1993、Vol.69(2)、p.238-249)。効果的な治療がなければ、結腸長さは減少し、相対的な結腸の重量/長さの比率の有意な増加が、対照動物と比較してDSS処置された動物で観察される。
【0184】
本試験においては、125μg用量のコビトリモドでの治療が、DSSの結腸短縮効果を有意に減少させた(図3、4、および5を参照)。500μg用量のコビトリモドでの治療もDSSの結腸短縮効果を減少させた。これは、コビトリモドが慢性UCモデルにおけるDSSの炎症作用を軽減できることを示す。特に、コビトリモドの反復投与は、DSSへの長期曝露後の結腸短縮を軽減する(すなわち、より健康な結腸長さを維持する)ことができた。結腸の重量/長さの比率は、ナイーブ動物と比較してDSS処置された動物で有意に増加した(図5)。しかしながら、コビトリモドの両方の用量での治療とも、重量/長さの比率を減少させ(図5)、これはまたコビトリモドが炎症の予防において有効であることを示す。
【0185】
これらの結果は、コビトリモドがDSSによって引き起こされる症状の初期治療を提供できるだけでなく、コビトリモドを受けたマウスと受けなかったマウスとの間の結腸における物理的差異によって示されるように、炎症を継続的に抑制する長期療法としても作用できることを示す。すなわち、コビトリモドは、患者を寛解状態に保ち、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃を予防するために使用することができる。従って、いったん寛解が誘導されたときのコビトリモドの反復投与は、患者を寛解状態に維持し、潰瘍性大腸炎の活動期への再燃を予防する。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022507493000001.app
【国際調査報告】