(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ヒマワリ種子からタンパク質調製物を製造する方法及びそれにより製造されたタンパク質調製物
(51)【国際特許分類】
A23J 1/14 20060101AFI20220111BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20220111BHJP
【FI】
A23J1/14
A23K10/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526485
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019081328
(87)【国際公開番号】W WO2020099565
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】102018128667.8
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイヤー ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】シュテブラー アンドレアス
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150AB20
2B150BA01
2B150BC06
2B150BD06
2B150BD10
2B150BE01
2B150CA22
(57)【要約】
ヒマワリ種子からタンパク質調製物を製造する方法において、剥殻され脱油されたヒマワリの種由来のタンパク質含有粉末、好ましくは上記粉末中のタンパク質含量に対する15質量%超のpH6での水中のタンパク質可溶性及び/又は25質量%超のpH7での水中のタンパク質可溶性を有するタンパク質含有粉末を、4を超えて9未満のpH値で水による少なくとも1回の抽出工程に供することで、抽出物として液相が得られ、抽残物として固体に富む相が得られる。抽出工程の前に及び/又はその間に、水中の酸素濃度を7mg/l未満の値に減少させ、及び/又は酸化防止作用を有する成分を水に添加することによって酸化活性を低下させる。抽出物と抽残物との分離の後に、抽出物を濃縮及び/又は乾燥させて、高いタンパク質含量を有するタンパク質調製物を得る。この方法によって、75質量%を超えるタンパク質含量を有する品質的に良質で官能的に魅力的な明色のタンパク質調製物を取得することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒマワリ種子からタンパク質調製物を製造する方法であって、少なくとも以下の工程:
剥殻され脱油されたヒマワリの種由来の、
10質量%未満の殻含量、
8質量%未満の含油量、
35質量%超のタンパク質含量、
を有するタンパク質含有粉末を準備する工程と、
前記タンパク質含有粉末について4を超えて9未満のpH値で水により少なくとも1回又は複数回の抽出工程を実施した後に、抽出物として液相を得て、抽残物として固体に富む相を得る工程と、
前記抽出物と前記抽残物とを分離する工程と、
前記抽出物を濃縮及び/又は乾燥させ、前記抽残物を乾燥させる工程と、
を含み、ここで、
前記1回又は複数回の抽出工程の前に及び/又はその間に、前記水中の酸素濃度を7mg/l未満の値に減少させ、及び/又は酸化防止作用を有する成分を前記水に添加することによって酸化活性を低下させ、及び/又は還元作用を有する成分を添加する、方法。
【請求項2】
前記タンパク質含有粉末は、該粉末中のタンパク質含量に対する15質量%を上回るpH6での水中のタンパク質可溶性を有し、及び/又は25質量%を上回るpH7での水中のタンパク質可溶性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水中の酸素濃度の減少のために、前記1回又は複数回の抽出工程を200hPa未満に低減された空気圧で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水中の酸素濃度の減少のために、前記1回又は複数回の抽出工程の前に及び/又はその間に90体積%を上回る濃度を有する窒素、二酸化炭素、アルゴン若しくは別の不活性ガスを前記水中に吹き込む又は前記水の表面と接触させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水中の酸素濃度を、超音波での処理によって減少させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水中の酸素濃度の減少のために、前記水の温度を、20℃を上回る値に調整することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1回又は複数回の抽出工程の前に、前記タンパク質に富む粉末の酸素含量を、真空によって又は二酸化炭素若しくは不活性ガスを吹き込むことによって減少させることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質に富む粉末の酸素含量の減少は、該タンパク質に富む粉末中で50hPa未満の酸素分圧になるまで行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1回の抽出工程又は前記複数回の抽出工程のうちの少なくとも1回は、8未満のpH値で実施されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分離された抽出物の濃縮は、限外濾過及び/又は透析濾過及び/又は沈殿によって行われることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末を水による複数回の抽出工程に供し、ここで、前記抽出工程のうちの少なくとも1回は5.5から7の間のpH値で実施され、引き続き、前記抽出工程のその他は7.5から9の間のpH値で実施されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質含有粉末を前記抽出前に粉砕して、粒子の90%の質量割合が100μm未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布を得ることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質含有粉末を前記抽出前に粉砕して、粒子の90%の質量割合が100μmから2500μmの間の粒子サイズを有する粒子サイズ分布を得ることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記準備されたタンパク質含有粉末は、脱油に際して使用された溶剤の残留含量を有し、前記残留含量は0.001質量%から0.4質量%の間の範囲内であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ヒマワリ種子由来のタンパク質調製物であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により、前記抽出物の濃縮及び/又は乾燥によって得られる又は得ることができ、かつ、
75質量%を超えるタンパク質含量と、
70を超えるL
*a
*b
*色空間からのL
*値を有する明色の光学的外観と、
200ml(油)/g(タンパク質)を超える乳化能と、
前記調製物中のタンパク質含量に対する10質量%を超えるpH7での水中のタンパク質可溶性と、
を有する、タンパク質調製物。
【請求項16】
前記タンパク質調製物は、1mg/kgから1000mg/kgの間の割合の添加された酸化防止作用を有する成分及び/又は還元作用を有する成分を有することを特徴とする、請求項15に記載のタンパク質調製物。
【請求項17】
ヒマワリ種子由来のタンパク質調製物であって、水性抽残物の乾燥によって得られ、かつ、
25質量%を超える、有利には55質量%未満、特に有利には50質量%未満のタンパク質含量を有し、
70を超えるL
*a
*b
*色空間からのL
*値を有する明色の光学的外観と、
250ml(油)/g(タンパク質)を超える乳化能と、
前記調製物中のタンパク質含量に対する5質量%を超えるpH7での水中のタンパク質可溶性と、
乾燥された抽残物1g当たり1gを上回る水分結合と、
10質量%未満、有利には2質量%未満の殻含量と、
を有する、タンパク質調製物。
【請求項18】
前記タンパク質調製物は、50mg/kg未満、特に有利には10mg/kg未満の有機溶剤の残留含量を有することを特徴とする、請求項17に記載のタンパク質調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒマワリの種のような種子から、特に食品、ペットフード、化粧品及び工業製品用のタンパク質添加物としての機能性タンパク質調製物を取得する方法並びに該方法により製造されたタンパク質調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業地域及び資源がより一層乏しくなっているという背景から、植物性タンパク質調製物は人間の食糧のため、そして動物飼料で使用するためにますます重要性を増している。良質な食品及び飼料に対する需要の高まりから、簡単かつ廉価に提供され得る栄養生理学的及び技術機能的に最適化されたタンパク質調製物の必要性が高まっている。
【0003】
食品用タンパク質及び飼料用タンパク質のための廉価な供給源は、ヒマワリ油の採油から出る圧搾残渣及び抽出残渣である。ヒマワリ種子は主に暗色の着色を伴う固い殻と油を含む果肉とを特徴としている。これらの原料では採油の前に殻を分離することが可能であるが、殻の完全な又は広範な分離は、搾油における収率及び速度の低下を招く。
【0004】
ヒマワリ油の採油に際して生ずる圧搾残渣及び抽出残渣は、今日では主に飼料として利用されている。しかしながら、その残渣の飼料での使用は、高タンパク質含量にかかわらず飼料中でほんの数パーセントに限定されている。それは、一つには残渣中殻割合が非常に高く、25質量%を上回る場合があるからである。さらに、妨げとなる付随物質の割合、とりわけ、例えばポリフェノール、タンニン又はフィチン酸等の二次植物成分の含量が非常に高い。これらの成分は残渣中で合計して数質量%を上回る量になり、タンパク質の色、味及び消化性をかなり大きく損なう場合がある。したがって、ヒマワリ油の採油から出る圧搾ケーク及び抽出残渣は、更なる措置なしには食品又はペットフードのための良質なタンパク質添加物の製造には適さない。
【0005】
ヒマワリ種子は一般に高い収油率に焦点を絞って加工される。この場合に、それらの種子から最初に混入物が取り除かれ、温度及び湿度の点についてコンディショニングされる。大抵は、殻の一部が更に除去される。引き続き、こうして調製された原料は、次いで圧搾によって8%から20%の間の残留油分になるまで機械的に予備脱油される。引き続き、ヘキサン又はエタノール若しくは超臨界CO2等の別の溶剤を用いて圧搾ケークから残りの油が抽出される。3質量%未満の含油量と、殻割合に応じて40質量%から55質量%の間であるタンパク質含量とを有する残渣が残される。
【0006】
従来技術によれば、ヒマワリ種子は主として部分的に剥殻され圧搾される。部分的な剥殻では、種子に含まれる殻のおよそ50質量%が脱油前に原料中に残されており、これは平均して15質量%超の圧搾前の残留殻含量に相当する。従来技術によれば、圧搾機からの排油を容易にし、それにより圧搾速度を高め、コストを下げるためには、特に圧搾には、少なくとも10質量%の殻割合が必要とみなされている。
【0007】
数年前から、ヒマワリ油の採油の残渣からタンパク質調製物をタンパク質粉末又はタンパク質濃縮物の形で取得することで、これらを食品用途及び良質な飼料用途のために利用可能にするアプローチもある。幾つかの刊行物には、ヒマワリ種子からのタンパク質調製物の製造が記載されている。これらのタンパク質調製物は乾式技術的又は湿式技術的な加工(例えば、溶剤の使用下で)によって取得されることから、その際、残渣中にタンパク質が残留する。しかしながら、高い割合の不所望な付随物質及び高い粗繊維含量により、一部の食品用途への該残渣の使用は制限される。したがって、ほとんどのタンパク質粉末及びタンパク質濃縮物の適用範囲が制限され、飼料において低い濃度でしか使用することができない。
【0008】
特許文献1には、とりわけ、タンパク質に富む食料又は飼料としてのヒマワリタンパク質を取得する方法が記載されている。飼料の製造のために、5質量%超の残留殻含量を有する部分的に剥殻されたヒマワリの種が使用される。種物の圧搾は、8質量%以上から18質量%以下までの含油量及び乾燥質量に対する30%以上から45%以下までのタンパク質含量になるまで行われる。タンパク質の消化性に対する5質量%超の残留殻含量の影響については検討されていない。さらに、ここでも生成物の高い粗繊維含量及び高いクロロゲン酸含量がその飼料としての許容性、したがってその有用性を著しく限定し得るという前提から出発すべきである。
【0009】
特許文献2は、剥殻されたヒマワリの種からタンパク質調製物を製造する方法を記載している。この方法では、ヒマワリ種子は5質量%以下の残留殻含量になるまで剥殻されるか、又は5質量%以下の残留殻含量を有する剥殻されたヒマワリ種子が準備される。剥殻されたヒマワリ種子の機械的な部分的脱油は圧搾によって行われ、その圧搾は剥殻されたヒマワリ種子の含油脂量又は含油量が10質量%から35質量%の間の範囲内になるまで行われる。少なくとも1種の溶剤による1回以上の抽出工程の実施後に、脱油脂されたタンパク質含有粉末がタンパク質調製物として得られる。そのタンパク質調製物は視覚的にも機能的にも非常に有利な特性を有しており、それにより食品分野又は飼料分野での直接的な使用が可能となる。80℃未満での圧搾及び90℃未満での脱溶剤を通じた低い温度によって、この方法では良好な技術機能的特性が保持され、変性の程度が低く、それにより非常に良好な消化性及び生物学的利用能が与えられることとなる。しかし、55質量%~65質量%の低いタンパク質含量及び不溶性粗質物の割合により、調製物の使用可能性は明らかに限定されるため、例えば、タンパク質に富むスポーツ栄養又は澄明な飲料をこれらの調製物により得ることはできない。
【0010】
近頃は、調製物に関する文献が公開されており、70質量%を上回る、一部では90質量%を上回るより高いタンパク質含量を有するヒマワリ種子由来のタンパク質調製物も市販されている。該調製物の利用可能性は、高いタンパク質割合のため、確かに粉末及び濃縮物の利用可能性よりも明らかに高いが、L*a*b*色空間において測定される60未満のL*としての低い明度値、変色(緑色、ベージュブラウン色がかった色合い)、30%未満の低タンパク質可溶性、及び味覚的欠点に基づけば、これらの調製物でも官能的に要求の高い用途で広範に使用することはできない。さらに、これらの方法はしばしば非常に費用がかかり、幾つかの溶剤抽出(例えば、非特許文献1)及び/又は様々なpH値を使用した水性抽出及び様々な沈殿工程からなる。しばしばこの場合には、ヒマワリの種が更に剥殻されるとは言え、引き続き機械的な部分的脱油を事前に行うことなく直接的に溶剤を用いて脱油されることから、この方法の経済性及び産業的実用性は更に低下する。
【0011】
さらに、抽出により取得する場合に塩化ナトリウム又は別の塩の添加によってヒマワリタンパク質の可溶性を向上させるアプローチが知られている(非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、そのような調製物は、塩濃度が高い水溶液中で抽出した後には非常に塩辛い味を有するため、このような方法も魅力的な調製物をもたらさないうえに、非常に高いコストを招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第2885980号
【特許文献2】国際公開第2010/097238号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Saeed und Cheryan, 1988, Sunflower Protein concentrates and isolates low in polyphenols and phytates, Journal of Food Science, 53 (4), 1127-1131
【非特許文献2】Pickardt et al. 2009, Optimisation of mild-acidic protein extraction from defatted sunflower (Helianthus annuus L.) meal, Food Hydrocolloids, 23 (7), 1966-1973
【非特許文献3】Pickardt et al. 2015, Pilot plant preparation of light-coloured protein isolates from de-oiled sunflower (Helianthus annuus L.) press cake by mild-acidic protein extraction and polyphenol adsorption, Food Hydrocolloids, 44, 208-219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、75質量%を超えるタンパク質含量を有する優れた技術機能的特性を有する品質的に良質で官能的に魅力的なタンパク質調製物をヒマワリ種子から製造する経済的な方法を提供することであった。該調製物は、色的にも味的にも非常に魅力的であり、優れた技術機能的特性を有することが望まれる。さらに、該調製物は、その高いタンパク質含量によって、食品及び飼料において多方面で使用することが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、請求項1に記載の方法及び請求項15又は請求項17に記載のタンパク質調製物により解決される。上記方法及び上記タンパク質調製物の有利な実施の形態は従属請求項の主題である。
【0016】
以下に記載される方法を用いることで、驚くべきことに、1つの画分が75質量%を超えるタンパク質含量を有する少なくとも2つのタンパク質に富む画分をヒマワリ種子から加工過程において取得することに成功する。これらの2つ以上の画分は高い官能的要件を満たし、上記過程に投入されるヒマワリ粉末由来のタンパク質のうちの合計で50質量%超、有利な実施の形態では70質量%超、特に有利には90質量%超を含有し、ここで、ヒマワリ粉末は35質量%超、有利には45質量%から60質量%の間、特に有利には48質量%から57質量%の間のタンパク質含量を有する。上記方法の投入物に加えられるタンパク質が高い割合で利用されることで、従来技術による既存の方法と比較して高度な経済性が可能となる。それというのも、別の方法とは異なり、幾つかの画分を、タンパク質に富み、官能的に魅力的なタンパク質に富む食品添加物として利用することができるからである。
【0017】
本発明による方法のために、最初に、剥殻され脱油されたヒマワリの種から取得された、8質量%未満、有利には4質量%未満、特に有利には2質量%未満の含油量(それぞれソックスレー法AOAC 963.15により測定)及び10質量%未満、有利には5質量%未満、特に有利には1質量%未満又は0.1質量%未満の殻割合を有するタンパク質含有粉末を準備し、ここで、上記脱油には、スクリュープレス又は押出機による少なくとも1つの機械的な工程と、任意選択でエタノール又はヘキサン等の有機溶剤による脱油とが含まれる。使用される粉末は、35質量%を上回る、有利には45質量%を超える、特に有利には48質量%を超える乾燥質量でのタンパク質含量(デュマ法 セクション64 LFBG L 01.00-60に従って換算係数6.25で求められる)及び良好なタンパク質可溶性を特徴とする。
【0018】
好ましくは、粉末中のタンパク質含量に対する15質量%を超える、有利には20質量%を超える、特に有利には25質量%を超えるpH6での水中のタンパク質可溶性、及び/又は25質量%を超える、有利には30質量%を超える、特に有利には35質量%を超えるpH7での水中のタンパク質可溶性を有する粉末が使用される。この場合に、タンパク質可溶性を求めるタンパク質測定は、C. V. Morrによるタンパク質可溶性測定に準じて行われ、NSI値の測定は、公式のAOCS法(Ba 11-65;1993)又はAACC法(46-23;1990)に従って行われる。
【0019】
このような高いタンパク質可溶性を有する粉末を得ることを可能にするには、特にスクリュープレス又は押出機による脱油及び溶剤による脱油の際の特に穏やかな条件と、可溶性に影響を及ぼし得る妨げとなる不純物の大幅な減少とが保証されるべきである。しかし、驚くべきことに、使用される粉末では、或る程度の残留溶剤含量は、予想されるように粉末中のタンパク質可溶性に悪影響を及ぼさないどころか、むしろ粉末中の或る程度の溶剤量は、後続の更なる加工過程に良い影響を及ぼすことが判明した。この場合に、少なくとも1種の有機溶剤(エタノール又はプロパノール又はメタノール又はヘキサン)の残留含量が0.001質量%より多い、有利には0.01質量%より多い、特に有利には0.05質量%又は0.1質量%より多いと、可溶性は特に良好となる。約1質量%の上限を有するこの濃度範囲内では、粉末中の溶剤割合が増加するにつれてタンパク質の可溶性が増加することが明らかである。
【0020】
粉末の粒子は、有利には抽出の前に微粉砕される。この場合に、D90(質量の90%の割合が、指定される粒子サイズ未満の粒子)(n-ブタノール中でのレーザー回折による測定)は100μm~2500μmの範囲内であり、有利にはD90は500μm未満又は250μm未満である。D90が、例えば更なる微粉砕によって100μm未満、特に有利には50μm未満に低減されると、粉末からのタンパク質の溶解が更に加速され得る。
【0021】
本発明による方法の更なる過程で水性抽出工程が実施されるので、粉末中の高いタンパク質濃度及び好ましくは含まれるタンパク質の良好な可溶性が有利である。圧搾、有機溶剤による脱油、及び脱溶剤の際の温度を高く調整し過ぎないことで、残渣中のタンパク質の可溶性を高い水準に保つことによって、高いタンパク質可溶性が達成される。これらの全ての工程を120℃未満、より良好には100℃未満、特に有利には80℃未満の温度で行うと、熱的損傷を大幅に回避し、タンパク質可溶性を維持することができる。したがって、有利には、上述の温度未満で圧搾し、脱油し、脱溶剤した粉末を使用することが望まれる。
【0022】
既に更に上述したように、脱油されたヒマワリの種由来のタンパク質含有粉末は、10質量%未満、有利には5質量%未満又は1質量%未満、特に有利には0.5質量%未満、又はそれどころか0.1質量%未満の殻含量を有する。特に、殻を含まない又はほとんど殻を含まない粉末では、本発明による1回以上の抽出後に、1つの抽出物又は複数の抽出物のうちの少なくとも1つからのタンパク質と同様に、残留する抽残物からのタンパク質も食品用途に利用することが可能となる。
【0023】
本発明による方法では、準備されたヒマワリ粉末について少なくとも1回の水性抽出が行われる。このために、粉末及び過剰の規定の量の水(例えば、3超:1、より良好には5超:1、特に有利には10以上:1の水対粉末の比率)を撹拌容器中で混合し、或る時間(有利には、10分から60分の間)にわたって懸濁液で保持した後に、この懸濁液を連続稼働する遠心分離機、好ましくはデカンターを用いて、液相(抽出物)と固体に富む相(抽残物)とに分離する。この場合に、抽出、2つの相の分離、並びに2つの画分の更なる処理及び任意選択の乾燥は、十分に酸素を排除して及び/又は酸化防止剤及び/又は還元剤を添加して行われるため、抽出及び任意選択の乾燥の後に、1つの抽出物(又は複数の抽出物のうちの1つ)からも、十分に低い殻割合の場合には抽残物からも、それぞれ良好な技術機能的特性を有する良質で明色のタンパク質調製物を取得することに成功する。この場合に、2つの画分は、分析用微粉砕後にL*a*b*色空間に関して70を超える、有利な実施の形態では80を超える、特に有利には90を超えるL*値を示す。
【0024】
既に述べたように、粉末から明るい色を有する2つの良質なタンパク質調製物を同時に取得するためには、一方で、粉末において低い殻割合だけでなく高いタンパク質割合が必要である。良好なタンパク質可溶性(上記のような可溶性パラメーター)によって、結果を更に改善することができる。他方で、本発明によれば、ヒマワリの種の成分の酸化が大幅に回避されるように、又は酸化傾向にある成分が2つの画分から、例えば粉末の事前の水性抽出で十分に分離されるように、抽出を実施せねばならない。
【0025】
これは、特に有利には、少なくとも1回の水性抽出(好ましくは8未満、有利には7未満、特に有利には6未満のpH値で)を、空気の排除下で、すなわち真空を印加することにより、又は窒素、アルゴン、CO2若しくは別の不活性ガスを添加することにより、及び/又は食品用に承認された酸化防止剤及び/又は還元剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム若しくはシステインを使用することにより行うことによって達成され得る。酸化が大幅に低減される又は完全に回避されると、抽出物から取得されたタンパク質画分も抽残物も、乾燥及び分析用微粉砕後に70を上回るL*値を有することが分かった。酸素を完全に排除し、酸化防止剤及び/又は還元剤を使用すると、2つの画分で80を上回るL*値を達成することも可能である。従来技術によれば、これは今までに示されていない。
【0026】
低減された空気圧(真空)での抽出は、有利には、密閉された抽出容器の気相中の圧力が200mbar未満、より良好には100mbar未満に調整されるように実施される。この場合に、水又は抽出物中の酸素濃度が標的パラメーターとみなされるべきである。抽出に利用される水中又は直接的には抽出物中のO2濃度を7mg/l(リットル)未満、有利には3mg/l未満、特に有利には0.5mg/l未満、又はより良好には0.1mg/l未満の値に下げるように努めることが有利である。
【0027】
真空中でこれらの値未満に下げることに成功しなければ、抽出に利用される水において高濃度(90体積%超)の窒素又はアルゴンの吹き込み及び/又は超音波による処理によって溶存酸素を水から大幅に除去し、それにより酸素濃度を上述の値未満に下げることがタンパク質調製物の色又は明度に関して特に有利であることが明らかである。この場合に、有利には、0.1mg/l未満、幾つかの場合にはそれどころか0.05mg/l未満の溶存酸素についての値を達成することができ、これにより変色の程度が明らかに制限される。
【0028】
代替の又は追加の工程として、アスコルビン酸、クエン酸、又は別の無色の水溶性酸化防止剤及び/又は還元剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、システイン等を抽出に利用される水へと加え、それにより同様に暗い発色を抑え、より明色の調製物を取得することが有利である。酸化防止剤及び/又は還元剤の添加が酸化を抑えるのに十分であるかどうか又は酸素濃度を更に低減するのに上記の更なる措置が必要であるかどうかは、所望の結果に応じて可変的に構成され得る。さらに、驚くべきことに、還元剤の添加により、調製物の可溶性及び乳化挙動等の幾つかの機能性が改善されることが明らかになった。
【0029】
上記方法を実施するために、理想的には、酸化を回避するために上述された方法が互いに組み合わされる。この場合に、酸化作用を避けるために抽出時のpH値を7の値未満に下げることがもはや必要とされないように、抽出物における酸素割合及び酸化電位が全体として低減され得る。驚くべきことに、抽出物1リットル当たり1mg未満の溶存O2の濃度では、乾燥され粉砕された調製物の明度の明らかな減少(70未満のL*値まで)を受け入れる必要なく、pH値を7.5超になるまで高めることができる。これにより、抽出物におけるタンパク質収率の大幅な増加が可能となる。それというのも、より高いpH値では、明らかにより高い割合のタンパク質が抽出物相へと移行し得るからである。
【0030】
比較すると、記載される措置を行わずに抽出に際して7.5以上のpH値が選択される場合には、調製物の色が大幅に暗色になることが明らかである。上述の措置を組み合わせた本発明による方法の実施の形態では、すなわち、例えば窒素(90体積%を超える窒素含量)又はアルゴンを吹き込むことにより酸素を除去し、例えば抽出用の水1リットル当たり0.01g~1gのアスコルビン酸及び/又は0.01g~1gのシステイン若しくはシスチンを添加することにより、抽出物におけるpH値を、8.5を上回る値に調整した場合にも、抽出物を限外濾過及び/又は透析濾過にかけると、依然として明色のタンパク質調製物を得ることができることが明らかにされた。抽出時に圧力を50mbar未満の値に下げることによっても、特に明るい色が観察され得る。この場合に、抽出物から取得されたタンパク質画分が乾燥後に色的にも貯蔵安定であること、すなわち貯蔵の間に灰色化又は別の種類の暗色の変色を受けないことを実現するためには、低酸素又は無酸素の抽出物と、酸化防止剤及び/又は還元剤の添加と、抽出物の限外濾過及び有利にはまた透析濾過の使用との組み合わせが特に効果的な方法の組み合わせであると判明している。
【0031】
空気含量又は酸素含量を減らすための粉末の事前の処理もまた、特に、抽出に利用される水から既に溶存酸素が大幅に除去されている場合に、更なる利点をもたらすことが明らかとなった。こうして、200mbar未満、有利には50mbar未満の真空によって又は抽出へと導入する前に窒素(又はこれに適した別のガス)を吹き込むことによって処理されたヒマワリ粉末からは、該粉末からその嵩内に含まれる空気が事前に除去されていない場合よりも明色のタンパク質調製物を得ることができることが分かった。好ましくは、粉末中の酸素分圧を50mbar未満、より良好には20mbar未満、特に有利には10mbar未満に減少させることが望まれる。
【0032】
抽出の前又はその間に、水から酸素を完全に又は部分的に分離することにより、ここで、その過程は酸素含有水を、20℃を上回る、有利には40℃を上回る、特に有利には50℃を上回る温度に温めることによって促進され得るが、抽出過程の間のpH値は、本発明によれば4から9の間に調整され得る。これは水中の酸素含量によって決定され得るが、所望の分離結果に関しても最適化され得る。5mg/lを上回る酸素含量の場合に、pH値は、本発明によれば6.5未満、有利には6未満である。1mg/lから5mg/lの間の酸素含量の場合に、pHは7.5までの値に調整され得て、0.1mg/l未満では、9までの値が可能である。
【0033】
しかしながら、これは、上述の酸素値を下回る場合に、どのような場合にも可能な限り高いpH値が選択されるべきであることを意味するものではない。むしろ、特定の特性、規定のタンパク質組成、又は特に明るい色を達成するために、0.1mg/l未満の低いO2値を調整することもでき、追加的に酸化防止剤及び/又は還元剤を使用することもでき、それにもかかわらず6のpH値を選択することができる。pH6ではヒマワリ種子からアルブミンだけが溶解するので、したがって、pHを6に調整して、アルブミンだけを取得することが有利である場合がある。
【0034】
上記方法の特に有利な実施の形態では、例えばアスコルビン酸等の酸化防止剤の添加によってpHの調整が行われる。
【0035】
本発明による方法では、抽出は、好ましくは、抽出前に規定の粒子サイズ分布に細砕され、抽出用に或る程度の量の水が添加された粉末を用いて行われる。抽出後に、抽残物と抽出物との間の分離が行われる。タンパク質のより十分な抽出のために、有利には、抽残物での更なる水性抽出が行われる。抽出物及び抽残物の少なくとも1回の分離後に、抽残物は乾燥に供され、粉末の好ましい粉砕で既に更に上述したように、有利な粒子サイズ分布を達成するために任意選択で粉砕に供される。抽出物から、好ましくは、限外濾過又は透析濾過のいずれか(又は両方)によって、糖類又は対応する小ささの分子サイズを有する別の化合物の割合が十分に除去されるか、又は沈殿、好ましくはタンパク質の等電点での沈殿及び/又は限外濾過によってタンパク質の濃縮が行われる。引き続き、濃縮されたタンパク質は、例えば、乾燥又は凍結によって安定化された後に、任意選択で粉砕によって上述の粒子サイズ分布に調整される。
【0036】
この場合に、抽残物からのタンパク質調製物は、25質量%を超える、有利には40質量%を超える、特に有利には50質量%を超えるタンパク質含量、及び6質量%未満、有利には1質量%未満、特に有利には0.5質量%未満の糖類の含量(単糖、二糖の合計)を有する。さらに、抽残物から取得されたタンパク質画分は、1質量%未満、有利には0.5質量%未満、特に有利には0.1質量%未満のクロロゲン酸の含量を有する。
【0037】
抽残物から取得されたタンパク質調製物中での0.1質量%未満のこのように低いクロロゲン酸濃度と、好ましくは50質量%を上回る比較的高いタンパク質含量との組み合わせは、同様のタンパク質含量を有するこれまでに知られている殻を含まない粉末と比較して、食品用途若しくは化粧品用途若しくはペットフードにおいて中性若しくはアルカリ性のpH値に調整されても又は製品がより長期間にわたり貯蔵されても、変色が起こらないという利点を有する。従来技術による慣例的な粉末では、変色なくそのようなpH値又は長い貯蔵時間を選択することはできない。
【0038】
したがって、酸素を減らし、酸化を最小限に抑えた抽出条件を使用することで、驚くべきことに、良質な明色の調製物を抽残物から製造することに成功すると同時に、特に限外濾過及び/又は透析濾過及び/又は沈殿によって75質量%を上回るタンパク質割合を有する中性で明色のタンパク質濃縮物、又はそれどころか90質量%を上回るタンパク質含量を有するタンパク質単離物を得ることができる抽出物を得ることに成功する。
【0039】
この場合にも、本発明による酸素割合の減少又は酸化の低減(Oxidationsreduktion)の利点が明らかである。これらの措置を選択すると、これに該当しない場合よりもはるかに大幅により効果的に、一方では糖類及び低い分子量を有する別の化合物の限外濾過に、他方では1000Daを上回る分子量を有するタンパク質の限外濾過に成功する。これは、本発明による酸化を制限する措置が選択されないと、膜分離では不可能である。本発明による方法では、より簡単に抽出物から妨げとなる成分を分離するために吸着剤を使用することも可能である。十分に酸化が起こらない環境によって、吸着剤の表面には僅かなタンパク質しか沈着しない。
【0040】
10%近くまでの殻含量を有し得る暗い色を有する脱油された粉末からも、70を上回る、有利には80を上回るL*値を有する非常に明色のタンパク質調製物を得ることができることが明らかにされている。
【0041】
提案された方法では、1つの抽出物又は複数の抽出物の少なくとも1つから、以下の特性:
75質量%を超える、有利には80質量%を超える、特に有利には90質量%を超えるタンパク質含量、
70を超える、有利には80を超える、特に有利には90を超えるL*a*b*色空間からのL*値を有する明色の光学的外観、
200ml(油)/g(タンパク質)を超える、有利には400ml(油)/g(タンパク質)を超える、特に有利には500ml(油)/g(タンパク質)を超える乳化能、
調製物中のタンパク質含量に対する10質量%を超える、より良好には30質量%を超える、特に有利には40質量%又は50質量%を超えるpH7でのタンパク質の可溶性、
好ましくは、500μm未満、有利には250μm未満、特に有利には100μm未満のD90値(このサイズ未満の粒子の量が90%に相当する)を有する粒子サイズ分布、
を有する調製物が得られる。
【0042】
抽残物からは、以下の特性:
25質量%を超える、有利には40質量%を超える、特に有利には50質量%を超えるタンパク質含量、
70を超える、有利には80を超える、特に有利には90を超えるL*a*b*色空間からのL*値を有する明色の光学的外観、
250ml(油)/g(タンパク質)を超える、有利には400ml(油)/g(タンパク質)を超える、特に有利には500ml(油)/g(タンパク質)を超える乳化能、
調製物中のタンパク質含量に対する5質量%を超える、より良好には20質量%を超える、特に有利には30質量%を超えるpH7でのタンパク質の可溶性、
乾燥された抽残物1g当たり1gを上回る水分結合、
好ましくは、1000μm未満、有利には500μm未満、特に有利には250μm未満のD90値を有する粒子サイズ分布、
好ましくは、1質量%未満、有利には0.5質量%未満、特に有利には0.1質量%未満の抽残物中のポリフェノール含量(測定法:Weisz et al. 2009, Identification and quantification of phenolic compounds from sunflower (Helianthus annuus L.) kernels and shells by HPLC-DAD/ESI-MS, Food Chemistry, 115 (2), 758 - 765)、
好ましくは、50mg/kg未満、特に有利には10mg/kg未満の有機溶剤の残留含量、
を有する調製物が得られる。
【0043】
まとめると、提案された方法では、以下の方法工程:
1)35質量%超のタンパク質含量、8質量%未満、有利には4質量%未満、特に有利には2質量%未満の含油量(ソックスレー法AOAC 963.15)及び10質量%未満、有利には5質量%未満、特に有利には1質量%未満又は0.1質量%未満の殻含量を有し、好ましくは粉末中のタンパク質に対する15質量%を超える、有利には20質量%を超えるpH6でのタンパク質可溶性及び/又は粉末中のタンパク質含量に対する25質量%を超える、有利には30質量%を超える、特に有利には35質量%を超えるpH7での水中のタンパク質可溶性を有する、脱油されたヒマワリの種由来のタンパク質含有粉末を準備する方法工程と、
2)上記粉末を、4を超える、有利には5を超える、特に有利には6を超えるが、9未満であるpH範囲で水により抽出する方法工程と、
3)水中の酸素濃度を7mg/l未満、有利には2mg/l未満、特に有利には0.5mg/l未満、又は0.1mg/l未満の値まで事前に又はその間に減少させる方法工程と、及び/又は以下の工程:
a.抽出容器中の空気圧を200mbar未満、より良好には100mbar未満に減少させる工程、及び/又は、
b.抽出のために利用されるべき水の温度を、20℃を上回る、有利には40℃を上回る、特に有利には50℃を上回る値に調整することによって、溶存酸素を追い出す工程、及び/又は、
c.窒素、CO2、アルゴン若しくは90体積%を上回る、有利には99体積%を超える濃度を有する別の不活性ガスを、有利には20℃超に温められた抽出に利用される水中に若しくは抽出物中に導入することによって吹き込むことで、又は上記水/上記抽出物の表面上への窒素、CO2、アルゴン若しくは別の不活性ガスの供給により上記水若しくは上記抽出物と接触させることで、窒素、CO2、アルゴン又は不活性ガスが水/抽出物中に溶存する酸素を排除し、窒素の場合には10mg/lを超える、有利には15mg/lを超える、特に有利には20mg/lを超えるN2濃度が生ずる工程、及び/又は、
d.酸化防止作用及び/又は還元作用を有する成分(例えば、クエン酸、アスコルビン酸、亜硫酸塩、システイン等)を抽出の前又はその間に添加する工程、
の1つ以上によって酸素活性を低下させる方法工程と、
4)好ましくは、水中のpH値を3から7.5の間、有利には5.5から6.5の間の値に調整する方法工程と、
5)固体と抽出物とを分離する方法工程と、
6)好ましくは、上記抽出の過程をより高いpH値で繰り返す方法工程、特に有利には1回目の抽出を5.5から7の間のpH値で行い、2回目の抽出を7.5から9の間のpH値で行う方法工程と、
7)好ましくは、抽出物中のタンパク質を、沈殿又は限外濾過及び/又は透析濾過によって濃縮する方法工程と、
8)任意選択で、抽出物及び(任意に)抽残物又は濃縮されたタンパク質画分を乾燥させ、任意に粉砕して、所望の粒子サイズ分布を達成する方法工程と、
が実施される。
【実施例】
【0044】
実施:
1質量%未満の殻割合を有する剥殻された種物由来のヒマワリ粉末(タンパク質割合55%;タンパク質可溶性40%;含油量2.5質量%)を、1:10の比率(粉末の乾燥物質に対する)で蒸留水中に懸濁させる。このために使用される水は使用前に1時間、窒素で貫流/パージして、その中に溶存する酸素を追い出した。さらに、粉末の添加前に、水のpH値をアスコルビン酸で6に調整した。粉末を水に添加した後に、pHを6に再調整し、引き続き室温で30分間撹拌した。
【0045】
この予備抽出が終了した後に、懸濁液を8570g及び20℃で10分間遠心分離した。遠心分離の残留物を上記のように再びpH6で抽出し(2回目の予備抽出)、上記のように遠心分離した。これらの予備抽出によって、とりわけ、不所望なフェノール性成分が粉末から除去される。引き続き、遠心分離の残留物を再び1:10の比率(乾燥質量に対する)で水中に懸濁し、水酸化ナトリウム溶液で8.5のpH値に調整した。引き続き、懸濁液を室温で30分撹拌してタンパク質を抽出した。このために使用された水は使用前に1時間、窒素でパージした。
【0046】
タンパク質の抽出が完了した後に、残留物(抽残物)及び上清(抽出物)を遠心分離(10分、20℃、8570g)によって分離した。抽残物を凍結乾燥により安定化し、一方で、最後に得られた抽出物をタンパク質沈殿に供した。
【0047】
タンパク質沈殿のために、抽出物のpH値をアスコルビン酸で6に調整し、室温で30分間撹拌した。引き続き、沈殿したタンパク質の取得を遠心分離(10分、20℃、8570g)によって行った。こうして取得されたタンパク質カードを凍結乾燥させて安定化した。
【0048】
生成物:
a)抽出物相由来のタンパク質生成物:
タンパク質含量:85%
タンパク質可溶性(pH7):12%
乳化能:230mL(油)/g
L*値(L*a*b色空間):80
b)抽残物:
タンパク質含量:40%
タンパク質可溶性(pH7):25%
水分結合:1.2g/g
乳化能:485mL(油)/g
L*値(L*a*b色空間):80
ポリフェノール含量:0.2質量%
【国際調査報告】