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特表2022-507547新生児の神経損傷の危険度を低減するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】新生児の神経損傷の危険度を低減するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220111BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B10/00 S
A61B5/0245 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526590
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 US2019061465
(87)【国際公開番号】W WO2020102524
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/767,147
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/791,337
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519176120
【氏名又は名称】エバンス,マーク
【氏名又は名称原語表記】Evans, Mark
【住所又は居所原語表記】10321 Cara Mia Court, Las Vegas, Nevada 89135 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバンス,マーク
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AC37
4C017BC11
(57)【要約】
新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減する方法は、(I)分娩中の妊娠患者において、胎児としての子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合をモニタリングする工程と、(II)患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点での前記パラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、前記子供の出産後少なくとも最初の5分の間に決定する工程であって、決定された現在の危険度のレベルは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する工程と、(III)前記子供の出産後の最初の5分以内に、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについて子供のモニタリングを開始する工程、及び/又は、前記子供の出産後最初の60分以内に、神経損傷又はその発生について子供を治療するための1以上の処置を実施する工程とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減する方法であって、
(I)分娩中の妊娠患者において、胎児としての前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合をモニタリングする工程と、
(II)該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点での前記パラメータの少なくとも第1集合に基づく前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、前記子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定する工程であって、決定された前記現在の危険度のレベルは、新生児としての前記子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する工程と、
(III)前記子供の出産後の前記最初の5分以内に、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについて前記子供のモニタリングを開始する工程、及び/又は、前記子供の出産後の最初の60分以内に、神経損傷又はその発生について前記子供を治療するための1以上の処置を実施する工程と
を含む方法。
【請求項2】
神経損傷又はその発生に対し前記子供を治療するための前記1以上の処置は、
出産時並びに臍帯の締結及び切断前に前記新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、
前記臍帯の締結及び切断後に前記新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、
脳冷却を実施すること、並びに/又は
他の治療的処置を実施すること
から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モニタリングする工程(I)は、
前記妊娠患者において、少なくとも、(a)胎児心拍数(FHR)、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速の各々のパラメータをモニタリングして、各々のパラメータが、同時に独立して、複数の事前定義された危険特性に由来する1以上の危険特性を呈示しているかを決定する工程を含み、
前記決定する工程(II)は、
該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々が同時に独立して前記1以上の危険特性を示す少なくとも(a)~(d)のモニタリングしたパラメータの総数のみを考慮して、前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを決定する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(II)は、決定された前記現在の危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを前記子供に割り当てる工程を更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記事前定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、
決定された前記現在の危険度のレベルは、前記3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、
割り当てられた前記危険度のカテゴリは、新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応している請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記モニタリングする工程(I)は、前記妊娠患者において、少なくとも、(a)胎児心拍数(FHR)、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び(e)母体の子宮活動の各々のパラメータをモニタリングして、各々のパラメータが同時に独立して、複数の事前定義された危険特性に由来する1以上の危険特性を呈示しているかを決定する工程を含み、
前記決定する工程(II)は、分娩中の所定の時点で、各々が同時に独立して1以上の危険特性を示す少なくとも(a)~(e)のモニタリングしたパラメータの総数のみを考慮して、前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを決定する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(II)は、
決定された前記現在の危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを前記子供に割り当てる工程を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記事前定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、
決定された前記現在の危険度のレベルは、前記3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、
割り当てられた前記危険度のカテゴリは、新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた前記1以上の出生後パラメータに基づいて、前記子供の神経損傷の潜在的な危険度を特定する工程(IV)を更に含み、 前記子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた前記1以上の出生後パラメータは、新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応している請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(III)の神経損傷又はその発生を示す前記1以上の出生後パラメータは、新生児血中pH、ベースエクセス、新生児心拍数(NHR)、及びpOの群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点での前記パラメータの少なくとも第1集合に基づき、出産と出産後の少なくとも30分との間の期間に取得された神経損傷又はその発生の1以上の出生後パラメータの履歴データと相関させた、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減する装置であって、
モニタリングされた分娩中の患者から、胎児としての前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合に対応する入力信号を受信し、
新生児の前記子供から、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータに対応する入力信号を受信し、
該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点での前記パラメータの少なくとも第1集合に基づく前記子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、前記子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定し、決定された前記危険度のレベルが、新生児としての前記子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する
ように動作する1以上のコンピュータと、
前記1以上のコンピュータに動作可能に接続された1以上の出力部と
を備え、
前記1以上のコンピュータは、
決定された前記危険度のレベル、及び/又は、それに対応する、新生児としての前記子供の神経損傷について予測される危険度の前記複数の所定のレベルのうちの1つと、
前記1以上の出生後パラメータに対応する受信した前記入力信号を示す情報と
を、前記1以上の出力部を介して、遅くとも前記子供の出産後の最初の5分までに表示するように更に動作する装置。
【請求項16】
前記パラメータの第1集合は、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含み、
前記入力信号は、FHRを少なくとも含み、
前記1以上のコンピュータは、FHRの前記入力信号に基づいてパラメータ(a)~(d)を決定するように動作し、
神経損傷についての前記子供に対する現在の前記危険度のレベルの決定は、
該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々のパラメータ(a)~(d)が1以上の危険特性を呈示しているかの決定と、
同時に1以上の危険特性を呈示した前記パラメータ(a)~(d)の数を、同時に独立して1以上の危険特性を呈示した前記パラメータ(a)~(d)の数に対応する、神経損傷についての前記子供に対する現在の前記危険度のレベルの表示への変換と
を含む請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記1以上のコンピュータは、決定された現在の前記危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを前記子供に割り当てるように更に動作する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記事前定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、
決定された現在の前記危険度のレベルは、前記3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、
割り当てられた前記危険度のカテゴリは、新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応している請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記入力信号は、母体の子宮活動を示す入力信号を更に含み、
前記パラメータの第1集合は、(e)母体の子宮活動を更に含み、
前記1以上のコンピュータは、前記FHR及び前記母体の子宮活動の入力信号に基づいて前記パラメータ(a)~(e)を決定するように動作し、
神経損傷についての前記子供に対する現在の前記危険度のレベルの決定は、
該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々のパラメータ(a)~(e)が1以上の危険特性を呈示しているかの決定と、
同時に1以上の危険特性を呈示した前記パラメータ(a)~(e)の数を、同時に独立して1以上の危険特性を呈示した前記パラメータ(a)~(e)の数に対応する、神経損傷についての前記子供に対する現在の前記危険度のレベルの表示への変換と
を含む請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記1以上のコンピュータは、決定された現在の前記危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを前記子供に割り当てるように更に動作する請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記事前定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、
決定された現在の前記危険度のレベルは、前記3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、
割り当てられた前記危険度のカテゴリは、新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルの1つに対応している請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む請求項22に記載の装置。
【請求項24】
神経損傷又はその発生を示す前記1以上の出生後パラメータは、新生児血中pH、ベースエクセス、新生児心拍数(NHR)、及びpOの群から選択される請求項15に記載の装置。
【請求項25】
新生児としての前記子供の神経損傷について前記予測される危険度の複数の所定のレベルは、該患者における10cmの子宮頸部の拡張と前記子供の出産との間の分娩中の所定の時点での前記パラメータの少なくとも第1集合に基づき、出産と出産後の少なくとも最初の約30分との間に取得された神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータの履歴データと相関させた、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される請求項15に記載の装置。
【請求項26】
前記パラメータの第1集合は、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含み、
前記1以上の出生後パラメータは、ベースエクセスを含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記パラメータの第1集合は、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び(e)母体の子宮収縮を含み、
前記1以上の出生後パラメータは、ベースエクセスを含む請求項25に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月14日に出願された米国仮特許出願第62/767,147号、及び2019年1月11日に出願された米国仮特許出願第62/791,337号に関連し、当該仮出願の優先権の利益を主張するものである。当該仮出願の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
胎児の状態が危険な際に、酸素付加の障害を多くの場合に含む分娩及び分娩の後遺症が継続しうる場合、母体の心拍出量、母体の血液の酸素付加、及び母体の子宮血流の実質的な低下により、胎児が、胎児の低酸素症及び仮死(代謝性アシドーシス)の発症の重大な副次的な危険にあることは周知である。米国においては、年に数百人の胎児及び乳児の死は、子宮内の低酸素症及び出産時の仮死の結果であると推定されている。数千人が、脳性麻痺及び神経障害の低い形態を含む、Sarnatスコア等の尺度で分類される軽度の神経障害を有している。また、分娩中に発生する胎児の神経障害は、脳虚血を起こすほどの重度の低酸素症と酸血症が進行した結果であることは広く認識されている。
【0004】
電子胎児モニタリング(EFM:Electronic fetal monitoring)は、胎児が既に現在危険な状態にあるか、あるいはそれに切迫していると思われる場合に、タイムリーな処置(例えば、帝王切開による迅速な分娩)を可能にすることを目的として、1960年代後半に導入されている。EFMは広く採用され、現在では米国の大多数の出産において用いられている。
【0005】
EFMの前提は、代謝性酸血症に関連する仮死状態を認識することである。胎児心拍数(FHR:fetal heart rate)のパターンへの反応は、損傷を受ける前に、仮死状態の胎児を特定及び「救出(rescue)」するのが所望されることを前提としている。従来、FHMのデータのパラメータのいずれかが「安定(reassurance)」を示した場合、分娩を続行することが許可され、当該パラメータが異常な場合、著しい仮死(代謝性アシドーシス)を示す場合、又は急性の緊急事態が発生した場合(例:胎児徐脈)には、処置が控えられる。このような解釈は非常に主観的であり、個々のパターンの顕著性に関しては、専門家でも多くの場合、意見が一致していない。
【0006】
このアプローチは、胎児の「救出」に基づくものであり、即時的にも長期的にも治療成績の改善とはなっていない。出産時の死産率、新生児死亡率、及び新生児発作の減少などに明らかに有益な影響があるにもかかわらず、EFMは、期待されていた新生児脳症及び脳性麻痺(NEACP)の減少、並びに長期的な障害率の減少をもたらしていない。EFMは、観察者内及び観察者間の誤差の割合が高く、不正確で主観的な、胎児の健康状態を予測しにくい尺度であり、必要のない処置に導く偽陽性率が高いが、真性の低酸素状態の胎児及び真性に損傷を受けた胎児を特定する識別力はないと批判されている。
【0007】
数多くの刊行物においては、EFM及び現代の産科医療へのEFMの貢献について、称賛及び批判の双方がなされている。EFMが産科医療に貢献した度合、及び産科医療に損害を与えた度合については、意見が大きく分かれている。しかし、ほとんどの情報源が同意しているのは、EFMにおいては、分娩が始まる前に既に損傷している胎児、及び分娩中の切迫した危険という深刻な危険がある胎児を、分娩の危険のない快適な胎児と明確に区別できないということである。著名な情報源の一部においては、EFMが完璧に解釈されたとしても、危険な症例の約50%を見逃すだろうと述べられている。
【0008】
多数の公表された分類及び管理ガイドラインが様々な情報源から発表されているが、神経治療の成績の改善及び産科医療の過失の低減は明らかではない。例えば、米国産科婦人科学会(ACOG:American College of Obstetricians and Gynecologists)は、2008年に、胎児の酸血症の存在の推定に基づき、3段階の「カテゴリシステム(category system)」(CATシステム)を導入した。カテゴリI(CAT I)は、完全に安全な軌跡(すなわち、酸血症がないこと)を表す。カテゴリIII(CAT III)は、切迫した危険(又は傷害の存在)と、酸血症の推定により直ちに出産して、胎児の傷害の悪化を防止又は軽減する必要があることとを示唆している。カテゴリII(CAT II)は、「懸念要素(elements of concern)」を示しているが、「中間的」(非診断の意味)である。低酸素及びアシドーシスが存在するようになった経緯、あるいは不可逆的な神経損傷が起こるまでに胎児に残された時間の程度について、具体的な理解又は取り決めがない。FHRのパターンのモニタリングにおけるACOGの3段階のシステムには、明らかな病態生理学的根拠がない。実際には、CATシステムは、既に発生した損傷又は発生過程にある損傷の診断スクリーニングテストとしてのみ機能する。CAT III段階に達したときには、緊急手術分娩をしたとしても、胎児の損傷の過程を効果的に変えるには、多くの場合、既に大きく時期を逸している。
【0009】
分娩期間の増加、及び継続可能とすべきFHRの異常パターンに対する許容度を向上させることにより、帝王切開の比率を低減する世界的な取り組みも同時進行している。このような取り組みの安全性は疑問視されている。更に、それらにより、帝王切開を遅延させることで法的な摘発の限定を試みる個々の医師と、一方で帝王切開の数を下げて維持することに関心のある病院及び政府との間で意見の衝突が生じていた。
【0010】
また、高い普及率のEFMの使用によっては、緊急手術分娩(Emergency Operative Delivery:EOD)の比率を低下させることはできていない。EFMの性能評価指標は、脳性麻痺及びEODの双方について、感度、特異性、予測値が低い。EODには多くの症例があり、その大部分は正常な経過をたどります。しかし、EODは、分娩室の日常業務に重大な支障をきたし、合併症や不安、懸念が増大する。
【0011】
本発明者は、EFMデータを解釈し、分娩及び出産時の胎児の治療成績を改善するための従来の手段の改善について、本発明者は、特許文献1において、分娩時の胎児の危険度のレベルを特定する装置を開示している。当該装置は、患者におけるFHRと母体の子宮活動とを少なくとも示す入力信号を受信するように動作する1以上のコンピュータを備え、1以上のコンピュータは更に、(i)FHRから、ベースラインのFHRの変動、FHRの加速、及びFHRの減速を少なくとも決定し、(ii)少なくとも、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び(e)母体の子宮活動の各々が、少なくともパラメータ(a)~(e)について事前定義された複数の危険特性(non-reassuring characteristics)の中から、1以上の危険特性を呈示する時期を決定するように動作する。1以上のコンピュータは、(iii)分娩中の胎児の危険度のレベルを上昇させる1以上の先行パラメータの患者の存在を示すユーザ入力を受信し、(iv)分娩中の胎児の危険度のレベルを上昇させる1以上の臨床上の先行パラメータの総数、及び、各々が同時に独立して、分娩中の所定の時点での1以上の危険特性を呈示するパラメータ(a)~(e)の総数のみを考慮した胎児に対する現在の危険度のレベルを、分娩中の所定の時点で決定するように更に動作する。本発明においては、一貫したEFMデータの評価が生じること、ひいては、神経損傷について危険度のある胎児を一貫して特定できることが実証されている。
【0012】
EFMデータを解釈し、分娩及び出産時の胎児の治療成績を改善するための従来の手段の更なる改善について、本発明者は、分娩中の胎児の危険度のレベルを特定するための装置であって、患者における胎児心拍数(FHR)と母体の子宮活動とを少なくとも示す入力信号を受信するように動作する1以上のコンピュータを備え、コンピュータは、(i)ベースラインのFHRの変動、FHRの加速、及びFHRの減速を決定し、(ii)少なくとも、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び(e)母体の子宮活動の各々が、少なくともパラメータ(a)~(e)について事前定義された複数の危険特性の中から、1以上の危険特性を呈示する時期を決定するように動作することを、特許文献2において開示しており、該開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。コンピュータは、(iii)分娩中の胎児の危険度のレベルを上昇させる、1以上の(f)母体の危険度因子、(g)産科の危険度因子、及び(h)胎児の危険度因子の患者の存在を示すユーザ入力を受信し、(iv)各々が同時に独立して、分娩中の所定の時点での1以上の危険特性を呈示するパラメータ(a)~(e)の総数、及び、存在するパラメータ(f)~(h)の総数のみを考慮した胎児に対する現在の危険度のレベルを、分娩中の所定の時点で決定するように更に動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第9131860号
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0274618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術は、分娩及び出産時の治療成績の改善について期待できる一方で、進行性の低酸素症と酸血症の結果としての新生児の神経障害は続行するため、更なる解決が必要な課題が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
新生児の神経損傷の危険度を低減するための方法及び装置が開示されている。
【0016】
一実施形態においては、本方法は、
(I)分娩中の妊娠患者において、胎児としての子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合をモニタリングする工程と、
(II)患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定する工程であって、決定された現在の危険度のレベルは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する工程と、
(III)子供の出産後の最初の5分以内に、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについて子どものモニタリングを開始する工程、及び/又は、子供の出産後の最初の60分以内に、神経損傷又はその発生について子どもを治療するための1以上の処置を実施する工程と
を含む。
【0017】
一実施形態においては、モニタリング工程(I)は、妊娠患者において、少なくとも、(a)胎児心拍数(FHR)、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速の各々のパラメータをモニタリングして、各々のパラメータが、同時に独立して、複数の事前定義された危険特性に由来する1以上の危険特性を呈示しているかを決定する工程を含み、決定する工程(II)は、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々が同時に独立して1以上の危険特性を示す少なくとも(a)~(d)のモニタリングしたパラメータの総数のみを考慮して、子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを決定する工程を含む。
【0018】
別の実施形態においては、モニタリングする工程(I)は、妊娠患者において、少なくとも、(a)胎児心拍数(FHR)、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び(e)母体の子宮活動の各々のパラメータをモニタリングして、各々のパラメータが同時に独立して、事前定義された複数の危険特性に由来する1以上の危険特性を呈示しているかを決定する工程を含み、決定する工程(II)は、分娩中の所定の時点で、各々が同時に独立して1以上の危険特性を示す少なくとも(a)~(e)のモニタリングしたパラメータの総数のみを考慮して、子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを決定する工程を含む。
【0019】
本発明の一態様によれば、工程(II)は、決定された現在の危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを子供に割り当てる工程を更に含む。
【0020】
別の態様においては、事前に定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、決定された現在の危険度のレベルは、3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、割り当てられた危険度のカテゴリは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の事前定義されたレベルのうちの1つに対応する。
【0021】
更に別の態様においては、予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む。
【0022】
特定の実施形態においては、本方法は、子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた1以上の出生後パラメータに基づいて、子供の神経損傷の潜在的な危険度を特定する工程(IV)を更に含み、子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた1以上の出生後パラメータは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する。
【0023】
一態様においては、工程(III)の神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータは、新生児血中pH、ベースエクセス、新生児心拍数(NHR)、及びpOの群から選択される。
【0024】
本発明の一態様においては、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルは、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づき、出産と出産後の少なくとも30分との間の期間に取得された神経損傷又はその発生の1以上の出生後パラメータの履歴データと相関させた、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される。
【0025】
別の態様においては、神経損傷又はその発生に対し子供を治療するための1以上の処置は、出産時並びに臍帯の締結及び切断前に新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、臍帯の締結及び切断後に新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、脳冷却を実施すること、並びに/又は他の治療的処置を実施することから選択される。
【0026】
本発明は、更に、新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減する装置であって、
モニタリングされた分娩中の患者から、胎児としての子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合に対応する入力信号を受信し、
新生児の子供から、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータに対応する入力信号を受信し、
患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定し、決定された危険度のレベルが、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する
ように動作する1以上のコンピュータと、
1以上のコンピュータに動作可能に接続された1以上の出力部と
を備え、
前記1以上のコンピュータは、
決定された危険度のレベル、及び/又は、それに対応する新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つと、
1以上の出生後パラメータに対応する受信した入力信号を示す情報と
を、1以上の出力部を介して、遅くとも子供の出産後の最初の5分までに表示するように更に動作する。
【0027】
一実施形態においては、パラメータの第1集合は、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含む。本実施形態においては、入力信号は、少なくともFHRを含み、1以上のコンピュータは、FHRの入力信号に基づいてパラメータ(a)~(d)を決定するように動作する。神経損傷についての子供に対する現在の危険度のレベルの決定は、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々のパラメータ(a)~(d)が、1以上の危険特性を呈示しているかの決定と、同時に1以上の危険特性を呈示したパラメータ(a)~(d)の数を、同時に独立して1以上の危険特性を呈示したパラメータ(a)~(d)の数に対応する、神経損傷についての子供に対する現在の危険度のレベルの表示への変換とを含む。
【0028】
一態様によれば、入力信号は、母体の子宮活動を示す入力信号を更に含み、パラメータの第1集合は、(e)母体の子宮活動を更に含み、1以上のコンピュータは、FHR及び母体の子宮活動の入力信号に基づいてパラメータ(a)~(e)を決定するように動作する。神経損傷についての子供に対する現在の危険度のレベルの決定は、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点で、各々のパラメータ(a)~(e)が1以上の危険特性を呈示しているかの決定と、同時に1以上の危険特性を呈示したパラメータ(a)~(e)の数を、同時に独立して1以上の危険特性を呈示したパラメータ(a)~(e)の数に対応する、神経損傷についての子供に対する現在の危険度のレベルの表示への変換とを含む。
【0029】
一態様によれば、1以上のコンピュータは、決定された現在の危険度のレベルに基づいて、複数の事前定義された危険度のカテゴリのうちの1つを子供に割り当てるように更に動作する。
【0030】
別の態様によれば、事前定義された危険度のカテゴリは、3つの危険度のカテゴリを含み、決定された現在の危険度のレベルは、3つの危険度のカテゴリのうちの1つに該当し、割り当てられた危険度のカテゴリは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルの1つに対応している。
【0031】
更に別の態様については、予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含む。
【0032】
更なる特徴によれば、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータは、新生児血中pH、ベースエクセス、新生児心拍数(NHR)、及びpOの群から選択される。
【0033】
本発明の方法と同様に、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルは、患者における子宮頸部の拡張10cmと子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づき、出産と出産後の少なくとも最初の約30分との間に取得された神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータの履歴データと相関させた、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される。パラメータの第1集合は、一実施形態においては、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含み、1以上の出生後パラメータは、ベースエクセスを含む。別の実施形態においては、パラメータの第1集合は、(e)母体の子宮収縮を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付の図面から理解されるであろう。
【0035】
図1図1は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児の調査母集団について、モニタリングした新生児のベースエクセスのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、ベースエクセス値の中央値を示している。
図2図2は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児の調査母集団について、モニタリングした新生児のベースエクセスのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、ベースエクセス値の平均値を示している。
図3図3は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児の調査母集団について、モニタリングした新生児のベースエクセスのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、ベースエクセス値の中央値の倍数(MoM:multiple of median)を示している。
図4図4は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpHのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pH値の中央値を示している。
図5図5は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpHのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pH値の平均値を示している。
図6図6は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpHのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pH値の中央値の倍数(MoM)を示している。
図7図7は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児の心拍数のパラメータの経時変化を比較したグラフであり、心拍数の中央値を示している。
図8図8は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児の心拍数のパラメータの経時変化を比較したグラフであり、心拍数の平均値を示している。
図9図9は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児の心拍数のパラメータの経時変化を比較したグラフであり、心拍数の中央値の倍数(MoM)を示している。
図10図10は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpOのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pO値の中央値を示している。
図11図11は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpOのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pO値の平均値を示している。
図12図12は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児のpOのパラメータの経時変化を比較したグラフであり、pO値の中央値の倍数(MoM)を示している。
図13図13は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児の反応性のパラメータの経時変化を比較したグラフであり、反応性の中央値を示している。
図14図14は、FRIスコアに応じてグループ分けされた新生児について、モニタリングした新生児の反応性のパラメータの経時変化を比較したグラフであり、反応性の平均値を示している。
図15】は、FRIスコアのレベルと、新生児が「高い危険度(high risk)」(例示的な実施形態においては、ベースエクセスが-12よりも悪いと定義)を示す期間との間の相関関係を示すカプランマイヤー(Kaplan Meier)のグラフである。
図16図16は、本発明による装置のための例示的な構造を示す図である。
図17図17は、本発明による装置のための第2の例示的な構造を示す図である。
図18図18は、本発明による例示的な出力ディスプレイの第1実施形態である。
図19図19は、本発明による例示的な出力ディスプレイの第2実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
要求に応じて、本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示する。しかしながら、開示された実施形態は、多様な形態及び代替的な形態で具現化できる本発明の単なる例示であることを理解すべきである。添付の図面は、必ずしも縮尺したものではなく、特定の構成要素の詳細を示すべく、特徴の一部が誇張又は最小化される場合がある。したがって、本明細書で開示される特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的に解釈すべきではなく、単に、本発明を多様に用いることを当業者に教示するための典型的な根拠として解釈すべきである。
【0037】
本発明は、出産直後の期間内の新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減するための方法及び装置を提供する。
【0038】
本明細書において、「子供(child)」とは、出産前の子供(すなわち、胎児)及び出産後の子供(すなわち、新生児)の双方を包含することを意図している。「胎児(fetus)」及び「胎児としての子供(child as a fetus)」という用語は、「新生児(neonate)」及び「新生児の子供(neonatal child)」という用語と互換的に用いられる。また、文脈上、「子供」は、胎児としての子供及び新生児としての子供のことである。
【0039】
特許文献2に説明されるように、収束パターンは、胎児の神経損傷の開始の合図となる。しかしながら、当該パターンは分娩中に見られるが、少なくとも部分的には、胎児モニタ(例えば、胎児頭皮モニタ、又はFSE)は処置中に脱離されるため、出産の手術中にはほとんど見られない。その代わり、新生児の健康の評価は、Apgarスコアを通して、より複雑な症例では、pH、重炭酸塩(bicarb)、及びベースエクセスなどの定期的な測定を通して主になされてきた。出生前にされているような心拍数のモニタリングの継続及び記録は、手順の一部ではない。
【0040】
また、胎児期から新生児期への適応は、一般的には出生から円滑に進行すると一般的には推定される。このような観点から一般的に受け入れられている見解は、ベースエクセスを臍帯血の評価から毎分0.1ユニットずつ改善することである。それにもかかわらず、本発明者は、新生児の胎児循環から成人循環への転換に問題がある場合、新生児蘇生の初期の数分間に転換が生じうるか、あるいは生じることを発見した。胎児循環及び成人循環に関連する経緯の基本的な理解を例示する。
【0041】
動脈管は、血液が右心室から流出するように胎児期は開放されている。血液の大部分は、上右心室に入り込む大静脈から流入し、三尖弁を通って右心室に流れ、次いで肺動脈弁を通過する。この脱酸素した血液は、開放された動脈管から大動脈に流入し、脳への血液再配分(brain sparing)をしない場合、胎盤及び胎児の身体に流入する。子宮内胎児発育遅延(IUGR:intrauterine growth restriction)として知られるように、脳(又は頭部)への血液再配分をする場合、末梢抵抗が増加し、酸素付加のない血液の多くが脳に再度流入する(UAのS/D比の増加、MCAの比率の低下)。脳内出血及び脳梗塞の危険度が増加するのは、酸素付加された血液が少ないにもかかわらず、血流が増加するためである。
【0042】
通常の新生児蘇生においては、肺は拡張する。界面活性物質は、肺胞及び気管支を開放し、卵円孔及び動脈管が閉塞する。肺に流入した酸素は、右心室からの血液に捕捉され、肺動脈を経由して左心房に戻り、僧帽弁から左心室に入り、大動脈弁から出て、大動脈並びに脳及び身体に流入する。
【0043】
持続的な胎児循環は、アシドーシス又は不全の胎児に生じる。臍帯を締結した後、換気とともに肺は拡張できるが、血流は、卵円孔及び動脈管を持続的に通過するため、低下したままとなり、酸素付加のない血液が脳に送られることになる。全身の血管抵抗が増加すると、脳は低酸素症、脳梗塞、及び脳内出血を引き起こす。卵円孔及び動脈管が閉塞すれば、酸素濃度は向上する。しかし、不全の胎児においては、それが著しく制限されており、転換が遅れるか、あるいは全く起こらない可能性があるというのが本発明者の仮説である。代わりに、痙攣又は細動(trickle)が生じる。脳への血流は、蘇生により胎児が好転すると増加する。
【0044】
出産後、臍帯が締結された時点で、出生後の脳の酸素付加を確立するための臨界期が存在する。成人の場合、脳の損傷には、3分の無酸素状態しか要しない。一方、臍帯が締結されていない子宮内の胎児では、取り返し不能な脳の損傷が生じるまでの時間は、概ね15分である。本発明者は、胎児予備能が低下し、酸素付加がボーダーラインの不全の胎児が神経損傷を多くの場合に受けるのは、新生児期の最初の数分間(約5分間)であると理論づけている。すなわち、新生児の損傷の原因は、胎児循環から新生児循環への転換の遅れに由来している。残念なことに、上述の損傷は従来の新生児評価では識別されていない。したがって、新生児の即時蘇生が優れているように見えても、従来の分娩手順においては、既に不全の新生児は神経損傷を受ける可能性がある。
【0045】
本発明者は、このような神経損傷の機序と、従来可能とされたものよりも更に早く潜在的な危険度を特定する手段とを認識し、新生児の神経損傷の危険度を低減する方法及び装置を提案している。
【0046】
一般に、本方法は、(I)分娩中の妊娠患者において、胎児としての子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合をモニタリングする工程と、(II)患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定する工程であって、決定された現在の危険度のレベルは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する工程と、(III)子供の出産後の最初の5分以内に、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについて子供のモニタリングを開始する工程、及び/又は、子供の出産後の最初の60分以内に、神経損傷又はその発生について子供を治療するための1以上の処置を実施する工程とを含む。
【0047】
[胎児のモニタリング]
本明細書に記載の本発明の例示的な実施形態においては、患者は、子供の神経損傷の危険度のレベルを確立するために用いられるパラメータの少なくとも第1集合について分娩中にモニタリングされる。上述のパラメータは、(a)ベースラインのFHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含む、EFMに関連する複数の可変的な動的パラメータを含む。任意で、上述のパラメータは、子宮内活動(「IUA」)に関連する動的パラメータである(e)母体の子宮活動(すなわち、子宮収縮)を更に含む。この文脈においては、モニタリングされる患者は、モニタリングされるパラメータに適した、母体及び/又は胎児をいう。例示的な実施形態においては、モニタリングされる上述のパラメータは、以下の表1に説明する特性に従って、安定(assurance)又は危険(non-reassurance)について評価される。
【0048】
【表1】
【0049】
任意で、モニタリングされたパラメータは、(f)母体の危険度の因子、(g)産科の危険度の因子、(h)胎児の危険度の因子(EFMとは別個)といった、母体、産科、及び胎児の危険度(MOFR:maternal, obstetrical, and fetal risks)の特定の追加の因子(EFM変数とは別個)を更に含むことができる。上述の例について、「母体の危険度の因子(Maternal Risk Factors)」のパラメータ(f)は、
1)胎盤の心拍出量/血管灌流量の低下
a.妊娠中に心拍出量が減少する危険度のある心疾患
b.高血圧症(慢性及び妊娠誘発性)
c.全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)など
2)酸素運搬能力
a.肺疾患(例:気管支喘息)
b.貧血及びヘモグロビン血症
3)感染症(慢性及び急性)
4)慢性的な衰弱性疾患
5)吸収不良/体重増加不良
6)内分泌系疾患 - 糖尿病及び甲状腺疾患
7)母体の年齢の上昇
8)薬物乱用、依存症、及び喫煙
9)肥満 - 体格指数(BMI:body mass index)35以上
10)低身長(≦5’2”)
11)硬膜外麻酔
といった危険特性を含有する。
【0050】
上述の例について、「産科の危険度の因子(Obstetrical Risk Factors)」のパラメータ(g)は、
1)IUGR(子宮内胎児発育遅延)/巨人症
2)羊水過少
3)羊水過多
4)出血及び剥離
5)帝王切開歴
6)胎盤及び臍帯の異常
7)破水(早期前期破水(PPROM:preterm or premature rupture of membranes)、自然破水(SROM:spontaneous rupture of membranes)、人工破水(AROM:artificial rupture of membranes))
8)難産(分娩の延長及び停止の障害)
9)胎位異常
といった危険特性を含有する。
【0051】
最後に、上述の例について、「胎児の危険因子(Fetal Risk Factors)」のパラメータ(h)は、
1)ドップラー/バイオフィジカルプロファイル(BPP:biophysical profile)での異常
2)遺伝性疾患
3)胎児の不整脈
4)胎便の排泄
5)絨毛羊膜炎
6)分娩の第2期 - 息み(pushing)
7)羊水注入(Amnioinfusion)
8)胎児の不耐性によるピトシンの投薬中止
9)転換パターン(急性遷延一過性頻拍(170bpm超)の場合)
10)前兆となるオーバシュート
11)徐脈(100bpm未満)
12)分娩における重要なデータの欠落(例:第二期におけるEFMの欠如)
といった危険特性を含んでいる。
【0052】
上述の様々なパラメータの解釈は慣例によってすることができ、特許文献1及び特許文献2において本発明者が開示した方法論を用いることを選択的に含むことができる。更に詳細には、それらの文献に開示された一実施形態によれば、本方法は、最も一般的には、各々のモニタリング又は評価されたパラメータが、例えば上述の危険特性などの1以上の危険特性を独立して呈示するかを決定する工程と、同時に独立して1以上の危険特性を呈示するこれらのパラメータの数、及び/又は、存在するこれらのパラメータの数に対応する、現在の危険度のレベルの、「胎児予備能指標」(FRI:fetal reserve index)スコアと呼ばれる指標を導出することとを含む。その例示的な方法論によれば、一方では同時に独立して1以上の危険特性を示すパラメータの数と、他方では神経損傷の現在の危険度のレベルの表示とが、直接的に関連づけられる。したがって、例えば、パラメータ(a)~(e)をモニタリングする方法による神経損傷の最高の危険度のレベルは、パラメータ(a)~(e)の各々について1以上の危険特性を同時に独立して呈示すること、及び/又は、パラメータ(a)~(e)の各々の患者が存在することに対応し、一方、神経損傷の最低の危険度のレベルは、これらのパラメータのいずれについても任意の危険特性の提示がないこと、及び/又は、これらのパラメータのいずれかの患者が存在することに対応する。
【0053】
(a)~(e)のパラメータは動的パラメータであり、換言すると、モニタリングの期間中にいずれかの方向への変化を受ける(例えば、正常な状態、つまり安全な状態から、異常な状態、つまり危険な状態に変化し、逆にも再度変化する)。一方、MOFRパラメータ(f)~(h)は、本質的に一方向性であり、換言すると、(分娩の期間中であっても、その前であっても)発生した時点で(及び発生した場合に)、FRIスコアに負の影響を与える。また、各々のパラメータ(f)~(h)の危険特性の発生は、例示的な実施形態において、FRIスコアに負の影響を十分に与えるものであることが理解されるであろう。例えば、「母体の危険度要因」のパラメータ(f)が、上記の11個の例示的な危険特性のうちの1以上を呈示することは必要とされない。
【0054】
本開示の文脈における「同時(simultaneous)」とは、全く同じか、少なくとも、各々のモニタリングされたパラメータの安全/危険の決定が重なる分娩中の時点を意味する。例示的な実施形態においては、この危険度の評価は、IUAパラメータ(e)に対する安全/危険の決定と一致する20分間隔で行われる。
【0055】
本開示の文脈における「独立(independent)」とは、各々のモニタリングされたパラメータによる1以上の危険特性の呈示/非呈示が、他のモニタリングされたパラメータによる1以上の危険特性の呈示/非呈示に関係なく、現在の危険度のレベルの決定に影響を与えることを意味する。すなわち、各々のモニタリングされたパラメータの呈示/非呈示は、決定された現在の危険度のレベルに集合的に影響を与えるが、各々のモニタリングされたパラメータは、安全/危険特性の呈示について、他のパラメータとは別個に検討される。
【0056】
例示的な実施形態においては、FRIスコアは、各々のモニタリングされたパラメータ((a)~(h)など)が、正常(すなわち、安全)と判断された場合に第1の数値(例えば「1」)を割り当て、異常(すなわち、危険)と判断された場合は第2の数値(例えば「0」)を割り当てるように導出される。第1の数値及び第2の数値は、各々のパラメータについて同じ値である。換言すると、2つの値(例えば、「1」又は「0」)のみが用いられる。当該例についてFRIスコアは、パラメータ数(例えば、5)で点数を除算し、100を乗算して算出して、百分率で提供される。一例として、合計5つのモニタリングされたパラメータ((a)~(e))であれば、点数を5で除算し、100を乗算して算出して、百分率で提供されたFRIスコアが得られる。正常である5つのパラメータ((a)~(e))の場合、FRIスコアは100%(5/5)となる。一方、モニタリングされたFRIパラメータ(a)~(e)のいずれかに異常又は危険特性の存在に応じて、点が減少した場合、FRIスコアは、80%(4/5)、60%(3/5)、40%(2/5)、20%(1/5)、及び0%(0/5)となる。一方、8つのパラメータ((a)~(h))が正常である場合、FRIスコアは100(8/8)となり、モニタリングされたFRIパラメータ((a)~(h))のいずれかに異常又は危険特性の存在に応じて、点が減少した場合、FRIスコアは、100(8/8)、87.5%(7/8)、75.0%(6/8)、62.5%(5/8)、50.0%(4/8)、37.5%(3/8)、25.0%(2/8)、12.5%(1/8)、及び0%(0/8)となる。
【0057】
例示的な実施形態においては、神経損傷の現在の危険度のレベルの特定は、少なくとも、各々のパラメータ(例えば、(a)~(h))が存在する場合には、他のパラメータから独立して判断することによってなされる。したがって、本発明の範囲内にある現在の危険度のレベルを特定する方式は、一部の従来の方法論の場合のように、任意のパラメータ間の相互依存性の結果ではなく、逆に厳密には、患者に存在するパラメータの数、及び/又は、それらの呈示された特性における、同時性はあるが独立性のある危険度の関数である。前述のように、この方法論は、モニタリングされたパラメータの1以上の特性によって示される危険度を考慮しないという点でも差別化される。逆に、パラメータ(例えば、(a)~(e)又は(a)~(h))について所定の危険特性に従った危険の呈示により、各々のパラメータが現在特定されている危険度のレベルに等しく寄与するように、パラメータは等しく好適に重み付けされている。
【0058】
また、本発明の方法が、事前定義された危険度のカテゴリを子供に割り当てる工程を包含し、事前定義された危険度のカテゴリは、決定された現在の危険度のレベルに対応することは、例示的な実施形態において意図されている。例えば、神経損傷の現在の危険度のレベルは、上述したような特定のFRIスコア、及び/又は、解釈を容易にするための等級の双方によって特定できる。例えば、限定しないが、「等級(grade)」の一例は、交通信号に似た任意の色彩範囲の形態をとる。本開示の例においては、最も低い現在の危険度のレベルは「緑色の範囲(green zone)」として特定され、50%を超えるFRIスコアを包含する。胎児ついての現在の危険度のレベルの(最低レベルに対する)増加は、「黄色の範囲(yellow zone)」として特定され、26%を超え、かつ50%以下のFRIスコアを包含する。最も高い現在の危険度のレベルは、「赤色の範囲(red zone)」として特定され、25%以下のFRIスコアを包含する。
【0059】
治療処置又はその他の介入については、FRIスコアが「緑色の範囲」にある場合、例示的な方式によれば行動を引き起こす合図とはならない。比較上、「赤色の範囲」にあるFRIスコアによって、即時分娩が求められると解釈するものではなく、逆に、状況を評価できる上級のスタッフに即時の注意を惹起するものである。分娩中においては、オキシトシンの中止、患者の体位の変更、静脈内輸液の増量、マスクによる酸素の投与など、子宮内蘇生のための試みが通常、最初の行動となる。「赤色の範囲」に入ると、介入までの秒読みを更に開始すべきであり、例示的な管理手順によれば、最大40分で「赤色の範囲」から抜け出すことが可能である。これに失敗した場合は、ACOGガイドラインに従って、30分で出産プロトコルが開始される。同様に、「黄色の領域」においては、例示的な方式のもと、介入が必要な可能性に対する臨床家の注意を高めることが推奨されている。
【0060】
[新生児のモニタリング]
本明細書に記載の本発明の実施形態においては、新生児は、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについてモニタリングされる。これらのパラメータは、限定しない例として、i)変動性、変動性の回復までの時間、及びベースラインに復帰するまでの時間を含む新生児心拍数(NHR)、(ii)ベースエクセス値(例えば、血液ガス分析により決定される)、及び(iii)pOを含む。
【0061】
この例示的な実施形態について、NHRは、「ベースライン速度(baseline rate)」(換言すると、10分間にわたって測定された、収縮を除いた平均心拍数)を包含し、ベースライン速度の危険特性は、165bpmを超える心拍数又は100bpm未満の心拍数、上昇又は低下した当該心拍数の持続時間、及び心拍数変動の低下の持続時間のいずれかである。
【0062】
本実施形態においては、「ベースエクセス(BE:Base Excess)」は、華氏98.6度(37℃)でpCOが40mmHgであるときに、新生児の血液を生理学的レベルである7.4に復帰させるべく、新生児の血液1リットルに加えるべき塩基又は酸の量である。ベースエクセスが平均より低いと危険であり、12mIU/ml以下の数値は、神経障害の危険度が高いと判断される。
【0063】
また、本実施形態においては、「pO」は臍帯の酸素を指す(16.3mmHgが中央値)。pOが平均値より低い場合は、危険と判断される。
【0064】
これらのパラメータ(i)~(iii)は、従来の方法でモニタリングし、評価できる。
【0065】
当然ではあるが、前述のパラメータは排他的なものでも網羅的なものでもないことは理解されるであろう。他のパラメータは、限定しない例として、呼吸数、動き、音色、及び色彩(APGARスコア)などを含む。
【0066】
本発明によれば、モニタリングの期間は、少なくとも新生児の出産時からであり、かつ、限定しない例として、出産後1時間から2時間の間であり、あるいは、これらの出生後の指標から新生児がもはや神経損傷の危険性がないと決定される時点である。
【0067】
[実験データ]
様々なパラメータ(例えば、FHR、NHR、pH、ベースエクセスなど)に対応する履歴上の胎児及び新生児のデータの評価により、本発明者の仮説、及び、新生児の神経損傷の危険度を低減する場合の本発明の有用性が検証される。
【0068】
特に、高い危険度の満期単胎妊娠の251件の記録からのデータを用いて、FRIとEFMの軌跡との間の関係、分娩の経過、及び生後1時間の新生児の治療成績を評価した。データは1970年代に収集されたもので、主に南カリフォルニア大学のLAカウンティ(LA County)病院で行われ、一部はエールニューヘブン(Yale New Haven)病院で行われた。各々の症例は、MFM所属の主治医により監督した。モニタリング欄は、5つのデータライン(EFM、収縮パターン、拡張変動の軌跡、母体の呼吸、及び母体の心拍数)を有していた。出産後、新生児心拍数(NHR)、呼吸数、ECG、留置カテーテルによる血圧、pH、並びに臍動脈の臍帯血(CB:cord blood)のBE及びpOについて分析が継続されていた。頭皮の採取、頭皮の採取の結果(pH、ベースエクセス、pOなど)、血圧、投与した薬剤、提供した麻酔、及び他の関連データの記録全体に沿った注釈が同時期に提供されていた。出生前、頭皮の採取は指示通りに行われ、モニタリング欄に記録されていた。出生後は、1分、4分、8分、16分、32分、及び64分に臍帯のガスが定期的に採取されていた。新生児の観察は、1分及び5分のApgarスコアと、出産前の速度及び反応性に復帰するまでの時間を示したNHRと、臍動脈のpH、BE、及びpOと含んでいた。これらの記録の大部分は、前述の全ての測定値を含んでいた。
【0069】
251人の患者の帝王切開率は4.5%で、介助分娩は20%であった。
【0070】
全てのモニタリングは、破水があった際に、胎児頭皮電極(FSE)と子宮内圧カテーテル(IUPC)とを所定の位置に装着して開始された。NHRは、分娩時のFHRと同様に継続的に記録された。
【0071】
これらのデータは、主として、最後のFRIスコアと直後のNHRパターンとの関係、及び臍帯/新生児の酸塩基平衡の関係について評価した。
【0072】
低酸素性虚血性脳症(HIE)についてのACOGの基準によると、データの集合には不全の新生児はいなかったため、これらのデータの評価においては、32分後の読み取りにおける最も悪い25%の症例を従属変数として使用した。
【0073】
BEについては、BEが-12mmol/L以上の安全なレベルに回復するまでの時間をカプランマイヤー分析で評価した。BEについては、二値ロジスティック回帰及び最小二乗(OLS)回帰を収束させることにより、産後の即時に生じる変化を評価した。更に、二次検査(例えば、FRI+CB、及びUAのBE)を組み合わせることで、感度の向上を評価した。
【0074】
pH及びベースエクセス量は非常に高い相関関係があるため(r=0.63、有意差0.001未満)、共線性の問題を低減すべく、ベースエクセス量のみを回帰分析に用いた。
【0075】
NHRの特徴(変動性、加速、及び減速)は、収縮がないものの、所定の間隔(1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分)で、現在のACOGカテゴリi-iii(CAT)で解釈した。新生児については、最大NHR、Apgarスコア、正常なベースライン速度に復帰するまでの時間、及び出産後の変動性について、評価がなされた。顕著な異常と思われる新生児のパターンは、「新生児カテゴリIll」(NCATIll:neonatal Category Ill)と定義し、出生後10分以内に持続する、(1)出産(出産での末期減速又は徐脈)後の復帰の遅延(回復の遅延)を伴う、あるいは伴わない重度の新生児頻拍(180bpm以上)、(2)反応性がないこと、及び(3)変動性の低下又は変動性がないことの全てを含めた。
【0076】
臍動脈の臍帯血のpHが7.00以下であるか、あるいは5分間のApgarスコアが3以下である胎児はいなかった。臍動脈の臍帯血のpHが7.03~7.10の胎児は7人で、全員が5分間のApgarスコア≧7であった。5分間のApgarスコアが4~6であった6人の新生児は、臍動脈の臍帯血のpHが7.20を超えていた。CAT Illの軌跡を示した胎児はいなかった。37人(14.8%)の胎児がCAT Iであり、214人(85.2%)の胎児がCAT IIに分類された.
【0077】
出産前の最後のFRIスコアと出産直後のNHRパターンとの関係及び臍帯/新生児の酸塩基平衡との関係を評価することを主な目的として、上述のデータ集合からの連続したEFM及び臨床データを、上述のFRIスコアの決定によって遡及的に評価した。
【0078】
FRIのスコアリングの結果は、更なる分析のために3つのグループに分けられた。出産前の最後の(そして通常は最も悪化している)FRIスコアが、緑又は黄色のゾーン(すなわち、FRIスコアが37.5%~100%)である患者は、「緑色~黄色(green-yellow)」と標識した。更に線形的な分布を得るために、最後のFRIスコアが赤色の範囲であった患者を、FRIスコアが12.5%を超え、25%以下である「赤(red)」と、の「深紅色(crimson)」(FRIスコアが0%)との2つのサブグループに分けた。
【0079】
FRIカテゴリによる患者の統計に差異はなかった。
【0080】
図1図14は、履歴データから多様にモニタリングされた新生児パラメータの経時変化を比較したグラフを含み、ベースエクセス(図1~3)、pH(図4~6)、心拍数(図7~9)、pO図10~12)、及び反応性(図13~14)を含んでいる。図15は、FRIスコアのレベルと、新生児が「高い危険度」(例示的な実施形態においては、ベースエクセスが-12よりも悪いと定義)を示す期間との間の相関関係を示している。
【0081】
これらのグラフは、出生後の経時的(分単位、出生後約1分から出生後約64分まで測定)な、モニタリングされた新生児パラメータの傾向を示しており、出生後のデータは、FHRの軌跡の評価から、これらの履歴データに対し決定されたFRIスコアに応じて更にグループ化されている。
【0082】
特に図1~3によると、ベースエクセスについて、中央値(図1)と個々のスコアとの双方が概ね常に負であることに注目すべきである。したがって、個々のベースエクセスのスコアをベースエクセスのスコアの中央値で除算した場合、図3に示したように、正数が得られる。ベースエクセスの場合、「深紅色」のFRIグループは常に中央値よりも大きく(すなわち、1を超える)、緑色/黄色のグループは、常に中央値よりも小さい(つまり1未満)。これは、図3の図表に示されている。
【0083】
図1図15のグラフが一般的に示すように、FRIスコアが低いと、出生後約1分から出生後約64分までの期間の少なくとも一部について、ベースエクセス、pH、心拍数(NHR)、pO、及び反応性の、モニタリングされた新生児パラメータが危険な数値に転換する。別の方法で述べると、FRIスコアについて、出生時の新生児の状態が悪くなると、出生後の数分間で代謝状態が更に悪化し続け、モニタリングされたパラメータが回復して安全できる値に達するまでに更に長くかかる。pH及びベースエクセスの双方の回復の勾配及びパターンは類似しており、パラメータにおいて3つの並列の曲線になって出現することを示しているが、主な違いは、臍帯血から得られる数値、回復開始の4分前又は8分前での数値の低下の程度、及びベースエクセスが-12MIU/ml以下(文献においては、一般的に真の神経損傷の危険性がある時点と判断される)で維持される期間であった。
【0084】
図15については特に、各グループ(深紅色、赤色、緑色~黄色)について、安全なBE(-12以上)に回復するまでの時間が示されている。深紅色のFRIグループについては、約42%の新生児が出産後10分で、未だにBEが-12以下である。赤色のFRIグループについては、21%が出産後10分で、未だにBEが-12以下である。最後に、緑色~黄色のFRIグループについては、約8%の新生児のみが出産後10分で、安全なBEのレベルに達していなかった。これらの曲線の形によって証左されるように、これらは顕著かつ持続的な差異である。これに対し、深紅色のFRIグループのうち約18%が、出産後20分では、未だに安全なBEの範囲にないが、赤のFRIグループのうち約8%が未だに安全なBEゾーンにおらず、緑色~黄色のFRIグループのうちごく少数が安全なBEの範囲(例では、-12より大きい)に未だに到達していない。
【0085】
7.00未満のpH、及び-12未満のベースエクセスは、CP及び神経学的な不全の危険度のしきい値と多くの場合判断されてきた。
【0086】
上述の結果は、出生前の7.00未満のpH、及び-12未満のベースエクセスという標準的な基準を満たさなかった一部の新生児に見られる神経学的な不全は、実際には胎内ではなく出生後早期に発生しうることを示唆している。一般的に認められている基準値を超えて数値が悪化するのは、この時期のみであるのがその理由である。
【0087】
同様に、頻脈、ベースラインへの復帰の遅れ、反応性の再開の遅れといったNHRの反応は、上述の結論と更に一致している。出産後の最初の10分以内に、これらの履歴データのNHRは、変動性及び反応性の損失とともに、一般的に180を超え、多くの場合200を超える顕著な頻脈の突然の発生を示した。しかしながら、NHRの上昇及び反応性の回復までの時間には、緑黄色、赤色、深紅色の症例間で明確な差異があった。危険度が高い(FRIスコアが低い)ほど、頻拍が多く、危険度が低いほど160bpmへの回復が早かった(等価性用のマンテルコックス(Mantel-Cox)のログランク検定、χ=20.02、p<0.000)。20分で、緑色~黄色のグループにおいては、71%の新生児が160以下に回復し、赤色のグループにおいては49%であったが、深紅色のグループでは28%であった(図7)。全体として、160bpm以下の相対的な安全性を得るには、緑色~黄色のグループにおいては平均31分、赤色のグループにおいては平均40分、深紅色のグループにおいては平均52分であった。
【0088】
pOのパターンは、pH又はベースエクセスのパターンを反映するものではなく、出産後は概ね全ての症例において、pOが増加した(胎盤を介するよりもより多くの酸素を取り込む、肺を介した酸素付加と一致している)。
【0089】
更に、出生前の変数(FRI)と出生後の変数(臍動脈の臍帯血、及び4分間の臍動脈測定値の双方)とを組み合わせて、新生児の回復に対するFRIスコアの影響を評価した(最小二乗回帰)。より具体的には、32分までに得られたBEのレベル、及び安全なレベルに回復するまでの時間を評価した。いずれの採血時間についても、FRIスコアのみ(モデル1)、及び新生児変数との組み合わせ(モデル2)の影響を評価した。モデル1及びモデル2の双方において、FRIスコアは、32分までに得られたBEのレベルと、BEが-12に回復するまでの時間の双方における、有意な分散量を明確にしている(R2は、それぞれ、0.16、0.14、ともにp<0.001)。
【0090】
臍動脈の臍帯血及び臍動脈の変数を考慮して、FRIスコアは、32分のBEのレベルと、BEが-12となるBEのレベルの回復時間の長さとに、独立した寄与を確保した(βは、それぞれ、0.13、0.15、ともにp<0.02)。臍動脈の臍帯血及び臍動脈のBEは、更にFRIの影響を考慮すると、これらの結果の双方に独立して有意に寄与している。モデル2は、32分のBEスコアの分散が51%であることと、回復時間の分散が34%であることとを明確にした。この分析は、出生前と出生後の変数を組み合わせることで、出生後の神経損傷の危険度の予測として、出生前のFRIスコアを単独で改善することを示している。
【0091】
独立変数としてのpOは、32分のBEのレベル又はBEが-12に回復する時間の明確化にはほとんど寄与しなかった。
【0092】
32分でのBEの危険度の感度に対する複合的な予測力を決定するために、FRIスコアと、同時に処理した臍帯血及び臍動脈のBEとの正味の感度が評価された。FRIスコアの感度は83%、臍帯血BEの感度は87%であった。全体として、32分で53例の最も低い25%のBEの症例のうち、38例を共通して特定できた。FRIスコアは、更に6例を独自に特定し、臍帯血のBEは更に8例を正確に特定した。したがって、正味の感度は、これらの共通かつ独自に特定された症例の合計となるか、あるいは、52/53症例(98%)となる。しかしながら、複合的な特異性は約23%に低下する。
【0093】
BEの分析を再現して、FRIスコアは、出生時又は4分のNHRの測定値を用いて、32分でのNHR、及び160bpm以下への回復時間を検討した。FRIスコアは、32分のNHR値及び回復時間の予測に顕著な影響を与えた。
【0094】
BE及びpOは、回復時間又は32分のレベルのいずれの予測にも寄与しなかった。
【0095】
FRIの感度は、最も悪い25%の32分のNHRのレベルについて、82%であった。86%の臍動脈の臍帯血のBEの感度を付加すると、2つの検査は共同で(双方とも異常)、最も悪い25%の32分のNHR症例の56例のうち40例を特定した。それぞれの検査は、更に15例を独自に特定した(合計55/56例)(感度98%)。正味の特異性は61%から37%に低下した。
【0096】
以下の表2は、出生後4分、8分、16分、32分、64分におけるFRIスコア及び新生児パラメータの決定係数(R-Squared)を示している。表2においては、各々の症例において、ベースエクセスのパラメータが従属変数となっている。
【0097】
【表2】
【0098】
以下の表3は、出生後4分、8分、16分、32分、64分におけるFRIスコア及び新生児パラメータの決定係数(R-Squared)を示している。表3においては、各ケースでpHcb(臍帯血pH)のパラメータが従属変数となっている。
【0099】
【表3】
【0100】
前述のデータが示すように、FRIは子宮外生活への適応のパターンを高い精度で予測できる。更に、これらのデータは、出生後最初の数分以内に測定された1以上のベースエクセスなどの測定値を組み合わせた、胎児の出産前に取得されたFRIスコアは、出生後約30分の新生児の状態を、新生児パラメータ自体よりも更に良好に予測することを、説得力を持って示している。
【0101】
[例示的な方法]
本明細書に記載の発見は、それ自体が新生児の人間の子供の神経損傷の危険度を低減する方法を導き、
(I)分娩中の妊娠患者において、胎児としての子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合をモニタリングする工程と、
(II)患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定する工程であって、決定された現在の危険度のレベルは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応する工程と、
(III)子供の出産後の最初の5分以内に、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについて子どものモニタリングを開始する工程、及び/又は、子供の出産後の最初の60分以内に、神経損傷又はその発生について子どもを治療するための1以上の処置を実施する工程と
を含む。
【0102】
異なる言い方、及び前述に提供した具体例の文脈においては、本発明の方法は、分娩中の妊娠患者において、FRIスコアの確立に関連する、本明細書に記載されたようなパラメータをモニタリングする工程を包含する。その後、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、出産後の少なくとも最初の5分の間に、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点についてのFRIスコアが決定される。必須ではないが、好適には、その決定は、子供の出産の直前の時点においてなされる。
【0103】
モニタリングされるパラメータは、本明細書で提供された例によれば、少なくとも、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、(d)FHRの減速、及び、任意に、(e)母体の子宮収縮の各々を含む。これらのパラメータを用いて神経損傷の現在の危険度のレベルを決定する方法は、FRIスコアに関連づけて前述してきた。
【0104】
前述したように、FRIスコアは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の所定のレベルに、統計的な有意性に対応づけることが発見されている。反復になるが、本明細書に記載の特定の例の文脈において、その予測される危険度の所定のレベルは、子どもの集団の各々について、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子どもの出産との間の分娩中の所定の時点でのFRIスコアに基づき、出産と出産後の少なくとも30分との間の期間に取得された神経損傷又はその発生の1以上の出生後パラメータのデータと相関させた、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される。要約すれば、履歴データの集合に含まれる各々の子供のFRIスコアは、出産後の神経損傷の危険度の指標に対応している。この相関関係を用いて、出産前の所定の時点でのFRIスコアを決定することで、新生児としての子供の神経損傷の危険度を予測する統計的に有意な根拠が得られる。
【0105】
本明細書において用いられている「履歴(historical)」とは、完成した出産の関連データを単に意味し、指しているものであることが理解されよう。本明細書で述べた実験例においては、データは1970年代に収集されたものである。しかしながら、関連データは、限定しない例として、現代のデータを更に含め、本発明の実施に関連して生成されたデータを含めることができる。
【0106】
当業者であれば理解できるように、本発明は、本発明の方法を実施することを含み、更なるデータが生成されたときに、それ自体を神経損傷の所定の危険度の改良に導く。換言すると、出生前及び出生後の双方のパラメータがモニタリングされる各々の新しい状況又は症例は、FRIスコアリングと出生後パラメータとの間の対応関係を評価し、ひいては、これらの追加データに基づいて、神経損傷の予測される危険度の所定のレベルを更に改良する機会を提供する。
【0107】
既述したように、本発明の方法は、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータについての子供のモニタリングが、子供の出産後の最初の5分以内に開始される工程、及び/又は、神経損傷又はその発生について子供を治療するための1以上の処置が、子供の出産後の最初の60分以内に実施される工程を包含する。本明細書に記載の例及び発見が明確にしたように、胎児循環から新生児循環への転換の進行は、これまで評価されてきたよりも円滑ではなく、更に、分娩中の胎児の神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータは、その転換の進行と対応させる意義がある。結果として、本発明により、介護者は、従前の可能な時期よりも更に早い分娩及び出産の過程において、新生児の神経損傷の危険度を特定し、ひいては、特定された危険度に適した工程を取ることができる。これらの処置には、少なくとも、出産後の最初の5分以内に新生児のモニタリングを開始する工程を含み、神経損傷又はその発生を示す出生後パラメータが検討される。現在のところ、このようなモニタリングは患者の治療の一部ではない。逆に、神経損傷に関連した治療処置のための新生児の評価は、出生後60分以上なされないのが一般的である。
【0108】
神経損傷の危険度が介入を正当化するのに十分なほど重大であるとした場合(この決定は従来の基準に基づくことができる)、医師又はその他の介護者は、神経損傷が実際に起こる可能性を排除又は低減するために必要な工程を取ることができる。このような介入は、出産時並びに臍帯の締結及び切断前に新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、臍帯の締結及び切断後に新生児に挿管及び/若しくは酸素吸入すること、脳冷却を行うこと、並びに/又は当業者に公知の他の治療的処置といった処置のうち、少なくとも1つを含む。反復になるが、本発明は、分娩及び出産において更に早期に危険度を特定し、ひいては、分娩後にモニタリングを迅速に実施することを保証して、同様に、必要に応じて介入を従来よりも早期に実施できるようにすることにより、これらの点で先行技術を改善する。
【0109】
本明細書の他の箇所に記載されているように、本発明の方法は、決定された現在の危険度のレベルに基づいて、1以上の事前定義された危険度のカテゴリ(例えば、「緑」、「赤」、「深紅色」)を子供に割り当てる工程を更に包含できる。既述したように、割り当てられたカテゴリは更に、新生児の神経損傷に対する予測された危険度の所定のレベルの1つに対応する。例えば、「深紅色」のグループ又はカテゴリは、予測される最も高い危険度のレベルを表している。当然ではあるが、カテゴリの数及び指定(例えば、「緑」、「赤」、「深紅色」)は例示的なものであり、限定を目的としたものではないことは理解されるであろう。
【0110】
本明細書の他の箇所でも述べたように、予測される危険度の複数の所定のレベルは、出産後の約30分間の予測されるベースエクセス値を含むことができる。反復になるが、本明細書で提供される特定の例の文脈においては、出産に近接したFRIスコアは、分娩後約30分でのベースエクセスの統計的に有意な予測因子を構成することが見出されており、出産時に近接してFRIスコアを確立することは、新生児の将来のベースエクセスについて意義のある予測を提供する。したがって、FRIスコアは、神経損傷の危険度を排除又は軽減するように、出産後のモニタリング及び治療を導くのに役立つ。
【0111】
前述の方法の変形例においては、子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた1以上の出生後パラメータ(例えば、新生児血中pH、ベースエクセス、新生児心拍数(NHR)、及びpO)に基づいて、子供の神経損傷の潜在的な危険度を特定する追加工程(IV)が含まれ、子供の出産後の最初の5分以内にモニタリングされた1以上の出生後パラメータは、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の所定のレベルの1つに対応する。
【0112】
異なる言い方、及び前述に提供した具体例の文脈においては、本発明の方法は、神経損傷又はその発生を示す、本明細書に記載のようなパラメータを新生児においてモニタリングする工程を包含する。次いで、子供の出産後の最初の5分以内に、出産後の将来の時点での子供の神経損傷について予測される危険度の所定のレベルが、出産後の最初の5分以内にモニタリングされた新生児パラメータと、出産後の時点、例えば、出産後の約30分の時点でモニタリングされた新生児パラメータとの間の予め確立された対応関係に基づいて決定される。
【0113】
反復になるが、本明細書に記載の例の文脈においては、予測される危険度の所定のレベルは、子供の集団の各々について、出産後最初の60分以内にモニタリングされた新生児パラメータに少なくとも基づき、神経損傷の危険度の履歴上の決定を含むデータ集合から導出される。出産後の異なる時点でのこれらのモニタリングされたパラメータ間の決定された対応関係を用いて、出産後の最初の5分間におけるこれらの新生児パラメータの1以上の数値の決定により、出産後の将来の時点での新生児の神経損傷の危険度を予測するための統計的に有意な根拠が得られる。
【0114】
反復になるが、当業者であれば、本発明は、本発明の方法を実施することを含めて、更なるデータが生成されると、神経損傷の所定の危険度の改良にそれ自体を導くことを理解するであろう。換言すると、出生後パラメータがモニタリングされる新たな状況又は症例は、出産後の様々な時期での出生後パラメータの値の対応関係を評価し、ひいては、これらの追加データに基づいて、神経損傷の所定の危険度を更に改良する更なる機会を与える。
【0115】
上記の実験データに説明されるように、FRIスコア及び1以上の新生児パラメータの双方を用いて、例えば出産後30分での危険度のレベルを決定する感度は、いずれかのパラメータを単独で用いるよりも優れている。その結果、本発明の追加工程(IV)は、出産後X分での危険度のレベルが、FRI又はモニタリングされた新生児パラメータを、他方を除外して用いて得られるものよりも、高い確実性で確立され得る変形例を提供する。本発明のこの形態によれば、新生児の神経損傷の所定の危険度に基づく履歴データは、一方においては、FRIスコアと出産後5分以内のモニタリングされた1以上の新生児パラメータの値の各々と、他方においては、出産後5分よりも遅い時間(例えば、約30分)でのモニタリングされた1以上の新生児パラメータの値との間の対応関係の評価を包含することが理解されるであろう。
【0116】
[例示的な装置]
一実施形態によれば、図16に示すように、本明細書の方法を実装するための装置10は、出産中に、例えば患者40に接続された1以上のセンサ30から、胎児としての子供のる神経損傷の現在の危険度のレベルを示すパラメータの少なくとも第1集合に対応する入力信号を受信し、新生児の子供から、神経損傷又はその発生を示す1以上の出生後パラメータに対応する入力信号を受信し、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の分娩中の所定の時点でのパラメータの少なくとも第1集合に基づく子供の神経損傷の現在の危険度のレベルを、患者における10cmの子宮頸部の拡張と子供の出産との間の期間に、かつ/あるいは、子供の出産後の少なくとも最初の5分の間に決定し、決定された危険度のレベルが、新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つに対応するように動作する1以上のコンピュータ20を備える。1以上の出力部50は、1以上のコンピュータに動作可能に接続されている。1以上のコンピュータは、決定された危険度のレベル、及び/又は、それに対応する新生児としての子供の神経損傷について予測される危険度の複数の所定のレベルのうちの1つと、1以上の出生後パラメータに対応する受信した入力信号を表す情報とを、1以上の出力を介して、子供の出産後の最初の5分以内に表示するように更に動作する。
【0117】
パラメータの第1集合について、1以上のコンピュータ10は、例示的な実施形態において、FHRの入力により、ベースラインのFHRの変動、FHRの加速、及びFHRの減速の各々を決定し、少なくとも、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速のいずれか1以上が、それぞれ1以上の危険特性を呈示する場合を決定し(例えば、コンピュータは、本明細書に記載のような、前述のパラメータについての危険特性をプログラムでき、それらの特性を入力信号と比較して、ベースラインのFHRの変動、FHRの加速、及びFHRの減速のデータを決定するように動作する)、更に、前述の方式などにしたがい、同時に独立して危険度のあるパラメータ(a)~(d)の数に対応する神経損傷の危険度のレベルを決定する。これは、例えば、前述のようなFRIスコアリング手法を実行する単純なアルゴリズムの実装によって達成できる。
【0118】
別の実施形態について、(e)母体の子宮活動の追加パラメータは、モニタリングを行い、危険度のレベルの決定に含めることができる。更にこの実施形態については、入力信号は、母体の子宮活動を示す入力信号を更に含み、1以上のコンピュータ10は、FHR及び母体の子宮活動の入力信号に基づいて、パラメータ(a)~(e)を決定し、各々のパラメータ(a)~(e)が1以上の危険特性を呈示するかを決定するように動作する(反復になるが、例えば、1以上のコンピュータは、本明細書に記載のような、前述のパラメータ(a)~(e)についての危険特性をプログラムでき、それらの特性を入力信号と比較するように動作可能である)。1以上のコンピュータは、同時に1以上の危険特性を呈示するパラメータ(a)~(e)の数を、同時に独立して1以上の危険特性を呈示するパラメータ(a)~(e)の数に対応する、子供に対する神経損傷の現在の危険度のレベルの表示に転換するように更に動作する。これは、既述したように、前述のようなFRIスコアリング手法を実行する単純なアルゴリズムの実装によって達成できる。
【0119】
これらの様々な要素20、30、及び50の動作可能な接続は、任意の既知の手段によって達成でき、太線で示されている。1以上の出力部50は、例えば、ビデオディスプレイ及び/又はプリンタ、警告灯(例えば、それぞれが異なる危険度のレベルに対応する複数のスコア特定ライトなど)、並びに可聴アラームなどで構成できる。また、代替的又は追加的に、本装置は、FHRの軌跡、子宮活動の軌跡、及び/又は、限定しない例として、特定された危険度のレベルに対して必要若しくは推奨される所定の行動に関連する1以上の臨床家への指示を含む、胎児に対して現在示されている危険度のレベルに関連する更なる情報を含む他の情報を提供するように動作することができる。このような他の情報は、例えば、1以上の出力部50を通じて提供できる。出力部は、選択的に、公開された特許文献2に記載されたディスプレイの形態を取り、神経損傷の新生児に対する決定された現在の危険度のレベルを更に表示するように本開示に従って修正できる。
【0120】
装置10は、図16に図示されているような、前述のパラメータを示すユーザ入力をモニタリング/受信することができる1以上のセンサ30を含む自己完結型ユニット、又は、他の別個のセンサ30’、30”からこれらのパラメータに対応する入力を受信する別個のユニット10’を含むことが考えられる(図17)。前者(図16)の場合、1以上の出力部50は、既述のように、従来のFHM及び子宮収縮センサで提供されるような、FHR及び母体の子宮収縮の軌跡を示すディスプレイ及び/又は印刷出力のうちの1以上を含む出力部を更に提供できる。後者の場合(図17)、装置は、FHM装置及び子宮収縮センサ(それぞれが独自の軌跡を提供する)に接続可能で、そこからデータを受信可能な別の装置にできる。
【0121】
図18及び図19によると、本発明の実施形態が示されており、出力部は、分娩及び出産、並びに胎児及び/又は新生児の神経損傷の危険度のレベルに関連する複数のデータを単一の出力ディスプレイで提供する。
【0122】
図18及び図19の各々の例においては、1以上のコンピュータは、前述の方法で、分娩中の所定の時点で、パラメータの第1集合に基づいて胎児に対する現在の危険度のレベルを決定し、新生児の心拍数(NHR)に対応する入力信号を受信するように動作する。1以上のコンピュータに連携する1以上の出力部は、(i)分娩中の胎児に対する決定された現在の危険度のレベルを示し、分娩に介入する可能性の必要性を示すための指標、(ii)子供の出産前の複数の離散的な期間でのFHR及びNHRに関する情報、及び(iii)子供の出産後の複数の離散的な期間でのNHRに関する情報の各々を、単一の視覚的な表示で示すモニタを備える。
【0123】
図18においては、出力部50’が、出産前の複数の離散的な期間でのFHRの各々に関する情報、及び出産後の複数の離散的な期間でのNHRの各々に関する情報を呈示する実施形態が示されている。図18に示すように、図示の実施形態におけるNHRの情報は、人工破水(AROM)の時点でのFHR105’、出産4分前のFHR110’、出産後2~6分後のNHR115’、出産後20分後のNHR120’、出産後40分後のNHR125’、及び出産後60分後のNHR130’の出産前及び出産後の複数の離散的な期間での、FHR及びNHRの軌跡の抽出物を構成している。FHR又はNHRにかかわらず、各々の軌跡の抽出物は、入手された特定の離散的な期間の前後に、例えば、40秒といった事前定義された増分を包含する。例えば、「出産の4分前」(110’)と指定された離散的な期間について示された軌跡の抽出物は、その離散的な期間におけるFHRの軌跡だけでなく、その時間の20秒前及び20秒後の軌跡も含む。
【0124】
図18の例示的な実施形態に示すように、表示が、FHR及びNHRの軌跡105’~130’のいずれか1以上に関連する追加情報を含むことが更に考慮される。例えば、図示された実施形態においては、FHRの軌跡105’及び110’の各々が軌跡の対応する時間でのFRIスコアをその近くに提供していることが示されている。また、FHRの軌跡110’の近くにて、pH、pO、及びBEの臍帯ガスのデータが提供されている。同様に、NHRの軌跡115’は、出産後1分及び5分におけるApgarスコアを含む。
【0125】
また、図18のディスプレイ50’には、分娩中の胎児に対する、決定された現在の危険度のレベルを示し、分娩への介入の可能性の必要性を示すための指標100’、101’が示されている。この指標は、図示された実施形態によれば、前述の方法で計算されたFRIスコアのグラフ表示を含有する。より具体的には、指標100’、101’は、前述したように、割り当てられた危険度のカテゴリを表す色分けされたバーを含む。また、図示の実施形態においては、指標100’、101’は、等価な時間の増分の数で計算されたFRIスコアを描くことを特徴とする。より具体的には、指標100’及び101’の各々は、連続した時間の中で、10分単位で計算された複数の連続したFRIスコアを示している。指標100’の場合、全期間は、FHR及びNHRの軌跡105’、110’、及び115’が提供する期間を包含し、指標101’は、NHRの軌跡120’、125’、及び130’が提供する期間を包含する。理解されるように、この対応は、関連するFRIスコアとNHR/FHRデータとの相関を可能にする。
【0126】
指標100’及び101’は、図18の実施形態に示すように、FRIスコア、並びに/又は、分娩及び出産の進行に関する重要な事象又は他の関連データに関する情報を更に含むことができる。例えば、指標100’は、AROM、メコニウム通過(MECON:meconium passage)、分娩第2期(2ND)の開始、及び分娩(この例においては、正常な自然経膣分娩(NSVD:normal spontaneous vaginal delivery)として特定される)を特定する文章を含む。
【0127】
図18の実施形態の指標100’及び101’は、必ずしも分娩及び出産の全過程にわたるFRIスコアを示すものではないことが理解されよう。逆に、図18の実施形態においては、指標100’及び101’のFRIスコアは、110’~105’のFHR及びNHRの軌跡に示される情報に関連する期間を含んでいる。
【0128】
当然ながら、前述の情報及び指標は、それが発生した時点で、又は少なくとも発生した後に、ディスプレイに表示可能であることは理解されるであろう。したがって、「出産の4分前」と指定されたFHRの軌跡(110’)は、分娩中に発生するまで、ディスプレイ50’に表示されないであろう。
【0129】
更に、本発明により、ディスプレイ50’が、示すべき情報の概要、及び他の潜在的に関連するデータ又は他の検討事項を提供する「症例の概要(Case Summary)」のための領域135’を含むことが考慮されている。この概要は、ユーザ(例えば、医師又は他の医療専門家)によって入力され得る。出力がコンピュータディスプレイの形態である場合、「症例の概要」は、キーボード又は他の手動入力手段を介して入力され得る。出力が物理的文書の形態である場合、「症例の概要」は、手で記入されるボックス又は他の空白領域であり得ることが更に考慮されている。図18の実施形態においては、例示的な「症例の概要」の文章は、
40週目の41歳の経産婦
危険度の因子:
1)母体:AMA、多産婦
2)産科:AROM
胎児:メコニウム、第2期
活動期の期間:40分、第2期は10分
NSVD、Apgarスコア:9/9、出生時体重:3940g
臍帯ガス:pH7.32、pO:17.2、BE:-6.0
と判断される。
【0130】
次いで図19においては、出力ディスプレイの第2実施形態が示されている。この実施形態によれば、同時進行の臨床上のパラメータの第1集合は、(a)FHR、(b)ベースラインのFHRの変動、(c)FHRの加速、及び(d)FHRの減速を含む。上述したように、1以上のコンピュータは、FHRに対応する入力信号を受信する。1以上のコンピュータは、FHRの入力信号に基づいて、パラメータ(b)~(d)を決定するように動作する。本実施形態については、1以上のコンピュータは、分娩中の所定の時点で、同時進行する臨床上のパラメータの第1セットに基づく胎児に対する現在の危険度のレベルを決定するように更に動作可能である。出力部50”は、単一のグラフィカルユーザインタフェース100’に、(i)分娩中の経時的な同時進行する臨床上のパラメータ(a)~(d)の第1集合のうちの1以上に関する情報を示し、その単一のグラフィカルユーザインタフェースの外観は、分娩中の任意の時点での胎児に対する決定された現在の危険度のレベルを示し、分娩への介入の可能性の必要性を合図する指標を含む。このグラフィカルユーザインタフェースは、図19のオベリスク100”として示されている。
【0131】
本発明に準じ、本装置は、1以上のコンピュータが、新生児の心拍数(NHR)に対応する入力信号を受信するように更に動作することを特徴とする。
【0132】
更に、出力部50”には、子供の出産前の複数の離散的な期間でのFHR、及び子供の出産後の複数の離散的な期間でのNHRの各々に関する情報を示している。図19に示すように、図示の実施形態におけるこのNHRの情報は、出産前及び出産後の複数の離散的な期間の各々、すなわち、母体の入院時のFHR105”、子供の出産直前のFHR110”、出産後2分後のNHR115”、出産後10分後のNHR120”、出産後30分後のNHR125”、及び出産後50分後のNHR130”について、FHR及びNHRの軌跡の抽出物を構成している。FHR又はNHRにかかわらず、各々の軌跡の抽出物は、入手された特定の離散的な期間の前後に、例えば、40秒といった事前定義された増分を包含する。例えば、「出産直前」(110”)と指定された離散的な期間について示された軌跡の抽出物は、その離散的な期間におけるFHRの軌跡だけではなく、その時間の20秒前及び20秒後の軌跡を含む。
【0133】
第1実施形態と同様に、前述の情報及び指標は、それが発生した時点で、又は少なくとも発生した後に、ディスプレイに表示可能であることは理解されるであろう。少なくとも本実施形態によれば、前述の情報及び指標は、表示後、ディスプレイ50”に持続するであろう。同様に、FRIスコアの情報(100”及び101”に示す)は、分娩の過程で利用可能になると表示され得る。分娩及び分娩の終了時に、特定の一部(示された軌跡など)は、その後、ユーザによって定義されたパラメータに応じて、単一の出力ディスプレイに具体的に入力され得る。
【0134】
最後に、本発明においては、ディスプレイ50”が、示された情報、及び他の潜在的に関連するデータ又は他の検討事項の概要を提供する「症例の概要」のための領域135”を含むことが企図されている。この概要は、ユーザ(例えば、医師又は他の医療専門家)によって入力され得る。出力がコンピュータディスプレイの形態である場合、「症例の概要」は、キーボード及び他の手動入力手段を介して入力され得る。出力が物理的な文書の形態である場合、「症例の概要」は、手で記入されるボックス又は他の空白領域であり得ることも考えられる。
【0135】
前述の実施形態の出力ディスプレイは、第1例においては、コンピュータディスプレイ(例えば、モニタ)の形態をとることができることが理解されよう。しかし、これらのディスプレイは、更に、あるいは代替的に、物理的な文書(例えば、ハードコピーの印刷出力など)の形態をとることもできる。
【0136】
上述によって、本発明は、新生児の神経損傷の危険度を低減する手段を提供することが理解されるであろう。
【0137】
本実施形態は、新技術及びその実用的な用途を説明して、当該技術分野の当業者が様々な実施形態において、及び考慮される特定の用途に好適となる多様な変更を伴って、新技術を利用できるように記載されている。本開示においては、新技術の一部の実施形態のみを詳細に説明しているが、本開示を検討した当業者は、記載されている主題の新規の教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、全てのそのような変更は、本発明の範囲内に含まれることを意図している。他の置換、修正、変更、及び省略は、本発明の精神から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件、及び配置において実施できる。
図1
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図6
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【国際調査報告】