(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】3気筒、4気筒または6気筒エンジン用のリバーシブルターゲット
(51)【国際特許分類】
F01L 1/46 20060101AFI20220111BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20220111BHJP
F02D 39/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F01L1/46 B
F02D35/00 362D
F02D39/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526637
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019081460
(87)【国際公開番号】W WO2020099625
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ エロワ
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA12
3G016BA25
3G016CA07
3G016CA34
3G016GA01
(57)【要約】
本発明は、カムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するカムシャフト歯車(1)であって、互いに反対側にある2つの主面を有する円形体と、円形体の外周に分配された少なくとも6つの歯とを備え、各歯が、歯車の回転方向に応じて、2つの縁部を有し、一方の縁部が上昇縁部に対応し、他方の縁部が下降縁部に対応し、歯車が回転非対称性を有する、カムシャフト歯車において、
歯車の同じ主面(11A)および同じ回転方向を考慮して、歯車が、
それぞれ90°間隔で配置された同じ第1の上昇または下降タイプの4つの縁部(14)と、
それぞれ60°間隔で配置された同じ第2の下降または上昇タイプの6つの縁部(15)と、
を有するように、6つの歯が成形されていることを特徴とする、カムシャフト歯車に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフト位置センサ(2)用のターゲットを形成するカムシャフト歯車(1)であって、互いに反対側にある2つの主面(11A,11B)を有する円形体(10)と、前記円形体の外周に分配された少なくとも6つの歯(12)とを備え、各歯が、前記歯車の回転方向に応じて、2つの縁部(13)を有し、一方の縁部が上昇縁部に対応し、他方の縁部が下降縁部に対応し、前記歯車が回転非対称性を有する、カムシャフト歯車(1)において、
前記歯車の同じ主面および同じ回転方向を考慮して、前記歯車(1)が、
それぞれ90°間隔で配置された同じ第1の上昇または下降タイプの4つの縁部(14)と、
それぞれ60°間隔で配置された同じ第2の下降または上昇タイプの6つの縁部(15)と、
を有するように、前記6つの歯(12)が成形されていることを特徴とする、カムシャフト歯車(1)。
【請求項2】
互いに反対側にある前記2つの主面の一方にマーキング要素を備える、請求項1記載のカムシャフト歯車(1)。
【請求項3】
前記歯車の外周に、少なくとも35°の角度にわたって縁部を欠いた少なくとも2つのゾーン(17)を備え、前記2つのゾーンが180°間隔で配置されている、請求項1または2記載の歯車(1)。
【請求項4】
前記歯車の外周に、90°間隔で配置された前記4つの縁部のうちの1つを欠きかつ60°間隔で配置された前記6つの縁部のうちの1つを欠いた4つのゾーン(17)を備え、前記4つのゾーンが90°間隔で配置されている、請求項3記載の歯車(1)。
【請求項5】
2つの歯(12)が、60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)のうちの1つを有し、また、90°間隔で配置された前記4つの縁部と同じタイプであるが、それらとは異なる縁部(16,16’)をそれぞれ有し、前記異なる縁部が、第1の未割当て縁部(16)および第2の未割当て縁部(16’)とそれぞれ呼ばれ、
90°間隔で配置された前記4つの縁部(14)のうちの1つと、60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)のうちの1つとの間の最小角度差をAで示し、
60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)のうちの1つと、前記第1の未割当て縁部(16)との間の最小角度差をBで示し、
60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)のうちの1つと、前記第2の未割当て縁部(16)との間の最小角度差をCで示す
場合に、前記歯車の前記歯の前記縁部の角度位置が[0,A,60,90+A,120,180-C,180,180+A,240,270+A,300,360-B]となる、
請求項1から4までのいずれか1項記載の歯車(1)。
【請求項6】
各歯(12)が、前記歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、前記歯車の低レベルに対応し、前記歯車は、前記歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部の存在を推測できるタイプのカムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するように適合されており、
前記最小角度差Aが、前記歯車の高レベルに対応し、以下の関係式
【数1】
によって定義され、式中、Rが、前記円形体に対する前記歯の高さを含む前記歯車の半径であり、rが、前記円形体の半径であり、L
highが、前記2つの縁部の間の前記高レベルを前記センサによって検出可能とする歯の前記縁部の間の最小距離であり、L
lowが、これらの縁部の間の前記低レベルを前記センサによって検出可能とする間隙を画定する連続する2つの歯の前記縁部の間の最小距離である、請求項5記載の歯車。
【請求項7】
前記角度差BおよびCが、前記歯車の低レベルに対応し、以下の関係式
【数2】
および
【数3】
によって定義され、CとBとが異なる値を示す、請求項6記載の歯車。
【請求項8】
各歯(12)が、前記歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、前記歯車の低レベルに対応し、前記歯車は、前記歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部の存在を推測できるタイプのカムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するように適合されており、前記最小角度差Aが、前記歯車の低レベルに対応し、以下の関係式
【数4】
によって定義され、式中、Rが、前記円形体に対する前記歯の高さを含む前記歯車の半径であり、rが、前記円形体の半径であり、L
highが、前記2つの縁部の間の前記高レベルを前記センサによって検出可能とする歯の前記縁部の間の最小距離であり、L
lowが、これらの縁部の間の前記低レベルを前記センサによって検出可能とする間隙を画定する連続する2つの歯の前記縁部の間の最小距離である、請求項5記載の歯車。
【請求項9】
前記角度差BおよびCが、前記歯車の高レベルに対応し、以下の関係式
【数5】
および
【数6】
によって定義され、CとBとが異なる値を示す、請求項8記載の歯車。
【請求項10】
内燃機関(M)であって、3つ、4つまたは6つの気筒と、カムシャフトと、前記カムシャフトに確実に固定して取り付けられた、請求項1から9までのいずれか1項記載の歯車(1)とを備え、各歯(12)が、前記歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、前記歯車の低レベルに対応し、前記内燃機関(M)が、前記歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部を検出できる前記カムシャフト用の位置センサ(2)をさらに備え、前記センサが、一方のタイプの縁部について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能を有し、
前記歯車(1)が、主面(11A,11B)が前記カムシャフト位置センサ(2)に向けられるように前記カムシャフトに取り付けられており、
前記エンジンが3気筒または6気筒である場合、60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)が、前記センサの前記検出性能がより高いタイプの縁部となり、
前記エンジンが4気筒である場合、90°間隔で配置された前記4つの縁部(14)が、前記センサの前記検出性能がより高いタイプの縁部となる
ように、前記位置センサに向けられる前記主面が選択される、内燃機関(M)。
【請求項11】
内燃機関(M)であって、カムシャフトと、請求項1から9までのいずれか1項記載の歯車と、前記歯車の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部を検出できるタイプのカムシャフト位置センサ(2)とを備え、前記センサが、一方のタイプの縁部について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能を有する、内燃機関(M)を組み立てるための方法であって、
前記歯車の主面(11A,11B)が前記カムシャフト位置センサに向けられるように、前記歯車(1)を前記カムシャフトに取り付けることを含み、
前記エンジンが3気筒または6気筒である場合、60°間隔で配置された前記6つの縁部(15)が、前記センサの前記検出性能が最良となるタイプになるように、前記位置センサに向けられる前記主面が選択され、
前記エンジンが4気筒である場合、90°間隔で配置された前記4つの縁部(14)が、前記センサの前記検出性能が最良となるタイプになるように、前記位置センサに向けられる前記主面が反対側の面となる、組み立てるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3気筒、4気筒または6気筒エンジンに適した、カムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するカムシャフト歯車に関する。歯車は、歯車の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯車の歯の上昇または下降縁部のタイプを検出できるタイプの位置センサとの併用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転サイクルでは、燃料噴射、スパークプラグの制御、タイミング構成要素の管理など各種動作の同期を可能にするために、クランクシャフトの位置を正確に知る必要がある。これにより、燃焼効率を最適化し、燃料の消費や有害物質の排出を抑制することができる。
【0003】
このために、クランクシャフトは従来から、センサによって歯が検出される歯車を備える。歯車は典型的に、歯を欠いた基準部分(間隙としても知られる)を除いて、その外周に均等に分配された一連の歯を備える。センサの前を通過する歯を検出し、間隙以降に通過した歯の数をカウントすることにより、360°の回転にわたるクランクシャフトの位置を知ることができる。
【0004】
ここで、1エンジンサイクルがクランクシャフトの完全な2回転に相当するため、クランクシャフトの位置は、クランクシャフト歯車のみに基づいてエンジンの位置を決定するには不十分である。
【0005】
したがって、この情報は、クランクシャフトによって回転させられるカムシャフトの角度位置に関する情報と組み合わされ、カムシャフトも、対応するセンサによって歯が検出される歯車を備える。
【0006】
1エンジンサイクルは、クランクシャフトの2回の360°回転に相当するが、カムシャフトの1回だけの360°回転に相当する。このため、カムシャフト歯車は、クランクシャフトの位置に関する情報と照合することによってエンジンサイクルの状態を正確に推測することを可能にする回転非対称性を有する。
【0007】
それゆえ、エンジンを始動するたびに、カムシャフト歯車の状態の検出と組み合わせて、クランクシャフトの間隙が検出されると、エンジンが同期される。
【0008】
図1を参照すると、可変バルブタイミング(VVT;variable valve timing)を有するエンジンの場合、燃料消費および排出物質を抑制するために、吸気カムシャフトおよび/または排気カムシャフトの角度位置をクランクシャフトに対してオフセットさせて、気筒内で排ガスを再循環させるように規定することができる。
【0009】
図1では、x軸がクランクシャフトの角度位置(クランクシャフトの回転角度がカムシャフトの対応する回転の2倍に相当する)を度で示し、y軸が吸気弁または排気弁の動きをミリメートルで示している。実線は、デフォルトで吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトによってそれぞれ制御される吸気弁(曲線A)および排気弁(曲線B)の動きを示し、破線は、吸気弁の開弁位相と排気弁の開弁位相との間の重複範囲を可能にする、カムシャフトの角度位置(吸気弁については曲線A’、排気弁については曲線B’)のオフセットを示している。
【0010】
カムシャフト歯車の設計では、この潜在的なオフセットに左右されずにクランクシャフト歯車からの情報を用いて良好な同期を可能にするために、この潜在的なオフセットを考慮することが重要である。
【0011】
可変バルブタイミングの同期および制御性能を向上させるために、各気筒に固有の基準を形成する歯をカムシャフト歯車に配置することが知られている。例えば、4気筒エンジンのカムシャフト歯車は、それぞれ90°間隔で配置された4つの縁部を有することができ、センサを横断する各縁部は、対応する各気筒内のピストンの同じ位置に対応する。
【0012】
ここで、同じ製造者でも、その機種における各種車両について気筒数が異なる複数のエンジンを使用する。このため、管理するカムシャフト歯車の種類が多くなり、これら歯車の製造コストが高くなる。
【0013】
加えて、カムシャフト位置センサには2つのタイプがあり、対応する歯車にも2つのタイプがあることに留意するべきである。
【0014】
第1のタイプは、ディファレンシャルセンサと呼ばれ、(歯車の歯に対応する)最初の高レベルまたは(2つの歯の間の間隙に対応する)最初の低レベルを必ずしも検出することができない。センサの初期化レベルに応じて、センサは、その状態を変化させる最初の縁部が見られるときにだけ、レベルを検出することができる。
【0015】
この場合、使用されるターゲットは、検出される関連する縁部の数と少なくとも同じ数の歯を含むように潜在的に多数の歯を含み、歯は全て、上昇または下降縁部を各歯において常に検出可能にするために、縮小された同じサイズを有する(ターゲットはピンターゲットとも呼ばれる)(採用される縁部は、センサの初期化レベルを残すものとなる)。この場合、センサに接続されたコンピュータは、歯ごとに(常に同じ上昇または下降タイプの)単一の縁部を検出する。歯の数および間隔により、3気筒または4気筒のエンジンに固有の歯車を作ることができる。
【0016】
米国特許出願公開第2014/360254号明細書には、ディファレンシャルセンサと併せて使用するのに適したカムシャフト歯車であって、その外周の0°、60°、90°、120°、180°、240°、270°および300°の位置にそれぞれ少なくとも1つの歯を備えるカムシャフト歯車が開示されている。各歯は、センサによって検出可能な縁部を備える。
【0017】
これにより、4気筒エンジン(各気筒に対応する情報が0°、90°、180°および270°の歯によって提供されるため)と、3気筒および6気筒のエンジン(情報が0°CAM、60°CAM、120°CAM、180°CAM、240°CAMおよび300°CAMの歯によって提供されるため)とに同時に適合する単一の歯車を得ることができる。
【0018】
第2のタイプのセンサは、「True Power On」の頭文字をとってTPO型センサと呼ばれ、歯車が初期化されると直ちに歯車の高レベルまたは低レベルを検出するのに適しており、これにより縁部の横断を推測することができる。これらのセンサは、一方のタイプの縁部(一般的に下降縁部)の検出精度が高いが、他方のタイプの縁部の検出精度が低い。
【0019】
このタイプのセンサに使用されるターゲットは一般に、ディファレンシャルセンサに使用されるターゲットよりも少ない歯を含む。これは、歯車の高レベルと低レベルが、センサによって検出できるように十分長い必要があるためである。加えて、上昇縁部と下降縁部をセンサによって検出することができる。一方、歯は、長さが可変であり、ディファレンシャルセンサ用のターゲットの歯よりも一般的に長い。これらのターゲットは、「レベルターゲット」とも呼ばれる。
【0020】
上述した明細書は、TPO型センサとの併用には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記に鑑み、本発明の目的の1つは、3気筒、4気筒または6気筒のエンジンに適合して歯車の高レベルまたは低レベルを検出できる、TPO型センサと併用可能なカムシャフト歯車を提案することである。
【0022】
本発明の目的の1つは、また、3気筒、4気筒または6気筒のエンジンのいずれの場合でも同等に良好な同期性能を得ることができる歯車を提案することである。
【0023】
本発明の別の目的は、可変バルブタイミングエンジンに適合するカムシャフト歯車を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この点に関して、本発明の一主題は、カムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するカムシャフト歯車であって、互いに反対側にある2つの主面を有する円形体と、円形体の外周に分配された少なくとも6つの歯とを備え、各歯が、歯車の回転方向に応じて、2つの縁部を有し、一方の縁部が上昇縁部に対応し、他方の縁部が下降縁部に対応し、歯車が回転非対称性を有する、カムシャフト歯車において、
歯車の同じ主面および同じ回転方向を考慮して、歯車が、
それぞれ90°間隔で配置された同じ第1の上昇または下降タイプの4つの縁部と、
それぞれ60°間隔で配置された同じ第2の下降または上昇タイプの6つの縁部と、
を有するように、6つの歯が成形されていることを特徴とする、カムシャフト歯車である。
【0025】
有利には、任意ではあるが、歯車は、互いに反対側にある2つの主面の一方にマーキング要素を備える。
【0026】
有利には、任意ではあるが、歯車は、歯車の外周に、少なくとも35°の角度にわたって縁部を欠いた少なくとも2つのゾーンを備え、2つのゾーンが180°間隔で配置されている。例えば、歯車は、歯車の外周に、90°間隔で配置された4つの縁部のうちの1つを欠きかつ60°間隔で配置された6つの縁部のうちの1つを欠いた4つのゾーンを備えてもよく、4つのゾーンが90°間隔で配置されている。
【0027】
一実施形態では、歯車は、2つの歯が、60°間隔で配置された6つの縁部のうちの1つを有し、また、90°間隔で配置された4つの縁部と同じタイプであるが、それらとは異なる縁部をそれぞれ有し、異なる縁部が、第1の未割当て縁部および第2の未割当て縁部とそれぞれ呼ばれ、
90°間隔で配置された4つの縁部のうちの1つと、60°間隔で配置された6つの縁部のうちの1つとの間の最小角度差をAで示し、
60°間隔で配置された6つの縁部のうちの1つと、第1の未割当て縁部との間の最小角度差をBで示し、
60°間隔で配置された6つの縁部のうちの1つと、第2の未割当て縁部との間の最小角度差をCで示す
場合に、歯車の歯の縁部の角度位置が[0,A,60,90+A,120,180-C,180,180+A,240,270+A,300,360-B]となる。
【0028】
各歯が、歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、歯車の低レベルに対応し、歯車は、歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部の存在を推測できるタイプのカムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するように適合されており、1つの事例では、最小角度差Aが、歯車の高レベルに対応し、以下の関係式
【数1】
によって定義され、式中、Rが、円形体に対する歯の高さを含む歯車の半径であり、rが、円形体の半径であり、L
highが、2つの縁部の間の高レベルをセンサによって検出可能とする歯の縁部の間の最小距離であり、L
lowが、これらの縁部の間の低レベルをセンサによって検出可能とする間隙を画定する連続する2つの歯の縁部の間の最小距離である。
【0029】
この場合、角度差BおよびCが、歯車の低レベルに対応し、以下の関係式
【数2】
および
【数3】
によって定義され、CとBとが異なる値を示す。
【0030】
各歯が、歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、歯車の低レベルに対応し、歯車は、歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部の存在を推測できるタイプのカムシャフト位置センサ用のターゲットを形成するように適合されており、別の事例では、最小角度差Aが、歯車の低レベルに対応し、以下の関係式によって定義される。
【数4】
【0031】
式中、Rが、円形体に対する歯の高さを含む歯車の半径であり、rが、円形体の半径であり、Lhighが、2つの縁部の間の高レベルをセンサによって検出可能とする歯の縁部の間の最小距離であり、Llowが、これらの縁部の間の低レベルをセンサによって検出可能とする間隙を画定する連続する2つの歯の縁部の間の最小距離である。
【0032】
この場合、角度差BおよびCが、歯車の高レベルに対応し、以下の関係式
【数5】
および
【数6】
によって定義され、CとBとが異なる値を示す。
【0033】
本発明の別の主題は、内燃機関であって、3つ、4つまたは6つの気筒と、カムシャフトと、カムシャフトに確実に固定して取り付けられた、上記の説明による歯車とを備え、各歯が、歯車の高レベルに対応し、2つの歯の間の各間隙が、歯車の低レベルに対応し、内燃機関が、歯の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部を検出できるカムシャフト位置センサをさらに備え、センサが、一方のタイプの縁部について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能を有し、
歯車が、主面がカムシャフト位置センサに向けられるようにカムシャフトに取り付けられており、
エンジンが3気筒または6気筒である場合、60°間隔で配置された6つの縁部が、センサの検出性能がより高いタイプの縁部となり、
エンジンが4気筒である場合、90°間隔で配置された4つの縁部が、センサの検出性能がより高いタイプの縁部となる
ように、位置センサに向けられる主面が選択される、内燃機関である。
【0034】
本発明の別の主題は、内燃機関であって、カムシャフトと、上記の説明による歯車と、歯車の高レベルまたは低レベルを検出してレベルの変化から歯縁部を検出できるタイプのカムシャフト位置センサとを備え、センサが、一方のタイプの縁部について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能を有する、内燃機関を組み立てるための方法であって、
歯車の主面がカムシャフト位置センサに向けられるように、歯車をカムシャフトに取り付けることを含み、
エンジンが3気筒または6気筒である場合、60°間隔で配置された6つの縁部が、センサの検出性能が最良となるタイプになるように、位置センサに向けられる主面が選択され、
エンジンが4気筒である場合、90°間隔で配置された4つの縁部が、センサの検出性能が最良となるタイプになるように、位置センサに向けられる主面が反対側の面となる、組み立てるための方法である。
【0035】
本発明による歯車は、60°間隔で規則的に配置された6つの縁部を備えるので、6気筒エンジンに適合する。このため、歯車は、これら6つの縁部の中に120°間隔で規則的に配置された3つの縁部を備えるので、3気筒エンジンにも適合する。最後に、90°間隔で規則的に配置された4つの縁部を備えるため、4気筒エンジンに適合する。
【0036】
加えて、60°間隔で配置された縁部は全て同じタイプ、例えば上昇縁部であり、90°間隔で配置された縁部は全て同じタイプ、例えば下降縁部であることから、カムシャフト位置センサが、ある特定のタイプの縁部の検出に優れている場合でも、歯車が、3タイプのエンジンについて同等に良好な同期性能を示すことができる。これは、センサによって検出される縁部(エンジンのタイプに応じて60°または90°間隔で配置された縁部)が、センサによって最良に検出されるタイプの縁部に対応するように、歯車をセンサに対して配置できるからである。
【0037】
縁部のタイプが制限されているため、歯の数が限られる(6本)利点があり、ターゲットサイズが小さくなるという利点がある(各歯または歯の間の凹みには、センサによって正しく検出される最小サイズが必要である)。
【0038】
それゆえ、3気筒エンジン、4気筒エンジンおよび6気筒エンジンのために異なるターゲットを設計および製造する必要がない。
【0039】
加えて、歯を欠いた、少なくとも35°の角度範囲の2つの対称部分が存在することにより、可変バルブタイミングエンジンのカムシャフトの位相がずれた場合でも、VVT制御に使用される縁部がクランクシャフト歯車の間隙ゾーンに位置しないことを確実にすることができる。具体的に、本発明による歯車は、カムシャフトがオフセットした場合でも、クランクシャフト歯車の間隙が歯を欠いた部分と常に一致するように、歯を欠いた部分をクランクシャフト歯車の間隙に対して配置することにより、可変バルブタイミングエンジンに使用することができる。エンジン位置がクランクシャフトの縁部の分析に基づく場合、間隙ゾーンがより不正確になる。
【0040】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】すでに説明したように、吸気弁および排気弁の、それらが関連付けられるカムシャフトの角度位置に応じた動きを示す図である。
【
図2a】本発明の一実施形態によるカムシャフト歯車の一例の面を示す図である。
【
図2b】同じ例の歯車の
図2aの面とは反対側の面を示す図である。
【
図3a】縁部のタイプを反転させることにより、
図2aおよび
図2bの歯車と同じ角度縁部位置を有する別の歯車形状の面を示す図である。
【
図3b】同じ例の歯車の
図3aの面とは反対側の面を示す図である。
【
図4】
図2aおよび
図2bによる歯車のクランクシャフト歯車との同期の例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるカムシャフト歯車を備える4気筒エンジンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明の全てにおいて、カムシャフト歯車について度で測定される角度またはその角度位置に関連する角度を「°CAM」で示し、クランクシャフト歯車について度で測定される角度またはその角度位置に関連する角度を「°CRK」で示す。1°CAMの回転は、2°CRKの回転に相当する。
【0043】
次に、
図2aおよび
図2bを参照して、カムシャフト角度位置センサ2用のターゲットを形成するカムシャフト歯車1について説明する。
【0044】
歯車1は、概ねディスク状であり、すなわち、互いに反対側にある2つの主面11Aおよび11Bを有する円形体10を備え、これらの面は円形であり、歯車は、円形体10の周縁に複数の歯12を備える。各歯は、2つの縁部13によって画定され、2つの縁部は、実質的に半径方向に延び、歯車1がセンサ2の前を通過する際に上昇縁部および下降縁部を続けて形成する。
【0045】
縁部が上昇縁部を構成するか、下降縁部を構成するかは、歯車が見られる側、すなわち見られる主面と、歯車の回転方向とに依存する。
【0046】
図2aおよび
図2bでは、一方の側および反対の側から見た、すなわち、主面11Aおよび11Bの一方および他方を考慮してそれぞれ見た、本発明の一実施形態による歯車1の例が示されており、矢印がまた、歯縁部を上昇または下降縁部として定義することを可能にする歯車の回転方向を示している。
【0047】
歯車1は、歯に対応する高レベルと、連続する2つの歯の間の間隙に対応する低レベルとを交互に有する。
【0048】
歯車は、内燃機関のカムシャフトと共に回転すべく、拘束されるように取り付けられることを意図している。カムシャフトに取り付けるために、歯車には、円形の中央貫通穴を設けることができる。
【0049】
歯車1は、TPO(True Power On)型センサ2、すなわちレベルセンサ、すなわち、歯車の高レベルおよび低レベルを検出してレベルの変化から歯の上昇または下降縁部を検出することが常に可能になっているセンサとの併用に適している。
【0050】
例えば、センサ2は、歯車の高レベルまたは低レベルを検出するのに適した(例えば、ホール効果セル式、磁気抵抗セル式などの)検出セルと、歯車の高レベルまたは低レベルの変化から縁部を検出するのに適した一体型コンピュータとを備えることができる。
【0051】
そのようなセンサは多くの場合、一方のタイプの縁部(多くの場合には下降縁部)について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能レベル(すなわち、典型的には縁部検出精度)を有する。レベルセンサの一例は、下降縁部の検出精度0.5°CAMおよび上昇縁部の検出精度1°CAMを有することができる。
【0052】
歯車1は有利には、歯を欠いた間隙によって離間して配置された少なくとも6つの歯、例えば丁度6つの歯12を備える。
【0053】
クランクシャフト歯車から得られたデータと併せて使用できるように、カムシャフト歯車1は有利には、歯車の半分の歯の輪郭が他の半分の歯の輪郭と異なるような回転非対称性を有する。それゆえ、センサによって検出された歯を識別し、クランクシャフトの角度位置データと併せて、識別結果からエンジンサイクルの状態を推測することができる。
【0054】
加えて、歯車1は、3気筒エンジン、4気筒エンジンおよび6気筒エンジンに使用できるようになっており、3タイプのエンジンについて等しく良好な同期性能を示す。
【0055】
このために、歯車1の6つの歯は、歯車の同じ回転方向について、歯車の同じ側から見ると、すなわち、同じ主面11Aまたは11Bを考慮して見ると、歯車1が、
90°CAM間隔で配置された同じ第1の上昇または下降タイプの4つの縁部14と、
60°CAM間隔で配置された同じ第2の対応する下降または上昇タイプの6つの縁部15と、
を有するように成形される。
【0056】
90°CAM間隔で配置された縁部14は、4気筒エンジンにおける可変バルブタイミング(VVT)の制御を容易にするために、このタイプのエンジンのそれぞれの気筒に関連付けられる基準を形成し、60°CAM間隔で配置された縁部15は、6気筒エンジンのそれぞれの気筒に関連付けられる基準を形成する。加えて、これらの60°CAM間隔で配置された縁部は、3気筒エンジンのそれぞれの気筒に関連付けられる基準を形成する120°CAM間隔で配置された3つの縁部を構成する。
【0057】
加えて、60°CAM間隔で配置された縁部15が、90°CAM間隔で配置された縁部14と同じタイプではないことで、4気筒エンジンと3気筒エンジンまたは6気筒エンジンについて、同じ同期性能を得ることができる。
【0058】
具体的には、エンジンの位置センサ2が、ある特定のタイプの縁部、例えば下降縁部の検出性能に優れている場合、センサによって最良に検出されるタイプの縁部が、当該エンジンタイプの気筒の基準を形成する縁部に対応するように、一方の主面11または他方をセンサに面して配置することにより、ターゲットを配置することができる。
【0059】
言い換えれば、ターゲットは、3気筒または6気筒のエンジンでは一方の方向(例えば、
図2bおよび
図3bの面11B)に取り付けられ、センサの構成が同じであると仮定すると、4気筒エンジンでは他方の方向(例えば、
図2aおよび
図3aの面11A)に取り付けられる。
【0060】
図2aおよび
図2bには、それゆえ、歯車の同じ回転方向について、一方の側および他方の側からそれぞれ見たときの歯車1の例が示されている。
【0061】
図2aでは、90°CAM間隔で配置された4つの縁部14が上昇縁部となる。歯車を裏返すことにより、
図2bでは、60°CAM間隔で配置された6つの縁部15が同様に上昇縁部となる。それゆえ、歯車はリバーシブルである。
【0062】
具体的には、位置センサ2が下降縁部の検出性能に優れている場合、4気筒エンジンについては、(90°CAM間隔で配置された4つの縁部14が下降縁部となるため)
図2bに示す主面11Bが位置センサ2に面するようにターゲットが配置され、3気筒または6気筒のエンジンについては、(120°CAM間隔で配置された6つの縁部15が下降縁部となるため)
図2aに示す主面111が位置センサ2に面するようにターゲットが配置される。
【0063】
エンジンの気筒数に応じてセンサに面して配置されるべき面の識別を容易にするために、面11Aおよび11Bの少なくとも一方にポカヨケ、すなわち、エンジンの気筒数に関連して面を識別することを可能にするマーキングを配置することができる(これは、TPO型センサによって最良に検出される縁部のタイプと同様に、回転方向が依然として同じであるためである)。
【0064】
一実施形態では、歯車1は歯を6つだけ有する。この場合、各歯の一方の縁部が、60°間隔で配置された縁部15の1つを形成し、6つの歯のうち4つの歯の反対側の縁部が、90°間隔で配置された縁部14の1つを形成する。
【0065】
第1の未割当て縁部16および第2の未割当て縁部16’を形成する未割当ての2つの歯縁部があり、これらの縁部は、これらの縁部の一部も、60°間隔で配置された縁部の一部も形成しない、90°間隔で配置された4つの縁部と同じタイプ(上昇または下降縁部)である。有利には、これらの2つの未割当て縁部の角度位置は、以下でより詳細に説明するように、歯車の同期性能を最適化するようになっている。
【0066】
縁部のタイプを反転させることにより、縁部の同じ配置について、2つの歯車形状が存在することに留意されたい。それゆえ、
図2aでは、90°間隔で配置された縁部14が上昇縁部である例が示され、
図3aでは、90°間隔で配置された縁部14が下降縁部である例が示されている。一方で、縁部の間の角度間隙は全て同一である。
【0067】
90°間隔で配置された縁部の1つと60°間隔で配置された縁部の1つとの間の最小角度差がAで示されている。縁部の各配置について2つの形状が存在することを考慮すると、Aは、
歯車の最小の歯が歯車の高レベルに対応する場合に、同歯の縁部の間の角度差に対応することができ、同歯の互いに反対側にある2つの縁部が、90°間隔で配置された縁部の1つおよび60°間隔で配置された縁部の1つを構成する(
図2a参照)、または
連続する2つの歯の間の最小の間隙が歯車の低レベルに対応する場合に、90°間隔で配置された縁部の1つおよび60°間隔で配置された縁部の1つをそれぞれ構成する歯縁部によって規定される同間隙を画定する縁部の間の角度差(
図3a参照)に対応することができる。
【0068】
その上、Bは、第1の未割当て縁部16と60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部との間の最小角度差を示す。Bは、この未割当て縁部16の角度位置を反映する。
【0069】
Cも、第2の未割当て縁部16’と60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部との間の最小角度差を示す。Cは、この第2の未割当て縁部16’の角度位置を反映する。
【0070】
Aと同じように、角度差BおよびCは、それらが歯車の高レベルに対応するか、低レベルに対応するかに応じて、2つの異なる角度差、すなわち、
それらが歯車の低レベルに対応する場合(
図2a参照)には、それぞれの未割当て縁部と60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部との間に形成される、2つの歯の間の間隙の角度差、および
それらが歯車の高レベルに対応する場合(
図3a参照)には、それぞれの未割当て縁部および60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部を有する歯の縁部の間の角度差
に対応することができる。
【0071】
Aが歯車の高レベルに対応する場合、BおよびCは両方とも歯車の低レベルに対応し、逆の場合も同様である。
【0072】
上述したA,B,およびCの表記を用いると、90°CAM間隔で配置された第1のタイプの4つの縁部および60°CAM間隔で配置された他のタイプの6つの縁部を得ることができる歯の縁部の角度位置は、次の規則[0,A,60,90+A,120,180-C,180,180+A,240,270+A,300,360-B(単位:°CAM)]に従う。
【0073】
A,B,およびCは厳密な正の値であり、センサの検出性能によって制限される。
【0074】
具体的に、センサは、歯車の高レベルがLhighと示される閾値よりも長いときだけ、この高レベルを検出することができる。したがって、Lhighは、歯の縁部の間の高レベルをセンサによって検出可能とする歯の縁部の間の最小距離である。
【0075】
その上、センサは、歯車の低レベルがLlowと示される閾値よりも長いときだけ、この低レベルを検出することができる。したがって、Llowは、連続する2つの歯の縁部の間の低レベルをセンサによって検出可能とする間隙を画定する、これらの縁部の間の最小距離である。
【0076】
近似的に、歯の縁部の高点同士を結ぶ線分の長さをLhighとみなし、間隙の縁部の基点同士を結ぶ線分の長さをLlowとみなす。これらの線分は、円形体に対して実質的に接線方向であるともみなされる。
【0077】
したがって、Aが高レベルに対応する場合、Aは以下の関係式に従う必要がある。
【0078】
【数7】
式中、Rは円形体10に対する歯の高さを含む歯車の半径であり、rは歯車の円形体の半径である(
図2b参照)。
【0079】
30-Aは、90°間隔で配置された縁部の1つおよび60°間隔で配置された縁部の1つをそれぞれ有する歯の縁部によって画定された、連続する2つの歯の間の最小の間隙を規定する縁部の間の角度間隙に対応する。この間隙は、低レベルの検出、ひいてはそれを画定する縁部の検出を可能にするのに十分である必要がある。
【0080】
この場合、BおよびCは、低レベルに対応し、より正確には、第1または第2の未割当て縁部および60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部をそれぞれ有する2つの歯の間の間隙の角度的な開きに対応する。BおよびCは、以下の関係式に従う必要がある。
【数8】
【0081】
60-Bは、第1の未割当て縁部16を有する歯によってカバーされる角度に対応する。
【数9】
【0082】
60-Cは、第2の未割当て縁部16’を有する歯によってカバーされる角度に対応する。
【0083】
加えて、歯車が回転非対称性を有する、すなわち、歯車の半分の歯の輪郭が他の半分の輪郭と異なることを確実にするために、BとCは異なる値を有する必要がある。好ましくは、BとCの値の差は、5°CAM以上の公差、例えば10°CAMに等しい公差を含み、この公差は、センサの検出性能に関連付けられ、ターゲットの機械的配置と製造公差を区別することを可能にする。
【0084】
Aが低レベルに対応する場合(
図3aおよび
図3b)、Aは、以下の関係式を確認する必要がある。
【数10】
【0085】
30-Aは、90°間隔で配置された縁部の1つおよび60°間隔で配置された縁部の1つを有する最小の歯によってカバーされる角度に対応する。
【0086】
BおよびCは、高レベルに対応し、特に、対応する各未割当て縁部および60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部を有する歯によってカバーされる角度に対応する。BおよびCは、以下の関係式を確認する必要がある。
【数11】
【0087】
60-Bは、第1の未割当て縁部および60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部をそれぞれ有する連続する2つの歯の間の間隙の縁部の間の角度差に対応する。
【数12】
【0088】
60-Cは、第2の未割当て縁部16’および60°間隔で配置された縁部のうち最も近い縁部をそれぞれ有する連続する2つの歯の間の間隙の縁部の間の角度差に対応する。
【0089】
加えて、この構成でも、BおよびCの値は、歯車の回転非対称性を確保するために異なる必要があり、有利には、少なくとも5°CAMの公差、例えば10°CAMの公差によって異なり、ターゲットの機械的配置と製造公差を区別することを可能にする。
【0090】
可変バルブタイミング(VVT)エンジンに歯車1を適合させるために、歯車は、有利には、円形体10の外周に、少なくとも35°CAM、例えば(クランクシャフトの75°CRKに相当する)少なくとも37.5°CAMの角度にわたって縁部を欠いた、180°CAMの間隔で配置された少なくとも2つのゾーン17を備えることができる。この180°CAMの間隔は、2つのゾーン17の中央角度位置の間でカウントされる。しかし、これら2つのゾーンは、必ずしも同じ大きさではない。
【0091】
具体的に、カムシャフトへの歯車の取り付けに際して、縁部を欠いた各部分は、対応するセンサによるクランクシャフト歯車の間隙の検出と同時に、それが検出される角度位置に配置される。
【0092】
図4は、(歯を欠いた)2つの間隙ゾーンGを有するクランクシャフト歯車の歯(上段-CRK)と、カムシャフト歯車の歯(下段-CAM、矢印の下の各指示数字が、クランクシャフトの回転角度値を°CRKで表し、°CAMで表すカムシャフトの回転角度値が、指示値の半分に等しい)とを比較している。したがって、カムシャフト歯車は、クランクシャフトの少なくとも1つの間隙ゾーンGが、カムシャフト歯車の縁部を欠いた部分に対応するように配置される。
【0093】
この部分の大きさが35°CAM以上であることにより、吸気弁または排気弁を開弁する角度ゾーンを変更するためにカムシャフトの角度オフセットを行う場合でも、クランクシャフトの間隙の検出と同時にセンサ2によって検出される歯車1のゾーンが、常に縁部を欠くことができる。それゆえ、クランクシャフトの間隙の存在と同時に縁部が検出されることに関連して、基準が不正確になるリスクが回避される。
【0094】
180°CAM間隔で配置された2つの部分が存在するのは、カムシャフトの1回転がクランクシャフトの2回転に相当し、したがって、クランクシャフトの間隙が歯車の180°CAM間隔で配置された2つの部分に相当するためである。
【0095】
クランクシャフト歯車が180°CRK間隔で配置された2つの間隙ゾーンを有する場合、カムシャフト歯車は、有利には、少なくとも35°CAMの角度にわたって、90°間隔で配置された縁部14も、60°間隔で配置された縁部15も有していない、4つのゾーンを有し、前記ゾーンは90°CAM間隔で配置され、これらの4つのゾーンは、有利には、上述した縁部を完全に欠いた2つのゾーンを含む。
【0096】
図4では、この例では下降縁部である60°CAM間隔で配置された6つの縁部15と、上昇縁部である90°CAM間隔で配置された4つの縁部14とも特定されている。
【0097】
図5を参照すると、上述した説明による歯車を備える内燃機関の例が模式的に示されている。
【0098】
エンジンMは、3つ、4つまたは6つの気筒82を備え、気筒内では、対応するピストン80が、クランクシャフト9によって駆動されるコネクティングロッド84によって摺動する。クランクシャフト9はまた、タイミングベルト90によって、少なくとも1つのカムシャフト91を回転させ、カムシャフト91の回転により、吸気弁および排気弁92が連続的に開閉される。
【0099】
エンジンは、可変バルブタイミングを有することができ、カムシャフトを角度的にオフセットしてクランクシャフトの同一位置に対して弁の開弁時間を変更するための手段(図示せず)を備える。最大オフセット角度は、25°CAM(または50°CRK)のオーダーである。
【0100】
クランクシャフト9は、典型的には1つまたは2つの歯が欠落した1つまたは2つの間隙ゾーンを除いて、その外周に沿って均等に分配された一連の歯、典型的には36個または60個の歯を備える歯車93を有する。
【0101】
クランクシャフト角度位置センサ94が、歯車93に面して配置され、歯車の各歯の通過を検出するのに適している。
【0102】
上述した説明による歯車1が、カムシャフト91または各カムシャフトに取り付けられる。TPO型センサまたはレベルセンサ2が、歯車の前に配置され、歯車のレベルを検出してレベルの変化から上昇または下降縁部を推測するのに適している。
【0103】
上述したように、センサ2は、一方のタイプの縁部について、他方のタイプの縁部よりも高い検出性能を有することができる。
【0104】
リバーシブル歯車は、エンジンの組み立てに際して、その主面の一方を以下のようにセンサ2に向けることにより、カムシャフトに有利に配置される:
エンジンが3気筒または6気筒である場合、60°間隔で配置された6つの縁部を、センサ2の性能がより高いものとなるタイプの縁部に対応させる。
エンジンが4気筒である場合、90°間隔で配置された4つの縁部を、センサ2の性能がより高いものとなるタイプの縁部に対応させる。
【0105】
エンジンは、クランクシャフトおよびカムシャフトの角度位置センサから検出信号を受信して検出信号からエンジンサイクルの状態を常に推測するのに適した中央処理装置95も備える。
【0106】
図4を参照して上述したように、エンジンが可変バルブタイミング式である場合、カムシャフト歯車は、エンジンの組み立てに際して、クランクシャフト歯車の歯を欠いた基準空間がクランクシャフト角度位置センサ94に面しているエンジンサイクルの範囲が、カムシャフト歯車の歯を欠いた少なくとも30°CAMの部分がカムシャフト角度位置センサ2に面しているエンジンサイクルの範囲に含まれるように、有利に配置される。
【国際調査報告】