(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】蒸発器ボート制御システム、PVD装置、及びPVD装置を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
C23C14/24 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526730
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019025380
(87)【国際公開番号】W WO2020104054
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521208583
【氏名又は名称】ボブスト マンチェスター リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヌンツィアーティ オマー
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー マーク
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DB11
4K029DB17
4K029EA00
(57)【要約】
本発明は蒸発器ボートを制御するためのシステムに関し、システムは、複数の蒸発器ボート(14)を収容するための固定具(16)と、蒸発器ボート(14)の各々を加熱するためのエネルギを提供するためのエネルギ供給源(18)と、蒸発器ボート(14)の各々のための供給ワイヤ駆動装置(24)と、固定具(16)に取り付けられた複数の蒸発器ボート(14)のうちの少なくとも1つの画像を取り込むようになった少なくとも1つのカメラ(32)と、制御装置(26)と、を含み、制御装置(26)は、画像解析モジュール(36)を有し、供給ワイヤ駆動装置(24)のための制御信号及びエネルギ供給源(18)のための制御信号を提供するようになっており、制御信号は、画像解析モジュール(36)の出力に少なくとも部分的に基づいている。本発明は、さらにPVD装置及びこの装置を作動させる方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器ボートを制御するためのシステムであって、
複数の蒸発器ボート(14)を収容するための固定具(16)と、
前記蒸発器ボート(14)の各々を加熱するためのエネルギを提供するためのエネルギ供給源(18)と、
前記蒸発器ボート(14)の各々のための供給ワイヤ駆動装置(24)と、
前記固定具(16)に取り付けられた前記複数の蒸発器ボート(14)のうちの少なくとも1つの画像を取り込むようになった少なくとも1つのカメラ(32)と、
制御装置(26)と、を備え、
前記制御装置(26)は、画像解析モジュール(36)を有し、前記供給ワイヤ駆動装置(24)のための制御信号及び前記エネルギ供給源(18)のための制御信号を提供するようになっており、前記制御信号は、前記画像解析モジュール(36)の出力に少なくとも部分的に基づいている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記カメラ(32)は、複数の蒸発器ボート(14)の、好ましくは少なくとも4つの蒸発器ボート(14)の画像を取り込む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
光フィルターを備える、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置(26)は、蒸着される基材(12)の搬送速度に関する制御信号を提供するようになっている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
ウェブ供給物と、請求項1から4のいずれか1項の記載の蒸発器ボートを制御するためのシステムと、少なくとも前記蒸発器ボート(14)のための固定具(16)、供給ワイヤ駆動装置(24)、及びウェブ供給物を蒸着するための領域が配置されたプロセスチャンバ(30)とを含む、PVD装置。
【請求項6】
前記カメラ(32)は、前記プロセスチャンバ(30)の外部及び/又は内部に配置される、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置は、閉ループ制御を使用する、
請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
蒸着領域の下流側で前記ウェブの表面を検査するための表面検査システム(28)を備え、前記制御装置(26)は、前記表面検査システム(28)の出力信号を受け取る、
請求項5から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記蒸発器ボートの制御に関連する少なくとも1つのパラメータを可視化するための画面を備え、前記パラメータは、前記溶融材料のプールの形状及び前記溶融材料の温度のうちの少なくとも1つである、
請求項5から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記蒸発器ボートの制御に関連する可視化は、オペレータに対してプロセスの問題を強調するための色強調を有する、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかに記載の装置を作動させる方法であって、前記エネルギ供給源(18)のための前記制御信号は、前記蒸発器ボート(14)のそれぞれに供給される電力、電流、及び電圧のうちの少なくとも1つを制御し、前記画像解析モジュール(36)の出力に依存する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記基材(12)の搬送速度に関する制御信号は、速度を制御し、前記制御信号は、前記画像解析モジュール(36)の出力に少なくとも部分的に依存する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記供給ワイヤ駆動装置(24)のための前記制御信号は、前記供給ワイヤ(20)が前記蒸発器ボート(14)のそれぞれに向かって前進する速度を制御する、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記画像解析モジュール(36)は、
-溶融材料のプール又はセラミック蒸発器の形状、
-溶融材料のプールの寸法、
-溶融材料及び/又はセラミックボートの温度、
-溶融材料のプールのアスペクト比、
のパラメータのうちの少なくとも1つを解析する、
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記制御は、前記蒸発器ボート(14)のそれぞれの年齢に関する情報を考慮する、
請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記制御は、様々な蒸発器材料に関する前記蒸発器ボート(14)のための目標パラメータ、様々な蒸発器ボート(14)の寸法、及び/又は様々な蒸着要件の様々なセットを使用する、
請求項11から15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器ボート制御システム、PVD(物理蒸着)装置、及びPVD装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVD装置は、材料を基材上に蒸着させる装置である。この材料は、基材上に、酸化物及び/又は酸化アルミニウムなどの金属酸化物で構成される層を形成する。基材は、包装材料として用いることができる薄膜(プラスチック箔、紙、又はボール紙など)とすることができる。このような包装材料は、食品を包装するために使用することができる。層は、ガス及び/又は水及び/又は光の進入に対する障壁を提供するために用いることができる。箔、紙、又はボール紙の上に提供される層は、透明及び/又は機械的に高密度及び/又は機械的に安定とすることができる。
【0003】
PVD装置の種類によっては、蒸着材料を溶融させて蒸発させるために蒸発器ボートが使用される。蒸発器ボートは、抵抗加熱され、蒸着プロセスを行うための真空を達成できるようにプロセスチャンバ内に配置される。
【0004】
従来、抵抗加熱式蒸発器ボートは、オペレータによって手動で制御されている。手動プロセスは、オペレータが透明窓からのぞき込み、蒸発器ボート上のアルミニウムプールを目視で検査し、電力、電圧、電流によって電気的に調整して、ワイヤ供給速度、蒸発材料、種々のプロセス(AlOx、Dark Night、及びAluBond)、及び蒸発器ボート年齢などの変量に基づいて、蒸発材料の最適化されたプール形状を保証する。そうしないと、不十分な製品品質及び蒸発器ボート寿命の減少につながる。
【0005】
一般的な金属化プロセスにおいて、オペレータは、良好な製品品質を保証するために、1時間のサイクル時間に関して最大60の蒸発器に対して5分ごとに調整を行う必要がある。このオペレータ依存作業は、プールとボート表面の対比が難しく、これは製品品質、最大生産量、蒸発器ボート年齢の増加を保証するための限定要因であるので、非常に熟達した機械オペレータを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、蒸発器ボートの制御を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、蒸発器ボートを制御するためのシステムによって解決され、システムは。複数の蒸発器ボートを収容するための固定具と、蒸発器ボートの各々を加熱するためのエネルギを提供するためのエネルギ供給源と、蒸発器ボートの各々のための供給ワイヤ駆動装置と、固定具に取り付けられた複数の蒸発器ボートのうちの少なくとも1つの画像を取り込むようになった少なくとも1つのカメラと、制御装置と、を含み、制御装置は、画像解析モジュールを有し、供給ワイヤ駆動装置のための制御信号及びエネルギ供給源のための制御信号を提供するようになっており、制御信号は、画像解析モジュールの出力に少なくとも部分的に基づいている、
【0008】
また、上記の目的は、物理蒸着装置で解決され、この装置は、ウェブ供給物と、上記の蒸発器ボートを制御するためのシステムと、少なくとも蒸発器ボートのための固定具、供給ワイヤ駆動装置、及びウェブ供給物を蒸着するための領域が配置されたプロセスチャンバとを含む。ウェブ供給物を蒸着するための領域は、ウェブをプロセスドラムの周りに案内することで又はウェブを2つのガイドローラの間に案内することで形成される。
【0009】
さらに、上記の目的は、上記で規定された装置を作動させる方法で解決され、エネルギ供給源のための制御信号は、蒸発器ボートのそれぞれに供給される電力、電流、及び電圧のうちの少なくとも1つを制御する。
【0010】
一般的には、本発明の要点は、蒸発器ボート上の蒸発材料の少なくとも1つの関連するパラメータ、特にプール形状を特定するためのカメラシステムと、最適なプール形状を維持するために蒸発器の閉ループ電気制御を提供するための適切な認識ソフトウェアとを用いることである。これによって、最高の品質、製品収量、消耗品利用度でもってオペレータが介入しない金属化プロセスがもたらされる。
【0011】
また、制御装置は、蒸着される基材の前進速度を制御するための信号を提供する。
【0012】
エネルギ供給源は、蒸発器ボートの抵抗加熱又は誘導加熱のための加熱電流を提供することができ、加熱電流は、蒸着材料を溶融して蒸発させるための適切な温度レベルに維持するために非常に簡単に制御することができる。好ましくは、供給ワイヤ駆動装置は、ステッピングモータを含み、これは、非常に正確な様式で蒸発器ボートに対する供給ワイヤの所望量の制御を可能にする。
【0013】
典型的なPVD装置は複数の蒸発器ボートを有する。蒸発器ボートを制御するためのコストを低減するために、1つのカメラは、複数の蒸発器ボートの画像を、例えば4から6の蒸発器ボートの画像を取り込むことができる。取り込んだ画像を個別の蒸発器ボートに分離すること及び画像解析モジュールが個別の画像を別々に評価することは単純な作業である。
【0014】
画像解析を容易にするために、光フィルター又は光源はカメラに対して設けることができ、ボートの光放射と蒸発物プールの光放射との間のコントラストを高めるようになっている。
【0015】
好ましくは、カメラは、汚染を防止するために並びにアクセス及びメンテナンスを容易にするためにプロセスチャンバの外側に配置されるが、必要であればプロセスチャンバの中に取り付けることもできる。
制御装置は、蒸発器ボートの最適制御をもたらしかつ収量及び品質に関してPVDプロセスの最大生産高をもたらす閉ループ制御を使用する。
【0016】
好ましい実施形態によれば、蒸着領域の下流側でウェブの表面を検査するための表面検査システムを備え、制御装置は、表面検査システムの出力信号を受け取る。蒸発器ボート上の溶融材料のプールのパラメータだけでなく、蒸着材料が蒸着された基材の表面の品質を示す信号も考慮すると制御の品質がさらに高くなる。
【0017】
供給ワイヤ駆動装置に関する制御信号がそれぞれの蒸発器ボートに向かって供給ワイヤが前進する速度を制御する場合、蒸発器ボートに供給される材料量は、非常に容易かつ正確に制御することができる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、蒸発器ボートの制御に関連する少なくとも1つのパラメータを可視化するための画面を備え、パラメータは、溶融材料のプールの形状及び場合によっては溶融材料の温度のうちの少なくとも1つである、パラメータは、オペレータが関連情報を迅速に把握できるようにする方法で可視化することができる。一例として、溶融材料のプールの輪郭は特定の色で描写される、又は、溶融材料のプールの表面は蒸発器ボートの表面に対してより目立つようにされる。
【0019】
蒸発器ボートの最適な制御のために、画像解析モジュールは、溶融材料のプール又はセラミック蒸発器の形状;溶融材料のプールの寸法;溶融材料及び/又はセラミックボートの温度;溶融材料のプールのアスペクト比、のパラメータのうちの少なくとも1つを解析する。溶融材料のプールの形状及び寸法に関する情報により、特に蒸発器ボートに供給する必要がある蒸着材料の量を特定することができる。プール及び/又は蒸発器ボートの温度に関する情報は、加熱のために蒸発器ボートに供給されるエネルギ量の制御に適切である。アスペクト比に関する情報により、蒸発器ボートの年齢を評価することができる。この情報は、すでに使用されている蒸発器ボートとは異なる方法で加熱する必要がある新しい蒸発器ボートに関連する。
【0020】
代替的な実施形態において、それぞれの蒸発器ボートの年齢に関する情報は、制御装置が年齢情報を考慮できるように、蒸発器ボートがいつ交換されたかを直接示すことによって、様々な方法で制御装置に提供される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、制御装置は、様々な蒸発器材料に関する蒸発器ボートのための目標パラメータの様々なセットを使用する。様々な目標パラメータは、データベースから読み出すことができるので、例えば最適なプール形状に関する様々な情報は、様々な蒸着材料及び様々な蒸着プロセスのタイプに関して使用される。
本発明は、添付図面に示された実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1a及び1bの装置に使用する蒸発器ボートのための固定具の概略図である。
【
図3】蒸発器ボート上の溶融材料のプールの可視化の概略図である。
【
図4a】PVD装置のカメラを用いて蒸発器ボートから取り込んだ画像の例であり、溶融材料のプールは所望の形状を有している。
【
図4b】PVD装置のカメラを用いて蒸発器ボートから取り込んだ画像の例であり、溶融材料のプールは所望の形状を有している。
【
図5a】PVD装置のカメラを用いて蒸発器ボートから取り込んだ画像の例であり、溶融材料のプールは大きすぎる。
【
図5b】PVD装置のカメラを用いて蒸発器ボートから取り込んだ画像の例であり、溶融材料のプールは大きすぎる。
【
図6】蒸発器ボート上の溶融材料のプールの概略図であり、プールは小さすぎる。
【
図7】蒸発器ボート上の溶融材料のプールの概略図であり、プールは大きすぎる。
【
図8】蒸発器ボート上の溶融材料のプールの概略図であり、プールは所望の寸法である。
【
図9】新しい蒸発器ボート上の溶融材料のプールの概略図である。
【
図10】中心から外れたワイヤ供給によって引き起こされた溶融材料のプールの概略図である。
【
図11】接触の問題を有する溶融材料のプールの概略図である。
【
図12a】欠陥に関する溶融材料のプールの解析の概略図である。
【
図12b】欠陥に関する溶融材料のプールの解析の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1a及び
図1bにおいて、PVD装置の必須の構成要素が示されている。これはプロセスドラム10又はフリースパン(free span)ローラ40を備え、その周りでウェブの形態の基材12が案内される。基材12は、食品包装に用いられるプラスチックの薄箔とすることができる。
【0024】
基材12を準備して案内する手段(供給リール、案内ローラ、巻き取りリールなど)の詳細は、本発明を理解するのに関連しないので本明細書には示されていない。
【0025】
基材12上に蒸着される蒸着材料を提供するために、プロセスドラム10の近くに複数の蒸発器ボート14が設けられる。蒸発器ボート14は、隣接する蒸発器ボートの列を形成するように固定具16の中に配置され、この列は、全蒸発器ボート14が基材12の全幅に広がるようにプロセスドラム10の回転軸に対して平行に配置される。
【0026】
図2の構成において、蒸発器ボートは、互いに千鳥配置で示されている。他の配列も可能であり、例えば蒸発器ボートは一直線に配列することができる。
固定具16は、電気エネルギをエネルギ供給源18(
図1a及び
図1bに概略的に示されている)から蒸発器ボート14に供給するようになっている。蒸発器ボート14に供給されるエネルギ量は、各蒸発器ボート14に関して別々に制御することができる。
【0027】
基材12の幅に依存して、固定具16内に互いに隣接して最大60の蒸発器ボート14を配置することができる。
蒸着材料は、供給リール22上に貯蔵された供給ワイヤ20の形態で蒸発器ボート14の各々に供給される。蒸発器ボート14の各々に関して、供給ワイヤ20がそれぞれの蒸発器ボート14に向かって前進する速度を制御する供給ワイヤ駆動装置24が設けられる。
ここでは、装置24は、ステッピングモータの形で実装される。
【0028】
制御装置26は、PVD装置の様々な機能を制御するために設けられている。
制御装置26は、蒸発器ボート14の各々に供給されるエネルギ量を制御する。さらに、制御装置26は、駆動装置24の速度を制御する。
【0029】
また、制御装置26には、プロセスドラム10の下流側で基材12の表面を検査する表面検査システム28が接続されている。表面検査システムによって、蒸着材料が提供される基材の表面欠陥並びに他の品質問題を検出することができる。
【0030】
基材12上に蒸着材料が蒸着される領域において真空を達成することができるプロセスチャンバ30が形成される。
【0031】
少なくとも1つのカメラ32は、蒸発器ボート14の少なくとも1つの画像を取り込むために設けられている。本明細書において、用語「カメラ」は、デバイスの視野領域内の光学的情報を電子情報に変換することができるあらゆるデバイスを指す。
【0032】
蒸発器ボート14の各々に対して1つのカメラ32を用いることができる。必要なカメラ32の数を少なくするために、複数の蒸発器ボート14をカバーするカメラ32を用いることが好ましい。例として、カメラ32の各々は、6つの蒸発器ボート14の画像を取り込むことができる。
カメラ32は、プロセスチャンバ30の外側に配置される。視界窓34は、プロセスチャンバ30の壁に設けられており、カメラは、蒸発器ボート14の画像を取り込むことができる。
【0033】
カメラ32で取り込んだ画像(赤外線及び光放射)は、制御装置26に、特に制御装置26の一部である画像解析モジュール36に供給される。
画像解析を容易にするために、光フィルター(図示せず)又は光源は、カメラに対して設けられ、溶融材料のプールの表面と蒸発器ボート14の表面との間のコントラストを高めるようになっている。フィルターは、蒸発器ボート14上の溶融材料のプールの検出を容易にする。
【0034】
画像解析モジュール36は、カメラ32によって提供される、特に各蒸発器ボート14上の溶融蒸着材料のプールの形状に関する情報を解析するようになっている。蒸発器ボート14上の溶融蒸着材料のプールの形状は、供給ワイヤ20の形態で供給される蒸着材料の量に関して及びエネルギ供給源18から供給されるエネルギ量によって達成される蒸発器ボート14の温度に関して、蒸発器ボート14を制御するための最も関連性のあるパラメータである。
【0035】
画像解析モジュール36の一部は、目標プール形状の情報が格納されたデータベースである。目標プール形状は、所要の特定の蒸着特性に関する、及び新しい蒸発器ボート14をほとんど消費された古い蒸発器ボート14と比較した場合にプールの最適形状は変わるので蒸発器ボート14の様々な年齢に関する、溶融材料のプールの最適な形状と見なすことができる。
蒸発器ボート14の年齢に関する情報は、個々の蒸発器ボート14のアスペクト比を決定することで取得することができる。
【0036】
PVD装置の作動時、画像解析モジュール36は、各蒸発器ボート14上の溶融材料のプールの形状を解析して(例えば、適切な認識ソフトウェアを用いて)、これを目標形状と比較する。実際の形状と目標形状との間の差異に応じて、制御装置26は、ステッピングモータ24を制御して蒸着材料をそれぞれの蒸発器ボート14へ適切に供給し、さらにエネルギ供給源18を制御して蒸発器ボート14の温度を適切に設定する。エネルギ供給源18の制御は、蒸発器ボート14に供給される電力、電圧、及び/又は電流の変更を含むことができる。
【0037】
新しい蒸発器ボート14は、アスペクト比の検出によって決定することができる。
制御装置26の全体的な目的は、最適なプール形状及び最適なボート適用範囲(coverage)を実現することである。
【0038】
加えて、制御装置26は、オペレータの検査に向けて決定された溶融材料のプールの形状を画面上に可視化することができる。可視化は、特にカメラ32で取り込んだ実際の画像を表示する(
図3の左側の画像を参照)ことを含むだけでなく、コントラストが最適化された描写(
図3の左側の画像を参照)を含むことができる。
最適な制御のために、閉ループ欠陥制御が確立され、これは表面検査システム28から提供された情報も考慮する。
【0039】
図4aから
図5bは、カメラ32のうちの1つで取り込まれた画像の例を示す。
図4a及び
図4bにおいて、プールの形状及び寸法は、要望通りである。供給電圧及び電力は、ワイヤ供給速度及びボート年齢に関してバランスが取れている。
図5a及び
図5bにおいて、プールの寸法は大きすぎる。蒸発器ボートは冷たすぎるので、供給電力/電圧を高くして温度を上昇させる必要があるか又はワイヤ供給速度を低下させる必要がある。
【0040】
図6から
図8において、蒸発器ボート上の溶融材料の様々なプールの概略的な例が示されている。参照符号Rを用いて仮想参照フレームが表されており、これは、プールの寸法を決定するために画像解析モジュール36が利用することができる。取り込んだ画像の解析に応じて、制御装置は蒸発器ボートに供給される加熱電力を制御する。
【0041】
図6において、溶融材料Mのプールは小さすぎる。これは蒸発器ボートの温度が高すぎて蒸発速度が高すぎることに起因する。制御装置は、蒸発器ボートに供給される加熱電力を低減する。
図7において、溶融材料Mのプールは大きすぎる。これは、蒸発器ボートの温度が低すぎて、蒸発速度が低すぎることに起因する。制御装置は、蒸発器ボートに供給される加熱電力を増加させる。
図8において、溶融材料Mのプールは所望の寸法である。これは、ボート温度、供給された加熱電力、及び金属ワイヤ供給の間の釣り合いが取れていることに起因する。
【0042】
蒸着プロセスの開始後、制御装置は、溶融材料Mのプールの形状の何らかの変化を監視する。プールの寸法が所望状態(
図8のような)から大きくなる場合(
図7の寸法に向かって)、蒸発速度は本来あるべきよりも低い。従って、制御装置は、最終製品の欠陥及びウェブ障壁への損傷を防止するために、ワイヤ供給速度を高くするか又は蒸発器ボートに供給される電力を高くすることができる。
【0043】
蒸着プロセスの開始時の様々なプールの形状の間の比較は、所定期間にわたる蒸発を考慮することができる。
図8は、標準製造の間の溶融材料のプールの概略的な描写である。使用される蒸発器ボート及び他の要因に応じて、プールは蒸発器ボートの表面の様々な領域をカバーする。
適切なプール形状は、装置制御に利用できるようにデータベースに格納されている。
【0044】
様々なタイプのプロセスが実行される場合、画像解析モジュール36は、様々な形状/寸法を想定してプールを制御することができる。
画像解析モジュール36は、
図9から
図11を参照して説明するように可能性のある問題さらには他のパラメータを特定することができる。
【0045】
図9では、新しい蒸発器ボートの特徴である溶融材料のプールを見ることができる。これは、溶融材料のプールのアスペクト比に基づいて決定することができる。プールの長さはその幅の5倍より大きい。
【0046】
図10では、プール全体がオフセットしている。これは、供給ワイヤが中心から外れている結果である。制御装置は、この問題を特定して警告又は何らかの他の注意を制御表示部に示し、解決すべき問題があることをオペレータが理解できるようにすることができる。
【0047】
図11では、蒸発器ボート14の光放射が概略的に示されており、左上隅は蒸発器ボート14の残部よりも著しく光を放射している。これは、固定具16から蒸発器ボートへの電気接触、特に接触点で熱が発生するような高い電気抵抗の問題を示す。
過度の熱は、拡張現実可視化でもって表示部に示すことができ、オペレータは、問題の内容を迅速に把握することができる。
【0048】
図12a及び12bでは、蒸発器ボート14上の可能性のある問題の他の評価例が示されている。ここでは、溶融材料MのプールのピンホールP又は他の欠陥が監視され、所定期間にわたる可能性のある変化が評価される。これにより、プールの状態及びプールの時間的傾向の検出が可能であり、進行中の蒸着プロセスの制御に影響を及ぼすことができる。
【国際調査報告】