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特表2022-507625バインダーを使用せずにグラフェンフェルトを合成する方法
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  • 特表-バインダーを使用せずにグラフェンフェルトを合成する方法 図1
  • 特表-バインダーを使用せずにグラフェンフェルトを合成する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】バインダーを使用せずにグラフェンフェルトを合成する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20220111BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20220111BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20220111BHJP
【FI】
C01B32/194
D04H1/4242
D04H1/728
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526749
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 IN2019050848
(87)【国際公開番号】W WO2020100168
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811043051
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521209373
【氏名又は名称】ログ 9 マテリアルズ サイエンティフィック プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LOG 9 MATERIALS SCIENTIFIC PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】アクシャイ ヴィヴェック シンハル
(72)【発明者】
【氏名】アンシュル クマール シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】クナル ポール
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィンド バードワージ
(72)【発明者】
【氏名】サイード シャジャル アリ イマム
(72)【発明者】
【氏名】ヘマント チャラヤ
【テーマコード(参考)】
4G146
4L047
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA16
4G146AB05
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC03A
4G146AC04A
4G146AC07A
4G146AC22A
4G146AC27A
4G146AD11
4G146AD17
4G146AD26
4G146BA04
4G146CB02
4G146CB03
4G146CB07
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB12
4G146CB13
4G146CB26
4G146CB34
4L047AA03
4L047AB08
4L047CA19
4L047EA01
(57)【要約】
本明細書の実施形態は、自立型で機械的に頑丈なバインダーフリーのグラフェンフェルトを調製するための容易な4ステッププロセスを提供する。グラフェン材料の解凝集のステップは、均一なサイズ分布につながり、適切な成形技術と組み合わせ/統合すると、所望の用途に応じた導電性、多孔度、表面積、表面形態表面官能化を含むグラフェンフェルトのさまざまな属性を簡単に微調整できる。このプロセスで得られたグラフェンフェルトにはバインダーが含まれていないため、機械的特性を損なうことなく、従来のグラフェンフェルトと比較して優れた導電性、電気化学的活性、触媒およびセンシング特性を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量のグラフェン原料を分離すること、ここで前記グラフェン原料は、カーディング、機械的砕塊、超音波処理、せん断およびふるい振とうプロセスからなる群より選択されるプロセスによって分離される;
分離されたグラフェン原料の重量を最適化すること;
前駆体材料として使用される前記グラフェン原料を官能化すること、ここで官能化されたグラフェン原料を処理してグラフェン原料にナノまたはマイクロ繊維構造を提供し、かつ、グラフェン原料の処理されたナノまたはマイクロ構造が絡み合って圧縮プロセス中にグラフェンフェルトを形成し、かつ、ナノおよびマイクロ繊維構造のないグラフェン材料がエレクトロスピニングおよび化学的または物理的架橋プロセスによって処理され、グラフェンフェルトを製造するためのナノおよびマイクロ構造を有する繊維を調製する;
グラフェン原料の均一なサイズ分布および均一な材料密度を達成するためにグラフェン原料を解凝集すること;
機械的圧縮のために事前に設計された型に解凝集されたグラフェン材料を注ぐこと、ここで、前記型は、ポジ型およびネガ型からなる群より選択される;
前記グラフェンフェルトを化学薬品で処理して、事前設定された期間、表面特性を向上させること、ここで前記事前設定された期間は2~3時間である;および
前記事前設定された期間後に前記グラフェンフェルトを蒸留水で洗浄してグラフェンフェルトの表面に官能基元素(酸素)を導入すること、ここでグラフェンフェルトの表面に前記官能基を導入して前記グラフェンフェルトを親水性にし、かつ、前記グラフェンフェルトは、多孔度、厚さ、表面積および密度について分析される、
を含む、グラフェンフェルトを合成する方法。
【請求項2】
前記所定量のグラフェン原料が、97%w/w~100%w/wの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフェン原料に架橋剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤が、二価金属イオンまたは三価金属イオンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記二価金属イオンが、Mg2+またはCaであり、前記三価金属イオンが、Fe3+またはAl3+である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤が、所定の濃度レベルで添加され、前記所定の濃度レベルが、0~3重量%以内である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフェンフェルトが、バインダー材料なしで合成され、高い熱伝導性および導電特性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グラフェン原料が、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオンおよびグラフェンボールからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記解凝集プロセスが、機械的砕塊、超音波処理、せん断およびふるい振とうプロセスからなる群より選択され、グラフェン材料の塊が、解凝集プロセスで事前に定められたサイズの小さな塊に分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
機械的圧縮プロセスは、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセスからなる群より選択され、グラフェンフェルトは、前記機械的圧縮プロセスの後に得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化学薬品が、酸および塩基からなる群より選択され、グラフェンフェルトの処理に使用される前記酸がHSOであり、グラフェンフェルトの処理に使用される塩基がKOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記グラフェンフェルトが、5~200μmの範囲の多孔度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
製造されたグラフェンフェルトが、0.5mm~15mmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記グラフェンフェルトの表面積が、10~100m/gの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
グラフェンフェルトの密度が、0.02g/cm~0.2g/cmの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、題名「グラフェンフェルトの調製方法」を有する、2018年11月15日に出願された番号201811043051のインド仮特許出願の優先権を主張し、その全体が参照によって組み込まれる。
【背景】
【0002】
技術分野
本発明は、概して、グラフェンナノテクノロジーの分野およびグラフェン材料の処理に関する。本発明は、特に、グラフェンフェルトを合成する方法に関する。本発明は、より具体的には、いかなる種類のバインダーも使用せずにグラフェンフェルトを合成/調製する方法に関する。本発明は、特に、バインダーを含まない、自立型で、機械的に頑丈なグラフェンフェルトを合成する方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
グラフェンは、原子が六角形のパターンで配置され、ハニカム格子構造を形成する、sp2混成炭素原子の原子的に薄い二次元単分子層である。最近では、グラフェン材料は、大きな理論的表面積、制御可能な細孔構造と表面形態、触媒活性と電子キャリア移動度のさらなる向上およびセンシング選択性と感度の変更のための優れた電子キャリア移動度と表面機能化の容易さを含むその独特な特性によって、エネルギーの貯蔵と収集、精製とろ過、有機およびフレキシブルエレクトロニクス、ガスと化学の検知、金属フリー触媒作用など、さまざまな用途で広く研究されている。
【0004】
グラフェンは一連の特別な特性を享受しているが、グラフェン材料を処理してこれらの特別な特徴を保持するフェルトを開発することは困難な作業である。一般に、ポリマーバインダーは、グラフェンフェルトの製造に組み込まれ、グラフェンフェルトに機械的安定性を与え、それによってグラフェンフェルトが本質的に自立シートになることを可能にする。しかし、これらのバインダーを使用すると、グラフェンフェルトの特性と性能に悪影響を及ぼす。例えば、ポリマーバインダーは、グラフェンフェルトの表面積と細孔の数を減らし、利用可能な活性部位の大幅な縮小をもたらし、それによってグラフェンフェルトの電気化学的、触媒的、および感知特性に影響を与える。また、低導電性/非導電性ポリマーの添加は、グラフェンフェルトの全体的な導電性に影響を与え、それによって電気化学的および電子的用途におけるグラフェンフェルトの性能と効率に直接的な影響を与える。
【0005】
したがって、グラフェンフェルトの機械的特性を損なうことなく、バインダーを添加する必要なしにグラフェンフェルトを調製するためのグラフェン材料の合成のために実施される容易なプロセスを開発する必要がある。
さらに、グラフェンフェルトの合成過程においてグラフェン材料を解凝集する方法が必要である。
【0006】
上記の欠点、不利な点および課題は、本明細書で対処され、以下の明細書を検討することによって理解されるであろう。
【実施形態の目的】
【0007】
本発明の主な目的は、バインダー材料なしでグラフェンのフェルトを調製/合成する方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、バインダーフリーのグラフェンフェルトを調製する方法を提供することであり、グラフェン材料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、高膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオン、グラフェンボールおよびそれらの誘導体からなる群より選択される。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、グラフェンフェルトの製造/合成中にグラフェン材料を解凝集するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、グラフェンフェルトの調製/製造または合成のための一次グラフェン材料の成形方法を提供することであり、成形プロセスは、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセス/技術からなる群より選択される。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、0.5mm~15mmの厚さのグラフェンフェルトを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、10~100m/gの制御可能な表面積を有するグラフェンフェルトを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、5~200μmの多孔度を有するグラフェンフェルトを提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、0.02g/cm~0.2g/cmの密度を有するグラフェンフェルトを提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、所望の表面官能化特性を有するグラフェンフェルトを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、グラフェンフェルトの表面形態を最適化するための方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、制御可能かつ調整可能な電気伝導率、多孔度、密度、表面積、表面形態および表面官能化特性を備えた自立型かつ機械的に頑丈なグラフェンフェルトを提供/開発することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、上記の特性を高度なエネルギー貯蔵および収集装置、効率的なろ過および精製媒体、安価な従来型、有機的およびフレキシブルな電子製品、強力な貴金属フリーの触媒プラットフォーム、高感度のガスおよび化学センサーなどの用途に基づいて、容易に調整/カスタマイズ可能なグラフェンフェルトを提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、ナノおよびマイクロ繊維構造のみを有するグラフェン材料からグラフェンフェルトを製造するプロセスを提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、グラフェンフェルトを製造するための繊維を調製するためのエレクトロスピニングおよび化学的または物理的架橋プロセスを通じて、ナノおよびマイクロ繊維構造のないグラフェン材料を合成するプロセスを提供することである。
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0022】
本明細書の様々な実施形態は、有機/無機、フッ素化/非フッ素化バインダーなしでグラフェンフェルトを調製/合成するための複数の方法を提供する。
【0023】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを合成する方法は、以下のステップを含む。所定量のグラフェン原料が分離される。グラフェン原料は、カーディング、機械的砕塊、超音波処理、せん断およびふるい振とうプロセスからなる群より選択されるプロセス/技術によって分離される。分離されたグラフェン原料の重量が最適化される。グラフェン原料が官能化される。官能化されたグラフェン原料が処理され、グラフェン原料にナノまたはマイクロ繊維構造を提供する。グラフェン原料の処理されたナノまたはマイクロ構造が絡み合って、圧縮ステップ中にグラフェンフェルトを形成する。グラフェン原料が、プロセスを使用してグラフェン原料の均一なサイズ分布と均一な材料密度を達成するために解凝集される。解凝集されたグラフェン材料が、機械的圧縮用に事前に設計された金型に注がれる。金型が、ポジ型とネガ型からなる群より選択される。グラフェンフェルトが、表面特性を向上させるために化学薬品で2~3時間処理される。化学薬品が、グラフェンフェルトの表面に官能基を導入する。官能基は、窒素と酸素に基づく。グラフェンフェルトが2~3時間後に蒸留水で洗浄されて、過剰な化学薬品を除去する。グラフェンフェルトの表面の官能基が、グラフェンフェルトを親水性にする。グラフェンフェルトが、多孔度、厚さ、表面積および密度について分析される。
【0024】
本明細書の一実施形態によれば、所定量のグラフェン原料は、97%w/w~100%w/wの範囲であり、任意に、架橋剤がグラフェン原料に添加される。架橋剤は、グラフェン材料に対してナノおよびマイクロ繊維の性質を有する。
【0025】
本明細書の一実施形態によれば、バインダー材料なしで合成されたグラフェンフェルトは、高い熱伝導性および導電特性を示す。
【0026】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェン原料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオンおよびグラフェンボールからなる群より選択される。
【0027】
本明細書の一実施形態によれば、解凝集プロセスは、機械的砕塊、超音波処理、せん断、およびふるい振とうプロセスからなる群より選択される。解凝集プロセス中に、グラフェン材料の塊は、事前に定められた(事前設定された)サイズを有する小さな塊に分割される。
【0028】
本明細書の一実施形態によれば、機械的圧縮の方法は、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセスからなる群より選択される。機械的圧縮後、グラフェンフェルトが得られる。
【0029】
本明細書の一実施形態によれば、化学薬品は、酸および塩基からなる群より選択される。一実施形態によれば、グラフェンフェルトを処理するために使用される酸は、HSOであり、グラフェンフェルトを処理するために使用される塩基は、KOHである。
【0030】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトは、5~200μmの多孔度を示す。
【0031】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの厚さは、0.5mm~15mmの範囲内である。
【0032】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの表面積は、10~100m/gの範囲内である。
【0033】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの密度は、0.02g/cm~0.2g/cmの範囲内である。
【0034】
本明細書の一実施形態によれば、バインダーフリーのグラフェンフェルトを調製/製造/合成する方法が提供され、グラフェン材料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、高膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオン、グラフェンボールおよびその誘導体からなる群より選択される。
【0035】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの調製/製造/合成中にグラフェン材料の解凝集のための方法が提供され、グラフェン材料の均一なサイズ分布を達成し、解凝集プロセスは、機械的砕塊、超音波処理、せん断、ふるい振とうプロセスおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0036】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの調製/合成のために一次グラフェン材料を成形する方法であり、成形プロセスは、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮、および射出成形のうちの1つであり、成形プロセスは、制御可能な多孔度、厚さ、密度、柔軟性および表面形態につながる。
【0037】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、様々な柔軟性を備えた、0.5mm~15mmの範囲の厚さを有するグラフェンフェルトを提供する。
【0038】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、エネルギー貯蔵、エネルギー収集、ガスおよび化学感知ならびに触媒などの複数の用途をサポートするために、10~100m/gの範囲の制御可能な表面積を有するグラフェンフェルトを提供する。
【0039】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、5~200μmの範囲の多孔度を有するグラフェンフェルトを生成/提供し、この制御可能な多孔度は、ろ過および精製システム、エネルギー貯蔵および収集装置ならびにガス検知装置に適用可能である。
【0040】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、0.02g/cm~0.2g/cmの範囲の密度を有するグラフェンフェルトを提供/生成する。
【0041】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、所望の表面官能化特性を有するグラフェンフェルトを提供/生成する。
【0042】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの表面形態を最適化する方法が提供され、表面形態は、所望の用途に関して最適化される。制御された形態は、成形プロセス中の金型のパターンによって実現される。
【0043】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを製造するプロセスは、ナノおよびマイクロ繊維構造を有するグラフェン材料にのみ適用可能である。ナノおよびマイクロ構造を持たないグラフェン材料は、エレクトロスピニング、および化学的または物理的架橋プロセスを使用して処理され、必要な構造を有する繊維を達成する。グラフェン材料は、ナノまたはマイクロ繊維構造を達成するために、エレクトロスピニング、化学的または物理的架橋に供することができる。
【0044】
本明細書の実施形態のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて検討すると、よりよく理解されるであろう。しかしながら、以下の説明は、好ましい実施形態およびその多数の具体的な詳細を示す一方で、例示として与えられ、限定ではないことを理解されたい。多くの変更および修正は、その精神から逸脱することなく、本明細書の実施形態の範囲内で行うことができ、本明細書の実施形態は、そのようなすべての変更を含む。
【0045】
他の目的、特徴および利点は、好ましい実施形態の以下の説明および添付の図面から当業者に生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本明細書の一実施形態による、バインダーフリーのグラフェンフェルトの合成プロセスを説明するフローチャートを示している。
図2図2は、本明細書の一実施形態による、グラフェンフェルトの表面電子顕微鏡(SEM)を示す。
【0047】
本発明の具体的な特徴は、1つ以上の図面に示されているが、その特徴は、示された図面に限定されない場合がある。これは、各特徴が本発明による他の特徴のいずれかまたはすべてと組み合わせることができるので、便宜上行われるだけである。本発明の特徴は図面に記載されており、そのうちのいくつかは全てで示されていない。これらの特徴は、本発明に存在する他の特徴のいずれかまたはすべてと組み合わせることができる。
【実施形態の詳細な説明】
【0048】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照され、実施され得る特定の実施形態が例示として示されている。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするのに十分詳細に説明され、実施形態の範囲から逸脱することなく他の変更を行うことができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0049】
本発明の様々な実施形態は、バインダーを使用せずにグラフェンフェルトを合成する方法を提供する。
【0050】
本明細書の一実施形態によれば、バインダーフリーのグラフェンフェルトを調製/合成する方法が提供され、グラフェン材料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、高膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオン、グラフェンボールおよびその誘導体からなる群より選択される。
【0051】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを合成する方法は、以下のステップを含む。所定量のグラフェン原料が分離される。グラフェン原料は、カーディング、機械的砕塊、超音波処理、せん断およびふるい振とうプロセスからなる群より選択されるプロセス/技術によって分離される。分離されたグラフェン原料の重量が最適化される。グラフェン原料が官能化される。官能化されたグラフェン原料が処理され、グラフェン原料にナノまたはマイクロ繊維構造を提供する。グラフェン原料の処理されたナノまたはマイクロ構造が絡み合って、圧縮ステップ中にグラフェンフェルトを形成する。グラフェン原料が、グラフェン原料の均一なサイズ分布とグラフェンフェルトでの均一な材料密度を達成するために解凝集される。解凝集されたグラフェン材料が、機械的圧縮用に事前に設計された金型に注がれる。金型が、ポジ型とネガ型からなる群より選択される。グラフェンフェルトが、表面特性を向上させるために化学薬品で2~3時間処理される。化学薬品が、グラフェンフェルトの表面に官能基を導入する。官能基は、窒素と酸素に基づく。グラフェンフェルトが2~3時間後に蒸留水で洗浄されて、過剰な化学薬品を除去する。
【0052】
グラフェンフェルトを2~3時間後に蒸留水で洗浄して、グラフェンフェルトの表面に官能基(酸素)を導入する。グラフェンフェルトの表面の官能基は、グラフェンフェルトを親水性にする。グラフェンフェルトは、多孔度、厚さ、表面積および密度について分析される。
【0053】
本明細書の一実施形態によれば、所定量のグラフェン原料は、97%w/w~100%w/wの範囲であり、任意に、架橋剤がグラフェン原料に添加される。
【0054】
本明細書の一実施形態によれば、バインダー材料なしで合成されたグラフェンフェルトは、高い熱伝導性および導電性を示す。
【0055】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェン原料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオンおよびグラフェンボールからなる群より選択される。
【0056】
本明細書の一実施形態によれば、解凝集プロセスは、機械的砕塊、超音波処理、せん断、およびふるい振とうプロセスからなる群より選択される。解凝集プロセス中に、グラフェン材料の塊は、事前に定められた(事前設定された)サイズを有する小さな塊に分割される。
【0057】
本明細書の一実施形態によれば、機械的圧縮の方法は、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセスからなる群より選択される。機械的圧縮後、グラフェンフェルトが得られる。
【0058】
本明細書の一実施形態によれば、化学薬品は、酸および塩基からなる群より選択される。本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを処理するために使用される酸は、HSOであり、グラフェンフェルトを処理するために使用される塩基は、KOHである。
【0059】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトは、5~200μmの多孔度を示す。
【0060】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの厚さは、0.5mm~15mmの範囲内である。
【0061】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの表面積は、10~100m/gの範囲内である。
【0062】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの密度は、0.02g/cm~0.2g/cmの範囲内である。
【0063】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの調製中にグラフェン材料を解凝集する方法が提供される。解凝集プロセスは、機械的砕塊、超音波処理、せん断、ふるい振とうプロセスおよびそれらの組合せからなる群より選択される。このプロセスでは、選択された凝集グラフェン材料を均一なサイズ分布の小さな塊に分解して、成形プロセス中に良好な圧縮を実現し、それによってバインダー材料を使用せずにグラフェンフェルトの良好な機械的特性を実現する。
【0064】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの調製/合成中に一次グラフェン材料を成形する方法が提供される。成形プロセスは、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセスからなる群より選択される。成形プロセスの性質は、得られるグラフェンフェルトの最終特性にかなりの影響を及ぼし、グラフェンフェルトの最終特性には、多孔度、厚さ、密度、柔軟性などが含まれる。したがって、適切な成形プロセスを選択することが、所望の用途で使用するためのグラフェンフェルトの特定の特性を達成するための重要なステップである。
【0065】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、効率的なろ過および精製システムで使用される最適化可能および制御可能な細孔構造を備えた5~200μmの範囲の多孔度を有するグラフェンフェルトを提供する。
【0066】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、様々な柔軟性を備えた、0.5mm~15mmの範囲の厚さを有するグラフェンフェルトを提供する。
【0067】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、複数の用途で使用するための、10~100m/gの範囲の制御可能な表面積を有するグラフェンフェルトを提供する。高表面積フェルトは、バッテリー、スーパーキャパシタ、燃料電池などのエネルギー貯蔵用途、グラフェンの熱電、圧電、熱電特性に基づくエネルギー収集装置、および化学センシングで使用される。
【0068】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、0.02g/cm~0.2g/cmの範囲の密度を有するグラフェンフェルトを生成する。グラフェンフェルトの密度は、解凝集プロセス中にグラフェン材料のサイズを制御することと、成形およびパラメーターの調整に適切なプロセスを選択することによって、調整/調節/変更される。
【0069】
本明細書の一実施形態によれば、この方法は、解凝集プロセスの前に、グラフェン原料の表面を官能化することによって、所望の表面官能化を有するグラフェンフェルトを生成する。得られたグラフェンフェルトは、表面官能化グラフェン材料と同様の特性を備えている。
【0070】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトの表面形態を最適化するための方法が提供され、表面形態は、あらかじめ定められた表面微細構造を有するネガ型またはポジ型を使用することによって最適化される。
【0071】
本明細書の実施形態は、燃料電池のガス拡散層およびイオン交換膜、金属空気電池の空気電極、金属イオン電池およびスーパーキャパシタの電極などの様々なエネルギー貯蔵用途で使用するためのグラフェンフェルトを調製する方法を提供する。
【0072】
本明細書の実施形態は、最適化された選択性および感度を備えた様々なガスおよび化学感知装置ならびに選択的ガス/流体のみを通過させる精製およびろ過膜で使用されるグラフェンフェルトを調製する方法を提供する。
【0073】
本明細書の実施形態は、グラフェンフェルトの並外れた触媒活性のために貴金属フリーの触媒作用で使用される、および良好な導電性および柔軟性特性のために、可撓性および有機電子機器で使用されるグラフェンフェルトを調製する方法を提供する。
【0074】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを合成する際の第1のステップは、正しい前駆体材料(前駆体材料)を選択することである。選択された前駆体材料は、固有のナノおよびマイクロ繊維構造(グラフェン3Dアーキテクチャ、膨張化黒鉛、グラフェンエアロゲルなど)を有する必要がある。これらの前駆体材料は、互いに容易に絡み合い、重なり合って、絡み合いを促進し、それによって最終的にグラフェンフェルトの形成をもたらすことを可能にする。固有のナノおよびマイクロ繊維性質を持たない材料の場合、これらのグラフェン材料の濃縮溶液が合成され、繊維製造技術がそれを達成するために採用される。繊維製造技術は、エレクトロスピニング、凍結乾燥および、0~3重量%の濃度のMg2+およびCaなどの2価金属イオンまたはFe3+、Al3+などの3価金属イオンなどの化学的または物理的架橋剤による架橋であり、繊維構造を得る。
【0075】
本明細書の一実施形態によれば、第2のステップにおいて、前駆体グラフェン材料は、サイズ分布に基づいて分離される。歪んだサイズ分布は、グラフェンフェルトの圧縮を防ぎ、それによってフェルトの機械的特性が低下する。さらに、材料内の凝集体または凝集体の形成は、グラフェンフェルト全体の密度変動の可能性を高める。サイズ分布に基づいて前駆体材料を分離するために複数の方法が使用され、複数の方法は、カーディング、機械的砕塊、超音波処理、ふるい振とうプロセス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0076】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルト合成の第3のステップは、圧縮プロセスである。圧縮プロセスでは、前駆体材料/グラフェン原料が型に入れられる。金型は、グラフェンフェルトに望ましい表面形態とパターンを与えるための要件に従って設計されている。ポジ型とネガ型の両方の金型が使用される。グラフェン前駆体材料の最適化された量がフェルトの多孔度、電気伝導率、密度、厚さおよび柔軟性に直接影響を与えるため、最適化された量のグラフェン前駆体材料が、金型内に添加される。圧縮のための複数の方法は、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮、射出成形プロセスおよびそれらの組み合わせを含む。これらの圧縮プロセスのパラメーターを調整して、必要な特性を備えたグラフェンフェルトを得る。
【0077】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトは、圧縮後に得られる。グラフェンフェルトは、表面の特徴/特性を向上させるために化学処理に供される。グラフェンフェルトは、酸(硫酸)または塩基(KOH)などの化学薬品に2~3時間浸される。化学薬品は、グラフェンフェルトの表面に官能基を導入する。官能基は、窒素と酸素に基づいている。グラフェンフェルトは、2~3時間後に蒸留水で洗浄されて、過剰な化学薬品を除去する。グラフェンフェルトは、表面の酸素などの官能基のために親水性になる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、グラフェンフェルトは、ポリマーバインダーなしで合成される。グラフェンフェルトは、高い熱伝導性と導電性を示す。これらの特性は、バッテリーハウジングのより速い熱放散およびEMIシールド機能それぞれにおいて重要であることが証明されている。
【0079】
本明細書の一実施形態によれば、グラフェンフェルトを合成するプロセスは、以下のステップを含む。ステップ1は、重量の最適化および原材料の分離を含み、原料は、グラフェンシート、グラフェンリボン、グラフェン小板、グラフェンフォーム、グラフェンスポンジ、グラフェンエアロゲル、グラフェン3Dアーキテクチャ、高膨張化グラファイト、架橋グラフェンシート、グラフェンオニオンおよびグラフェンボールからなる群より選択される。このグラフェン材料は、所望の用途に応じて官能化される。ステップ2は、機械的砕塊、超音波処理、せん断、ふるい振とうプロセスおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される複数の物理的手段を使用してグラフェン材料の均一なサイズ分布を達成するための解凝集プロセスを含む。このステップでは、グラフェン材料の凝集した塊が、事前に定められたまたは事前設定されたサイズの小さな塊に分解される。均一なサイズ分布は、成形プロセス中に高い圧縮を達成するのに役立ち、優れた機械的特性につながる。グラフェンフェルト調製のステップ3は、グラフェン材料フェルトの成形を含み、成形プロセスは、真空圧縮、圧縮、プレス、ロール圧縮および射出成形プロセスからなる群より選択される。適切な成形プロセスを選択することと、関連する成形パラメーターを制御することによって、調製/合成/製造されたグラフェンフェルトの複数の属性/特性が最適化される。フェルトの複数の特性には、多孔度、厚さ、密度、柔軟性などが含まれる。最後に、ステップ4で、最適化された特性を持つグラフェンフェルトが得られ、エネルギー貯蔵および収集装置、ろ過および精製システム、化学薬品およびガスセンシング、触媒作用およびフレキシブルエレクトロニクスなどでの用途に使用される。
【0080】
図1は、本明細書の一実施形態による、バインダーフリーのグラフェンフェルトの合成プロセスを説明するフローチャートを示す。所定量のグラフェン原料を分離する(101)。分離されたグラフェン原料の重量を最適化する(102)。グラフェン原料を官能化する(103)。フェルト合成に使用されるグラフェン原料を、均一なサイズ分布と均一な材料密度を達成するために解凝集する(104)。解凝集したグラフェン材料を、機械的圧縮のために事前に設計された型に注ぎ、グラフェンフェルト(105)を得る。グラフェンフェルトを、表面特性を向上させるために、化学薬品で2~3時間処理する(106)。グラフェンフェルトは、2~3時間後に蒸留水で洗浄して、過剰な化学薬品を除去する(107)。
【0081】
図2は、本明細書の一実施形態による、グラフェンフェルトの表面電子顕微鏡(SEM)を示す。図2は、グラフェンフェルトの3Dアーキテクチャを示す。
【0082】
本明細書の実施形態は、様々な特定の実施形態で説明されているが、当業者にとって、本明細書の実施形態を修正して実施することは明らかであろう。
【0083】
特定の実施形態の前述の説明は、本明細書の実施形態の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態のような様々な用途に容易に修正および/または適応することができる。したがって、そのような適合および修正は、開示された実施形態の同等物の意味および範囲内で理解されるべきであることを意図している。
【0084】
本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的とするものであり、限定するものではないことを理解されたい。したがって、本明細書の実施形態は好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者は、本明細書の実施形態が精神および範囲内で変更を加えて実施できることを認識するであろう。
【0085】
本明細書の実施形態は、様々な特定の実施形態で説明されているが、当業者にとって、本明細書の実施形態を修正して実施することは明らかであろう。本明細書の実施形態は、様々な特定の実施形態で説明されているが、当業者にとって、本明細書の実施形態を修正して実施することは明らかであろう。
【0086】
本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的とするものであり、限定するものではないことを理解されたい。したがって、本明細書の実施形態は好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者は、本明細書の実施形態が、以下に提出される特許請求の範囲の精神および範囲内で修正して実施できることを認識するであろう。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって確認される。
図1
図2
【国際調査報告】