(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】生物学的溶液を凍結するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/04 20060101AFI20220111BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N1/04
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526773
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2019059836
(87)【国際公開番号】W WO2020100105
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521209524
【氏名又は名称】スマートフリーズ エルディーエイ
【氏名又は名称原語表記】SMARTFREEZ LDA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイア フィリッパ シルヴェストル デュアルテ
(72)【発明者】
【氏名】ルイ デ ブリトー エストレーラ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029DF01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065BD09
4B065BD12
(57)【要約】
本開示は、無菌条件下かつ小容積容器内における生物薬剤材料のような繊細物質を含有する液体混合物又は懸濁液を凍結するのに使用するシステム及び方法を提供する。開示のデバイスは、凍結する容積層をモニタリングしつつ溶液の氷核形成を制御するとともに、ボトムアップの幾何学的形状における氷成長率を制御することができ、また温度制御手段を有する熱伝導表面(101)と、多重容器(109)のためのホルダ(102)と、ホルダを熱伝導表面に押し付ける押圧手段(103)と、及び随意的に接触促進材料と、を備える。開示の方法は、デバイスをほぼ溶液の氷核形成温度より低い温度に予冷却するステップと、容器をホルダ内に配置するステップと、サンプル全量における10%の分量が凍結するまで容器を熱伝導表面に接触させるステップと、容器と熱伝導表面との間の接触を遮断するステップと、溶液の全体積が凍結するまで生物溶液の凍結が均質となるよう所定凍結速度で容器を熱伝導表面に接触させるステップと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを溶液の核形成温度より実質的に低い温度まで予冷却するステップであり、前記デバイスは、底部における熱伝導表面及びプレス手段を有するものである、ステップと、
生物学的溶液を収納する容器をホルダ内に配置するステップであり、前記ホルダは、低熱伝導率材料を含む、ステップと、
サンプルの総量における10%の分量が凍結するまで、前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップと、
前記容器と前記熱伝導表面との間の接触を中断するステップと、
前記生物学的溶液の凍結が均質になるよう所定凍結速度で前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップと、
前記溶液の全量が凍結するまで凍結させるステップと、
を含む、サンプル溶液をボトムアップジオメトリ凍結し及び/又は核形成するための方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、複数のサンプルを含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、前記容器内における前記生物学的溶液の制御された凍結速度は、0.1℃/分~100℃/分、好適には0.5℃/分~10℃/分、より好適には1℃/分~5℃/分である、方法。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項記載の方法において、前記デバイスを予冷却するステップは、-20℃より低い、好適には-30℃より低い、より好適には-40℃より低い温度で実施する、方法。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項記載の方法において、前記容器と前記熱伝導表面との間における接触を中断するステップは、生物学的溶液を約0℃の温度に維持しつつ、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、好適には、0.1mm~15mmの空隙を生ずるよう配置することによって実施する、方法。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項記載の方法において、所定凍結速度で前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップは、前記ホルダを前記熱伝導表面に押し付けることで前記容器を前記熱伝導表面との接触状態に配置することによって実施する、方法。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項記載の方法において、前記生物学的溶液は、微生物、組織、生体細胞、幹細胞、初代細胞、細胞株、生ウイルス若しくは弱毒化ウイルス、核酸、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、生体分子、非ペプチド類似体、ペプチド、タンパク質、RNA分子、DNA分子、オリゴヌクレオチド、ウイルス粒子、又はそれらの組合せを有する、方法。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項記載の方法を実施するためのデバイスであって、
底部における熱伝導表面と、
容器のための少なくとも1つのキャビティを有し、低熱伝導率材料を含むホルダと、
前記容器を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、前記熱伝導表面からの熱を前記容器に伝達させ、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、また前記容器を前記熱伝導表面に再接触させる、よう構成されたプレス手段と、
を備え、
前記熱伝導は前記容器の前記底部から実施して、制御された核形成を可能にする、デバイス。
【請求項9】
請求項8記載のデバイスにおいて、前記プレス手段は、前記ホルダに対向して、均等分布圧力を前記ホルダに印加し、好適には、手動又は機械的な均等分布圧力を前記ホルダに印加する圧迫器を有する、デバイス。
【請求項10】
請求項8又は9記載のデバイスにおいて、前記低熱伝導率材料は、プラスチック、セラミック、又は複合材である、デバイス。
【請求項11】
請求項8~10のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、少なくとも1つの容器を備える、デバイス。
【請求項12】
請求項8~11のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記プレス手段は、前記容器の一部分を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、前記熱伝導表面からの熱を前記容器の一部分に伝達し、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、また前記容器の一部分を前記熱伝導表面との接触状態に再配置するよう構成され、好適には、前記容器の前記一部分は前記容器の前記底部である、デバイス。
【請求項13】
請求項8~12のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記ホルダは、第1位置と第2位置との間で圧縮可能となるよう、ばね、タブ、又はピンから選択される圧縮可能手段を有し、前記第1位置は前記容器の前記底部を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、また前記第2位置は前記容器の前記底部を前記熱伝導表面から離れる状態に配置する、デバイス。
【請求項14】
請求項8~13のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記ホルダは、第1位置と第2位置との間で圧縮可能な圧縮可能ホルダであり、前記第1位置は前記容器の前記底部を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、また前記第2位置は前記容器の前記底部を前記熱伝導表面から離れる状態に配置する、デバイス。
【請求項15】
請求項8~14のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記ホルダは前記熱伝導表面の平坦形態に押し付けられる、デバイス。
【請求項16】
請求項1~8のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記ホルダは、前記熱伝導表面の彫り込み形態に押し付けられ、好適には、前記熱伝導表面の彫り込み平坦形態は0.5~3mmにおける深さを有する陥凹である、デバイス。
【請求項17】
請求項16記載のデバイスにおいて、前記熱伝導表面は、過剰な液体を除去するための、好適には、過剰な接触促進材料を除去するためのチャンネルを有する、デバイス。
【請求項18】
請求項8~17のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、ヒンジ及び操作子を有するプレス手段フレームを備える、デバイス。
【請求項19】
請求項8~18のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記熱伝導表面は、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、又はそれらの組合せから選択される伝導材料で作成される、デバイス。
【請求項20】
請求項8~19のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、冷却剤を貯蔵するための冷却剤リザーバを備える、デバイス。
【請求項21】
請求項8~20のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記熱伝導表面を室温から断熱するための、またユーザーを保護するための断熱フレームを備える、デバイス。
【請求項22】
請求項8~21のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、露出面積により一様な熱交換を得るためのフィン支持体を備える、デバイス。
【請求項23】
請求項22記載のデバイスにおいて、冷却剤との接触面積を増大させるためのフィンを備える、デバイス。
【請求項24】
請求項8~23のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記熱伝導表面と前記容器との間における残留空気を除去するための接触層を備える、デバイス。
【請求項25】
請求項24記載のデバイスにおいて、前記接触層は液体、ペースト、ペーパー、又は粘着剤であり、好適には、前記接触層は0.1mm~3mmの高さを有する、デバイス。
【請求項26】
請求項8~25のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記容器は1より大きい高さ/幅アスペクト比を有する、デバイス。
【請求項27】
請求項8~26のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、容器壁及び前記容器の底部は異なる材料で作成される、デバイス。
【請求項28】
請求項8~27のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、容器壁は、ポリマー、セラミック、ガラス、又は他の低熱伝導材料で作成される、デバイス。
【請求項29】
請求項8~28のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記容器の前記底部は、ステンレス鋼、アルミニウム若しくはその他のような高伝導率材料で作成される、又はポリマー、ガラス若しくはその他のような低伝導材料を用いて造作される、デバイス。
【請求項30】
請求項8~29のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記デバイスは凍結デバイスである、デバイス。
【請求項31】
請求項1~7のうちいずれか1項記載の方法又は請求項8~30のうちいずれか1項記載のデバイスにより凍結される生物学的溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、多重小容積容器内における生物学的材料のような繊細(sensitive)物質を含有する液体混合物又は懸濁液を凍結するデバイス及び方法に関し、とくに、生物学的材料は、とりわけ生体細胞、血液細胞、ウイルス、タンパク質、抗体である。さらに、本開示は、多重容器内における少量の水性混合物の凍結中の氷核形成及び結晶成長の再現性を改善する。
【背景技術】
【0002】
繊細物質の凍結保存は細胞生物学の進展に関連して多くの用途で重要である。細胞又はその培養結果としての誘導体は、一般的に、その遺伝物質の保存バンキングを含めて、生産及び配給の管理のために凍結保存される。
【0003】
既存システムにおける1つの大きな限界は、凍結及び解凍現象に関連する複雑性に起因する非一貫性である。このことは、非効率的な凍結保存によって重度に損なわれるおそれがある治療上及び安全上の制約に起因して、細胞療法にとって特に重要である。
【0004】
凍結保存には、凍結防止物質の添加、冷却(凍結)、加熱(解凍)、混合のような異なるプロセスが含まれ、これらプロセスは、生物学的製品の物理化学的安定性を決定する。凍結保存はプロセスシーケンスを含んでいるため、非一貫性は最も初期段階(冷却及び凍結)から最終段階(解凍及び混合)までにわたり波及及び増幅しがちである。したがって、凍結一貫性を最大化することは、生物学的製品の凍結保存全体を最大化する上で極めて重要である。
【0005】
多くの変数が凍結における非一貫性に関与し、例えば、自然対流、氷核形成温度、氷晶成長速度、過冷却、等々が関与する。2つの大きな問題は、制御するのが困難な凍結一貫性に関連し、はっきり言うと自然対流及び氷核形成に関連していた。
【0006】
自然対流は、生物製剤の凍結溶質で生ずる溶質分布における不均質性(低温集中又は凍結集中)の大きな原因である。濃度勾配で引き起こされる対流は重大であることが分かっており、これはすなわち、対流が溶質を円筒状容器の底部及び中心に向かって変位させるからである。非対流性凍結ジオメトリを使用する、すなわち底部から頂部に向かって一方向に凍結させることによる氷の樹枝状結晶形成は、自然対流を減衰させる、したがって、低温集中を防止することが報告されている(非特許文献1及び2参照)。
【0007】
凍結保存における他の重大な局面は、氷核形成温度及び氷核形成部位の制御である。凍結プロセスにおいて、水溶液は、氷核形成を生ずる前に融点以下の温度まで冷却する温度、過冷却として知られている条件まで冷却する傾向がある。このことは、解凍後の細胞生存能力及びひいては凍結保存の全体プロセスにおける効果を損なうと記載された。過冷却を減少するため、氷核形成を制御する幾つかの技術が提案された。低温容器外側に冷温スポットを手作業で生成することによる、電気凍結による、機械的方法(シェイキング、超音波照射)による、衝撃冷却による、又は圧力シフトによる、小さい氷晶又は異種氷核剤のサンプル内導入のような技術がある(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rodrigues MA, Balzan G, Rosa M, Gomes D, de Azevedo EG, Singh SK, et al. The importance of heat flow direction for reproducible and homogeneous freezing of bulk protein solutions. Biotechnol Prog 2013;29:1212-21. doi:10.1002/btpr.1771.
【非特許文献2】Rosa M, Tiago JM, Singh SK, Geraldes V, Rodrigues MA. Improving Heat Transfer at the Bottom of Vials for Consistent Freeze Drying with Unidirectional Structured Ice. AAPS PharmSciTech 2016;17:1049-59. doi:10.1208/s12249-015-0437-3.
【非特許文献3】John Morris G, Acton E. Controlled ice nucleation in cryopreservation- A review. Cryobiology 2013;66:85-92. doi:10.1016/j.cryobiol.2012.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多くの方法が提案されたにも係わらず、大部分は、無菌条件の下で高いレベルの再現性を有する多重小容積容器を標準化又は統合し、凍結保存プロセス全体にわたり細胞生存能力及び再現性を確保するのが困難である。さらに、凍結の一貫性を改善すると記載された大部分の方法は、10mlより大きい容積に適用されていた。大きい容積は、溶液の伝熱面積及び熱慣性がより大きいことに起因して、熱流束の制御をより容易にすることができる。これとは逆に、例えば、100μlのような小さい容積では、バイアル底部における局所的氷核形成を可能にするとともに、一方向ボトムアップ凍結を損なわない必要とされる制御は、幾つかの技術的難題に直面する。
【0010】
凍結システムに関連する問題の1つは、一群の多重バイアルにおける氷核形成温度及び第1氷晶位置の再現性に関する困難な制御である。このばらつきはバイアル毎に不均一な特性を生じ、究極的に細胞保存の品質に変動を生ずることになる。本開示に基づく手法は、容器ベースを急速冷却することによって氷核形成を促進することに関連する。ベースの急速冷却を可能にするため、底部における容器熱抵抗を最小化しなければならない。このことは、熱伝導プレートと容器底部との間の接触を改善する、すなわち、双方表面間内の空気を最小限にする、水よりも低い凍結点を有する液体、ポリマー、ペースト又は粘着剤のような伝導材料を使用することによって達成することができる。非特許文献2のローザ氏らは凍結乾燥用途に対するこの方策に追従し、この場合粘着材料を容器底部に付着させて、代表的なガラス製バイアルの凹面が形成する空隙を減少させ、これにより熱伝導係数を約2倍も向上させた。効果的であるにも関わらず、非特許文献2のローザ氏らが追従したこの方策は、バイアル設計に対する大幅は変更を必要とし、構造上の多くの複雑さ及び規制当局からの検証を課されるバイアル設計に対する大幅は変更を必要とした。例えば、粘着材料は、クリーンルームにおける汚染源になるおそれがあり、また細胞凍結保存用の容器作製に使用される代表的材料と反応することもあり得る。他の重要な技術的困難性は、氷核形成及び氷成長速度に対する制御をできるようにすることにある。小さい容積において、底部における氷核形成を促進するのに必要なベースの急速冷却は、氷核形成のみである代わりにサンプルの完全に制御不能な凍結を生ずるおそれがある。溶液質量が少ない、例えば、容器質量よりも少ないとき、熱慣性は、凍結プロセスの動力学に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
理想的には、氷核形成を速度制御される凍結から切り離すため、氷核形成中に凍結する液体分量が20%より多くない、好適には、10%より少なくなることを確実にしなければならず、このことは、サンプルの大部分をボトムアップ方向に制御された速度で凍結する。したがって、底部における冷却は、溶液の氷核形成を可能にするよう強くかつ短時間でなければならないとともに、過冷却条件の下制御不能に凍結する体積層をモニタリングすべきである。このことは、例えば、冷たい表面上に容器を載置することによって、相当低い(代表的には-40℃より低い)温度までの容器ベース急冷を実施することにより、達成することができる。しかし、一群の多重容器における一貫性のある氷核形成を可能にするためには、a) すべての容器が予め冷却した熱伝導表面上に同時に載置される、及びb) 容器底部と熱伝導表面との間における接触が表面粗さ変動に無関係に等しいという、2つの規準が重大である。表面粗さ変動は、容器の底面積が小さくなるにつれて非一貫性を大きくさせる可能性がある。氷核形成を一方向ジオメトリにおける氷成長速度から切り離すためには、氷核形成イベントを生ずる前に熱拡散により過冷却する液体の高さを最小化し、これにより制御不能に凍結するサンプル量をモニタリングするよう、高さ/幅のアスペクト比が1より小さくないことが望ましい。したがって、一方向凍結用の容器は、代表的な表面粗さ変動に起因して熱伝導の一貫性を複雑にし得る底部が小さい面積を有し、例えば、2mlよりも小さい容積にすると都合がよい。さらに、望ましいのは、サンプルの少ない分量(最大で20%)のみが過冷却するとともに、残りの液体は凍結温度(ほぼ0℃)より高い温度であり、氷核形成の際における過剰氷成長を回避することである。そうしないと、サンプルの大部分(20%より多い量)が制御不能に凍結することになる。
【0012】
氷核生成は新しい相の境界における界面形成を意味する。同質氷核形成温度(純粋物質凍結温度)以上ではあるが、最大異質氷核形成温度(溶融温度)以下に冷却した液体は、過冷却されたと称される。
本開示は、上述した問題を解決することを目的とする。
【0013】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、添付図面とともに読まれる以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0014】
本開示のよりよい理解のために添付図面を関連付け、これら添付図面は、本開示の好適な実施形態を示すが、これら実施形態は本出願の目的を限定することは意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】プレスがロックダウンされた凍結デバイスの実施例における全体的斜視図を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、100は凍結ヘッド、101は熱伝導表面、102はホルダ、103はプレス手段、104はプレス手段フレーム、105は操作子、106はヒンジ、107は枢動軸、108は圧迫器である。
【
図2】プレスがロック解除された凍結デバイスの実施例における全体的斜視図を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、100は凍結ヘッド、101は熱伝導表面、102はホルダ、103はプレス手段、104はプレス手段フレーム、105は操作子、106はヒンジ、107は枢動軸、108は圧迫器、109は容器である。
【
図3】冷却システムを有する凍結デバイスの実施例における全体的斜視図を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、102はホルダ、110はシステム、111は断熱フレーム、112はフィン支持体、113は冷却剤リザーバである。
【
図4】凍結デバイスの実施例における全体的斜視図を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、102はホルダ、111は断熱フレーム、112はフィン支持体、114はシステム、115はフィンである。
【
図5】熱伝導表面の2つの実施例を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、101aは平坦構成、101bは窪み構成、116はチャンネル、117は熱伝導表面の窪みである。
【
図6】ホルダ構成の実施例を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、102aはばね構成を有する圧縮可能手段、118はばね、119は接触層ある。
【
図7】ホルダ構成の実施例を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、102bはタブ構成を有する圧縮可能手段、119は接触層、120はタブである。
【
図8】ホルダ構成の実施例を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、102cはピン構成を有する圧縮可能手段、109は容器、119は接触層、121はピンである。
【
図9】容器構成の実施例を概略的に示し、ここで参照符号は以下を示す、すなわち、109は容器、122は容器壁、123は容器底部である。
【
図10】上述した実施形態によるデバイスで得られる10%トレハロースを含有する水溶液の氷核形成回数に対する、熱伝導表面(
図5参照)に接触促進材料を使用する(黒線)又は使用しない(破線)ときの効果を示すグラフである。
【
図11】上述した実施形態によるデバイスで得られる10%DMSOを含有する水溶液の氷核形成回数に対する、熱伝導表面(
図5参照)に接触促進材料を使用する(黒線)又は使用しない(破線)ときの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示において一方向ジオメトリは、氷フロントを選択した軸線に沿って発達及び進展させる、該軸線に沿う一方向温度勾配の創出を意味する。とくに、一方向ボトムアップジオメトリは、氷フロントを底部から頂部に向かって発達及び進展させる垂直軸線に沿う一方向温度勾配の創出を意味する。
【0017】
本開示において、制御された氷核形成は、容器が熱伝導表面と接触した後、短時間インターバル内、優先的には1分未満の第1氷晶の形成に言及する。とくに、それは容器の底部表面に発生し、氷核形成の際に即座に凍結する(局所的な過冷却)液体の分量は20%より多くあるべきでない。
【0018】
或る実施形態において、凍結は、容器底部から頂部への一方向である。ホルダの低熱伝導率材料による断熱に起因して、凍結は制御された様態で達成され、他の同様技術と比較するとき、本開示における1つの利点は、凍結が半径方向でない点である。これは、バイアル内容物の凍結が、サンプルの総量に無関係に制御され、均質かつより効果的だからである。
【0019】
本発明方法によって得られる1つの驚くべき効果は、凍結が同一凍結サイクルのバイアル間で均質であることである。このことは、各バイアル内容物が一様に凍結し、また同一凍結サイクルの他のバイアルと同様に凍結することを意味する。さらに、バイアルが1μlの溶液を含むか、100mlの溶液を含むかに係わらず、凍結有効性は高い。
【0020】
別の実施形態において、本開示は生物学的溶液を凍結するデバイスに関し、このデバイスは、
熱伝導表面(101)と、
前記生物学的溶液用の容器(109)を収容する窪みを有するホルダ(102)と、
前記ホルダ(102)を前記熱伝導表面(101)に押し付けるプレス手段(103)であって、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に配置し、前記熱伝導表面(101)からの熱を前記容器(109)に伝達しかつ制御下の氷核形成を可能にし、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)から引き離し、また前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に再配置するよう構成された、該プレス手段(103)と、
を備え、
前記生物学的溶液の凍結はボトムアップジオメトリを有する。
【0021】
或る実施形態において、前記プレス手段(103)は、前記ホルダ(102)に対向して、均等分布圧力を前記ホルダ(102)に印加し、好適には、手動又は機械的な均等分布圧力を前記ホルダ(102)に印加する圧迫器(108)を有することができる。
【0022】
或る実施形態において、前記ホルダ(102)は、低熱伝導率材料で作成することができ、好適には、またより良好な結果を得るよう、前記低熱伝導率材料は、プラスチック、セラミック、又は複合材とする。
【0023】
或る実施形態において、本明細書に開示した前記デバイスは、少なくとも1つの容器(109)を備える。
【0024】
或る実施形態において、前記プレス手段は、前記容器の一部分(123)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に配置し、前記熱伝導表面(101)からの熱を前記容器の一部分(123)に伝達し、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)から引き離し、また前記容器の一部分(123)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に再配置するよう構成され、好適には、前記容器の一部分は前記容器の底部とする。
【0025】
或る実施形態において、前記ホルダ(102)は、第1位置と第2位置との間で圧縮可能となるよう、ばね(118)、タブ(120)、又はピン(212)から選択される圧縮可能手段(102a、102b、102c)を有することができ、前記第1位置は、前記容器の底部(123)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に配置し、また前記第2位置は、前記容器の底部(123)を前記熱伝導表面(101)から離れる状態に配置する。
【0026】
或る実施形態において、前記ホルダ(102)は、第1位置と第2位置との間で圧縮可能な圧縮可能ホルダとすることができ、前記第1位置は、前記容器底部(123)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に配置し、また前記第2位置は、前記容器底部(123)を前記熱伝導表面(101)から離れる状態に配置する。
【0027】
或る実施形態において、前記ホルダ(102)は、前記熱伝導表面(101)の平坦形態(101a)に押し付けることができる。
【0028】
或る実施形態において、前記ホルダ(102)は、前記熱伝導表面(101)の窪み形態(101b)に押し付けることができ、前記熱伝導表面(101b)の前記窪み(117)は0.5~3mmの間における深さを有する陥凹である。
【0029】
或る実施形態において、前記熱伝導表面(101)は、過剰な液体を除去するための、好適には、過剰な接触促進材料を除去するためのチャンネル(116)とすることができる。
【0030】
或る実施形態において、前記チャンネル(116)は、0.5~3mmの間における深さ、及び1~5mmの間における幅を有することができる。
【0031】
或る実施形態において、本明細書に開示したデバイスは、さらに、プレス手段フレーム(104)を備え、前記プレス手段フレーム(104)は、ヒンジ(106)及び操作子(105)を有する。
【0032】
或る実施形態において、前記熱伝導表面(101)は、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、又はそれらの組合せから選択される伝導材料で作成することができる。
【0033】
或る実施形態において、前記デバイスは、さらに、冷却剤を貯蔵するための冷却剤リザーバ(113)を備えることができる。
【0034】
或る実施形態において、前記デバイスは、さらに、前記熱伝導表面を室温から断熱するための、またユーザーを保護するための断熱フレーム(111)を備えることができる。
【0035】
或る実施形態において、前記デバイスは、さらに、一様な熱交換を得るためのフィン支持体(112)を備えることができる。
【0036】
或る実施形態において、前記デバイスは、さらに、冷却剤との大きな接触面積を生ずるためのフィン(115)を備えることができる。
【0037】
或る実施形態において、前記デバイスは、さらに、前記熱伝導表面(101)と前記容器(109)との間における残留空気を除去するための接触層(119)を備えることができ、前記接触層(119)は液体、ペースト、ペーパー、又は粘着剤とし、好適には、前記接触層(119)は0.1mm~3mmの高さを有する。
【0038】
或る実施形態において、前記容器(109)は、5mm~50mmの高さ及び4mm~10mmの直径を有することができる。
【0039】
或る実施形態において、前記容器は、1より大きい高さ/幅アスペクト比を有することができる。
【0040】
或る実施形態において、容器壁(122)は0.4mm~2mmの厚さを有することができ、また前記容器底部(123)は0.2mm~2mmの厚さを有することができる。
【0041】
或る実施形態において、前記容器壁(122)及び前記容器底部(123)は異なる材料で作成する。
【0042】
或る実施形態において、前記容器壁(122)は、ポリマー、セラミック、ガラス、又は他の低熱伝導材料で作る。
【0043】
或る実施形態において、前記容器底部(123)は、ステンレス鋼、アルミニウム若しくはその他のような高伝導率材料で造作する、又はポリマー、ガラス若しくはその他のような低伝導材料を用いて作成する。
【0044】
或る実施形態において、前記デバイスは凍結デバイスである。
【0045】
本開示は、本明細書に開示したデバイスを動作させる方法に関し、この方法は以下のステップ、すなわち、
デバイスを予冷却するステップと、
生物学的溶液を収納する容器(109)をホルダ(102)内に配置するステップと、
前記容器の底部(123)を熱伝導表面(101)に対してプレス手段(103)を用いて接触させるステップと、
前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)との接触から引き離すステップと、
前記容器底部(123)を前記熱伝導表面(101)に対して前記プレス手段(103)を用いて再配置するステップと、
前記生物学的溶液の凍結がボトムアップジオメトリを有するよう制御した凍結速度を設定するステップと、
を備える。
【0046】
或る実施形態において、前記容器内における前記生物学的溶液の前記制御した凍結速度が、0.1℃/分~100℃/分、好適には0.5℃/分~10℃/分、さらに好適には1℃/分~5℃/分であるようにすることができる。
【0047】
或る実施形態において、前記デバイスを予冷却するステップは、-20℃より低い、好適には-30℃より低い、より好適には-40℃より低い温度で実施することができる。
【0048】
或る実施形態において、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)から引き離すステップは、生物学的溶液を約0℃の温度に維持しつつ、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)から引き離し、好適には、0.1mm~15mmの空隙を生ずるよう配置することによって実施することができる。
【0049】
或る実施形態において、前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)に再接触させるステップは、前記ホルダ(102)を前記熱伝導表面(101)に押し付けて前記容器(109)を前記熱伝導表面(101)との接触状態に配置することによって実施することができる。
【0050】
或る実施形態において、前記生物学的溶液は、微生物、組織、生体細胞、幹細胞、初代(プライマリ)細胞、細胞株、生ウイルス若しくは弱毒化ウイルス、核酸、モノクローナル(単クローン)抗体、ポリクローナル抗体、生体分子、非ペプチド類似体、ペプチド、タンパク質、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、ウイルス粒子、又はそれらの組合せを有することができる。
【0051】
本開示は、さらに、以下に開示する方法に従って凍結された生物学的溶液に関する。
【0052】
或る実施形態において、本開示は、サンプル溶液のボトムアップジオメトリ凍結する及び/又は氷核形成するための方法に関し、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
デバイスを前記溶液の氷核形成温度より相当低い温度まで予冷却するステップであって、前記デバイスは、底部における熱伝導表面及びプレス手段を有するものである、該ステップと、
生物学的溶液を収納する容器をホルダ内に配置するステップであって、前記ホルダは、低熱伝導率材料より成るものである、該ステップと、
前記サンプルの総量における10%の分量が凍結するまで、前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップと、
前記容器と前記熱伝導表面との間の接触を中断するステップと、
前記生物学的溶液の凍結が均質になるよう所定凍結速度で前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップと、
最終的に前記溶液の全量が凍結するまで凍結させるステップと
を備える。
【0053】
他の実施形態において、本開示は、複数のサンプルを有する方法に関する。
【0054】
別の実施形態において、本開示は、前記容器内における前記生物学的溶液の前記制御された凍結速度が、0.1℃/分~100℃/分、好適には0.5℃/分~10℃/分、より好適には1℃/分~5℃/分である方法に関する。
【0055】
別の実施形態において、本開示は、前記デバイスを予冷却するステップが、-20℃より低い、好適には-30℃より低い、より好適には-40℃より低い温度で実施する方法に関する。
【0056】
別の実施形態において、本開示は、前記容器と前記熱伝導表面との間における接触を中断するステップが、生物学的溶液を約0℃の温度に維持しつつ、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、好適には、0.1mm~15mmの空隙を生ずるよう配置することによって実施する方法に関する。
【0057】
別の実施形態において、本開示は、所定凍結速度で前記容器を前記熱伝導表面に接触させるステップが、前記ホルダを前記熱伝導表面に押し付けて前記容器を前記熱伝導表面との接触状態に配置することによって実施する方法に関する。
【0058】
別の実施形態において、本開示は、前記生物学的溶液が、微生物、組織、生体細胞、幹細胞、初代(プライマリ)細胞、細胞株、生ウイルス若しくは弱毒化ウイルス、核酸、モノクローナル(単クローン)抗体、ポリクローナル抗体、生体分子、非ペプチド類似体、ペプチド、タンパク質、RNA分子、DNA分子、オリゴヌクレオチド、ウイルス粒子、又はそれらの組合せを有する方法に関する。
【0059】
別の実施形態において、本開示は、ボトムアップジオメトリ凍結及び/又はサンプル溶液の氷核形成するためのデバイスに関し、前記デバイスは、以下のもの、すなわち、
底部における熱伝導表面と、
容器のための少なくとも1つのキャビティを有し、低熱伝導率材料より成るホルダと、
前記容器を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、前記熱伝導表面からの熱を前記容器に伝達させ、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、また前記容器を前記熱伝導表面に再接触させる、よう構成されたプレス手段と、
を備え、
前記熱伝導は前記容器の底部から実施して、制御された氷核形成を可能にする、該デバイスに関する。
【0060】
別の実施形態において、本開示は、前記プレス手段が、前記ホルダに対向して、均等分布圧力を前記ホルダに印加し、好適には、手動又は機械的な均等分布圧力を前記ホルダに印加する圧迫器を有する、デバイスに関する。
【0061】
別の実施形態において、本開示は、前記低熱伝導率材料がプラスチック、セラミック、又は複合材である、デバイスに関する。
【0062】
別の実施形態において、本開示は、少なくとも1つの容器を備えるデバイスに関する。
【0063】
別の実施形態において、本開示は、前記プレス手段が、前記容器の一部分を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、前記熱伝導表面からの熱を前記容器の一部分に伝達し、前記容器を前記熱伝導表面から引き離し、また前記容器の一部分を前記熱伝導表面との接触状態に再配置するよう構成され、好適には、前記容器の一部分は前記容器の底部である、デバイスに関する。
【0064】
別の実施形態において、本開示は、前記ホルダが、第1位置と第2位置との間で圧縮可能となるよう、ばね、タブ、又はピンから選択される圧縮可能手段を有し、前記第1位置は前記容器の底部を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、また前記第2位置は前記容器の底部を前記熱伝導表面から離れる状態に配置する、デバイスに関する。
【0065】
別の実施形態において、本開示は、前記ホルダが、第1位置と第2位置との間で圧縮可能な圧縮可能ホルダであり、前記第1位置は前記容器底部を前記熱伝導表面との接触状態に配置し、また前記第2位置は前記容器底部を前記熱伝導表面から離れる状態に配置する、デバイスに関する。
【0066】
別の実施形態において、本開示は、前記ホルダが前記熱伝導表面の平坦形態に押し付けられる、デバイスに関する。
【0067】
別の実施形態において、本開示は、前記ホルダが、前記熱伝導表面の彫り込み形態に押し付けられ、好適には、前記熱伝導表面の前記彫り込み平坦形態は0.5~3mmの間における深さを有する陥凹である、デバイスに関する。
【0068】
別の実施形態において、本開示は、前記熱伝導表面が、過剰な液体を除去するための、好適には、過剰な接触促進材料を除去するためのチャンネルを有する、デバイスに関する。
【0069】
別の実施形態において、本開示は、ヒンジ及び操作子を有するプレス手段フレームを備える、デバイスに関する。
【0070】
別の実施形態において、本開示は、前記熱伝導表面が、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、又はそれらの組合せから選択される伝導材料で作成される、デバイスに関する。
【0071】
別の実施形態において、本開示は、冷却剤を貯蔵するための冷却剤リザーバを備える、デバイスに関する。
【0072】
別の実施形態において、本開示は、前記熱伝導表面を室温から断熱するための、またユーザーを保護するための断熱フレームを備える、デバイスに関する。
【0073】
別の実施形態において、本開示は、露出面積により一様な熱交換を得るためのフィン支持体を備える、デバイスに関する。
【0074】
別の実施形態において、本開示は、冷却剤との接触面積を増大させるためのフィンを備える、デバイスに関する。
【0075】
別の実施形態において、本開示は、前記熱伝導表面と前記容器との間における残留空気を除去するための接触層を備える、デバイスに関する。
【0076】
別の実施形態において、本開示は、前記接触層が液体、ペースト、ペーパー、又は粘着剤であり、好適には、前記接触層は0.1mm~3mmの高さを有する、デバイスに関する。
【0077】
別の実施形態において、本開示は、前記容器が1より大きい高さ/幅アスペクト比を有する、デバイスに関する。
【0078】
別の実施形態において、本開示は、前記容器壁及び前記容器底部が異なる材料で作成される、デバイスに関する。
【0079】
別の実施形態において、本開示は、前記容器壁が、ポリマー、セラミック、ガラス、又は他の低熱伝導材料で作成される、デバイスに関する。
【0080】
別の実施形態において、本開示は、前記容器底部が、ステンレス鋼、アルミニウム若しくはその他のような高伝導率材料で作成される、又はポリマー、ガラス若しくはその他のような低伝導材料を用いて造作される、デバイスに関する。
【0081】
別の実施形態において、本開示は、前記デバイスが凍結デバイスである、デバイスに関する。
【0082】
別の実施形態において、本開示は、本開示により凍結される生物学的溶液に関する。
【0083】
<詳細な説明>
上述したように、生物学的材料及び溶液のような繊細物質の凍結保存における1つの大きな限界は、凍結及び解凍現象に関連する非一貫性である。多くの変数が凍結における非一貫性に関与し、2つの大きな問題は自然対流及び氷核形成に関連していた。
【0084】
本明細書において、好適には、2mlより少ない小容積に対する再現性が高く、一群の容器内での一方向ボトムアップ凍結を可能にする新規なデバイス及び方法を開示する。
【0085】
さらに、一群の小容積容器内での一方向ボトムアップ凍結を可能にする方法を開示し、この方法は、以下のステップ、すなわち、熱伝導表面を低温(例えば、-40℃より低い温度)に予冷却するステップと、ホルダ内に多重容器をセットし、前記ホルダを前記熱伝導表面に向けて押圧してすべての容器を同時に冷表面に接触させるステップと、制御された氷核形成を可能にするため中間接触促進材料(例えば、液体又はポリマー)を使用するステップと、僅かな体積層の氷核形成後に、前記ホルダ及び前記容器を前記冷表面から離れた位置にセットするステップと、最終的に一方向ボトムアップジオメトリで氷成長速度を制御しつつ前記ホルダを前記冷表面に押し付けるステップと、を備える。
【0086】
したがって、上述した方法を遂行するよう本明細書に記載する、液体生物学的溶液又は懸濁液である生物学的溶液を凍結するデバイスは、容器に下降力を強制的に加えて熱伝導表面をロックダウン位置に合わせるドライバを備える。氷核形成プロセスは、氷核形成中に凍結する液体の分量が全量の20%より多くならないのを確実にするため中間接触促進剤を用いて、容器が熱伝導表面に同時に押し付けられるとき、スタートする。このとき、氷核形成イベントが発生した後液体が制御不能に凍結するのを回避するため、ドライバはロックアップ位置にセットされ、また容器は0.1mm~15mmまでの空隙を生じて熱伝導表面から離れるスタンバイ位置をとる。最終的に、制御した氷成長速度の下で一方向ボトムアップ凍結を促進するため、ドライバを再び押し下げ、容器底部の熱伝導表面との接触を促進し、また生物学的材料の熱感度に基づいて代表的には0.1℃/分~100℃/分で熱伝導表面を冷却することによって選択した凍結速度を適用する。
【0087】
上述した方法を遂行するよう本明細書に記載する、生物学的溶液を凍結するデバイスは以下の要素を備え、すなわち、熱伝導表面(101)を有する凍結ヘッド(100)は、容器(109)が嵌合される収容キャビティを有するホルダ(102)を有し、またさらに、プレス手段(103)も有することができる。凍結置台は、異なる形態を呈することができ、また幾つかの冷却剤及び/又は他の既知の冷却システムを使用することができるシステム(114)装置に連結する。凍結ヘッド及び冷却システムの装置は、容器及び/又は
図3の実施例におけるような断熱材が関連する形態を呈することができる。
【0088】
図1~9に示すが、本出願の目的を限定することは意図していない或る実施形態において、生物学的材料の凍結及び/又は解凍、貯蔵及び輸送するプロセスによって保存するデバイスを示す。
【0089】
或る実施形態において、容器(109)は、これら凍結及び/又は解凍、貯蔵及び輸送中に生物学的サンプルを保持する。それら容器は、とくに、すべてのプロセス中にサンプルを安全に維持するよう生物学的に安全な材料を用いて造作する。容器(109)は、ホルダ(102)のキャビティ、異なる量のサンプル及び所望の異なる熱的プロセスに適合するよう設計する。容器(109)の仕様は、特別な熱交換プロセス全体が考慮される。容器(109)は、1より大きいアスペクト比(高さ/幅)で、5mm~50mmの高さ及び4mm~10mmの直径を有することができる。容器壁(122)は0.4mm~2mmの厚さを有することができ、また容器底部(123)は0.2mm~2mmの異なる厚さにすることができる。
【0090】
或る実施形態において、本出願が提案する一方向凍結プロセスを維持するため、容器壁(122)及び容器底部(123)は異なる材料とすることができる。容器壁(122)は、ポリマー、セラミック、ガラス、又は他の低熱伝導材料により造作し、容器(109)から側方表面への低伝導率を維持できるようにする。容器底部(123)は、ステンレス鋼、アルミニウム若しくはその他のような高伝導率材料で造作し、又はポリマー、ガラス若しくはその他のような低伝導材料を用いて造作することができる。容器(109)の底部は、採用される特定熱交換に対して推定される熱力学に基づいて、低い又は高い熱伝導係数を有することができる。材料間の相違は、とくに、少量サンプルで凍結するとき、容器壁(122)から大きな影響をうけることがなく、垂直方向に駆動される熱流束勾配を得るのを容易にすることができ、これはすなわち、サンプル体積に比べると容器(109)からの質量比が重要であるからである。
【0091】
或る実施形態において、冷却システム(114)は、凍結ヘッド(100)並びに熱伝導表面(101)及び容器(109)における温度を制御することを可能にする他の要素によって代表される。統合的パーツは、冷却システム(114)により制御駆動される熱流束を創出するのに使用される任意な電子機器、機械的又は機械加工されたものとすることができる。
図4において、冷却システムセットアップの例を示す。フィン(115)は、ドライアイス、液体窒素又は他のものとすることができる冷却剤間で熱を伝達する。冷却剤は、冷却剤リザーバ(113)に貯蔵される。フィン支持体(112)はフィン(115)に直接取り付け、また容器(109)及びホルダ(102)が熱伝導表面(101)と接触状態にされたとき温度変動を回避するのに役立つ。容器(109)が熱伝導表面(101)に接触するとき、熱伝導表面(101)からの慣性は、容器(109)内部の全量のうち20%未満のサンプル少量層を凍結するとともに、熱交換中に熱伝導表面(101)は温度を上昇する。容器(109)における第1氷層形成中に熱伝導表面(101)からの温度が上昇したため、氷成長はより緩慢になり、フィン支持体(112)の温度によって制御される。
【0092】
或る実施形態において、いわゆる熱伝導表面(101)と称される水平プレートを常に有する凍結ヘッド(100)は、生物学的溶液を容れる容器(109)又は容器(109)を導入するホルダ(102)を収容する特別な形態に造作される。凍結ヘッド(100)及びそれに対応して含まれるパーツ及び実施形態は、冷却システム(114)から熱伝導表面(101)経由で通過し、最終的に容器底部(123)に達する熱伝導流束を制御する特別な特性に設計される。
図1及び
図2に示した、熱伝導表面(101)から容器(109)までに至る熱伝達を高める1つのあり得る形態は、容器(109)を熱伝導表面(101)に強制的に密着させ、これらの間における全空隙を垂直方向に遮断するプレス手段(103)の存在に起因する。
【0093】
或る実施形態において、熱伝導表面(101)は、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、又はその他のような伝導材料で作成され、その寸法は、異なるサイズを有することもできる1つの容器(109)若しくは幾つかの容器又はホルダ(102)を収容できるよう変動し得る。熱伝導表面(101)のサイズは、上側表面が収容される品目のタイプ及び個数に基づいて1cm2~150cm2の面積を有することができるようにする。熱伝導表面(101)の厚さは、1mmから4mmに至るまでのものとすることができる。熱伝導表面(101)は、矩形形状の実施形態で示されるが、デバイスの設計に応じて任意な他の形状をとることができる。しかしながら、特定形態の熱伝導表面(101)の寸法は、デバイス全体からの特性を考慮して、既知の大域的熱伝導率及び慣性を有することができるものとする。熱伝導表面(101)は、ねじ、任意なタイプの接着剤又はペーストによって冷却システム(114)に取り付けることができる。他のロック手段によって案内又は圧縮されることもできる。
【0094】
或る実施形態において、熱伝導表面(101)と容器(109)又はホルダ(102)との間における残留空気を除去するため、液体、ペースト、ペーパー、粘着剤又は両者間の空隙を除去する他の手段を使用することができる。この特徴は、熱伝達を向上させ、また均質にする。粘着剤又はペーストの場合、接触層(119)として容器(109)又はホルダ(102)に追加することができる。この接触層からの高さは0.1mm~3mmの高さとなり得る。さらに、非固形接触層の場合、高さは固定にすることができ、また容器(109)又はホルダ(102)は、浸漬されたまま熱伝導表面(101)に対して接近又は遠ざかる移動をして、プロセス中の熱流束からの範囲を変化させることができる。
【0095】
ここで、限定的ではないが、熱伝導表面(101)の形態の2つの例としては、平坦形態(101a)又は窪み形態(101b)がある。本明細書記載の窪みバージョン(101b)は、熱伝導表面(101)と容器(109)との間における特定流体高さを維持することを目的とする、チャンネル(116)及び熱伝導表面の窪み(117)を有することができる。熱伝導表面の窪み(117)は、使用する流体の特定高さの層を保持する最終的状態を有する。ユーザーが熱伝導表面の窪み(117)を過剰充填する場合、過剰流体はチャンネル(116)によって漏洩して所望流体高さを維持する。熱伝導表面の窪み(117)の陥凹は、0.5~3mmの間における深さを有する陥凹である。チャンネル(116)は、過剰流体を熱伝導表面の窪み(117)から除荷し、また流体を熱伝導表面(101)の外側面におけるシンク孔に案内し、過剰流体はデバイスの他のシンク孔ガイドに移行することができる。チャンネル(116)は、0.5~3mmの間における深さ、及び1~5mmの間における幅を有することができる。
【0096】
或る実施形態において、ホルダ(102)は、容器(109)を収容するよう設計し、また収容される容器(109)のタイプに基づいて異なるキャビティ設計及びサイズを有することができる。さらに、この形態は、使用する容器(109)の個数、及び使用する熱伝導表面(101)の形態に対して異なることができる。ホルダ(102)を造作するのに使用する材料は、容器(109)の側部及び頂部を断熱するため低熱伝導率を有する、プラスチック、セラミック、複合材又は他の材料とすることができる。ホルダ(102)は、幾つかの機能性を持つ任意な他の材料から成る実施形態を有することができる。
【0097】
ホルダ(102)からの3つの実施例を
図6、
図7及び
図8に示す。これら実施例は、容器(109)を熱伝導表面(101)に押し付ける精密な時点を制御する可能性を想定する。これらは容器(109)を熱伝導表面(101)に圧迫するためのプレス手段の作動システムとともに使用するよう設計される。限定的ではないが、空気が接触層(119)の実施形態を用いて除去されるこれらの実施例において、他の事例ではこれを、例えば、ホルダ(102)又は熱伝導表面(101)に適用される液体又はその他とすることができる接触促進材料で置き換えることができる。接触層(119)は、ホルダ(102)に直接追加されるとき、任意な粘着剤で作成することができる、又はテフロン、ポリマー若しくはその他のものに接着することができる。この層の厚さは、0.1mmから2mmまでの範囲にわたることができる。しかし、これにより付加される付加的熱抵抗は、全体的熱流束デバイスを考慮しなければならない。
【0098】
或る実施形態において、ばね形態を有するホルダ(102a)では、ばね(118)からの機械的抵抗によって、ロックアップ(
図2)位置からスタートする準備状態に容器(109)を維持する。プレス手段(103)が容器(109)に対してばね弾性力に打ち勝つのに十分な下降力を強制的に加えるとき、この手段は熱伝導表面(101)をロックダウン(
図1)位置に合わせ、また熱的プロセスをスタートする。ロックアップ(
図2)位置にあるとき圧縮可能なホルダ(102)は熱伝導表面(101)からの距離を有することができ、この距離は、0.1から10mmまでにわたることができ、ロックダウン位置(
図1)にあるとき、この距離は実質的には0mmとなる。この形態は、ホルダ(102)自体からの延長部とすることができるばね(118)を有し、付加的実施形態では金属、ポリマー又はその他で作成される。ばね(118)の直径は、3mmから10mmに至るまでの異なるものとすることができ、また幾つかの形態及び個数で配置することができる。ホルダ(102)の底部表面から移動するばね(118)の延長部は、0.1mmから10mmまでにわたり変化することができ、またホルダ(102)から熱伝導表面(101)までの初期距離を制御する。
【0099】
或る実施形態において、タブ形態を有するホルダ(102b)では、タブ(120)からの機械的抵抗によって、ロックアップ(
図2)位置からスタートする準備状態に容器(109)を維持する。プレス手段(103)が容器(109)に対してタブ弾性力に打ち勝つ又はタブを破壊させるのに十分な下降力を強制的に加えるとき、この手段は熱伝導表面(101)をロックダウン(
図1)位置に合わせ、また熱的プロセスをスタートする。ロックアップ(
図2)位置にあるときホルダ(102)は熱伝導表面(101)からの距離を有することができ、この距離は、0.1から10mmまでにわたることができ、ロックダウン位置(
図1)にあるとき、この距離は実質的には0mmとなる。この形態は、ホルダ(102)自体からの延長部とすることができるタブ(120)を有し、付加的実施形態では金属、ポリマー又はその他で作成される。タブ(120)の幅は、2mmから10mmに至るまでの異なるものとし、長さは4mmから15mmに至るまでのものとすることができ、またタブ(120)は、幾つかの形態及び個数で配置することができる。ホルダ(102)の底部表面から移動するタブ(120)の延長部は、0.1mmから10mmまでにわたり変化することができ、またホルダ(102)から熱伝導表面(101)までの初期距離を制御する。
【0100】
或る実施形態において、ピン形態を有するホルダ(102c)では、ロックアップ(
図2)位置にあるとき、ピン(121)からの機械的抵抗に打ち勝ち、プロセス中にこれらピンを破壊又は撓ませる下降力を容器(109)に加える。ピンは、ホルダ(102)におけるキャビティ内に任意な個数又は形態で配置することができ、またホルダの一部とすることができる、又は付加的実施形態では任意なポリマー金属、若しくはその他で作成することができ、スタンバイ位置に維持する任意な他のプロセスによって接着、被覆若しくは付加される。ピン(121)は破壊可能な場合に使い捨て可能とすることができる、又は可撓性である場合には数回の使用を可能にし得る。容器(109)底部から接触層(119)又は熱伝導表面(101)までの距離は、形態に基づいて0.1mmから10mmまでにわたる距離とすることができる。
【0101】
或る実施形態において、プレス手段(103)は、形態に基づいて、容器(109)を熱伝導表面(101)又は接触層(119)に圧迫するよう機械的に作動する。ドライバは、
図1及び
図2にそれぞれロックダウン及びロックアップ位置として示される2つの位置をとる。プレス手段(103)をロックアップ位置(
図2)にセットするとき、容器(109)は冷熱伝導表面(101)から空隙により離れたスタンバイ位置をとり、この空隙は0.1mmから10mmまでにわたり異なることができる。ドライバがロックダウン(
図1)位置にあるとき、既存の空隙は垂直方向に除去される。このことは、容器(109)と熱伝導表面(101)との間に存在する接触層(119)又は任意な流体、ペースト、粘着剤若しくはその他により可能である。
図1及び
図2においては、プレス手段(103)を作動させる手動形態のみを示す。プレス手段(103)は、さらに、電気的に制御される機械的アクチュエータによって動作させることもできる。
図1及び
図2に実施例おいて、圧迫器(108)は、容器(109)に当接する面積を輪郭付けする重量のある部材であり、すべての容器(109)を十分分散した圧力ゾーンに達せしめることを可能にする。この実施例において、圧迫器(108)は、プレス手段(103)がロックダウン位置(
図1)に移動する間に、圧迫器(108)をすべての容器(109)に揃うよう調整できる枢動軸(107)によって支持する。プレス手段フレーム(104)の設計とともに、この枢動軸(107)の位置は、この機構からの下降力印加中に圧迫器(108)を強制的に水平位置に留める。プレス手段フレーム(104)及び枢動軸(107)によるこの形態は、すべてのキャビティが容器(109)を装填されていない場合でも、ホルダ(102)の通常使用を可能にする機械的止部を有する。さらに、この機構のあり得る形態として、ヒンジ(106)及び操作子(105)も示す。
【0102】
本開示の他の態様は、上述したデバイスを用いることで生物学的溶液を凍結する方法に関し、この方法は、以下のステップ、すなわち、
熱伝導表面(101)を低温(例えば、-40℃より低い温度)に予冷却するステップと
ホルダ(102)内に少なくとも1つの容器(109)を配置し、またプレス手段(103)で前記ホルダ(102)をロックダウン位置に押し付けることによって熱伝導表面(101)内ですべての容器の底部を同時に接触させて、制御された氷核形成を可能にするステップと、
僅かな体積層(≦全量の20%)の氷核形成後に、プレス手段(103)をロックアップ位置にセットし、氷核形成後に液体分量が制御不能に凍結するのを回避するため、生物学的溶液を約0℃の温度に維持しつつ、0.1mm~15mmまでの空隙だけ熱伝導表面(101)から離間したスタンバイ位置をホルダ(102)がとるようにするステップと、
プレス手段(103)をロックダウン位置にセットし、ホルダ(102)を熱伝導表面(101)に押し付け、容器の底部(123)の冷熱伝導表面(101)に対する接触を促進するステップと、
デバイスを制御した凍結速度にセットし、一方向ボトムアップ凍結ジオメトリを促進するステップと、
を備える。
【0103】
本開示の重要な態様は、すべての容器内での制御された機械な氷核形成を促進するよう容器底部(123)と熱伝導表面(101)との間における良好な接触を得ることである。したがって、氷核形成を誘発する冷却源として、平坦形態(101a)及び窪み形態(101b)を有する熱伝導表面(101)を使用することができる。窪み形態(101b)は、上述したように、接触促進材料(例えば、液体又はポリマー)を特定高さで充填できるため、熱伝導表面(101)と容器(109)との間の熱伝達を改善する。この窪み形態(101b)は、すべての容器が、使用する容器の個数に無関係に同一高さの接触促進材料を有することを可能にする。
【0104】
以下に、接触促進材料の使用又は不使用での凍結プロセス中に異なる水溶液の氷核形成時間に関連して別の実施例を詳述する。
【0105】
或る実施形態において、6mmの液体高さに充填した幾つかの容器を上述したホルダ(102)に配置し、またプレス手段(103)によって熱伝導表面(101)に押し付けた。この実験的検定のために2つの異なる水溶液、すなわち、10%トレハロース溶液(
図10)及び10%DMSO溶液(
図11)を使用した。
【0106】
図10及び11は、6mmの液体高さを有する容器内における2つの水溶液の氷核形成時間の代表的範囲を示す。
図10で分かるように、氷核形成プロセスに接触促進材料を使用するとき、すべてのサンプルは1~20秒の範囲内で氷核形成をする一方で、接触促進材料を使用しないときにはこの範囲が26~67秒まで増大する。トレハロース溶液の氷核形成(
図10)を見ると、接触促進材料を使用するサンプルの66%が5秒(5~10秒)の範囲内で氷核形成をする一方で、接触促進材料なしでの氷核形成時間分布は、25秒(32~57秒)の範囲に広がる。同様の結果は10%DMSO溶液(
図11)の氷核形成でも観察され、この場合、接触促進材料を使用すると氷核形成はより速く(5~20秒)、より短い時間範囲内で生ずることが分かる。
【0107】
或る実施形態において、本発明の方法及びデバイスは、生物学的サンプルの凍結のみならず、解凍にも使用される。
【0108】
したがって、平坦形態及び接触促進材料がない熱伝導表面の使用からくる広い氷核形成時間スペクトルと比較すると、特定高さの接触促進材料を有する窪み形態はより高度な氷核形成制御をもたらし、これは凍結した溶液の他の性能的側面及び特性に影響を及ぼしそうである。
【0109】
本開示の他の重要な態様は、氷核形成を制御された速度の凍結から切り離すことである。この目的のために、氷核形成ステップにおいて凍結する液体の分量が20%よりも多くない、好適には、10%より多くないようにすることを確実にする必要があり、このとき残りの液体分量は制御された速度で凍結する。僅かな分量の溶液における氷核形成後に、溶液が制御不能に凍結し続けないよう、サンプルを熱伝導表面から退去させる必要がある。したがって、氷核形成に要する時間経過後、サンプルは熱伝導表面から僅かに離間させ、これにより、予氷核形成溶液分量は凍結したままにし、また液体分量はほぼ0℃にしておく。最終的に、すべてのサンプルが凍結した溶液分量及び同一温度(0℃)での残存液体を有する状態で、これらを制御した凍結速度を適用する一方向ボトムアップ様態で凍結することができる。
【0110】
本明細書で使用される用語「備える(comprising)」は、記述した特徴、整数、ステップ、コンポーネントの存在を示すことを意図するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント又はそれらのグループの存在又は付加を排除しないことを意図する。
【0111】
当業者には当然のことながら、他を示さない限り、記載したステップの特定シーケンスは単なる説明に過ぎず、開示から逸脱することなく変化することができる。したがって、他を明示しない限り、記載したステップは順序どおりでないことを意味し、可能であれば、ステップは、任意な都合のよい又は望ましい順序で実施することができる。
【0112】
本開示は記載した実施形態に限定されると見るべきではなく、当業者であれば、それらに対する変更に多くの可能性があることを予想するであろう。
【0113】
上述した実施形態は組合せ可能である。特許請求の範囲は、さらに、本開示の特別な実施形態を明確化する。
【国際調査報告】