(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ガラス組成物、及び蒸気処理による強化方法
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20220111BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20220111BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220111BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C03C21/00 Z
C03C3/097
H05K5/02 J
G09F9/00 302
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526793
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 US2019060819
(87)【国際公開番号】W WO2020102127
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サラフィアン,アダム ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジンシー
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,ジャァミン
【テーマコード(参考)】
4E360
4G059
4G062
5G435
【Fターム(参考)】
4E360AB05
4E360AB08
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5G435LL10
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(57)【要約】
ガラス系物品であって、上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含む、ガラス系物品は、ガラス系基板を水蒸気含有環境に曝露することによって成形される。上記ガラス系物品の成形方法は、昇圧、及び/又は水蒸気含有環境への複数回の曝露を含んでよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品は:
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び
2mm以下の厚さ
を備え、
前記圧縮深さは5μm超であり、前記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、前記ガラス系物品はLi
2O及びNa
2Oを略含まない、ガラス系物品。
【請求項2】
前記ガラス系物品は、前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層を更に備え、前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって低下し;並びに/又は
前記ガラス系物品はCs
2O及びRb
2Oを略含まず; 並びに/又は
前記ガラス系物品の中心は:
0モル%以上6モル%以下のB
2O
3;
0モル%以上2モル%以下のRb
2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO
2
を含む、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項3】
47モル%以上70モル%以下のSiO
2;
5モル%以上17モル%以下のAl
2O
3;
4モル%以上15モル%以下のP
2O
5;及び
4.5モル%以上23モル%以下のK
2O
を含む、ガラス。
【請求項4】
47モル%以上70モル%以下のSiO
2;
2.5モル%以上17モル%以下のAl
2O
3;
4モル%以上15モル%以下のP
2O
5;及び
10モル%超かつ23モル%以下のK
2O
を含む、ガラス。
【請求項5】
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品は:
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層
を備え、
前記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、
前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって低下し、前記層深さは5μm超である、ガラス系物品。
【請求項6】
前記圧縮深さは5μm超であり;並びに/又は
前記圧縮深さは7μm以上であり;並びに/又は
前記圧縮深さは200μm以下であり;並びに/又は
前記圧縮応力は150MPa以上であり;並びに/又は
前記圧縮応力は500MPa以下であり;並びに/又は
前記ガラス系物品の中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO
2;
1モル%以上17モル%以下のAl
2O
3;
3モル%以上15モル%以下のP
2O
5;及び
0モル%超かつ23モル%以下のK
2O
を含む、請求項1、2、及び5のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【請求項7】
消費者向け電子製品であって、
前記消費者向け電子製品は:
前面、背面、及び側面を備えるハウジング;
少なくとも一部が前記ハウジング内にある電気部品であって、前記電気部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、前記ディスプレイは前記ハウジングの前記前面にあるか、又は前記前面に隣接する、電気部品;並びに
前記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板
を備え、
前記ハウジング及び前記カバー基板のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、請求項1、2、5、及び6のいずれか1項に記載のガラス系物品を含む、消費者向け電子製品。
【請求項8】
方法であって、
前記方法は、
ガラス系基板を、0.1MPa超の圧力及び0.05MPa以上の水分圧を有する環境に曝露することによって、ガラス系物品を形成するステップであって、前記ガラス系物品は、前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有する、ステップ
を含み、
前記圧縮深さは5μm超であり、
前記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有する、方法。
【請求項9】
相対湿度は100%であり;及び/又は
前記圧力は1MPa以上であり;及び/又は
前記曝露するステップは100℃以上の温度で実施され;及び/又は
前記ガラス系基板は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
方法であって、
前記方法は:
ガラス系基板を、第1の水分圧及び第1の温度を有する第1の環境に、第1の期間にわたって曝露することにより、第1のガラス系物品を形成するステップであって、前記第1のガラス系物品は、前記第1のガラス系物品の表面から第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層を有する、ステップ;並びに
前記第1のガラス系物品を、第2の水分圧及び第2の温度を有する第2の環境に、第2の期間にわたって曝露することにより、第2のガラス系物品を形成するステップであって、前記第2のガラス系物品は、前記第2のガラス系物品の表面から第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層を有する、ステップ
を含み、
前記第1の水分圧及び前記第2の水分圧は、0.05MPa以上であり;
前記第1の圧縮応力層は第1の最大圧縮応力を有し、前記第2の圧縮応力層は第2の最大圧縮応力を有し、前記第1の最大圧縮応力は前記第2の最大圧縮応力未満である、方法。
【請求項11】
前記第2の圧縮深さは5μm超であり;並びに/又は
前記第2の最大圧縮応力は50MPa以上であり;並びに/又は
前記第1の温度は前記第2の温度以上であり;並びに/又は
前記第1の期間は前記第2の期間未満であり;並びに/又は
前記第1の環境及び前記第2の環境のうちの少なくとも一方は、0.1MPa超の圧力を有し;並びに/又は
前記第1の環境及び前記第2の環境のうちの少なくとも一方は、100%の相対湿度を有し;並びに/又は
前記ガラス系基板、前記第1のガラス系物品、及び前記第2のガラス系物品は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年11月16日出願の米国仮特許出願第62/768,359号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、蒸気処理によって強化されたガラス系物品、上記ガラス系物品の形成に利用されるガラス組成物、及び上記ガラス系物品の強化のための蒸気処理の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット、並びにウェアラブルデバイス(例えば腕時計及びフィットネストラッカー等)といった携帯型電子デバイスは、小型化及び複雑化され続けている。従って、このような携帯型電子デバイスの少なくとも1つの外側表面に従来使用されている材料も、複雑化され続けている。例えば、消費者の要求を満たすために携帯型電子デバイスがより小さく薄くなるに従って、これらの携帯型電子デバイスに使用されるディスプレイカバー及びハウジングもより小さく薄くなり、従って、これらの構成部品を形成するために使用される材料に関する性能要件が高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、携帯型電子デバイスでの使用に関して、コストが低く製造が容易であると共に、損傷耐性等の性能がより高い材料に対して、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様(1)では、ガラス系物品が提供される。上記ガラス系物品は:上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び2mm以下の厚さを備える。上記圧縮深さは5μm超であり、上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、上記ガラス系物品はLi2O及びNa2Oを略含まない。
【0006】
態様(2)では、上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層を更に備え、上記水素含有層の水素濃度が、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下する、態様(1)に記載のガラス系物品が提供される。
【0007】
態様(3)では、上記層深さが5μm超である、態様(2)に記載のガラス系物品が提供される。
【0008】
態様(4)では、上記層深さが10μm以上である、態様(2)に記載のガラス系物品が提供される。
【0009】
態様(5)では、上記圧縮深さが7μm以上である、態様(1)~(4)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0010】
態様(6)では、上記圧縮深さが200μm以下である、態様(1)~(5)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0011】
態様(7)では、上記圧縮応力が150MPa以上である、態様(1)~(6)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0012】
態様(8)では、上記圧縮応力が500MPa以下である、態様(1)~(7)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0013】
態様(9)では、上記ガラス系物品がCs2O及びRb2Oを略含まない、態様(1)~(8)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0014】
態様(10)では、上記ガラス系物品の中心が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;1モル%以上17モル%以下のAl2O3;3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び0モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、態様(1)~(9)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0015】
態様(11)では、上記ガラス系物品の上記中心が:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
4.5モル%以上23モル%以下のK2O
を含む、態様(10)に記載のガラス系物品が提供される。
【0016】
態様(12)では、上記ガラス系物品の上記中心が:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
10モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、態様(10)に記載のガラス系物品が提供される。
【0017】
態様(13)では、上記ガラス系物品の上記中心が:
0モル%以上6モル%以下のB2O3;
0モル%以上2モル%以下のRb2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO2
を含む、態様(1)~(12)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0018】
態様(14)では、上記厚さが1mm以下である、態様(1)~(13)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0019】
態様(15)では、消費者向け電子製品が提供される。上記消費者向け電子製品は:前面、背面、及び側面を備えるハウジング;少なくとも一部が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面にあるか、又は上記前面に隣接する、電気部品;並びに上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板を備える。上記ハウジング及び上記カバー基板のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、態様(1)~(14)のいずれか1つに記載のガラス系物品を含む。
【0020】
態様(16)では、ガラスが提供される。上記ガラスは:47モル%以上70モル%以下のSiO2;5モル%以上17モル%以下のAl2O3;4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び4.5モル%以上23モル%以下のK2Oを含む。
【0021】
態様(17)では、上記ガラスがLi2O、Na2O、Cs2O、及びRb2Oを略含まない、態様(16)に記載のガラスが提供される。
【0022】
態様(18)では、上記ガラスが:0モル%以上6モル%以下のB2O3;0モル%以上2モル%以下のRb2O;0モル%以上6モル%以下のMgO;0モル%以上5モル%以下のZnO;及び0モル%以上0.5モル%以下のSnO2を含む、態様(16)又は(17)に記載のガラスが提供される。
【0023】
態様(19)では、ガラスが提供される。上記ガラスは:47モル%以上70モル%以下のSiO2;2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び10モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む。
【0024】
態様(20)では、上記ガラスがLi2O、Na2O、Cs2O、及びRb2Oを略含まない、態様(19)に記載のガラスが提供される。
【0025】
態様(21)では、上記ガラスが:0モル%以上6モル%以下のB2O3;0モル%以上2モル%以下のRb2O;0モル%以上6モル%以下のMgO;0モル%以上5モル%以下のZnO;及び0モル%以上0.5モル%以下のSnO2を含む、態様(19)又は(20)に記載のガラスが提供される。
【0026】
態様(22)では、ガラス系物品が提供される。上記ガラス系物品は:上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層を備える。上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、上記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下し、上記層深さは5μm超である。
【0027】
態様(23)では、上記圧縮深さが5μm超である、態様(22)に記載のガラス系物品が提供される。
【0028】
態様(24)では、上記層深さが10μm以上である、態様(22)又は(23)に記載のガラス系物品が提供される。
【0029】
態様(25)では、上記圧縮深さが7μm以上である、態様(22)~(24)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0030】
態様(26)では、上記圧縮深さが200μm以下である、態様(22)~(25)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0031】
態様(27)では、上記圧縮応力が150MPa以上である、態様(22)~(26)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0032】
態様(28)では、上記圧縮応力が500MPa以下である、態様(22)~(27)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0033】
態様(29)では、上記ガラス系物品の中心が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;1モル%以上17モル%以下のAl2O3;3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び0モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、態様(22)~(28)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0034】
態様(30)では、上記ガラス系物品の上記中心が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;5モル%以上17モル%以下のAl2O3;4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び4.5モル%以上23モル%以下のK2Oを含む、態様(29)に記載のガラス系物品が提供される。
【0035】
態様(31)では、上記ガラス系物品の上記中心が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び10モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、態様(29)に記載のガラス系物品が提供される。
【0036】
態様(32)では、上記ガラス系物品の上記中心が:0モル%以上6モル%以下のB2O3;0モル%以上5モル%以下のLi2O;0モル%以上19モル%以下のNa2O;0モル%以上2モル%以下のRb2O;0モル%以上6モル%以下のMgO;0モル%以上5モル%以下のZnO;及び0モル%以上0.5モル%以下のSnO2を含む、態様(22)~(31)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0037】
態様(33)では、消費者向け電子製品が提供される。上記消費者向け電子製品は:前面、背面、及び側面を備えるハウジング;少なくとも一部が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面にあるか、又は上記前面に隣接する、電気部品;並びに上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板を備える。上記ハウジング及び上記カバー基板のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、態様(22)~(32)のいずれか1つに記載のガラス系物品を含む。
【0038】
態様(34)では、方法が提供される。上記方法は、ガラス系基板を、0.1MPa超の圧力及び0.05MPa以上の水分圧を有する環境に曝露することによって、ガラス系物品を形成するステップであって、上記ガラス系物品は、上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有する、ステップを含む。上記圧縮深さは5μm超であり、上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有する。
【0039】
態様(35)では、相対湿度が100%である、態様(34)に記載の方法が提供される。
【0040】
態様(36)では、上記圧力が1MPa以上である、態様(34)又は(35)に記載の方法が提供される。
【0041】
態様(37)では、上記曝露するステップが100℃以上の温度で実施される、態様(34)~(36)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0042】
態様(38)では、上記ガラス系物品が、上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層を備え、上記水素含有層の水素濃度が、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下する、態様(34)~(37)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0043】
態様(39)では、上記層深さが5μm超である、態様(38)に記載の方法が提供される。
【0044】
態様(40)では、上記ガラス系基板がLi2O及びNa2Oを略含まない、態様(34)~(39)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0045】
態様(41)では、上記ガラス系基板が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;1モル%以上17モル%以下のAl2O3;3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び0モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、態様(34)~(40)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0046】
態様(42)では、上記ガラス系基板が、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、態様(34)~(41)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0047】
態様(43)では、上記ガラス系基板が2mm以下の厚さを有する、態様(34)~(42)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0048】
態様(44)では、方法が提供される。上記方法は:ガラス系基板を、第1の水分圧及び第1の温度を有する第1の環境に、第1の期間にわたって曝露することにより、第1のガラス系物品を形成するステップであって、上記第1のガラス系物品は、上記第1のガラス系物品の表面から第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層を有する、ステップ;並びに上記第1のガラス系物品を、第2の水分圧及び第2の温度を有する第2の環境に、第2の期間にわたって曝露することにより、第2のガラス系物品を形成するステップであって、上記第2のガラス系物品は、上記第2のガラス系物品の表面から第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層を有する、ステップを含む。上記第1の水分圧及び上記第2の水分圧は、0.05MPa以上であり;上記第1の圧縮応力層は第1の最大圧縮応力を有し、上記第2の圧縮応力層は第2の最大圧縮応力を有し、上記第1の最大圧縮応力は上記第2の最大圧縮応力未満である。
【0049】
態様(45)では、上記第2の圧縮深さが5μm超である、態様(44)に記載の方法が提供される。
【0050】
態様(46)では、上記第2の最大圧縮応力が50MPa以上である、態様(44)又は(45)に記載の方法が提供される。
【0051】
態様(47)では、上記第1の温度が上記第2の温度以上である、態様(44)~(46)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0052】
態様(48)では、上記第1の期間が上記第2の期間未満である、態様(44)~(47)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0053】
態様(49)では、上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方が、0.1MPa超の圧力を有する、態様(44)~(48)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0054】
態様(50)では、上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方が、100%の相対湿度を有する、態様(44)~(49)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0055】
態様(51)では、上記ガラス系基板、上記第1のガラス系物品、及び上記第2のガラス系物品が、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、態様(44)~(50)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0056】
態様(52)では、上記ガラス系基板が:47モル%以上70モル%以下のSiO2;1モル%以上17モル%以下のAl2O3;3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び0モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、態様(44)~(51)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0057】
態様(53)では、上記ガラス系基板がLi2O及びNa2Oを略含まない、態様(44)~(52)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0058】
態様(54)では、上記第2のガラス系物品を、第3の水分圧及び第3の温度を有する第3の環境に、第3の期間にわたって曝露することにより、第3のガラス系物品を形成するステップであって、上記第3のガラス系物品は、上記第3のガラス系物品の表面から第3の圧縮深さまで延在する第3の圧縮応力層を有する、ステップを更に含み、上記第3の水分圧は0.05MPa以上である、態様(44)~(53)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0059】
これらの及びその他の態様、利点、及び顕著な特徴は、以下の「発明を実施するための形態」、添付の図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図2A】本明細書中で開示されるガラス系物品のうちのいずれを組み込んだ例示的な電子デバイスの平面図
【
図3】圧力及び温度の関数としての、水の飽和条件のプロット
【
図4】一実施形態による、ガラス系物品の表面下の深さの関数としての水素濃度のプロット
【
図5】
図4のガラス系物品に関する、リン濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図6】一実施形態による、ガラス系物品の表面下の深さの関数としての水素濃度のプロット
【
図7】
図6のガラス系物品に関する、リン濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図8】一実施形態による、ガラス系物品の表面下の深さの関数としての水素濃度のプロット
【
図9】
図8のガラス系物品に関する、リン濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図10】一実施形態による、ガラス系物品のリン濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図11】
図10のガラス系物品に関する、カリウム濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図12】
図10のガラス系物品に関する、リン濃度の関数としての水素濃度のプロット
【
図13】様々な温度で処理されたガラス系試料に関する、水蒸気処理温度の関数としての圧縮応力のプロット
【
図14】ある環境によるガラス系物品の応力プロファイル
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の記載では、同様の参照記号は、図面において示す複数の図を通して、同様の又は対応する部分を指す。特段明記されていない限り、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「外向き(outward)」、「内向き(inward)」等の用語は、利便性のための単語であり、限定的な用語として解釈してはならないことも理解される。特段明記されていない限り、値の範囲が記載されている場合、これは上記範囲の上限及び下限並びにその間のいずれの部分範囲を含む。本明細書中で使用される場合、不定冠詞「a」「an」及びこれに対応する定冠詞「the」は、特段明記されていない限り、「少なくとも1つの(at least one)」又は「1つ以上の(one or more)」を意味する。また、本明細書及び図面中で開示される様々な特徴は、いずれの、及びあらゆる組み合わせで使用できることも理解される。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「ガラス系(glass‐based)」は、ガラスの全体又は一部が(結晶質相及び残部の非晶質ガラス相を含む)ガラスセラミックを含むガラスで作製されたいずれの物体を含むよう、最も広い意味で使用される。特段の記載がない限り、本明細書に記載のガラスの全ての組成はモルパーセント(モル%)を単位として表され、これらの成分は酸化物ベースで与えられる。特段の記載がない限り、全ての温度はセルシウス度(℃)を単位として表される。
【0063】
用語「略、実質的に(substantially)」及び「約(about)」は本明細書では、いずれの量的比較、値、測定値又は他の表現に付随し得る不可避的な不確実性を表すために使用される場合があることに留意されたい。これらの用語はまた、ある量的表現が、問題となっている主題の基本的な機能を変化させることなく、言明されている基準から変動できる程度を表すためにも使用される。例えば、「K2Oを実質的に含まない(substantially free of K2O)」ガラスは、これらの酸化物がガラスに能動的に添加又は混入されないものの、汚染物質としてごく少量、例えば約0.01モル%未満の量で存在し得る、ガラスである。本明細書中で使用される場合、ある値を修飾するために用語「約(about)」が使用されていれば、その値自体も開示される。例えば、用語「約10モル%超(greater than about 10 mol%)」は、「10モル以上(greater than or equal to 10 mol%)」も開示する。
【0064】
これより、様々な実施形態を詳細に参照する。上記実施形態の例は、添付の実施例及び図面に示されている。
【0065】
本明細書で開示されるガラス系物品は、物品の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層を生成するためにガラス系基板を蒸気処理することによって、形成される。圧縮応力層は、最大応力から圧縮深さに向かって低下する応力を含む。いくつかの実施形態では、最大圧縮応力はガラス系物品の表面に位置してよい。本明細書中で使用される場合、圧縮深さ(DOC)は、ガラス系物品中の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味する。従ってガラス系物品は、最大中央張力(CT)を有する引張応力領域も内包し、これによってガラス系物品内の力が平衡する。
【0066】
ガラス系物品は更に、物品の表面から層深さまで延在する水素含有層を含む。水素含有層は、ガラス系物品の最大水素濃度から層深さに向かって低下する水素濃度を含む。いくつかの実施形態では、最大水素濃度はガラス系物品の表面に位置してよい。
【0067】
ガラス系物品は、ガラス基板を、水蒸気を含有する環境に曝露することで、水素種をガラス基板に侵入させ、水素含有層及び/又は圧縮応力層を有するガラス系物品を形成することによって、形成できる。本明細書中で使用される場合、「水素種(hydrogen species)」は、分子状態の水、ヒドロキシル、水素イオン、及びヒドロニウムを含む。ガラス系基板の組成は、ガラス内への水素種の相互拡散を促進するように選択できる。本明細書中で使用される場合、用語「ガラス系基板(glass‐based substrate)」は、水素含有層及び/又は圧縮応力層を含むガラス系物品の形成のための水蒸気含有環境に曝露される前の、前駆物質を指す。同様に、用語「ガラス系物品(glass‐based article)」は、水素含有層及び/又は圧縮応力層を含む曝露後の物品を指す。
【0068】
本明細書で開示されるガラス系物品は、従来のイオン交換、熱強化、又は積層処理を経ることなく、圧縮応力層を呈することができる。イオン交換プロセスは、高コストの廃棄を必要とする、使用済みの溶融塩浴の形態の多量の廃棄物を生成し、また一部のガラス組成物にしか適用できない。熱強化には、実際問題として厚いガラス試験片が必要となる。というのは、薄いシートの熱強化は小空隙焼入れ(small air gap quenching)プロセスを利用し、これはシートの擦傷をもたらし、性能及び収率を低下させるためである。更に、薄いガラスシートの熱強化時に表面及び縁部領域にわたって均一な圧縮応力を達成するのは困難である。積層プロセスは、大きなシートを使用可能なシートに切断した場合に、引張応力領域の露出をもたらし、これは望ましくない。
【0069】
ガラス系物品を形成するために使用される水蒸気処理は、溶融塩を利用しないため、イオン交換処理に比べて廃棄物の量を削減し、コストを低減できる。水蒸気処理は、薄い(<2mmの)低コストガラスの強化も可能であり、この低コストガラスは、このような厚さでの熱強化には適していない。更に水蒸気処理は部品レベルで実施でき、積層プロセスに関連する望ましくない露出した引張応力領域を回避できる。要約すると、本明細書で開示されるガラス系物品は、高い圧縮応力及び深い圧縮深さを示しながら、小さな厚さ及び低いコストで製造できる。
【0070】
いくつかの実施形態によるガラス系物品100の代表的な断面を
図1に示す。ガラス系物品100は、第1の表面110と第2の表面112との間に延在する厚さtを有する。第1の圧縮応力層120は、第1の表面110から第1の圧縮深さまで延在し、上記第1の圧縮深さは、第1の表面110からガラス系物品100内に向かって測定される深さd
1を有する。第2の圧縮応力層122は、第2の表面112から第2の圧縮深さまで延在し、上記第2の圧縮深さは、第2の表面112からガラス系物品100内に向かって測定される深さd
2を有する。引張応力領域130は、上記第1の圧縮深さと上記第2の圧縮深さとの間に存在する。実施形態では、第1の圧縮深さd
1は第2の圧縮深さd
2と略等しいか、又は等しくてよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系物品の圧縮応力層は、10MPa以上、例えば20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上、50MPa以上、60MPa以上、70MPa以上、80MPa以上、90MPa以上、100MPa以上、110MPa以上、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、145MPa以上、150MPa以上、160MPa以上、170MPa以上、180MPa以上、190MPa以上、200MPa以上、210MPa以上、220MPa以上、230MPa以上、240MPa以上、250MPa以上、260MPa以上、270MPa以上、280MPa以上、290MPa以上、300MPa以上、310MPa以上、320MPa以上、330MPa以上、340MPa以上、350MPa以上、360MPa以上、370MPa以上、380MPa以上、390MPa以上、400MPa以上、410MPa以上、420MPa以上、430MPa以上、440MPa以上、450MPa以上、又は更に高い圧縮応力を有してよい。いくつかの実施形態では、上記圧縮応力層は、10MPa以上500MPa以下、例えば20MPa以上490MPa以下、20MPa以上480MPa以下、30MPa以上470MPa以下、40MPa以上460MPa以下、50MPa以上450MPa以下、60MPa以上440MPa以下、70MPa以上430MPa以下、80MPa以上420MPa以下、90MPa以上410MPa以下、100MPa以上400MPa以下、110MPa以上390MPa以下、120MPa以上380MPa以下、130MPa以上370MPa以下、140MPa以上360MPa以下、150MPa以上350MPa以下、160MPa以上340MPa以下、170MPa以上330MPa以下、180MPa以上320MPa以下、190MPa以上310MPa以下、200MPa以上300MPa以下、210MPa以上290MPa以下、220MPa以上280MPa以下、230MPa以上270MPa以下、240MPa以上260MPa以下、250MPa、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の、圧縮応力を有してよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、上記圧縮応力層のDOCは、5μm以上、例えば7μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、80μm以上、85μm以上、90μm以上、95μm以上、100μm以上、105μm以上、110μm以上、115μm以上、120μm以上、125μm以上、130μm以上、135μm以上、140μm以上、145μm以上、150μm以上、155μm以上、160μm以上、165μm以上、170μm以上、175μm以上、180μm以上、185μm以上、190μm以上、195μm以上、又は更に大きいものであってよい。いくつかの実施形態では、上記圧縮応力層のDOCは、5μm以上200μm以下、例えば7μm以上195μm以下、10μm以上190μm以下、15μm以上185μm以下、20μm以上180μm以下、25μm以上175μm以下、30μm以上170μm以下、35μm以上165μm以下、40μm以上160μm以下、45μm以上155μm以下、50μm以上150μm以下、55μm以上145μm以下、60μm以上140μm以下、65μm以上135μm以下、70μm以上130μm以下、75μm以上125μm以下、80μm以上120μm以下、85μm以上115μm以下、90μm以上110μm以下、100μm、又はこれらの端点のうちのいずれから形成され得るいずれの部分範囲内であってよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系物品は、0.05t以上(ここでtは上記ガラス系物品の厚さである)、例えば0.06t以上、0.07t以上、0.08t以上、0.09t以上、0.10t以上、0.11t以上、0.12t以上、0.13t以上、0.14t以上、0.15t以上、0.16t以上、0.17t以上、0.18t以上、0.19t以上、又は更に大きなDOCを有してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系物品は、0.05t以上0.20t以下、例えば0.06t以上0.19t以下、0.07t以上0.18t以下、0.08t以上0.17t以下、0.09t以上0.16t以下、0.10t以上0.15t以下、0.11t以上0.14t以下、0.12t以上0.13t以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内のDOCを有してよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系物品の最大中央張力(CT)は、10MPa以上、例えば11MPa以上、12MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、15MPa以上、16MPa以上、17MPa以上、18MPa以上、19MPa以上、20MPa以上、22MPa以上、24MPa以上、26MPa以上、28MPa以上、30MPa以上、32MPa以上、又は更に高いものであってよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系物品のCTは、10MPa以上35MPa以下、例えば11MPa以上34MPa以下、12MPa以上33MPa以下、13MPa以上32MPa以下、14MPa以上32MPa以下、15MPa以上31MPa以下、16MPa以上30MPa以下、17MPa以上28MPa以下、18MPa以上26MPa以下、19MPa以上24MPa以下、20MPa以上22MPa以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内であってよい。
【0075】
圧縮応力(表面CSを含む)は、折原製作所(日本)製のFSM‐6000(FSM)等の市販の機器を用いて、表面応力計によって測定される。表面応力測定は、応力光係数(stress optical coefficient:SOC)の正確な測定に依存し、これはガラスの複屈折に関係する。SOCは、ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」という名称のASTM規格C770‐16(その内容全体は参照により本出願に援用される)に記載された手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。DOCはFSMによって測定される。最大中央張力(CT)値は、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(scattered light polariscope:SCALP)技法を用いて測定される。
【0076】
上記ガラス系物品の水素含有層は、5μm超の層深さ(DOL)を有してよい。いくつかの実施形態では、上記層深さは、10μm以上、例えば15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、80μm以上、85μm以上、90μm以上、95μm以上、100μm以上、105μm以上、110μm以上、115μm以上、120μm以上、125μm以上、130μm以上、135μm以上、140μm以上、145μm以上、150μm以上、155μm以上、160μm以上、165μm以上、170μm以上、175μm以上、180μm以上、185μm以上、190μm以上、195μm以上、200μm以上、又は更に大きなものであってよい。いくつかの実施形態では、上記層深さは、5μm以上205μm以下、例えば10μm以上200μm以下、15μm以上200μm以下、20μm以上195μm以下、25μm以上190μm以下、30μm以上185μm以下、35μm以上180μm以下、40μm以上175μm以下、45μm以上170μm以下、50μm以上165μm以下、55μm以上160μm以下、60μm以上155μm以下、65μm以上150μm以下、70μm以上145μm以下、75μm以上140μm以下、80μm以上135μm以下、85μm以上130μm以下、90μm以上125μm以下、95μm以上120μm以下、100μm以上115μm以下、105μm以上110μm以下、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるいずれの部分範囲内であってよい。一般に、上記ガラス系物品が示す上記層深さは、周囲環境への曝露によって形成され得る層深さより大きい。
【0077】
上記ガラス系物品の水素含有層は、0.005t超(ここでtは上記ガラス系物品の厚さである)の層深さ(DOL)を有してよい。いくつかの実施形態では、上記層深さは、0.010t以上、例えば0.015t以上、0.020t以上、0.025t以上、0.030t以上、0.035t以上、0.040t以上、0.045t以上、0.050t以上、0.055t以上、0.060t以上、0.065t以上、0.070t以上、0.075t以上、0.080t以上、0.085t以上、0.090t以上、0.095t以上、0.10t以上、0.15t以上、0.20t以上、又は更に大きなものであってよい。いくつかの実施形態では、上記DOLは、0.005t以上0.205t以下、例えば0.010t以上0.200t以下、0.015t以上0.195t以下、0.020t以上0.190t以下、0.025t以上0.185t以下、0.030t以上0.180t以下、0.035t以上0.175t以下、0.040t以上0.170t以下、0.045t以上0.165t以下、0.050t以上0.160t以下、0.055t以上0.155t以下、0.060t以上0.150t以下、0.065t以上0.145t以下、0.070t以上0.140t以下、0.075t以上0.135t以下、0.080t以上0.130t以下、0.085t以上0.125t以下、0.090t以上0.120t以下、0.095t以上0.115t以下、0.100t以上0.110t以下、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるいずれの部分範囲内であってよい。
【0078】
上記層深さ及び水素濃度は、当該技術分野で公知の二次イオン質量分析法(secondary ion mass spectrometry:SIMS)技法によって測定される。SIMS技法は、所与の深さにおける水素濃度を測定できるが、ガラス系物品中に存在する水素種を区別することはできない。そのため、全ての水素種が、SIMSによって測定される水素濃度に寄与する。本明細書中で使用される場合、層深さ(DOL)は、水素濃度が上記ガラス系物品の中心の水素濃度に等しい、ガラス系物品の表面下の第1の深さを指す。この定義は、処理前のガラス系基板の水素濃度を考慮したものであり、従って上記層深さは、処理プロセスによって付加される水素の深さを指す。実際問題として、ガラス系物品の中心の水素濃度は、水素濃度が略一定となるガラス系物品の表面からの深さにおける、水素濃度によって近似できる。というのは、水素濃度は上記深さとガラス系物品の中心との間で変化しないと予想されるためである。この近似により、ガラス系物品の深さ全体にわたって水素濃度を測定することなく、DOLを決定できる。
【0079】
いずれの特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、上記ガラス系物品の上記水素含有層は、上記ガラス系基板の組成中に含有される水素種の相互拡散の結果であり得る。水素含有種、例えばH3O+、H2O、及び/又はH+は、上記ガラス系基板中に拡散し、上記ガラス系基板に内包されたアルカリイオン及び/又はリンを置換することによって、上記ガラス系物品を形成できる。更に、リンは、上記ガラス系基板を水蒸気含有環境に曝露したときの圧縮応力層の形成において重要な役割を果たすと思われ、またガラス系基板がリン及びアルカリ金属酸化物の両方を含有する場合に特に顕著な効果を有することができる。カリウムを含有するガラス系基板は、ナトリウムを含有するガラス系基板とは対照的に、水蒸気含有環境に曝露した場合の強化が増強されるが、これは、カチオン電界強度が低いと、このような処置による強化を増強できることを示している。カチオン電界強度が低いアルカリイオンを含有するガラス系基板ほど、酸素充填密度が低くなり得、これにより、水等の水素種をガラス系基板中に拡散させやすくなる。カチオン電界強度が低いアルカリイオンを組み込むと、水含有環境への曝露時のガラス系基板からのリンの抽出を支援することもでき、これは実験によって観察された、水素含有層におけるリンの枯渇と一致している。このような挙動を少なくとも部分的に説明する、可能性のある1つのメカニズムは、カチオン電界強度が低いアルカリ金属を使用するほど、Q0(PO4
3-)ユニットがガラスネットワークに結合する強度が低いというものである。Q0(PO4
3-)ユニットは、4つの非架橋酸素を含有するため、上記ユニットは、1つの二重結合酸素分子と、修飾イオンとイオン結合を形成する3つの酸素陰イオンとからなる。
【0080】
本明細書で開示されるガラス系物品は、ディスプレイを有する物品(又はディスプレイ物品)(例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、ウェアラブルデバイス(例えば腕時計)等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送物品(例えば自動車、鉄道、航空機、船舶等)、電気製品物品、又は多少の透明度、耐擦傷性、耐摩耗性若しくはこれらの組み合わせを必要とするいずれの物品といった別の物品に組み込んでよい。本明細書中で開示されるガラス系物品のうちのいずれを組み込んだ例示的な物品は、
図2A及び2Bに示されている。具体的には、
図2A及び2Bは:前面204、背面206、及び側面208を有するハウジング202;少なくとも一部分又は全体がハウジング内にあり、少なくともコントローラ、メモリ、及びハウジングの前面にある又はその付近にあるディスプレイ210を含む、電気部品(図示せず);並びにディスプレイを覆うように、ハウジングの前面又は前面上にある、カバー基板212を含む、消費者向け電子デバイス200を示す。いくつかの実施形態では、カバー基板212及びハウジング202のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、本明細書中で開示されるガラス系物品のうちのいずれを含んでよい。
【0081】
上記ガラス系物品は、いずれの適切な組成を有するガラス系基板から形成されていてよい。上記ガラス系基板の上記組成は、水素含有層及び圧縮応力層を含むガラス系物品を効率的に形成できるよう、水素含有種の拡散を促進するように具体的に選択できる。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、SiO2、Al2O3、及びP2O5を含む組成を有してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は更に、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、及びCs2Oのうちの少なくとも1つといった、アルカリ金属酸化物を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、リチウム及びナトリウムのうちの少なくとも一方を略含まないか、又は含まなくてよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、リチウム及びナトリウムを略含まないか、又は含まなくてよい。いくつかの実施形態では、上記水素種は、上記ガラス系物品の中心まで拡散されない。換言すれば、上記ガラス系物品の中心は、水蒸気処理の影響が最も少ないエリアである。そのため、上記ガラス系物品の中心は、水含有環境中での処理の前のガラス系基板の組成と略同一であるか又は同一である組成を有してよい。
【0082】
上記ガラス系基板は、いずれの適切な量のSiO2を含んでよい。SiO2は最も多量の構成成分であり、従ってSiO2は、ガラス組成物から形成されるガラスネットワークの一次構成成分である。ガラス組成物中のSiO2の濃度が高すぎると、ガラス組成物の成形性が低下する場合がある。というのは、SiO2の濃度が高いほどガラスの溶融が困難になり、これがガラスの成形性に悪影響を与えるためである。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、47モル%以上70モル%以下、例えば48モル%以上69モル%以下、49モル%以上68モル%以下、50モル%以上67モル%以下、51モル%以上66モル%以下、52モル%以上65モル%以下、53モル%以上64モル%以下、54モル%以上63モル%以下、55モル%以上62モル%以下、56モル%以上61モル%以下、57モル%以上60モル%以下、58モル%以上59モル%以下、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるいずれの部分範囲内の量の、SiO2を含んでよい。
【0083】
上記ガラス系基板は、いずれの適切な量のAl2O3を含んでよい。Al2O3は、SiO2と同様にガラスネットワーク形成剤として作用できる。Al2O3は、ガラス組成物から形成されるガラス溶融物中での四面体配位により、ガラス組成物の粘度を上昇させることができ、Al2O3の量が多すぎるとガラス組成物の成形性が低下する。しかしながら、ガラス組成物中のAl2O3の濃度とSiO2の濃度及びアルカリ酸化物の濃度とのバランスを取ると、Al2O3はガラス溶融物の液相線温度を低下させることができ、これにより、液相粘度を増大させて、フュージョン成形プロセスといった特定の成形プロセスに対するガラス組成物の適合性を改善できる。ガラス系基板にAl2O3を含めると、相分離が防止され、ガラス中の非架橋酸素(non‐bridging oxygen:NBO)の数が減少する。更にAl2O3は、イオン交換の有効性を改善できる。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、1モル%以上17モル%以下、例えば2モル%以上16モル%以下、3モル%以上15モル%以下、4モル%以上14モル%以下、5モル%以上13モル%以下、6モル%以上12モル%以下、7モル%以上11モル%以下、8モル%以上10モル%以下、9モル%、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるいずれの部分範囲内の量の、Al2O3を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、2.5モル%以上17モル%以下、例えば5モル%以上17モル%以下、又は上述の端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の量の、Al2O3を含んでよい。
【0084】
上記ガラス系基板は、所望の水素拡散性を生成するために十分ないずれの量のP2O5を含んでよい。ガラス系基板にリンを含めると、交換イオン対にかかわらず比較的迅速な相互拡散が促進される。よって、リン含有ガラス系基板は、水素含有層を含むガラス系物品の効率的な形成を可能にする。P2O5を含めると、比較的短い処理時間で深い層深さ(例えば約10μm超)を有するガラス系物品を製造することもできる。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、3モル%以上15モル%以下、例えば4モル%以上15モル%以下、5モル%以上14モル%以下、6モル%以上13モル%以下、7モル%以上12モル%以下、8モル%以上11モル%以下、9モル%以上10モル%以下、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるいずれの部分範囲内の量の、P2O5を含んでよい。
【0085】
上記ガラス系基板はK2Oを含む。K2Oを含めると、水含有環境への曝露時に、上記ガラス基板中への水素種の効率的な交換が、少なくとも部分的に可能となる。実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%超かつ23モル%以下、例えば1モル%以上22モル%以下、2モル%以上21モル%以下、3モル%以上20モル%以下、4モル%以上19モル%以下、5モル%以上18モル%以下、6モル%以上17モル%以下、7モル%以上16モル%以下、8モル%以上15モル%以下、9モル%以上14モル%以下、10モル%以上13モル%以下、11モル%以上12モル%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の量の、K2Oを含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、4.5モル%以上23モル%以下、例えば10モル%以上23モル%以下、又は上述の端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の量の、K2Oを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板は、K2O以外のアルカリ金属酸化物、例えばLi2O、Na2O、Cs2O、及びRb2Oを、略含まないか又は含まなくてよい。
【0086】
上記ガラス系基板は、Na2Oをいずれの適切な量で含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上19モル%以下、例えば0モル%超かつ18モル%以下、1モル%以上17モル%以下、2モル%以上16モル%以下、3モル%以上15モル%以下、4モル%以上14モル%以下、5モル%以上13モル%以下、6モル%以上12モル%以下、7モル%以上11モル%以下、8モル%以上10モル%、以下9モル%、又はこれらの端点から形成されるあらゆる部分範囲内の量の、Na2Oを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はNa2Oを略含まないか又は含まなくてよい。
【0087】
上記ガラス系基板は、Li2Oをいずれの適切な量で含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上5モル%以下、例えば0モル%超かつ4モル%以下、1モル%以上3モル%以下、2モル%これらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内の量の、Li2Oを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はLi2Oを略含まないか又は含まなくてよい。
【0088】
上記ガラス系基板は、Rb2Oをいずれの適切な量で含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上2モル%以下、例えば0モル%超かつ1モル%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の量の、Rb2Oを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はRb2Oを略含まないか又は含まなくてよい。
【0089】
上記ガラス系基板は、Cs2Oをいずれの適切な量で含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上10モル%以下、例えば1モル%以上9モル%以下、2モル%以上8モル%以下、3モル%以上7モル%以下、4モル%以上6モル%以下、5モル%、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるいずれの部分範囲内の量の、Cs2Oを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はCs2Oを略含まないか又は含まなくてよい。
【0090】
上記ガラス系基板は更にB2O3を含んでよい。B2O3を上記ガラス系基板に含めると、上記ガラス系基板の損傷耐性を向上させることができ、これによって上記ガラス系基板から形成される上記ガラス系物品の損傷耐性を向上させることができる。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上6モル%以下、例えば1モル%以上5モル%以下、2モル%以上4モル%以下、3モル%、又はこれらの端点から形成されるあらゆる部分範囲内の量の、B2O3を含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はB2O3を略含まないか又は含まなくてよい。
【0091】
上記ガラス系基板は更にMgOを含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上6モル%以下、例えば1モル%以上5モル%以下、2モル%以上4モル%以下、3モル%、又はこれらの端点から形成されるあらゆる部分範囲内の量の、MgOを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はMgOを略含まないか又は含まなくてよい。
【0092】
上記ガラス系基板は更にZnOを含んでよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上5モル%以下、例えば1モル%以上4モル%以下、2モル%以上3モル%以下、又はこれらの端点から形成されるあらゆる部分範囲内の量の、ZnOを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板はZnOを略含まないか又は含まなくてよい。
【0093】
上記ガラス系基板は更に清澄剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記清澄剤はスズを含んでよい。実施形態では、上記ガラス系基板は、0モル%以上0.5モル%以下、例えば0モル%超かつ0.1モル%以下の量の、SnO2を含んでよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は:47モル%以上70モル%以下のSiO2、1モル%以上17モル%以下のAl2O3、3モル%以上15モル%以下のP2O5、及び0モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、組成を有してよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は:47モル%以上70モル%以下のSiO2、5モル%以上17モル%以下のAl2O3、4モル%以上15モル%以下のP2O5、及び4.5モル%以上23モル%以下のK2Oを含む、組成を有してよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は:47モル%以上70モル%以下のSiO2、2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3、4モル%以上15モル%以下のP2O5、及び10モル%超かつ23モル%以下のK2Oを含む、組成を有してよい。
【0097】
上記ガラス系基板は、いずれの適切なジオメトリを有してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は、2mm以下、例えば1.9mm以下、1.8mm以下、1.7mm以下、1.6mm以下、1.5mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1mm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、又は更に小さな厚さを有してよい。実施形態では、上記ガラス系基板は、300μm以上2mm以下、例えば400μm以上1.9mm以下、500μm以上1.8mm以下、600μm以上1.7mm以下、700μm以上1.6mm以下、800μm以上1.5mm以下、900μm以上1.4mm以下、1mm以上1.3mm以下、1.1mm以上1.2mm以下、又はこれらの端点から形成されるあらゆる部分範囲内の厚さを有してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は板又はシート形状を有してよい。他のいくつかの実施形態では、上記ガラス系基板は2.5D又は3D形状を有してよい。本明細書中で使用される場合、用語「2.5D形状(2.5D shape)」は、少なくとも1つの大面が少なくとも部分的に平面でなく、第2の大面が略平面である、シート状物品を指す。本明細書中で使用される場合、「3D形状(3D shape)」は、少なくとも部分的に平面でない対向する第1及び第2の大面を有する、物品を指す。上記ガラス系物品は、上記ガラス系物品が形成される元となる上記ガラス系基板と略同様又は同一の寸法及び形状を有してよい。
【0098】
上記ガラス系物品は、いずれの適切な条件下での水蒸気への曝露によって、上記ガラス系基板から製造できる。上記曝露は、相対湿度制御を備えた炉等の、いずれの適切なデバイス内で実施できる。上記曝露はまた、相対湿度及び圧力制御を備えた炉又はオートクレーブ等において、昇圧下で実施してよい。
【0099】
一実施形態では、上記ガラス系物品は、周囲圧力を超える圧力を有しかつ水蒸気を含有する環境に、ガラス系基板を曝露することによって製造できる。上記環境は、0.1MPa超の圧力、及び0.05MPa以上の水分圧を有してよい。上記昇圧は、特に温度が上昇するに従って、曝露環境中の水蒸気の高い濃度を可能にする。例えば以下の表1は、様々な温度に関する、周囲圧力(0.1MPa)における蒸気相中の水の濃度を提供する。
【0100】
【0101】
大気圧では、水蒸気飽和条件は99.61℃である。表Iによって実証されているように、温度の上昇に従って、上記ガラス系物品を形成するための上記ガラス系基板内への拡散に利用できる水の量は、ある固定容積、例えば炉又はオートクレーブの内部に対して減少する。従って、水蒸気処理環境の温度を上昇させると、上記ガラス系基板内への水素種の拡散速度が上昇し得るものの、圧力が一定であれば、高温における総水蒸気濃度の低下及び応力緩和によって、圧縮応力が低下する。
【0102】
温度が、大気圧飽和条件を超える温度等に上昇すると、飽和条件に到達するために増加した圧力を印加することにより、環境中の水蒸気の濃度が大幅に高まる。以下の表IIは、様々な温度に関する飽和条件圧力、及びこれに関連する蒸気相の水の濃度を提供する。
【0103】
【0104】
圧力及び温度の関数としての水蒸気の飽和条件を
図3に示す。
図3に示されているように、曲線の上方の領域は、望ましくないものである、水蒸気の液体への凝縮をもたらすことになる。よって、本明細書で使用される水蒸気処理条件は、
図3の曲線上又は曲線下となり、水蒸気含有量を最大化するために好ましい条件は、曲線上又は曲線のすぐ下である。これらの理由により、上記ガラス系基板の水蒸気処理は昇圧下で実施できる。
【0105】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、0.1MPa超、例えば0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、0.5MPa以上、0.6MPa以上、0.7MPa以上、0.8MPa以上、0.9MPa以上、1.0MPa以上、1.1MPa以上、1.2MPa以上、1.3MPa以上、1.4MPa以上、1.5MPa以上、1.6MPa以上、1.7MPa以上、1.8MPa以上、1.9MPa以上、2.0MPa以上、2.1MPa以上、2.2MPa以上、2.3MPa以上、2.4MPa以上、2.5MPa以上、2.6MPa以上、2.7MPa以上、2.8MPa以上、2.9MPa以上、3.0MPa以上、3.1MPa以上、3.2MPa以上、3.3MPa以上、3.4MPa以上、3.5MPa以上、1.6MPa以上、3.7MPa以上、3.8MPa以上、3.9MPa以上、4.0MPa以上、4.1MPa以上、4.2MPa以上、4.3MPa以上、4.4MPa以上、4.5MPa以上、4.6MPa以上、4.7MPa以上、4.8MPa以上、4.9MPa以上、5.0MPa以上、5.1MPa以上、5.2MPa以上、5.3MPa以上、5.4MPa以上、5.5MPa以上、5.6MPa以上、5.7MPa以上、5.8MPa以上、5.9MPa以上、6.0MPa以上、又は更に高い圧力の環境に曝露してよい。実施形態では、上記ガラス系基板を、0.1MPa超かつ25MPa以下、例えば0.2MPa以上24MPa以下、0.3MPa以上23MPa以下、0.4MPa以上22MPa以下、0.5MPa以上21MPa以下、0.6MPa以上20MPa以下、0.7MPa以上19MPa以下、0.8MPa以上18MPa以下、0.9MPa以上17MPa以下、1.0MPa以上16MPa以下、1.1MPa以上15MPa以下、1.2MPa以上14MPa以下、1.3MPa以上13MPa以下、1.4MPa以上12MPa以下、1.5MPa以上11MPa以下、1.6MPa以上10MPa以下、1.7MPa以上9MPa以下、1.8MPa以上8MPa以下、1.9MPa以上7MPa以下、1.9MPa以上6.9MPa以下、2.0MPa以上6.8MPa以下、2.1MPa以上6.7MPa以下、2.2MPa以上6.6MPa以下、2.3MPa以上6.5MPa以下、2.4MPa以上6.4MPa以下、2.5MPa以上6.3MPa以下、2.6MPa以上6.2MPa以下、2.7MPa以上6.1MPa以下、2.8MPa以上6.0MPa以下、2.9MPa以上5.9MPa以下、3.0MPa以上5.8MPa以下、3.1MPa以上5.7MPa以下、3.2MPa以上5.6MPa以下、3.3MPa以上5.5MPa以下、3.4MPa以上5.4MPa以下、3.5MPa以上5.3MPa以下、3.6MPa以上5.2MPa以下、3.7MPa以上5.1MPa以下、3.8MPa以上5.0MPa以下、3.9MPa以上4.9MPa以下、4.0MPa以上4.8MPa以下、4.1MPa以上4.7MPa以下、4.2MPa以上4.6MPa以下、4.3MPa以上4.5MPa以下、4.4MPa、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内の圧力の環境に曝露してよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、0.05MPa以上、例えば0.075MPa以上、0.1MPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、0.5MPa以上、0.6MPa以上、0.7MPa以上、0.8MPa以上、0.9MPa以上、1.0MPa以上、1.1MPa以上、1.2MPa以上、1.3MPa以上、1.4MPa以上、1.5MPa以上、1.6MPa以上、1.7MPa以上、1.8MPa以上、1.9MPa以上、2.0MPa以上、2.1MPa以上、2.2MPa以上、2.3MPa以上、2.4MPa以上、2.5MPa以上、2.6MPa以上、2.7MPa以上、2.8MPa以上、2.9MPa以上、3.0MPa以上、3.1MPa以上、3.2MPa以上、3.3MPa以上、3.4MPa以上、3.5MPa以上、1.6MPa以上、3.7MPa以上、3.8MPa以上、3.9MPa以上、4.0MPa以上、4.1MPa以上、4.2MPa以上、4.3MPa以上、4.4MPa以上、4.5MPa以上、4.6MPa以上、4.7MPa以上、4.8MPa以上、4.9MPa以上、5.0MPa以上、5.1MPa以上、5.2MPa以上、5.3MPa以上、5.4MPa以上、5.5MPa以上、5.6MPa以上、5.7MPa以上、5.8MPa以上、5.9MPa以上、6.0MPa以上、7.0MPa以上、8.0MPa以上、9.0MPa以上、10.0MPa以上、11.0MPa以上、12.0MPa以上、13.0MPa以上、14.0MPa以上、15.0MPa以上、16.0MPa以上、17.0MPa以上、18.0MPa以上、19.0MPa以上、20.0MPa以上、21.0MPa以上、22.0MPa以上、又は更に高い水分圧を有する環境に曝露してよい。実施形態では、上記ガラス系基板を、0.05MPa以上22MPa以下、例えば0.075MPa以上22MPa以下、0.1MPa以上21MPa以下、0.2MPa以上20MPa以下、0.3MPa以上19MPa以下、0.4MPa以上18MPa以下、0.5MPa以上17MPa以下、0.6MPa以上16MPa以下、0.7MPa以上15MPa以下、0.8MPa以上14MPa以下、0.9MPa以上13MPa以下、1.0MPa以上12MPa以下、1.1MPa以上11MPa以下、1.2MPa以上10MPa以下、1.3MPa以上9MPa以下、1.4MPa以上8MPa以下、1.5MPa以上7MPa以下、1.6MPa以上6.9MPa以下、1.7MPa以上6.8MPa以下、1.8MPa以上6.7MPa以下、1.9MPa以上6.6MPa以下、2.0MPa以上6.5MPa以下、2.1MPa以上6.4MPa以下、2.2MPa以上6.3MPa以下、2.3MPa以上6.2MPa以下、2.4MPa以上6.1MPa以下、2.5MPa以上6.0MPa以下、2.6MPa以上5.9MPa以下、2.7MPa以上5.8MPa以下、2.8MPa以上5.7MPa以下、2.9MPa以上5.6MPa以下、3.0MPa以上5.5MPa以下、3.1MPa以上5.4MPa以下、3.2MPa以上5.3MPa以下、3.3MPa以上5.2MPa以下、3.4MPa以上5.1MPa以下、3.5MPa以上5.0MPa以下、3.6MPa以上4.9MPa以下、3.7MPa以上4.8MPa以下、3.8MPa以上4.7MPa以下、3.9MPa以上4.6MPa以下、4.0MPa以上4.5MPa以下、4.1MPa以上4.4MPa以下、4.2MPa以上4.3MPa以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内の水分圧を有する環境に曝露してよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は更に高い相対湿度を有する環境に曝露してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、100%の相対湿度を有する環境に曝露してよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、100℃以上、例えば105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上、180℃以上、185℃以上、190℃以上、195℃以上、200℃以上、205℃以上、210℃以上、215℃以上、220℃以上、225℃以上、230℃以上、235℃以上、240℃以上、245℃以上、250℃以上、255℃以上、260℃以上、265℃以上、270℃以上、275℃以上、280℃以上、285℃以上、290℃以上、295℃以上、300℃以上、又は更に高い温度を有する環境に曝露してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、100℃以上400℃以下、例えば105℃以上390℃以下、110℃以上380℃以下、115℃以上370℃以下、120℃以上360℃以下、125℃以上350℃以下、130℃以上340℃以下、135℃以上330℃以下、140℃以上320℃以下、145℃以上310℃以下、150℃以上300℃以下、155℃以上295℃以下、160℃以上290℃以下、165℃以上285℃以下、170℃以上280℃以下、175℃以上275℃以下、180℃以上270℃以下、185℃以上265℃以下、190℃以上260℃以下、195℃以上255℃以下、200℃以上250℃以下、205℃以上245℃以下、210℃以上240℃以下、215℃以上235℃以下、220℃以上230℃以下、225℃、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内の温度を有する環境に曝露してよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、水素含有種の所望の程度の拡散及び所望の圧縮応力層を生成するために十分な期間にわたって、水蒸気含有環境に曝露してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、2時間以上、例えば4時間以上、6時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上、24時間以上、30時間以上、36時間以上、42時間以上、48時間以上、54時間以上、60時間以上、66時間以上、72時間以上、78時間以上、84時間以上、90時間以上、96時間以上、102時間以上、108時間以上、114時間以上、120時間以上、126時間以上、132時間以上、138時間以上、144時間以上、150時間以上、156時間以上、162時間以上、168時間以上、又は更に長時間にわたって、水蒸気含有環境に曝露してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を、2時間以上10日以下、例えば4時間以上9日以下、6時間以上8日以下、8時間以上168時間以下、10時間以上162時間以下、12時間以上156時間以下、14時間以上150時間以下、16時間以上144時間以下、18時間以上138時間以下、20時間以上132時間以下、22時間以上126時間以下、24時間以上120時間以下、30時間以上114時間以下、36時間以上108時間以下、42時間以上102時間以下、48時間以上96時間以下、54時間以上90時間以下、60時間以上84時間以下、66時間以上78時間以下、72時間、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内の期間にわたって、水蒸気含有環境に曝露してよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、上記ガラス系基板を複数の水蒸気含有環境に曝露してよい。実施形態では、上記ガラス系基板を第1の環境に曝露することによって、第1のガラス系物品であって、上記第1のガラス系物品の表面から第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層を備える、第1のガラス系物品を形成でき、続いて上記第1のガラス系物品を第2の環境に曝露することによって、第2のガラス系物品であって、上記第2のガラス系物品の表面から第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層を備える、第2のガラス系物品を形成できる。上記第1の環境は第1の水分圧及び第1の温度を有し、上記ガラス系基板は第1の期間にわたって、上記第1の環境に曝露される。上記第2の環境は第2の水分圧及び第2の温度を有し、上記第1のガラス系物品は第2の期間にわたって、上記第2の環境に曝露される。
【0111】
上記第1の水分圧及び上記第2の水分圧は、いずれの適切な分圧、例えば0.05MPa以上又は0.075MPa以上であってよい。上記第1及び第2の分圧は、昇圧下での方法で採用される水分圧に関して本明細書で開示されている値のうちのいずれであってよい。実施形態では、上記第1及び第2の環境は独立して、75%以上、例えば80%以上、90%以上、95%以上、又は100%の相対湿度を有してよい。いくつかの実施形態では、上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方は100%の相対湿度を有する。
【0112】
上記第1の圧縮応力層は第1の最大圧縮応力を有し、上記第2の圧縮応力層は第2の最大圧縮応力を有する。実施形態では、上記第1の最大圧縮応力は上記第2の最大圧縮応力未満である。上記第2の最大圧縮応力は、マルチステップ又は混合浴イオン交換技法によって形成されるタイプの圧縮応力「スパイク(spike)」に相当し得る。上記第1及び第2の最大圧縮応力は、上記ガラス系物品の圧縮応力に関して本明細書で開示される値のいずれを有してよい。実施形態では、上記第2の最大圧縮応力は50MPa以上であってよい。
【0113】
上記第1の圧縮深さは上記第2の圧縮深さ以下であってよい。いくつかの実施形態では、上記第1の圧縮深さは上記第2の圧縮深さ未満である。上記第1の圧縮深さ及び上記第2の圧縮深さは、圧縮深さに関して本明細書で開示される値のいずれを有してよい。実施形態では、上記第2の圧縮深さは5μm超である。
【0114】
上記第1の温度は上記第2の温度以上であってよい。実施形態では、上記第1の温度は上記第2の温度より高い。上記第1及び第2の温度は、昇圧下での方法に関連して開示されている温度のうちのいずれであってよい。
【0115】
上記第1の期間は上記第2の期間以下であってよい。実施形態では、上記第1の期間は上記第2の期間未満である。上記第1及び第2の期間は、昇圧下での方法に関連して開示されている期間のうちのいずれであってよい。
【0116】
実施形態では、水蒸気含有環境への複数の曝露のうちのいずれか又は全ては、昇圧下で実施してよい。例えば、上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方は、0.1MPa超の圧力を有してよい。上記第1及び第2の環境は、昇圧下での方法に関連して開示されているいずれの圧力を有してよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、複数の水蒸気含有環境に曝露する上述の技法は、3つ以上の曝露環境を含んでよい。実施形態では、上記第2のガラス系物品を第3の環境に曝露することによって、第3のガラス系物品を形成してよい。上記第3の環境は、第3の水分圧及び第3の温度を有し、上記第2のガラス系物品は第3の期間にわたって上記第3の環境に曝露される。上記第3のガラス系物品は、上記物品の表面から第3の圧縮深さまで延在する、第3の最大圧縮応力を有する第3の圧縮応力層を含む。上記第3の水分圧は、0.05MPa以上、例えば0.075MPa以上であってよい。上記第3の環境及び上記第3のガラス系物品の特性のうちのいずれの値は、昇圧下での方法に関連して、対応する特性について開示されている値から選択してよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、上記第1のガラス系物品は、上記第1の期間が終了した後、上記第2の環境に曝露される前に、周囲温度まで冷却してよく、又は上記第1の環境から取り出してよい。いくつかの実施形態では、上記第1のガラス系物品は、上記第1の期間の終了後に上記第1の環境内に留まってよく、上記第1のガラス系物品を周囲温度まで冷却せずに、又は水蒸気含有環境から取り出さずに、上記第1の環境の条件を上記第2の環境の条件へと変化させてよい。
【0119】
本明細書で開示されるガラス系物品の製造方法は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を含まなくてよい。実施形態では、上記ガラス系物品は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を含まない方法によって製造される。
【0120】
曝露条件を修正することによって、上記ガラス系基板内への所望の量の水素含有種拡散を生成するために必要な時間を短縮できる。例えば、温度及び/又は相対湿度を上昇させることによって、上記ガラス系基板内への所望の程度の水素含有種拡散及び層深さを達成するために必要な時間を短縮できる。
【0121】
例示的実施形態
本明細書に記載のガラス系物品の形成に特に適したガラス組成物を、ガラス系基板へと成形した。これらのガラス組成物を以下の表IIIで提供する。ガラス組成物の密度は、ASTM C693‐93(2013年)の浮力法を用いて決定された。温度範囲25℃~300℃にわたる線熱膨張係数は、10-7/℃を単位として表され、これはASTM E228‐11に準拠したプッシュロッド膨張計を用いて決定された。歪み点及びアニール点は、ASTM C598‐93(2013年)のビーム曲げ粘度法を用いて決定された。軟化点は、ASTM C1351M‐96(2012年)の平行板粘度法を用いて決定された。SOCは、ASTM規格C770‐16「ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」に記載された手順C(ガラスディスク法)に従って測定された。表IIIにおいてSCO及び屈折率(RI)が報告されていない箇所については、これらの特性のデフォルト値、即ち3.0nm/mm/MPaのSOC及び1.5のRIをこれらの組成物に対して利用した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
表IIIに示されている組成を有する試料を、水蒸気含有環境に曝露して、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の組成及び厚さ、並びに試料が曝露された環境(温度、圧力、及び曝露時間を含む)を、以下の表IVに示す。各処理環境は水蒸気で飽和していた。表面応力計(FSM)で測定された、得られた最大圧縮応力及び圧縮深さも、表IVで報告されている。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
200℃環境内で圧力1.6MPaにおいて6時間処理された、組成Vを有する試料に関する、深さの関数としての水素濃度を、
図4に示す。圧縮深さは13μmであり、最大圧縮応力は395MPaであった。リン濃度の関数としての試料の水素濃度が
図5に示されており、これは、ガラス物品の水素が豊富な領域においてリンが枯渇していたことを示している。
【0152】
225℃環境内で圧力2.6MPaにおいて6時間処理された、組成Vを有する試料に関する、深さの関数としての水素濃度を、
図6に示す。圧縮深さは20μmであり、最大圧縮応力は381MPaであった。リン濃度の関数としての試料の水素濃度が
図7に示されており、これは、ガラス物品の水素が豊富な領域においてリンが枯渇していたことを示している。
【0153】
250℃環境内で圧力4.1MPaにおいて6時間処理された、組成Vを有する試料に関する、深さの関数としての水素濃度を、
図8に示す。圧縮深さは27μmであり、最大圧縮応力は327MPaであった。リン濃度の関数としての試料の水素濃度が
図9に示されており、これは、ガラス物品の水素が豊富な領域においてリンが枯渇していたことを示している。
【0154】
200℃環境内で圧力0.1MPaにおいて処理された、組成Aを有する試料に関する、リン濃度の関数としての水素濃度を、
図10に示す。
図10に示されているデータは、ガラス物品の表面から4.5μmの深さまで延在する領域に対応する。
【0155】
組成Aを有する試料を、温度85℃、相対湿度85%の環境に、60日の期間にわたって曝露した。その後、水素濃度をガラス物品の表面から1μmの深さまで、
図11に示されているカリウム濃度の関数として、及び
図12に示されているリン濃度の関数として測定した。
【0156】
組成Aを有する試料を、様々な温度を有する環境に、大気圧において同一期間にわたって曝露し、得られた圧縮応力を測定した。測定された圧縮応力は
図13に温度の関数として示されており、これは、温度が上昇すると、圧縮応力値が低下したガラス物品が製造されることを示している。
【0157】
表IIIに示されている組成を有する試料を、水蒸気含有環境に複数のステップで曝露して、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の組成及び厚さ、並びに試料が曝露された環境(温度、圧力、及び曝露時間を含む)を、以下の表Vに示す。各処理環境は水蒸気で飽和していた。表面応力計(FSM)で測定された、得られた最大圧縮応力及び圧縮深さも、表Vで報告されている。ステップ1の後の圧縮応力及び圧縮深さが表Vで報告されていない場合、第1のステップの後に試料を炉から取り出さずに炉を所望の第2の環境の条件へと冷却するようにして、処理を連続的に実施した。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
組成GGG及び1.1mmの厚さを有する試料を、2ステップ水蒸気処理に曝露した。上記試料を、200℃の温度を有する第1の環境に、大気圧下で7日間曝露した。この第1のステップの後、ガラス物品は、156MPaの圧縮応力及び68μmの圧縮深さを有していた。次に上記ガラス物品を、150℃の温度を有する第2の環境に、0.5MPaの圧力において6時間曝露した。得られたガラス物品は、400MPaの圧縮応力、及び50μmとして測定された圧縮深さを有していた。上記ガラス物品の応力プロファイルを、RNF、FSM、及びSCALP技法からの測定値を組み合わせることによって決定し、
図14に示されている深さプロファイルの関数としての応力を生成した。RNF法を利用して応力プロファイルを測定する場合、SCALPによって提供される最大CT値をRNF法において利用する。特に、RNFによって測定される応力プロファイルは、SCALP測定によって提供される最大CT値に対して平衡化及び較正された力である。RNF法は、米国特許第8,854,623号明細書「(ガラス試料のプロファイル特徴を測定するためのシステム及び方法(Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample)」に記載されており、この文献はその全体が参照により本出願に援用される。特にRNF法は:ガラス物品を基準ブロックに隣接させて配置するステップ;1Hz~50Hzの速度において直交偏光間で切り替えられる、偏光切り替え光ビームを生成するステップ;偏光切り替え光ビームの出力の量を測定するステップ;及び偏光切り替え基準信号を生成するステップを含み、直交偏光それぞれにおいて測定された出力の量は、互いの50%以内である。上記方法は更に:上記偏光切り替え光ビームを、ガラス試料及び基準ブロックを通して、ガラス試料中の異なる複数の深さまで伝送するステップ;次に、伝送された上記偏光切り替え光ビームを、中継用光学系を用いて、信号光検出器へと中継するステップを含み、上記信号光検出器は、偏光切り替え検出器信号を生成する。上記方法はまた:上記検出器信号を基準信号で除算して、正規化検出器信号を形成するステップ;及びガラス試料のプロファイル特徴を、上記正規化検出器信号から決定するステップを含む。FSM、SCALP、及びRNF測定からの情報を組み合わせることによって生成された、
図14に示されているプロファイルは、62.7μmの圧縮深さを有し、これは、第2の処理ステップの後のDOCのFSM測定が正確でない可能性があることを示している。
【0174】
組成Aの試料を、200℃の水蒸気含有環境に、大気圧及び飽和蒸気条件下で168時間にわたって曝露した。得られたガラス物品は、137MPaの圧縮応力及び99μmの圧縮深さを有していた。次に上記ガラス物品を、0%相対湿度環境内に、85℃で30日にわたって保持し、圧縮応力及び圧縮深さを再測定した。圧縮応力及び圧縮深さは、乾燥環境でのエージング後に変化しなかった。これは、水蒸気処理によって付与された圧縮応力プロファイルが一時的なものではない、又は通常の条件下で「脱水(dehydration)」を受けないことを示している。
【0175】
例示を目的として典型的な実施形態を記載したが、以上の説明は、本開示又は添付の請求項の範囲に対する限定とみなしてはならない。従って本開示及び添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正形態、適合形態、及び代替形態が、当業者に想起され得る。
【0176】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0177】
実施形態1
ガラス系物品であって、
上記ガラス系物品は:
上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び
2mm以下の厚さ
を備え、
上記圧縮深さは5μm超であり、上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、上記ガラス系物品はLi2O及びNa2Oを略含まない、ガラス系物品。
【0178】
実施形態2
上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層を更に備え、上記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下する、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0179】
実施形態3
上記層深さは5μm超である、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0180】
実施形態4
上記層深さは10μm以上である、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0181】
実施形態5
上記圧縮深さは7μm以上である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0182】
実施形態6
上記圧縮深さは200μm以下である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0183】
実施形態7
上記圧縮応力は150MPa以上である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0184】
実施形態8
上記圧縮応力は500MPa以下である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0185】
実施形態9
上記ガラス系物品はCs2O及びRb2Oを略含まない、実施形態1~8のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0186】
実施形態10
上記ガラス系物品の中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
1モル%以上17モル%以下のAl2O3;
3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
0モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0187】
実施形態11
上記ガラス系物品の上記中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
4.5モル%以上23モル%以下のK2O
を含む、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0188】
実施形態12
上記ガラス系物品の上記中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
10モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0189】
実施形態13
上記ガラス系物品の上記中心は:
0モル%以上6モル%以下のB2O3;
0モル%以上2モル%以下のRb2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO2
を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0190】
実施形態14
上記厚さは1mm以下である、実施形態1~13のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0191】
実施形態15
消費者向け電子製品であって、
上記消費者向け電子製品は:
前面、背面、及び側面を備えるハウジング;
少なくとも一部が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面にあるか、又は上記前面に隣接する、電気部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板
を備え、
上記ハウジング及び上記カバー基板のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、実施形態1~14のいずれか1つに記載のガラス系物品を含む、消費者向け電子製品。
【0192】
実施形態16
ガラスであって、
上記ガラスは:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
4.5モル%以上23モル%以下のK2O
を含む、ガラス。
【0193】
実施形態17
上記ガラスはLi2O、Na2O、Cs2O、及びRb2Oを略含まない、実施形態16に記載のガラス。
【0194】
実施形態18
上記ガラスは:
0モル%以上6モル%以下のB2O3;
0モル%以上2モル%以下のRb2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO2
を含む、実施形態16又は17に記載のガラス。
【0195】
実施形態19
ガラスであって、
上記ガラスは:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
10モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む。
【0196】
実施形態20
上記ガラスはLi2O、Na2O、Cs2O、及びRb2Oを略含まない、実施形態19に記載のガラス。
【0197】
実施形態21
上記ガラスは:
0モル%以上6モル%以下のB2O3;
0モル%以上2モル%以下のRb2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO2
を含む、実施形態19又は20に記載のガラス。
【0198】
実施形態22
ガラス系物品であって、
上記ガラス系物品は:
上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する、圧縮応力層;及び
上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層
を備え、
上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有し、
上記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下し、上記層深さは5μm超である、ガラス系物品。
【0199】
実施形態23
上記圧縮深さは5μm超である、実施形態22に記載のガラス系物品。
【0200】
実施形態24
上記層深さは10μm以上である、実施形態22又は23に記載のガラス系物品。
【0201】
実施形態25
上記圧縮深さは7μm以上である、実施形態22~24のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0202】
実施形態26
上記圧縮深さは200μm以下である、実施形態22~25のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0203】
実施形態27
上記圧縮応力は150MPa以上である、実施形態22~26のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0204】
実施形態28
上記圧縮応力は500MPa以下である、実施形態22~27のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0205】
実施形態29
上記ガラス系物品の中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
1モル%以上17モル%以下のAl2O3;
3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
0モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態22~28のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0206】
実施形態30
上記ガラス系物品の上記中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
4.5モル%以上23モル%以下のK2O
を含む、実施形態29に記載のガラス系物品。
【0207】
実施形態31
上記ガラス系物品の上記中心は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
2.5モル%以上17モル%以下のAl2O3;
4モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
10モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態29に記載のガラス系物品。
【0208】
実施形態32
上記ガラス系物品の上記中心は:
0モル%以上6モル%以下のB2O3;
0モル%以上5モル%以下のLi2O;
0モル%以上19モル%以下のNa2O;
0モル%以上2モル%以下のRb2O;
0モル%以上6モル%以下のMgO;
0モル%以上5モル%以下のZnO;及び
0モル%以上0.5モル%以下のSnO2
を含む、実施形態22~31のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0209】
実施形態33
消費者向け電子製品であって、
上記消費者向け電子製品は:
前面、背面、及び側面を備えるハウジング;
少なくとも一部が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面にあるか、又は上記前面に隣接する、電気部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板
を備え、
上記ハウジング及び上記カバー基板のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分は、実施形態22~32のいずれか1つに記載のガラス系物品を含む、消費者向け電子製品。
【0210】
実施形態34
方法であって、
上記方法は、
ガラス系基板を、0.1MPa超の圧力及び0.05MPa以上の水分圧を有する環境に曝露することによって、ガラス系物品を形成するステップであって、上記ガラス系物品は、上記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有する、ステップ
を含み、
上記圧縮深さは5μm超であり、
上記圧縮応力層は10MPa以上の圧縮応力を有する、方法。
【0211】
実施形態35
相対湿度は100%である、実施形態34に記載の方法。
【0212】
実施形態36
上記圧力は1MPa以上である、実施形態34又は35に記載の方法。
【0213】
実施形態37
上記曝露するステップは100℃以上の温度で実施される、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態38
上記ガラス系物品は、上記ガラス系物品の上記表面から層深さまで延在する水素含有層を備え、上記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から上記層深さに向かって低下する、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施形態39
上記層深さは5μm超である、実施形態38に記載の方法。
【0216】
実施形態40
上記ガラス系基板はLi2O及びNa2Oを略含まない、実施形態34~39のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施形態41
上記ガラス系基板は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
1モル%以上17モル%以下のAl2O3;
3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
0モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態34~40のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
実施形態42
上記ガラス系基板は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、実施形態34~41のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施形態43
上記ガラス系基板は2mm以下の厚さを有する、実施形態34~42のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態44
方法であって、
上記方法は:
ガラス系基板を、第1の水分圧及び第1の温度を有する第1の環境に、第1の期間にわたって曝露することにより、第1のガラス系物品を形成するステップであって、上記第1のガラス系物品は、上記第1のガラス系物品の表面から第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層を有する、ステップ;並びに
上記第1のガラス系物品を、第2の水分圧及び第2の温度を有する第2の環境に、第2の期間にわたって曝露することにより、第2のガラス系物品を形成するステップであって、上記第2のガラス系物品は、上記第2のガラス系物品の表面から第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層を有する、ステップ
を含み、
上記第1の水分圧及び上記第2の水分圧は、0.05MPa以上であり;
上記第1の圧縮応力層は第1の最大圧縮応力を有し、上記第2の圧縮応力層は第2の最大圧縮応力を有し、上記第1の最大圧縮応力は上記第2の最大圧縮応力未満である、方法。
【0221】
実施形態45
上記第2の圧縮深さは5μm超である、実施形態44に記載の方法。
【0222】
実施形態46
上記第2の最大圧縮応力は50MPa以上である、実施形態44又は45に記載の方法。
【0223】
実施形態47
上記第1の温度は上記第2の温度以上である、実施形態44~46のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
実施形態48
上記第1の期間は上記第2の期間未満である、実施形態44~47のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
実施形態49
上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方は、0.1MPa超の圧力を有する、実施形態44~48のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
実施形態50
上記第1の環境及び上記第2の環境のうちの少なくとも一方は、100%の相対湿度を有する、実施形態44~49のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
実施形態51
上記ガラス系基板、上記第1のガラス系物品、及び上記第2のガラス系物品は、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理に供されない、実施形態44~50のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
実施形態52
上記ガラス系基板は:
47モル%以上70モル%以下のSiO2;
1モル%以上17モル%以下のAl2O3;
3モル%以上15モル%以下のP2O5;及び
0モル%超かつ23モル%以下のK2O
を含む、実施形態44~51のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態53
上記ガラス系基板はLi2O及びNa2Oを略含まない、実施形態44~52のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
実施形態54
上記第2のガラス系物品を、第3の水分圧及び第3の温度を有する第3の環境に、第3の期間にわたって曝露することにより、第3のガラス系物品を形成するステップであって、上記第3のガラス系物品は、上記第3のガラス系物品の表面から第3の圧縮深さまで延在する第3の圧縮応力層を有する、ステップを更に含み、上記第3の水分圧は0.05MPa以上である、実施形態44~53のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0231】
100 ガラス系物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮応力層
122 第2の圧縮応力層
130 引張応力領域
200 消費者向け電子デバイス
202 ハウジング
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー基板
【国際調査報告】