(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】汚染された廃油を精製する方法および装置
(51)【国際特許分類】
C10G 7/00 20060101AFI20220111BHJP
B01D 3/06 20060101ALI20220111BHJP
B01D 1/00 20060101ALI20220111BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220111BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C10G7/00
B01D3/06 A
B01D1/00 Z
B01D3/14 A
B01D45/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527122
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2019081830
(87)【国際公開番号】W WO2020104472
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102018129001.2
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521211284
【氏名又は名称】ビーオファブリーク・ホイエルスヴェルダ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リヒター・ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4D031
4D076
4H129
【Fターム(参考)】
4D031AB02
4D031BA01
4D031BA07
4D031BB04
4D031EA01
4D076AA13
4D076AA22
4D076AA23
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4D076BB05
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4D076DA08
4D076DA10
4D076DA21
4D076FA11
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4D076FA33
4D076JA03
4D076JA05
4H129AA02
4H129CA17
4H129DA02
4H129EA01
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、出発物質を気相に加熱し、このようにして生成された蒸気を精製し、精製された油を精製塔の出口から凝縮物として取り出す、汚染された廃油を精製するための方法および装置に関するもので、非常に小さなプラントでも効率的に運転することができ、コンパクトなプラント構成、特に容器構造による移動使用を可能にする方法および装置を特定するという課題に基づいている。本発明は、メンテナンスの手間を軽減するという課題にも基づいている。
本発明による課題は、出発原料を、溶融温度が蒸発温度より高く廃油の発火温度未満の溶融浴に少なくとも間接的に接触させることで廃油を蒸発させ、その蒸気を精留塔で精留することで解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発物質を気相まで加熱し、形成された蒸気を精留し、精製された油を精留塔のオフテイクから凝縮物として除去する、汚染された廃油を精製する方法であって、
廃油を出発原料とし、出発原料をその溶融温度が蒸発温度より高く廃油の着火温度未満の溶融浴(19)に少なくとも間接的に接触させて蒸発させ、その蒸気を精留塔(6)で精留することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
原料を溶融浴(19)に直接供給することによってフラッシュ蒸発を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
出発材料が、直接接続せずに溶融浴(19)を通過させ、熱伝導性の接続を介して、溶融浴(19)に間接的に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶融浴(19)として液体金属が使用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
金属として錫または鉛が使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
凝縮物が新たな精留に供給されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
主反応器(5)とそれに接続された精留塔(6)を有する、汚染された廃油を精製する装置であって、主反応器(5)が、反応器室(34)が溶融浴材料(19)で満たされている溶融浴蒸発器として設計されておち、その融解温度が廃油の蒸発温度より高くで点火温度未満であり、反応器室(34)には加熱装置(20)が設けられており、反応器(5)には廃油の入口(17)が配置されていることを特徴とする前記装置。
【請求項8】
反応器(5)への入口(17)が溶融浴(19)に直接形成されていることで、廃油と溶融浴(19)との間の直接的な熱伝導接続が反応器室で実現されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項9】
溶融浴(19)の上方に、蒸気の流れ方向(24)に互いの背後に位置するバッフルプレート(25)が導入され、これらのバッフルプレート(25)の各々が横方向の開口部(26)を有し、これらの開口部は、蒸気の流れ方向に互いに重なって位置することなく、互いに覆い合うようにオフセットされていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
バッフルプレートが主反応器(5)の反応器室に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
廃油と溶融浴(19)との間に、廃油が溶融浴(19)から分離される仕切りを設けることによって、廃油と溶融浴(19)との間の間接的な熱伝導の接続が反応器室(34)に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
熱交換器(35)が主反応器(5)の反応器室(34)に導入され、前記熱交換器(35)は入口と出口を有し、入口は廃油のための入口を形成し、その出口は精留塔(6)の入口に開口することを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
精留塔(6)に面した側に入口が配置され、精留塔から離れた主反応器(5)の側に出口が配置されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
熱交換器(35)が、一方の側(38)が入口を形成し、他方の側(39)が出口を形成する管として設計されていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
管が螺旋状に巻かれていることを特徴とする、請求項13または14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃油(使用済み油)、汚染されたディーゼル油、燃料油、船舶油などの液体油性残渣(本明細書では総称して汚染された廃油と呼ぶ)を処理し、工程の原料として使用することに関するものである。廃油は、分子構造を変えずに純蒸留で精製することができる。しかし、本発明は、長い分子鎖が短い分子鎖に分解される、いわゆるクラッキングが起こる温度範囲でも使用することができる。
【0002】
本発明は、汚染された廃油を精製する工程に関するもので、出発物質を気相が形成されるまで加熱し、得られた蒸気を精留し、精製された油を精留塔の排出から凝縮物として取り出す。
【0003】
また、本発明は、主反応器とそれに接続された精留塔を備えた、汚染された廃油を精製する装置に関するものである。
【背景技術】
【0004】
DE19820635A1から、廃油を処理する工程が知られている。この工程では、廃油を粗い洗浄とそれに続く乾燥にかけた後、400~500℃で熱分解し、分解された製品を蒸留にかける。事前に洗浄した廃油にアルカリ化合物を添加して、塩素の含有量を減少させる。
【0005】
クラッキングとそれに続く蒸留の工程は、重油または原油産業で知られており、例えば、www.seilnacht.com/versuche/erdoeld.gif、
図1に再び示されている。この工程では、原油を管状の炉で360℃以上に加熱し、成分をほぼ蒸発させる。これらは、多数のバブルキャップトレイで構成された蒸留塔に入る。各フラクションの蒸留液はバブルキャップトレイに集まる。バブルキャップトレイの温度は上部に向かって下がっていく。そして、上昇した蒸気は、温度が成分の沸点以下の各バブルキャップトレイごとに凝縮される。このようにして、個々の成分の分離を行うことができる。
【0006】
管状炉においては、出発物質は熱交換器を介して高温のガスと接触する。出発原料を十分に加熱するためには、目標温度まで加熱できるような温度差を選択する必要がある。そのため、熱交換器の内管の内側に燃焼残渣が付着し、目詰まりしやすくなる。外側も加熱ガスによる大きなストレスを受けている。その結果、メンテナンスの手間が少なからず生じてしまうことになる。大規模な定置型プラントでは、複数の反応器を使用することができるため、他の反応器を修理しなければならない場合でも、1つまたは複数の反応器を常に運転できる状態にしておくことができるので、この点は問題にならない。小型で移動可能なプラントでは、このような冗長性を選択することはできず、少なくとも不利になる。
【0007】
DE102012008458A1には、出発材料をガス化するための反応器が知られており、この反応器には、外部の加熱要素によって液相にすることができる充填材と金属が充填されている。この液体金属浴の底部に出発物質を導入する。顆粒状の固形出発物質を使用することを意図している。この出発物質は、金属浴の温度によって脱重合される。この工程では、出発材料が液相に移行し、充填材の浸透が遅れた結果、気相に移行し、コンデンサーで凝縮されて出力材料が形成され、コレクターに回収される。
【0008】
EP0592057B1には、固体原料を金属浴中で熱分解する工程が記載されている。
【0009】
WO2014/106650A2には、炭化水素系原料を金属浴でも油化する工程が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE19820635A1
【特許文献2】DE102012008458A1
【特許文献3】EP0592057B1
【特許文献4】WO2014/106650A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
出発物質としての廃油を金属浴で処理することは、前述の引用文献からは知られていない。
【0012】
本発明は、非常に小さなプラントでも効率的な運用が可能であり、そのためコンパクトなプラント構成、ひいては特に移動式の使用が容器構造によって可能となる、汚染された廃油を洗浄するための工程および装置を提供することを課題とする。本発明は、メンテナンスの手間を軽減することもさらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による方法においては、汚染された油を含む残留物が自動的に洗浄され、凝縮され、その結果、数分以内に使用可能な燃料に戻される。その際、本方法においては、原油産業の既知の工程と、本発明に従って構成された炭化水素含有原料の脱重合工程、およびいわゆる冷熱分解(クラッキング)技術を組み合わせることができる。
【0014】
ポリマーは通常、原油から製造され、簡単に言えば、炭化水素が結合(重合)して、それまで液体だったものが固体になったものである。脱重合はこの工程を逆転させる。鎖は温度の影響を受けて再び溶解し、鎖の長さが短くなった製品が形成される。例えば、油(中程度の長さ)、ワックス(やや長い鎖で、加熱すると液体になる)、ガス(非常に短い鎖)などが挙げられる。これらは、本発明による工程の出発物質としても使用できる。
【0015】
本発明による課題は、廃油を出発原料とし、出発原料を、溶融温度(融点)が廃油の蒸発温度より高く点火(着火)温度未満である溶融浴に少なくとも間接的に接触させて蒸発を行い、その蒸気を精留塔で精留することにより達成される。
【0016】
その際、廃油を蒸留する。この工程では、主反応器の特別なエネルギー入力システムにより、廃油を非常に制御しやすくかつ急速に加熱することができる。
【0017】
本発明による方法の一実施形態では、出発物質を溶融浴に直接供給することによってフラッシュエバポレーション(蒸発)を行うことを提供する。このフラッシュ蒸発は、数ミリ秒のうちに生じる。フラッシュ蒸発やフラッシュ熱分解は、不純物を分離し、油分を独自の方法で効率的に気相に移行させることができる。
【0018】
本発明による工程の別の実施形態では、出発材料を、溶融浴に直接接続することなく、熱伝導性の接続を介して溶融浴に通過させることにより、溶融浴に間接的に供給されることが提供される。この熱伝導による蒸発は、廃油への均一なエネルギー伝達を可能にし、熱交換器の表面のスラグ化を回避し、少なくともそれによってメンテナンスの必要性を大幅に削減する。
【0019】
本発明による工程の実施形態においては、共通して溶融浴を使用している。この点では、溶融浴として液体金属を使用することも可能である。金属としては、錫や鉛を使用することができる。
【0020】
すべての実施形態において、これまで重油産業でのみ行われていた特異的な精留工程で、重ボイラーから軽ボイラーまで、気相をあらかじめ定義された制御されたフラクションに分離する。これにより異なる品質の蒸留液が得られる。エンジンに適した燃料は排出され、不純なフラクションは、使用可能な成分と廃棄物に完全に分離されるまで工程を繰り返す。使用する用途に応じて、さまざまな油分フラクションをさらに精製され、最終製品の形で流通業者や最終顧客に提供する。排水の中には、原料の5~10%がタール状の廃棄物として溜まる。これは、道路建設におけるアスファルトの生産や、代替燃料として使用することができる。さらなる廃棄物は発生しない。小型プラント分野での精留工程の使用を、溶融浴の蒸発と組み合わせることが本発明の主眼である。
【0021】
さらに、オンボードの発電機によって、自己形成燃料や残留ガスから装置にエネルギーを供給することも可能である。このような装置は、エネルギーを自給自足して動作する。このようにして、現在では約75%の総合効率が達成されている。各ユニットは1日に最大1000リットルの原料を処理し、モジュール方式によって無制限の原料量に拡張することができる。
【0022】
装置に関して、本発明による課題は、主反応器が溶融浴蒸発器として構成され、反応器室において廃油の蒸発温度より高く点火温度未満を有する溶融浴材料が満たされ、反応器室には加熱装置が設けられ、廃油の入り口が反応器に配置されていることにより達成される。
【0023】
本発明による装置の一実施形態では、反応器への入口が溶融浴内に直接形成されているという点で、廃油と溶融浴との間の直接的な熱伝導接続が反応器室内で実現されることができる。
【0024】
熱媒体としての溶融浴、好ましくは金属浴が充填され、垂直に立っているか、または斜めに配置された反応管の下部に蒸発(気化)させる流体または脱重合物が供給される。
【0025】
熱伝達のための溶融浴で発生する高い対流エネルギーは、蓄積されたエネルギーを数ミリ秒で蒸発させる流体に供給することができる。
【0026】
しかしながら、熱伝達媒体として溶融浴を使用すると、制御不能な爆発が発生する可能性があり、その結果、熱伝達媒体が失われることがある。
【0027】
この工程では、非常に大きなガスの泡が発生し、それが表面で膨張/破裂する。その結果、金属浴の一部が流され、反応器の底に溜まったり、導管などが詰まることになる。この影響を考慮すると、結果として、規定の動作時間後に工程を中断しなければならず、多額の費用をかけて金属浴を元の量まで補充する必要がある。
【0028】
本発明による課題解決は、運転時間の中断を回避することを目的としている。この目的のために、連続運転で発生する金属浴の損失を、溶融浴反応器で相殺する。
【0029】
そのためには、対流反応時に発生する大きなガスバブルを小さくして、ガスバブル減圧時の金属浴の巻き込みを最小限に抑えることができる。この場合、反応ゾーンにスチールボール(鋼球)などの充填材を入れことができ、ガスバブルが反応ゾーンを通過する際に分割され、小さな泡となって金属浴の表面に到達する。これらの充填材を使用することで、2つの大きな利点が生ずる。第一に、金属浴の巻き込みが最小限に抑えられ、第二に、ガスをより良く分散させることができるので、工程における蒸発率が改善される。
【0030】
本装置の別の一つの実施形態においては、バッフルプレート(阻止板)を用いて金属浴のランバック(戻り)を確保し、それによって金属浴の飛沫が直接金属浴に戻される。この目的のために、バッフルプレートが溶融金属浴の上方に、蒸気の流れの方向に1つずつ後ろに導入され、これらのバッフルプレートのそれぞれは横方向の開口部を有し、これらの開口部は、蒸気の流れの方向に1つずつ上にあるのではなく、互いにカバーするようにオフセットされている。
【0031】
バッフルプレートは、主反応器の反応器室に配置される。
【0032】
また、金属浴のランバックが用意されていてもよい。金属浴ランバックは、この用途のために特別に作られた部品であり、金属浴表面の上にある反応器室で微量の液体金属を集め、反応ゾーンに戻す。スチールボールを使用しているにもかかわらず、非常に微量で蓄積され、それが金属浴のランバックに引っかかり、反応器に戻される。この部品は、ガスが流れても液体金属が捕らえられ、実際の金属浴に戻るようになっている。
【0033】
しかし、溶融浴の損失を避けるために、別の解決法を選択することもできる。これによれば、廃油と溶融浴の間に仕切りが設けられ、廃油と溶融浴が分離されることで、廃油と溶融浴の間の間接的な熱伝導接続が反応器室内で生じることになる。
【0034】
熱伝導接続によって、廃油への熱エネルギーの入力が熱伝導によって実現され、温度差を補償する溶融浴の優れた特性を利用して、例えば既知の管状炉のように熱伝導接続でスラグや同様の現象が発生することなく、蒸発が行われる。
【0035】
具体的には、主反応器の反応器室に熱交換器を導入してもよい。熱交換器は、入口と出口を有し、入口は廃油のための入口を形成し、出口は精留塔の入口に開口している。
【0036】
このような熱交換器によって、廃油への高効率で均一なエネルギー投入が実現され、溶融浴内のガスバブルの破裂による溶融浴ロスの可能性もない。
【0037】
熱交換器は、一方の側が入口を形成し、他方の側が出口を形成する管として形成されてもよい。この管は螺旋状に巻いてもよい。
【0038】
熱交換器の周りには、溶融浴、特に金属浴がある。新たに注入された廃油を加熱する必要があるため、溶融浴は均一なエネルギー投入を可能にする。溶融浴の熱容量が大きいため、エネルギー投入時に溶融浴の温度が大きく低下したり、スラグが発生したりすることなく、廃油を急速に加熱することができる。
以下、第1の実施形態(
図2~
図13)と第2の実施形態(
図14~
図17)を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】添付図面にておいて、
図1は、従来の技術を示す。
【
図2】
図2は、第1の実施形態例による汚染された廃油を洗浄する装置の概略全体図を示す。
【
図3】
図3は、連続フロー方式の主反応器の構成図を示す。
【
図4】
図4は、逆流原理の主反応器の構成図を示す。
【
図5】
図5は、充填エレメントを備えた連続フロー方式の主反応器を示す。
【
図6】
図6は、脱重合材料のバブル分布を有する
図4による主反応器を示す。
【
図7】
図7は、逆流原理の主反応器で、脱重合物質の気泡分布を示す。
【
図8】
図8は、充填物と脱重合材料のバブル分布を備えた逆流原理の主反応器を示す。
【
図9】
図9は、金属浴のランバックを平面図で表した模式図を示す。
【
図11】
図11は、主反応器における金属浴のランバックの配置図を示す。
【
図12】
図12は、金属浴の充填部と未蒸発部を有する
図10による金属浴ランバックの配置図を示す。
【
図14】
図14は、第2の実施形態おける熱伝導-蒸発の原理による主反応器を示す。
【
図15】
図15は、第2の実施形態による汚染された廃油を精製する装置の模式的な全体図を示す。
【
図16】
図16は、第2の実施形態例に係る本発明による装置の正面図を示す。
【
図19】
図19は、第2の実施形態例の本発明による配置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に示すように、従来の技術では、管状炉T1で原油を360℃より高く加熱し、成分を大部分蒸発(気化)させていた。これらは、多数のバブルキャップトレイT3で構成された蒸留塔T2に入る。各フラクションの蒸留液T4~T9はバブルキャップトレイT3に集まる。このように、廃油が搬送される管T10は、燃焼室T11で生成される加熱ガスと直接接触する。管状炉T1では、加熱ガスが温度的に均一にならないため、管T10の部分的な過熱が発生する。また、加熱ガスの熱容量が小さいため、高い温度差で作業を行う必要があり、すなわち加熱ガスが強く加熱され、ひいては管T10の過熱につながる可能性がある。その結果、管T10内のスラグ化が避けられず、定期的なメンテナンスで除去しなければならない。しかし、このようなメンテナンスでは、そのような装置の移動使用が妨げることになる。
【0041】
本発明の第1の実施形態によれば、
図2に示すように、汚染された廃油は、図示の本発明による装置による精製を目的として、外部投入タンク1に供給される。この投入タンク1から、この廃油は、リザーバーポンプ2によって内部のリザーバー3に送られ、そこから主反応器5に送られる。添加される廃油の量は、精留塔6内の温度を制御変数として制御される。
【0042】
添加された新しい廃油が主反応器5に入る前に、廃油は後述する蒸留液およびボトムランバック流と混合して脱重合材料4を形成し、主反応器5に供給され、いわゆるフラッシュ蒸発(エバポレーション)によってそこで急激に蒸発気化される。
【0043】
なお、
図2に示した装置内の基本的な流れは、第2の実施形態の例にも当てはまることを、ここで既に示す。その違いは、基本的に主反応器にある。第2実施形態例の主反応器は、フラッシュ蒸発ではなく熱伝導による蒸発を行う。しかし、いずれの実施形態においても、蒸気が生成され、精留塔6に供給される。この精留塔では、蒸気は異なる段階、すなわち異なる温度で凝縮する。これらの段階では、取出部7~10が用意されている。第1サイドの取出部7と第2サイドの取出部8での凝縮物が、熱交換器11を介して冷却された後に、リザーバー3に戻される一方で、第3サイドの取出部9とヘッド取出部10から製品、すなわち精製された油が取り出され、同じく熱交換器11を介して冷却され、製品タンク12に供給される。ここから、製品ポンプ13によって出力タンク14に移される。
【0044】
取出部7~10を介して排出されなかった凝縮物や、蒸発せずに主反応器5の金属浴に浮遊している脱重合材料4の成分は、循環ポンプ32により循環ライン31を介して主反応器5に戻され、脱重合材料4として新たに蒸発される。
【0045】
蒸留できなくなった凝縮物は、精留塔の下部にボトムとして溜まる。そこからボトムズ(底部)ランバック16を経由して、廃棄容器15に供給される。そこから、必要に応じて、廃棄容器15の内容物を外部の廃棄用タンクに移すことができる。
【0046】
図3に示すように、主反応器5は連続フローの原理で構成することができる。この場合、脱重合材料4の入口17は下端に位置し、出口18は上端に位置している。主反応器5内には、脱重合材料4の蒸発(気化)温度より高い融点を有する金属からなる金属浴19が配置されている。金属は加熱スリーブ20によって液相に保たれている。脱重合材料4は、金属浴19に入ると同時に、実際に液相での蒸発温度より高い温度でなければならない金属浴19の温度によって直ちに蒸発するので、これはフラッシュ蒸発と呼ばれる。
【0047】
主反応器の構成については、
図3と
図4に2つの実施形態を示している。
図3は、連続フローの原理を表しており、脱重合材料4は、主反応器5の下側に直接配置された入口17を介して、金属浴19の下側に直接供給され、そこで直ちに蒸発する。
【0048】
図4は逆流(カウンターカレント)の原理を表したもので、入口17が逆流管21で構成されている。脱重合材料4は、この逆流管21を介して金属浴19に通される。この過程で、脱重合材料4はすでに蒸発温度近くまで加熱されているので、入口17から出るときにはフラッシュ蒸発がさらに速く進行する。
【0049】
図7に示すように、金属浴19の温度によって、脱重合材料4の一部が蒸発しない。蒸発してない部分22は通常は長鎖の化合物であり、そのほとんどが投入タンク内の使用済み油の汚染物質に由来している。
図7に示すように、この部分22は金属浴19上に浮かび、主反応器5と精留塔の間の接続端でボトムズ容器15に流れ込む。これにより、ボトムズの残りの部分と一緒に新たな精留に供給することができる。
【0050】
図7に示すように、得られた蒸気の泡23は、金属浴19の表面で膨張し、破裂する。蒸気の泡23の膨張時に金属浴19の一部が巻き込まれ、それがボトムズ容器15に入ったり配管を詰まらせたりして、金属浴19の充填レベルが低下するのを防ぐために、金属浴19の上方に金属浴ランバック24が配置されている。この金属浴ランバック24は、例えば、主反応器5の反応器室や精留塔6に配置してもよい。この金属浴ランバックは、
図8~
図12に示すように、蒸気の流れ方向25に横たわるバッフルプレート26を有している。これらのバッフルプレート26はそれぞれ横方向の開口部27を有しており、これらの開口部は、蒸気の流れ方向において互いに重なって位置しないように、互いに覆い合うように(互いにカバーするように)オフセットされている。バッフルプレート26は、タイロッド29にねじ込まれたナット28によって、金属浴ランバック24に固定することができる。
【0051】
金属浴19から金属の液滴が放出され、蒸気の流れに乗って運ばれると、この液滴がこれらのバッフルプレート25の1つにぶつかり、そこから金属浴19に逆流する。
【0052】
金属浴19の金属がバッフルプレート26上で凝縮しないように、後者は金属浴19の溶融温度より高い温度を有するべきである。これは、主反応器5の壁を介した熱伝導と、バッフルプレートが精留塔6に配置されている場合にはその壁を介した熱伝導によって確保することができる。さらに図示しない方法で、バッフルプレート25を加熱することも可能である。
【0053】
図12では、金属浴ランバックを使用している、
図7のような蒸発していない部分をフローの原理を示す。ここでは、蒸発してない部分22も金属浴19上に浮いているが、その過程で金属浴ランバック24をその上端まで満たしている。ここで示されるように、バッフルプレート26は蒸発してない部分22にある。したがって、金属浴19の金属の飛沫は蒸発してない部分22内のバッフルプレート26に到達し、そこから蒸発してない部分22を通って金属浴19に戻るように流れる。
【0054】
図5に示すように、材料が金属浴から排出されるのを防止するためのさらなる手段として、主反応器5に充填材27を導入することができる。これらの充填材は、金属浴19よりも高い融点を持つ金属や、セラミックなどの不活性材料でできているとよい。
【0055】
このような充填材30による充填は、
図5および
図6に示す
図3による連続フローの原理でも、
図7および
図8に示す
図4による逆流の原理でも可能である。また、
図11~13に示すように、充填材30と金属浴ランバック24を組み合わせることも可能である。
【0056】
図6および
図8に示すように、その効果は、入口を出る蒸気の泡23が未だかなり大きく、充填材30によって小さな泡に分割されることである。このようにサイズが小さくなった蒸気の泡23は、金属浴19の表面で破裂した場合、金属の飛沫を発生させるエネルギーがより少なくなる。
【0057】
上述の実施形態例では、廃油の蒸発を目的とした金属浴19の金属として錫を使用しているが、その融点である300℃が廃油の蒸発温度と最適に一致することからである。しかし、他の金属を使用することも可能である。また、他の溶融材料を使用することも可能である。重要なことは、使用する溶融材料の溶融温度が、脱重合材料の蒸発温度と同等かそれより高いであることである。しかし、脱重合材料が部分的にでも燃焼される高い温度を選択してはならない。
【0058】
これは、金属浴溶液や、より一般的には溶融浴溶液の利点でもある。脱重合される材料が直接加熱される場合、すなわち溶融浴なしで、例えば外部から主反応器の壁を通して熱エネルギーが入力される場合、温度勾配は必然的に壁で脱重合される材料の過熱につながり、したがって燃焼残渣が堆積して、すぐに主反応器のコストのかかる洗浄が必要になるという問題がある。
【0059】
これにより、溶融浴溶液のさらなる使用分野も明らかとなる。例えば、汚染された溶剤や洗剤、燃料などの処理が可能になる。そして、特に真空減圧下で動作する装置の実施形態が選択されることになる。しかし、造粒されたポリマーを、好ましくは金属製の溶融浴に供給することも可能である。加熱により発生した蒸気は、価値のある原料に精製される。しかし、上記の金属以外にも、飽和塩水、溶融ポリマー、さらには液化ガスなど、他の熱媒体も溶融浴材料として幅広い用途に使用することができる。
【0060】
第2の実施形態例は、
図14~
図19に示すように、溶融浴ロスの防止と燃焼残渣の回避を目的としたものである。
【0061】
図14では、反応容器34を構成する主反応器5が示されている。加熱スリーブ20は、反応容器の外側に配置されている。この点については、加熱装置の構成を変えることも可能で、例えば代替的に誘導加熱装置とすることもできる。
【0062】
反応容器34の内部には金属浴19があり、その中には熱交換器または加熱コイル35が完全に浸されている。このようにして、金属浴19は液化する際に加熱コイルの周りを流れる。
【0063】
反応容器34の上部にはフランジ36が設けられており、これにより反応容器34を主反応器5に接続することができる。このフランジ36には、非凝縮性の液体を底部領域に直接的に排出することができる流出孔37が設けられている。
【0064】
加熱コイルは、第1の端部38と第2の端部39を有する螺旋状に曲げられた管からなり、その第1の端部38に冷えた廃油が導入され、そのフランジ36に面した端部で加熱コイル35に導かれる。蒸気相となるように加熱された廃油は、第2の端部39に接続された精留塔6に入り、ここで既に説明した蒸留が行われる。
【0065】
図15は、蒸気相となるように加熱された廃油が第2の端部39を介して精留塔6に供給され、そこで蒸発する原理を示したものである。精留塔6でまだ適切に凝縮していない廃油の留分は、脱重合材4としての新しい廃油とともに主反応器にその第1端部38から加熱コイル35に供給される。
【0066】
図16~
図19では、本発明による装置が、フレーム40内に運搬可能な移動装置として配置されていることが示されている。その中には、リザーバー3、製品タンク12、廃棄容器15が配置されている。
【0067】
生産能力を高めるために、4つの主反応器5.1~5.4が設けられており、それぞれの第2の端部は中央に配置されている精留塔6に開口しており、
図14の構造を有する。
【0068】
プラントを適切に運用するための制御装置41が用意されている。
【0069】
参照記号の一覧
1 投入タンク
2 リザーバーポンプ
3 リザーバー
4 脱重合材料
5 主反応器
5.1~5.4 主反応器
6 精留塔
7 第1サイドの取出部
8 第2サイドの取出部
9 第3サイドの取出部
10 ヘッド取出部
11 熱交換器
12 製品タンク
13 製品ポンプ
14 出力タンク
15 廃棄容器
16 ボトムズランバック
17 入口
18 出口
19 金属浴
20 加熱スリーブ
21 逆流管
22 蒸発していない部分
23 蒸気の泡
24 金属浴ランバック
25 蒸気の流れ方向
26 バッフルプレート
27 横方向の開口
28 ナット
29 タイロッド
30 充填剤
31 循環ライン
32 循環ポンプ
33 廃棄用タンク
34 反応容器
35 熱交換器、加熱コイル
36 フランジ
37 流出孔
38 第1の端部
39 第2の端部
40 フレーム
41 制御装置
【国際調査報告】