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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】信号処理用ノイズ低減フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/04 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H03H17/04 613C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527190
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2019061467
(87)【国際公開番号】W WO2020106543
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】62/769,174
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/275,978
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512285166
【氏名又は名称】ペルキネルマー ヘルス サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラコフ, ブイ. セルゲイ
(57)【要約】
データ信号のノイズ低減フィルタが、データ信号のサンプリング及びソートから生成される強度値及び微分強度値を含む2つの直交座標を用いて実装される。強度値及び微分強度値を用いて生成されたデータセット分布の異なる部分を増幅または低減させるために、重み付け関数が用いられる。重み付け関数には、ノイズ低減フィルタの機能をさらに強化するためのスカラー定数を含めることもできる。ノイズ低減フィルタは、ノイジーデータ信号のノイズ成分を減らすため、または有用な信号成分を増やすために使用され、それによって信号対ノイズ比を増加させ、さらにはスペクトルの分解能を向上させることができる。ノイズ低減フィルタは、ノイジーデータ信号の強度及び周波数スペクトルが重なっている特殊な場合にも使用することができる。本ノイズ低減フィルタは、分光及び画像処理など、様々な用途に使用してもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機を使用してデータ信号を受信することであって、前記データ信号が、ノイズ成分及び信号成分を含む、前記受信することと、
前記受信したデータ信号に基づいて、第1のデータセットを生成することであって、前記第1のデータセットが、前記データ信号の強度値及び微分強度値の順序対を含む、前記生成することと、
前記強度値及び前記微分強度値に基づいて、前記第1のデータセットをソートすることと、
前記ソートした第1のデータセットに重み付き乗算関数を適用することと、
前記重み付き第1のデータセットの前記強度値及び微分強度値の順序対を、前記第1のデータセットにおける順序対の元の順序に対応するように並べ替えることと、
前記強度値を、前記並べ替えたデータセットの対応する微分強度値に加えて、第2のデータセットを生成することと、
前記第1のデータセットの第1の強度値を、前記第2のデータセットの第1の位置に挿入することによって、出力データセットを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ノイズ成分と前記信号成分とが、重なり合った強度特性、または重なり合った周波数スペクトル特性のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重み付き乗算関数を適用することは、ガウス関数を適用することを含み、前記ガウス関数のピークは、前記ソートした第1のデータセットの強度値が最大値になるところに生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記重み付き乗算関数が、ステップ関数、ハミング関数、またはシグモイド関数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ソートした第1のデータセットの強度値の分布に基づいて、前記重み付き乗算関数を選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重み付き乗算関数を適用することは、少なくとも2つの異なる関数を適用することを含み、第1の関数が前記強度値に適用され、第2の関数が前記微分強度値に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ソートした第1のデータセット内の前記強度値及び微分強度値の順序対に基づいて、前記重み付き乗算関数の幅と振幅とを変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記重み付き乗算関数にスケーリングファクタを適用して、前記ソートした第1のデータセットにて、強度値及び微分強度値の異なる領域を増幅することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記データ信号の信号成分の強度が、前記データ信号のノイズ成分の強度よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記データ信号の信号スペクトルの周波数成分が、前記データ信号のノイズスペクトルの周波数成分と重なる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のデータセットが、2次元直交セットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
装置であって、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記装置に、
受信機を使用してデータ信号を受信することと、
前記受信したデータ信号に基づいて、第1のデータセットを生成することであって、前記第1のデータセットが、前記データ信号の強度値及び微分強度値の順序対を含む、前記生成することと、
前記強度値及び前記微分強度値に基づいて、前記第1のデータセットをソートすることと、
前記ソートした第1のデータセットに重み付き乗算関数を適用することと、
前記重み付き第1のデータセットの前記強度値及び微分強度値の順序対を、前記第1のデータセットにおける順序対の元の順序に対応するように並べ替えることと、
前記強度値を、前記並べ替えたデータセットの対応する微分強度値に加えて、第2のデータセットを生成することと、
前記第1のデータセットの第1の強度値を、前記第2のデータセットの第1の位置に挿入することによって、出力データセットを生成することと
を行わせるコンピュータ命令を格納するメモリと
を備える、前記装置。
【請求項13】
前記データ信号の信号対ノイズ比が、所定の閾値未満である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記出力データセットの信号対ノイズ比が、所定の閾値よりも大きい、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記出力データセットの信号対ノイズ比が、前記データ信号の信号対ノイズ比よりも大きい、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記コンピュータ命令は、前記強度値に適用される第1の関数、及び前記微分強度値に適用される第2の関数を適用することにより、前記装置に前記重み付き乗算関数を適用させるように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記コンピュータ命令が、前記ソートした第1のデータセットの分布に基づいて、前記重み付き乗算関数を調整するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記コンピュータ命令は、さらに、前記装置に、前記重み付き乗算関数にスケーリングファクタを適用させて、前記ソートした第1のデータセットにて、強度値及び微分強度値の異なる領域を増幅させる、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
装置であって、
データソースに電子的に結合し、前記データソースから入力データ信号を受信するように構成された受信機と、
前記データソースからの前記入力データをサンプリングするように構成されたサンプラと、
前記サンプラに電子的に結合された1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記装置に、
前記データソースから前記サンプリングした入力データを受信することと、
前記サンプリングしたデータに基づいて、第1のデータセットを生成することであって、前記第1のデータセットが、前記データ信号の強度値及び微分強度値の順序対を含む、前記生成することと、
前記強度値及び前記微分強度値に基づいて、前記第1のデータセットをソートすることと、
前記ソートした第1のデータセットに重み付き乗算関数を適用することと、
前記重み付き第1のデータセットの前記強度値及び微分強度値の順序対を、前記第1のデータセットにおける順序対の元の順序に対応するように並べ替えることと、
前記強度値を、前記並べ替えたデータセットの対応する微分強度値に加えて、第2のデータセットを生成することと、
前記第1のデータセットの第1の強度値を、前記第2のデータセットの第1の位置に挿入することによって、出力データセットを生成することと
を行わせるコンピュータ命令を格納するメモリと
を備える、前記装置。
【請求項20】
前記データソースが分光器を備える、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月19日に出願された米国仮出願第62/769,174号、及び2019年2月14日に出願された米国非仮出願第16/275,978号に対する優先権を主張するものであり、それらの米国出願の内容は参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載されている態様は、一般に、信号処理に関する。より詳細には、本明細書に記載されている態様は、ノイジーデータ信号の信号対ノイズ比を改善し、潜在的に信号分解能を向上させるための改良されたノイズ低減フィルタを提供する。
【背景技術】
【0003】
データ信号のノイズ低減は、様々な分野で有用であり、いくつかの非限定的な実施例を挙げてみると、例えば、分光、デジタル画像処理、音響及び音声処理、ソナー、レーダなどのセンサアレイ処理、スペクトル密度推定、統計的信号処理、制御システム、医用生体工学、ならびに地震学がある。データ信号のノイズ低減は、一般に、何らかのノイズ低減フィルタを用いて、ノイジーデータ信号から有用なデータ信号を回復させることを要する。
【0004】
一般に、ノイジーデータ信号は、その強度及び周波数スペクトル成分によって特徴づけることができ、有用なデータ信号に相当する成分と、不要なノイズに相当する成分とに分類することができる。不要なノイズの強度に対する有用なデータ信号の強度の比率を信号対ノイズ比(SNR)と呼ぶ。ノイズ低減フィルタは、ノイジーデータ信号のSNRを改善する。
【0005】
ノイジーデータ信号の強度及び周波数スペクトル成分は、多くの形を取り得る。有用なデータ信号の強度スペクトルが、不要なノイズの強度スペクトルよりも大幅に大きい場合、ノイズ低減フィルタは、ノイジーデータ信号のSNRを改善するために、データ信号の単純な閾値処理を用いて実施することができる。不要なノイズの周波数が、有用なデータ信号の周波数よりも大幅に高いかまたは低い場合、ノイズ低減フィルタは、ノイジーデータ信号のSNRを改善するために、それぞれ単純なローパスフィルタまたはハイパスフィルタを用いて実施することができる。
【0006】
しかしながら、有用なデータ信号及び不要なノイズの強度及び周波数スペクトルが重なり合う場合がある状況では、信号を大きく歪ませることなく、ノイジーデータ信号のSNRを改善する適切なノイズ低減フィルタは存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されている様々な態様の簡略化された概要を以下に示す。この概要は、広範囲な概説ではなく、主要な要素もしくは重要な要素を識別すること、または特許請求の範囲を記述することを意図していない。以下の概要は、以下に提供するより詳細な説明への導入の前置きとして、いくつかの概念を簡略化された形で示しているにすぎない。
【0008】
上記の先行技術における制限を克服し、本明細書を読んで理解すると明らかになる他の制限を克服するために、本明細書に記載されている態様は、信号処理におけるノイズ低減、及び信号処理のためのノイズ低減を対象とする。
【0009】
本開示の様々な態様によれば、データ信号が、受信機を使用して受信され得る。データ信号は、ノイズ成分及び信号成分を含み得る。受信したデータ信号に基づいて、第1のデータセットを生成することができる。第1のデータセットは、データ信号の強度値及び微分強度値の順序対を含み得る。第1のデータセットは、強度値及び微分強度値に基づいて並べ替えることができる。ソートした第1のデータセットに、重み付き乗算関数を適用することができる。重み付けし、ソートした第1のデータセットを、第1のデータセット内の順序対の元の順序に対応するように、並べ替え、再ソートすることができる。強度値を、並べ替えたデータセット内の対応する微分強度値に加えて、第2のデータセットを生成し得る。第1のデータセットの第1の強度値を第2のデータセットの第1の位置に挿入することにより、出力データセットを生成することができる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、受信機を使用してデータを受信するために、1つ以上のプロセッサ及びメモリを備えたコンピュータを使用することができる。データ信号は、ノイズ成分及び信号成分を含み得る。コンピュータはまた、受信したデータ信号に基づいて、第1のデータセットを生成し得る。第1のデータセットは、データ信号の強度値及び微分強度値の順序対で構成され得る。第1のデータセットは、強度値及び微分強度値に基づいて、コンピュータで並べ替えることができる。コンピュータプロセッサは、ソートした第1のデータセットに重み付き乗算関数を適用し得る。コンピュータプロセッサは、重み付けし、ソートした第1のデータセットを、第1のデータセットにおける順序対の元の順序に対応するように並べ替え得る。コンピュータプロセッサは、強度値を、並び替えたデータセットにおける対応する微分強度値に加える命令を実行して、第2のデータセットを生成し得る。コンピュータプロセッサは、第1のデータセットの第1の強度値を第2のデータセットの第1の位置に挿入することにより、出力データセットを生成し得る。
【0011】
いくつかの特徴が、添付の図面において、限定ではなく、一例として示されている。図面では、同様の数字は類似の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に記載の例示的な態様による信号処理システムを示すブロック図である。
図2】本開示の様々な態様を実施するために使用することができる例示的なコンピューティングデバイスを示すブロック図である。
図3】例示的なノイズ低減フィルタの構成、及び例示的なノイズ低減フィルタが、サンプリングされたデータ信号のノイズをどのように抑制し得るかを示す機能ブロック図である。
図4】本明細書に記載の例示的な態様によるノイズ低減フィルタを実施するための方法を示す流れ図である。
図5】本明細書に記載の例示的な態様による微分強度データセットを生成する方法を示す流れ図である。
図6】本明細書に記載の例示的な態様による、第1のデータセットの第1の強度値を第2のデータセットの第1の位置に挿入する方法を示す流れ図である。
図7A】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7B】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7C】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7D】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7E】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7F】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7G】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図7H】本開示の様々な例示的な態様による例示的な信号を示すグラフである。
図8A】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8B】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8C】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8D】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8E】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8F】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8G】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8H】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図8I】本開示の様々な例示的な実施形態による信号を示すグラフである。
図9】A及びBは、本開示の様々な例示的な実施形態による、写真に適用されたフィルタの結果を示す。C~Eは、本開示の様々な例示的な態様によるフィルタ処理を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ノイジーデータ信号のノイズ成分を抑制し、それによってデータ信号の信号対ノイズ比(SNR)を高めるノイズ低減フィルタについて説明する。ノイズ低減フィルタは、いくつかの実施形態では、ノイジーデータ信号の強度及び微分強度の値に対応する2つの直交座標を使用してもよく、強度の2次、3次、及び(5次までの)より高次の微分を使用してもよい。さらに、ノイズ低減フィルタは、所望のフィルタ出力応答を提供するように調整できる様々な重み付け関数を含む場合もある。本ノイズ低減フィルタは、強度及び周波数スペクトル特性の重なりを伴う、データ信号におけるノイズの寄与を抑えるために使用することができる。また一方、本ノイズ低減フィルタは、順応性があり、データ信号の強度及び周波数スペクトル特性が重ならない状況にも使用することができる。本ノイズ低減フィルタは、仮想及び実世界のノイジーデータ信号を用いてテストされていて、そのスペクトル処理ツールとしての有効性と、分光及び画像処理を含む様々な応用で使用される任意のスペクトル処理ソフトウェアツールボックスへの潜在的価値のある追加とを実証している。
【0014】
次に図面を参照すると、図1は、スペクトル処理構成要素101(例えば、分光計)と離散フィルタ処理システム108とを備える信号処理システム100のブロック図である。分光計101は、ノイジーデータ信号、例えば、ノイジー入力信号106を出力する。ノイジー入力信号には、有用なデータ信号成分及び不要なノイズ信号成分が含まれている。図1では、信号処理構成要素101を分光計として示しているが、任意の適切な信号処理構成要素、例えば、画像プロセッサ、カメラ、無線受信機、またはノイジーデータ信号を生成する場合がある任意の機器が、本明細書に記載されているフィルタ処理の利益を得ることが理解されよう。
【0015】
離散フィルタ処理システム108は、分光計101の出力をサンプリングし、フィルタ処理して、フィルタ処理した出力信号107を生成する動作を行うために使用される。離散フィルタ処理システム108は、ノイズ低減フィルタ104を使用して、ノイジーデータ信号のノイズ信号成分を低減させ、フィルタ処理された出力信号107を生成する。フィルタ処理された出力信号107は、ノイジー入力信号106よりも大きな信号対ノイズ比を有する。図1に示すように、離散フィルタ処理システム108はまた、ノイジーデータ信号106を受信し、そのノイジーデータ信号106を、その強度及び周波数スペクトルを用いて特徴付けることができる連続的な時間的または空間的に変化する信号に変換するように構成された受信機102を含み得る。サンプラ103は、受信機102からの出力を受信し、この信号をサンプリングすることにより、連続ノイジー信号を、離散データ信号に変換するように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、サンプラ103は、サンプリング周波数または周波数間隔を使用して、N個のサンプルデータポイントを有する離散データ信号を生成し得る。
【0016】
離散フィルタ処理システム108はまた、ノイズ低減フィルタ104と通信するように構成されたコンピュータ105を含み得る。様々な実施形態によれば、コンピュータ105は、ノイズ低減フィルタ104の実施中に使用される情報を処理して保存するように構成されてもよい。例示的なコンピュータが、以下に図2に関して記載されている。
【0017】
図2は、コンピューティングデバイス200の実施例を示すブロック図である。いくつかの実施形態によれば、コンピューティングデバイス200は、システム100の1つ以上の構成要素を実施するために使用されることがあり得る。例えば、コンピューティングデバイス200は、図1に示された受信機102、サンプラ103、ノイズ低減、及びコンピュータ105構成要素のうちの1つ以上を実施するために使用されることがあり得る。コンピュータ105は、ノイズ低減フィルタ104の実施に用いられる命令を実行するように構成されてもよい。図2に示すように、コンピュータ105は、プロセッサ201、読み出し専用メモリであるROM202、及びランダムアクセスメモリであるRAM203を備えるメモリを含む。コンピュータ104はまた、ハードドライブ205及びリムーバブルメディア204を備える記憶装置を含む。さらに、コンピュータ105はまた、デバイスコントローラ207、及びネットワーク入力/出力(ネットワークI/O)インタフェース206を有する。プロセッサ201、ROM202、RAM203、ハードドライブ205、リムーバブルメディア204、デバイスコントローラ207、及びネットワークI/O206のそれぞれは、各種バスを用いて相互に接続され、共通のマザーボードに搭載されている場合もあれば、または必要に応じてその他の様式で搭載されている場合もある。
【0018】
プロセッサ201は、ROM202及びRAM203、またはハードドライブ205及びリムーバブルメディア204に格納された命令を含む、ノイズ低減フィルタ104からの命令を処理してコンピュータ105内で実行することができる。他の実施態様では、複数のプロセッサ及び/または複数のバスを、必要に応じて複数のメモリと共に使用し得る。また、複数のコンピュータを接続し、各デバイスが必要な動作の一部を提供して、マルチプロセッサシステムを形成してもよい。
【0019】
ROM202及びRAM203を備えるメモリは、コンピュータ105内の情報を格納する。いくつかの実施態様では、メモリは揮発性メモリである。他の実施態様では、メモリは不揮発性メモリである。メモリはまた、磁気ディスクまたは光ディスクなどの別の形態のコンピュータ可読媒体であってもよい。
【0020】
ハードドライブ205及びリムーバブルメディア204を備えるストレージは、コンピュータ105に大容量ストレージを提供することができる。リムーバブルメディアは、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、テープデバイス、フラッシュメモリもしくは他の類似の固体メモリデバイスなどのコンピュータ可読媒体、またはストレージエリアネットワーク内のデバイスもしくは他の構成の装置を含むデバイスのアレイを包含し得る。
【0021】
ノイズ低減フィルタに使用される命令は、情報担体に格納することができる。命令は、1つ以上の処理装置(例えば、プロセッサ201)によって実行されると、上記の方法を実施する。命令はまた、ROM202、RAM202、ハードドライブ205、またはリムーバブルメディア204などの1つ以上の記憶装置によって保存することができる。
【0022】
デバイスコントローラ207は、プロセッサ201に出入りする信号を制御するコンピュータ105の一部である。デバイスコントローラ207は、バイナリコード及びデジタルコードを使用する。デバイスコントローラ207は、ローカルバッファ及びコマンドレジスタを有し、割り込みによってプロセッサ201と通信する。ネットワークI/O206は、コンピュータ105がリモートコンピュータまたはサーバの情報にアクセスすることを可能にするために使用される。デバイスコントローラ207は、ネットワークI/O206インタフェースなど、コンピュータ105に接続されたデバイスと、プロセッサ201との間のブリッジとして機能する。
【0023】
先述のとおり、ノイズ低減フィルタ104のフィルタ処理機能を実施するために使用される命令は、コンピュータ内のプロセッサによって実行することができる。図3は、様々な実施形態によるフィルタ処理機能を実施するために使用することができる機能ブロック図である。システム300は、フィルタ処理構成要素310を含み得る。様々な実施形態によれば、フィルタ処理構成要素310は、例えば、図1に示されたノイズ低減フィルタ104を実施するために使用されてもよい。図3に示すように、フィルタ処理構成要素310は、しだいに高次化する微分解析構成要素(例えば、2次構成要素301-2~N次構成要素301-N)を含み得、それぞれの振幅ソータ構成要素(例えば、302-1~302-N)と、主に異なる重み付けの乗算器(例えば、303-1~303-N)と、それぞれの逆ソート構成要素(例えば、304-1~304-N)と、加算構成要素305と、シフト構成要素306とを有する。図示していないが、本明細書に記載のフィルタ処理機能は、他の既知のフィルタ及び/または平滑化ルーチンと組み合わせて実現できることを理解されたい。図3に示したアルゴリズムの原理を変えることなく、より高次の微分をそのアルゴリズムに加えることができる。例えば、1次及び2次の微分について明示的に示すように、複数の微分解析構成要素301を連続して、及び/またはカスケードして適用することにより、より高次の微分を生成することができる。
【0024】
上記のように、サンプラ102は、入力データ信号をサンプリングして、入力データ信号の強度値のセット{Y}を生成するために使用することができる。強度データセット{Y}は、N-1個のサンプルデータ点を含み得、{Y}={y1,y2,・・・,yN-1}となるように、離散ノイジーデータ信号から取得される。微分解析構成要素301-2は、強度値のセットにおける隣接する要素間の差の微分値のセット{dY}を生成するために使用されてもよい。例えば、微分解析構成要素301-2を用いて、N-1個のサンプルデータ点を有する微分強度データセット{dY}を得ることができる。セット{dY}は、{dY}={y2-y1,y3-y2,・・・yN-yN-1}となるような、離散ノイジーデータ信号の、n番目の強度値とn-1番目の強度値との差を含み得る。2つのセット{Y}及び{dY}を、本明細書では直交セットまたは規準セットと呼ぶ場合がある。
【0025】
図3に示すように、システム300はまた、2つのセット{Y}及び{dY}をソートするために使用されるソータ302-1及び302-2を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ソータ302-1及び302-2は、2つの新しいセット{Z}及び{dZ}を形成するために、2つのセット{Y}及び{dY}を昇順でソートするために使用されてもよい。その場合、{Z}と{dZ}の両方は、N-1個のサンプルデータ点を有することになる。
【0026】
重み付け乗算器303-1及び303-2は、類似のまたは異なる重み付け関数(WF及びWdF)に、それぞれセット{Z}及び{dZ}を乗算して、両者がN-1個のサンプルデータ点を有する重み付けソートされたセット{S}及び{dS}を形成することにより、セット{Z}及び{dZ}に重み付け値を適用するように構成することができる。したがって、{S}=WF*{Z}及び{dS}=WdF*{dZ}となる。次に、それぞれの逆ソータ304-1及び304-2が、セット{S}及び{dS}に適用される。逆ソータは、セット{S}及び{dS}内のサンプルデータ点を、セット{Y}及び{dY}内のサンプルデータ点と同じ順序に一致するように並べ替え、新しいセット{YF}及び{dYF}を生成するように構成されている。
【0027】
加算器305は、セット{YF}内の強度値を、それらに対応する{dYF}内の微分強度値に加算して、データセット{Ynew2}を生成する。したがって、{Ynew2}={YF}+{dYF}となる。上記の加算器305の動作では、{YF}のN番目の各強度値が、これに対応する微分強度値{dYF}と合計される。シフタ306は、{Ynew2}のサンプルデータ点の長さまたは数を1単位ステップで増加させるために使用され、元のセット{Y}の第1の強度値が、シフトされた{Ynew2}データセットの第1の強度値として挿入されて、N個のサンプルデータ点を有するフィルタ処理された出力データセット{Yfiltered}を生成する。
【0028】
重み付け乗算器303-1、2で用いられる重み付け関数WF及びWdFは、ノイズ低減フィルタにおいて重要な役割を果たすことができる。使用される重み付け関数WF及びWdFにおいて使用される分析形式及びパラメータの選択は、特定の応用先にノイズ低減フィルタをうまく適用することに影響を及ぼす可能性がある。様々なノイジーデータ信号にノイズ低減フィルタを適用する今後の実施例では、強度重み付け関数WFは、使用するデータセットの中で最も高い強度値を頂点とするガウス関数である。したがって、強い強度はより価値があると考えられ、保存されることになる。さらに、以前に言及された実施例で用いられた微分強度重み付け関数WdFは、正のセグメント及び負のセグメントの2つの部分を有する。このことは、微分強度値{dY}が、正の強度領域と負の強度領域との両方の組み合わせであるためである。その結果、一般に、各領域では異なる重み付けをすることが必要になり得る。
【0029】
実施例のWdFの両部分はガウス状であるが、対称ではなく、1つのケースでは低い微分強度が保たれているが、他の2つの実施例ではそれらが抑制されている。あるいは、ノイズ低減フィルタ103は、1次もしくは高次の多項式関数、サドンデスもしくはステップ関数、1面もしくは2面のハニングもしくはハミング関数、または任意の種類のシグモイド関数を含むが、これらに限定されない、他の任意の重み付け関数を使用することができる。一般的に、重み付け関数の選択は、強度値及び微分強度値の領域に対するノイズ抑制または増強の所望のモードに依存する。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、重み付け関数のためのパラメータの選択は、データセット{Z}及び{dZ}の強度分布から自動的に決定されてもよい。この重み付け関数の選択は、強度スペクトルの特定の領域を保存したいという要望に基づいている。例えば、片側だけガウス型の強度重み付け関数WFの幅は、累積強度値の75%を保持するように計算することができる。また、微分強度重み付け関数WdFは、両側ステップ関数として選ぶことができ、最低微分強度値の20%をゼロに設定する。全てのこれらの調整及び重み付け関数の構造のさらなる強化は、十分にこの新しいノイズ低減フィルタの範囲内である。
【0031】
上記のフィルタ処理機能には、重み付け関数(例えば、ガウス、線形、2次、ハミングなどの1つ以上)の任意の組み合わせによる重みも含まれ得る。さらに、重み付け関数を高次の差分値に適用することも可能である。例えば、上記の微分強度データセット{dY}は、1次のデータセットと考えられ得る。また一方、同様の手法を高次の差分セットに適用することも可能である。例えば、微分解析301を微分強度データセット{dY}に適用することにより、2次の強度データ関数{ddY}を生成することができる。同様の高次データセットは、微分解析301を連続して適用することによって生成することができる。実際、そのような関数の任意の組み合わせを使用して、「高」次の規準振幅フィルタ(例えば、3D、4D、5Dなど)を実現してもよい。さらに、複数のフィルタ処理段を互いに直列にした複数段の規準2D(またはより高次)フィルタを実現することが可能であることを理解されたい。本明細書に記載のフィルタ(例えば、2D、3D、4D、5Dなどの規準フィルタ)は、様々な実施形態による他の既知のフィルタ及び平滑化ルーチンと組み合わせて使用してもよいことも理解されたい。
【0032】
図4は、様々な実施形態によるノイズ低減フィルタの機能を実施するための方法400を示す流れ図である。説明を分かりやすくするために、図1図3を参照して、図4を説明する。ただし、方法400は、それらの図に示されている特定のアーキテクチャを必要とするように限定されるものではないことを理解すべきである。
【0033】
図示するように、方法400は、受信機(例えば、受信機102)を用いてソース(例えば、分光計101)からノイジーデータ信号を受信すると、401で開始する。402では、第1のデータセットを生成することができる。様々な実施形態によれば、第1のデータセットは、サンプリング機構(例えば、サンプラ103)を使用して受信した(例えば、受信機102からの)入力信号をサンプリングして、強度値のセットを生成することによって生成し得る。微分値のセットは、隣接する強度値間の差を決定することによって生成することができる。第1のデータセットは、強度値及び微分強度値の順序対を含み得る。
【0034】
403において、第1のデータセットを、(例えば、ソータ302を使用して)ソートし得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のデータセットを、強度値及び微分強度値に基づいてソートし得る。第1のデータセットがソートされると、ソートされたデータセットの強度値及び微分強度値に重み付き乗算関数WF及びWdFを適用することができる。
【0035】
405において、逆ソータ304-1及び304-2は、強度値及び微分強度値を、それらが第1のデータセットの元の順序に対応するように並べ替えるように構成され得る。406では、並べ替えた強度値及び微分強度値を加え合わせて、第2のデータセットを生成することができる。いくつかの実施形態によれば、強度値及び微分強度値を、例えば、加算器305を用いて加え合わせることができる。第2のデータセットが生成された後、407において出力セットを生成することができる。出力セットは、データセットを1つ以上の位置にシフトし、1つ以上の元の値をデータセットのシフトされた部分に挿入して、最終的な出力セットが適切な大きさを有するようにすることで生成することができる。
【0036】
図5は、様々な実施形態による、強度値及び微分強度値の順序対を含むデータセットを生成する方法500を示す流れ図である。例えば、いくつかの実施形態では、方法500を使用して、図4に示す方法400の402を実施することがあり得る。説明を分かりやすくするために、図1図4を参照して、図5を説明する。ただし、方法500は、それらの図に示されている特定のアーキテクチャを必要とするように限定されるものではないことを理解すべきである。
【0037】
図5に示すように、方法500は、例えばサンプラ102により、受信したノイジーデータ信号をサンプリングして、N個のサンプルデータ点を持つ離散データ信号を生成する501で始まる。502において、離散強度データ信号から強度値のセット(例えば、上記の{Y})を生成することができ、強度値のセットは、N-1個のサンプルデータ点を有する。
【0038】
503では、N番目の強度値とN-1番目の強度値との差をとることにより、離散データに対して微分解析を実行することができる。504では、微分解析の結果を使用して、N-1個のサンプルデータ点を有する微分強度値のセット{dY}を生成することができる。いくつかの実施形態では、{dY}={y2-y1,y3-y2,・・・yN-yN-1}である。
【0039】
図6は、様々な実施形態による、第1のデータセットの第1の強度値を第2のデータセットの第1の位置に挿入することができる方法600を示す流れ図である。例えば、方法600を使用して、図4に示す407を実行することがあり得る。説明を分かりやすくするために、図1図5を参照して、図6を説明する。ただし、方法500は、それらの図に示されている特定のアーキテクチャを必要とするように限定されるものではないことを理解すべきである。
【0040】
図6に示すように、方法600は、第1のデータセット{Y}の第1の強度値を探し出して記憶することにより、601で開始する。第1のデータセットは、N-1個のデータ点を有する。602では、空のデータスロットを、1単位のサンプルステップだけ右にシフトすることにより、このデータスロットをデータセットに追加し得る。空のデータスロットは、シフトされた第2のデータセットの第1の値を保持するために使用してもよい。603において、第1のデータセットの記憶された第1の強度値を、シフトされた第2のデータセットのブランクデータスロットに挿入すること、第1のデータセットの第1の強度データ点が、出力データセットの第1の位置を占めることを可能にすること、及び出力データセットがN個のサンプルデータを有することをさらに可能にすることにより、出力データセットを生成する。
【0041】
図7A図7Hは、単純な仮想ノイジーデータ信号にノイズ低減フィルタを適用した際に取得されたグラフ結果を示す。本実施例は、アルゴリズムのステップの段階的記述を強調することにより、ノイズ低減フィルタの基本的な特徴を説明するために示す。具体的には、図7Aは、ノイジーデータ信号を示すy(x)と表記したグラフである。ノイジーデータ信号y(x)は、ランダムなノイズを伴う2次曲線から構築されたベースライン上のガウスピークで構成される。図7B及び図7Cは、それぞれ強度及び微分強度のソートしたセット{Z}及び{dZ}を示すグラフである。図7Bの強度ソートグラフ中央部の高度な線形性と、図7Cの微分強度ソートグラフの高度な対称性とは、データ信号に付加された合成ランダムノイズによるものである。なお、絶対的な微分強度の低さはノイズによるものであり、抑制する必要があることに注意されたい。したがって、ソートされた強度グラフの上3分の1のみが、ノイズ低減フィルタに有用であると考えられる。
【0042】
図7D及び図7Eは、図7B及び図7Cに示すソートされた強度及び微分強度のデータセット{Z}及び{dZ}に適用される、ガウス曲線を用いた重み付け関数WF及びWdFを示す。{Z}及び{dZ}をそれぞれの重み付け関数WF及びWdFで乗算した後、図7F及び図7Gに示すように、重み付き強度及び微分強度データセット{S}及び{dS}がそれぞれ生成される。図7F及び図7G図7B及び図7Cと比較すると、図7Fの重み付き強度プロットの中央領域がゼロ近くまで下がっていること、及び図7Gの微分強度プロットの中央領域が平坦になっていることに注目すべきである。
【0043】
{S}及び{dS}のデータ点を並べ替え、それらをセット{Y}及び{dY}の元の順序に戻した後、強度データ値を対応する微分強度値に加える。次に、{Y}の第1の強度データ点を、並び替えたデータセットの第1の値として追加し、最終的なフィルタ処理された出力データセット{Yfiltered}を生成する。フィルタ処理された出力データセット{Yfiltered}及びノイジーデータ信号を図7Hに示す。注目すべきは、強度の特徴がよく保たれている一方で、ノイズ成分が大幅に減少していることである。また、フィルタ処理されたデータセットのピークは、元のノイジーデータ信号のピークよりも狭く現れ、その結果、スペクトルピークの解像度が向上していることも注目すべき点である。これは、ピークショルダーの低強度値が抑制された結果である。このようなノイズ低減フィルタの人工的な動作は、場合によっては明らかに有益である可能性もあるが、依然として信号歪みとして認識され、別途注意が必要である。
【0044】
さらに、ノイジーデータ信号のベースラインは、主なピーク強度を維持したまま、ノイズ低減フィルタによって本質的に除去されることに留意すべきである。このような動作は、場合によっては有利に働く場合もあるが、ノイズ低減フィルタの特徴である信号の歪みの可能性が指摘されている。一般的には、特定のアプリケーションで信号が歪む可能性を避けるために、ノイズ低減フィルタを使用する前に、慣行的なベースライン減算法を使用することができる。
【0045】
図8は、機器から得られた実世界のノイジーデータ信号にノイズ低減フィルタを適用した際に取得されたグラフ結果を示す。本実施例は、アルゴリズムのステップの段階的記述を強調することにより、ノイズ低減フィルタの基本的な特徴を説明するために示す。具体的には、図8Aは、機器の信号対ノイズ比(SNR)を推定するために一般的に使用される質量分析ノイズ抽出イオンクロマトグラムを含む実世界実験からのy(x)として示されるグラフである。ここで使用されるノイジーデータ信号は、SNRテストに失敗した機器から意図的に選択されていることに注意されたい。本実施例では、ノイズ低減フィルタが、SNRが非常に低いノイジーデータ信号のノイズ成分を抑制することができることを示す。そのy(x)データを図8Aに示す。図.8B及び図8Cは、それぞれ強度及び微分強度のソートしたセット{Z}及び{dZ}を示すグラフである。
【0046】
図8D及び図8Eは、図8B及び図8Cに示すソートされた強度及び微分強度のデータセット{Z}及び{dZ}に適用される、ガウス曲線を用いた重み付け関数WF及びWdFを示す。{Z}及び{dZ}をそれぞれの重み付け関数WF及びWdFで乗算した後、図8F及び図8Gに示すように、重み付き強度及び微分強度データセット{S}及び{dS}がそれぞれ生成される。本実施例では、セット{S}及び{dS}のグラフは、セット{Z}及び{dZ}のグラフとそれほど違いはないが、重要なのは、{S}及び{dS}には、{Z}及び{dZ}に比べて、ノイズに関連する大量のスペクトルパワーが存在しなくなっていることである。
【0047】
{S}及び{dS}のデータ点を並べ替え、それらをセット{Y}及び{dY}の元の順序に戻した後、強度データ値を対応する微分強度値に加える。次に、{Y}の第1の強度データ点を、並び替えたデータセットの第1の値として追加し、最終的なフィルタ処理された出力データセット{Yfiltered}を生成する。フィルタ処理した出力データセット{Yfiltered}及び元のノイジーデータ信号は、強いスペクトル成分がよく保存されていることを示すために、小さなオフセットを付けて図8Hに示している。図8Iでは、サイドバンドを拡大して、低強度のピーク及びオフセットのないノイズを示しており、強いスペクトルの特徴(「ピーク」)がよく保存されている一方で、不要なノイズが低強度のピークから実質的に除去されていることがわかる。
【0048】
図9Aは、夜に撮影された暗い白黒写真に相当する。図9Aの暗い写真をノイズ低減フィルタへの入力として渡すと、図9Bに示すように、信号対ノイズ比が向上した明るい写真が得られた。ノイズ低減フィルタは、図9Aの暗い写真の画素列のみにわたって適用した。なお、このフィルタは、画素の行及び列に同時に適用することも、順次適用することも可能であり、必要に応じて対角線上の画素セット(左上から右下、左下から右上)を含めることもできる。この応用は、フィルタ方式の原理を変えるものではない。また、この画像処理用途のノイズ低減フィルタでは、重み付け関数WF及びWdF用の追加のスケーリングパラメータK及びKdを追加して使用していることにも注意されたい。スケーリングファクタを追加することで、強度及び微分強度の高い領域が増幅される。また、上記のこれまでの実施例では、強度の高いデータ点は「情報量が多い」と見なして保存したが、微分強度の低いデータ点は低い重み付け値を使用することで抑制していた。したがって、それぞれの応用においては、強度及び差分強度のどのような特徴に、保存すべき有用なスペクトル情報が含まれているかを理解することが重要である。
【0049】
図9C及び図9Dは、今回の画像処理用途で使用した重み付け関数WF及びWdFを示す。追加のスケーリング係数に、2(強度用)と0.5(微分強度用)を使用することで、微分強度データの輝度(強度に2を乗じた値)を上げ、ノイズを低減させた。また、WdF関数により、低い微分強度値を維持し、高い微分強度値を抑制することで、写真または画像処理の用途では有用だが、マススペクトルまたはクロマトグラムでは重要ではない、粒状の「ピクセル」ノイズを低減することができる。これは、本ノイズ低減フィルタの汎用性を示すものである。
【0050】
図9Eは、白黒写真の行1320の画素の強度スペクトルを示す。図9Eは、図9Aの暗い写真の1320行目の画素から生成された元データセット、及び図9Bの明るく鮮明な(信号対ノイズ比の高い)写真の1320行目の画素から生成されたフィルタ処理された出力データセットを示す。したがって、図9Eは、元の暗い写真のノイズを抑制して、ノイズフィルタをかけた出力を表す強調写真を作成することを示す。明るさ、コントラスト、ノイズなどの大容量写真属性の強調または抑制を達成するために使用される重み付け関数は、本開示のノイズ低減フィルタを使用する異なる用途に適用できることに留意されたい。
【0051】
主題は、構造的特徴及び/または方法的行為に固有の言語で記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義された主題は、必ずしも上記の特定の特徴または行為に限定されないことが理解されよう。むしろ、上記の具体的な特徴及び行為は、特許請求の範囲を実施するための例示的な形態として開示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9
【国際調査報告】