(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】キャビテーションによる微小材料の分散
(51)【国際特許分類】
B01J 3/00 20060101AFI20220111BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20220111BHJP
C01B 32/174 20170101ALI20220111BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20220111BHJP
B01J 3/03 20060101ALI20220111BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20220111BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220111BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220111BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220111BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220111BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20220111BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20220111BHJP
【FI】
B01J3/00 A
C01B32/168
C01B32/174
B01J3/02 A
B01J3/03 A
B01J3/04 G
H01M4/04 Z
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/02 Z
H01M4/62 B
H01M4/62 C
H01G11/36
H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527854
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2019059927
(87)【国際公開番号】W WO2020104937
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521214252
【氏名又は名称】センス マテリアルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ブロンフマン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シュール エイナット
【テーマコード(参考)】
4G146
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146BA04
4G146CB10
4G146DA07
5E078BA15
5E078BB21
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA09
5H050BA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA12
5H050EA21
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
(57)【要約】
処理物質をキャビテートすることによって、カーボンナノチューブなどの微小材料の脱凝結および脱凝集のための方法およびシステムが提供される。処理物質は、相変化を起こすことができるCO
2などの物質であり得る。システムは高圧に耐えることができなければならず、キャビテートすることは、超音波、機械的攪拌、ジェット気流の注入、または他の方法によって行うことができる。本発明の方法によって処理された材料は、化学界面活性剤または他の化学修飾手段を使用せずに除去することができ、さらに電池で使用することができる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小材料を分散させるための方法であって、
微小材料粉末を処理チャンバに配置するステップと、処理物質を前記処理チャンバに導入するステップであって、前記処理物質はキャビテーションを受けることができる、ステップと、
前記処理物質をキャビテートするステップであって、前記キャビテートするステップは、前記微小材料の分散を引き起こす、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記微小材料がカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小材料が、TiO
2、Fe
2O
3、ローダミン基からの有機蛍光顔料、フタロシアニド基からの有機蛍光顔料、コランダム粉末、およびダイヤモンド粉末のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分散した前記カーボンナノチューブから分散したCNT/電極基板マトリックスを形成するステップをさらに含み、乾燥カーボンナノチューブ粉末を配置するステップは、電極基板材料と混合された前記乾燥カーボンナノチューブ粉末を前記処理チャンバの中に配置することを含み、前記カーボンナノチューブは、分散した前記カーボンナノチューブが前記電極基板材料との安定した接触を確立し、こうして、分散した前記CNT/電極基板マトリックスを形成するように、前記電極基板材料に対して電気的親和性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記処理物質が二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理物質は、相変化を受けることができ、前記方法は、前記処理物質に相変化を誘発するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
物質を導入するステップは、超臨界二酸化炭素を導入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャビテートするステップは、前記超臨界二酸化炭素を機械的に攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的に攪拌するステップが、ブレードまたはカップを回転させることによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャビテートするステップは、前記処理チャンバ内の圧力を繰り返し増加および減少させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キャビテートするステップは、前記処理物質のジェット気流を前記処理チャンバに注入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記キャビテートするステップは、前記処理物質を超音波処理するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャビテートするステップの間に、前記処理チャンバの温度を上昇させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記キャビテーションが、圧力勾配を提供し、前記圧力勾配を介して前記微小材料粉末をインジェクタに引き込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記微小材料粉末の化学組成を変更することなく、分散した前記微小材料を前記処理チャンバから除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
電池内に分散した前記微小材料を使用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
カーボンナノチューブの脱凝結および脱凝集のためのシステムであって、
処理チャンバを有するAMT容器であって、前記処理チャンバは、CNT/電極基板混合物をその中に保持するように構成され、少なくとも100barの圧力に耐えるように構成される、AMT容器と、
処理物質の外部ソースであって、前記処理物質はキャビテーションを受けることができる、外部ソースと、
前記処理チャンバの中で前記処理物質のキャビテーションを引き起こすためのキャビテータと、
を備える、システム。
【請求項18】
前記AMT容器が、
底部分と、
前記底部分の上に配置可能な上部分であって、前記上部分が前記底部分の上に配置されるとき、前記上部分および前記底部分が前記処理チャンバを形成するようになる、上部分と、
前記上部分を通る処理物質供給パイプと、
を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記キャビテータが超音波プローブであり、前記上部分が前記超音波プローブの少なくとも一部分を前記処理チャンバに導入することができるプローブインサートをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記キャビテータが、処理物質の高速ジェット気流を前記処理チャンバに注入するためのインジェクタである、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記処理チャンバがパイプAMT容器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
分散したCNT/電極基板マトリックス材料であって、
カーボンナノチューブ材料と、
電極基板材料であって、前記電極基板材料は前記カーボンナノチューブ材料と電気的親和性を有するように構成され、前記カーボンナノチューブ材料が安定した形態で前記電極基板材料上に分散され、こうして、分散した前記CNT/電極基板マトリックス材料を形成する、電極基板材料と、
を備える、分散したCNT/電極基板マトリックス材料。
【請求項23】
電池内で使用するように構成された、請求項22に記載の分散したCNT/電極基板マトリックス材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2018年11月19日に出願された米国仮特許出願第62/769,015号からの優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブなどの微小材料の分散方法、およびそのような方法を実行するためのシステムに関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、エネルギー貯蔵装置の性能を改善するためのカーボンナノチューブ/電極基板マトリックスを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
マイクロスケールおよびナノスケールの範囲の微小材料は、多くの用途で使用されている。より具体的には、カーボンナノチューブ(CNT)は、円筒形の管に巻かれたグラファイトシートである。CNTは、そのアスペクト比が高いため、ほぼ一次元のオブジェクトと見なされる。CNTは、単層または多層の管であり得、そのすべは、密度が低く、剛性が高く(1TPaのオーダーのヤング率)、引張強度が高く、また熱伝導率も電気伝導率も高い。
【0005】
単層および/または多層のCNTは、材料、コーティング、フィルム、およびマイクロエレクトロニクスの機械的および導電性を高めるための複合材料として使用される。エネルギー貯蔵装置の分野では、CNTは、すでに非常に低い質量パーセントでも、市販のカソード材料の電気伝導率を高める。さらに、CNTの機械的特性は、例えば、リチウムイオン電池の充電/放電サイクル中の電極の体積変化を緩衝することができる。
【0006】
それらの並外れた電気的、熱的および機械的特性にもかかわらず、スーパーキャパシタおよび電池の性能を向上させるためのCNTの潜在的な使用は、CNTの使用がCNT材料の微細構造の制御を必要とするために制限される。CNT間の強い相互作用力の結果として、マトリックス内のCNTの分散と配置の形成は、依然として困難である。ファンデルワールス相互作用は、生産されたままのCNTでバンドルとクラスターの形成を引き起こす。この凝結体(aggregate)または凝集体(agglomerate)が形成されると、それらの機械的および電気的挙動の性能が低下する。MWCNTの脱凝結(disaggregation)は、液体、有機または水性に分散したMWCNTの剪断混合、剪断粉砕、超音波処理といった機械的方法によって、あるいは表面機能化を含む化学的方法と組み合わせることによって、および界面活性剤の添加を場合によっては遠心分離ステップと組み合わせて、達成されてきた。SWCNTの脱凝結には、超音波処理によってのみ得られるMWCNTと比較して、より高いエネルギーレベルが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いくつかの技術は、分散と超音波処理の後、CNTを乾燥させて再分散させることができることを示唆している。しかしながら、電気化学セルへのCNTの適用に関しては、一般的な手法により、表面の化学的性質が変化したり、不要な異物が追加されたり、CNT構造が損傷したりして、そのいずれか一つまたは全部は、電気伝導率および/または熱伝導率を低下させ、電気化学セルの品質を劣化させる。
【0008】
したがって、上記の制約のない微小材料の分散方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その実施形態において、微小材料の脱凝結および脱凝集(deagglomeration)のための方法に関する。微小材料は、本明細書では、マイクロスケールおよびナノスケール範囲の粒子を有する材料として定義され、例えば、TiO2、Fe2O3などの無機顔料、ローダミン基から、フタロシアニド基からの有機蛍光顔料、コランダム(corund)、ダイヤモンドなどの研磨剤、およびカーボンナノチューブ(CNT)を含み得る。本発明の方法は、これらの微小材料と、それらの分散および電極基板粒子との物理的ネットワークの形成とに関する。より具体的には、本発明は、キャビテーション(cavitation)を介したカーボンナノチューブの脱凝結および脱凝集に関する。より具体的には、本発明は、高密度相流体における超音波プローブなどのキャビテータの適用に基づくカーボンナノチューブの脱凝結および脱凝集に関し、超音波プローブは、より具体的には、超臨界条件下にある液体CO2またはCO2内で超音波処理を使用する。より具体的には、本発明は、エネルギー貯蔵装置の性能を改善するために、カーボンナノチューブで調製された電極材料の粒子の使用に関する。エネルギー貯蔵装置には、水系または有機溶媒系電解質タイプのスーパーキャパシタ、Ni/金属水素化物電池、鉛蓄電池、リチウムイオンおよびリチウムイオンポリマー電池を含むが、これらに限定されない。本発明は、界面活性剤、またはカーボンナノチューブもしくは基板粒子の共有結合修飾を使用せずに、基板粒子を有するカーボンナノチューブの3Dネットワークを作成するプロセスを使用する。
【0010】
電極基板粒子という用語は、電極材料として使用されるナノ粒子およびマイクロ粒子を指す。
【0011】
本明細書における電池という用語は、直列、並列、または組み合わせて接続された、少なくとも1つのセルまたは複数のセルから構成される電池またはスーパーキャパシタを指す。
【0012】
本発明の実施形態によれば、カーボンナノチューブなどの微小材料を分散させるための方法が提供される。この方法は、微小材料粉末を処理チャンバに配置するステップと、処理物質を処理チャンバに導入するステップであって、処理物質がキャビテーションを受けることのできる、ステップと、微小材料の分散を引き起こすために処理物質をキャビテートする(cavitating)ステップと、を含む。
【0013】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、微小材料は、TiO2、Fe2O3、ローダミン基からの有機蛍光顔料、フタロシアニド基からの有機蛍光顔料、コランダム粉末、およびダイヤモンド粉末、またはカーボンナノチューブ、あるいは他の適切な材料であり得る。
【0014】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、乾燥カーボンナノチューブ粉末は、電極基板材料と混合され、一緒に処理チャンバに配置される。カーボンナノチューブは、分散したカーボンナノチューブが電極基板材料との安定した接触を確立するように、電極基板材料に対して電気的親和性を有し、こうして、分散したCNT/電極基板マトリックスを形成する。
【0015】
本発明の実施形態では、処理物質は、液体または超臨界形態の二酸化炭素、または二酸化炭素と他の気体もしくは他の適切な材料との混合物であり得る。処理物質は、処理前または処理中に相変化を起こす可能性がある。キャビテートするステップは、高圧で処理物質に超音波を適用すること(例えば、室温で超臨界CO2の場合は74bar以上、液体CO2の場合は40~60bar以上)によって、または機械的攪拌によって、または処理チャンバ内の圧力を繰り返し増減することによって、または超臨界CO2のジェット気流の注入によって、または他の適切な方法によって行うことができる。この方法は、キャビテーション中に処理チャンバの温度を上げることを含み得る。
【0016】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴において、この方法は、また、ナノチューブ粒子の化学組成を変えることなく、分散微小粒子を処理チャンバから除去することも含む。その後、微小材料を電池に使用することができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、カーボンナノチューブの脱凝結および脱凝集のためのシステムが提供される。このシステムは、CNT/電極基板混合物をその中に保持するように構成され、少なくとも40~60bar、またいくつかの実施形態では少なくとも70bar、またいくつかの実施形態では少なくとも100barの圧力に耐えるように構成された処理チャンバを有するAMT容器を含む。このシステムは、キャビテーションを受けることができる処理物質の外部ソースと、処理チャンバ内で処理物質のキャビテーションを引き起こすためのキャビテータをさらに含む。
【0018】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴において、AMT容器は、底部分と、底部分の上に配置可能な上部分とを含み、その結果、上部分が底部分の上に配置されるとき、上部分および底部分が処理チャンバを形成する。本発明の実施形態では、AMT容器は、上部分を通る処理物質供給パイプを含む。
【0019】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴において、キャビテータは超音波プローブであり得、上部分は、超音波プローブの少なくとも一部分が処理チャンバに導入され得るプローブインサートを含む。別の実施形態では、キャビテータは、処理物質の高速ジェット気流を処理チャンバに注入するためのインジェクタであり得る。処理チャンバは、例えば、パイプAMT容器であり得る。
【0020】
本発明の追加の実施形態によれば、分散したCNT/電極基板マトリックス材料が提供され、分散したCNT/電極基板マトリックス材料は、カーボンナノチューブ材料と、カーボンナノチューブ材料と電気的親和性を有するように構成され電極基板材料とを含み、カーボンナノチューブ材料が安定した形態で電極基板材料上に分散され、こうして、分散したCNT/電極基板マトリックス材料を形成する。このマトリックスは、電池で使用され得る。
【0021】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって、一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されている方法および材料と類似または同等の方法および材料は、本発明の実施形態の実施または試験に使用することができ、適切な方法および材料は、以下で説明する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は、単に概略的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0022】
本発明は、単なる例として、添付の図面を参照して説明される。ここで詳細に図面を具体的に参照すると、示されている詳細は、例として、また本発明の様々な実施形態の例示的な議論の目的とするためだけにあり、本発明の原理および概念的側面の最も有用で容易に理解できる説明であると考えられるものを提供するように提示されている。これに関して、本発明の基本的な理解に必要であるよりも詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされておらず、説明は、本発明のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする図面とともに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】CO
2の圧力-温度(P,T)状態図である。
【
図2A】第一の構成にある電極基板粒子を有するCNTの図であり、CNTが一緒に凝結している。
【
図2B】脱凝結後の第二の構成にある電極基板粒子を有するCNTの図であり、CNTはより離れて広がっている。
【
図3A】本発明の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図3B】本発明の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図3C】本発明の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図3D】本発明の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図5A】本発明の追加の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの概略図である。
【
図5B】本発明の追加の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの概略図である。
【
図6A】本発明のさらに追加の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図6B】本発明のさらに追加の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図6C】本発明のさらに追加の実施形態による微小材料の分散のためのシステムの図である。
【
図7】本発明の実施形態によるカーボンナノチューブの分散方法のフローチャート図である。
【
図8】本発明のAMT処理電極材料(NCA AMT)で作成された電池を制御電池(NCA制御)と比較するCレート試験の結果のグラフ図である。
【
図9】コバルト酸リチウム(LCO)カソード上に分散されたCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示を単純かつ明確にするために、図面に示されている要素は、必ずしも正確に、または一定の縮尺で描かれているわけではないことが理解されよう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比べて誇張されている場合があり、あるいはいくつかの物理的構成要素が1つの機能ブロックまたは要素に含まれている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応または類似する要素を示すために、参照番号を図面間で繰り返すことがある。さらに、図面に示されているブロックのいくつかは、単一の機能に組み合わせることができる。
【0025】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示されている。本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが当業者によって理解されるであろう。他の例では、本発明を曖昧にしないように、周知の方法、手順、構成要素、および構造が詳細に説明されていないこともある。
【0026】
本発明は、カーボンナノチューブの処理のシステムおよび方法に関する。本発明のシステムおよび方法によって、高度な材料処理(AMT)が可能になり、処理物質内のキャビテーションを介して、CNTなどの微小材料を分散(脱凝結および脱凝集)する。処理物質は、微小材料と共有された物理的空間にある。「分散」という用語は、凝集体からより小さなサイズの粒子を生成することである脱凝集と、例えば、結合の切断によって粒子を互いに分離することである脱凝結の両方を含むことを意図している。本発明のシステムおよび方法の設計のさらなる利点を以下に説明する。
【0027】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載または図面に示される構成要素の詳細および配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは様々な方法で実施または実施することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0028】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)などの微小材料を、処理物質の支援を受けて、分散(すなわち、脱凝結および脱凝集)する先端材料処理(AMT)の方法に関するものであり、処理物質は、CNTのある物理的共有空間にある間にキャビテーションを受ける。キャビテーションは、物質の機械的応力が微細な気泡の崩壊を引き起こすプロセスである。処理物質は、例えば、二酸化炭素(CO
2)であり得る。CO
2の利点は、4つの異なる相があり、それぞれが、以下で説明するように、CNTの処理に単独または組み合わせで、有益であり得ることである。ここで、
図1を参照すると、これは、CO
2の圧力-温度(P,T)状態図である。
図1に示されるように、相は、圧力および/または温度を調整することによって制御され得る。いくつかの実施形態では、液体CO
2が処理物質として使用される。液体CO
2は、水および有機溶媒などの他の液体と比較して、CNT分散に有利である。その理由は、より効率的なCNT分散を可能にし、CO
2を気体の形で完全に除去できるので、最終製品に不純物が追加されないからである。いくつかの実施形態では、超臨界CO
2(scCO
2)が処理物質として使用される。scCO
2には、液体CO
2と同じ利点があるが、液体に似た密度値を有し(つまり、気体に比べて比較的高い)、気体に似た粘度値を有する(つまり、液体に比べて比較的低い)という追加の利点がある。このように、音波または他の波は、それを通って効率的に伝播することができる。いくつかの実施形態では、処理物質は、処理プロセス中に、例えば、超音波処理によるエネルギー散逸の結果として、または外部加熱の結果として、あるいは圧力の変化によって、温度が上昇することにより、相が変化し得る。他の実施形態では、処理物質は、相が変化しない。
【0029】
あるいは、処理物質は、例えば、CO2と、CO2/N2、CO2/NH3などの他の気体スとの混合物であり得る。摂氏0℃~200℃の範囲の臨界温度を有し、1bar~400barの臨界圧力を有する他の気体も使用できる。
【0030】
本発明の特定の特徴は、処理物質がCNTとの化学的相互作用を有さないので、界面活性剤または他の化学的手段を使用せずに、分散したCNTの除去が可能になることである。さらに、スーパーキャパシタおよび電池電極の電極材料の電子的および機械的特性を著しく低下させ得るカーボンナノチューブの共有結合修飾もない。
【0031】
処理物質は、任意の数の方法を介して、キャビテーションを受けるように構成される。非限定的な例として、scCO2は、超音波と組み合わせて使用され得る。超臨界相は、臨界温度Tcおよび臨界圧力Pcを超えて発生する単一相であり、気体と液体の中間特性(粘度、密度、拡散係数など)を有する。液体CO2は、P=5.2bar(三重点7t=-56.6℃)より高い圧力でのみ存在する無色の液体である。この例では、scCO2または液体CO2が、多層および単層CNTを脱凝集および/または脱凝結するために、また電極基板粒子による3D構造を作成するために、超音波と組み合わせて使用される。3D構造は、CNTと電極(カソードおよび/またはアノード)粒子の分散ネットワークである。あるいは、キャビテーションは、また急激な圧力変動および急激な流速変動の領域を通るscCO2の流れによって、または液体CO2を高速で流れるscCO2のジェット気流を介して、あるいはscCO2の流れを液滴および/または空洞に引き裂く可能性もある機械的攪拌を介して、または他の適切な手段によって、達成され得る。使用するCO2は、あらゆるグレードの純度のものにすることができる。以下の実施形態で説明するように、他の多くの処理物質およびキャビテーション方法を本発明で使用することができる。
【0032】
カーボンナノチューブは、単層(SWCNT)または多層(MWCNT)、あるいはSWCNTとMWCNTの任意の比率の混合物として、開放端または閉鎖端、不完全、またはこれらの組み合わせにすることができる。カーボンナノチューブは、任意の長さ、キラリティー、および直径にすることができる。カーボンナノチューブは、任意の純度グレードおよび表面化学のものにすることがでる。
【0033】
カーボンナノチューブは、電極基板粒子と一緒に提供される。電極基板粒子は、任意の化学組成、表面化学、粒子サイズが5nm~1mmの間の任意の物理的構造のものであり得る。リチウムイオン電池用のアノード基板粒子の例には、活性化炭素、グラファイト、グラフェン、球状グラファイト、硬質炭素、軟質炭素、シリコンおよびシリコン合金ならびにシリコン化合物、スズおよびスズ化合物ならびにスズ合金、Li4Ti5O12、およびシリコン-C化合物が含まれるが、これらに限定されない。リチウムイオン電池用のカソード材料の例には、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、チタン、およびクロム、ホウ素、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物化合物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム化合物、TiS2、WS2、MoS2などの遷移金属ジカルコゲナイドおよび対応するセレン化物の代替物を備えたLiNixCoyAlzO2、LiNixMnyCozO2、LiCoO2、LiFePO4、LiMn2O4、LiMn2O4と、例えば、銀、金、ZnO、MgO、Al2O3で表面コーティングを施したカソード粒子が含まれるが、これらに限定されない。スーパーキャパシタ用の電極基板粒子の例には、活性炭、および酸化ルテニウムおよび酸化マンガンなどの金属酸化物であるが、これらに限定されない。鉛蓄電池用の電極基板粒子の例は、Pb、PbO2、PbSe合金、PbCa合金、PbSb合金であるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明のAMT法は、微小粒子を互いに離間させることにより、また基板マトリックスを提供することにより、基板粒子を有するカーボンナノチューブの物理的3Dクラスターネットワークを作成する。その結果、分散した微小粒子が基板粒子と接触するときに、それらの間の電気的親和性のために、それらの間の接触が安定したままになる。
ここで、
図2Aおよび
図2Bを参照すると、CNT11が一緒に凝結する第一の構成(
図2A)、および脱凝結後に、CNT11がより離れて広がる第二の構成(
図2B)にある電極基板粒子13を有するCNT11の図である。カーボンナノチューブを電極材料と混合して、相互接続するためのAMT技術は、プロセスが、界面活性剤およびカーボンナノチューブまたは/および基板材料の化学修飾を使用せずにカーボンナノチューブを脱凝結するという点で有益である。したがって、強化された電極材料は、スーパーキャパシタまたは電池電極の電子的および機械的特性を低下させることなく製造でき、有機溶媒に関連する安全性、健康および環境問題を回避して、より経済的なプロセスで行うことができる。
【0035】
処理物質がCNTおよび基板の物理的構造に影響を与えるためには、処理物質は、キャビテーションの間に、CNTおよび基板として、少なくとも部分的に共有された物理的空間になければならない。共有された物理的空間は、例えば、AMT容器またはその一部であり得る。これは、パイプ、容器、または任意の他の適切な空間を含み得る。本発明で使用することができる様々な容器の実施形態が本明細書に提示されている。しかしながら、本発明は本明細書に記載の特定の容器に限定されず、同じ結果を達成することができる任意の容器が本発明の範囲内に含まれ得ることは容易に明らかであるはずである。
【0036】
ここで、
図3A~
図3Dを参照する。本発明の実施形態によるカーボンナノチューブなどの微小材料を処理するためのシステム10の図である。システム10は、処理チャンバ12、キャビテータ14、および処理チャンバ12に処理物質を提供するための外部処理物質ソース29を有するAMT容器8を含む。AMT容器は、高度な材料処理を行うことのできる容器として定義される。いくつかの実施形態では、AMT容器は反応炉容器に似ていることもあるが、化学反応(反応炉容器で時々起こる)をAMTプロセスと混同しないように、「反応炉」という用語はここでは使用されない。キャビテータ14は、処理物質19にキャビテーションを誘発するオブジェクトとして定義され、例えば、超音波または他のタイプの波、機械的攪拌、または処理物質19の内部にキャビテーションを引き起こし得る他の任意の方法を誘発するオブジェクトを含み得る。
図3A~
図3Dに示される実施形態において、キャビテータ14は、超音波プローブ15である。処理チャンバ12は、CNT11と電極基板粒子13との混合物で、本明細書ではCNT/基板混合物17と呼ばれる混合物(例えば、
図2Aに示すように)をその中に保持するように構成される。CNT/基板混合物17は、例えば、上記のような電極基板を備えたカーボンナノチューブ乾燥粉末であり得る。本明細書に示される実施形態では、CO
2などの処理物質19も、処理チャンバ12に導入されるが、他の実施形態では、処理物質19は、異なる容器を介するなど、異なる方法で提供され得る。処理物質19は、CNT/基板混合物17と混合することができる。しかしながら、本発明の特定の特徴は、処理物質19とCNT/基板混合物17との混合が、処理物質19とCNT/基板混合物17との間の化学的相互作用をもたらさないことである。
【0037】
分散(すなわち、脱凝集および脱凝結)は、処理物質19内でキャビテーションをもたらすことによって達成される。本明細書に記載のAMTプロセスを受けた後のCNT/基板混合物17は、分散したCNT/電極基板マトリックス27と呼ばれる(例えば、
図2Bに示すように)。分散したCNT/電極基板マトリックス27の形成を引き起こすキャビテーションは、以下に説明するように、様々な方法で達成することができる。しかしながら、多くの方法において、高圧および/または高温が使用され、そのため、一般に上部が開いており、高圧および/または高温に耐えることができない従来の反応容器は使用できない。
【0038】
本明細書に示される実施形態では、キャビテーションは、1つまたは複数の相でCO
2を使用することによって、また超音波トランスデューサ15を介して超音波を適用することによって達成される。
図3Aおよび
図3Bの斜視図と、
図3Cの断面図に見られるように、処理チャンバ12は、CNT/基板混合物17をその中に受け入れるように構成された底部分16と、底部分16の上部に配置されて密封されるように構成された上部カバー18とを含む。底部分16の空洞20は、その中にCNT/基板混合物17および/または処理物質19を保持するための空間を提供する。空洞20は、例えば、円筒であり得るが、他の形状であってもよい。空洞20へのアクセスは、上部カバー18および/または底部分16を通過する一連のパイプまたはチューブによって提供される。超音波プローブ15は、上部カバー18を取り外さずに、超音波を空洞20に印加できるように、上部カバー18を通って空洞20に挿入される。
【0039】
ここで、上から見た上部カバー18の断面図である
図3Dを、
図3Cと一緒に見ると、一連のポートおよびパイプが示されている。上部カバー18の上部に位置するCNT/基板供給ポート22は、CNT/基板供給パイプ24に接続されている。CNT/基板供給パイプ24は、上部カバー18を通って空洞20に通じている。したがって、CNT/基板混合物17は、CNT/基板供給ポート22に導入され、CNT/基板供給パイプ24を介して空洞20に導入され得る。CNT/基板供給ポート22は、CNT/基板供給パイプ24への単純な開口部であり得るか、またはバルブ、漏斗、またはCNT/基板混合物17をCNT/基板供給パイプ24を介して空洞20に導入するのに適した任意の他のタイプのコネクタを含み得る。上部カバー18の上部に位置する処理物質供給ポート26は、処理物質供給パイプ28に接続される。処理物質供給ポート26は、処理物質供給パイプ28を、例えば、CO
2ガスタンクなどの外部処理物質ソース29(
図3Aに示される)に接続するための処理物質入力コネクタ30も含み得る。いずれの場合も、処理物質供給ポート26は、処理物質供給パイプ28を介して空洞20に処理物質19を導入するのに適していなければならない。底部分16に位置する除去ポート48は、分散したCNT/電極基板マトリックス27および/または処理物質19を除去するように構成されている。
【0040】
様々な構成要素を処理チャンバ12に導入するための上記の供給ポートに加えて、上部カバー18は、処理チャンバ12から処理物質19を除去するための処理物質出口ポート32をさらに含み得る。例えば、処理プロセスが完了した後、CO2は、処理物質出口ポート32を介して環境に、あるいは除去ポート48を介して別の容器に放出され得る。いくつかの実施形態では、圧力測定装置が提供され、例えば、出口ポート32に接続されるか、あるいは隣接して配置され得る。上部カバー18は、また処理チャンバ12から高圧を逃がすための逃し弁34を含み得る。いくつかの実施形態では、サーモウェル36は、上部カバー18に提供され得、サーモウェル36は、処理チャンバ12内の温度を測定するために、センサなどの温度測定装置をその中に収容することができる。上部カバー18は、超音波プローブ15の少なくとも一部分が空洞20に挿入され得るプローブインサート38をさらに含む。
【0041】
ここで、本発明の実施形態による超音波プローブ15の断面図および斜視図である
図4Aおよび
図4Bを参照する。超音波プローブ15は、処理チャンバ12の外側から制御されるように設計されているが、上部カバー18が密封されている間、空洞20に超音波を提供するように設計されている。したがって、超音波プローブ15は、外部プローブ部分40および挿入可能なプローブ部分42を含み、一般に、外部プローブ部分40は、超音波トランスデューサ15の上部にあり、挿入可能なプローブ部分42は、底部にある。いくつかの実施形態では、挿入可能なプローブ部分42は、超音波トランスデューサ15の先端である。いくつかの実施形態では、外部プローブ部分40の長さは、挿入可能なプローブ部分42の長さよりも短い。いくつかの実施形態では、挿入可能なプローブ部分42は、外部プローブ部分40よりも狭い。外部プローブ部分40と挿入可能なプローブ部分42とは、超音波プローブ15のカバー接続部分41で出会う。カバー接続部分41は、上部カバー18に接続する超音波プローブ15の一部分である。カバー接続部分41は、プローブインサート38で上部カバー18の一部分にロックするように設計されているプローブロック機構44を含み得る。いくつかの実施形態では、カバーロック機構46が上部カバー38に提供され、カバーロック機構46およびプローブロック機構44は、一緒に働いて、超音波プローブ15を上部カバー38にロックする。プローブロック機構44およびカバーロック機構46の例は、オス/メスコネクタであり、それには、多くのタイプ(例えば、Swagelok社から入手可能など)がある。いずれの場合でも、プローブロック機構44およびカバーロック機構46は、上部カバー18が所定の位置に留まっている間、処理チャンバ12内に存在する高圧を維持できるように、上部カバー18とプローブ14との間に強力なロックを提供しなければならない。同様の設計が他のタイプのプローブにも使用できることは容易に明らかである。
【0042】
ここで、
図5Aおよび
図5Bを参照すると、本発明の追加の実施形態によるナノチューブを処理するためのシステム100の概略図である。システム100は、処理チャンバ112およびキャビテータ114を有するAMT容器108と、外部処理物質ソース129とを含む。処理チャンバ112は、その中にCNT/基板混合物17および処理物質19を保持するように構成される。
図5Aおよび
図5Bに示される実施形態におけるキャビテータ114は、処理チャンバ112へのscCO
2の高速流を提供するように構成されたインジェクタ115である。処理チャンバ112は、CNT/基板混合物17および処理物質19を受け入れるための空洞120をその中に有する底部分116を含み、底部分16の上部に配置され、底部分116に密封されるように構成された上部カバー118をさらに含む。空洞120へのアクセスは、少なくとも1つの処理物質供給パイプ128によって提供される。
図5Bに示される実施形態では、処理チャンバ112は、CNT/基板混合物17およびscCO
2をその中に保持するための保持チャンバ107をさらに含む。
【0043】
外部処理物質ソース129は、例えば、CO2ガスタンクなどの1つのタンク、または一連のガスタンクであり得、タンクは、その中に処理物質19を保持する。外部処理物質ソース129は、その液相でCO2を提供するためにサイフォンを備えてもよい。処理物質19は、外部処理物質ソース129から、処理物質輸送パイプ130を通って処理物質供給パイプ128に液相で流れることができる。処理物質19は、その液相で、処理物質供給パイプ128から空洞120に導入される。あるいは、処理物質19は、外部処理物質ソース129から、圧縮機311および/または加熱ユニット133を通って、処理物質供給パイプ128に流れることができる。そこから、処理物質19は、本明細書に記載の様々な実施形態に従って、その超臨界相(scCO2)で、AMT容器108に導入される。
【0044】
処理チャンバ112は、CNT/基板混合物17をその中に保持するのに適した任意の容器であり得るが、高圧に耐えるように構成されなければならない。いくつかの実施形態では、処理チャンバ112は、最大70barの圧力に耐えることができる。他の実施形態では、処理チャンバ112は、最大120barの圧力に耐えることができる。他の実施形態では、処理チャンバ112は、最大200barの圧力に耐えることができる。本発明の実施形態では、処理容器は、ステンレス鋼などの金属から構成され得、少なくとも5mmの壁厚を、またいくつかの実施形態では少なくとも7mmの壁厚を有し得る。
【0045】
分散は、処理物質19内でキャビテーションを実施することによって達成される。このキャビテーションは、以下に説明するように、様々な方法で達成することができる。しかしながら、多くの方法では、高圧および/または高温が使用され、そのため、従来の反応容器は、一般に上部が開いており、高圧および/または高温に耐えることができないので、使用できない。
【0046】
図5Aに示す実施形態では、キャビテーションは、超臨界CO
2の注入されたジェット気流を処理チャンバ112に使用することによって達成され、処理チャンバ112は、その中にCNT/基板混合物17および液体CO
2を有する。scCO
2は、処理物質供給パイプ128を介して、インジェクタ115を通って、高速ジェット気流として処理チャンバ112に導入される。本発明の実施形態では、ジェット気流の速度は、20~40m/秒の範囲にある。超臨界CO
2の高速注入は、超臨界CO
2にキャビテーションを引き起こし、それがCNT/基板混合物17と相互作用して、CNTの脱凝結を引き起こす。
【0047】
代替の実施形態が
図5Bに示されており、ここでは、キャビテータ114として機能するインジェクタ115が処理物質供給パイプ128に取り付けられている。この実施形態では、超臨界CO
2は、処理物質供給パイプ128を介してインジェクタ114に導入される。CNT/基板混合物17およびscCO
2または液体CO
2は、保持チャンバ107内に配置される。インジェクタ14は、scCO
2を高速で運ぶため、インジェクタ14に圧力降下が生じる。したがって、圧力勾配が保持チャンバ107とインジェクタ115との間に形成され、一方向バルブを保持チャンバ107とインジェクタ115との間に配置することができる。これにより、scCO
2または液体CO
2およびCNT/基板混合物17が保持チャンバ107からインジェクタ115に流れる。キャビテーションは、scCO
2を含むCNT/基板混合物17がインジェクタ115に移動するために発生する。
【0048】
ここで、
図6A~
図6Cを参照すると、これらの図は、本発明の追加の実施形態によるシステム200の図である。本明細書に示す実施形態では、AMT容器208は、処理チャンバ212およびキャビテータ210を有するパイプAMT容器である。処理チャンバ212は、パイプAMT容器208の壁によって形成される空洞220を備える。
図6Aおよび
図6Bに示される実施形態では、キャビテータ210は、機械的攪拌機205であり、これは、例えば、
図6Aに示されるような回転ブレード206から、あるいは
図6Bに示されるような回転カップ207から構成され得る。機械的攪拌機205は、処理チャンバ212内に配置されている。回転ブレード206は、反対方向に回転するように構成された2組のブレードを含み得る。回転は高速で発生する(例:毎分10,000~40,000回転)。回転カップ207は、2組のカップ形状のオブジェクトを含み得、ここで、カップの開口部は、第一のカップ形状のオブジェクトについては下向きであり、第二のカップ形状のオブジェクトについては上向きである。回転カップは、反対方向に回転するように構成されており、高速で回転するように構成されている(例えば、毎分10,000~40,000回転)。カップは、また、その中に開口部を含み得、開口部は、流れを遮断し、液滴を形成させる。CNT/基板混合物17は、パイプAMT容器208内に配置される。超臨界CO
2は、パイプAMT容器208に導入され、そこを通って流れるように構成される。超臨界CO
2が空洞220を通って流れている間、機械的攪拌機205が作動され、それによって超臨界CO
2にキャビテーションを引き起こす。
【0049】
図6Cに示されている別の実施形態では、キャビテータ210は、プレートアセンブリ209である。プレートアセンブリ209は、複数の平行なプレートから形成され、プレートの上部または下部が交互にAMT処理容器208の内壁に接続され、隣接するプレート間の間隔は、広い間隔、次に狭い間隔、次に広い間隔などのパターンに従う。したがって、処理物質19は、プレートアセンブリ209を通って流れ、プレート間の広いギャップおよび狭いギャップによって生成される一連の鋭い圧力のピークおよび降下を受ける。これらの圧力のピークおよび降下が、処理物質19にキャビテーションを引き起こす。
【0050】
ここで、
図7を参照すると、この図は、本発明の実施形態による、微小材料を分散させるための方法700のフローチャート図である。最初に、乾燥カーボンナノチューブ粉末などの微小材料が処理チャンバに入れられる(ステップ702)。乾燥カーボンナノチューブ粉末は、また電極基板材料と組み合わせることもできる。相変化を受けることができ、キャビテーションを受けることもできる処理物質が、直接的または間接的に、処理チャンバに導入される(ステップ704)。次に、処理物質はキャビテートされる(ステップ706)。これは、様々な方法で行うことができ、処理物質を処理チャンバに導入するステップと同時に行うことも、あるいは処理物質を処理チャンバに導入するステップの後に行うこともできる。これにより、分散したCNT/電極基板マトリックス27が作成される。分散が完了すると、分散したCNT/電極基板マトリックス27が処理チャンバから除去される(ステップ708)。除去は、分散したCNT/電極基板マトリックス27を界面活性剤または他の化学的方法で処理することなく行うことができる。分散が完了していない場合、あるいはユーザがCNTをさらに分離したい場合は、処理物質をキャビテートするステップ(ステップ706)を繰り返すことができる。この繰り返しは、パルスで行うことも、あるいは時間の経過とともに連続的に行うこともできる。いくつかの実施形態において、処理物質の相は、キャビテートするステップの前または最中に変更され得る(ステップ710)。この変更は、いくつかの実施形態において、この方法の間に逆転され得る。ここで、この方法のより具体的な実施形態について説明する。
【0051】
(処理チャンバのCNT/基板材料での充填)
乾燥カーボンナノチューブ粉末を単独で、または所定の重量比の基板粒子と一緒に、処理チャンバ12に装填する。システム10、100、200の空洞20、120、220は、200bar以下の高圧を保持するように設計されている。CNT11と電極基板粒子13との比率は、任意の比率であり得、好ましくは、基板粒子に対して0.01質量%~10質量%であり得る。処理チャンバ12、112、212に装填されるCNT/基板混合物17の体積は、空洞20、120、220の0.1~80体積%の範囲であり得、好ましくは1.0~40体積%の範囲であり得る。システム10では、CNT/基板混合物17は、上部カバー18が配置される前に空洞20に直接配置されるか、またはCNT/基板供給ポート22およびCNT/基板供給パイプ24を介して空洞20に導入され得る。システム100および200では、CNT/基板混合物17は、空洞120、220に直接配置される。
【0052】
本発明の実施形態では、本明細書に記載のAMT法は、様々な圧力で動作するように構成される。本発明の実施形態では、使用圧力は1~500barの範囲である。いくつかの実施形態では、使用圧力は1~100barの範囲である。本発明の実施形態では、作動温度は-60~60℃の範囲であり、いくつかの実施形態では、0~40℃の範囲である。
【0053】
(CO
2での処理チャンバの充填)
空洞20、120、220は、処理物質19が充填されており、処理物質19は、本発明の実施形態では、非相互作用および/または非反応性物質である(すなわち、CNT/基板材料に化学変化を引き起こさない)。例えば、固体、液体、気体、または超臨界形態のCO
2を使用することができる。処理物質の特定の相は、圧力と温度を調整することによって制御できる。例えば、CO
2が使用される場合、位相は、
図1に示されるパラメータを介して調整される。圧力は、空洞20、120、220に許容される処理物質19の量によって制御される。システム10の場合、処理物質19としてCO
2の例を使用して、処理物質19は、処理物質供給ポート26を介して、処理物質供給パイプ28を通って、空洞20に導入される。処理物質供給ポート26は、外部処理ソース29に接続することができ、外部処理ソース29は、例えば、その中に処理物質を保持するリザーバまたはタンクであり得る。システム100の場合、処理物質19としてCO
2の例を使用して、処理物質19は、外部処理ソース129から、処理物質供給パイプ128を介して、インジェクタ115を通って、空洞120に導入される。同様に、システム200の場合、処理物質19としてCO
2の例を使用して、処理物質19は、外部処理ソースから空洞220内に導入される。システム100および200の両方において、処理物質19は、また
図5Aに示されるように、圧縮機311および/または加熱ユニット133を通って送られ得る。さらに、すべての実施形態において、圧力および温度は、制御され、監視され得る。例えば、圧力は、
図5Aに示されるように圧縮機311を使用することによって制御され得る。例えば、高圧プランジャーポンプ(Wepuko Pahnkeによって製造されたDPX100シリーズ)などの任意の標準的な圧縮機を使用することができる。作動温度は、
図5Aに示される加熱ユニット133などの外部加熱および冷却システムによって調整することができる。プリーツユニット(Pleating unit)133は、任意の標準的な加熱ユニット(例えば、Parr Instrumentによって製造された製品4622HP)であり得る。そのような圧力および温度制御ユニットが
図5Aに示されているが、同様のユニットが、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用され得ることは容易に明らかであるはずである。さらに、温度測定装置(例えば、Manorazによって製造されたタイプ101)およびセンサなどの圧力測定装置(例えば、Manorazによって製造されたMAN-SF)を使用して、処理チャンバ12、112、212内の温度および/または圧力を決定することができる。
【0054】
(システム10の操作)
以下の実施形態は、相が変化し得る処理物質を使用して分散したCNTを提供する方法のいくつかの例である。処理物質の少なくとも1つ、最大で4つの相転移(本明細書に記載の実施形態では、例としてCO2が使用される)は、この方法の間に発生する。使用する操作モードにかかわらず、CNTと電極材料は、常に固体のままである。
【0055】
(実施形態1:システム10、100、または200のいずれか、または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20、120、220に導入される。次に、空洞20、120、220は、圧力が5~70barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。続いて、温度は、RT~200℃の範囲、好ましくは25~45℃の範囲の任意の温度であり得る作動温度に上昇される。CO2は気相であり、CNTと基板粒子との間で自由に拡散する。システムを1~20barの間の圧力まで、好ましくは1~10barの間の圧力まで、自発的または高速に排気すると、CNTおよび電極基板材料の脱凝結および脱凝集が生じる。排出は、例えば、処理物質出口ポート32を介して、CO2を除去することによって行うことができる。
【0056】
(実施形態2:システム10、100、または200のいずれか、または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20、120、220に導入される。次に、空洞20、120、220は、圧力が5~70barの範囲(高プロセス圧力)に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。続いて、温度は、RT~200℃の範囲、好ましくは25~45℃の範囲の任意の温度であり得る作動温度に上昇される。CO2は気相であり、CNTと粒子との間で自由に拡散する。システムを(例えば、処理物質出口ポート32を介して)高速で部分排気する(部分排気)と、AMT反応炉内の圧力が高プロセス圧力未満に低下し、圧力降下を1~60bar、好ましくは10~30barにする。これにより、CNTおよび電極基板材料の脱凝結および脱凝集が生じる。
【0057】
次に、空洞20、120、220は、高プロセス圧力に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で再び満たされる(空洞の再充填)。続いて、温度は、RT~200℃の範囲、好ましくは25~45℃の範囲の任意の温度であり得る作動温度に上昇される。部分的な排気が適用され、続いて空洞の再充填が行われる。空洞の再充填による部分排気のシーケンスは、単一の(圧力シフト)サイクルを構成する。圧力シフトサイクルの回数は、1~1000の間であり得、好ましくは5~25の間であり得る。
【0058】
(実施形態3:システム10または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20に導入される。空洞20は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が5~100barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、-56~30℃の範囲である。この動作温度と圧力により、液体CO2が発生する。空洞20が液体CO2、CNTまたはCNT/基板で満たされ、システムが平衡状態になったら、超音波処理を適用して、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。超音波処理は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで操作される。超音波処理電力は、1w~10kw、好ましくは100w~200wで印加される。超音波処理プロセスの完了後、CO2は処理物質出口ポート32を介して除去され、分散したCNT/電極基板マトリックス27が除去ポート48を介して空洞20から除去される。
【0059】
(実施形態4:システム10または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20に導入される。空洞20は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、32~45℃の範囲である。この動作温度と圧力により、超臨界CO2が発生する。反応炉が液体CO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが平衡状態になったら、超音波処理を適用して、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。超音波処理は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで操作される。超音波処理電力は、1w~10kw、好ましくは100w~200wで印加される。超音波処理プロセスの完了後、CO2は処理物質出口ポート32を介して除去され、分散したCNT/電極基板マトリックス27が除去ポート48を介して空洞20から除去される。
【0060】
(実施形態5:システム10または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20に導入される。空洞20は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、25~30℃の範囲である。この動作温度と圧力により、液体CO2が発生する。反応炉が液体CO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが平衡状態になると、超音波処理を適用して、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。超音波処理は、1秒~60秒のパルスで操作され、各パルスの間に、システムの温度を上昇させる。この温度上昇によって、各超音波パルスの間に、液体CO2からscCO2への相転移が発生する。各超音波パルスの後、相は液体CO2に戻る。液体-scCO2からのシフトによって、システム内のCO2の拡散が増加する。超音波処理電力は、1w~10kw、好ましくは100w~200wで印加される。超音波処理プロセスの完了後、CO2は処理物質出口ポート32を介して除去され、分散したCNT/電極基板マトリックス27が、除去ポート48を介して空洞20から除去される。
【0061】
(実施形態6:システム10または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞20に導入される。空洞20は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、25~30℃の範囲である。この動作温度と圧力により、液体CO2と気体CO2が平衡状態になる。反応炉が液体CO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが液体CO2と気体CO2の間で平衡状態になると、外部加熱が処理チャンバ12に適用され、システムの温度が上昇して、32℃を超える。この温度上昇により、液体CO2と気体CO2からscCO2への相転移が生じる。システムがscCO2として安定した後、外部冷却が処理チャンバ12に適用され、システムの温度が低下して、30℃未満になる。この温度低下により、相は液体-気体のCO2平衡に戻る。上記のシステムの温度上昇、それに続く温度低下に、液体/気体からscCO2へのシフトと、液体/気体CO2への逆シフトを伴うことは、単一の可逆的な相転移パルスを構成する。液体/気体平衡とscCO2の間のシフトによって、システム内のCO2の拡散が増加し、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。外部冷却による外部加熱のシーケンスは、可逆的な相転移の単一サイクルを構成する。可逆的な相転移のサイクル回数は、1~1000サイクルの間であり得、好ましくは5~25サイクルの間であり得る。温度上昇/低下プロセスの完了後、CO2は処理物質出口ポート32を介して除去され、分散したCNT/電極基板マトリックス27が、除去ポート48を介して空洞20から除去される。
【0062】
(システム100の操作)
以下の実施形態は、脱凝結されたCNTを提供する方法のいくつかの例である。処理物質の少なくとも1つ、最大で4つの相転移(本明細書に記載の実施形態では、例としてCO2が使用される)が、この方法の間に発生する。しかしながら、超臨界CO2のみがジェット気流では使用される。使用する操作モードにかかわらず、CNTと電極材料は、常に固体のままである。
【0063】
(実施形態7:システム100または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞120に導入される。空洞120は、また、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が5~100barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、-56~30℃の範囲である。この動作温度と圧力により、液体CO2が発生する。反応炉が液体CO2で満たされると、scCO2は、インジェクタ115を介して処理チャンバ12に注入される。この注入は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで行われ得る。
【0064】
(実施形態8:システム100または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で保持チャンバ107に導入される。保持チャンバ107は、また、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、32~45℃の範囲である。この動作温度と圧力により、超臨界CO2が発生する。反応炉が液体CO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが平衡状態になると、追加のscCO2が、処理供給パイプ128を介してインジェクタ115に導入される。保持チャンバ107内にあるscCO2は、圧力勾配によってインジェクタ115に吸い込まれ、それとともに、CNT/基板混合物17を運ぶ。インジェクタ115を通るこのscCO2の流れは、scCO2内にキャビテーションを生成して、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する
【0065】
(システム200の操作)
以下の実施形態は、脱凝結されたCNTを提供する方法のいくつかの例である。これらの実施形態では、超臨界CO2のみがジェット気流では使用される。使用する操作モードにかかわらず、CNTと電極材料は、常に固体のままである。
【0066】
(実施形態9:システム200または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞220に導入される。処理チャンバ212は、パイプによって接続された複数のセクションを含み得、接続は、円形または直線形状であり得る。いくつかの実施形態では、処理チャンバ212自体はパイプ形状を有する。空洞220は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、32~45℃の範囲である。この動作温度と圧力により、超臨界CO2が発生する。処理チャンバ212がscCO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが平衡状態になると、例えば、回転ブレード206または回転カップ207などの機械的攪拌機205が作動し、scCO2内にキャビテーションを生成し、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。機械的攪拌機205は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで操作され得る。
【0067】
(実施形態10:システム200または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞220に導入される。処理チャンバ212は、パイプによって接続された複数のセクションを含み得、接続は、円形または直線形状であり得る。いくつかの実施形態では、処理チャンバ212自体は、パイプ形状を有する。空洞220は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、32~45℃の範囲である。この動作温度と圧力により、超臨界CO2が発生する。反応炉が液体CO2、CNT、または電極材料を含むCNTで満たされ、システムが平衡状態になると、scCO2はプレートアセンブリ209を通って移動し、プレートアセンブリ209のプレート間のギャップを通って流れながら乾燥電極材料を運び、scCO2内にキャビテーションを生成し、CNTバンドルと電極材料の脱凝結と脱凝集を達成する。scCO2は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで操作される。
【0068】
(実施形態11:システム200または任意の適切なシステムを使用する)
CNT/基板混合物17は、大気圧および室温(RT)で空洞220に導入される。処理チャンバ212は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が5~100barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、-56~30℃の範囲である。この動作温度と圧力により、液体CO2が発生する。処理チャンバ212は、パイプによって接続された複数のセクションを含み得、接続は、円形または直線形状であり得る。いくつかの実施形態では、処理チャンバ212自体は、パイプ形状を有する。インジェクタ115は、処理チャンバセクションの出口または処理チャンバのパイプセクションの内側に設置される。各インジェクタ115は、例えば、処理供給パイプ128によって処理チャンバ212に接続されている。処理チャンバ212は、任意の温度、好ましくは20~50℃の間で、圧力が74~200barの範囲に達するまで、CO2の液体、固体、または気体で満たされる。動作中の温度は、32~45℃の範囲である。この動作温度と圧力により、超臨界CO2が発生する。処理チャンバ212内のscCO2相が達成され、システムが平衡状態になると、追加のscCO2がインジェクタ115を介して高速で空洞220に送られ、scCO2内にキャビテーションを生成して、CNTバンドルおよび電極材料の脱凝結および脱凝集を達成する。scCO2は、連続的に、あるいは1秒~6時間の間隔のパルスで操作され得る。
【0069】
さらに、いくつかの実施形態では、オリフィスまたは他の流れを遮断する部品が、処理チャンバ12、112、212内に含まれ得、処理チャンバは、AMTプロセスの間に、処理物質19の流れを遮断することによって、処理物質19に対するキャビテーション効果をさらに高めることができる。
【0070】
(処理チャンバ12、112、212の換気)
本発明の一実施形態では、CO2は、分散したCNT/電極基板マトリックス27と一緒に、AMT容器8からポート48を介して中圧容器に放出される。中圧容器とAMT容器8との間の体積比は、2~100の間であり、好ましくは、5~20の間である。中圧容器内のCO2圧力レベルは、AMT容器8内の圧力にも、中圧容器とAMT容器8の間の体積比にも相対的である。中圧容器が充填された後、CO2が大気中に放出され、中圧容器内が大気圧になる。中圧容器からのCO2が放出にされた後、分散したCNT/電極基板マトリックス27が中圧容器から除去される。
【0071】
別の実施形態では、分散したCNT/電極基板マトリックス27を運ぶ処理物質19は、ポート48を介して外部基板上に直接噴霧される。
【0072】
さらに別の実施形態では、AMT容器8内のCO2は、温度を-56~-100℃の間、好ましくは-56~-65℃の範囲に下げることによって固体状態に移される。材料は、分散したCNT/電極基板マトリックス27およびドライアイスとして反応炉から抽出される。
【実施例】
【0073】
本発明の実施形態に従って調製されたCNT/基板混合物(本明細書ではAMT処理電極材料と呼ばれる)を使用して、リチウムイオン再充電電池を作成した。AMT処理電極材料のCレートを、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物電池(NCA電池)のCレートと比較した。
【0074】
ここで、
図8を参照すると、
図8は、AMT処理された電極材料で作成された電池をNCA電池と比較するCレート試験の結果のグラフ図である。
図8に示されるように、AMT処理電極電池(NCA AMT)は、制御電池(NCA制御)と比較して容量の増加をもたらし、容量の増加は、20%~60%の範囲であった。容量の増加は、電池の充電/放電速度が速いほど速くなることが分かった。
【0075】
分散したCNT/電極基板マトリックス27の例が
図9に示されている。この図は、コバルト酸リチウム(LCO)カソード上に分散されたCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0076】
本発明は、その特定の実施形態と併せて説明されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるそのようなすべての代替案、修正および変形を包含することが意図されている。本明細書に記載されているすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の各刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または識別は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小材料を分散させるための方法であって、
微小材料粉末を処理チャンバに配置するステップと、処理物質を前記処理チャンバに導入するステップであって、前記処理物質はキャビテーションを受けることができ
、前記処理物質が二酸化炭素を含む、ステップと、
前記処理物質をキャビテートするステップであって、前記キャビテートするステップは、前記微小材料の分散を引き起こす、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記微小材料がカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小材料が、TiO
2、Fe
2O
3、ローダミン基からの有機蛍光顔料、フタロシアニド基からの有機蛍光顔料、コランダム粉末、およびダイヤモンド粉末のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分散した前記カーボンナノチューブから分散したCNT/電極基板マトリックスを形成するステップをさらに含み、
前記微小材料粉末を配置するステップは、電極基板材料と混合され
た乾燥カーボンナノチューブ粉末を前記処理チャンバの中に配置することを含み、
分散した前記カーボンナノチューブは、化学物質を用いずに、前記カーボンナノチューブを分散させる機械的なキャビテーション方法によるもので、不純物が追加されず、前記カーボンナノチューブは、分散した前記カーボンナノチューブが前記電極基板材料との安定した接触を確立し、こうして、分散した前記CNT/電極基板マトリックスを形成するように、前記電極基板材料に対して電気的親和性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記
二酸化炭素が非液体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理物質は、相変化を受けることができ、前記方法は、前記処理物質に相変化を誘発するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
物質を導入するステップは、超臨界二酸化炭素を導入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャビテートするステップは、前記超臨界二酸化炭素を機械的に攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的に攪拌するステップが、ブレードまたはカップを回転させることによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャビテートするステップは、前記処理チャンバ内の圧力を繰り返し増加および減少させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キャビテートするステップは、前記
二酸化炭素のジェット気流を前記処理チャンバに注入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記キャビテートするステップは、前記処理物質を超音波処理するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャビテートするステップの間に、前記処理チャンバの温度を上昇させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記キャビテーションが、圧力勾配を提供し、前記圧力勾配を介して前記微小材料粉末をインジェクタに引き込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記微小材料粉末の化学組成を変更することなく、分散した前記微小材料を前記処理チャンバから除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
電池内に分散した前記微小材料を使用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
カーボンナノチューブの脱凝結および脱凝集のためのシステムであって、
処理チャンバを有するAMT容器であって、前記処理チャンバは、CNT/電極基板混合物をその中に保持するように構成さ
れる、AMT容器と、
処理物質の外部ソースであって、前記処理物質はキャビテーションを受けることができる、外部ソースと、
前記処理チャンバの中で前記処理物質のキャビテーションを引き起こすためのキャビテータ
であって、前記AMT容器は、前記処理物質が前記キャビテータによってキャビテートされる間に少なくとも100barの圧力に耐えるように構成される、キャビテータと、
を備える、システム。
【請求項18】
前記AMT容器が、
底部分と、
前記底部分の上に配置可能な上部分であって、前記上部分が前記底部分の上に配置されるとき、前記上部分および前記底部分が前記処理チャンバを形成するようになる、上部分と、
前記上部分を通る処理物質供給パイプと、
を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記キャビテータが超音波プローブであり、前記上部分が前記超音波プローブの少なくとも一部分を前記処理チャンバに導入することができるプローブインサートをさらに備え
、高圧下でのキャビテーション中に前記AMT容器を確実に密閉するためのプローブロック機構をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記キャビテータが、処理物質
のジェット気流を前記処理チャンバに注入するためのインジェクタであ
り、前記処理物質が超臨界二酸化炭素である、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記
インジェクタは、高圧下において前記AMT容器の内部でキャビテーションが達成され得るように、高速ジェット気流を提供するように特別に構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
分散したCNT/電極基板マトリックス材料であって、
分散したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ材料
であって、分散した前記カーボンナノチューブは、化学物質を用いずに、前記カーボンナノチューブを分散させる機械的なキャビテーション方法によるもので、不純物が追加されない、カーボンナノチューブ材料と、
電極基板材料であって、前記電極基板材料は前記カーボンナノチューブ材料と電気的親和性を有するように構成され、前記カーボンナノチューブ材料が安定した形態で前記電極基板材料上に分散され、こうして、
前記カーボンナノチューブの再凝集を防ぎ、こうして、分散した前記CNT/電極基板マトリックス材料を形成する、電極基板材料と、
を備える、分散したCNT/電極基板マトリックス材料。
【請求項23】
電池内で使用するように構成された、請求項22に記載の分散したCNT/電極基板マトリックス材料。
【国際調査報告】