(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】神経変性、筋変性及びリソソーム蓄積障害を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20220111BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20220111BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220111BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
A61K31/4365
A61K31/5377
A61P25/28
A61P21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527905
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019062387
(87)【国際公開番号】W WO2020106825
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316826
【氏名又は名称】ジョージタウン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カルヴ, バララマン
(72)【発明者】
【氏名】ムサ, チャーベル
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC01
4C071CC21
4C071DD15
4C071EE13
4C071FF06
4C071GG01
4C071HH17
4C071HH18
4C071JJ01
4C071JJ08
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB29
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA94
(57)【要約】
対象における神経変性疾患、筋変性疾患、プリオン病、またはリソソーム蓄積疾患を治療または予防するための組成物及び方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有する化合物であって、
【化35】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
nは0~3から選択される整数である、前記化合物、
またはその異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物は、1つ以上のハロゲン原子を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yは2-m-トルイルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Zはヘテロシクリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Zは、モルホリン-1-イルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、以下の式:
【化36】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
3はHであり、R
4は非置換フェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、以下の式:
【化37】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
対象において神経変性疾患、筋変性疾患またはプリオン病を治療または予防する方法であって、中枢神経系の前記神経変性疾患、前記筋変性疾患もしくは前記プリオン病を有するか、または中枢神経系の前記神経変性疾患、前記筋変性疾患もしくは前記プリオン病を発症するリスクがある前記対象に、有効量の以下の式:
【化38】
を有する化合物であって、
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
nは0~3から選択される整数である、前記化合物、
またはその異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記化合物が以下の式:
【化39】
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が以下の式:
【化40】
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が血液脳関門を通過する、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
中枢神経系の前記神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、軽度認知障害、α-シヌクレイノパチー、及びタウオパチーからなる群から選択される、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物は全身投与される、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物は経口投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、10mg/kg以下の投薬量で投与される、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物は、5mg/kg以下の投薬量で投与される、請求項9~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、2.5mg/kg以下の投薬量で投与される、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物は毎日投与される、請求項9~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物は薬学的組成物中にある、請求項9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に第2の治療剤を投与することをさらに含む、請求項9~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の治療剤が、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、抗コリン剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、COMT阻害剤、アマンタジン、ドネペジル、メマンチン、リスペリドン、リバスチグミン、NMDAアンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、リルゾール、抗精神病剤、抗うつ剤、及びテトラベナジンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ニューロンにおける毒性タンパク質凝集を阻害または予防する方法であって、前記ニューロンを、以下の式:
【化41】
を有する化合物であって、
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
nは0~3から選択される整数である、前記化合物、
またはその異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む有効量の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項24】
前記化合物は、以下の式:
【化42】
を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物は、以下の式:
【化43】
を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質が、アミロイド生成タンパク質、α-シヌクレイン、タウ、及びTDP-43からなる群から選択される、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記接触はインビトロで行われる、請求項23~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記接触はインビボで行われる、請求項23~26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
対象においてリソソーム蓄積疾患(LSD)を治療または予防する方法であって、前記LSDを有する前記対象に有効量の以下の式:
【化44】
を有する化合物であって、
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
nは0~3から選択される整数である、前記化合物、
またはその異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記化合物は以下の式:
【化45】
を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物は以下の式:
【化46】
を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記リソソーム蓄積疾患が、ハーラー症候群、ハーラー-シャイエ症候群、シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、サンフィリポ症候群B、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群A、モルキオ症候群B、マロトー-ラミー症候群、スライ症候群、ナトビッツ症候群、偽ハーラー多発性ジストロフィー、テイ-サックス、ゴーシェ病、ニーマン-ピック病、フコシドーシス症、ガラクトシアリドーシス症、球様細胞白質ジストロフィー、G
M1ガングリオシドーシス、G
M2ガングリオシドーシス、α-マンノシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ニーマン-ピックAB病、及びポンペ病からなる群から選択される、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象は小児対象である、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記有効量の化合物は、前記対象の1つ以上の細胞内の有毒物質凝集を阻害または予防する、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の細胞は、脳細胞、前記対象の1つ以上の末梢組織内の細胞、またはそれらの組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記脳細胞は、ニューロン及び/またはグリア細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記有効量は約10mg/kg未満である、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
第2の治療剤または療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項29~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記第2の治療剤または前記療法は、酵素補充療法、遺伝子療法、造血幹細胞移植、及び小分子からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年11月20日に出願された米国仮出願第62/769,791号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患には、進行性神経系機能不全に関連する遺伝性障害及び散発性障害が挙げられる。これらの疾患は、神経細胞または神経細胞機能の進行的な悪化を特徴とする。4人のアメリカ人のうちの1人が生涯で神経変性状態を発症すると推定されている。しかし、一般に、状態を引き起こす潜在的なメカニズムは十分に理解されておらず、神経変性疾患を予防または治療するために利用可能な効果的な治療オプションはほとんどない。
【0003】
リソソーム蓄積障害は、遺伝的疾患の中で最も破壊的な疾患のいくつかを表し、これらの障害の治療法を開発する必要性は、ほとんど満たされていないままである。これらの疾患の多くは、中枢神経系(CNS)に損傷を引き起こすが、そのような損傷の潜在的なメカニズムはほとんど知られていない。リソソーム蓄積障害の発生は稀であるが(約1:100,000未満の個体が影響を受ける)、リソソーム蓄積障害は、多くの場合、生後数ヶ月または数年以内に若い年齢でしばしば死亡する子供に対して主として影響を及ぼす。他の多くの子供は、特定のリソソーム蓄積障害の様々な症状に長年苦しんで死亡する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
対象における神経変性疾患、筋変性疾患、プリオン病、またはリソソーム蓄積疾患を治療または予防するための組成物及び方法が本明細書に提供される。本明細書では、式Iを有する化合物であって、
【化1】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、もしくはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である、化合物、
またはその異性体もしくは薬学的に許容される塩が提供される。
【0005】
神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を有する対象に、または神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を発症するリスクがある対象に、有効量の式Iを有する化合物であって、
【化2】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、もしくはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である、化合物、
またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、対象において神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を治療または予防する方法も提供される。
【0006】
ニューロン中の毒性タンパク質凝集を阻害または予防する方法もまた提供される。これらの方法は、有効量の式Iを有する化合物であって、
【化3】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、もしくはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である、化合物、
またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩と、ニューロンを接触させることを含む。
【0007】
対象においてリソソーム蓄積障害(LSD)を治療または予防する方法も提供される。これらの方法は、LSDを有する対象に、またはLSDを発症するリスクがある対象に、有効量の式Iを有する化合物であって、
【化4】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、もしくはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である、化合物、
またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
本出願は、以下の図面を含む。これらの図面は、組成物及び方法の特定の実施形態及び/または特徴を例示し、組成物及び方法の任意の記載(複数可)を補完することを意図する。図面は、そのようなものであることを明示的に記載されていない限り、組成物及び方法の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(左パネル及び中央パネル)は、対照と比較して、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の減少及び(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド(MTT)の増加によってそれぞれ証明されるように、1μMのBK41043で処理したB35細胞において、16時間の処理後に神経保護効果が観察されたことを示す。
図1(右パネル)は、5時間の処理後、BK40143の濃度の減少を伴うLDHの減少を介して細胞生存率が段階的に増加したことを示す。
【
図2】pTau(左パネル)またはα-シヌクレイン(右パネル)での24時間トランスフェクト及びBK41043での5時間の処理後のB35細胞の細胞生存率を示す。細胞死を反映する培地中で測定したデヒドロゲナーゼ(LDH)は、BK40143の有無にかかわらず、対照とタウまたはa-シヌクレインを発現する細胞との間で違いがなく、この化合物が毒性または細胞死をもたらさないことを示す。
【
図3】24時間トランスフェクション後のpTau(181)のレベル(左パネル、スチューデントt検定:対応のない、両側、*p<0.05、***p<0.01)、及びBK41043が、pTauトランスフェクトしたB35細胞(右パネル、n=6、ANOVA:通常の、一方向の、ダネットの多重比較検定、p<0.05、****p<0.0001)におけるpTau(181)レベルを低下させることを示す。
【
図4】24時間トランスフェクション後のα-シヌクレインのレベル(左パネル)、及びBK41043がα-シヌクレイントランスフェクションB35細胞におけるα-シヌクレインを低下させることを示す(右パネル)。スチューデントt-検定:対応なし、両側、*p<0.05、**p<0.0、n=6)。10uM-1mMの範囲のBK40143の用量は、この細胞培養モデルにおけるαシヌクレインのレベルを低下させるように見える。
【
図5】BK40197による5時間の処理後のB35細胞の細胞生存率を示す。
【
図6】BK40143が、7日間の処置後に、トランスジェニックマウスを発現するTauにおけるpTau(181)を低下させることを示す。PTau(181)のレベルはELISAを介して測定した。スチューデントt-検定:対応なし、両側、ウェルチ補正、*p<0.05、***p<0.01
【
図7】ウェスタンブロット分析を使用した、BK-40143(1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5.0mg/kg)による処置がrTG4510トランスジェニックマウス(n=4)におけるpTau(231)(AT180)のレベルに影響しなかったことを示す。
【
図8】BK-41043による7日間の処置後、1.25mg/kg及び2.5mg/kgで、Tau(HT7)がTauトランスジェニックマウスにおいて有意に減少したことを示す。スチューデントt-検定:対応なし、両側、ウェルチ補正、*p<0.05、***p<0.01、n=4
【
図9】BK-40143(1.25mg/kgまたは2.5mg/kg)での処置が、リン酸化(活性)DDR1(pMCK10)の検出によって測定した場合、DDR1のインビボ阻害をもたらすことを示す。このデータは、BK40143がインビボでDDRを強力に阻害することを示す。
【
図10】2.5mg/kgまたは5mg/kgのBK-40143で処理した後、pTau(191)がCamP301Lマウスにおいて低下したことを示す。スチューデントt検定:対応なし、ウェルチ補正、片側、*p>0.05.p=0.02、n=4。
【
図11】Aは、1mM及び100uMのBK40196が、トランスフェクトしたB35細胞におけるα-シヌクレインのレベルを有意に低下させたことを示す。Bは、BK40197が、トランスフェクトされたB35細胞におけるα-シヌクレインレベルを有意に低下させないことを示す。
【
図12A】BK40143がA53Tマウスにおけるα-シヌクレインを有意に低下させることを示す。雄及び雌の12ヶ月齢のA53Tマウスを、2.5mg/kgのBK40143で21日間連続して腹腔内で処置した。
図12Aは、DMSO処理対照A53Tマウスと比較して、BK40143処理動物におけるα-シヌクレインのレベルの有意な39%の低下を示すヒトα-シヌクレインのELISAである。C57BL/6Jマウスを対照として使用し、検出可能な(N.D.)ヒトα-シヌクレインを示さなかった。
【
図12B】BK40143がA53Tマウスにおけるα-シヌクレインを有意に低下させることを示す。雄及び雌の12ヶ月齢のA53Tマウスを、2.5mg/kgのBK40143で21日間連続して腹腔内で処置した。
図12Bは、BK40143がドーパミンの全体的なレベル(30%)を増加させることを示す。BK40143は、A53Tマウスにおけるドーパミン代謝産物であるホモバニリン酸(HVA)のレベルを増加させ、より多くのドーパミン回転を示し、これにより、より良いドーパミン神経伝達がもたらされ得る。
【
図12C】BK40143がA53Tマウスにおけるα-シヌクレインを有意に低下させることを示す。雄及び雌の12ヶ月齢のA53Tマウスを、2.5mg/kgのBK40143で21日間連続して腹腔内で処置した。
図12Cは、ELISAに見られるα-シヌクレインの40%の低下を反映したα-シヌクレインイムノブロットである。
【
図12D】BK40143がA53Tマウスにおけるα-シヌクレインを有意に低下させることを示す。雄及び雌の12ヶ月齢のA53Tマウスを、2.5mg/kgのBK40143で21日間連続して腹腔内で処置した。
図12Dは、ELISAに見られるα-シヌクレインの40%の低下を反映したα-シヌクレインイムノブロットである。
【
図13】BK40143が、A53Tマウスにおける運動速度を改善することを示す。A53Tマウスを、60分間の試験にわたって全体的な運動能についてオープンフィールド試験で試験した。マウスは、移動した合計距離または移動に費やした合計時間に差を示さなかったが、BK40143処理により、マウスの移動速度は有意に増加した。
【
図14A】BK40143が選択的にDDR(約50%)を非活性化するが、SrcまたはAblを非活性化せず、rTG4510タウオパチーマウスモデル中のリン酸化tauを低下させることを示す。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。
図14A、活性化(リン酸化)DDR1のイムノブロットプローブは、1.25及び2.5mg/kgであるが、5mg/kgのBK40143脱活性化DDR1ではないことを実証する。
【
図14B】BK40143が選択的にDDR(約50%)を非活性化するが、SrcまたはAblを非活性化せず、rTG4510タウオパチーマウスモデル中のリン酸化tauを低下させることを示す。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。活性化Srcのイムノブロットプローブである
図14Bは、BK40143がこのチロシンキナーゼに関与しなかったことを実証する。
【
図14C】BK40143が選択的にDDR(約50%)を非活性化するが、SrcまたはAblを非活性化せず、rTG4510タウオパチーマウスモデル中のリン酸化tauを低下させることを示す。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。活性化Ablのイムノブロットプローブである
図14Cは、BK40143がこのチロシンキナーゼに関与しなかったことを実証する。
【
図14D】BK40143が選択的にDDR(約50%)を非活性化するが、SrcまたはAblを非活性化せず、rTG4510タウオパチーマウスモデル中のリン酸化tauを低下させることを示す。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。
図14D、リン酸化Tau(AT8)のイムノブロットプローブは、BK40143の3回用量全てが同じマウスにおいてリン酸化Tauのレベルを41~49%減少させたことを示し、DDR阻害がpTau減少と同時であることを示す。
【
図14E】BK40143が選択的にDDR(約50%)を非活性化するが、SrcまたはAblを非活性化せず、rTG4510タウオパチーマウスモデル中のリン酸化tauを低下させることを示す。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。
図14Eは、2.5mg/kgのBK40143がリン酸化Tauを有意に低下させたことを示すリン酸化Tau(AT181)のELISAである。
【
図15A】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。
図15Aは、1.25及び2.5mg/kgのBK40143がアミロイド-ベータプラークを有意に減少させたことを実証する、細胞外アミロイド-ベータ(6E10)を凝集するためのイムノブロットである。
【
図15B】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。
図15Bは、1.25mg/kg及び2.5mg/kgのBK40143がDDR1をそれぞれ40%及び31%非活性化したことを実証する、リン酸化DDR1のイムノブロットプローブである。
【
図15C】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。
図15Cは、活性化(リン酸化Abl(245))のプローブは、BK40143がAblに関与しなかったことを実証する。
【
図15D】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。1.25mg/kgのBK40143は、ELISAを介して可溶性ヒトアミロイド-ベータを有意に低下させたが、不溶性アミロイド-ベータを有意に低下させなかった。
【
図15E】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。2.5mg/kgのBK40143は、ELISAを介して可溶性ヒトアミロイド-ベータを有意に低下させたが、不溶性アミロイド-ベータを有意に低下させなかった。
【
図15F】BK40143が、トランスジェニックAPPマウスにおいて、アミロイド、リン酸化tauを有意に低下させ、DDR1を非活性化することを示す。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。
図15Fは、2.5mg/kgのBK40143が、ヒトリン酸化tau(Ser396)を80%超低下させたことを示す。
【
図16】BK40143が、APPマウスにおける認知のためのモリス水迷路試験の性能を改善することができたことを示した。測定値には、プラットフォームエントリの数(左パネル)、最初のエントリへの待ち時間(中央パネル)、及び最初のエントリ(右パネル)からプラットフォームへの移動距離が含まれる。群間で有意差はなかったが、1.25mg/kgのBKは、より多くのプラットフォームエントリ、及び第1のエントリまでのより低い待ち時間及び第1のエントリ前のより低い移動距離を伴う性能の増加の傾向を示した。
【
図17】BK40143がAPPマウスの海馬において細胞死を引き起こさないことを示す。代表的な20um海馬切片を物質について染色した(左パネル)。DMSO、1.25mg/kg、及び2.5mg/kgのBK40143についての4倍及び20倍の画像を示す(左パネル)。平均染色強度は、全ての4倍画像におけるニッスル染色の総量としてimagejソフトウェアで定量化した(右パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
対象における神経変性疾患、筋変性疾患、プリオン病、またはリソソーム蓄積疾患を治療または予防するための組成物及び方法が本明細書に提供される。
【0010】
化合物
いくつかの例では、本明細書に記載の化合物のクラスは、式Iによって表される化合物、またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【化5】
【0011】
式Iにおいて、XはNまたはCHである。
【0012】
また、式Iにおいて、Yは、非置換であるかもしくはR1で置換されたC6-10アリール、または
非置換であるかもしくはR1で置換されたC5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルである。
【0013】
また、式Iにおいて、R1は、-(CH2)n-R2、-(CH2)n-C(O)-R2、または-O(CH2)n-R2であり、
【0014】
さらに、式Iにおいて、R2は、-H、-CN、ハロゲン、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C1-3アルキルアミノ、ジC1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC1-3アルキルアミノ、カルボキシC1-3アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C1-3アルキルピペリジニル、ジC1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C1-3アルキルピペラジニル、C1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
【0015】
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR3R4であり、
【0016】
また、式Iにおいて、R3及びR4は、独立して、H、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、または非置換フェニルから選択され、nは、0~3から選択される整数である。
【0017】
式Iのいくつかの実施例では、YはR
1で置換されたベンジルである。
【化6】
【0018】
式Iのいくつかの例では、Yは、メタ位置でR
1で置換されたベンジルである。
【化7】
【0019】
式Iのいくつかの例では、ZはNR
3R
4であり、R
3はベンジルまたはHであり、R
4はベンジルまたはHであり、YはR
1で置換されたベンジルである。
【化8】
【0020】
式Iのいくつかの例では、ZはNR
3R
4であり、R
3はベンジルまたはHであり、R
4はベンジルまたはHであり、Yは、メタ位置でR
1で置換されたベンジルである。
【化9】
【0021】
式Iのいくつかの例では、Zはモルホリニルであり、YはR
1で置換されたベンジルである。
【化10】
【0022】
式Iのいくつかの例では、Zはモルホリニルであり、Yは、メタ位置でR
1で置換されたベンジルである。
【化11】
【0023】
式Iの化合物は、化合物1(BK40197)である。
【化12】
【0024】
式Iの別の化合物は、化合物2(BK40193)である。
【化13】
【0025】
式Iのいくつかの例において、化合物は1つ以上のハロゲン原子を含まない。式Iのいくつかの実施例では、Yは2-m-トルイルである。式Iのいくつかの実施例では、Zはヘテロシクリルである。式Iのいくつかの実施例では、Zはモルホリン-1-イルである。式Iのいくつかの例では、R3はHであり、R4は非置換フェニルである。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、直鎖及び分枝鎖一価置換基を含む。例としては、メチル、エチル、イソブチル、3-ブチニル等が挙げられる。本明細書に記載の化合物及び方法に有用なこれらの基の範囲としては、C1-C20アルキル、C2-C20アルケニル、及びC2-C20アルキニルが挙げられる。本明細書に記載される化合物及び方法に有用なこれらの基のさらなる範囲としては、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C4アルキル、C2-C4アルケニル、及びC2-C4アルキニルが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用されるアルコキシという用語は、単一末端エーテル結合を介して結合されるアルキル基である。本明細書で使用されるヒドロキシという用語は、式-OHによって表される。
【0028】
本明細書で使用されるアミンまたはアミノという用語は、式-NR3R4によって表され、式中、R3及びR4は、それぞれ、本明細書に記載の置換基、例えば、上述の水素、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、またはアルキニル基であり得る。
【0029】
本明細書で使用されるアルコキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはカルボニル分子は、置換または非置換であり得る。本明細書で使用される場合、置換という用語は、アルコキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはカルボニル基の主鎖に結合した位置へのアルコキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはカルボニル基の付加、例えば、これらの分子のうちの1つによる水素の置き換えを含む。置換基の例としては、限定されないが、ヒドロキシ、ハロゲン(例えば、F、Br、Cl、またはI)、及びカルボキシル基が挙げられる。逆に、本明細書で使用される場合、非置換という用語は、アルコキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはカルボニルが、置換、例えば直鎖デカン(-(CH2)9-CH3)を有しない、すなわち、その飽和レベルに相応しい水素の完全な相補体を有することを示す。
【0030】
ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、及びヘテロアルキニルは、アルキル、アルケニル、及びアルキニルと同様に定義されるが、骨格内にO、S、もしくはNのヘテロ原子、またはこれらの組み合わせを含有することができる。本明細書に記載の化合物及び方法に有用なこれらの基の範囲としては、C1-C20ヘテロアルキル、C2-C20ヘテロアルケニル、及びC2-C20ヘテロアルキニルが挙げられる。本明細書に記載される化合物及び方法に伴って有用なこれらの基のさらなる範囲としては、C1-C12ヘテロアルキル、C2-C12ヘテロアルケニル、C2-C12ヘテロアルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C2-C6ヘテロアルケニル、C2-C6ヘテロアルキニル、C1-C4ヘテロアルキル、C2-C4ヘテロアルケニル、及びC2-C4ヘテロアルキニルが挙げられる。
【0031】
シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルという用語は、単一の環式環または複数の縮合環を有する環状アルキル基を含む。例としては、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、及びアダマンタニルが挙げられる。本明細書に記載される化合物及び方法に伴って有用なこれらの基の範囲としては、C3-C20シクロアルキル、C3-C20シクロアルケニル、及びC3-C20シクロアルキニルが挙げられる。本明細書に記載される化合物及び方法に伴って有用なこれらの基のさらなる範囲としては、C5-C12シクロアルキル、C5-C12シクロアルケニル、C5-C12シクロアルキニル、C5-C6シクロアルキル、C5-C6シクロアルケニル、及びC5-C6シクロアルキニルが挙げられる。
【0032】
ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロシクロアルキニルという用語は、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルと同様に定義されるが、環状骨格内にO、S、もしくはN個のヘテロ原子、またはこれらの組み合わせを含有することができる。本明細書に記載される化合物及び方法に伴って有用なこれらの基の範囲としては、C3-C20ヘテロシクロアルキル、C3-C20ヘテロシクロアルケニル、及びC3-C20ヘテロシクロアルキニルが挙げられる。本明細書に記載される化合物及び方法に伴って有用なこれらの基の追加の範囲としては、C5-C12ヘテロシクロアルキル、C5-C12ヘテロシクロアルケニル、C5-C12ヘテロシクロアルキニル、C5-C6ヘテロシクロアルキル、C5-C6ヘテロシクロアルケニル、及びC5-C6ヘテロシクロアルキニルが挙げられる。
【0033】
アリール分子としては、例えば、1つ以上の平面的なセットの、典型的には、それらが交互に単一及び二重共有結合からなるかのように番号付けされた非局在化電子によって連結される6つの炭素原子を組み込む環状炭化水素が挙げられる。アリール分子の例は、ベンゼンである。ヘテロアリール分子は、O、N、またはS等の原子の主環状鎖に沿った置換を含む。ヘテロ原子が導入されると、5つの原子、例えば、4つの炭素及びヘテロ原子のセットは、芳香族系を作製することができる。ヘテロアリール分子の例としては、フラン、ピロール、チオフェン、イマダゾール、オキサゾール、ピリジン、及びピラジンが挙げられる。アリール及びヘテロアリール分子はまた、追加の縮合環、例えば、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、ナフタレン、アントラセン、及びキノリンを含むことができる。別段の記載がない限り、アリール分子及びヘテロアリール分子は、環上の任意の位置に結合することができる。
【0034】
任意選択で、式Iを有する化合物は、Abl、PDGFRα、PDGFRβ、DDR1、DDR2、cKIT、アルギナーゼII、Src、Fyn、VEGFR、及びZacからなる群から選択される1つ以上の受容体チロシンキナーゼを阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施例において、式Iを有する化合物は、Abl、PDGFRα、PDGFRβ、DDR1、DDR2、cKIT、アルギナーゼII、Src、FynまたはVEGRまたはZacを選択的に阻害する。いくつかの例では、式Iを有する化合物は、DDR1及び/またはDDR2を阻害する。
【0035】
本明細書で使用される場合、薬学的に許容される塩という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく、ヒト及び低い動物の組織と接触して使用するのに好適であり、合理的な利益/リスク比に相応しい塩を指す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。本明細書に提供される化合物の薬学的に許容される塩、例えば、ニロチニブ、ボスチニブ、パゾパニブ、及び式Iの化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機及び有機酸ならびに塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容される無毒酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸によって、またはイオン交換等の当技術分野で使用される他の方法を使用して形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ウンデカン、吉草酸塩等が挙げられる。
【0036】
本明細書に記載される化合物は、様々な方法で調製することができる。化合物は、実施例に提供されるものを含む様々な合成方法を使用して合成することができる。これらの方法の少なくともいくつかは、合成有機化学の技術分野で公知である。本明細書に記載の化合物は、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって異なり得るが、そのような条件は、日常的な最適化手順によって当業者によって決定することができる。
【0037】
式Iのバリエーションには、各化合物について記載されるような様々な成分の追加、差し引き、または移動が含まれる。同様に、1つ以上のキラル中心が分子中に存在する場合、全ての可能なキラル変異形が含まれる。加えて、化合物合成は、様々な化学基の保護及び脱保護を伴い得る。保護及び脱保護の使用、ならびに適切な保護基の選択は、当業者によって決定され得る。保護基の化学は、例えば、Wuts,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,5th.Ed.,Wiley&Sons,2014に見出すことができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書に記載の化合物を生成するための反応は、有機合成の当業者によって選択され得る溶媒中で実行され得る。溶媒は、反応が行われる条件下、すなわち、温度及び圧力下で、出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得る。反応を、1つの溶媒または1つより多くの溶媒の混合物中で実行することができる。生成物または中間体形成は、当該技術分野で知られる任意の好適な方法によってモニターされ得る。例えば、生成物形成は、核磁気共鳴分光法(例えば、1Hまたは13C)赤外線分光法、分光光度法(例えば、UV-可視光)もしくは質量分光法などの分光学的手段によって、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによってモニターすることができる。
【0039】
本明細書に記載される化合物のいずれかは、血液脳関門透過性を増強するように修飾され得る。任意選択的に、本明細書に記載の化合物のうちの1つ以上は、化合物(複数可)の血液脳関門透過性を増強する薬剤と共に投与され得る。
【0040】
神経変性疾患、筋変性疾患またはプリオン病の治療または予防方法
神経変性疾患、筋変性疾患、またはプリオン病を治療または予防する方法が本明細書に提供される。神経変性疾患または障害は、中枢神経系の神経変性疾患であり得る。これらには、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、TDP-43を伴う前頭側頭型認知症を含むTDP-43病理、染色体17に関連する前頭側頭型認知症、アミロイドーシス、ピック病、ハンチントン病、軽度認知障害、α-シヌクレイノパチー(例えば、パーキンソン病、レヴィー小体疾患)、多発性硬化症、多系統萎縮症、慢性外傷性脳症、タウオパチー、進行性核上性麻痺、及び大脳皮質基底核変性症を含むグリア細胞質内封入体が含まれるが、これらに限定されない。神経変性疾患はまた、外傷性脳損傷、脳卒中、または感染、例えば、細菌またはウイルス感染(例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス(HSV))によって誘発される二次神経変性疾患であり得る。
【0041】
筋変性疾患または障害としては、筋ジストロフィー(例えば、筋ジストロフィー)、筋障害(例えば、ネマリンミオパシー、マルチ/ミニコアミオパシー、中心核ミオパシー、ミトコンドリアミオパシー、代謝ミオパシーなど)または筋ミオトニー(例えば、先天性ミオトニー、先天性筋緊張性けいれんまたは筋強直性ジストロフィー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
プリオン病または障害には、いくつか例を挙げると、クロイツフェルト・ヤコブ病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトラウスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー病、牛海綿状脳症、慢性消耗病、スクレイピーなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0043】
本発明の方法は、神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を有する対象に、または神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を発症するリスクがある対象に、有効量の式Iを有する化合物、またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化14】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、もしくはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である。
【0044】
いくつかの方法において、式Iを有する化合物は、1つ以上のハロゲン原子を含まない。いくつかの方法において、Yは、式Iを有する化合物中の2-m-トルイルである。いくつかの方法において、Zは、式Iを有する化合物中のヘテロシクリルである。いくつかの方法において、Zは、式Iを有する化合物中のモルホリン-1-イルである。いくつかの方法において、R3は、Hであり、R4は、式Iを有する化合物中の非置換フェニルである。
【0045】
いくつかの方法において、YはR
1で置換されたベンジルである式Iを有する化合物は、対象に投与される。
【化15】
【0046】
いくつかの方法において、Yは、メタ位置においてR
1で置換されたベンジルである式Iを有する化合物は、対象に投与される。
【化16】
【0047】
いくつかの方法では、ZはNR
3R
4であり、R
3はベンジルまたはHであり、R
4はベンジルまたはHであり、YはR
1で置換されたベンジルである、式Iを有する化合物が、対象に投与される。
【化17】
【0048】
いくつかの方法において、ZはNR
3R
4であり、R
3はベンジルまたはHであり、R
4はベンジルまたはHであり、Yはメタ位置でR
1で置換されたベンジルである、式Iの化合物が、対象に投与される。
【化18】
【0049】
いくつかの方法において、本明細書において、Zはモルホリニルであり、YはR
1で置換されたベンジルである、式Iの化合物が、対象に投与される。
【化19】
【0050】
いくつかの方法において、Zはモルホリニルであり、Yはメタ位にてR
1で置換されたベンジルである、式Iの化合物が、対象に投与される。
【化20】
【0051】
本明細書に記載される方法のいずれかで使用され得る式Iの例としては、以下の化合物が挙げられる:
【化21】
【0052】
本明細書に提供する方法は、任意選択で、神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を有するか、または神経変性疾患、筋変性疾患もしくはプリオン病を発症するリスクのある対象を選択することを含む。当業者は、神経変性疾患、筋変性疾患、もしくはプリオン病を有するか、または発症するリスクがある対象を診断する方法を知っている。例えば、以下の試験、遺伝子検査(例えば、TDP-43遺伝子における突然変異の同定)または家族分析(例えば、家族歴)、中枢神経系イメージング(例えば、磁気共鳴イメージング及び陽電子放射断層撮影)、脳波検査、臨床もしくは行動検査(例えば、筋力低下、震え、歩行、または記憶の評価)、または実験室試験のうちの1つ以上を使用することができる。
【0053】
本方法は、任意選択で、第2の治療剤を対象に投与することをさらに含む。第2の治療剤は、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、抗コリン剤、コリン剤(例えば、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)阻害剤)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、COMT阻害剤、ドネペジル、メマンチン、リスペリドン、アマンタジン、リバスチグミン、NMDAアンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、リルゾール、抗精神病剤、抗うつ剤、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ニロチニブ、ボスチニブ、イマチニブ、パゾパニブ等)、及びテトラベナジンからなる群から選択される。第2の治療剤または療法は、式Iを有する化合物の投与前、投与と同時に、または投与後に対象に投与することができる。
【0054】
チロシンキナーゼ阻害剤が第2の治療剤として投与される方法において、チロシンキナーゼ阻害剤は、式Iの化合物によって阻害されるチロシンキナーゼ受容体を阻害しないか、または式Iの化合物と比較して、チロシンキナーゼ受容体に対する選択性が減少しているチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0055】
ニューロン中の毒性タンパク質凝集を阻害または予防する方法、及び/またはニューロンを変性から救出する方法も本明細書に提供される。本明細書で使用される場合、阻害、減少または低下に関する言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化を含む。
【0056】
これらの方法は、有効量の式Iの化合物とニューロンを接触させることを含む。任意選択で、式Iを有する化合物は、化合物1または化合物2である。毒性タンパク質凝集体は、任意選択で、アミロイド生成タンパク質、α-シヌクレイン、タウ、またはTDP-43のうちの1つ以上を含む。アミロイド生成タンパク質は、凝集能力を有するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。アミロイド生成タンパク質の例は、β-アミロイドである。接触は、インビボまたはインビトロで行われる。インビボ方法は、毒性タンパク質凝集体を有する対象または毒性タンパク質凝集体を発症するリスクのある対象を治療する際に有用であり、以下に記載されるように、式Iの化合物を対象に投与することを含む。インビトロ方法は、例えば、移植前に神経細胞を治療する際に有用である。このような場合、一般に式Iの化合物を培養培地に添加する。任意選択的に、標的ニューロンを上記のような第2の治療剤と接触させる。
【0057】
リソソーム蓄積障害を治療または予防する方法
対象においてLSDを治療または予防するための方法も提供される。これらの方法は、有効量の式Iを有する化合物であって、
【化22】
式中、
Xは、NまたはCHであり、
Yは、非置換もしくはR
1で置換されたC
6-10アリール、または非置換もしくはR
1で置換されたC
5-10ヘテロアリール、またはN-メチルピペラジニルであり、
R
1は、-(CH
2)
n-R
2、-(CH2)
n-C(O)-R
2、または-O(CH
2)
n-R
2であり、
R
2は、-H、-CN、ハロゲン、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、フェニル、ピリジニル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、ジC
1-3アルキルアミノ、ヒドロキシルC
1-3アルキルアミノ、カルボキシC
1-3アルキルアミノ、C
3-6シクロアルキルC
1-3アルキルアミノ、ピロリジニル、ヒドロキシルピロリジニル、ヒドロキシルC
1-3アルキルピロリジニル、カルボキシピロリジニル、ピペリジニル、C
1-3アルキルピペリジニル、ジC
1-3アルキルピペリジニル、ピペラジニル、C
1-3アルキルピペラジニル、C
1-4アルコキシカルボニルピペラジニル、またはモルホリニルであり、
Zはヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはNR
3R
4であり、
R
3及びR
4は独立して、H、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、または非置換フェニルであり、
及び
nは0~3から選択される整数である、化合物、
またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を、LSDを有する対象に、またはLSDを発症する危険性がある対象に投与することを含む。
【0058】
いくつかの方法において、式Iを有する化合物は、1つ以上のハロゲン原子を含まない。いくつかの方法において、Yは、式Iを有する化合物中の2-m-トルイルである。いくつかの方法において、Zは、式Iを有する化合物中のヘテロシクリルである。いくつかの方法において、Zは、式Iを有する化合物中のモルホリン-1-イルである。いくつかの方法において、R3は、Hであり、R4は、式Iを有する化合物中の非置換フェニルである。
【0059】
いくつかの方法において、YがR
1で置換されたベンジルである式Iを有する化合物は、対象に投与される。
【化23】
【0060】
いくつかの方法において、Yが、メタ位においてR
1で置換された式Iを有するベンジルである化合物は、対象に投与される。
【化24】
【0061】
いくつかの方法では、ZがNR
3R
4であり、R
3がベンジルまたはHであり、R
4がベンジルまたはHであり、YがR
1で置換されたベンジルである、式Iを有する化合物が、対象に投与される。
【化25】
【0062】
いくつかの方法において、ZがNR
3R
4であり、R
3がベンジルまたはHであり、R
4がベンジルまたはHであり、Yがメタ位置でR
1で置換されたベンジルである、式Iを有する化合物が、対象に投与される。
【化26】
【0063】
いくつかの方法において、Zはモルホリニルであり、YはR
1で置換されたベンジルである、式Iの化合物が、対象に投与される:
【化27】
【0064】
いくつかの方法において、Zはモルホリニルであり、Yはメタ位にてR
1で置換されたベンジルである式Iの化合物が、対象に投与される。
【化28】
【0065】
LSDを治療または予防するために使用することができる式Iの例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化29】
【0066】
任意選択で、式Iの化合物は、Abl、PDGFRα、PDGFRβ、DDR1、DDR2、cKIT、アルギナーゼII、Src、Fyn、VEGFR、及びZacからなる群から選択される1つ以上の受容体チロシンキナーゼを阻害する。いくつかの実施例では、式Iの化合物は、Abl、PDGFRα、PDGFRβ、DDR1、DDR2、cKIT、アルギナーゼII、Src、FynまたはVEGRまたはZacを選択的に阻害する。いくつかの例では、式Iを有する化合物は、DDR1及び/またはDDR2を阻害する。例えば、限定するものではないが、化合物1または化合物2を使用して、DDR1及び/またはDDR2を阻害することができる。別の例では、式Iを有する化合物、例えば、化合物1または化合物2は、DDR1またはDDR2を選択的に阻害する。
【0067】
LSDは、リソソーム機能の欠陥から生じる遺伝性代謝障害である。ほとんどの場合、LSDは、リソソーム中に存在する脂質及び糖タンパク質の分解を担う特異的酵素の欠乏によって引き起こされる。ある場合には、欠損した非酵素リソソームタンパク質またはリソソーム生物発生に関与する非リソソームタンパク質は、LSDを引き起こす。未分解代謝産物の進行性リソソーム蓄積は、広汎性細胞及び組織機能障害、したがって、多全身病理をもたらす。本明細書に提供される方法を使用して治療または予防することができるLSDとしては、I型ムコ多糖症(例えば、ハーラー症候群、ハーラー-シャイエ症候群及びシャイエ症候群)、I型ムコ多糖症(例えば、ハンター症候群)、III型ムコ多糖症(例えば、サンフィリポ症候群A、サンフィリポ症候群B、サンフィリポ症候群C、及びサンフィリポ症候群D)、IV型ムコ多糖症(例えば、モルキオ症候群A及びモルキオ症候群B)、VI型ムコ多糖症(例えば、マロトー・ラミー症候群)、VII型ムコ多糖症(例えば、スライ症候群)、IX型ムコ多糖症(例えば、ナトビッツ症候群)、偽ハーラー多発性ジストロフィー、テイ-サックス、ゴーシェ病、ニーマン-ピック病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、球様細胞白質ジストロフィー、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、α-マンノシドーシス、異染性白質ジストロフィー症、及びポンペ病が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供するLSDは、リソソームクリアランスの減少に関連する疾患または障害の例である。
【0068】
対象の1つ以上の細胞におけるリソソームクリアランスを促進する方法であって、リソソームクリアランスの減少に関連する障害を有する対象に有効量の式Iを有する化合物を投与することを含む方法も提供される。任意選択で、式Iを有する化合物は、化合物1または化合物2である。全体を通して使用されるように、リソソームクリアランスは、対象の1つ以上の細胞のリソソーム内で蓄積している脂質、タンパク質、糖タンパク質、またはそれらの組み合わせが代謝または分解されるプロセスである。リソソームクリアランスの減少は、対照と比較して、例えば、健康な対象の1つ以上の細胞におけるリソソームクリアランスと比較して、対象の1つ以上の細胞における脂質、タンパク質、及び/または糖タンパク質の分解の減少を意味する。リソソームクリアランスの低下に関連する任意の障害は、本明細書で提供される方法を使用して治療することができ、これには全体を通して記載されるLSDのいずれかが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、促進または増加への言及は、対照レベルと比較した、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、400%またはそれ以上の変化を含む。任意選択で、リソソームクリアランスを促進すると、対象の1つ以上の細胞のリソソーム中の既存の凝集体中の脂質、タンパク質、糖タンパク質、またはそれらの組み合わせの量が減少する。任意選択で、リソソームクリアランスを促進することは、対象の1つ以上の細胞のリソソーム中の脂質、タンパク質、糖タンパク質、またはそれらの組み合わせを含む凝集体の形成を阻害または防止する。任意選択で、リソソームクリアランスを促進することは、対照と比較して、対象の1つ以上の細胞における脂質、タンパク質、糖タンパク質、またはそれらの組み合わせを分解または代謝するのに必要な時間の量を減少させる。
【0069】
任意選択で、本明細書に提供される方法において、有効量の式Iを有する化合物は、対照と比較して、対象の1つ以上の細胞における毒性物質の凝集または蓄積を阻害または防止する。本明細書で使用する場合、減少、低下、または阻害に関する言及は、対照レベルと比較した、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化を含む。かかる用語には、対象の1つ以上の細胞における毒性物質の完全な除去が含まれ得るが、必ずしも含まれるわけではない。任意選択で、1つ以上の細胞は、脳細胞、対象の1つ以上の末梢組織内の細胞、またはそれらの組み合わせである。任意選択で、脳細胞はニューロン及び/またはグリア細胞であり得る。本明細書に提供される方法において、細胞内に凝集または蓄積することができる毒性物質は、脂質、タンパク質、または糖タンパク質のうちの1つ以上であり得る。毒性物質(複数可)は、対象の1つ以上の細胞における細胞損傷を増加させ、及び/または細胞死を増加させることができる。本明細書に提供される方法において、毒性物質(複数可)は、対象の1つ以上の細胞内のリソソームまたは他の場所にあり得る。例えば、限定するものではないが、対象の細胞における脂質の蓄積によって特徴付けられるLSDには、スフィンゴリピドース(ゴーシェ病及びニーマン-ピック病を含む)、ガングリオシドーシス(テイ-サックス病を含む)、白質ジストロフィー、ムコ多糖症(ハンター症候群及びハーラー病を含む)、糖タンパク質蓄積障害、ムコリピドーシス、及びII型グリコーゲン蓄積症(ポンペ病)が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
スフィンゴリピドースに蓄積する脂質と糖タンパク質には、脳及び赤血球のスフィンゴミエリン(ニーマン・ピック病)、脳、心臓、及び腎臓のセラミドトリヘキソシドを含む糖脂質(ファブリー病)、オリゴデンドロサイトのガラクトセレブロシド(クラッベ病)、赤血球、脾臓、肝臓のグルコセレブロシド(ゴーシェ病)、ニューロンのGM2ガングリオシド(テイ-サックス病)及びサンドホフ病、GM1ガングリオシド、神経組織のスルファチド化合物(異染性白質ジストロフィー)が挙げられる。
【0071】
リソソーム蓄積疾患としては、1つ以上のリソソーム酵素、例えば、α-L-イズロニデート(ハーラー病、シャイエ症候群、ハーラーシャイエ症候群)、イドロン酸硫酸(ハンター病)ヘパラン硫酸(A型サンフィリポ)、N-アセチル-α-D-グルコサミン(B型サンフィリポ)、CoA-α-グルコサミニド-N-アセテルチトランファー(C型サンフィリポ)、N-アセチル-α-D-グルコサミニド-6-硫酸(D型サンフィリポ及びA型モルキオ症候群)、B-ガラクトース(B型モルキオ症候群)及びN-アセチレガラトサミン(マロテウス-ラミー病)、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、またはケラタン硫酸の欠損を有する、ムコ多糖症(MP)も含まれるが、これらのMP疾患は全て、ヘパラン硫酸塩、デルマタン硫酸塩またはケラタン硫酸塩のリソソーム蓄積の結果である。糖原貯蔵疾患(すなわち、ポンペ病)は、リソソーム中の糖及びリン酸化糖の貯蔵から生じる。
【0072】
本明細書で提供する方法は、任意選択で、LSDを有する対象を選択することを含む。当業者は、LSDを有する対象を診断する方法を知っている。例えば、以下の試験、遺伝子検査(例えば、LSDに関連する変異の同定)または家族分析(例えば、家族歴、親の遺伝子検査)、中枢神経系イメージング(例えば、磁気共鳴イメージング及び陽電子放射断層撮影)、臨床試験または行動試験(例えば、気分障害、攻撃性及び/または認知異常を同定するための評価)、または実験室試験(例えば、異常なレベルの代謝産物または酵素欠損を同定するための血液及び/または尿検査)のうちの1つ以上を使用することができる。
【0073】
本明細書に提供される方法は、任意選択で、有効量の第2の治療剤または療法を対象に投与することをさらに含む。第2の治療剤または療法は、式Iの化合物の投与前、投与と同時に、または投与後に対象に投与することができる。第2の治療剤または療法は、酵素、造血幹細胞、骨髄移植、遺伝子療法、または低分子からなる群から選択される。例えば、限定するものではないが、酵素欠乏症に関連するLSDは、対象における欠乏酵素の量を増加させるために酵素で治療することができる。例えば、イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標))、ベラグルセラーゼアルファ(VPRIV(登録商標))またはタリグルセラーゼアルファ(Elelyso(登録商標))等の組換え酵素による酵素置換療法(ERT)を、I型ゴーシェ病を治療するための第2の治療剤として使用することができる。グリコシルセラミドシンターゼを阻害する小分子、例えば、ミグルスタット及びエリグルスタットも、I型ゴーシェ病を治療するために使用することができる。対象によって産生される欠陥酵素を安定化させるためにシャペロンとして作用する小分子、または対象における酵素によって通常処理される1つ以上の基質の量を低下させる小分子も使用することができる。
【0074】
LSDの症状を軽減する1つ以上の治療剤も投与することができる。例えば、ガバペンチンまたはラモトリジン等の抗てんかん薬を使用して、対象における発作を防止することができる。抗生物質を使用して、肺炎等の細菌感染を治療することができる。他の薬剤には、抗炎症剤(例えば、NSAID及び抗炎症性ステロイド)、ならびに筋肉弛緩剤が含まれるが、これらに限定されない。透析、物理療法、及び手術も、LSDを治療するための療法として本明細書に企図される。
【0075】
LSDを治療または予防するためのいくつかの方法では、第2の治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ニロチニブ、ボスチニブ、イマチニブ、パゾパニブ等)であり得る。したがって、いくつかの例では、チロシンキナーゼ及び式Iの化合物が対象に投与される。チロシンキナーゼが第2の治療剤として投与される方法において、チロシンキナーゼは、式Iの化合物と比較して1つ以上の受容体チロシンキナーゼに対する選択性が異なるチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0076】
薬学的組成物
有効量という用語は、全体を通して使用される場合、例えば、ニューロン中の毒性タンパク質凝集を阻害または防止するか、またはリソソームクリアランスを促進する、所望の生理学的応答を生成するために必要な任意の量として定義される。
【0077】
本明細書に記載の任意の化合物、例えば、式Iの化合物の投与のための例示的な投薬量としては、1日当たり約0.5~約200mg/kg体重の活性化合物の用量が挙げられ、これは、単回用量で、または1日当たり1~4回等の個々の分割用量の形態で投与され得る。あるいは、投与量は、1日当たり約0.5~約150mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約0.5~約100mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約0.5~約75mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約0.5~約50mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約0.5~約25mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約1~約50mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約1~約40mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約1~約30mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約1~約30mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約30mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約20mg/kg体重の活性化合物、1日当たり約10mg/kg体重の活性化合物、または1日当たり約5mg/kg体重の活性化合物とすることができる。
【0078】
任意選択で、投薬量は、約10mg/kg未満であり、約9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1.25、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1mg/kg未満、またはこれらの量の間の任意の投薬量であり得る。投与量は、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約9mg/kg、約0.1mg/kg~約8mg/kg、約0.1mg/kg~約7mg/kg、約0.1mg/kg~約6mg/kg、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約4mg/kg、約0.1mg/kg~約3mg/kg、約0.1mg/kg~約2mg、約0.1mg/kg~約1mg/kg、または約0.1mg/kg~約0.5mg/kgの範囲であり得る。当業者は、阻害剤及びそれを受ける対象の特定の特徴に基づいて、以下に記載される投薬量を調整する。
【0079】
組成物は、式Iの化合物の単回単位用量、例えば、化合物1もしくは化合物2、またはその薬学的に許容される塩の約50mg/kg以下、40mg/kg以下、30mg/kg以下、20mg/kg以下、10mg/kg以下、約5mg/kg以下、約2.5mg/kg以下、もしくは約1.5mg/kg以下の単回単位用量を含むことができる。式Iを有する化合物の1つ以上の単回単位用量、例えば、化合物1または化合物2の複数の単回単位用量を含むパッケージもまた提供される。このパッケージは、本明細書に記載の1つ以上の第2の治療剤の単回または複数回の単位用量をさらに含むことができる。
【0080】
本明細書に記載される式Iを有する化合物のうちの1つ以上を投与するための有効量及びスケジュールは、経験的に決定され得、そのような決定を行うことは、当業者の範囲内である。投与のための投薬範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、低下または遅延される)所望の効果をもたらすために十分に大きいものである。投薬量は、望ましくない交差反応、望ましくない細胞死等の実質的に有害な副作用を引き起こすほど大きくないはずである。概して、投薬量は、阻害剤の種類、対象の種、年齢、体重、全般的な健康、性別、ならびに食生活、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、ならびに特定の状態の重症度に伴って変化し、これは、当業者によって決定され得る。投薬量は、任意の禁忌の場合、個々の医師によって調整することができる。投薬量は変化することができ、1日1回以上の用量投与で投与することができる。
【0081】
式Iを有する化合物及び本明細書に記載の他の薬剤は、薬学的組成物中で供給することができる。これらには、例えば、治療有効量の式Iを有する1つ以上の化合物及び薬学的担体を含む薬学的組成物が含まれる。担体という用語は、化合物または組成物と組み合わせた場合、その意図される用途または目的のために、その化合物または組成物の調製、保管、投与、送達、有効性、選択性、または任意の他の特徴を補助または促進する化合物、組成物、物質、または構造を意味する。例えば、担体は、活性成分のいかなる分解も最小限に抑え、対象における任意の有害な副作用を最小限に抑えるように選択することができる。そのような薬学的に許容される担体には、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、人工脳脊髄液、デキストロース、及び水を含む無菌生体適合性薬学的担体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
意図される投与様式に応じて、薬学的組成物は、固体剤形、半固体剤形、または液体剤形、例えば、錠剤、坐剤、丸薬、カプセル剤、粉末剤、液体剤形、または懸濁液剤形などであってもよく、好ましくは、正確な投薬量の単回投与のために好適な単位剤形であってもよい。これらの組成物は、治療有効量の本明細書に記載の薬剤またはその誘導体を薬学的に許容される担体と組み合わせて含み、加えて、他の医薬製剤、薬学的製剤、担体、または希釈剤を含み得る。薬学的に許容されるとは、許容されない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれが含まれる薬学的組成物の他の構成要素と有害な様式で相互作用することなく、選択された薬剤と共に個体に投与することができる、生物学的ではなく、または他の方法で望ましくない材料を意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、担体という用語は、医薬製剤で使用するための任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または当該技術分野で知られている他の材料を包含する。組成物に使用するための担体の選択は、組成物の意図される投与経路に依存する。これらの材料を含有する薬学的に許容される担体及び製剤の調製は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Loyd V.Allen et al,editors,Pharmaceutical Press(2012)に記載されている。
【0084】
生理学的に許容される担体の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び他の有機酸との緩衝液等の緩衝液、アスコルビン酸を含む抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTA、糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、TWEEN(登録商標)(ICI,Inc;Bridgewater,NJ)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)(BASF;Florham Park,NJ)などが挙げられる。
【0085】
非経口注射に適した本明細書に記載の薬剤(複数可)を含有する組成物は、生理学的に許容される滅菌水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、ならびに滅菌注射液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油等)、及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0086】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分注剤等のアジュバントを含んでもよい。微生物作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の種々の抗菌剤及び抗真菌剤によって促進することができる。等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等も含まれ得る。注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0087】
本明細書に記載の化合物またはその誘導体の経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、及び顆粒が挙げられる。かかる固体剤形では、本明細書に記載の化合物またはその誘導体は、少なくとも1つの不活性な慣例的賦形剤(または担体)、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸ジカルシウム、または(a)充填剤もしくは伸長剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア、(c)湿潤剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、及びグリセロールモノステアリン酸塩、(h)吸着剤、例えば、カオリン及びベントナイト、ならびに(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤、及び丸薬の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0088】
同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖等の賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤としても使用され得る。
【0089】
錠剤、ドラージ、カプセル、丸薬、及び顆粒などの固体剤形は、腸溶性コーティング及び当該技術分野で公知の他のものなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。それらは、不透明化剤を含有してもよく、それらが遅延様式で腸管の特定の部分で活性化合物を放出するような組成物であってもよい。使用可能な埋め込み組成物の例は、高分子物質及びワックスである。活性化合物はまた、必要に応じて、上述の賦形剤のうちの1つ以上と共にマイクロカプセル化形態であり得る。
【0090】
本明細書に記載される化合物は、それらの化合物の哺乳動物への即時放出または送達を可能にする薬学的組成物に組み込むことができる。本明細書に記載の化合物はまた、放出の改変、例えば、それらの化合物の哺乳動物への数日、数週間、または1ヶ月以上の期間の遅延放出または長期放出(例えば、持続放出または制御放出)を可能にする薬学的組成物に組み込むことができる。かかる製剤は、例えば、米国特許第5,968,895号及び同第6,180,608号に記載され、そうでなければ当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知の任意の薬学的に許容される遅延放出または持続放出製剤が企図される。
【0091】
本明細書に記載の化合物またはその誘導体の経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物等の、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。
【0092】
かかる不活性希釈剤に加えて、組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、または香料剤等の追加の薬剤も含むことができる。
【0093】
組成物は、局所的または全身的な治療が所望されるかどうか、及び治療される領域に応じていくつかの方法で投与される。組成物は、経口的、非経口的、静脈内、腹腔内、頭蓋内、脊髄内、髄腔内、脳室内、筋肉内、皮下、空洞内、または経皮的に、いくつかの投与経路のいずれかを介して投与される。薬学的組成物は、例えば、局所適用または局所注射によって、治療を必要とする領域に局所的に送達することもできる。本明細書に記載される投与方法のいずれかの有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から外挿することができる。
【0094】
全体を通して、治療する、治療すること、及び治療は、神経変性疾患、筋変性疾患、プリオン病、またはリソソーム蓄積疾患の1つ以上の効果または症状を軽減または遅延させる方法を指す。対象は、疾患または障害を有すると診断することができる。治療は、症状だけではなく、基礎となる病理を低下させる方法を指すこともできる。対象への投与の効果は、疾患の1つ以上の症状の軽減、疾患の重症度の軽減、疾患の完全切除、または1つ以上の症状の発症もしくは悪化の遅延の効果を有することができるが、これらに限定されない。例えば、開示される方法は、治療前の対象と比較した場合、または対照対象もしくは対照値と比較した場合に、対象における疾患の1つ以上の症状が約10%減少する場合、治療と見なされる。したがって、還元は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、または間の任意の量の還元であり得る。
【0095】
全体を通して使用されるように、対象とは個体を意味する。対象は、成人対象または小児対象であり得る。小児対象には、出生から18歳までの年齢の対象が含まれる。したがって、約10歳未満、5歳未満、2歳未満、1歳未満、6ヶ月未満、3ヶ月未満、1ヶ月未満、1週間未満、または1日未満の小児対象も対象として含まれる。好ましくは、対象は霊長類などの哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。非ヒト霊長類も対象である。対象という用語は、ネコ、イヌ、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)及び実験動物(例えば、フェレット、チンチラ、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモット等)などの飼育動物を含む。したがって、獣医学的使用及び医療製剤が本明細書に企図される。
【0096】
開示されるものは、開示される方法及び組成物のために使用できるか、それらと併用できるか、それらの準備のために使用できるか、またはそれらの生成物である材料、組成物、及び構成要素である。これら及び他の材料が本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、基等が開示される場合、これらの化合物の各々の個々及び集合的な組み合わせ及び置換の具体的な参照が明示的に開示されていない場合があるが、それぞれが本明細書に具体的に企図され説明されていることを理解されたい。例えば、方法が開示され、議論され、方法に含まれる多数の分子に対して行われ得る多数の修飾が議論される場合、方法のそれぞれ及び全ての組み合わせ及び順列、ならびに可能である修飾は、特に反対の指示がない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に企図され、開示される。この概念は、開示される組成物を使用する方法における工程を含むがこれらに限定されない、本開示のすべての態様に適用される。したがって、実施することができる様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程のそれぞれが、開示される方法の任意の特定の方法工程または方法工程の組み合わせを用いて実施することができ、そのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットのそれぞれが具体的に企図され、開示されていると見なされるべきであることを理解されたい。
【0097】
本明細書に引用される刊行物及びそのためにそれらが引用される材料は、参照によりそれらの全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【実施例】
【0098】
チエノ[3,2-b]ピリジン誘導体の合成及び特徴付け
一般情報
市販の7-クロロ-2-ヨードチエノ[3,2-b]ピリジン(1)、m-トリルボロン酸(2)、アニリン(4)、m-アニシジン(5)、モルホリン(6)、試薬、触媒、及び溶媒を、さらなる精製なしに購入した通りに使用した。NMRスペクトルを、重水素化溶媒中で400MHz(1H NMR)及び100MHz(13C NMR)で得た。以下に記載されるように、反応生成物を、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(粒径40~63μm)によって精製した。
【0099】
合成方法及び化合物特性評価
チエノ[3,2-b]ピリジン化合物7~10の合成
【化30】
7-クロロ-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン(3)トルエン15mL中の7-クロロ-2-ヨードチエノ[3,2-b]ピリジン(1)(500mg、1.69mmol)、3-メチルフェニルボロン酸(2)(230mg、1.69mmol)、酢酸パラジウム(II)(19mg、0.084mmol)、トリフェニルホスフィン(44mg、0.169mmol)及び炭酸セシウム(1.101g、3.38mmol)の混合物を還流で24時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水とジクロロメタンの間で分配した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、移動相としてヘキサン-酢酸エチル(8:2)を使用してシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。化合物3を無色固体として72%収率(315mg、1.21mmol)で得た。R
f=0.2(ヘキサン/EtOAc,1:1);
1HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.54(d,J=5.1Hz,1H),7.73(s,1H),7.55-7.52(m,2H),7.34(dd,J=7.8,7.8Hz,1H),7.23(m,1H),7.21(d,J=5.1Hz,1H),2.42(s,3H);
13CNMR(100MHz,クロロホルム-d)δ=158.2,149.6,148.2,139.0,137.6,133.2,133.0,130.4,129.2,127.3,123.8,120.8,118.6,21.5;分析C
14H
10ClNSの計算値:C,64.74;H,3.88;N,5.39。実測値:C,64.76;H,4.05;N,5.28。
【0100】
求核芳香族置換反応の一般的手順
5mLの圧力容器に、7-クロロ-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン(3)(0.3mmol)、アミン(0.6mmol)、及びDMSO(1.0mL)を充填した。次いで、圧力容器を100℃の油浴中に配置し、16時間~4日間撹拌した。
1HNMR分析に基づいて完全変換を達成した後、反応混合物をEtOAcで抽出し、水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。粗生成物を、以下に記載するように、移動相としてヘキサン-酢酸エチルを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【化31】
【0101】
N-フェニル-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-アミン(7)化合物7を、上記の一般的手順に従って、100℃で16時間後、1mLのDMSO中の7-クロロ-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン(78mg、0.3mmol)及びアニリン(56mg、0.6mmol)から94%収率(89mg、0.282mmol)の無色固体として得た。R
f=0.2(ヘキサン/EtOAc、1:1)、
1HNMR(400MHz、クロロホルム-d)δ=8.38(m、1H)、7.70(s、1H)、7.57-7.50(m、2H)、7.43-7.38(m、2H)、7.37-7.23(m、3H)、7.21-7.17(m、2H)、6.90(m、1H)、6.15(s、1H)、2.43(s、3H)、
13CNMR(100MHz、クロロホルム-d)δ=158.5、148.9、146.5、145.9、139.4、139.0、133.7、129.9、129.7、129.6、129.1、127.3、124.8、123.8、122.7、122.5、121.6、120.7、102.6、21.6;分析C
20H
16N
2Sの計算値:C、75.92、H、5.10、N、8.85。実測値:C、75.71、H、5.32、N、9.11。
【化32】
【0102】
N-(3-メトキシフェニル)-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-アミン(8)化合物8を、上記の一般的手順に従って、100℃で16時間後、1mLのDMSO中の7-クロロ-2-(m-トリル)チエノ[[3,2-b]ピリジン(78mg、0.3mmol)及びm-アニシジン(74mg、0.6mmol)から92%収率(95mg、0.276mmol)の無色固体として得た。R
f=0.2(ヘキサン/EtOAc,2:1);
1HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.41(d,J=5.6Hz,1H),7.70(s,1H),7.58-7.51(m,2H),7.36-7.29(m,2H),7.21(d,J=7.9Hz,1H),6.96(d,J=5.6Hz,1H),6.87(dd,J=7.9,2.4Hz,1H),6.83(dd,J=7.8,7.7Hz,1H),6.73(dd,J=7.9,2.5Hz,1H),6.07(s,1H),3.83(s,3H),2.44(s,3H);
13CNMR(100MHz,クロロホルム-d)δ=160.8,158.6,148.9,146.5,145.6,140.7,139.0,133.7,130.5,130.0,129.1,127.3,123.8,121.7,120.9,114.5,110.1,108.1103.0,55.5,21.6;分析C
21H
18N
2OSの計算値:C、72.80、H、5.24、N、8.09。実測値:C,72.53;H,5.61;N,8.19。
【化33】
【0103】
4-(2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)モルホリン(9)化合物9を、上記の一般的手順に従って、100℃で4日後、1mLのDMSO中の7-クロロ-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン(78mg、0.3mmol)及びモルホリン(52mg、0.6mmol)から98%収率(91mg、0.294mmol)の無色固体として得た。R
f=0.2(ヘキサン/EtOAc,1:1);
1HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.48(d,J=5.4Hz,1H),7.69(s,1H),7.59-7.52(m,2H),7.34(dd,J=7.9,7.8Hz,1H),7.20(dd,J=7.9,2.1Hz,1H),6.64(d,J=5.4Hz,1H),4.03-3.85(m,4H),3.54-3.39(m,4H),2.43(s,3H);
13CNMR(100MHz,クロロホルム-d)δ=158.8,153.0,149.0,146.6,139.0,133.6,129.9,129.1,127.2,123.7,123.4,121.4,105.9,66.9,49.7,21.6;分析C
18H
18N
2OSの計算値:C,69.65;H,5.85;N,9.02。実測値:C,69.89;H,5.72;N,9.38。
【化34】
【0104】
3-((2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)アミノ)フェノール(10)。乾燥ジクロロメタン(3mL)中のN-(3-メトキシフェニル)-2-(m-トリル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-アミン(8)(69mg、0.2mmol)の溶液に、不活性雰囲気下、-78℃で三臭化ホウ素(4当量)を添加した。混合物を4時間撹拌し、反応温度を0℃にした。1M HClでクエンチした後、粗反応混合物をEtOAcで抽出し、水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。粗生成物を、移動相としてDCM-MeOH(19:1)を使用してシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。化合物10を97%収率(64mg、0.194mmol)の無色固体として得た。Rf=0.4(DCM/MeOH、9:1)、1HNMR(399MHz、メタノール-d4)δ=8.22(d、J=6.7Hz、1H)、7.70(s、1H)、7.65(s、1H)、7.61(dd、J=7.5、2.1Hz、1H)、7.40(dd、J=7.6、7.6Hz、1H)、7.34-7.31(m、2H)、6.93(d、J=6.7Hz、1H)、6.88(m、1H)、6.85-6.79(m、2H)、2.44(s、3H)、13CNMR(100MHz、メタノール-d4)δ=160.1、154.7、153.5、149.5、141.1、140.7、139.5、133.3、132.4、131.9、131.7、130.5、128.2、125.0、117.4、115.7、114.9、113.5、102.7、21.3、Anal。C20H16N2OSの計算値:C,72.26;H,4.85;N,8.43。実測値:C,72.29;H,4.97;N,8.61。
【0105】
細胞培養
ラット神経芽腫B35細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地中(DMEM)で増殖させ、37℃で5%CO2と共にインキュベートした。実験のために、細胞を12ウェルプレート(カタログ番号150628,ThermoFisher,Waltham,MA)に移し、少なくとも70%コンフルエンスまで増殖させた。FugeneHDトランスフェクション試薬(カタログ番号E2311,Promega,Madison WI)を使用して、P301Lタウ(カタログ番号30145,Addgene)cDNA 3μgまたはヒトα-シヌクレインcDNA 3μgで一過性トランスフェクションを行った。DMSOまたは5uLのDMSO等価物に溶解した1mM、100μM、10μM、1μM、0.1μM、0.01μM、及び0.001μMで5時間細胞を処理した。 細胞培養培地を収集し、ナトリウム-トリス、EDTA、NP-40(STEN)緩衝液を使用して細胞を収穫し、4℃にて10,000×gで20分間遠心分離し、上清を収集した。細胞生存率を、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ(カタログ番号88954,Thermofisher)及びMTTアッセイ(カタログ番号V13154,Thermofisher)を介して決定した。培養培地を除去し、0.2mlの1×STEN緩衝液(50mM Tris(pH7.6)、150mM NaCl、2mM EDTA、0.2% NP-40、0.2% BSA、20mM PMSF及びプロテアーゼカクテル阻害剤)を細胞層に添加することによってタンパク質を抽出し、氷上で10分間インキュベートした。ウェルの底部を削り、さらに10分間氷上でインキュベートさせた。細胞溶解物を収集し、-80℃で保管し、追加の分析に使用した。
【0106】
薬物調製
それぞれ310.1及び316.4g/molの分子量を有する化合物1(BK40197)及び化合物2(BK40143)をジメチルスルホキシド(DMSO)中で最終濃度100μM、10μM、1μM、0.1μM、0.01μM、及び0.001μMに希釈した。薬物を-80℃で保管した。
【0107】
MTTアッセイ
細胞生存率を測定するために、細胞を、50μLの(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド(MTT))を含有する500μLのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)と共に、37℃及び5%CO2で4時間インキュベートした。培地を吸引して、125μLの培地が残るようにした。ホルムザン塩を250uLのDMSO中に溶解させた。吸光度を、125μLの培地及びMTTで含有するブランク、ならびに250μLのDMSOに対して、570nmにおいて読み取った。
【0108】
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイ
細胞毒性は、初回投与の5時間後に薬物に曝露した後に、損傷した細胞から細胞培地に放出されるサイトゾル酵素であるLDHの評価によって定量的に測定した。細胞培養培地を収集し、アリコートを乳酸塩及びNAD+とカップリングした。LDHは、乳酸塩をピルビン酸塩に変換してNADHを産生する反応を触媒する。NADHは、次には、テトラゾリウム塩(INT)を赤色のホルマザン生成物に還元する。培地中のLDHの量は、490nmで測定したホルムザンの量に比例する。測定器からのバックグラウンド信号を測定するために、680nmでの吸光度を490nmでの吸光度から差し引いてLDH活性を計算した。
【0109】
細胞培養トランスフェクション及び処理
FuGene(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Promega Corporation,Madison,WI)を、ラット神経芽腫B35細胞へのα-シヌクレインの一過性トランスフェクションを実施するために使用した。細胞を12ウェルディッシュ中で増殖させた。12μgのcDNA、2%FBSを含有する540μgのDMEM、及び60μlのFuGene(登録商標)HDトランスフェクション試薬を含む混合物を10分間インキュベートした。細胞を、24時間、50μlのFuGene(登録商標)HDトランスフェクション試薬/DNA混合物で処理した。細胞をトランスフェクション後に採取し、培地を吸引し、細胞を200ulのTris EDTA NP40ナトリウム(STEN)溶解緩衝液で処理した後、プレートからスクラップし、1.5mlの遠心チューブに収集した。
【0110】
マウス処置
実験は、(a)マウス胸腺細胞抗原1、シータ、Thy1、プロモーターの制御下にあるSwedish(K670N/M671L、Dutch E693Q、Iowa D694N変異)を含む、ニューロン由来のヒトAPP遺伝子、770アイソフォームを発現するTgAPPマウス(Davis et al.“Early-onset and robust cerebral microvascular accumulation of amyloid beta-protein in transgenic mice expressing low levels of a vasculotropic Dutch/Iowa mutant form of amyloid beta-protein precursor,” The Journal of biological chemistry.279(19):20296-20306(2004)、(b)ヒトP301Lタウを発現し、tet応答エレメント(TREまたはtetO)及びヒト4反復微小管関連タンパク質タウ(4R0NTau P301L)のP301L変異体の発現を指示するマウスプリオンタンパク質プロモーター配列(PrPまたはPrnp)を有する、rTg4510マウス(Santacruz et al.“Tau suppression in a neurodegenerative mouse model improves memory function,” Science 309(5733):476-48 (2005))、または(c)プリオンプロモーターの制御下でアルギニンからスレオニンへの変異体(A53T)ヒトα-シヌクレインを発現するTgA53Tマウス(Giasson et al.“Neuronal alpha-synucleinopathy with severe movement disorder in mice expressing A53T human alpha-synuclein,” Neuron 34(4):521-533 (2002))で行った。マウスは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(カタログ番号D128-500,FisherScientific,Hampton,NH)中に溶解した、1.25mg/kg、2.5mg/kg、もしくは5.0mg/kgのBK40143(BK)(Medicinal Chemistry Program,Georgetown University)、ニロチニブ(Nilo)(カタログ番号S1033,Selleckchem Inc.,Houston,TX)、ボスチニブ(bos)(カタログ番号S1014,Selleckchem Inc.)、またはBK+Nilo、BK+Bos、もしくはNilo+Bosの組み合わせ溶液または同等用量のDMSOのみを含む腹腔内(i.p.)注射の処置を毎日受けた。処置期間は、図の凡例で指定されているように7日連続または21日連続のいずれかであった。
【0111】
Xmap
Xmapテクノロジーは、内部で2つの蛍光色素でコード化された磁気微粒子を使用している。これらの2つの染料の正確な組み合わせを通して、試料内で複数のタンパク質を測定した。これらの球のそれぞれを特異的捕捉抗体でコーティングする。捕捉抗体は検出抗体及びレポーター分子に結合し、ビーズの表面上の反応を完了する。5mg/kgで処理したトランスジェニックTg4510マウス由来の25μlの可溶性脳組織溶解物。2.5mg/kg及び1.25mg/kgのBK40143またはDMSOを、25μlの検出抗体溶液、及び以下の分析物、ヒトホスホタウ(181)を含有する25μlの混合ビーズ溶液と共に室温で一晩(16~20時間)インキュベートした。プレートを広範囲に洗浄した後、25μlのストレプトアビジン-フィコエリトリンと共に試料をインキュベートし、各ウェルに加え、室温で30分間インキュベートした。次いで、試料を洗浄し、100ulのシース流体に懸濁した。再懸濁後、試料を、Xponentソフトウェアを用いてMAGPIX上に流した。メジアン蛍光強度(MFI)データを、試料中の分析物濃度を計算するための5パラメータロジスティクスまたはスプライン曲線フィッティング法を使用して分析した。
【0112】
タンパク質抽出
DMSO処理マウスと比較して処理したマウス由来の脳を、STEN溶解緩衝液[50mM トリスナトリウム(pH7.6)、150mM NaCl、2mM EDTA、0.2%NP-40、0.2%BSA、20mM PMSF及びプロテアーゼカクテル阻害剤]中で均質化し、48℃で20分間10000gで遠心分離し、可溶性タンパク質画分を含有する上清を収集した。上清を、SDS-NuPAGEビス-トリスゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)及びELISA上でウェスタンブロット(WB)によって解析した。
【0113】
薬物動態研究
C57BL/6Jマウスに、BKのi.p.注射を1回注射した。脳及び血清を2、4、6、または12時間(1薬物当たりn=18、1用量及び時点当たりn=3)で収集した。ビヒクル(DMSO)を注入した動物をバックグラウンド減算に使用した。薬物のストック溶液(それぞれ約1mg/mL)をメタノール/ジクロロメタン(50:50)中で調製した。各標準の連続希釈液を、メタノール/HPLCグレード水(50:50)中で別個に試験のために作製した。キャリブレーション曲線標準及び品質試料(QC)の調製は、ブランク試料中のストック溶液を混合することによって行った。血清及び脳試料を-80℃で保管した後、調製前に室温に解凍した。解凍した血清試料(20uL)を、100uLの水を含有するチューブに輸血した。500uLの抽出溶媒、アセトニトリル/メタノール(50:50)を試料に加えた。混合物をボルテックスし、20分間氷上でインキュベートして、タンパク質沈殿を加速させた。インキュベーション後、試料を再びボルテックスし、13,000rpmで4℃にて20分間遠心分離した。その後、上清を収集し、新しいチューブに移し、高速真空を使用して乾燥させ、200uLのメタノール/水(50:50)中で再構成した。混合物を、13,000rpmで4℃にて20分間200で再び遠心分離した。次いで、上清を質量スペック試料チューブキャップに収集し、質量分析器内で実行した。脳については、各動物からの解凍された脳試料の小さな部分を平らな底管に移した。200uLのメタノール/水(90:10)を添加し、組織を均質化した。続いてアセトニトリルを、タンパク質沈殿を促進する混合物に添加した。次いで、この混合物を氷上で10分間インキュベートした。インキュベーション後、試料をボルテックスし、13,000rpmで4℃にて20分間210で遠心分離した。その後、上清を収集し、新しいチューブに移し、高速真空を使用して乾燥させ、200uLのメタノール/水(50:50)中で再構成した。混合物を、4℃にて、20分間、13,000rpmで遠心分離した。上清を質量スペック試料チューブキャップに収集し、質量分析器内で実行した。試料を、多重反応モニター(MRM)モードで動作するトリプル四極質量分析器(Xevo-TQ-S、Waters Corporation)を用いて、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×50mmカラム上でオンラインで分解した。試料のコーン電圧及び衝突エネルギーを、MassLynxソフトウェア(Waters Corporation)の「IntelliStart」機能を使用して、両方の分析対象物に対して最適化して、親イオン及び娘イオンの最大イオン強度を得た。機器パラメータを最適化して、親[m/z=438.25]及び娘イオン[m/z=357.33]に対するイオン化の最大特異性及び感度を得た。分析対象物のすべてのMRMQ1/Q3イオン対からの信号強度をランク付けして、MRMに基づく定量化のための最も強度の高い前駆体及び断片イオン対の選択を確実にした。このアプローチは、各断片イオン種の生成を最大化するコーン電圧及び衝突エネルギーの選択をもたらした。6~8点較正曲線を用いて分析を行い、試料キューをランダム化し、溶媒ブランクを注入して試料のキャリオーバーを評価した。MRMデータを、TargetLynx4.1を使用して処理した。分析物の相対定量値を、内部標準物のピーク面積に正規化された試料の移行のピーク面積の比率を計算することによって決定した。
【0114】
組織収集とタンパク質抽出
動物をキシラジンとケタミンの混合物(1:8)で深く麻酔し、心臓穿刺を介して500μlの全血を収集し、2000×gで遠心分離して血液細胞を沈殿させ、血清を収集した。血管から残りの血液を洗い流し、汚染を低下させるために、動物に25mlの1×リン酸緩衝食塩水(PBS)で5分間灌流した。脳を収集し、1.0mlの1×STEN緩衝液中で均質化した。均質化した試料を12,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、上清(可溶性タンパク質画分)を収集し、-80℃で保管した。上清を除去した後、不溶性タンパク質を抽出した。組織ペレットを1×STEN緩衝液で洗浄した。ペレットを750ulの70%ギ酸に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした後、1時間、4℃にて28,000gで遠心分離した。上清を「不溶性画分」として収集した。70%ギ酸画分からの試料を-80℃で保管し、使用直前に1Mのトリス塩基(1:20)で中和した。タンパク質レベルを、Pierce BCAタンパク質アッセイ(ThermoFisher,23225)を製造業者の指示を介して使用して定量した。
【0115】
イムノブロット解析
マウス脳溶解物から抽出した可溶性及び不溶性タンパク質を、SDSNuPAGEBis-Trisゲル(カタログ番号NP0301BOX、Invitrogen)上で実行し(1:1000)マウスモノクローナルAT180(カタログ番号MN1040、ThermoFisher)及び(1:1000)マウスモノクローナルAT8(カタログ番号MN1020、ThermoFisher)を有するリン酸化tau、(1:3000)マウスモノクローナルTau-5抗体を有する総tau、(1:250)ウサギポリクローナルMCK10(カタログ番号PA5-64780、ThermoFisher)を有するリン酸化DDR1、(1:5000)ウサギポリクローナル(カタログ番号PA3-16717、ThermoFisher)を有するユビキチン、(1:1000)ウサギモノクローナル(カタログ番号mAb12994、細胞シグナル伝達、Danvers、MA)を有するAtg5、(1:1000)ウサギモノクローナル(カタログ番号mAb3495、細胞シグナル伝達)を有するベクリン-1、及び(1:8000)ウサギポリクローナル(カタログ番号MAB1501R,EMDMillipore,Burlington,MA)を有するアクチンを調査した。ブロットを、Amersham(商標)Imager 600(GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)上のSuper Signal(商標)West Dura Extended Duration Substrate(カタログ番号37071,ThermoFisher)を使用して可視化した。Westernブロットを、ImageJソフトウェアを使用したデンシトメトリーによって定量化した。
【0116】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
ヒトα-シヌクレイン及びp-tauELISAを、50μlの一次抗体(3時間)及び100μlの抗ウサギ二次抗体(30分)で検出した細胞溶解物50μl(1μg/μl)を室温で使用して行った。α-シヌクレインレベルを、ヒト特異的ELISA(Invitrogen Inc.,Carlsbad,CA)をメーカーのプロトコルに従って使用して測定した。タウを、製造業者のプロトコルに従って、セリン396で特定のタウを使用して測定した。各試料を複製した。
【0117】
総Tau、AB40、及びAB42(Milliporeカタログ番号HNABTMAG60K)のELISAは、Milliplexed ELISAを使用して実施した。上記のように、Xマップ技術は、2つの蛍光色素で内部符号化された磁気微粒子を使用する。これらの2つの染料の正確な組み合わせを通じて、複数のタンパク質が試料内で同時に測定される。これらの球のそれぞれを特異的捕捉抗体でコーティングする。捕捉抗体は検出抗体及びレポーター分子に結合し、ビーズの表面上の反応を完了する。ベースライン及び52週間時のプラセボ及びレスベラトロールを含む全ての試料を、同じ試薬を使用して並行して分析した。合計25μlの可溶性タンパク質を、総Tau、AB40、及びAB42を含有する25μlの混合ビーズ溶液と共に4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、試料を、室温で1.5時間、25μlの検出抗体溶液と共にインキュベートした。ストレプトアビジン-フィコエリトリン(25μl)を、25μlの検出抗体溶液を含有する各ウェルに添加した。次いで、試料を洗浄し、100μlのシース流体に懸濁した。次いで、試料を、Xponentソフトウェアを用いてMAGPIX上で実行した。試料中の分析物濃度を計算するための5パラメータロジスティクスまたはスプライン曲線フィッティング法を使用して、メジアン蛍光強度(MFI)データを分析した。特定のp-Tau ser396(Invitrogen,KHB7031)、ヒトTau thr181(Invitrogen,KHO0631)及びAβ1-42(Invitrogen,KHB3442)を、1×STEN緩衝液中の中脳溶解物からの組織可溶性抽出物に関する製造業者のプロトコルに従って行った(上記参照)。
【0118】
行動
Rotarod:マウスを、各マウスについて個々のタイマーを装備した加速ロッド(カタログ番号76-0770,Panlab,Harvard Apparatus)上に配置した。マウスを、4回の試行、3回のトレーニング、及び1回の試験にわたって試験した。マウスを、少なくとも5分間、毎分一定の4回転(rpm)でロッド上に留まるように訓練し、その後、速度は300秒間にわたって徐々に40rpmまで増加させ、落下までの待ち時間を測定した。
【0119】
オープンフィールド:マウスをオープンフィールドアリーナ装置(25cm×25cm)に60分間配置した。動物は、アリーナフロアに沿ってフォトセルビームによって追跡された。データを収集し、60分間の試験中に総走行距離(cm)、総移動時間(秒)、及び速度(距離/時間)について分析した。本ソフトウェアでは、センターゾーンを装置の中心に(25cmx25cm)とデジタルで定義し、センターゾーンのエントリ、センターゾーンの移動距離(cm)、及び60分間の試行中にセンターゾーンに費やした時間(秒)を記録した。
【0120】
モリス水迷路:水迷路装置は、25℃に維持された水で満たされた直径4フィートのプール(San Diego Instruments)で構成され、白色の塗料で不透明にされ、4つの象限ゾーン(ANYMazeソフトウェア、San Diego Instruments)にデジタルで分割された。プールの周囲の壁には、迷路外の視覚的手がかりが掛けられ、「プラットフォームゾーン」の中央の水の表面より1cm下に隠れたプラットフォーム(直径4インチ)が水没した。トレーニングは、5日目のプローブトライアルに至るまでの4日間、1日3回の試行で構成されていた。マウスを、非プラットフォーム象限ゾーンごとに1つである、3つのエントリポイントのうちの1つに導入し、1日の経過にわたってすべてのエントリポイントでプールに導入した。プラットフォームの位置は、トレーニング期間を通じて一定のままであった。マウスはプラットフォームを位置決めするために60秒与えられ、除去される前にプラットフォーム上に10秒間留まった。60秒以内にプラットフォームを見つけなかったマウスをプラットフォーム上に10秒間配置し、迷路から除去した。5日目のプローブトライアル中に、プラットフォームを取り外し、トラッキングソフトウェア(ANYMaze)を使用して、プラットフォーム、プラットフォーム象限ゾーン、水泳速度、及び水泳経路を見つけるための待ち時間を記録した。このトレーニング及びプローブトライアルパラダイムは、治療前及び治療後に実施された。
【0121】
大理石埋設試験:大理石埋設試験は、修正を加えて以前に記載されたように実施した[35]。簡潔に述べると、直径15mmの20個の大理石を、ダブルサイズのラットケージ内の5cmの深いコーンコブベッドの表面上に、それぞれ4個の大理石の5列を4cm間隔で置いた。マウスを30分間ケージ内に放置した。治療について盲目である観察者は、埋められた大理石の数を数えた。サイズの3分の2超が埋まった大理石を数えた。各マウスを処置前及び処置後に1回評価し、データを動物当たりの埋設された大理石のパーセンテージの平均±SEMとして報告した。クスカル-ウォリス試験、続いてウィルコクソン事後試験を使用して、薬物またはDMSOで処置したマウスにおける大理石埋設の統計学的有意性を決定した。
【0122】
統計分析
全ての統計解析をGraphPad Prism,バージョン8.0(GraphPad software Inc.)を使用して行った。マウスを伴う実験については、各実験で使用した試料サイズ(n)及び雌:雄の割り当てを図の凡例に示す。細胞株を使用する実験については、独立した生物学的複製物の数が報告される(N)。データは平均±SEMとして提示する。2つの群で平均を比較する場合、両側スチューデントt検定またはウェルチt検定を行った。複数の群における平均を比較するとき、分散の一方向分析(ANOVA)、続いて、テューキーの多重比較事後試験を行った。アスタリスクまたはポンド記号は、グループ間またはグループ内の実際のp値有意性(*<0.05、**<0.01、***<0.001、***<0.0001)を表し、個々の図の凡例で記述されている。
【0123】
結果
図1(左パネル及び中央パネル)に示すように、16時間の処置後、対照と比較して、LDHの減少及びMTTの増加によってそれぞれ証明されるように、1μMのBK41043で処置したB35細胞において神経保護効果が観察された。
図1(右パネル)は、5時間の処置後、LDHの減少を介して細胞生存率が段階的に増加し、BK40143の濃度が減少したことを示す。
【0124】
図2は、pTau(左パネル)またはα-シヌクレイン(右パネル)で24時間トランスフェクションし、BK41043で5時間処理した後のB35細胞の細胞生存率を示す。
【0125】
B35細胞を完全培地で増殖させ、ヒト変異体Tau及びα-シヌクレインについて、FuGeneHDトランスフェクション試薬を製造業者の指示に従って使用してcDNAでトランスフェクトした。24時間で、トランスフェクションは、ELISAを介して、トランスフェクションされていない細胞と比較して、著しく高い量のホスホ-Tau及びα-シヌクレインを産生した。
図3は、24時間トランスフェクション後のpTau(181)のレベルを示し(左パネル)、BK41043が、pTauトランスフェクションしたB35細胞(右パネル)中のpTau(181)レベルを対照レベルまで戻すことを示す。このことは、実験中に毒性が増加していないことを示すLDHレベルへの変化なしに起こった。
図4は、24時間トランスフェクション後のα-シヌクレインのレベルを示し(左パネル)、BK41043がα-シヌクレイントランスフェクションB35細胞においてα-シヌクレインを低下させなかったことを示す(右パネル)。
【0126】
図5は、BK40197で5時間処理した後のB35細胞の細胞生存率を示す。
図6は、BK40143が、7日間の処置後に、Tau発現トランスジェニックマウスにおいてpTau(181)を低下させることを示す。PTau(181)のレベルをELISAを介して測定した。
【0127】
図7は、BK-40143(1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5.0mg/kg)での処置が、トランスジェニックマウスにおけるpTau(231)(AT180)のレベルに影響を及ぼさなかったことを示す。
【0128】
図8は、BK-41043による7日間の処置後、1.25mg/kg及び2.5mg/kgのTauトランスジェニックマウスにおいて、Tau(HT7)が有意に減少したことを示す。
【0129】
図9は、BK-40143(1.25mg/kgまたは2.5mg/kg)での処理が、リン酸化DDR1(pMCK10)の検出によって測定したように、DDR1のインビボ阻害をもたらすことを示す。
【0130】
図10は、2.5mg/kgまたは5mg/kgのBK-40143で処理した後、CamP301LマウスにおいてpTauが減少したことを示す。
【0131】
図11に示すように、BK40196は高濃度でα-シヌクレインを減少させ、BK40197はα-シヌクレインを減少させない。1mM及び100uMのBK40196は、トランスフェクトしたB35細胞におけるα-シヌクレインのレベルを有意に低下させた(
図11A)。BK40197は、トランスフェクトしたB35細胞においてα-シヌクレインレベルを低下させる能力を一切示さない(
図11B)。
【0132】
図12Aに示すように、BK-40143は、DMSOで処置した対照A53Tマウスと比較して、A53Tマウスにおいてαシヌクレインを有意に減少させた。C57BL/6Jマウスを対照として使用し、検出可能な(N.D.)ヒトα-シヌクレインを示さなかった。
図12Bは、BK-40143がドーパミンの全体レベルを有意に増加させる(約30%)ことを示すが、BK-40143は、A53Tマウスにおいてドーパミン代謝産物であるホモバニリン酸(HVA)のレベルを増加させ、これは、より多くのドーパミンのターンオーバーを示し、より良好なドーパミン神経伝達をもたらし得る。α-シヌクレイン(ThermoFisher,MA1-12874)についての
図12C及び12Dに示すイムノブロットは、ELISAに見られるα-シヌクレインの40%の低下を反映した。
【0133】
動物研究はまた、BK-40143がA53Tマウスにおける運動速度を改善したことを示した。A53Tマウスを、60分間の試験にわたって全体的な運動能についてオープンフィールド試験で試験した。マウスは、移動した総距離または移動に費やした総時間においていかなる差も示さなかったが、BK-40143処理により、それらの移動速度が著しく増加した(
図13)。これは、BK後のHVAのレベルの増加によって示されるように、より良好なドーパミン神経伝達の反映であり得る(
図12B)。
【0134】
また、BK40143がSrcまたはAblではなく、DDRを選択的に不活性化し、rTG4510タウオパチーマウスモデルにおいてリン酸化されたタウを低下させることも示された。雄及び雌の3ヶ月齢のrTG4530マウスを、1.25mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgのBK40143またはDMSOで7日間連続して腹腔内処置した。活性化(リン酸化)DDR1のイムノブロットプローブである
図14Aは、1.25及び2.5mg/kgのBK40143がDDR1を不活性化したが、5mg/kgではそうではなかったことを実証する。活性化Srcのイムノブロットプローブである
図14Bは、BK-40143がこのチロシンキナーゼに結合しないことを示す。活性化Ablのイムノブロットプローブである
図14Cは、BK-40143がこのチロスキンキナーゼ、すなわち、DDR1に結合しないことを実証する。リン酸化Tau(AT8)のプローブの際、
図14Dは、BK-40143の3回用量全てがリン酸化Tauのレベルを41~49%減少させたことを示す。
図14Eに示すように、リン酸化Tau(AT181)のELISAは、2.5mg/kgのBK40143がリン酸化Tauを有意に低下させることを明らかにした。
【0135】
BK40143はまた、アミロイド、リン酸化tau、及び非活性化DDR1を有意に低下させた。雄及び雌の7ヶ月齢のAPPマウスを、1.25及び2.5mg/kgのBK40143またはDMSOで21日間連続して腹腔内で処置した。細胞外アミロイドβを凝集するためのイムノブロット(6E10)は、1.25及び2.5mg/kgのBK40143がアミロイドβプラークを有意に低下させたことを実証した(
図15A)。リン酸化DDR1のプローブは、1.25mg/kg及び2.5mg/kgのBK40143がDDR1をそれぞれ40%及び31%不活性化したことを示した(
図15B)。活性化(リン酸化Abl(245))についてのプローブは、BK40143がAblと結合しないことを実証した(
図15C)。
図15D及び15Eは、ELISAを介して、1.25及び2.5mg/kgのBK-40143が、可溶性ヒトアミロイド-βを有意に低下させたが、不溶性アミロイド-βを有意に低下させなかったことを示す。また、2.5mg/kgのBK40143が、ヒトリン酸化tau(Ser396)を80%超有意に低下させることも示される(
図15F)。
【0136】
また、BK40143は、APPマウスにおける認知のためのモリス水迷路試験の性能を改善することができることも示されている。APPマウスを、処理後のモリス水迷路上で、標的プラットフォームを見つけるそれらの能力について試験した。測定値には、プラットフォームエントリの数(
図16、左パネル)、最初のエントリまでの待ち時間(
図16、中央パネル)、及びプラットフォームへの最初のエントリ前の移動距離(
図16、右パネル)が含まれる。群間で有意差はなかったが、1.25mg/kgのBK-40143は、より多くのプラットフォームエントリを伴うパフォーマンスの向上、及び最初のエントリまでのより低い待ち時間及び最初のエントリ前のより低い走行距離の傾向を示す(
図16)。
【0137】
研究はまた、BK40143がAPPマウスの海馬において細胞死を引き起こさないことを示した。代表的な20um海馬切片をニッスル物質について染色した。DMSO、1.25mg/kg、及び2.5mg/kgのBK40143について4倍及び20倍の画像を
図17に示す(左パネル)。平均染色強度を、imagejソフトウェアにおいて、全ての4倍の画像におけるニッスル染色の総量として定量化した(
図17、右パネル)。
【0138】
これらのデータは、式Iの化合物、例えば、BK41043またはBK40197が、神経変性障害、筋変性障害、またはリソソーム蓄積障害を治療または予防するために使用され得ることを示唆する。
【国際調査報告】